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特開2023-35137FGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035137
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】FGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20230306BHJP
   A61K 36/489 20060101ALI20230306BHJP
   A61K 36/258 20060101ALI20230306BHJP
   A61K 36/758 20060101ALI20230306BHJP
   A61K 36/59 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20230306BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230306BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20230306BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230306BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/489
A61K36/258
A61K36/758
A61K36/59
A61P17/14
A61P43/00 111
A61Q7/00
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141765
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田邊 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】木曽 昭典
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD48
4B018ME14
4B018MF01
4C083AA111
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC12
4C083CC37
4C083CC38
4C083CC39
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD31
4C083EE22
4C088AB12
4C088AB18
4C088AB59
4C088AB62
4C088AC02
4C088AC03
4C088AC04
4C088AC05
4C088AC11
4C088AC13
4C088CA04
4C088MA07
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA92
4C088ZC02
4C088ZC75
(57)【要約】
【課題】安全性の高い天然物由来の組成物の中からFGF-7mRNA発現促進作用、VEGFmRNA発現促進作用、IGF-1mRNA発現促進作用、HGFmRNA発現促進作用、BMP-2mRNA発現促進作用及びKAP5.1mRNA発現促進作用を有するものを見出し、それを有効成分とするFGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤を提供する。
【解決手段】FGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤に、クジン、オタネニンジン、サンショウ及びタマサキツヅラフジからなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有せしめる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クジン及びサンショウからなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有するFGF-7mRNA発現促進剤。
【請求項2】
クジン、オタネニンジン及びサンショウからなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有するVEGFmRNA発現促進剤。
【請求項3】
オタネニンジン及びサンショウからなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有するIGF-1mRNA発現促進剤。
【請求項4】
オタネニンジン及びサンショウからなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有するHGFmRNA発現促進剤。
【請求項5】
サンショウからの抽出物を有効成分として含有するBMP-2mRNA発現促進剤。
【請求項6】
クジン、オタネニンジン、サンショウ及びタマサキツヅラフジからなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有するKAP5.1mRNA発現促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は、成長期、退行期、休止期からなる周期的なヘアサイクル(毛周期)に従って成長及び脱落を繰り返している。このヘアサイクルのうち、休止期から成長期へかけての新たな毛包が形成されるステージが、発毛に最も重要であると考えられている。そして、このステージにおける毛包上皮系細胞の増殖・分化に重要な役割を果たしているのが、毛乳頭細胞であると考えられている。毛乳頭細胞は、毛根近傍にある外毛根鞘細胞とマトリックス細胞とからなる毛包上皮系細胞の内側にあって、基底膜に包まれている毛根の根幹部分に位置する細胞であり、毛包上皮系細胞へ働きかけてその増殖を促すなど、毛髪への分化に重要な役割を担っている(非特許文献1参照)。
【0003】
線維芽細胞増殖因子-7(FGF-7)は、線維芽細胞増殖因子(FGF)のファミリーのうちの1つであり、KGF(keratinocyte growth factor)とも呼ばれる。FGFには、20種類以上のファミリーが存在することが知られている。FGFは、中胚葉と神経外胚葉から発生した幅広い細胞の増殖を促進する因子であり、例えば、線維芽細胞、血管内皮細胞、筋芽細胞、軟骨細胞、グリア細胞、骨芽細胞などの分裂・成長を誘導する。FGFは、血管新生作用、コラーゲンやフィブロネクチンの合成抑制作用などを有することや、ヘパリンに対して強い親和性を有することが知られている。
【0004】
また、毛包の毛乳頭細胞において、FGF-7が発現していることが示され(例えば、非特許文献2参照)、FGF-7が毛根の活発化を介した育毛効果を有することが明らかになった。また、ノックアウトマウスを用いた研究により、FGF-7は毛の伸びる方向に関与することが示唆されている。これまでに、FGF-7産生の促進作用を有する植物エキスとして、クララなどが知られている(非特許文献3参照)。
【0005】
血管内皮増殖因子(VEGF)は、分子量34~46kDaの糖蛋白質であり、血管内皮細胞に特異的な増殖因子として脳下垂体の濾胞細胞の培養液から発見され、血管透過性因子(VPF)と同一物質であることがわかった。VEGFは、下垂体細胞以外に、平滑筋細胞、マクロファージ、肺胞上皮細胞、肝細胞、毛乳頭細胞などの正常細胞で産生され、また、グリオーマ(神経膠腫)、乳癌、胃癌、大腸癌などの多くの腫瘍細胞からも産生されることが知られている。VEGFは、血管内皮細胞に働き、細胞の増殖、遊走を促進させたり、血管新生を促進させたりする作用がある。VEGFは、胎生期の心臓の形成時期に、強い発現が認められることが知られている。VEGF遺伝子が欠損すると血管系の異常が起こり、胎生期に死亡することが報告されており、VEGFが個体の発達、組織形成において極めて重要な働きを持つことが示唆されている。近年では、VEGFファミリーの新しいメンバーであるVEGF-Cが、強力なリンパ管新生因子として皮膚におけるリンパ管の成長を仲介していることが報告された。
【0006】
また、毛包においては、外毛根鞘細胞及び毛乳頭細胞がVEGFを産生することが知られている(例えば、非特許文献4,5参照)。毛包においてVEGFの産生を阻害することは、ヘアサイクルの成長期の遅れと毛包サイズの矮小化に繋がることが見出され(例えば、非特許文献6参照)、毛包の発達や再生にVEGFが重要であることが示された。これまでに、VEGF産生の促進作用を有する植物エキスとして、ヒルガオ科のアサガオカラクサ属植物(特許文献1参照)、ローヤルゼリー(特許文献2参照)、L-グルタミン酸又はその塩、L-セリン、PCA(ピロリドンカルボン酸)又はその塩、モノニトログアヤコールナトリウム、クロレラ(Chlorella vulgaris)の抽出物、ユズ(Citrus junos)の果実の抽出物、ウンシュウミカン(Citrus unshiu)の果皮の抽出物、エイジツ(Rosa multiflora)の果実の抽出物、イチョウ(Ginkgo biloba)の葉の抽出物より選択されるもの(特許文献3参照)などが知られている。
【0007】
インスリン様増殖因子-1(IGF-1)は、インスリンに非常に良く似た構造及び作用を持つ分子量約7,500のペプチドホルモンである。IGF-1は、細胞の分化を促し、細胞の増殖を助けるなど、積極的に細胞を健康な状態に維持し(非特許文献7及び8参照)、老化の進行を阻止することが知られている(非特許文献9参照)。
【0008】
また、毛包の毛乳頭細胞において、IGF-1が発現していることが示され(非特許文献10参照)、IGF-1が毛根の活発化を介した育毛効果を有することが明らかになった。現在、IGF-1を有効成分とする育毛剤が既に知られている(特許文献4参照)。しかし、IGF-1は動物由来成分であって分子量が大きいために、外用塗布による経皮吸収が困難であるなどの問題がある。また、IGF-1産生促進作用を示す植物由来抽出物も見つかっているが、より優れたIGF-1産生促進作用を有するものが求められている。
【0009】
肝細胞成長因子(HGF)は、肝細胞の増殖を促進する因子として劇症肝炎患者血漿から発見された。HGFは、肝臓に限らず、各臓器由来の上皮細胞、内皮細胞、造血系細胞などの増殖を促進することが知られている。HGFの血中濃度は、肝疾患をはじめ、肺炎、白血病、がん、心筋梗塞などの様々な疾患において上昇することが報告されている。また、HGFは、臓器の障害や線維化を抑制し、再生を促進する効果が認められている。特許文献5には、HGFを肺線維症予防剤の有効成分として利用する技術が開示されている。
【0010】
また、毛包の毛乳頭細胞において、HGFが発現していることが示され(非特許文献2参照)、HGFが毛根の活発化を介した育毛効果を有することが明らかになった。これまでに、HGF産生の促進作用を有する植物エキスとして、例えば米などが知られている(特許文献6参照)。
【0011】
骨形成蛋白質(BMP)は、異所的に骨形成を誘導するタンパク質として発見されたが、その後の研究によって、細胞増殖や分化調節を介して、体軸形成やほとんど全ての器官形成に必須の役割を果たす多機能因子であることが知られるようになった。皮膚においては、BMPが体毛を形成する器官である毛包の形成に促進的に関与することが報告されている。BMPは、約20種のサブユニットの存在が報告されている。前記サブユニットは、幅広い生物種において基本的に配列が保存されており、各生物種の形態形成に関与することが示されている。前記サブユニットの中で、骨形成タンパク質-2(BMP-2)は、男性型脱毛症部位の毛乳頭細胞において、その遺伝子発現が低下していることが報告されている。そのため、この遺伝子に着目した育毛剤研究が注目されている(特許文献7参照)。
【0012】
また、毛髪に関する問題としては、抜け毛、薄毛等といった毛根・毛包の状態に関するものの他に、毛髪が硬い、柔らかい、細い、はり・こしがない、枝毛、くせ毛等といった毛髪の質(髪質)に関するもの等がある。さらに、髪質に関する問題として、日常のヘアケア、ヘアメイク、紫外線暴露等による毛髪の損傷に起因するものや、毛幹形成における問題に起因するもの等があり、髪質に関する問題には、極めて多様な要因が関与している。
【0013】
従来、毛髪の細さや、はり・こしのなさを改善するために、例えば育毛有効成分を配合した育毛剤や養毛剤等を使用することが考えられる。しかしながら、育毛剤や養毛剤等の使用では、髪が太くならず、はり・こしを与えるほどの効果は期待できないという問題があった。これらを改善するため、アルコキシシランの加水分解で生成したシラノール化合物を毛髪に浸透させ、かつ毛髪内部で重合させる方法が提案されている(特許文献8参照)。しかし、化学物質を用いて毛髪を改質するこの方法では、毛髪に自然なはり・こしを付与するという点で十分とはいえなかった。
【0014】
一方で、生化学的・分子生物学的に髪質を改善する試みもなされている。毛髪は、その表面を覆うキューティクル(毛小皮)、その内部にある毛皮質(コルテックス)及び毛髪の中心を占める毛髄質(メデュラ)から構成されている。このうち、毛髪の損傷においては、その表面を覆うキューティクルが重要な役割を担っていることが知られている(非特許文献11参照)。そのため、キューティクルを効果的に再生することができれば、毛髪の硬さ、はり・こし等の髪質の改善が可能になると考えられている。
【0015】
最近、ケラチン関連タンパク質(Keratin-associated protein;KAP)のうち、KAP5ファミリー遺伝子のmRNA発現量と毛髪のはり・こしの強さとの間に相関関係があることが明らかにされた(特許文献9参照)。また、KAP5ファミリーの一つであるKAP5.1が、成長過程にあるキューティクルに局在することも報告されている(非特許文献12参照)。このため、KAP5ファミリー、特にKAP5.1mRNAの発現を促進することができれば、キューティクルの再生、及び毛髪の硬さ、はり・こし等の髪質の改善につながると期待されている。
【0016】
従来、KAP5.1mRNAの発現を促進するものとして、ツバキ属植物エキス(特許文献10参照)、クルミ殻エキス、カキタンニン、イリス根エキス、ゲンノショウコウエキス及びコムギ胚芽エキス(特許文献11参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2003-160503号公報
【特許文献2】特開2003-192541号公報
【特許文献3】特開2005-2068号公報
【特許文献4】特公平4-60567号公報
【特許文献5】特開2006-131649号公報
【特許文献6】特開2004-99503号公報
【特許文献7】特開2005-002068号公報
【特許文献8】特開2005-320314号公報
【特許文献9】特開2006-014721号公報
【特許文献10】特開2014-080409号公報
【特許文献11】特開2008-162922号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】「Trends Genet」,第8巻,56-61(1992年)
【非特許文献2】アンチエイジングシリーズ(1)、白髪・脱毛・育毛の実際,NTS,1-18(2005年)
【非特許文献3】J.Derm.Sci.,30,43-49(2002)
【非特許文献4】J.Invest.Dermatol.,106,17-23(1996)
【非特許文献5】Arch.Dermatol.Res.,209,661-668(1998)
【非特許文献6】J.Clin.Invest.,107,409-417(2001)
【非特許文献7】J.Biol.Chem.,271,28853-28860(1996)
【非特許文献8】Dermatology,20,325-329(2002)
【非特許文献9】Am.J.Med.,115,501-502(2003)
【非特許文献10】J.Invest.Dermatol.,99,343-349(1992)
【非特許文献11】日本化粧品技術者会誌,第36巻,第3号,207-216(2002年)
【非特許文献12】Int. J. Trichology,2(2),89-95(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、安全性の高い天然物由来の組成物の中からFGF-7mRNA発現促進作用、VEGFmRNA発現促進作用、IGF-1mRNA発現促進作用、HGFmRNA発現促進作用、BMP-2mRNA発現促進作用及びKAP5.1mRNA発現促進作用を有するものを見出し、それを有効成分とするFGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このような課題を解決するために、本発明は、クジン及びサンショウからなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有するFGF-7mRNA発現促進剤を提供する。
【0021】
また、本発明は、クジン、オタネニンジン及びサンショウからなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有するVEGFmRNA発現促進剤を提供する。
【0022】
また、本発明は、オタネニンジン及びサンショウからなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有するIGF-1mRNA発現促進剤を提供する。
【0023】
また、本発明は、オタネニンジン及びサンショウからなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有するHGFmRNA発現促進剤を提供する。
【0024】
また、本発明は、サンショウからの抽出物を有効成分として含有するBMP-2mRNA発現促進剤を提供する。
【0025】
また、本発明は、クジン、オタネニンジン、サンショウ及びタマサキツヅラフジからなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有するKAP5.1mRNA発現促進剤を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、安全性の高い天然物由来の組成物の中からクジン、オタネニンジン、サンショウ及びタマサキツヅラフジからなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有し、安全性に優れたFGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態に係るFGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤は、クジン、オタネニンジン、サンショウ及びタマサキツヅラフジからなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物を有効成分として含有する。
【0028】
本実施形態における有効成分としての上記各種抽出物を得るために使用される抽出原料は、クララ(学名:Sophora flavescens Aiton)、オタネニンジン(学名:Panax ginseng C.A. Meyer)、サンショウ(Zanthoxylum piperitum De Candolle)及びタマサキツヅラフジ(学名:Stephania cephalantha)である。
【0029】
クジン(生薬名)は、日本、韓国、中国各地に分布しているマメ科クララ属に属する多年生草本であるクララ(学名:Sophora flavescens Aiton)の根部であり、これらの地域から容易に入手することができる。クジンは、従来、健胃、利尿、解熱、鎮痛薬等として使用されている。
【0030】
オタネニンジン(学名:Panax ginseng C.A. Meyer, 別名: 高麗人参, 朝鮮人参)は、中国、日本の東北地方等で栽培されているウコギ科トチバニンジン属に属する多年生草本であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るオタネニンジンの構成部位としては、例えば、葉部、茎部、花部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは根部である。
【0031】
サンショウ(Zanthoxylum piperitum De Candolle)は、ミカン科サンショウ属に属する植物であって、日本列島や朝鮮半島に分布しており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る部位としては、例えば、葉部、茎部、花部、蕾部、果実部、果皮部、果核部、地上部またはこれらの混合物が挙げられるが、好ましくは果皮部である。
【0032】
タマサキツヅラフジ(学名:Stephania cephalantha)は、ツヅラフジ科ツヅラフジ属に属するつる性の植物であって、中国南部や台湾等に自生しており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るタマサキツヅラフジの部位としては、例えば、葉部、枝部、茎部、花部、蕾部、根部、塊根部、又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは塊根部である。
【0033】
上記の抽出原料からの抽出物に含まれるFGF-7mRNA発現促進作用、VEGFmRNA発現促進作用、IGF-1mRNA発現促進作用、HGFmRNA発現促進作用、BMP-2mRNA発現促進作用及びKAP5.1mRNA発現促進作用を有する物質の詳細は不明であるが、植物の抽出等に一般に用いられている抽出方法によって、上記抽出原料からFGF-7mRNA発現促進作用、VEGFmRNA発現促進作用、IGF-1mRNA発現促進作用、HGFmRNA発現促進作用、BMP-2mRNA発現促進作用及びKAP5.1mRNA発現促進作用を有する抽出物を得ることができる。なお、抽出物には、抽出処理によって抽出原料から得られる抽出液、抽出液の希釈液もしくは濃縮液、抽出液を乾燥して得られる乾燥物、またはこれらの粗精製物もしくは精製物のいずれもが含まれる。
【0034】
上記抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまま、または粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、植物の極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0035】
抽出に用いられる溶媒としては、水、親水性有機溶媒、またはこれらの混合物等が挙げられ、室温または溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。各抽出原料に含まれるFGF-7mRNA発現促進作用、VEGFmRNA発現促進作用、IGF-1mRNA発現促進作用、HGFmRNA発現促進作用、BMP-2mRNA発現促進作用及びKAP5.1mRNA発現促進作用を有する成分は、極性溶媒を抽出溶媒とする抽出処理によって容易に抽出することができる。
【0036】
抽出溶媒として使用し得る水としては、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。従って、本発明において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0037】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコール等が挙げられる。
【0038】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には水10容量部に対して低級脂肪族アルコール1~90容量部を混合することが好ましい。水と脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族ケトン1~40容量部を混合することが好ましい。水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して多価アルコール1~90容量部を混合することが好ましい。
【0039】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特殊な抽出方法を採用する必要はなく、室温または還流加熱下で抽出することができる。例えば、抽出溶媒を満たした処理槽に各抽出原料を投入し、必要に応じて撹拌しながら、30分~4時間静置して可溶性成分を溶出した後、濾過して固形物を除去することにより抽出物を得ることができる。得られた抽出液から抽出溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥することにより乾燥物が得られる。抽出条件は、抽出溶媒として水を用いた場合には50~95℃で1~4時間程度である。また、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いた場合には、40~80℃で30分~4時間程度である。
【0040】
以上のようにして得られた抽出液は、該抽出液の希釈液もしくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、またはこれらの粗精製物もしくは精製物を得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
【0041】
なお、得られた抽出液はそのままでもFGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤として使用することができるが、濃縮液または乾燥物としたもののほうが好ましい。乾燥物を得るにあたっては、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリン等のキャリアーを添加してもよい。
【0042】
また、各抽出原料は特有の匂いと味を有しているため、その生活活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、化粧料に添加する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。精製は、例えば活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等によって行うことができる。
【0043】
以上のようにして得られるクジン、オタネニンジン、サンショウ及びタマサキツヅラフジからなる群より選ばれる1種又は2種以上の植物からの抽出物は、FGF-7mRNA発現促進作用、VEGFmRNA発現促進作用、IGF-1mRNA発現促進作用、HGFmRNA発現促進作用、BMP-2mRNA発現促進作用及びKAP5.1mRNA発現促進作用を有しているため、その作用を利用してFGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤の有効成分として用いられ得る。
【0044】
なお、本実施形態に係るFGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤においては、クジンの抽出物、オタネニンジンの抽出物、サンショウの抽出物及びタマサキツヅラフジの抽出物のうちのいずれか1種を上記有効成分として用いてもよいし、それらのうちの2種以上を混合して上記有効成分として用いてもよい。クジンの抽出物、オタネニンジンの抽出物、サンショウの抽出物及びタマサキツヅラフジの抽出物のうちの2種以上を混合して上記有効成分として用いる場合、その配合比は、それらの作用の程度に応じて適宜決定されればよい。
【0045】
本実施形態に係るFGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤は、クジンの抽出物、オタネニンジンの抽出物、サンショウの抽出物及びタマサキツヅラフジの抽出物から選ばれる1種または2種以上を製剤化したものであってもよい。
【0046】
上記抽出物は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、安定剤、矯臭剤等を用いることができる。上記抽出物を製剤化したFGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤の形態としては、例えば、軟膏剤、外用液剤等が挙げられる。
【0047】
本実施形態におけるFGF-7mRNA発現促進剤は、クジンの抽出物及びサンショウの抽出物が有するFGF-7mRNA発現促進作用を通じて、FGF-7mRNAの発現を促進することができる。これにより、例えば、線維芽細胞、血管内皮細胞、筋芽細胞、軟骨細胞、グリア細胞、骨芽細胞などの分裂・成長を誘導したり、毛根の活性化を介して育毛を促進したり、脱毛症などを改善乃至治療したりすることができる。そのため、クジンの抽出物及びサンショウの抽出物は、育毛化粧料等の有効成分として用いることもできる。ただし、本実施形態におけるFGF-7mRNA発現促進剤は、これらの用途以外にもFGF-7mRNA発現促進作用を発揮する意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0048】
本実施形態におけるVEGFmRNA発現促進剤は、クジンの抽出物、ニンジンの抽出物及びサンショウの抽出物が有するVEGFmRNA発現促進作用を通じて、VEGFmRNAの発現を促進することができる。これにより、例えば、血管内皮細胞の増殖や遊走、血管新生、血液凝固、血圧調節、皮膚におけるリンパ管の成長などを促進したり、脱毛症、冠動脈疾患、閉塞性末梢動脈硬化症、軟骨損傷、血管形成不全、虚血性脚部疾患などを改善乃至治療したりすることができる。そのため、クジンの抽出物、ニンジンの抽出物及びサンショウの抽出物は、頭皮化粧料等の有効成分として用いることもできる。ただし、本実施形態におけるVEGFmRNA発現促進剤は、これらの用途以外にもVEGFmRNA発現促進作用を発揮する意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0049】
本実施形態におけるIGF-1mRNA発現促進剤は、ニンジンの抽出物及びサンショウの抽出物が有するIGF-1mRNA発現促進作用を通じて、IGF-1mRNAの発現を促進することができる。これにより、例えば、細胞全般の分化・増殖・成長、老化の進行抑制、血糖降下、生殖機能の調節、軟骨への硫酸イオンの取込みなどを促進したり、脱毛症、皮膚老化、糖尿病、下垂体機能低下症、下垂体性小人症など改善乃至治療したりすることができる。そのため、ニンジンの抽出物及びサンショウの抽出物は、養毛化粧料等の有効成分として用いることもできる。ただし、本実施形態におけるIGF-1mRNA発現促進剤は、これらの用途以外にもIGF-1mRNA発現促進作用を発揮する意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0050】
本実施形態におけるHGFmRNA発現促進剤は、ニンジンの抽出物及びサンショウの抽出物が有するHGFmRNA発現促進作用を通じて、HGFmRNAの発現を促進することができる。これにより、例えば、各臓器由来の上皮細胞、内皮細胞、造血系細胞などの増殖を促進したり、臓器の障害や線維化を抑制し、再生を促進したり、脱毛症、線維症、肝臓疾患、閉塞性動脈硬化症などを改善乃至治療したりすることができる。そのため、ニンジンの抽出物及びサンショウの抽出物は、育毛化粧料等の有効成分として用いることもできる。ただし、本実施形態におけるHGFmRNA発現促進剤は、これらの用途以外にもHGFmRNA発現促進作用を発揮する意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0051】
本実施形態におけるBMP-2mRNA発現促進剤は、サンショウの抽出物が有するBMP-2mRNA発現促進作用を通じて、BMP-2mRNAの発現を促進することができる。これにより、例えば、脱毛症、皮膚老化、骨形成の誘導、細胞全般の分化や増殖の調節、体軸形成やほとんど全ての器官形成、神経細胞の分化や機能維持などに好適に利用することができる。そのため、サンショウの抽出物は、養毛化粧料等の有効成分として用いることもできる。ただし、本実施形態におけるBMP-2mRNA発現促進剤は、これらの用途以外にもBMP-2mRNA発現促進作用を発揮する意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0052】
本実施形態におけるKAP5.1mRNA発現促進剤は、クジンの抽出物、オタネニンジンの抽出物、サンショウの抽出物及びタマサキツヅラフジの抽出物が有するKAP5.1mRNA発現促進作用を通じて、KAP5.1mRNAの発現を促進することができる。これにより、キューティクルの再生、及び毛髪の硬さ、はり・こし等の髪質を改善することができる。そのため、クジンの抽出物、オタネニンジンの抽出物、サンショウの抽出物及びタマサキツヅラフジの抽出物は、髪質改善剤等の有効成分として用いることもできる。ただし、本実施形態におけるKAP5.1mRNA発現促進剤は、これらの用途以外にもKAP5.1mRNA発現促進作用を発揮する意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0053】
本実施形態に係るFGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤の患者に対する投与方法としては、皮下組織内投与、筋肉内投与、静脈内投与、経口投与、経皮投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防・治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。また、本実施形態に係るFGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
【0054】
また、本実施形態に係るFGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤は、優れたFGF-7mRNA発現促進作用、VEGFmRNA発現促進作用、IGF-1mRNA発現促進作用、HGFmRNA発現促進作用、BMP-2mRNA発現促進作用及びKAP5.1mRNA発現促進作用を有するため、皮膚化粧料、頭皮化粧料、頭髪化粧料等の化粧料や、飲食品等に配合するのに好適である。
【0055】
FGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤を配合可能な化粧料としては、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ファンデーション、ヘアトニック、ヘアローション、シャンプー、リンス、石鹸等が挙げられる。FGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤を化粧料に配合する場合、その配合量は、化粧料の種類に応じて適宜調整することができるが、好適な配合率は、標準的な抽出物に換算して約0.0001~10質量%であり、特に好適な配合率は、標準的な抽出物に換算して約0.001~1質量%である。化粧料は、上記抽出物が有するFGF-7mRNA発現促進作用、VEGFmRNA発現促進作用、IGF-1mRNA発現促進作用、HGFmRNA発現促進作用、BMP-2mRNA発現促進作用及びKAP5.1mRNA発現促進作用を妨げない限り、通常の化粧料の製造に用いられる主剤、助剤またはその他の成分、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料等を併用することができる。このように併用することで、より一般性のある製品となり、また、併用された他の有効成分との間の相乗作用が通常期待される以上の優れた効果をもたらすことがある。
【0056】
飲食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口または消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品等の区分に制限されるものではない。したがって、本実施形態に係る「飲食品」は、経口的に摂取される一般食品、健康食品(機能性飲食品)、保健機能食品(特定保健用食品,栄養機能食品,機能性表示食品)、医薬部外品、医薬品等を構成する組成物を幅広く含むものである。本実施形態における飲食品は、上記抽出物が有するFGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤が表示されるものであってもよいし、当該飲食品は、保健機能食品(特定保健用食品,機能性表示食品、栄養機能食品)、医薬部外品又は医薬品であってもよい。
【0057】
上記抽出物から製剤化したFGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤を飲食品に配合する場合、それらにおける有効成分の配合量は、使用目的、症状、性別等を考慮して適宜変更することができるが、添加対象となる飲食品の一般的な摂取量を考慮して、成人1日あたりの摂取量が約1~1000mgになるようにするのが好ましい。なお、添加対象飲食品が顆粒状、錠剤状又はカプセル状の形態である場合、上記抽出物から製剤化したFGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤の添加量は、添加対象飲食品に対して通常0.1~100質量%であり、好ましくは5~100質量%である。
【0058】
上記抽出物から製剤化したFGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤を配合し得る飲食品は特に限定されないが、その具体例としては、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液および調整用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、チューインガム、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子等の菓子類;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂および油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;スープ、シチュー、サラダ、惣菜、漬物;その他種々の形態の健康・栄養補助食品;錠剤、カプセル剤、ドリンク剤等が挙げられ、これらの飲食品に上記抽出物及び/又はFGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤を配合するときに、通常用いられる補助的な原料や添加物を併用することができる。
【0059】
なお、本実施形態に係るFGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤はヒトに対して好適に適用されるものであるが、FGF-7mRNA発現促進効果、VEGFmRNA発現促進効果、IGF-1mRNA発現促進効果、HGFmRNA発現促進効果、BMP-2mRNA発現促進効果及びKAP5.1mRNA発現促進効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することも可能である。
【実施例0060】
以下、試験例等を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、下記試験例等に何ら制限されるものではない。なお、下記試験例における被験試料として、クジン抽出物はクジン抽出リキッド、オタネニンジン抽出物はニンジン抽出液LA-20、サンショウ抽出物はサンショウ抽出液-J、タマサキツヅラフジ抽出物はセファランチンN(すべて丸善製薬社製)を使用した。
【0061】
〔試験例1〕FGF-7、VEGF、IGF-1、HGF及びBMP-2mRNA発現促進作用試験
上記各抽出物の試料について、下記の方法によりFGF-7、VEGF、IGF-1、HGF及びBMP-2mRNA発現促進作用の試験を実施した。
【0062】
ヒト正常毛乳頭細胞(HFDPC:頭頂部由来)を60mmシャーレに播種し、ヒト正常毛乳頭細胞用培地(PCGM)を用いて37℃、5%CO下で培養した。
【0063】
培養後、無血清のダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で溶解した被験試料を各シャーレに3mL添加して37℃、5%CO下で2時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のDMEMを用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製)にて総RNAを抽出し、波長260nmにおける吸光度からRNA量を計算し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
【0064】
この総RNAを鋳型とし、FGF-7、VEGF、IGF-1、HGF、BMP-2及び内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time System III(タカラバイオ社製)を用いて、PrimeScriptTM RT Master Mix (Perfect Real Time)(タカラバイオ社製)及びTB Green(登録商標) Fast qPCR Mix(タカラバイオ社製)によるリアルタイム2Step RT-PCR反応により行った。各mRNAの発現量は、GAPDHmRNAの発現量で補正し算出した。下記式によりFGF-7、VEGF、IGF-1、HGF及びBMP-2mRNA発現促進率(%)を算出した。
【0065】
FGF-7、VEGF、IGF-1、HGF及びBMP-2mRNA発現促進率(%)= A / B ×100
式中の「A」は、被験試料添加時の補正値を表し、「B」は、被験試料無添加時の補正値を表す。
【0066】
上記試験の結果を表1および2に示す。なお、上記式において、被験試料無添加の各mRNA発現促進率は100%となる。
【0067】
〔表1〕
mRNA発現促進率(%)
試料名 濃度(μg/mL) FGF-7 VEGF IGF-1
クジン抽出物 3.13 130.9 148.5 -
12.5 132.9 185.0 -
オタネニンジン抽出物 3.13 - 116.1 -
12.5 - 133.6 154.1
50 - 127.3 200.9
サンショウ抽出物 12.5 - 131.4 113.5
50 191.6 293.3 107.2
【0068】
〔表2〕
mRNA発現促進率(%)
試料名 濃度(μg/mL) HGF BMP-2
オタネニンジン抽出物 3.13 142.7 -
12.5 110.9 -
50 124.6 -
サンショウ抽出物 3.13 - -
12.5 - -
50 144.0 319.4
【0069】
表1に示すように、クジンの抽出物及びサンショウの抽出物は、いずれも高いFGF-7mRNA発現促進率を、クジンの抽出物、オタネニンジンの抽出物及びサンショウの抽出物は、いずれも高いVEGFmRNA発現促進率を、オタネニンジンの抽出物及びサンショウの抽出物は、いずれも高いIGF-1mRNA発現促進率を示した。この結果から、これらの抽出物は、優れたFGF-7、VEGF及びIGF-1mRNA発現促進作用を有することが確認された。
【0070】
また、表2に示すように、オタネニンジンの抽出物及びサンショウの抽出物は、いずれも高いHGFmRNA発現促進率を、サンショウの抽出物は、高いBMP-2mRNA発現促進率を示した。この結果から、これらの抽出物は、優れたHGF及びBMP-2mRNA発現促進作用を有することが確認された。
【0071】
〔試験例2〕KAP5.1mRNA発現促進作用試験
上記各抽出物の試料について、下記の方法によりKAP5.1mRNA発現促進作用の試験を実施した。
【0072】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により回収した。回収した細胞を、KGMを用いて6ウェルプレートに3.0×10cells/2mLの細胞密度になるように播種し、37℃、5%CO下で一晩培養した。
【0073】
培養後、増殖因子を添加していない培地(KBM)に交換した。24時間後に培養液を捨て、KBMで必要濃度に溶解した被験試料を各ウェルに2mLずつ添加し、37℃、5%CO下で24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKBMを用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製)にて総RNAを抽出し、波長260nmにおける吸光度からRNA量を計算し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
【0074】
この総RNAを鋳型とし、KAP5.1及び内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time System III(タカラバイオ社製)を用いて、PrimeScriptTM RT Master Mix (Perfect Real Time)(タカラバイオ社製)及びTB Green(登録商標) Fast qPCR Mix(タカラバイオ社製)によるリアルタイム2Step RT-PCR反応により行った。KAP5.1mRNAの発現量は、GAPDHmRNAの発現量で補正し算出した。下記式によりKAP5.1mRNA発現促進率(%)を算出した。
【0075】
KAP5.1mRNA発現促進率(%)= A / B ×100
式中の「A」は、被験試料添加時の補正値を表し、「B」は、被験試料無添加時の補正値を表す。
【0076】
上記試験の結果を表3に示す。なお、上記式において、被験試料無添加のKAP5.1mRNA発現促進率は100%となる。
【0077】
〔表3〕
試料名 濃度(μg/mL) KAP5.1mRNA発現促進率(%)
クジン抽出物 3.13 119.3
12.5 199.9
50 172.8
オタネニンジン抽出物 3.13 164.4
12.5 161.0
50 161.5
サンショウ抽出物 3.13 131.3
12.5 195.0
50 191.7
タマサキツヅラフジ 3.13 139.9
抽出物 12.5 133.4
50 185.4
【0078】
表3に示すように、クジンの抽出物、オタネニンジンの抽出物、サンショウの抽出物及びタマサキツヅラフジの抽出物は、いずれも高いKAP5.1mRNA発現促進率を示した。この結果から、これらの抽出物は、優れたKAP5.1mRNA発現促進作用を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のFGF-7mRNA発現促進剤、VEGFmRNA発現促進剤、IGF-1mRNA発現促進剤、HGFmRNA発現促進剤、BMP-2mRNA発現促進剤及びKAP5.1mRNA発現促進剤は、化粧料や飲食品等の一成分として、更には研究用の試薬として好適に利用され得る。