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特開2023-34976着色感光性樹脂組成物、及びパターン化された硬化物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034976
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】着色感光性樹脂組成物、及びパターン化された硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20230306BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20230306BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
G03F7/004 505
G02B5/20 101
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141527
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 梓実
【テーマコード(参考)】
2H148
2H197
2H225
【Fターム(参考)】
2H148BE13
2H148BE15
2H148BE18
2H148BF16
2H148BG02
2H148BH18
2H197CA02
2H197CA03
2H197CA04
2H197CA05
2H197CA08
2H197CE01
2H197HA04
2H197HA05
2H225AC36
2H225AC58
2H225AC72
2H225AD06
2H225AM64P
2H225AN34P
2H225AN39P
2H225AN56P
2H225AN82P
2H225AN94P
2H225AN96P
2H225AN98P
2H225AP03P
2H225BA01P
2H225BA16P
2H225BA35P
2H225CA18
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
(57)【要約】
【課題】可視光に対する遮光性が高く且つポリマー基板上でも現像残渣の発生が抑制されたパターン形状を有する遮光性の硬化物を形成することができる着色感光性樹脂組成物と、当該着色感光性樹脂組成物を用いるパターン化された硬化物の製造方法とを提供する。
【解決手段】アルカリ可溶性樹脂(A)と光重合性モノマー(B)と光重合開始剤(C)と有機黒色顔料(D)と有機黒色顔料(D)以外の顔料(E)とを含む、着色感光性樹脂組成物であって、有機黒色顔料(D)がラクタム系顔料であり、顔料(E)が青色顔料(E1)及び青色顔料(E1)以外の顔料(E2)からなり、顔料(E2)が、黄色顔料(E2a)及びペリレン系顔料(E2b)から選択される少なくとも一種である着色感光性樹脂組成物を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性樹脂(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、有機黒色顔料(D)と、前記有機黒色顔料(D)以外の顔料(E)とを含む、着色感光性樹脂組成物であって
前記有機黒色顔料(D)が、ラクタム系顔料であり、
前記顔料(E)が、青色顔料(E1)及び前記青色顔料(E1)以外の顔料(E2)からなり、
前記顔料(E2)が、黄色顔料(E2a)及びペリレン系顔料(E2b)から選択される少なくとも一種である、着色感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記青色顔料(E1)が、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、及びC.I.ピグメントブルー15:6から選択される少なくとも一種を含み、
前記黄色顔料(E2a)が、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、及びC.I.ピグメントイエロー150から選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記有機黒色顔料(D)の含有量に対する、青色顔料(E1)の含有量の質量比((E1)/(D))が、1.1以上1.5以下である、請求項1又は2に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記有機黒色顔料(D)の含有量に対する、顔料(E2)の含有量の質量比((E2)/(D))が、0.1以上0.7以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物を基板上に塗布及び乾燥して塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜を、位置選択的に露光する工程と、
露光後の前記塗布膜を、現像する工程とを含む、パターン化された硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色感光性樹脂組成物と、パターン化された硬化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のような表示装置用のパネルでは、通常、ブラックマトリクスやブラックカラムスペーサ等のパターン化された遮光性の膜が形成される。このような用途において遮光性の膜を形成するために用いられる、遮光性の黒色顔料と、光重合開始剤とを含む着色感光性組成物が種々提案されている。
【0003】
このような着色感光性組成物としては、例えば、カーボンブラック分散液を含む黒色感光性樹脂組成物が提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-325734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1等のカーボンブラック分散液を含む従来の着色感光性組成物は、可視光遮蔽性に優れるものの、フレキシブルデバイスを実現する目的でポリイミドフィルム等のポリマー製の基板(以下、ポリマー基板ともいう)上に塗布、乾燥、露光及び現像して、パターン形状を有する遮光性の膜(パターン化された硬化物)を形成すると、現像残渣が生じる。このため、ポリマー製の基板を用いた場合であっても、現像残渣が抑制できる着色感光性組成物が望まれる。
【0006】
一方、カーボンブラックでなく遮光性の有機顔料を用いた場合、形成された遮光性の膜は、可視光(特に波長480nm程度の光や680nm程度の光)に対する遮光性が不十分な場合がしばしばあり、より高い遮光性を有する膜を形成できる着色感光性組成物が望まれる。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、可視光に対する遮光性が高く且つポリマー基板上でも現像残渣の発生が抑制されたパターン形状を有する遮光性の硬化物を形成することができる着色感光性樹脂組成物と、当該着色感光性樹脂組成物を用いるパターン化された硬化物の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、アルカリ可溶性樹脂(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、有機黒色顔料(D)と、有機黒色顔料(D)以外の顔料(E)とを含む、着色感光性樹脂組成物であって、有機黒色顔料(D)がラクタム系顔料であり、顔料(E)が青色顔料(E1)及び青色顔料(E1)以外の顔料(E2)からなり、顔料(E2)が、黄色顔料(E2a)及びペリレン系顔料(E2b)から選択される少なくとも一種である着色感光性樹脂組成物を用いることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
本発明の第1の態様は、アルカリ可溶性樹脂(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、有機黒色顔料(D)と、前記有機黒色顔料(D)以外の顔料(E)とを含む、着色感光性樹脂組成物であって、
前記有機黒色顔料(D)が、ラクタム系顔料であり、
前記顔料(E)が、青色顔料(E1)及び前記青色顔料(E1)以外の顔料(E2)からなり、
前記顔料(E2)が、黄色顔料(E2a)及びペリレン系顔料(E2b)から選択される少なくとも一種である、着色感光性樹脂組成物である。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様にかかる着色感光性樹脂組成物を基板上に塗布及び乾燥して塗布膜を形成する工程と、
塗布膜を、位置選択的に露光する工程と、
露光後の塗布膜を、現像する工程とを含む、パターン化された硬化物の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、可視光に対する遮光性が高く且つポリマー基板上でも現像残渣の発生が抑制されたパターン形状を有する遮光性の硬化物を形成することができる着色感光性樹脂組成物と、当該着色感光性樹脂組成物を用いるパターン化された硬化物の製造方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明を行う。なお、本明細書中において、「~」を用いて表される範囲について、両端の数値、又は比を含む範囲として定義する。
【0013】
≪着色感光性樹脂組成物≫
着色感光性樹脂組成物(黒色感光性樹脂組成物)は、アルカリ可溶性樹脂(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、有機黒色顔料(D)と、有機黒色顔料(D)以外の顔料(E)とを含む。そして、有機黒色顔料(D)は、ラクタム系顔料である。また、顔料(E)は、青色顔料(E1)及び青色顔料(E1)以外の顔料(E2)からなる。また、顔料(E2)は、黄色顔料(E2a)及びペリレン系顔料(E2b)から選択される少なくとも一種である。
【0014】
以下、着色感光性樹脂組成物について、必須又は任意の成分について説明する。
【0015】
<アルカリ可溶性樹脂(A)>
着色感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(A)(以下、(A)成分ともいう。)を含む。着色感光性樹脂組成物にアルカリ可溶性樹脂(A)を配合することで、着色感光性樹脂組成物にアルカリ現像性を付与することができる。
ここで、本明細書において、アルカリ可溶性樹脂とは、分子内にアルカリ可溶性を持たせる官能基(例えば、フェノール性水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基等)を備える樹脂を指す。
【0016】
アルカリ可溶性樹脂(A)は、エチレン性不飽和二重結合のような光重合性基を分子内に含む樹脂を含むのが好ましい。この場合、着色感光性樹脂組成物を用いて硬化物を形成する際に、アルカリ可溶性樹脂(A)と光重合性モノマー(B)との間で、架橋が生じる。
光重合性基の典型例としては、例えば、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等の不飽和二重結合を有する官能基が挙げられる。
【0017】
アルカリ可溶性樹脂(A)は、分子内にカルド構造を有する樹脂(a-1)を含むのが好ましい。カルド構造については、詳細に後述する。
分子内にカルド構造を有する樹脂を用いる場合、解像性に優れる着色感光性樹脂組成物を得やすく、着色感光性樹脂組成物を用いて加熱により過度にフローしにくい硬化物を形成しやすい。
【0018】
〔カルド構造を有する樹脂(a-1)〕
カルド構造を有する樹脂(a-1)(以下カルド樹脂(a-1)とも記す。)としては、分子中にカルド構造を有し、所定のアルカリ可溶性を有する樹脂を用いることができる。カルド構造とは、第1の環状構造を構成している1つの環炭素原子に、第2の環状構造と第3の環状構造とが結合した骨格をいう。なお、第2の環状構造と、第3の環状構造とは、同一の構造であっても異なった構造であってもよい。
カルド構造の代表的な例としては、フルオレン環の9位の炭素原子に2つの芳香環(例えばベンゼン環)が結合した骨格が挙げられる。
【0019】
カルド樹脂(a-1)としては、特に限定されるものではなく、従来公知の樹脂を用いることができる。その中でも、下記式(a-1)で表される樹脂が好ましい。下記式(a-1)で表される樹脂は、下記式(a-2)に示されるように、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する。このため、下記式(a-1)で表される樹脂は、分子内に光重合性基を含む樹脂に該当する。
【0020】
【化1】
【0021】
式(a-1)中、Xは、下記式(a-2)で表される基を示す。m1は0以上20以下の整数を示す。
【0022】
【化2】
【0023】
上記式(a-2)中、Ra1は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1以上6以下の炭化水素基、又はハロゲン原子を示し、Ra2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Ra3は、それぞれ独立に直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、m2は、0又は1を示し、Wは、下記式(a-3)で表される基を示す。
【0024】
【化3】
【0025】
式(a-2)中、Ra3としては、炭素原子数1以上20以下のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基が特に好ましく、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、及びプロパン1,3-ジイル基が最も好ましい。
【0026】
式(a-3)中の環Aは、芳香族環と縮合していてもよく置換基を有していてもよい脂肪族環を示す。脂肪族環は、脂肪族炭化水素環であっても、脂肪族複素環であってもよい。
脂肪族環としては、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等が挙げられる。
具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンが挙げられる。
脂肪族環に縮合してもよい芳香族環は、芳香族炭化水素環でも芳香族複素環でもよく、芳香族炭化水素環が好ましい。具体的にはベンゼン環、及びナフタレン環が好ましい。
【0027】
式(a-3)で表される2価基の好適な例としては、下記の基が挙げられる。
【化4】
【0028】
式(a-1)中の2価基Xは、残基Zを与えるテトラカルボン酸二無水物と、下式(a-2a)で表されるジオール化合物とを反応させることにより、カルド樹脂(a-1)中に導入される。
【化5】
【0029】
式(a-2a)中、Ra1、Ra2、Ra3、及びm2は、式(a-2)について説明した通りである。式(a-2a)中の環Aについては、式(a-3)について説明した通りである。
【0030】
式(a-2a)で表されるジオール化合物は、例えば、以下の方法により製造し得る。
まず、下記式(a-2b)で表されるジオール化合物が有するフェノール性水酸基中の水素原子を、必要に応じて、常法に従って、-Ra3-OHで表される基に置換した後、エピクロルヒドリン等を用いてグリシジル化して、下記式(a-2c)で表されるエポキシ化合物を得る。
次いで、式(a-2c)で表されるエポキシ化合物を、アクリル酸又はメタクリル酸と反応させることにより、式(a-2a)で表されるジオール化合物が得られる。
式(a-2b)及び式(a-2c)中、Ra1、Ra3、及びm2は、式(a-2)について説明した通りである。式(a-2b)及び式(a-2c)中の環Aについては、式(a-3)について説明した通りである。
なお、式(a-2a)で表されるジオール化合物の製造方法は、上記の方法に限定されない。
【化6】
【0031】
式(a-2b)で表されるジオール化合物の好適な例としては、以下のジオール化合物が挙げられる。
【化7】
【0032】
上記式(a-1)中、Ra0は水素原子又は-CO-Y-COOHで表される基である。ここで、Yは、ジカルボン酸無水物から酸無水物基(-CO-O-CO-)を除いた残基を示す。ジカルボン酸無水物の例としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸等が挙げられる。
【0033】
また、上記式(a-1)中、Zは、テトラカルボン酸二無水物から2個の酸無水物基を除いた残基を示す。テトラカルボン酸二無水物の例としては、下記式(a-4)で表されるテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
また、上記式(a-1)中、m1は、0以上20以下の整数を示す。
【0034】
【化8】
(式(a-4)中、Ra4、Ra5、及びRa6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基及びフッ素原子からなる群より選択される1種を示し、m3は、0以上12以下の整数を示す。)
【0035】
式(a-4)中のRa4として選択され得るアルキル基は、炭素原子数が1以上10以下のアルキル基である。アルキル基の備える炭素原子数をこの範囲に設定することで、得られるカルボン酸エステルの耐熱性を一段と向上させることができる。Ra4がアルキル基である場合、その炭素原子数は、耐熱性に優れるカルド樹脂を得やすい点から、1以上6以下が好ましく、1以上5以下がより好ましく、1以上4以下がさらに好ましく、1以上3以下が特に好ましい。
a4がアルキル基である場合、当該アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
【0036】
式(a-4)中のRa4としては、耐熱性に優れるカルド樹脂を得やすい点から、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1以上10以下のアルキル基がより好ましい。式(a-4)中のRa4は、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基がより好ましく、水素原子又はメチル基が特に好ましい。
式(a-4)中の複数のRa4は、高純度のテトラカルボン酸二無水物の調製が容易であることから、同一の基であるのが好ましい。
【0037】
式(a-4)中のm3は0以上12以下の整数を示す。m3の値を12以下とすることによって、テトラカルボン酸二無水物の精製を容易にすることができる。
テトラカルボン酸二無水物の精製が容易である点から、m3の上限は5が好ましく、3がより好ましい。
テトラカルボン酸二無水物の化学的安定性の点から、m3の下限は1が好ましく、2がより好ましい。
式(a-4)中のm3は、2又は3が特に好ましい。
【0038】
式(a-4)中のRa5、及びRa6として選択され得る炭素原子数1以上10以下のアルキル基は、Ra4として選択され得る炭素原子数1以上10以下のアルキル基と同様である。
a5、及びRa6は、テトラカルボン酸二無水物の精製が容易である点から、水素原子、又は炭素原子数1以上10以下(好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上5以下、さらに好ましくは1以上4以下、特に好ましくは1以上3以下)のアルキル基であるのが好ましく、水素原子又はメチル基であるのが特に好ましい。
【0039】
式(a-4)で表されるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(別名「ノルボルナン-2-スピロ-2’-シクロペンタノン-5’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物」)、メチルノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-(メチルノルボルナン)-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロヘキサノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(別名「ノルボルナン-2-スピロ-2’-シクロヘキサノン-6’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物」)、メチルノルボルナン-2-スピロ-α-シクロヘキサノン-α’-スピロ-2’’-(メチルノルボルナン)-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロプロパノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロブタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロヘプタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロオクタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロノナノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロウンデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロドデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロトリデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロテトラデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-(メチルシクロペンタノン)-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-(メチルシクロヘキサノン)-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0040】
カルド樹脂(a-1)の質量平均分子量は、1000以上40000以下が好ましく、1500以上30000以下がより好ましく、2000以上10000以下がさらに好ましい。上記の範囲とすることにより、良好な現像性を得ながら、硬化物について十分な耐熱性と、機械的強度とを得ることができる。
本明細書において質量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)のポリスチレン換算による測定値である。
【0041】
アルカリ可溶性樹脂(A)中のカルド構造を有する樹脂(a-1)の含有量は、特に限定されないが、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
【0042】
アルカリ可溶性樹脂(A)は、カルド構造を有する樹脂(a-1)以外のアルカリ可溶性樹脂を含んでいてもよい。
【0043】
着色感光性樹脂組成物の全固形分中における、アルカリ可溶性樹脂(A)の含有量は、5質量%以上55質量%以下が好ましく、10質量%以上45質量%がより好ましい。上記の範囲とすることにより、現像性に優れる着色感光性樹脂組成物を得やすい。
なお、本明細書において、固形分とは、有機溶剤(S)以外の成分である。
【0044】
<光重合性モノマー(B)>
着色感光性樹脂組成物は、光重合性モノマー(B)を含む。光重合性モノマー(B)としては、エチレン性不飽和基を有する化合物が好ましい。かかるエチレン性不飽和基を有する化合物には、単官能化合物と多官能化合物とがある。
【0045】
単官能化合物としては、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、tert-ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0046】
一方、多官能化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(すなわち、トリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、又はヘキサメチレンジイソシアネート等と2-ビドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物)、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN-メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等の多官能化合物や、トリアクリルホルマール等が挙げられる。これらの多官能化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0047】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両者を意味し、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両者を意味し、「(メタ)アクリロイルオキシ」とは、「アクリロイルオキシ」及び「メタクリロイルオキシ」の両者を意味する。
【0048】
着色感光性樹脂組成物の全固形分中における、光重合性モノマー(B)の含有量は、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0049】
<光重合開始剤(C)>
光重合開始剤(C)としては、特に限定されず、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
光重合開始剤(C)としては、オキシムエステル化合物が挙げられる。
オキシムエステル化合物としては、下記式(c1)で表される部分構造を有する化合物が好ましい。
【0050】
【化9】
(式(c1)中、
n1は、0、又は1であり、
c2は、一価の有機基であり、
c3は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上20以下の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、
*は結合手である。)
【0051】
式(c1)で表される部分構造を有する化合物は、カルバゾール骨格、フルオレン骨格、ジフェニルエーテル骨格や、フェニルスルフィド骨格を有することが好ましい。
式(c1)で表される部分構造を有する化合物は、式(c1)で表される部分構造を1つ又は2つ有することが好ましい。
【0052】
式(c1)で表される部分構造を有する化合物としては、下記式(c2)で表される化合物が挙げられる。
【0053】
【化10】
(式(c2)中、Rc1は、下記式(c3)、(c4)、又は(c5)で表される基であり、
n1は、0、又は1であり、
c2は、一価の有機基であり、
c3は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上20以下の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有してもよいアリール基である。)
【0054】
【化11】
(式(c3)中、Rc4及びRc5は、それぞれ独立に、1価の有機基であり、
n2は、0以上3以下の整数であり、
n2が2又は3の場合、複数のRc5は同一でも異なっていてもよく、複数のRc5は互いに結合して環を形成してもよい。
*は結合手である。)
【0055】
【化12】
(式(c4)中、Rc6及びRc7は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい鎖状アルキル基、置換基を有してもよい鎖状アルコキシ基、置換基を有してもよい環状有機基、又は水素原子であり、
c6とRc7とは互いに結合して環を形成してもよく、
c7とフルオレン骨格中のベンゼン環とが互いに結合して環を形成してもよく、
c8は、ニトロ基、又は1価の有機基、であり、
n3は、0以上4以下の整数であり、
*は結合手である。)
【0056】
【化13】
(式(c5)中、Rc9は、1価の有機基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基であり、
Aは、S又はOであり、
n4は、0以上4以下の整数であり、
*は結合手である。)
【0057】
式(c3)中、Rc4は、1価の有機基である。Rc4は、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。有機基としては、炭素原子含有基が好ましく、1以上の炭素原子、並びにH、O、S、Se、N、B、P、Si、及びハロゲン原子からなる群より選択される1以上の原子からなる基がより好ましい。炭素原子含有基の炭素原子数は特に限定されず、1以上50以下が好ましく、1以上20以下がより好ましい。
c4の好適な例としては、炭素原子数1以上20以下の置換基を有してもよいアルキル基、炭素原子数3以上20以下の置換基を有してもよいシクロアルキル基、炭素原子数2以上20以下の置換基を有してもよい飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2以上20以下の置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数7以上20以下のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数11以上20以下のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基等が挙げられる。
【0058】
c4の中では、炭素原子数1以上20以下のアルキル基が好ましい。当該アルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。式(c3)で表される化合物の感光性樹脂組成物中での溶解性が良好である点から、Rc4としてのアルキル基の炭素原子数は、2以上が好ましく、5以上がより好ましく、7以上が特に好ましい。また、感光性樹脂組成物中での、式(c3)で表される化合物と、他の成分との相溶性が良好である点から、Rc4としてのアルキルの基の炭素原子数は、15以下が好ましく、10以下がより好ましい。
【0059】
c4が置換基を有する場合、当該置換基の好適な例としては、水酸基、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上20以下の脂肪族アシル基、炭素原子数2以上20以下の脂肪族アシルオキシ基、フェノキシ基、ベンゾイル基、ベンゾイルオキシ基、-PO(OR)で表される基(Rは炭素原子数1以上6以下のアルキル基)、ハロゲン原子、シアノ基、ヘテロシクリル基等が挙げられる。
【0060】
c4が、ヘテロシクリル基である場合、当該ヘテロシクリル基は、脂肪族複素環基であっても、芳香族複素環基であってもよい。Rc4がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、キノキサリン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロピラン、及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。
c4がヘテロシクリル基である場合、当該ヘテロシクリル基が有していてもよい置換基としては、水酸基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0061】
以上説明したRc4の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ペンタン-3-イル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、及び2-エチルヘキシル基が挙げられる。
また、感光性樹脂組成物中での式(c3)で表される化合物の溶解性が良好である点から、n-オクチル基、及び2-エチルヘキシル基が好ましく、2-エチルヘキシル基がより好ましい。
【0062】
式(c3)中、Rc5は、1価の有機基である。Rc5は、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。有機基としては、炭素原子含有基が好ましく、1以上の炭素原子、並びにH、O、S、Se、N、B、P、Si、及びハロゲン原子からなる群より選択される1以上の原子からなる基がより好ましい。炭素原子含有基の炭素原子数は特に限定されず、1以上50以下が好ましく、1以上20以下がより好ましい。
c5として好適な1価の有機基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、1、2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、HXC-又はHXC-で表される基を含む置換基(ただし、Xは、各々独立に、ハロゲン原子である)等が挙げられる。
【0063】
c5がアルキル基である場合、アルキル基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。また、Rc5がアルキル基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Rc5がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、Rc5がアルキル基である場合、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0064】
c5がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。また、Rc5がアルコキシ基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Rc5がアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec-オクチルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、及びイソデシルオキシ基等が挙げられる。また、Rc5がアルコキシ基である場合、アルコキシ基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルコキシ基の例としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、プロピルオキシエトキシエトキシ基、及びメトキシプロピルオキシ基等が挙げられる。
【0065】
c5がシクロアルキル基又はシクロアルコキシ基である場合、シクロアルキル基又はシクロアルコキシ基の炭素原子数は、3以上10以下が好ましく、3以上6以下がより好ましい。Rc5がシクロアルキル基である場合の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。Rc5がシクロアルコキシ基である場合の具体例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、及びシクロオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0066】
c5が飽和脂肪族アシル基又は飽和脂肪族アシルオキシ基である場合、飽和脂肪族アシル基又は飽和脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、2以上21以下が好ましく、2以上7以下がより好ましい。Rc5が飽和脂肪族アシル基である場合の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、n-ブタノイル基、2-メチルプロパノイル基、n-ペンタノイル基、2,2-ジメチルプロパノイル基、n-ヘキサノイル基、n-ヘプタノイル基、n-オクタノイル基、n-ノナノイル基、n-デカノイル基、n-ウンデカノイル基、n-ドデカノイル基、n-トリデカノイル基、n-テトラデカノイル基、n-ペンタデカノイル基、及びn-ヘキサデカノイル基等が挙げられる。Rc5が飽和脂肪族アシルオキシ基である場合の具体例としては、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、n-ブタノイルオキシ基、2-メチルプロパノイルオキシ基、n-ペンタノイルオキシ基、2,2-ジメチルプロパノイルオキシ基、n-ヘキサノイルオキシ基、n-ヘプタノイルオキシ基、n-オクタノイルオキシ基、n-ノナノイルオキシ基、n-デカノイルオキシ基、n-ウンデカノイルオキシ基、n-ドデカノイルオキシ基、n-トリデカノイルオキシ基、n-テトラデカノイルオキシ基、n-ペンタデカノイルオキシ基、及びn-ヘキサデカノイルオキシ基等が挙げられる。
【0067】
c5がアルコキシカルボニル基である場合、アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2以上20以下が好ましく、2以上7以下がより好ましい。Rc5がアルコキシカルボニル基である場合の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n-ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec-ブチルオキシカルボニル基、tert-ブチルオキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、sec-ペンチルオキシカルボニル基、tert-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、イソオクチルオキシカルボニル基、sec-オクチルオキシカルボニル基、tert-オクチルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、イソノニルオキシカルボニル基、n-デシルオキシカルボニル基、及びイソデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0068】
c5がフェニルアルキル基である場合、フェニルアルキル基の炭素原子数は、7以上20以下が好ましく、7以上10以下がより好ましい。また、Rc5がナフチルアルキル基である場合、ナフチルアルキル基の炭素原子数は、11以上20以下が好ましく、11以上14以下がより好ましい。Rc5がフェニルアルキル基である場合の具体例としては、ベンジル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、及び4-フェニルブチル基が挙げられる。Rc5がナフチルアルキル基である場合の具体例としては、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、2-(α-ナフチル)エチル基、及び2-(β-ナフチル)エチル基が挙げられる。Rc5が、フェニルアルキル基、又はナフチルアルキル基である場合、Rc5は、フェニル基、又はナフチル基上にさらに置換基を有していてもよい。
【0069】
c5がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、式(c3)中のRc4がヘテロシクリル基である場合と同様であり、ヘテロシクリル基はさらに置換基を有していてもよい。
c5がヘテロシクリルカルボニル基である場合、ヘテロシクリルカルボニル基に含まれるヘテロシクリル基は、Rc5がヘテロシクリル基である場合と同様である。
【0070】
c5が1又は2の有機基で置換されたアミノ基である場合、有機基の好適な例は、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素原子数2以上21以下の飽和脂肪族アシル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよい炭素原子数7以上20以下のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよい炭素原子数11以上20以下のナフチルアルキル基、及びヘテロシクリル基等が挙げられる。これらの好適な有機基の具体例は、Rc5と同様である。1、又は2の有機基で置換されたアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、n-ペンチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基、n-ヘプチルアミノ基、n-オクチルアミノ基、n-ノニルアミノ基、n-デシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、n-ブタノイルアミノ基、n-ペンタノイルアミノ基、n-ヘキサノイルアミノ基、n-ヘプタノイルアミノ基、n-オクタノイルアミノ基、n-デカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、α-ナフトイルアミノ基、及びβ-ナフトイルアミノ基等が挙げられる。
【0071】
c5に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合の置換基としては、HXC-又はHXC-で表される基を含む置換基(例えば、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルキル基)、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、ベンゾイル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。Rc5に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されず、1以上4以下が好ましい。Rc5に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0072】
c5に含まれる、ベンゾイル基がさらに置換基を有する場合の置換基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、2-テノイル基(チオフェン-2-イルカルボニル基)、フラン-3-イルカルボニル基及びフェニル基等が挙げられる。
【0073】
Xで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、フッ素原子であることが好ましい。
【0074】
HXC-又はHXC-で表される基を含む置換基としては、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基を有する基、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルキル基、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルキル基を有する基等が挙げられ、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基、又はHXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基を有する基であることがより好ましい。
【0075】
HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルキル基を有する基としては、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルキル基で置換されている芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルキル基で置換されているシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)等が挙げられ、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルキル基で置換されている芳香族基であることが好ましい。
【0076】
HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基を有する基としては、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基で置換されている芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基で置換されているアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基等)、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基で置換されているシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)等が挙げられ、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基で置換されている芳香族基であることが好ましい。
【0077】
また、Rc5としてはシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェノキシアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基、も好ましい。フェノキシアルキル基、及びフェニルチオアルキル基が有していてもよい置換基は、Rc5に含まれるフェニル基が有していてもよい置換基と同様である。
【0078】
1価の有機基の中でも、Rc5としては、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素原子数1以上20以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上8以下のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。置換基を有していてもよいフェニル基の中では、メチルフェニル基が好ましく、2-メチルフェニル基がより好ましい。シクロアルキルアルキル基に含まれるシクロアルキル基の炭素原子数は、5以上10以下が好ましく、5以上8以下がより好ましく、5又は6が特に好ましい。シクロアルキルアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数は、1以上8以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、2が特に好ましい。シクロアルキルアルキル基の中では、シクロペンチルエチル基が好ましい。芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数は、1以上8以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、2が特に好ましい。芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基の中では、2-(4-クロロフェニルチオ)エチル基が好ましい。
【0079】
式(c3)で表される基において、Rc5が複数存在し、複数のRc5が互いに結合して環を形成する場合、形成される環としては、炭化水素環や、複素環等が挙げられる。複素環に含まれるヘテロ原子としては、例えば、N、OやSが挙げられる。複数のRc5が互いに結合して形成する環としては、特に芳香族環が好ましい。かかる芳香族環は、芳香族炭化水素環であっても、芳香族複素環であってもよい。かかる芳香族環としては、芳香族炭化水素環が好ましい。式(c3)において、複数のRc5が互いに結合してベンゼン環を形成した場合の具体例を、以下に示す。
【0080】
【化14】
【0081】
式(c4)で表される基において、Rc8は、ニトロ基又は1価の有機基である。Rc8は、式(c4)中の縮合環上で、-(CO)n1-で表される基に結合する芳香環とは異なる6員芳香環に、結合する。式(c4)中、Rc8の結合位置は特に限定されない。式(c4)で表される基が1以上のRc8を有する場合、式(c4)で表される化合物の合成が容易であること等から、1以上のRc8のうちの1つが、フルオレン骨格の7位の位置に結合することが好ましい。すなわち、式(c4)で表される基が1以上のRc8を有する場合、式(c4)で表される基は、下記式(c6)で示されることが好ましい。Rc8が複数の場合、複数のRc8は同一であっても異なっていてもよい。
【0082】
【化15】
(式(c6)中、Rc6、Rc7、Rc8、n3は、それぞれ式(c4)におけるRc6、Rc7、Rc8、n3と同様である。)
【0083】
c8が1価の有機基である場合、Rc8は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。有機基としては、炭素原子含有基が好ましく、1以上の炭素原子、並びにH、O、S、Se、N、B、P、Si、及びハロゲン原子からなる群より選択される1以上の原子からなる基がより好ましい。炭素原子含有基の炭素原子数は特に限定されず、1以上50以下が好ましく、1以上20以下がより好ましい。
c8が1価の有機基である場合の好適な例としては、式(c3)中のRc5としての1価の有機基の好適な例と同様の基が挙げられる。
【0084】
式(c4)中、Rc6及びRc7は、それぞれ、置換基を有してもよい鎖状アルキル基、置換基を有してもよい鎖状アルコキシ基、置換基を有してもよい環状有機基、又は水素原子である。Rc6及びRc7とは相互に結合して環を形成してもよい。これらの基の中では、Rc6及びRc7として、置換基を有してもよい鎖状アルキル基が好ましい。Rc6及びRc7が置換基を有してもよい鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基は直鎖アルキル基でも分岐鎖アルキル基でもよい。
【0085】
c6及びRc7が置換基を持たない鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上6以下が特に好ましい。Rc6及びRc7が鎖状アルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、Rc6及びRc7がアルキル基である場合、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0086】
c6及びRc7が置換基を有する鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上6以下が特に好ましい。この場合、置換基の炭素原子数は、鎖状アルキル基の炭素原子数に含まれない。置換基を有する鎖状アルキル基は、直鎖状であるのが好ましい。
【0087】
アルキル基が有してもよい置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。置換基の好適な例としては、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、環状有機基、及びアルコキシカルボニル基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。これらの中では、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。環状有機基としては、シクロアルキル基、芳香族炭化水素基、ヘテロシクリル基が挙げられる。シクロアルキル基の具体例としては、Rc8がシクロアルキル基である場合の好適な例と同様である。芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、及びフェナントリル基等が挙げられる。ヘテロシクリル基の具体例としては、Rc8がヘテロシクリル基である場合の好適な例と同様である。Rc8がアルコキシカルボニル基である場合、アルコキシカルボニル基に含まれるアルコキシ基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。アルコキシカルボニル基に含まれるアルコキシ基の炭素原子数は、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。
【0088】
鎖状アルキル基が置換基を有する場合、置換基の数は特に限定されない。好ましい置換基の数は鎖状アルキル基の炭素原子数に応じて変わる。置換基の数は、典型的には、1以上20以下であり、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。
【0089】
c6及びRc7が置換基を持たない鎖状アルコキシ基である場合、鎖状アルコキシ基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上6以下が特に好ましい。Rc6及びRc7が鎖状アルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec-オクチルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、及びイソデシルオキシ基等が挙げられる。また、Rc6及びRc7がアルコキシ基である場合、アルコキシ基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルコキシ基の例としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、プロピルオキシエトキシエトキシ基、及びメトキシプロピルオキシ基等が挙げられる。
【0090】
c6及びRc7が置換基を有する鎖状アルコキシ基である場合に、アルコキシ基が有してもよい置換基は、Rc6及びRc7が鎖状アルキル基である場合と同様である。
【0091】
c6及びRc7が環状有機基である場合、環状有機基は、脂環式基であっても、芳香族基であってもよい。環状有機基としては、脂肪族環状炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヘテロシクリル基が挙げられる。Rc6及びRc7が環状有機基である場合に、環状有機基が有してもよい置換基は、Rc6及びRc7が鎖状アルキル基である場合と同様である。
【0092】
c6及びRc7が芳香族炭化水素基である場合、芳香族炭化水素基は、フェニル基であるか、複数のベンゼン環が炭素-炭素結合を介して結合して形成される基であるか、複数のベンゼン環が縮合して形成される基であるのが好ましい。芳香族炭化水素基が、フェニル基であるか、複数のベンゼン環が結合又は縮合して形成される基である場合、芳香族炭化水素基に含まれるベンゼン環の環数は特に限定されず、3以下が好ましく、2以下がより好ましく、1が特に好ましい。芳香族炭化水素基の好ましい具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、及びフェナントリル基等が挙げられる。
【0093】
c6及びRc7が脂肪族環状炭化水素基である場合、脂肪族環状炭化水素基は、単環式であっても多環式であってもよい。脂肪族環状炭化水素基の炭素原子数は特に限定されないが、3以上20以下が好ましく、3以上10以下がより好ましい。単環式の環状炭化水素基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、及びアダマンチル基等が挙げられる。
【0094】
c6及びRc7がヘテロシクリル基である場合、式(c3)中のRc5としてのヘテロシクリル基と同様の基が挙げられる。
【0095】
c6及びRc7とは相互に結合して環を形成してもよい。Rc6及びRc7とが形成する環からなる基は、シクロアルキリデン基であるのが好ましい。Rc6及びRc7とが結合してシクロアルキリデン基を形成する場合、シクロアルキリデン基を構成する環は、5員環~6員環であるのが好ましく、5員環であるのがより好ましい。
【0096】
c7とフルオレン骨格のベンゼン環と環を形成する場合、当該環は、芳香族環でもよく、脂肪族環でもよい。
【0097】
c6及びRc7が結合して形成する基がシクロアルキリデン基である場合、シクロアルキリデン基は、1以上の他の環と縮合していてもよい。シクロアルキリデン基と縮合していてもよい環の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピリジン環、ピラジン環、及びピリミジン環等が挙げられる。
【0098】
以上説明したRc6及びRc7の中でも好適な基の例としては、式-A1-A2で表される基が挙げられる。式中、A1は直鎖アルキレン基であり、A2は、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、環状有機基、又はアルコキシカルボニル基である挙げられる。
【0099】
A1の直鎖アルキレン基の炭素原子数は、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。A2がアルコキシ基である場合、アルコキシ基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。アルコキシ基の炭素原子数は、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。A2がハロゲン原子である場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子がより好ましい。A2がハロゲン化アルキル基である場合、ハロゲン化アルキル基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子がより好ましい。ハロゲン化アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。A2が環状有機基である場合、環状有機基の例は、Rc6及びRc7が置換基として有する環状有機基と同様である。A2がアルコキシカルボニル基である場合、アルコキシカルボニル基の例は、Rc6及びRc7が置換基として有するアルコキシカルボニル基と同様である。
【0100】
c6及びRc7の好適な具体例としては、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、及びn-オクチル基等のアルキル基;2-メトキシエチル基、3-メトキシ-n-プロピル基、4-メトキシ-n-ブチル基、5-メトキシ-n-ペンチル基、6-メトキシ-n-ヘキシル基、7-メトキシ-n-ヘプチル基、8-メトキシ-n-オクチル基、2-エトキシエチル基、3-エトキシ-n-プロピル基、4-エトキシ-n-ブチル基、5-エトキシ-n-ペンチル基、6-エトキシ-n-ヘキシル基、7-エトキシ-n-ヘプチル基、及び8-エトキシ-n-オクチル基等のアルコキシアルキル基;2-シアノエチル基、3-シアノ-n-プロピル基、4-シアノ-n-ブチル基、5-シアノ-n-ペンチル基、6-シアノ-n-ヘキシル基、7-シアノ-n-ヘプチル基、及び8-シアノ-n-オクチル基等のシアノアルキル基;2-フェニルエチル基、3-フェニル-n-プロピル基、4-フェニル-n-ブチル基、5-フェニル-n-ペンチル基、6-フェニル-n-ヘキシル基、7-フェニル-n-ヘプチル基、及び8-フェニル-n-オクチル基等のフェニルアルキル基;2-シクロヘキシルエチル基、3-シクロヘキシル-n-プロピル基、4-シクロヘキシル-n-ブチル基、5-シクロヘキシル-n-ペンチル基、6-シクロヘキシル-n-ヘキシル基、7-シクロヘキシル-n-ヘプチル基、8-シクロヘキシル-n-オクチル基、2-シクロペンチルエチル基、3-シクロペンチル-n-プロピル基、4-シクロペンチル-n-ブチル基、5-シクロペンチル-n-ペンチル基、6-シクロペンチル-n-ヘキシル基、7-シクロペンチル-n-ヘプチル基、及び8-シクロペンチル-n-オクチル基等のシクロアルキルアルキル基;2-メトキシカルボニルエチル基、3-メトキシカルボニル-n-プロピル基、4-メトキシカルボニル-n-ブチル基、5-メトキシカルボニル-n-ペンチル基、6-メトキシカルボニル-n-ヘキシル基、7-メトキシカルボニル-n-ヘプチル基、8-メトキシカルボニル-n-オクチル基、2-エトキシカルボニルエチル基、3-エトキシカルボニル-n-プロピル基、4-エトキシカルボニル-n-ブチル基、5-エトキシカルボニル-n-ペンチル基、6-エトキシカルボニル-n-ヘキシル基、7-エトキシカルボニル-n-ヘプチル基、及び8-エトキシカルボニル-n-オクチル基等のアルコキシカルボニルアルキル基;2-クロロエチル基、3-クロロ-n-プロピル基、4-クロロ-n-ブチル基、5-クロロ-n-ペンチル基、6-クロロ-n-ヘキシル基、7-クロロ-n-ヘプチル基、8-クロロ-n-オクチル基、2-ブロモエチル基、3-ブロモ-n-プロピル基、4-ブロモ-n-ブチル基、5-ブロモ-n-ペンチル基、6-ブロモ-n-ヘキシル基、7-ブロモ-n-ヘプチル基、8-ブロモ-n-オクチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、及び3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-n-ペンチル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0101】
c6及びRc7として、上記の中でも好適な基は、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、2-メトキシエチル基、2-シアノエチル基、2-フェニルエチル基、2-シクロヘキシルエチル基、2-メトキシカルボニルエチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、及び3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-n-ペンチル基である。
【0102】
式(c5)中、感度に優れる光重合開始剤を得やすい点から、AはSであることが特に好ましい。
【0103】
式(c5)中、Rc9は、1価の有機基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基である。
式(c5)におけるRc9が1価の有機基である場合、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。有機基としては、炭素原子含有基が好ましく、1以上の炭素原子、並びにH、O、S、Se、N、B、P、Si、及びハロゲン原子からなる群より選択される1以上の原子からなる基がより好ましい。炭素原子含有基の炭素原子数は特に限定されず、1以上50以下が好ましく、1以上20以下がより好ましい。
式(c5)においてRc9が有機基である場合の好適な例としては、式(c3)中のRc5としての1価の有機基と同様の基が挙げられる。
【0104】
c9の中では、ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素原子数1以上6以下のアルキル基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;ニトロ基;置換基を有していてもよいベンゾフラニルカルボニル基が好ましく、ベンゾイル基;ナフトイル基;2-メチルフェニルカルボニル基;4-(ピペラジン-1-イル)フェニルカルボニル基;4-(フェニル)フェニルカルボニル基がより好ましい。
【0105】
また、式(c5)において、n4は、0以上3以下の整数が好ましく、0以上2以下の整数がより好ましく、0、又は1であるのが特に好ましい。n4が1である場合、Rc9の結合する位置は、Rc9が結合するフェニル基が酸素原子又は硫黄原子と結合する結合手に対して、パラ位であるのが好ましい。
【0106】
式(c1)及び(c2)中、Rc2としての1価の有機基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。有機基としては、炭素原子含有基が好ましく、1以上の炭素原子、並びにH、O、S、Se、N、B、P、Si、及びハロゲン原子からなる群より選択される1以上の原子からなる基がより好ましい。炭素原子含有基の炭素原子数は特に限定されず、1以上50以下が好ましく、1以上20以下がより好ましい。
c2としての1価の有機基の好適な例としては、式(c3)中のRc5としての1価の有機基と同様の基が挙げられる。これらの基の具体例は、式(c3)中のRc5について説明した基と同様である。
また、Rc2としてはシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェノキシアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基、も好ましい。フェノキシアルキル基、及びフェニルチオアルキル基が有していてもよい置換基は、式(c3)中のRc5に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合の置換基と同様である。
【0107】
有機基の中でも、Rc2としては、上記HXC-又はHXC-で表される基を含む置換基、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基が好ましい。アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、シクロアルキルアルキル基に含まれるシクロアルキル基の炭素原子数、シクロアルキルアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数、シクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数、又は芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基については、式(c3)のRc5と同様である。
【0108】
また、Rc2としては、-A3-CO-O-A4で表される基も好ましい。A3は、2価の有機基であり、2価の炭化水素基であるのが好ましく、アルキレン基であるのが好ましい。A4は、1価の有機基であり、1価の炭化水素基であるのが好ましい。
【0109】
A3がアルキレン基である場合、アルキレン基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。A3がアルキレン基である場合、アルキレン基の炭素原子数は1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましく、1以上4以下が特に好ましい。
【0110】
A4の好適な例としては、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、及び炭素原子数6以上20以下の芳香族炭化水素基が挙げられる。A4の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、α-ナフチルメチル基、及びβ-ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0111】
-A3-CO-O-A4で表される基の好適な具体例としては、2-メトキシカルボニルエチル基、2-エトキシカルボニルエチル基、2-n-プロピルオキシカルボニルエチル基、2-n-ブチルオキシカルボニルエチル基、2-n-ペンチルオキシカルボニルエチル基、2-n-ヘキシルオキシカルボニルエチル基、2-ベンジルオキシカルボニルエチル基、2-フェノキシカルボニルエチル基、3-メトキシカルボニル-n-プロピル基、3-エトキシカルボニル-n-プロピル基、3-n-プロピルオキシカルボニル-n-プロピル基、3-n-ブチルオキシカルボニル-n-プロピル基、3-n-ペンチルオキシカルボニル-n-プロピル基、3-n-ヘキシルオキシカルボニル-n-プロピル基、3-ベンジルオキシカルボニル-n-プロピル基、及び3-フェノキシカルボニル-n-プロピル基等が挙げられる。
【0112】
また、Rc2としては、下記式(c7)又は(c8)で表される基も好ましい。
【化16】
(式(c7)及び(c8)中、Rc10及びRc11は、それぞれ独立に、1価の有機基であり、
n5は0以上4以下の整数であり、
c10及びRc11がベンゼン環上の隣接する位置に存在する場合、Rc10とRc11とが互いに結合して環を形成してもよく、
c12は、1価の有機基であり、
n6は1以下8以下の整数であり、
n7は1以上5以下の整数であり、
n8は0以上(n7+3)以下の整数である。)
【0113】
式(c7)中のRc10及びRc11としての有機基は、式(c4)中のRc8と同様である。Rc10としては、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルキル基、アルキル基又はフェニル基が好ましい。Rc10とRc11とが結合して環を形成する場合、当該環は、芳香族環でもよく、脂肪族環でもよい。式(c7)で表される基であって、Rc10とRc11とが環を形成している基の好適な例としては、ナフタレン-1-イル基や、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-5-イル基等が挙げられる。
上記式(c7)中、n7は0以上4以下の整数であり、0又は1であるのが好ましく、0であるのがより好ましい。
【0114】
上記式(c8)中、Rc12は有機基である。有機基としては、式(c4)中のRc8について説明した有機基と同様の基が挙げられる。有機基の中では、アルキル基が好ましい。アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。アルキル基の炭素原子数は1以上10以下が好ましく、1以上5以下がより好ましく、1以上3以下が特に好ましい。Rc12としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が好ましく例示され、これらの中でも、メチル基であることがより好ましい。
【0115】
上記式(c8)中、n7は1以上5以下の整数であり、1以上3以下の整数が好ましく、1又は2がより好ましい。上記式(c8)中、n8は0以上(n7+3)以下であり、0以上3以下の整数が好ましく、0以上2以下の整数がより好ましく、0が特に好ましい。
上記式(c8)中、n8は1以上8以下の整数であり、1以上5以下の整数が好ましく、1以上3以下の整数がより好ましく、1又は2が特に好ましい。
【0116】
式(c2)中、Rc3は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上20以下の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有してもよいアリール基である。Rc3が脂肪族炭化水素基である場合に有してもよい置換基としては、フェニル基、ナフチル基等が好ましく例示される。
【0117】
式(c1)及び(c2)中、Rc3としては、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、2-シクロペンチルエチル基、2-シクロブチルエチル基、シクロヘキシルメチル基、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、ナフチル基等が好ましく例示され、これらの中でも、メチル基又はフェニル基がより好ましい。
【0118】
式(c2)で表され、且つRc1として式(c3)で表される基を有する化合物の好適な具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【化17】
【0119】
【化18】
【0120】
【化19】
【0121】
【化20】
【0122】
式(c2)で表され、且つRc1として式(c4)で表される基を有する化合物の好適な具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【化21】
【0123】
【化22】
【0124】
【化23】
【0125】
【化24】
【0126】
【化25】
【0127】
式(c2)で表され、且つRc1として式(c5)で表される基を有する化合物の好適な具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【化26】
【0128】
オキシムエステル化合物以外の光重合開始剤(C)としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-ジメチルアミノフェニル)ブタン-1-オン、2-(4-メチルベンジル)-2-ジエチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-メチル-1-フェニル-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(ヘキシル)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-エチル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン等のα-アミノケトン系化合物;1-フェニル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ヒドロキシケトン系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルメチルケタール等のベンゾイン系光重合開始剤;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル、4’-メチルジフェニルサルファイド、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤;2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ピペニル-4.6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(ピペロニル)-6-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジン、2-[4-(4-メトキシスチリル)フェニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン系光重合開始剤;カルバゾール系光重合開始剤;2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-ブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-ブロモフェニル)-4,4,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール等のビイミダゾール系光重合開始剤;下記式で表されるようなベンズイミダゾリン系光重合開始剤等が例示される。
【化27】
【0129】
光重合開始剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。2種以上組み合わせて用いることにより、露光光に含まれる幅広い範囲の波長の光線を有効に利用しやすく、また、着色感光性樹脂組成物の感度を適切な範囲に調整しやすい。
【0130】
着色感光性樹脂組成物の全固形分中における、光重合開始剤(C)の含有量は、0.5質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0131】
オキシムエステル化合物以外の他の光重合開始剤を併用する場合、光重合開始剤(C)の質量に対するオキシムエステル化合物の質量の比率は、50質量%以上が好ましく、50質量%以上99質量%以下がより好ましく、70質量%以上97質量%以下が特に好ましく、80質量%以上95質量%以下が最も好ましい。
光重合開始剤(C)にかかる範囲内の量のオキシムエステル化合物を含有させる場合、特に、所望する幅よりも広い幅を有するパターン化された硬化物が形成されにくい。
【0132】
<有機黒色顔料(D)>
感光性樹脂組成物は、有機黒色顔料(D)を含む。
そして、有機黒色顔料(D)は、ラクタム系顔料である。
【0133】
〔ラクタム系顔料〕
ラクタム系顔料は、下記式(d1)で表される化合物である。
【0134】
【化28】
【0135】
式(d1)中、Xは二重結合を示し、幾何異性体としてそれぞれ独立にE体又はZ体であり、Rd1は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、ニトロ基、メトキシ基、臭素原子、塩素原子、フッ素原子、カルボキシ基、又はスルホ基を示す。Rd2は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又はフェニル基を示す。Rd3は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は塩素原子を示す。
式(d1)で表される化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
d1は、式(d1)で表される化合物の製造が容易である点から、ジヒドロインドロン環の6位に結合するのが好ましく、Rd3はジヒドロインドロン環の4位に結合するのが好ましい。同様の観点から、Rd1、Rd2、及びRd3は、好ましくは水素原子である。
式(d1)で表される化合物は、幾何異性体としてEE体、ZZ体、EZ体を有するが、これらのいずれかの単一の化合物であってもよいし、これらの幾何異性体の混合物であってもよい。
着色感光性樹脂組成物は、ラクタム系顔料を、1種含有していても2種以上含有していてもよい。
式(d1)で表される化合物は、例えば、国際公開第2000/24736号、及び国際公開第2010/081624号に記載された方法により製造することができる。
【0136】
着色感光性樹脂組成物中においてラクタム系顔料を良好に分散させるためには、ラクタム系顔料の平均粒子径は10nm以上1000nm以下であるのが好ましい。
【0137】
<顔料(E)>
着色感光性樹脂組成物は、有機黒色顔料(D)以外の顔料(E)を含む。
そして、顔料(E)は、青色顔料(E1)及び青色顔料(E1)以外の顔料(E2)からなる。
また、顔料(E2)は、黄色顔料(E2a)及びペリレン系顔料(E2b)から選択される少なくとも一種である。
【0138】
〔青色顔料(E1)〕
青色顔料は有機顔料であることが好ましい。青色顔料の具体例としてはC.I.ピグメントブルー1(以下、「C.I.ピグメントブルー」は同様であり、番号のみを記載する。)、2、15、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、及び66が挙げられ、15:3、15:4、及び15:6が好ましい。
着色感光性樹脂組成物は、青色顔料を、1種含有していても2種以上含有していてもよい。
【0139】
〔顔料(E2)〕
顔料(E2)は、青色顔料(E1)以外の顔料である。
そして、顔料(E2)は、黄色顔料(E2a)及びペリレン系顔料(E2b)から選択される少なくとも一種である。
着色感光性樹脂組成物は、黄色顔料(E2a)及びペリレン系顔料(E2b)のいずれか一方のみを含有してもよく、黄色顔料(E2a)及びペリレン系顔料(E2b)の両方を含有してもよい。
【0140】
<黄色顔料(E2a)>
黄色顔料は有機物であることが好ましい。黄色顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1(以下、「C.I.ピグメントイエロー」は同様であり、番号のみを記載する。)、3、11、12、13、14、15、16、17、20、24、31、53、55、60、61、65、71、73,74、81、83、86、93、95、97、98、99、100、101、104、106、108、109、110、113、114、116、117、119、120、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、166、167、168、175、180、及び185が挙げられ、139及び150が好ましく、139がより好ましい。
着色感光性樹脂組成物は、黄色顔料を、1種含有していても2種以上含有していてもよい。
【0141】
<ペリレン系顔料(E2b)>
ペリレン系顔料は、ペリレン骨格を有する化合物である。
ペリレン系顔料の具体例としては、下記式(e1)で表されるペリレン系顔料、下記式(e2)で表されるペリレン系顔料、及び下記式(e3)で表されるペリレン系顔料が挙げられる。市販品では、BASF社製の製品名K0084、及びK0086や、ピグメントブラック21、30、31、32、33、及び34等を、ペリレン系顔料として好ましく用いることができる。
【0142】
【化29】
式(e1)中、Re1及びRe2は、それぞれ独立に炭素原子数1以上3以下のアルキレン基を表し、Re3及びRe4は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、メトキシ基、又はアセチル基を表す。
【0143】
【化30】
式(e2)中、Re5及びRe6は、それぞれ独立に、炭素原子数1以上7以下のアルキレン基を表す。
【0144】
【化31】
式(e3)中、Re7及びRe8は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上22以下のアルキル基であり、N,O、S、又はPのヘテロ原子を含んでいてもよい。Re7及びRe8がアルキル基である場合、当該アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
着色感光性樹脂組成物は、ペリレン系顔料を、1種含有していても2種以上含有していてもよい。
【0145】
上記の式(e1)で表される化合物、式(e2)で表される化合物、及び式(e3)で表される化合物は、例えば、特開昭62-1753号公報、特公昭63-26784号公報に記載の方法を用いて合成することができる。すなわち、ペリレン-3,5,9,10-テトラカルボン酸又はその二無水物とアミン類とを原料とし、水又は有機溶媒中で加熱反応を行う。そして、得られた粗製物を硫酸中で再沈殿させるか、又は、水、有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒中で再結晶させることによって目的物を得ることができる。
【0146】
着色感光性樹脂組成物中においてペリレン系顔料を良好に分散させ、幅広い波長域の光について透過率が低い硬化物を形成するためには、ペリレン系顔料の体積平均粒子径は10nm以上1000nm以下であるのが好ましく、10nm以上500nm以下がより好ましく、10nm以上200nm以下が特に好ましい。
また、ペリレン系顔料の体積粒子径が上記の範囲内である場合、算術平均粗さRaが低い、平滑な表面を有する硬化物を安定的に形成しやすい。
【0147】
このように、アルカリ可溶性樹脂(A)と光重合性モノマー(B)と光重合開始剤(C)と顔料とを含む着色感光性樹脂組成物が、顔料として、有機黒色顔料(D)としてのラクタム系顔料と、青色顔料(E1)と、黄色顔料(E2a)又はペリレン系顔料(E2b)とを含むことにより、実施例に示すように、可視光に対する遮光性が高く且つポリマー基板上でも現像残渣の発生が抑制された、パターン形状を有する遮光性の硬化物(パターン化された硬化膜)を形成することができる。
【0148】
可視光に対する遮光性について、例えば、着色感光性樹脂組成物を塗布、乾燥、露光及び加熱して膜厚2μmのパターン化された硬化物を形成したときの、硬化物の波長380nm以上780nm以下の範囲における透過率の最大値は、5.0%以下であり、3.0%以下、さらには1.0%以下とすることもできる。
【0149】
なお、形成されたパターン化された硬化物は、赤外線の透過率が高くてもよい。
赤外線の透過率について、例えば、着色感光性樹脂組成物を塗布、乾燥、露光及び加熱して膜厚2μmのパターン化された硬化物を形成したときの、硬化物の波長900nm以上1500nm以下の範囲における透過率の最小値は、80%以上であり、85.0%以上、さらには88.0%以上とすることもできる。
【0150】
このように、形成されたパターン化された硬化物は、可視光(波長400nm以上700nm以下の光)に対する遮光性が極めて高く、ブラックマトリクスやブラックカラムスペーサ等のパターン化された遮光性の膜の他、赤外線透過フィルタにおける可視光遮蔽部材としても用いることができる。
【0151】
他方、顔料として、ラクタム系顔料と青色顔料(E1)と黄色顔料(E2a)又はペリレン系顔料(E2b)との全てを含まない場合は、可視光に対する遮光性が高く且つポリマー基板上での現像残渣の発生が抑制されたパターン化された硬化膜を形成することはできない。
【0152】
なお、着色感光性樹脂組成物は、有機黒色顔料(D)以外の黒色顔料、例えば、カーボンブラック、酸窒化チタン、窒化チタン、銀錫(AgSn)合金を主成分とする微粒子、銅、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、カルシウム、銀等の金属酸化物、複合酸化物、金属硫化物、金属硫酸塩又は金属炭酸塩を実質的に含まない。
ここで、着色感光性樹脂組成物が、有機黒色顔料(D)以外の黒色顔料を実質的に含まないとは、有機黒色顔料(D)以外の黒色顔料の含有量が、所望する効果が損なわれない程度の少量であることを意味する。典型的には、着色感光性樹脂組成物における有機黒色顔料(D)以外の黒色顔料の含有量は、有機黒色顔料(D)の質量に対して1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。つまり、着色感光性樹脂組成物が、有機黒色顔料(D)以外の黒色顔料を含まないのが特に好ましい。
【0153】
着色感光性樹脂組成物の調製に用いられる顔料(有機黒色顔料(D)、青色顔料(E1)、黄色顔料(E2a)、ペリレン系顔料(E2b))の形態は特に限定されない。顔料は、粉体として使用されてもよく、分散液として使用されてもよい。
分散液として、2種以上の顔料を含む分散液を用いてもよい。また、それぞれ異なる種類の顔料を含む、2種以上の分散液を用いてもよい。
【0154】
分散媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セロソルブアセテート、3-メトキシブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、2-メトキシエチルアセテート3-エトキシエチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート等の有機溶剤を用いることができる。
【0155】
顔料の分散液中での分散の安定化や、着色感光性樹脂組成物における顔料の分散性を良好とするために、分散剤を用いてもよい。
分散剤としては、ポリエチレンイミン系、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系の高分子分散剤を用いることが好ましい。
これらの中では、現像液への溶解性が良好であり、現像後の基板、現像設備、配管等への残渣の付着がより生じにくい点で、ウレタン樹脂系の分散剤が好ましい。
分散剤を用いる場合、着色感光性樹脂組成物における分散剤の含有量は、顔料の含有量に対して、例えば、5質量%以上50質量%以下であり、10質量%以上40質量%以下が好ましい。
なお、分散剤に起因する腐食性のガスが硬化物から生じる場合もある。このため、顔料が、分散剤を用いることなく分散処理されるのも好ましい態様の一例である。
【0156】
顔料の分散液の粘度は、特に制限されない。分散液の粘度は、コーンプレート型粘度計による25℃での測定値として、2mPa・s以上200mPa・s以下であるのが好ましい。
【0157】
分散液中の顔料の粒子径は、分散平均粒子径として80nm以上300nm以下が好ましい。分散平均粒子径は、レーザー回折式の粒度分布系を用いて測定することができる。
【0158】
着色感光性樹脂組成物の全固形分における、顔料の含有量(有機黒色顔料(D)、青色顔料(E1)、黄色顔料(E2a)及びペリレン系顔料(E2b)の合計質量)は、20質量%以上60質量%以下が好ましく、30質量%以上55質量%以下がより好ましく、40質量%以上50質量%以下がさらに好ましい。
【0159】
着色感光性樹脂組成物の全固形分における、有機黒色顔料(D)(ラクタム系顔料)の含有量は、5質量%以上25質量%未満が好ましく、10質量%以上20質量%以下がより好ましく、15質量%以上19質量%以下がさらに好ましい。
【0160】
着色感光性樹脂組成物において、有機黒色顔料(D)の含有量に対する、青色顔料(E1)の含有量の質量比((E1)/(D))は、例えば、1.0超であり、1.1以上1.5以下であることが好ましく、1.2以上1.4以下であることがより好ましい。
【0161】
着色感光性樹脂組成物において、有機黒色顔料(D)の含有量に対する、顔料(E2)の含有量の質量比((E2)/(D))は、例えば、0.1以上0.7以下であり、0.3以上0.6以下が好ましい。
【0162】
<有機溶剤(S)>
着色感光性樹脂組成物は、希釈のための有機溶剤(S)を含有することが好ましい。有機溶剤(S)としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等のケトン類;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n-ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。
【0163】
これらの中でも、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、上述した他のエーテル類、乳酸アルキルエステル類、上述した他のエステル類が好ましく、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、上述した他のエーテル類、上述した他のエステル類がより好ましい。これらの溶剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
有機溶剤(S)の含有量は、着色感光性樹脂組成物の固形分濃度が5質量%以上50質量%以下となる量が好ましく、10質量%以上40質量%以下となる量がより好ましい。
【0164】
<その他の成分>
着色感光性樹脂組成物は、必要に応じて、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、増感剤、硬化促進剤、充填剤、分散剤、シランカップリング剤等の密着促進剤、酸化防止剤、凝集防止剤、熱重合禁止剤、消泡剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0165】
<着色感光性樹脂組成物の調製方法>
着色感光性樹脂組成物は、上記の各成分を撹拌機で混合することにより調製される。なお、調製された着色感光性樹脂組成物が均一なものとなるよう、顔料等の含有成分を通過し得るメンブランフィルタ等を用いて濾過してもよい。
【0166】
≪パターン化された硬化物の製造方法≫
以上説明した着色感光性樹脂組成物を用いることによって、パターン化された硬化物を製造することができる。
パターン化された硬化物は典型的には、
前述の着色感光性樹脂組成物を基板上に塗布及び乾燥して塗布膜を形成する工程と、
塗布膜を、位置選択的に露光する工程と、
露光後の塗布膜を、現像する工程とを含む、方法により製造される。当該方法は、現像後の塗布膜を加熱する工程を有することが好ましい。
【0167】
以下、各工程について説明する。着色感光性樹脂組成物を基板上に塗布及び乾燥して塗布膜を形成する工程を「塗布膜形成工程」と記す。塗布膜を位置選択的に露光する工程を「露光工程」と記す。露光後の塗布膜を現像する工程を「現像工程」と記す。現像後の塗布膜を、加熱する工程を「加熱工程」と記す。
【0168】
<塗布膜形成工程>
塗布膜形成工程では、着色感光性樹脂組成物を、パターンが形成されるべき基板上に、ロールコーター、リバースコーター、バーコーター等の接触転写型塗布装置やスピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いて塗布する。
【0169】
基板の種類は特に限定されず、液晶表示装置、有機EL表示装置、有機TFTアレイや、固体撮像素子のCCD、MOS、有機CMOSにおける光電変換素子基板等の光学装置等で用いられている種々の基板を適宜用いることができる。
基板として、例えば、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni,Cu,Cr,Fe等の金属基板、SOG(Spin On Glass)、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ガラスや透明プラスチック基板、ITOや金属等の導電性基材、絶縁性基材、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコン等の半導体基板等が挙げられる。
ここで、ポリマー基板を用いた場合、従来の着色感光性樹脂組成物では、現像残渣が生じる。しかしながら、前述の着色感光性樹脂組成物によれば、ポリマー基板を用いた場合であっても、現像残渣の発生を抑制することができる。
【0170】
着色感光性樹脂組成物を塗布した後、乾燥により溶剤を除去して、塗布膜が形成される。
なお、乾燥(加熱)は、着色感光性樹脂組成物の熱硬化が過度に進行しないように、例えば100℃以下、好ましくは80℃以下といった低い温度で行われるのが好ましい。乾燥は、必要に応じて減圧雰囲気下で行われてもよい。
【0171】
<露光工程>
露光工程では、塗布膜形成工程で形成された塗布膜を、選択的に露光する。露光工程では、塗布膜に対して、i線(365nm)、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を、所望するパターンの形状に合わせて位置選択的に照射して露光を行う。位置選択的な露光は、例えば、硬化物のパターン形状に対応する形状のマスクを介して行われる。
露光には、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯等の紫外線を発する光源を用いることができる。露光量は着色感光性樹脂組成物の組成によっても異なるが、例えば10mJ/cm以上600mJ/cm以下程度が好ましい。
【0172】
<現像工程>
現像工程において、露光工程で露光された塗布膜の未露光部が、アルカリ現像液等の現像液により現像される。
現像方法は特に限定されず、浸漬法、スプレー法等を用いることができる。現像液の具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機系のものや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、4級アンモニウム塩等の水溶液が挙げられる。
前述の着色感光性樹脂組成物を用いているため、現像工程で生じる現像残渣を抑制することができる。
【0173】
<加熱工程>
加熱工程では、現像後の塗布膜を加熱(ベーク)する。これにより、現像された塗布膜を焼成して、パターン化された硬化物を形成することができる。
【0174】
ベーク温度は、150℃以上250℃以下が好ましく、200℃以上240℃以下がより好ましい。ベーク時間は、特に限定されず、十分に塗布膜の硬化が進行するまで行われる。典型的には、ベーク時間は15~60分間が好ましい。
【0175】
形成される硬化物の厚さは特に限定されない。硬化物の厚さは、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。硬化物の厚さの上限は特にないが、例えば50μm以下であってよく、20μm以下であってよい。硬化物の厚さは、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下がさらに好ましい。
【0176】
前述の着色感光性樹脂組成物を用いてこのようなパターン化された硬化物の製造方法により形成された硬化物は、ポリマー基板上での現像残渣が抑制され、また、可視光に対する透過率が低い。このため、形成された硬化物は、ブラックマトリクスやブラックカラムスペーサ等のパターン化された遮光性の膜の他、赤外線透過フィルタにおける可視光遮蔽部材ととしても用いることができる。
【実施例0177】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0178】
〔実施例1~5及び比較例1~4〕
実施例、及び比較例において、アルカリ可溶性樹脂(A)として、アルカリ可溶性のカルド樹脂である樹脂A-1を用いた。樹脂A-1は、以下の調製例1で得た樹脂である。
【0179】
(調製例1)
まず、500ml四つ口フラスコ中に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量235)235g、テトラメチルアンモニウムクロライド110mg、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール100mg、及びアクリル酸72.0gを仕込み、これに25ml/分の速度で空気を吹き込みながら90~100℃で加熱溶解した。次に、溶液が白濁した状態のまま徐々に昇温し、120℃に加熱して完全溶解させた。この際、溶液は次第に透明粘稠になったが、そのまま撹拌を継続した。この間、酸価を測定し、1.0mgKOH/g未満になるまで加熱撹拌を続けた。酸価が目標値に達するまでに12時間を要した。そして室温まで冷却し、無色透明で固体状の下記式で表されるビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレートを得た。
【化32】
【0180】
次いで、このようにして得られた上記のビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート307.0gに3-メトキシブチルアセテート600gを加えて溶解した後、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物80.5g及び臭化テトラエチルアンモニウム1gを混合し、徐々に昇温して110~115℃で4時間反応させた。酸無水物基の消失を確認した後、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸38.0gを混合し、90℃で6時間反応させ、樹脂A-1を得た。酸無水物基の消失はIRスペクトルにより確認した。
【0181】
実施例、及び比較例において、光重合性モノマー(B)として、B-1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を用いた
【0182】
実施例、及び比較例において、光重合開始剤(C)として、下記C-1を用いた。
【化33】
【0183】
実施例及び比較例において、黒色顔料として、有機黒色顔料(D)としてのD-1(下記ラクタム系顔料)、又はCB:カーボンブラックを用いた。
【化34】
【0184】
実施例及び比較例において、青色顔料(E1)として、PB15.3: C.I.ピグメントブルー15:3、又は、PB15.6: C.I.ピグメントブルー15:6を用いた。
【0185】
実施例及び比較例において、顔料(E2)として、PY139: C.I.ピグメントイエロー139、PY150: C.I.ピグメントイエロー150、又はE2b-1(下記ペリレン系顔料)を用いた
【化35】
【0186】
実施例1~5、及び比較例1~4の着色感光性樹脂組成物は、以下のようにして調製した。
表1に記載の種類及び質量部の、アルカリ可溶性樹脂(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、黒色顔料(有機黒色顔料(D)又はカーボンブラック)と、青色顔料(E1)と、顔料(E2)と、分散剤(ウレタン樹脂系分散剤)と、溶剤(S)とを用いて、固形分濃度が20質量%となるように、実施例1~5及び比較例1~4の着色感光性樹脂組成物を調製した。なお、各例の着色感光性樹脂組成物の溶剤(S)はいずれも、3-メトキシブチルアセテート20質量%とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PEGMEA)80質量%との混合溶媒である。
【0187】
得られた各実施例、及び比較例の着色感光性樹脂組成物を用いて、以下の方法に従って、現像残渣及び透過率を評価した。結果を表2に示す。
【0188】
〔現像残渣の評価〕
実施例及び比較例の着色感光性樹脂組成物を、ガラス基板上に設けられたポリイミドフィルム上にスピンコーターを用いて塗布し、80℃で120秒間加熱(乾燥)し、塗布膜を形成した。次いで、プロキシミティ露光装置(製品名:TME-150RTO、株式会社トプコン製)を使用し、露光ギャップを50μmとして、ライン幅20μmスペース幅20μmのラインアンドスペースパターンの形成されたネガ型マスクを介して、塗布膜にi線(365nm)を照射した。露光量は、100mJ/cmとした。露光後の塗布膜を、26℃の0.04質量%KOH水溶液で50秒間現像後、230℃にて30分間加熱(ベーク)することにより、膜厚2.0μmの、ラインアンドスペースパターン(パターン化された硬化物)を形成した。
形成されたパターン化された硬化物について、暗視野光学顕微鏡観察により、未露光部において、露出するポリイミドフィルムの表面での現像残渣の有無を確認した。現像残渣が無い場合を○と評価し、現像残渣が有る場合を×と評価した。結果を表1に記す。
【0189】
〔透過率の評価〕
基板を透過率測定用基板とし、マスクを介さずに全面露光したことの他は上述の〔現像残渣の評価〕と同様にして形成された膜硬化物について、波長380nm以上780nm以下の範囲における、厚さ方向の透過率を、MCPD-3000(大塚電子(株)製)を用いて測定した。波長480nm及び波長680nmの透過率を表1に記す。なお、波長380nm以上780nm以下の範囲における透過率の最大値は、波長480nm又は波長680nmにおける透過率であった。
【0190】
【表1】
【0191】
実施例1~5によれば、アルカリ可溶性樹脂(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、有機黒色顔料(D)と、有機黒色顔料(D)以外の顔料(E)とを含み、有機黒色顔料(D)がラクタム系顔料であり、顔料(E)が青色顔料(E1)及び青色顔料(E1)以外の顔料(E2)からなり、顔料(E2)が黄色顔料(E2a)又はペリレン系顔料(E2b)である着色感光性樹脂組成物は、現像残渣が生じず、且つ、可視光(特に波長:480nm、680nm)の透過率が1.0%以下であるパターン化された硬化物を与えることが分かる。中でも、顔料(E2)として、C.I.ピグメントイエロー139を含む実施例1、3、4やペリレン系顔料(E2b-1)を含む実施例2は、特に可視光の透過率が低かった。
【0192】
他方、比較例1~4によれば、有機黒色顔料(D)ではない黒色顔料を含む着色感光性樹脂組成物、青色顔料(E1)を含まない着色感光性樹脂組成物や、黄色顔料(E2a)又はペリレン系顔料(E2b)を含まない着色感光性樹脂組成物は、現像残渣が生じるか、又は、可視光の透過率が高かった。