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特開2023-35823液吐出装置、塗布装置、液吐出方法および電極の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035823
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】液吐出装置、塗布装置、液吐出方法および電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20230306BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20230306BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20230306BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20230306BHJP
   B05D 5/12 20060101ALI20230306BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20230306BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20230306BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
B05D3/00 D
B05D3/00 B
B05D1/26 Z
B05D5/12 B
H01M4/04 Z
H01M4/139
B41J2/14 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091905
(22)【出願日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2021141829
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】木田 仁司
(72)【発明者】
【氏名】栗山 博道
(72)【発明者】
【氏名】中島 聡
(72)【発明者】
【氏名】後河内 透
【テーマコード(参考)】
2C057
4D075
4F041
4F042
5H050
【Fターム(参考)】
2C057AF21
2C057AG44
2C057BA07
2C057BA14
2C057BF04
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC41
4D075AC80
4D075AC84
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC93
4D075AC95
4D075AE01
4D075BB05Y
4D075BB24Z
4D075CA22
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DA23
4D075DC11
4D075DC12
4D075DC19
4D075EA05
4D075EA31
4D075EA33
4D075EB51
4D075EB56
4D075EB57
4D075EC02
4D075EC04
4D075EC10
4D075EC23
4F041AA07
4F041AA12
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA32
4F041BA34
4F041BA38
4F041BA42
4F041BA59
4F042AA09
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA07
4F042BA12
4F042BA15
4F042CA01
4F042CB02
4F042CB03
4F042CB08
4F042CB10
4F042CB20
4F042CB27
4F042DH09
4F042ED03
5H050AA19
5H050BA17
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA29
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】安定して吐出可能な液吐出装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る液吐出装置は、液吐出口を有する液室と、加圧された液を前記液室へ供給する供給手段と、前記液吐出口を開閉させる弁部を含み、前記液室に設けられた第1弁体と、前記第1弁体を移動させる移動手段と、前記液室内の液を攪拌する撹拌機構と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液吐出口を有する液室と、
加圧された液を前記液室へ供給する供給手段と、
前記液吐出口を開閉させる弁部を含み、前記液室に設けられた第1弁体と、
前記第1弁体を移動させる移動手段と、
前記液室内の液を攪拌する撹拌機構と、を備えることを特徴とする液吐出装置。
【請求項2】
前記撹拌機構は、前記液吐出口が開放された状態で前記液室内の液を撹拌する
請求項1に記載の液吐出装置。
【請求項3】
前記撹拌機構は、前記移動手段による前記第1弁体の移動を制御する制御手段を有し、
前記第1弁体の移動は、前記弁部が第2位置から第1位置に向けて移動する第1移動と、前記弁部が前記第1位置と第3位置との間を往復移動する第2移動と、を含み、
前記第1位置は、前記弁部により前記液吐出口が開放される位置であり、
前記第2位置は、前記弁部により前記液吐出口が閉塞される位置であり、
前記第3位置は、前記第1位置と前記第2位置との間の位置である、請求項1に記載の液吐出装置。
【請求項4】
前記移動手段は、印加される電圧に応じて前記第1弁体を移動させ、
前記制御手段は、前記移動手段に対し、第1電圧を印加することにより前記弁部を前記第1位置に移動させ、第2電圧を印加することにより前記弁部を前記第2位置に移動させ、第3電圧を印加することにより前記弁部を前記第3位置に移動させ、
前記第1電圧は、前記第2電圧よりも小さく、
前記第3電圧は、前記第1電圧よりも大きく、且つ前記第2電圧よりも小さい請求項3に記載の液吐出装置。
【請求項5】
E2>E3≧(E2-E1)×0.05+E1を満足する請求項4に記載の液吐出装置。
(但し、E1は前記第1電圧を表し、E2は前記第2電圧を表し、E3は前記第3電圧を表す。)
【請求項6】
前記移動手段は、印加される電圧に応じて前記第1弁体を移動させ、
前記制御手段は、前記移動手段に対し、第1電圧を印加することにより前記弁部を前記第1位置に移動させ、第2電圧を印加することにより前記弁部を前記第2位置に移動させ、第3電圧を印加することにより前記弁部を前記第3位置に移動させ、
前記第1電圧は、前記第2電圧よりも大きく、
前記第3電圧は、前記第2電圧よりも大きく、前記第1電圧よりも小さい請求項3に記載の液吐出装置。
【請求項7】
E1×0.95≧E3>0を満足する請求項6に記載の液吐出装置。
(但し、E1は前記第1電圧を表し、E3は前記第3電圧を表す。)
【請求項8】
前記制御手段は、
前記第2電圧が前記第1電圧よりも大きい場合には、前記第2移動のために、前記第1電圧よりも所定電圧だけ大きい前記第3電圧を前記移動手段に印加し、
前記第1電圧が前記第2電圧よりも大きい場合には、前記第2移動のために、前記第2電圧よりも前記所定電圧だけ小さい前記第3電圧を前記移動手段に印加し、
前記移動手段の温度に応じて前記所定電圧を変更する第1電圧変更手段を、さらに有する請求項4乃至7の何れか1項に記載の液吐出装置。
【請求項9】
前記移動手段の移動回数に応じて前記第3電圧を変更する第2電圧変更手段を、さらに有する請求項4乃至7の何れか1項に記載の液吐出装置。
【請求項10】
前記移動手段は、印加される電圧に応じて前記第1弁体を移動させ、
前記制御手段は、前記弁部を前記第2位置に移動させる電圧を、所定時間よりも短い印加時間において前記移動手段に印加し、
前記所定時間は、前記移動手段に対し、前記弁部を前記第2位置に移動させる電圧が印加された後、前記弁部が前記第2位置に移動するまでにかかる時間である請求項3に記載の液吐出装置。
【請求項11】
Δt0×0.95≧Δt>0を満足する請求項10に記載の液吐出装置。
(但し、Δt0は前記所定時間を表し、Δtは前記印加時間を表す。)
【請求項12】
前記移動手段の温度に応じて、前記印加時間を変更する第1時間変更手段と、をさらに有する請求項10または11に記載の液吐出装置。
【請求項13】
前記移動手段の移動回数に応じて、前記印加時間を変更する第2時間変更手段をさらに有する請求項10または11に記載の液吐出装置。
【請求項14】
前記移動手段は、印加電圧に応じて伸縮する圧電素子を含む請求項3に記載の液吐出装置。
【請求項15】
前記液は、粘度が10[mPa・s]より大きい液、構造粘性を示すTI値が1.3より大きい液、固形分が20[wt%]より大きい液、または粒子径が5[μm]より大きい粒子を含む液、の何れか1つである請求項3に記載の液吐出装置。
【請求項16】
前記第2移動の繰り返し周波数は、100[Hz]以上である請求項3に記載の液吐出装置。
【請求項17】
前記供給手段と前記液室との間に位置する第1液路および第2液路と、
前記第1液路および前記第2液路の少なくとも一方の内部の液にかかる圧力を変動可能な液圧力変動手段と、をさらに備え、
前記撹拌機構は、前記液圧力変動手段により、前記第1液路および前記第2液路の少なくとも一方の内部の液にかかる圧力を変動させる、請求項1または請求項2に記載の液吐出装置。
【請求項18】
前記供給手段内の液を加圧する第1および第2の加圧手段と、
前記第2の加圧手段と前記供給手段との間の液路に設けられ、該液路を開閉可能な第2弁体と、をさらに備え、
前記第1の加圧手段により加えられる圧力の大きさは、前記第2の加圧手段により加えられる圧力の大きさとは異なり、
前記撹拌機構は、前記第2弁体により、前記第2の加圧手段と前記供給手段との間の液路を開閉させる、請求項1または請求項2に記載の液吐出装置。
【請求項19】
請求項1または請求項2に記載の液吐出装置を有し、
前記液吐出装置により吐出された前記液を基体に塗布する塗布装置。
【請求項20】
液吐出口を有する液室と、
加圧された液を前記液室へ供給する供給手段と、
前記液吐出口を開閉させる弁部を含み、前記液室に設けられた第1弁体と、
前記第1弁体を移動させる移動手段と、
前記移動手段による前記第1弁体の移動を制御する制御手段と、を有する液吐出装置による液吐出方法であって、
前記第1弁体の移動は、前記弁部が第2位置から第1位置に向けて移動する第1移動と、前記弁部が前記第1位置と第3位置との間を往復移動する第2移動と、を含み、
前記第1位置は、前記弁部により前記液吐出口が開放される位置であり、
前記第2位置は、前記弁部により前記液吐出口が閉塞される位置であり、
前記第3位置は、前記第1位置と前記第2位置との間の位置である液吐出方法。
【請求項21】
電極の製造方法であって、
液吐出口を有する液室と、
加圧された、電極材料を含む液を前記液室へ供給する供給手段と、
前記液吐出口を開閉させる弁部を含み、前記液室に設けられた第1弁体と、
前記第1弁体を移動させる移動手段と、
前記移動手段による前記第1弁体の移動を制御する制御手段と、を有する液吐出装置による液吐出工程を備え、
前記第1弁体の移動は、前記弁部が第2位置から第1位置に向けて移動する第1移動と、前記弁部が前記第1位置と第3位置との間を往復移動する第2移動と、を含み、
前記第1位置は、前記弁部により前記液吐出口が開放される位置であり、
前記第2位置は、前記弁部により前記液吐出口が閉塞される位置であり、
前記第3位置は、前記第1位置と前記第2位置との間の位置であり、
前記液吐出工程では、前記液吐出装置は、前記電極材料を含む液を吐出することで吐出対象物に電極材料を有する層を形成する、電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液吐出装置、塗布装置、液吐出方法および電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液吐出口を有する液室内の液体に圧力を加えることにより、液吐出口から液体を吐出させる液吐出装置が知られている。
【0003】
また液吐出装置として、液吐出口と、液吐出口に加圧された液体を供給する液室と、液室内に設けられ、液吐出口を開閉する弁体と、弁体を駆動させる駆動機構と、駆動機構を収容する駆動機構収容空間と、を有する構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液吐出装置は、安定して吐出することが求められている。
【0005】
本発明は、安定して吐出可能な液吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る液吐出装置は、液吐出口を有する液室と、加圧された液を前記液室へ供給する供給手段と、前記液吐出口を開閉させる弁部を含み、前記液室に設けられた第1弁体と、前記第1弁体を移動させる移動手段と、前記液室内の液を攪拌する撹拌機構と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安定して吐出可能な液吐出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る液吐出装置の構成例の図である。
図2図1における領域Aの拡大図である。
図3】第1実施形態に係る制御部の機能構成例の図である。
図4】第1実施形態に係るアクチュエータの駆動電圧の第1例の図である。
図5】第1実施形態に係る駆動電圧に応じた弁部の移動の第1例の図である。
図6】第1実施形態に係るアクチュエータの駆動電圧の第2例の図である。
図7】第1実施形態に係る駆動電圧に応じた弁部の移動の第2例の図である。
図8】第2実施形態に係る液吐出装置の構成例を示す図である。
図9】第2実施形態に係るアクチュエータの駆動電圧の第1例の図である。
図10】第2実施形態に係る駆動電圧に応じた弁部の移動の第1例の図である。
図11】第2実施形態に係るアクチュエータの駆動電圧の第2例の図である。
図12】第2実施形態に係る駆動電圧に応じた弁部の移動の第2例の図である。
図13】第2実施形態に係るヘッドの他の例の断面図であり、図13(a)は液吐出口の閉塞状態の図、図13(b)は液吐出口の開放状態の図である。
図14】第3実施形態に係る制御部の機能構成例の図である。
図15】第4実施形態に係るアクチュエータの駆動電圧の第1例の図である。
図16】第4実施形態に係る駆動電圧に応じた弁部の移動の第1例の図である。
図17】第4実施形態に係るアクチュエータの駆動電圧の第2例の図である。
図18】第4実施形態に係る駆動電圧に応じた弁部の移動の第2例の図である。
図19】第5実施形態に係る制御部の機能構成例の図である。
図20】第6実施形態に係る液吐出装置の構成の一例を示す図である。
図21図20における領域Aの拡大図である。
図22】第7実施形態に係る液吐出装置の構成の一例を示す図である。
図23】第8実施形態に係る液吐出装置の構成の一例を示す図である。
図24】第9実施形態に係る液吐出装置の構成の一例を示す図である。
図25】第10実施形態に係る塗布装置の構成例の図である。
図26】第10実施形態に係る塗布装置の対象物への配置の第1例の図である。
図27】第10実施形態に係る塗布装置の対象物への配置の第2例の図である。
図28】実施形態に係る電極の製造方法を実現するための電極の製造装置の一例を示す模式図である。
図29】実施形態に係る電極合材層の製造方法を実現するための電極の製造装置の他の一例を示す模式図である。
図30】実施形態に係る電極の製造方法の一例を示す図である。
図31】実施形態に係る電極の製造方法の他の例を示す図である。
図32】転写方式を採用した印刷部の一例を示す構成図であり、図32(a)は、ドラム状の中間転写体を用いた印刷部、図32(b)は、無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について詳細に説明する。各図面において、同一の構成部分には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0010】
以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための液吐出装置および液吐出方法を例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0011】
以下に示す図において、X軸およびY軸により方向を示す場合があるが、X軸に沿うX方向において矢印が向いている方向を+X方向、+X方向の反対方向を-X方向と表記する。またY軸に沿うY方向において矢印が向いている方向を+Y方向、+Y方向の反対方向を-Y方向と表記する。但し、これらのことは、実施形態に係る液吐出装置の使用時における向きを制限するものではなく、実施形態に係る液吐出装置の向きは任意である。
【0012】
実施形態に係る液吐出装置は、液吐出口を有する液室と、加圧された液を液室へ供給する供給手段と、液吐出口を開閉させる弁部を含み、液室に設けられた第1弁体と、第1弁体を移動させる移動手段と、移動手段による第1弁体の移動を制御する制御手段と、を有するものである。
【0013】
上記第1弁体の移動は、弁部が第2位置から第1位置に向けて移動する第1移動と、弁部が第1位置と第3位置との間を往復移動する第2移動と、を含む。第1位置は、弁部により液吐出口が開放される位置であり、第2位置は、弁部により液吐出口が閉塞される位置であり、第3位置は、第1位置と第2位置との間の位置である。
【0014】
弁部が第1位置に移動すると、液吐出口が開放され、供給手段により供給される加圧された液が液吐出口から吐出される状態になる。一方、弁部が第2位置に移動すると、液吐出口が閉塞され、液吐出口から液が吐出されない非吐出の状態になる。実施形態に係る液吐出装置は、弁部の第1移動により液の吐出を制御することにより、画像等のパターンを液によって対象物に形成したり、対象物に液を塗布したりすることができる。また液に加える圧力を大きくすることにより、吐出される液の飛翔距離を長くすることや、吐出される液の量を多くすることができる。
【0015】
一方で、吐出される液の性質によっては、弁部が第1位置に位置して液が吐出されている際に、液室内において液が流れる流路が詰まることにより、液が吐出されなくなったり、所望量の液を所望速度で所望方向に吐出できなくなったりして、液の吐出が不安定になる場合がある。
【0016】
例えば、高粘度の液や、高チクソ性の液、高濃度の液または大径粒子を含有する液等においては、増粘した液や粒子が流路に詰まりやすく、吐出が不安定になりやすい。なお、本明細書および特許請求の範囲において、高チクソ性とは、粘度が高い状態が標準的の液の状態であり、液を攪拌した場合等に粘度が低下し、流れやすい状態になる液の物性をいう。
【0017】
実施形態では、第2移動において、弁部が第1位置と第3位置との間を往復移動するように第1弁体を移動させることにより、液が吐出されている状態において、第1弁体により液室内の液圧力変動を生じさせ、攪拌させる。これにより、増粘した液や流路に詰まった粒子をほぐしたり、液の流れに伴う第1弁体の歪みにより流路が閉塞することを低減したりすることができる。その結果、液が吐出されている状態において、増粘した液や粒子により液室内の流路が詰まることを抑制し、液の吐出を安定化できる。
【0018】
以下、電気化学素子を製造するための液吐出装置を一例として説明する。なお、電気化学素子としては、一般に電気化学素子である2次電池やキャパシターが挙げられるが、本実施形態に係る液吐出装置はリチウムイオン2次電池の製造に好適に用いることができる。
【0019】
[第1実施形態]
<液吐出装置1の構成>
図1および図2を参照して第1実施形態に係る液吐出装置1の構成について説明する。図1は、液吐出装置1の構成の一例を示す図である。図2は、図1の領域Aの拡大図である。
【0020】
図1に示すように、液吐出装置1は、ヘッド100と、液供給部110と、制御部120と、を有する。液吐出装置1は、液供給部110により第1液路を介しヘッド100に液200を供給し、制御部120によりヘッド100を制御することによってヘッド100から液200を吐出する。また、ヘッド100から吐出されなかった液200は下流経路を介し、液供給部110に戻される。なお、図1におけるヘッド100は、内部を透視して示している。
【0021】
図1および図2に示すように、ヘッド100は、アクチュエータ101と、第1弁体103と、液室106と、を有する。
【0022】
アクチュエータ101は、印加電圧に応じて伸縮する圧電素子を含んでいる。実施形態においては、圧電素子はd33モード(縦変位タイプ)を利用したものであり、印加電圧に応じてY方向に伸縮する。圧電素子の材料は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)である。また実施形態に係る圧電素子は、伸縮に伴う変位量を大きくするために、複数の圧電素子をY方向に積層している積層型圧電素子である。
【0023】
アクチュエータ101は、-Y方向側の端部がフレーム102に接続して固定されており、+Y方向側の端部が第1弁体103の-Y方向側の端部に接続している。アクチュエータ101は、印加電圧に応じて圧電素子が伸縮することにより、第1弁体103を移動させる移動手段の一例である。実施形態においては、アクチュエータ101は、第1弁体103をY方向に移動させる。
【0024】
ヘッド100は、X方向に配列している複数の液室106を有する。複数の液室106それぞれは、液吐出口105を有する。液吐出口105は、液室106の+Y方向側の壁部を構成する液吐出口板109に形成され、液200を吐出する貫通孔である。液室106は、内部に液200を収容しつつ、液吐出口105を通して液室106の内部から外部に液200を吐出させる。
【0025】
実施形態に係る液200は、例えば粘度が10[mPa・s]より大きい液、構造粘性を示すTI値が1.3より大きい液、固形分が20[wt%]より大きい液、または粒子径が5[μm]より大きい粒子を含む液の何れか1つである。液200に含有される粒子としては、電極材料として用いられる粒子であって、例えば負極活物質として用いられる炭素や正極活物質として用いられるリチウム遷移金属酸化物、または電極に機能を付与するための機能層を形成するために用いられるセラミック等である。
【0026】
第1弁体103は、+Y方向側の一部が液室106の内部に収容されるように設けられている。第1弁体103は、金属材料等を含んで構成されており、それぞれがY方向に延伸する複数の針状または棒状部材である。
【0027】
複数の第1弁体103は、複数の液室106それぞれと対をなして+Y方向側の一部が液室106内部に挿入され、Y方向に移動可能に設けられている。液室106の内部における第1弁体103と液室106の内壁との間に形成される間隙は、液200が流れる個別液流路108を形成している。
【0028】
第1弁体103における液吐出口105側の端部は、液吐出口105を開閉させる弁部104を構成している。アクチュエータ101は、印加電圧に応じて第1弁体103をY方向に移動させることにより、液吐出口105が開放されている状態と、液吐出口105が閉塞されている状態の何れかの状態にすることができる。
【0029】
具体的には、アクチュエータ101における圧電素子が印加電圧に応じてY方向に縮むことにより第1弁体103が-Y方向側に移動し、弁部104が液吐出口105から離れて液吐出口が開放されている状態になる。またアクチュエータ101における圧電素子が印加電圧に応じてY方向に伸びることにより第1弁体103が+Y方向側に移動し、弁部104が液吐出口105を塞いで液吐出口が閉塞されている状態になる。
【0030】
液供給部110は、加圧された液200を液室106へ供給する供給手段の一例である。液供給部110は、液貯留部111と、エアコンプレッサ112と、エアタンク113と、エアフィルタ114と、レギュレータ115と、を有する。
【0031】
液供給部110は、エアコンプレッサ112により発生した圧搾空気を、一旦エアタンク113に駐留して圧力を維持する。その後、液供給部110は、レギュレータ115により液200の吐出に必要な圧力まで圧搾空気を減圧し、エアフィルタ114により異物や水分、油分などを取り除いた後、液貯留部111内を加圧する。液供給部110により加圧された液200は、マニホールド107を介して複数の液室106それぞれに供給される。なお、エアフィルタ114により異物や水分、油分を取り除いた後、レギュレータ115により液200の吐出に必要な圧力まで圧搾空気を減圧するような、レギュレータ115とエアフィルタ114とが逆の順序となるような構成であってもよい。
【0032】
液200は、液供給部110により加圧されているため、弁部104により液吐出口105が開放されると、液吐出口105を通して外部に吐出される。液200は、弁部104により液吐出口105が閉塞されると、吐出されない非吐出の状態となる。
【0033】
制御部120は、アクチュエータ101による第1弁体103の移動を制御する制御手段の一例である。制御部120の構成は、図3を用いて後述する。
【0034】
本実施形態においては、アクチュエータ101として、圧電素子を含むものを例示したが、これに限定されるものではない。例えばアクチュエータ101は、印加電圧に応じて磁界を発生する電磁石、印加電圧に応じて圧縮空気エネルギーを直動運動に変換するエアシリンダ、印加電圧に応じて駆動されるモータアクチュエータ、または印加電圧に応じて油圧を生じさせる油圧機構の少なくとも1つを含むこともできる。これらを用いても、圧電素子を用いる場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0035】
またヘッド100は、d31モードを利用した圧電素子を含むアクチュエータ101を備えることもできる。例えば、アクチュエータ101は、先端に液を吐出する吐出口が設けられると共に、吐出口の近傍に液を注入する注入口が設けられた中空状のノズル本体と、ノズル本体に内蔵され、外部からの電圧の印加に応じて伸縮する圧電素子と、吐出口を開閉する弁体と、弁体と圧電素子の間に配置された逆バネ機構と、弁体に外嵌されてインクが圧電素子側へ流入することを阻止する封止部材と、圧電素子の電極に接続された電圧印可用の一対のリード線を備えて構成される。
【0036】
なお、図2に示した、弁部104における液吐出口105に近いほうの端部の位置を表す第1位置P1、第2位置P2および第3位置P3については、図4および図5を参照した説明において述べる。
【0037】
<制御部120の機能構成例>
図3は、制御部120の機能構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、制御部120は、入力部121と、駆動電圧生成部122と、増幅部123と、出力部124と、を有する。これらの機能は電気回路で実現される他、これらの機能の一部をソフトウェア(CPU;Central Processing Unit)によって実現することもできる。また複数の回路または複数のソフトウェアによってこれらの機能が実現されてもよい。
【0038】
制御部120は、上位リッピング装置等から入力部121を介して入力したパターンデータImに応じて、駆動電圧生成部122により、ヘッド100に第1駆動または第2駆動の何れかを行わせるための駆動電圧を生成する。制御部120は、駆動電圧生成部122により生成された駆動電圧を増幅部123により増幅した後、出力部124を介してアクチュエータ101に出力する。
【0039】
<アクチュエータ101の駆動電圧と弁部104の移動例>
図4および図5を参照して、アクチュエータ101を駆動させる駆動電圧と弁部104の移動について説明する。図4は、アクチュエータ101の駆動電圧の第1例を示す図である。図5は、図4の駆動電圧に応じた弁部104の移動の第1例を示す図である。
【0040】
図4および図5の横軸は時間を示す。図4の縦軸は駆動電圧の電圧値を示し、図5の縦軸はY方向における弁部104の位置を示している。図4および図5は、横軸の時間を合わせて示している。図5に示す弁部104の位置は、図4に示す駆動電圧の電圧値に応じて変化する。
【0041】
駆動電圧の電圧値と弁部104の位置は、略線形な関係にある。略線形な関係は、駆動電圧の印加に対する弁部104の位置変化の時間遅れや、リニアリティ誤差等の線形からのずれ等が含まれるものの、全体として線形な関係にあることを意味する。
【0042】
制御部120は、駆動電圧生成部122により生成され、増幅部123により増幅された駆動電圧の波形をヘッド100に出力することにより、図4に示すように時間変化する駆動電圧をアクチュエータ101に供給できる。
【0043】
アクチュエータ101に第1電圧E1が印加されると、アクチュエータ101における圧電素子がY方向に縮み、第1弁体103が-Y方向に移動することにより弁部104が液吐出口105から離れて液吐出口105が開放される。この場合には、弁部104における液吐出口105に近いほうの端部は、第1位置P1に位置する。
【0044】
アクチュエータ101に第1電圧E1よりも大きい第2電圧E2が印加されると、アクチュエータ101における圧電素子がY方向に伸び、第1弁体103が+Y方向に移動することにより弁部104が液吐出口105を塞いで液吐出口105が閉塞される。この場合には、弁部104における液吐出口105に近いほうの端部は、第2位置P2に位置する。
【0045】
アクチュエータ101に第1電圧E1よりも大きく、第2電圧E2よりも小さい第3電圧E3が印加されると、弁部104における液吐出口105に近いほうの端部は、第1位置P1と第2位置P2との間の第3位置P3に移動する。
【0046】
換言すると、制御部120は、アクチュエータ101に対し、第1電圧E1を印加することにより弁部104を第1位置P1に移動させ、第2電圧E2を印加することにより弁部104を第2位置P2に移動させ、第3電圧E3を印加することにより弁部104を第3位置に移動させる。第1電圧E1は、第2電圧E2よりも小さく、第3電圧E3は、第1電圧E1よりも大きく、且つ第2電圧E2よりも小さい。
【0047】
駆動電圧の電圧値変化と弁部104の位置変化を時系列に説明する。まず、制御部120は、アクチュエータ101に第2電圧E2を印加して、弁部104を第2位置P2に移動させ、液吐出口105を完全に閉塞させる。その後、制御部120は、アクチュエータ101に第1電圧E1を印加して、弁部104を第2位置P2から第1位置P1に移動させ、液吐出口105を完全に開放させる。この開放された状態において、液200は液吐出口105から吐出される。第2位置P2から第1位置P1への移動は、第1移動M1に対応する。
【0048】
液200の吐出が始まってから時間t1[秒]が経過後において、制御部120は、アクチュエータ101に第3電圧E3を印加して、弁部104を第1位置P1から第3位置P3に移動させる。液吐出口105は、全開ではない状態になるが、液吐出口105は閉塞されていないため、液200は吐出を続ける。
【0049】
その後さらに時間t2経過した後に、制御部120は、アクチュエータ101に再度第1電圧E1を印加して、弁部104を第1位置P1に移動させる。液吐出口105は、完全に開放された状態になり、液200は吐出を続ける。第1位置P1から第3位置P3へ移動した後、第3位置P3から第1位置P1へ移動する往復移動は、第2移動M2に対応する。
【0050】
その後も同様に、制御部120は、アクチュエータ101に対し、時間t1経過後に第3電圧E3を印加し、さらに時間t2経過後に第1電圧E1を印加する動作を繰り返す。これにより、ヘッド100は、液200を吐出しつつ、弁部104に第1位置P1と第3位置P3との間を往復移動させ、液室106内の液200に圧力変動を生じさせ攪拌させることができる。
【0051】
吐出を停止する場合には、制御部120は、アクチュエータ101に第2電圧E2を印加して、液吐出口105を閉塞させる。
【0052】
第3電圧E3を印加する時間t1は、特に制限はないが、弁部104が第3電圧E3の印加に応じて、第3位置P3に移動するまでにかかる時間以上であることが好ましい。このようにすることにより、駆動電圧による変位量の調整が行い易くなる。
【0053】
圧力変動作用や攪拌作用を良好に得る観点においては、第3電圧E3は、E2>E3≧(E2-E1)×0.05+E1を満足することが好ましい。例えば第1電圧E1は10[V]、第2電圧E2は100[V]、第3電圧E3は20(V)等である。時間t1は100[μs]、時間t2は10[μs]等である。
【0054】
<液吐出装置1の作用効果>
以上説明したように、液吐出装置1は、液吐出口105を有する液室106と、加圧された液200を液室106へ供給する液供給部110(供給手段)と、液吐出口105を開閉させる弁部104を含み、液室106に設けられた第1弁体103と、第1弁体103を移動させるアクチュエータ101(移動手段)と、アクチュエータ101による第1弁体103の移動を制御する制御部120(制御手段)と、を有する。第1弁体103の移動は、弁部104が第2位置P2から第1位置P1に向けて移動する第1移動M1と、弁部104が第1位置P1と第3位置P3との間を往復移動する第2移動M2と、を含む。第1位置P1は、弁部104により液吐出口105が開放される位置であり、第2位置P2は、弁部104により液吐出口105が閉塞される位置であり、第3位置P3は、第1位置P1と第2位置P2との間の位置である。
【0055】
例えば、制御部120は、アクチュエータ101に対し、第1電圧E1を印加することにより弁部104を第1位置P1に移動させ、第2電圧E2を印加することにより弁部104を第2位置P2に移動させ、第3電圧E3を印加することにより弁部104を第3位置P3に移動させる。第1電圧E1は、第2電圧E2よりも小さく、第3電圧E3は、第1電圧E1よりも大きく、且つ第2電圧E2よりも小さい。
【0056】
弁部104が第1位置P1に移動すると、液吐出口105が開放され、液供給部110により供給される加圧された液200が、液吐出口105から吐出される状態になる。一方、弁部104が第2位置P2に移動すると、液吐出口105が閉塞され、液吐出口105から液が吐出されない非吐出の状態になる。液吐出装置1は、弁部104の第1移動M1により液200の吐出を制御することによって、電極基体に対して液200を塗布し、電極および当該電極を有する電気化学素子の製造を行うことができる。また液200に加える圧力を大きくすることにより、吐出される液200の飛翔距離を長くすることができる。なお、電極基体しては、アルミニウム箔、銅箔等の集電体であってもよく、また当該電極基体上に活物質を有する電極合材層が設けられたものであってもよい。
【0057】
また液吐出装置1では、液200が吐出されている状態において、第2移動M2を行うことにより、第1弁体103により液室106内の液200に圧力変動を生じさせ、攪拌させる。これにより、増粘した液や粒子をほぐしたり、液200の流れに伴う第1弁体103の歪みにより個別液流路108が閉塞することを低減したりすることができる。その結果、液200が吐出されている状態において、増粘した液や粒子により液室内の流路が詰まることを抑制し、液200を安定して吐出可能な液吐出装置1を提供できる。
【0058】
実施形態において第3電圧E3が印加され、弁部104が第3位置P3に位置する状態は、液吐出口105が完全には閉塞されていない状態ということもできる。液吐出口105が完全には閉塞されていない状態とは、液吐出口105が少しでも開放されており、液吐出口105からの液200の吐出が途切れない状態をいう。液吐出装置1は、弁部104が第1位置P1と第3位置P3との間を往復移動することにより、液室106内の液200に圧力変動を生じさせ、攪拌させることができ、吐出を停止させず継続させることが可能になる。
【0059】
圧力変動作用や攪拌作用を好適に得る観点においては、第2移動M2は繰り返し行われることが好ましい。第2移動M2を繰り返し行うことで、ノズル孔を開放し、液を吐出つつ、ノズル孔近傍において脈動的に圧力変動を生じさせることができることから、液流れの停滞抑制、及びノズル孔から押し出す方向への液の撹拌が可能となり、弁を閉じた状態で圧力変動を生じさせた場合よりも、液の撹拌を良好に行うことができる。なお、この第2移動M2の繰り返しは、周期的であってもよく、非周期的であってもよいが、1秒間に弁が100往復以上移動することが好ましい。
【0060】
また、液200が、粘度が10[mPa・s]より大きい液、構造粘性を示すTI値が1.3より大きい液、固形分が20[wt%]より大きい液、または粒子径が5[μm]より大きい粒子を含む液、の何れか1つである場合には、増粘した液や粒子により液室内の流路が詰まりやすくなるため、本実施形態の適用が特に効果的である。
【0061】
本実施形態では、弁部104が第1位置P1に移動した際に、アクチュエータ101における圧電素子が縮みきって液吐出口105が完全な開放状態になる場合を説明したが、これに限定されるものではない。実施形態において、弁部104が第1位置P1に移動した際における開放状態は、液吐出口105を完全に開放した状態だけでなく、液吐出口105の一部を開放している状態も含む。液吐出口105の一部を開放している状態においても、上述した作用効果が得らえる。また液吐出口105の開放状態に応じて吐出される液200の量を変化させることもできる。
【0062】
<第1実施形態の変形例>
液吐出装置1の駆動電圧は、様々な変形が可能である。以下、第1実施形態における駆動電圧の変形例について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成部には、同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。この点は、以降に示す実施形態および変形例においても同様とする。
【0063】
図6は、アクチュエータ101を駆動させる駆動電圧の第2例を示す図である。図7は、駆動電圧に応じた弁部104の移動の第2例を示す図である。図6および図7の見方は、図4および図5と同じである。以降に示すアクチュエータ101の駆動電圧と、駆動電圧に応じた弁部104の移動を示す図においても、図の見方は図4および図5と同じである。
【0064】
駆動電圧の電圧値変化と弁部104の位置変化を時系列に説明する。まず、制御部120は、アクチュエータ101に第2電圧E2を印加して、弁部104を第2位置P2に移動させ、液吐出口105を完全に閉塞させる。その後、制御部120は、アクチュエータ101に第3電圧E3を印加して、弁部104を第2位置P2から第3位置P3に移動させ、液吐出口105を開放させる。液吐出口105は、全開ではない状態になるが、閉塞されていないため、液200は液吐出口105から吐出される。第2位置P2から第3位置への第1位置P1に向けた移動は、第1移動M1に対応する。
【0065】
液200の吐出が始まってから時間t1[秒]が経過後において、制御部120は、アクチュエータ101に第1電圧E1を印加して、弁部104を第3位置P3から第1位置P1に移動させる。液吐出口105は、全開状態になり、液200は吐出を続ける。
【0066】
その後さらに時間t2が経過した後に、制御部120は、アクチュエータ101に再度第3電圧E3を印加して、弁部104を第3位置P3に移動させる。液吐出口105は、閉塞されていないため、液200は吐出を続ける。弁部104が第3位置P3から第1位置P1へ移動した後、第1位置P1から第3位置P3へ移動する往復移動は、第2移動M2に対応する。
【0067】
その後も同様に、制御部120は、アクチュエータ101に対し、時間t1経過後に第1電圧E1を印加し、さらに時間t2経過した後に第3電圧E3を印加する動作を繰り返す。これにより、ヘッド100は、液200を吐出しつつ、弁部104に第1位置P1と第3位置P3との間を往復移動させ、液室106内の液200に圧力変動を生じさせ、攪拌させることができる。
【0068】
吐出を停止する場合には、制御部120は、アクチュエータ101に第2電圧E2を印加して、液吐出口105を閉塞させる。
【0069】
第1電圧E1を印加する時間t1は、特に制限はないが、弁部104が第1電圧E1の印加に応じて第1位置P1に移動するまでにかかる時間以上であることが好ましい。このようにすることにより、駆動電圧による変位量の調整が行い易くなる。また第1電圧E1を略0[V]にすると、第3電圧E3と第1電圧E1との電圧差が大きくなることにより、第3位置P3と第1位置P1との間の移動量が大きくなり、圧力変動作用や攪拌作用をより良好に得ることができるため、より好ましい。
【0070】
圧力変動作用や攪拌作用を良好に得る観点においては、第3電圧E3と第1電圧E1との差分値は、第2電圧E2と第1電圧E1との差分値の5[%]以上であること、即ちE2>E3≧(E2-E1)×0.05+E1であることが好ましい。
【0071】
[第2実施形態]
図8は、液吐出装置1が有するヘッドの第2例であるヘッド100aを説明する図である。図9は、ヘッド100aが有するアクチュエータ101aの駆動電圧の第1例を示す図である。図10は、アクチュエータ101aへの駆動電圧に応じた弁部104の移動の第1例を示す図である。
【0072】
図8に示すように、ヘッド100aは、アクチュエータ101aを有する。アクチュエータ101aは、d31モードを利用した圧電素子を含む。
【0073】
図9および図10に示すように、アクチュエータ101aに第1電圧E1が印加されると、アクチュエータ101aにおける圧電素子がY方向に縮み、第1弁体103が-Y方向に移動することにより弁部104が液吐出口105から離れて液吐出口105が開放される。この場合には、弁部104は第1位置P1に位置する。
【0074】
アクチュエータ101aに第1電圧E1よりも小さい第2電圧E2が印加されると、アクチュエータ101aにおける圧電素子がY方向に伸び、第1弁体103が+Y方向に移動することにより弁部104が液吐出口105を塞いで液吐出口105が閉塞される。この場合には、弁部104は、第2位置P2に位置する。
【0075】
アクチュエータ101aに第1電圧E1よりも小さく、第2電圧E2よりも大きい第3電圧E3が印加されると、弁部104は、第1位置P1と第2位置P2との間の第3位置P3に移動する。
【0076】
換言すると、制御部120は、アクチュエータ101aに対し、第1電圧E1を印加することにより弁部104を第1位置P1に移動させ、第2電圧E2を印加することにより弁部104を第2位置P2に移動させ、第3電圧E3を印加することにより弁部104を第3位置P3に移動させる。第1電圧E1は、第2電圧E2よりも大きく、第3電圧E3は、第2電圧E2よりも大きく、第1電圧E1よりも小さい。
【0077】
駆動電圧の電圧値変化と弁部104の位置変化を時系列に説明する。まず、制御部120は、アクチュエータ101aに第2電圧E2を印加して、弁部104を第2位置P2に移動させ、液吐出口105を完全に閉塞させる。その後、制御部120は、アクチュエータ101aに第1電圧E1を印加して、弁部104を第2位置P2から第1位置P1に移動させ、液吐出口105を完全に開放させる。この開放された状態において、液200は液吐出口105から吐出される。第2位置P2から第1位置P1への移動は、第1移動M1に対応する。
【0078】
液200の吐出が始まってから時間t1[秒]が経過した後において、制御部120は、アクチュエータ101aに第3電圧E3を印加して、弁部104を第1位置P1から第3位置P3に移動させる。液吐出口105は、全開ではない状態になるが、液吐出口105は閉塞されていないため、液200は吐出を続ける。
【0079】
その後さらに時間t2が経過した後に、制御部120は、アクチュエータ101aに再度第1電圧E1を印加して、弁部104を第1位置P1に移動させる。液吐出口105は、完全に開放した状態になり、液200は吐出を続ける。弁部104が第1位置P1から第3位置P3へ移動した後、第3位置P3から第1位置P1へ移動する往復移動は、第2移動M2に対応する。
【0080】
その後も同様に、制御部120は、アクチュエータ101aに対し、時間t1経過後に第3電圧E3を印加し、さらに時間t2経過後に第1電圧E1を印加する動作を繰り返す。これにより、ヘッド100aは、液200を吐出しつつ、弁部104に第1位置P1と第3位置P3との間を往復移動させ、液室106内の液200に圧力変動を生じさせ、攪拌させることができる。
【0081】
吐出を停止する場合には、制御部120は、アクチュエータ101aに第2電圧E2を印加して、液吐出口105を閉塞させる。
【0082】
第3電圧E3を印加する時間t2は、特に制限はないが、弁部104が第3電圧E3の印加に応じて第3位置P3に移動するまでにかかる時間以上であることが好ましい。このようにすることにより、駆動電圧による変位量の調整が行い易くなる。圧力変動作用や攪拌作用を良好に得る観点においては、第3電圧E3は、E1×0.95≧E3>0を満足することが好ましい。
【0083】
本実施形態における作用効果は、第1実施形態と同様である。
【0084】
またヘッド100aは、d33モードを利用した圧電素子を含むアクチュエータ101aを備えることもできる。例えば、アクチュエータ101aは、先端に液を吐出する吐出口が設けられると共に、吐出口の近傍に液を注入する注入口が設けられた中空状のノズル本体と、ノズル本体に内蔵され、外部からの電圧の印加に応じて伸縮する圧電素子と、吐出口を開閉する弁体と、弁体と圧電素子の間に配置された逆バネ機構と、弁体に外嵌されてインクが圧電素子側へ流入することを阻止する封止部材と、圧電素子の電極に接続された電圧印可用の一対のリード線を備えて構成される。
【0085】
<第2実施形態の変形例>
図11は、アクチュエータ101aを駆動させる駆動電圧の第2例を示す図である。図7は、駆動電圧に応じた弁部104の移動の第2例を示す図である。
【0086】
駆動電圧の電圧値変化と弁部104の位置変化を時系列に説明する。まず、制御部120は、アクチュエータ101aに第2電圧E2を印加して、弁部104を第2位置P2に移動させ、液吐出口105を完全に閉塞させる。その後、制御部120は、アクチュエータ101aに第3電圧E3を印加して、弁部104を第2位置P2から第3位置P3に移動させ、液吐出口105を開放させる。液吐出口105は、全開ではない状態になるが、液吐出口105は閉塞されていないため、液200は液吐出口105から吐出される。第2位置P2から第3位置への第1位置P1に向けた移動は、第1移動M1に対応する。
【0087】
液200の吐出が始まってから時間t1[秒]が経過した後において、制御部120は、アクチュエータ101aに第1電圧E1を印加して、弁部104を第3位置P3から第1位置P1に移動させる。液吐出口105は、全開状態になり、液200は吐出を続ける。
【0088】
その後さらに時間t2が経過した後に、制御部120は、アクチュエータ101aに再度第3電圧E3を印加して、弁部104を第3位置P3に移動させる。液吐出口105は閉塞されていないため、液200は吐出を続ける。弁部104が第3位置P3から第1位置P1へ移動した後、第1位置P1から第3位置P3へ移動する往復移動は、第2移動M2に対応する。
【0089】
その後も同様に、制御部120は、アクチュエータ101に対し、時間t1経過後に第1電圧E1を印加し、さらに時間t2経過後に第3電圧E3を印加する動作を繰り返す。これにより、ヘッド100は、液200を吐出しつつ、弁部104に第1位置P1と第3位置P3との間を往復移動させ、液室106内の液200に圧力変動を生じさせ、攪拌させることができる。
【0090】
吐出を停止する場合には、制御部120は、アクチュエータ101に第2電圧E2を印加して、液吐出口105を閉塞させる。
【0091】
第1電圧E1を印加する時間t1は、特に制限はないが、弁部104が第1電圧E1の印加に応じて第1位置P1に移動するまでにかかる時間以上であることが好ましい。このようにすることにより、駆動電圧による変位量の調整が行い易くなる。また第1電圧E1を略0[V]にすると、第3電圧E3と第1電圧E1との電圧差が大きくなり、第3位置P3と第1位置P1との間の移動量が大きくなって、好適に圧力を変動させたり攪拌できたりするため、より好ましい。
【0092】
圧力変動作用や攪拌作用を良好に得る観点においては、第2電圧E2と第3電圧E3との差分値は、第2電圧E2と第1電圧E1との差分値の5[%]以上であること、即ちE2-(E2-E1)×0.05>E3≧E1であることが好ましい。
【0093】
(ヘッドの変形例)
図13は、第2実施形態に係るヘッドの他の例であるヘッド100bの構成の一例を示す断面図である。図13(a)は液吐出口105が閉塞された状態を示す図、図13(b)は液吐出口105が開放された状態を示す図である。
【0094】
ヘッド100bは、ノズル本体4と、アクチュエータ101bと、第1弁体103と、逆バネ機構8と、封止部材6と、一対のリード線9およびリード線10と、を有する。
【0095】
ノズル本体4は、先端に液200を吐出する液吐出口105が設けられると共に、液吐出口105の近傍に液200を注入する注入口3が設けられている。アクチュエータ101bは、ノズル本体4に内蔵され、外部からの駆動電圧の印加に応じて伸縮する。第1弁体103は、液吐出口105を開閉する。逆バネ機構8は、第1弁体103とアクチュエータ101bの間に配置されている。封止部材6は、第1弁体103に外嵌されて液200がアクチュエータ101b側へ流入することを阻止する。一対のリード線9およびリード線10は、アクチュエータ101bの電極に接続され、電圧印加のために使用される。
【0096】
ノズル本体4は、全体として円筒状または角筒状に形成され、液吐出口105および注入口3以外は閉塞されている。液吐出口105は、ノズル本体4の先端に穿設された開口であり、液200が吐出されるようになっている。注入口3は、液吐出口105の近傍のノズル本体4の側面に設けられ、インクタンクと接続されると共に加圧手段によって連続的に液200がヘッド100bに供給される。
【0097】
アクチュエータ101bは、ジルコニアセラミックス等を用いて形成されており、吐出される液200の量等に応じて適宜の外形および厚みによって形成される。また、アクチュエータ101bは、制御部120からの駆動電圧によって制御される。
【0098】
封止部材6は、例えばパッキンやOリング等であり、封止部材6を第1弁体103に外嵌することで、注入口3側からアクチュエータ101b側へインクが流入することを防止する。
【0099】
逆バネ機構8は、適宜に変形可能なゴムや軟質樹脂等または薄い金属板等を成形加工することによって形成された弾性部材である。逆バネ機構8は、第1弁体103の基端側の面に当接するようにして形成された断面略台形状の変形部8aと、ノズル本体4の内壁面に固定される固定部8bと、アクチュエータ101bの端面と連結されるガイド部8cを備えている。台形状の変形部8aの長辺(台形の下底に相当)は固定部8bと連結された屈曲辺8dとされている。
【0100】
逆バネ機構8は、アクチュエータ101bに駆動電圧が印加されると、アクチュエータ101bが伸張することにより、ガイド部8cが液吐出口105側へ移動して変形部8aの屈曲辺8dの中央部付近を押圧する。これにより、第1弁体103と連結されている変形部8aの頂部(台形の上底に相当)がアクチュエータ101b側に移動する。第1弁体103は図13に示す距離dだけアクチュエータ101b側に引き寄せられることで液吐出口105が開放される。
【0101】
逆バネ機構8の変形部8aにおける第1弁体103との連結部である頂部と屈曲辺8dとの距離や屈曲辺8dの長さを適宜に調整することにより、アクチュエータ101bが伸張する長さよりも第1弁体103が移動する長さを長くすることができる。換言すると、逆バネ機構8はアクチュエータ101bの僅かな伸張を増幅できる。
【0102】
これにより、高価なアクチュエータ101bの長さを従来よりも短くすることができるため、ヘッド100bの生産コストを大幅に下げることができる。例えば、第1弁体103の移動距離をアクチュエータ101bの端面の移動距離の2倍とすることにより、アクチュエータ101bの長さを短くすることができる。
【0103】
アクチュエータ101bに駆動電圧が印加されていない状態においては、アクチュエータ101bは原型に戻るため、逆バネ機構8には外部から力が加わらない状態となり、変形は生じない。一方、アクチュエータ101bに駆動電圧が印可されるとアクチュエータ101bが伸張し、これに応じて逆バネ機構8のガイド部8cが液吐出口105側へ移動するため、変形部8aが押し潰されたように変形する。
【0104】
第2実施形態に係るヘッドとして、このようなヘッド100bを用いても、上述したヘッド100aと同様の作用効果を得ることができる。
【0105】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る液吐出装置1cについて説明する。
【0106】
図14は、液吐出装置1cが有する制御部120cの機能構成の一例を示すブロック図である。図14に示すように、制御部120cは、第1電圧変更部125と、移動回数計数部126と、第2電圧変更部127と、を有する。これらの機能は電気回路で実現される他、これらの機能の一部をソフトウェアによって実現することもできる。また複数の回路または複数のソフトウェアによってこれらの機能が実現されてもよい。
【0107】
制御部120cは、第2電圧E2が第1電圧E1よりも大きい場合には、第2移動M2のために、第1電圧E1よりも所定電圧ΔVだけ大きい第3電圧E3をアクチュエータ101に印加する。制御部120cは、第1電圧E1が第2電圧E2よりも大きい場合には、第2移動M2のために、第2電圧E2よりも所定電圧ΔVだけ小さい第3電圧E3をアクチュエータ101に印加する。
【0108】
液吐出装置1cは、アクチュエータ101の温度を検出する温度センサ130を有する。
【0109】
第1電圧変更部125は、温度センサ130により検出されたアクチュエータ101の温度に応じて所定電圧ΔVを変更する第1電圧変更手段の一例である。
【0110】
移動回数計数部126は、アクチュエータ101が第1移動M1を行った回数を計数し、計数結果を第2電圧変更部127に出力する。
【0111】
第2電圧変更部127は、移動回数計数部126により計数されたアクチュエータ101の第1移動M1の回数に応じて、第3電圧E3を変更する第2電圧変更手段の一例である。
【0112】
アクチュエータ101の温度によって、単位電圧当たりの駆動電圧に対する第1弁体103の移動量が変化する場合がある。また、アクチュエータ101による第1移動M1の回数が増えると、単位電圧当たりの駆動電圧に対する第1弁体103の移動量が減少する場合がある。
【0113】
制御部120cは、第1電圧変更部125により、アクチュエータ101の温度に応じて所定電圧ΔVを変更する。また制御部120cは、第2電圧変更部127により、アクチュエータ101による第1移動M1の回数に応じて、所定電圧ΔVを変更する。これにより、駆動電圧に応じて液吐出口105が開放される量が略一定になり、吐出量を安定化させることができる。これ以外の効果は第1実施形態と同様である。
【0114】
[第4実施形態]
第4実施形態について説明する。本実施形態に係るアクチュエータ101dは、印加される電圧に応じて第1弁体103を移動させ、制御部120は、弁部104を第2位置P2に移動させる電圧を、所定時間Δt0よりも短い印加時間においてアクチュエータ101dに印加する。所定時間Δt0は、アクチュエータ101dに対し、弁部104を第2位置P2に移動させる電圧が印加された後、弁部104が第2位置P2に移動するまでにかかる時間である。
【0115】
圧電素子を含むアクチュエータは、駆動電圧が印加された後、駆動電圧に対応する距離を移動するまでに所定時間がかかる。そのため、所定時間Δt0よりも短い印加時間Δtにおいて駆動電圧をアクチュエータ101dに印加することにより、弁部104が第2位置P2に到達する前に弁部104の移動を止めることができる。これにより、本実施形態においては、第3電圧E3をアクチュエータ101dに印加することなく、弁部104に第1位置P1と第3位置P3との間を往復移動させる。
【0116】
図15は、アクチュエータ101dの駆動電圧の第1例を示す図である。図16は、駆動電圧に応じた弁部104の移動の第1例を示す図である。
【0117】
アクチュエータ101dは、d33モードを利用した圧電素子を含む。
【0118】
図15および図16に示すように、アクチュエータ101dに第1電圧E1が印加されると、アクチュエータ101dにおける圧電素子がY方向に縮み、第1弁体103が-Y方向に移動することにより、弁部104が液吐出口105から離れて液吐出口105が開放される。この場合には、弁部104は第1位置P1に位置する。
【0119】
アクチュエータ101dに第1電圧E1よりも大きい第2電圧E2が印加されると、アクチュエータ101dにおける圧電素子がY方向に伸び、第1弁体103が+Y方向に移動することにより、弁部104が液吐出口105を塞いで液吐出口105が閉塞される。この場合には、弁部104は、第2位置P2に位置する。
【0120】
駆動電圧の電圧値変化と弁部104の位置変化を時系列に説明する。まず、制御部120は、アクチュエータ101dに第2電圧E2を印加して、弁部104を第2位置P2に移動させ、液吐出口105を完全に閉塞させる。その後、制御部120は、アクチュエータ101dに第1電圧E1を印加して、弁部104を第2位置P2から第1位置P1に移動させ、液吐出口105を完全に開放させる。この開放された状態において、液200は液吐出口105から吐出される。第2位置P2から第1位置P1への移動は、第1移動M1に対応する。
【0121】
液200の吐出が始まってから時間t1[秒]が経過した後において、制御部120は、アクチュエータ101dに対し、第2電圧E2を印加し、その後、所定時間Δt0よりも短い印加時間Δtが経過した後に、第1電圧E1を印加する。これにより、弁部104は、第2位置P2に到達する前に、第3位置P3において第1位置P1に向けて折り返し、その後、第1位置P1に到達する。この間には、液吐出口105は閉塞されていないため、液200は吐出を続ける。
【0122】
所定時間Δt0が経過し、さらに時間t1が経過した後に、制御部120は、アクチュエータ101dに対し、第2電圧E2を印加して、その後、所定時間Δt0よりも短い印加時間Δtが経過した後に、第1電圧E1を印加する。これにより、弁部104は、第2位置P2に到達する前に、第3位置P3において第1位置P1に向けて折り返し、その後、第1位置P1に到達する。この間には、液吐出口105は閉塞されていないため、液200は吐出を続ける。
【0123】
その後も同様に、所定時間Δt0が経過し、さらに時間t1が経過した後に、制御部120は、アクチュエータ101dに対し、第2電圧E2を印加して、その後、印加時間Δtが経過した後に、第1電圧E1を印加する動作を繰り返す。これにより、ヘッド100dは、液200を吐出しつつ、弁部104に第1位置P1と第3位置P3との間を往復移動させ、液室106内の液200に圧力変動を生じさせ、を攪拌させることができる。
【0124】
吐出を停止する場合には、制御部120は、アクチュエータ101dに第2電圧E2を印加して、液吐出口105を閉塞させる。
【0125】
第2電圧E2を印加後、所定時間Δt0が経過する前に第1電圧E1を印加するまでの時間、即ち弁部104を第3位置P3に移動させるための印加時間Δtは、ヘッドの構造やアクチュエータの種類等にもよるが、所定時間Δt0の5[%]以上が好ましいため、Δt0×0.95≧Δt>0であることが好ましい。
【0126】
以上のように、アクチュエータ101dを用いることにより、安定して吐出可能な液吐出装置1を提供できる。
【0127】
<第4実施形態の変形例>
図17は、第3実施形態に係るアクチュエータの第2例としてのアクチュエータ101eの駆動電圧を示す図である。図18は、駆動電圧に応じた弁部104の移動の第2例を示す図である。
【0128】
アクチュエータ101eは、d31モードを利用した圧電素子を含む。
【0129】
図17および図18に示すように、アクチュエータ101eに第1電圧E1が印加されると、アクチュエータ101eにおける圧電素子がY方向に縮み、第1弁体103が-Y方向に移動することにより弁部104が液吐出口105から離れて液吐出口105が開放される。この場合には、弁部104は第1位置P1に位置する。
【0130】
アクチュエータ101eに第1電圧E1よりも小さい第2電圧E2が印加されると、アクチュエータ101eにおける圧電素子がY方向に伸び、第1弁体103が+Y方向に移動することにより弁部104が液吐出口105を塞いで液吐出口105が閉塞される。この場合には、弁部104は、第2位置P2に位置する。
【0131】
駆動電圧の電圧値変化と弁部104の位置変化を時系列に説明する。まず、制御部120は、アクチュエータ101eに第2電圧E2を印加して、弁部104を第2位置P2に移動させ、液吐出口105を完全に閉塞させる。その後、制御部120は、アクチュエータ101eに第1電圧E1を印加して、弁部104を第2位置P2から第1位置P1に移動させ、液吐出口105を完全に開放させる。この開放された状態において、液200は液吐出口105から吐出される。第2位置P2から第1位置P1への移動は、第1移動M1に対応する。
【0132】
液200の吐出が始まってから時間t1[秒]が経過した後において、制御部120は、アクチュエータ101eに対し、第2電圧E2を印加し、その後、所定時間Δt0より短い印加時間Δtが経過した後に、第1電圧E1を印加する。これにより、弁部104は、第2位置P2に到達する前に、第3位置P3において第1位置P1に向けて折り返し、その後、第1位置P1に到達する。この間には、液吐出口105は閉塞されていないため、液200は吐出を続ける。
【0133】
所定時間Δt0が経過し、さらに時間t1が経過した後に、制御部120は、アクチュエータ101eに対し、第2電圧E2を印加して、その後、所定時間Δt0より短い印加時間Δtが経過した後に、第1電圧E1を印加する。これにより、弁部104は、第2位置P2に到達する前に、第3位置P3において第1位置P1に向けて折り返し、その後、第1位置P1に到達する。この間には、液吐出口105は閉塞されていないため、液200は吐出を続ける。
【0134】
その後も同様に、所定時間Δt0が経過し、さらに時間t1が経過した後に、制御部120は、アクチュエータ101eに対し、第2電圧E2を印加して、その後、所定時間Δt0よりも短い印加時間Δtが経過した後に、第1電圧E1を印加する動作を繰り返す。これにより、ヘッド100eは、液200を吐出しつつ、弁部104に第1位置P1と第3位置P3との間を往復移動させ、液室106内の液200に圧力変動を生じさせ、攪拌させることができる。
【0135】
吐出を停止する場合には、制御部120は、アクチュエータ101eに第2電圧E2を印加して、液吐出口105を閉塞させる。
【0136】
印加時間Δtは、ヘッドの構造やアクチュエータの種類等にもよるが、所定時間Δt0の5[%]以上が好ましいため、Δt0×0.95≧Δt>0であることが好ましい。
【0137】
[第5実施形態]
第5実施形態に係る液吐出装置1fについて説明する。液吐出装置1fおけるアクチュエータには、第3実施形態に係るアクチュエータ101dまたは第4実施形態に係るアクチュエータ101eを適用できる。
【0138】
図19は、液吐出装置1fが有する制御部120fの機能構成の一例を示すブロック図である。図19に示すように、制御部120fは、第1時間変更部128と、第2時間変更部129と、を有する。これらの機能は電気回路で実現される他、これらの機能の一部をソフトウェアによって実現することもできる。また複数の回路または複数のソフトウェアによってこれらの機能が実現されてもよい。
【0139】
制御部120fは、弁部104を第3位置P3に移動させる第1電圧E1または第2電圧E2を、所定時間Δt0よりも短い印加時間Δtにおいてアクチュエータ101dに印加する。
【0140】
第1時間変更部128は、温度センサ130により検出されたアクチュエータ101dの温度に応じて、印加時間Δtを変更する第1時間変更手段の一例である。
【0141】
第2時間変更部129は、移動回数計数部126により計数されたアクチュエータ101dの第1移動M1の回数に応じて、印加時間Δtを変更する第2時間変更手段の一例である。
【0142】
アクチュエータ101dの温度によって、単位電圧当たりの駆動電圧に対する第1弁体103の移動量が変化する場合がある。また、アクチュエータ101dによる第1移動M1の回数が増えると、単位電圧当たりの駆動電圧に対する第1弁体103の移動量が減少する場合がある。
【0143】
制御部120cは、第1時間変更部128により、アクチュエータ101dの温度に応じて印加時間Δtを変更する。また制御部120cは、第2時間変更部129により、アクチュエータ101dによる第1移動M1の回数に応じて印加時間Δtを変更する。これにより、駆動電圧に応じて液吐出口105が開放される量が略一定になり、吐出量を安定化させることができる。これ以外の効果は、第1実施形態と同様である。
【0144】
[第6実施形態]
図20および図21を参照して、第6実施形態に係る液吐出装置の構成を説明する。図20は、第6実施形態に係る液吐出装置の構成の一例を示す図である。図21は、図20における領域Aの拡大図である。
【0145】
図20に示すように、第6実施形態に係る液吐出装置は、ヘッド100と、液供給部110と、弾性膜340と、振動源330と、を有する。弾性膜340は、液供給部110からヘッド100へと液を供給する第1液路320上に設けられている。振動源330は、弾性膜340を揺動可能である。
【0146】
第6実施形態に係る液吐出装置は、液供給部110によりヘッド100に液200を供給し、制御部によりヘッド100を制御することによってヘッド100から液200を吐出する。なお、図20におけるヘッド100は、内部を透視して示している。
【0147】
図20および図21に示すように、ヘッド100は、アクチュエータ101と、第1弁体103と、液室106と、を有する。
【0148】
アクチュエータ101は、印加電圧に応じて伸縮する圧電素子を含んでいる。本実施形態においては、圧電素子はd33モード(縦変位タイプ)を利用したものであり、印加電圧に応じてY方向に伸縮する。圧電素子の材料は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)である。また実施形態に係る圧電素子は、伸縮に伴う変位量を大きくするために、複数の圧電素子をY方向に積層している積層型圧電素子である。
【0149】
アクチュエータ101は、-Y方向側の端部がフレーム102に接続して固定されており、+Y方向側の端部が第1弁体103の-Y方向側の端部に接続している。アクチュエータ101は、印加電圧に応じて圧電素子が伸縮することにより、第1弁体103を移動させる移動手段の一例である。実施形態においては、アクチュエータ101は、第1弁体103をY方向に移動させる。
【0150】
ヘッド100は、X方向に配列している複数の液室106を有する。複数の液室106それぞれは、液吐出口105を有する。液吐出口105は、液室106の+Y方向側の壁部を構成する液吐出口板109に形成され、液200を吐出する貫通孔である。液室106は、内部に液200を収容しつつ、液吐出口105を通して液室106の内部から外部に液200を吐出させる。
【0151】
実施形態に係る液200は、例えば粘度が10[mPa・s]より大きい液、構造粘性を示すTI値が1.3より大きい液、固形分が20[wt%]より大きい液、または粒子径が5[μm]より大きい粒子を含む液の何れか1つである。液200に含有される粒子としては、電極材料として用いられる粒子であって、例えば負極活物質として用いられる炭素や正極活物質として用いられるリチウム遷移金属酸化物、または電極に機能を付与するための機能層を形成するために用いられるセラミック等である。
【0152】
第1弁体103は、+Y方向側の一部が液室106の内部に収容されるように設けられている。第1弁体103は、金属材料等を含んで構成されており、それぞれがY方向に延伸する複数の針状部材である。
【0153】
複数の第1弁体103は、複数の液室106それぞれと対をなして+Y方向側の一部が液室106内部に挿入され、Y方向に移動可能に設けられている。液室106の内部における第1弁体103と液室106の内壁との間に形成される間隙は、液200が流れる個別液流路108を形成している。
【0154】
第1弁体103における液吐出口105側の端部は、液吐出口105を開閉させる弁部104を構成している。アクチュエータ101は、印加電圧に応じて第1弁体103をY方向に移動させることにより、液吐出口105が開放されている状態と、液吐出口105が閉塞されている状態の何れかの状態にすることができる。
【0155】
具体的には、アクチュエータ101における圧電素子が印加電圧に応じてY方向に縮むことにより第1弁体103が-Y方向側に移動し、弁部104が液吐出口105から離れて液吐出口が開放されている状態になる。またアクチュエータ101における圧電素子が印加電圧に応じてY方向に伸びることにより第1弁体103が+Y方向側に移動し、弁部104が液吐出口105を塞いで液吐出口が閉塞されている状態になる。
【0156】
第1の加圧手段300と液貯留部111は、加圧された液200を液室106へ供給する供給手段の一例である。第1の加圧手段300により加圧された液200は、マニホールド107を介して複数の液室106それぞれに供給される。
【0157】
液200は、第1の加圧手段300により加圧されているため、弁部104により液吐出口105が開放されると、液吐出口105を通して外部に吐出される。液200は、弁部104により液吐出口105が閉塞されると、吐出されない非吐出の状態となる。
【0158】
本実施形態においては、アクチュエータ101として、圧電素子を含むものを例示したが、これに限定されるものではない。例えばアクチュエータ101は、印加電圧に応じて磁界を発生する電磁石、印加電圧に応じて圧縮空気エネルギーを直動運動に変換するエアシリンダ、印加電圧に応じて駆動されるモータアクチュエータ、または印加電圧に応じて油圧を生じさせる油圧機構の少なくとも1つを含むこともできる。これらを用いても、圧電素子を用いる場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0159】
またヘッド100は、d31モードを利用した圧電素子を含むアクチュエータ101を備えることもできる。例えば、アクチュエータ101は、先端に液を吐出する吐出口が設けられると共に、吐出口の近傍に液を注入する注入口が設けられた中空状のノズル本体と、ノズル本体に内蔵され、外部からの電圧の印加に応じて伸縮する圧電素子と、吐出口を開閉する弁体と、弁体と圧電素子の間に配置された逆バネ機構と、弁体に外嵌されてインクが圧電素子側へ流入することを阻止する封止部材と、圧電素子の電極に接続された電圧印可用の一対のリード線を備えて構成される。
【0160】
弾性膜340は、振動源330により押し引き可能となっている。また弾性膜340は、液貯留部111内の液をヘッド100に供給する第1液路320に、第1液路320内部の液に接するように設けられている。振動源330を振動させ、ヘッド100に供給される液の圧力を変動させることにより、ヘッド100内の液、特に液室106内の液に圧力変動を生じさせ、液を攪拌させることができる。
【0161】
特に、弁を開いてノズル孔から液体の吐出中に行うことにより、弁を開きっ放しの状態で吐出を行っても、吐出が連続して可能になる。
圧力変動作用や攪拌作用を好適に得る観点においては、振動源の振動は繰り返し行われることが好ましい。また当該振動による撹拌は、ノズル孔を開放しているときであっても、閉じている場合であっても行うことができるが、ノズル孔を開放しつつ当該振動を繰り返し行うことで、液を吐出しつつ、ノズル孔近傍において脈動的に圧力変動を生じさせることができることから、液流れの停滞抑制、及びノズル孔から押し出す方向への液の撹拌が可能となり、弁を閉じた状態で圧力変動を生じさせた場合よりも、液の撹拌を良好に行うことができる。なお、この振動源の振動は、周期的であってもよく、非周期的であってもよいが、1秒間に振動が100回以上行われる頻度であることが好ましい。
【0162】
なお、第6実施形態の変形例として、弾性膜の代わりに、液供給チューブ自体に弾性体を用いて、振動源により押圧を行うものであってもよい(例えば特開2018-94736号公報の図16を参照)。
【0163】
[第7実施形態]
図22は、第7実施形態に係る液吐出装置の構成の一例を示す図である。ヘッド100の構成は第6実施形態と同様であるため、ここでは説明を割愛する。第7実施形態に係る液吐出装置は、液が供給される上流側の第1液供給孔400と、下流側の第2液供給孔410と、を有する。第1液供給孔400および第2液供給孔410は、ヘッド100の内部において液が流通可能に連通している。
【0164】
第2液供給孔410は、第2液路420に接続している。第7実施形態では、弾性膜340が第2液路420の内部の液に接するように設けられている点が、第6実施形態と異なっている。第7実施形態では、この構成により、弾性膜340を押し込んだ際に液供給路が閉塞することにより、ヘッド100に液が供給されなくなるといった不具合を防ぐことができる。
【0165】
[第8実施形態]
図23は、第8実施形態に係る液吐出装置の構成の一例を示す図である。ヘッド100の構成は第6実施形態と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
【0166】
本実施形態では、液貯留部111からヘッド100に液を供給する第1液路320に、振動源500が設けられている。振動源500により第1液路320を揺さぶったり弾いたりして振動させたりすることにより、液配管内の液圧力が変動し、ヘッド100内の液室106内の液に圧力変動を生じさせ、攪拌させることができる。
【0167】
[第9実施形態]
図24は、第9実施形態に係る液吐出装置の構成の一例を示す図である。ヘッド100の構成は第6実施形態と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
【0168】
第9実施形態に係る液吐出装置は、液吐出のために、ヘッド100に供給する液の加圧を行う第1の加圧手段300とは別に、第2の加圧手段600を備えている。第2の加圧手段600による加圧力の大きさは、第1の加圧手段300による加圧力の大きさとは異なる。すなわち、第2の加圧手段600による加圧力は、第1の加圧手段300による加圧力よりも大きいか、または小さい。第2の加圧手段600は、第2弁体610を介して液貯留部111と繋がっている。
【0169】
第2弁体610は、第2の加圧手段600と液貯留部111との間の液路に設けられ、該液路を開閉可能である。第2弁体610は、例えば、制御信号に応じて駆動することにより、第2の加圧手段600と液貯留部111との間の液路を開閉可能な電磁弁である。
【0170】
本実施形態では、第2弁体610を開閉することにより、ヘッド100に供給される液の圧力を変動させ、ヘッド100における液室106の内部の液に圧力変動を生じさせ、攪拌させることができる。なお、第2弁体610の開閉とは、第2の加圧手段600と液貯留部111との間の液路を液が流れる状態を変化させる動作をいう。第2弁体610の開閉は、第2の加圧手段600と液貯留部111との間の液路を液が流れる状態と流れない状態とを切り替える動作の他、開閉状態の違いにより該液路を流れる液の量または速度を変化させる動作を含む。
【0171】
[第10実施形態]
図25から図27を参照して、第10実施形態に係る塗布装置1001について説明する。図25は、塗布装置1001の構成の一例を示す図である。図26は、塗布装置1001の対象物Uへの配置の第1例を示す図である。図27は、塗布装置1001の対象物Uへの配置の第2例を示す図である。
【0172】
塗布装置1001は、液吐出装置1gと、液吐出装置1gの近傍に配設された撮影手段としてのカメラ1004と、液吐出装置1gおよびカメラ1004をX方向およびY方向へ移動させるX-Yテーブル1003と、カメラ1004で撮影した画像を編集する画像編集ソフトウェアSと、制御部120fと、を有する。また制御部120fは、所定の制御プログラムに基づいて、X-Yテーブル1003を動作させると共に、液吐出装置1gから液200を吐出させる。
【0173】
塗布装置1001は、液吐出装置1gにより吐出された液200を対象物Uに塗布することができる。
【0174】
液吐出装置1gは、複数の液吐出口105から対象物Uの被塗布面に向けて液200を吐出する。液吐出口105から吐出される液200はX-Y平面に対して略直交する方向に吐出される。複数の液吐出口105それぞれから吐出される液200の吐出方向は略平行である。液吐出口105と対象物Uの被塗布面との距離は、例えば20[cm]程度である。
【0175】
X-Yテーブル1003は、直線移動機構を備えて形成されたX軸1005と、X軸1005を2つのアームで保持しつつX軸1005をY方向へ移動するY軸1006と、有する。スライダにプリントヘッド1002およびカメラ1004が取り付けられている。Y軸1006にはシャフト1007が設けられている。このシャフト1007をロボットアーム1008により保持することで、対象物Uに対して液吐出装置1gを自由に配置できるようになっている。
【0176】
例えば、対象物Uが自動車である場合には、図26に示すように対象物Uの上部に配置したり、図27に示すように対象物Uの横位置に配置したりすることができる。なお、制御部120gは、所定のプログラムに基づいて、ロボットアーム1008の動作を制御する。
【0177】
カメラ1004は、液吐出装置1fの近傍であるX軸1005のスライダに設けられており、X-Y方向に移動しながら対象物Uの被塗布面における所定範囲を一定の微小な間隔により撮影する。カメラ1004は例えばデジタルカメラである。カメラ1004においては、被塗布面の所定範囲を分割した複数の細分割画像の撮影が可能なレンズの仕様または解像度等の仕様が適宜選択される。カメラ1004による被塗布面の複数の細分割画像の撮影は、制御部120gに予め設けられたプログラムに従って連続的、且つ自動的に行われる。
【0178】
以上説明したように、塗布装置1001は、液吐出装置1gを有することにより、対象物Uと液吐出口105との間の距離が長い場合等においても、対象物Uの所望の位置に高精度に液200を塗布することができる。また、液吐出装置1gは、液200を安定して吐出できるため、塗布装置1001は、対象物Uに対して液200を高精度に塗布することができる。
【0179】
塗布装置1001が吐出する液200が含有する粒子には、例えばアルミフレーク、マイカまたは酸化チタン等である。これらのうちのアルミフレーク等は、弁部104のパッキンに刺さってシール性を低下させる懸念があるが、本実施形態を適用することにより、弁部104を液吐出口板109に押し付ける動作を削減し、シール性の低下を抑制することができる。
【0180】
以上、実施形態を説明したが、本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、液室106がノズル個別には存在せず、液吐出口105の真上にマニホールド107が存在する構成においても、本発明は適用可能である。マニホールド107から分岐して液吐出口へと延びている液室106を備えていれば、共通流路の液体の流速が速くなると吐出液体の吐出方向が大きく曲がるという影響を受けにくい代わりに、液体が詰まって吐出しなくなる不具合が生じやすいのであるが、本発明はそのようなヘッドに対して特に好適である。
【0181】
実施形態に係る液体吐出装置は、電極印刷装置や塗布装置に限定されるものではなく、用紙等の記録媒体に画像を形成する画像形成装置等であってもよい。
【0182】
実施形態は、液吐出方法も含む。例えば、液吐出方法は、液吐出口を有する液室と、加圧された液を前記液室へ供給する供給手段と、前記液吐出口を開閉させる弁部を含み、前記液室に設けられた弁体と、前記弁体を移動させる移動手段と、を有する液吐出装置による液吐出方法であって、前記液吐出装置が、制御手段により、前記移動手段による前記弁体の移動を制御し、前記弁体の移動は、前記弁部が第2位置から第1位置に向けて移動する第1移動と、前記弁部が前記第1位置と第3位置との間を往復移動する第2移動と、を含み、前記第1位置は、前記弁部により前記液吐出口が開放される位置であり、記第2位置は、前記弁部により前記液吐出口が閉塞される位置であり、前記第3位置は、前記第1位置と前記第2位置との間の位置である。このような液吐出方法により、上述した液吐出装置と同様の作用効果を得ることができる。
【0183】
(電極の製造方法)
実施形態は、電極および電気化学素子の製造方法を含む。以下、電極の製造方法について説明する。図28は、実施形態に係る電極の製造方法を実現するための電極の製造装置の一例を示す模式図である。電極の製造装置は、上記の液体吐出装置を用いて液体組成物を吐出することで電極材料を有する層を有する電極を製造する装置である。
【0184】
<電極材料を有する層形成手段、電極材料を有する層形成工程>
前記吐出手段は、上記の液体吐出装置である。前記吐出により、対象物上に液体組成物を付与して、液体組成物層を形成することができる。前記対象物(以下、「吐出対象物」と称することがある。)としては、電極材料を有する層を形成する対象であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電極基体(集電体)や活物質層、固体電極材料を有する層などが挙げられる。また、前記吐出手段及び前記吐出工程は、吐出対象物に対して電極材料を有する層を形成することが可能であれば、直接液体組成物を吐出することで電極材料を有する層を形成する構成であってもよく、間接的に液体組成物を吐出することで電極材料を有する層を形成する構成であってもよい。
【0185】
<その他の構成、その他の工程>
電極合材層の製造装置におけるその他の構成としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱手段などが挙げられる。前記電極合材層の製造方法におけるその他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱工程などが挙げられる。
【0186】
<加熱手段、加熱工程>
前記加熱手段は、前記吐出手段により吐出された液体組成物を加熱する手段である。前記加熱工程は、前記吐出工程で吐出された液体組成物を加熱する工程である。
前記加熱により、前記液体組成物層を乾燥させることができる。
【0187】
<直接液体組成物を吐出することで電極材料を有する層を形成する構成>
ここで、電極の製造方法の一例として、電極基体(集電体)上に活物質を含む電極合材層を形成する電極製造方法を説明する。電極合材層の装置は、吐出対象物を有する印刷基材4g上に、液体組成物を付与して液体組成物層を形成する工程を含む吐出工程部110gと、液体組成物層を加熱して電極合材層を得る加熱工程を含む加熱工程部130gを備える。電極合材層の製造装置は、印刷基材4gを搬送する搬送部5を備え、搬送部5は、吐出工程部110g、加熱工程部130gの順に印刷基材4gをあらかじめ設定された速度で搬送する。前記活物質層などの吐出対象物を有する印刷基材4gの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。吐出工程部110gは、印刷基材4g上に液体組成物を付与する付与工程を実現する本発明の印刷装置281aと、液体組成物を収容する収容容器281bと、収容容器281bに貯留された液体組成物を印刷装置281aに供給する供給チューブ281cを備える。
【0188】
収容容器281bは液体組成物7を収容し、吐出工程部110gは、印刷装置281aから液体組成物7を吐出して、印刷基材4g上に液体組成物7を付与して液体組成物層を薄膜状に形成する。なお、収容容器281bは、電極合材層の製造装置と一体化した構成であってもよいが、電極合材層の製造装置から取り外し可能な構成であってもよい。また、電極合材層の製造装置と一体化した収容容器や電極合材層の製造装置から取り外し可能な収容容器に添加するために用いられる容器であってもよい。
【0189】
収容容器281bや供給チューブ281cは、液体組成物7を安定して貯蔵及び供給できるものであれば任意に選択可能である。
【0190】
加熱工程部130gは、図28に示すように、加熱装置3aを有し、液体組成物層に残存する溶媒を、加熱装置3aにより加熱して乾燥させて除去する溶媒除去工程を含む。これにより電極合材層を形成することができる。加熱工程部130gは、溶媒除去工程を減圧下で実施してもよい。
【0191】
加熱装置3aとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基板加熱、IRヒータ、温風ヒータなどが挙げられ、これらを組み合わせてもよい。また、加熱温度や時間に関しては、液体組成物7に含まれる溶媒の沸点や形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
【0192】
図29は、実施形態に係る電極合材層の製造方法を実現するための電極の製造装置(液体吐出装置)の他の一例を示す模式図である。液体吐出装置300'は、ポンプ310と、バルブ311、312を制御することにより、液体組成物が液体吐出ヘッド306、タンク307、チューブ308を循環することが可能である。また、液体吐出装置300'は、外部タンク313が設けられており、タンク307内の液体組成物が減少した際に、ポンプ310と、バルブ311、312、314を制御することにより、外部タンク313からタンク307に液体組成物を供給することも可能である。前記電極合材層の製造装置を用いると、吐出対象物の狙ったところに液体組成物を吐出することができる。前記電極合材層は、例えば、電気化学素子の構成の一部として、好適に用いることができる。前記電気化学素子における前記電極合材層以外の構成としては、特に制限はなく、公知のものを適宜選択することができ、例えば、正極、負極、セパレータなどが挙げられる。
【0193】
実施形態に係る電極の製造方法の一例を図30に示す。電極210の製造方法は、本発明の液体吐出装置300'を用いて、電極基体211上に、液体組成物12Aを、順次吐出する工程を含む。
【0194】
まず、細長状の電極基体211を準備する。そして、電極基体211を筒状の芯に巻き付け、電極合材層212を形成する側が、図30中、上側になるように、送り出しローラ304と巻き取りローラ305にセットする。ここで、送り出しローラ304と巻き取りローラ305は、反時計回りに回転し、電極基体211は、図30中、右から左の方向に搬送される。そして、送り出しローラ304と巻き取りローラ305の間の電極基体211の上方に設置されている液体吐出ヘッド306から、図28と同様にして、液体組成物12Aの液滴を、順次搬送される電極基体211上に吐出する。
【0195】
なお、液体吐出ヘッド306は、電極基体211の搬送方向に対して、略平行な方向又は略垂直な方向に、複数個設置されていてもよい。次に、液体組成物12Aの液滴が吐出された電極基体211は、送り出しローラ304と巻き取りローラ305によって、加熱機構309に搬送される。その結果、電極合材層212が形成され、電極210が得られる。その後、電極210は、打ち抜き加工等により、所望の大きさに切断される。
【0196】
加熱機構309は、電極基体211の上下の何れか一方に設置されてもよいし、複数個設置されていてもよい。
【0197】
加熱機構309としては、液体組成物12Aに直接接触しなければ、特に制限はなく、例えば、抵抗加熱ヒータ、赤外線ヒータ、ファンヒータ等が挙げられる。なお、加熱機構309は、複数個設置されていてもよい。また、重合のための紫外線による硬化装置が設置されていてもよい。
【0198】
また、電極基体211に吐出された液体組成物12Aは加熱されることが好ましく、加熱する際には、ステージにより加熱してもよいし、ステージ以外の加熱機構により加熱してもよい。加熱機構は、電極基体211の上下のいずれか一方に設置されてもよいし、複数個設置されていてもよい。
【0199】
加熱温度は特に制限はない。加熱により液体組成物12Aが乾燥して負極合材層が形成される。但し、液体組成物12Aがバインダ前駆体を含む場合は、してバインダ前駆体が重合する温度であることが好ましく、使用エネルギーの観点から、70℃~150℃の範囲であることが好ましい。また、電極基体211に吐出された液体組成物12Aを加熱する際に、紫外光を照射してもよい。
【0200】
また、図31のように、タンク307Aは、タンク307Aに接続されたタンク313Aから液体組成物を供給してもよく、液体吐出ヘッド306は、複数の液体吐出ヘッド306A、306Bを有してもよい。
【0201】
<直接液体組成物を吐出することで電極材料を有する層を形成する構成>
図32は、転写方式を採用した印刷部の一例を示す構成図であり、図32(a)は、ドラム状の中間転写体を用いた印刷部、図32(b)は、無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部を示している。
【0202】
図32(a)に示した印刷部400´は、中間転写体4001を介して基材に液体組成物を転写することで基材の表面に機能層を形成する、インクジェットプリンタである。
【0203】
印刷部400´は、インクジェット部420´、転写ドラム4000、前処理ユニット4002、吸収ユニット4003、加熱ユニット4004および清掃ユニット4005を備える。
【0204】
インクジェット部420´は、複数のヘッド101を保持したヘッドモジュール422を備える。ヘッド101は、転写ドラムに4000に支持された中間転写体4001に液体インクを吐出し、中間転写体4001上にインク層を形成する。各ヘッド101は、ラインヘッドであり、使用可能な最大サイズの基材の記録領域の幅をカバーする範囲にノズルが配列されている。ヘッド101は、その下面に、ノズルが形成されたノズル面を有しており、ノズル面は、微小間隙を介して中間転写体4001の表面と対向している。本実施形態の場合、中間転写体4001は円軌道上を循環移動する構成であるため、複数のヘッド101は、放射状に配置される。
【0205】
転写ドラム4000は、圧胴621と対向し、転写ニップ部を形成する。前処理ユニット4002は、ヘッド101によるインクの吐出前に、例えば、中間転写体4001上に、インクの粘度を高めるための反応液を付与する。吸収ユニット4003は、転写前に、中間転写体4001上のインク層から液体成分を吸収する。加熱ユニット4004は、転写前に、中間転写体4001上のインク層を加熱する。インク層を加熱することで、インク層中の樹脂が溶融し、基材への転写性が向上する。清掃ユニット4005は、転写後に中間転写体4001上を清掃し、中間転写体4001上に残留したインクやごみ等の異物を除去する。
【0206】
圧胴621の外周面は、中間転写体4001に圧接しており、圧胴621と中間転写体4001との転写ニップ部を基材が通過するときに、中間転写体4001上のインク層が基材に転写される。なお、圧胴621は、その外周面に基材の先端部を保持するグリップ機構を少なくとも1つ備えた構成としてもよい。
【0207】
図32(b)に示した印刷部400´´は、中間転写ベルト4006を介して基材に液体組成物を転写することで基材の表面に機能層を形成する、インクジェットプリンタである。
【0208】
印刷部400´´は、インクジェット部420´に設けた複数のヘッド101からインク滴を吐出して、中間転写ベルト4006の外周表面上にインク層を形成する。中間転写ベルト4006に形成されたインク層は、乾燥ユニット4007によって乾かされ、インク層は中間転写ベルト4006上で膜化する。
【0209】
中間転写ベルト4006が転写ローラ622と対向する転写ニップ部において、中間転写ベルト4006上の膜化したインク層は基材に転写される。転写後の中間転写ベルト4006の表面は、清掃ローラ4008によって清掃される。
【0210】
中間転写ベルト4006は、駆動ローラ4009a、対向ローラ4009b、複数(本例では4つ)の形状維持ローラ4009c,4009d,4009e,4009f、および複数(本例では4つ)の支持ローラ4009gに架け渡され、図中矢印方向に移動する。ヘッド101に対向して設けられる支持ローラ4009gは、ヘッド101からインク滴が吐出される際の中間転写ベルト4006の引張状態を維持する。
【0211】
<電気化学素子の製造方法>
電気化学素子の製造方法であって、液吐出口を有する液室と、加圧された、電極材料を含む液を前記液室へ供給する供給手段と、前記液吐出口を開閉させる弁部を含み、前記液室に設けられた弁体と、前記弁体を移動させる移動手段と、前記移動手段による前記弁体の移動を制御する制御手段と、を有する液吐出装置による液吐出工程を備え、前記弁体の移動は、前記弁部が第2位置から第1位置に向けて移動する第1移動と、前記弁部が前記第1位置と第3位置との間を往復移動する第2移動と、を含み、前記第1位置は、前記弁部により前記液吐出口が開放される位置であり、前記第2位置は、前記弁部により前記液吐出口が閉塞される位置であり、前記第3位置は、前記第1位置と前記第2位置との間の位置であり、前記液吐出工程では、前記液吐出装置は、前記電極材料を含む液を電極基体に吐出する。このような電気化学素子の製造方法により、上述した液吐出装置と同様の作用効果を得ることができる。
【0212】
更に当該電極をセル化に向けて加工する基材加工工程などを含む電気化学素子を製造する工程と、を含んでもよい。
【0213】
<基材加工部>
基材加工部は、印刷部400´よりも下流において、機能膜が形成された基材Wを加工することで電極素子を形成する。基材加工部は、裁断、折り畳み、および貼り合わせの少なくとも1つを実施してもよい。基材加工部は、例えば、基材Wを裁断し、基材積層体を作製することができる。基材加工部は、基材Wを巻回または積層することができる。絶縁層が融点またはガラス転移点を有する材料を含む場合、基材加工部では、例えば、一の基材積層体と他の基材積層体は、加熱により少なくとも一部が接着される。
【0214】
基材加工部は、例えば、基材加工装置を有し、基材Wの裁断や基材Wのつづら折り、積層や巻回、積層や巻回後の基材間の熱接着等を目的の電池形態に応じて実施する。基材加工部において基材の加工が行われるときは、加工後の基材にシワ等のダメージを低減させることが可能となる理由から、基材Wの搬送速度は比較的遅いことが好ましい。
【0215】
基材加工部によって行われる基材加工工程は、例えば、印刷部400´よりも下流において、機能膜が形成された基材Wを加工する工程である。基材加工工程は、裁断工程、折り畳み工程、および貼り合わせ工程の少なくとも1つを含んでもよい。
【0216】
実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【0217】
機能ブロック図におけるブロックの分割は一例であり、複数のブロックを一つのブロックとして実現する、一つのブロックを複数に分割する、または、一部の機能を他のブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数のブロックの機能を単一のハードウェアまたはソフトウェアが並列または時分割に処理してもよい。
【0218】
上記で説明した実施形態の各機能は、一または複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0219】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 液吐出口を有する液室と、加圧された液を前記液室へ供給する供給手段と、前記液吐出口を開閉させる弁部を含み、前記液室に設けられた第1弁体と、前記第1弁体を移動させる移動手段と、前記液室内の液を攪拌する撹拌機構と、を備えることを特徴とする液吐出装置である。
<2> 前記撹拌機構は、前記液吐出口が開放された状態で前記液室内の液を撹拌する、前記<1>に記載の液吐出装置である。
<3> 前記撹拌機構は、前記移動手段による前記第1弁体の移動を制御する制御手段を有し、前記第1弁体の移動は、前記弁部が第2位置から第1位置に向けて移動する第1移動と、前記弁部が前記第1位置と第3位置との間を往復移動する第2移動と、を含み、前記第1位置は、前記弁部により前記液吐出口が開放される位置であり、前記第2位置は、前記弁部により前記液吐出口が閉塞される位置であり、 前記第3位置は、前記第1位置と前記第2位置との間の位置である、前記<1>又は前記<2>に記載の液吐出装置である。
<4> 前記移動手段は、印加される電圧に応じて前記第1弁体を移動させ、前記制御手段は、前記移動手段に対し、第1電圧を印加することにより前記弁部を前記第1位置に移動させ、第2電圧を印加することにより前記弁部を前記第2位置に移動させ、第3電圧を印加することにより前記弁部を前記第3位置に移動させ、前記第1電圧は、前記第2電圧よりも小さく、前記第3電圧は、前記第1電圧よりも大きく、且つ前記第2電圧よりも小さい前記<3>に記載の液吐出装置である。
<5> E2>E3≧(E2-E1)×0.05+E1を満足する前記<4>に記載の液吐出装置である。(但し、E1は前記第1電圧を表し、E2は前記第2電圧を表し、E3は前記第3電圧を表す。)
<6> 前記移動手段は、印加される電圧に応じて前記第1弁体を移動させ、前記制御手段は、前記移動手段に対し、第1電圧を印加することにより前記弁部を前記第1位置に移動させ、第2電圧を印加することにより前記弁部を前記第2位置に移動させ、第3電圧を印加することにより前記弁部を前記第3位置に移動させ、前記第1電圧は、前記第2電圧よりも大きく、前記第3電圧は、前記第2電圧よりも大きく、前記第1電圧よりも小さい前記<3>に記載の液吐出装置である。
<7> E1×0.95≧E3>0を満足する前記<6>に記載の液吐出装置である。(但し、E1は前記第1電圧を表し、E3は前記第3電圧を表す。)
<8> 前記制御手段は、前記第2電圧が前記第1電圧よりも大きい場合には、前記第2移動のために、前記第1電圧よりも所定電圧だけ大きい前記第3電圧を前記移動手段に印加し、前記第1電圧が前記第2電圧よりも大きい場合には、前記第2移動のために、前記第2電圧よりも前記所定電圧だけ小さい前記第3電圧を前記移動手段に印加し、前記移動手段の温度に応じて前記所定電圧を変更する第1電圧変更手段を、さらに有する前記<4>乃至前記<7>の何れかに記載の液吐出装置である。
<9> 前記移動手段の移動回数に応じて前記第3電圧を変更する第2電圧変更手段を、さらに有する前記<4>乃至前記<8>の何れかに記載の液吐出装置である。
<10> 前記移動手段は、印加される電圧に応じて前記第1弁体を移動させ、前記制御手段は、前記弁部を前記第2位置に移動させる電圧を、所定時間よりも短い印加時間において前記移動手段に印加し、前記所定時間は、前記移動手段に対し、前記弁部を前記第2位置に移動させる電圧が印加された後、前記弁部が前記第2位置に移動するまでにかかる時間である前記<3>に記載の液吐出装置である。
<11> Δt0×0.95≧Δt>0を満足する前記<10>に記載の液吐出装置である。(但し、Δt0は前記所定時間を表し、Δtは前記印加時間を表す。)
<12> 前記移動手段の温度に応じて、前記印加時間を変更する第1時間変更手段と、をさらに有する前記<10>または前記<11>に記載の液吐出装置である。
<13> 前記移動手段の移動回数に応じて、前記印加時間を変更する第2時間変更手段をさらに有する前記<10>乃至前記<12>の何れかに記載の液吐出装置である。
<14> 前記移動手段は、印加電圧に応じて伸縮する圧電素子を含む前記<2>乃至前記<13>の何れかに記載の液吐出装置である。
<15> 前記液は、粘度が10[mPa・s]より大きい液、構造粘性を示すTI値が1.3より大きい液、固形分が20[wt%]より大きい液、または粒子径が5[μm]より大きい粒子を含む液、の何れか1つである前記<2>乃至前記<14>の何れかに記載の液吐出装置である。
<16> 前記第2移動の繰り返し周波数は、100[Hz]以上である前記<2>乃至前記<15>の何れかに記載の液吐出装置である。
<17> 前記供給手段と前記液室との間に位置する第1液路および第2液路と、前記第1液路および前記第2液路の少なくとも一方の内部の液にかかる圧力を変動可能な液圧力変動手段と、をさらに備え、前記撹拌機構は、前記液圧力変動手段により、前記第1液路および前記第2液路の少なくとも一方の内部の液にかかる圧力を変動させる、前記<1>乃至前記<16>の何れかに記載の液吐出装置である。
<18> 前記供給手段内の液を加圧する第1および第2の加圧手段と、前記第2の加圧手段と前記供給手段との間の液路に設けられ、該液路を開閉可能な第2弁体と、をさらに備え、前記第1の加圧手段により加えられる圧力の大きさは、前記第2の加圧手段により加えられる圧力の大きさとは異なり、前記撹拌機構は、前記第2弁体により、前記第2の加圧手段と前記供給手段との間の液路を開閉させる、前記<1>乃至前記<17>の何れかに記載の液吐出装置である。
<19> 前記<1>乃至前記<18>の何れかに記載の液吐出装置を有し、前記液吐出装置により吐出された前記液を基体に塗布する塗布装置である。
<20> 液吐出口を有する液室と、加圧された液を前記液室へ供給する供給手段と、前記液吐出口を開閉させる弁部を含み、前記液室に設けられた第1弁体と、前記第1弁体を移動させる移動手段と、前記移動手段による前記第1弁体の移動を制御する制御手段と、を有する液吐出装置による液吐出方法であって、前記第1弁体の移動は、前記弁部が第2位置から第1位置に向けて移動する第1移動と、前記弁部が前記第1位置と第3位置との間を往復移動する第2移動と、を含み、前記第1位置は、前記弁部により前記液吐出口が開放される位置であり、前記第2位置は、前記弁部により前記液吐出口が閉塞される位置であり、前記第3位置は、前記第1位置と前記第2位置との間の位置である液吐出方法である。
<21> 電極の製造方法であって、液吐出口を有する液室と、加圧された、電極材料を含む液を前記液室へ供給する供給手段と、前記液吐出口を開閉させる弁部を含み、前記液室に設けられた第1弁体と、前記第1弁体を移動させる移動手段と、前記移動手段による前記第1弁体の移動を制御する制御手段と、を有する液吐出装置による液吐出工程を備え、前記第1弁体の移動は、前記弁部が第2位置から第1位置に向けて移動する第1移動と、前記弁部が前記第1位置と第3位置との間を往復移動する第2移動と、を含み、前記第1位置は、前記弁部により前記液吐出口が開放される位置であり、前記第2位置は、前記弁部により前記液吐出口が閉塞される位置であり、前記第3位置は、前記第1位置と前記第2位置との間の位置であり、前記液吐出工程では、前記液吐出装置は、前記電極材料を含む液を電極基体に吐出する電極の製造方法である。
【符号の説明】
【0220】
1 液吐出装置
100 ヘッド
101 アクチュエータ(移動手段の一例)
102 フレーム
103 第1弁体
104 弁部
105 液吐出口
106 液室
107 マニホールド
108 個別液流路
109 液吐出口板
110 液供給部(供給手段の一例)
111 液貯留部
112 エアコンプレッサ
113 エアタンク
114 エアフィルタ
115 レギュレータ
120 制御部
121 入力部
122 駆動電圧生成部
123 増幅部
124 出力部
125 第1電圧変更部
126 移動回数計数部
127 第2電圧変更部
128 第1時間変更部
129 第2時間変更部
130 温度センサ
200 液
300 第1の加圧手段
320 第1液路
420 第2液路
600 第2の加圧手段
610 第2弁体
1001 塗布装置
E1 第1電圧
E2 第2電圧
E3 第3電圧
P1 第1位置
P2 第2位置
P3 第3位置
M1 第1移動
M2 第2移動
t1、t2 時間
Im パターンデータ
Δt0 所定時間
Δt 印加時間
U 対象物
【先行技術文献】
【特許文献】
【0221】
【特許文献1】特許4123897号公報
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