(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003562
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】容器詰めゆで卵の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 15/00 20160101AFI20230110BHJP
【FI】
A23L15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104707
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501149411
【氏名又は名称】キユーピータマゴ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 洋章
(72)【発明者】
【氏名】林 直紀
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC06
4B042AD29
4B042AG07
4B042AH09
4B042AK04
4B042AP03
4B042AP07
4B042AP30
4B042AW10
(57)【要約】
【課題】
本発明は、作り立てのゆで卵の味、食感を長期間維持できる、容器詰めゆで卵の製造方法を提供する。
【解決手段】
酢酸、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム以外のナトリウム原料を配合した液状組成物を調製する工程と、
前記液状組成物とゆで卵を容器に充填する工程を含む、容器詰めゆで卵の製造方法であって、
前記酢酸の配合量が0.10~0.25%であり、
前記酢酸ナトリウムの配合量が酢酸1部に対して4部以上10部以下であり、
前記液状組成物のナトリウム濃度が0.6~1.0%であり、
前記液状組成物のpHが5.3以上5.6以下である、
容器詰めゆで卵の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム以外のナトリウム原料を配合した液状組成物を調製する工程と、
前記液状組成物とゆで卵を容器に充填する工程を含む、容器詰めゆで卵の製造方法であって、
前記酢酸の配合量が0.10~0.25%であり、
前記酢酸ナトリウムの配合量が酢酸1部に対して4部以上10部以下であり、
前記液状組成物のナトリウム濃度が0.6~1.0%であり、
前記液状組成物のpHが5.3以上5.6以下である、
容器詰めゆで卵の製造方法。
【請求項2】
ゆで卵1部に対して液状組成物0.7~1.5部を容器に充填するものである、
請求項1記載の容器詰めゆで卵の製造方法。
【請求項3】
酢酸ナトリウム以外のナトリウム原料として、クエン酸ナトリウム及び/又はアスコルビン酸ナトリウムを含む、
請求項1又は2に記載の容器詰めゆで卵の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰めゆで卵の製造方法に関する。具体的には、作り立てのゆで卵のおいしさを長期間維持できる、容器詰めゆで卵の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、調味液漬けのゆで卵や、真空包装したゆで卵が販売されている。そのような容器詰めゆで卵の保存性を高める手段として、調味液のpHを下げたり、塩分濃度を高くするなど様々な方法がある。しかしながら、長期間保存すると、ゆで卵に酸味や塩味が付与されたり、卵白部分の食感が固くなるなどの影響があり、作り立てのおいしさを長期間維持することは容易ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、作り立てのゆで卵の味、食感を長期間維持できる、容器詰めゆで卵の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、所定量の酢酸、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム以外のナトリウム原料を配合し、ナトリウム濃度とpHを所定範囲に調整するならば、作り立てのゆで卵の味、食感を長期間維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)酢酸、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム以外のナトリウム原料を配合した液状組成物を調製する工程と、
前記液状組成物とゆで卵を容器に充填する工程を含む、容器詰めゆで卵の製造方法であって、
前記酢酸の配合量が0.10~0.25%であり、
前記酢酸ナトリウムの配合量が酢酸1部に対して4部以上10部以下であり、
前記液状組成物のナトリウム濃度が0.6~1.0%であり、
前記液状組成物のpHが5.3以上5.6以下である、
容器詰めゆで卵の製造方法、
(2)ゆで卵1部に対して液状組成物0.7~1.5部を容器に充填するものである、(1)記載の容器詰めゆで卵の製造方法、
(3)酢酸ナトリウム以外のナトリウム原料として、クエン酸ナトリウム及び/又はアスコルビン酸ナトリウムを含む、(1)又は(2)に記載の容器詰めゆで卵の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作り立てのゆで卵の味、食感を長期間維持できることから、ゆで卵市場の更なる拡大が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を意味する。
【0009】
<本発明の特徴>
本発明の容器詰めゆで卵の製造方法は、酢酸、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム以外のナトリウム原料を配合した液状組成物を調製する工程と、液状組成物とゆで卵を容器に充填する工程を含むものであり、液状組成物に対する酢酸の配合量が0.10~0.25%、酢酸ナトリウムの配合量が酢酸1部に対して4部以上10部以下、液状組成物のナトリウム濃度が0.6~1.0%、pHが5.3以上5.6以下であることに特徴を有する。
【0010】
<容器詰めゆで卵>
本発明において容器詰めゆで卵とは、容器中に殻剥きしたゆで卵と液状組成物が充填されたものであり、ゆで卵が液状組成物に浸漬した状態で存在する。また、袋から取り出したゆで卵はそのままの状態で食することができる。また、本発明の容器詰めゆで卵は非レトルト品である。非レトルト品とは、容器詰めゆで卵を加圧状態で100℃以上処理していないものである。したがって、本発明は、容器に液状組成物とゆで卵を充填した後、100℃以下で加熱または非加熱のものが含まれる。例えば、加熱殺菌目的で加熱を行う場合は、70℃×1分間と同等以上の加熱をすればよい。
【0011】
<ゆで卵>
本発明においてゆで卵とは、鶏卵、鶉卵、アヒル卵等の家禽類の卵を、ボイル等の方法で加熱し、卵白が熱変性によって凝固し、殻を剥ける程度に卵白が凝固しているものであり、さらに、殻を剥いた状態のものである。
卵黄の凝固状態は問わず、卵黄は、流動性のある液状から、完全に凝固した状態まで、種々の状態をとることができる。
【0012】
<容器>
本発明において容器とは、材質、形状等は特に制限はない。容器の材質としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(PA)等の単層材料、酸素透過性の低いエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、塩化ビニリデン(PVDC)、アルミニウム、その他のガスバリア材料とPE又はPPとからなる多層材料等が挙げられる。また、容器形状としては、例えば、パウチ等の袋状容器や、カップ状の容器等が挙げられる。
【0013】
<液状組成物>
本発明の容器詰めゆで卵の製造方法に用いられる液状組成物は、作り立てのゆで卵の味、食感を長期間維持するため、ゆで卵と一緒に容器に充填される液状の組成物であり、酢酸、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム以外のナトリウム原料が配合されており、ナトリウム濃度とpHが所定範囲に調整されたものである。
【0014】
<液状組成物に配合する酢酸>
本発明に用いる液状組成物は、酢酸を0.10~0.25%配合したものである。酢酸の配合量が前記範囲未満である場合、液状組成物のpHを十分に下げることができず、作り立てのゆで卵の味、食感を長期間維持することが難しい。また、酢酸の配合量が前記範囲を超える場合、酸味が強くなりすぎて、ゆで卵の風味に影響することや、ゆで卵の食感が固くなる恐れがある。作り立てのゆで卵の味、食感を長期間維持しやすいことから、酢酸の配合量は0.14~0.20%であることが好ましい。また、液状組成物に配合する酢酸は、酢酸製剤を配合してもよいし、食酢等の酢酸を含有する食品を配合してもよい。
【0015】
<液状組成物に配合する酢酸ナトリウム>
本発明に用いる液状組成物は、酢酸ナトリウムの配合量が酢酸1部に対して4部以上10部以下である。酢酸に対する酢酸ナトリウムの配合量が前記範囲であることにより、液状組成物のpHを所定範囲に保持することができ、作り立てのゆで卵の味、食感を長期間維持することができる。
【0016】
<液状組成物に配合する酢酸ナトリウム以外のナトリウム原料>
本発明に用いる液状組成物は、酢酸ナトリウム以外のナトリウム原料を配合するものである。例えば、食塩、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムなどが挙げられる。酢酸ナトリウム以外のナトリウム原料を配合することにより、ナトリウム濃度を所定範囲に調整しやすくなり、作り立てのゆで卵の味、食感を長期間維持することができる。
酢酸ナトリウム以外のナトリウム原料の配合割合は特に限定しないが、0.5~5%であることができ、1.0~3.0%であることができる。
【0017】
<液状組成物のナトリウム濃度>
本発明に用いる液状組成物は、ナトリウム濃度が0.6~1.0%である。ナトリウム濃度が前記範囲未満である場合、作り立てのゆで卵の味、食感を長期間維持することができない。また、ナトリウム濃度が前記範囲を超える場合、ゆで卵が固くなることや、塩味が強くなり好ましくない。作り立てのゆで卵の味、食感を長期間保持しやすことから、液状組成物のナトリウム濃度は0.7~0.9%であることが好ましい。なお、ナトリウム濃度は原子吸光光度法等、公知の方法により測定することができる。
【0018】
<液状組成物のpH>
本発明に用いる液状組成物は、pHが5.3以上5.6以下である。pHが前記範囲未満である場合、酸味が強くなりすぎて、ゆで卵の風味に影響することや、ゆで卵の食感が固くなる恐れがある。また、pHが前記範囲を超える場合、作り立てのゆで卵の味、食感を長期間維持することができない。作り立てのゆで卵の味、食感を長期間維持しやすいことからpHは5.4以上5.5以下であることが好ましい。
【0019】
<液状組成物に用いるその他原料>
本発明に用いる液状組成物には、上述の原料の他、本発明の効果を損なわない範囲でその他の原料を配合することができる。例えば、砂糖、核酸、醤油、アミノ酸等の調味料類、魚、野菜等を使用した出汁又はエキス類等、グリシン等の日持向上剤が挙げられる。
【0020】
<液状組成物の充填量>
本発明の容器詰めゆで卵の製造方法は、ゆで卵1部に対して液状組成物0.7~1.5部を容器に充填することが好ましく、1.0~1.4部であることが好ましく、1.1~1.3部であることがより好ましい。液状組成物の充填量が前記範囲であることにより、液状組成物のpHやナトリウム濃度の変動が小さくなり、作り立てのゆで卵の味、食感を長期間維持しやすくなるとともに、容器詰めゆで卵の容量を抑えることができ、流通しやすくなる。
【0021】
<その他の工程>
本発明の容器詰めゆで卵の製造方法は、酢酸、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム以外のナトリウム原料を配合し、液状組成物を調製する工程と、前記液状組成物とゆで卵を容器に充填する工程を含む以外に、加熱殺菌工程、冷却工程などの、その他の工程を含むことができるが、ゆで卵と液状組成物を充填する工程の後、容器を密封し、加熱殺菌工程を行うことが好ましい。加熱殺菌条件としては、70℃×1分間と同等以上の加熱をすると良く、加熱方法は湯中加熱、蒸煮加熱、シャワー式加熱等適宜選択すればよい。
【0022】
以上のようにして得られた本発明の密封容器入りゆで卵は、例えば、チルド(0~15℃程度)で流通保管し、その賞味期間を10~40日、好ましくは20~35日、より好ましくは25~35日とした製品とすることができる。
【0023】
以下、本発明の容器詰め殻剥きゆで卵について、具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【実施例0024】
殻付生卵(鶏卵、Mサイズ)を沸騰した湯に投入し、9分間加熱した後、4℃程度の冷水にて冷却し、殻を剥き、ゆで卵を得た。表1に記載の割合で原料を攪拌混合し、液状組成物を調製した。次いで、ゆで卵1個(55g)と各液状組成物65g又は72gを、カップ状の容器(材質:PP、EVOH)に充填し、フタ材(材質:PP、PA)で密封包装をした。最後に、75℃の熱湯に15分浸漬して殺菌を行い、実施例1~6、比較例1~3の容器詰めゆで卵を得た。
【0025】
調製した実施例1~6、比較例1~3の容器詰めゆで卵を10℃で30日保管した後、下記基準でゆで卵の味、食感を評価した。
【0026】
[評価基準]
〇:作り立てのゆで卵の食感、味が保持されていた。
×:作り立てとは異なる味又は食感であった。
【0027】
【0028】
表1の結果より、液状組成物の酢酸配合量が0.10~0.25%であり、酢酸ナトリウムの配合量が酢酸1部に対して4部以上10部以下であり、ナトリウム濃度が0.6~1.0%であり、pHが5.3以上5.6以下であることより、作り立てのゆで卵の味、食感を保持できることが分かった。