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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035281
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】高出力レーザー増幅装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/10 20060101AFI20230306BHJP
   H01S 3/042 20060101ALI20230306BHJP
   H01S 3/091 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
H01S3/10 D
H01S3/042
H01S3/091
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142001
(22)【出願日】2021-08-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成28年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願」
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】高田 英行
(72)【発明者】
【氏名】吉富 大
(72)【発明者】
【氏名】鳥塚 健二
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋平
【テーマコード(参考)】
5F172
【Fターム(参考)】
5F172AE03
5F172AL01
5F172EE01
5F172NN05
5F172NN06
5F172NN07
5F172NN15
5F172NR13
5F172NR14
5F172NR28
5F172NS01
5F172NS09
5F172NS18
(57)【要約】
【課題】本発明は、高いピークパワーと平均出力を示すレーザー光を得ることができる高出力レーザー増幅装置の提供を課題とする。
【解決手段】本発明は、内部に直線状の流路を備え、流路の一端側に冷媒の導入側貯留部を他端側に冷媒の排出側貯留部を備えた増幅モジュールと、流路に沿って収容されたロッド状のレーザー増幅媒質と、レーザー増幅媒質の入力端側に接合された入力側エンドキャップと、レーザー増幅媒質の出力側に接合された対向側エンドキャップを具備し、レーザー増幅媒質がレーザー増幅用の希土類元素を含む固体レーザー材料からなり、エンドキャップがレーザー増幅用の希土類元素を含まない固体レーザー材料から、または、レーザー増幅用の希土類元素をレーザー増幅媒質より少なくした固体レーザー材料からなり、入力側エンドキャップから励起光と入力光が入力され、入力光を増幅する装置に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に直線状の流路を備え、前記流路の一端側に冷媒の導入側貯留部を前記流路の他端側に冷媒の排出側貯留部を備えた増幅モジュールと、
前記流路に沿って収容されたロッド状のレーザー増幅媒質と、
前記流路の一端側に位置する前記レーザー増幅媒質の入力端側に接合され、前記増幅モジュールの外壁に形成された透孔を介し一部を外部に出した入力側エンドキャップと、
前記流路の他端側に位置する前記レーザー増幅媒質の対向側に接合され、前記増幅モジュールの外壁に形成された透孔を介し一部を外部に出した対向側エンドキャップとを具備し、
前記レーザー増幅媒質がレーザー増幅用の希土類元素を含む固体レーザー材料からなり、前記エンドキャップが前記レーザー増幅用の希土類元素を含まない固体レーザー材料から、あるいは、前記レーザー増幅用の希土類元素を前記レーザー増幅媒質より少なくした固体レーザー材料からなり、
前記入力側エンドキャップから励起光と入力光が入力され、前記レーザー増幅媒質により前記入力光を増幅することを特徴とする高出力レーザー増幅装置。
【請求項2】
前記導入側貯留部と前記排出側貯留部に冷媒供給源が接続され、前記導入側貯留部と前記流路と前記排出側貯留部と前記冷媒供給源を介し冷媒の循環が可能であることを特徴とする請求項1に記載の高出力レーザー増幅装置。
【請求項3】
前記流路を挟んで前記流路の一端側に配置される導入側貯留部と、前記流路の他端側に配置される前記排出側貯留部が、相似形状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高出力レーザー増幅装置。
【請求項4】
前記固体レーザー材料が、イットリウム・アルミニウム・ガーネットあるいはイットリアからなることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の高出力レーザー増幅装置。
【請求項5】
前記入力側エンドキャップの外方に励起光と入力光を入力するための入力側第1のダイクロイックミラーが配置され、前記対向側エンドキャップの外方に励起光を入力し出力光を取り出すための出力側第1のダイクロイックミラーが配置されたことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の高出力レーザー増幅装置。
【請求項6】
前記入力側エンドキャップの外方に励起光と入力光を入力し、出力光を取り出すための入力側第2のダイクロイックミラーが配置され、前記入力側第2のダイクロイックミラーの外方に入力光を前記入力側第2のダイクロイックミラーに入力するとともに前記入力側第2のダイクロイックミラーからの出力光を取り出すための偏光子が設けられ、
前記対向側のエンドキャップの外方に励起光を入力し前記レーザー増幅媒質から出射された増幅光を前記レーザー増幅媒質に戻すための対向側第2のダイクロイックミラーが配置され、前記ダイクロイックミラーの外方に前記対向側第2のダイクロイックミラーから取り出された増幅光を反射するための反射ミラーが設けられ、前記偏光子と前記反射ミラーの間に1/4波長板が設けられたことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の高出力レーザー増幅装置。
【請求項7】
前記レーザー増幅媒質に含まれる希土類元素の濃度が、前記レーザー増幅媒質の長さ方向に沿って場所により濃度が変更されている請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の高出力レーザー増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高出力レーザー増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類元素を含むYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)の結晶やセラミックスに励起光を入力し、レーザー光を増幅する現象を利用したレーザー増幅装置が種々開発されている。
例えば、レーザー増幅媒質の両端にエンドキャップを備え、レーザー増幅媒質を水冷する技術が知られている(特許文献1参照)。
また、産業用に必要とされるmJクラスのパルスエネルギーとkWクラスの平均出力を有する高出力フェムト秒レーザー増幅器として、厚さ100μm程度の薄板形状(Thin Disk形状)のレーザー媒質と、40個の反射鏡を備えたミラーアレイと薄膜偏光子などを配置した装置が知られている(非特許文献1参照)。
更に、厚さ1mm程度の小型の矩形板状のレーザー媒質と、このレーザー媒質を冷却するヒートシンクを備え、レーザー媒質の両側に設けたダイクロイックミラーから繰り返しレーザー光を入射することでレーザー光の増幅を行うレーザー増幅装置が知られている(非特許文献2参照)。
また、ヒートシンクの内部にsingle crystal fiberと呼ばれる細型のロッド形状のYAG単結晶を収容し、外部の導光ファイバーからの励起光をロッド形状のYAG単結晶の一端にレンズで集光して入射し、シードレーザー光を集光ミラーで入力して該レーザー光を増幅し、ロッド形状のYAG単結晶の他端から増幅光として取り出すタイプのレーザー増幅装置が知られている(非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6366596号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Jan-Philipp Negel et al.,「1.1 kW average output power from a thin-disk multipass amplifier for ultrashort laser pulses」, Optics. Letters. Vol. 38, Issue 24, PP 5442-5445 (2013)
【非特許文献2】P. Russbueldt et al., 「Compact diode-pumped 1.1 kW Yb:YAG Innoslab femtosecond amplifier」, Optics. Letters. Vol 35, Issue 24, PP 4169-4171 (2010)
【非特許文献3】Frieder Beirow et al., 「Amplification of radially polarized ultra-short pulsed radiation to avarege output powers exceeding 250W in a compactsingle-stage Yb:YAG single-crystal fiber amplifier」, Letters and Optics. Applied Physics B. P148 (Pages 1 to 10), 14 August 2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーザー増幅装置の分野において、パルスレーザー光を増幅してピークパワーを増大したいとする要求が存在する。その際、コストや信頼性の観点から光学系が簡易な方が望ましく、そのためには、被増幅パルスをレーザー媒質に1回透過させた場合の利得が大きく、透過させる回数が少ない方が望ましいと考えられる。
そのためには、レーザー媒質に入力する励起光の空間密度を高めることが有望である。即ち、励起光を集光してレーザー媒質に入力すれば、被増幅パルス光をレーザー増幅媒質に1回透過させた場合の利得が大きく、透過させる回数を少なくすることができ、光学系を簡易にできることが期待される。
【0006】
しかしながら、従来のレーザー増幅装置の場合、励起光の集光度を高めると、励起光を入射するレーザー媒質表面付近で励起光の吸収により、励起光の中心部分に近いほど媒質の屈折率が高くなる。このため、いわゆる熱レンズ効果が発生し、被増幅レーザービームが集光して細くなる。そのことにより、レーザー光の強度が媒質中で高くなってレーザー媒質自身に損傷を引き起こしたり、レーザー増幅媒質の非線形現象により、レーザーパルスの波形が変形するといった不具合が発生する。レーザー増幅媒質は、特定の結晶性を有するが、熱膨張により縦方向と横方向で結晶変形の状態が異なると、レーザーパルスのビーム形状が変形する原因となる。
また、レーザー増幅媒質の温度が上がると上準位寿命が短くなる場合が多く、この場合に利得が下がり、結果的に得られるパルスエネルギーが減少する問題がある。
【0007】
熱レンズ効果を抑制するには、レーザー媒質の中心からレーザー媒質の表面までの温度差を小さくすれば良い。そのための方法として、媒質の直径を小さくし、媒質長を長くすることで、熱レンズ効果の低減と高い利得の両立を図ることができると考えられる。
【0008】
先の非特許文献1、2に記載されているレーザー増幅器は、どちらも1パス当たりの利得が低いため、利得を得ようとするとパス数を多くしなければならないなどの理由で光学系が複雑で大掛かりな装置となる課題がある。このため、高出力フェムト秒レーザー増幅器の小型化が困難であり、コストの低減も困難な課題がある。非特許文献1、2に記載されている技術では、特に光学系の小型化が困難であった。
【0009】
レーザー増幅媒質の直径を小さくし、媒質長を長くすることで、熱レンズ効果の低減と高い利得の両立をはかる技術が特許文献1として知られているが、非特許文献3に記載されているように、高出力パワー、例えば100W以上の高出力を良好なシングルモードで得ることは現状の技術では困難であると考えられている。
しかし、レーザー加工の分野では、良好な集光性やパルス幅がナノ秒以下の超短パルスでありながら、平均出力が100W以上のレーザー増幅器が望まれており、そのためにはシングルモード動作が必要であるが、現状の技術でこのようなレーザー増幅を行うことは困難であると考えられる。
【0010】
本願発明は、レーザー増幅媒質中に種となる被増幅パルス光を1方向のみ通過させるかあるいは1往復通過させるだけで、偏光方向に依存せず、十分な利得、高いピークパワーおよび高い平均出力を示すレーザー光を得ることができる高出力レーザー増幅装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本形態に係る高出力レーザー増幅装置は、内部に直線状の流路を備え、前記流路の一端側に冷媒の導入側貯留部を前記流路の他端側に冷媒の排出側貯留部を備えた増幅モジュールと、前記流路に沿って収容されたロッド状のレーザー増幅媒質と、前記流路の一端側に位置する前記レーザー増幅媒質の入力端側に接合され、前記増幅モジュールの外壁に形成された透孔を介し一部を外部に出した入力側エンドキャップと、前記流路の他端側に位置する前記レーザー増幅媒質の対向側に接合され、前記増幅モジュールの外壁に形成された透孔を介し一部を外部に出した対向側エンドキャップとを具備し、前記レーザー増幅媒質がレーザー増幅用の希土類元素を含む固体レーザー材料からなり、前記エンドキャップが前記レーザー増幅用の希土類元素を含まない固体レーザー材料から、あるいは、前記レーザー増幅用の希土類元素を前記レーザー増幅媒質より少なくした固体レーザー材料からなり、前記入力側エンドキャップから励起光と入力光が入力され、前記レーザー増幅媒質により前記入力光を増幅することを特徴とする。
なお、前記レーザー増幅媒質の希土類元素の濃度は、前記レーザー増幅媒質の長さ方向(被増幅レーザーが伝搬する方向)に対して、場所により濃度が変わっていても良い。
【0012】
(2)本形態の高出力レーザー増幅装置において、前記導入側貯留部と前記排出側貯留部に冷媒供給源が接続され、前記導入側貯留部と前記流路と前記排出側貯留部と前記冷媒供給源を介し冷媒の循環が可能であることが好ましい。
(3)本形態の高出力レーザー増幅装置において、前記流路を挟んで前記流路の一端側に配置される導入側貯留部と、前記流路の他端側に配置される前記排出側貯留部が、相似形状であることが好ましい。
(4)本形態の高出力レーザー増幅装置において、前記固体レーザー材料が、イットリウム・アルミニウム・ガーネットあるいはイットリアからなることが好ましい。
【0013】
(5)本形態の高出力レーザー増幅装置において、前記入力側のエンドキャップの外方に励起光と入力光を入力するための入力側第1のダイクロイックミラーが配置され、前記対向側のエンドキャップの外方に励起光を入力し出力光を取り出すための出力側第1のダイクロイックミラーが配置されたことが好ましい。
【0014】
(6)本形態の高出力レーザー増幅装置において、前記入力側のエンドキャップの外方に励起光と入力光を入力し、出力光を取り出すための入力側第2のダイクロイックミラーが配置され、前記入力側第2のダイクロイックミラーの外方に入力光を前記入力側第2のダイクロイックミラーに入力するとともに前記入力側第2のダイクロイックミラーからの出力光を取り出すための偏光子が設けられ、前記対向側のエンドキャップの外方に励起光を入力し前記レーザー増幅媒質から出射された増幅光を前記レーザー増幅媒質に戻すための対向側第2のダイクロイックミラーが配置され、前記ダイクロイックミラーの外方に前記対向側第2のダイクロイックミラーから取り出された増幅光を反射するための反射ミラーが設けられ、前記偏光子と前記反射ミラーの間に1/4波長板が設けられたことが好ましい。
(7)本形態の高出力レーザー増幅装置において、前記レーザー増幅媒質に含まれる希土類元素の濃度は、前記レーザー増幅媒質の長さ方向に沿って場所により濃度が変わっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る高出力レーザー増幅装置によれば、良好な集光性やパルス幅がナノ秒以下の超短パルスでありながら、100W以上の平均出力のレーザー光をシングルモードで得ることができるレーザー増幅装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る高出力レーザー増幅装置の第1実施形態を示す要部断面図である。
図2】同第1実施形態の高出力レーザー増幅装置の全体構成を示す概要図である。
図3】同第1実施形態の高出力レーザー増幅装置の要部を示すもので、図3(a)は増幅モジュールの平面図、図3(b)は増幅モジュールの正面図、図3(c)は増幅モジュールの側面図である。
図4】同第1実施形態の高出力レーザー増幅装置の要部を示すもので、図4(a)は増幅モジュールの中央部で断面をとった水平断面図、図4(b)は増幅モジュールの横断面図、図4(c)は増幅モジュールの中央部で断面をとった垂直断面図である。
図5】本発明の高出力レーザー増幅装置に係る第2実施形態の全体構成を示す概要図である。
図6】本発明の高出力レーザー増幅装置に係る第3実施形態の全体構成を示す概要図である。
図7】本発明の高出力レーザー増幅装置に係る第4実施形態の全体構成を示す概要図である。
図8】本発明の高出力レーザー増幅装置に係る第5実施形態の全体構成を示す概要図である。
図9】実施例において用いたレーザー増幅装置のサイズを示すための断面図である。
図10】実施例のレーザー増幅装置において得られた平均励起パワーと平均出力パワーを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合がある。
【0018】
<第1実施形態>
図1図2は、本発明に係る第1実施形態のレーザー増幅装置を示すもので、このレーザー増幅装置1は、一例としてステンレス鋼製の円筒状の筐体の内部に直線状の流路2と導入側貯留部3と排出側貯留部4を備えた増幅モジュール5を主体として構成されている。増幅モジュール5の流路2にレーザー増幅用の丸棒状(ロッド状)のレーザー増幅媒質6が収容され、レーザー増幅媒質6の一端側に入力側エンドキャップ7が接合され、レーザー増幅媒質6の他端側に対向側エンドキャップ8が接合されている。
なお、筐体を構成する材料はステンレス鋼に限らず、水に浸されず、強度が充分な材料であれば、エンジニアリングプラスチックなどを採用しても良い。例えば、アルミニウム合金、銅、真鍮、ポリアセタール樹脂(デルリン:デュポン(株)商品名)、PEEK(Poly Ether Ether Ketone)、ナイロン、塩化ビニール、アクリル、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)などの材料から筐体を構成しても良い。
また、図2に示すように増幅モジュール5の入力側(図2の左側)に入力側第1のダイクロイックミラー9が配置され、増幅モジュール5の出力側(図2の右側)に出力側第1のダイクロイックミラー10が配置されてレーザー増幅装置1が構成されている。
【0019】
増幅モジュール5の一端側内部に空間を設けて導入側貯留部3が形成され、増幅モジュール5の他端側内部に空間を設けて排出側貯留部4が形成されている。
後に示す異なる方向から増幅モジュール5の断面を見た図4(a)~(c)にも示されるように、導入側貯留部3は、増幅モジュール5の長さ方向(図1の左右方向)に均一の奥行きを有し、図4(b)に示すように増幅モジュール5の横断面をとった場合に断面円形状の空間である。導入側貯留部3と排出側貯留部4は奥行きが同一サイズであり、内径も同一サイズの相似形状に形成されている。
なお、導入側貯留部3と排出側貯留部4は相似形状であることが望ましいが、相似形状を必須とする訳ではない。
【0020】
図1に示す増幅モジュール5の左端側の周壁5Aの上部には導入側貯留部3に連通する導入口12が形成され、導入口12に継手部材13が接続されている。図1に示す増幅モジュール5の右端側の周壁5Bの上部には排出側貯留部4に連通する排出口14が形成され、排出口14に継手部材16が接続されている。
増幅モジュール5の中心部には、導入側貯留部3の中心部と排出側貯留部4の中心部を連通する横断面円形状の直線状の流路2が形成されている。
【0021】
増幅モジュール5に接続されている継手部材13と継手部材16には、接続管11を介し冷媒供給源17が接続されている。この冷媒供給源17から継手部材13を介し導入側貯留部3に液体冷媒を供給し、この液体冷媒を流路2を介し排出側貯留部4に流すことができる。そして、この液体冷媒を継手部材16と接続管11を介し冷媒供給源17に戻し、再度冷媒供給源17から導入側貯留部3に供給することで液体冷媒の循環を行うことができる。液体冷媒としては水を使用できる。
【0022】
増幅モジュール5の長さ方向に沿う導入側貯留部3の奥行きは、一例として図4(a)、(c)にも示すように増幅モジュール5の全体長さの数分の一、例えば、1/8程度に形成されている。図4(b)に示すように導入側貯留部3の周囲を囲んでいる増幅モジュール5の周壁5Aは円形状であるが、重要なことは導入側貯留部3の形状であり、周壁5Aの外面の形状は円形でも四角形などの多角形などでも良い。例えば、図4(b)に示す円形状の導入側貯留部3の形状を維持したまま、周壁5外面の断面輪郭を正方形状に形成しても良い。即ち、周壁5の肉厚が均一である必要は無い。
増幅モジュール5の長さ方向に沿う排出側貯留部4の奥行きは、一例として図4(a)、(c)に示すように増幅モジュール5の全体長さの数分の一、例えば、1/8程度に形成されている。図4(a)、(c)に示すように排出側貯留部4の周囲を囲んでいる増幅モジュール5の周壁5Bは円形状であるが、重要なことは排出側貯留部4の形状であり、周壁5Bの外面の形状は円形でも四角形などの多角形などでも良い。
導入側貯留部3の奥行きと排出側貯留部4の奥行きは同等サイズであり、導入側貯留部3と排出側貯留部4の内径も同等サイズである。このため、導入側貯留部3と排出側貯留部4は先に説明した通り相似形状とされている。先に説明した通り、導入側貯留部3と排出側貯留部4は相似形状であることが望ましいが、相似形状を必須とする訳ではない。
なお、導入側貯留部3と排出側貯留部4の奥行きや高さは図面に示す例に限らず、任意に設定して良いが、できるだけ内容積を大きくとることが望ましい。
【0023】
増幅モジュール5の中心軸に沿うように導入側貯留部3の中心部と排出側貯留部4の中心部を結ぶ直線状の透孔が形成され、この透孔を囲むように筐体を構成する材料からなる筒壁部15が形成され、筒壁部15の内部に流路2が構成されている。
【0024】
筒壁部15の一端部15aが所定長さ、導入側貯留部3に突出され、筒壁部15の他端部15bが所定長さ排出側貯留部4に突出されている。導入側貯留部3に突出された一端部15aの長さと排出側貯留部4に突出された他端部15bの長さは図1の例では同一にされている。ただし、一端部15aの長さと他端部15bの長さは、同一でなくても差し支えない。
また、筒壁部15の一端部15aを除外した導入側貯留部3の体積と、筒壁部15の他端部15bを除外した排出側貯留部4の体積も同等とされていることが好ましい。
従って、導入側貯留部3の内容積と排出側貯留部4の内容積は同一とされ、筒壁部15の一端部15aと他端部15bが占める体積を加味したとして、導入側貯留部3と排出側貯留部4は相似形状とされていることが好ましい。勿論、導入側貯留部3の体積と排出側貯留部4の体積が同一でなくとも良く、導入側貯留部3と排出側貯留部4が相似形状でなくとも良い。
【0025】
増幅モジュール5の中心に設けられている流路2に丸棒状のレーザー増幅媒質6が設置されている。レーザー増幅媒質6は、一端側に短い丸棒状(ロッド状)の入力側エンドキャップ7が接合され、他端側に短い丸棒状(ロッド状)の対向側エンドキャップ8が接合されている。
本実施形態において、入力側エンドキャップ7と対向側エンドキャップ8は、レーザー増幅媒質6と同一径の棒状体からなる。入力側エンドキャップ7と対向側エンドキャップ8の長さは後述する冷却効率を確保するため、レーザー増幅媒質6の半径以上であることが望ましい。
【0026】
レーザー増幅媒質6はレーザー増幅が可能な固体レーザー材料(レーザー増幅媒質)、例えば、YAGセラミックス(イットリウムとアルミニウムの複合酸化物からなるガーネット構造の結晶体:Yl512)やイットリア(Y)セラミックス、酸化ルテチウム(Lu)セラミックス、酸化スカンジウム(Sc)セラミックス、YSAG(YAlSc12)セラミックス)などの希土類含有セラミックスからなる。
レーザー増幅媒質6を結晶体から構成すると、結晶が有する異方性により、熱膨張を起因として出力ビーム形状の変形を生むおそれが高くなる。結晶体であると、結晶方位によって必然的に熱膨張率や屈折率に方向性を有するが、上述のセラミックスからなるレーザー増幅媒質6であれば、結晶の異方性を有しないため、出力ビーム形状の変形を生むおそれを低くできる。
【0027】
レーザー増幅媒質6の一端は筒壁部15の一端部15aの先端と同程度の位置(但し、内側が望ましい)に配置され、この一端に入力側エンドキャップ7が接合されている。レーザー増幅媒質6の他端は筒壁部15の他端部15bの先端と同程度の位置(但し、内側が望ましい)に配置され、この他端に対向側エンドキャップ8が接合されている。エンドキャップ7、8はレーザー増幅媒質6と同一外径の丸棒状に形成されている。
入力側エンドキャップ7と対向側エンドキャップ8は、レーザー増幅媒質6に含まれているレーザー増幅用の希土類元素を含まないか、含んでいたとして、レーザー増幅媒質6よりもレーザー増幅用の希土類元素を少なく含むセラミックスからなる固体レーザー材料からなる。例えば、YAGセラミックス(イットリウムとアルミニウムの複合酸化物からなるガーネット構造の結晶体:Yl512)やイットリア(Y)セラミックス、酸化ルテチウム(Lu)セラミックス、酸化スカンジウム(Sc)セラミックス、YSAG(YAlSc12)セラミックス)からなる。
【0028】
レーザー増幅媒質6をロッド状(例えば直径:1~3mm)にするのは、断面を小さくすることで、レーザー増幅媒質6の中心部と周辺部の温度差を少なくして熱レンズ効果を低減するためである。また、直径に比べて十分長くする(例えば長さ:20~50mm)のは、1パス当たりの利得を大きくする(例えば2~10倍)ためである。レーザー増幅媒質6の直径は連通管15の内径より小さいので、レーザー増幅媒質6の外周面と連通管15の内周面との間に流路2が形成されている。また、レーザー増幅媒質6は連通管15の軸心を通過するように配置され、レーザー増幅媒質6の外周面と連通管15の内周面との間にはレーザー増幅媒質6の全長かつ全周に渡り均一幅の隙間が形成され、この隙間が流路2を構成する。また、レーザー増幅媒質6の外径とエンドキャップ7、8の外径が同一であるため、エンドキャップ7、8の外周面と連通管15の内周面との間にも、エンドキャップ7、8の全長かつ全周に渡り均一幅の隙間が形成され、この隙間が流路2の一部を構成する。
【0029】
レーザー増幅媒質6の一端側の入力側エンドキャップ7は、導入側貯留部3の中心部を通過するように配置されている。また、流路2を増幅モジュール5の長さ方向に延長した位置の外壁5aに形成されている透孔5Dを挿通し、入力側エンドキャップ7が増幅モジュール5の外部に一部突出されている。
レーザー増幅媒質6の他端側の対向側エンドキャップ8は、排出側貯留部4の中心部を通過するように配置されている。また、流路2を増幅モジュール5の長さ方向に延長した位置の外壁5bに形成されている透孔5Eを挿通し、対向側エンドキャップ8が増幅モジュール5の外部に一部突出されている。
なお、前記レーザー増幅媒質6における希土類元素の濃度は、レーザー増幅媒質6の長さ方向(被増幅レーザーが伝搬する方向)に対して、場所により濃度が変わっていても良い。
例えば、後述する種々の形態を含めて励起光強度が大きいエンドキャップ7あるいはエンドキャップ8に近い部分の熱レンズ効果を低減するために、エンドキャップ7、8に近い部分のレーザー増幅媒質6の希土類元素の濃度を下げることで励起光吸収を小さくして熱レンズ効果を抑えることができる。また、励起光強度が低くなってくるレーザー増幅媒質6の中心部分では濃度を上げて励起光吸収を大きくすることで利得の低下を防ぎ、トータルとして、熱レンズ効果を低減しつつ、利得を維持する構成を採用できる。
【0030】
増幅モジュール5において、入力側エンドキャップ7が一部突出された部分の外側に入力側第1のダイクロイックミラー9が設けられ、対向側エンドキャップ8が一部突出された部分の外側に対向側第1のダイクロイックミラー10が設けられている。
入力側第1のダイクロイックミラー9は、レーザー増幅媒質6においてレーザー光を増幅する場合に必要な励起光を通過させる。また、ダイクロイックミラー9は、入射光としての被増幅パルス光を反射させて入力側エンドキャップ7に入力する機能を有する。
対向側第1のダイクロイックミラー10は、レーザー増幅媒質6に対しレーザー光を増幅する場合に必要な励起光を通過させる。また、ダイクロイックミラー10は、レーザー増幅媒質6で増幅され、対向側エンドキャップ8から出射された出力光を反射して出射光とする機能を有する。
【0031】
レーザー増幅装置1を用いて被増幅パルス光の増幅を行うには、まず、水などの液体冷媒を冷媒供給源17から導入側貯留部3に供給し、導入側貯留部3に液体冷媒Wを満たし、この液体冷媒を導入側貯留部3から流路2に流す。次いで、液体冷媒Wを排出側貯留部4に流し、排出側貯留部4から冷媒供給源に液体冷媒Wを戻し、再度冷媒供給源から導入側貯留部3に供給することで液体冷媒Wの循環を行う。流路2を流れる液体冷媒Wにより流路2内のレーザー増幅媒質6を効率良く均等に冷却することができる。
【0032】
次いで、ダイクロイックミラー9から入力側エンドキャップ7を介しレーザー増幅媒質6に被増幅パルス光と励起光を入力する。また、ダイクロイックミラー10から対向側エンドキャップ8を介しレーザー増幅媒質6に励起光を入力する。これにより、レーザー増幅媒質6において被増幅パルス光を増幅でき、この増幅パルス光を対向側エンドキャップ8から出力し、図2に示すようにダイクロイックミラー10で反射させて出力光が得られる。
【0033】
上述のレーザー増幅装置1においては、流路2に沿ってレーザー増幅媒質6の長さ方向に均一に流れる液体冷媒Wによりレーザー増幅媒質6を均一冷却しながら被増幅パルス光の増幅を行っている。即ち、冷却はレーザー増幅媒質6に透過する励起光と被増幅パルス光の進行方向の中心軸(レーザー増幅媒質6の中心軸でもある)に対して軸対象になるように行っている。
【0034】
冷却を軸対象になるように行うのは、熱的にも異方性のないセラミック製のレーザー増幅媒質6に対し軸対象冷却を行うことで熱レンズ効果を軸対象になるように調整し、出力ビーム形状の変形を低減するためである。レーザー増幅媒質6に対し軸対象になるように冷却するため、液体冷媒Wがレーザー増幅媒質6の近傍を流れる前に、図1に示すように、レーザー増幅媒質6の近傍を流れる断面に比べ十分大きな断面を持ち、相似形状(流路2を介し軸対称)になっている貯留部3、4を設けている。貯留部3、4を設けることでレーザー増幅媒質6の近傍での液流を均一になるように調整している。また、横断面円形状の流路2においてその中心に丸棒状のレーザー増幅媒質6を配置し、レーザー増幅媒質6の周囲に均一な厚さの冷却媒体Wの流れを生じさせることで、レーザー増幅媒質6の軸対称冷却を図っている。
【0035】
更に、レーザー増幅媒質6の両端に接合されている入力側エンドキャップ7と対向側エンドキャップ8においてもそれらの冷却を軸対象になるように冷却できる。
冷媒供給源17から導入側貯留部3に流入した液体冷媒は、筒壁部15の一端部15a側から流路2に流入し、入力側エンドキャップ7とレーザー増幅媒質6に沿って流路2を流れ、排出側貯留部4に至る。液体が流路2を通して常に流れていることでレーザー増幅媒質6とエンドキャップ7、8を十分に冷却することができる。
【0036】
一般的なレーザー増幅装置の場合、励起光の集光度を高めると、励起光が入射するレーザー媒質表面付近で励起光の吸収により、励起光の中心部分に近いほど媒質の屈折率が高くなり、いわゆる熱レンズ効果により、被増幅ビームが集光して細くなる。そのことにより、レーザー光強度が媒質中で高くなって媒質自身に損傷を引き起こしたり、媒質による非線形現象によるパルス波形が変形するといった現象が起こる。また、レーザー媒質の温度が上がると上準位寿命が短くなる場合が多く、この場合には利得が下がり、結果的に得られるパルスエネルギーが減ってしまう。
【0037】
熱レンズ効果を抑制するには、レーザー増幅媒質6の中心からレーザー増幅媒質6の表面までの温度差を小さくすれば良い。そのための方法として、レーザー増幅媒質6の直径を小さくし、媒質長を長くするとともに、上述の軸対称冷却を実施することにより、熱レンズ効果の低減と高い利得の両立を図ることができる。
また、エンドキャップ7及びエンドキャップ8は励起光が入力されて発熱の大きい部位となる可能性を有するが、エンドキャップ7及びエンドキャップ8を軸対称に強制冷却すると、エンドキャップ7及びエンドキャップ8に接するレーザー増幅媒質6において一番発熱する部分を効果的に冷却することができ、それにより熱レンズ効果を効果的に低減できる。エンドキャップ7及びエンドキャップ8は、レーザー増幅媒質6ほどは励起光を吸収しないか、または、全く吸収しないために、レーザーの増幅をレーザー増幅媒質6ほどは行わないか、全く行わないため、発熱も少なくなる。このため、エンドキャップ7及びエンドキャップ8の温度上昇を抑制し、出力ビーム形状の変形を防止できる。
また、エンドキャップ7及びエンドキャップ8の厚みをレーザー増幅媒質6の半径以上の大きさに調整することで、液体冷媒Wとの十分な接触面積を確保し、均一、かつ、効果的な冷却を行うことができる。
【0038】
更に、本実施形態のレーザー増幅装置1では、レーザー増幅媒質6やエンドキャップ7、8の材料に、光学特性や熱的特性、機械的特性について等方性を有するセラミックスを用いている。このことにより、励起光のビーム形状が軸対象の場合、熱レンズ効果も軸対象になり、被増幅パルス光の熱レンズ効果による変形も軸対象になる。
【0039】
また、高効率化に必要な励起光と被増幅パルス光のモードマッチングの改善のため、励起光を媒質の側面に当たらないように伝搬させることが好ましい。そうすることにより、被増幅パルス光と励起光の空間的な重なり率を向上させることができ、増幅率の高効率化を図ることができる。
【0040】
本実施形態のレーザー増幅装置1では、レーザー増幅媒質6の励起は、図2に示すように、ダイクロイックミラー9、10を用いてレーザー増幅媒質6の両端からレーザー増幅媒質6の同軸方向に励起光を入力することにより実施する。
これは、このようにすることで被増幅パルス光とのモードマッチングを改善し、増幅効率を高めるためである。
【0041】
本実施形態のレーザー増幅装置1では、上述の軸対称冷却により上述の問題を解消し、熱レンズ効果を抑制して被増幅パルス光の波形の変形を抑制し、利得の低下を抑制することができる。
また、エンドキャップ7、8では、レーザー増幅媒質6ほどは励起光を吸収しないか、または、全く吸収しないために、レーザーの増幅をレーザー増幅媒質6ほどは行わないか、全く行わないため、発熱も少なくなる上に、エンドキャップ7。8も上述の軸対称になるような冷却を行うので、エンドキャップ7、8における熱レンズ効果の抑制と被増幅パルスのビーム形状や波形の変形防止をなし得る。
以上説明した効果が相俟って、本実施形態のレーザー増幅装置1では、熱レンズ効果の低減と高い利得の両立を図り、高出力パワー、例えば100W以上の高出力レーザーをシングルモードで得ることができる。
【0042】
本実施形態では、図2に示すように被増幅パルス光を一方向に入射させて出射するだけで十分な利得(例えば10倍以上)を得ることができ、高いパルスエネルギーおよび高い平均出力を得られるようなシンプルな構造の高出力のレーザー増幅装置1を構築できる。
また、レーザー増幅装置1は、非特許文献1、2などに記載の従来装置と比較し、光学系を簡略化できるので、高出力レーザーの出力が可能でありながら、小型化、軽量化に寄与する。
【0043】
レーザー加工の分野では、良好な集光性やパルス幅がナノ秒以下の超短パルスで平均出力が100W以上のレーザー増幅器が望まれており、そのためにはシングルモード動作が必要であるが、本実施形態のレーザー増幅装置1で実現可能となる。
【0044】
<第2実施形態>
図5は本発明の第2実施形態に係るレーザー増幅装置20を示すもので、流路2と導入側貯留部3と排出側貯留部4を備えた増幅モジュール5を主体として構成されている点は先の第1実施形態の構造と同様である。また、増幅モジュール5においてロッド状のレーザー増幅媒質6に入力側エンドキャップ7とエンドキャップ8が接合されている構造も同様である。
第2実施形態では、増幅モジュール5の一側に入力側第2のダイクロイックミラー18が設けられ、他側に対向側第2のダイクロイックミラー19が設けられ、ダイクロイックミラー18に対応する偏光子21が設けられ、ダイクロイックミラー19に対応する反射ミラー22と1/4波長板23が設けられている点が異なる。
【0045】
第2実施形態において、偏光子21は、入力側第2のダイクロイックミラー18の外方に設けられ、入力光を入力側第2のダイクロイックミラー18に入力することができる。また、入力側第2のダイクロイックミラー18で反射された増幅後のパルス光を出力光として取り出すために設けられている。
また、反射ミラー22は、対向側第2のダイクロイックミラー19の外方に設けられ、ダイクロイックミラー19で反射された増幅後のパルス光を反射してダイクロイックミラー19に戻すために設けられている。また、ダイクロイックミラー19と反射ミラー22の間に1/4波長板23が設けられている。なお、1/4波長板23は、偏光子21と反射ミラー22の間の光路上のいずれの場所に配置されても良い。1/4波長板23を設けることで、偏光子21で反射されてきた入力光の偏光方向が90°回転し、偏光子21から出力光が透過して出力される。
なお、入力光が偏光子21を透過してダイクロイックミラー18に向かい、ダイクロイックミラー18から反射されてきた出力光が偏光子21で反射されて出力されるという構成を採用しても良い。
【0046】
第2実施形態のレーザー増幅装置20は、偏光子21から被増幅パルス光(入力光)をダイクロイックミラー18に入射し、ダイクロイックミラー18から入力光を増幅モジュール5の入力側エンドキャップ7に入力する。この入力光をレーザー増幅媒質6で増幅後、ダイクロイックミラー19から1/4波長板23、反射ミラー22、1/4波長板23を通過した増幅パルス光とし、この増幅パルス光をダイクロイックミラー19で再度、対向側エンドキャップ8を介しレーザー増幅媒質6に入射する。
レーザー増幅媒質6による2回目の増幅を行いし、この2回目の増幅パルス光を入力側エンドキャップ7からダイクロイックミラー18に戻し、ダイクロイックミラー18で反射させて偏光子21を通過させることで偏光子21から出力光を得ることができる。
【0047】
第2実施形態のレーザー増幅装置20によれば、図5に示すように増幅モジュール5に対しレーザー光を1往復させるだけで十分な利得(例えば10倍以上)、高いパルスエネルギーおよび高い平均出力の増幅パルス光を得られるようなシンプルな構造のレーザー増幅装置20を構築することができる。
その他、増幅モジュール5の構成は第1実施形態と同等なので、第1実施形態のレーザー増幅装置1で得られる作用効果と同等の作用効果を得ることができる。
【0048】
第2実施形態のレーザー増幅装置20により、第1実施形態のレーザー増幅装置1と同様に、熱レンズ効果の低減を図るとともに、更に高い利得の出力光を得ることができ、更なる高出力パワー、例えば100W以上の高出力レーザーをシングルモードで得ることができる。
【0049】
なお、本発明に係るレーザー増幅装置はこれまで説明してきた実施形態以外に様々な実施形態を採用できる。
図6は第3実施形態に係るレーザー増幅装置30を示すが、図2に示す第1実施形態の構造において、ダイクロックミラー9を略し、ダイクロックミラー9を設置していた側から増幅モジュール5に対し入力光のみを入力するように構成した装置である。増幅モジュール5の構造は第1実施形態と同等である。
図6に示すレーザー増幅装置30によっても増幅した出力光を得ることができる。
【0050】
図7は第4実施形態に係るレーザー増幅装置40を示すが、図5に示す第2実施形態の構造において、ダイクロックミラー19を略し、ダイクロックミラー19を設置していた側に反射ミラー22と1/4波長板23を設置した装置である。増幅モジュール5の構造は第1実施形態と同等である。
図7に示すレーザー増幅装置40によっても増幅した出力光を得ることができる。
【0051】
図8は第5実施形態に係るレーザー増幅装置50を示すが、図6に示す第3実施形態の構造において、ダイクロックミラー10の代わりにダイクロックミラー51を設置し、増幅モジュール5を通過して増幅された増幅光の光路を変更せずにそのままダイクロックミラー51を通過させて出力光を得るように構成した装置である。
図8の第3実施形態では、入力光の光路を維持したまま出力光として取り出し、励起光は出力光の光路に対し異なる方向からダイクロックミラー51に入射させ、ダイクロックミラー51を介し増幅モジュール5に入力する。増幅モジュール5の構造は第1実施形態と同等である。
なお、ここで説明しているすべてのダイクロイックミラーの反射角は任意に設定することが可能である。
図8に示すレーザー増幅装置50によっても増幅した出力光を得ることができる。
【実施例0052】
図9に断面構造を示すステンレス鋼製の筐体から本実施例の増幅モジュール60を構成した。図9に示す増幅モジュール60において、図1に示す増幅モジュール5と同じ構成要素には同等の符号を付している。
増幅モジュール60において各部のサイズは図9に示す通りである。レーザー増幅媒質6の材料は添加濃度が0.6%のイッテルビウム添加YAGセラミックスで、サイズは直径が2.2mmで、長さが40mmである。エンドキャップ7、8のサイズは、いずれも、直径が2.2mmで、長さが4mmである。
エンドキャップ7、8において増幅媒質6との接合面の逆側の面には、励起光と被増幅光の表面反射を低減するために、無反射コーティングを施した。液体冷媒は水を採用し、液体冷媒の流量は毎分6Lとした。
【0053】
本実施例において、レーザー増幅試験は図6に示す構成で行った。被増幅入射レーザーパルスは、繰り返し周波数が1MHz、パルス幅が3ナノ秒、パルスエネルギーが135マイクロジュール、平均パワーが135Wである。励起光入射側の増幅媒質の端面での励起光のビーム径は1mmである。
図10に本実施例の増幅モジュール60で得られた平均励起パワーに対する平均出力パワーの変化を示す。励起光の平均パワーが1270Wのとき、上述の条件で得られた出力平均パワーは300W、パルスエネルギーは300マイクロジュールであった。このときの利得は約2.2であった。
従って、本実施例により、100W~300Wの高出力レーザーを出力することができた。
【符号の説明】
【0054】
1…レーザー増幅装置、2…流路、3…導入側貯留部、4…排出側貯留部、5…増幅モジュール、6…レーザー増幅媒質、7…入力側エンドキャップ、8…対向側エンドキャップ、9…入力側第1のダイクロイックミラー、10…対向側第1のダイクロイックミラー、15…筒壁部、17…冷媒供給源、18…入力側第2のダイクロイックミラー、19…対向側第2のダイクロイックミラー、20…レーザー増幅装置、21…偏光子、22…反射ミラー、23…1/4波長板、30、40、50、60…レーザー増幅装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10