(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003504
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】トラフ体及び、該トラフ体を用いたケーブル類の地中化方法
(51)【国際特許分類】
H02G 9/04 20060101AFI20230110BHJP
E03F 5/04 20060101ALI20230110BHJP
E03F 1/00 20060101ALI20230110BHJP
H02G 1/06 20060101ALI20230110BHJP
E03F 5/046 20060101ALN20230110BHJP
【FI】
H02G9/04
E03F5/04 A
E03F5/04 B
E03F1/00 A
E03F5/04 D
H02G1/06
E03F5/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104614
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100171619
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 顕雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】久保田 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】川上 好弘
(72)【発明者】
【氏名】富田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】武藤 亮平
(72)【発明者】
【氏名】椎名 菜摘
(72)【発明者】
【氏名】前野 耕一
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 博紀
(72)【発明者】
【氏名】貝塚 啓
【テーマコード(参考)】
2D063
5G352
5G369
【Fターム(参考)】
2D063AA13
2D063CA05
2D063CA12
2D063CA15
2D063CA22
2D063CA27
2D063CB15
5G352CG03
5G369AA05
5G369AA19
5G369BA03
5G369DB03
5G369DB05
5G369DB06
(57)【要約】
【課題】電線地中化を効果的に促進させることができる技術を提供する。
【解決手段】排水側溝としての機能と、ケーブル類を収納する機能とを備えるトラフ体10であって、底壁部12と、一対の側壁部13,14と、上壁部17とを含むトラフ本体11と、一対の側壁部13,14間に掛け渡されると共に、上面にケーブル類50が敷設されるパネル部材30と、を備え、トラフ本体11の内部空間のうち、パネル部材30よりも下方側の空間が排水路空間S1として機能し、パネル部材30よりも上方側の空間がケーブル収納空間S2として機能する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水側溝としての機能と、ケーブル類を収納する機能とを備えるトラフ体であって、
底壁部と、互いに対向する一対の側壁部と、上壁部とにより画定される内部空間を有するトラフ本体と、
前記一対の側壁部間に掛け渡されると共に、上面に前記ケーブル類が敷設されるパネル部材と、を備え、
前記トラフ本体の前記内部空間のうち、前記パネル部材よりも下方側の空間が排水路空間として機能し、前記パネル部材よりも上方側の空間がケーブル収納空間として機能する
ことを特徴とするトラフ体。
【請求項2】
前記底壁部及び、又は前記一対の側壁部に、前記排水路空間内の水を前記トラフ本体の外部に排出する排水孔が貫通形成されている
請求項1に記載のトラフ体。
【請求項3】
前記底壁部から上方に突出して形成されており、前記一対の側壁部の内面とそれぞれ対向すると共に、前記排水路空間の少なくとも一部を第1排水路と第2排水路とに区画する突出部をさらに備えており、
前記突出部が、前記ケーブル類を敷設した前記パネル部材の下面を支持する
請求項1又は2に記載のトラフ体。
【請求項4】
前記パネル部材が水を透過可能な多孔状又はメッシュ状に形成されている
請求項1から3の何れか一項に記載のトラフ体。
【請求項5】
前記パネル部材の端部を前記側壁部の内側面に係止する係止機構をさらに備える
請求項1から4の何れか一項に記載のトラフ体。
【請求項6】
前記パネル部材の上面に取り付けられると共に、前記ケーブル収納空間を強電線用の第1収納空間と、弱電線用の第2収納空間とに区画する隔壁プレートをさらに備える
請求項1から5の何れか一項に記載のトラフ体。
【請求項7】
前記上壁部が、前記トラフ本体とは別体に形成されており、前記一対の側壁部の上端部間に嵌め込み可能な蓋部材である
請求項1から6の何れか一項に記載のトラフ体。
【請求項8】
前記蓋部材には、該蓋部材の上面から下面に水を透過させる透水性の滑り止め部材が設けられている
請求項7に記載のトラフ体。
【請求項9】
前記トラフ本体が合成樹脂製である
請求項1から8の何れか一項に記載のトラフ体。
【請求項10】
請求項1から9の何れか一項に記載のトラフ体を用いたケーブル類の地中化方法であって、
前記トラフ本体を道路の側端に開削した溝内に配置して埋設する工程と、
前記トラフ本体の内部に前記パネル部材を取り付ける工程と、
前記トラフ本体内の前記パネル部材よりも上方側の空間に前記ケーブル類を通線させて前記パネル部材の上面に敷設する工程と、を行う
ことを特徴とするケーブル類の地中化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トラフ体及び、該トラフ体を用いたケーブル類の地中化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、市街地の景観向上や災害時の安全性確保等の目的から、送電ケーブル、通信ケーブル、光ファイバケーブル等の各種ケーブル類を電線共同溝に収納して地中に埋設することにより、道路を無電柱化する電線地中化が進められている。このような電線共同溝には、プレキャストコンクリート製や合成樹脂製の構造体が用いられている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-150460号公報
【特許文献2】特開2011-061997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電線共同溝は、歩道の下部に埋設されるのが一般的である。このため、例えば、歩道幅員が短い道路や歩道が存在しない狭隘道路では、電線共同溝を埋設するスペースを十分に確保することができず、電線地中化が難しいといった課題がある。また、電線共同溝は工費が嵩む他、電線共同溝を道路に設置する場合には、通行止めを伴う工事やメンテンナンスが必要になるといった課題もある。
【0005】
一方、道路の側端には、雨水等の排水を目的とした排水側溝が設置されている。このような排水側溝を電線共同溝として兼用することができれば、歩道幅員が短い道路や狭隘道路においても、電線地中化をより効果的に促進できることが期待される。
【0006】
また、近年の電気自動車等の需要増加から、走行中の車両に電力を供給する走行中給電システムの設置が望まれている。排水側溝を電線共同溝として兼用することができれば、走行中給電システムに送電を効果的に行える等、道路に付加機能を持たせることが可能となり、電気自動車の普及や技術進展に貢献できることが期待される。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、排水性を担保しつつ、電線地中化を効果的に促進させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のトラフ体は、排水側溝としての機能と、ケーブル類を収納する機能とを備えるトラフ体であって、底壁部と、互いに対向する一対の側壁部と、上壁部とにより画定される内部空間を有するトラフ本体と、前記一対の側壁部間に掛け渡されると共に、上面に前記ケーブル類が敷設されるパネル部材と、を備え、前記トラフ本体の前記内部空間のうち、前記パネル部材よりも下方側の空間が排水路空間として機能し、前記パネル部材よりも上方側の空間がケーブル収納空間として機能することを特徴とする。
【0009】
また、前記底壁部及び、又は前記一対の側壁部に、前記排水路空間内の水を前記トラフ本体の外部に排出する排水孔が貫通形成されていることが好ましい。
【0010】
また、前記底壁部から上方に突出して形成されており、前記一対の側壁部の内面とそれぞれ対向すると共に、前記排水路空間の少なくとも一部を第1排水路と第2排水路とに区画する突出部をさらに備えており、前記突出部が、前記ケーブル類を敷設した前記パネル部材の下面を支持することが好ましい。
【0011】
また、前記パネル部材が水を透過可能な多孔状又はメッシュ状に形成されていることが好ましい。
【0012】
また、前記パネル部材の端部を前記側壁部の内側面に係止する係止機構をさらに備えることが好ましい。
【0013】
また、前記パネル部材の上面に取り付けられると共に、前記ケーブル収納空間を強電線用の第1収納空間と、弱電線用の第2収納空間とに区画する隔壁プレートをさらに備えることが好ましい。
【0014】
また、前記上壁部が、前記トラフ本体とは別体に形成されており、前記一対の側壁部の上端部間に嵌め込み可能な蓋部材であることが好ましい。
【0015】
また、前記蓋部材には、該蓋部材の上面から下面に水を透過させる透水性の滑り止め部材が設けられていることが好ましい。
【0016】
また、前記トラフ本体が合成樹脂製であることが好ましい。
【0017】
本開示の方法は、前記トラフ体を用いたケーブル類の地中化方法であって、前記トラフ本体を道路の側端に開削した溝内に配置して埋設する工程と、前記トラフ本体の内部に前記パネル部材を取り付ける工程と、前記トラフ本体内の前記パネル部材よりも上方側の空間に前記ケーブル類を通線させて前記パネル部材の上面に敷設する工程と、を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本開示の技術によれば、電線地中化を効果的に促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係るトラフ体を示す模式的な分解斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るトラフ体の湾曲した他の例を示す模式的な斜視図である。
【
図3】本実施形態に係るトラフ体の他の例を示す模式的な斜視図である。
【
図4】本実施形態に係るトラフ体を複数連結した連結構造体を示す模式的な斜視図である。
【
図5】本実施形態に係るトラフ体を示す模式的な断面図である。
【
図6】本実施形態に係るトラフ体を用いたケーブル類の地中化方法の第1工程を説明する模式図である。
【
図7】本実施形態に係るトラフ体を用いたケーブル類の地中化方法の第2工程を説明する模式図である。
【
図8】本実施形態に係るトラフ体を用いたケーブル類の地中化方法の第3工程を説明する模式図である。
【
図9】本実施形態に係るトラフ体を用いたケーブル類の地中化方法の第4工程を説明する模式図である。
【
図10】他の実施形態に係るトラフ体を示す模式的な斜視図である。
【
図11】他の実施形態に係るトラフ体の突出部を、トラフ本体の一部を切り欠いて示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に基づいて、本実施形態に係るトラフ体及び、該トラフ体を用いたケーブル類の地中化方法について説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0021】
[トラフ体]
図1は、本実施形態に係るトラフ体10を示す模式的な分解斜視図である。本実施形態において、トラフ体10は、ケーブル類を収容可能な少なくとも底壁部と側壁部とを有する容器であって、道路の側端に埋設される排水側溝としての機能も備えている。なお、以下では、説明の便宜上、道路の縦断方向を長手方向、道路の幅員方向を幅方向と定義する。
【0022】
図1に示すように、トラフ体10は、排水路及びケーブル収納空間として機能するトラフ本体11と、トラフ本体11を閉塞するトラフ蓋20と、ケーブル類を敷設するパネル30とを備えている。
【0023】
トラフ本体11及び、トラフ蓋20は、好ましくは合成樹脂製であって、プレス成型や射出成型などによって成型される。ここで、トラフ本体11及び、トラフ蓋20は、プレキャストコンクリート製であってもよいが、これらを合成樹脂製とすることで、
図1に示すような直線形状、
図2に示すような湾曲形状、或いは、上面視でY字状やT字状をなす分岐形状等、道路形状に応じた様々なバリエーションに容易に対応できるようになる。また、合成樹脂製とすることで、軽量化による施工性の向上も図られるようになる。
【0024】
なお、本開示は、トラフ体10をプレキャストコンクリート製とすることを排除するものではない。トラフ体10を合成樹脂製又はプレキャストコンクリート製の何れにするかは、設置する道路の周辺環境や地盤状態、収納するケーブル類の本数や種類等、各種条件に応じて適宜に選択すればよい。
【0025】
図1に示すトラフ本体11は、上方が開放された断面略U字状に形成されており、底壁部12と、一対の第1及び第2側壁部13,14とを有する。第1及び第2側壁部13,14は、幅方向に所定間隔をおいて対向しており、底壁部12の幅方向端部からそれぞれ上方に向けて立設されている。なお、以下の説明では、各側壁部13,14が対向する側を内側、これとは反対側を外側という。
【0026】
各側壁部13,14の上端部には、側壁部13,14の内側上角部を切り欠くことにより形成した第1及び第2段差部15,16がそれぞれ設けられている。各段差部15,16は、側壁部13,14の上端に、トラフ本体11の長手方向の全長に亘って設けられている。各段差部15,16にトラフ蓋20の幅方向端部を嵌め込んで着座させることにより、トラフ本体11の上部開口が閉塞できるようになっている。
【0027】
トラフ本体11の長手方向の両端部には、雄型嵌合部11A及び、雌型嵌合部11Bがそれぞれ設けられている。雄型嵌合部11Aは、トラフ本体11から外側に突出する凸状に形成されており、雌型嵌合部11Bは、トラフ本体11の内側に開放する凹溝で形成されている。雄型嵌合部11Aを隣接する他のトラフ本体の雌型嵌合部11Bに嵌め込むことにより、長手方向に隣り合うトラフ本体11同士を連結できるようになっている。なお、トラフ本体11同士を連結する構造は、図示例の雄雌嵌合構造に限定されず、他の連結構造を適用することも可能である。
【0028】
ここで、トラフ体10を長手方向に複数連結する連結構造体は、
図1に示すトラフ蓋20を有するトラフ体10のみならず、
図3に示すようなトラフ蓋を有しないトラフ体10’も併用して構築される。
図3に示すトラフ体10’は、トラフ本体11’の底壁部12、側壁部13,14及び、上壁部17が一体に形成された断面矩形状をなしており、上壁部17以外の構造についてはトラフ体10と略同様に構成されている。連結構造体を構築する際は、
図4に示すように、長手方向に連続して連結した複数のトラフ体10’に対して1個のトラフ体10を所定間隔おきに配置する。トラフ体10を配置する間隔は、例えば15~20m等、トラフ本体11の上部開口からケーブル類の通線や内部の掃除を行える範囲で設定すればよい。
【0029】
図1に示すように、トラフ蓋20は、略矩形板状に形成されており、その上面には透水性を有する滑り止め部材21が設けられている。
【0030】
具体的には、
図5に示すように、滑り止め部材21は、トラフ蓋20の上面から所定の深さで窪む凹部22に、骨材やゴムチップ、合成樹脂チップなどを充填することにより構成されている。また、トラフ蓋20には、凹部22の底部とトラフ蓋20の下面とを貫通する複数の貫通孔23が設けられており、道路側からトラフ蓋20の上面に流れ込む雨水が、透水性の滑り止め部材21を透過して貫通孔23を通過することにより、トラフ本体11の内部に落下するようになっている。
【0031】
このように、トラフ蓋20の上面に透水性の滑り止め部材21を設けることで、雨水等をトラフ本体11内に確実に集水しつつ、トラフ蓋20の上面を歩行する歩行者や走行する自転車の安全性を効果的に確保することが可能になる。なお、貫通孔23は必須ではなく、透水性を有する滑り止め部材21をトラフ蓋20の上面から下面の全長に亘って設けてもよい。また、トラフ蓋20の構成は、図示例の透水構造に限定されず、格子状のグレーチング等、雨水を下方へ落下させることが可能な他の構造を適用することができる。また、滑り止め部材21や貫通孔23は、トラフ蓋20のみならず、
図3に示すトラフ体10’の上壁部17に設けることもできる。また、滑り止め部材21は、ゴムシート等に水を通過させる複数の貫通孔を鉛直方向に穿設することにより構成してもよい。
【0032】
図5に示すように、トラフ本体11内の底壁部12側には、二本の排水路C1,C2が区画されている。具体的には、底壁部12には、幅方向の略中間位置から上方に所定の高さで突出する突出部18が設けられている。本実施形態において、突出部18の高さは、好ましくは、側壁部13,14の約半分の高さで設定されている。突出部18の高さをどの程度とするかは、排水路空間を広く確保する場合は側壁部13,14の約半分の高さよりも高く設定すればよく、ケーブル収納空間を広く確保する場合は側壁部13,14の約半分の高さよりも低く設定すればよい。
【0033】
突出部18は、底壁部12の上面を長手方向に延びており、第1側壁部13の内面と対向する第1側板部18Aと、第2側壁部14の内面と対向する第2側板部18Bと、これら側板部18A,18Bの上端を繋ぐ上板部18Cとを備えている。第1排水路C1は、第1側壁部13の内面と底壁部12の上面と第1側板部18Aの内面とにより区画されており、第2排水路C2は、第2側壁部14の内面と底壁部12の上面と第2側板部18Bの内面とにより区画されている。なお、突出部18の個数は一個に限定されず、突出部18を二個以上とし、排水路を三個以上区画するようにしてもよい。また、突出部18を省略することにより、排水路を一本としてもよい。
【0034】
第1側壁部13、底壁部12及び、第2側壁部14の周囲には、砕石CSが敷き詰められている。また、第1側板部18Aと第2側板部18Bとは離間しており、これらの間にも砕石CSが敷き詰められている。
【0035】
第1側壁部13、底壁部12、第1側板部18Aの第1排水路C1に臨む部分、及び、第2側壁部14、底壁部12、第2側板部18Bの第2排水路C2に臨む部分には、複数の排水孔19が設けられている。この排水孔19は、底壁部12、側壁部13,14及び、側板部18A,18Bをそれぞれ貫通しており、排水路C1,C2内に集められた水が各排水孔19から周囲の砕石CSに浸透することにより、外部への排水を促進できるようになっている。外部への排水が促進されることで、雨水がトラフ本体11から道路に溢れ出ることを効果的に抑止することが可能になる。なお、各排水路C1,C2の勾配を用いて排水する場合は、排水孔19を省略して構成してもよい。
【0036】
パネル30は、例えば、合成樹脂等で矩形板状に形成されており、好ましくは、可撓性を有する。パネル30は、好ましくは、水を透過する多孔状又はメッシュ状に形成されている。パネル30は、その両端を第1側壁部13及び、第2側壁部14に設けられたフック等の係止機構40にそれぞれ係合させることにより、トラフ本体11に着脱可能に取り付けられるようになっている。
【0037】
係止機構40は、第1及び第2側壁部13,14の内側面のうち、段差部15,16よりも下方且つ、突出部18よりも上方の位置に設けられている。パネル30の両端を係止機構40にそれぞれ係止させ、パネル30を各側壁部13,14間に幅方向へ掛け渡すことにより、トラフ本体11の内部空間がパネル30よりも下方側の排水路空間S1と、パネル30よりも上方側のケーブル収納空間S2とに分けられるようになっている。
【0038】
パネル30は、トラフ体10,10’を複数連結して構築される連結構造体(
図4参照)に対して、複数枚のパネル30を長手方向に所定間隔おきに配置してもよく、或いは、複数枚のパネル30が長手方向の全長に亘って連続するように取り付けてもよい。パネル30を所定間隔毎に配置する場合は、パネル30の上面に敷設されるケーブル類50を大きく撓ませることなく支持できる距離(例えば、1~2m)を基準に配置すればよい。
【0039】
ケーブル類50は、例えば、送電ケーブル51、通信ケーブル52、光ファイバケーブル53等であって、パネル30の上面に敷設することによりトラフ本体11内に収納される。パネル30の上面にケーブル類50を敷設すると、パネル30の下面が突出部18の上板部18Cに着座することにより、ケーブル類50を安定的に支持できるようになっている。なお、パネル30は突出部18に着座させることが好ましいが、敷設するケーブル類50の本数が少ない場合等は、パネル30を着座させなくてもよい。
【0040】
ここで、トラフ本体11内に強電線(電源系)の送電ケーブル51と、弱電線(通信系)の通信ケーブル52や光ファイバケーブル53とを纏めて収納する場合は、強電線の磁界等による弱電線への影響を遮断する必要がある。本実施形態では、隔壁プレート60によって、ケーブル収納空間S2を強電線用の収納空間(図中右側)と、弱電線用の収納空間(図中左側)とに区画することで、これら強電線と弱電線とを離隔できるようになっている。
【0041】
隔壁プレート60は、例えば、合成樹脂製又は金属製の板材であって、パネル30の上面、或いは、突出部18の上板部18Cの上面に固定したスタンド61に嵌め込むことにより容易に取り付けられる。スタンド61には、隔壁プレート60を嵌め込む複数本の凹溝62が並設されており、強電線や弱電線の本数に応じて強電線用の収納空間と、弱電線用の収納空間とを段階的に調整できるようになっている。
【0042】
なお、隔壁プレート60は必須の構成ではなく、トラフ本体11内に強電線又は弱電線の何れか一方のみを収納する場合は省略すればよい。また、トラフ本体11内の被収納物は、ケーブル類50に限定されず、水道管やガス管等の配管類を収納することも可能である。
【0043】
[ケーブル類の地中化方法]
次に、
図6~9に基づいて、本実施形態に係るトラフ体10,10’を用いたケーブル類50の地中化方法を説明する。なお、以下では、道路Rの側端(例えば、路肩や路側帯)にトラフ体10,10’を新設する場合を一例に説明する。
【0044】
図6に示す第1工程では、道路Rの側端にトラフ体10よりも大きい溝Gを長手方向に開削すると共に、溝Gの底部側に砕石CSを敷き詰める。なお、既設の側溝ブロックを本実施形態のトラフ体10に置き換える場合は、既設の側溝ブロックの撤去から始めればよい。既設の側溝ブロックがトラフ体10よりも大きい場合は、溝Gの開削を省略すればよい。
【0045】
図7に示す第2工程では、溝G内にトラフ本体11を配置すると共に、トラフ本体11の上端が道路Rの路面と略一致するように、トラフ本体11を地中に埋設する。なお、
図7では図示を省略するが、トラフ蓋20を有しないトラフ体10’のトラフ本体11’(
図3参照)も長手方向に連結しながら溝G内に配置して埋設する。
【0046】
図8に示す第3工程では、トラフ本体11内にパネル30を取り付けると共に、長手方向に連結されたトラフ本体11,11’内にケーブル類50を通線し、通線したケーブル類50をパネル30の上面に敷設する。この際、ケーブル類50は、パネル30の上面に支持されながら通線されるため、ケーブル類50が排水路C1,C2等の周辺構造物に引っ掛かることを効果的に防止することができる。なお、隔壁プレート60の取り付けは、ケーブル類50が強電線及び弱電線の両方を含む場合に行えばよい。
【0047】
図9に示す第4工程では、トラフ本体11の上部開口にトラフ蓋20を嵌め込み、トラフ本体11の上部開口を閉塞することにより、ケーブル類50の地中化を完了する。このようにして地中化されたケーブル類50は、トラフ本体11内の排水路空間S1よりも上方に収納されている。このため、例えば、ケーブル類50に漏電等の不具合が生じ、交換や補修等が必要になった際は、パネル30よりも下方の排水路C1,C2を清掃することなく、トラフ蓋20を取り外すのみで、ケーブル類50のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0048】
なお、
図6~9に示す一連の工程では、排水側溝としてのトラフ体10,10’の埋設からケーブル類50の地中化までを連続して行ったが、ケーブル類50の地中化を当面は必要としない場合も想定される。このような場合は、
図7に示す第2工程でトラフ蓋20をトラフ本体11の上部開口に嵌め込み、ケーブル類50の地中化が必要となるまでの期間は、トラフ体10,10’を排水側溝としてのみ機能させればよい。ケーブル類50の地中化が必要となった際は、トラフ蓋20を取り外し、
図8に示す工程から電線地中化を開始すればよい。
【0049】
以上詳述した本実施形態のトラフ体10によれば、トラフ本体11の側壁部13,14間にパネル30を取り付けて幅方向に掛け渡すことにより、トラフ本体11の内部空間がパネル30よりも下方側の排水路空間S1と、パネル30よりも上方側のケーブル収納空間S2とに分けられるように構成されている。
【0050】
このようなトラフ体10を、路肩等の道路の側端に埋設すれば、トラフ体10を排水側溝として機能させつつ、電線共同溝としても兼用することができ、歩道幅員が短い道路や歩道が存在しない狭隘道路においても、無電柱化を効果的に促進することが可能になる。また、トラフ体10は道路の側端に沿って長手方向に延設されるので、走行中給電システムに送電を効率的に行える等、道路に様々な付加機能を持たせることも可能になる。
【0051】
また、トラフ体10を排水側溝及び、電線共同溝として兼用できるので、新設の道路においては、排水側溝及び、電線共同溝を一回の工事で一括して行うことができ、工費の削減や工期の短縮を図ることができる。また、トラフ体10は路肩等の道路の側端に埋設されるため、大規模な通行止めなどを伴うことなく、工事を行うことが可能になる。
【0052】
また、トラフ体10は、歩道よりも車道側の路肩等に埋設されるため、例えば、トラフ体10を設置した後、隣接する歩道の切り下げ工事が必要になった場合においても、既設のトラフ体10を残したまま歩道の切り下げ工事を進めることができる。
【0053】
また、トラフ本体11の内部が下方側の排水路空間S1と上方側のケーブル収納空間S2とに分けられているので、ケーブル類50のメンテナンス時には、トラフ蓋20を取り外すのみで、排水路C1,C2を清掃することなくケーブル類50に容易にアクセスすることができ、排水路R1,R2の清掃時には、ケーブル類50を退かすことなく清掃具を挿し入れることで、排水路C1,C2を容易に掃除することができる。
【0054】
[その他]
なお、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0055】
例えば、
図10に示すように、トラフ体10(トラフ体10’)を歩車道境界ブロックとして機能するL型側溝として構成することもできる。具体的には、トラフ本体11の側壁部13,14の何れか一方(図示例では側壁部14)に、該側壁部14から上方に突出する縁石体60を設ければよい。縁石体60は、トラフ本体11と一体に形成してもよく、或いは、トラフ本体11に着脱可能な別体で形成してもよい。このように、トラフ体10をL型側溝とすることにより、縁石と一体に工事を行うことが可能になる。
【0056】
縁石体60は、歩車道境界部用(
図10(A)参照)、すりつけ部用(
図10(B)参照)、乗り入れ部用(
図10(C)参照)の複数種類とすることが好ましい。縁石体60を複数種類にすれば、歩道の切り下げにも効果的に対応することが可能になる。
【0057】
また、上記実施形態において、トラフ体10,10’は、路肩等、道路の側端に埋設される排水側溝を一例に説明したが、道路の側端以外、或いは、道路以外の場所に埋設される排水溝にも広く適用することが可能である。
【0058】
また、上記実施形態において、突出部18は、トラフ本体11の底壁部12に一体に形成されるものとして説明したが、
図11に示すように、突出部18をトラフ本体11に着脱可能な別体構造として設けてもよい。この場合、突出部18は、金物又は樹脂製の何れであってもよい。また、突出部18は、
図11中に破線で示すように、トラフ本体11の長手方向の全長に亘って設けてもよく、或は、
図11中に実線で示すように、複数の突出部18をトラフ本体11の長手方向に所定間隔をおいて間欠的に配置してもよい。突出部18を間欠的に設ければ、第1排水路C1と第2排水路C2とを突出部18が間欠する箇所で合流させることができる。
【符号の説明】
【0059】
10…トラフ体,11…トラフ本体,12…底壁部,13…第1側壁部,14…第2側壁部,15…第1段差部,16…第2段差部,17…上壁部,18…突出部,19…排水孔,20…トラフ蓋,21…滑り止め部材,30…パネル,40…係止機構,50…ケーブル類,60…隔壁プレート,S1…排水路空間,S2…ケーブル収納空間,C1…第1排水路,C2…第2排水路