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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035400
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】スフレ生地練込用水中油型乳化物
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20230306BHJP
   A21D 2/08 20060101ALI20230306BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20230306BHJP
【FI】
A23D7/00 506
A21D2/08
A21D13/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142228
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三輪 朋子
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 聡
【テーマコード(参考)】
4B026
4B032
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG04
4B026DL03
4B026DL04
4B026DL07
4B026DP01
4B026DP03
4B026DX04
4B032DB05
4B032DG02
4B032DK12
4B032DK15
4B032DK17
4B032DK31
4B032DK42
4B032DK44
4B032DK46
4B032DK48
4B032DK49
4B032DP08
4B032DP23
4B032DP40
(57)【要約】
【課題】湯煎焼きではなく直焼きであっても、しっとりとしていながらねちゃつかず、焼き落ちしにくいスフレケーキを得ることができるスフレ生地練込用水中油型乳化物を提供すること。
【解決手段】澱粉類、油脂、増粘安定剤及び卵白を含有し、タンパク質含量が1~15質量%であり、油脂含量が5~40質量%である、スフレ生地練込用水中油型乳化物である。また上記スフレ生地練込用水中油型乳化物を使用したスフレケーキ生地、及びこれを焼成してなるスフレケーキである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉類、油脂、増粘安定剤及び卵白を含有し、タンパク質含量が1~15質量%であり、油脂含量が5~40質量%である、スフレ生地練込用水中油型乳化物。
【請求項2】
上記澱粉類が膨潤抑制澱粉を50質量%超含有する、請求項1に記載のスフレ生地練込用水中油型乳化物。
【請求項3】
上記膨潤抑制澱粉が、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ及びタピオカ澱粉から選ばれる1種又は2種以上を原料澱粉としたリン酸架橋澱粉である、請求項2に記載のスフレ生地練込用水中油型乳化物。
【請求項4】
乳蛋白質を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のスフレ生地練込用水中油型乳化物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のスフレ生地練込用水中油型乳化物を使用したスフレケーキ生地。
【請求項6】
請求項5に記載のスフレケーキ生地を焼成してなるスフレケーキ。
【請求項7】
請求項5に記載のスフレケーキ生地を直焼きで焼成する、スフレケーキの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スフレケーキを安定的に製造するために用いるスフレ生地練込用水中油型乳化物に関する。
【背景技術】
【0002】
スフレとは、メレンゲに様々な材料を混ぜオーブンで焼いて作る、軽くふわふわとした食感ときめの細かな内相を特徴とする料理である。洋菓子においては、そのようなスフレ様の食感を示すケーキをスフレケーキと称し、広く普及し、幅広い年齢層から好まれている。また近年は、その一種として、焼型で焼成するスフレケーキに対し、熱板上で直焼きするスフレパンケーキも広がりを見せている。
【0003】
これらの基本的な製法は、卵白と糖類を併せて起泡したメレンゲに、卵黄類、穀粉類、糖類、及び、チーズ等の風味成分等を炊きあげたカスタードクリームを、メレンゲの泡を潰さないように添加しさっくりと混合したスフレ生地を、焼成、好ましくは湯煎焼きするというものである。
【0004】
しかし、メレンゲはその製造に熟練を要すること、及び、泡構造が不安定で消泡しやすいため保存性が悪いという問題がある。また、カスタードクリームの方も澱粉類と卵類を炊き上げて製造するものであるため保存性が悪く、経時的に物性が変化するため安定した製造が困難であった。さらに、カスタードクリームとメレンゲの混合時に、メレンゲの泡を潰さないようにさっくりと混合する操作は熟練を要するものであった。
さらに、スフレケーキの基本製法である湯煎焼きは火通りの判断も難しく、焼き落ちしやすいなど、熟練を要するものであった。
【0005】
そのため、安定して大量生産することができるスフレケーキの製造方法が各種検討されてきた。
例えば、油脂、糖質、澱粉またはセルロース、蛋白質および増粘剤を含有してなる水中油型乳化組成物を添加する方法(例えば特許文献1参照)、乳化剤及び気泡安定剤を添加し、配合材料をオ-ルインミックス法でホイップする方法(例えば特許文献2参照)、粒径が30μmより大きい澱粉粒子を含有し、且つゲル化開始温度が37℃以上であり、熱可逆的にゲル化することを特徴とする加熱食品用クリーム類を使用する方法(例えば特許文献3参照)、シュー生地とメレンゲを混合した生地を使用する方法(例えば特許文献4参照)、少なくとも乳蛋白質とゲル化剤と水とで構成される複合体を使用する方法(例えば特許文献5参照)、フラワーペースト類、シュー生地、及び、メレンゲを混合した生地を使用する方法(例えば特許文献6参照)、澱粉0.5~5重量%、タンパク質5~10重量%、油脂10~30重量%、卵黄油、安定剤を含有することを特徴とするスフレ菓子のベースクリームを使用する方法(例えば特許文献7参照)などが提案されている。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の方法は、セルロースを含有するため、その混合時に比重が落ちてしまい、体積の小さな、ねちゃついた食感のスフレケーキになってしまう問題があり、特許文献2に記載の方法は単に従来のスポンジケーキの比重を軽くしただけであるため、きめの粗い内相のスフレケーキになってしまう問題があり、特許文献3に記載の方法は単にカスタードクリームに代えて特定の澱粉とゲル化剤を使用したクリームを使用することで、スフレケーキの口溶けの向上を図ったものであり、体積や内相を改良するものではなく、特許文献4に記載の方法は各種のケーキにスフレ様の食感を付与する発明であるが、ケーキ生地の種類によっては食感がもちもちしたりひきのある食感、あるいはねちゃついた食感になるなどの問題があった。さらに特許文献5に記載の方法はやや焼き落ちしやすい問題があり、特許文献6に記載の方法はややもっちりした食感になりやすい問題に加え、3種の生地を準備することが必要であるため、製造が煩雑である問題があった。さらに特許文献7に記載の方法は、タンパク質含量が高く卵黄油を使用するためねちゃついた食感になってしまうという問題があった。
さらにこれらの製法では、湯煎焼きではなく直焼きで焼成すると、しっとりしたスフレケーキの食感が失われやすいという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6-253720号公報
【特許文献2】特開平7-213218号公報
【特許文献3】特開2003-135015号公報
【特許文献4】特開2005-151924号公報
【特許文献5】特開2009-082097号公報
【特許文献6】特開2016-198063号公報
【特許文献7】特開2016-189717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、湯煎焼きではなく直焼きであっても、しっとりとしていながらねちゃつかず、焼き落ちしにくいスフレケーキを得ることができるスフレ生地練込用水中油型乳化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、澱粉類、増粘安定剤に加え卵白を使用し、タンパク質含量及び油脂含量を特定範囲とした水中油型乳化物を使用することで、上記問題を解決可能であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、澱粉類、増粘安定剤及び卵白を含有し、タンパク質含量が1~15質量%であり、油脂含量が5~40質量%である、スフレ生地練込用水中油型乳化物を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、湯煎焼きではなく直焼きであっても、しっとりとしていながらねちゃつかないスフレケーキを、焼き落ちすることなく安定して得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明のスフレ生地練込用水中油型乳化物について詳述する。
上記スフレ生地練込用水中油型乳化物は、澱粉類を含有する。
澱粉類としては、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉等の小麦粉類、ライ麦粉、大麦粉、米粉等のその他の穀粉類、アーモンド粉、へーゼルナッツ粉、カシューナッツ粉、オーナッツ粉、松実粉等の堅果粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉等の澱粉や、これらをアミラーゼ等の酵素で処理したものや、α化処理、分解処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理、グラフト化処理等の中から選ばれた1種又は2種以上の処理を施した化工澱粉等を挙げることができ、この中から1種又は2種以上を含有することができる。
【0012】
本発明では、澱粉類として、その50質量%超、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100%に膨潤抑制澱粉を使用することが好ましい。
【0013】
上記膨潤抑制澱粉としては、アミロース含量が好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上であるハイアミロース澱粉や、リン酸架橋処理、乳化剤処理、湿熱処理等によって、澱粉ミセルを強化した化工澱粉等が挙げられる。なお、上記ハイアミロース澱粉の澱粉種については、米やコーンが一般的であるが、特に限定されない。また、上記化工澱粉の原料澱粉としては、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、タピオカ澱粉等の市販の澱粉質材料等を用いることができる。また、これらの澱粉質材料をあらかじめ、エーテル処理、酸化処理又はエステル化処理したものも、上記原料澱粉として使用することができる。
【0014】
本発明では、上記膨潤抑制澱粉として、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ及びタピオカ澱粉から選ばれる1種又は2種以上を原料澱粉としたリン酸架橋澱粉を使用することが、よりしっとりとしていながらねちゃつかないスフレケーキが得られる点で好ましい。
【0015】
上記澱粉類の含有量は、上記スフレ生地練込用水中油型乳化物中、好ましくは1~30質量%、より好ましくは1~20質量%、さらに好ましくは1~10質量%である。
【0016】
上記スフレ生地練込用水中油型乳化物は、増粘安定剤を含有する。
増粘安定剤を含有することにより、スフレ生地練込用水中油型乳化物の製造時における乳化破壊を防止することによる物性改良効果や、保水性を向上させることによる離水防止効果や、得られるスフレケーキの食感向上効果、スフレケーキの冷凍耐性の向上効果を得ることが可能となるためである。
【0017】
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0018】
本発明では、離水防止効果が高いことから、ローカストビーンガム、ペクチン、カラギーナン、キサンタンガム及びゼラチンからなる群から選ばれる1種又は2種以上を使用することが好ましい。
【0019】
上記増粘安定剤の含有量は、上記スフレ生地練込用水中油型乳化物中、好ましくは0.01~10質量%、さらに好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.01~1質量%である。
【0020】
上記スフレ生地練込用水中油型乳化物は、卵白を含有する。
なお、卵白としては乾燥卵白、濃縮卵白などを使用することができ、また、生卵白や冷凍卵白も使用することができる。
上記卵白の含有量は、上記スフレ生地練込用水中油型乳化物中、0.1~8質量%、好ましくは0.2~5質量%、さらに好ましくは0.2~3質量%である。卵白の含有量が0.1質量部未満であると、得られるスフレケーキが焼き落ちしてしまいやすい。一方、8質量部を超えると、得られるスフレケーキがねちゃつきの強い食感となりやすく、また、異味を感じやすい。
なお、上記含有量については固形分に換算した数値を用いることとする。
【0021】
上記スフレ生地練込用水中油型乳化物は、タンパク質含量が好ましくは1~15質量%、より好ましくは1~7質量%、さらに好ましくは1~4.5質量%である。
なお、上記タンパク質含量には、上記卵白に含まれる蛋白質をはじめ、下記のその他の成分に含まれる蛋白質も含めて算出するものとする。
【0022】
上記蛋白質としては、特に限定されず、各種の動物性蛋白質、微生物性蛋白質及び植物性蛋白質等を使用することができる。動物性蛋白質としては、例えば、ホエイ蛋白質及びカゼイン蛋白質等の乳蛋白質;並びに低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質、ホスビチン、リベチン、リン糖蛋白質、オボアルブミン、コンアルブミン及びオボムコイド等の卵蛋白質等が挙げられる。植物性蛋白質としては、グリアジン、グルテニン、プロラミン及びグルテリン等の小麦蛋白質;大豆蛋白質、エンドウ豆蛋白質、そら豆蛋白質、緑豆蛋白質、ひよこ豆蛋白質及びレンズ豆蛋白質等の豆類蛋白質、並びに米蛋白質等のその他穀類蛋白質が挙げられる。これらの蛋白質は、目的に応じて、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明では、上記蛋白質のうち、風味が良好なスフレケーキが得られることから、乳蛋白質を使用することが好ましい。
また、上記乳蛋白質として、乳蛋白質を含有する乳原料、例えば、生乳、牛乳、加糖練乳、加糖脱脂れん乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、脱脂乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、バターゼラム、乳脂肪球被膜画分、バターミルク、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン(TMP)、脱脂粉乳、全粉乳、ミルクプロテインコンセントレート(MPC)、乳清蛋白質、ホエイ、ホエイパウダー、脱乳糖ホエイ、脱乳糖ホエイパウダー、ホエイ蛋白濃縮物(WPC)、ホエイ蛋白単離物(WPI)、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、酸カゼイン、クリーム、クリームチーズ、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等を使用することができる。
【0024】
上記スフレ生地練込用水中油型乳化物は、油脂を含有する。
上記油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、キャノーラ油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂等が挙げられる。これらの油脂は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0025】
上記油脂の含有量は、上記スフレ生地練込用水中油型乳化物中、好ましくは5~40質量%、より好ましくは5~30質量%、さらに好ましくは10~30質量%である。該油脂含量が3質量%未満では、得られるスフレケーキ生地の焼成時の膨張性が悪化するおそれがあり、その場合、得られるスフレケーキの体積が減少し、また食感が悪化してしまうおそれもある。また、40質量%超では、得られるスフレケーキ生地が、べたつきやすく、油分が分離しやすくなる。
なお、上記スフレ生地練込用水中油型乳化物に、油脂を含有する副原料を使用した場合は、上記油脂含量には、それらの副原料に含まれる油脂分も含めるものとする。
【0026】
また、上記スフレ生地練込用水中油型乳化物は、糖類を含有することができる。糖類を含有することでよりしっとり感に優れたスフレケーキとすることができる。
上記糖類は、上記澱粉のような高分子の糖類以外の単糖類、二糖類、オリゴ糖等の低分子の糖類であれば特に限定されず、例えば、上白糖、グラニュー糖、粉糖、液糖、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、乳糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、還元乳糖、ソルビトール、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等が挙げられる。これらの糖類は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記糖類の含有量は、上記スフレ生地練込用水中油型乳化物中、好ましくは1~20質量%、より好ましくは2~20質量%である。
【0027】
上記スフレ生地練込用水中油型乳化物は、合成乳化剤を含有しないことが好ましい。
上記の合成乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等が挙げられる。
【0028】
上記スフレ生地練込用水中油型乳化物には、上記合成乳化剤でない乳化剤を用いることができる。該乳化剤としては、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、乳脂肪球皮膜蛋白質が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0029】
上記スフレ生地練込用水中油型乳化物には、上記以外のその他の成分を使用することが可能である。該その他の成分としては、例えば、水、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸・乳酸・グルコン酸等の酸味料、ステビア・アスパルテーム等の甘味料、β-カロチン・カラメル・紅麹色素等の着色料、トコフェロール・茶抽出物等の酸化防止剤、卵白以外の卵成分、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶、プアール茶、日向夏茶、柚子茶、ナッツペースト、香辛料、香辛料抽出物、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
なお、本発明のスフレ生地練込用水中油型乳化物は、後述のように呈味素材をスフレ生地製造時に別添することが好ましいことから、呈味素材を含有しないことが好ましい。
【0030】
上記スフレ生地練込用水中油型乳化物の水分含量は、好ましくは50~90質量%、より好ましくは55~90質量%、さらに好ましくは55~80質量%である。水分含有量が50質量%未満では、安定した水中油型乳化物が得られない可能性がある。また、90質量%超では、スフレケーキ生地の安定性が低下し、焼き落ちしやすく、また得られるスフレケーキもべたつきやすくなる。
【0031】
上記スフレ生地練込用水中油型乳化物は、水中油型の乳化型であることが特徴であり、油中水型であると、スフレケーキ生地製造時に混合性が悪いうえ、油分分離を起こしやすく、さらには焼き落ちしやすいなど、本発明の効果が得られない。
なお、上記水中油型には、水中油中水型など、内相の水相にさらに油脂や乳化物を含む多重乳化型をも含むものとする。
【0032】
次に、本発明のスフレ生地練込用水中油型乳化物の好ましい製造方法について述べる。
上記スフレ生地練込用水中油型乳化物は、その製造方法が特に制限されるものではないが、例えば以下の方法により製造することができる。
【0033】
上記スフレ生地練込用水中油型乳化物は、澱粉類、増粘安定剤及び卵白を含有し、さらにタンパク質含量が1~15質量%、油脂含量が5~40質量%となる量の蛋白質及び油脂を含有する水中油型の予備乳化物を油相と水相の乳化により製造し、この予備乳化物を均質化処理した後、好ましくは加熱することによって得ることができる。
【0034】
具体的には、先ず、油脂及び必要によりその他の原料を含有させた油相と、水及び必要によりその他の原料を含有させた水相とをそれぞれ個別に調製し、次いで、該油相と該水相とを混合して水中油型に乳化し、水中油型の予備乳化物を製造する。
ここで、水相と油相を乳化する予備乳化物の製造の際は、澱粉類、増粘安定剤及び卵白は油相に添加しても水相に添加してもよいが、だまの発生を抑制するため、油相に添加することが好ましい。
【0035】
上記予備乳化物を均質化処理する際は、バルブ式ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル等の均質化装置を使用することができる。均質化は好ましくは圧力0~800kg/cmの範囲で行う。均質化した後の加熱は、インジェクション式、インフージョン式等の直接加熱方式、あるいはプレート式、チューブラー式、掻き取り式等の間接加熱方式を用いたUHT、HTST、バッチ式、レトルト、マイクロ波加熱等の加熱滅菌若しくは加熱殺菌処理、あるいは直火等を用いた加熱調理により行なうことができるが、澱粉類の糊化度を適度に抑制することが可能な点で、100~140℃でのUHT、HTST等の加熱滅菌若しくは加熱殺菌処理を行うことが好ましい。
また、加熱後には、必要により、再度均質化してもよい。また、加熱後には、必要により、急速冷却、徐冷却等の冷却操作を施したり、エージングを行ってもよい。
【0036】
本発明のスフレケーキ生地は、上記スフレ生地練込用水中油型乳化物を使用したものであり、好ましくは、上記スフレ生地練込用水中油型乳化物にメレンゲ、必要に応じ呈味素材を混合したものである。
【0037】
上記スフレ生地練込用水中油型乳化物及びメレンゲの配合割合は以下のとおりである。
・スフレ生地練込用水中油型乳化物:スフレケーキ生地中に好ましくは10~75質量%、より好ましくは20~60質量%。
・メレンゲ:スフレケーキ生地中に好ましくは5~50質量%、より好ましくは15~35質量%。
スフレ生地練込用水中油型乳化物の含有量が5質量%未満であると風味に乏しいスフレケーキとなりやすく、75質量%超であるとねちゃついた食感のスフレケーキとなりやすい。またメレンゲの配合比が5質量%未満であると粘りの強い食感となってしまう上に体積の小さなスフレケーキとなりやすく、50質量%超であると焼き落ちしやすい上にねちゃついた食感のスフレケーキになりやすい。
【0038】
上記メレンゲは、卵白と、糖類及び/又は甘味料を必須成分とするものである。
上記卵白としては、卵白、加糖卵白、乾燥卵白、凍結卵白、凍結加糖卵白の中から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
上記糖類及び/又は甘味料としては、上白糖、グラニュー糖、粉糖、ブドウ糖、果糖、蔗糖、麦芽糖、乳糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、異性化液糖、蔗糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、還元乳糖、ソルビトール、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、ステビア、アスパルテーム、はちみつ等の中から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0039】
卵白と糖類及び/又は甘味料の配合割合は、卵白100質量部に対して糖類及び/又は甘味料が好ましくは5~200質量部、さらに好ましくは10~150質量部、最も好ましくは20~100質量部である。
【0040】
上記メレンゲには必要により、レモン果汁、L-酒石酸水素カリウム、DL-酒石酸水素カリウムなどを含有させることができる。
【0041】
上記呈味素材としては、ジャム、ゼリー、チーズ等のゲル化食品;カスタードクリーム、アーモンドクリーム、マロンペースト、あん、チョコペースト、ヌガー、マヨネーズ等のペースト状食品などが挙げられる。呈味素材としてこれらのゲル化食品やペースト状食品を含有するスフレケーキを製造する際は、その比重の重さにより焼き落ちしやすいが、本発明のスフレ生地練込用水中油型乳化物を使用することにより、焼き落ちが防止されるうえに、内相や食感の改良効果も得られるものである。
【0042】
上記呈味素材として、牛乳、練乳、果汁、コーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶、プアール茶、日向夏茶、柚子茶などの液状素材や、チョコレート、バターなどの、加熱溶解して添加する素材などが挙げられる。これらの呈味素材を含有するスフレケーキを製造する際も、液状成分の増加や加熱による消泡により焼き落ちしやすいが、本発明のスフレ生地練込用水中油型乳化物を使用することにより、焼き落ちが防止されるうえに、内相や食感の改良効果も得られるものである。
【0043】
上記呈味素材として、カカオマス、ココアパウダー、紅茶パウダー、抹茶、コーヒー粉末などの粉末状の呈味素材を使用する際も、本発明のスフレ生地練込用水中油型乳化物は、外相が水相であることから混合性が良好である。
【0044】
スフレ生地練込用水中油型乳化物に呈味素材を含有させず、スフレ生地を製造する際に呈味素材を別途添加することで、簡単にバラエティーのある風味のスフレケーキを迅速に製造することが可能である点で好ましい。
【0045】
呈味素材の配合量は、その呈味の強さや性状により適宜選択可能であるが、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0046】
本発明のスフレケーキ生地は、上記スフレ生地練込用水中油型乳化物、メレンゲ及び呈味素材以外に、一般のスフレケーキの製造に使用されるその他の成分を含有することができる。
上記その他の成分としては、薄力粉や強力粉などの小麦粉類、米でんぷん、コーンスターチなどの澱粉類、水、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸・乳酸・グルコン酸等の酸味料、ステビア・アスパルテーム等の甘味料、β-カロチン・カラメル・紅麹色素等の着色料、トコフェロール・茶抽出物等の酸化防止剤、全卵、卵黄等の卵成分、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、香辛料、香辛料抽出物、カカオマス、ココアパウダー、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
本発明のスフレケーキ生地における上記その他の成分の含有量は好ましくは50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは30質量%以下である。
【0047】
上記スフレケーキ生地を焼成することにより本発明のスフレケーキを製造することが出来る。上記スフレケーキ生地を焼成するときに湯煎をして焼成してもよいが、湯煎をせず、直焼きによっても焼き落ちせず、良好な食感のスフレケーキを得ることができるため、直焼きによる焼成をすることが好ましい。また、上記スフレケーキ生地は、焼き型に入れて焼成してもよいし、焼き型に入れないで焼成することもできる。
得られたスフレケーキは冷凍保存することが可能であり、解凍時に油分や水分が分離することが防止されている。なお、再加熱する際に電子レンジを用いることも可能である。
【実施例0048】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を何ら制限するものではない。
【0049】
<スフレ生地練込用水中油型乳化物の製造>
〔実施例1〕
菜種液状油25質量%に、ワキシーコーン由来のリン酸架橋澱粉5質量%、ローカストビーンガム0.05質量%及び乾燥卵白(タンパク質含量86.5質量%、水分7質量%)1質量%を添加し分散させて油相とした。水60.95質量%、乳糖5質量%、WPC(ホエー蛋白濃縮物)(タンパク質含量78質量%、水分5.5質量%)3質量%を混合し水相とした。この油相と水相とを加熱溶解、混合、乳化、均質化し、120℃で加熱殺菌し、厚さ0.2mmポリエチレン製の包材にピロー充填後、22℃まで冷却し、タンパク質含量が3.2質量%、油分含量が25質量%であるスフレ生地練込用水中油型乳化物Aを得た。
【0050】
〔実施例2〕
実施例1における乾燥卵白1質量%を3.5質量%とし、さらに水60.95質量%を58.45質量%とした以外は実施例1と同様の配合及び製法で、タンパク質含量が5.4質量%、油分含量が25質量%であるスフレ生地練込用水中油型乳化物Bを得た。
【0051】
〔実施例3〕
実施例1におけるWPC3質量%を6質量%とし、さらに水60.95質量%を57.95質量%とした以外は実施例1と同様の配合及び製法で、タンパク質含量が5.6質量%、油分含量が25質量%であるスフレ生地練込用水中油型乳化物Cを得た。
【0052】
〔実施例4〕
実施例1における菜種液状油25質量%を35質量%とし、さらに水60.95質量%を50.95質量%とした以外は実施例1と同様の配合及び製法で、タンパク質含量が3.2質量%、油分含量が35質量%であるスフレ生地練込用水中油型乳化物Dを得た。
【0053】
〔実施例5〕
実施例1における菜種液状油25質量%を15質量%とし、さらに水60.95質量%を70.95質量%とした以外は実施例1と同様の配合及び製法で、タンパク質含量が3.2質量%、油分含量が15質量%であるスフレ生地練込用水中油型乳化物Eを得た。
【0054】
〔実施例6〕
実施例1における菜種液状油25質量%を5質量%とし、さらに水60.95質量%を80.95質量%とした以外は実施例1と同様の配合及び製法で、タンパク質含量が3.2質量%、油分含量が5質量%であるスフレ生地練込用水中油型乳化物Fを得た。
【0055】
〔比較例1〕
実施例1における乾燥卵白1質量%を無添加とし、さらに水60.95質量%を61.95質量%とした以外は実施例1と同様の配合及び製法で、タンパク質含量が2.3質量%、油分含量が25質量%であるスフレ生地練込用水中油型乳化物Gを得た。
【0056】
〔比較例2〕
実施例1におけるローカストビーンガム0.05質量%を無添加とし、さらに水60.95質量%を61質量%とした以外は実施例1と同様の配合及び製法で、タンパク質含量が3.2質量%、油分含量が25質量%であるスフレ生地練込用水中油型乳化物Hを得た。
【0057】
〔比較例3〕
実施例1におけるワキシーコーン由来のリン酸架橋澱粉5質量%を無添加とし、さらに水60.95質量%を65.95質量%とした以外は実施例1と同様の配合及び製法で、タンパク質含量が3.2質量%、油分含量が25質量%であるスフレ生地練込用水中油型乳化物Iを得た。
【0058】
〔比較例4〕
実施例1におけるWPC3質量%を無添加とし、さらに水60.95質量%を63.95質量%とした以外は実施例1と同様の配合及び製法で、タンパク質含量が0.9質量%、油分含量が25質量%であるスフレ生地練込用水中油型乳化物Jを得た。
【0059】
<メレンゲの製造>
生卵白300gと上白糖200gをミキサーボウルに計量し、ミキサーにセットし、低速1分中速5分ミキシングし、比重0.16のしっかりしたメレンゲAを得た。
【0060】
<スフレケーキ生地、及びスフレケーキの製造>
上記実施例1~6及び比較例1~4で得られたスフレ生地練込用水中油型乳化物A~Jを使用し、下記の配合及び製法でスフレケーキを製造した。得られたスフレケーキの焼落ち状況は外観および内相を目視で観察し、下記の評価基準にしたがって評価し、結果を表1に記載した。また、食感については25℃で1日保存した後の食感(しっとり感・ねちゃつき)について下記の評価基準にしたがって評価し、結果を表1に記載した。
【0061】
<スフレケーキ生地の配合・製法>
スフレ生地練込用水中油型乳化物A~J各240gにクリームチーズ240gを混合し、さらに卵黄120g、3倍濃縮牛乳状組成物(プライム:株式会社ADEKA製)70g、レモン果汁30g、薄力粉60gを順に添加し、滑らかな状態になるまで混合した。ここに上記メレンゲA500gをさっくりと混合し、スフレケーキ生地A~Jを得た。
直径120mmの4号ケーキ型に底紙と側紙をあて、ここに厚さ10mmに打ち抜いたシート状スポンジケーキを底に敷き、得られたスフレケーキ生地A~Jを流し入れ、固定オーブンで下天板2枚使用し、上火155℃下火85℃で25分、さらに上火170℃下火85℃で10分直焼きし、スフレケーキA~Jを得た。
【0062】
<スフレケーキ評価基準・焼き落ち状況>
◎:焼き落ちは見られなかった。
○:ややへこみはあるものの焼き落ちはほとんど見られなかった。
△:焼き落ちが顕著であり、内相につんだ部分が見られた。
×:焼き落ちが激しく、内相は全体的につんでおり不良であった。
【0063】
<スフレケーキ評価基準・食感>
◎:しっとりとしていながらねちゃつきが全く感じらずふわふわの優れた食感であった。
○+:しっとり感がやや低いものの、ねちゃつきが全く感じられず、良好な食感であった。
○:しっとりとしていながらねちゃつきがほとんど感じられず、良好な食感であった。
△:ややねちゃついた不良な食感であった。
×:ねちゃつきの強いきわめて不良な食感であった。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示した通り、本発明のスフレ生地練込用水中油型乳化物を使用したスフレケーキは、湯煎焼きではなく直焼きであっても、しっとりとしていながらねちゃつかず、焼き落ちしにくいものであった。