(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035878
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】検査装置および検査方法
(51)【国際特許分類】
G01J 5/48 20220101AFI20230306BHJP
【FI】
G01J5/48 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124250
(22)【出願日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2021141913
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】増田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】日野 真
(72)【発明者】
【氏名】平川 真
【テーマコード(参考)】
2G066
【Fターム(参考)】
2G066AC20
2G066BA08
2G066BA09
2G066BA14
2G066BC15
(57)【要約】
【課題】包装体の検査に用いる発光部および受光部に関し、波長とレイアウトの自由度を高める。
【解決手段】光エネルギーを吸収する物質を含む包装材をシールするシール部に対し、少なくとも前記物質が光吸収する波長を持つ光を照射する発光部と、前記シール部からの熱輻射を受光する受光部と、前記受光部で受光した情報から、前記シール部の温度情報を2次元画像として取得する2次元画像取得部と、を備え、前記受光部は、前記発光部から照射されて前記シール部を透過する光、および、前記発光部から照射されて前記シール部で反射する光を直接受光しない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光エネルギーを吸収する物質を含む包装材をシールするシール部に対し、少なくとも前記物質が光吸収する波長を持つ光を照射する発光部と、
前記シール部からの熱輻射を受光する受光部と、
前記受光部で受光した情報から、前記シール部の温度情報を2次元画像として取得する2次元画像取得部と、
を備え、
前記受光部は、前記発光部から照射されて前記シール部を透過する光、および、前記発光部から照射されて前記シール部で反射する光を直接受光しない、
ことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記発光部は、少なくとも紫外線、可視光線、近赤外線のいずれかを照射する、
ことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記発光部は、近赤外線より長い波長を含まない光を照射する、
ことを特徴とする請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記発光部は、近赤外線にピーク波長を持つLED、または、レーザである、
ことを特徴とする請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記発光部が照射する光の波長と前記受光部が受光する熱輻射の波長とが異なる、
ことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項6】
前記受光部は、MWIR(Middle Wavelength Infrared Radiation)より長い波長の光を受光する、
ことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項7】
前記受光部は、LWIR(Long Wavelength Infrared Radiation)を受光する非冷却型赤外線受光素子である、
ことを特徴とする請求項6に記載の検査装置。
【請求項8】
前記発光部は、前記シール部を一括に照射し、
前記受光部は、少なくとも前記シール部からの熱輻射を一括に受光する、
ことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項9】
前記発光部は、ポイント型発光源を縦横に並べたエリア型発光源である、
ことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項10】
前記2次元画像取得部で取得した2次元画像から前記シール部の良否を判定する良否判定部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項11】
光エネルギーを吸収する物質を含む包装材をシールするシール部に対し、少なくとも前記物質が光吸収する波長を持つ光を発光部から照射する発光工程と、
前記シール部からの熱輻射を受光部で受光する受光工程と、
前記受光工程で受光した情報から、前記シール部の温度情報を2次元画像として取得する2次元画像取得工程と、
を含み、
前記受光工程は、前記発光部から照射されて前記シール部を透過する光、および、前記発光部から照射されて前記シール部で反射する光を前記受光部で直接受光しない、
ことを特徴とする検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装材に食品等の物品が封入され、シールして出来る包装体について、そのシール部分が正しく封止されているか否かを検査する包装体の検査装置がある。
【0003】
特許文献1には、物品の噛み込みを検査する装置として、精度の高い検査を行う目的で、光線照射部と、包装体を透過した光線を検出する光線検出部と、光線検出部の検出結果に基づいて画像を生成し、その画像に基づいて検査を行う検査部を備えた検査装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の包装体の検査装置では、包装体の透過光を利用するため、包装材51に応じて、照明する発光部の波長と撮影する受光部の波長とを合わせなければならず、かつ、発光部と受光部とのレイアウト(正対向に配置)が一意に決まってしまう、という問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、包装体の検査に用いる発光部および受光部に関し、波長とレイアウトの自由度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、光エネルギーを吸収する物質を含む包装材をシールするシール部に対し、少なくとも前記物質が光吸収する波長を持つ光を照射する発光部と、前記シール部からの熱輻射を受光する受光部と、前記受光部で受光した情報から、前記シール部の温度情報を2次元画像として取得する2次元画像取得部と、を備え、前記受光部は、前記発光部から照射されて前記シール部を透過する光、および、前記発光部から照射されて前記シール部で反射する光を直接受光しない、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、包装体の検査に用いる発光部および受光部に関し、波長とレイアウトの自由度を高めることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態にかかる検査装置の構成例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、検査装置により検査される包装体の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、アルミニウムの吸収率を示すグラフである。
【
図5】
図5は、搬送されている包装体を照射する場合のポイント型発光源の例を示す図である。
【
図6】
図6は、停止している包装体を照射する場合のポイント型発光源の例を示す図である。
【
図7】
図7は、搬送されている包装体を照射する場合のライン型発光源の例を示す図である。
【
図8】
図8は、停止している包装体を照射する場合のライン型発光源の例を示す図である。
【
図9】
図9は、搬送されている包装体を照射する場合のエリア型発光源の例を示す図である。
【
図10】
図10は、停止している包装体を照射する場合のエリア型発光源の例を示す図である。
【
図11】
図11は、搬送されている包装体からの熱輻射を受光する場合のポイント型受光素子の例を示す図である。
【
図12】
図12は、停止している包装体からの熱輻射を受光する場合のポイント型受光素子の例を示す図である。
【
図13】
図13は、搬送されている包装体からの熱輻射を受光する場合のライン型受光素子の例を示す図である。
【
図14】
図14は、停止している包装体からの熱輻射を受光する場合のライン型受光素子の例を示す図である。
【
図15】
図15は、搬送されている包装体からの熱輻射を受光する場合のエリア型受光素子の例を示す図である。
【
図16】
図16は、停止している包装体からの熱輻射を受光する場合のエリア型受光素子の例を示す図である。
【
図17】
図17は、発光部と受光部との第1のレイアウト例を示す図である。
【
図18】
図18は、発光部と受光部との第2のレイアウト例を示す図である。
【
図19】
図19は、発光部と受光部との第3のレイアウト例を示す図である。
【
図20】
図20は、制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図21】
図21は、制御装置の機能を示す機能ブロック図である。
【
図22】
図22は、良好な状態の位置と不良な状態の位置とにおける表面温度の変化例を示すグラフである。
【
図23】
図23は、シール部の良否判定にかかる2次元画像の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、検査装置および検査方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
ここで、
図1は実施の形態にかかる検査装置1の構成例を示す概略図、
図2は検査装置1により検査される包装体50の一例を示す図である。検査装置1は、包装体50について適正にシールされているかについての検査を行い、異常のある包装体50を生産ラインから排除するものである。
【0011】
まず、包装体50について説明する。
【0012】
図2に示すように、包装体50は、袋状の包装材51の内部に、物品(例えば、カレーやスープなどの食品など)を収容したものである。
図2に示す包装体50は、包装材51同士の接着により、袋状の開口部を封止する。
【0013】
包装体50の包装材51には、単層プラスチックフィルム、表面加工が施された単層プラスチックフィルム、または、それらを複数積層したプラスチックフィルムなどが用いられている。表面加工には、防湿性を付与するためのコーティングや、ガスバリア性を付与するためのアルミニウム、シリカ、アルミナ等の蒸着などがある。
【0014】
さらには、包装体50の包装材51としては、上述のフィルムに対してアルミニウム箔51b(
図3参照)をラミネートしたフィルムが用いられている。アルミニウム箔51bをラミネートした包装材51は、高いガスバリア性、防湿性が要求される用途に用いられる。特に、アルミニウム箔51bをラミネートした包装材51は、レトルト食品の包装容器であって、いわゆるレトルトパウチと呼ばれるものである。
【0015】
図3は、包装材51の構成例を示す図である。
図3に示す包装材51は、レトルトパウチ用の包装材51の構成例を示すものである。
図3に示す包装材51は、表面からポリエステル(PET)フィルム51a、アルミニウム箔51b、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム51cの順に積層されている。
図3に示す包装材51のようにアルミニウム箔やアルミニウム蒸着フィルムなどをラミネートしたフィルムは、目視による透過性が悪く、包装材51の内部に収容した物品の目視での確認は困難である。
【0016】
図2に示す包装体50において、包装材51同士を接着して袋状の開口部を封止した部分をシール部52と呼ぶ。シール部52は、加熱したバーを封止したい部分に押し当てることで熱圧着するヒートシールや、封止したい部分を超音波振動と加圧により溶融して接合する超音波シールなどによって形成する。
【0017】
ここで、包装体50の製造工程を簡単に説明する。包装体50は、図示しない充填手段(充填機)により、物品(例えば、カレーやスープなどの食品など)などが袋状の包装材51に充填された後、シール部52で封止されて製造される。
【0018】
このような製造工程において、検査装置1は、シール部52で封止された包装体50に対し、しっかり密封されて物品の漏洩が起きないことを確認するため、シール検査を実施する。シール検査では、シール部52が良好な状態か、不良な状態かを判定する。不良な状態には、例えば、噛み込み、ピンホール、シワ、貫通などと呼ばれる状態がある。具体的には、噛み込みはシール部52に物品を噛み込んでいる不良、ピンホールはシール部52に穴が開いている不良、シワはシール部52に折りシワや重なりシワが発生している不良、貫通はシール部52に物品が外部へ漏洩してしまうような通り道ができている不良、などである。
【0019】
次に、検査装置1について詳述する。
【0020】
図1に示すように、検査装置1は、搬送ユニット2と、画像取得装置3と、制御装置4と、を備えている。
【0021】
画像取得装置3は、搬送ユニット2に対して下方に配置された発光部31と、搬送ユニット2に対して上方に配置された受光部32と、を備える。
【0022】
搬送ユニット2は、第1搬送部21と第2搬送部22とを備える。第1搬送部21および第2搬送部22は、無端状のベルトを回転駆動することで、ベルト上の包装体50を搬送する。第1搬送部21は、画像取得装置3の配置位置に対して、包装体50の搬送方向Xの上流側に配置される。第2搬送部22は、画像取得装置3の配置位置に対して、包装体50の搬送方向Xの下流側に配置される。搬送ユニット2は、第1搬送部21と第2搬送部22との間に、発光部31と受光部32との間の空間となる隙間Oを形成する。隙間Oである第1搬送部21と第2搬送部22との間の距離は、第1搬送部21から第2搬送部22への受け渡しに影響を与えない距離である。このような構成により、搬送ユニット2は、発光部31と受光部32との間の空間に、包装体50を搬送する。
【0023】
画像取得装置3は、搬送ユニット2により搬送された包装体50のシール部52の2次元温度情報を、画像として取得する。
【0024】
発光部31は、搬送ユニット2により搬送された包装体50のシール部52全体に対し、2次元的に光を照射する。なお、発光部31は、第1搬送部21と第2搬送部22との隙間Oにおいて、搬送ユニット2により搬送されている包装体50に対して光を照射してもよいし、搬送ユニット2上で一旦停止した状態の包装体50に対して光を照射してもよい。
【0025】
受光部32は、発光部31からの光照射に伴い、包装体50のシール部52全体からの熱輻射を2次元的に受光する。
【0026】
ここで、発光部31および受光部32について詳述する。
【0027】
上述したように、包装体50の包装材51には、アルミニウム蒸着フィルムやアルミニウム箔をラミネートしたフィルムが用いられており、少なくともアルミニウムが含まれている。そこで、本実施形態の検査装置1の発光部31は、包装体50のシール部52の一方側に、少なくともアルミニウムが光吸収する波長を持つ光を照射する。包装材51のアルミニウム箔51b(
図3参照)は、発光部31が照射した光を吸収し、光エネルギーを熱エネルギーに変換する。包装材51のアルミニウム箔51bで発生した熱は、各層の表面間および各層中を伝わり、包装材51の表面に到達する。そして、包装材51は、表面から熱輻射による光を放射する。この光放射は、いわゆるプランク放射則に基づくスペクトルで放射され、受光部32で受光される。受光部32は、熱輻射情報を2次元的に受光する。
【0028】
図4は、アルミニウムの吸収率を示すグラフである。アルミニウムは、
図4に示す吸収スペクトルを持つ。
図4に示すように、アルミニウムは、0.78μm~1.0μmの近赤外線の吸収率のピークにおいて、効果的に光吸収を生じる。また、アルミニウムは、紫外線(0.38μm以下)や可視光線(0.38μm~0.78μm)においても高い吸収率を持つ。なお、アルミニウムは、1μm以上の波長では吸収率が低下する。したがって、発光部31は、少なくとも紫外線、可視光線、近赤外線のいずれかの光を照射することが望ましい。そこで、本実施形態の発光部31は、少なくとも紫外線、可視光線、近赤外線を含む光を照射することができるハロゲンランプを適用する。ハロゲンランプは、一般的に、可視光線より長い波長の光を照射でき、非常にブロードな発光スペクトルを有する。ハロゲンランプは、ランプの温度に依存するが、特に近赤外線より長い波長を持つ光を多く含んでいる(例えば、50%以上含む)。
【0029】
なお、発光部31は、ハロゲンランプに限るものではなく、紫外線、可視光線、近赤外線の光を照射することができるキセノンランプを適用してもよい。一般的に、キセノンランプは、紫外線、可視光線、近赤外線に渡りブロードな発光スペクトルを持ち、かつ、近赤外線に複数のシャープな発光スペクトルを有する。キセノンランプは、近赤外線より長い波長をほとんど含んでいない(例えば、5%以下)。このような近赤外線より長い波長の光は熱線とも呼ばれ、周囲の部材を温めてしまうため、装置の小型化や構成部品の選定に影響を及ぼす。そのため、近赤外線より長い波長の光を含まないことが実用上好ましい。
【0030】
また、発光部31は、近赤外線にピーク波長を持つ近赤外LEDまたは近赤外レーザを適用するようにしてもよい。近赤外LEDまたは近赤外レーザは、アルミニウムの吸収スペクトルのピークとほぼ同じ波長帯域に発光スペクトルのピークを持つため、高い効率で光エネルギーを熱エネルギーに変換することができる。また、近赤外LEDまたは近赤外レーザは、一般的にハロゲンランプやキセノンランプよりも寿命が長く、連続稼働する検査装置1での使用において、交換周期を長くすることができるという利点もある。
【0031】
さらに、発光部31は、連続点灯(DC発光)でもよいし、間欠点灯(パルス発光)でもよい。ただし、寿命の観点から、1Hz~2Hz程度で間欠点灯可能であることが好ましい。具体的には、レーザ、LED、キセノンランプが該当する。
【0032】
さらにまた、発光部31は、連続点灯(DC発光)である場合に、包装体50に対し間欠点灯となるような間欠照射手段(シャッター)を、包装体50との間に備えるようにしてもよい。
【0033】
本実施形態においては、シール部52の表面温度上昇は数℃~10℃程度でよい。それ以上に温度を上げてもよいが、ハイパワーの光源が必要となり、光源のコストや大きさの面から実用的ではない。検査装置1の雰囲気温度が20~30℃程度であるとすると、0℃(273K)+20~30℃+数℃~10℃=295~315K程度となる。また、300Kに相当する熱輻射は、プランクの法則により、約3μm以上の波長を持つことが分かっている。これにより、包装体50のシール部52から熱輻射により放射される光は、プランクの法則により約3μm以上の波長の光となる。すなわち、受光部32は、3μm以上の波長を持つ光を受光する。
【0034】
このように発光部31が照射する光の波長と受光部32が受光する熱輻射の波長とを異ならせることにより、発光部31の光は受光部32で受光されず、受光部32のノイズとなることがないので、良好な受光信号の取得が可能になる。
【0035】
大気の透過スペクトルには大気の窓と呼ばれる、大気の透過率が高い波長帯域がある。大気中で測定する場合にはこの帯域を用いることが好ましい。例えば、3~6μmの波長帯域であるMWIR(Middle Wavelength Infrared Radiation)、8~14μmの波長帯域であるLWIR(Long Wavelength Infrared Radiation)が挙げられる。
【0036】
また、300K程度の熱輻射スペクトルは、約10μmにピークを持つため、より感度の高い測定をするためにLWIRの大気の窓を利用することが好ましい。
【0037】
そこで、本実施形態においては、受光部32は、LWIRを受光する赤外線受光素子を用いる。なお、赤外線受光素子は、極低温に冷却する必要があり高感度な冷却型と、室温で動作可能な非冷却型と、がある。本実施形態においては、受光部32は、実用的には低コストである非冷却型赤外線受光素子を用いる。
【0038】
発光部31は、シール部52全体を2次元的に照射するものであれば、ポイント型発光源、ライン型発光源、エリア型発光源のいずれの発光源でも構わない。
【0039】
図5は搬送されている包装体50を照射する場合のポイント型発光源の例を示す図、
図6は停止している包装体50を照射する場合のポイント型発光源の例を示す図である。
図5および
図6に示すように、ポイント型発光源は、ポイント状にシール部52を照射する。
図5に示すように、発光部31は、搬送されている包装体50を照射する場合には、シール部52を1次元走査する光学系を介してポイント型発光源を2次元的に照射する。
図6に示すように、発光部31は、停止している包装体50を照射する場合には、シール部52を2次元走査する光学系を介してポイント型発光源を2次元的に照射する。
【0040】
図7は搬送されている包装体50を照射する場合のライン型発光源の例を示す図、
図8は停止している包装体50を照射する場合のライン型発光源の例を示す図である。
図7および
図8に示すように、ライン型発光源は、ライン状にシール部52を照射する。ライン型発光源は、ポイント型発光源を一列もしくは複数列に並べてライン型とするものでもよいし、ポイント型発光源を用いて光学系を介してライン状の照射パターンを作るものでもよい。
図7に示すように、発光部31は、搬送されている包装体50を照射する場合には、シール部52の幅(シール部52の長手幅)より長いライン型発光源で2次元的に照射する。
図8に示すように、発光部31は、停止している包装体50を照射する場合には、シール部52を1次元走査する光学系を介してシール部52の短手幅より若干長いライン型発光源で2次元的に照射する。
【0041】
図9は搬送されている包装体50を照射する場合のエリア型発光源の例を示す図、
図10は停止している包装体50を照射する場合のエリア型発光源の例を示す図である。
図9および
図10に示すように、エリア型発光源は、エリア状にシール部52を一括に照射する。エリア型発光源は、ポイント型発光源を縦横に並べてエリア型とするものでもよいし、ライン型発光源を複数列並べてエリア型とするものでもよいし、これらと光学系を組み合わせてエリア状の照射パターンを作るものでもよい。
図9に示すように、発光部31は、搬送されている包装体50を照射する場合には、エリア型発光源で一括に照射する。
図10に示すように、発光部31は、停止している包装体50を照射する場合には、エリア型発光源で一括に照射する。
【0042】
一方、受光部32は、光照射に伴ったシール部52全体からの熱輻射を2次元的に受光するものであれば、ポイント型受光素子、ライン型受光素子、エリア型受光素子のいずれの受光素子でも構わない。ポイント型受光素子には、サーモパイルなどが適用される。エリア型受光素子には、マイクロボロメータなどが適用される。
【0043】
図11は搬送されている包装体50からの熱輻射を受光する場合のポイント型受光素子の例を示す図、
図12は停止している包装体50からの熱輻射を受光する場合のポイント型受光素子の例を示す図である。
図11に示すように、受光部32は、搬送されている包装体50からの熱輻射を受光する場合には、シール部52を1次元走査する光学系を介してポイント型受光素子で2次元的に受光する。
図12に示すように、受光部32は、停止している包装体50からの熱輻射を受光する場合には、シール部52を2次元走査する光学系を介してポイント型受光素子で2次元的に受光する。
【0044】
図13は搬送されている包装体50からの熱輻射を受光する場合のライン型受光素子の例を示す図、
図14は停止している包装体50からの熱輻射を受光する場合のライン型受光素子の例を示す図である。
図13に示すように、受光部32は、搬送されている包装体50からの熱輻射を受光する場合には、シール幅より長いライン型受光素子で2次元的に受光する。
図14に示すように、受光部32は、停止している包装体50からの熱輻射を受光する場合には、シール部52を1次元走査する光学系を介してシール部52の短手幅より若干長いライン型受光素子で2次元的に受光する。
【0045】
図15は搬送されている包装体50からの熱輻射を受光する場合のエリア型受光素子の例を示す図、
図16は停止している包装体50からの熱輻射を受光する場合のエリア型受光素子の例を示す図である。
図15に示すように、受光部32は、搬送されている包装体50からの熱輻射を受光する場合には、シール部52を一括にエリア型受光素子で受光する。
図16に示すように、受光部32は、停止している包装体50からの熱輻射を受光する場合には、シール部52を一括にエリア型受光素子で受光する。
【0046】
上述したように、シール部52全体を光照射する発光部31や、シール部52全体からの熱輻射を受光する受光部32には様々な態様がある。本実施形態においては、発光部31はエリア型発光源であり、受光部32はエリア型受光素子とする。このようにエリア型発光源とエリア型受光素子との組み合わせにすることにより、包装体50が搬送されていても停止していても、その搬送状態の制約を受けずに、シール部52全体を一括に、照射および受光が可能である。さらに、ポイント型発光源(具体的にはLED)を縦横に並べたエリア型発光源、エリア型受光素子であれば、1次元もしくは2次元走査する光学系、すなわち可動部品が不要であり、振動影響を受けず高品質な画像の取得が可能である。
【0047】
次に、発光部31と受光部32との位置関係について詳述する。
【0048】
上述したように、受光部32は、発光部31から照射されて包装材51のシール部52を透過する光や、シール部52から反射する光を直接受光するのではない。受光部32は、発光部31から照射された光による包装材51の表面からの熱輻射によって放出された光を受光するものである。つまり、発光部31と受光部32とは、光の透過または正反射に基づく配置に制約されるものではない。そのため、発光部31と受光部32とのレイアウト自由度は、大きくなる。
【0049】
図17は、発光部31と受光部32との第1のレイアウト例を示す図である。
図17に示す例では、受光部32は、搬送方向Xに対して略平行な面である包装材51のシール部52および発光部31に対して、光軸を傾けて設置している。このように受光部32の光軸を包装材51のシール部52に対して傾けて設置することにより、受光部32自身の映り込みを防止することができる。
【0050】
より詳細には、
図17に示すように、包装体50は包装材51の内部に物品を収容するため、包装体50のシール部52の近傍は膨らみを持っている。そのため、シール部52が搬送方向Xに対して略平行であるのに対し、シール部52の近傍の傾き部53は搬送方向Xに対して上側に傾いており、シール部52の近傍の傾き部54は搬送方向Xに対して下側に傾いている。したがって、
図17に示す例では、受光部32は、包装材51のシール部52の近傍の傾き部53の傾きに直交する傾きでなく、包装材51のシール部52の近傍の傾き部53の傾きと同方向に光軸を傾けて設置されている。
【0051】
ここで、
図18は発光部31と受光部32との第2のレイアウト例を示す図である。
図18に示す例では、受光部32自身の映り込みの影響がないことを条件として、受光部32は、搬送方向Xに対して略平行な面であるシール部52に対して、傾き部53の傾きと同方向に傾けずに直交する位置に配置するようにしてもよい。
【0052】
ここで、
図19は発光部31と受光部32との第3のレイアウト例を示す図である。
図19に示す例では、
図18の第2のレイアウト例に加えて、発光部31を、搬送方向Xに対して略平行な面である包装材51のシール部52および受光部32に対して光軸を傾けて設置している。
【0053】
次に、制御装置4について説明する。制御装置4は、検査装置1の全体を制御する。ここで、
図20は制御装置4のハードウェア構成を示すブロック図である。
図20に示すように、制御装置4は、CPU41(Central Processing Unit)41や、ROM(Read Only Memory)42、RAM(Random Access Memory)43、HDD44等を備えている。制御装置4は、ROM42やHDD44に予め記憶されているプログラムに従って、RAM43をワークメモリとして用いて、搬送ユニット2、画像取得装置3の各部を駆動制御する。制御装置4として、例えば、パーソナルコンピュータ(ディスクトップ、ノートパソコン)を用いることができる。
【0054】
本実施形態の制御装置4で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0055】
さらに、本実施形態の制御装置4で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施形態の制御装置4で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0056】
制御装置4は、画像取得装置3で撮影した2次元画像に基づいて、包装体50のシール部52が良好か不良かの判定を行う。
【0057】
次に、制御装置4の機能について説明する。
【0058】
図21は、制御装置4の機能を示す機能ブロック図である。
図21に示すように、制御装置4は、CPU41がプログラムに従って動作することにより、制御部401、2次元画像取得部402、良否判定部403として機能する。
【0059】
制御部401は、画像取得装置3の発光部31の発光および受光部32の受光を制御する。また、制御部401は、搬送ユニット2の第1搬送部21および第2搬送部22の駆動を制御する。
【0060】
2次元画像取得部402は、受光部32により2次元的に受光した熱輻射情報から、包装体50のシール部52の2次元温度情報を画像として取得する。つまり、2次元画像取得部402は、光情報を温度情報に変換し、温度画像を取得する。サーモグラフィー(熱画像)とも言う。なお、2次元画像取得部402は、受光部32を非冷却型マイクロボロメータとした赤外線カメラに備えられるものであってもよい。
【0061】
良否判定部403は、温度情報を持つ2次元画像に基づき、包装体50のシール部52が良好な状態か、不良な状態か、すなわち良否を判定する。良否判定部403は、不良な状態を顕在化するため、2次元画像に既知の様々な画像処理を施す。
【0062】
前述したように、包装体50のシール部52に不良な状態があると、良好な状態に対し、シール部52の熱容量が変化する。例えば、噛み込みはシール部52に物品を噛み込んでいる不良であり、包装材51と包装材51との間に物品が挟み込んだ状態で封止されている。したがって、その物品による層が新たにでき、熱の伝わりが遅くなる。貫通はシール部52に物品が外部へ漏洩してしまうような通り道ができている不良であり、包装材51と包装材51との間に空気層があることにより、空気の高い熱抵抗のため、熱の伝わりが遅くなる。このように包装体50のシール部52に不良な状態があると、熱がシール部52の表面に到達する時間が遅れるため、表面に温度分布が生じることになる。そこで、良否判定部403は、温度情報を持つ2次元画像において発生する温度分布に基づき、不良な状態である、すなわち否であると判定することができる。
【0063】
次に、良否判定部403におけるシール部52の良否判定について説明する。
【0064】
ここで、
図22は良好な状態の位置と不良な状態の位置とにおける表面温度の変化例を示すグラフ、
図23はシール部52の良否判定にかかる2次元画像の具体例を示す図である。
図23に示す例は、不良な状態として、シール部52に空気層がある場合を示している。これは、貫通、または、空気を含む内容物の噛み込みなどに見られる状況を模擬している。
【0065】
図22に示す例は、アルミニウムを含むシール部52において良好な状態と不良な状態とがある場合について、時刻0で一方側から発光部31によって光を照射し、ある時刻tで他方側の表面の温度分布を取得したものである。
【0066】
図23に示す2次元画像は、
図22に示す時刻Aに取得した画像である。
図23に示す画像は、白は温度が高く、黒は温度が低いことを示すモノクロ画像である。
図23に示すように、シール部52に空気層があることによって不良な状態となる位置は、周囲に比べ黒っぽくなっていることが分かる。
【0067】
図22に示す例では、良好な状態の位置は時刻Tで、ピーク温度に到達している。この時間は包装材51の種類や厚みにより異なるが、およそ数100msから1s以下である。一方、
図22に示すように、不良な状態の位置は、時刻Tより後にピーク温度に到達しており、良好な状態と不良な状態との両者のピーク温度はほとんど同じである。そして、
図22により、0<t<Tにおいて、良好な状態では、不良な状態に対して温度が高いことが分かる。なお、良好な状態と不良な状態とは、時間が経つとほぼ同じピーク温度になり、ピーク以降ではその温度差は小さくなっている。
【0068】
以上により、
図23に示すようにシール部52に空気層がある場合には、空気層がある部分のシール部52の熱抵抗が大きくなるので熱の伝わりに遅れが生じることがわかる。すなわち、良好な状態と不良な状態とで、シール部52の表面温度の時間変化が異なり、ある時刻においては検出可能な大きな温度差が生じる。良否判定部403は、この時刻の2次元画像を捉えることにより、不良な状態を検出することができる。
【0069】
ただし、不良な状態によっては熱抵抗が小さくなり周囲よりも温度が上がることもある。このような場合でも、良好な状態と不良な状態との違いをみることで、シール部52の不良な状態の検出ができる。
【0070】
検査装置1は、以上のようにして包装体50のシール部52が良好か不良かの判定を行う。さらに、検査装置1は、包装体50を搬送ユニット2の第2搬送部22により搬送した後、不良と判定した包装体50を、図示しない選別手段(リジェクタ)により第2搬送部22から排除する。一方、良好と判定された包装体50は第2搬送部22によって搬送され、図示しない梱包手段(ケーサー)や人手により箱詰めされる。
【0071】
このように本実施形態によれば、包装体50に対し、少なくとも紫外線、可視光線、近赤外線のいずれかを含む光を発光し、包装体50から熱輻射された近赤外線より長い波長の光を受光することにより、包装体50のシール部52を透過する光、および、包装体50のシール部52で反射する光を利用しない。したがって、発光と受光の波長を異ならせることができる。さらに、発光部31と受光部32を正対向に配置する必要がなくなるので、包装体50の検査に用いる発光部31および受光部32に関し、レイアウトの自由度を高めることができる。
【0072】
なお、本実施形態においては、光エネルギーを吸収する物質としてアルミニウムを適用したが、これに限るものではなく、光エネルギーを吸収して光エネルギーを熱エネルギーに変換する物質であれば、他の金属、樹脂などを適用可能である。
【0073】
なお、本実施形態においては、包装体50の包装材51としていわゆるレトルトパウチと呼ばれるものを適用したが、これに限るものではなく、物品を収容して開口部を封止する各種の包装材51に適用可能である。例えば、包装体50の包装材51としては、ヨーグルト容器の蓋、薬の錠剤を封入する容器などが挙げられる。
【0074】
以上、本発明の実施形態を図面により詳述してきたが、上記各実施形態は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記各実施形態の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれる。
【0075】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1>
光エネルギーを吸収する物質を含む包装材をシールするシール部に対し、少なくとも前記物質が光吸収する波長を持つ光を照射する発光部と、
前記シール部からの熱輻射を受光する受光部と、
前記受光部で受光した情報から、前記シール部の温度情報を2次元画像として取得する2次元画像取得部と、
を備え、
前記受光部は、前記発光部から照射されて前記シール部を透過する光、および、前記発光部から照射されて前記シール部で反射する光を直接受光しない、
ことを特徴とする検査装置。
<2>
前記発光部は、少なくとも紫外線、可視光線、近赤外線のいずれかを照射する、
ことを特徴とする<1>に記載の検査装置。
<3>
前記発光部は、近赤外線より長い波長を含まない光を照射する、
ことを特徴とする<2>に記載の検査装置。
<4>
前記発光部は、近赤外線にピーク波長を持つLED、または、レーザである、
ことを特徴とする<3>に記載の検査装置。
<5>
前記発光部が照射する光の波長と前記受光部が受光する熱輻射の波長とが異なる、
ことを特徴とする<1>ないし<4>の何れか一項に記載の検査装置。
<6>
前記受光部は、MWIR(Middle Wavelength Infrared Radiation)より長い波長の光を受光する、
ことを特徴とする<1>ないし<5>の何れか一項に記載の検査装置。
<7>
前記受光部は、LWIR(Long Wavelength Infrared Radiation)を受光する非冷却型赤外線受光素子である、
ことを特徴とする<6>に記載の検査装置。
<8>
前記発光部は、前記シール部を一括に照射し、
前記受光部は、少なくとも前記シール部からの熱輻射を一括に受光する、
ことを特徴とする<1>ないし<7>の何れか一項に記載の検査装置。
<9>
前記発光部は、ポイント型発光源を縦横に並べたエリア型発光源である、
ことを特徴とする<1>ないし<8>の何れか一項に記載の検査装置。
<10>
前記2次元画像取得部で取得した2次元画像から前記シール部の良否を判定する良否判定部を備える、
ことを特徴とする<1>ないし<9>の何れか一項に記載の検査装置。
<11>
光エネルギーを吸収する物質を含む包装材をシールするシール部に対し、少なくとも前記物質が光吸収する波長を持つ光を発光部から照射する発光工程と、
前記シール部からの熱輻射を受光部で受光する受光工程と、
前記受光工程で受光した情報から、前記シール部の温度情報を2次元画像として取得する2次元画像取得工程と、
を含み、
前記受光工程は、前記発光部から照射されて前記シール部を透過する光、および、前記発光部から照射されて前記シール部で反射する光を前記受光部で直接受光しない、
ことを特徴とする検査方法。
【符号の説明】
【0076】
1 検査装置
31 発光部
32 受光部
51 包装材
52 シール部
402 2次元画像取得部
403 良否判定部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】