(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036049
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】剥離フィルム及び積層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20230306BHJP
【FI】
B32B27/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137871
(22)【出願日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2021142344
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】福井 伸良
(72)【発明者】
【氏名】千嶋 憲治
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 洋之
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK25C
4F100AK36B
4F100AK42A
4F100AK51C
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA02C
4F100JL14B
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】軽剥離性と低汚染性とが両立される剥離フィルム、及びこの剥離フィルムを用いて作製される積層フィルムを提供する。
【解決手段】基材11の片面11aに離型層12を有する剥離フィルム10であって、離型層12が、融点が60℃以上であるアルキルペンダントポリマーと、フルエーテル型メラミン樹脂とを含有する組成物を硬化させてなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の片面に離型層を有する剥離フィルムであって、
前記離型層が、融点が60℃以上であるアルキルペンダントポリマーと、フルエーテル型メラミン樹脂とを含有する組成物を硬化させてなる、剥離フィルム。
【請求項2】
前記離型層が、前記アルキルペンダントポリマーを80~40質量部、前記フルエーテル型メラミン樹脂を20~60質量部の割合で含有する組成物を硬化させてなる、請求項1に記載の剥離フィルム。
【請求項3】
前記離型層が、樹脂のキャスト用途に使用される、請求項1または2に記載の剥離フィルム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の剥離フィルムと、前記離型層の上に樹脂のキャストにより形成された樹脂膜と、を有する、積層フィルム。
【請求項5】
前記樹脂膜において、前記樹脂がイソシアネート架橋剤で架橋されている、請求項4に記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離フィルム及び積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種の用途に対して、離型層を有する剥離フィルムが使用されている。剥離フィルムの用途としては、例えば、医薬貼付薬、粘着テープ、電子基板、樹脂成膜キャスト等が挙げられる。離型層は、シリコーン離型剤、フッ素系離型剤、ノンシリコーン系離型剤等が使用されている。例えば、特許文献1には、離型層を構成する樹脂が、離型層を構成する樹脂全体に対してメラミン樹脂を50質量%以上含有し、離型層の厚みが0.02μm以上0.1μm未満であり、離型層表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmが10μm以上80μm以下である離型フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
剥離フィルムの用途として貼り合わされる被着体に対し、必要に応じて、剥離フィルムが剥離される。シリコーン系離型剤は、剥離フィルムを被着体から剥離する際の剥離力が小さい軽剥離から、剥離力が大きい重剥離まで、種々の材料を選択することができる。しかし、被着体の用途によっては、シリコーン系離型剤の残留による被着体の汚染等が忌避される場合がある。ノンシリコーン系離型剤を選択する場合は、剥離力が小さい軽剥離性と、被着体の汚染が少ない低汚染性とを両立することが難しい。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、軽剥離性と低汚染性とが両立される剥離フィルム、及びこの剥離フィルムを用いて作製される積層フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、下記の態様を提供する。
第1の態様は、基材の片面に離型層を有する剥離フィルムであって、前記離型層が、融点が60℃以上であるアルキルペンダントポリマーと、フルエーテル型メラミン樹脂とを含有する組成物を硬化させてなる、剥離フィルムである。
第2の態様は、前記離型層が、前記アルキルペンダントポリマーを80~40質量部、前記フルエーテル型メラミン樹脂を20~60質量部の割合で含有する組成物を硬化させてなる、第1の態様の剥離フィルムである。
第3の態様は、前記離型層が、樹脂のキャスト用途に使用される、第1または第2の態様の剥離フィルムである。
第4の態様は、第1~3のいずれか1の態様の剥離フィルムと、前記離型層の上に樹脂のキャストにより形成された樹脂膜と、を有する、積層フィルムである。
第5の態様は、前記樹脂膜において、前記樹脂がイソシアネート架橋剤で架橋されている、第4の態様の積層フィルムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、剥離フィルムの軽剥離性と、被着体に対する低汚染性とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の剥離フィルムを示す断面図である。
【
図2】実施形態の積層フィルムを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0010】
図1に実施形態の剥離フィルム10を示し、
図2に実施形態の積層フィルム20を示す。これらの図面は概略図であり、各部の寸法、比率等を適宜変更している場合がある。
【0011】
図1に示すように、実施形態の剥離フィルム10は、基材11の片面11aに離型層12を有する剥離フィルム10であって、離型層12が、アルキルペンダントポリマーとフルエーテル型メラミン樹脂とを含有する組成物を硬化させてなる。
【0012】
基材11としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、フッ素系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン等の樹脂フィルムが挙げられる。
【0013】
基材11が樹脂フィルムである場合は、無延伸フィルムでもよく、一軸または二軸に延伸された延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムの延伸倍率または延伸方向を適宜設定してもよい。基材11の厚さは特に限定されないが、10~100μmが好ましく、38~70μmがより好ましい。
【0014】
アルキルペンダントポリマーは、ノンシリコーン系離型剤の1種である。離型剤として、アルキルペンダントポリマーを用いることにより、シリコーン系離型剤の残留による被着体の汚染等を回避することができる。アルキルペンダントポリマーは、剥離フィルム10の用途に応じた耐熱性を有することが好ましい。例えば、アルキルペンダントポリマーの融点が60℃以上であることが好ましい。
【0015】
アルキルペンダントポリマーは、主鎖に対して、アルキル基を有する側鎖を有する。アルキルペンダントポリマーの主鎖としては、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合物、ポリエチレンイミン、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。ポリマーの主鎖と側鎖のアルキル基との間には、必要に応じて、エステル基(-COO-)、アミド基(-CONH-)、エーテル基(-O-)、ウレタン基(-NHCOO-)等の連結基が導入されてもよい。
【0016】
アルキルペンダントポリマーは、水酸基(-OH)、アミノ基(-NH2)、イミノ基(-NH-)等の官能基を有する主鎖と、アルキル基を有する化合物を反応させることで得ることもできる。例えば、イソシアネート基、エポキシ基等の反応性官能基がアルキル基に結合された化合物を、主鎖の官能基と反応させてもよい。この場合は、主鎖とアルキル基との間の連結基が、主鎖の官能基と側鎖の反応性官能基との反応により形成される。例えば、ポリビニルアルコールの水酸基にアルキルイソシアネートを付加させてもよい。
【0017】
アルキルペンダントポリマーは、ビニル基等の主鎖を形成する官能基とアルキル基とを有するモノマーを用いてポリマーを合成することにより得ることもできる。この場合は、主鎖とアルキル基との間の連結基が、モノマーの段階から導入されていてもよい。例えば、アルキル基を有するアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アルキルビニルエーテル、アルキルアリルエーテル等のアルキル基含有モノマーを、他のビニル系モノマーと共重合させてもよい。
【0018】
アルキルペンダントポリマーにおいて、側鎖のアルキル基は、直鎖状でも分枝状でもよい。アルキル基の炭素数としては、例えば、8~30が挙げられ、10~24、12~18程度が挙げられる。油脂等の脂肪酸に由来するアルキル基を側鎖に用いる場合は、アルキルペンダントポリマーが、アルキル基の炭素数が異なる組成の混合物であってもよい。
【0019】
アルキルペンダントポリマーは、
図2に示すように、離型層12の上に成膜されるキャスト樹脂等の樹脂膜21に応じた耐溶剤性を有することが好ましい。例えば、酢酸エチル等の極性溶剤であれば、長鎖のアルキル基を有するアルキルペンダントポリマーを用いることにより、耐溶剤性を向上することができる。
【0020】
樹脂膜21の成膜に使用される材料が、イソシアネート系架橋剤等の反応性官能基を有する添加剤を含有する場合は、硬化後の離型層12が、反応性官能基と反応し得る水酸基等の官能基を有しないことが好ましい。これにより、反応性官能基と離型剤との反応による剥離力の増大を抑制することができる。
【0021】
アルキルペンダントポリマーの商品名としては、アシオ産業株式会社のアシオレジン(登録商標)、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社のピーロイル(登録商標)、中京油脂株式会社のレゼム、花王株式会社のエキセパール(登録商標)、昭和電工マテリアルズ株式会社のテスファイン(登録商標)等が挙げられる。
【0022】
実施形態における離型層12は、アルキルペンダントポリマーに加えて、フルエーテル型メラミン樹脂を含有する組成物を硬化させてなる。フルエーテル型メラミン樹脂は反応性、硬化性を有するため、アルキルペンダントポリマーが水酸基等を有していた場合、架橋し、耐溶剤性が向上する。また、アルキルペンダントポリマーに水酸基等を有しなくても、フルエーテル型メラミン樹脂の自己架橋により耐溶剤性が向上する。
【0023】
フルエーテル型メラミン樹脂は、反応性、耐熱性を有するバインダーとして、アルキルペンダントポリマーを離型層12に固定することができる。これにより、離型層12の軽剥離性と、被着体に対する低汚染性とを両立することができる。離型層12の厚さは特に限定されないが、例えば、0.01~1.0μmが挙げられる。
【0024】
メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られる合成樹脂であって、メラミンに由来する単位を1つ有する単量体でもよく、メラミンに由来する単位を2以上有するオリゴマーでもよい。フルエーテル型メラミン樹脂は、メラミン樹脂に含まれるジメチロールアミノ基〔-N(CH2OH)2〕またはメチロールイミノ基〔>N(CH2OH)〕の水酸基が、全てエーテル化されて、フルエーテル型ジメチロールアミノ基〔-N(CH2OR)2〕またはフルエーテル型メチロールイミノ基〔>N(CH2OR)〕となった化合物である。ここで、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ベンジル基等の炭化水素基である。同一分子中の複数のRは、同一の基でもよく、異なる基でもよい。
【0025】
フルエーテル型メラミン樹脂の例としては、メチロールメラミンの単量体をフルエーテル型とした、2,4,6-トリス[ビス(アルコキシメチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。ここで、前記Rがメチル基の場合は、2,4,6-トリス[ビス(メトキシメチル)アミノ]-1,3,5-トリアジンである。
【0026】
フルエーテル型メラミン樹脂は、メチロール基(-CH2OH)の水酸基が全てエーテル化されているため、メチロール基を有するメチロール型メラミン樹脂に比べて、安定性と硬化性に優れている。また、樹脂膜21の成膜に使用される材料がイソシアネート系架橋剤等の反応性官能基を有する場合でも、フルエーテル型メラミン樹脂であれば、反応性官能基とメラミン樹脂との反応による剥離力の増大を抑制することができる。
【0027】
離型層12が、ノンシリコーン系離型剤のアルキルペンダントポリマーと、フルエーテル型メラミン樹脂とを含有する組成物を硬化させてなることにより、剥離フィルム10の軽剥離性と、被着体に対する低汚染性とを両立することができる。離型層12が、前記アルキルペンダントポリマーを80~40質量部、前記フルエーテル型メラミン樹脂を20~60質量部の割合で含有する組成物を硬化させてなることが好ましい。ここで、質量部の値は、前記アルキルペンダントポリマーと前記フルエーテル型メラミン樹脂との合計を100質量部とする。
【0028】
離型層12が、実質的にアルキルペンダントポリマーとフルエーテル型メラミン樹脂とからなる組成物(例えば、他の樹脂成分を含有しない組成物)を硬化させて形成されてもよい。必要に応じて、離型層12に添加剤を配合してもよい。添加剤としては、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、増粘剤、潤滑剤、発泡剤、消泡剤、無機粒子、有機粒子等が挙げられる。また、離型層12がこれらの添加剤を含有しないで形成されてもよい。潤滑剤としては、特に限定されないが、脂肪酸エステルが挙げられる。
【0029】
離型層12の添加剤として、パラトルエンスルホン酸等のスルホン酸を用いてもよい。スルホン酸は、メラミン樹脂の硬化反応触媒であってもよい。メラミン樹脂を硬化させる場合は、必要に応じて、基材11上に塗布した塗膜を加熱条件下で処理してもよい。
【0030】
基材11上に離型層12を形成する方法は、特に限定されないが、アルキルペンダントポリマーとフルエーテル型メラミン樹脂とを含有する組成物を基材11上に塗布し、乾燥硬化させる方法が挙げられる。
【0031】
硬化の際、メラミン樹脂が自己架橋で硬化してもよく、メラミン樹脂が他の物質と架橋反応を生じてもよく、メラミン樹脂と他の物質との架橋反応が抑制されてもよい。アルキルペンダントポリマーは、メラミン樹脂と架橋可能な官能基を有してもよく、メラミン樹脂と架橋可能な官能基を有しなくてもよい。
【0032】
塗布方法は特に限定されないが、グラビアコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティング、ダイコーティング、ブレードコーティング等が挙げられる。薄い離型層12を形成するには、組成物を塗布する前に塗工用の溶剤に溶解し、粘度を調整することが好ましい。
【0033】
塗工用の溶剤としては、特に限定されないが、トルエンやキシレン等の炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤、これらのうち2種以上の混合溶剤などが挙げられる。塗工用の溶剤にアルコール系溶剤を添加することにより、フルエーテル型メラミン樹脂の脱アルコール反応を抑制することができる。塗工用の溶剤は、十分に脱水された、無水溶剤であることが好ましい。
【0034】
離型層12は、樹脂のキャスト用途に好適に使用することができる。離型層12の上にキャストされる樹脂としては、特に限定されないが、溶剤に可溶な樹脂でもよく、無溶剤であっても流動化された液状樹脂でもよく、塗布後にラジカル重合等により硬化させることが可能な液状モノマーを含む樹脂組成物でもよい。樹脂の具体例としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、溶剤可溶性ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0035】
キャストされる樹脂の溶剤としては、特に限定されないが、トルエンやキシレン等の炭化水素系溶剤、エタノールやイソプロパノール等のアルコール系溶剤、ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、アセトンやメチルエチルケトン(MEK)等のケトン系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤、これらのうち2種以上の混合溶剤などが挙げられる。
【0036】
塗料を基材11に塗布した後に乾燥することで、溶剤は樹脂膜21から除去される。塗料を低粘度に調整して樹脂をキャストすると、離型層12の上で薄いフィルム状の樹脂膜21を容易に形成することができる。キャストにより形成される樹脂膜21の厚さは特に限定されないが、1~50μmが挙げられる。
【0037】
塗料の塗布後に樹脂を架橋することにより、樹脂膜21の耐溶剤性を高めてもよい。樹脂膜21を架橋するには、塗料に架橋剤を配合することが好ましい。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。キャストされる樹脂の主剤は、架橋剤と反応することが可能な官能基として、水酸基、カルボキシ基等を有することが好ましい。
【0038】
図2に示すように、実施形態の積層フィルム20は、剥離フィルム10の離型層12の上に、樹脂のキャストにより形成された樹脂膜21を有する。離型層12と樹脂膜21との間は軽い力で剥離することができ、かつ、被着体である樹脂膜21に対して、離型層12からの汚染が抑制されている。このため、剥離フィルム10から剥離した樹脂膜21を、各種の用途に用いることができる。
【0039】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【実施例0040】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0041】
(塗布液の調製)
表1に示す組成の樹脂をトルエン・イソプロパノール9対1質量比の混合溶剤に溶解させ、固形分2.5質量%となるように樹脂液を調製したのち、予めメタノールで固形分50質量%に溶解しておいたパラトルエンスルホン酸を樹脂液固形分100質量部に対して3質量部となるように添加して塗布液とした。
【0042】
(剥離フィルムの作製)
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる基材の片面上に、前記塗布液をメイヤーバーコーティング法によりバー番手4を使用して塗布後、150℃の熱風循環式乾燥器にて1分間加熱し離型層を乾燥硬化させて、剥離フィルムとした。
【0043】
表1において、記号を用いて示した、離型剤(アルキルペンダントポリマー)及びメラミン樹脂は、次のとおりである。
【0044】
A1:アルキルペンダントポリマー(融点:85℃、アシオ産業株式会社、商品名:RA-45A)
A2:アルキルペンダントポリマー(融点:65℃、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社、商品名:ピーロイル1070)
A3:アルキルペンダントポリマー(融点:55℃、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社、商品名:ピーロイル1050)
【0045】
B1:フルエーテル型メチル化メラミン樹脂(日本カーバイド工業株式会社、商品名:MW-30)
B2:メチロール型メチル化メラミン樹脂(日本カーバイド工業株式会社、商品名:MS-11)
【0046】
(樹脂膜のキャスト)
剥離フィルムの離型層の上に、表1に示すように、キャスト樹脂として、アクリル樹脂またはウレタン樹脂を塗布し、キャストにより樹脂膜を成膜した。
【0047】
キャスト用のアクリル樹脂としては、メチルメタクリレートを主成分とし、水酸基含有メタクリレートを共重合したポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂に、架橋剤としてポリイソシアネートを配合した塗料を用いた。成膜は溶剤の乾燥及び架橋剤の硬化に適した温度条件にて行い、加熱乾燥させて剥離フィルムの離型層上に樹脂膜を得た。
【0048】
キャスト用のウレタン樹脂としては、東ソー株式会社製ニッポラン(登録商標)を用い、架橋剤としてポリイソシアネートを配合した塗料を用いた。成膜は溶剤の乾燥及び架橋剤の硬化に適した温度条件にて行い、加熱乾燥させて剥離フィルムの離型層上に樹脂膜を得た。
【0049】
(剥離力の測定)
23℃×50%RHの試験環境下、引張試験機を用いて、幅25mmのサンプルにおける剥離フィルムの離型層と樹脂膜との間を剥離し、剥離力(gf/25mm)とした。剥離速度は、300mm/分とした。剥離角度は、180°とした。1000gf=1kgf=9.80665Nである。
【0050】
軽剥離性の評価は、剥離力が15gf/25mm未満の場合に合格(○)とし、剥離力が15gf/25mm以上の場合に不合格(×)とした。剥離力が大きすぎると、軽剥離性が得られなくなる。
【0051】
トンネリングの評価は、剥離力が3gf/25mm以上の場合に優良(○)とし、剥離力が2gf/25mm以上3gf/25mm未満の場合に良好(△)とし、剥離力が2gf/25mm未満の場合に不合格(×)とした。剥離力が小さすぎると、離型層から樹脂膜が浮き上がって隙間ができるトンネリングの問題がある。
【0052】
(低汚染性の評価)
剥離フィルムの離型層から剥離した樹脂膜において、樹脂膜が離型層に接していた側の面に水を滴下し、静置した後、接触角計を用いて接触角を測定した。水の接触角が100°未満の場合に合格(○)とし、水の接触角が100°以上の場合に不合格(×)とした。離型層の成分が樹脂膜の表面に付着すると、接触角が大きくなる。
【0053】
(結果)
以上の結果を表1にまとめて示す。
【0054】
【0055】
(実施例)
離型層にアルキルペンダントポリマー及びフルエーテル型メラミン樹脂を用いた番号3~7、番号11及び番号14では、軽剥離性と低汚染性とが両立された。
離型層におけるメラミン樹脂の割合が少ない番号2及び離型層におけるメラミン樹脂の割合が多い番号8では、剥離力が若干下がり、若干のトンネリングがみられるものの、剥離力が2gf/25mm以上を維持しており、実用上の大きな問題はない。
【0056】
(比較例)
離型層にメラミン樹脂を添加しない番号1及び番号10では、軽剥離性が得られなかった。また、番号1では、樹脂膜の汚染が抑制されなかった。
メラミン樹脂がメチロール基を有する番号9及び番号12では、軽剥離性が得られなかった。
アルキルペンダントポリマーの融点が低い番号13では、キャストした樹脂膜を乾燥硬化させる温度に対する耐熱性が低く、かつ、樹脂膜の汚染が抑制されなかった。