(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035725
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】受信装置、及び受信方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/08 20060101AFI20230306BHJP
H04B 7/0452 20170101ALI20230306BHJP
H04B 7/0413 20170101ALI20230306BHJP
【FI】
H04B7/08 022
H04B7/0452
H04B7/0413 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142778
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】小川 智明
(72)【発明者】
【氏名】西森 健太郎
(57)【要約】
【課題】VM‐MIMOの機能を備える受信装置における通信品質の改善を実現する。
【解決手段】受信装置において、複数のアンテナから送信されたMIMO信号を、アンテナ特性を切り替えながら受信する特性可変アンテナと、前記特性可変アンテナにより受信した受信信号に対して所定のサンプリング周期でサンプリングを行う変換部と、前記変換部により得られた信号に基づいて、指標値を算出する指標値算出部と、前記指標値に基づいて、前記アンテナ特性の切り替えのためのアンテナパタンを決定するアンテナパタン決定部と、前記変換部により得られた信号を分割する信号抽出部と、前記信号抽出部から出力された信号に対してMIMO復調処理を実行するMIMO信号復調部とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナから送信されたMIMO信号を、アンテナ特性を切り替えながら受信する特性可変アンテナと、
前記特性可変アンテナにより受信した受信信号に対して所定のサンプリング周期でサンプリングを行う変換部と、
前記変換部により得られた信号に基づいて、指標値を算出する指標値算出部と、
前記指標値に基づいて、前記アンテナ特性の切り替えのためのアンテナパタンを決定するアンテナパタン決定部と、
前記変換部により得られた信号を分割する信号抽出部と、
前記信号抽出部から出力された信号に対してMIMO復調処理を実行するMIMO信号復調部と
を備える受信装置。
【請求項2】
前記指標値算出部は、前記指標値として、前記複数のアンテナ特性間でのチャネル相関値、前記複数のアンテナ特性における伝送容量、前記複数のアンテナ特性におけるチャネル行列を固有値分解することにより得られる固有値、又は、当該固有値を雑音電力で割ることにより得られる受信電力対雑音電力比を算出する
請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記アンテナパタン決定部は、複数のアンテナパタンの中から、前記指標値が最良となるアンテナパタンを決定する
請求項1又は2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記指標値算出部は、前記指標値に加えて、受信信号の周波数帯域を算出し、前記アンテナパタン決定部は、周波数帯域が閾値以下となる1以上のアンテナパタンの中からアンテナパタンを決定する
請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項5】
特性可変アンテナを備える受信装置が実行する受信方法であって、
複数のアンテナから送信されたMIMO信号を、前記特性可変アンテナにより、アンテナ特性を切り替えながら受信するステップと、
前記特性可変アンテナにより受信した受信信号に対して所定のサンプリング周期でサンプリングを行うステップと、
サンプリングにより得られた信号に基づいて、指標値を算出するステップと、
前記指標値に基づいて、前記アンテナ特性の切り替えのためのアンテナパタンを決定するステップと、
サンプリングにより得られた信号を分割するステップと、
分割により得られた信号に対してMIMO復調処理を実行するステップと
を備える受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MIMO(Multiple Input Multiple Output)通信を行う無線通信システムに関連するものである。
【背景技術】
【0002】
無線デバイスの急速な普及によって無線通信トラヒックが増加し続けている。この無線通信トラヒックを安定的に収容するために、無線通信システムの大容量化が求められている。無線通信システムの大容量化を実現するべく、複数のアンテナを用いて同一周波数かつ同一時刻に空間分割多重伝送を行うMIMOが実用化されている。更に、将来無線通信システムを対象として、MIMOが実現する容量の更なる拡大に向けて、超多数のアンテナを利用した大規模(Massive)MIMOの研究開発が進められている。
【0003】
しかしながら、Massive MIMOでは、無線基地局に超多数のアンテナ、各アンテナに接続される増幅やフィルタ等を行うRF部、及びアナログ信号とデジタル信号の変換を行う変換部等の装置が非常に多く必要となることから、無線基地局のサイズ及びコストが大きくなるという課題がある。
【0004】
上記課題に対して、非特許文献1には、Virtual Massive MIMO(VM-MIMO)の技術が開示されている。非特許文献1に開示されたVirtual Massive MIMO(VM-MIMO)では、上り回線のMassive MIMOにおいて、複数のアンテナから同一周波数かつ同一時刻に送信される信号に対して、無線基地局が特性可変アンテナにより周期的にアンテナ特性を高速に切り替えながら受信を行う。更に、通常よりも高速にサンプリングした受信信号からアンテナ特性が同等となるタイミングの信号を、サンプリングした受信信号から分割して抽出し、抽出した信号に対して、一般的なマルチユーザMIMOの受信処理を行うことで、少ないアンテナでMassive MIMOの受信を可能としている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】村上他、"将来無線システムにおける時空間信号処理技術"電子情報通信学会 ソサイエティ大会2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、VM-MIMOの技術により、少ないアンテナでMassive MIMOの受信を実現できるので、無線基地局のサイズ及びコストを低減できる。
【0007】
しかし、VM-MIMOで用いる特性可変アンテナのパタンが似通ったものとなると、通信品質が改善されない可能性がある。そのため、特性可変アンテナのパタンを適切に制御する必要がある。さらに、特性可変アンテナの切り替えによって、受信信号の帯域が拡大するため、他システムからの干渉によって通信品質の劣化が生じる可能性もある。なお、このような課題は、VM-MIMOの受信処理を行う無線基地局のみならず、VM-MIMOの受信処理を行う無線端末局においても生じ得る課題である。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、送信装置の複数のアンテナから同一周波数かつ同一時刻に送信されるMIMO信号を特性可変アンテナで受信する受信装置において、通信品質の改善を実現するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示の技術によれば、複数のアンテナから送信されたMIMO信号を、アンテナ特性を切り替えながら受信する特性可変アンテナと、
前記特性可変アンテナにより受信した受信信号に対して所定のサンプリング周期でサンプリングを行う変換部と、
前記変換部により得られた信号に基づいて、指標値を算出する指標値算出部と、
前記指標値に基づいて、前記アンテナ特性の切り替えのためのアンテナパタンを決定するアンテナパタン決定部と、
前記変換部により得られた信号を分割する信号抽出部と、
前記信号抽出部から出力された信号に対してMIMO復調処理を実行するMIMO信号復調部と
を備える受信装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、送信装置の複数のアンテナから同一周波数かつ同一時刻に送信されるMIMO信号を特性可変アンテナで受信する受信装置において、通信品質の改善を実現するための技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態におけるシステム構成図である。
【
図2】本発明の実施の形態におけるシステム構成図である。
【
図3】VM-MIMOの動作を説明するための図である。
【
図8】無線基地局の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(本実施の形態)を説明する。以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施の形態に限られるわけではない。
【0013】
なお、以下の説明では、送信装置として無線端末局1を使用し、受信装置として無線基地局2を使用する例を用いているが、送信装置として無線基地局2を使用し、受信装置として無線端末局1を使用する場合にも、受信装置において本発明に係る技術を適用することが可能である。
【0014】
(全体構成)
図1に、本実施の形態における無線通信システムの構成例を示す。
図1に示すように、本実施の形態における無線通信システムは、無線端末局1と無線基地局2とを有する。無線端末局1は複数のアンテナを有しており、無線基地局2は1本の特性可変アンテナを有している。無線基地局2における特性可変アンテナの数は複数であってもよい。図示のとおり、本実施の形態では、無線端末局1から無線基地局2への上り方向の通信を対象としている。
【0015】
なお、本実施の形態では、
図1に示すように、無線基地局2が、1台の無線端末局1から送信された信号を受信することを想定しているが、これは一例である。
図2に示すように、無線基地局2が複数の無線端末局1から送信された信号を受信する場合(つまり、マルチユーザMIMOの場合)にも本実施の形態に係る技術を適用可能である。
【0016】
(無線通信システムの動作概要)
無線基地局2は、非特許文献1に開示されたVirtual Massive MIMO(VM-MIMO)の技術により、1本の特性可変アンテナでMassive MIMOの受信を行う。
【0017】
すなわち、
図3に示すように、無線基地局2は、無線端末局1の複数のアンテナから同一周波数かつ同一時刻に送信される信号を、周期的にアンテナ特性を高速に変化させながら受信する。無線基地局2は、通常よりも高速に受信信号をサンプリングして、サンプリングした受信信号からアンテナ特性が同等となるタイミングの受信信号を分割して抽出し、抽出した受信信号に対して、一般的なMIMOの受信処理を行うことで、1本の特性可変アンテナでMassive MIMOの受信を可能としている。
【0018】
すなわち、理論的には、抽出した各受信信号は、互いに異なる伝搬路から到来する信号とみなすことができるので、仮想的にアンテナを増加させることができ、Massive MIMOの受信が可能となる。
【0019】
図3の例では、無線基地局2は、4つのアンテナ特性1~4を周期的に変化させながら信号を受信している。
図3の例において、アンテナ特性1のタイミングの信号を"1"で示し、アンテナ特性2のタイミングの信号を"2"で示し、アンテナ特性3のタイミングの信号を"3"で示し、アンテナ特性4のタイミングの信号を"4"で示している。
【0020】
また、アンテナ特性1~4のアンテナをそれぞれ仮想アンテナ1~4と呼んでいる。
図3において、"1"で示す信号の波形が仮想アンテナ1の波形として示されている。
【0021】
VM-MIMOの技術を用いることで、無線基地局2の1つの特性可変アンテナを用いて無線端末局1の複数のアンテナから送信されるMIMO信号の復調が可能となる。
【0022】
しかし、VM-MIMOで用いる特性可変アンテナのパタンが似通ったものとなると、通信品質が改善されない可能性がある。そのため、特性可変アンテナのパタンを適切に制御する必要がある。さらに、特性可変アンテナの切り替えによって、受信信号の帯域が拡大するため、他システムからの干渉によって通信品質の劣化が生じる可能性もある。
【0023】
そこで、本実施の形態では、特性可変アンテナを含めた送受信間の伝搬特性に応じて、特性可変アンテナのパタンを調整することで、通信品質を向上させることとしている。以下、各装置の構成と動作について説明する。
【0024】
(無線端末局1)
図4に、本実施の形態における無線端末局1の構成例を示す。
図4に示すとおり、無線端末局1は、複数のアンテナ10、複数のRF部11、複数のD/A変換部12、及びMIMO信号生成部13を有する。なお、一般的に無線端末局1に搭載される機能ブロックについては省略している。
【0025】
MIMO信号生成部13は、送信データから複数のMIMO信号を生成し、それぞれのMIMO信号をD/A変換部12に入力する。D/A変換部12は、入力されたデジタルのMIMO信号をアナログ信号に変換し、当該アナログ信号をRF部11に出力する。
【0026】
RF部11は、アナログ信号に対して、増幅・周波数変換・フィルタリング等のアナログ処理を施し、処理を施した信号を各アンテナ10に出力する。ここでのRF部11として、一般的な無線装置のRFフロントエンドの機能が搭載されることを想定する。アンテナ10は、入力された信号を無線信号として空中に放射する。
【0027】
(無線基地局2)
図5に、本実施の形態における無線基地局2の構成例を示す。
図5に示すように、本実施の形態における無線基地局2は、特性可変アンテナ20、RF部21、A/D変換部22、アンテナ制御部23、信号抽出部24、MIMO信号復調部25、指標値算出部26、アンテナパタン決定部27を有する。なお、一般的に無線基地局に搭載される機能ブロックについては図示を省略している。各部の機能は下記のとおりである。
【0028】
特性可変アンテナ20は、アンテナ制御部23から入力する制御情報に応じてアンテナ特性(指向性、出力電力、位相等)を周期的に切り替えるアンテナである。
【0029】
図6に、特性可変アンテナ20の構成例を示す。
図6に示す特性可変アンテナ20は、中心に配置される給電素子(Antenna element)と周りに配置される複数の無給電素子(Parasitic element)で構成され、アンテナ制御部23によって無給電素子の反射特性を変化させることで、アンテナの特性を変化させることができる。この特性可変アンテナ20で受信した信号を1つのRF部21に出力する。
【0030】
RF部21は、特性可変アンテナ20から入力した信号に対して、増幅・周波数変更・フィルタリング等の処理を行い、処理した信号をA/D変換部22に出力する。ここでのRF部21として、一般的な無線装置のRFフロントエンドの機能が搭載されることを想定する。
【0031】
A/D変換部22は、RF部21から入力するアナログ信号をサンプリングすることにより、デジタル信号に変換し、当該デジタル信号を信号抽出部24及び指標値算出部26に出力する。また、A/D変換部22は、サンプリング周期をアンテナ制御部23に通知する。
【0032】
アンテナ制御部23は、アンテナパタン決定部27の情報に従い、A/D変換部22のサンプリング周期に同期させたアンテナ制御信号を特性可変アンテナ20に出力する。
【0033】
信号抽出部24は、A/D変換部22から入力された信号をサンプリング周期に同期して分割し、アンテナパタン決定部27から入力される情報に基づいて、分割して得られた複数の信号の中から、MIMO信号復調部25に出力する信号を抽出(選択)し、抽出した信号をMIMO信号復調部25に出力する。
【0034】
MIMO信号復調部25は、信号抽出部24から受信した信号に対して、一般的な無線通信システムで規定されるMIMOの復調処理を行う。
【0035】
指標値としてチャネル相関値を使用する場合において、指標値算出部26は、アンテナ制御部23から入力されるアンテナの制御情報に基づいて、A/D変換部22から入力される信号からそれぞれのアンテナ特性における伝搬チャネル応答を算出するとともに、特性可変アンテナ20で設定されるアンテナ特性間の伝搬チャネル応答の相関値を算出する。ここで相関値とは、異なるアンテナ特性間での違いを数値で表したものである。算出したチャネル相関値はアンテナパタン決定部27に出力される。
【0036】
アンテナパタン決定部27は、指標値算出部26から入力される指標値に基づいて、アンテナパタンを決定して、アンテナ制御部23に出力する。アンテナパタンの決定方法の例については後述する。
【0037】
ここで、特性可変アンテナ20において、例えば4本の仮想アンテナの1つを周期的に選択することによりアンテナ特性を周期的に切り替えるというアンテナパタンを使用する場合、A/D変換部22は、一般的な無線基地局のA/D変換部22のサンプリング周期の4倍以上のサンプリング周期で、各アンテナ特性に対応する信号1~4をサンプリングして出力する。
【0038】
アンテナ制御部23は、A/D変換部22のサンプリング周期で4本の仮想アンテナのうちの1つを選択してアンテナ特性を切り替える。
【0039】
便宜上、ここではアンテナパタン決定部27において決定された1アンテナパタンにおける抽出信号数が4であるとし、このアンテナパタンが繰り返されるものとする。これは
図3に示すイメージを想定している。このとき、信号抽出部24は、A/D変換部22のサンプリング周期と同じサンプリング周期で各アンテナ特性に対応する信号1~4を分割して抽出し、MIMO信号復調部25に出力する。その結果、信号抽出部24の4つの出力ポートには、それぞれ同じアンテナ特性の信号1~4が周期的に出力される。
【0040】
(その他の構成例)
図5に示す無線基地局2における各機能ブロックの機能を専用のハードウェア(LSI等)で実現してもよいし、「特性可変アンテナ20、RF部21、A/D変換部22」以外の部分(つまり、デジタル信号の処理を行う部分)を、プロセッサ(CPU、DSP等)とメモリとを備える汎用的なコンピュータと、当該コンピュータ上で動作するソフトウェアで実現してもよい。
【0041】
コンピュータとソフトウェアを用いて無線基地局2を実現する場合における無線基地局2の構成例を
図7に示す。
【0042】
図7に示すように、当該無線基地局2は、プロセッサ101、メモリ102、補助記憶装置103、入出力装置104、特性可変アンテナ20、RF部21、A/D変換部22を有し、これらがバスで接続された構成を有する。
【0043】
例えば、補助記憶装置103(記憶媒体)に、無線基地局2の動作を実現するプログラムが格納される。無線基地局2の動作時に、当該プログラムがメモリ102に読み込まれ、プロセッサ101がメモリ102からプログラムを読み出して実行する。例えば、プロセッサ101は、当該プログラムにより、アンテナ制御部23、信号抽出部24、MIMO信号復調部25、指標値算出部26、アンテナパタン決定部27の処理を実行する。
【0044】
入出力装置104は、例えば、MIMO信号復調部25により得られた信号を出力する。また、入出力装置104から、事前に設定しておく情報を入力することとしてもよい。
【0045】
(アンテナパタンについて)
ここで、アンテナパタンについて説明する。アンテナパタンは、特性可変アンテナ20のアンテナ特性を切り替えるためのパタンである。例えば、特性可変アンテナ20が4つのアンテナ特性を切り替えるとし、それぞれの特性におけるアンテナを仮想アンテナ1、仮想アンテナ2、仮想アンテナ3、仮想アンテナ4と呼ぶこととする。
【0046】
便宜上、仮想アンテナ1、仮想アンテナ2、仮想アンテナ3、仮想アンテナ4をそれぞれ1、2、3、4と表記することとすると、1、2、3、4の任意の並びがアンテナパタンである。例えば、「1,2,3,4」をアンテナパタン1とした場合、アンテナパタン1では、切り替え周期にて「1,2,3,4,1,2,3,.....」の順番で仮想アンテナを切り替える。
【0047】
アンテナパタン2=「1,2,1,2」、アンテナパタン3=「1,1,1,1」、アンテナパタン4=「4,2,1,1」、アンテナパタン5=「4,4,1,1」などはいずれもアンテナパタンの例である。
【0048】
アンテナパタンの並びもアンテナパタンである。例えば、上記の例で、アンテナパタンA=「アンテナパタン1,アンテナパタン2」、アンテナパタンB=「アンテナパタン2,アンテナパタン1」はいずれもアンテナパタンの例である。
【0049】
上述した例で、アンテナパタン2=「1,2,1,2」を使用すると決定した場合、その決定内容が有効である間(つまり、このアンテナパタンが変更されるまでの間)、仮想アンテナは、「1,2,1,2,1,2,1,2,....」のように切り替えられる。
【0050】
また、アンテナパタンの要素の個数を限定せずに、アンテナパタンを定義してもよい。例えば、アンテナパタン1=「2,2,2,2,1,1,1,1,4,4」、アンテナパタン2=「1,2,3」、アンテナパタン3=「4,2」等のような定義がされてもよい。この場合、例えば、後述する指標値を用いた評価により、「アンテナパタン2,アンテナパタン3」のアンテナパタンにて良い特性が得られた場合には、通信に使用するアンテナパタンとして、「1,2,3,4,2」が決定され、「1,2,3,4,2」を繰り返すようにアンテナ特性の切り替え制御がなされる。
【0051】
(動作例)
次に、無線基地局2の動作例を、
図8のフローチャートを参照してより具体的に説明する。なお、アンテナパタン決定に関わる処理と、実処理(通信サービス提供のための処理)とは並行して実行することができる。従って、アンテナパタンは、通信サービス提供中に随時変更され得る。
【0052】
アンテナ制御部23は、アンテナパタン決定部27から指示されるアンテナパタンに従って、A/D変換部22のサンプリング周期に同期させたアンテナ制御信号を特性可変アンテナ20に出力し、特性可変アンテナ20は、当該アンテナ制御信号に従って、アンテナ特性を周期的に切り替える。
【0053】
以下で説明するS1~S3での指標値算出を繰り返し行うことでアンテナパタンを決定する。その方法として、例えば、アンテナパタン決定部27が、候補となる複数のアンテナパタンの情報を保持し、各候補アンテナパタンをS1~S3で試すことで、最も良い指標値が得られるアンテナパタンを決定する。
【0054】
あるいは、S1~S3の段階では、固定的なアンテナパタン(例えば「1,2,3,4」)を使用し、複数アンテナ特性間の指標値に基づいて、良い指標値が得られるアンテナ特性の組み合わせを採用することでアンテナパタンを決定してもよい。
【0055】
<S1>
S1(ステップ1)において、特性可変アンテナ20が無線端末局1の複数のアンテナから同時に送信されたトレーニング信号を受信する。受信した信号はRF部21に入力され、RF部21により処理された信号はA/D変換部22に出力される。
【0056】
<S2>
S2において、A/D変換部22は、入力された信号(アナログ信号)に対してサンプリングを行って、サンプリングされた信号(デジタル信号)を取得する。以降の説明の「信号」は、サンプリングにより取得された信号である。A/D変換部22により得られた信号は、信号抽出部24及び指標値算出部26に出力される。なお、アンテナ特性の変化のタイミングとサンプリングのタイミングは同期している。
【0057】
<S3>
S3において、指標値算出部26は、アンテナ制御部23から入力されるアンテナの制御情報に基づいて、A/D変換部22から入力される信号からそれぞれのアンテナ特性における伝搬チャネル応答を算出するとともに、特性可変アンテナ20で設定されるアンテナ特性間の伝搬チャネル応答の相関値(チャネル相関値)を算出する。
【0058】
指標値算出部26は、アンテナ特性間の伝搬チャネル応答の相関値を、例えは下記の式1により算出する。
【0059】
【数1】
式1において、a
iはあるアンテナ特性におけるアンテナと無線端末局1のi番目のアンテナとの間の伝搬チャネル応答ベクトルであり、b
iはa
iとは異なるアンテナ特性におけるアンテナと無線端末局1のi番目のアンテナとの間の伝搬チャネル応答ベクトルである。指標値算出部26は、アンテナ特性の組毎に、式1でチャネル相関値を求め、全組のチャネル相関値の平均を計算することで、全アンテナ特性におけるチャネル相関値を算出する。
【0060】
例えば、現在のアンテナパタンが「1,2,3,4」である場合、指標値算出部26は、仮想アンテナ1と仮想アンテナ2との間のチャネル相関値、仮想アンテナ1と仮想アンテナ3との間のチャネル相関値、仮想アンテナ1と仮想アンテナ4との間のチャネル相関値、仮想アンテナ2と仮想アンテナ3との間のチャネル相関値、仮想アンテナ2と仮想アンテナ4との間のチャネル相関値、仮想アンテナ3と仮想アンテナ4との間のチャネル相関値を算出し、これらのチャネル相関値の平均を求めることで、仮想アンテナ1~4間のチャネル相関値を算出する。
【0061】
また、アンテナパタンの決定方法に応じて、上記のような2仮想アンテナ間での各チャネル相関値、仮想アンテナ1~4間のチャネル相関値に加えて、仮想アンテナ1、2、3間のチャネル相関値、仮想アンテナ1、2、4間のチャネル相関値、仮想アンテナ2、3、4間のチャネル相関値を算出してもよい。つまり、全ての組み合わせについてのチャネル相関値を算出してもよい。
【0062】
また、チャネル相関値の算出にあたっては、ある時間長の期間における平均値を、チャネル相関値の算出結果として使用してもよい。他の指標値の場合でも同様に、ある時間長の期間における平均値を、指標値の算出結果として使用してもよい。
【0063】
<S1~S3>
S1からS3を繰り返すことによって、異なる複数のアンテナパタンそれぞれにおけるチャネル相関値を算出する。なお、指標値としてチャネル相関値を算出することは一例である。
【0064】
<S4>
S4において、アンテナパタン決定部27は、指標値算出部26から入力されるチャネル相関値に基づいてアンテナパタンを決定し、決定結果を信号抽出部24に出力する。
【0065】
例えば、アンテナパタン決定部27は、複数のアンテナパタンの中から、チャネル相関値が最小となるアンテナパタンを、使用するアンテナパタンとして決定する。つまり、指標値が最良となるアンテナパタンを、使用するアンテナパタンとして決定する。
【0066】
<S5>
S5において、アンテナパタン決定部27は、S4で決定したアンテナパタンをアンテナ制御部23に通知する。以降、決定したアンテナパタンを使用した実際の通信が行われる。
【0067】
<S6>
S6において、特性可変アンテナ20が無線端末局1の複数のアンテナから同時に送信された信号を受信する。受信した信号はRF部21に入力され、RF部21により処理された信号はA/D変換部22に出力される。
【0068】
<S7>
S7において、A/D変換部22は、入力された信号(アナログ信号)に対してサンプリングを行って、サンプリングされた信号(デジタル信号)を取得する。以降の説明の「信号」は、サンプリングにより取得された信号である。A/D変換部22により得られた信号は、信号抽出部24及び指標値算出部26に出力される。なお、アンテナ特性の変化のタイミングとサンプリングのタイミングは同期している。
【0069】
<S8>
S8において、信号抽出部24は、A/D変換部22から入力された信号をA/D変換部22のサンプリング周期と同じサンプリング周期で分割し、分割した信号から抽出信号数の信号を抽出(選択)し、抽出した信号をMIMO信号復調部25に出力する。
【0070】
<S9>
S8において、MIMO信号復調部25は、信号抽出部24から受信した信号に対して、一般的な無線通信システムで規定されるMIMOの復調処理を行う。なお、MIMO復調処理において必要となる情報(無線端末局1のアンテナ数等)は、事前に与えられていることとしてもよいし、推定することとしてもよい。
【0071】
(チャネル相関値以外の指標値例)
上記の例では、アンテナパタンの決定のための指標値として、仮想アンテナ間のチャネル相関値を用いているが、これは一例である。チャネル相関値以外の指標値を用いてアンテナパタンを決定してもよい。
【0072】
例えば、
図8のフローのS3において、指標値算出部26は、チャネル指標値に代えて、下記の式2により、使用している仮想アンテナに基づく理論的な伝送容量Cを算出する。
【0073】
【数2】
上記の式2におけるI
Nrは、Nr×Nrの単位行列である。Nrは、受信アンテナ数(=使用している仮想アンテナの数(切り替えるアンテナ特性の数))である。Ntは送信アンテナ数(=無線端末局1のアンテナ数)である。Ptは送信電力である。σ
2
nは雑音電力である。Hは、Nr×Ntのチャネル行列(伝搬チャネル応答を要素として持つ行列)であり、detは括弧内の行列の行列式である。
【0074】
指標値として伝送容量を使用する場合、伝送容量が最大となるアンテナパタンを選択する。
【0075】
指標値として、これまでに説明したチャネル相関値、伝送容量の他に、例えば、固有値、あるいは、受信電力対雑音電力比(SNR)を用いてもよい。固有値とは、上記のチャネル行列Hを固有値分解して得られる固有値であり、各空間伝送に対する受信電力に相当する値である。また、受信電力対雑音電力比(SNR)は、上記の固有値を雑音電力で割った値である。
【0076】
(変形例)
以上、基本的な構成を基本例として説明したが、更なる特性改善のために、下記の変形例に説明するような構成及び動作を採用することとしてもよい。変形例において説明していない部分は、基本例が適用される。
【0077】
上記基本例では、アンテナパタン決定のために使用する指標値として、チャネル相関値もしくは伝送容量等を使用しているが、本変形例では、アンテナパタン決定のために、基本例で説明した指標値に加えて、受信信号の伝送帯域も使用する。以下、その理由を説明する。
【0078】
VM-MIMOではアンテナの特性を高速に可変させることから、その受信信号はその切り替えによって変化することになる。具体例を
図9に示す。
【0079】
図9の上段には、アンテナ特性の切り替えを行わない場合の受信信号の帯域を示す。
図9の中段は、アンテナパタン#1で切り替えを行う場合の受信信号の帯域を示し、
図9の下段は、アンテナパタン#2で切り替えを行う場合の受信信号の帯域を示す。
【0080】
図9に示すとおり、アンテナ特性の切り替えを行うことで帯域が拡大するとともに、帯域拡大の大きさ(拡大後の帯域幅)は、アンテナパタンに応じて異なる。
【0081】
帯域が拡大する場合には、拡大した周波数帯域において他システムが送信している場合は干渉が発生することになる。従って、可能な限り伝送帯域を拡大させないようにする必要がある。
【0082】
そこで、本変形例では、
図8のS1~S3において、指標値算出部26は、基本例で説明した指標値に加えて、アンテナパタン毎の伝送帯域を算出する。S4において、アンテナパタン決定部27は、この伝送帯域が予め定めた閾値以下となるアンテナパタンの中から、指標値が最良のアンテナパタンを選択することで、伝送帯域の拡大を防止することができる。
【0083】
また、例えばアンテナ制御部23が、決定したアンテナパタンによる伝送帯域に応じてRF部21内のフィルタを調整することで干渉を抑えることとしてもよい。
【0084】
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係る技術により、特性可変アンテナを含めた送受信間の伝搬特性に応じて、特性可変アンテナのパタンを調整することとしたので、通信品質を向上させることが可能となる。
【0085】
(実施の形態のまとめ)
本明細書には、少なくとも下記の各項に記載した受信装置、及び受信方法が記載されている。
(第1項)
複数のアンテナから送信されたMIMO信号を、アンテナ特性を切り替えながら受信する特性可変アンテナと、
前記特性可変アンテナにより受信した受信信号に対して所定のサンプリング周期でサンプリングを行う変換部と、
前記変換部により得られた信号に基づいて、指標値を算出する指標値算出部と、
前記指標値に基づいて、前記アンテナ特性の切り替えのためのアンテナパタンを決定するアンテナパタン決定部と、
前記変換部により得られた信号を分割する信号抽出部と、
前記信号抽出部から出力された信号に対してMIMO復調処理を実行するMIMO信号復調部と
を備える受信装置。
(第2項)
前記指標値算出部は、前記指標値として、前記複数のアンテナ特性間でのチャネル相関値、前記複数のアンテナ特性における伝送容量、前記複数のアンテナ特性におけるチャネル行列を固有値分解することにより得られる固有値、又は、当該固有値を雑音電力で割ることにより得られる受信電力対雑音電力比を算出する
第1項に記載の受信装置。
(第3項)
前記アンテナパタン決定部は、複数のアンテナパタンの中から、前記指標値が最良となるアンテナパタンを決定する
第1項又は第2項に記載の受信装置。
(第4項)
前記指標値算出部は、前記指標値に加えて、受信信号の周波数帯域を算出し、前記アンテナパタン決定部は、周波数帯域が閾値以下となる1以上のアンテナパタンの中からアンテナパタンを決定する
第1項ないし第3項のうちいずれか1項に記載の受信装置。
(第5項)
特性可変アンテナを備える受信装置が実行する受信方法であって、
複数のアンテナから送信されたMIMO信号を、前記特性可変アンテナにより、アンテナ特性を切り替えながら受信するステップと、
前記特性可変アンテナにより受信した受信信号に対して所定のサンプリング周期でサンプリングを行うステップと、
サンプリングにより得られた信号に基づいて、指標値を算出するステップと、
前記指標値に基づいて、前記アンテナ特性の切り替えのためのアンテナパタンを決定するステップと、
サンプリングにより得られた信号を分割するステップと、
分割により得られた信号に対してMIMO復調処理を実行するステップと
を備える受信方法。
【0086】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 無線端末局
2 無線基地局
10 アンテナ
11 RF部
12 D/A変換部
13 MIMO信号生成部
20 特性可変アンテナ
21 RF部
22 A/D変換部
23 アンテナ制御部
24 信号抽出部
25 MIMO信号復調部
26 指標値算出部
27 アンテナパタン決定部
101 プロセッサ
102 メモリ
103 補助記憶装置
104 入出力装置