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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037313
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】成膜システムおよび成膜方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
H01L21/31 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143971
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野沢 秀二
(72)【発明者】
【氏名】山口 達也
【テーマコード(参考)】
5F045
【Fターム(参考)】
5F045AA03
5F045AD04
5F045AD05
5F045AD06
5F045BB01
5F045EF05
5F045EK07
5F045GB09
5F045GB20
(57)【要約】
【課題】基板に形成される膜の厚さを精度よく制御する。
【解決手段】成膜システムは、成膜装置、測定装置、及び制御装置を備える。成膜装置は、処理容器、ステージ、構造物、及び窓を有する。構造物は、処理容器内に設けられ、凹部を有する。窓は、処理容器の壁面に設けられ、光を透過する部材により形成されている。測定装置は、発光部、受光部、及び測定部を有する。発光部は、窓を介して構造物に複数の波長の光を照射する。受光部は、構造物から反射した波長毎の光を窓を介して受光する。測定部は、構造物に照射した光の強度と構造物から反射した光の強度とに基づいて、構造物における波長毎の光の反射率を測定する。制御装置は、推定部及び制御部を有する。推定部は、構造物における波長毎の光の反射率に基づいて基板に形成された膜の厚さを推定する。制御部は、推定された膜の厚さが予め定められた厚さに達した場合に、基板への膜の形成を停止させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に膜を形成する成膜装置と、
前記成膜装置内の予め定められた位置に成膜された膜における波長毎の光の反射率を測定する測定装置と、
前記成膜装置および前記測定装置を制御する制御装置と
を備え、
前記成膜装置は、
処理容器と
前記処理容器内に設けられ、前記基板が載せられるステージと、
前記処理容器内に設けられ、凹部を有する構造物と、
前記処理容器の壁面に設けられ、光を透過する部材により形成された窓と
を有し、
前記測定装置は、
前記窓を介して前記構造物に複数の波長の光を照射する発光部と、
前記構造物から反射した波長毎の光を前記窓を介して受光する受光部と、
前記構造物に照射した光の強度と前記構造物から反射した光の強度とに基づいて、前記構造物における波長毎の光の反射率を測定する測定部と
を有し、
前記制御装置は、
前記構造物における波長毎の光の反射率に基づいて前記基板に形成された膜の厚さを推定する推定部と、
推定された膜の厚さが予め定められた厚さに達した場合に、前記基板への膜の形成を停止させる制御部と
を有する成膜システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記凹部の周囲に形成された膜の厚さに対応付けて、波長毎の光の反射率の分布を示すデータを格納するデータベースを有し、
前記推定部は、
前記データベースを参照し、前記測定部によって測定された波長毎の光の反射率の分布との類似度が最も高い分布に対応付けられている膜の厚さを、前記基板に形成された膜の厚さとして推定する請求項1に記載の成膜システム。
【請求項3】
前記凹部の深さは20nm以上であり、
前記凹部の開口の幅は、前記基板に形成される膜の厚さの2倍以下である請求項1または2に記載の成膜システム。
【請求項4】
前記構造物は、
前記ステージの上面であって、前記基板が載せられるステージの領域の外側の領域に配置されている請求項1から3のいずれか一項に記載の成膜システム。
【請求項5】
前記成膜装置は、
前記処理容器内に2種類のモノマーのガスを供給することにより、前記ステージに載せられた前記基板上に重合体の膜を形成するガス供給部をさらに有し、
前記構造物には、前記重合体の膜が形成される請求項1から4のいずれか一項に記載の成膜システム。
【請求項6】
前記2種類のモノマーのガスは、アミンのガスと、イソシアネートのガスであり、
前記重合体は、尿素結合を有する請求項5に記載の成膜システム。
【請求項7】
前記窓の周囲には、前記窓を加熱するヒータが設けられており、
前記基板に前記重合体の膜が形成される際に、前記窓は300℃以上に加熱される請求項5または6に記載の成膜システム。
【請求項8】
前記窓の周囲には、前記窓を加熱するヒータが設けられており、
前記処理容器内がクリーニングされる際に、前記窓は300℃以上に加熱される請求項5から7のいずれか一項に記載の成膜システム。
【請求項9】
前記構造物は、前記ステージの上面であって、前記基板が載せられるステージの領域の外側の領域に配置されており、
前記構造物の下方の前記ステージ内には、前記構造物を加熱するヒータが設けられており、
前記処理容器内がクリーニングされる際に、前記構造物は300℃以上に加熱される請求項5から8のいずれか一項に記載の成膜システム。
【請求項10】
a) 処理容器内のステージに載せられた基板に対して膜を形成する工程と、
b) 前記処理容器の壁面に設けられ、光を透過する部材により形成された窓を介して、前記処理容器内に設けられ、凹部を有する構造物に複数の波長の光を照射し、前記構造物に照射した光の強度と前記構造物から反射した光の強度とに基づいて、前記構造物における波長毎の光の反射率を測定する工程と、
c) 前記構造物における波長毎の光の反射率に基づいて前記基板に形成された膜の厚さを推定する工程と、
d) 推定された膜の厚さが予め定められた厚さに達した場合に、前記基板への膜の形成を停止させる工程と
を含む成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の種々の側面および実施形態は、成膜システムおよび成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1には、エッチングを行うプラズマ処理装置において、処理室の天井に石英ガラス等の透明体からなるモニター用の窓部が設けられることが開示されている。このプラズマ処理装置では、エッチング前の堆積工程において、窓部から処理室内に光を照射し、窓部の内側に付着している堆積物からの反射光の強度の変化に応じて、堆積工程の終了タイミングの判定が行われる。これにより、レジストパターンの開口部に適切な厚さの堆積物を堆積させることができ、レジストパターンの凸部の寸法を精度よく調整することができる。
【0003】
また、下記の特許文献2には、基板の表面に可視光を照射し、集光プローブにて検出した反射光の反射スペクトル信号を用いて膜厚測定を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-93039号公報
【特許文献2】特開2003-42722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、基板に形成される膜の厚さを精度よく制御することができる成膜システムおよび成膜方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面は、成膜システムであって、基板に膜を形成する成膜装置と、成膜装置内の予め定められた位置に成膜された膜における波長毎の光の反射率を測定する測定装置と、成膜装置および測定装置を制御する制御装置とを備える。成膜装置は、処理容器と、ステージと、構造物と、窓とを有する。ステージは、処理容器内に設けられ、基板が載せられる。構造物は、処理容器内に設けられ、凹部を有する。窓は、処理容器の壁面に設けられ、光を透過する部材により形成されている。測定装置は、発光部と、受光部と、測定部とを有する。発光部は、窓を介して構造物に複数の波長の光を照射する。受光部は、構造物から反射した波長毎の光を窓を介して受光する。測定部は、構造物に照射した光の強度と構造物から反射した光の強度とに基づいて、構造物における波長毎の光の反射率を測定する。制御装置は、推定部と、制御部とを有する。推定部は、構造物における波長毎の光の反射率に基づいて基板に形成された膜の厚さを推定する。制御部は、推定された膜の厚さが予め定められた厚さに達した場合に、基板への膜の形成を停止させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の種々の側面および実施形態によれば、基板に形成される膜の厚さを精度よく制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態における成膜システムの一例を示す概略図である。
図2図2は、モニタパーツの一例を示す断面図である。
図3図3は、制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、データベース(DB)に保存されている波形データの一例を示す図である。
図5図5は、モニタパーツに形成される膜の厚さの分布の一例を示す断面図である。
図6図6は、膜厚と波形データとの関係の一例を示す図である。
図7図7は、成膜方法の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、制御装置を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、開示される成膜システムおよび成膜方法の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、開示される成膜システムおよび成膜方法が限定されるものではない。
【0010】
ところで、基板上に形成される膜の厚さは、成膜装置内の圧力および基板の温度等の影響により変動する場合がある。また、近年の半導体デバイスの微細化に伴い、基板上に形成される膜の厚さが小さくなる傾向にある。基板に形成される膜の厚さが小さくなると、成膜装置内の状態の僅かな変化による膜厚の変動の影響が大きくなる。そのため、基板に形成される膜の厚さを精度よく制御することが難しい。
【0011】
また、基板上に形成される膜の厚さをリアルタイムで測定することができれば、成膜装置内の状態が変化しても、基板に形成される膜の厚さを制御することが可能である。しかし、前述の特許文献の技術では、膜厚が小さくなると、膜厚の測定精度が低下する。そのため、基板上に形成される薄い膜の厚さを精度よく測定することは難しい。
【0012】
そこで、本開示は、基板に形成される膜の厚さを精度よく制御することができる技術を提供する。
【0013】
[成膜システム10の構成]
図1は、一実施形態における成膜システム10の一例を示す概略図である。成膜システム10は、制御装置100、測定装置200、および成膜装置300を備える。成膜装置300は、基板Wに膜を形成する。測定装置200は、成膜装置300内の予め定められた位置に成膜された膜における波長毎の光の反射率を測定する。制御装置100は、測定装置200および成膜装置300を制御する。
【0014】
成膜装置300は、処理容器301、排気装置302、シャワーヘッド306、およびステージ307を有する。本実施形態において、成膜装置300は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)装置である。処理容器301の上部には、シャワーヘッド306が設けられている。処理容器301には、シャワーヘッド306を介して2種類の原料モノマーが供給される。2種類の原料モノマーは、例えばイソシアネートおよびアミンである。シャワーヘッド306には、イソシアネートを液体で収容する原料供給源303aが、配管304aを介して接続されている。また、シャワーヘッド306には、アミンを液体で収容する原料供給源303bが、配管304bを介して接続されている。
【0015】
原料供給源303aから供給されたイソシアネートの液体は、配管304aに介在する気化器305aにより気化される。気化器305aによって気化されたイソシアネートの蒸気は、配管304aを介して、シャワーヘッド306に導入される。また、原料供給源303bから供給されたアミンの液体は、配管304bに介在する気化器305bにより気化される。気化器305bによって気化されたアミンの蒸気は、シャワーヘッド306に導入される。
【0016】
シャワーヘッド306の下面には、多数の吐出孔が形成されている。シャワーヘッド306は、配管304a介して導入されたイソシアネートの蒸気および配管304bを介して導入されたアミンの蒸気を、別々の吐出孔から処理容器301内にシャワー状に吐出する。シャワーヘッド306は、ガス供給部の一例である。
【0017】
排気装置302は、処理容器301内のガスを排気する。処理容器301内は、排気装置302によって予め定められた圧力に制御される。排気装置302は、制御装置100によって制御される。
【0018】
処理容器301内には、基板Wが載せられるステージ307が設けられている。ステージ307には、基板Wの温度を調整するためのヒータ308aが設けられている。制御装置100は、ヒータ308aを制御することにより、基板Wの上面が原料モノマーの蒸着重合に適した温度となるように、基板Wの温度を制御する。原料モノマーの蒸着重合に適した温度は、原料モノマーの種類に応じて定めることができ、例えば40℃~200℃とすることができる。
【0019】
このような成膜装置300を用いて、基板Wの表面において2種類の原料モノマーの蒸着重合反応を起こすことにより、基板Wの表面に有機材料が積層される。2種類の原料モノマーがイソシアネートおよびアミンである場合、基板Wの表面には、尿素結合を有する重合体の膜が形成される。
【0020】
また、処理容器301内には、凹部を有するモニタパーツ310が設けられている。モニタパーツ310は、凹部を有する構造物の一例である。本実施形態において、モニタパーツ310は、ステージ307の上面であって、基板Wが配置される領域の外側に、モニタパーツ310の凹部が上方となる向きで配置されている。
【0021】
図2は、モニタパーツ310の一例を示す断面図である。モニタパーツ310には、複数の凹部311が形成されている。それぞれの凹部311において、深さD1は例えば20nm以上であり、開口の幅W1は、基板Wに形成される重合体の膜厚に応じて定められる。開口の幅W1は、例えば基板Wに形成される重合体の膜の厚さの2倍以下の幅である。基板Wに形成される重合体の膜の厚さが例えば10nmである場合、開口の幅W1は、例えば20nm以下に設定される。また、基板Wに形成される重合体の膜の厚さが例えば5nmである場合、開口の幅W1は、例えば10nm以下に設定される。本実施形態において、基板Wには10nmの厚さの重合体の膜が形成され、それぞれの凹部311の深さD1は例えば20nmであり、開口の幅W1は例えば20nmである。
【0022】
モニタパーツ310の下方の処理容器301には、モニタパーツ310を加熱するためのヒータ308bが設けられている。制御装置100は、ヒータ308bを制御することにより、モニタパーツ310の温度を制御する。例えば、制御装置100は、成膜処理において、モニタパーツ310と基板Wとが同じ温度となるようにヒータ308bを制御する。また、例えば、制御装置100は、処理容器301内のクリーニングにおいて、モニタパーツ310の温度が、成膜処理における温度よりも高くなるようにヒータ308bを制御する。成膜処理における温度よりも高い温度とは、例えば300℃以上の温度である。これにより、モニタパーツ310の凹部311に形成された膜を効率よく除去することができる。
【0023】
また、モニタパーツ310の上方であって、モニタパーツ310と対向する位置の壁面には、窓309が設けられている。窓309は、例えば石英等の光を透過する部材により形成されている。窓309の周囲には、モニタパーツ310を加熱するためのヒータ308cおよびヒータ308dが設けられている。制御装置100は、ヒータ308cおよびヒータ308dを制御することにより、窓309の温度を制御する。窓309には、光ファイバ205を介して測定装置200が接続されている。
【0024】
例えば、制御装置100は、成膜処理において、窓309の温度が、反応副生成物(いわゆるデポ)が付着しにくい温度となるようにヒータ308cおよびヒータ308dを制御する。これにより、窓309にデポが付着することを抑制することができる。また、例えば、制御装置100は、処理容器301内のクリーニングにおいて、窓309の温度が、デポが付着しにくい温度となるようにヒータ308cおよびヒータ308dを制御する。これにより、窓309に付着したデポを効率よく除去することができる。アミンおよびイソシアネートを用いた成膜処理において、デポが付着しにくい温度とは、例えば300℃以上の温度である。
【0025】
測定装置200は、発光部201、受光部202、および測定部203を有する。発光部201は、複数の波長の光を、測定部203から指示された強度で光ファイバ205へ出力する。光ファイバ205へ出力された光は、窓309を介して処理容器301内に照射され、複数の凹部311が形成されたモニタパーツ310の面に反射する。本実施形態において、窓309を介して処理容器301内に照射された光は、モニタパーツ310において、複数の凹部311および複数の凹部311の周辺のモニタパーツ310の面に反射する。モニタパーツ310から反射した光は、窓309および光ファイバ205を介して測定装置200へ入力される。
【0026】
受光部202は、光ファイバ205を介して測定装置200へ入力された光を受光する。そして、受光部202は、光の波長毎に、受光された光の強度に応じた電気信号を測定部203へ出力する。測定部203は、モニタパーツ310に照射された光の強度と処理容器301から反射された光の強度とに基づいて、波長毎にモニタパーツ310における光の反射率を測定する。そして、測定部203は、測定された波長毎の光の反射率の分布のデータを制御装置100へ出力する。
【0027】
図3は、制御装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。制御装置100は、データベース(DB)101、推定部102、および制御部103を有する。DB101には、例えば図4に示されるような波形データ1010が予め格納されている。波形データ1010には、凹部311の周辺のモニタパーツ310の面に形成される膜の厚さに対応付けて、その厚さの膜がモニタパーツ310に形成された際に、モニタパーツ310からの反射波から観測される波長毎の光の反射率の分布のデータが予め格納されている。また、DB101には、レシピ等の成膜処理および処理容器301内のクリーニングに必要なデータ等が予め格納されている。成膜処理に必要なデータには、基板Wに形成される膜の厚さのデータが含まれている。
【0028】
推定部102は、測定装置200によって測定された波長毎の光の反射率に基づいて基板Wに形成された膜の厚さを推定する。例えば、推定部102は、DB101に予め格納された波形データ1010を参照し、測定装置200によって測定された波長毎の光の反射率の分布との類似度が最も高い分布に対応付けられている膜の厚さを、基板Wに形成された膜の厚さとして推定する。
【0029】
ここで、処理容器301内で成膜が行われると、モニタパーツ310の凹部311の側壁および底壁に膜が形成される。この際、凹部311の側壁と底壁の境目では、例えば図5に示されるように、横方向および上方向に膜が成長する。これにより、凹部311の側壁と底壁の境目の膜の厚さは、凹部311の上部や側壁に形成される膜の厚さよりも厚くなる。そして、凹部311の幅が狭い場合には、例えば図5に示されるように、凹部311の底部に形成される膜の厚さTh2は、凹部311の上部や側壁に形成される膜の厚さTh1よりも厚くなる。
【0030】
光の干渉を用いて膜厚を測定する方式では、膜厚が小さい場合には膜厚の測定精度が低くなってしまう。しかし、例えば図5に示されるような構造のモニタパーツ310を用いることにより、厚さTh1の膜40が形成された状態において、厚さTh1よりも厚い厚さTh2の膜40における波長毎の光の反射率の分布に基づいて、膜の厚さを推定することができる。
【0031】
例えば、図6に示されるように、凹部311の周囲に形成される膜40の厚さTh1毎に、波長毎の光の反射率の分布が予め測定される。そして、波長毎の光の反射率の分布が測定された後に、モニタパーツ310が搬出され、例えば走査電子顕微鏡等を用いて、凹部311の上部に形成される膜40の厚さTh1が測定される。これにより、凹部311の上部に形成される膜40の厚さTh1毎に、波長毎の光の反射率の分布のデータが収集され、波形データ1010としてDB101内に予め格納される。基板Wに対する成膜処理が行われる際、基板Wに隣接してステージ307上に配置されるモニタパーツ310に形成される膜40の厚さTh1は、基板Wに形成される膜40の厚さと見なすことができる。
【0032】
推定部102は、成膜処理において、DB101に予め格納された波形データ1010を参照し、測定装置200によって測定された波長毎の光の反射率の分布に最も近い分布となる波長毎の光の反射率の分布のデータを特定する。そして、推定部102は、特定された波長毎の光の反射率の分布のデータに対応付けられている膜の厚さを、基板Wに形成された膜の厚さとして推定する。そして、推定部102は、推定された膜の厚さを示す情報を制御部103へ出力する。
【0033】
なお、推定部102は、測定装置200によって測定された波長毎の光の反射率の分布とDB1011に予め格納されている波長毎の光の反射率の分布との類似度に基づいて、基板Wに形成された膜の厚さを推定してもよい。例えば、測定装置200によって測定された波長毎の光の反射率の分布について、1nmの膜厚に対応付けられた波長毎の光の反射率の分布との類似度が20であり、2nmの膜厚に対応付けられた波長毎の光の反射率の分布との類似度が80である場合を考える。なお、ここで仮定している類似度は、値が高い程、類似の度合いが高いことを示す。この場合、推定部102は、基板Wに形成された膜の厚さを、例えば、1nm×20/(20+80)+2nm×80/(20+80)=1.8nmと推定する。
【0034】
制御部103は、成膜処理を実行する際、DB101に予め格納されている成膜処理に必要なデータを参照し、成膜装置300の各部を制御する。また、制御部103は、推定部102によって推定された膜の厚さが予め定められた厚さに達した場合に、成膜装置300の各部を制御することにより、基板Wへの膜の形成を停止させる。これにより、基板Wに所望の厚さの膜を形成することができる。
【0035】
[成膜方法]
図7は、成膜方法の一例を示すフローチャートである。図7に例示される成膜方法は、例えば制御装置100が測定装置200および成膜装置300を制御することにより実現される。
【0036】
まず、図示しない搬送装置により成膜装置300の処理容器301内に基板Wが搬入され、ステージ307に載せられる(S10)。そして、成膜処理が開始される(S11)。ステップS11は、工程a)の一例である。ステップS11では、ステージ307内のヒータ308aによって、基板Wの温度が成膜に適した温度(例えば40℃~200℃)となるように制御される。また、ステージ307内のヒータ308bによって、モニタパーツ310の温度も、基板Wの温度と同じ温度となるように制御される。また、ヒータ308cおよびヒータ308dによって、窓309の温度が、デポが付着しにくい温度(例えば300℃以上)となるように制御される。そして、シャワーヘッド306から処理容器301内に2種類のモノマーの蒸気が供給され、排気装置302によって処理容器301内のガスが排気される。これにより、2種類のモノマーの蒸着重合反応によって基板W上に重合体の膜が形成される。
【0037】
次に、測定装置200は、光ファイバ205および窓309を介してモニタパーツ310に複数の波長の光を照射することにより、波長毎の光の反射率の分布を測定する(S12)。ステップS12は、工程b)の一例である。ステップS12では、発光部201が、複数の波長の光を、測定部203から指示された強度で光ファイバ205へ出力する。光ファイバ205へ出力された光は、窓309を介して処理容器301内に照射され、凹部311が形成されたモニタパーツ310の面に反射する。モニタパーツ310から反射した光は、窓309および光ファイバ205を介して受光部202によって受光される。受光部202は、光の波長毎に、受光された光の強度に応じた電気信号を測定部203へ出力する。測定部203は、モニタパーツ310に照射された光の強度と処理容器301から反射された光の強度とに基づいて、光の波長毎にモニタパーツ310における光の反射率を測定する。そして、測定部203は、測定された光の波長毎の光の反射率の分布のデータを制御装置100へ出力する。
【0038】
次に、制御装置100の推定部102は、DB101に予め格納された波形データ1010を参照し、測定装置200によって測定された波長毎の光の反射率の分布との類似度が最も高い反射率の分布を特定する(S13)。そして、推定部102は、波形データ1010を参照し、特定された反射率の分布に対応付けられている膜厚を、基板Wに形成されている膜の厚さと推定する(S14)。ステップS13およびS14は、工程c)の一例である。そして、推定部102は、推定された膜の厚さを示す情報を制御部103へ出力する。
【0039】
次に、制御装置100の制御部103は、推定部102によって推定された膜の厚さが予め定められた厚さに達したか否かを判定する(S15)。推定部102によって推定された膜の厚さが予め定められた厚さに達していない場合(S15:No)、再びステップS12に示された処理が実行される。
【0040】
一方、推定部102によって推定された膜の厚さが予め定められた厚さに達した場合(S15:Yes)、制御部103は、成膜装置300の各部を制御し、成膜処理を終了させる(S16)。ステップS16は、工程d)の一例である。そして、図示しない搬送装置により、基板Wが処理容器301内から搬出される。
【0041】
次に、処理容器301内がクリーニングされる(S17)。ステップS17では、ヒータ308bにより、モニタパーツ310の温度が、成膜処理における温度よりも高く(例えば300℃以上)なるように制御される。また、ステップS17では、ヒータ308cおよびヒータ308dにより、窓309の温度が、デポが付着しにくい温度(例えば300℃以上)となるように制御される。そして、図示しないプラズマ生成器によって生成されたプラズマに含まれる活性種が処理容器301内に供給され、処理容器301内に供給された活性種により、処理容器301内に付着しているデポが除去される。
【0042】
次に、制御部103は、処理対象となる全ての基板Wに対して成膜を行ったか否かを判定する(S18)。処理対象となる基板Wの中に成膜が行われていない基板Wがある場合(S18:No)、再びステップS10に示された処理が実行される。一方、処理対象となる全ての基板Wに対して成膜が行われた場合(S18:Yes)、本フローチャートに示された成膜方法は終了する。
【0043】
[ハードウェア]
制御装置100は、例えば図8に示されるような構成のコンピュータ90により実現される。図8は、制御装置100を実現するコンピュータ90の一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ90は、CPU(Central Processing Unit)91、RAM(Random Access Memory)92、ROM(Read Only Memory)93、補助記憶装置94、通信I/F(インターフェイス)95、入出力I/F96、およびメディアI/F97を備える。
【0044】
CPU91は、ROM93または補助記憶装置94に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM93は、コンピュータ90の起動時にCPU91によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ90のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0045】
補助記憶装置94は、例えばHDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等であり、CPU91によって実行されるプログラムおよび当該プログラムによって使用されるデータ等を格納する。CPU91は、当該プログラムを、補助記憶装置94から読み出してRAM92上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。
【0046】
通信I/F95は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介して測定装置200および成膜装置300との間で通信を行う。通信I/F95は、通信回線を介して測定装置200または成膜装置300からデータを受信してCPU91へ送り、CPU91が生成したデータを、通信回線を介して測定装置200または成膜装置300へ送信する。
【0047】
CPU91は、入出力I/F96を介して、キーボード等の入力装置およびディスプレイ等の出力装置を制御する。CPU91は、入出力I/F96を介して、入力装置から入力された信号を取得してCPU91へ送る。また、CPU91は、生成したデータを、入出力I/F96を介して出力装置へ出力する。
【0048】
メディアI/F97は、記録媒体98に格納されたプログラムまたはデータを読み取り、補助記憶装置94に格納する。記録媒体98は、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0049】
コンピュータ90のCPU91は、RAM92上にロードされたプログラムを実行することにより、推定部102および制御部103の各機能を実現する。波形データ1010は、ROM93または補助記憶装置94内に予め格納されている。
【0050】
CPU91は、RAM92上にロードされるプログラムを、記録媒体98から読み取って補助記憶装置94に格納するが、他の例として、他の装置から、通信回線を介してプログラムを取得して補助記憶装置94に格納してもよい。あるいは、CPU91は、他の装置から、通信回線を介してプログラムを取得し、取得したプログラムをRAM92上にロードして実行してもよい。
【0051】
以上、実施形態について説明した。上記したように、本実施形態における成膜システム10は、基板Wに膜を形成する成膜装置300と、成膜装置300内の予め定められた位置に成膜された膜における波長毎の光の反射率を測定する測定装置200と、測定装置200および成膜装置300を制御する制御装置100とを備える。成膜装置300は、処理容器301と、ステージ307と、窓309と、モニタパーツ310とを有する。ステージ307は、処理容器301内に設けられ、基板Wが載せられる。モニタパーツ310は、処理容器301内に設けられ、凹部311を有する。窓309は、処理容器301の壁面に設けられ、光を透過する部材により形成されている。測定装置200は、発光部201と、受光部202と、測定部203とを有する。発光部201は、窓309を介してモニタパーツ310に複数の波長の光を照射する。受光部202は、モニタパーツ310から反射した波長毎の光を窓309を介して受光する。測定部203は、モニタパーツ310に照射した光の強度と処理容器301から反射した光の強度とに基づいて、処理容器301における波長毎の光の反射率を測定する。制御装置は、推定部と、制御部とを有する。推定部は、構造物における波長毎の光の反射率に基づいて基板に形成された膜の厚さを推定する。制御部は、推定された膜の厚さが予め定められた厚さに達した場合に、基板への膜の形成を停止させる。これにより、基板Wに形成される膜の厚さを精度よく制御することができる。
【0052】
また、上記した実施形態において、制御装置100は、モニタパーツ310の凹部311の周囲に形成された膜の厚さに対応付けて、波長毎の光の反射率の分布を示す波形データ1010を格納するDB101を有する。推定部102は、DB101を参照し、測定装置200によって測定された波長毎の光の反射率の分布との類似度が最も高い分布に対応付けられている膜の厚さを、基板Wに形成された膜の厚さとして推定する。これにより、基板Wに形成される膜の厚さを精度よく制御することができる。
【0053】
また、上記した実施形態において、凹部311の深さD1は20nm以上であり、凹部311の口の幅W1は、基板Wに形成される重合体の膜の厚さの2倍以下の幅である。これにより、凹部311の底部に形成される膜の厚さを大きくすることができる。
【0054】
また、上記した実施形態において、モニタパーツ310は、ステージ307の上面であって、基板Wが載せられるステージ307の領域の外側の領域に配置されている。これにより、モニタパーツ310に形成される膜の厚さと、基板Wに形成される膜の厚さとの相関を高く維持することができる。従って、基板Wに形成される膜の厚さを精度よく制御することができる。
【0055】
また、上記した実施形態において、成膜装置300は、処理容器301内に2種類のモノマーのガスを供給することにより、ステージ307に載せられた基板W上に重合体の膜を形成するシャワーヘッド306をさらに有する。モニタパーツ310には、重合体の膜が形成される。2種類のモノマーのガスは、アミンのガスと、イソシアネートのガスであり、重合体は、尿素結合を有する。尿素結合を有する重合体は、圧力や温度などの条件の僅かな変化により、成膜速度が変化するため、膜厚の制御が難しい。これに対し、本実施形態では、凹部311を有するモニタパーツ310における波長毎の光の反射率に基づいて、基板Wに形成される重合体の膜の厚さをリアルタイムで測定することができる。これにより、基板Wに形成される膜の厚さを精度よく制御することができる。
【0056】
また、上記した実施形態において、窓309の周囲には、窓309を加熱するヒータが設けられており、基板Wに重合体の膜が形成される際に、窓309は300℃以上に加熱される。これにより、窓309にデポが付着することを抑制することができ、成膜中においてもモニタパーツ310における波長毎の光の反射率を精度よく測定することができる。従って、基板Wに形成される膜の厚さを精度よく制御することができる。
【0057】
また、上記した実施形態において、窓309の周囲には、窓309を加熱するヒータが設けられており、処理容器301内がクリーニングされる際に、窓309は300℃以上に加熱される。これにより、窓309に付着したデポを効率よく除去することができる。従って、基板Wに形成される膜の厚さを精度よく制御することができる。
【0058】
また、上記した実施形態において、モニタパーツ310は、ステージ307の上面であって、基板Wが載せられるステージ307の領域の外側の領域に配置されており、モニタパーツ310の下方のステージ307内には、モニタパーツ310を加熱するヒータが設けられている。モニタパーツ310は、処理容器301内がクリーニングされる際に、300℃以上に加熱される。これにより、モニタパーツ310に付着したデポを効率よく除去することができる。従って、基板Wに形成される膜の厚さを精度よく制御することができる。
【0059】
また、上記した実施形態における成膜方法は、工程a)、工程b)、工程c)、および工程d)を含む。工程a)では、処理容器301内のステージ307に載せられた基板Wに対して膜が形成される。工程b)では、処理容器301の壁面に設けられ、光を透過する部材により形成された窓309を介して、処理容器301内に設けられ、凹部311を有するモニタパーツ310に複数の波長の光が照射され、モニタパーツ310に照射された光の強度とモニタパーツ310から反射した光の強度とに基づいて、モニタパーツ310における波長毎の光の反射率が測定される。工程c)では、モニタパーツ310における波長毎の光の反射率に基づいて基板Wに形成された膜の厚さが推定される。工程d)では、推定された膜の厚さが予め定められた厚さに達した場合に、基板Wへの膜の形成が停止される。これにより、基板Wに形成される膜の厚さを精度よく制御することができる。
【0060】
[その他]
なお、本願に開示された技術は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0061】
例えば、上記した実施形態では、ステージ307上に設けられた凹部311を有するモニタパーツ310に対して複数の波長の光が照射され、モニタパーツ310における波長毎の光の反射率の分布に基づいて基板Wに形成された膜の厚さが推定された。しかし、開示の技術はこれに限られない。処理容器301内に凹部311が形成されていていれば、基板Wが配置される領域の外側のステージ307の上面に凹部311が形成されていてもよく、処理容器301の壁面に凹部311が形成されていてもよい。ただし、この場合であっても、凹部311が形成された面に対向する位置に窓309が設けられ、窓309を介して複数の波長の光が凹部311が形成された面に照射される。
【0062】
また、上記した実施形態では、複数の凹部311が形成された面に複数の波長の光が照射されるが、開示の技術はこれに限られない。他の形態として、凹部311の底部にのみ複数の波長のスポット光が照射されてもよい。これにより、波長毎の光の反射率の分布の測定において、凹部311の周辺や凹部311の側壁に形成された膜の影響を抑制することができる。これにより、波長毎の光の反射率の分布の測定におけるノイズを抑制することができる。
【0063】
また、上記した実施形態では、重合体の一例として尿素結合を有する重合体が用いられたが、尿素結合以外の結合を有する重合体が用いられてもよい。尿素結合以外の結合を有する重合体としては、例えばウレタン結合を有するポリウレタン等が挙げられる。ポリウレタンは、例えばアルコール基を有するモノマーとイソシアネート基を有するモノマーとを共重合させることにより合成することができる。また、ポリウレタンは、予め定められた温度に加熱されることにより、アルコール基を有するモノマーとイソシアネート基を有するモノマーとに解重合する。
【0064】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0065】
W 基板
10 成膜システム
100 制御装置
101 DB
1010 波形データ
102 推定部
103 制御部
200 測定装置
201 発光部
202 受光部
203 測定部
205 光ファイバ
300 成膜装置
301 処理容器
302 排気装置
303 原料供給源
304 配管
305 気化器
306 シャワーヘッド
307 ステージ
308 ヒータ
309 窓
310 モニタパーツ
311 凹部
40 膜
90 コンピュータ
91 CPU
92 RAM
93 ROM
94 補助記憶装置
95 通信I/F
96 入出力I/F
97 メディアI/F
98 記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8