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特開2023-35862シクロブタン環を有するジアミン誘導体、およびその塩
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  • 特開-シクロブタン環を有するジアミン誘導体、およびその塩 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035862
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】シクロブタン環を有するジアミン誘導体、およびその塩
(51)【国際特許分類】
   C07C 211/36 20060101AFI20230306BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20230306BHJP
   C09D 179/08 20060101ALI20230306BHJP
   C09D 177/00 20060101ALI20230306BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20230306BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20230306BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
C07C211/36 CSP
C09D201/00
C09D179/08 A
C09D177/00
C09D175/04
C09D163/00
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115474
(22)【出願日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2021139950
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】島田 太一
(72)【発明者】
【氏名】笹田 康幸
【テーマコード(参考)】
4H006
4J038
4J043
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB48
4J038DB001
4J038DG001
4J038DH001
4J038DJ021
4J038NA14
4J038PB09
4J043PA04
4J043PA19
4J043QB15
4J043QB26
4J043RA05
4J043RA34
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA46
4J043SB01
4J043TB03
4J043UA021
4J043UA041
4J043UA122
4J043UA672
4J043XA19
4J043XB03
4J043XB07
4J043XB27
4J043YA07
4J043YA08
4J043YA25
4J043ZA52
4J043ZB50
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光透過性が高く、溶媒に対する溶解性に優れ、十分に高度な耐熱性を有するポリイミドを製造するための原料モノマーとして使用することが可能な、化合物を提供する。
【解決手段】下式で表されるジアミン誘導体、またはこれらと酸から形成される塩。

、A、A、およびAは独立して、水素、炭素数3~10のシクロアルキル、炭素数3~10のシクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フルオレニル、またはピリジルであり、Z、Z、Z、およびZは独立して、単結合、炭素数1~20のアルキレン、炭素数2~20のアルケンジイル、または炭素数2~20のアルキンジイルである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるジアミン誘導体。

式(1)において、
、A、A、およびAは独立して、水素、炭素数3~10のシクロアルキル、炭素数3~10のシクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フルオレニル、またはピリジルであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1~12のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1~12のアルキルで置き換えられてもよく;
、Z、Z、およびZは独立して、単結合、炭素数1~20のアルキレン、炭素数2~20のアルケンジイル、または炭素数2~20のアルキンジイルであり、これらの基の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
-Z-Aと-Z-A、または-Z-Aと-Z-Aは、互いに結合して環構造を形成してもよく;
、A、A、およびAが同時に水素である場合、Z、Z、Z、およびZのうちの少なくとも1つは、単結合またはメチレンではない。
【請求項2】
式(1)において、Z、Z、Z、およびZが独立して、単結合、または炭素数1~20のアルキレンである、請求項1に記載のジアミン誘導体。
【請求項3】
式(1)において、A、A、A、およびAが独立して、水素、炭素数3~10のシクロアルキル、炭素数3~10のシクロアルケニル、フェニル、またはフルオレニルである、請求項1に記載のジアミン誘導体。
【請求項4】
式(1)において、Z、Z、Z、およびZが独立して、単結合、メチレン、またはエチレンである、請求項1に記載のジアミン誘導体。
【請求項5】
式(1)において、A、A、A、およびAが独立して、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、アダマンチル、ノルボルニル、ジシクロ[2.2.2]オクチル、またはフェニルである、請求項1に記載のジアミン誘導体。
【請求項6】
式(1)で表されるジアミン誘導体と酸とから形成される塩であり、
酸は、炭酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、リン酸、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸から選択される少なくとも1つである塩。

式(1)において、
、A、A、およびAは独立して、水素、炭素数3~10のシクロアルキル、炭素数3~10のシクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フルオレニル、またはピリジルであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1~12のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1~12のアルキルで置き換えられてもよく;
、Z、Z、およびZは独立して、単結合、炭素数1~20のアルキレン、炭素数2~20のアルケンジイル、または炭素数2~20のアルキンジイルであり、これらの基の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
-Z-Aと-Z-A、または-Z-Aと-Z-Aは互いに結合して環構造を形成してもよい。
【請求項7】
式(1)において、Z、Z、Z、およびZが独立して、単結合、または炭素数1~20のアルキレンであり;
酸が炭酸である、請求項6に記載の塩。
【請求項8】
式(1)において、A、A、AおよびAが独立して、水素、炭素数3~10のシクロアルキル、炭素数3~10のシクロアルケニル、フェニル、またはフルオレニルであり;
酸が炭酸である、請求項6に記載の塩。
【請求項9】
式(1)において、Z、Z、Z、およびZが独立して、単結合、メチレン、またはエチレンであり;
酸が炭酸である、請求項6に記載の塩。
【請求項10】
式(1)において、A、A、A、およびAが独立して、水素、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、アダマンチル、ノルボルニル、ジシクロ[2.2.2]オクチル、またはフェニルであり;
酸が炭酸である、請求項6に記載の塩。
【請求項11】
式(1)において、Z、Z、Z、およびZが、メチレンであり、A、A、A、およびAが、水素であり;
酸が炭酸である、請求項6に記載の塩。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか1項に記載のジアミン誘導体、または請求項6~11のいずれか1項に記載の塩を、用いて得られる重合体。
【請求項13】
重合体が、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、またはエポキシ樹脂である、請求項12に記載の重合体。
【請求項14】
請求項13に記載の重合体を含有するワニス。
【請求項15】
請求項14に記載のワニスを用いて製造される成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロブタン環を有するジアミン並びにその塩、特にフレキシブル基板やフィルム、電気絶縁材料や液晶配向膜形成用のワニスに用いられる重合体の原料としてのジアミン並びに誘導体から形成される塩に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ジアミン類は、ポリイミド樹脂を製造するための原料やエポキシ硬化剤等に有用である。このようなジアミン類の中でも、例えば、電子機器分野等に用いられるポリイミド樹脂の原料としては、4,4‘-ジアミノフェニルエーテル等の芳香族系のジアミン化合物が主に用いられてきた。しかしながら、このような芳香族系のテトラカルボン酸二無水物は、その芳香族性に由来して、得られるポリイミド樹脂が着色してしまうことから、光学分野等の用途に用いるポリイミド樹脂の原料としては十分なものではなかった。また、このような芳香族系ジアミンを用いて得られるポリイミド樹脂は、溶媒に対する溶解性が低く、その加工性の点においても十分なものではなかった。
【0003】
一方、環状脂肪族系ジアミンに関しては1,4-シクロヘキサンジアミンなどが報告されているものの(特許文献1)、芳香族アミンと比較し脂肪族アミンは塩基性が高く、また製造方法も限られる事から、それほど検討されてこなかった。また、シクロブタン骨格を持つ1,3-ジアミンは2位と4位が4つメチル置換されたジアミンが知られているが、それ以外の置換基を持つものはほとんど報告されていない。(特許文献2~4、非特許文献1)そのため、光透過性が高く、かつ溶媒に対する溶解性に優れるポリイミド樹脂を製造するために、アミンではなく専ら脂肪族系のテトラカルボン酸二無水物が検討されてきた。
【0004】
また、従来から宇宙・航空用途などの先端産業に欠かせない素材として全芳香族ポリイミド(例えば、商品名「カプトン」)が知られてきた。
全芳香族ポリイミドは芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの組み合わせにより合成され、耐熱性高分子の中でも最高クラスの耐熱性(ガラス転移温度(Tg):410℃)を示すものであることが知られている(非特許文献2)。しかしながら、このような全芳香族ポリイミドは、芳香族系のテトラカルボン酸二無水物ユニットと芳香族系のジアミンユニットとの間で分子内電荷移動(CT)が起きるため、褐色を呈し、透明性が必要とされる光学用途等に使用できるものではなかった。そのため、光学用途等に使用可能なポリイミドを製造するために、分子内CTが生じることがなく光透過性が高い脂環式のポリイミドの研究が進められてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】公開2004-149609号
【特許文献2】国際公開第2014-202827号
【特許文献3】国際公開第2019-147458号
【特許文献4】米国特許3287390号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J. Org. Chem. 1964, 29, 11, 3139
【非特許文献2】エンジニアリングプラスチック、共立出版、1987年、p88
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題を解決すべく、光透過性が高く、溶媒に対する溶解性に十分に優れ、しかも十分に高度な耐熱性を有するポリイミドを製造するための原料モノマーとして使用することが可能な2,2,4,4-テトラ置換-1,3-ジアミノシクロブタン類、および2,2,4,4-テトラ置換-1,3-ジアミノシクロブタン類の塩を提供することを目的とする。また、本発明は、フィルムを含めた成形体に加工した場合に、光透過性が高く、かつ十分に高い物理的安定性を有することが可能なポリイミド、およびそのポリイミドを効率よく、かつ確実に製造することが可能なポリイミドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、本発明は以下の構成を有する。
[1] 式(1)で表されるジアミン誘導体。

式(1)において、
、A、A、およびAは独立して、水素、炭素数3~10のシクロアルキル、炭素数3~10のシクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フルオレニル、またはピリジルであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1~12のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1~12のアルキルで置き換えられてもよく;
、Z、Z、およびZは独立して、単結合、炭素数1~20のアルキレン、炭素数2~20のアルケンジイル、または炭素数2~20のアルキンジイルであり、これらの基の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
-Z-Aと-Z-A、または-Z-Aと-Z-Aは、互いに結合して環構造を形成してもよく;
、A、A、およびAが同時に水素である場合、Z、Z、Z、およびZのうちの少なくとも1つは、単結合またはメチレンではない。
【0009】
[2] 式(1)において、Z、Z、Z、およびZが独立して、単結合、または炭素数1~20のアルキレンである、項[1]に記載のジアミン誘導体。
【0010】
[3] 式(1)において、A、A、A、およびAが独立して、水素、炭素数3~10のシクロアルキル、炭素数3~10のシクロアルケニル、フェニル、またはフルオレニルである、項[1]または[2]に記載のジアミン誘導体。
【0011】
[4] 式(1)において、Z、Z、Z、およびZが独立して、単結合、メチレン、またはエチレンである、項[1]~[3]のいずれか1項に記載のジアミン誘導体。
【0012】
[5] 式(1)において、A、A、A、およびAが独立して、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、アダマンチル、ノルボルニル、ジシクロ[2.2.2]オクチル、またはフェニルである、項[1]~[4]のいずれか1項に記載のジアミン誘導体。
【0013】
[6] 式(1)で表されるジアミン誘導体と酸とから形成される塩であり、
酸は、炭酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、リン酸、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸から選択される少なくとも1つである塩。

式(1)において、
、A、A、およびAは独立して、水素、炭素数3~10のシクロアルキル、炭素数3~10のシクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フルオレニル、またはピリジルであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1~12のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1~12のアルキルで置き換えられてもよく;
、Z、Z、およびZは独立して、単結合、炭素数1~20のアルキレン、炭素数2~20のアルケンジイル、または炭素数2~20のアルキンジイルであり、これらの基の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
-Z-Aと-Z-A、または-Z-Aと-Z-Aは互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0014】
[7] 式(1)において、Z、Z、Z、およびZが独立して、単結合、または炭素数1~20のアルキレンであり;
酸が炭酸である、項[6]に記載の塩。
【0015】
[8] 式(1)において、A、A、AおよびAが独立して、水素、炭素数3~10のシクロアルキル、炭素数3~10のシクロアルケニル、フェニル、またはフルオレニルであり;
酸が炭酸である、項[6]または[7]に記載の塩。
【0016】
[9] 式(1)において、Z、Z、Z、およびZが独立して、単結合、メチレン、またはエチレンであり;
酸が炭酸である、項[6]~[8]のいずれか1項に記載の塩。
【0017】
[10] 式(1)において、A、A、A、およびAが独立して、水素、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、アダマンチル、ノルボルニル、ジシクロ[2.2.2]オクチル、またはフェニルであり;
酸が炭酸である、項[6]~[9]のいずれか1項に記載の塩。
【0018】
[11] 式(1)において、Z、Z、Z、およびZが、メチレンであり、A、A、A、およびAが、水素であり;
酸が炭酸である、項[6]に記載の塩。
【0019】
[12] 項[1]~[5]のいずれか1項に記載のジアミン誘導体、または項[6]~[11]のいずれか1項に記載の塩を、用いて得られる重合体。
【0020】
[13] 重合体が、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、またはエポキシ樹脂である、項[12]に記載の重合体。
【0021】
[14] 項[13]に記載の重合体を含有するワニス。
【0022】
[15] 項[14]に記載のワニスを用いて製造される成形体。
【発明の効果】
【0023】
シクロブタン環を有する本発明のジアミン誘導体、およびこれらから形成されるジアミン塩を含むジアミン類を、ポリイミド、ポリアミドなどの重合体の原料として用いるとき、従来の芳香族ジアミンを用いた場合と比較し、その重合体の光透過性はより短波長領域まで高く維持することができる。その結果、これらの重合体を用いたフィルムを含めた成形体は、透明性が高く、かつ高い物理的安定性を有しているので、フレキシブルディスプレイを初めとする広い波長領域で高い透明性が要求される基板材料として適している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例2および比較例1におけるワニスの透過光スペクトル測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の説明では、式(1)で表されるジアミン誘導体を、化合物(1)で表記することがある。式(1)で表されるジアミン誘導体の塩を、化合物(2)で表記することがある。本発明で化学構造中の原子または基を指し示すときに用いる用語「任意の」は、結合位置だけではなくその数についても自由に選択できることを意味する。また、「少なくとも1つ」は、数だけではなくその結合位置についても自由に選択できることを意味する。
【0026】
本発明のジアミン誘導体は、式(1)で表される。

式(1)における、A、A、Aおよび、Aは独立して、水素、炭素数3~10のシクロアルキル、炭素数3~10のシクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フルオレニル、またはピリジルであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1~12のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1~12のアルキルで置き換えられてもよい。
【0027】
、Z、Z、およびZは独立して、単結合、炭素数1~20のアルキレン、炭素数2~20のアルケンジイル、または炭素数2~20のアルキンジイルであり、これらの基の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
-Z-Aと-Z-A、または-Z-Aと-Z-Aは、互いに結合して環構造を形成してもよい。
、A、AおよびAが同時に水素である場合、Z、Z、ZおよびZのうちの少なくとも1つは、単結合またはメチレンではない。
【0028】
すなわち、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フルオレニル、またはピリジルにおける任意の水素は、ハロゲン、炭素数1~12のアルキル、または炭素数1~12のハロゲン化アルキルで置き換えられてもよいことになる。ここで、複数の水素が、ハロゲン、炭素数1~12のアルキル、および炭素数1~12のハロゲン化アルキルからなる群から選択される基で置き換えられる場合を含む。この場合の置換基は、同一の基であってもよいし、異なる基であってもよい。例えば、少なくとも2つの水素が同じハロゲン化アルキルでそれぞれ置き換えられてもよい。3つまたは4つの水素が、炭素数の異なるハロゲン化アルキルでそれぞれ置き換えられてもよい。好ましいハロゲンは、フッ素および塩素である。ハロゲン化アルキルは、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたアルキルである。好ましいハロゲン化アルキルは、ペルフルオロアルキルである。
【0029】
フルオロやペルフルオロアルキルを有するジアミンを原料の1つとする重合体は、たとえばこれを用いて得られる液晶配向膜や成形体に対して、その表面エネルギーを小さくするように作用する傾向がある。
【0030】
以下に、本発明のジアミン誘導体の好ましい例を示す。
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
次に、化合物(1)の製造法を説明する。式(1)で表される環構造は、酸ハロゲン化物である化合物(a)および化合物(b)を出発原料として製造することができる。なお、式中のHalはハライド(塩素や臭素等)を示す。即ち、化合物(a)と化合物(b)を塩基、例えばトリエチルアミンなどのトリアルキルアミンやピリジンなどの芳香族窒素塩基存在下、環化反応させることによって化合物(c)が得られる。そして化合物(c)へ硫酸ヒドロキシルアミンを初めとするヒドロキシアミン類を作用させることにより、オキシムへ変換した化合物(d)を合成することができる。更に化合物(d)を還元することによって化合物(1)を合成する事ができる。還元の方法は水素雰囲気下、Pd/Cやスポンジ-Niなどの触媒を用いた接触水素化や、水素化ホウ素ナトリウム等還元剤を用いた方法を用いることができる。
【0039】

これらの式におけるA、A、A、A、Z、Z、Z、およびZは、式(1)におけるこれらの記号と同一の定義である。
【0040】
この他、出発物質に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、ホーベン-ワイル(Houben-Wyle, Methods of Organic Chemistry, Georg Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・シンセシーズ(Organic Syntheses, John Wily & Sons, Inc.)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wily & Sons Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などに記載されている。
【0041】
結合基(Z~Z)を生成する方法の一例を説明する。以下に示すスキームにおいて、MSGおよびMSGはどちらも、少なくとも1つの環を有する1価の有機基である。スキームに示されている複数のMSG(またはMSG)は、同一であってもよいし異なってもよい。TfはCFSOである。
【0042】
(I)単結合の生成
【0043】
アリールホウ酸誘導体(21)と、公知の方法で合成される化合物(22)とを、炭酸塩水溶液と触媒、例えばテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(Pd(PPh)の存在下で反応させることにより、化合物(1a)を合成する。この化合物(1a)は、公知の方法で合成される化合物(23)にn-ブチルリチウム(n-BuLi)を作用させ、塩化亜鉛、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(PdCl(PPh)のような触媒、および化合物(22)を順次作用させることにより合成することもできる。
【0044】
(II)-CH-の生成
【0045】
化合物(23)にブチルリチウムを作用させてリチオ化物に誘導した後、二酸化炭素を作用させてカルボン酸(24)を得る。これに塩化チオニルを作用させ酸クロリド(25)とする。これに公知の方法で合成される有機銅試薬(26)を作用させることにより化合物(27)を得る。そして、化合物(27)のカルボニルをトリエチルシランなどのトリアルキルシランで還元することによって化合物(1b)を合成する。
【0046】
(III)-CH=CH-の生成
【0047】
公知の方法で合成される化合物(28)にカリウムt-ブトキシド(t-BuOK)のような塩基を作用させてリンイリドを発生させる。一方、化合物(29)にブチルリチウムを作用させてリチオ化物へ誘導した後、N,N-ジメチルホルムアミドなどのホルムアミドを作用させてアルデヒド(30)を得る。これをリンイリドに反応させて化合物(1c)を合成する。反応条件によってはシス体が生成するので、公知の方法によりトランス体に異性化する。
【0048】
(IV)-(CH-の生成
【0049】
化合物(1c)を、例えばパラジウムカーボン(Pd-C)などの触媒存在下で接触水素化することにより、化合物(1d)を合成する。
【0050】
(V)-C≡C-の生成
【0051】
ジエチルアミン等のアミン類を溶剤に用い、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下、化合物(31)に1-トリメチルシリルエチンを作用させ、化合物(32)を得る。次にテトラブチルアンモニウムフロリド(TBAF)を用いて保護基を外し、化合物(33)を得る。これと化合物(22)とを、本方法の第1段と同様の条件で反応させることにより化合物(1e)を合成する。
【0052】
(VI)-(CH-の生成
【0053】
化合物(28)の代わりに化合物(34)を用い、方法(III)に従って-CH=CH-を生成させ、さらに方法(IV)に従って接触水素化して化合物(1f)を合成する。
【0054】
本発明の塩は、式(1)で表されるジアミン誘導体、および酸から形成される。

式(1)における、A、A、A、およびAは独立して、水素、炭素数3~10のシクロアルキル、炭素数3~10のシクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フルオレニル、またはピリジルであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1~12のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1~12のアルキルで置き換えられてもよい。
、Z、Z、およびZは独立して、単結合、炭素数1~20のアルキレン、炭素数2~20のアルケンジイル、または炭素数2~20のアルキンジイルであり、これらの基の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
-Z-Aと-Z-A、または-Z-Aと-Z-Aは互いに結合して環構造を形成してもよい。
カウンター種となる酸は、炭酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、トリフルオロメタンスルホン酸、リン酸、ギ酸、または酢酸である。
【0055】
以下に、本発明のジアミン誘導体と酸から形成される塩の好ましい例を示す。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
次に、本発明のジアミン誘導体を原料の1つとして用いて得られる重合体、およびこれを含有するワニスについて一例として説明する。少なくとも1つの化合物(1)または化合物(2)を、溶剤中においてテトラカルボン酸二無水物と反応させることによりポリアミド酸が得られ、これをポリイミドに導くことができる。更に、少なくとも1つの化合物(1)または化合物(2)と他のジアミンまたはジアミン塩とを、組み合わせて使用してもよい。本発明のワニスは、このポリアミド酸またはポリイミドと溶剤とを含有する組成物である。
【0070】
少なくとも1つの化合物(1)とジカルボン酸類とを反応させるとポリアミドが得られる。少なくとも1つの化合物(1)とトリカルボン酸類とを反応させるとポリアミドイミドが得られる。また、ポリアミドイミドはジカルボン酸類、トリカルボン酸類およびテトラカルボン酸類の少なくとも2種の混合物と、少なくとも1つの化合物(1)とを反応させて導くこともできる。更に、少なくとも1つの化合物(1)と他のジアミンとを、組み合わせて使用してもよい。本発明のワニスは、上記のワニスの特性を更に改善するために、このポリアミドまたはポリアミドイミドを含有してもよい。更に、本発明のワニスは、公知の高分子化合物、例えば、化合物(1)を用いないポリアミドやポリアミドイミドなどを含有してもよい。これらのポリアミド、ポリアミドイミドまたは公知の高分子化合物が添加されるとき、その割合はワニス中の重合体の全重量に基づいて0.01~30重量%である。その好ましい割合は0.01~10重量%であり、より好ましい割合は0.1~5重量%である。上記のポリアミドなどの成分は、このような割合で用いられることにより、本発明の重合体の効果を低下させずに、上記の効果を発現させることができる。
【0071】
本発明の重合体を製造するために用いられる、好ましいテトラカルボン酸二無水物の例を次に示す。これらの化合物の中には異性体が存在するものがあるが、これらの異性体を含む混合物であってもかまわない。これらの化合物の少なくとも2つからなる混合物、またはこれらの化合物の少なくとも1つとこれらの化合物以外のテトラカルボン酸二無水物とを含有する混合物を、本発明の重合体を製造するための原料として用いてもよい。
【0072】
【0073】
【0074】
次に、他のジアミン(化合物(1)以外のジアミン)の例を以下に示す。しかしこれらの例示は、化合物(1)と併用できるジアミンを限定することを意味しない。
【0075】
【0076】
【0077】
ガラス基板への密着性や配向膜の硬さを調節する目的で、シロキサン結合を有するジアミンを化合物(1)と併用することができる。シロキサン結合を有する好ましいジアミンは、式(3)で表される化合物である。

式(3)において、RおよびRは独立して、炭素数1~3のアルキルまたはフェニルである。Aは炭素数1~6のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の-CH-は、-NH-、フェニレン、またはアルキル置換フェニレンで置き換えられてもよい。そして、pは1~10の整数である。HN-A-の例は、アミノメチル、2-アミノエチル、3-アミノプロピル、4-アミノブチル、5-アミノペンチル、6-アミノヘキシル、N-(2-アミノエチル)アミノメチル、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル、4-アミノフェニル、3-アミノフェニル、2-メチル-4-アミノフェニル、4-アミノフェニルエチル、4-アミノフェニルプロピルなどである。
このようなシロキサン結合を有するジアミンのワニスへの添加量は、ワニスに含有される固形分の重量に基づいて0.01~5重量%、好ましくは0.1~3重量%である。
【0078】
ガラス基板への密着性の改善や硬さの調節などを目的として、シランカップリング剤やシリコーンオイルなどの有機ケイ素化合物を、本発明のワニスに添加することができる。シランカップリング剤の例は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどである。シリコーンオイルの例は、ジメチルポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサンなどである。このような有機ケイ素化合物のワニスへの添加量は、ワニスに含有される固形分の重量に基づいて0.01~5重量%、好ましくは0.1~3重量%である。
【0079】
ワニス調製に使用される溶剤の例は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコールモノブチルエーテル(BC)、エチレングリコールモノエチルエーテル、γ-ブチロラクトンなどである。本発明のワニスは、これらの溶剤の少なくとも1つに、前記の本発明の重合体およびその他の成分が溶解されている混合物である。そして、このワニスにおける不揮発性分の濃度は、ワニスの総重量に基づいて0.1~30重量%、好ましくは1~10重量%である。
【0080】
このワニスは、刷毛塗り法、浸漬法、スピンナー法、スプレー法、印刷法等により基板上に塗布され、その後50~150℃、好ましくは80~120℃で溶剤を蒸発させた後、150~400℃、好ましくは180~280℃で加熱して成膜される。塗布前に基板表面上をシランカップリング剤で処理し、その上に成膜すれば膜と基板との接着性を改善できる。その後、この膜の表面を布などで一方向にラビングすることによって本発明の配向膜が得られる。
【0081】
本発明の重合体は、液晶配向膜用途以外にも、各種ポリイミドコーティング剤、またはポリイミド樹脂成形体、フィルム、もしくは繊維の成形体などにも利用することができる。本発明のジアミン誘導体は、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレア樹脂の原料、またはエポキシ樹脂の硬化剤などとして用いることもできる。
【実施例0082】
本発明のジアミン誘導体およびこの化合物を用いることによって得られるポリイミド樹脂を実施例により示す。実施例におけるNMRのデータは、すべて重クロロホルム中で測定した値である。高分子の分子量は、ポリスチレンを標準溶液としてGPCを用いて測定した。用いた機器は(株)島津製作所製のLC-9A型、カラムは昭和電工製のShodex GF-7M、カラム温度は40℃であり、溶出液はDMF(ジメチルホルムアミド)、流速は0.5mL/min.である。なお、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0083】
以下に実施例で用いたポリイミド樹脂の評価法を示す。
評価は、ポリイミド樹脂を塗膜にて行った。
(1)透過スペクトル測定
日本分光株式会社製 紫外可視近赤外光光度計 V-660を用い測定を行った。その際、樹脂を塗布していないガラス基板をブランクに用いている。
なお、ガラス基板へ塗布したポリイミド樹脂試料の作製方法は下記の通りである。
i)ガラス基板(EAGLE XG;コーニング社製)へ樹脂のワニスを膜厚100nmになる様にスピンコーターを用い、塗膜を作製する。
ii)60℃に加熱したホットプレート上で、80秒間塗膜したガラス基板を乾燥。
iii)230℃に加熱した熱風オーブン中で30分間ガラス基板に形成した塗膜を焼成しイミド化する。
【0084】
(2)鉛筆硬度
JIS規格;JIS K5600-5-4(ISO/DIN 15184)引っかき硬度(鉛筆法)に従い測定した。なお使用した塗膜の作製方法は(1)透過スペクトル測定方法に記載した試料作製方法と同じ方法で行った。
【0085】
[実施例1]
(2,2,4,4-テトラメチルシクロブタンジアミン炭酸塩(化合物No.2-1-1-1)の合成)

(第1段)
塩酸ヒドロキシルアミン(59.5g:856.3mmol)のピリジン(150ml)溶液を0℃に冷却し、そこに文献記載の方法に準拠して得た2,2,4,4-テトラメチルシクロブタン-1,3-ジオン(30g:214.0mmol)を少量ずつ加え、0℃で5分間撹拌した。更に室温で24時間撹拌した後、得られた反応混合物に蒸留水を加えて析出した固体をろ過し、更に固体を水洗後、60℃にて真空乾燥を行い、2,2,4,4-テトラメチルシクロブタン-1,3-ジオン ジオキシム(35.8g:210.3mmol)収率98.3%を得た。これを化合物(2-1-1-1a)とする。
【0086】
(第2段)
オートクレーブ反応器中で、化合物(2-1-1-1a)(20.0g:117.5mmol)をテトラヒドロフラン(THF)200mLへ溶解させ、スポンジ-Ni(4.0g)を加え、水素雰囲気下、80℃にて水素の吸収が無くなるまで撹拌した。反応完了後スポンジ-Niを濾別し、得られた反応溶液にバブラーを導入後、二酸化炭素を吹き込み得られた固体を濾別した。その後固体を酢酸エチル、ジエチルエーテルで洗浄し減圧下乾燥し、収率99%で2,2,4,4-テトラメチルシクロブタンジアミン炭酸塩(化合物No.2-1-1-1)(23.7g:116.3mmol)を得た。
H-NMR(CDCl)δ:2.66(d,2H)、1.01(t,12H).
【0087】
[実施例2]
(ポリアミド酸の合成)
200mlの4つ口フラスコに、実施例1と全く同様にして合成した(化合物No.2-1-1-1)(1.50g)を入れ、NMP(27mL)に溶解した。この溶液にピロメリット酸二無水物(PMDA)(0.80g)およびシクロブタンテトラカルボン酸二無水物(MMDA)(0.72g)を加えて12時間攪拌した。得られた溶液をNMP(18mL)とBC(5mL)との混合溶剤で希釈することにより、ポリアミド酸濃度6重量%の透明液体を得た。この溶液の25℃での粘度は15mPa・sであり、この溶液に含まれる重合体の重量平均分子量は20,000であった。この溶液をワニスAとする。
【0088】
[実施例3]
(ポリイミドの合成)
実施例2で得られたワニスAに、無水酢酸(3.76g)、ピリジン(2.91g)を加え、100℃で三時間加熱環流させた。冷却後反応混合物をメタノールに投入して重合体を再沈澱させ、ろ過して粗生成物を得た。この粗生成物を純水(500ml)で2回、メタノール(500ml)で1回、それぞれ30分程度煮沸洗浄した。その後、120℃で8時間減圧乾燥してポリイミド(3.6g)を得た。このポリイミドの重量平均分子量は25,000であった。
【0089】
[実施例4]
(2,4-ジエチル-2,4-ジシクロヘキシルシクロブタンジアミン(化合物No.1-2-1-14)の合成)

(第1段)
塩酸ヒドロキシルアミン(59.5g:856.3mmol)のピリジン(150ml)溶液を0℃に冷却し、そこに文献記載の方法に準拠して得た2,4-ジエチル-2,4-ジシクロヘキシルシクロブタン-1,3-ジオン(65.2g:214.0mmol)を少量ずつ加え、0℃で5分間撹拌した。更に室温で24時間撹拌した後、得られた反応混合物に蒸留水を加えて析出した固体をろ過し、更に固体を水洗後、60℃にて真空乾燥を行い、2,4-ジエチル-2,4-ジシクロヘキシルシクロブタン-1,3-ジオン ジオキシム(68.0g:303.3mmol)収率95.0%を得た。これを化合物(2-2-1-27a)とする。
【0090】
(第2段)
オートクレーブ反応器中で、化合物(2-2-1-27a)(39.3g:117.5mmol)をテトラヒドロフラン(THF)200mLへ溶解させ、スポンジ-Ni(4.0g)を加え、水素雰囲気下、80℃にて水素の吸収が無くなるまで撹拌した。
反応完了後スポンジ-Niを濾別後、溶媒を減圧下留去し、収率99%で2,2,4,4-ジエチル-2,4-ジシクロヘキシルシクロブタンジアミン(化合物No.1-2-1-14)(35.6g:116.3mmol)を得た。
【0091】
[実施例5]
(2,4-ジエチル-2,4-ジシクロヘキシルシクロブタンジアミン炭酸塩(化合物No.2-2-1-27)の合成)

実施例4で得られた化合物(1-2-1-14)30g(97.9mmol)をテトラヒドロフラン(THF)200mLへ溶解させ、バブラーを導入後、二酸化炭素を吹き込み得られた固体を濾別した。その後固体を酢酸エチル、ジエチルエーテルで洗浄し減圧下乾燥し、収率99%で2,2,4,4-ジエチル-2,4-ジシクロヘキシルシクロブタンジアミン炭酸塩(化合物No.2-2-1-27)(36.1g:116.3mmol)を得た。
H-NMR(CDCl)δ:2.65(d,2H)、2.06-2.00(m,2H)、1.74-1.51(m、16H)、1.19-1.02(m,8H)0.88(t,6H).
【0092】
[実施例6]
(ポリアミド酸の合成)
200mlの4つ口フラスコに、実施例1と全く同様にして合成した(化合物No.2-1-1-1)(2.70g)を入れNMP(27mL)に溶解した。この溶液にピロメリット酸二無水物(PMDA)(0.80g)およびシクロブタンテトラカルボン酸二無水物(MMDA)(0.72g)を加えて12時間攪拌した。得られた溶液をNMP(18mL)とBC(5mL)との混合溶剤で希釈することにより、ポリアミド酸濃度6重量%の透明液体を得た。この溶液の25℃での粘度は15mPa・sであり、この溶液に含まれる重合体の重量平均分子量は32,000であった。この溶液をワニスBとする。
【0093】
[実施例7]
(ポリイミドの合成)
実施例6で得られたワニスBに、無水酢酸(3.76g)、ピリジン(2.91g)を加え、100℃で三時間加熱還流させた。冷却後反応混合物をメタノールに投入して重合体を再沈澱させ、ろ過して粗生成物を得た。この粗生成物を純水(500ml)で2回、メタノール(500ml)で1回、それぞれ30分程度煮沸洗浄した。その後、120℃で8時間減圧乾燥してポリイミド(4.1g)を得た。このポリイミドの重量平均分子量は40,000であった。
【0094】
[比較例1]
(ポリアミド酸の合成)
200mlの4つ口フラスコに、1,4-フェニレンジアミン(0.8g)を入れNMP(27mL)に溶解した。この溶液にピロメリット酸二無水物(PMDA)(0.80g)およびシクロブタンテトラカルボン酸二無水物(MMDA)(0.72g)を加えて12時間攪拌した。得られた溶液をNMP(18mL)とBC(5mL)との混合溶剤で希釈することにより、ポリアミド酸濃度6重量%の透明液体を得た。この溶液の25℃での粘度は15mPa・sであり、この溶液に含まれる重合体の重量平均分子量は20,000であった。この溶液をワニスYとする。
【0095】
[実施例2]および[比較例1]の評価1
(ワニスの透過光スペクトル測定)
前述の方法にて、実施例2にて調製したワニスAと比較例1にて調製したワニスYから作製されるポリイミド膜の透過光スペクトルを測定した。スペクトルを図1に示す。比較例のワニスYから誘導されるポリイミド膜は300nm以下のエネルギーが高い短波長領域では吸収があり透過しないが、一方実施例1のジアミン炭酸塩より誘導されるワニスAは300nm以下の短波長においても吸収が無く、加えて全波長領域において透過性に優れる事がわかる。
【0096】
[実施例2]および[比較例1]の評価2
(ワニスから作製されるポリイミド膜の鉛筆硬度測定)
前述の方法にて、実施例2にて調製したワニスAと比較例1にて調製したワニスYから作製されるポリイミド膜の鉛筆硬度を測定した。結果を表1に示す。ワニスAより作製されるポリイミド膜は、比較例2のワニスYと同等の硬度を有していることが分かる。
【0097】
<表1>
【0098】
シクロブタン環を有する本発明のジアミン誘導体、およびジアミン塩を含むジアミン類を、ポリイミド、ポリアミドなどの重合体の原料として用いるとき、従来の芳香族ジアミンを用いた場合と比較し、その重合体の光透過性はより短波長領域まで高く維持することができる。その結果、これらの重合体を用いたフィルムを含めた成形体は、透明性が高くかつ高い物理的安定性を有しているので、フレキシブルディスプレイを初めとする広い波長領域で高い透明性が要求される基板材料して適している。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明のジアミン類は短い合成ルートで安価に製造することができるので、高機能な成形体をより安価に提供することが可能である。なお、本発明の化合物は、ポリイミド以外の結合様式を有する高分子材料の原料としても使用できる。
図1