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特開2023-36239多視点映像生成装置およびそのプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036239
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】多視点映像生成装置およびそのプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 13/275 20180101AFI20230307BHJP
   H04N 13/282 20180101ALI20230307BHJP
【FI】
H04N13/275
H04N13/282
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143180
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 隼人
(72)【発明者】
【氏名】大村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】岡市 直人
(72)【発明者】
【氏名】加納 正規
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 久幸
(72)【発明者】
【氏名】洗井 淳
【テーマコード(参考)】
5C061
【Fターム(参考)】
5C061AB08
(57)【要約】
【課題】CGの3Dモデルから、従来よりも簡易にかつ高速に多視点映像を生成することが可能な多視点映像生成装置を提供する。
【解決手段】多視点映像生成装置1は、複数の視点映像に対応する拡大始点から三次元映像表示装置の予め定めた視距離だけ離間して仮想的に配置した複数の仮想カメラのカメラ座標系において、3Dモデルを仮想カメラの撮影面と平行な方向に拡大して、対応する仮想カメラに撮影されるように、3Dモデルを変形する3Dモデル変形手段12と、複数の仮想カメラのカメラ座標系ごとに3Dモデル変形手段12で変形された3Dモデルを、それぞれの仮想カメラで視点映像として仮想的に撮影する仮想カメラ撮影手段13と、仮想カメラ撮影手段13で撮影された複数の視点映像を多視点映像として出力する多視点映像出力手段14と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多視点映像の複数の視点映像の映像光をそれぞれ集光し、集光点を拡大始点として映像光を拡大して拡散スクリーンに重畳することで三次元映像を表示する三次元映像表示装置に用いる前記多視点映像を、CGの3Dモデルから生成する多視点映像生成装置であって、
前記複数の視点映像に対応する前記拡大始点から前記三次元映像表示装置の予め定めた視距離だけ離間して仮想的に配置した複数の仮想カメラのそれぞれのカメラ座標系において、前記3Dモデルを前記仮想カメラの撮影面と平行な方向に拡大して、対応する前記仮想カメラに撮影されるように前記3Dモデルを変形する3Dモデル変形手段と、
複数の前記仮想カメラのカメラ座標系ごとに前記3Dモデル変形手段で変形された3Dモデルを、それぞれの仮想カメラで視点映像として仮想的に撮影する仮想カメラ撮影手段と、
前記仮想カメラ撮影手段で撮影された複数の視点映像を前記多視点映像として出力する多視点映像出力手段と、
を備えることを特徴とする多視点映像生成装置。
【請求項2】
前記仮想カメラの撮影中心をカメラ座標系の原点、撮影面をxy座標、前記カメラ座標系の原点から前記拡大始点への方向を正とする奥行き方向の座標をz座標、前記視距離をL、前記3Dモデルを構成する構成点の座標を(x,y,z)としたとき、前記3Dモデル変形手段は、前記3Dモデルを構成する構成点のxy座標を、
【数1】
により変換することを特徴とする請求項1に記載の多視点映像生成装置。
【請求項3】
前記三次元映像表示装置は、個々の視点映像の映像光の主光線が前記拡散スクリーンに対して垂直で、それぞれの視点映像が部分的に重畳して照射するものであって、
前記仮想カメラ撮影手段は、正投影変換により、前記3Dモデル変形手段で変形された3Dモデルを撮影することを特徴とする請求項2に記載の多視点映像生成装置。
【請求項4】
前記三次元映像表示装置は、個々の視点映像の映像光の主光線が前記拡散スクリーンに対して傾き、それぞれの視点映像が同一領域を重畳照射するものであって、
前記仮想カメラの座標系のz軸は、前記拡大始点と前記同一領域の中心を通っており、
前記仮想カメラ撮影手段は、斜投影変換により、前記3Dモデル変形手段で変形された3Dモデルを撮影することを特徴とする請求項2に記載の多視点映像生成装置。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の多視点映像生成装置として機能させるための多視点映像生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CGの3Dモデルから多視点映像を生成する多視点映像生成装置およびそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3Dメガネを用いた二眼式をはじめとして、多様な三次元映像表示方法が提案されている。特に、表示デバイスから多視点映像を拡散スクリーンに背面から重畳照射することで高密度な光線群を再生する三次元映像表示方式は、特殊なメガネが不要で、水平・垂直に視差を有する自然な三次元映像を表示することができる(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、この方式は、多視点映像を構成する個々の視点映像の光を、結像レンズの焦点位置に集光して拡散スクリーンに照射するため、視点映像を透視投影、正射影等の一般的なカメラモデルで規定することができない。そのため、この方式では、CGの3Dモデルから、3DCGシーンとなる視点映像(多視点映像)を生成することは困難である。
【0004】
インテグラル3D方式の要素画像群で3Dシーンの映像を生成する手法には、斜投影の仮想カメラで撮影した画像群の各画素を並べ替えて、要素画像を生成する手法(斜投影法)が存在する(特許文献2,非特許文献1参照)。
また、インテグラル3D方式の要素画像群で3Dシーンの映像を生成する他の手法として、光線追跡により、要素画像の画素を1画素ずつ取得して、要素画像を生成する手法(光線追跡法)が存在する(特許文献3参照)。
これらのインテグラル3D方式の要素画像群で3Dシーンの映像を生成する手法は、多視点映像で3DCGシーンの映像を生成する手法として利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-60711号公報
【特許文献2】特開2012-84105号公報
【特許文献3】特開2009-175866号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Y. Iwadate and M. Katayama:“Generating Integral Image from 3D Object by Using Oblique Projection,”Proc. IDW’11,ITE,Nagoya,3Dp-1,pp.269-272(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記した通り、多視点映像を用いた三次元映像表示方法では、CGの3Dモデルから、3DCGシーンとなる視点映像(多視点映像)を生成することは、一般的なカメラモデルを用いることができないため困難である。
【0008】
また、多視点映像の生成のために、従来の斜投影法を用いた場合、視点映像の画素数と同じ回数だけ仮想カメラで画像群を撮影する必要がある。例えば、視点映像が30万画素の場合、この手法は、仮想カメラで3DCGシーンとして異なる方向から30万回撮影する必要がある。また、この手法は、撮影画像の画素を並び替えて視点映像を生成する必要がある。そのため、この手法は、多視点映像の生成に時間がかかってしまうという問題がある。
【0009】
また、多視点映像の生成のために、従来の光線追跡法を用いた場合、CGの3Dモデル中の各物体と光線との当たり判定処理が必要となり、処理が複雑になる。そのため、この手法は、3Dモデルを構成するポリゴンの枚数が多い場合には、多視点映像の生成に時間がかかってしまうという問題がある。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、CGの3Dモデルから、仮想カメラによる1回の撮影で視点映像を生成し、従来よりも簡易にかつ高速に多視点映像を生成することが可能な多視点映像生成装置およびそのプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明に係る多視点映像生成装置は、多視点映像の複数の視点映像の映像光をそれぞれ集光し、集光点を拡大始点として映像光を拡大して拡散スクリーンに重畳することで三次元映像を表示する三次元映像表示装置に用いる前記多視点映像を、CGの3Dモデルから生成する多視点映像生成装置であって、3Dモデル変形手段と、仮想カメラ撮影手段と、多視点映像出力手段と、を備える構成とした。
【0012】
かかる構成において、多視点映像生成装置は、3Dモデル変形手段によって、複数の視点映像に対応する拡大始点から三次元映像表示装置の予め定めた視距離だけ離間して仮想的に配置した複数の仮想カメラのそれぞれのカメラ座標系において、3Dモデルを仮想カメラの撮影面と平行な方向に拡大して、対応する仮想カメラに撮影されるように3Dモデルを変形する。このように、3Dモデル変形手段は、簡易な線形変換で3Dモデルを変形することができる。これによって、変形された3Dモデルは、一般的なカメラモデルで仮想カメラに投影することが可能になる。
【0013】
そして、多視点映像生成装置は、仮想カメラ撮影手段によって、複数の仮想カメラのカメラ座標系ごとに3Dモデル変形手段で変形された3Dモデルを、それぞれの仮想カメラで視点映像として仮想的に撮影する。このように、拡大始点に対応する仮想カメラで撮影された視点映像は、それぞれ視点位置の異なる映像となる。
【0014】
そして、多視点映像生成装置は、多視点映像出力手段によって、仮想カメラ撮影手段で撮影された複数の視点映像を多視点映像として出力する。
これによって、多視点映像生成装置は、簡易に3Dモデルを変形することができるとともに、視点映像を1回の投影処理で生成でき、高速に視点映像を生成することができる。
【0015】
なお、多視点映像生成装置は、コンピュータを、前記した各手段として機能させるための多視点映像生成プログラムで動作させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、CGの3Dモデルを仮想カメラとの位置関係に応じて変形することで、一般的な射影変換のカメラモデルに基づいて個々の視点映像を生成することができる。これによって、本発明は、仮想カメラによる1回の撮影で視点映像を生成することができ、従来よりも簡易に、かつ、高速に多視点映像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る多視点映像装置の構成を示すブロック構成図である。
図2】多視点映像で三次元映像を表示する三次元映像表示装置の構成を示す構成図である。
図3】多視点映像の例を示し、多視点映像の構成を説明するための説明図である。
図4】視点映像の映像光と、3Dモデルと、仮想カメラとの位置関係を説明するための説明図である。
図5】本発明の実施形態に係る多視点映像装置の動作を示すフローチャートである。
図6】多視点映像で三次元映像を表示する他の三次元映像表示装置の構成を示す構成図である。
図7】視域制御レンズを用いた場合の視点映像の映像光と、3Dモデルと、仮想カメラとの位置関係を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<多視点映像生成装置の構成>
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る多視点映像生成装置1の構成について説明する。
多視点映像生成装置1は、CG(コンピュータグラフィックス)の3Dモデルから、三次元映像表示装置で表示する3DCGシーンとなる多視点映像を生成するものである。
この多視点映像生成装置1は、多視点映像の複数の視点映像の映像光をそれぞれ集光し、集光点を拡大始点として映像光を拡大して拡散スクリーンに重畳することで三次元映像を表示する三次元映像表示装置に用いる多視点映像を生成する。
【0019】
3Dモデルは、三次元のCG空間(3DCG空間)において、人物、物体等のオブジェクトを表現するデータである。この3Dモデルは、例えば、ポリゴンデータ、ポイントクラウド(点群データ)等で表される。
3DCGシーンは、3DCG空間の3Dモデルをある視点で撮影したシーンである。
多視点映像は、水平方向および垂直方向で視点位置の異なる複数の映像(視点映像)で構成された映像である。
【0020】
図1に示すように、多視点映像生成装置1は、記憶手段10と、仮想カメラ設定手段11と、3Dモデル変形手段12と、仮想カメラ撮影手段13と、多視点映像出力手段14と、を備える。
【0021】
記憶手段10は、生成した多視点映像を用いて三次元映像を表示する三次元映像表示装置の構成データ(表示装置構成データ)を予め記憶するものである。この記憶手段10は、半導体メモリ等の一般的な記憶媒体で構成することができる。
表示装置構成データは、三次元映像表示装置を構成するパラメータである。
【0022】
ここで、図2を参照して、多視点映像を用いて三次元映像を表示する一般的な三次元映像表示装置2(例えば、特許文献1参照)を例にして、表示装置構成データについて説明する。
図2に示すように、三次元映像表示装置2は、多視点映像表示部20によって、視点位置の異なる複数の視点映像iで構成された多視点映像Iを表示する。
【0023】
多視点映像表示部20が表示する多視点映像Iの映像光は、個々の視点映像iに対向する結像レンズLiで構成された結像レンズアレイ21によって、結像レンズLiの焦点距離f1だけ離間して配置されたアパーチャアレイ22のそれぞれのアパーチャ(開口)Aiに集光し、拡大して、拡散スクリーン23に照射される。このアパーチャAiの中心が視点映像の映像光が拡大する始点となる。
このとき、個々の視点映像iの映像光の主光線は、拡散スクリーン23に対して垂直である。また、それぞれの視点映像iは、部分的に重畳して拡散スクリーン23に照射される。なお、この視点映像iの部分的な重畳は、拡散スクリーン23の周辺部を除くすべて領域に2枚以上の視点映像iが重畳して照射される状態とする。
【0024】
そして、三次元映像表示装置2は、拡散スクリーン23によって、入射する離散的な光線群を僅かに拡散し、連続的な輝度分布の光線群とする。
これによって、観察者Oは、光学像として、三次元映像Tを視認することができる。
【0025】
なお、多視点映像Iは、水平方向および垂直方向に視点映像iが二次元に配列されている。また、結像レンズLiおよびアパーチャAiも、視点映像iに対向して二次元に配列されている。
【0026】
例えば、多視点映像Iは、図3に示すように、水平方向および垂直方向の異なる視点位置の映像(視点映像i)が1枚の画像中に並んだ映像である。図3は、水平5視点、垂直5視点の視点映像iで構成された多視点映像Iの例を示している。なお、実際には、アパーチャアレイ22前後で個々の視点映像iが水平方向および垂直方向に反転するが、ここでは、説明を簡単にするため、非反転映像で多視点映像Iを表している。
【0027】
このように、多視点映像を用いて三次元映像を表示する一般的な三次元映像表示装置2において、表示装置構成データは、視点映像iの数(水平個数、垂直個数)、視点映像iの表示ピッチ(水平ピッチ、垂直ピッチ)p、視域角φ、アパーチャアレイ22(拡大始点面)から観察者Oまでの距離(推奨視距離)L等である。
図1に戻って、多視点映像生成装置1の構成について説明を続ける。
【0028】
仮想カメラ設定手段11は、記憶手段10に記憶されている表示装置構成データを参照して、3Dモデルを仮想的に撮影する仮想カメラを順次設定するものである。
仮想カメラ設定手段11は、表示装置構成データの視点映像iの数(水平個数、垂直個数)に基づいて、仮想カメラの位置を(0,0)~(Nx-1,Ny-1)で順次設定する。ここで、Nxは視点映像の水平個数、Nyは視点映像の垂直個数とする。
例えば、仮想カメラ設定手段11は、初期値として、仮想カメラの位置を(0,0)とし、順次、(Nx-1,Ny-1)まで、仮想カメラの位置を設定する。
仮想カメラ設定手段11は、仮想カメラの初期位置を、3Dモデル変形手段12および仮想カメラ撮影手段13に出力する。
【0029】
また、仮想カメラ設定手段11は、仮想カメラ撮影手段13から、仮想カメラによる撮影が終了した旨を通知されることで、仮想カメラの位置を他の視点映像に対応する仮想カメラの位置に設定し直し、設定後の仮想カメラの位置を3Dモデル変形手段12および仮想カメラ撮影手段13に出力する。
【0030】
3Dモデル変形手段12は、仮想カメラ設定手段11で設定された仮想カメラの位置に対応するカメラ座標系において、3Dモデルを変形するものである。
この3Dモデル変形手段12は、複数の視点映像に対応する映像光の拡大始点から三次元映像表示装置2(図2)の予め定めた視距離(推奨視距離)Lだけ離間して仮想的に配置した複数の仮想カメラのそれぞれのカメラ座標系において、3Dモデルを仮想カメラの撮影面と平行な方向に拡大して、対応する仮想カメラに撮影されるように3Dモデルを変形する。
なお、拡大始点の位置は、視点映像の映像光が集光する点であるため、個々の拡大始点の位置は、同一平面上で視点映像の表示ピッチp(図2)だけ離間している。
【0031】
ここで、図4を参照して、3Dモデル変形手段12における3Dモデルの変形について具体的に説明する。
図4は、図2の三次元映像表示装置2の視点映像の映像光と、3Dモデルと、仮想カメラとの位置関係をモデル化した図である。
図4の拡大始点Piは、図2のアパーチャAiの中心に相当する。また、図4の拡大始点面Pは、図2のアパーチャアレイ22に相当する。なお、図4では、視点映像iから拡大始点Piまでの光線については図示を省略している。
x軸、y軸およびz軸は、各軸が直交する仮想カメラCのカメラ座標系である。原点座標(0,0,0)に仮想カメラCの撮影中心Ciが存在し、z軸の正の方向を仮想カメラCの正面方向とする。
【0032】
図4に示した位置関係において、z軸上に拡大始点Piが存在し、拡大始点Piから視点映像光Ltiが視域角φで拡大し、xy平面上の仮想カメラCの撮影中心Ciを中心に、x方向の幅dx、y方向の幅dy(不図示)に投影される。
3Dモデル変形手段12は、3DモデルMを、図4に示した位置関係に合わせるため、3Dモデルを以下の式(1),式(2)により変形する。
【0033】
【数1】
【0034】
ただし、x,y,zは、3DモデルMを構成する構成点の座標であって、カメラ座標系でのx,y,z座標である。例えば、3DモデルMがポリゴンデータであれば、x,y,zは、ポリゴン群のi番目の頂点のカメラ座標系でのx,y,z座標である。また、3DモデルMがポイントクラウドであれば、x,y,zは、各点のカメラ座標系でのx,y,z座標である。ただし、zは、0<z<Lである。
また、Lは、拡大始点Piから、仮想カメラCの撮影中心Ciまでの距離であって、図2に示した視距離(推奨視距離)である。
′,y′は、変形後のx,y座標である。
【0035】
なお、3Dモデル変形手段12は、新たな仮想カメラの位置が設定された場合、新たな仮想カメラに対応する拡大始点Piがz軸上に存在するように、カメラ座標系をx方向またはy方向に平行移動し、新たな仮想カメラの撮影中心を、カメラ座標系の原点座標(0,0,0)とする。
これによって、3Dモデル変形手段12は、仮想カメラの位置に対応して3DモデルMを変形することができる。
図1に戻って、多視点映像生成装置1の構成について説明を続ける。
【0036】
3Dモデル変形手段12は、変形した3Dモデルを仮想カメラ撮影手段13に出力する。この3Dモデル変形手段12は、仮想カメラ設定手段11で新たな仮想化カメラの位置を設定されるたびに、仮想カメラの位置に対応して3DモデルMを変形する。
【0037】
仮想カメラ撮影手段13は、仮想カメラ設定手段11で設定された仮想カメラの位置から、3Dモデル変形手段12で変形された3Dモデルを仮想的に撮影するものである。
この仮想カメラ撮影手段13は、仮想カメラの撮影面において、記憶手段10に記憶されている表示装置構成データの視域角で特定される範囲を撮影することで視点映像を生成する。
例えば、図4に示すように、視域角をφ、視距離(推奨視距離)をLとしたとき、仮想カメラ撮影手段13は、仮想カメラCの撮影中心Ciを中心として、x方向において、撮影範囲をd(=2L・tan(φ/2))とする。y方向においても同様である。
【0038】
仮想カメラ撮影手段13における3Dモデルを仮想的に撮影するとは、変形後の3Dモデルを正射影変換することにより、仮想カメラの撮影面に射影することである。
例えば、3DモデルMがポリゴンデータの場合、仮想カメラ撮影手段13は、OpenGL(登録商標)、DirectX(登録商標)等の一般的な3DCGグラフィックインタフェースを用いて、変形後の3DモデルMのポリゴンを正射影変換により1枚ずつレンダリングすればよい。あるいは、仮想カメラ撮影手段13は、Unity(登録商標)等のゲームエンジンを使用する場合、頂点シェーダ機能を用いて変形した3DモデルMを正射影変換によりレンダリングすればよい。
【0039】
また、3DモデルMがポイントクラウド(点群データ)の場合、仮想カメラ撮影手段13は、変形後の3DモデルMの各点を正射影変換により仮想カメラの撮影面に射影し、各点を任意のサイズで描画すればよい。
【0040】
仮想カメラ撮影手段13は、仮想カメラで仮想的に撮影して生成した視点映像を、多視点映像出力手段14に出力する。仮想カメラ撮影手段13は、1枚の視点映像を生成後、仮想カメラによる撮影が終了した旨を仮想カメラ設定手段11に通知する。
【0041】
多視点映像出力手段14は、仮想カメラ撮影手段13で仮想的に撮影して生成された複数の視点映像を多視点映像として出力するものである。
多視点映像出力手段14は、記憶手段10に記憶されている視点映像の数(水平個数、垂直個数)に応じて、視点映像を水平方向および垂直方向に並べて1枚の多視点映像を生成する。もちろん、多視点映像出力手段14は、必ずしも1枚の映像として多視点映像を生成する必要はなく、予め定めた順番で視点映像を順に出力して多視点映像としてもよい。
【0042】
以上説明したように、多視点映像生成装置1は、3Dモデルを仮想カメラの位置に応じて、正射影変換が可能な形状に変換することができる。これによって、多視点映像生成装置1は、仮想カメラの位置に応じて、1回の撮影で視点映像を生成することができ、従来よりも簡易に、かつ、高速に多視点映像を生成することができる。
なお、多視点映像生成装置1は、コンピュータを、前記した各手段として機能させるためのプログラム(多視点映像生成プログラム)で動作させることができる。
【0043】
<多視点映像生成装置の動作>
次に、図5を参照(構成については適宜図1参照)して、本発明の実施形態に係る多視点映像生成装置1の動作について説明する。
なお、記憶手段10には、生成する多視点映像を表示する三次元映像表示装置の構成データ(表示装置構成データ)が予め記憶されているものとする。
【0044】
ステップS1において、仮想カメラ設定手段11は、3Dモデルを仮想的に撮影する仮想カメラの初期位置を設定する。
ステップS2において、3Dモデル変形手段12は、設定された仮想カメラの位置に対応するカメラ座標系において、3Dモデルを変形する。ここでは、3Dモデル変形手段12は、仮想カメラに対して推奨視距離だけ離れた拡大始点から、3Dモデルが仮想カメラの投影面に拡大して投影されるように、前記式(1),式(2)により、3Dモデルを変形する。
【0045】
ステップS3において、仮想カメラ撮影手段13は、ステップS1または後記するステップS5で設定された仮想カメラの位置から、ステップS2で変形された3Dモデルを仮想的に撮影する。これによって、1つの仮想カメラの位置に対して1枚の視点映像が生成される。なお、この仮想カメラによる撮影は、ステップS2で3Dモデルが変形されているため、正射影投影による1回の撮影で視点映像を生成することができる。
【0046】
ステップS4において、仮想カメラ設定手段11は、表示装置構成データの視点映像の数だけ、すべての仮想カメラの位置で撮影を完了したか否かを判定する。
ここで、まだ、すべての仮想カメラの位置で撮影を完了していない場合(ステップS4でNo)、ステップS5において、仮想カメラ設定手段11は、仮想カメラの位置を他の視点映像に対応する仮想カメラの位置に設定する。
【0047】
一方、すべての仮想カメラの位置で撮影を完了した場合(ステップS4でYes)、ステップS6において、多視点映像出力手段14は、ステップS3で順次生成された複数の視点映像を多視点映像として出力する。
以上の動作によって、多視点映像生成装置1は、CGの3Dモデルから、仮想カメラの位置に応じて1回の撮影で視点映像を生成して、多視点映像を生成することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態に係る多視点映像生成装置1の構成および動作について説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
ここでは、多視点映像を用いて三次元映像を表示する装置を、図2に示したように、多視点映像Iにおける個々の視点映像iの映像光の主光線が拡散スクリーン23に対して垂直である装置(三次元映像表示装置2)とした。
【0049】
しかし、多視点映像を用いて三次元映像を表示する装置は、図6に示す示すように、多視点映像Iにおける個々の視点映像iの映像光の主光線が拡散スクリーン23に対して傾き、視点映像iの映像光が拡散スクリーン23の同一領域に照射される装置(三次元映像表示装置2B)であってもよい。
なお、三次元映像表示装置2Bは、三次元映像表示装置2に対して、視域制御レンズ24をアパーチャアレイ22の前面に備えている点が異なっている。
【0050】
視域制御レンズ24は、凸レンズ等の光学レンズで構成され、焦点距離f2だけ離間して配置された拡散スクリーン23の同一の領域に、個々の視点映像iの映像光を照射する。視域制御レンズ24は、アパーチャアレイ22に密接して配置すればよい。
その場合、3Dモデル変形手段12および仮想カメラ撮影手段13が、以下の処理を行えばよい。すなわち、3Dモデル変形手段12は、視点映像の映像光の傾きを持った主光線と、仮想カメラのz軸とを同一とし、主光線(z軸)の向きに沿って3Dモデルを変形する。そして、仮想カメラ撮影手段13は、主光線(z軸)の向きに沿って仮想カメラで斜投影変換を行うことで3Dモデルを撮影すればよい。
【0051】
図7は、図6の三次元映像表示装置2Bの視点映像の映像光と、3Dモデルと、仮想カメラとの位置関係をモデル化した図である。
図7の拡大始点Piは、図6のアパーチャAiの中心に相当する。また、図7の拡大始点面Pは、図6のアパーチャアレイ22に相当する。なお、図7では、視点映像iから拡大始点Piまでの光線については図示を省略している。
【0052】
図7に示した位置関係において、拡大始点Piから拡散スクリーン23における視点映像光Ltiの重畳照射領域の中心Pcを通る延長線上で、かつ、拡大始点面Pから視距離(推奨視距離)Lだけ離間した位置に仮想カメラCを配置する。
【0053】
このとき、個々の視点映像iの映像光の主光線は、拡散スクリーン23に対して傾いている。
x軸、y軸およびz軸は仮想カメラCのカメラ座標系であり、x軸およびz軸は斜交座標系である。すなわち、xy平面は、拡大始点面Pに平行であるが、z軸は、仮想カメラCの撮影中心Ciと対応する視点映像の拡大始点Piとを結ぶ、拡散スクリーン23に対して傾いた直線であって、z軸の正の方向を仮想カメラCの正面方向とする。仮想カメラCの撮影中心Ciが原点座標(0,0,0)である。
図7に示した位置関係において、z軸上の拡大始点Piから視点映像光Ltiが予め設定された角度で拡大し、xy平面上の仮想カメラCの撮影中心Ciを中心に、x方向の幅dx、y方向の幅dy(不図示)に投影される。
【0054】
また、3Dモデル変形手段12は、3DモデルMを図7に示した位置関係に合わせるため、3Dモデルを前記式(1),式(2)により変形する。
また、仮想カメラ撮影手段13は、仮想カメラCの位置から、変形した3DモデルMを、z軸に沿って斜めに撮影することで視点映像を生成する。すなわち、仮想カメラ撮影手段13は、3Dモデルを仮想カメラCから見た3DCGシーンをz軸に沿って斜射影変換により、仮想カメラCの撮影面に射影すればよい。
【0055】
これによって、多視点映像生成装置1は、視点映像の光線の主光線が斜め方向に傾いている場合でも、仮想カメラの位置に応じて、1回の撮影で視点映像を生成することができ、従来よりも簡易に、かつ、高速に多視点映像を生成することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 多視点映像生成装置
10 記憶手段
11 仮想カメラ設定手段
12 3Dモデル変形手段
13 仮想カメラ撮影手段
14 多視点映像出力手段
C 仮想カメラ
I 多視点映像
i 視点映像
T 三次元映像
P 拡大始点面
Pi 拡大始点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7