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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036873
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】定電流回路
(51)【国際特許分類】
   G05F 3/24 20060101AFI20230307BHJP
   H03F 3/343 20060101ALI20230307BHJP
   H03F 1/30 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
G05F3/24 A
H03F3/343 210
H03F1/30 220
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209487
(22)【出願日】2022-12-27
(62)【分割の表示】P 2021104125の分割
【原出願日】2016-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079119
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 元彦
(72)【発明者】
【氏名】日高 雄斗
(57)【要約】
【課題】低い電源電圧で動作可能な定電流回路、及び当該定電流回路が形成されている半導体装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、定電流を生成する定電流回路であって、第1の出力端子と、ソース端及びバックゲートに接地電位が印加されており、ドレイン端に前記第1の出力端子が接続されているデプレッション型のnチャネルMOSの第1のトランジスタと、ソース端に電源電位を受け、ドレイン端及びゲート端が前記第1のトランジスタのドレイン端に接続されている第2のトランジスタと、ソース端に電源電位を受け、ゲート端が前記第1のトランジスタのドレイン端に接続されている第3のトランジスタと、ソース端に接地電位が印加されており、ドレイン端及びゲート端が前記第1のトランジスタの前記ゲート端と前記第3のトランジスタのドレイン端とに接続されている第4のトランジスタと、を含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定電流を生成する定電流回路であって、
第1の出力端子と、
ソース端及びバックゲートに接地電位が印加されており、ドレイン端に前記第1の出力端子が接続されているデプレッション型のnチャネルMOSの第1のトランジスタと、
ソース端に電源電位を受け、ドレイン端及びゲート端が前記第1のトランジスタのドレイン端に接続されている第2のトランジスタと、
ソース端に電源電位を受け、ゲート端が前記第1のトランジスタのドレイン端に接続されている第3のトランジスタと、
ソース端に接地電位が印加されており、ドレイン端及びゲート端が前記第1のトランジスタの前記ゲート端と前記第3のトランジスタのドレイン端とに接続されている第4のトランジスタと、を含むことを特徴とする定電流回路。
【請求項2】
ソース端に電源電位を受け、ゲート端が前記第2のトランジスタの前記ゲート端に接続されている第5のトランジスタと、
第2の出力端子と、
ソース端に接地電位が印加されており、ゲート端及びドレイン端が前記第5のトランジスタのドレイン端と前記第2の出力端子とに接続されている第6のトランジスタと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の定電流回路。
【請求項3】
前記第4のトランジスタのトランスコンダクタンス係数が前記第1のトランジスタのトランスコンダクタンス係数よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の定電流回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の一定電流を生成する定電流回路及び当該定電流回路が形成されている半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定電流を生成する回路として、デプレッション型のMOS(metal-oxide semiconductor)トランジスタを用いた電流源回路が提案されている(例えば特許文献1参照)。かかる電流源回路は、2つのエンハンスメント型のMOSトランジスタからなるカレントミラー回路と、このカレントミラー回路の入力側のMOSトランジスタのドレインに接続されたデプレッション型のMOSトランジスタと、当該入力側のMOSトランジスタのソースにその一端が接続された抵抗と、を含んでいる。ここで、当該抵抗の他端には直流の電源電位が印加されており、デプレッション型のMOSトランジスタのソース及びゲートは接地されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-150675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって、上記した電流源回路では、直流の電源電位を供給する電源ラインと、接地ラインとの間には、抵抗、カレントミラー回路の入力側のMOSトランジスタ、及びデプレッション型のMOSトランジスタが縦続に接続された信号経路が存在する。ここで、かかる信号経路中の各MOSトランジスタを正常に動作させる為には、電源電圧として、少なくとも、抵抗の電圧降下分に、カレントミラー回路の入力側のMOSトランジスタのゲート・ソース間電圧と、デプレッション型のMOSトランジスタのドレイン・ソース間電圧とを加えた電圧が必要となる。
【0005】
よって、当該電流源回路を正常に動作させる為には、電源電圧をむやみに低くすることができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、低い電源電圧で動作可能な定電流回路、及び当該定電流回路が形成されている半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る定電流回路は、定電流を生成する定電流回路であって、第1の出力端子と、ドレイン端に電源電位を受け、ゲート端に接地電位が印加されており、ソース端に前記第1の出力端子が接続されているデプレッション型のnチャネルMOSトランジスタであり、前記定電流の生成時に定電流源として動作する第1のトランジスタと、ドレイン端及びソース端のうちの一端が前記第1のトランジスタの前記ソース端に接続されており、他端に接地電位が印加されている、ダイオード接続されたエンハンスメント型の第2のトランジスタと、を含む。
【0008】
また、本発明に係る定電流回路は、定電流を生成する定電流回路であって、第1の出力端子と、ドレイン端に電源電位を受け、ゲート端に接地電位が印加されており、ソース端に前記第1の出力端子が接続されているデプレッション型のnチャネルMOSトランジスタであり、前記定電流の生成時に定電流源として動作する第1のトランジスタと、ドレイン端及びソース端のうちの一端が前記第1のトランジスタの前記ソース端に接続されており、他端に接地電位が印加されている、ダイオード接続された第2のトランジスタと、第2の出力端子と、ソース端及びドレイン端のうちの一端に電源電位を受け、他端に前記第2の出力端子が接続されている、ダイオード接続された第3のトランジスタと、ソース端及びドレイン端のうちの一端が前記第3のトランジスタの前記他端に接続されており、他端に接地電位が印加されており、且つゲート端が前記第2のトランジスタのゲート端に接続されている第4のトランジスタと、を含む。
【0009】
また、本発明に係る定電流回路は、定電流を生成する定電流回路であって、第1の出力端子と、ソース端及びバックゲートに接地電位が印加されており、ドレイン端に前記第1の出力端子が接続されているデプレッション型のnチャネルMOSの第1のトランジスタと、ソース端に電源電位を受け、ドレイン端及びゲート端が前記第1のトランジスタのドレイン端に接続されている第2のトランジスタと、ソース端に電源電位を受け、ゲート端が前記第1のトランジスタのドレイン端に接続されている第3のトランジスタと、ソース端に接地電位が印加されており、ドレイン端及びゲート端が前記第1のトランジスタの前記ゲート端と前記第3のトランジスタのドレイン端とに接続されている第4のトランジスタと、を含む。
【0010】
また、本発明に係る半導体装置は、定電流を生成する定電流回路が形成されている半導体装置であって、前記定電流回路は、第1の出力端子と、ドレイン端に電源電位を受け、ゲート端に接地電位が印加されており、ソース端に前記第1の出力端子が接続されているデプレッション型のnチャネルMOSトランジスタであり、前記定電流の生成時に定電流源として動作する第1のトランジスタと、ドレイン端及びソース端のうちの一端が前記第1のトランジスタの前記ソース端に接続されており、他端に接地電位が印加されている、ダイオード接続されたエンハンスメント型の第2のトランジスタと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る定電流回路では、デプレッション型のnチャネルMOSの第1のトランジスタと第2のトランジスタとが縦続接続されてなる電流経路を介して、電源電位が供給されている電源ラインから、接地電位に向けて定電流を流すようにしている。従って、第1のトランジスタのドレイン・ソース間電圧に、ゲート・ソース間電圧或いは第2のトランジスタのゲート・ソース間電圧を加算した電圧よりも高い電源電圧を当該定電流回路に供給すれば、この定電流回路を正常に動作させることができる。よって、本発明に係る定電流回路によれば、これら2つのトランジスタと共に抵抗素子が縦続して接続されてなる電流経路を有する従来の定電流回路に比べて低い電圧値の電源電圧で正常動作することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る定電流回路100の第1の実施例による構成を示す回路図である。
図2図1に示されるトランジスタMD1及びMN1各々の電圧電流特性を表す図である。
図3】本発明に係る定電流回路100の第2の実施例による構成を示す回路図である。
図4図3に示されるトランジスタMD1及びMD2各々の電圧電流特性を表す図である。
図5図3に示される構成の変形例を示す回路図である。
図6】本発明に係る定電流回路100の第3の実施例による構成を示す回路図である。
図7図6に示されるトランジスタMD1及びMN1各々の電圧電流特性を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例0014】
図1は、本発明に係る定電流回路100の第1の実施例による構成を示す回路図である。定電流回路100は例えば半導体装置としての半導体チップに形成されている。
【0015】
図1に示すように、当該定電流回路100は、デプレッション(depression)型のnチャネルMOS型のトランジスタMD1、エンハンスメント型のpチャネルMOS型のトランジスタMP1、エンハンスメント型のnチャネルMOS型のトランジスタMN1及びMN2を含む。
【0016】
トランジスタMN1のソース端及びバックゲートには接地電位GNDが印加されており、そのゲート端はトランジスタMN2のゲート端に接続されている。更に、トランジスタMN1のゲート端は、ラインL1を介して自身のドレイン端と、トランジスタMD1のソース端に接続されている。トランジスタMD1のゲート端及びバックゲートには接地電位GNDが印加されており、ドレイン端には電源ラインDLを介して電源電位VRが印加されている。トランジスタMP1のソース端には電源ラインDLを介して電源電位VRが印加されており、ドレイン端及びゲート端は、ラインL2を介してトランジスタMN2のドレイン端に接続されている。トランジスタMN2のソース端及びバックゲートには接地電位GNDが印加されている。ラインL1には第1の出力端子B1が形成されており、ラインL2には第2の出力端子B2が形成されている。
【0017】
次に、図1に示す構成を有する定電流回路100の動作について図2を参照しつつ説明する。尚、図2は、トランジスタMD1のドレイン・ソース間電流と、自身のゲート端の電圧との対応関係を実線にて表すと共に、トランジスタMN1のドレイン・ソース間電流と、自身のゲート端の電圧との対応関係を破線にて表す電圧電流特性図である。
【0018】
図1に示す構成では、トランジスタMD1のソース端とトランジスタMN1のゲート端とが、ラインL1を介して出力端子B1に共通に接続されている。よって、出力端子B1の電圧は、図2に示されるように、トランジスタMD1のドレイン・ソース間電流と、トランジスタMN1のドレイン・ソース間電流とが一致する際の電圧VQで安定する。これにより、トランジスタMD1及びMN1は、図2に示される電流IQを流す定電流源となる。従って、定電流回路100の出力端子B1を、他回路に含まれるnチャネルMOS型のトランジスタ(図示せず)のゲート端に接続することにより、定電流回路100で生成された電流IQを、この他回路側にコピーすることが可能となる。
【0019】
更に、図1に示すトランジスタMN2は、自身のゲート端がトランジスタMN1のゲート端と共にラインL1を介して出力端子B1に接続されている。よって、図2に示す電流IQがトランジスタMN2のドレイン・ソース間電流としてコピーされ、その結果、トランジスタMP1のソース・ドレイン間及びラインL2には電流IQに対応した電流が流れる。従って、トランジスタMP1のゲート端を出力端子B2を介して、他回路に含まれるpチャネルMOS型のトランジスタ(図示せず)のゲート端に接続することにより、定電流回路100で生成された電流IQを、この他回路側にコピーすることが可能となる。
【0020】
また、定電流回路100は、出力端子B1から電圧値一定の電圧VQを出力することができるので、レギュレータや、A/D変換器又はD/A変換器等の基準電圧発生回路として用いることも可能である。
【0021】
ここで、図1に示す構成において、各トランジスタを正常に動作させる為には、電源電位VRの電位は以下の条件を満たす必要がある。
【0022】
すなわち、
VR>|Vds(MD1)|+|Vgs(MD1)|
Vds(MD1):MD1のドレイン・ソース間電圧
Vgs(MD1):MD1のゲート・ソース間電圧
又は、
VR>|Vds(MD1)|+|Vgs(MN1)|
Vgs(MN1):MN1のゲート・ソース間電圧
であり、且つ
VR>|Vgs(MP1)|+|Vds(MN2)|
Vgs(MP1):MP1のゲート・ソース間電圧
Vds(MN2):MN2のドレイン・ソース間電圧
なる条件を満たしていれば良い。
【0023】
よって、図1に示す定電流回路100の構成では、電源ラインDLを介して電源電位VRを受け、接地電位GNDが印加されているラインに向けて電流を流す電流経路中には、トランジスタMD1(又はMP1)と、これに縦続に接続されているトランジスタMN1(又はMN2)とが含まれているだけである。従って、図1に示す定電流回路100の構成によれば、当該電流経路中に、これら2つのトランジスタと共に抵抗素子が縦続に接続されている従来の構成を採用したものに比して低い電圧値の電源電圧で動作が可能となる。
【0024】
尚、図1に示す定電流回路100では2系統分の出力端子B1及びB2を設けているが、出力端子が1系統分だけで良いのならば、トランジスタMP1及びMN2を省いた構成を採用しても良い。また、図1に示す一例では、トランジスタMN1及びMN2の各々としてnチャネルMOS型、トランジスタMP1としてpチャネルMOS型のトランジスタを採用しているが、トランジスタMP1としてnチャネルMOS型のトランジスタを採用し、トランジスタMN1及びMN2の各々として、pチャネルMOS型のトランジスタを採用しても良い。
【0025】
要するに、定電流回路100としては、少なくとも以下のような第1及び第2のトランジスタを有するものであれば良いのである。つまり、第1のトランジスタ(MD1)はデプレッション型のnチャネルMOSトランジスタであり、そのドレイン端に電源電位(VR)を受け、ゲート端及びバックゲートに接地電位(GND)が印加されており、ソース端に第1の出力端子(B1)が接続されている。第2のトランジスタ(MN1)は、ドレイン端及びソース端のうちの一端が第1のトランジスタ(MD1)のソース端に接続されており、他端に接地電位が印加されており、且つダイオード接続されたものである。
【実施例0026】
図3は、本発明に係る定電流回路100の第2の実施例による構成を示す回路図である。尚、図3に示す構成では、電源ラインDL及びトランジスタMD1間にデプレッション型のnチャネルMOS型のトランジスタMD2を設けた点を除く他の構成は、図1に示されるものと同一である。トランジスタMD2のドレイン端には電源ラインDLを介して電源電位VRが印加されており、そのゲート端及びバックゲートには接地電位GNDが印加されている。トランジスタMD2のソース端はノードn1を介してトランジスタMD1のドレイン端と接続されている。トランジスタMD1のゲート端及びバックゲートには接地電位GNDが印加されている。
【0027】
ここで、トランジスタのチャネル長Lに対するチャネル幅Wの比率、つまりサイズ比(W/L)は、トランジスタMD1よりもMD2の方が大である。
【0028】
図4は、図3に示すトランジスタMD1のドレイン・ソース間電流と自身のソース端の電圧との対応関係を実線、トランジスタMD2のドレイン・ソース間電流と自身のソース端の電圧との対応関係を破線にて夫々表す電圧電流特性図である。ここで、トランジスタMD1よりもMD2の方がトランジスタのサイズ比(W/L)が大きいので、トランジスタMD1及びMD2の各々に同一のドレイン・ソース間電流を流す場合に必要となるゲート・ソース間電圧VgsはMD2の方が小となる。尚、ゲート・ソース間電圧Vgsの絶対値については、トランジスタMD2よりもMD1の方が小となる。そのため、図3に示すノードn1の電位は出力端子B1の電位よりも高くなる。ここで、ノードn1及び出力端子B1間の電圧はトランジスタMD1のドレイン・ソース間電圧Vdsである。よって、ノードn1及び出力端子B1間の電圧がトランジスタMD1の動作に必要なドレイン・ソース間電圧Vds以上となるように、トランジスタMD1及びMD2各々のトランジスタのサイズ比(W/L)を設定しておけば、トランジスタMD1及びMD2を定電流源として動作させることが可能となる。
【0029】
また、図3に示す構成では、トランジスタMD1よりもトランジスタのサイズ比(W/L)が大きいトランジスタMD2のドレイン端で電源電位VRを受け、これをソース端を介して、トランジスタMD1のドレイン端に供給するようにしている。よって、トランジスタMD1のドレイン・ソース間電圧Vdsは、ノードn1及び出力端子B1間の電圧となるので、電源電位VRが変動してもトランジスタMD1のドレイン・ソース間電圧Vdsは変化しない。
【0030】
よって、図3に示す構成を採用した場合には、図1に示す構成を採用した場合に比して、電源電圧の変動に伴うドレイン・ソース間電流の変動を抑制することができる。つまり、図3に示す構成を採用することにより、電源電圧の変動に拘わらず所望の定電流を安定して生成することが可能となる。
【0031】
尚、図3に示す構成では、トランジスタMD2のゲート端には接地電位GNDを印加するようにしているが、図5に示すように、トランジスタMD2のゲート端をラインL1を介して出力端子B1に接続するようにしても良い。かかる構成を採用した場合、トランジスタMD2のゲート端の電圧が出力端子B1の電圧VB1と等しいので、ノードn1の電圧Vnは、
Vn=VB1+|Vgs(MD2)|
Vgs(MD2):MD2のゲート・ソース間電圧
となる。
【0032】
よって、トランジスタMD1及びMD2の電流駆動能力に拘わらず、トランジスタMD1のドレイン・ソース間電圧Vdsを確保することができる。従って、トランジスタMD2として、トランジスタMD1と同様なトランジスタサイズのものを用いることが可能となる。これにより、定電流回路100として、図5に示す構成を採用した場合には、図3に示す構成を採用した場合に比べて装置規模を小さくすることが可能となる。
【0033】
尚、図3又は図5に示される定電流回路100では、出力端子B1及びB2から電圧値一定の電圧を出力することができるので、レギュレータや、A/D変換器又はD/A変換器等の基準電圧発生回路として用いることも可能である。
【実施例0034】
図6は、本発明に係る定電流回路100の第3の実施例による構成を示す回路図である。図6に示す構成では、定電流回路100は、デプレッション型のnチャネルMOS型のトランジスタMD1、エンハンスメント型のpチャネルMOS型のトランジスタMP1~MP3、エンハンスメント型のnチャネルMOS型のトランジスタMN1及びMN2を含む。
【0035】
トランジスタMD1のソース端及びバックゲートには接地電位GNDが印加されており、そのゲート端はトランジスタMN1のゲート端に接続されている。更に、トランジスタMD1のゲート端は、ノードn1を介してトランジスタMN1のドレイン端とトランジスタMP2のドレイン端とに夫々接続されている。トランジスタMD1のドレイン端はラインL1を介して、トランジスタMP1~MP3各々のゲート端と、トランジスタMP1のドレイン端と、出力端子B1とに接続されている。トランジスタMN1のソース端及びバックゲートには接地電位GNDが印加されている。トランジスタMP1~MP3各々のソース端には電源ラインDLが接続されている。トランジスタMP1~MP3各々のソース端は、当該電源ラインDLを介して電源電位VRの供給を受ける。
【0036】
トランジスタMP3のドレイン端にはトランジスタMN2のドレイン端及びゲート端と、出力端子B2とが接続されている。トランジスタMN2のソース端及びバックゲートには接地電位GNDが印加されている。
【0037】
尚、トランジスタMP1及びMP2の各々は、夫々のドレイン・ソース間に流れる電流が一対一の電流ミラー比となるように構築されたトランジスタである。
【0038】
また、トランジスタMD1及びMN1の各々は、以下のように構築されたトランジスタである。
【0039】
つまり、飽和領域でトランジスタMD1に流れる電流をI(MD1)、トランジスタMN1に流れる電流をI(MN1)とすると、両者は以下の数式にて表される。
【0040】
I(MD1)=Kd・[Vgs(MD1)-Vtd]
I(MN1)=Kn・[Vgs(MN1)-Vtn]
Kd:MD1のトランスコンダクタンス係数
Kn:MN1のトランスコンダクタンス係数
Vtd:MD1の閾値電圧
Vtn:MN1の閾値電圧
図6に示す構成によればI(MD1)とI(MN1)とは等しくなる。つまり、I(MD1)及びI(MN1)同士が一致している場合においてトランスコンダクタンス係数Kd及びKn同士の大小関係が、
Kn>Kd
となるように構築されたトランジスタを、トランジスタMD1及びMN1の各々として採用するのである。
【0041】
尚、トランスコンダクタンス係数Kd及びKnは、以下のように表される。
【0042】
Kd=(1/2)・Coxd・μd・(Wd/Ld)
Kn=(1/2)・Coxn・μn・(Wn/Ln)
oxd:MD1の単位面積あたりのゲート容量
oxn:MN1の単位面積あたりのゲート容量
μd:MD1のキャリア移動度
μn:MN1のキャリア移動度
Wd:MD1のチャネル幅
Wn:MN1のチャネル幅
ここで、図6において、トランジスタMD1はデプレッション型のnチャネルMOS型のトランジスタであり、そのソース端には接地電位GNDが印加されている。これにより、トランジスタMD1のゲート端の電圧、つまりノードn1の電圧と、MD1のドレイン・ソース間電流との対応関係は、図7の実線にて示される電圧電流特性となる。また、図6に示すトランジスタMN1はエンハンスメント型のnチャネルMOS型のトランジスタであり、そのソース端には接地電位GNDが印加されている。これにより、トランジスタMN1のゲート端の電圧、つまりノードn1の電圧と、MN1のドレイン・ソース間電流との対応関係は、図7の破線にて示される電圧電流特性となる。
【0043】
この際、トランジスタMP1及びMP2は、夫々のドレイン・ソース間に流れる電流が等しく、MP1及びMP2各々のゲート端の電圧が等しく、且つトランジスタMN1のトランスコンダクタンス係数KnがトランジスタMD1のトランスコンダクタンス係数Kdよりも大である。これにより、図7に示すように、トランジスタMD1の電圧電流特性(実線)とトランジスタMN1の電圧電流特性(破線)とは1つの交点で交わり、その結果、ノードn1の電圧は、その交点での電圧Vcとなり、この電圧Vcの状態で安定する。よって、トランジスタMD1は、自身のゲート端に印加された電圧Vcに応じて一定の電流Icを安定して生成する定電流源となる。そこで、ダイオード接続されているトランジスタMP1のゲート端に接続されている出力端子B1を、他回路のpチャネルMOS型のトランジスタのゲート端に接続することにより、図7に示す電流Icを、この他回路側にコピーすることが可能となる。また、図6に示すトランジスタMP3は、自身のゲート端がトランジスタMP1のゲート端に接続されており、当該トランジスタMP1に流れる電流をコピーしてトランジスタMN2のドレイン端に供給する定電流源として動作する。そこで、ダイオード接続されているトランジスタMN2のゲート端に接続されている出力端子B2を、他回路のnチャネルMOS型のトランジスタのゲート端に接続することにより、図7に示す電流Icを、この他回路側にコピーすることが可能となる。尚、図6に示される定電流回路100では、出力端子B1及びB2から電圧値一定の電圧を出力することができるので、レギュレータや、A/D変換器又はD/A変換器等の基準電圧発生回路として用いることも可能である。
【0044】
ところで、定電流回路100として図6に示す構成を採用した場合には、従来の構成に比べて、定電流源としてのトランジスタMD1で流せる定電流の電流量を大きくすることが可能となる。
【0045】
すなわち、図6に示す構成では、トランジスタMD1のゲート・ソース間電圧Vgs(MD1)は、
Vgs(MD1)=[I(MD1)/Kd]1/2+Vtd
となり、トランジスタMN1のゲート・ソース間電圧Vgs(MN1)は、
Vgs(MN1)=[I(MN1)/Kn]1/2+Vtn
にて表される。
【0046】
ここで、図6に示す構成によれば、
I(MD1)=I(MN1)
となり、且つ、
Vgs(MD1)=Vgs(MN1)
となるので、
[I(MD1)/Kd]1/2+Vtd=[I(MN1)/Kn]1/2+Vtn
なる関係が導き出せる。
【0047】
ここで、
Kn>Kd
であることから、
Kn=N・K
(N>1)
とすると、トランジスタMD1のドレイン・ソース間電流I(MD1)は、
I(MD1)=Kd/(1-1/N1/2×(Vtn-Vtd)
と表される。
【0048】
一方、従来回路に設けられているデプレッション型のnチャネルMOSトランジスタのドレイン・ソース間電流Idsは、そのゲート・ソース間電圧Vgsが接地電位GND、つまりゼロボルトであるので、
Ids=Kd(-Vtd)
と表される。
【0049】
よって、例えば、
Vtn=0.6ボルト
Vtd=-0.6ボルト
N=2
なる特性を有するトランジスタMD1及びMN2を採用した場合には、図6に示すデプレッション型のトランジスタMD1のドレイン・ソース間電流は、従来回路に示されるデプレッション型のトランジスタで流せる電流の略46倍となる。
【0050】
つまり、定電流回路100として図6に示す構成を採用すれば、従来回路に2つのトランジスタ(MN1、MP2)を追加するだけで、定電流の電流量を従来回路の46倍にすることが可能となる。ところで、トランジスタMD1のサイズ比(W/L)を46倍にすることによっても、定電流の電流量を46倍にすることができるが、この場合におけるトランジスタMD1のチップ占有面積の増加分は、2つのトランジスタ(MN1、MP2)を合わせたチップ占有面積よりも大となる。
【0051】
よって、図6に示す構成によれば、装置規模の増大分を抑えて、定電流の電流量を大幅に増加することが可能となる。
【0052】
更に、図6に示す構成では、電源ラインDLを介して電源電位VRを受け、接地電位GNDが印加されているラインに向けて電流を流す電流経路中には、トランジスタMP1(MP3又はMP2)と、これに縦続に接続されているトランジスタMD1(MN1又はMN2)とが含まれているだけである。従って、当該電流経路中に、これら2つのトランジスタと共に抵抗素子が縦続に接続されている従来の回路に比べて低い電圧値の電源電圧で正常な動作を行うことが可能となる。
【0053】
尚、図6に示す実施例では、トランジスタMP1及びMP2の各々を、夫々のドレイン・ソース間に流れる電流が一対一の電流ミラー比となるように構築されたトランジスタとし、且つトランジスタMD1及びMN1の各々として、夫々のトランスコンダクタンス係数Kd及びKnがKn>Kdなる大小関係を有するものを採用している。
【0054】
しかしながら、トランジスタMP1及びMP2の各々として、夫々のドレイン・ソース間に流れる電流の比が1:r(rは実数)となるものを採用し、且つトランジスタMD1及びMN1の各々として、トランスコンダクタンス係数Kd及びKnがKn>r・Kdなる大小関係を満たす構成を有するトランジスタを採用しても良い。
【0055】
また、図6に示す定電流回路100では2系統分の出力端子B1及びB2を設けているが、出力端子が1系統分だけで良いのならば、トランジスタMP3及びMN2を省いた構成を採用しても良い。
【0056】
要するに、図6に示す定電流回路100としては、少なくとも以下のような第1~第4のトランジスタを有するものであれば良いのである。すなわち、第1のトランジスタ(MD1)は、デプレッション型のnチャネルMOSトランジスタであり、そのソース端には接地電位(GND)が印加されており、ドレイン端には第1の出力端子(B1)が接続されている。第2のトランジスタ(MP1)は、ソース端に電源電位を受け、ドレイン端及びゲート端が第1のトランジスタのドレイン端に接続されている。第3のトランジスタ(MP2)は、自身のソース端に電源電位を受け、ゲート端が第1のトランジスタのドレイン端に接続されている。第4のトランジスタ(MN1)は、ソース端に接地電位(GND)が印加されており、ドレイン端及びゲート端が第1のトランジスタ(MD1)のゲート端と第3のトランジスタ(MP2)のドレイン端とに接続されている。
【符号の説明】
【0057】
100 定電流回路
MD1、MN1 トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7