(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035191
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】画像取得装置、検査装置および画像取得方法
(51)【国際特許分類】
G01N 25/72 20060101AFI20230306BHJP
B65B 51/10 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
G01N25/72 A
B65B51/10 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141840
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】増田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】日野 真
(72)【発明者】
【氏名】平川 真
【テーマコード(参考)】
2G040
3E094
【Fターム(参考)】
2G040AA05
2G040AB09
2G040BA14
2G040BA26
2G040CA02
2G040DA06
2G040DA12
2G040DA15
2G040EA06
2G040EC02
2G040HA02
2G040HA06
3E094AA12
3E094BA02
3E094BA04
3E094BA12
3E094CA02
3E094CA22
3E094DA06
3E094EA01
3E094GA01
3E094GA02
3E094GA09
3E094GA13
3E094GA15
3E094HA08
(57)【要約】
【課題】周辺部材への熱影響を与えずに、高品質な温度画像を取得する。
【解決手段】光エネルギーを吸収する物質を含む包装材をシールするシール部に対し、少なくとも前記物質が光吸収する波長を持つ光を照射する発光部と、前記シール部からの熱輻射を受光する受光部と、前記受光部で受光した情報から、前記シール部の温度情報を2次元画像として取得する2次元画像取得部と、を備え、前記良否判定部は、前記発光部が前記シール部の一方側に光を照射する時刻を0、前記シール部の他方側の表面温度がピークになる時刻をTとしたとき、取得する少なくとも1枚の2次元画像の時刻tを0<t<Tとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光エネルギーを吸収する物質を含む包装材をシールするシール部に対し、少なくとも前記物質が光吸収する波長を持つ光を照射する発光部と、
前記シール部からの熱輻射を受光する受光部と、
前記受光部で受光した情報から、前記シール部の温度情報を2次元画像として取得する2次元画像取得部と、
を備え、
前記2次元画像取得部は、前記発光部が前記シール部の一方側に光を照射する時刻を0、前記シール部の他方側の表面温度がピークになる時刻をTとしたとき、取得する少なくとも1枚の2次元画像の時刻tを0<t<Tとする、
ことを特徴とする画像取得装置。
【請求項2】
前記受光部は、前記発光部から照射されて前記シール部を透過する光、および、前記発光部から照射されて前記シール部で反射する光を直接受光しない、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像取得装置。
【請求項3】
前記発光部は、前記シール部を一括に照射し、
前記受光部は、少なくとも前記シール部からの熱輻射を一括に受光する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像取得装置。
【請求項4】
前記発光部は、ポイント型発光源を縦横に並べたエリア型発光源である、
ことを特徴とする請求項3に記載の画像取得装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の画像取得装置と、
前記2次元画像取得部で取得した2次元画像から前記シール部の良否を判定する良否判定部と、
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項6】
前記良否判定部は、複数枚の2次元画像から前記シール部の良否を判定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記良否判定部は、ある一定時間の間隔をもって前記2次元画像取得部で受光した情報のうち、連続する複数枚の2次元画像から前記シール部の良否を判定する、
ことを特徴とする請求項6に記載の検査装置。
【請求項8】
前記良否判定部は、前記2次元画像取得部から取得する少なくとも1枚の2次元画像の時刻tを0<t<T/2とする、
ことを特徴とする請求項5ないし7の何れか一項に記載の検査装置。
【請求項9】
前記良否判定部は、前記2次元画像取得部から取得する複数枚の2次元画像の時刻tをt<T/2とする、
ことを特徴とする請求項5ないし7の何れか一項に記載の検査装置。
【請求項10】
前記良否判定部は、更に、前記2次元画像取得部から取得する少なくとも1枚の2次元画像の時刻tをt<0とし、取得した2次元画像を基にノイズ除去を実行する、
ことを特徴とする請求項5ないし9の何れか一項に記載の検査装置。
【請求項11】
光エネルギーを吸収する物質を含む包装材をシールするシール部に対し、少なくとも前記物質が光吸収する波長を持つ光を発光部から照射する発光工程と、
前記シール部からの熱輻射を受光部で受光する受光工程と、
前記受光工程で受光した情報から、前記シール部の温度情報を2次元画像として取得する2次元画像取得工程と、
を含み、
前記2次元画像取得工程は、前記発光部が前記シール部の一方側に光を照射する時刻を0、前記シール部の他方側の表面温度がピークになる時刻をTとしたとき、取得する少なくとも1枚の2次元画像の時刻tを0<t<Tとする、
ことを特徴とする画像取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像取得装置、検査装置および画像取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装材に食品等の物品が封入され、シールして出来る包装体について、そのシール部分が正しく封止されているか否かを検査する包装体の検査装置がある。
【0003】
特許文献1には、包装物のシール不良を検査する装置として、熱付与手段による包装物の加熱などにより昇温した包装物の温度に基づいてシール部の不良を検出する検査手段を備えた構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の包装体の検査装置では、包装体の温度上昇に熱源を利用するため、安全面から熱源の取り扱いが煩雑であるとともに、熱源の熱が周辺部材へ悪影響を及ぼす、という問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、周辺部材への熱影響を与えずに、高品質な温度画像を取得する、ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、光エネルギーを吸収する物質を含む包装材をシールするシール部に対し、少なくとも前記物質が光吸収する波長を持つ光を照射する発光部と、前記シール部からの熱輻射を受光する受光部と、前記受光部で受光した情報から、前記シール部の温度情報を2次元画像として取得する2次元画像取得部と、を備え、前記良否判定部は、前記発光部が前記シール部の一方側に光を照射する時刻を0、前記シール部の他方側の表面温度がピークになる時刻をTとしたとき、取得する少なくとも1枚の2次元画像の時刻tを0<t<Tとする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、周辺部材への熱影響を与えずに、高品質な温度画像を取得することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態にかかる検査装置の構成例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、検査装置により検査される包装体の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、アルミニウムの吸収率を示すグラフである。
【
図5】
図5は、搬送されている包装体を照射する場合のポイント型発光源の例を示す図である。
【
図6】
図6は、停止している包装体を照射する場合のポイント型発光源の例を示す図である。
【
図7】
図7は、搬送されている包装体を照射する場合のライン型発光源の例を示す図である。
【
図8】
図8は、停止している包装体を照射する場合のライン型発光源の例を示す図である。
【
図9】
図9は、搬送されている包装体を照射する場合のエリア型発光源の例を示す図である。
【
図10】
図10は、停止している包装体を照射する場合のエリア型発光源の例を示す図である。
【
図11】
図11は、搬送されている包装体からの熱輻射を受光する場合のポイント型受光素子の例を示す図である。
【
図12】
図12は、停止している包装体からの熱輻射を受光する場合のポイント型受光素子の例を示す図である。
【
図13】
図13は、搬送されている包装体からの熱輻射を受光する場合のライン型受光素子の例を示す図である。
【
図14】
図14は、停止している包装体からの熱輻射を受光する場合のライン型受光素子の例を示す図である。
【
図15】
図15は、搬送されている包装体からの熱輻射を受光する場合のエリア型受光素子の例を示す図である。
【
図16】
図16は、停止している包装体からの熱輻射を受光する場合のエリア型受光素子の例を示す図である。
【
図17】
図17は、発光部と受光部との第1のレイアウト例を示す図である。
【
図18】
図18は、発光部と受光部との第2のレイアウト例を示す図である。
【
図19】
図19は、発光部と受光部との第3のレイアウト例を示す図である。
【
図20】
図20は、制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図21】
図21は、制御装置の機能を示す機能ブロック図である。
【
図22】
図22は、良好な状態の位置と不良な状態の位置とにおける表面温度の変化例を示すグラフである。
【
図23】
図23は、シール部の良否判定にかかる2次元画像の具体例を示す図である。
【
図24】
図24は、時間経過に伴う表面温度の差分値を例示的に示すグラフである。
【
図25】
図25は、第2の実施の形態にかかる良否判定部によるシール部の良否判定にかかる複数枚の2次元画像の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、画像取得装置、検査装置および画像取得方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
ここで、
図1は第1の実施の形態にかかる検査装置1の構成例を示す概略図、
図2は検査装置1により検査される包装体50の一例を示す図である。検査装置1は、包装体50について適正にシールされているかについての検査を行い、異常のある包装体50を生産ラインから排除するものである。
【0011】
まず、包装体50について説明する。
【0012】
図2に示すように、包装体50は、袋状の包装材51の内部に、物品(例えば、カレーやスープなどの食品など)を収容したものである。
図2に示す包装体50は、包装材51同士の接着により、袋状の開口部を封止する。
【0013】
包装体50の包装材51には、単層プラスチックフィルム、表面加工が施された単層プラスチックフィルム、または、それらを複数積層したプラスチックフィルムなどが用いられている。表面加工には、防湿性を付与するためのコーティングや、ガスバリア性を付与するためのアルミニウム、シリカ、アルミナ等の蒸着などがある。
【0014】
さらには、包装体50の包装材51としては、上述のフィルムに対してアルミニウム箔51b(
図3参照)をラミネートしたフィルムが用いられている。アルミニウム箔51bをラミネートした包装材51は、高いガスバリア性、防湿性が要求される用途に用いられる。特に、アルミニウム箔51bをラミネートした包装材51は、レトルト食品の包装容器であって、いわゆるレトルトパウチと呼ばれるものである。
【0015】
図3は、包装材51の構成例を示す図である。
図3に示す包装材51は、レトルトパウチ用の包装材51の構成例を示すものである。
図3に示す包装材51は、表面からポリエステル(PET)フィルム51a、アルミニウム箔51b、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム51cの順に積層されている。
図3に示す包装材51のようにアルミニウム箔やアルミニウム蒸着フィルムなどをラミネートしたフィルムは、目視による透過性が悪く、包装材51の内部に収容した物品の目視での確認は困難である。
【0016】
図2に示す包装体50において、包装材51同士を接着して袋状の開口部を封止した部分をシール部52と呼ぶ。シール部52は、加熱したバーを封止したい部分に押し当てることで熱圧着するヒートシールや、封止したい部分を超音波振動と加圧により溶融して接合する超音波シールなどによって形成する。
【0017】
ここで、包装体50の製造工程を簡単に説明する。包装体50は、図示しない充填手段(充填機)により、物品(例えば、カレーやスープなどの食品など)などが袋状の包装材51に充填された後、シール部52で封止されて製造される。
【0018】
このような製造工程において、検査装置1は、シール部52で封止された包装体50に対し、しっかり密封されて物品の漏洩が起きないことを確認するため、シール検査を実施する。シール検査では、シール部52が良好な状態か、不良な状態かを判定する。不良な状態には、例えば、噛み込み、ピンホール、シワ、貫通などと呼ばれる状態がある。具体的には、噛み込みはシール部52に物品を噛み込んでいる不良、ピンホールはシール部52に穴が開いている不良、シワはシール部52に折りシワや重なりシワが発生している不良、貫通はシール部52に物品が外部へ漏洩してしまうような通り道ができている不良、などである。
【0019】
次に、検査装置1について詳述する。
【0020】
図1に示すように、検査装置1は、搬送ユニット2と、画像取得装置3と、制御装置4と、を備えている。
【0021】
画像取得装置3は、搬送ユニット2に対して下方に配置された発光部31と、搬送ユニット2に対して上方に配置された受光部32と、を備える。
【0022】
搬送ユニット2は、第1搬送部21と第2搬送部22とを備える。第1搬送部21および第2搬送部22は、無端状のベルトを回転駆動することで、ベルト上の包装体50を搬送する。第1搬送部21は、画像取得装置3の配置位置に対して、包装体50の搬送方向Xの上流側に配置される。第2搬送部22は、画像取得装置3の配置位置に対して、包装体50の搬送方向Xの下流側に配置される。搬送ユニット2は、第1搬送部21と第2搬送部22との間に、発光部31と受光部32との間の空間となる隙間Oを形成する。隙間Oである第1搬送部21と第2搬送部22との間の距離は、第1搬送部21から第2搬送部22への受け渡しに影響を与えない距離である。このような構成により、搬送ユニット2は、発光部31と受光部32との間の空間に、包装体50を搬送する。
【0023】
画像取得装置3は、搬送ユニット2により搬送された包装体50のシール部52の2次元温度情報を、画像として取得する。
【0024】
発光部31は、搬送ユニット2により搬送された包装体50のシール部52全体に対し、2次元的に光を照射する。なお、発光部31は、第1搬送部21と第2搬送部22との隙間Oにおいて、搬送ユニット2により搬送されている包装体50に対して光を照射してもよいし、搬送ユニット2上で一旦停止した状態の包装体50に対して光を照射してもよい。
【0025】
受光部32は、発光部31からの光照射に伴い、包装体50のシール部52全体からの熱輻射を2次元的に受光する。
【0026】
ここで、発光部31および受光部32について詳述する。
【0027】
上述したように、包装体50の包装材51には、アルミニウム蒸着フィルムやアルミニウム箔をラミネートしたフィルムが用いられており、少なくともアルミニウムが含まれている。そこで、本実施形態の検査装置1の発光部31は、所定の初期温度を有する包装体50のシール部52の一方側に、少なくともアルミニウムが光吸収する波長を持つ光を照射する。包装材51のアルミニウム箔51b(
図3参照)は、発光部31が照射した光を吸収し、光エネルギーを熱エネルギーに変換する。包装材51のアルミニウム箔51bで発生した熱は、各層の表面間および各層中を伝わり、包装材51の表面に到達する。そして、包装材51は、表面から熱輻射による光を放射する。この光放射は、いわゆるプランク放射則に基づくスペクトルで放射され、受光部32で受光される。受光部32は、熱輻射情報を2次元的に受光する。
【0028】
すなわち、ある初期温度を有するシール部52の一方側に光を照射すると、その光はシール部52内のアルミニウム箔51bで吸収され、光エネルギーを熱エネルギーに変換する。そして、その熱は、各層の表面間を介してもう一方側に伝わり、その表面に温度分布を形成する。すなわち、時刻0にシール部52の一方側を光照射した後、シール部52の他方側は急速に温度上昇が始まり、ある時刻Tに温度がピークになる。その後、シール部52は、周囲の大気との対流や熱輻射によって、徐々に温度は低下する。
【0029】
図4は、アルミニウムの吸収率を示すグラフである。アルミニウムは、
図4に示す吸収スペクトルを持つ。
図4に示すように、アルミニウムは、0.78μm~1.0μmの近赤外線の吸収率のピークにおいて、効果的に光吸収を生じる。また、アルミニウムは、紫外線(0.38μm以下)や可視光線(0.38μm~0.78μm)においても高い吸収率を持つ。なお、アルミニウムは、1μm以上の波長では吸収率が低下する。したがって、発光部31は、少なくとも紫外線、可視光線、近赤外線のいずれかの光を照射することが望ましい。そこで、本実施形態の発光部31は、少なくとも紫外線、可視光線、近赤外線を含む光を照射することができるハロゲンランプを適用する。ハロゲンランプは、一般的に、可視光線より長い波長の光を照射でき、非常にブロードな発光スペクトルを有する。ハロゲンランプは、ランプの温度に依存するが、特に近赤外線より長い波長を持つ光を多く含んでいる(例えば、50%以上含む)。
【0030】
なお、発光部31は、ハロゲンランプに限るものではなく、紫外線、可視光線、近赤外線の光を照射することができるキセノンランプを適用してもよい。一般的に、キセノンランプは、紫外線、可視光線、近赤外線に渡りブロードな発光スペクトルを持ち、かつ、近赤外線に複数のシャープな発光スペクトルを有する。キセノンランプは、近赤外線より長い波長をほとんど含んでいない(例えば、5%以下)。このような近赤外線より長い波長の光は熱線とも呼ばれ、周囲の部材を温めてしまうため、装置の小型化や構成部品の選定に影響を及ぼす。そのため、近赤外線より長い波長の光を含まないことが実用上好ましい。
【0031】
また、発光部31は、近赤外線にピーク波長を持つ近赤外LEDまたは近赤外レーザを適用するようにしてもよい。近赤外LEDまたは近赤外レーザは、アルミニウムの吸収スペクトルのピークとほぼ同じ波長帯域に発光スペクトルのピークを持つため、高い効率で光エネルギーを熱エネルギーに変換することができる。また、近赤外LEDまたは近赤外レーザは、一般的にハロゲンランプやキセノンランプよりも寿命が長く、連続稼働する検査装置1での使用において、交換周期を長くすることができるという利点もある。
【0032】
さらに、発光部31は、連続点灯(DC発光)でもよいし、間欠点灯(パルス発光)でもよい。ただし、寿命の観点から、1Hz~2Hz程度で間欠点灯可能であることが好ましい。具体的には、レーザ、LED、キセノンランプが該当する。
【0033】
さらにまた、発光部31は、連続点灯(DC発光)である場合に、包装体50に対し間欠点灯となるような間欠照射手段(シャッター)を、包装体50との間に備えるようにしてもよい。
【0034】
本実施形態においては、シール部52の表面温度上昇は数℃~10℃程度でよい。それ以上に温度を上げてもよいが、ハイパワーの光源が必要となり、光源のコストや大きさの面から実用的ではない。検査装置1の雰囲気温度が20~30℃程度であるとすると、273℃+20~30℃+数℃~10℃=295~315K程度となる。また、300Kに相当する熱輻射は、プランクの法則により、約3μm以上の波長を持つことが分かっている。これにより、包装体50のシール部52から熱輻射により放射される光は、プランクの法則により約3μm以上の波長の光となる。すなわち、受光部32は、3μm以上の波長を持つ光を受光する。
【0035】
このように発光部31の波長と受光部32の波長とを異ならせることにより、発光部31の光は受光部32で受光されず、受光部32のノイズとなることがないので、良好な受光信号の取得が可能になる。
【0036】
大気の透過スペクトルには大気の窓と呼ばれる、大気の透過率が高い波長帯域がある。大気中で測定する場合にはこの帯域を用いることが好ましい。例えば、3~6μmの波長帯域であるMWIR(Middle Wavelength Infrared Radiation)、8~14μmの波長帯域であるLWIR(Long Wavelength Infrared Radiation)が挙げられる。
【0037】
また、300K程度の熱輻射スペクトルは、約10μmにピークを持つため、より感度の高い測定をするためにLWIRの大気の窓を利用することが好ましい。
【0038】
そこで、本実施形態においては、受光部32は、LWIRを受光する赤外線受光素子を用いる。なお、赤外線受光素子は、極低温に冷却する必要があり高感度な冷却型と、室温で動作可能な非冷却型と、がある。本実施形態においては、受光部32は、実用的には低コストである非冷却型赤外線受光素子を用いる。
【0039】
発光部31は、シール部52全体を2次元的に照射するものであれば、ポイント型発光源、ライン型発光源、エリア型発光源のいずれの発光源でも構わない。
【0040】
図5は搬送されている包装体50を照射する場合のポイント型発光源の例を示す図、
図6は停止している包装体50を照射する場合のポイント型発光源の例を示す図である。
図5および
図6に示すように、ポイント型発光源は、ポイント状にシール部52を照射する。
図5に示すように、発光部31は、搬送されている包装体50を照射する場合には、シール部52を1次元走査する光学系を介してポイント型発光源を2次元的に照射する。
図6に示すように、発光部31は、停止している包装体50を照射する場合には、シール部52を2次元走査する光学系を介してポイント型発光源を2次元的に照射する。
【0041】
図7は搬送されている包装体50を照射する場合のライン型発光源の例を示す図、
図8は停止している包装体50を照射する場合のライン型発光源の例を示す図である。
図7および
図8に示すように、ライン型発光源は、ライン状にシール部52を照射する。ライン型発光源は、ポイント型発光源を一列もしくは複数列に並べてライン型とするものでもよいし、ポイント型発光源を用いて光学系を介してライン状の照射パターンを作るものでもよい。
図7に示すように、発光部31は、搬送されている包装体50を照射する場合には、シール部52の幅(シール部52の長手幅)より長いライン型発光源で2次元的に照射する。
図8に示すように、発光部31は、停止している包装体50を照射する場合には、シール部52を1次元走査する光学系を介してシール部52の短手幅より若干長いライン型発光源で2次元的に照射する。
【0042】
図9は搬送されている包装体50を照射する場合のエリア型発光源の例を示す図、
図10は停止している包装体50を照射する場合のエリア型発光源の例を示す図である。
図9および
図10に示すように、エリア型発光源は、エリア状にシール部52を一括に照射する。エリア型発光源は、ポイント型発光源を縦横に並べてエリア型とするものでもよいし、ライン型発光源を複数列並べてエリア型とするものでもよいし、これらと光学系を組み合わせてエリア状の照射パターンを作るものでもよい。
図9に示すように、発光部31は、搬送されている包装体50を照射する場合には、エリア型発光源で一括に照射する。
図10に示すように、発光部31は、停止している包装体50を照射する場合には、エリア型発光源で一括に照射する。
【0043】
一方、受光部32は、光照射に伴ったシール部52全体からの熱輻射を2次元的に受光するものであれば、ポイント型受光素子、ライン型受光素子、エリア型受光素子のいずれの受光素子でも構わない。ポイント型受光素子には、サーモパイルなどが適用される。エリア型受光素子には、マイクロボロメータなどが適用される。
【0044】
図11は搬送されている包装体50からの熱輻射を受光する場合のポイント型受光素子の例を示す図、
図12は停止している包装体50からの熱輻射を受光する場合のポイント型受光素子の例を示す図である。
図11に示すように、受光部32は、搬送されている包装体50からの熱輻射を受光する場合には、シール部52を1次元走査する光学系を介してポイント型受光素子で2次元的に受光する。
図12に示すように、受光部32は、停止している包装体50からの熱輻射を受光する場合には、シール部52を2次元走査する光学系を介してポイント型受光素子で2次元的に受光する。
【0045】
図13は搬送されている包装体50からの熱輻射を受光する場合のライン型受光素子の例を示す図、
図14は停止している包装体50からの熱輻射を受光する場合のライン型受光素子の例を示す図である。
図13に示すように、受光部32は、搬送されている包装体50からの熱輻射を受光する場合には、シール幅より長いライン型受光素子で2次元的に受光する。
図14に示すように、受光部32は、停止している包装体50からの熱輻射を受光する場合には、シール部52を1次元走査する光学系を介してシール部52の短手幅より若干長いライン型受光素子で2次元的に受光する。
【0046】
図15は搬送されている包装体50からの熱輻射を受光する場合のエリア型受光素子の例を示す図、
図16は停止している包装体50からの熱輻射を受光する場合のエリア型受光素子の例を示す図である。
図15に示すように、受光部32は、搬送されている包装体50からの熱輻射を受光する場合には、シール部52を一括にエリア型受光素子で受光する。
図16に示すように、受光部32は、停止している包装体50からの熱輻射を受光する場合には、シール部52を一括にエリア型受光素子で受光する。
【0047】
上述したように、シール部52全体を光照射する発光部31や、シール部52全体からの熱輻射を受光する受光部32には様々な態様がある。本実施形態においては、発光部31はエリア型発光源であり、受光部32はエリア型受光素子とする。このようにエリア型発光源とエリア型受光素子との組み合わせにすることにより、包装体50が搬送されていても停止していても、その搬送状態の制約を受けずに、シール部52全体を一括に、照射および受光が可能である。さらに、ポイント型発光源(具体的にはLED)を縦横に並べたエリア型発光源、エリア型受光素子であれば、1次元もしくは2次元走査する光学系、すなわち可動部品が不要であり、振動影響を受けず高品質な画像の取得が可能である。
【0048】
次に、発光部31と受光部32との位置関係について詳述する。
【0049】
上述したように、受光部32は、発光部31から照射されて包装材51のシール部52を透過する光や、シール部52から反射する光を直接受光するのではない。受光部32は、発光部31から照射された光による包装材51の表面からの熱輻射によって放出された光を受光するものである。つまり、発光部31と受光部32とは、光の透過または正反射に基づく配置に制約されるものではない。そのため、発光部31と受光部32とのレイアウト自由度は、大きくなる。
【0050】
図17は、発光部31と受光部32との第1のレイアウト例を示す図である。
図17に示す例では、受光部32は、搬送方向Xに対して略平行な面である包装材51のシール部52および発光部31に対して、光軸を傾けて設置している。このように受光部32の光軸を包装材51のシール部52に対して傾けて設置することにより、受光部32自身の映り込みを防止することができる。
【0051】
より詳細には、
図17に示すように、包装体50は包装材51の内部に物品を収容するため、包装体50のシール部52の近傍は膨らみを持っている。そのため、シール部52が搬送方向Xに対して略平行であるのに対し、シール部52の近傍は搬送方向Xに対して傾いている。したがって、
図17に示す例では、受光部32は、包装材51のシール部52の近傍の傾きに直交する傾きでなく、包装材51のシール部52の近傍の傾きと同方向に光軸を傾けて設置されている。
【0052】
ここで、
図18は発光部31と受光部32との第2のレイアウト例を示す図である。
図18に示す例では、受光部32自身の映り込みの影響がないことを条件として、受光部32は、搬送方向Xに対して略平行な面であるシール部52に対して、傾けずに直交する位置に配置するようにしてもよい。
【0053】
ここで、
図19は発光部31と受光部32との第3のレイアウト例を示す図である。
図19に示す例では、
図18の第2のレイアウト例に加えて、発光部31を、搬送方向Xに対して略平行な面である包装材51のシール部52および受光部32に対して光軸を傾けて設置している。
【0054】
次に、制御装置4について説明する。制御装置4は、検査装置1の全体を制御する。ここで、
図20は制御装置4のハードウェア構成を示すブロック図である。
図20に示すように、制御装置4は、CPU41(Central Processing Unit)41や、ROM(Read Only Memory)42、RAM(Random Access Memory)43、HDD44等を備えている。制御装置4は、ROM42やHDD44に予め記憶されているプログラムに従って、RAM43をワークメモリとして用いて、搬送ユニット2、画像取得装置3の各部を駆動制御する。制御装置4として、例えば、パーソナルコンピュータ(ディスクトップ、ノートパソコン)を用いることができる。
【0055】
本実施形態の制御装置4で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0056】
さらに、本実施形態の制御装置4で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施形態の制御装置4で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0057】
制御装置4は、画像取得装置3で撮影した2次元画像に基づいて、包装体50のシール部52が良好か不良かの判定を行う。
【0058】
次に、制御装置4の機能について説明する。
【0059】
図21は、制御装置4の機能を示す機能ブロック図である。
図21に示すように、制御装置4は、CPU41がプログラムに従って動作することにより、制御部401、2次元画像取得部402、良否判定部403として機能する。
【0060】
制御部401は、画像取得装置3の発光部31の発光および受光部32の受光を制御する。また、制御部401は、搬送ユニット2の第1搬送部21および第2搬送部22の駆動を制御する。
【0061】
2次元画像取得部402は、受光部32により2次元的に受光した熱輻射情報から、包装体50のシール部52の2次元温度情報を画像として取得する。つまり、2次元画像取得部402は、光情報を温度情報に変換し、温度画像を取得する。サーモグラフィー(熱画像)とも言う。なお、2次元画像取得部402は、受光部32を非冷却型マイクロボロメータとした赤外線カメラに備えられるものであってもよい。
【0062】
良否判定部403は、温度情報を持つ2次元画像に基づき、包装体50のシール部52が良好な状態か、不良な状態か、すなわち良否を判定する。良否判定部403は、不良な状態を顕在化するため、2次元画像に既知の様々な画像処理を施す。
【0063】
前述したように、包装体50のシール部52に不良な状態があると、良好な状態に対し、シール部52の熱容量が変化する。例えば、噛み込みはシール部52に物品を噛み込んでいる不良であり、包装材51と包装材51との間に物品が挟み込んだ状態で封止されている。したがって、その物品による層が新たにでき、熱の伝わりが遅くなる。貫通はシール部52に物品が外部へ漏洩してしまうような通り道ができている不良であり、包装材51と包装材51との間に空気層があることにより、空気の高い熱抵抗のため、熱の伝わりが遅くなる。このように包装体50のシール部52に不良な状態があると、熱がシール部52の表面に到達する時間が遅れるため、表面に温度分布が生じることになる。そこで、良否判定部403は、温度情報を持つ2次元画像において発生する温度分布に基づき、不良な状態である、すなわち否であると判定することができる。
【0064】
次に、良否判定部403におけるシール部52の良否判定について説明する。
【0065】
ここで、
図22は良好な状態の位置と不良な状態の位置とにおける表面温度の変化例を示すグラフ、
図23はシール部52の良否判定にかかる2次元画像の具体例を示す図である。
図23に示す例は、不良な状態として、シール部52に空気層がある場合を示している。これは、貫通、または、空気を含む内容物の噛み込みなどに見られる状況を模擬している。
【0066】
図22に示す例は、アルミニウムを含むシール部52において良好な状態と不良な状態とがある場合について、時刻0で一方側から発光部31によって光を照射し、ある時刻tで他方側の表面の温度分布を取得したものである。
【0067】
図23に示す2次元画像は、
図22に示す時刻Aに取得した画像である。
図23に示す画像は、白は温度が高く、黒は温度が低いことを示すモノクロ画像である。
図23に示すように、シール部52に空気層があることによって不良な状態となる位置は、周囲に比べ黒っぽくなっていることが分かる。
【0068】
図22に示す例では、良好な状態の位置は時刻Tで、ピーク温度に到達している。この時刻Tは、約480msである。この時間は包装材51の種類や厚みにより異なるが、およそ数100msから1s以下である。一方、
図22に示すように、不良な状態の位置は、約580msである。不良な状態の位置は、時刻Tより後にピーク温度に到達しており、良好な状態と不良な状態との両者のピーク温度はほとんど同じである。
【0069】
ここで、
図24は時間経過に伴う表面温度の差分値を例示的に示すグラフである。
図24に示すグラフは、良好な状態の位置の表面温度から不良な状態の位置の表面温度を差し引いた結果である。
図24に示されるように、0<t<Tにおいて、良好な状態の位置の表面温度から不良な状態の位置の表面温度を差し引いた値が、プラスの値となっている。すなわち、
図24において点線で示すように、ある時刻Aをみると、良好な状態では不良な状態に対して温度が高くなっていることがわかる。
図24に示す時刻Aは約80msであり、
図23が時刻Aに取得した2次元画像である。
【0070】
すなわち、良好な状態と不良な状態とでは、シール部52の表面温度の時間変化が異なり、ある時刻においては検出可能な大きな温度差が生じることがわかる。なお、良好な状態と不良な状態とは、時間が経つとほぼ同じピーク温度になり、ピーク以降ではその温度差は小さくなっている。
【0071】
以上により、0<t<Tで得られた2次元画像においては、貫通や噛み込みがある場合にはその部分の温度が周囲よりも低くなる温度分布が得られることがわかる。良否判定部403は、良好な状態と不良な状態とにおける温度の絶対値を検出することにより、不良な状態を検出することができる。
【0072】
なお、
図24に示すように、0<t<T/2においては、特に温度差が大きくなる。0<t<T/2で得られた2次元画像を用いる場合には、tが小さくなることで、検査装置1における検査時間も短くなるというメリットがある。なお、0<t<T/2で得られた2次元画像を用いる場合には、高速に照射・受光を行う必要があり、1次元もしくは2次元走査が必要な場合には時間的制約が厳しくなるため、シール部52全体に対する一括での照射および受光がより好ましい。
【0073】
ただし、不良な状態によっては熱抵抗が小さくなり周囲よりも温度が上がることもある。このような場合でも、良否判定部403は、良好な状態と不良な状態との違いをみることで、シール部52の不良な状態の検出ができる。
【0074】
以降では、不良がある状態では周囲より温度が低くなる場合(空気層がある場合)について、具体的に記述する。
【0075】
良否判定部403は、複数枚の2次元画像からシール部52の良否を判定する。より詳細には、良否判定部403は、ある一定時間間隔で受光した情報のうち、複数枚の2次元画像からシール部52の良否を判定する。このように、複数枚の2次元画像を用いることにより、良否判定精度を高めることができる。
【0076】
ただし、複数枚分の光を受光する場合、いずれの2次元画像も受光部32の視野に入っている必要がある。包装体50が停止している場合は問題ないが、包装体50が搬送されている場合には、受光部32の視野に入るように、視野を広げたり、搬送速度を調整したり、包装体50を追従して受光したりする必要がある。
【0077】
簡単のため、2枚の2次元画像を用いる場合における良否判定部403による良否判定について説明する。ここで、2次元画像取得部402が2枚の2次元画像を取得する時刻tは、t<Tである。より詳細には、2次元画像取得部402は、少なくとも1枚はt<0を満たす時刻Sで2次元画像を取得し,かつ,少なくとも1枚は0<t<Tを満たす時刻Uで2次元画像を取得する。
【0078】
良否判定部403は、0<t<Tを満たす時刻Sにおいて1枚の2次元画像を取得し、t>Tを満たす時刻Uにおいてもう1枚の2次元画像を取得し、2枚を用いて差分画像処理を行うことができる。t>Tではピーク温度を過ぎており、その後は大気の対流により温度が低下するが、0~Tまでの温度上昇時間に比べるとはるかに時間下降時間が長い。よって、時刻Uでの温度はほぼピーク温度と等しいとみなすことができる。したがって、良否判定部403は、時刻Sと時刻Uとの差分を検出することで、ピーク温度との温度差(相対値)とする。良否判定部403は、良好な状態より温度差が大きくなっている場合に、不良な状態とみなす。なお、時刻Uは、できるだけ時刻Tに近い方が好ましい。また、受光部32として例えば30fpsの赤外線カメラを用いる場合には、時刻Sと時刻Uは非連続な2フレームで構わない。
【0079】
以上により、良否判定部403は、初期温度の不均一性を考慮し、複数枚を用いた画像処理、例えば差分処理や回帰分析処理を行うことができる。
【0080】
なお、検査装置1における検査時間を短くするという観点において、2次元画像の取得に要する時間はできるだけ短いほうが好ましい。つまり、時刻Sと時刻Uは、非連続な2フレームであるより、連続する2フレームがより好ましい。
【0081】
良否判定部403は、0<t<Tを満たす時刻S,Uで連続して取得した2枚の2次元画像を用いて、その差分画像処理を行う。良好な状態では温度上昇が速く、不良な状態では温度上昇が遅くなることから、時刻に対する温度上昇率が異なるものとなる。したがって良否判定部403は、時刻Sと時刻Uとで差分を取ることで、温度上昇差(相対値)とする。
【0082】
以上のように、時刻0で発光部31を発光させて、ある時刻S,Uで連続して撮影すれば、検査時間を短くすることができる。
【0083】
同様に、3枚の2次元画像を用いる場合における良否判定部403による良否判定に場合について説明する。
【0084】
良否判定部403は、0<t<Tを満たす、ある時刻S1,S2,S3で連続して取得した3枚の2次元画像を用いて、その回帰分析処理を行う。良否判定部403は、時刻S1,S2,S3で回帰分析を行うことで、温度変化(相対値)として、より高精度に分析することができる。簡単な例としては、一次線形回帰による傾き、すなわち単位時間当たりの温度上昇率により、不良な状態と良好な状態では明らかな違いを得ることができる。
【0085】
検査装置1は、以上のようにして包装体50のシール部52が良好か不良かの判定を行う。さらに、検査装置1は、包装体50を搬送ユニット2の第2搬送部22により搬送した後、不良と判定した包装体50を、図示しない選別手段(リジェクタ)により第2搬送部22から排除する。一方、良好と判定された包装体50は第2搬送部22によって搬送され、図示しない梱包手段(ケーサー)や人手により箱詰めされる。
【0086】
このように本実施形態によれば、包装物の温度を上昇させるために、包装物が光エネルギーを吸収し、熱エネルギーに変換できる光源を用いる。空間伝搬を考えると、熱エネルギーより光エネルギーの方が制御しやすくレイアウト自由度は高い。また、包装物が光エネルギーを吸収し、熱エネルギーに変換できる光源は、周囲の部材への熱影響も小さいことから、発光部31、受光部32、搬送ユニット2などの周辺部材に近づけることが容易である。したがって、熱源を利用する必要がなくなり、熱源の熱が周辺部材へ悪影響を及ぼすことがなくなるので、高品質な温度画像を取得することができる。
【0087】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0088】
第2の実施の形態は、t<0を満たす時刻で少なくとも1枚の2次元画像を取得して、ノイズ除去を実行するようにした点が、第1の実施の形態と異なる。以下、第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0089】
シール部52の初期温度は、雰囲気温度による影響またはシール部52の不均一性により、シール部52内の場所によって異なることがある。また、シール部52の初期温度は、受光部32としてライン型受光素子またはエリア型受光素子を用いる場合には画素毎の感度ばらつきがあるため、受光素子の場所によって異なる。
【0090】
そこで、良否判定部403は、このような場所による影響を除外するノイズ除去のために、発光部31が発光する前に少なくとも1枚の2次元画像を取得し、発光後の画像、つまり0<t<Tを満たす時刻tで取得する2次元画像から差分画像処理を行うようにしてもよい。この場合、2次元画像取得部402が少なくとも1枚の2次元画像を取得する時刻tは、t<0である。なお、この場合、2次元画像の取得は非連続でよい。すなわち、良否判定部403は、t<0を満たす時刻Rで少なくとも1枚の2次元画像を取得して、ノイズ除去を実行する。
【0091】
なお、良否判定部403は、ノイズ除去のために、t<0を満たす時刻Rn(n≧2)にて複数枚の2次元画像を取得し、その平均処理を実行するようにしてもよい。
【0092】
ここで、
図25は第2の実施の形態にかかる良否判定部403によるシール部の良否判定にかかる2次元画像の具体例を示す図である。
図25に示す例は、良否判定部403が、t<0を満たす1枚の2次元画像と、0<t<Tを満たす3枚の2次元画像の合計4枚の連続する2次元画像と、を用いて回帰分析処理による画像処理を行い、より可視化しやすくした2次元画像の例である。
【0093】
図25に示した2次元画像は、
図23に示した2次元画像に比べ、不良な状態と良好な状態、つまり黒部と白部のコントラストが上がっている。
【0094】
このように本実施形態によれば、良否判定部403は、不良の判定精度を向上させることができる。
【0095】
なお、各実施形態においては、光エネルギーを吸収する物質としてアルミニウムを適用したが、これに限るものではなく、光エネルギーを吸収して光エネルギーを熱エネルギーに変換する物質であれば、他の金属、樹脂などを適用可能である。
【0096】
なお、各実施形態においては、包装体50の包装材51としていわゆるレトルトパウチと呼ばれるものを適用したが、これに限るものではなく、物品を収容して開口部を封止する各種の包装材51に適用可能である。例えば、包装体50の包装材51としては、ヨーグルト容器の蓋、薬の錠剤を封入する容器などが挙げられる。
【0097】
以上、本発明の実施形態を図面により詳述してきたが、上記各実施形態は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記各実施形態の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
1 検査装置
3 画像取得装置
31 発光部
32 受光部
51 包装材
52 シール部
402 2次元画像取得部
403 良否判定部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0099】