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特開2023-37024でんぷん含有膨化組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037024
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】でんぷん含有膨化組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20230307BHJP
   A23L 11/00 20210101ALI20230307BHJP
   A23L 7/161 20160101ALI20230307BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20230307BHJP
【FI】
A23L5/00 E
A23L5/00 N
A23L11/00 F
A23L11/00 A
A23L7/161
A23L7/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】63
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006332
(22)【出願日】2023-01-19
(62)【分割の表示】P 2022544831の分割
【原出願日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2020218541
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 栄輔
(72)【発明者】
【氏名】水田 瑛里佳
(72)【発明者】
【氏名】富田 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】井原 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】日比 徳浩
(57)【要約】
【課題】加熱処理後も膨化状態が保持されると共に、膨化食品独特の食感が付与された、でんぷんを主成分とする膨化組成物を提供する。
【解決手段】当該組成物は、下記(1)から(6)を全て充足する。
(1)組成物全体のでんぷん含量が乾燥質量換算で15質量%以上である。
(2)組成物の乾量基準含水率が150質量%未満である。
(3)組成物中のでんぷんの糊化度が50質量%以上である。
(4)組成物の食物繊維含量が乾燥質量換算で3.0質量%以上である。
(5)組成物を[手順a]により処理して得られた成分を[条件A]の下で分析して得られる、分子量対数が3.5以上8.0未満の範囲における分子量分布曲線(MWDC3.5-8.0)において、全曲線下面積に対する分子量対数3.5以上6.5未満の区間における曲線下面積の割合(AUC1)が60%超である。
(6)組成物に[手順b]によるでんぷん及びタンパク質分解処理を加え、次いで超音波処理を加えてから測定した粒子径分布における粒子径d50が450μm未満である。
(但し、[手順a]、[条件A]、及び[手順b]は、特許請求の範囲に記載の通りである。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも豆類を含むと共に、下記(1)から(6)を全て充足する膨化組成物。
(1)組成物全体のでんぷん含量が乾燥質量換算で15質量%以上である。
(2)組成物の乾量基準含水率が150質量%未満である。
(3)組成物中のでんぷんの糊化度が50質量%以上である。
(4)組成物の食物繊維含量が乾燥質量換算で3.0質量%以上である。
(5)組成物を下記[手順a]により処理して得られた成分を下記[条件A]の下で分析して得られる、分子量対数が3.5以上8.0未満の範囲における分子量分布曲線(以下「MWDC3.5-8.0」という。)において、全曲線下面積に対する分子量対数3.5以上6.5未満の区間における曲線下面積の割合(以下「AUC1」という。)が60%超である。
[手順a]組成物を粉砕処理した後、エタノール不溶性且つジメチルスルホキシド可溶性の成分を得る。
[条件A]1M水酸化ナトリウム水溶液に手順aにより処理して得られた成分を0.30質量%溶解し、37℃で30分静置後、等倍量の水と等倍量の溶離液とを加え、5μmフィルターろ過したろ液5mLをゲルろ過クロマトグラフィーに供し、分子量分布を測定する。
(6)組成物に下記[手順b]によるでんぷん及びタンパク質分解処理を加え、次いで超音波処理を加えてから測定した粒子径分布における粒子径d50が450μm未満である。
[手順b]組成物の6質量%水懸濁液を、0.4容量%のプロテアーゼ及び0.02質量%のα-アミラーゼにより20℃で3日間処理する。
【請求項2】
前記分子量分布曲線(MWDC3.5-8.0)において、全曲線下面積に対する分子量対数6.5以上8.0未満の区間における曲線下面積の割合(以下「AUC2」という。)が40%以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記分子量分布曲線(MWDC3.5-8.0)において、全曲線下面積に対する分子量対数3.5以上6.5未満の区間における曲線下面積の割合(AUC1)に対する、全曲線下面積に対する分子量対数6.5以上8.0未満の区間における曲線下面積の割合(AUC2)の比(以下「[AUC2]/[AUC1]比」という。)が0.68未満である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物を前記[手順a]により処理して得られた成分を前記[条件A]の下で分析して得られる、分子量対数6.5以上9.5未満の範囲における分子量分布曲線(以下「MWDC6.5-9.5」という。)において、全曲線下面積に対する分子量対数が6.5以上8.0未満の区間の曲線下面積の割合(以下「AUC3」という。)が30%以上である、請求項1~3の何れか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物を前記[手順a]により処理して得られた成分を前記[条件A]の下で分析して得られる、分子量対数3.5以上6.5未満の範囲における分子量分布曲線(以下「MWDC3.5-6.5」という。)において、全曲線下面積に対する分子量対数が3.5以上5.0未満の区間の曲線下面積の割合(以下「AUC4」という。)が8%以上である、請求項1~4の何れか一項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物を前記[手順a]により処理して得られた成分を前記[条件A]の下で分析して得られる質量平均分子量対数が7.5未満である、請求項1~5の何れか一項に記載の組成物。
【請求項7】
組成物を前記[手順a]により処理して得られた成分を前記[条件A]の下で分離し、質量分子量対数5.0以上6.5未満の分離画分を回収し、pH7.0に調整した試料1質量部を、9質量部のよう素溶液(0.25mM)で染色して測定した660nmの吸光度(ABS5.0-6.5)が0.10以上である、請求項1~6の何れか一項に記載の組成物。
【請求項8】
膨化組成物の合計空隙率が1%超である、請求項1~7の何れか一項に記載の組成物。
【請求項9】
組成物を-25℃凍結後、切断面Cに沿って厚さ30μmに切断した凍結切片Cをカルコフロールホワイト(CFW)染色し、蛍光顕微鏡観察した場合におけるCFW被染色部位の最長径平均値が450μm未満である、請求項1~8の何れか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記CFW被染色部位が、ヨウ素被染色部位中に包埋されている、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
組成物を-25℃凍結後、切断面Cに沿って厚さ30μmに切断した凍結切片Cを下記[条件C]で解析した場合に、下記(c1)~(c3)の少なくとも一つ以上を充足する、請求項1~10の何れか一項に記載の組成物。
[条件C]組成物凍結切片を、イオン化支援剤としてγ-アミノプロピルトリエトキシシランで被覆した酸化鉄系ナノ微粒子を用い、NANO-PALDI MS(ナノ微粒子支援レーザー脱離イオン化質量分析)を用いたイメージング質量分析法で解析する。
(c1)m/z 66.88278のシグナル強度から算出される平均輝度(以下「AV66.88278」という。)と、m/z 80.79346のシグナル強度から算出される平均輝度(以下「AV80.79346」という。)との乗算値(AV66.88278×AV80.79346)が120以上である。
(c2)m/z 66.88278のシグナル強度分散における輝度の標準偏差(以下「SD66.88278」という。)が16.0以上である。
(c3)m/z 80.79346のシグナル強度分散における輝度の標準偏差(以下「SD80.79346」という。)が4.0以上である。
【請求項12】
組成物内部における空隙の加重平均周囲長をα、空隙の加重平均面積をβとした場合に、α/βが1.5%以下である、請求項1~11の何れか一項に記載の組成物。
【請求項13】
組成物の密度が1.0g/cm3未満である、請求項1~12の何れか一項に記載の組成物。
【請求項14】
組成物が(7)を充足する、請求項1~13の何れか一項に記載の組成物。
(7)下記(a)及び/又は(b)を充足する
(a)組成物の粉砕物の6%懸濁液を観察した場合に認められるでんぷん粒構造が、300個/mm2以下である。
(b)ラピッドビスコアナライザを用いて14質量%の組成物粉砕物水スラリーを50℃から140℃まで昇温速度12.5℃/分で昇温して測定した場合の糊化ピーク温度が95℃以下である。
【請求項15】
組成物のタンパク質含量が乾燥質量換算で3.0質量%以上である、請求項1~14の何れか一項に記載の組成物。
【請求項16】
組成物の全油脂分含量が乾燥質量換算で2.0質量%以上である、請求項1~15の何れか一項に記載の組成物。
【請求項17】
組成物の全油脂分に対する液状油脂分の割合が20質量%以上である、請求項1~16の何れか一項に記載の組成物。
【請求項18】
豆類の乾量基準含水率が15質量%未満である、請求項1~17の何れか一項に記載の組成物。
【請求項19】
豆類が、成熟した豆類である、請求項1~18の何れか一項に記載の組成物。
【請求項20】
豆類が、エンドウ属、インゲンマメ属、キマメ属、ササゲ属、ソラマメ属、ヒヨコマメ属、ダイズ属、及びヒラマメ属から選ばれる1種以上の豆類である、請求項1~19の何れか一項に記載の組成物。
【請求項21】
豆類が、超音波処理後の粒子径d90が500μm未満の粉末形態である、請求項1~20の何れか一項に記載の組成物。
【請求項22】
豆類の合計含量が、乾燥質量換算で10質量%以上である、請求項1~21の何れか一項に記載の組成物。
【請求項23】
組成物の総でんぷん含量に対する、豆類に含有された状態で配合されているでんぷんの含量比率が30質量%以上である、請求項1~22の何れか一項に記載の組成物。
【請求項24】
組成物の総タンパク質含量に対する、豆類に含有された状態で配合されているタンパク質の含量比率が10質量%以上である、請求項1~23の何れか一項に記載の組成物。
【請求項25】
組成物が更に雑穀類を含む、請求項1~24の何れか一項に記載の組成物。
【請求項26】
雑穀類が、あわ、ひえ、きび、もろこし、ライ麦、えん麦、はと麦、とうもろこし、そば、アマランサス、及びキノアから選ばれる1種以上である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
組成物の小麦類の含量が、乾燥質量換算で50質量%以下である、請求項1~26の何れか一項に記載の組成物。
【請求項28】
組成物の総タンパク質含量に対する小麦類に由来するタンパク質の含量比率が50質量%以下である、請求項1~27の何れか一項に記載の組成物。
【請求項29】
組成物がグルテンを実質的に含有しない、請求項1~28の何れか一項に記載の組成物。
【請求項30】
組成物が食用植物の食物繊維局在部位を含有する、請求項1~29の何れか一項に記載の組成物。
【請求項31】
食物繊維局在部位が豆類の種皮を含む、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
豆類及び/又は雑穀類の可食部及び食用植物の食物繊維局在部位の合計含有率が乾燥質量換算で10質量%以上である、請求項1~31の何れか一項に記載の組成物。
【請求項33】
豆類の可食部及び豆類の食物繊維局在部位を共に含有する、請求項1~32の何れか一項に記載の組成物。
【請求項34】
食用植物の食物繊維局在部位が、オオバコの食物繊維局在部位を含有する、請求項30~33の何れか一項に記載の組成物。
【請求項35】
食用植物の食物繊維局在部位が、酵素処理された状態の食物繊維局在部位を含有する、請求項30~34の何れか一項に記載の組成物。
【請求項36】
酵素処理がキシラナーゼ及び/又はペクチナーゼ処理である、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
組成物が無発酵膨化組成物又は発酵膨化組成物である、請求項30~36の何れか一項に記載の組成物。
【請求項38】
下記段階(i)及び(ii)を含む、請求項1~28の何れか1項に記載の組成物の製造方法。
(i)少なくとも豆類を含むと共に、下記(1)から(5)を全て充足する生地組成物を調製する段階。
(1)組成物のでんぷん含量が湿潤質量基準で8.0質量%以上である。
(2)組成物の乾量基準含水率が40質量%超である。
(3)組成物の食物繊維含量が湿潤質量換算で2.0質量%以上である。
(4)組成物のでんぷん分解酵素活性が乾燥質量換算で0.2U/g以上である。
(5)組成物に前記[手順b]によりでんぷん及びタンパク質分解処理を加え、次いで超音波処理を加えてから測定した粒子径分布における粒子径d50が450μm未満である。
(ii)前記段階(i)の生地組成物を加熱処理により膨化させる段階であって、前記加熱処理の前後で、組成物の前記AUC1値が5%以上増加すると共に、乾量基準含水率が5質量%以上低下する段階。
【請求項39】
前記段階(i)の生地組成物が下記(6-1)を充足する、請求項38に記載の製造方法。
(6-1)下記(c-1)及び/又は(d-1)を充足する。
(c-1)生地組成物の粉砕物の6%懸濁液を観察した場合に認められるでんぷん粒構造が、40個/mm2以上である。
(d-1)生地組成物の粉砕物の14質量%水スラリーをラピッドビスコアナライザを用いて50℃から140℃まで昇温速度12.5℃/分で昇温して測定した場合の糊化ピーク温度が95℃超である。
【請求項40】
前記段階(ii)において下記(6-2)を充足する、請求項38又は39に記載の製造方法。
(6-2)下記(c-2)及び/又は(d-2)を充足する。
(c-2)組成物の粉砕物の6%懸濁液を観察した場合に認められるでんぷん粒構造が、段階(ii)の前後で10個/mm2以上低下する。
(d-2)組成物の粉砕物の14質量%水スラリーをラピッドビスコアナライザを用いて50℃から140℃まで昇温速度12.5℃/分で昇温して測定した場合の糊化ピーク温度が、段階(ii)の前後で5%以上低下する。
【請求項41】
豆類が、糊化ピーク温度の温度低下差分が50℃以下となるように加温処理を施した豆類である、請求項38~40の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項42】
前記段階(i)の生地組成物において、豆類が、超音波処理後粒子径d90が500μm未満の粉末形態である、請求項38~41の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項43】
前記段階(i)の生地組成物において、でんぷん分解酵素活性の30%以上が豆類に由来する、請求項38~42の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項44】
前記段階(i)の生地組成物が更に雑穀類を含む、請求項38~43の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項45】
前記段階(i)の生地組成物の前記AUC3が30%以上である、請求項38~44の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項46】
前記段階(ii)の加熱処理の前後で、前記AUC2が5%以上低下する、請求項38~45の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項47】
前記段階(ii)の加熱処理の前後で、前記[AUC2]/[AUC1]比が10%以上低下する、請求項38~46の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項48】
前記段階(ii)の加熱処理の前後で、前記合計空隙率が1%以上増加する、請求項38~47の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項49】
前記段階(ii)の加熱処理の前後で、前記660nmの吸光度(ABS5.0-6.5)が0.03以上増加する、請求項38~48の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項50】
前記段階(ii)の加熱処理の前後で、下記(c1)~(c3)の少なくとも一つ以上を充足する、請求項38~49の何れか一項に記載の製造方法。
(c1)前記乗算値AV66.88278×AV80.79346が30%以上増加する。
(c2)前記標準偏差SD66.88278が5%以上増加する。
(c3)前記標準偏差SD80.79346が5%以上増加する。
【請求項51】
段階(i)の生地組成物が食用植物の食物繊維局在部位を含有する、請求項38~50の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項52】
段階(i)の生地組成物が食用植物の食物繊維局在部位を湿潤質量基準割合で0.1質量%以上含有する、請求項51に記載の製造方法。
【請求項53】
食用植物の食物繊維局在部位が豆類の種皮を含む、請求項51又は52に記載の製造方法。
【請求項54】
段階(i)の生地組成物が豆類の可食部及び豆類の食物繊維局在部位を共に含有する、請求項51~53の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項55】
食用植物の食物繊維局在部位がオオバコの種皮を含む、請求項51~54の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項56】
食用植物の食物繊維局在部位を酵素処理することを含む、請求項51~55の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項57】
酵素処理がキシラナーゼ及び/又はペクチナーゼ処理である、請求項56に記載の製造方法。
【請求項58】
段階(i)及び/又は段階(ii)において酵素処理を行うことを含む、請求項56又は57に記載の製造方法。
【請求項59】
段階(ii)が下記(ii-a)及び(ii-b)の段階を含む、請求項58に記載の製造方法。
(ii-a)前記(i)の生地組成物を酵母発酵させる段階。
(ii-b)前記(ii-a)の酵母発酵後の組成物を焼成する段階。
【請求項60】
段階(ii)が下記(ii-1a)及び(ii-1b)の段階を含む、請求項38~59の何れか一項に記載の製造方法。
(ii-1a)前記(i)の生地組成物を、加圧条件下、温度100℃以上で加熱処理しつつ混練する段階。
(ii-1b)前記(ii-1a)の混練後の組成物を、温度100℃以上で常圧に戻す段階。
【請求項61】
段階(ii)が下記(ii-2a)及び(ii-2b)の段階を含む、請求項38~59の何れか一項に記載の製造方法。
(ii-2a)前記(i)の生地組成物に気泡及び/又は膨張剤を混合する段階。
(ii-2b)前記(ii-2a)の混合後の組成物を、任意の温度で加熱処理する段階。
【請求項62】
組成物全体の総でんぷん含有量に対する、豆類由来でんぷんの合計含有量が、30質量%以上である、請求項1~37の何れか一項に記載の組成物。
【請求項63】
請求項38~61の何れか一項に記載の製造方法に使用するための生地組成物であって、少なくとも豆類を含むと共に、下記(1)から(5)を全て充足する生地組成物。
(1)組成物のでんぷん含量が湿潤質量基準で8.0質量%以上である。
(2)組成物の乾量基準含水率が40質量%超である。
(3)組成物の食物繊維含量が湿潤質量換算で2.0質量%以上である。
(4)組成物のでんぷん分解酵素活性が乾燥質量換算で0.2U/g以上である。
(5)組成物に前記[手順b]によりでんぷん及びタンパク質分解処理を加え、次いで超音波処理を加えてから測定した粒子径分布における粒子径d50が450μm未満である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、でんぷんを含有する膨化組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、でんぷんを主成分とする膨化食品において、比較的低分子量のでんぷんを多く含有させると、膨化しやすくなり、膨化食品独特の食感が感じられやすい品質となるが、加熱処理後に膨化状態を保持できずに急速に萎んでしまい、その食感が失われるという課題があった。一方、比較的高分子量のでんぷんを多く含有させると、膨化後の状態を保持しやすくなるが、組成物が硬質化してしまい、膨化食品独特の食感が十分に感じられなくなるという課題があった。
【0003】
斯かる膨化食品に関する技術として、特許文献1(特開2018-061480号公報)には、小麦等に含まれるグルテンを添加しないパンにおいて、豆粉と米粉とを特定割合で含有させることで、グルテンを含まなくても十分に膨化し、且つ、嗜好性の面でも優れたグルテン無添加パンを得たことが開示されている。また、特許文献2(特開2018-099096号公報)には、小麦を主成分とする膨化食品において、特定のセルロース製剤を含有させることで、風味の悪化することを防ぎつつ、膨化時の窯落ちや腰折れ、更には膨化後の経時的な収縮を抑制した結果、ボリューム感を有しつつも食感が軽くてソフトな小麦膨化食品を得たことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-061480号公報
【特許文献2】特開2018-099096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の発明では、米に含有される比較的高分子量のでんぷんが加熱処理によって硬質化するため、膨化食品独特の食感が十分に感じられなくなるという課題があった。また、特許文献2に記載の発明は、小麦を主成分とする組成物において、小麦に含まれるグルテンのネットワーク構造をセルロース製剤で補強する技術であり、でんぷんを主成分とする全く異なる構造を有する組成物に適用できるものではなかった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、加熱処理後も膨化状態が保持されると共に、膨化食品独特の食感が付与された、でんぷんを主成分とする膨化組成物を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討の結果、でんぷんを主成分とする膨化組成物において、その乾量基準含水率、でんぷん糊化度、及び食物繊維含量を所定値以上に調整すると共に、下記[手順a]により処理して得られた成分の分子量対数範囲3.5以上8.0未満の分子量分布曲線(MWDC3.5-8.0)における全曲線下面積に対する分子量対数3.5以上6.5未満の区間における曲線下面積の割合(AUC1)を所定値以上に調整し、且つ、でんぷん及びタンパク質分解処理後の超音波処理後粒子径d50を所定値未満に調整することで、加熱処理後も膨化状態が保持されると共に、膨化食品独特の食感が付与された、でんぷんを主成分とする膨化組成物を得ることが可能となり、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は例えば以下の項に記載の態様を提供するものである。
[項1]下記(1)から(6)を全て充足する膨化組成物。
(1)組成物全体のでんぷん含量が乾燥質量換算で15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、又は45質量%以上であり、また、上限は限定されないが、例えば100質量%以下、又は90質量%以下、又は80質量%以下、又は70質量%以下、又は65質量%以下である。
(2)組成物の乾量基準含水率が150質量%未満、又は140質量%未満、又は130質量%未満、又は120質量%未満、又は110質量%未満、又は100質量%未満、又は90質量%未満、又は80質量%未満、又は70質量%未満、又は60質量%未満、又は50質量%未満、又は40質量%未満、又は30質量%未満、又は26質量%未満、又は21質量%未満、又は16質量%未満、又は10質量%未満であり、また、下限は限定されないが、例えば0質量%以上、又は0.5質量%以上、又は1質量%以上、又は2質量%以上、又は5質量%以上である。
(3)組成物中のでんぷんの糊化度が50質量%以上、又は55質量%以上、又は60質量%以上、又は65質量%以上、又は70質量%以上、又は75質量%以上、又は80質量%以上、又は85質量%以上、又は90質量%以上であり、また、上限は制限されないが、例えば100質量%以下、又は99質量%以下である。
(4)組成物の食物繊維含量が乾燥質量換算で3.0質量%以上、又は3.5質量%以上、又は4.0質量%以上、又は4.5質量%以上、又は5.0質量%以上、又は6.0質量%以上、又は7.0質量%以上、又は8.0質量%以上、又は9.0質量%以上、又は10.0質量%以上であり、また、上限は制限されないが、例えば40質量%以下、又は35質量%以下、又は30質量%以下である。
(5)組成物を下記[手順a]により処理して得られた成分を下記[条件A]の下で分析して得られる、分子量対数が3.5以上8.0未満の範囲における分子量分布曲線(以下「MWDC3.5-8.0」という。)において、全曲線下面積に対する分子量対数3.5以上6.5未満の区間における曲線下面積の割合(以下「AUC1」という。)が60%超、又は63%超、又は65%超、又は67%超、又は70%超であり、また、上限は制限されないが、例えば100%以下、又は90%以下、又は80%以下である。
[手順a]組成物を粉砕処理した後、エタノール不溶性且つジメチルスルホキシド可溶性の成分を得る。
[条件A]1M水酸化ナトリウム水溶液に手順aにより処理して得られた成分を0.30質量%溶解し、37℃で30分静置後、等倍量の水と等倍量の溶離液とを加え、5μmフィルターろ過したろ液5mLをゲルろ過クロマトグラフィーに供し、分子量分布を測定する。
(6)組成物に下記[手順b]によるでんぷん及びタンパク質分解処理を加え、次いで超音波処理を加えてから測定した粒子径分布における粒子径d50が450μm未満、又は410μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は260μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、又は80μm以下、又は60μm以下、又は50μm以下であり、また、下限は制限されないが、例えば1μm以上、より好ましくは3μm以上、又は5μm以上である。
[手順b]組成物の6質量%水懸濁液を、0.4容量%のプロテアーゼ及び0.02質量%のα-アミラーゼにより20℃で3日間処理する。
[項2]前記分子量分布曲線(MWDC3.5-8.0)において、全曲線下面積に対する分子量対数6.5以上8.0未満の区間における曲線下面積の割合(以下「AUC2」という。)が40%以下、又は35%以下、又は35%未満、又は30%未満、又は25%未満、又は20%未満、又は15%未満、又は10%未満であり、また、下限は制限されないが、例えば0%以上、又は3%以上、又は5%以上である、項1に記載の組成物。
[項3]前記分子量分布曲線(MWDC3.5-8.0)において、全曲線下面積に対する分子量対数3.5以上6.5未満の区間における曲線下面積の割合(AUC1)に対する、全曲線下面積に対する分子量対数6.5以上8.0未満の区間における曲線下面積の割合(AUC2)の比(以下「[AUC2]/[AUC1]比」という。)が0.68未満、又は0.67未満、又は0.65未満、又は0.61未満、又は0.56未満、又は0.51未満、又は0.45未満、又は0.40未満、又は0.35未満、又は0.30未満、又は0.25未満、又は0.20未満、又は0.15未満であり、また、下限は制限されないが、例えば0.00以上、又は0.03以上、又は0.05以上である、項1又は2に記載の組成物。
[項4]組成物を前記[手順a]により処理して得られた成分を前記[条件A]の下で分析して得られる、分子量対数6.5以上9.5未満の範囲における分子量分布曲線(以下「MWDC6.5-9.5」という。)において、全曲線下面積に対する分子量対数が6.5以上8.0未満の区間の曲線下面積の割合(以下「AUC3」という。)が30%以上、又は40%以上、又は50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上であり、また、上限は制限されないが、例えば100%以下である、項1~3の何れか一項に記載の組成物。
[項5]組成物を前記[手順a]により処理して得られた成分を前記[条件A]の下で分析して得られる、分子量対数3.5以上6.5未満の範囲における分子量分布曲線(以下「MWDC3.5-6.5」という。)において、全曲線下面積に対する分子量対数が3.5以上5.0未満の区間の曲線下面積の割合(以下「AUC4」という。)が8%以上、又は10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上、又は30%以上、又は35%以上、又は40%以上、又は45%以上、又は50%以上であり、また、上限は制限されないが、例えば100%以下、又は80%以下、又は60%以下である、項1~4の何れか一項に記載の組成物。
[項6]組成物を前記[手順a]により処理して得られた成分を前記[条件A]の下で分析して得られる質量平均分子量対数が7.5未満、又は7.0未満、又は6.5未満、又は6.0未満であり、また、下限は制限されないが、例えば5.0超、又は5.5超である、項1~5の何れか一項に記載の組成物。
[項7]組成物を前記[手順a]により処理して得られた成分を前記[条件A]の下で分離し、質量分子量対数5.0以上6.5未満の分離画分を回収し、pH7.0に調整した試料1質量部を、9質量部のよう素溶液(0.25mM)で染色して測定した660nmの吸光度(ABS5.0-6.5)が0.10以上、又は0.15以上、又は0.20以上、又は0.25以上、又は0.30以上、又は0.35以上、又は0.40以上、又は0.45以上、又は0.50以上、又は0.55以上、又は0.60以上、又は0.65以上、又は0.70以上、又は0.75以上、又は0.80以上であり、また、上限は制限されないが、例えば3.00以下、又は2.50以下、又は2.00以下である、項1~6の何れか一項に記載の組成物。
[項8]膨化組成物の合計空隙率が1%超、又は2%超、又は3%超、又は4%超、又は5%超、又は6%超、又は7%超、又は8%超、又は9%超、又は10%超、又は11%超、又は12%超、又は13%超、又は14%超、又は15%超、又は20%超、特に30%超であり、また、上限は制限されないが、例えば90%以下、又は80%以下である、項1~7の何れか一項に記載の組成物。
[項9]組成物を-25℃凍結後、切断面Cに沿って厚さ30μmに切断した凍結切片Cをカルコフロールホワイト(CFW)染色し、蛍光顕微鏡観察した場合におけるCFW被染色部位の最長径平均値が450μm未満、又は400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、又は80μm以下、又は60μm以下、又は50μm以下であり、また、下限は制限されないが、例えば1μm以上、又は3μm以上である、項1~8の何れか一項に記載の組成物。
[項10]前記CFW被染色部位が、ヨウ素被染色部位中に包埋されている、項9に記載の組成物。
[項11]組成物を-25℃凍結後、切断面Cに沿って厚さ30μmに切断した凍結切片Cを下記[条件C]で解析した場合に、下記(c1)~(c3)の少なくとも一つ以上を充足する、項1~10の何れか一項に記載の組成物。
[条件C]組成物凍結切片を、イオン化支援剤としてγ-アミノプロピルトリエトキシシランで被覆した酸化鉄系ナノ微粒子を用い、NANO-PALDI MS(ナノ微粒子支援レーザー脱離イオン化質量分析)を用いたイメージング質量分析法で解析する。
(c1)m/z 66.88278のシグナル強度から算出される平均輝度(以下「AV66.88278」という。)と、m/z 80.79346のシグナル強度から算出される平均輝度(以下「AV80.79346」という。)との乗算値(AV66.88278×AV80.79346)が120以上、又は150以上、又は180以上、又は200以上、又は220以上、又は250以上、又は270以上、又は300以上、又は350以上、又は400以上、又は450以上であり、また、上限は制限されないが、例えば3000以下、又は2000以下である。
(c2)m/z 66.88278のシグナル強度分散における輝度の標準偏差(以下「SD66.88278」という。)が16.0以上、又は18.0以上、又は19.0以上、又は20.0以上、又は22.0以上、又は24.0以上であり、また、上限は制限されないが、例えば100以下、又は80以下、又は60以下、又は50以下である。
(c3)m/z 80.79346のシグナル強度分散における輝度の標準偏差(以下「SD80.79346」という。)が4.0以上、又は4.5以上、又は5.0以上、又は5.5以上、又は6.0以上、又は6.5以上、又は7.0以上、又は7.5以上、又は8.0以上、又は8.5以上、又は9.0以上であり、また、上限は制限されないが、例えば80以下、又は70以下、又は60以下、又は50以下、又は40以下である。
[項12]組成物内部における空隙の加重平均周囲長をα、空隙の加重平均面積をβとした場合に、α/βが1.5%以下、又は1.4%以下、又は1.3%以下、又は1.2%以下、又は1.1%以下、又は1.0%以下、又は0.9%以下、又は0.8%以下、又は0.7%以下、又は0.6%以下、又は0.5%以下であり、また、下限は制限されないが、例えば0.00%以上、又は0.005%以上、又は0.01%以上、又は0.02%以上、又は0.03%以上、又は0.04%以上、又は0.05%以上、又は0.10%以上、又は0.15%以上である、項1~11の何れか一項に記載の組成物。
[項13]組成物の密度が1.0g/cm3未満、又は0.90g/cm3未満、又は0.80g/cm3未満、又は0.70g/cm3未満、又は0.60g/cm3未満であり、また、下限は制限されないが、例えば0.10g/cm3超、又は0.15g/cm3超、又は0.20g/cm3超、又は0.25g/cm3超、又は0.30g/cm3超である、項1~12の何れか一項に記載の組成物。
[項14]組成物が(7)を充足する、項1~13の何れか一項に記載の組成物。
(7)下記(a)及び/又は(b)を充足する
(a)組成物の粉砕物の6%懸濁液を観察した場合に認められるでんぷん粒構造が、300個/mm2以下、又は250個/mm2以下、又は200個/mm2以下、又は150個/mm2以下、又は100個/mm2以下、又は50個/mm2以下、又は40個/mm2以下、又は30個/mm2以下、又は20個/mm2以下、又は10個/mm2以下、又は5個/mm2以下であり、また、下限は制限されないが例えば0個/mm2以上である。
(b)ラピッドビスコアナライザを用いて14質量%の組成物粉砕物水スラリーを50℃から140℃まで昇温速度12.5℃/分で昇温して測定した場合の糊化ピーク温度が95℃以下、又は90℃以下、又は85℃以下、又は80℃以下であり、また、下限は制限されないが、例えば50℃超、又は55℃以上、又は60℃以上である。
[項15]組成物のタンパク質含量が乾燥質量換算で3.0質量%以上、又は4.0質量%以上、又は5.0質量%以上、又は6.0質量%以上、又は7.0質量%以上、又は8.0質量%以上、又は9.0質量%以上、又は10質量%以上、又は11質量%以上、又は12質量%以上、又は13質量%以上、又は14質量%以上、又は15質量%以上、又は16質量%以上、又は17質量%以上、又は18質量%以上であり、また、上限は制限されないが、例えば40質量%以下、又は30質量%以下、又は25質量%以下、又は20質量%以下である、項1~14の何れか一項に記載の組成物。
[項16]組成物の全油脂分含量が乾燥質量換算で2.0質量%以上、又は3.0質量%以上、又は4.0質量%以上、又は5.0質量%以上、又は6.0質量%以上、又は7.0質量%以上、又は8.0質量%以上、又は9.0質量%以上、又は10.0質量%以上であり、また、上限は制限されないが、例えば70質量%以下、又は65質量%以下、又は60質量%以下、又は55質量%以下、又は50質量%以下、又は45質量%以下、又は40質量%以下、又は35質量%以下、又は30質量%以下である、項1~15の何れか一項に記載の組成物。
[項17]組成物の全油脂分に対する液状油脂分の割合が20質量%以上、又は30質量%以上、又は40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上であり、また、上限は制限されないが、例えば100質量%、又は100質量%以下である、項1~16の何れか一項に記載の組成物。
[項18]組成物が豆類及び/又は雑穀類を含む、項1~17の何れか一項に記載の組成物。
[項19]豆類及び/又は雑穀類の乾量基準含水率が15質量%未満、又は13質量%未満、又は11質量%未満、又は10質量%未満であり、また、下限は制限されないが、例えば0質量%以上、又は0.01質量%以上である、項18に記載の組成物。
[項20]豆類が、成熟した豆類である、項18又は19に記載の組成物。
[項21]豆類が、エンドウ属、インゲンマメ属、キマメ属、ササゲ属、ソラマメ属、ヒヨコマメ属、ダイズ属、及びヒラマメ属から選ばれる1種以上の豆類である、項18~20の何れか一項に記載の組成物。
[項22]雑穀類が、あわ、ひえ、きび、もろこし、ライ麦、えん麦、はと麦、とうもろこし、そば、アマランサス、及びキノアから選ばれる1種以上である、項18~21の何れか一項に記載の組成物。
[項23]豆類及び/又は雑穀類が、超音波処理後の粒子径d90が500μm未満、又は450μm以下、又は400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は275μm以下、又は250μm以下、又は225μm以下、又は200μm以下、又は175μm以下、又は150μm以下、又は125μm以下、又は100μm以下、又は90μm以下、又は80μm以下、又は70μm以下、又は60μm以下、又は50μm以下であり、また、下限は制限されないが、例えば0.3μm以上、又は1μm以上、又は5μm以上、又は8μm以上、又は10μm以上、又は15μm以上の粉末形態である、項18~22の何れか一項に記載の組成物。
[項24]豆類及び/又は雑穀類の合計含量が、乾燥質量換算で10質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、又は45質量%以上、又は50質量%以上、又は55質量%以上、又は60質量%以上、又は65質量%以上、又は70質量%以上、又は75質量%以上、又は80質量%以上、又は85質量%以上、又は90質量%以上、又は95質量%以上であり、また、上限は制限されないが、例えば100質量%、又は100質量%以下である、項18~23の何れか一項に記載の組成物。
[項25]組成物の総でんぷん含量に対する、豆類及び/又は雑穀類に含有された状態で配合されているでんぷんの含量比率が30質量%以上、又は40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上であり、また、上限は制限されないが、例えば100質量%、又は100質量%以下である、項18~24の何れか一項に記載の組成物。
[項26]組成物の総タンパク質含量に対する、豆類及び/又は雑穀類に含有された状態で配合されているタンパク質の含量比率が10質量%以上、又は20質量%以上、又は30質量%以上、又は40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上であり、また、上限は制限されないが、例えば100質量%、又は100質量%以下である、項18~25の何れか一項に記載の組成物。
[項27]組成物の小麦類の含量が、乾燥質量換算で50質量%以下、又は40質量%以下、又は30質量%以下、又は20質量%以下、又は10質量%以下であり、又は実質的に含有されず、又は含有されず、また、下限は制限されないが、例えば0質量%、又は0質量%以上である、項1~26の何れか一項に記載の組成物。
[項28]組成物の総タンパク質含量に対する小麦類に由来するタンパク質の含量比率が50質量%以下、又は40質量%以下、又は30質量%以下、又は20質量%以下、又は10質量%以下であり、又は実質的に含有されず、又は含有されず、また、下限は制限されないが、例えば0質量%、又は0質量%以上である、項1~27の何れか一項に記載の組成物。
[項29]組成物がグルテンを実質的に含有しない、項1~28の何れか一項に記載の組成物。
[項30]組成物が食用植物の食物繊維局在部位を含有する、項1~29の何れか一項に記載の組成物。
[項31]食物繊維局在部位が豆類の種皮を含む、項30に記載の組成物。
[項32]豆類及び/又は雑穀類の可食部及び食用植物の食物繊維局在部位の合計含有率が乾燥質量換算で10質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、又は50質量%以上であり、また、上限は制限されないが、例えば100質量%以下、又は97質量%以下、又は95質量%以下、又は93質量%以下、又は90質量%以下である、項1~31の何れか一項に記載の組成物。
[項33]豆類の可食部及び豆類の食物繊維局在部位を共に含有する、項1~32の何れか一項に記載の組成物。
[項34]食用植物の食物繊維局在部位が、オオバコの食物繊維局在部位を含有する、項30~33の何れか一項に記載の組成物。
[項35]食用植物の食物繊維局在部位が、酵素処理された状態の食物繊維局在部位を含有する、項30~34の何れか一項に記載の組成物。
[項36]酵素処理がキシラナーゼ及び/又はペクチナーゼ処理である、項35に記載の組成物。
[項37]組成物が無発酵膨化組成物又は発酵膨化組成物である、項30~36の何れか一項に記載の組成物。
[項38]下記段階(i)及び(ii)を含む、項1~28の何れか1項に記載の組成物の製造方法。
(i)下記(1)から(5)を全て充足する生地組成物を調製する段階。
(1)組成物のでんぷん含量が湿潤質量基準で8.0質量%以上、又は9.0質量%以上、又は10.0質量%以上、又は12.0質量%以上、又は14.0質量%以上、又は16.0質量%以上、又は18.0質量%以上であり、また、上限は制限されないが、例えば60質量%以下、又は55.0質量%以下、又は50.0質量%以下、又は45.0質量%以下、又は40.0質量%以下、又は35.0質量%以下、又は30.0質量%以下である。
(2)組成物の乾量基準含水率が40質量%超、又は45質量%超、又は50質量%超、又は55質量%超、又は60質量%超、又は65質量%超、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、又は100質量%以上であり、また、上限は制限されないが、例えば250質量%以下、又は225質量%以下、又は200質量%以下、又は175質量%以下、又は150質量%以下である。
(3)組成物の食物繊維含量が湿潤質量換算で2.0質量%以上、又は3.0質量%以上、又は4.0質量%以上、又は5.0質量%以上、又は6.0質量%以上、又は7.0質量%以上、又は8.0質量%以上であり、また、上限は制限されないが、例えば30質量%以下、又は20質量%以下である。
(4)組成物のでんぷん分解酵素活性が乾燥質量換算で0.2U/g以上、又は0.4U/g以上、又は0.6U/g以上、又は0.8U/g以上、又は1.0U/g以上、又は2.0U/g以上、又は3.0U/g以上、又は4.0U/g以上であり、また、上限は制限されないが、例えば100.0U/g以下、又は50.0U/g以下、又は30.0U/g以下、又は10.0U/g以下、又は7.0U/g以下である。
(5)組成物に前記[手順b]によりでんぷん及びタンパク質分解処理を加え、次いで超音波処理を加えてから測定した粒子径分布における粒子径d50が450μm未満、又は400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下であり、また、下限は制限されないが、例えば1μm以上、中でも5μm以上、又は7μm以上である。
(ii)前記段階(i)の生地組成物を加熱処理により膨化させる段階であって、前記加熱処理の前後で、組成物の前記AUC1値の増加率が、5%以上、又は10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上、又は30%以上、又は35%以上、又は40%以上、また、上限は制限されないが、例えば500%以下、又は400%以下、又は300%以下、又は250%以下、又は210%以下、又は200%以下、又は150%以下、又は100%以下、又は95%以下、又は90%以下、又は85%以下、又は80%以下、又は75%以下、又は70%以下、又は65%以下であると共に、乾量基準含水率の低下率が、5質量%以上、又は9質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、又は45質量%以上、又は50質量%以上、又は55質量%以上、又は60質量%以上、また、上限は制限されないが、例えば100質量%以下、又は98質量%以下、又は96質量%以下、又は94質量%以下、又は92質量%以下、又は90質量%以下、又は80質量%以下、又は70質量%以下である段階。
[項39]前記段階(i)の生地組成物が下記(6-1)を充足する、項38に記載の製造方法。
(6-1)下記(c-1)及び/又は(d-1)を充足する。
(c-1)生地組成物の粉砕物の6%懸濁液を観察した場合に認められるでんぷん粒構造が、40個/mm2以上、又は60個/mm2以上、又は80個/mm2以上、又は100個/mm2以上、又は150個/mm2以上、又は200個/mm2以上、又は250個/mm2以上、又は300個/mm2超であり、また、上限は制限されないが、例えば100000個/mm2以下、又は50000個/mm2以下、又は10000個/mm2以下である。
(d-1)生地組成物の粉砕物の14質量%水スラリーをラピッドビスコアナライザを用いて50℃から140℃まで昇温速度12.5℃/分で昇温して測定した場合の糊化ピーク温度が、95℃超、又は100℃以上、又は105℃以上、又は110℃以上であり、また、上限は制限されないが、例えば140℃以下、又は135℃以下、又は130℃以下である。
[項40]前記段階(ii)において下記(6-2)を充足する、項38又は39に記載の製造方法。
(6-2)下記(c-2)及び/又は(d-2)を充足する。
(c-2)組成物の粉砕物の6%懸濁液を観察した場合に認められるでんぷん粒構造の、段階(ii)の前後における低下数が、10個/mm2以上、又は20個/mm2以上、又は30個/mm2以上、又は40個/mm2以上、又は50個/mm2以上、又は100個/mm2以上、又は150個/mm2、又は200個/mm2以上、又は250個/mm2以上、又は300個/mm2以上、また、上限は制限されないが、例えば100000個/mm2以下、又は50000個/mm2以下、又は10000個/mm2以下である。
(d-2)組成物の粉砕物の14質量%水スラリーをラピッドビスコアナライザを用いて50℃から140℃まで昇温速度12.5℃/分で昇温して測定した場合の糊化ピーク温度の、段階(ii)の前後における低下率が、5%以上、又は10%以上、又は15%以上、又は20%以上、また、上限は制限されないが、例えば100%以下(すなわち当該ピークが検出されなくなる)、又は60%以下、又は50%以下、又は45%以下、又は40%以下である。
[項41]前記段階(i)の生地組成物が豆類及び/又は雑穀類を含む、項38~40の何れか一項に記載の製造方法。
[項42]豆類及び/又は雑穀類が、糊化ピーク温度の温度低下差分が50℃以下、又は45℃以下、又は40℃以下、又は35℃以下、又は30℃以下であり、また、下限は制限されないが、例えば0℃以上、中でも1℃以上、又は2℃以上、又は3℃以上、又は4℃以上、又は5℃以上となるように加温処理を施した豆類及び/又は雑穀類である、項41に記載の製造方法。
[項43]前記段階(i)の生地組成物において、豆類及び/又は雑穀類が、超音波処理後粒子径d90が500μm未満、又は450μm以下、又は400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、また、下限は制限されないが、例えば1μm以上、中でも5μm以上、又は7μm以上、又は10μm以上の粉末形態である、項41又は42に記載の製造方法。
[項44]前記段階(i)の生地組成物において、でんぷん分解酵素活性の30%以上、又は40%以上、又は50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上、また、上限は制限されないが、例えば100%以下が豆類及び/又は雑穀類に由来する、項41~43の何れか一項に記載の製造方法。
[項45]前記段階(i)の生地組成物の前記AUC3が30%以上、又は35%以上、又は40%以上、又は45%以上、又は50%以上、又は55%以上、又は60%以上、又は65%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上であり、また、上限は制限されないが、例えば100%以下、又は98%以下である、項38~44の何れか一項に記載の製造方法。
[項46]前記段階(ii)の加熱処理の前後における前記AUC2の低下率が、5%以上、又は10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上、又は30%以上、又は35%以上、又は40%以上、また、上限は制限されないが、例えば100%以下、又は90%以下である、項38~45の何れか一項に記載の製造方法。
[項47]前記段階(ii)の加熱処理の前後における前記[AUC2]/[AUC1]比の低下率が、10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上、又は30%以上、又は35%以上、又は40%以上、また、上限は制限されないが、例えば100%以下、又は90%以下、又は80%以下である、項38~46の何れか一項に記載の製造方法。
[項48]前記段階(ii)の加熱処理の前後における前記合計空隙率の増加率が、1%以上、又は2%以上、又は3%以上、又は4%以上、又は5%以上、又は6%以上、又は7%以上、又は8%以上、又は9%以上、又は10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は30%以上、又は40%以上、又は50%以上、また、上限は制限されないが、例えば10000%以下、又は8000%以下、又は6000%以下、又は4000%以下、又は2000%以下、又は1000%以下、又は500%以下、又は300%以下、又は200%以下、又は150%以下である、項38~47の何れか一項に記載の製造方法。
[項49]前記段階(ii)の加熱処理の前後における前記660nmの吸光度(ABS5.0-6.5)の増加差分が、0.03以上、又は0.04以上、又は0.05以上、又は0.10以上、又は0.15以上、又は0.20以上、又は0.25以上、又は0.30以上、又は0.35以上、又は0.40以上、また、上限は制限されないが、例えば3.00以下、又は2.50以下、又は2.00以下、又は1.50以下、又は1.00以下、又は0.90以下、又は0.80以下、又は0.70以下である、項38~48の何れか一項に記載の製造方法。
[項50]前記段階(ii)の加熱処理の前後で、下記(c1)~(c3)の少なくとも一つ以上を充足する、項38~49の何れか一項に記載の製造方法。
(c1)前記乗算値AV66.88278×AV80.79346の増加率が、30%以上、又は40%以上、又は50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上、又は100%以上、また、上限は制限されないが、例えば1000%以下、又は700%以下、又は400%以下である。
(c2)前記標準偏差SD66.88278の増加率が、5%以上、又は10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上、又は30%以上、又は35%以上、又は40%以上、また、上限は制限されないが、例えば500%以下、又は400%以下、又は350%以下、又は300%以下、又は200%以下である。
(c3)前記標準偏差SD80.79346の増加率が、5%以上、又は10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上、又は30%以上、又は35%以上、又は40%以上、又は50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は100%以上、又は200%以上、又は300%以上、また、上限は制限されないが、例えば1000%以下、又は800%以下、又は600%以下である。
[項51]段階(i)の生地組成物が食用植物の食物繊維局在部位を含有する、項38~50の何れか一項に記載の製造方法。
[項52]段階(i)の生地組成物が食用植物の食物繊維局在部位を湿潤質量基準割合で0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.3質量%以上、又は0.4質量%以上、又は0.5質量%以上、又は1.0質量%以上、又は1.5質量%以上、また、上限は制限されないが、例えば20質量%以下、又は15質量%以下、又は10質量%以下、又は7.5質量%以下、又は5.0質量%以下含有する、項51に記載の製造方法。
[項53]食用植物の食物繊維局在部位が豆類の種皮を含む、項51又は52に記載の製造方法。
[項54]段階(i)の生地組成物が豆類の可食部及び豆類の食物繊維局在部位を共に含有する、項51~53の何れか一項に記載の製造方法。
[項55]食用植物の食物繊維局在部位がオオバコの種皮を含む、項51~54の何れか一項に記載の製造方法。
[項56]食用植物の食物繊維局在部位を酵素処理することを含む、項51~55の何れか一項に記載の製造方法。
[項57]酵素処理がキシラナーゼ及び/又はペクチナーゼ処理である、項56に記載の製造方法。
[項58]段階(i)及び/又は段階(ii)において酵素処理を行うことを含む、項56又は57に記載の製造方法。
[項59]段階(ii)が下記(ii-a)及び(ii-b)の段階を含む、項58に記載の製造方法。
(ii-a)前記(i)の生地組成物を酵母発酵させる段階。
(ii-b)前記(ii-a)の酵母発酵後の組成物を焼成する段階。
[項60]段階(ii)が下記(ii-1a)及び(ii-1b)の段階を含む、項38~59の何れか一項に記載の製造方法。
(ii-1a)前記(i)の生地組成物を、加圧条件下、温度100℃以上で加熱処理しつつ混練する段階。
(ii-1b)前記(ii-1a)の混練後の組成物を、温度100℃以上で常圧に戻す段階。
[項61]段階(ii)が下記(ii-2a)及び(ii-2b)の段階を含む、項38~59の何れか一項に記載の製造方法。
(ii-2a)前記(i)の生地組成物に気泡及び/又は膨張剤を混合する段階。
(ii-2b)前記(ii-2a)の混合後の組成物を、任意の温度で加熱処理する段階。
[項62]項38~61の何れか一項に記載の製造方法の段階(i)に使用するための豆類及び/又は雑穀類であって、下記(c-3)及び/又は(d-3)を充足する豆類及び/又は雑穀類。
(c-3)生地組成物の粉砕物の6%懸濁液を観察した場合に認められるでんぷん粒構造が、40個/mm2以上、又は60個/mm2以上、又は80個/mm2以上、又は100個/mm2以上、又は150個/mm2以上、又は200個/mm2以上、又は250個/mm2以上、又は300個/mm2超であり、また、上限は制限されないが、例えば100000個/mm2以下、又は50000個/mm2以下、又は10000個/mm2以下である。
(d-3)生地組成物の粉砕物の14質量%水スラリーをラピッドビスコアナライザを用いて50℃から140℃まで昇温速度12.5℃/分で昇温して測定した場合の糊化ピーク温度が、95℃超、又は100℃以上、又は105℃以上、又は110℃以上であり、また、上限は制限されないが、例えば140℃以下、又は135℃以下、又は130℃以下である。
[項63]糊化ピーク温度の温度低下差分が50℃以下、又は45℃以下、又は40℃以下、又は35℃以下、又は30℃以下、また、下限は制限されないが、例えば0℃以上、中でも1℃以上、又は2℃以上、又は3℃以上、又は4℃以上、又は5℃以上となるように加温処理を施した項62に記載の豆類及び/又は雑穀類
[項64]
項38~61の何れか一項に記載の製造方法の段階(i)に使用するためのオオバコ種皮の酵素処理物。
[項65]酵素処理がキシラナーゼ及び/又はペクチナーゼ処理である、項64に記載のオオバコ種皮の酵素処理物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加熱処理後も膨化状態が保持されると共に、膨化食品独特の食感が付与された、でんぷんを主成分とする膨化組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体的な実施の形態に即して詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
【0011】
なお、本発明において任意の数値範囲規定について複数の上限値及び/又は複数の下限値を示す場合、特に明示されない場合であっても少なくとも上限規定の最大値と下限規定の最小値とを組み合わせた数値範囲規定が直接的に記載されており、さらに当該上限値のうち任意の上限値と当該下限値のうち任意の下限値とを組み合わせて得られる全ての数値範囲が本発明の対象として意図される。例えば、後述のAUC1の範囲規定における「通常60%超・・・中でも63%超、又は65%超、又は67%超、特には70%超とすることが好ましい」及び「通常100%以下、又は90%以下、又は80%以下とすることができる」との記載は、開示された上限と下限とを任意で組み合わせて得られる全ての数値範囲、即ち、60%超100%以下、60%超90%以下、60%超80%以下、63%超100%以下、63%超90%以下、63%超80%以下、65%超100%以下、65%超90%以下、65%超80%以下、67%超100%以下、67%超90%以下、67%超80%以下、70%超100%以下、70%超90%以下、及び70%超80%以下の全てが本発明の対象に含まれることを意味する。
【0012】
[でんぷん含有膨化組成物]
本発明の一側面は、でんぷんを含有する膨化組成物(以下、適宜「本発明のでんぷん含有膨化組成物」、「本発明の膨化組成物」、又は単に「本発明の組成物」と称する。)に関する。本発明において「膨化組成物」とは、組成物内部に一定サイズ以上の空隙を有する組成物を意味する。典型的には、生地組成物内部における液体又は気体が膨張することでその空隙体積を増大させ、その後に組成物を冷却することで硬化させることにより製造することができる。具体的には、乾燥した食用植物を含む原料に圧力をかけた後に一気に常圧下に開放することによって、原料中の水分を膨張・蒸発させ膨らませたシリアルパフや、乾燥した食用植物の粉末に水を加えて加熱・加圧しながら混練することで生地組成物とし、その後生地組成物を急速に圧力低下させることによって組成物内部の水分が急速に気化してその空隙体積を増大させ、組成物を膨張させつつ気化熱によって生地組成物を冷却硬化させることにより製造するシリアルパフ等が挙げられる。また、生地組成物内部で膨張剤(典型的には加熱によりガスを生成するベーキングパウダー、又は炭酸水素ナトリウム(重曹)、又は炭酸水素アンモニウム)や酵母発酵によって生じた気体を、加熱処理によって膨張させることでその空隙体積を増大させ、その後に生地組成物を冷却硬化させることにより製造した塊状膨化組成物であるブレッド又はそれに類するワッフルなどの食品(ブレッド様食品と称する場合がある)も含まれる。なお、膨化食品組成物には、膨化組成物を所望の形状に成形したシリアルパフ又はブレッド食品も含まれる。また、本発明の膨化食品組成物には、発酵工程(特に酵母による発酵工程)を含む製造方法により製造される発酵膨化組成物に加えて、斯かる発酵工程を含まない製造方法により製造される無発酵膨化組成物(例えばパフ、チップス、クリスプなど)も含まれる。
【0013】
[乾量基準含水率]
本発明の膨化組成物は、組成物の乾量基準含水率が、所定範囲内であることを好ましい特徴とする。具体的に、本発明の膨化組成物の乾量基準含水率は、例えば0質量%以上150質量%未満の範囲とすることができる。より具体的に、本発明の組成物の乾量基準含水率の上限は、通常150質量%未満であるが、中でも140質量%未満、又は130質量%未満、又は120質量%未満、又は110質量%未満、又は100質量%未満、又は90質量%未満、又は80質量%未満、又は70質量%未満、又は60質量%未満、又は50質量%未満、又は40質量%未満、又は30質量%未満、中でも26質量%未満、又は21質量%未満、又は16質量%未満、又は10質量%未満であってもよい。一方、本発明の組成物中の乾量基準含水率の下限は、制限されるものではないが、工業上の生産効率という観点から、例えば0質量%以上、又は0.5質量%以上、又は1質量%以上、又は2質量%以上、又は5質量%以上とすることができる。なお、本発明の組成物中の乾量基準含水率は、組成物の各種成分に由来するものであってもよいが、更に添加された水に由来するものであってもよい。また、加工前の生地組成物中に含有される乾量基準含水率が高い場合に、乾燥処理などを採用することで前述の数値に調整する工程を採用することができる。
【0014】
また、発酵工程(特に酵母による発酵工程)を含む製造方法により製造される発酵膨化組成物(例えばブレッド又はブレッド様食品など)においては、その乾量基準含水率が比較的高いことが好ましい。具体的に、発酵膨化組成物の乾量基準含水率は、例えば50質量%以上150質量%未満の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は、通常150質量%未満、中でも125質量%未満、又は110質量%未満であってもよい。一方、その下限は、制限されるものではないが、工業上の生産効率という観点から、例えば50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上とすることができる。
【0015】
また、発酵工程(特に酵母による発酵工程)を含まない製造方法により製造される無発酵膨化組成物(例えばパフ、チップス、クリスプなど)においては、その乾量基準含水率が比較的低いことが好ましい。具体的に、無発酵膨化組成物の乾量基準含水率は、例えば0.5質量%以上30質量%未満の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は、通常30質量%未満、中でも26質量%未満、又は21質量%未満、又は16質量%未満、又は10質量%未満であってもよい。一方、その下限は、制限されるものではないが、工業上の生産効率という観点から、例えば0.5質量%以上、又は1質量%以上、又は2質量%以上、又は5質量%以上とすることができる。
【0016】
本発明において「乾量基準含水率」とは、本発明の組成物の原料に由来する水分量と別途添加した水分量の合計量の、固形分の合計量に対する割合を意味する。その数値は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、減圧加熱乾燥法で90℃に加温することで測定する。具体的には、あらかじめ恒量になったはかり容器(W0)に適量の試料を採取して秤量し(W1)、常圧において、所定の温度(より詳しくは90℃)に調節した減圧電気定温乾燥器中に、はかり容器の蓋をとるか、口を開けた状態で入れ、扉を閉じ、真空ポンプを作動させて、所定の減圧度において一定時間乾燥し、真空ポンプを止め、乾燥空気を送って常圧に戻し、はかり容器を取り出し、蓋をしてデシケーター中で放冷後、質量をはかる。そのようにして恒量になるまで乾燥、放冷、秤量する(W2)ことを繰り返し、次の計算式で水分含量(乾量基準含水率)(質量%)を求める。
【0017】
【数1】
【0018】
[食物繊維含量]
本発明の膨化組成物は、組成物の食物繊維含量(中でも、限定されるものではないが、好ましくは不溶性食物繊維含量)が、所定範囲内であることを好ましい特徴とする。具体的に、本発明の膨化組成物の食物繊維含量は、乾燥質量換算で例えば3.0質量%以上40質量%未満の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は、乾燥質量換算で通常3.0質量%以上である。中でも3.5質量%以上、又は4.0質量%以上、又は4.5質量%以上、又は5.0質量%以上、又は6.0質量%以上、又は7.0質量%以上、又は8.0質量%以上、又は9.0質量%以上、特に10.0質量%以上とすることが好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、乾燥質量換算で例えば通常40質量%以下、又は35質量%以下、又は30質量%以下とすることができる。なお、「食物繊維含量(可溶性食物繊維含量と不溶性食物繊維含量の合算値である「食物繊維総量」)」「可溶性食物繊維」「不溶性食物繊維」については、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、プロスキー変法で測定する。また、本発明において「乾燥質量」とは、前述の「水分含量(乾量基準含水率)」から算出される水分含有量を組成物等全体の質量から除いた残分の質量を表し、「乾燥質量換算」とは組成物の乾燥質量を分母、各成分の含有量を分子として算出される、各成分の含有割合を表す。
【0019】
本発明の組成物に含まれる食物繊維の由来は、特に制限されるものではなく、食物繊維を含有する食用植物等の各種天然材料に由来するものでもよく、合成されたものでもよい。天然材料に由来する場合、各種材料に含有される食物繊維を単離、精製して用いてもよいが、斯かる食物繊維を含有する材料をそのまま用いてもよく、食物繊維が各種材料(特に豆類及び/又は雑穀類)に含有された状態の食物繊維であることが好ましい。例えば穀類由来(特に雑穀類由来)のもの、豆類由来のもの、芋類由来のもの、野菜類由来のもの、種実類由来のもの、果実類由来のものなどを用いることができるが、雑穀類由来のもの、豆類由来のものが組成物のテクスチャの観点からより好ましく、豆類由来のものが更に好ましく、特にエンドウ由来のものが好ましく、黄色エンドウ由来のものが最も好ましい。具体的には、組成物全体の総食物繊維含有量に対する、豆類由来食物繊維及び/又は雑穀類由来食物繊維の合計含有量(好ましくは豆類食物繊維含有量)の比率が、例えば5質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、当該比率の下限は、通常5質量%以上、中でも10質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上であることが好ましい。一方、当該比率の上限は特に制限されないが、通常100質量%、又は100質量%以下である。また、食物繊維が豆類由来である場合、種皮ありの状態で使用しても、皮なしの状態で使用してもよいが、種皮付きの豆類を用いる方が食物繊維を多く含有できるため好ましい。雑穀類についてもふすま付きの状態で使用しても、ふすま無しの状態で使用してもよいが、ふすま付きの雑穀類を用いる方が食物繊維を多く含有できるため好ましい。
【0020】
また、本発明の組成物(特に発酵膨化組成物)において、一定割合以上のオオバコ種皮(サイリウムハスク)由来食物繊維を含有することが好ましい。具体的には、組成物全体の総食物繊維含有量に対する、オオバコ種皮由来食物繊維含有量の比率が、例えば5質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、当該比率の下限は、通常5質量%以上、中でも10質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが、通常100質量%以下、又は90質量%以下、又は80質量%以下である。また、食物繊維が豆類由来である場合、種皮ありの状態で使用しても、種皮なしの状態で使用してもよいが、種皮付きの豆類を用いる方が食物繊維を多く含有できるため好ましい。雑穀類についてもふすま付きの状態で使用しても、ふすま無しの状態で使用してもよいが、ふすま付きの雑穀類を用いる方が食物繊維を多く含有できるため好ましい。
【0021】
また、本発明の組成物中の食物繊維(中でも、限定されるものではないが、好ましくは不溶性食物繊維)は、単離された純品として組成物に配合されたものであってもよいが、豆類及び/又は雑穀類に含有された状態で組成物に配合されていることが好ましい。具体的には、組成物全体の総食物繊維含有量に対する、豆類及び/又は雑穀類(好ましくは豆類)に含有された状態で配合されている食物繊維含有量の比率が、例えば10質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、当該比率の下限は、通常10質量%以上、中でも20質量%以上、又は30質量%以上、又は40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが、通常100質量%、又は100質量%以下である。特に組成物全体の総食物繊維含有量に対する、豆類及び/又は雑穀類、好ましくは豆類に含有された状態で配合されている食物繊維含有量の比率が上記規定を充足することが好ましく、食物繊維が不溶性食物繊維である場合に上記規定を充足することが好ましい。なお、本発明の組成物に含まれる食物繊維の組成は、特に制限されるものではない。但し、食物繊維全体(特に不溶性食物繊維全体)に占めるリグニン(中でも酸可溶性リグニン)の比率が一定値以上であると、食感改善効果がより顕著に得られやすくなる。具体的には、食物繊維全体に占めるリグニン(中でも酸可溶性リグニン)の比率は、乾燥質量換算で、通常5質量%以上、中でも10質量%以上、又は30質量%以上であることが好ましい。
【0022】
[でんぷん含量]
本発明の膨化組成物は、組成物全体のでんぷん含量が、所定範囲内であることを好ましい特徴とする。具体的に、本発明の膨化組成物全体のでんぷん含量は、乾燥質量換算で例えば15質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、当該比率の下限は、乾燥質量換算で通常15質量%以上である。中でも20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、又は45質量%以上とすることが好ましい。一方、当該比率の上限は特に制限されないが、乾燥質量換算で例えば通常100質量%以下、又は90質量%以下、又は80質量%以下、又は70質量%以下、又は65質量%以下とすることができる。
【0023】
本発明の組成物中のでんぷんの由来は特に制限されない。例としては、植物由来のものや動物由来のものが挙げられるが、豆類由来でんぷん及び/又は雑穀類由来でんぷんが好ましい。具体的には、組成物全体の総でんぷん含有量に対する、豆類由来でんぷん及び/又は雑穀類由来でんぷんの合計含有量、好ましくは豆類でんぷん含有量の比率が、例えば30質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、当該比率の下限は、通常30質量%以上、中でも40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上であることが好ましい。一方、当該比率の上限は特に制限されないが、通常100質量%、又は100質量%以下である。豆類由来でんぷんとしては、特にエンドウ由来のものが好ましく、黄色エンドウ由来のものが最も好ましい。雑穀類由来でんぷんとしては、オーツ麦由来のものが好ましい。豆類については後述する。また上記でんぷんが豆類及び/又は雑穀類に含有された状態であることが好ましい。
【0024】
本発明の組成物中のでんぷんは、単離された純品として組成物に配合されたものであってもよいが、豆類及び/又は雑穀類に含有された状態で組成物に配合されていることが好ましい。具体的には、組成物全体の総でんぷん含有量に対する、豆類及び/又は雑穀類に含有された状態で配合されているでんぷん合計含有量(好ましくは豆類に含有された状態で配合されているでんぷん含有量)の比率が、例えば30質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、当該比率の下限は、通常30質量%以上、中でも40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上であることが好ましい。一方、当該比率の上限は特に制限されないが、通常100質量%、又は100質量%以下である。
【0025】
なお、本発明において、組成物中のでんぷん含有量は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、AOAC996.11の方法に従い、80%エタノール抽出処理により、測定値に影響する可溶性炭水化物(ぶどう糖、麦芽糖、マルトデキストリン等)を除去した方法で測定する。
【0026】
[でんぷんの糊化度]
本発明の膨化組成物は、組成物中のでんぷんの糊化度が、所定範囲内であることを好ましい特徴とする。具体的に、本発明の膨化組成物中のでんぷんの糊化度は、例えば50質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は、通常50質量%以上である。中でも55質量%以上、又は60質量%以上、又は65質量%以上、又は70質量%以上、又は75質量%以上、又は80質量%以上、又は85質量%以上、又は90質量%以上とすることが好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、例えば通常100質量%以下、又は99質量%以下とすることができる。なお、組成物の糊化度は、関税中央分析所報を一部改変したグルコアミラーゼ第二法(Japan Food Research Laboratories社メソッドに従う:https://web.archive.org/web/20200611054551/https://www.jfrl.or.jp/storage/file/221.pdf又はhttps://www.jfrl.or.jp/storage/file/221.pdf)を用いて測定する。
【0027】
[分子量分布曲線MWDC 3.5-8.0 に関する特徴]
本発明の膨化組成物は、下記[手順a]により処理して得られた成分を下記[条件A]の下で分析して得られる、分子量対数が3.5以上8.0未満の範囲における分子量分布曲線(MWDC3.5-8.0)において、好ましくは以下の特徴を有する。
[手順a]組成物を粉砕処理した後、エタノール不溶性かつジメチルスルホキシド可溶性の成分を得る。
[条件A]1M水酸化ナトリウム水溶液に[手順a]により処理して得られた成分を0.30質量%溶解し、37℃で30分静置後、等倍量の水と等倍量の溶離液とを加え、5μmフィルターろ過したろ液5mLをゲルろ過クロマトグラフィーに供し、分子量分布を測定する。
【0028】
具体的には、本発明の組成物は、下記[手順a]により処理して得られた成分を、下記[条件A]の下で分析して得られる分子量分布曲線から求められる、質量平均分子量(「質量平均分子量」と称される場合もある。)の対数、並びに、分子量分布曲線の全曲線下面積(分子量対数が3.5以上8.0未満の範囲における分子量分布曲線の曲線下面積)に対する、分子量対数が3.5以上6.5未満の区間における曲線下面積の割合(これを適宜「AUC1」と称する。)、及び、分子量対数が6.5以上8.0未満の区間における曲線下面積の割合(これを適宜「AUC2」と称する。)が、所定の条件を満たすことを好ましい特徴とする。
【0029】
なお、本発明において「分子量分布」又は「分子量分布曲線」とは、横軸(X軸)に分子量対数を均等間隔にプロットし、縦軸(Y軸)に測定範囲全体におけるRIディテクター測定値合計に対する、各分子量対数における測定値の百分率(%)をプロットして得られる分布図を表す。また、下記[手順a]により処理して得られた成分を、下記[条件A]の下で分析して得られる分子量分布曲線からの曲線下面積の算出に際しては、測定範囲内の最低値が0となるように曲線全体を数値補正した上で、分子量対数を横軸(X軸)に均等間隔にプロットして曲線下面積を算出することで、品質影響が大きいものの分子量換算では過小評価される低分子量画分(AUC1付近の画分)について適切に評価することができる。なお、分子量対数が溶出時間と比例する特性を利用して、オーブン温度40℃、流速1mL/分で、単位時間0.5秒毎に分析して得られる測定値における溶出時間を、分子量既知の直鎖型標準プルランマーカー溶出時間との比較で分子対数換算することで、本発明における分子量対数が均等間隔にプロットされた分子量分布曲線を得ることができる。
【0030】
・[手順a]:
前記[手順a]は、組成物を粉砕して処理(又は粉砕脱脂処理)した後、エタノール不溶性かつジメチルスルホキシド可溶性の成分を得る手順である。斯かる[手順a]の技術的意義は、でんぷんのエタノール不溶性、ジメチルスルホキシド可溶性の性質を利用して精製されでんぷん濃度を高めた成分(「手順aにより処理して得られた成分」と称する場合がある)を得ることで、ゲルろ過クロマトグラフィー実施中のカラム閉塞を防ぎ、分析の精度及び再現性を高めることにある。
【0031】
なお、本[手順a]における粉砕処理は、組成物を十分に均質化できる方法であればよいが、例えばホモジナイザーNS52(マイクロテックニチオン社製)を用いて、例えば25000rpmで30秒破砕処理することにより行えばよい。
【0032】
また、本[手順a]において、特に脂質が多く含まれる組成物(例えば全油脂分含量が乾燥質量換算で10質量%以上、中でも15質量%以上、特に20質量%以上の組成物)でカラム閉塞を防ぐ観点から任意でヘキサンによる脱脂処理を行ってもよい。その場合は、例えば以下のように行えばよい。即ち、(i)粉砕組成物を20倍量のヘキサン(CAS110-54-3、富士フイルム和光純薬社製)で処理し、混合する。次に、(ii)遠心分離(4300rpmで3分:スイングローター)して上清を除去することにより行えばよい。油脂を残留させないといった観点から、前記(i)~(ii)を2回行うことが好ましい。
【0033】
また、本[手順a]における粉砕組成物(又は粉砕脱脂組成物)からのエタノール不溶性かつジメチルスルホキシド可溶性の成分の抽出は、限定されるものではないが、例えば以下のように行えばよい。即ち、(i)組成物を粉砕した後に任意で脱脂処理を施した組成物に対して、当初使用した粉砕組成物を基準として32倍量のジメチルスルホキシド(CAS67-68-5、富士フイルム和光純薬社製)を添加し、攪拌しながら90℃で15分間恒温処理することで溶解させ、恒温処理後の溶解液を遠心分離(アングルローターを用いて12000rpmで3分間処理)することによって得られた上清(組成物中におけるジメチルスルホキシド可溶性成分が溶解した状態のジメチルスルホキシド溶液(これを適宜「ジメチルスルホキシド溶液」と称する場合もある。))を回収し、ジメチルスルホキシド溶液を取得する。続いて、(ii)得られたジメチルスルホキシド溶液に対して、3倍量の99.5%エタノールを添加し、混合した後、遠心分離(スイングローターを用いて4300rpmで3分間処理)することによってエタノール不溶性成分である沈殿画分を回収する。その後、(iii)前記(ii)を3回繰り返し、最終的に得られた沈殿物を減圧乾燥することで、粉砕組成物(又は粉砕脱脂組成物)からエタノール不溶性かつジメチルスルホキシド可溶性の成分を取得することができる。
【0034】
・[条件A]:
前記[条件A]は、1M水酸化ナトリウム水溶液に手順aにより処理して得られた成分を0.30質量%溶解し、37℃で30分静置後、等倍量の水と等倍量の溶離液(例えば0.05M NaOH/0.2% NaClを用いる)とを加え、5μmフィルターろ過したろ液5mLをゲルろ過クロマトグラフィーに供し、分子量対数が3.5以上8.0未満の範囲における分子量分布を測定するという条件である。
【0035】
斯かる[条件A]の技術的意義は、アルカリ条件下で水に溶解させたでんぷんからフィルターろ過で不溶性の粗い異物を取り除くことで、ゲルろ過クロマトグラフィー実施中のカラム閉塞を防ぎ、分析の精度及び再現性を高めることである。
【0036】
・[ゲルろ過クロマトグラフィー]:
本発明では、前記[手順a]により処理して得られた成分を、前記[条件A]の下で得られた前記のろ液についてゲルろ過クロマトグラフィーに供し、分子量対数が3.5以上8.0未満の範囲における分子量分布を測定する。こうして得られた分子量分布曲線を測定範囲内における最低値が0となるようにデータ補正を行った上で分析することにより、質量平均分子量対数と、AUC1(分子量分布曲線から求められる全曲線下面積全体に対する、分子量対数が3.5以上6.5未満の区間における曲線下面積の割合)及びAUC2(分子量分布曲線から求められる全曲線下面積全体に対する、分子量対数が6.5以上8.0未満の区間における曲線下面積の割合)を取得することができる。よって、ゲルろ過クロマトグラフィーは、これらの値を得られるように適切に設定することが望ましい。具体的には、分子量対数が3.5以上8.0未満の区間における分子量分布曲線全体のシグナル強度(RIディテクター測定値)合計値を分母として、各分子量対数におけるシグナル強度割合を算出し、区間全体における分子量対数から換算した分子量とシグナル強度割合との乗算値を合計することで質量平均分子量を算出した。
【0037】
このため、本発明では、ゲルろ過クロマトグラフィーのゲルろ過カラムとしては、比較的高分子側(分子量対数6.5以上8.0未満)及び比較的低分子側(分子量対数3.5以上6.5未満)の排除限界分子量(Da)対数値を有するゲルろ過カラムを併用して用いることが好ましい。また、前記範囲内の異なる排除限界分子量を有する複数のゲルろ過カラムを使用し、これらを分析上流側から順に、排除限界分子量の大きいものから小さいものへと直列(タンデム状)に連結するカラム構成を採用することがより好ましい。こうした構成とすることで、AUC2に相当する分子量対数(6.5以上8.0未満)を有するでんぷんを、より小さなAUC1に相当する分子量対数(3.5以上6.5未満)を有するでんぷんから分離し、各パラメーターを適切に測定することが可能となる。
【0038】
このようなゲルろ過カラムの組合せの具体例としては、例えば以下の4本のカラムを直列に連結する組合せが挙げられる。
・TOYOPEARL HW-75S(東ソー社製、排除限界分子量(対数):7.7Da、平均細孔径100nm以上、Φ2cm×30cm):2本。
・TOYOPEARL HW-65S(東ソー社製、排除限界分子量(対数):6.6Da、平均細孔径100nm、Φ2cm×30cm):1本。
・TOYOPEARL HW-55S(東ソー社製、排除限界分子量(対数):5.8Da、平均細孔径50nm、Φ2cm×30cm):1本。
【0039】
ゲルろ過クロマトグラフィーの溶離液としては、限定されるものではないが、例えば0.05M NaOH/0.2% NaCl等を用いることが出来る。
【0040】
ゲルろ過クロマトグラフィーの条件としては、限定されるものではないが、例えばオーブン温度40℃、流速1mL/分で、単位時間0.5秒毎に分析を行うことができる。
【0041】
ゲルろ過クロマトグラフィーの検出機器としては、限定されるものではないが、例えばRIディテクター(東ソー社製RI-8021)等が挙げられる。
【0042】
ゲルろ過クロマトグラフィーのデータ解析法としては、限定されるものではないが、具体例としては以下が挙げられる。即ち、検出機器から得られた測定値のうち、測定対象の分子量対数範囲(3.5以上8.0未満)内の値について、測定範囲内における最低値が0となるようにデータ補正を行った上で、ピークトップ分子量1660000とピークトップ分子量380000のサイズ排除クロマトグラフィー用直鎖型標準プルランマーカー2点(例えば、昭和電工社製のP400(DP2200、MW380000)及びP1600(DP9650、MW1660000)等)のピークトップ溶出時間から較正曲線を用いて、分子量対数が溶出時間と比例する特性を利用して各溶出時間を質量分子量の対数値(分子量対数、質量分子量対数と称する場合もある)に換算する。このように溶出時間(より具体的にはオーブン温度40℃、流速1mL/分で、単位時間0.5秒毎に分析して得られる溶出時間)を分子量対数値に換算することで、分子量対数値が均等な間隔で分布する測定データを得ることができる。また、測定対象の任意の分子量対数範囲(例えば3.5以上8.0未満)内の各溶出時間における検出機器の測定値の合計を100とした場合の、各溶出時間(分子量対数)における測定値を百分率で表すことで、測定サンプルの分子量分布(X軸:分子量対数、Y軸:測定範囲全体におけるRIディテクター測定値合計に対する、各分子量対数における測定値の百分率(%))を算出し、分子量分布曲線を作成することができる。
【0043】
・AUC1(MWDC 3.5-8.0 の全曲線下面積に対する分子量対数3.5以上6.5未満の曲線下面積の割合):
本発明の膨化組成物は、前記分子量分布曲線MWDC3.5-8.0における全曲線下面積に対する分子量対数3.5以上6.5未満の区間における曲線下面積の割合(以下AUC1とする。)が、所定範囲内であることを好ましい特徴とする。具体的に、本発明の膨化組成物の前記AUC1は、例えば60%超100%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は、通常60%超である。中でも63%超、又は65%超、又は67%超、特には70%超とすることが好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、例えば通常100%以下、又は90%以下、又は80%以下とすることができる。
【0044】
また、本発明の膨化組成物におけるAUC1が分子量分布曲線MWDC5.0-8.0における全曲線下面積に対する分子量対数5.0以上6.5未満の区間における曲線下面積の割合であることがより好ましい。すなわち、前記分子量分布曲線MWDC5.0-8.0における全曲線下面積に対する分子量対数5.0以上6.5未満の区間における曲線下面積の割合が、所定範囲内であることをより好ましい特徴とする。具体的に、本発明の膨化組成物における当該割合は、例えば60%超100%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は、通常60%超である。中でも63%超、又は65%超、又は67%超、特には70%超とすることが好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、例えば通常100%以下、又は90%以下、又は80%以下とすることができる。
【0045】
・AUC2(MWDC 3.5-8.0 の全曲線下面積に対する分子量対数6.5以上8.0未満の曲線下面積の割合):
本発明の膨化組成物は、前記分子量分布曲線MWDC3.5-8.0における全曲線下面積に対する分子量対数が6.5以上8.0未満の区間における曲線下面積の割合(以下AUC2とする。)が、所定範囲内であることを好ましい特徴とする。具体的に、本発明の膨化組成物の前記AUC2は、例えば0%以上40%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は、通常40%以下であることが好ましい。中でも35%以下、又は35%未満、又は30%未満、又は25%未満、又は20%未満、又は15%未満、又は10%未満とすることが好ましい。一方、その下限は特に制限されないが、例えば通常0%以上、又は3%以上、又は5%以上とすることができる。
【0046】
また本発明の膨化組成物におけるAUC2が、分子量分布曲線MWDC5.0-8.0における全曲線下面積に対する分子量対数が6.5以上8.0未満の区間における曲線下面積の割合であることがより好ましい。すなわち、分子量分布曲線MWDC5.0-8.0における全曲線下面積に対する分子量対数が6.5以上8.0未満の区間における曲線下面積の割合が、所定範囲内であることをより好ましい特徴とする。具体的に、本発明の膨化組成物の当該割合は、例えば0%以上40%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は、通常40%以下であることが好ましい。中でも35%以下、又は35%未満、又は30%未満、又は25%未満、又は20%未満、又は15%未満、又は10%未満とすることが好ましい。一方、その下限は特に制限されないが、例えば通常0%以上、又は3%以上、又は5%以上とすることができる。
【0047】
・AUC1に対するAUC2の比:
本発明の膨化組成物は、前記AUC1に対する前記AUC2の比([AUC2]/[AUC1])が、所定範囲内であることを好ましい特徴とする。具体的に、本発明の膨化組成物の前記の比[AUC2]/[AUC1]は、例えば0.00以上0.68未満の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は、通常0.68未満であることが好ましい。中でも0.67未満、又は0.65未満、又は0.61未満、又は0.56未満、又は0.51未満、又は0.45未満、又は0.40未満、又は0.35未満、又は0.30未満、又は0.25未満、又は0.20未満、又は0.15未満とすることが好ましい。一方、その下限は特に制限されないが、例えば通常0.00以上、又は0.03以上、又は0.05以上とすることができる。
【0048】
[分子量分布曲線MWDC 6.5-9.5 に関する特徴]
本発明の膨化組成物は、前記[手順a]により処理して得られた成分を前記[条件A]の下で分析して得られる、分子量対数が6.5以上9.5未満の範囲における分子量分布曲線(MWDC6.5-9.5)において、好ましくは以下の特徴を有する。
【0049】
・AUC3(MWDC 6.5-9.5 の全曲線下面積に対する分子量対数6.5以上8.0未満の曲線下面積の割合):
本発明の膨化組成物は、前記分子量分布曲線MWDC6.5-9.5に対する分子量対数が6.5以上8.0未満の区間の曲線下面積の割合(以下AUC3とする。)が、所定範囲内であることを好ましい特徴とする。具体的に、本発明の膨化組成物の前記AUC3は、例えば30%以上100%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は、通常30%以上であることが好ましい。中でも40%以上、又は50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上とすることが好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、例えば通常100%以下とすることができる。その理由は定かではないが、でんぷんに含まれるアミロペクチン(分子量対数が6.5以上9.5未満の範囲の画分に含有されると考えられる)のうち、比較的低分子のアミロペクチン割合が所定の値より大きくなることで、膨化食品独特の食感が感じられやすい組成物となるため好ましく、豆類及び/又は雑穀類に由来する比較的低分子のアミロペクチンによって当該割合が所定の値より大きくなることがさらに好ましい品質となると考えられる。また、米などの比較的高分子のアミロペクチンを多く含む穀類の割合が高くなることで、AUC3が低くなる傾向がある。
【0050】
・AUC4(MWDC 3.5-6.5 の全曲線下面積に対する分子量対数3.5以上5.0未満の曲線下面積の割合):
本発明の膨化組成物は、前記分子量分布曲線MWDC3.5-6.5に対する分子量対数が3.5以上5.0未満の区間の曲線下面積の割合(以下AUC4とする。)が、所定範囲内であることを好ましい特徴とする。具体的に、本発明の膨化組成物の前記AUC4は、例えば8%以上100%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は、通常8%以上であることが好ましい。中でも10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上、又は30%以上、又は35%以上、又は40%以上、又は45%以上、又は50%以上とすることが好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、例えば通常100%以下、又は80%以下、又は60%以下とすることができる。その理由は定かではないが、でんぷんに含まれるアミロース(分子量対数が5.0以上6.5未満の範囲の画分に含有されると考えられる)の一部又は全部が、さらに低分子のデキストリン(分子量対数が3.5以上5.0未満の範囲の画分に含有されると考えられる)に分解した割合が所定の値より大きくなることで、膨化食品独特の食感が感じられやすい組成物となるため好ましい品質となると考えられる。
【0051】
[でんぷん粒構造]
本発明の膨化組成物は、でんぷん粒構造が破壊された組成物であることで、なめらかな食感が奏されるため好ましい。具体的には、本発明の膨化組成物は、下記(a)及び/又は(b)を充足することが好ましく、(a)と(b)を共に充足することがさらに好ましい。
(a)組成物の粉砕物の6%懸濁液を観察した場合に認められるでんぷん粒構造が、40個/mm2以下である。
(b)ラピッドビスコアナライザを用いて14質量%の組成物粉砕物水スラリーを50℃から140℃まで昇温速度12.5℃/分で昇温して測定した場合の糊化ピーク温度が95℃以下である。
【0052】
・(a)膨化組成物におけるでんぷん粒構造:
具体的に、本発明の膨化組成物は、以下の条件下で観察されたでんぷん粒構造の数が、例えば0個/mm2以上300個/mm2以下の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は、通常300個/mm2以下、中でも250個/mm2以下、又は200個/mm2以下、又は150個/mm2以下、又は100個/mm2以下、又は50個/mm2以下、又は40個/mm2以下、又は30個/mm2以下、又は20個/mm2以下、又は10個/mm2以下、又は5個/mm2以下であることが好ましい。一方、その下限は特に制限されないが、通常0個/mm2以上とすることができる。
【0053】
上記(a)におけるでんぷん粒構造とは、平面画像中で直径1~50μm程度の円状の形状を有する、よう素染色性を有する構造であり、例えば、組成物の粉砕物を水に懸濁してなる6%の水懸濁液を調製し、拡大視野の下で観察することができる。具体的には、組成物の粉砕物を目開き150μmの篩で分級し、150μmパスの組成物粉末3mgを水50μLに懸濁することにより、組成物粉末の6%懸濁液を調製する。本懸濁液を載置したプレパラートを作製し、位相差顕微鏡にて偏光観察するか、又はよう素染色したものを光学顕微鏡にて観察すればよい。拡大率は制限されないが、例えば拡大倍率100倍又は200倍とすることができる。プレパラートにおけるでんぷん粒構造の分布が一様である場合は、代表視野を観察することでプレパラート全体のでんぷん粒構造の割合を推定することができるが、その分布に偏りが認められる場合は、有限の(例えば2箇所以上、例えば5箇所又は10箇所の)視野を観察し、観察結果を合算することで、プレパラート全体の測定値とすることができる。その理由は定かではないが、高加水条件下(例えば乾量基準含水率で、上限が40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、また、下限が250質量%以下、又は200質量%以下)において生地素組成物中の空隙が膨張する際にでんぷん粒が破壊されると考えられる。
【0054】
・(b)膨化組成物におけるRVA糊化ピーク温度:
また、本発明の膨化組成物は、以下の条件下で測定された糊化ピーク温度が、例えば50℃超95℃以下の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は、通常95℃以下、中でも90℃以下、又は85℃以下、又は80℃以下であることが好ましい。一方、でんぷん粒が破壊された組成物においても、構成成分が加水膨潤して疑似的に糊化ピーク温度を示す場合もあるため、その下限は特に制限されないが、通常50℃超、又は55℃以上、又は60℃以上とすることができる。
【0055】
上記(b)におけるラピッドビスコアナライザ(RVA)としては、測定対象物を140℃まで昇温可能な装置であればどのような装置であっても用いることができるが、例えば、Perten社製のRVA4800を用いることができる。RVAにて昇温速度12.5℃/分で測定したときの糊化ピーク温度は、具体的には以下の手順で測定する。即ち、乾燥質量3.5gの組成物試料を粉砕(例えば100メッシュパス(目開き150μm)120メッシュオン(目開き125μm)となるまで粉砕)した後、RVA測定用アルミカップに量りとり、蒸留水を加えて全量が28.5gとなるように調製した14質量%の試料水スラリー(単に「組成物粉砕物水スラリー」又は「試料水スラリー」と称する場合がある)を、上記[手順a]でのRVA粘度測定に供する。14質量%の組成物粉砕物水スラリーについて、50℃で測定を開始し、測定開始時~測定開始10秒後までの回転数を960rpm、測定開始10秒後~測定終了までの回転数を160rpmとし、50℃で1分間保持後、50℃~140℃までの昇温速度12.5℃/分で昇温工程を開始し、糊化ピーク温度(℃)を測定する。
【0056】
本発明では、でんぷん粒構造が多い組成物においてはでんぷん粒構造の加水膨潤に伴う粘度上昇が起こりやすく、糊化ピーク温度も比較的高温になる傾向がある。従って、このように測定した糊化ピーク温度が所定温度より高くなり、好ましい効果が奏される。具体的にはその温度は例えば95℃超140℃以下の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は、95℃超、中でも100℃以上、又は105℃以上、又は110℃以上であることが好ましい。でんぷん粒が破壊された組成物においても、構成成分が加水膨潤して疑似的に糊化ピーク温度を示す場合もあるため、その上限は特に制限されないが、通常140℃以下、又は135℃以下、又は130℃以下とすることができる。
【0057】
本発明における糊化ピーク温度とは、RVA昇温工程において所定温度範囲内での最高粘度(cP)を示した後に粘度が減少傾向に転じた際の温度(℃)を表し、でんぷん粒の耐熱性を反映した指標である。例えば、測定開始直後の50℃保持段階における粘度が最高であり、その後は粘度低下する組成物については、糊化ピーク温度は50℃となり、50℃~140℃までの昇温段階の任意の温度T℃(50≦T≦140)における粘度が最高であり、T℃以降の昇温段階においては粘度低下する組成物については、糊化ピーク温度はT℃となり、140℃保持段階における粘度が最高粘度である組成物については、糊化ピーク温度は140℃となる。
【0058】
[質量平均分子量対数に関する特徴]
本発明の膨化組成物は、前記[手順a]により処理して得られた成分を前記[条件A]で分析して得られる質量平均分子量対数が、所定範囲内であることを好ましい特徴とする。具体的に、本発明の膨化組成物の前記質量平均分子量対数は、例えば5.0超7.5未満の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は、通常7.5未満であることが好ましい。中でも7.0未満、又は6.5未満、又は6.0未満とすることが好ましい。本発明の膨化組成物は、その質量平均分子量対数が前記上限値未満であることで、膨化食品独特の食感が感じられやすくなるという効果を奏しやすくなる。一方、その下限は特に制限されないが、例えば通常5.0超、又は5.5超とすることができる。
【0059】
[よう素染色時吸光度]
本発明の膨化組成物は、前記[手順a]により処理して得られた成分を前記[条件A]の下で分離し、質量分子量対数5.0以上6.5未満の分離画分を回収し、pH7.0に調整した試料1質量部を、9質量部のよう素溶液(0.25mM)で染色して測定した660nmの吸光度を測定し、これをブランクである(測定試料を含まない)0.25mMよう素溶液における660nmの吸光度から差し引いて校正した値(これを適宜「ABS5.0-6.5」と称する。)が、所定範囲内であることを好ましい特徴とする。具体的に、本発明の膨化組成物の前記ABS5.0-6.5は、例えば0.10以上3.50以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は、通常0.10以上であることが好ましい。中でも0.15以上、又は0.20以上、又は0.25以上、又は0.30以上、又は0.35以上、又は0.40以上、又は0.45以上、又は0.50以上、又は0.55以上、又は0.60以上、又は0.65以上、又は0.70以上、又は0.75以上、又は0.80以上とすることが好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、例えば通常3.50以下、又は3.00以下、又は2.50とすることができる。
【0060】
なお、前記ABS5.0-6.5の値の詳細な測定方法は、以下の通りである。まず、組成物を前記[手順a]により処理して、精製されでんぷん濃度を高めた成分を取得する。次に、この[手順a]により処理して得られた成分を前記[条件A]の下で分離して、分子量対数5.0以上6.5未満の分離画分を回収する。前記[手順a]及び前記[条件A]の詳細については、先に詳述したとおりである。続いて、得られた分離画分をpH7.0に調整した後、その試料1質量部を、9質量部の0.25mMよう素溶液に投入し、常温(20℃)で3分間静置後、吸光度測定に供する。吸光度測定に際しては、試料添加前のよう素溶液(対照)と組成物添加後のよう素溶液の各々について、通常の分光光度計(例えば島津製作所社製UV-1800)によって光路長10mmの角セルを用いて吸光度(吸光波長660nm)を測定し、両者の吸光度差分(試料添加後のよう素溶液の吸光度-試料添加前のよう素溶液の吸光度)を算出し、これをABS5.0-6.5として求めればよい。
【0061】
また、本発明の組成物は、前述の分子量対数5.0以上6.5未満の分離画分が、比較的分子量が大きい分子量対数6.5以上8.0未満の分離画分と比較して、高いよう素染色性を有することが好ましい。具体的には、組成物を前記[手順a]により処理して得られた成分を前記[条件A]の下で分離して回収される、分子量対数6.5以上8.0未満の分離画分をpH7.0に調整し、その試料1質量部を、9質量部の0.25mMよう素溶液に投入して染色した場合の吸光波長660nmにおける吸光度を測定し、これをブランクである(測定試料を含まない)0.25mMよう素溶液の吸光波長660nmにおける吸光度から差し引いて校正した値(これを適宜「ABS6.5-8.0」と称する。)を求めた場合に、当該ABS6.5-8.0の前記ABS5.0-6.5に対する比の値(ABS5.0-6.5/ABS6.5-8.0)が規定値以上であることが好ましい。
【0062】
本発明の組成物は、斯かる手順で得られたABS5.0-6.5/ABS6.5-8.0の値が、例えば1.0超10.0以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常1.0超、中でも1.1超、又は1.2超、又は1.3超、又は1.4超、又は1.5超、又は1.6超、又は1.7超、又は1.8超、又は1.9超、特には2.0超であることが望ましい。一方、斯かる値の上限は、特に制限されるものではないが、通常10.0以下、又は8.0以下である。その原理は不明であるが、熱分解されたでんぷんの割合が、分解元のでんぷんに対して相対的に多く含有されることで、良好な品質になるためであると推測される。
【0063】
なお、ABS6.5-8.0の測定方法の詳細は、分子量対数6.5以上8.0未満の分離画分を用いることを除けば、前述したABS5.0-6.5の測定方法の詳細と同一である。
【0064】
また、本発明におけるよう素溶液とは、よう素を0.05mol/L含有するよう素よう化カリウム溶液(本発明において単に「0.05mol/Lよう素溶液」又は「0.05mol/Lよう素液」と称する場合がある。)の希釈液を指し、特に指定が無い場合、水93.7質量%、よう化カリウム0.24mol/L(4.0質量%)、よう素0.05mol/L(1.3質量%)混合よう素よう化カリウム溶液(富士フイルム和光純薬社製「0.05mol/Lよう素溶液(製品コード091-00475)」)を希釈して用いる。また、当該「0.05mol/Lよう素溶液」を水で200倍に希釈することで、「0.25mMよう素溶液」を得ることができる。
【0065】
[でんぷん・タンパク質分解処理後、超音波処理後粒子径d 50
本発明の膨化組成物は、組成物に下記[手順b]によるでんぷん及びタンパク質分解処理を加え、次いで超音波処理を加えてから測定した粒子径分布において、好ましくは以下の特徴を有する。
[手順b]組成物の6質量%水懸濁液を、0.4容量%のプロテアーゼ及び0.02質量%のα-アミラーゼにより20℃で3日間処理する。
【0066】
本発明の膨化組成物は、前記[手順b]によりでんぷん及びタンパク質分解処理を加え、次いで超音波処理を加えてから測定した粒子径分布における粒子径d50が、所定範囲内である。これにより、膨化食品独特の食感が付与されつつ加熱処理後も膨化状態が保持される組成物となるため好ましい。その原理は不明であるが、でんぷんを主成分とした支持構造を有する本発明において、これら成分が支持構造を補強することで、膨化食品独特の食感が付与された組成物となると考えられる。一方で、これら成分が一定以上の大きさであると、でんぷんを主成分とした支持構造を貫通し、加熱処理後の膨化状態が保持できなくなるため、一定以下の大きさであることが好ましいと考えられる。具体的に、本発明の膨化組成物の前記粒子径分布における粒子径d50は、例えば1μm以上450μm未満の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は、通常450μm未満である。中でも410μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は260μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、又は80μm以下、又は60μm以下、特に50μm以下であることが更に好ましい。一方、斯かる粒子径d50の下限は、特に制限されるものではないが、通常1μm以上、より好ましくは3μm以上、又は5μm以上であることが好ましい。
【0067】
なお、斯かる粒子径分布は、主に組成物中の不溶性食物繊維や多糖類(主にセルロース、キシラン、ペクチン)等のアミラーゼ、プロテアーゼ非分解性成分の粒子径分布を反映した値であると考えられる。組成物における当該粒子径を調整するためには、あらかじめ原料における不溶性食物繊維や多糖類サイズを調整したものを用いることが好ましい。具体的には、物理的な破砕処理又はセルラーゼやペクチナーゼなどの酵素処理によって原料におけるそれら成分サイズが規定範囲となるように調整されたものを用いることが好ましい。セルラーゼやペクチナーゼやキシラナーゼなどの酵素処理を施した原料を用いる場合、いずれか一種のみを用いてもよいが、少なくともペクチナーゼ及び/又はキシラナーゼを用いて処理することが好ましい。またペクチナーゼを用いて処理する場合、ペクチナーゼとセルラーゼを併用することが好ましい。
【0068】
具体的に、セルラーゼとしては、セルロース分解酵素活性を有するものであれば任意の酵素を用いることができるが、例えば天野エンザイム社製セルラーゼT「アマノ」4(表2中「Cel-1」)、天野エンザイム社製セルラーゼA「アマノ」3(後記表2中「Cel-2」)を用いることができる。また、ペクチナーゼとしてはペクチン分解酵素活性を有するものであれば任意の酵素を用いることができるが、例えば天野エンザイム社製ペクチナーゼG「アマノ」(後記表2中「Pec」)を用いることができる。また、キシラナーゼとしてはキシラン分解酵素活性を有するものであれば任意の酵素を用いることができるが、例えば天野エンザイム社製ヘミセルラーゼ「アマノ」90(キシラナーゼ)(後記表2中「xyl」)を用いることができる。但し、セルラーゼ、ペクチナーゼ、及びキシラナーゼはこれらの具体例に限定されるものではなく、それぞれの基質分解特性を有する酵素であれば、他にも任意の酵素を用いることが可能である。また、2以上の基質を分解する場合、それら基質の各々を分解する活性を有する複数の酵素を混合して用いてもよいが、それら2以上の基質を分解する活性を兼ね備えた酵素を用いてもよい(例えば、ペクチンとキシランを共に分解する場合、ペクチナーゼとキシラナーゼとを混合しても用いてもよいが、ペクチナーゼ活性とキシラナーゼ活性とを兼ね備えた酵素を用いてもよい。
【0069】
なお、微生物発酵(特に酵母発酵)を行う発酵膨化組成物(例えばブレッド又はブレッド様食品など)においては、発酵前の生地にセルラーゼやペクチナーゼやキシラナーゼなどの酵素を添加することで、発酵処理と並行して酵素処理を行ってもよく、食物繊維含有原料(特に不溶性食物繊維含有原料)に予め酵素処理を行ったものを原料として使用してもよい。特に、食用植物の一種であって通常食用に供される野草であるオオバコにおける食物繊維局在部位である種皮部(オオバコ種皮又はサイリウムハスクと称される場合がある)を上記酵素によって処理したものを用いることで、良好な膨化物となり、特に後述する組成物内部における空隙の加重平均周囲長をα、空隙の加重平均面積をβとした場合に、α/βの値が所定範囲の組成物となるため好ましい。さらに、オオバコにおける種皮部の酵素処理物に加えて豆類の食物繊維局在部位(より具体的には豆類の種皮部、特にエンドウの種皮部)又は雑穀類(例えばオーツ麦)の食物繊維局在部位(より具体的にはふすま部、特にオーツ麦のふすま部)のうち1以上の酵素処理物を共に含有することで、膨化組成物の食感が改善されるためより好ましい。さらには、オオバコにおける種皮部の酵素処理物と雑穀類の食物繊維局在部位(より具体的にはふすま部、特に前述の酵素処理された状態のふすま部)の酵素処理物とを共に含有することで、本発明の効果が好ましく奏された発酵膨化組成物となるためさらに好ましい。オオバコにおける種皮部と豆類又は雑穀類の食物繊維局在部位との酵素処理はそれぞれの部位に対して異なる工程で行ったものを用いてもよく、同時に行ったものを用いてもよい。また、生地組成物中において酵素を添加することで段階(i)及び/又は段階(ii)において同時に酵素処理を行ってもよく、主に段階(ii)において酵素処理を行ってもよい。
【0070】
また、本発明の組成物は、食用植物における食物繊維(すなわち可溶性食物繊維と不溶性食物繊維の合計)局在部位を含有することがより好ましい。具体的には、組成物全体の合計質量に対する食物繊維局在部位の割合としては、乾燥質量基準割合で例えば0.1質量%以上20質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、0.1質量%以上であることが好ましい。より好ましくは0.2質量%以上、さらには0.3質量%以上、又は0.4質量%以上、又は0.5質量%以上、又は1.0質量%以上、又は1.5質量%以上が好ましい。一方、上限は通常限定されないが、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらには10質量%以下、又は7.5質量%以下、又は5.0質量%以下としてもよい。また、食物繊維局在部位であるオオバコ種皮(サイリウムハスク)の割合が、乾燥質量基準割合で例えば0.1質量%以上20質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、0.1質量%以上であることが好ましい。より好ましくは0.2質量%以上、さらには0.3質量%以上、又は0.4質量%以上、又は0.5質量%以上、又は1.0質量%以上、又は1.5質量%以上が好ましい。一方、上限は通常限定されないが、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらには10質量%以下、又は7.5質量%以下、又は5.0質量%以下としてもよい。
【0071】
また、本発明の組成物は、豆類の種皮部を食物繊維局在部位(より具体的には不溶性食物繊維局在部位)として上記割合で含有することで、特に無発酵膨化組成物(例えばパフ、チップス、クリスプなど)において、本発明の効果が奏されやすく、特に後述する組成物内部における空隙の加重平均周囲長をα、空隙の加重平均面積をβとした場合に、α/βの値が所定範囲の組成物となるため好ましい。
【0072】
また、本発明における膨化食品組成物は、食用植物の食物繊維(可溶性食物繊維と不溶性食物繊維の合計)局在部位を含有することが好ましい。具体的には、本発明の膨化食品組成物における豆類及び/又は雑穀類の可食部及び食用植物の食物繊維局在部位の合計含有率、好ましくは豆類の可食部並びに食用植物の食物繊維局在部位の合計含有率、特に豆類の可食部及び豆類の食物繊維局在部位との合計含有率及び/又は雑穀類の可食部及び雑穀類の食物繊維局在部位との合計含有率は、乾燥質量換算で例えば10質量%以上100質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、10質量%以上であることが好ましい。中でも15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、特には50質量%以上であることが好ましい。一方、前記含有率の上限としては、特に限定されるものではないが、通常100質量%以下、又は97質量%以下、又は95質量%以下、又は93質量%以下、又は90質量%以下とすることができる。特に同一の豆類における可食部及び食物繊維局在部位(例えばエンドウをはじめとする種皮付きの豆類をそのまま用いたもの、又は豆類の可食部と種皮部を分離して加工を行った後再び混合したもの)、同一の雑穀類における可食部及び食物繊維局在部位(例えばオーツ麦をはじめとするふすま部付きの雑穀類をそのまま用いたもの、又は雑穀類の可食部とふすま部を分離して加工を行った後再び混合したもの)を使用することが好ましい。
【0073】
また、食用植物の食物繊維局在部位として豆類の種皮部、オオバコ種皮部又は雑穀類のふすま部のいずれか1種以上を、前記可食部と共に所定割合含有することが好ましく、同じ分類の食品における可食部と食物繊維局在部位を共に含有する(すなわち、豆類の可食部と食物繊維局在部位として豆類の種皮部を共に含有する又は雑穀類の可食部と食物繊維局在部位としてふすま部を共に含有する)ことが好ましい。豆類及び/又は雑穀類の食物繊維局在部位は、当該部位を含む豆類及び/又は雑穀類を用いることによっても含有させてもよく、豆類及び/又は雑穀類から分離した当該部位を別途用いることによって含有させてもよい。さらに、食物繊維局在部位が不溶性食物繊維局在部位であってもよく、さらに豆類及び/又は雑穀類の可食部及び食用植物の不溶性食物繊維局在部位の合計含有率が上記割合であることが好ましい。すなわちその含有率は、乾燥質量換算で例えば10質量%以上100質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、10質量%以上であることが好ましい。中でも15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、特には50質量%以上であることが好ましい。一方、前記含有率の上限としては、特に限定されるものではないが、通常100質量%以下、又は97質量%以下、又は95質量%以下、又は93質量%以下、好ましくは90質量%以下とすることができる。
【0074】
また、豆類の可食部及び豆類の食物繊維局在部位の合計含有率は、乾燥質量換算で例えば10質量%以上100質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、10質量%以上であることが好ましい。中でも15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、特には50質量%以上であることが好ましい。一方、前記含有率の上限としては、特に限定されるものではないが、通常100質量%以下、又は97質量%以下、又は95質量%以下、又は93質量%以下、又は90質量%以下とすることができる。
【0075】
また、雑穀類の可食部及び雑穀類の食物繊維局在部位との合計含有率は、乾燥質量換算で例えば10質量%以上100質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、10質量%以上であることが好ましい。中でも15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、特には50質量%以上であることが好ましい。一方、前記含有率の上限としては、特に限定されるものではないが、通常100質量%以下、又は97質量%以下、又は95質量%以下、又は93質量%以下、又は90質量%以下とすることができる。
【0076】
また、豆類及び/又は雑穀類の可食部及び食用植物の食物繊維局在部位を共に微細化した微細化豆類(例えばエンドウをはじめとする種皮付きの豆類をそのまま微細化したもの、又は豆類の可食部と種皮部を分離して任意の段階で微細化処理を行った後再び混合したもの、又は豆類の微細化可食部と微細化種皮部を分離して加工した後再び混合したもの)及び/又は微細化雑穀類(例えばオーツ麦をはじめとするふすま部付きの雑穀類をそのまま微細化したもの、又は雑穀類の可食部とふすま部を分離して任意の段階で微細化処理を行った後再び混合したもの、又は雑穀類の微細化可食部と微細化ふすま部を分離して加工した後再び混合したもの)の状態で含有することがさらに好ましい。
【0077】
また、通常食用に供される野草であるオオバコにおける種皮部(オオバコ種皮又はサイリウムハスク)を食物繊維局在部位(より具体的には可溶性食物繊維及び不溶性食物繊維局在部位)として上記割合で含有することで、特に発酵膨化組成物(例えばブレッド又はブレッド様食品など)において、本発明の効果が奏されやすく、特に後述する組成物内部における空隙の加重平均周囲長をα、空隙の加重平均面積をβとした場合に、α/βの値が所定範囲の組成物となるため好ましい。さらに、前述する酵素処理(具体的にはセルラーゼ及び/又はペクチナーゼ及び/又はキシラナーゼによって処理されることが好ましく、特に少なくともペクチナーゼ及び/又はキシラナーゼによって処理されることが好ましい)された状態のオオバコ種皮部を上記割合で含有することが好ましい。また、豆類の種皮部とオオバコ種皮部(特に酵素処理された状態のオオバコ種皮部)とを共に含有することが好ましく、その合計含有量が上記割合であることが好ましい。さらに、オオバコにおける種皮部に加えて豆類の食物繊維局在部位(より具体的には豆類の種皮部、特にエンドウの種皮部)又は雑穀類(例えばオーツ麦)の食物繊維局在部位(より具体的にはふすま部、特に前述の酵素処理された状態のふすま部)のうち1以上を共に含有することで膨化組成物の食感が改善されるためより好ましく、さらにオオバコにおける種皮部と雑穀類の食物繊維局在部位(より具体的にはふすま部、特に前述の酵素処理された状態のふすま部)を共に含有することで本発明の効果が好ましく奏された組成物(特に発酵膨化組成物)となる。
【0078】
組成物中の不溶性食物繊維や多糖類等の粒子径分布を測定するためのより具体的な手順としては、例えば以下のとおりである。組成物300mgを5mLの水と共にプラスチックチューブに入れ、20℃で1時間程度膨潤させた後、小型ヒスコトロン(マイクロテックニチオン社製ホモジナイザーNS-310E3)を用いて粥状の物性となるまで処理し組成物の6質量%水懸濁液を調製する(10000rpmで15秒程度)。その後、処理後サンプル2.5mLを分取し、プロテアーゼ(タカラバイオ社製、Proteinase K)10μL、αアミラーゼ(Sigma社製、α-Amylase from Bacillus subtilis)0.5mgを加え、20℃にて3日間反応させる。反応終了後、得られたプロテアーゼ、アミラーゼ処理組成物に対して、超音波処理を加えてから、その粒子径分布を測定すればよい。
【0079】
プロテアーゼ、アミラーゼ処理組成物の超音波処理後の粒子径分布の測定は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、以下の条件に従って行うものとする。測定時の溶媒は、組成物中の構造に影響を与え難いエタノールを用いる。測定に使用されるレーザー回折式粒度分布測定装置としては、特に制限されるものではないが、例えばマイクロトラック・ベル株式会社のMicrotrac MT3300 EXIIシステムを使用することができる。測定アプリケーションソフトウェアとしては、特に制限されるものではないが、例えばDMS2(Data Management System version2、マイクロトラック・ベル株式会社)を使用することができる。前記の測定装置及びソフトウェアを使用する場合、測定に際しては、同ソフトウェアの洗浄ボタンを押下して洗浄を実施したのち、同ソフトウェアのSet zeroボタンを押下してゼロ合わせを実施し、サンプルローディングでサンプルの濃度が適正範囲内に入るまでサンプルを直接投入すればよい。擾乱前のサンプル、即ち超音波処理を行なわないサンプルは、サンプル投入後のサンプルローディング2回以内にその濃度を適正範囲内に調整した後、直ちに流速60%で10秒の測定時間でレーザー回折した結果を測定値とする。一方、擾乱後のサンプル、即ち超音波処理を行ったサンプルを測定する場合、サンプル投入後に前記の測定装置を用いて超音波処理を行い、続いて測定を行う。その場合、超音波処理を行っていないサンプルを投入し、サンプルローディングにて濃度を適正範囲内に調整した後、同ソフトの超音波処理ボタンを押下して超音波処理を行う。その後、3回の脱泡処理を行った上で、再度サンプルローディング処理を行い、濃度が依然として適正範囲であることを確認した後、速やかに流速60%で10秒の測定時間でレーザー回折した結果を測定値とする。測定時のパラメーターとしては、例えば分布表示:体積、粒子屈折率:1.60、溶媒屈折率:1.36、測定上限(μm)=2000.00μm、測定下限(μm)=0.021μmとする。
【0080】
なお、本発明において「粒子径d50」(あるいは「粒子径d90」)とは、測定対象の粒子径分布を体積基準で測定し、ある粒子径から2つに分けたとき、大きい側の粒子頻度%の累積値の割合と、小さい側の粒子頻度%の累積値の割合との比が、50:50(あるいは10:90)となる粒子径として定義される。また、本発明において「超音波処理」とは、特に断りがない限り、前述のようにレーザー回折式粒度分布測定装置内で測定溶媒に分散された状態の測定対象物に対して、周波数40kHzの超音波を出力40Wにて3分間の処理をすることを意味する。さらに、本規定に限らず粒子径分布はすべて体積基準で測定する。
【0081】
[空隙率]
本発明の膨化組成物は、組成物を-25℃で凍結後、ある切断面Aに沿って厚さ30μmに切断した組成物凍結切片Aにおける合計空隙率が、所定範囲内であることを好ましい特徴とする。また、切断面Aと直交する切断面Bにおいて共に空隙率等の規定を充足することが好ましい。さらに切断面Aが少なくとも組成物の長手方向と直交する切断面で切断して得られる凍結切片における切断面であることが好ましく、中でも切断面Aと直交する切断面Bにおいて共に空隙率等の規定を充足することが好ましい。この場合、切断面Aは長手方向に対して直交する切断面であり、切断面Bは長手方向に対して平行な切断面であることが好ましい。なお、組成物の長手方向が複数存在する場合においては、任意の方向を採用することができ、切断面Aとその直行切断面Bとを評価することで組成物全体の特性をより正確に評価することができる。
【0082】
なお、本発明における組成物の「長手方向」とは、組成物が内接する最小体積の仮想直方体の長辺方向を表し、組成物の「短手方向」とは、長手方向に垂直の方向を表す。なお、組成物の長手方向が複数存在する場合においては、任意の方向を採用することができる。
【0083】
具体的に、本発明の膨化組成物の前記合計空隙率は、例えば1%超90%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常1%超であることが好ましい。中でも2%超、又は3%超、又は4%超、又は5%超、又は6%超、又は7%超、又は8%超、又は9%超、又は10%超、又は11%超、又は12%超、又は13%超、又は14%超、又は15%超、又は20%超、特に30%超が好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、通常90%以下、又は80%以下である。
【0084】
さらに、本発明の膨化組成物の合計空隙面積に対する閉孔部の占める割合が、例えば20%以上100%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常20%以上、中でも30%以上、又は40%以上、又は50%以上であることが、膨化しやすさの観点から好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、通常100%以下、又は90%以下である。
【0085】
また、本発明の膨化組成物の組成物面積に対する各閉孔部の合計面積が、例えば1%超50%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常1%超、中でも2%超、又は3%超であることが好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、通常50%以下、又は40%以下、又は30%以下である。
【0086】
空隙率等の測定に際しては、後述する方法で作成した凍結切片を、例えば拡大倍率200倍の顕微鏡の視野下に配置し、画素数1360×1024のカラー写真を撮影して解析に供することで組成物内部の合計空隙率等を測定することができる。具体的には、組成物画像における隣接する凸部の頂点同士を、最短の距離をもって組成物画像と交わらないように線分で結んだ包絡周囲に囲まれた包絡面積(包絡周囲に囲まれた画素数)から組成物面積(空隙等以外の実体を有する組成物撮像を構成する画素数)を差し引いた差分(合計空隙面積)の、組成物面積に対する割合(合計空隙面積/組成物面積)を合計空隙率として算出した。即ち、本発明における「空隙」とは、開孔部と閉孔部がどちらも含まれうる概念である。
【0087】
また、本発明の膨化組成物は、その閉孔部が前記空隙率に関する規定を充足することがより好ましい。すなわち、合計閉孔部面積/組成物面積によって求められる合計閉孔部割合が、例えば1%超90%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常1%超、中でも2%超、又は3%超、又は4%超、又は5%超、又は6%超、又は7%超、又は8%超、又は9%超、又は10%超、又は11%超、又は12%超、又は13%超、又は14%超、又は15%超、又は20%超、特に30%超となることが好ましい。一方、合計閉孔部割合の上限は特に制限されないが、通常90%以下、又は80%以下とすることができる。
【0088】
[空隙の加重平均周囲長/空隙の加重平均面積]
本発明の組成物は、組成物内部における空隙の加重平均周囲長をα、空隙の加重平均面積をβとした場合に、α/βの値が所定範囲を充足することが好ましい。具体的に、本発明の組成物のα/β値は、例えば0.00%以上1.5%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は、通常1.5%以下、又は1.4%以下、又は1.3%以下、又は1.2%以下、又は1.1%以下、又は1.0%以下、又は0.9%以下、又は0.8%以下、又は0.7%以下、又は0.6%以下、又は0.5%以下であることが好ましい。組成物のα/βの値が前記上限値以下であることにより、空隙部が崩壊しにくい組成物となる傾向があるので好ましい。組成物のα/βが一定以下であることで空隙部の崩壊性が改善するその原理は不明であるが、組成物を十分な加水条件下で加熱することで、組成物の空隙を包囲するでんぷん粒が崩壊し、空隙壁面を構成する支持構造の凹凸が少ない組成物となっている可能性がある。一方、本発明の組成物のα/β値の下限は、制限されるものではないが、例えば通常0.00%以上、又は0.005%以上、又は0.01%以上、又は0.02%以上、又は0.03%以上、又は0.04%以上、又は0.05%以上、又は0.10%以上、又は0.15%以上とすることができる。
【0089】
本発明において、組成物の空隙部の形状的特徴、即ち「周囲長」及び「面積」は、組成物の2次元断面画像(例えば非破壊で組成物内部空隙形状を評価できるX線CTスキャン画像等)に基づいて決定することができる。即ち、組成物仮想切断面A1をX線CTスキャンによる2次元断面画像として取得して評価することができる。その場合、組成物の空隙部の「周囲長」とは、組成物の2次元断面画像上において、ある空隙部の角を丸めた輪郭長を、画素の一辺の長さを「一画素」として画素数換算で算出して得られる値を表す。斯かる空隙部の「周囲長」は、内部に入り組んだ輪郭を有しない空隙部の方が小さい値が得られる。具体的には、空隙部画像(2画素×2画素以上)を構成する画素のうち、原則として、他の画素と接しておらずかつ空隙部の輪郭を形成する辺の画素数を合計して算出されるが、例外的にその直交する二辺のみで他の画素と接する画素については、角を丸めるためにその対角線長を画素数として算出する。従って、凹凸が小さい空隙を有する組成物はその空隙面積(β)に対する周囲長(α)が相対的に小さくなるため、α/βは比較的小さな値が得られる。
【0090】
また、2次元断面画像によって空隙率を決定することもできる。即ち、切断面Aに対応する仮想切断面A1、さらに切断面A、Bに対応する仮想切断面A1、B1が前述した空隙率の規定を充足することが好ましい。本発明において組成物の空隙部の「面積」とは、組成物の2次元断面画像上において、ある空隙部を構成する全画素数に相当する面積を表す。なお、空隙部の輪郭部に重なる画素は、全て空隙部を構成する画素としてカウントするものとする。なお、仮想切断面A1と直交する仮想切断面B1において共にα/β等の規定を充足することが好ましい。また、仮想切断面A1が少なくとも組成物の長手方向と直交する切断面であることが好ましく、さらに仮想切断面A1と直交する仮想切断面B1において共にα/β等の規定を充足することが好ましい。この場合、仮想切断面A1は長手方向に対して直交する切断面であり、仮想切断面B1は長手方向に対して平行な切断面であることが好ましい。なお、組成物の長手方向が複数存在する場合においては、任意の方向を採用することができ、仮想切断面A1とその直行仮想切断面B1とを評価することで組成物全体の特性をより正確に評価することができる。
【0091】
本発明において、組成物の空隙部の「加重平均周囲長」は、各空隙の周囲長値を重みとして用いて算出することができ、組成物の空隙部の「加重平均面積」は、各空隙の面積値を重みとして用いて算出することができる。具体的には、全空隙における測定値(空隙面積、空隙周囲長)合計を100とした場合の、各空隙における測定値(空隙面積、空隙周囲長)の百分率を算出し、当該割合に更に重みとして各空隙における測定値(空隙面積、空隙周囲長)を用いて乗算した値を各空隙において算出し(各空隙における測定値の2乗/全空隙における測定値合計)、全空隙における当該算出値合計を加重平均値とすればよい。なお、空隙部の形状に関する上記何れのパラメーターも、拡大画像を解析する場合は、長さ既知の撮像(スケールバーなど)を画素数換算することで、それぞれの数値を実測値に換算することができる。
【0092】
本発明において、組成物の空隙部の「加重平均周囲長」及び「加重平均面積」を求めるより具体的な手法について、X線CTスキャナによって得られた組成物の2次元断面画像を用いる場合を例として説明する。例えば、拡大倍率200倍の画像生成が可能なマイクロフォーカスCTスキャナ(例えばBaker Hughes社製のphoenix v|tome|x m)を用いて、組成物断面のX線透過画像を撮像する。より具体的には、例えば、Baker Hughes社製のphoenix v|tome|x mによって、ナノフォーカスモードで、以下の撮影条件の下、組成物を回転させながら、撮影角度の異なる900スポット(360°/900スポットで撮影)のX線透過画像を撮影する。こうして得られた画像から、2次元断面画像(拡大倍率200倍、画素数2000×2000、200μm画素)を生成・取得する。
【0093】
<撮影条件>
X線管タイプ:ナノフォーカス・オープンチューブ
最小検出能:1μm
管電圧:30kV
tube current:300μA
Timing:500m秒
scan rate:2(各スポット3枚撮影し、最初の1枚を廃棄)
Filter:none
【0094】
こうして得られた2次元断面画像における密度比重階級値のうち、バックグラウンド(主に空気と考えられる)に由来すると考えられるピークを除いた補正画像を作成する。得られた補正画像をグレースケール化し、二値化した後、白抜きされた画素(すなわち、元の写真中の空隙に相当する画素)のうち、その四辺の何れかで接する画素同士を連結した画素集合体であって、他の画素集合体から独立したものを全て抽出して「空隙部」としてその形状等を評価する。二値化に際しては判別分析法を用いて、二値化した時の背景とパターン領域に関するクラス内分散とクラス間分散の分散比が最大になるように閾値を決定する。具体的には粒子解析ver.3.5(日鉄テクノロジー社製)を用いて、グレースケール化した画像を二値化することができる。次に、これらの画素集合体のうち、視野の外辺にその一部又は全部が重なっているものを除いた画素集合体を、解析対象として選択する。なお、白抜きされた画素集合体の内部に独立した黒い画素が存在する場合(すなわち、撮像中の空隙内部に、スポット状のドット等が存在する場合)、斯かる画素は無視して面積を算出する。こうして選択された空隙部について、その形状に関するパラメーターとして、上記の手順により空隙周囲長及び空隙面積等を測定・算出すればよい。これらのパラメーターの測定・算出は、画像内の形状を解析可能な種々公知の画像解析ソフトを用いて行うことができる。
【0095】
[密度(かさ密度)]
本発明の膨化組成物は、膨化によりその密度(「かさ密度」また「密度比重」と称される場合もある)が所定の値未満であることが好ましい。具体的には、本発明の組成物の密度(かさ密度)は、例えば0.10g/cm3超1.0g/cm3未満の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は、通常1.0g/cm3未満、中でも0.90g/cm3未満、又は0.80g/cm3未満、又は0.70g/cm3未満、又は0.60g/cm3未満であることが好ましい。一方、その下限は特に限定されないが、例えば通常0.10g/cm3超、又は0.15g/cm3超、又は0.20g/cm3超、又は0.25g/cm3超、又は0.30g/cm3超である。
【0096】
なお、本発明の組成物の密度(かさ密度)は、組成物の質量を、組成物の見かけ体積(「組成物自身の体積」「組成物表面における外部と連通した細孔の体積」「内部空隙の体積」を合算した体積)によって除することで求められる値である。その測定方法としては、例えば約100gの組成物(m)の組成物見かけ体積(Vf)を測定し、m/Vfを用いて組成物密度(g/mL)を計算することができる。なお、密度の値は、「比重(4℃大気圧下℃における水の密度0.999972g/cm3に対する、ある物質の密度の比)」の値とほぼ一致するため、上記規定における数値を無単位数とした比重によって規定してもよい。
【0097】
[タンパク質含量]
本発明の膨化組成物は、組成物のタンパク質含量が、所定範囲内であることを好ましい特徴とする。具体的に、本発明の膨化組成物の前記タンパク質含量は、通常乾燥質量換算で、例えば3.0質量%以上40質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、3.0質量%以上であることが好ましい。中でも4.0質量%以上、又は5.0質量%以上、又は6.0質量%以上、又は7.0質量%以上、又は8.0質量%以上、又は9.0質量%以上、又は10質量%以上、又は11質量%以上、又は12質量%以上、又は13質量%以上、又は14質量%以上、又は15質量%以上、又は16質量%以上、又は17質量%以上、又は18質量%以上とすることが好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、例えば通常40質量%以下、又は30質量%以下、又は25質量%以下、又は20質量%以下とすることができる。
【0098】
本発明の組成物中のタンパク質の由来は特に制限されない。例としては、植物由来のものや動物由来のものが挙げられるが、豆類及び/又は雑穀類由来のタンパク質が好ましい。具体的には、組成物全体の総タンパク質含有量に対する、豆類由来及び/又は雑穀類由来のタンパク質合計含有量(好ましくは豆類由来のタンパク質含有量)の比率が、例えば10質量%以上100質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常10質量%以上、中でも20質量%以上、又は30質量%以上、又は40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上であることが好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、通常100質量%、又は100質量%以下である。豆類由来タンパク質としては、特にエンドウ由来のものが好ましく、黄色エンドウ由来のものが最も好ましい。雑穀類由来タンパク質としては、オーツ麦由来タンパク質が好ましい。
【0099】
本発明の組成物中のタンパク質は、単離された純品として組成物に配合されたものであってもよいが、豆類及び/又は雑穀類に含有された状態で組成物に配合されていることが好ましい。具体的には、組成物全体の総タンパク質含有量に対する、豆類及び/又は雑穀類に含有された状態で配合されているタンパク質合計含有量(好ましくは豆類に含有された状態で配合されているタンパク質含有量)の比率が、例えば10質量%以上100質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常10質量%以上、中でも20質量%以上、又は30質量%以上、又は40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上であることが好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、通常100質量%、又は100質量%以下である。
【0100】
なお、本発明において、組成物中のタンパク質含有量は、食品表示法(「食品表示基準について」(平成27年3月30日消食表第139号))に規定された燃焼法(改良デュマ法)を用いて測定された全窒素割合に、「窒素-タンパク質換算係数」を乗じて算出する方法で測定する。
【0101】
[CFW線色に関する特徴]
本発明の膨化組成物は、組成物を-25℃で凍結後、ある切断面Aに沿って厚さ30μmに切断した組成物凍結切片Aをカルコフロールホワイト(CFW)染色し、蛍光顕微鏡観察した場合におけるCFW被染色部位について、好ましくは以下の特徴を有する。
【0102】
・組成物の凍結切片の作製及び観察:
本発明では、組成物を-25℃で凍結した組成物凍結物について、特定の切断面に沿って厚さ30μmに切断した凍結切片を作製し、これを未染色の状態で観察して組成物における空隙率等を測定することができ、また、当該凍結切片をCFW染色して観察することで、組成物中の不溶性食物繊維形状やサイズを測定することができる。
【0103】
具体的に、組成物の凍結切片の作製及びCFW染色下での観察は、制限されるものではないが、例えば以下の手順で行うことが好ましい。すなわち、組成物を、Kawamoto, ""Use of a new adhesive film for the preparation of multi-urpose fresh-frozensections from hard tissues, whole-animals, insects and plants"", Arch. Histol. Cytol., (2003), 66[2]:123-43に記載の川本法に従って、-25℃で厚さ30μmに切断することにより、凍結切片を作製する。こうして得られた組成物の凍結切片を未染色の状態で拡大視野の下で観察して空隙率等を測定してもよいが、例えばCFW(Calcofluor White:18909-100ml-F、シグマアルドリッチ社製)で染色することで不溶性食物繊維が主体のCFW被染色部位の形状、サイズ等を観察することができる。より具体的には、スライドガラスに吸着させた組成物の凍結切片に、CFWを1μL添加して混合し、カバーガラスを載せて、蛍光顕微鏡(例えばキーエンス社製の蛍光顕微鏡BZ-9000)により、適切なフィルターを用いて、拡大視野の下で観察する。観察時の蛍光顕微鏡の拡大率は制限されないが、例えば拡大倍率200倍の顕微鏡の視野下に配置し、例えば画素数1360×1024のカラー写真を撮影して解析に供する。
【0104】
・組成物凍結切片のCFW被染色部位の形状の測定:
前記手順で撮影された組成物凍結切片のCFW染色写真について、以下の方法で各被染色部位の形状を測定する。
【0105】
即ち、CFW染色凍結切片を200倍視野の蛍光顕微鏡視野下で観察、撮影した撮像を画像解析し、CFW被染色部位を画素集合体として抽出する。得られた画像上の各CFW被染色部位(最長径1μm以上)について、輪郭線上の2点間の最大距離を、各CFW被染色部位の「最長径」として求める。また、「各被染色部位画像の最長径÷当該最長径に対し平行な2本の直線で画像上の各CFW被染色部位の輪郭を挟んだ際の当該平行直線間の距離」を、各CFW被染色部位の「アスペクト比」として求める。こうして得られた画像上のCFW被染色部位の最長径又はアスペクト比につ
いて算術平均値を求め、評価に供する。
【0106】
なお、被染色部位の形状に関する上記何れのパラメーターも、顕微鏡の拡大画像を解析する場合は、長さ既知の撮像(スケールバーなど)を画素数換算することで、それぞれの数値を実測値に換算することができる。
【0107】
こうして選択された被染色部位について、その形状に関するパラメーターとして、面積、面積率、周囲長、円形度係数等を測定する。これらのパラメーターの測定は、画像内の形状を解析可能な種々公知の画像解析ソフトを用いて行うことができる。
【0108】
なお、本発明において被染色部位の「面積」とは、ある被染色部位を形成する全画素数に相当する面積を表す。
【0109】
具体的に、本発明の膨化組成物において、前記CFW被染色部位の最長径平均値は、例えば1μm以上450μm未満の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は、通常450μm未満であることが好ましい。中でも400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、又は80μm以下、又は60μm以下、特に50μm以下であることが更に好ましい。一方、斯かる不溶性食物繊維の粒子径d50の下限は、特に制限されるものではないが、通常1μm以上、又は3μm以上であることが好ましい。
【0110】
また、本発明の膨化組成物において、前記CFW被染色部位のアスペクト比の算術平均値が、例えば1.1以上5.0以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は、通常5.0以下、又は4.5以下、又は4.0以下、又は3.5以下、又は3.0以下、又は2.5以下、特に2.0以下であることが好ましい。斯かるCFW被染色部位のアスペクト比の平均値が前記範囲を超えると、本発明の効果が奏されにくくなる場合がある。一方、斯かるCFW被染色部位アスペクト比の算術平均値の下限は、特に制限されるものではないが、通常1.1以上、又は1.3以上であることが更に好ましい。
【0111】
また、本発明の膨化組成物において、前記CFW被染色部位の少なくとも一部が、よう素被染色部位中に包埋されていることが好ましい。中でも、前記CFW被染色部位のうち、よう素被染色部位中に包埋されている部位の割合は、例えば50%以上100%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが、通常100%、又は100%以下である。前記CFW被染色部位の少なくとも一部(好ましくは前記下限値以上の割合)がよう素被染色部位中に包埋されていることで、加熱処理時の膨化性が向上し膨化食品独特の食感が付与された組成物となる傾向があるので好ましい。その原理は不明であるが、でんぷんを主成分としたよう素被染色部位からなる支持構造を有する本発明において、不溶性食物繊維を主成分としたCFW被染色が支持構造に包埋されてその構造を補強することで、加熱処理時の膨化性が向上し膨化食品独特の食感が付与された組成物となると考えられる。本発明における「包埋」とは、CFW被染色部位がよう素被染色部位に取り囲まれた状態を表し、例えば画像の外周長の50%以上がよう素被染色部位に1μm以下の距離で近接又は接触している状態を表す。
【0112】
[イメージング質量分析に基づく特徴]
本発明の組成物は、組成物を-25℃凍結後、切断面Cに沿って厚さ30μmに切断した凍結切片Cを、イオン化支援剤としてγ-アミノプロピルトリエトキシシランで被覆した酸化鉄系ナノ微粒子を用い、NANO-PALDI MS(ナノ微粒子支援レーザー脱離イオン化質量分析(NanoParticle Assisted Laser Desorption/Ionization MS))を用いたイメージング質量分析法で解析(後述の[条件C])して得られた結果が、下記特徴(c1)~(c3)の少なくとも一つ以上を充足することが好ましい。
【0113】
・NANO-PALDI MSを用いたイメージング質量分析法による凍結切片の解析:
[条件C]は、組成物を-25℃凍結後、切断面Cに沿って厚さ30μmに切断した凍結切片Cを、イオン化支援剤としてγ-アミノプロピルトリエトキシシランで被覆した酸化鉄系ナノ微粒子を用い、NANO-PALDI MS(ナノ微粒子支援レーザー脱離イオン化質量分析)を用いたイメージング質量分析法で解析するという条件である。NANO-PALDI MSはShu Taira. et al.,""Nanoparticle-Assisted Laser Desorption/Ionization Based Mass Imaging with Cellular Resolution"", Anal. Chem., (2008), 80, 4761-4766に記載の方法に従って行うことができる。具体的には以下の通りである。
【0114】
イメージング質量分析用のNANO-PALDI MS分析計としては、rapiflex(ブルカー社製)を使用し、画像取り込みにはNanoZoomer-SQ(浜松ホトニクス株式会社製)を21504×13440pixelsの条件で使用し、分析ソフトflexControl(ブルカー社製)を使用して、測定条件をレーザー周波数10kHz、レーザーパワー100、ショット数500、感度gain26x(2905V)、Scanrange:X5μm、Y5μm、Resulting Field size:X9μm、Y9μmに設定し、組成物断面全体を囲むようにイメージング領域を設定する。また、イオン化支援剤の噴霧は、エアブラシを用いて測定対象が均等に覆われるように手動で行う。γ-アミノプロピルトリエトキシシランで被覆した酸化鉄系ナノ微粒子は、20mLの100mM塩化鉄(II)四水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)と20mLのγ-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製)を室温で1時間混合し、生じた沈殿物を蒸留水で5回洗浄した後、80℃で乾燥させることで調製する。また、測定に際しては、乾燥させたγ-アミノプロピルトリエトキシシランで被覆した酸化鉄系ナノ微粒子10mgをメタノール1mLに懸濁し、6000G、1分間の遠心分離を行い、上清0.5mLをスライドグラスに噴霧後、減圧デシケーター中で10分間乾燥させて使用する。
【0115】
シグナル強度解析はFleximageで実施する。具体的には、m/z 66.88278については66.88278±0.36786のシグナル強度を、80.79346については80.79346±0.44436のシグナル強度を画像中に白色の濃淡で表示させ、組成物断面画像中の白色の強度を計測することで、各ターゲット物質のシグナル強度を測定する(従って、シグナルが無い背景は黒となる)。より具体的には、画像解析ソフトとしてimageJを用い、組成物断面画像全体を囲むように測定箇所を指定することでシグナル強度を測定する。すなわち、本発明における「シグナル強度」とは、m/z 66.88278については66.88278±0.36786、80.79346については80.79346±0.44436の範囲におけるシグナル強度合計を表す。
【0116】
このようにして得られた各組成物断面画像を構成する各画素におけるシグナル強度について、最も強度が高い部分を255、最も低い部分を0として255分割することで、各画素における輝度及び輝度分率(本発明において、組成物画像を構成する全画素における輝度合計を分母として、各画素における輝度の割合を算出した数値)を算出し、各画素における輝度と輝度分率との乗算値(輝度×輝度分率)を全画素分合計することで、平均輝度(本発明において単に「平均輝度」と記載する場合は後述する「1画素当たりの輝度」ではなく、こちらの数値を表す。また、m/z N(ここでNは任意の数値である。)のシグナル強度から算出される平均輝度について、「AVN」と表示する場合がある)を算出する。
【0117】
また、このように得られた各画素における輝度合計値を1以上255以下の輝度を有する画素数で除することによって求められる「1画素当たりの輝度」を各画素における輝度から差し引き、その数値を二乗し、当該数値を1以上255以下の輝度を有する画素数で除することで分散値を算出し、さらにその平方根である標準偏差を算出する(なお、m/z N(ここでNは任意の数値である。)のシグナル強度分散における輝度の標準偏差を「SDN」と称する場合がある。)。
【0118】
・特徴(c1):m/z 66.88278及び80.79346における平均輝度の乗算値
本発明の組成物は、前記凍結切片Cを前記[条件C]で解析して得られるイメージング質量分析データにおいて、m/z 66.88278のシグナル強度から算出される平均輝度(AV66.88278)と、m/z 80.79346のシグナル強度から算出される平均輝度(AV80.79346)との乗算値AV66.88278×AV80.79346が所定値以上であることを好ましい特徴の一つとする(特徴(c1))。こうした物性を有することで、本発明の組成物は、硬さが和らいだ特性を呈するため好ましい。その原理は不明であるが、加熱処理時の加工によって低分子成分が組成物全体に分布することででんぷんが固くなることを抑制するためと考えられる。
【0119】
具体的に、本発明の組成物は、前記凍結切片Cを前記[条件C]で解析して得られるイメージング質量分析データにおいて、平均輝度の乗算値AV66.88278×AV80.79346が、例えば120以上3000以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常120以上であることが好ましい。中でも150以上、又は180以上、又は200以上、又は220以上、又は250以上、又は270以上、又は300以上、又は350以上、又は400以上、特に450以上であることが好ましい。一方、斯かる平均輝度の乗算値AV66.88278×AV80.79346の上限は、特に制限されるものではないが、工業上の生産性の観点から、通常3000以下、又は2000以下であることが好ましい。
【0120】
・特徴(c2):m/z 66.88278における輝度の標準偏差及び平均輝度
本発明の組成物は、組成物断面中における特定成分の輝度ばらつきが大きいことで組成物全体に当該成分が広範囲に亘って局在し、より硬さが和らいだ品質となるため好ましい。
【0121】
このため、本発明の組成物は、は、前記凍結切片Cを前記[条件C]で解析して得られるイメージング質量分析データにおいて、m/z 66.88278のシグナル強度分散における輝度の標準偏差(SD66.88278)が、所定値以上であることを好ましい特徴の一つとする(特徴(c2))。具体的に、当該標準偏差(SD66.88278)は、例えば16.0以上100以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常16.0以上であることが好ましい。中でも18.0以上、又は19.0以上、又は20.0以上、又は22.0以上、特に24.0以上であることが好ましい。一方、斯かる標準偏差(SD66.88278)の上限は、特に制限されるものではないが、工業上の生産性の観点から、通常100以下、又は80以下、又は60以下、又は50以下であることが好ましい。
【0122】
また、本発明の組成物は、m/z 66.88278のシグナル強度分散における平均輝度(AV66.88278)が所定値以上であることが好ましい。具体的に、当該平均輝度(AV66.88278)の値は、例えば15以上200以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常15以上であることが好ましく、中でも18以上、又は20以上、又は25以上、又は30以上、又は33以上、又は35以上、又は37以上、又は39以上、特に40以上であることが好ましい。一方、斯かる平均輝度(AV66.88278)の上限は、特に制限されるものではないが、工業上の生産性の観点から、通常200以下、又は150以下、又は100以下であることが好ましい。
【0123】
・特徴(c3):m/z 80.79346における輝度の標準偏差及び平均輝度
また、本発明の組成物は、前記凍結切片Cを前記[条件C]で解析して得られるイメージング質量分析データにおいて、m/z 80.79346のシグナル強度分散における輝度の標準偏差(SD80.79346)が、所定値以上であることを好ましい特徴の一つとする(特徴(c3))。その原因は不明であるが、NANO-PALDI MSによって水素付加されたm/zを観察していると仮定した場合、比較的分子量が近しいピラジン(CAS:290-37-9、モル質量80.09 g/mol)の組成物中における分布を測定している可能性があり、食品の加熱調理の際にメイラード反応により生成したピラジン類似物質が組成物全体に広範囲に亘って局在し、より硬さが和らいだ品質となっている可能性がある。
【0124】
具体的に、当該標準偏差(SD80.79346)は、例えば4.0以上80以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常4.0以上であることが好ましい。中でも4.5以上、又は5.0以上、又は5.5以上、又は6.0以上、又は6.5以上、又は7.0以上、又は7.5以上、又は8.0以上、又は8.5以上、特に9.0以上であることが好ましい。一方、斯かる標準偏差(SD80.79346)の上限は、特に制限されるものではないが、工業上の生産性の観点から、通常80以下、又は70以下、又は60以下、又は50以下、又は40以下であることが好ましい。
【0125】
また、本発明の組成物は、m/z 80.79346のシグナル強度分散における平均輝度(AV80.79346)が所定値以上であることが好ましい。具体的には、当該平均輝度(AV80.79346)の値は、例えば6.5以上100以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常6.5以上であることが好ましく、中でも7.0以上、又は7.5以上、又は8.0以上、又は8.5以上、又は9.0以上、特に9.5以上であることが好ましい。一方、斯かる平均輝度(AV80.79346)の上限は、特に制限されるものではないが、工業上の生産性の観点から、通常100以下、又は80以下、又は60以下であることが好ましい。
【0126】
・凍結切片の切断面について:
本発明の組成物は、は、前記凍結切片Cを前記[条件C]で解析して得られるイメージング質量分析データにおいて、前記特徴(c1)、(c2)及び(c3)のうち1つ以上を充足し、好ましくは2つ以上を充足し、特に好ましくは3つ全て充足することを好ましい特徴とする。ここで、本発明の組成物は、組成物の凍結物を任意の切断面で切断して得られる凍結切片について、前記特徴(c1)、(c2)及び(c3)に関する規定を充足していればよい。
【0127】
しかし、本発明の組成物は、少なくとも組成物の長手方向と直交する切断面で切断して得られる凍結切片を、前記凍結切片Cとした場合に、前記特徴(c1)、(c2)及び(c3)に関する規定を充足することが好ましい。なお、本発明における組成物の「長手方向」とは、組成物が内接する最小体積の仮想直方体の長辺方向を表し、組成物の「短手方向」とは、長手方向に垂直の方向を表す。なお、組成物の長手方向が複数存在する場合においては、任意の方向を採用することができる。
【0128】
また、本発明の組成物は、組成物凍結物を任意の切断面Xで切断して得られる凍結切片Xと、当該切断面Xに直交する切断面Yで切断して得られる凍結切片Yの各々を、前記凍結切片Cとして、前記[条件C]で解析して得られるイメージング質量分析データからm/z 66.88278及び80.79346における輝度の標準偏差(SD66.88278、SD80.79346)及び平均輝度(AV66.88278、AV80.79346)を求めた場合に、切断面Xの凍結切片Xについて得られた輝度の標準偏差(SD66.88278、SD80.79346)及び平均輝度(AV66.88278、AV80.79346)と、切断面Yの凍結切片Yについて得られた輝度の標準偏差(SD66.88278、SD80.79346)及び平均輝度(AV66.88278、AV80.79346)との各算術平均値が、前記特徴(c1)、(c2)及び(c3)に関する規定を充足することが好ましい。更には、切切断面Xの凍結切片Xについて得られた輝度の標準偏差(SD66.88278、SD80.79346)及び平均輝度(AV66.88278、AV80.79346)と、切断面Yの凍結切片Yについて得られた輝度の標準偏差(SD66.88278、SD80.79346)及び平均輝度(AV66.88278、AV80.79346)との双方が、前記特徴(c1)、(c2)及び(c3)に関する規定を充足することがより好ましい。この場合、切断面Xは長手方向に対して直交する切断面であり、切断面Yは長手方向に対して平行な切断面であることが好ましい。なお、組成物の長手方向が複数存在する場合においては、任意の方向を採用することができ、切断面Xとその直行切断面Yとを評価することで組成物全体の特性をより正確に評価することができる。
【0129】
なお、ある組成物の輝度の分布が一様である場合は、代表部位として一切断面の平均輝度を測定することで、組成物全体の平均輝度を推定することができるが、輝度の分布に偏りが認められる場合は、2又は2以上の有限の切断面における平均輝度を測定し、その結果を合算することで、組成物全体の平均輝度の測定値とすることができる。
【0130】
[全油脂分含量]
本発明の膨化組成物は、組成物の全油脂分含量が、所定範囲内であることを好ましい特徴とする。具体的に、本発明の膨化組成物の全油脂分含量は、乾燥質量換算で例えば2.0質量%以上70質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常2.0質量%以上であることが好ましい。中でも3.0質量%以上、又は4.0質量%以上、又は5.0質量%以上、又は6.0質量%以上、又は7.0質量%以上、又は8.0質量%以上、又は9.0質量%以上、特に10.0質量%以上とすることが好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、例えば通常70質量%以下、又は65質量%以下、又は60質量%以下、又は55質量%以下、又は50質量%以下、又は45質量%以下、又は40質量%以下、又は35質量%以下、又は30質量%以下とすることができる。
【0131】
本発明の組成物中の油脂分の由来は特に制限されない。例としては、植物由来のものや動物由来のものが挙げられるが、植物由来の油脂分が好ましい。具体的には、組成物全体の総油脂分含有量に対する、植物由来油脂分含有量の比率が、例えば50質量%以上100質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常50質量%以上、中でも60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上であることが好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、通常100質量%、又は100質量%以下である。植物由来油脂分の例としては、穀類由来(特に雑穀類由来)のもの、豆類由来のもの、芋類由来のもの、野菜類由来のもの、種実類由来のもの、果実類由来のもの等が挙げられるが、オリーブ由来のものを用いることがより好ましい。
【0132】
本発明の組成物中の油脂分は、単離された純品として組成物に配合されたものであることが組成物中への分散しやすさの観点から好ましく、食用植物(特に豆類及び/又は雑穀類、好ましくは豆類)に含有された状態で組成物に配合されている油脂分割合が低いことが好ましい。具体的には、組成物全体の総油脂分含有量に対する、食用植物に含有された状態で配合されている油脂分含有量の比率が、例えば0質量%以上65質量%未満の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は、通常65質量%未満、中でも60質量%未満、又は50質量%未満、又は40質量%未満、又は30質量%未満であることが好ましい。一方、その下限は特に制限されないが、通常0質量%、又は0質量%以上である。
【0133】
本発明の膨化組成物は、組成物の全油脂分に対する液状油脂分の割合が、所定範囲内であることを好ましい特徴とする。具体的に、本発明の膨化組成物の全油脂分に対する液状油脂分の割合は、例えば20質量%以上100質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常20質量%以上であることが好ましい。中でも30質量%以上、又は40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上とすることが好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、例えば通常100質量%、又は100質量%以下とすることができる。本発明における液状油脂とは、常温(20℃)下で液体状の油脂を表す。
【0134】
(原料)
本発明の組成物の原料は、本発明において規定する各種の成分組成及び物性を達成しうる限り、特に制限されるものではない。しかし、原料としては、1種又は2種以上の食用植物を用いることが好ましく、食用植物として豆類及び/又は雑穀類を用いることが好ましく、少なくとも豆類を含有することが好ましい。また、食用植物としては、上記したる日本食品標準成分表2015年版(七訂)に記載の食品群分類に記載された植物性食材(野菜類、芋類、きのこ類、果実類、藻類、穀類、種実類等)以外に、野菜類として通常食用に供される野草(オオバコ、わらび、ふき、よもぎ等)も用いることができる。また、本発明の組成物に使用する食用植物の乾量基準含水率は、例えば0質量%以上15質量%未満の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は、通常15質量%未満、中でも13質量%未満、又は11質量%未満、又は10質量%未満であることが好ましい。一方、斯かる乾量基準含水率の下限は、特に制限されるものではないが、通常0質量%以上、又は0.01質量%以上であることが好ましい。
【0135】
・豆類:
本発明の組成物に豆類を用いる場合、使用する豆類の種類は、限定されるものではないが、例としては、エンドウ属、インゲンマメ属、キマメ属、ササゲ属、ソラマメ属、ヒヨコマメ属、ダイズ属、及びヒラマメ属から選ばれる1種以上の豆類であることが好ましく、エンドウ属、インゲンマメ属、キマメ属、ササゲ属、ソラマメ属、ヒヨコマメ属、及びヒラマメ属であることがより好ましい。具体例としては、これらに限定されるものではないが、エンドウ(特に黄色エンドウ、白エンドウ等。)、インゲン(隠元)、キドニー・ビーン、赤インゲン、白インゲン、ブラック・ビーン、うずら豆、とら豆、ライマメ、ベニバナインゲン、キマメ、緑豆、ササゲ、アズキ、ソラマメ、ダイズ、ヒヨコマメ、レンズマメ、ヒラ豆、ブルーピー、紫花豆、レンティル、ラッカセイ、ルピナス豆、グラスピー、イナゴマメ(キャロブ)、ネジレフサマメノキ、ヒロハフサマメノキ、コーヒー豆、カカオ豆、メキシコトビマメ等が挙げられる。その他例示されていない食材の分類は、その食材や食材の加工品を取り扱う当業者であれば、当然に理解することが可能である。具体的には、一般家庭における日常生活面においても広く利用されている日本食品標準成分表2015年版(七訂)に記載の食品群分類(249頁、表1)を参照することで明確に理解することができる。なお、これらの豆類は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組合せで用いてもよい。
【0136】
また、本発明の組成物に用いる豆類のでんぷん含量は、所定値以上であることが好ましい。具体的には、豆類のでんぷん含量は、乾燥質量換算で、例えば10.0質量%以上90質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常10.0質量%以上、又は15.0質量%以上、又は20.0質量%以上、又は25.0質量%以上、又は30.0質量%以上、又は35質量%以上、又は40.0質量%以上であることが好ましい。一方、豆類のでんぷん含量の上限は特に制限されないが、例えば通常90質量%以下、又は85.0質量%以下、又は80.0質量%以下、又は75.0質量%以下、又は70.0質量%以下、又は65.0質量%以下、又は60.0質量%以下とすることができる。
【0137】
なお、本発明の組成物に豆類を用いる場合、組成物に含有されるでんぷんのうち中間分子量画分(分子量対数6.5以上8.0未満)の割合が増加する(より具体的にはAUC3の数値が増加する)という理由から、未熟種子(例えばエンドウ未熟種子であるグリーンピースや、大豆の未熟種子であるエダマメ)ではなく成熟した豆類を用いることが好ましい。また、同様の理由により、成熟に伴って乾量基準含水率が所定値以下となっている状態の豆類であることが好ましい。具体的に、本発明の組成物に使用する豆類の乾量基準含水率は、例えば0質量%以上15質量%未満の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は、通常15質量%未満、中でも13質量%未満、又は11質量%未満、又は10質量%未満であることが好ましい。一方、斯かる豆類の乾量基準含水率の下限は、特に制限されるものではないが、通常0質量%以上、又は0.01質量%以上であることが好ましい。
【0138】
・雑穀類:
本発明において「雑穀類」とは、一般に穀類のうち、主要な穀類であるコメ、小麦、大麦以外のものを指し、イネ科穀類以外のいわゆる疑似雑穀(アカザ科、ヒユ科)を含む概念である。本発明の組成物に雑穀類を用いる場合、使用する雑穀類の種類は、限定されるものではないが、例としては、イネ科、アカザ科、ヒユ科から選ばれる1種以上の雑穀類であることが好ましく、イネ科であることがより好ましい。具体例としては、これらに限定されるものではないが、あわ、ひえ、きび、もろこし、ライ麦、えん麦(オーツ麦)、はと麦、とうもろこし、そば、アマランサス、キノアなどが挙げられ、特にえん麦(オーツ麦)、アマランサス、キノアのいずれか1種類又は2種類以上を用いることが好ましく、可溶性食物繊維を多く含むえん麦(オーツ麦)を用いることが特に好ましい。また、雑穀類はグルテンを実質的に含有しない(具体的にはグルテン含有量が10質量ppm未満の状態を表す)ことが好ましく、グルテンを含有しないことがより好ましい。
【0139】
また、本発明の組成物に用いる雑穀類のでんぷん含量は、所定値以上であることが好ましい。具体的には、乾燥質量換算で、例えば10.0質量%以上90質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常10.0質量%以上、又は15.0質量%以上、又は20.0質量%以上、又は25.0質量%以上、又は30.0質量%以上、又は35.0質量%以上、又は40.0質量%以上であることが好ましい。一方、雑穀類のでんぷん含量の上限は特に制限されないが、例えば通常90質量%以下、又は85.0質量%以下、又は80.0質量%以下、又は75.0質量%以下、又は70.0質量%以下、又は65.0質量%以下、又は60.0質量%以下とすることができる。
【0140】
なお、本発明の組成物に雑穀類を用いる場合、組成物に含有されるでんぷんのうち中間分子量画分(分子量対数6.5以上8.0未満)の割合が増加する(より具体的にはAUC3の数値が増加する)という理由から、乾燥した雑穀類を用いることが好ましい。具体的には、乾量基準含水率が所定値以下となっている状態の雑穀類であることが好ましい。より具体的には、本発明の組成物に使用する雑穀類の乾量基準含水率は、例えば0質量%以上15質量%未満の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は、通常15質量%未満、又は13質量%未満、又は11質量%未満、又は10質量%未満であることが好ましい。一方、斯かる雑穀類の乾量基準含水率の下限は、特に制限されるものではないが、通常0質量%以上、又は0.01質量%以上であることが好ましい。
【0141】
・豆類及び/又は雑穀類の含有率及び粒子径:
本発明の組成物に豆類を用いる場合、本発明の組成物における豆類含有率は、制限されるものではないが、乾燥質量換算で例えば10質量%以上100質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常10質量以上、中でも15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、又は45質量%以上、又は50質量%以上、又は55質量%以上、又は60質量%以上、又は65質量%以上、又は70質量%以上、又は75質量%以上、又は80質量%以上、又は85質量%以上、又は90質量%以上、特に95質量%以上とすることが好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、通常100質量%、又は100質量%以下である。
【0142】
また、本発明の組成物に雑穀類を用いる場合、本発明の組成物における雑穀類含有率は、制限されるものではないが、乾燥質量換算で例えば10質量%以上100質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常10質量%以上、中でも15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、又は45質量%以上、又は50質量%以上、又は55質量%以上、又は60質量%以上、又は65質量%以上、又は70質量%以上、又は75質量%以上、又は80質量%以上、又は85質量%以上、又は90質量%以上、特に95質量%以上とすることが好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、通常100質量%、又は100質量%以下である。
【0143】
また、本発明の組成物に豆類及び/又は雑穀類を用いる場合、本発明の組成物における豆類及び/又は雑穀類の合計含有率、好ましくは豆類及び雑穀類の含有率は、制限されるものではないが、乾燥質量換算で例えば15質量%以上100質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常10質量%以上、中でも15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、又は45質量%以上、又は50質量%以上、又は55質量%以上、又は60質量%以上、又は65質量%以上、又は70質量%以上、又は75質量%以上、又は80質量%以上、又は85質量%以上、又は90質量%以上、特に95質量%以上とすることが好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、通常100質量%、又は100質量%以下である。
【0144】
本発明の組成物に豆類及び/又は雑穀類を用いる場合、粉末状の豆類及び/又は雑穀類を用いることが好ましく、具体的には、超音波処理後の粒子径d90及び/又はd50がそれぞれ所定値以下の豆類粉末及び/又は雑穀類粉末を用いることが好ましい。
【0145】
即ち、豆類粉末及び/又は雑穀類粉末の超音波処理後の粒子径d90は、例えば0.3μm以上500μm未満の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は、通常500μm未満、又は450μm以下が好ましく、中でも400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は275μm以下、又は250μm以下、又は225μm以下、又は200μm以下、又は175μm以下、又は150μm以下、又は125μm以下、又は100μm以下、又は90μm以下、又は80μm以下、又は70μm以下、又は60μm以下、又は50μm以下がより好ましい。一方、その下限は特に制限されないが、通常0.3μm以上、又は1μm以上、又は5μm以上、又は8μm以上、又は10μm以上、又は15μm以上である。
【0146】
また、同様に、豆類粉末及び/又は雑穀類粉末の超音波処理後の粒子径d50は、例えば0.3μm以上500μm未満の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は、通常500μm未満、又は450μm以下が好ましく、中でも400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、又は90μm以下、又は80μm以下、又は70μm以下、又は60μm以下、又は50μm以下がより好ましい。一方、その下限は特に制限されないが、通常0.3μm以上、又は1μm以上、又は5μm以上、又は8μm以上、又は10μm以上である。
【0147】
特に上記サイズが一定以上であると、組成物表面が不均一になる場合があるため、上記一定以下の大きさの粉末状の豆類及び/又は雑穀類、好ましくは豆類を使用することが好ましい。また前述の粉末状豆類及び/又は粉末状雑穀類を使用した場合においては、最終的な膨化組成物中において粉末状豆類及び/又は粉末状雑穀類の形状を保った状態で結着してなる組成物であってもよく、生地組成物中の豆類粉末及び/又は雑穀類粉末が加工に伴って膨化組成物中において溶融し混然一体となった状態のものであってもよい。
【0148】
・その他の食材:
本発明の組成物は、任意の1又は2以上のその他の食材を含んでいてもよい。斯かる食材の例としては、植物性食材(野菜類、芋類、きのこ類、果実類、藻類、穀類、種実類等)、動物性食材(魚介類、肉類、卵類、乳類等)、微生物性食品等が挙げられる。これら食材の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することができる。
【0149】
・調味料、食品添加物等:
本発明の組成物は、任意の1又は2以上の調味料、食品添加物等を含んでいてもよい。調味料、食品添加物等の例としては、醤油、味噌、アルコール類、糖類(例えばブドウ糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等)、糖アルコール(例えばキシリトール、エリスリトール、マルチトール等)、人工甘味料(例えばスクラロース、アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムK等)、ミネラル(例えばカルシウム、カリウム、ナトリウム、鉄、亜鉛、マグネシウム等、及びこれらの塩類等)、香料、pH調整剤(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸及び酢酸等)、シクロデキストリン、酸化防止剤(例えばビタミンE、ビタミンC、茶抽出物、生コーヒー豆抽出物、クロロゲン酸、香辛料抽出物、カフェ酸、ローズマリー抽出物、ビタミンCパルミテート、ルチン、ケルセチン、ヤマモモ抽出物、ゴマ抽出物等)、乳化剤(例としてはグリセリン脂肪酸エステル、酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リノシール酸エステル、キラヤ抽出物、ダイズサポニン、チャ種子サポニン、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等)、着色料、増粘安定剤等が挙げられる。
【0150】
但し、昨今の自然志向の高まりからは、本発明の組成物は、いわゆる乳化剤、着色料、増粘安定剤(例えば、食品添加物表示ポケットブック(平成23年版)の「表示のための食品添加物物質名表」に「着色料」、「増粘安定剤」、「乳化剤」として記載されているもの)から選ばれる何れか1つの含有量が通常1.0質量以下、中でも0.5質量%以下、又は0.1質量%以下、特に実質的に含有しない(具体的には、一般的な測定方法の下限である1ppm未満の含有量であることを表す)又は含有しないことが好ましい。また、何れか2つの含有量が通常1.0質量以下、中でも0.5質量%以下、又は0.1質量%以下、特に実質的に含有しない(具体的には、一般的な測定方法の下限である1ppm未満の含有量であることを表す)又は含有しないことがより好ましい。さらに、3つ全ての含有量が通常1.0質量以下、中でも0.5質量%以下、又は0.1質量%以下、特に実質的に含有しない(具体的には、一般的な測定方法の下限である1ppm未満の含有量であることを表す)又は含有しないことが好ましい。特に、食品添加物の含有量が通常1.0質量以下、中でも0.5質量%以下、又は0.1質量%以下、特に含有しないことがより好ましい。
【0151】
[小麦類・グルテン]
本発明の膨化組成物は、組成物の小麦類の含量が、所定範囲内であることを好ましい特徴とする。具体的に、本発明の膨化組成物の小麦類の含量は、乾燥質量換算で例えば0質量%以上50質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は、通常50質量%以下であることが好ましい。中でも40質量%以下、又は30質量%以下、又は20質量%以下、又は10質量%以下、特には実質的に含有されない(具体的には、一般的な測定方法の下限である1ppm未満の含有量であることを表す)又は含有されないことが望ましい。本発明の膨化組成物は、その小麦類含量比率が前記上限値以下であっても膨化食品独特の食感を感じられる組成物となるため、有用である。一方、斯かる割合の下限は、特に制限されるものではないが、通常0質量%、又は0質量%以上とすることができる。
【0152】
本発明の膨化組成物は、組成物の総タンパク質含量に対する小麦類に由来するタンパク質の含量比率が、所定範囲内であることを好ましい特徴とする。具体的に、本発明の膨化組成物の総タンパク質含量に対する小麦類に由来するタンパク質の含量比率が、例えば0質量%以上50質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は、通常50質量%以下であることが好ましい。中でも40質量%以下、又は30質量%以下、又は20質量%以下、又は10質量%以下、特には実質的に含有されない(具体的には、一般的な測定方法の下限である1ppm未満の含有量であることを表す)又は含有されないことが望ましい。本発明の膨化組成物は、その総タンパク質含量に対する小麦類に由来するタンパク質の含量比率が前記上限値以下であることで、小麦類が比較的少ない組成物であっても膨化食品独特の食感を感じられる組成物となるため、有用である。一方、斯かる割合の下限は、特に制限されるものではないが、通常0質量%、又は0質量%以上とすることができる。
【0153】
本発明の膨化組成物は、グルテンを実質的に含有しない(具体的には、一般的な測定方法の下限である1ppm未満の含有量であることを表す)又は含有しないことが好ましい。本発明の膨化組成物は、グルテンを実質的に含有しない組成物であっても好ましい膨化食品独特の食感を感じられる組成物となるため、有用である。
【0154】
また、従来の加熱調理用固形状ペースト組成物(特にネットワーク構造のグルテンを含有する組成物)は、塩化ナトリウムを含有させることで組成物弾性を保持しているが、味に影響を与えたり、塩分の過剰摂取となったりする観点から問題があった。特に乾燥状態の組成物(乾燥うどん、乾燥ひやむぎ等)においては、組成物弾性の保持のため、通常3質量%以上の塩化ナトリウムが使用されるため、こうした課題が顕著であった。一方、本発明の組成物では、塩化ナトリウムの使用量が極微量であるか、又は塩化ナトリウムを添加しなくても、弾性低下が抑制された組成物とすることができ、良好な品質の組成物となるため好ましい。また、通常はネットワーク構造のグルテンと塩化ナトリウムによって粘着力や弾力を有する、パスタ、うどん、パン等の加熱調理用固形状ペースト組成物についても、本発明を適用することで、塩化ナトリウムを添加することなく良好な品質の組成物とすることができるため好ましい。
【0155】
具体的に、本発明の組成物中の塩化ナトリウムの含有量は、乾燥質量換算で、例えば0質量%以上3質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は、通常3質量%以下、中でも2質量%以下、又は1質量%以下、又は0.7質量%以下、特に0.5質量%以下であることが好ましい。本発明の組成物中の塩化ナトリウムの含有量の下限は特に限定されず、0質量%であっても構わない。なお、本発明において、固形状ペースト組成物中の塩化ナトリウムの定量法としては、例えば日本食品標準成分表2015年版(七訂)の「食塩相当量」に準じ、原子吸光法を用いて測定したナトリウム量に2.54を乗じて算出する手法を用いる。
【0156】
[膨化食品]
本発明の膨化組成物は、通常は膨化食品である。本発明において「膨化食品」とは、膨化組成物からなる食品、又は膨化組成物を主成分とする食品を意味する。より具体的には生地組成物を加熱処理により膨化させることで、体積を増加させることで製造する食品を意味し、塊状膨化組成物であるパン又はそれに類する食品(パン様食品と称する場合がある)や、塊状膨化組成物の中でも特に与圧下で加熱処理された生地を急激に減圧することによって膨化させたパフ様組成物や、塊状膨化組成の中でも厚みが小さい板状膨化食品であるクラッカー又はそれに類する食品(クラッカー様食品と称する場合がある)が例示される。
【0157】
本発明の膨化組成物は、膨化食品独特の食感を有することを好ましい特徴とする。本発明において「膨化食品独特の食感」とは、膨化食品内部の多孔質構造に由来する、組成物の固体構造と空隙構造との強度差によって感じられる食感を表す。具体的には、クラッカーにおけるサクサクとしたクリスピー感や、パンにおけるふっくら感などが挙げられる。いったん形成された膨化組成物であっても、組成物が硬質化してその構造が破壊され難くなったり、組成物が膨化状態を保持できずに萎んでしまい内部の空隙が少なくなったりすると、このような膨化物独特の食感は感じられにくくなる。
【0158】
[でんぷん含有膨化組成物の製造方法]
本発明の膨化組成物は、任意の方法で製造することが可能であるが、下記段階(i)及び(ii)を含む方法で製造することが好ましい。
(i)下記(1)から(5)を全て充足する生地組成物を調製する段階。
(1)組成物のでんぷん含量が湿潤質量基準で8.0質量%以上である。
(2)組成物の乾量基準含水率が40質量%超である。
(3)組成物の食物繊維含量が湿潤質量換算で2.0質量%以上である。
(4)組成物のでんぷん分解酵素活性が乾燥質量換算で0.2U/g以上である。
(5)組成物に前記[手順b]によりでんぷん及びタンパク質分解処理を加え、次いで超音波処理を加えてから測定した粒子径分布における粒子径d50が450μm未満である。
(ii)前記段階(i)の生地組成物を加熱処理により膨化させる段階であって、前記加熱処理の前後で、組成物の前記AUC1が5%以上増加すると共に、乾量基準含水率が5質量%以上低下する段階。
【0159】
・段階(i):生地組成物の調製:
段階(i)における生地組成物の調製は、以下の条件を満たすように実施することが好ましい。
【0160】
段階(i)における生地組成物は、組成物のでんぷん含量が所定値以上であることが好ましい。具体的に、生地組成物のでんぷん含量は、湿潤質量基準で、例えば8.0質量%以上60質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常8.0質量%以上、中でも9.0質量%以上、又は10.0質量%以上、又は12.0質量%以上、又は14.0質量%以上、又は16.0質量%以上、又は18.0質量%以上とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、例えば通常60質量%以下、又は55.0質量%以下、又は50.0質量%以下、又は45.0質量%以下、又は40.0質量%以下、又は35.0質量%以下、又は30.0質量%以下とすることができる。
【0161】
段階(i)における生地組成物は、組成物の乾量基準含水率が所定値超であることが好ましい。その技術的意義は、乾量基準含水率が所定値以下であると酵素反応が進行しにくくなるため、段階(ii)における焼成工程において乾量基準含水率が所定値超に保たれる状態を一定時間以上保持し、AUC2で規定される比較的高分子のでんぷん構成成分が、AUC1で規定される比較的低分子のでんぷん構成成分へと変化するための酵素反応が起こりやすくすることである(従って、本発明の組成物におけるAUC1、AUC2の値は、加熱処理を伴わない原料における値及び分解酵素反応に影響が大きい要素(生地酵素活性、生地加水条件、加熱処理条件など)が異なる組成物とは異なる値を示す)。具体的に、生地組成物の乾量基準含水率は、例えば40質量%超250質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常40質量%超、中でも45質量%超、又は50質量%超、又は55質量%超、又は60質量%超、又は65質量%超、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%以上とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、通常250質量%以下、又は225質量%以下、又は200質量%以下、又は175質量%以下、又は150質量%以下とすることができる。
【0162】
なお、生地組成物の乾量基準含水率は、所定時間以上に亘って、前記所定値超に維持することが好ましい。生地組成物における乾量基準含水率が所定値超に保たれる時間は、生地組成物における酵素活性、反応温度、乾量基準含水率などから決定される反応速度や、AUC2及びAUC1の変化割合から適宜設定すればよいが、例えば1分間以上24時間以内の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常1分間以上、中でも2分間以上、又は3分間以上である。一方、その上限は特に制限されないが、通常24時間以下、又は16時間以下である。また、生地組成物における反応温度についてもAUC2及びAUC1の変化割合などから適宜設定することができるが、例えば30℃以上300℃以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常30℃以上、中でも40℃以上、又は50℃以上、又は60℃以上、又は70℃以上、又は80℃以上、又は90℃以上、又は100℃以上、又は110℃以上、特に120℃以上とすることができる。一方、その上限は特に制限されないが、通常300℃以下、中でも260℃以下、又は230℃以下とすることができる。なお、生地組成物の乾量基準含水率を前記所定時間以上に亘って前記所定値超に維持する処理は、段階(i)の生地組成物調製後、後述の段階(ii)の加熱処理の前に別途前処理として設けてもよいが、その一部又は全部を後述の段階(ii)の加熱処理において達成してもよい。
【0163】
また、生地組成物の乾量基準含水率を所定時間以上に亘って前記所定値超に維持することで、後述する発酵工程を行ったり、生地組成物中の酵素処理工程を行い、その処理後の生地組成物を加熱処理により膨化させることで本発明の膨化組成物を製造することができる。具体的には、生地組成物に配合した酵母によって酵母発酵を行ったり、生地組成物中のでんぷん分解酵素によって酵素処理反応を行ったり、生地組成物中に配合したオオバコ種皮部を酵素処理(具体的にはセルラーゼ及び/又はペクチナーゼ及び/又はキシラナーゼによって処理されることが好ましく、特に少なくともペクチナーゼ及び/又はキシラナーゼによって処理されることが好ましい)する反応を行ったりし、その処理後の生地組成物を加熱処理により膨化させることで本発明の膨化組成物を製造することができる。その場合、「加熱処理前」とは前述の発酵工程や酵素処理工程前の(すなわち調製直後の)生地組成物の状態を指し、「加熱処理後」とは発酵処理や酵素処理を行った後の生地組成物を加熱処理し、膨化が完了した後における膨化組成物の状態を表す。
【0164】
なお、本発明において、「湿潤質量基準割合」(単に「湿潤質量基準」「湿潤質量換算」又は「湿量基準」と称する場合もある。)とは、組成物や各画分の水分を含んだ湿潤質量を分母、各対象成分や対象物の含有量を分子として算出される、各成分等の含有割合を表す。
【0165】
段階(i)における生地組成物は、食物繊維含量(可溶性食物繊維と不溶性食物繊維の合計)が所定値以上であることが好ましい。具体的には、生地組成物の食物繊維含量(特に不溶性食物繊維含量)は、湿潤質量換算で例えば2.0質量%以上30質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常2.0質量%以上、中でも3.0質量%以上、又は4.0質量%以上、又は5.0質量%以上、又は6.0質量%以上、又は7.0質量%以上、又は8.0質量%以上とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、例えば通常30質量%以下、又は20質量%以下とすることができる。
【0166】
段階(i)における生地組成物は、組成物のでんぷん分解酵素活性が所定値以上であることが好ましい。具体的には、生地組成物のでんぷん分解酵素活性は、乾燥質量換算で例えば0.2U/g以上100.0U/g以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常0.2U/g以上、中でも0.4U/g以上、又は0.6U/g以上、又は0.8U/g以上、又は1.0U/g以上、又は2.0U/g以上、又は3.0U/g以上、特に4.0U/g以上であることが好ましい。一方、斯かる割合の上限は、特に制限されるものではないが、通常100.0U/g以下、又は50.0U/g以下、又は30.0U/g以下、又は10.0U/g以下、又は7.0U/g以下とすることができる。
【0167】
食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類、特に豆類)におけるでんぷん分解酵素の失活を防ぐため、原料として使用するためのでんぷん分解酵素活性が高食用植物を得るための加工方法としては、乾量基準含水率所定割合以下(例えば通常70質量%以下、又は60質量%以下、又は50質量%以下、又は40質量%以下、又は30質量%以下、特に20質量%以下)の環境下において加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理の温度は、具体的には例えば60℃以上300℃以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は、通常300℃以下、又は260℃以下、又は220℃以下、又は200℃以下とすることができる。また、所定の温度以上で予め加熱処理を行うことで原料中の好ましくない香りを除くことができるため、処理温度は所定の温度以上であることが好ましい。具体的には、通常60℃以上であることが好ましい。中でも70℃以上、又は80℃以上、又は90℃以上、特に100℃以上であることが望ましい。加熱時間については、でんぷん分解酵素活性が所定値に調整されるまで任意で設定できるが、例えば0.1分以上60分以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常0.1分以上、又は1分以上とすることができる。一方、その上限は特に制限されないが、通常60分以下とすることができる。
【0168】
酵素活性単位(U/g)は、測定サンプルの30分間の酵素反応時における660nmにおける吸光度減少率C(%)を比較対象区(吸光度B)に対する酵素反応区(吸光度A)の吸光度減少率({(吸光度B-吸光度A)/吸光度B}×100(%)」により求める。吸光度を10分間当たり10%減少させる酵素活性を1単位(U)とし、0.25mL酵素液(サンプル含量0.025g)によって30分間酵素反応を行った場合における吸光度減少率C(%)から、測定サンプル1g当たりの酵素活性を次式によって求める。
【数2】
【0169】
また、生地組成物におけるでんぷん分解酵素の具体例としては、アミラーゼ等が挙げられる。これらは、生地組成物の原料たる豆類及び/又は雑穀類、好ましくは豆類等の食用植物に由来するものでもよく、外部から別途添加されるものでもよいが、生地組成物におけるでんぷん分解酵素活性のうち所定割合以上が、原料である食用植物に由来することが好ましく、特に豆類及び/又は雑穀類、好ましくは豆類に由来することが好ましい。具体的には、生地組成物におけるでんぷん分解酵素活性のうち原料である食用植物(特に豆類及び/又は雑穀類、好ましくは豆類)に由来するでんぷん分解酵素活性の割合は、例えば30%以上100%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常30%以上、中でも40%以上、又は50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上とすることが好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、例えば通常100%以下とすることができる。
【0170】
さらに、生地組成物における分解酵素活性のうち所定割合以上が、原料である食用植物(特に豆類及び/又は雑穀類、好ましくは豆類)に含有された状態の内在性分解酵素由来であることが好ましく、豆類及び/又は雑穀類、好ましくは豆類に含有された状態の内在性でんぷん分解酵素由来であることが好ましく、特にでんぷん分解酵素がアミラーゼであることが好ましい。また、食用植物に由来するでんぷんは同じ植物に含有される内在性分解酵素によって分解されやすい特性を有すると考えられるため、でんぷん分解酵素(特に食用植物に含有された状態の内在性分解酵素)の由来植物が、組成物が含有するでんぷんの由来植物と同一種類の植物を少なくとも含有することが好ましい。具体的には、生地組成物におけるでんぷん分解酵素活性のうち原料である食用植物(特に豆類及び/又は雑穀類、好ましくは豆類)に含有された状態の内在性分解酵素由来であるでんぷん分解酵素活性の割合は、例えば30%以上100%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常30%以上、中でも40%以上、又は50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、例えば通常100%以下とすることができる。
【0171】
段階(i)における生地組成物は、組成物に前記[手順b]によりでんぷん及びタンパク質分解処理を加え、次いで超音波処理を加えてから測定した粒子径分布における粒子径d50が、所定割合以上であることが好ましい。具体的には、斯かる粒子径d50は、例えば1μm以上450μm未満の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は、通常450μm未満、中でも400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下であることが好ましい。下限は特に制限されないが、通常1μm以上、中でも5μm以上、又は7μm以上であることが好ましい。その原理は不明であるが、でんぷんを主成分とした支持構造を有する本発明において、これら成分が支持構造を補強することで、加熱処理時の膨化性が向上し膨化食品独特の食感が付与された組成物となると考えられる。一方で、これら成分が一定以上の大きさであると、でんぷんを主成分とした支持構造を貫通し、加熱処理後の膨化状態が保持できなくなるため、一定以下の大きさであることが好ましいと考えられる。
【0172】
段階(i)における生地組成物は、組成物を前記[手順a]により処理して得られた成分を前記[条件A]の下で分析して得られる、分子量対数が6.5以上9.5未満の範囲における分子量分布曲線(MWDC6.5-9.5)において、全曲線下面積に対する分子量対数が6.5以上8.0未満の区間の曲線下面積の割合(AUC3)が所定割合以上となるように調製することが好ましい。具体的には、斯かるAUC3は、例えば30%以上100%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常30%以上、中でも35%以上、又は40%以上、又は45%以上、又は50%以上、又は55%以上、又は60%以上、又は65%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、例えば通常100%以下、又は98%以下とすることができる。その理由は定かではないが、でんぷんに含まれるアミロペクチン(分子量対数が6.5以上9.5未満の範囲の画分に含有されると考えられる)のうち、比較的低分子のアミロペクチン割合が所定の値より大きくなることで、膨化段階における展延性が向上し、好ましく膨化した膨化食品となると考えられる。
【0173】
段階(i)における生地組成物は、豆類及び/又は雑穀類、好ましくは豆類を含むように調製することが好ましい。その含有量は任意であるが、湿潤質量換算で、例えば5質量%以上90質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常5質量%以上、中でも10質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、例えば通常90質量%以下、又は80質量%以下、又は70質量%以下とすることができる。
【0174】
使用する豆類及び/又は雑穀類は、後述する加熱処理を行わないものでもよく、加熱処理を行ったものを用いてもよく、両者を併用してもよい。また、豆類及び/又は雑穀類は粉末状態のものを用いることが好ましい。
【0175】
また、本発明に用いる豆類及び/又は雑穀類としては、前記の条件下で測定された糊化ピーク温度の温度低下差分が所定温度範囲となるようにあらかじめマイルドに加温処理を施した状態のものを段階(i)の原料として使用することもできる。そのような原料を使用することで、原料中の不要な成分を除去しつつでんぷん粒が残存した素材となり、でんぷん粒が膨化を助ける働きを果たし、本発明の効果が良好に奏されるため好ましい。当該低下差分が大きすぎると、段階(ii)の膨化処理工程において、RVAピークを呈さない程度にまででんぷん粒が完全に破壊されるか、破壊されなくても耐熱性が失われてしまい、本発明の効果が奏されにくくなる可能性がある。具体的には、温度低下差分を、例えば0℃以上50℃以下の範囲とすることが好ましい。より具体的には、当該温度低下差分の上限が通常50℃以下、又は45℃以下、又は40℃以下、又は35℃以下、又は30℃以下であることが好ましい。一方、当該温度低下差分の下限は特に制限されないが、通常0℃以上、中でも1℃以上、又は2℃以上、又は3℃以上、又は4℃以上、又は5℃以上低下するように前処理を行うことが好ましい。
【0176】
なお、本発明の製造方法の段階(i)に用いるための豆類及び/又は雑穀類原料(特に原料粉末)であって、前記方法で測定した糊化ピーク温度の温度低下差分が前記所定温度以下(即ち、例えば0℃以上50℃以下の範囲、具体的には、通常50℃以下、又は45℃以下、又は40℃以下、又は35℃以下、又は30℃以下、また当該温度低下差分の下限は特に制限されないが、通常0℃以上、中でも1℃以上、又は2℃以上、又は3℃以上、又は4℃以上、又は5℃以上)となるように予め加温処理を施した豆類及び/又は雑穀類原料(特に原料粉末)も、本発明の対象に含まれるものとする。また、加温処理を施した豆類及び/又は雑穀類原料(特に原料粉末)前述する(c-1)及び/又は(d-1)に相当する(c-3)及び/又は(d-3)を充足することが好ましい。すなわち、下記(c-3)及び/又は(d-3)を充足することが好ましい。
(c-3)生地組成物の粉砕物の6%懸濁液を観察した場合に認められるでんぷん粒構造が、40個/mm2以上、又は60個/mm2以上、又は80個/mm2以上、又は100個/mm2以上、又は150個/mm2以上、又は200個/mm2以上、又は250個/mm2以上、又は300個/mm2超であり、また、上限は制限されないが、例えば100000個/mm2以下、又は50000個/mm2以下、又は10000個/mm2以下である。
(d-3)生地組成物の粉砕物の14質量%水スラリーをラピッドビスコアナライザを用いて50℃から140℃まで昇温速度12.5℃/分で昇温して測定した場合の糊化ピーク温度が、95℃超、又は100℃以上、又は105℃以上、又は110℃以上であり、また、上限は制限されないが、例えば140℃以下、又は135℃以下、又は130℃以下である。
また、本発明の製造方法の段階(i)に用いるために、オオバコ種皮(サイリウムハスク)に予め酵素処理(好ましくはセルラーゼ及び/又はペクチナーゼ及び/又はキシラナーゼ処理、より好ましくは少なくともキシラナーゼ及び/又はペクチナーゼ処理)を加えたオオバコ種皮の酵素処理物も、本発明の対象に含まれるものとする。
【0177】
当該加温処理時の温度及び時間はでんぷん粒の破損を防ぎつつ原料中の好ましくない成分を除去する観点から上記糊化ピーク温度低下差分が所定範囲内となるように適宜調整すればよく、その加温方式も固体(設備における金属部品など)を媒体として直接粉末を加熱する方式(エクストルーダーなど)や気体を媒体として粉末を加熱する方式(飽和水蒸気加熱、エアドライ加熱など)などを適宜採用することができる。その処理中組成物温度は、例えば80℃以上250℃以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は、通常250℃以下、又は210℃以下、又は150℃以下であることが好ましい。その温度下限は特に制限されないが、通常80℃以上、又は90℃以上、又は100℃以上とすることができる。さらに当該温度における処理時間は通常30分以下、又は25分以下であることが好ましく、その下限は特に制限されないが、通常0.1分以上であることが好ましい。
【0178】
また、当該加温処理時の乾量基準含水率が所定値以下であることが好ましい。加温処理時における乾量基準含水率が高すぎると、でんぷん粒が完全に破壊されるか、破壊されなくても耐熱性が失われてしまい、本発明の効果が奏されにくくなる可能性がある。具体的にはその上限は、乾量基準含水率含水率として、例えば0質量%以上80質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は、通常80質量%以下、又は70質量%以下、又は60質量%以下、又は50質量%以下、又は40質量%以下、又は35質量%以下、又は30質量%以下、又は25質量%以下、又は20質量%以下、又は15質量%以下であることが好ましい。当該加温処理時の乾量基準含水率の下限は特に制限されないが、通常0質量%以上、又は1質量%以上、又は2質量%以上とすることができる。
【0179】
(でんぷん粒構造)
本発明の焼成後の膨化組成物は、前述の通り、でんぷん粒構造が破壊された組成物であることで、なめらかな食感が奏されるため好ましいが、本発明の製造方法の段階(i)における生地組成物においては逆に、でんぷん粒構造の数が所定値以上であることが好ましい。その原理は不明であるが、でんぷん粒構造が含有された状態で、生地組成物を加熱処理により膨化させる段階を行うことで、でんぷん粒が内部空隙を保護し、なめらかな食感の膨化構造となると考えられる。具体的には、本発明の製造方法の段階(i)における生地組成物が、下記(c-1)及び/又は(d-1)を充足することが好ましく、(c-1)と(d-1)を共に充足することがさらに好ましい。
【0180】
(c-1)組成物の粉砕物の6%懸濁液を観察した場合に認められるでんぷん粒構造が、40個/mm2以上である。
(d-1)ラピッドビスコアナライザを用いて14質量%の組成物粉砕物水スラリーを50℃から140℃まで昇温速度12.5℃/分で昇温して測定した場合の糊化ピーク温度が95℃超である。
【0181】
・(c-1)生地組成物におけるでんぷん粒構造:
具体的に、本発明の製造方法の段階(i)における生地組成物は、前記(a)において説明した条件下で観察されるでんぷん粒構造の数が、例えば40個/mm2以上100000個/mm2以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常40個/mm2以上、又は60個/mm2以上、又は80個/mm2以上、又は100個/mm2以上、又は150個/mm2以上、又は200個/mm2以上、又は250個/mm2以上、又は300個/mm2超であることが好ましい。生地組成物のでんぷん粒構造の数の上限は制限されないが、例えば通常100000個/mm2以下、又は50000個/mm2以下、又は10000個/mm2以下とすることができる。
【0182】
・(c-2)生地組成物におけるでんぷん粒構造の低下差分:
なお、段階(i)における生地組成物が本条件(c-1)を充足すると共に、焼成後の本発明の膨化組成物が前述の条件(a)を充足することが好ましい。中でも、最終的に得られる本発明の膨化組成物の上記(a)に規定されるでんぷん粒構造の数が、段階(i)における生地組成物の上記(c)に規定されるでんぷん粒構造の数未満であることが好ましく、一定数以上低下することがより好ましい(特徴(c-2))。すなわち、段階(ii)における加熱処理の前後で、組成物の当該でんぷん粒構造の数は所定値以上低下する(すなわち、「加熱処理前の生地組成物における当該でんぷん粒構造の数-加熱処理後組成物における当該でんぷん粒構造の数」で規定される低下差分が一定以上の数値となる)ことが好ましい。具体的に、斯かる低下割合の値は、段階(ii)における加熱処理の前後で、例えば10個/mm2以上100000個/mm2以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、当該低下割合の下限は、通常10個/mm2以上、中でも20個/mm2以上、又は30個/mm2以上、又は40個/mm2以上、又は50個/mm2以上、又は100個/mm2以上、又は150個/mm2、又は200個/mm2以上、又は250個/mm2以上、又は300個/mm2以上低下することが好ましい。一方、その低下割合の上限は特に制限されないが、例えば通常100000個/mm2以下、又は50000個/mm2以下、又は10000個/mm2以下とすることができる。
【0183】
・(d-1)生地組成物におけるRVA糊化ピーク温度:
本発明では、でんぷん粒構造が多い組成物においてはでんぷん粒構造の加水膨潤に伴う粘度上昇が起こりやすく、糊化ピーク温度も比較的高温になる傾向がある。従って、本発明の製造方法の段階(i)における生地組成物は、前記(b)において説明した条件下で測定した糊化ピーク温度が、例えば95℃超140℃以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常95℃超、又は100℃以上、又は105℃以上、又は110℃以上であることが好ましい。でんぷん粒が破壊された組成物においても、構成成分が加水膨潤して疑似的に糊化ピーク温度を示す場合もあるため、その上限は特に制限されないが、通常140℃以下、又は135℃以下、又は130℃以下とすることができる。
【0184】
・(d-2)生地組成物におけるRVA糊化ピーク温度の低下差分:
なお、段階(i)における生地組成物が本条件(d-1)を充足すると共に、焼成後の本発明の膨化組成物が前述の条件(b)を充足することが好ましい。中でも、最終的に得られる本発明の膨化組成物の上記(b)における当該ピーク温度が、段階(i)における生地組成物の上記(d-1)におけるピーク温度未満であることが好ましく、一定割合以上低下することがより好ましい(特徴d-2)。すなわち、段階(ii)における加熱処理の前後で、組成物の当該ピーク温度は、所定割合以上低下する(すなわち、「(加熱処理前の生地組成物における当該ピーク温度-加熱処理後組成物における当該ピーク温度)/加熱処理前の生地組成物における当該ピーク温度」で規定される低下率が一定以上の数値となる)ことが好ましい。具体的に、斯かる段階(ii)における加熱処理の前後での低下率の値は、例えば5%以上100%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その低下率の下限は、通常5%以上、中でも10%以上、又は15%以上、又は20%以上低下することが好ましい。その低下率の上限は特に制限されないが、例えば通常100%以下(すなわち当該ピークが検出されなくなる)、又は60%以下、又は50%以下、又は45%以下、又は40%以下とすることができる。
【0185】
・食物繊維局在部位
また、段階(i)の生地組成物に食用植物における食物繊維(すなわち可溶性食物繊維と不溶性食物繊維の合計)局在部位を含有させることがより好ましい。具体的には、生地組成物全体の合計質量に対する食物繊維局在部位(例えばオオバコ種皮部)の割合の下限としては、湿潤質量基準割合で、例えば0.1質量%以上20質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常0.1質量%以上であることが好ましい。中でも0.2質量%以上、又は0.3質量%以上、又は0.4質量%以上、又は0.5質量%以上、又は1.0質量%以上、又は1.5質量%以上が好ましい。一方、上限は通常限定されないが、例えば通常20質量%以下、又は15質量%以下、又は10質量%以下、又は7.5質量%以下、又は5.0質量%以下とすることができる。また、食物繊維局在部位が不溶性食物繊維局在部位であって、上記規定を充足するものであってもよい。また、斯かる食物繊維局在部位は、少なくともオオバコ種皮部であってもよく、さらに前述の酵素処理(例えばキシラナーゼ処理及び/又はペクチナーゼ処理等)を予め加えたものであってもよい。
【0186】
また、豆類の種皮部を食物繊維局在部位(より具体的には不溶性食物繊維局在部位)として上記割合で含有することで、特に生地を発酵する工程を有さない組成物において、加水時の生地の展延性が向上することで、段階(ii)において膨化しやすい物性となることから好ましい。
【0187】
また、通常食用に供される野草であるオオバコにおける種皮部(オオバコ種皮又はサイリウムハスクと称される場合がある)を食物繊維局在部位(より具体的には可溶性食物繊維及び不溶性食物繊維局在部位)として上記割合で含有することで、特に生地を発酵する工程を有する発酵組成物において、段階(ii)において膨化しやすい物性となるため好ましい。中でも、前述する酵素処理(具体的にはセルラーゼ及び/又はペクチナーゼ及び/又はキシラナーゼによって処理されることが好ましく、特に少なくともペクチナーゼ又はキシラナーゼによって処理されることが好ましい)された状態のオオバコ種皮部を上記割合で含有することが好ましい。また、豆類の種皮部とオオバコ種皮部(特に酵素処理された状態のオオバコ種皮部)とを共に含有することが好ましく、その合計含有量が上記割合であることが好ましい。
【0188】
生地組成物における食物繊維局在部位は、食物繊維局在部位を単独で含有させてもよく、食物繊維局在部位を含む食物繊維含有食材の状態で含有させてもよいが、同一種類の食材における食物繊維局在部位とそれ以外の部位を共に含有することが好ましく、同一個体の食材における食物繊維局在部位とそれ以外の部位を共に含有することが特に好ましい。同一種類又は同一個体の食材における食物繊維局在部位を含む食物繊維含有食材は、食材中の食物繊維局在部位とそれ以外の部位を別個に含有させてもよいし、食物繊維局在部位を含んだ状態の食材を含有させてもよい。また、食物繊維局在部位が不溶性食物繊維局在部位であって、上記規定を充足するものであってもよい。
【0189】
本発明における食物繊維局在部位とは、食材(食用植物)の可食部よりも、相対的に高い食物繊維含有割合を有する部位を表す。一例によれば、食物繊維局在部位は、乾燥状態において、可食部の例えば通常1.1倍以上、又は1.2倍以上、又は1.3倍以上、又は1.4倍以上、又は1.5倍以上、又は1.6倍以上、又は1.7倍以上、又は1.8倍以上、又は1.9倍以上、又は2.0倍以上の食物繊維含有割合を有する。例えば、豆類において可食部(子葉部)における食物繊維含有割合よりも相対的に高い食物繊維含有割合を有する種皮部(より具体的には不溶性食物繊維局在部位)、雑穀類において、可食部における食物繊維含有割合よりも相対的に高い食物繊維含有割合を有するふすま部(より具体的には不溶性食物繊維局在部位)が食物繊維局在部位に該当する。また、通常食用に供される野草であるオオバコにおける、種皮部(オオバコ種皮又はサイリウムハスク)が食物繊維局在部位(より具体的には可溶性食物繊維及び不溶性食物繊維局在部位)に該当する。特にオオバコ種皮部は不溶性食物繊維に加えて、可溶性食物繊維も含有されるため、栄養面から好ましい。
【0190】
また、本発明における食物繊維局在部位又は不溶性食物繊維局在部位は、食材の「可食部」の一部(例えば雑穀類、豆類、種実類、野菜類の種子又は皮部。特に豆類の種皮部、オオバコの種皮部、雑穀類のふすま部から選択される1種以上)であっても「非可食部(例えばコーンの芯部、豆類の鞘部)」であってもよいが、食物繊維局在部位又は不溶性食物繊維局在部位が「可食部」の一部であることが好ましく、豆類の種皮部、オオバコの種皮部及び雑穀類のふすま部のいずれか1種以上であることがより好ましく、豆類の種皮部とオオバコの種皮部のいずれか一方であることがより好ましく、豆類の種皮部とオオバコの種皮部を共に含有することが特に好ましい。
【0191】
尚、食物繊維局在部位の例としては、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に記載の各種食材の「廃棄部位」も挙げられる(一例を表1に示す)。ただし、これら「非可食部」以外の「可食部」についても、食物繊維局在部位は上記の雑穀類、豆類、種実類、野菜類の皮部や種子部、野菜類の茎葉部の特に硬く厚い部分等にも認められる。
【0192】
本発明において、食材の「非可食部」とは、食材の通常飲食に適さない部分や、通常の食習慣では廃棄される部分を表し、「可食部」とは、食材全体から廃棄部位(非可食部)を除いた部分を表す。尚、本発明に使用される食材、すなわち食物繊維含有食材及び/又はその他の(食物繊維を含有しない)食材における、非可食部の部位や比率は、その食品や食品の加工品を取り扱う当業者であれば、当然に理解することが可能である。例としては、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に記載の「廃棄部位」及び「廃棄率」を参照し、これらをそれぞれ非可食部の部位及び比率として扱うことができる。尚、食材における非可食部の部位や比率から、可食部の部位や比率についても理解することができる。
【0193】
また、食物繊維局在部位における乾燥質量換算での食物繊維含有割合は、例えば8質量%超50質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常8質量%超、又は9質量%超、又は10質量%超、又は11質量%超、又は12質量%超、又は13質量%超、又は14質量%超、又は15質量%超、又は16質量%超、又は17質量%超、又は18質量%超、又は19質量%超、又は20質量%超であることが好ましい。上限は特に制限されないが、通常50質量%以下、又は40質量%以下、又は30質量%以下とすることができる。ここで、本発明において「乾燥質量換算(「乾燥質量基準割合」「湿潤質量基準」又は「乾量基準」と称する場合もある。)」とは組成物や各画分の水分を含まない乾燥質量(上記の場合、不溶性食物繊維局在部位の乾燥質量)を分母、各対象成分や対象物の含有量(上記の場合、不溶性食物繊維の乾燥質量)を分子として算出される、各成分等の含有割合を表す。すなわち、本発明の組成物における乾燥質量換算の規定のうち、水分の有無や加工前後によってその値が変化しない原料配合に関する規定や栄養成分に関する規定は、段階(i)の生地組成物や段階(ii)においても充足される場合がある。また、食物繊維局在部位が不溶性食物繊維局在部位であって、不溶性食物繊維含有割合が上記規定を充足するものであってもよい。
【0194】
また、食物繊維局在部位を含有させる際は、微細化処理物の状態で含有させることが好ましい。食物繊維局在部位の微細化処理に際しては、食物繊維局在部位を単独で微細化処理を施してもよく、食物繊維局在部位を含む食物繊維含有食材の状態で微細化処理を施してもよいが、破砕が困難な食物繊維局在部位をそれ以外の部位と分離して微細化処理を施すことが便利である。例えば、豆類の種皮部をそれ以外の可食部と分離し、微細化を施した後に別途微細化処理を施した可食部を有する豆類と混合する方法や、雑穀類のふすま部をそれ以外の可食部と分離し、微細化を施した後に別途微細化処理を施した可食部を有する雑穀類と混合する方法や、オオバコ種皮部をそれ以外の部位と分離し、微細化を施した後に別途微細化処理を施した豆類及び/又は雑穀類と混合する方法等が挙げられる。また、食物繊維局在部位が硬質組織である不溶性食物繊維局在部位である場合に、上記規定を充足することが好ましい。
【0195】
一方、食物繊維局在部位(特に不溶性食物繊維局在部位)を含む食物繊維含有食材の状態で微細化処理を施すことで、部位ごとに素材を画分する工程を省略できるため、強力な微細化方法を採用できる場合は産業上有利に製造することができる。例えば、種皮部を有する豆類やふすま部を有する雑穀類をそのまま微細化処理を行う方法が挙げられる。
【0196】
また、同一種類の食材における食物繊維局在部位(特に不溶性食物繊維局在部位)の微細化処理物とそれ以外の部位を共に含有することが好ましい。また、食物繊維局在部位の微細化処理物は、食材から食物繊維局在部位を分離した後に微細化処理を施したものを含有させてもよいし、食物繊維局在部位を含む食物繊維含有食材の状態で微細化処理を施したものを含有させてもよい。
【0197】
本発明における微細化処理の条件として用いられる粉砕処理の手段は特に限定されない。粉砕時の温度も制限されず、高温粉砕、常温粉砕、低温粉砕の何れであってもよい。粉砕時の圧力も制限されず、高圧粉砕、常圧粉砕、低圧粉砕の何れであってもよい。斯かる粉砕処理のための装置の例としては、ブレンダー、ミキサー、ミル機、混練機、粉砕機、解砕機、磨砕機等の機器類が挙げられるが、これらの何れであってもよい。その装置としては、例えば乾式ビーズミル、ボールミル(転動式、振動式等)等の媒体攪拌ミル、ジェットミル、高速回転型衝撃式ミル(ピンミル等)、ロールミル、ハンマーミル等を用いることができる。
【0198】
食物繊維局在部位(特に不溶性食物繊維局在部位)の微細化処理に際しては、擾乱後の微粒子複合体の粒子径のd50が、所定の範囲内に調整されることが好ましい。具体的に、擾乱後の粒子径のd50は、例えば1μm以上450μm以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は、通常450μm以下、中でも400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下であることが好ましい。一方、その下限は特に制限されないが、通常1μm以上、中でも5μm以上、又は7μm以上とすることができる。
【0199】
また、食物繊維局在部位(特に不溶性食物繊維局在部位)の微細化処理に際しては、擾乱後の微粒子複合体の粒子径のd90が、所定の範囲内に調整されることが好ましい。具体的に、擾乱後の粒子径のd90は、例えば1μm以上500μm以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は、通常500μm以下、中でも450μm以下、又は400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下であることが好ましい。一方、その下限は特に制限されないが、通常1μm以上、中でも5μm以上、又は7μm以上であることが好ましい。
【0200】
また、食物繊維局在部位(特に不溶性食物繊維局在部位)の微細化処理に際しては、擾乱後の食物繊維局在部位の微細化処理物における粒子(微粒子及び微粒子複合体)の単位体積当り比表面積は、例えば0.01[m2/mL]以上1.50[m2/mL]以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は、通常0.01[m2/mL]以上、中でも0.02[m2/mL]以上、又は0.03[m2/mL]以上とすることが好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、通常1.50[m2/mL]以下、中でも1.00[m2/mL]以下、又は0.90[m2/mL]以下、又は0.80[m2/mL]以下であるのが好ましい。
【0201】
なお、本発明において、単位体積当り比表面積[m2/mL]とは、前述したレーザ回折式粒度分布測定装置を用いて測定した、粒子を球状と仮定した場合の単位体積(1mL)当りの比表面積を表す。尚、粒子を球状と仮定した場合の単位体積当りの比表面積は、粒子の成分や表面構造等を反映した測定値(透過法や気体吸着法等で求められる体積当り、質量当り比表面積)とは異なる測定メカニズムに基づく数値である。また、粒子を球状と仮定した場合の単位体積当りの比表面積は、粒子1個当りの表面積をai、粒子径をdiとした場合に、6×Σ(ai)÷Σ(ai・di)によって求められる。
【0202】
段階(i)における生地組成物に含まれる豆類及び/又は雑穀類は、超音波処理後粒子径d90が所定値以下の豆類粉末及び/又は雑穀類粉末の形態であることが好ましい。具体的に、豆類及び/又は雑穀類の超音波処理後粒子径d90は、例えば1μm以上500μm未満の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は、通常500μm未満、中でも450μm以下、又は400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下であることが好ましい。一方、その下限は特に制限されないが、通常1μm以上、中でも5μm以上、又は7μm以上、又は10μm以上であることが好ましい。
【0203】
・段階(ii):生地組成物の加熱処理による膨化:
段階(ii)では生地組成物を加熱して膨化させる。本加熱工程により、通常はこの段階で前述の酵素処理(例えばキシラナーゼ処理及び/又はペクチナーゼ処理等)が進行し、生地組成物中のでんぷんが分解酵素によって分解されると共に、組成物の膨化が進行することになる。即ち、前述の酵素処理を行う場合は、あらかじめ酵素処理を行った原料を用いてもよく、段階(i)において酵素処理を行ってもよく、段階(ii)で酵素処理を行ってもよく、それらを組み合わせた方法であってもよい。具体的には段階(i)及び/又は段階(ii)において酵素処理を行う方法であってもよい。段階(ii)における加熱時間は、生地組成物における酵素活性、反応温度、乾量基準含水率などから決定される反応速度や、AUC2及びAUC1の変化割合から適宜設定すればよいが、通常1分間以上、中でも2分間以上、又は3分間以上である。上限は特に制限されないが、通常24時間以下、又は16時間以下とすることができる。段階(ii)における加熱温度も、AUC2及びAUC1の変化割合などから適宜設定することができるが、例えば30℃以上300℃以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は、通常30℃以上、中でも40℃以上、又は50℃以上、又は60℃以上、又は70℃以上、又は80℃以上、又は90℃以上、又は95℃以上、又は100℃以上、又は105℃以上、又は110℃以上、又は115℃以上、特に120℃以上とすることができる。一方、その上限は特に制限されないが、例えば通常300℃以下、中でも290℃以下、又は280℃以下、又は270℃以下、又は260℃以下、又は250℃以下、又は240℃以下、又は230℃以下、又は220℃以下とすることができる。段階(ii)における加熱時の圧力も、組成物の膨化を妨げない範囲であれば、特に制限されず任意であるが、通常は常圧とすることができる。
【0204】
より具体的に、本発明の組成物が発酵膨化組成物である場合、その製造方法としては、例えば以下の発酵組成物製造方法を採用することができる。その場合、発酵膨化組成物製造方法において、本明細書における段階(ii)についての規定(具体的には段階(ii)の加熱処理前後における状態に関する規定)は後述する発酵段階(ii-a)及び焼成段階(ii-b)が完了した時点で「処理後」の規定が充足されていればよいが、発酵段階(ii-a)が完了した時点で当該規定が充足されてもよい。また、本発明の組成物が無発酵膨化組成物である場合、その製造方法としては、例えば以下の無発酵組成物製造方法1又は無発酵組成物製造方法2を採用することができる。その場合、無発酵膨化組成物製造方法1において、本明細書における段階(ii)についての規定(具体的には段階(ii)の加熱処理前後における状態に関する規定)は後述する加熱混練段階(ii-1a)及び焼成段階(ii-1b)が完了した時点で「処理後」の規定が充足されていればよいが、加熱混練段階(ii-1a)が完了した時点で当該規定が充足されてもよい。また、無発酵膨化組成物製造方法2において、本明細書における段階(ii)についての規定(具体的には段階(ii)の加熱処理前後における状態に関する規定)は後述する混合段階(ii-2a)及び焼成段階(ii-2b)が完了した時点で「処理後」の規定が充足されていればよいが、混合段階(ii-2a)が完了した時点で当該規定が充足されてもよい。
【0205】
(発酵膨化組成物製造方法)
段階(ii)が下記(ii-a)及び(ii-b)の段階を含む。
(ii-a)前記(i)の生地組成物を酵母発酵させる段階。
(ii-b)前記(ii-a)の酵母発酵後の組成物を焼成する段階。
【0206】
(無発酵膨化組成物製造方法1)
段階(ii)が下記(ii-1a)及び(ii-1b)の段階を含む。
(ii-1a)前記(i)の生地組成物を、加圧条件下、温度100℃以上で加熱処理しつつ混練する段階。
(ii-1b)前記(ii-1a)の混練後の組成物を、温度100℃以上で常圧に戻す段階。
【0207】
(無発酵膨化組成物製造方法2)
段階(ii)が下記(ii-2a)及び(ii-2b)の段階を含む。
(ii-2a)前記(i)の生地組成物に気泡及び/又は膨張剤を混合する段階。
(ii-2b)前記(ii-2a)の混合後の組成物を、任意の温度で加熱処理する段階。
【0208】
段階(ii)における生地組成物の加熱処理による膨化は、以下の条件を満たすように実施することが好ましい。
【0209】
段階(ii)における加熱処理の前後で、組成物の乾量基準含水率は、所定割合以上低下する(すなわち、「(加熱処理前の生地組成物における当該割合-加熱処理後組成物における当該割合)/加熱処理前の生地組成物における当該割合」で規定される低下率が一定以上の数値となる)ことが好ましい。具体的に、段階(ii)における加熱処理の前後での前記低下率は、例えば5質量%以上100質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、前記低下率の下限は、通常5質量%以上、中でも9質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、又は45質量%以上、又は50質量%以上、又は55質量%以上、又は60質量%以上低下することが好ましい。その理由は定かではないが、当該割合が大きいほど加熱工程中における生地組成物中のでんぷん分解が促進され、好ましく組成物の膨化が進行するためと考えられる。一方、前記低下率の上限は特に制限されないが、例えば通常100質量%以下、又は98質量%以下、又は96質量%以下、又は94質量%以下、又は92質量%以下、又は90質量%以下、又は80質量%以下、又は70質量%以下とすることができる。
【0210】
また、製造工程に発酵工程を含む発酵膨化組成物(例えばブレッド又はブレッド様食品など)については、段階(ii)における加熱処理前後の乾量基準含水率低下割合が比較的小さい(すなわち、「(発酵及び加熱処理前の生地組成物における当該割合-発酵及び加熱処理後組成物における当該割合)/発酵及び加熱処理前の生地組成物における当該割合」で規定される低下率が一定以上の数値となる)ことが好ましい。具体的に、段階(ii)における加熱処理の前後での前記低下割合が、例えば5質量%以上80質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、前記低下割合の下限は、通常5質量%以上、又は9質量%以上、又は15質量%以上であってもよい。一方、前記低下割合の上限は、制限されるものではないが、工業上の生産効率という観点から、例えば通常80質量%未満、中でも70質量%未満、又は60質量%未満とすることができる。
【0211】
なお、本発明において特に指定が無い場合、「加熱処理前」とは(i)の段階における調製直後の生地組成物の状態を表し、「加熱処理後」とは(ii)の段階が完了した後における膨化組成物の状態を表す。
【0212】
段階(ii)における加熱処理の前後で、組成物の前記AUC1は、所定割合以上増加する(すなわち、「(加熱処理後組成物における当該割合-加熱処理前の生地組成物における当該割合)/加熱処理前の生地組成物における当該割合」で規定される増加率が一定以上の数値となる)ことが好ましい。具体的に、段階(ii)における加熱処理の前後での前記増加割合が、例えば5%以上500%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、前記増加割合の下限は、通常5%以上、中でも10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上、又は30%以上、又は35%以上、又は40%以上増加することが好ましい。その理由は定かではないが、AUC1が高い組成物は加熱処理後の冷却による組成物が硬質化を和らげ、膨化食品独特の食感を感じられやすくすると考えられるため、当該増加割合が大きいほど加熱処理後に硬質化しにくい性質を兼ね備えた好ましい品質の組成物となると考えられる。一方、その増加割合の上限は特に制限されないが、例えば通常500%以下、又は400%以下、又は300%以下、又は250%以下、又は210%以下、又は200%以下、又は150%以下、又は100%以下、又は95%以下、又は90%以下、又は85%以下、又は80%以下、又は75%以下、又は70%以下、又は65%以下とすることができる。なお、加熱処理後組成物における当該数値は、その後常温冷却された後も大きく変化しないため、常温冷却後の組成物測定値を加熱処理後組成物における当該数値として採用できる。
【0213】
段階(ii)における加熱処理の前後で、組成物の前記AUC2は、所定割合以上低下する(すなわち、「(加熱処理前の生地組成物における当該割合-加熱処理後組成物における当該割合)/加熱処理前の生地組成物における当該割合」で規定される低下率が一定以上の数値となる)ことが好ましい。具体的に、斯かる値は、段階(ii)における加熱処理の前後での前記低下率が、例えば5%以上100%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、前記低下率の下限は、通常5%以上、中でも10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上、又は30%以上、又は35%以上、又は40%以上低下することが好ましい。その理由は定かではないが、AUC2が高い組成物は加熱処理時の膨化はしやすいが加熱処理後の冷却によって組成物が硬質化して、膨化食品独特の食感が十分に感じられにくくなると考えられるため、当該低下割合が大きいほど加熱処理中における生地組成物中の膨化しやすさと、加熱処理後における硬質化しにくさという相反する性質を兼ね備えた好ましい品質の組成物となると考えられる。その低下率の上限は特に制限されないが、例えば通常100%以下、又は90%以下とすることができる。なお、加熱処理後組成物における当該数値は、その後常温冷却された後も大きく変化しないため、常温冷却後の組成物測定値を加熱処理後組成物における当該数値として採用できる。
【0214】
段階(ii)における加熱処理の前後で、組成物の前記AUC1に対する前記AUC2の比([AUC2]/[AUC1])は、所定割合以上低下する(すなわち、「(加熱処理前の生地組成物における当該割合-加熱処理後組成物における当該割合)/加熱処理前の生地組成物における当該割合」で規定される低下率が一定以上の数値となる)ことが好ましい。具体的に、段階(ii)における加熱処理の前後での前記低下率が、例えば10%以上100%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、前記低下率の下限は、通常10%以上、中でも15%以上、又は20%以上、又は25%以上、又は30%以上、又は35%以上、又は40%以上低下することが好ましい。その理由は定かではないが、当該低下割合が大きいほど加熱処理中における生地組成物中の膨化しやすさと、加熱処理後における硬質化しにくさのバランスが取れた好ましい品質の組成物となると考えられる。一方、その低下割合の上限は特に制限されないが、例えば通常100%以下、又は90%以下、又は80%以下とすることができる。なお、加熱処理後組成物における当該数値は、その後常温冷却された後も大きく変化しないため、常温冷却後の組成物測定値を加熱処理後組成物における当該数値として採用できる。
【0215】
段階(ii)における加熱処理の前後で、組成物の前記吸光波長660nm(「ABS5.0-6.5」)における吸光度は、所定割合以上増加する(すなわち、「加熱処理後組成物における当該測定値-加熱処理前の生地組成物における当該測定値」で規定される増加差分が一定以上の数値となる)ことが好ましい。具体的に、段階(ii)における加熱処理の前後での前記増加差分が、例えば0.03以上3.00以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、前記増加差分の下限は、通常0.03以上、又は0.04以上、又は0.05以上、中でも0.10以上、又は0.15以上、又は0.20以上、又は0.25以上、又は0.30以上、又は0.35以上、又は0.40以上増加することが好ましい。その理由は定かではないが、当該数値によって特定されると考えられる分解されたアミロペクチンを多く含む組成物は、その適度な弾性によって膨化後の状態を保持しやすくなると考えられるため、当該数値が大きいほど膨化後の状態を保持しやすく好ましい品質の組成物となると考えられる。一方、その増加差分の上限は特に制限されないが、例えば通常3.00以下、又は2.50以下、又は2.00以下、又は1.50以下、又は1.00以下、又は0.90以下、又は0.80以下、又は0.70以下とすることができる。なお、加熱処理後組成物における当該数値は、その後常温冷却された後も大きく変化しないため、常温冷却後の組成物測定値を加熱処理後組成物における当該数値として採用できる。
【0216】
また、本発明の膨化組成物は、前記分子量分布曲線MWDC6.5-9.5に対する分子量対数が6.5以上8.0未満の区間の曲線下面積の割合(AUC3)が、加熱処理の前後で所定割合以上低下する(すなわち、「(加熱処理前の生地組成物における当該割合-加熱処理後組成物における当該割合)/加熱処理前の生地組成物における当該割合」で規定される低下率が一定以上の数値となる)ことが好ましい。具体的に、当該低下率は、例えば5%以上100%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、前記低下割合の下限は、通常5%以上、中でも10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上、又は30%以上、又は35%以上とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、例えば通常100%以下、又は90%以下とすることができる。その理由は定かではないが、でんぷんに含まれるアミロペクチン(分子量対数が6.5以上8.0未満の範囲の画分に含有されると考えられる)の一部又は全部が、さらに低分子のアミロース(分子量対数が5.0以上6.5未満の範囲の画分に含有されると考えられる)又はデキストリン(分子量対数が3.5以上5.0未満の範囲の画分に含有されると考えられる)に分解されることで当該割合が焼成中に増加し、膨化段階における展延性と焼成後における膨化物独特の食感とが両立した組成物となるため好ましい品質となると考えられる。なお、加熱処理後組成物における当該数値は、その後常温冷却された後も大きく変化しないため、常温冷却後組成物における値を加熱処理後組成物における当該数値として採用できる。
【0217】
本発明の膨化組成物は、後述する段階(ii)の加熱処理の前後で、前記合計空隙率が所定割合以上増加する(すなわち、「(加熱処理後組成物における当該割合-加熱処理前の生地組成物における当該割合)/加熱処理前の生地組成物における当該割合」で規定される増加率が一定以上の数値となる)ことが好ましい。具体的に、斯かる値の増加率は、例えば1%以上10000%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、前記増加率の下限は、通常1%以上、中でも2%以上、又は3%以上、又は4%以上、又は5%以上、又は6%以上、又は7%以上、又は8%以上、又は9%以上、又は10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は30%以上、又は40%以上、特に50%以上であることが好ましい。その理由は定かではないが、生地中の気泡が膨張するためと考えられる。一方、前記増加率の上限は特に制限されないが、通常10000%以下、又は8000%以下、又は6000%以下、又は4000%以下、又は2000%以下、又は1000%以下、又は500%以下、又は300%以下、又は200%以下、又は150%以下である。
【0218】
また、本発明の膨化組成物は、後述する段階(ii)の加熱処理前後における組成物体積が通常1%以上増加する(すなわち、「(加熱処理後における体積-加熱処理前における体積)/加熱処理前における体積」で定義される増加率が一定以上の数値となる)ことを好ましい特徴とする。具体的に、斯かる値の増加率は、例えば1%以上2000%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、前記増加率の下限は、通常1%以上、中でも2%以上、又は3%以上、又は4%以上、又は5%以上、又は6%以上、又は7%以上、又は8%以上、又は9%以上、又は10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は30%以上、又は40%以上、特に50%以上であることが好ましい。その理由は定かではないが、組成物内部の気泡膨張に伴い体積が増加するためと考えられる。一方、前記増加率の上限は特に制限されないが、通常2000%以下、又は1500%、又は1000%、又は800%、又は600%以下、又は400%以下、又は300%以下、又は200%以下、又は150%以下とすることができる。
【0219】
本発明の膨化組成物は、段階(ii)の加熱処理後も膨化状態が保持されることが好ましい。即ち、段階(ii)の加熱処理後に組成物が常温(20℃)まで冷却された場合における、前記合計空隙率の低減率が所定値以下である(すなわち、「(段階(ii)後組成物における当該割合(最大値)-常温冷却後組成物における当該割合(最小値))/段階(ii)後組成物における当該割合(最大値)」で定義される低減率が一定以下の数値となる)ことが好ましい。具体的に、斯かる値の低減率は、例えば0%以上50%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、前記低減率の下限は、通常50%以下、中でも45%以下、又は40%以下、又は35%以下、又は30%以下、又は25%以下、特に20%以下であることが好ましい。その理由は定かではないが、当該割合が大きい組成物は加熱処理後に膨化状態を保持できずに急速に萎んでしまうためと考えられる。一方、前記低減率の下限は特に制限されないが、通常0%以上、又は5%以上である。
【0220】
本発明の膨化組成物は、段階(ii)の加熱処理後に組成物が常温(20℃)まで冷却された場合における、組成物体積の低減率が所定割合以下である(すなわち、「(段階(ii)後組成物における体積(最大値)-常温冷却後組成物における体積(最小値))/段階(ii)後組成物における体積(最大値)」で定義される低減率が一定以下の数値となる)ことが好ましい。即ち、斯かる値の低減率は、例えば0%以上50%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、前記低減率の下限は、通常50%以下、中でも45%以下、又は40%以下、又は35%以下、又は30%以下、又は25%以下、特に20%以下であることが好ましい。その理由は定かではないが、当該割合が大きい組成物は加熱処理後に膨化状態を保持できずに急速に萎んでしまうためと考えられる。一方、前記低減率の下限は特に制限されないが、通常0%以上、又は5%以上である。
【0221】
段階(ii)における加熱処理の前後で、組成物の特徴(c1)において規定される前記AV66.88278×AV80.79346(m/z 66.88278のシグナル強度分散から算出される平均輝度(AV66.88278)と、m/z 80.79346のシグナル強度分散から算出される平均輝度(AV80.79346)との乗算値)は、所定割合以上増加する(すなわち、「(加熱処理後組成物における当該割合-加熱処理前の生地組成物における当該割合)/加熱処理前の生地組成物における当該割合」で規定される増加率が一定以上の数値となる)ことが好ましい。具体的に、斯かる値は、段階(ii)における加熱処理の前後での増加率は、例えば30%以上1000%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、前記増加率の下限は、通常30%以上、中でも40%以上、又は50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上、又は100%以上増加することが好ましい。その理由は定かではないが、加熱処理時の加工によって低分子成分が組成物全体に分布することででんぷんが固くなることを抑制している可能性がある。一方、前記増加率の上限は特に制限されないが、例えば通常1000%以下、又は700%以下、又は400%以下とすることができる。なお、加熱処理後組成物における当該数値は、その後常温冷却された後も大きく変化しないため、常温冷却後の組成物測定値を加熱処理後組成物における当該数値として採用できる。
【0222】
段階(ii)における加熱処理の前後で、組成物の特徴(c2)において規定される前記SD66.88278(m/z 66.88278のシグナル強度分散における輝度の標準偏差)は、所定割合以上増加する(すなわち、「(加熱処理後組成物における当数値-加熱処理前の生地組成物における当該数値)/加熱処理前の生地組成物における当該数値」で規定される増加率が一定以上の数値となる)ことが好ましい。具体的に、段階(ii)における加熱処理の前後での増加率は、例えば5%以上500%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、前記増加率の下限は、通常5%以上、中でも10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上、又は30%以上、又は35%以上、又は40%以上増加することが好ましい。その理由は定かではないが、低分子成分が組成物全体に広範囲に亘って局在し、より硬さが和らいだ品質となっている可能性がある。一方、前記増加率の上限は特に制限されないが、例えば通常500%以下、又は400%以下、又は350%以下、又は300%以下、又は200%以下とすることができる。なお、加熱処理後組成物における当該数値は、その後常温冷却された後も大きく変化しないため、常温冷却後の組成物測定値を加熱処理後組成物における当該数値として採用できる。なお、加熱処理後組成物における当該数値は、その後常温冷却された後も大きく変化しないため、常温冷却後の組成物測定値を加熱処理後組成物における当該数値として採用できる。なお、加熱処理後組成物における当該数値は、その後常温冷却された後も大きく変化しないため、常温冷却後の組成物測定値を加熱処理後組成物における当該数値として採用できる。
【0223】
段階(ii)における加熱処理の前後で、組成物の特徴(c3)において規定される前記SD80.79346(m/z 80.79346のシグナル強度分散における輝度の標準偏差)は、所定割合以上増加する(すなわち、「(加熱処理後組成物における当該数値-加熱処理前の生地組成物における当該数値)/加熱処理前の生地組成物における当該数値」で規定される増加率が一定以上の数値となる)ことが好ましい。具体的に、段階(ii)における加熱処理の前後での増加率は、例えば5%以上1000%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、前記増加率の下限は、通常5%以上、中でも10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上、又は30%以上、又は35%以上、又は40%以上、又は50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は100%以上、又は200%以上、又は300%以上増加することが好ましい。その理由は定かではないが、ピラジンに類似した低分子成分が組成物全体に広範囲に亘って局在し、より硬さが和らいだ品質となっている可能性がある。上限は特に制限されないが、例えば通常1000%以下、又は800%以下、又は600%以下とすることができる。なお、加熱処理後組成物における当該数値は、その後常温冷却された後も大きく変化しないため、常温冷却後の組成物測定値を加熱処理後組成物における当該数値として採用できる。
【0224】
本発明の膨化組成物は、前記分子量分布曲線MWDC3.5-6.5に対する分子量対数が3.5以上5.0未満の区間の曲線下面積の割合(AUC4)が、加熱処理の前後で所定割合以上増加する(すなわち、「(加熱処理後組成物における当該割合-加熱処理前の生地組成物における当該割合)/加熱処理前の生地組成物における当該割合」で規定される増加率が一定以上の数値となる)ことが好ましい。具体的に、段階(ii)における加熱処理の前後での増加率は、例えば5%以上100%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、前記増加率の下限は、通常5%以上、中でも10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上、又は30%以上、又は35%以上とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、例えば通常100%以下、又は90%以下とすることができる。その理由は定かではないが、でんぷんに含まれるアミロース(分子量対数が5.0以上6.5未満の範囲の画分に含有されると考えられる)の一部又は全部が、さらに低分子のデキストリン(分子量対数が3.5以上5.0未満の範囲の画分に含有されると考えられる)に分解されることで当該割合が焼成中に増加し、膨化物独特の食感が感じられやすい好ましい品質となると考えられる。なお、加熱処理後組成物における当該数値は、その後常温冷却された後も大きく変化しないため、常温冷却後の組成物測定値を加熱処理後組成物における当該数値として採用できる。
【0225】
・中間処理及び/又は後処理:
本発明の組成物は、少なくとも以上の段階(i)及び(ii)を経ることにより得ることができるが、更に追加の中間処理及び/又は後処理を加えてもよい。追加の中間処理及び/又は後処理としては、発酵処理、成形処理、乾燥処理、恒温処理、等が挙げられる。
【0226】
発酵処理は、通常は段階(i)と段階(ii)との間に実施することができる。発酵手法や発酵形状は特に制限されず、当該技術分野にて公知の手法により、任意の条件で実施することができる。通常は、生地組成物を酵母と混合し、所定の温度で所定の時間に亘って保持すればよい。発酵用酵母としては、制限されるものではないが、清酒酵母、パン酵母、ビール酵母、ワイン酵母等が挙げられる。発酵温度も制限されないが、例えば0℃以上60℃以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常0℃以上、中でも4℃以上、さらには10℃以上とすることができる。また、その上限は特に制限されないが、通常60℃以下、中でも50℃以下とすることができる。発酵時間も制限されないが、通常30分以上、中でも60分以上、また、通常36時間以内、中でも24時間以内とすることができる。特に、例えば0℃以上且つ40℃以下(より好ましくは35℃以下、又は30℃以下、又は25℃以下、又は20℃以下)の条件下で、例えば10時間以上36時間以内で発酵させることで、香りのよい組成物となるため好ましい。
【0227】
成形処理は、段階(i)と段階(ii)との間、及び/又は、段階(ii)の後に実施することができる。成形手法や成形形状は特に制限されず、当該技術分野にて公知の手法により、任意の形状に成形することができる。例えば、パスタや中華麺等の麺のような細長状組成物とする場合、前述のエクストルーダー等の装置を用いて、組成物を細長形状に押し出し成形すればよい。一方、平板状の組成物とする場合、組成物をシート成型機やロール成型機などを用いて平板形状に成形すればよい。更には、デポジッタ-を用いて塊状に成型された組成物をプレス成形したり、パイシート成型機を用いて平板形状に成形した組成物を切断又は型抜きしたりすることで、細長状、粒状、薄片状等の任意の形状の組成物を得ることもできる。
【0228】
乾燥処理は、通常は段階(ii)の後に実施することができる。乾燥方法としては、一般的に食品の乾燥に用いられる任意の方法を用いることができる。例としては、天日乾燥、陰干し、フリーズドライ、エアドライ(例えば熱風乾燥、流動層乾燥法、噴霧乾燥、ドラム乾燥、低温乾燥等)、加圧乾燥、減圧乾燥、マイクロウェーブドライ、油熱乾燥等が挙げられる。中でも、食材が本来有する色調や風味の変化の程度が小さく、食品以外の香り(こげ臭等)を制御できるという点から、エアドライ(例えば熱風乾燥、流動層乾燥法、噴霧乾燥、ドラム乾燥、低温乾燥等)又はフリーズドライによる方法が好ましい。
【0229】
恒温処理は、通常は段階(i)と段階(ii)との間に実施することができる。例えば、段階(i)の組成物について、一定以上の乾量基準含水率が保たれた状態において、一定温度以上で恒温処理することで、膨化性が向上するため好ましい。処理温度は制限されないが、例えば60℃以上300℃以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常60℃以上、中でも70℃以上、又は90℃以上、又は100℃以上とすることができる。その上限は特に制限されないが、通常300℃以下、又は250℃以下とすることができる。保持時間は通常15分以上、中でも30分以上とすることができ、また、通常10時間以下、中でも5時間以下とすることができる。恒温処理時の乾量基準含水率は、制限されるものではないが、例えば30質量%超200質量%以下の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は、通常30質量%超、中でも40質量%超、又は50質量%超、又は60質量%超、又は70質量%超、又は80質量%超とすることができ、また、通常200質量%以下、中でも175質量%以下、又は150質量%以下とすることができる。
【実施例0230】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。なお各表に記載された数値は、最小桁の1/10を四捨五入して算出した。
【0231】
[生地組成物の調製及びパラメーター測定]
下記表1に示す乾燥豆類粉末(成熟した乾量基準含水率15質量%未満の豆類を原料として製造)又は乾燥雑穀類粉末(成熟した乾量基準含水率15質量%未満の雑穀類を原料として製造)を用いて、下記表2に示す原料組成で各原料及び水を混合し、表3及び表4の数値となるように各試験例及び各比較例の生地組成物を調製した。豆類であるエンドウ豆は食物繊維局在部位である「皮(種皮)」を含有した状態のものを用い、雑穀類であるオーツ麦は食物繊維局在部位である「ふすま」を含有した状態のものを用いた。なお、表1の各乾燥豆類粉末又は雑穀類粉末は、表1に示す原料豆類又は雑穀類を、表1に示す粉末化方法にて粉末化した上で、一部の試験区については表1に示す条件の含水条件下における加熱混練方法にて混練を行った後、自然乾燥させて得られたものである(実施例において該当する処理を行わない試験区については表中に「NA」と記載した)。また、加熱処理における「オーブンで焼成」に際してはPanasonic社製、NE-MS264を用いて生地組成物を焼成し、「鉄板で挟持して加熱」に際してはHanchen社製電動ワッフルメーカーNP-532を用いて生地組成物を焼成した。
【0232】
【表1-1】
【表1-2】
【0233】
【表2-1】
【表2-2】
【0234】
上記手順により得られた各試験例及び各比較例の生地組成物について、前記[発明の実施の形態]において説明した手法により各種パラメーターを測定した。得られた各試験例及び各比較例の生地組成物の各パラメーターを下記表3及び表4に示す。なお、CFW被染色部位はその90%以上がヨウ素被染色部位中に包埋されていたため、包埋された状態のものを観察した。「でんぷん分解酵素活性」については、原料である食用植物(豆類、雑穀類など)に含有された状態の内在性分解酵素及び未加熱黄色エンドウ豆抽出液に含有される内在性分解酵素に由来するでんぷん分解酵素活性を表す。
【0235】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【0236】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【0237】
[膨化組成物の製造及びパラメーター測定]
上記手順により得られた各試験例及び各比較例の生地組成物について、下記表5に示す加熱前形状となるように成形処理を行った後、下記表5に示す条件で加熱処理を行った。なお、下記表5に記載のある一部の例の生地組成物については、成形処理及び加熱処理の前に、下記表5に示す条件で発酵処理を行った(酵母としてはオリエンタル酵母社製オリエンタル 生イーストを用いた)。加熱処理後、常温冷却することにより、各試験例及び各比較例の膨化組成物を得た。各例の膨化組成物の冷却後の形状も合わせて下記表5に示す。なお、加熱処理前後及び常温冷却時において組成物の底面積は変化しなかったため、組成物厚さ又は高さから組成物体積を算出することができる。
【0238】
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【0239】
上記手順により得られた各試験例及び各比較例の膨化組成物について、前記[発明の実施の形態]において説明した手法により各種パラメーターを測定した。得られた各試験例及び各比較例の膨化組成物の各パラメーターを下記表6及び表7に示す。なお、「膨化食品独特の食感」が3点以上の組成物については、全て段階(ii)の加熱処理の前後で、前記合計空隙率が1%以上増加し、凍結切片Cについて測定される合計空隙率及び合計閉孔部割合が共に1%超であった。
【0240】
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【表6-5】
【表6-6】
【0241】
【表7-1】
【表7-2】
【0242】
[膨化組成物の官能評価]
各試験例及び各比較例の膨化組成物について、以下の手順により官能評価を行った。尚、官能検査員としては、下記A)~C)の識別訓練を実施した上で、特に成績が優秀で、商品開発経験があり、食品の味や食感といった品質についての知識が豊富で、各官能検査項目に関して絶対評価を行うことが可能な検査員を選抜した。
【0243】
A)五味(甘味:砂糖の味、酸味:酒石酸の味、旨み:グルタミン酸ナトリウムの味、塩味:塩化ナトリウムの味、苦味:カフェインの味)について、各成分の閾値に近い濃度の水溶液を各1つずつ作製し、これに蒸留水2つを加えた計7つのサンプルから、それぞれの味のサンプルを正確に識別する味質識別試験。
B)濃度がわずかに異なる5種類の食塩水溶液、酢酸水溶液の濃度差を正確に識別する濃度差識別試験。
C)メーカーA社醤油2つにメーカーB社醤油1つの計3つのサンプルからB社醤油を正確に識別する3点識別試験。
【0244】
また、何れの評価項目でも、事前に検査員全員で標準サンプルの評価を行い、評価基準の各スコアについて標準化を行った上で、10名によって客観性のある官能検査を行った。即ち、各組成物について訓練された官能検査員10名が加工工程を観察及び摂食し、「膨らみ」、「膨化食品独特の食感」、及び「総合評価」の各観点から、下記の基準で評価を行った。そして、官能検査員10名の評点の算術平均値を算出し、小数第1位を四捨五入して最終評点とした。
【0245】
・「膨らみ」の評価基準:
各組成物の加熱工程後の膨化状態について、下記の5段階で評価した。
5:膨化状態が完全に保持されており、非常に好ましい。
4:膨化状態がほとんど完全に保持されており、好ましい。
3:膨化状態からわずかに萎みが認められるが、好ましい。
2:膨化状態から萎みがやや目立ち、好ましくない。
1:膨化状態から萎みが目立ち、非常に好ましくない。
【0246】
・「膨化食品独特の食感」の評価基準:
各組成物の膨化食品独特の食感について、下記の5段階で評価した。
5:膨化食品独特の食感が強く感じられ、非常に好ましい。
4:膨化食品独特の食感が感じられ、好ましい。
3:膨化食品独特の食感がやや感じられ、好ましい。
2:膨化食品独特の食感がほとんど感じられず、好ましくない。
1:膨化食品独特の食感が感じられず、非常に好ましくない。
【0247】
・「総合評価」の評価基準:
各組成物の物性及び食味について、下記の5段階で評価した。また、組成物喫食時に食感のざらつきが感じられるものについては「なめらかさ」の項目に記載した。
5:加熱時の膨化しやすさと加熱後の膨化状態保持のバランスが非常に良く、好ましい。
4:加熱時の膨化しやすさと加熱後の膨化状態保持のバランスが良く、好ましい。
3:加熱時の膨化しやすさと加熱後の膨化状態保持のバランスがやや良く、好ましい。
2:加熱時の膨化しやすさと加熱後の膨化状態保持のバランスがやや悪く、好ましくない。
1:加熱時の膨化しやすさと加熱後の膨化状態保持のバランスが悪く、好ましくない。
【0248】
上記手順で得られた各試験例及び各比較例の膨化組成物についての官能評価の結果を下記表8に示す。
【0249】
【表8-1】
【表8-2】
【0250】
[生地組成物及び膨化組成物の追加指標の評価]
各試験例及び各比較例の生地組成物及び膨化組成物について、それぞれ上述の手順により、組成物の粉砕物の6%懸濁液を観察した場合に認められるでんぷん粒構造、及び、ラピッドビスコアナライザを用いて14質量%の組成物粉砕物水スラリーを50℃から140℃まで昇温速度12.5℃/分で昇温して測定した場合の糊化ピーク温度を測定すると共に、生地組成物と膨化組成物との比較による各数値の差分値を求めた。結果を下記表9に示す。
【0251】
また、各試験例及び各比較例の膨化組成物について、上述の手順により、組成物内部における空隙の加重平均周囲長α及び加重平均面積βを測定し、それらの比α/βを算出した。結果を下記表9に示す。
【0252】
また、各試験例及び各比較例の膨化組成物について、前記基準により選抜した官能検査員により、組成物の喫食時におけるなめらかさについての官能評価を行った。結果を下記表9に示す。
【0253】
【表9-1】
【表9-2】
【産業上の利用可能性】
【0254】
本発明によれば、加熱処理後も膨化状態が保持されると共に、膨化食品独特の食感が付与された、でんぷんを主成分とする膨化組成物を提供することができ、食品分野において極めて高い有用性を有する。