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特開2023-37386汚泥供給装置、セメントクリンカの製造装置、及びセメントクリンカの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037386
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】汚泥供給装置、セメントクリンカの製造装置、及びセメントクリンカの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/00 20060101AFI20230308BHJP
   C04B 7/38 20060101ALI20230308BHJP
   C04B 7/43 20060101ALI20230308BHJP
   B65G 65/46 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
C02F11/00 A ZAB
C04B7/38
C04B7/43
B65G65/46 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144095
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真生
(72)【発明者】
【氏名】橘 智恵美
(72)【発明者】
【氏名】中河 久典
(72)【発明者】
【氏名】上野 修
【テーマコード(参考)】
3F075
4D059
【Fターム(参考)】
3F075AA10
3F075BA01
3F075BB01
3F075CA04
3F075CA09
3F075CB11
3F075CB12
3F075CB14
3F075CC03
3F075CC05
4D059AA01
4D059AA03
4D059AA05
4D059CB06
4D059CC04
4D059DA70
4D059EB01
4D059EB11
(57)【要約】
【課題】加熱炉に供給される汚泥の輸送トラブルの抑制と燃焼効率との両立を図る。
【解決手段】本開示の一側面に係る汚泥供給装置は、セメント原料を加熱する加熱炉に対して汚泥を供給する装置である。この汚泥供給装置は、汚泥を収容するホッパと、ホッパの排出口に接続された内部空間においてスクリューを回転させることで、ホッパ内の汚泥を下流に送り出すスクリューフィーダと、少なくとも内部空間のうちの排出口との接続部分に液体を供給する注液部と、を備える。注液部は、汚泥を送り出す方向の中央で接続部分を2つの仮想的な領域に区画したときに、上流に位置する一方の領域への供給量が、下流に位置する他方の領域への供給量よりも多くなるように、接続部分に液体を供給する。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント原料を加熱する加熱炉に対して汚泥を供給する汚泥供給装置であって、
汚泥を収容するホッパと、
前記ホッパの排出口に接続された内部空間においてスクリューを回転させることで、前記ホッパ内の汚泥を下流に送り出すスクリューフィーダと、
少なくとも前記内部空間のうちの前記排出口との接続部分に液体を供給する注液部と、を備え、
前記注液部は、汚泥を送り出す方向の中央で前記接続部分を2つの仮想的な領域に区画したときに、上流に位置する一方の領域への供給量が、下流に位置する他方の領域への供給量よりも多くなるように、前記接続部分に液体を供給する、汚泥供給装置。
【請求項2】
前記注液部は、汚泥を送り出す方向に沿って並んで配置され、少なくとも前記接続部分にそれぞれ液体を供給する複数の供給管を含み、
前記複数の供給管のうちの液体の供給量が最も多い供給管が、最上流に配置されている、請求項1に記載の汚泥供給装置。
【請求項3】
前記ホッパに収容されている汚泥は、下水汚泥、屎尿汚泥、及び余剰汚泥から成る群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の汚泥供給装置。
【請求項4】
前記ホッパに収容されている汚泥の含水率は、80%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の汚泥供給装置。
【請求項5】
前記注液部が供給する液体は、工業廃水を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の汚泥供給装置。
【請求項6】
前記スクリューを回転させる駆動部と、
前記駆動部と前記注液部とを制御する制御部とを更に備え、
前記制御部は、前記駆動部に出力される電流の値が所定の設定範囲に含まれるように、前記注液部からの液体の供給量を調節することを実行する、請求項1~5のいずれか一項に記載の汚泥供給装置。
【請求項7】
前記スクリューフィーダから送り出された汚泥を、前記加熱炉に接続された輸送管を通して、前記加熱炉に向けて圧送するポンプ圧送部を更に備え、
前記ポンプ圧送部によって圧送される汚泥は、脱水されることなく前記加熱炉の内部に供給される、請求項1~6のいずれか一項に記載の汚泥供給装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の汚泥供給装置と、
前記加熱炉とを備える、セメントクリンカの製造装置。
【請求項9】
汚泥を収容するホッパの排出口に接続された内部空間を含むスクリューフィーダによって、前記ホッパ内の汚泥を下流に送り出す工程と、
少なくとも前記内部空間のうちの前記排出口との接続部分に液体を供給する工程と、
前記スクリューフィーダから送り出された汚泥を、加熱炉に供給する工程と、
汚泥が供給された状態の前記加熱炉において、セメント原料を加熱する工程と、を含み、
少なくとも前記接続部分に液体を供給する工程では、汚泥を送り出す方向の中央で前記接続部分を2つの仮想的な領域に区画したときに、上流に位置する一方の領域への供給量が、下流に位置する他方の領域への供給量よりも多くなるように、前記接続部分に液体が供給される、セメントクリンカの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、汚泥供給装置、セメントクリンカの製造装置、及びセメントクリンカの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、低含水率汚泥の輸送方法が開示されている。この輸送方法は、汚泥を解砕し塊状物とする工程と、塊状物に滑材を添加する工程と、滑材が添加された塊状物を、圧送ポンプを介して輸送する工程とを含む。また、上記輸送方法では、塊状物の含水率を調整することが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-260526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、加熱炉に供給される汚泥の輸送トラブルの抑制と燃焼効率との両立に有用な汚泥供給装置、セメントクリンカの製造装置、及びセメントクリンカの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る汚泥供給装置は、セメント原料を加熱する加熱炉に対して汚泥を供給する装置である。この汚泥供給装置は、汚泥を収容するホッパと、ホッパの排出口に接続された内部空間においてスクリューを回転させることで、ホッパ内の汚泥を下流に送り出すスクリューフィーダと、少なくとも内部空間のうちの排出口との接続部分に液体を供給する注液部と、を備える。注液部は、汚泥を送り出す方向の中央で接続部分を2つの仮想的な領域に区画したときに、上流に位置する一方の領域への供給量が、下流に位置する他方の領域への供給量よりも多くなるように、接続部分に液体を供給する。
【0006】
スクリューフィーダによって送り出す汚泥の含水率が低くなると、スクリューを駆動するモータの負荷が大きくなり、汚泥の含水率が極端に低くなると、モータが過負荷状態となり、汚泥を送り出すことができない輸送トラブルが発生し得る。一方、モータが過負荷状態となることを避けるために、多くの液体を供給すると、多くの水分を含んだ汚泥が加熱炉内に供給されることになり、加熱炉での燃焼効率が低下してしまうおそれがある。これに対して、ホッパの排出口から上記内部空間へ汚泥が導入される際、ホッパ内の汚泥を送り出す方向の下流部分に比べて、ホッパ内の上流部分においてより多くの汚泥が内部空間に導入されることが見い出された。上記汚泥供給装置では、上流に位置する一方の領域への液体の供給量が、下流に位置する他方の領域への液体の供給量よりも多くなる。そのため、汚泥に対して効率的に液体を供給することができ、必要最低限の水分量の供給でモータが過負荷状態となることを回避することができる。従って、本汚泥供給装置は、加熱炉に供給される汚泥の輸送トラブルの抑制と燃焼効率との両立に有用である。
【0007】
注液部は、汚泥を送り出す方向に沿って並んで配置され、少なくとも接続部分にそれぞれ液体を供給する複数の供給管を含んでもよい。複数の供給管のうちの液体の供給量が最も多い供給管が、最上流に配置されていてもよい。ホッパの排出口に接続された内部空間では、汚泥を送り出す方向において、より上流に位置する部分に、汚泥の送り出しに伴う空隙が形成され得る。そのため、内部空間の上流に位置する部分に対して、より多く量の新しい汚泥がホッパ内から導入される。上記構成では、最上流に配置された供給管から、最も多くの液体が供給されるので、汚泥に対して更に効率的に液体を供給することができる。従って、液体の供給量の増加を抑制しつつ、モータが過負荷状態となる輸送トラブルを抑制するのに有用である。
【0008】
ホッパに収容されている汚泥は、下水汚泥、屎尿汚泥、及び余剰汚泥から成る群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。この場合、汚泥の臭気の外部への漏れを防ぐために、汚泥を輸送する管内の流路を密閉する必要がある。汚泥の含水率が低いと、管内で汚泥が輸送できないトラブルが発生し得るが、注液部によって汚泥に対して液体が供給される。従って、下水汚泥、屎尿汚泥、及び余剰汚泥のいずれか一つを含む汚泥を密閉された状態で輸送する場合に、輸送トラブルを抑制するのに有用である。
【0009】
ホッパに収容されている汚泥の含水率は、80%以下であってもよい。汚泥の含水率が80%以下であると、注液部から液体を供給しないと、スクリューを回転させるモータが過負荷状態となる可能性が高くなる。上記汚泥供給装置では、上流側の領域からより多くの液体を供給することで、液体の供給量の増加を回避しつつ、モータが過負荷状態となる可能性を低下させることができる。従って、含水率が低い汚泥を輸送する場合に、輸送トラブルを抑制するのに有用である。
【0010】
注液部が供給する液体は、工業廃水を含んでもよい。この場合、工業廃水も汚泥と共に加熱炉に導入される。従って、汚泥の輸送トラブルの抑制のために利用しつつ、工業廃水を処理することができる。
【0011】
上記汚泥供給装置は、スクリューを回転させる駆動部と、駆動部と注液部とを制御する制御部とを更に備えてもよい。制御部は、駆動部に出力される電流の値が所定の設定範囲に含まれるように、注液部からの液体の供給量を調節することを実行してもよい。この場合、駆動部に出力される電流の値が増大しても、液体の供給量が多くなるように調節され、駆動部のモータにかかる負荷を低下させることができる。従って、モータが過負荷状態となり、汚泥の輸送が停止してしまうトラブルの発生頻度を低下させるのに有用である。
【0012】
上記汚泥供給装置は、スクリューフィーダから送り出された汚泥を、加熱炉に接続された輸送管を通して、加熱炉に向けて圧送するポンプ圧送部を更に備えてもよい。ポンプ圧送部によって圧送される汚泥は、脱水されることなく加熱炉の内部に供給されてもよい。上記汚泥供給装置では、汚泥に対して供給される液体の量の増加が抑えられており、脱水しなくても、液体の供給に起因した加熱炉での燃焼効率の低下幅を小さくすることができる。従って、汚泥供給装置の簡素化に有用である。
【0013】
本開示の一側面に係るセメントクリンカの製造装置は、上記汚泥供給装置と、上記加熱炉とを備える。この製造装置は、上記汚泥供給装置を備えるので、加熱炉に供給される汚泥の輸送トラブルの抑制と燃焼効率との両立に有用である。
【0014】
本開示の一側面に係るセメントクリンカの製造方法は、汚泥を収容するホッパの排出口に接続された内部空間を含むスクリューフィーダによって、ホッパ内の汚泥を下流に送り出す工程と、少なくとも内部空間のうちの排出口との接続部分に液体を供給する工程と、スクリューフィーダから送り出された汚泥を、加熱炉に供給する工程と、汚泥が供給された状態の加熱炉において、セメント原料を加熱する工程と、を含む。少なくとも接続部分に液体を供給する工程では、汚泥を送り出す方向の中央で接続部分を2つの仮想的な領域に区画したときに、上流に位置する一方の領域への供給量が、下流に位置する他方の領域への供給量よりも多くなるように、接続部分に液体が供給される。この製造方法では、上流に位置する一方の領域への液体の供給量が、下流に位置する他方の領域への液体の供給量よりも多くなる。そのため、汚泥に対して効率的に液体を供給することができ、必要最低限の水分量の供給で汚泥の含水率が低いことに起因した汚泥の輸送トラブルを抑制できる。従って、本製造方法は、加熱炉に供給される汚泥の輸送トラブルの抑制と燃焼効率との両立に有用である。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、加熱炉に供給される汚泥の輸送トラブルの抑制と燃焼効率との両立に有用な汚泥供給装置、セメントクリンカの製造装置、及びセメントクリンカの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、セメントクリンカの製造装置の一例を示す模式図である。
図2図2は、汚泥供給装置の一例を示す模式図である。
図3図3は、汚泥供給装置の一部の詳細を例示する模式図である。
図4図4(a)は、汚泥供給装置の一例を模式的に示す平面図である。図4(b)は、スクリューフィーダの断面の一例を示す模式図である。
図5図5は、ホッパ内の汚泥の動きと注液部による液体の供給との関係の一例を説明するための模式図である。
図6図6は、制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図7図7(a)及び7(b)は、制御装置が実行する一連の処理の一例を示すフローチャートである。
図8図8(a)及び図8(b)は、汚泥供給装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとし、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。一部の図面にはX軸、Y軸及びZ軸により規定される直交座標系が示される。以下の実施形態では、Z軸が鉛直方向に対応し、X軸及びY軸が水平方向に対応する。
【0018】
[セメントクリンカの製造装置]
図1には、一実施形態に係るセメントクリンカの製造装置が模式的に示されている。図1に示される製造装置1は、セメント原料を焼成することでセメントクリンカを製造する装置である。製造装置1は、例えば、プレヒータ10と、ロータリキルン30と、クリンカクーラ38と、汚泥供給装置40とを有する。
【0019】
プレヒータ10は、ニューサスペンションプレヒータ(NSP)である。プレヒータ10は、ロータリキルン30でのセメント原料の焼成の前に、ロータリキルン30からの排ガスを含む高温のガス(以下、単に「高温ガス」という。)を用いて、セメント原料の予熱及び仮焼を行う。高温ガスは、セメント原料を予熱及び仮焼できる程度の温度を有する。プレヒータ10は、複数のサイクロンと、仮焼炉14と、ライジングダクト16と、原料供給部18とを有する。複数のサイクロンは、例えば、サイクロンC1,C2,C3,C4を含む。図1に示される例と異なり、サイクロンの個数が、5個以上又は3個以下であってもよい。
【0020】
サイクロンC1,C2,C3,C4は、上からこの順で配置されており、各サイクロンは、セメント原料(予熱した原料)と高温ガスとを分離する。仮焼炉14は、ロータリキルン30からの排ガスを含む高温ガスによってセメント原料の仮焼を行う炉体である。仮焼炉14は、セメント原料を加熱する加熱炉として機能する。仮焼炉14での加熱温度は、一例では、700℃~900℃程度である。仮焼炉14は、ライジングダクト16を介してロータリキルン30の窯尻32に接続されている。ライジングダクト16は、ロータリキルン30からの排ガスを仮焼炉14に導く。ロータリキルン30の窯尻32からの排ガスは、ライジングダクト16内及び仮焼炉14内を上昇するように流れる。
【0021】
仮焼炉14は、石炭等のエネルギー源(燃料)と空気とを混合させて、仮焼炉14の内部に燃焼ガスを供給するバーナ(不図示)を有する。上記高温ガスには、ロータリキルン30からの排ガスと、仮焼炉14のバーナからの燃焼ガスとが含まれる。仮焼炉14の内部において、バーナからの燃焼ガスによって、旋回しながら上昇する旋回流が形成されてもよい。仮焼炉14において生成された高温ガスは、サイクロンC4に流れ、その後、サイクロンC3,C2,C1をこの順に通過するように上方に流れる。
【0022】
原料供給部18は、サイクロンC1とサイクロンC2との間のガスダクトに、前工程(原料工程)で生成されたセメント原料を投入する。供給されたセメント原料は、サイクロン間のガスダクトでの高温ガスとの熱交換、及びサイクロンでの高温ガスとの分離を繰り返しながら、サイクロンC1,C2,C3の順に下降する。サイクロンC3で高温ガスと分離されたセメント原料が、仮焼炉14の内部に導入される。仮焼炉14での高温ガスとの熱交換により、セメント原料に含まれる石灰石(炭酸カルシウム:CaCO)の脱炭酸が行われる。仮焼された(脱炭酸)されたセメント原料は、高温ガスと共にサイクロンC4に導入され、サイクロンC4で高温ガスと分離された後に、ロータリキルン30の窯尻32に供給される。
【0023】
ロータリキルン30は、プレヒータ10で予熱及び仮焼された後のセメント原料を焼成する装置である。ロータリキルン30は、セメント原料を加熱する加熱炉として機能する。ロータリキルン30での加熱温度は、一例では、1000℃~1500℃程度である。ロータリキルン30は、本体部34と、その本体部34の後端に設けられたバーナ36とを有する。ロータリキルン30は、バーナ36からの燃焼ガスによってセメント原料を加熱することで、セメントクリンカを生成する。ロータリキルン30は、生成したセメントクリンカをクリンカクーラ38に排出する。クリンカクーラ38は、冷却用の空気等を用いてセメントクリンカを冷却する。
【0024】
汚泥供給装置40は、仮焼炉14に対して汚泥を供給する装置である。汚泥が仮焼炉14内に供給されることで、汚泥がセメント原料を加熱するためのエネルギー源として利用され、また、汚泥の一部の成分(例えば、Al)がセメント原料としても用いられる。汚泥供給装置40は、いかなる種類の汚泥を仮焼炉14に供給してもよい。汚泥供給装置40は、複数種類の汚泥が混合された汚泥を仮焼炉14に供給してもよい。
【0025】
汚泥供給装置40によって供給される汚泥は、水分が多い未消化汚泥と、水分が少ない消化汚泥とを含んでもよい。一例では、未消化汚泥の含水率は83%~85%であり、消化汚泥の含水率は、78~79%、又は78%よりも小さい。汚泥供給装置40によって供給される汚泥は、臭気が強い汚泥を含んでもよい。有機汚泥(有機性汚泥)の臭気は強い傾向がある。有機汚泥の具体例としては、下水汚泥、屎尿汚泥、及び余剰汚泥等が挙げられる。
【0026】
図2には、臭気が強い汚泥を仮焼炉14に供給する汚泥供給装置40の一例が模式的に示されている。図2に示される汚泥供給装置40では、臭気の外部への漏れを防ぐため、汚泥が密閉された空間に収容され、密閉された状態で汚泥が仮焼炉14まで輸送される。汚泥供給装置40は、例えば、密閉設備42と、ホッパ44と、スクリューフィーダ50と、注液部60と、ポンプ圧送部82と、輸送管84と、制御装置90(制御部)とを有する。
【0027】
密閉設備42は、臭気の漏れを防ぐように、密閉された空間を形成する設備である。密閉設備42は、ホッパ44、スクリューフィーダ50、注液部60の一部、ポンプ圧送部82、及び輸送管84の一部を収容する。密閉設備42の一つの側壁には、シャッターにより開閉可能な搬入口が設けられていてもよい。その搬入口からトラック等を用いて種々の汚泥がホッパ44内に供給されてもよい。
【0028】
ホッパ44に収容されている汚泥は、下水汚泥、屎尿汚泥、及び余剰汚泥から成る群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。ホッパ44に収容されている汚泥の含水率は、80%以下であってもよい。一例では、ホッパ44に収容されている汚泥の含水率の上限値は、78%、76%、又は75%である。ホッパ44内の汚泥の含水率は、汚泥のサンプルを40℃の炉内で24時間乾燥させ、乾燥前後のサンプルの重量に基づき以下の式(1)で算出することができる。
含水率(%)=(乾燥前重量-乾燥後重量)/乾燥前重量×100 (1)
【0029】
図3には、ホッパ44、スクリューフィーダ50、及び注液部60の詳細が模式的に示されている。図4(a)は、図3におけるIV-IV線から見た平面図であり、図4(b)は、図4(a)におけるIVB-IVB線に沿った切断面の一部を示す図である。図3に示されるホッパ44は、汚泥を収容するタンク(容器)である。詳細には、ホッパ44は、仮焼炉14に供給される前の汚泥を一時的に収容する。
【0030】
ホッパ44の上半分は、直径が略一定の円筒状に形成されており、ホッパ44の下半分は、下方に向かうにつれて直径が小さくなるような円筒形状を有する。ホッパ44の上端部は開口されており、その開口から、ホッパ44内に汚泥が供給される。ホッパ44の下端部には底部44aが設けられている。底部44aは、円板状に形成されており、ホッパ44の下端部の開口を塞ぐように設けられている。底部44aは、水平に配置されている。図4(a)に示されるように、底部44aには、ホッパ44内の汚泥を排出する排出口44bが形成されている。
【0031】
ホッパ44の下端部において、排出口44bを介して、ホッパ44の内部とホッパ44の外部とが接続されている。排出口44bは、水平な一方向(図示のX軸方向)に沿って延びるように形成されている。排出口44bは、底部44aに沿い、且つ、排出口44bの延在方向に垂直な方向(図示のY軸方向)において、ホッパ44の略中央に位置する。排出口44bの延在方向における一端と他端との間の距離は、底部44aの上面の直径に略一致する。
【0032】
スクリューフィーダ50は、ホッパ44内の汚泥を所定の方向に向けて送り出す装置である。スクリューフィーダ50は、ホッパ44内の汚泥を、少なくとも、排出口44bの延在方向において排出口44bの一端から他端に向けて汚泥を送り出す。図3及び図4に示される例では、スクリューフィーダ50は、少なくとも、X軸の正方向に向けて汚泥を送り出す。以下、搬送される汚泥の流れを基準に「上流」及び「下流」の用語を使用する。すなわち、汚泥は上流から下流に向けて搬送され、スクリューフィーダ50は、ホッパ44内の汚泥を下流に向けて送り出す。また、排出口44bの上流に位置する端部から、排出口44bの下流に位置する端部を見たときを基準に、「前」、「後」、及び「前後方向」の用語を使用する。
【0033】
図3に示されるように、スクリューフィーダ50は、送出部52と、スクリュー54と、スクリュー駆動部58と、シュート56とを有する。送出部52は、スクリュー54が収容される内部空間Sを形成する筐体である。送出部52は、前後方向(排出口44bの延在方向)に沿って延びるように、形成されている。送出部52の前後方向における全長は、排出口44bの前後方向における全長よりも長い。下方から見て、送出部52は、排出口44bの全域を覆うように配置されている。送出部52は、前方及び後方の双方においてホッパ44の下端部から張り出している。
【0034】
図4(b)に示されるように、送出部52は、上端がホッパ44の底部44aに接続され、上下方向(図示のZ軸方向)に沿って延びる側壁と、その側壁の下端部に接続されて、断面が円弧状の底壁とを含んでもよい。送出部52のうちの排出口44bと重なる部分では、送出部52の上端が開放されている。送出部52の上端の開放部分は、その外縁が排出口44bを囲むように形成されていてもよい。送出部52が形成する内部空間Sは排出口44bに接続されており、内部空間Sとホッパ44の内部とが、排出口44bを介して接続される。ホッパ44内の汚泥は、排出口44bを介して送出部52の内部空間Sに導入され得る。
【0035】
スクリュー54は、送出部52の内部空間Sに配置される(図3参照)。なお、図4(a)及び図4(b)では、スクリュー54の図示は省略されている。スクリュー54は、前後方向に沿った回転軸線まわりに回転可能に設けられており、当該回転軸線まわりの回転によって内部空間S内の汚泥を下流に向けて送り出すように形成されている。スクリュー駆動部58は、スクリュー54を上記回転軸線まわりに回転させるモータ(動力源)を含む。スクリュー駆動部58は、制御装置90からの動作指示に基づく回転数でスクリュー54を回転させる。スクリュー駆動部58は、スクリュー54(又はモータ)の現在の回転数を計測可能なセンサを含んでもよい。
【0036】
シュート56は、スクリュー54によって送り出された汚泥を、下方に向けて送り出す部分である。シュート56は、スクリュー54の前方の端部の下端に接続されており、その下端から下方に向かって延びるように形成されている。シュート56の内部は、内部空間Sに接続されており、その下端は開放されている。スクリュー54によって前方に送り出された汚泥は、シュート56の下端から排出される。以上のように、スクリューフィーダ50は、排出口44bに接続された内部空間Sにおいてスクリュー54を回転させることで、ホッパ44内の汚泥を下流に送り出す。
【0037】
スクリュー54の回転数は、制御装置90によって制御される。一例では、スクリュー54の回転数(回転速度)が、目標回転数に追従するように、スクリュー駆動部58が制御される。スクリュー駆動部58の制御では、スクリュー駆動部58に含まれるモータに供給される電力(例えば、駆動電流)が調節されて、モータの回転数が調節されてもよい。汚泥の含水率が低くなると汚泥が硬くなり、同じ回転数でスクリュー54を回転させるためには、モータに供給する電力を大きくする必要がある。モータに流すことが可能な電流値には上限があるので、汚泥供給装置40では、汚泥の含水率を上昇させつつ、スクリュー54による汚泥の送出が行われる。
【0038】
注液部60は、汚泥の含水率を上昇させるために、内部空間Sに液体を供給する。詳細には、注液部60は、少なくとも上記内部空間Sのうちの排出口44bとの接続部分CPに液体を供給する。接続部分CPとは、内部空間Sのうちの、排出口44bの最も後方(上流)に位置する端部と、排出口44bの最も前方(下流)に位置する端部との間に位置する全空間である。図3には、排出口44bの最も後方に位置する端部を含み、前後方向に垂直な仮想的な平面である境界B1と、排出口44bの最も前方に位置する端部を含み、前後方向に垂直な仮想的な平面である境界B2とが示されている。接続部分CPは、境界B1,B2、送出部52の側壁及び底壁、並びに、ホッパ44の底部44aの下面を含む仮想的な平面によって区画される領域である。
【0039】
注液部60は、内部空間Sにおいて、上記接続部分CPに加えて、接続部分CP(境界B1)よりも前方の領域に液体を供給してもよい。注液部60は、どのような種類の液体を接続部分CPに供給してもよく、2種類以上の液体を接続部分CPに供給してもよい。注液部60は、例えば、工業用水と工業廃水とを接続部分CPに供給してもよい。工業廃水は、化学物質(例えば、有害な汚染物質)を含んだ汚水であり、廃棄物処理が必要な水である。工業廃水は、例えば、機械加工等を行う工場において、種々の工程において使用された後の汚水である。
【0040】
注液部60は、廃水供給部61と、工水供給部71とを含む。廃水供給部61は、工業廃水を接続部分CPに供給する。廃水供給部61は、液源62と、廃水供給管64と、注液バルブ68とを有する。液源62は、工業廃水の液源である。液源62は、上述の密閉設備42の外に配置されてもよく、工業廃水を収容するタンクと、タンク内の工業廃水を圧送するポンプとを含んでもよい。廃水供給管64は、液源62と送出部52とを接続する1本の配管である。
【0041】
廃水供給管64のうちの接続部分CPと接続される端部は、送出部52の一方の側壁に設けられた注水口に接続されていてもよい。注水口は、内部空間Sと送出部52の外の空間とを接続する穴である。液源62から圧送される工業廃水が、廃水供給管64内の流路を流れて送出部52の内部空間Sに供給される。注液バルブ68は、廃水供給管64に設けられ、廃水供給管64内の流路の開閉状態を切り替える。注液バルブ68は、その開度が調節可能なバルブであってもよい。注液バルブ68の開度が調節されることで、内部空間Sに供給される工業廃水の量(単位時間あたりの供給量)が変化する。
【0042】
工水供給部71は、工業用水を接続部分CPに供給する。工水供給部71は、液源72と、共通供給管74と、複数の個別供給管と、注液バルブ78とを有する。液源72は、工業用水の液源である。液源72は、密閉設備42の外に配置されてもよく、工業用水を収容するタンクと、タンク内の工業用水を圧送するポンプとを含んでもよい。共通供給管74は、液源72と複数の個別供給管それぞれとを接続する1本の配管である。
【0043】
図3に示される例では、工水供給部71は、複数の個別供給管として、個別供給管76a~76h(8本の個別供給管)を有する。個別供給管76a~76hは、共通供給管74から分岐している。個別供給管76aの一方の端部は、共通供給管74の途中に接続されており、個別供給管76aの他方の端部は、送出部52に接続されている。個別供給管76aの他方の端部は、送出部52の一方の側壁に設けられた注水口に接続されていてもよい。個別供給管76b~76hそれぞれも、個別供給管76aと同様に、共通供給管74と送出部52とを接続する。
【0044】
液源72から圧送される工業用水は、共通供給管74内の流路を流れ、個別供給管76a~76h内のそれぞれの流路に分岐して流れた後に、送出部52の内部空間Sに供給される。注液バルブ78は、共通供給管74に設けられており、共通供給管74の開閉状態を切り替える。注液バルブ78は、その開度が調節可能なバルブであってもよい。注液バルブ78の開度が調節されることで、内部空間Sに供給される工業用水の量(単位時間あたりの供給量)が変化する。図示は省略されているが、廃水供給部61は、廃水供給管64を流れる流量を計測する流量計を有してもよく、工水供給部71は、共通供給管74を流れる流量を計測する流量計を有してもよい。
【0045】
ここで、図5を参照しつつ、スクリューフィーダ50によって汚泥が送り出される際のホッパ44内の汚泥の動きと、廃水供給管64及び個別供給管76a~76hの配置と、注液部60からの液体の供給量の分布とについて説明する。図5に示されるように、ホッパ44内の前方に位置する部分(境界B2寄りの部分)に比べて、ホッパ44内の後方に位置する部分(境界B1寄りの部分)から、より多くの量の汚泥が送出部52の内部空間Sに導入される。この現象は、内部空間Sにおいてスクリュー54により境界B1から境界B2に向けて汚泥が送り出されており、内部空間Sにおける接続部分CPの前方の部分では汚泥が詰まっており、接続部分CPの後方の部分において空隙が形成されるために生じる。
【0046】
以上のホッパ44から内部空間Sへの汚泥の流れを考慮すると、接続部分CPのうちの後方の部分において、ホッパ44からより多くの新しい汚泥が内部空間Sに導入される。接続部分CPにおけるホッパ44からの汚泥の導入量の差に対応するように、注液部60は、接続部分CPに対して液体を供給する。具体的には、注液部60は、汚泥を送り出す方向の中央で接続部分CPを2つの仮想的な領域に区画したときに、上流に位置する一方の領域への供給量が、下流に位置する他方の領域への供給量よりも多くなるように、接続部分CPに液体を供給する。
【0047】
図5では、接続部分CPにおいて汚泥を送り出す方向の中央に位置する境界が「BC」で示されており、上流に位置する一方の領域が「R1」で示され、下流に位置する他方の領域が「R2」で示されている。境界BCは、境界B1,B2と平行であり、境界B1と境界BCとの間の前後方向における距離は、境界B2と境界BCとの間の前後方向における距離と等しい。注液部60は、第1領域R1への液体の供給量(単位時間あたりの供給量)が、第2領域R2への液体の供給量(単位時間あたりの供給量)よりも多くなるように、接続部分CPに供給する。
【0048】
廃水供給部61の廃水供給管64、及び工水供給部71の個別供給管76a~76hは、汚泥を送り出す方向(前後方向)に沿って並んで配置されている。本開示において、複数の供給管が、前後方向に沿って並んで配置されるとは、少なくとも、これらの供給管の送出部52へ接続される端部が、前後方向に沿って並んでいることを意味する。この場合、複数の供給管にそれぞれ対応するように送出部52の側壁に設けられる複数の注水口も、前後方向に沿って並ぶ。
【0049】
図5に示される例では、廃水供給管64及び個別供給管76a~76hが、上流からこの順で配置されている。廃水供給管64及び個別供給管76a~76cは、第1領域R1に接続されており、個別供給管76d~76gは、第2領域R2に接続されており、個別供給管76hは、第2領域R2(接続部分CP)よりも下流の領域に接続されている。複数の供給管にそれぞれ対応する複数の注水口は、前後方向に沿って略等間隔で配置されてもよい。
【0050】
複数の供給管のうちの液体の供給量が最も多い供給管が、最上流に配置されてもよい。廃水供給管64は、前後方向において最上流に配置されている。廃水供給管64からの工業廃水の供給量(単位時間あたりの供給量)は、個別供給管76a~76hの各供給管からの工業用水の供給量(単位時間あたりの供給量)よりも多くてもよい。言い換えると、廃水供給管64からの液体の供給量は、いずれの1本の個別供給管からの液体の供給量よりも多くてもよい。一例では、廃水供給管64の径の大きさは、個別供給管76a~76hそれぞれの径の大きさよりも大きい。
【0051】
個別供給管76a~76hそれぞれからの工業用水の供給量(単位時間あたりの供給量)は、互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。個別供給管76a~76hの径の大きさは、互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。廃水供給管64からの液体の供給量は、1本の個別供給管からの液体の供給量の1.1倍~3.0倍程度であってもよい。以上のように構成された注液部60による液体の供給では、第1領域R1に供給される液体の量が、第2領域R2に供給される液体の量よりも多くなる。
【0052】
図2に戻り、ポンプ圧送部82は、スクリューフィーダ50から送り出された汚泥を受け入れて、ポンプにより仮焼炉14に向けて汚泥を圧送する。ポンプ圧送部82と仮焼炉14との間には、輸送管84が設けられている。輸送管84は、ポンプ圧送部82と仮焼炉14とを接続する管であり、汚泥の臭気が外部に漏れないように、その管内は密閉されている。ポンプ圧送部82から圧送される汚泥は、輸送管84を通して仮焼炉14の内部に導かれる。
【0053】
汚泥供給装置40では、ポンプ圧送部82のポンプによって圧送される汚泥が、脱水されることなく仮焼炉14の内部に供給される。この場合、スクリューフィーダ50において注液部60から液体が供給された後の汚泥が、含水率が略一定に維持されたまま、仮焼炉14の内部に導入される。汚泥供給装置40は、仮焼炉14への汚泥の供給と同様に(同様の装置の構成によって)、ロータリキルン30の内部に汚泥を供給してもよい。
【0054】
制御装置90は、汚泥供給装置40に含まれる各要素を制御するコンピュータである。制御装置90は、図6に示されるように、回路91を有する。回路91は、少なくとも一つのプロセッサ92と、メモリ94と、ストレージ96と、入出力ポート98と、タイマ99とを含む。ストレージ96は、汚泥供給装置40に含まれる各要素を制御するためのプログラムを記録する。ストレージ96は、ハードディスク、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク等の、コンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0055】
メモリ94は、ストレージ96からロードされたプログラム、プロセッサ92の演算結果等を一時的に記憶する。プロセッサ92は、メモリ94と協働してプログラムを実行することで、汚泥供給装置40に含まれる各要素に対する制御を実行する。入出力ポート98は、プロセッサ92からの指令に応じ、スクリュー駆動部58、廃水供給部61、及び工水供給部71等の間で電気信号の入出力を行う。タイマ99は、プロセッサ92からの指令により所定周期のクロックパルスをカウントして経過時間を計測する。制御装置90は、製造装置1を制御するためのコンピュータの一部であってもよい。
【0056】
[セメントクリンカの製造方法]
上述の製造装置1を用いて、セメントクリンカを製造することができる。セメントクリンカの製造方法は、例えば、供給工程と、予熱仮焼工程と、焼成工程と、冷却工程とを含む。
【0057】
供給工程では、汚泥供給装置40によって仮焼炉14内に汚泥が供給される。供給工程は、例えば、収容工程と、送出工程と、注液工程と、圧送工程とを含む。収容工程では、ホッパ44内に含水率が80%以下である汚泥が収容される。送出工程では、ホッパ44内の汚泥が、スクリューフィーダ50によって下流に向けて送り出される。送出工程において、スクリュー駆動部58によるスクリュー54の回転数が目標回転数に追従するように、制御装置90によりスクリュー駆動部58が制御されてもよい。
【0058】
注液工程では、スクリュー54が収容されている内部空間Sのうちのホッパ44の排出口44bとの接続部分CPに対して、注液部60によって液体が供給される。この注液工程では、接続部分CPのうちの前後方向よりも中央(境界BC)よりも上流に位置する第1領域R1への液体の供給量が、上記中央よりも下流に位置する第2領域R2への液体の供給量よりも多くなるように、接続部分CPに対して液体が供給される。注液工程において、スクリュー駆動部58に出力される電流の値が所定の設定範囲に含まるように、制御装置90により注液部60が制御されてもよい。
【0059】
圧送工程では、ポンプ圧送部82によって、スクリューフィーダ50から送り出された汚泥が、輸送管84を通して仮焼炉14の内部に向けて圧送される。圧送工程において、ポンプ圧送部82からポンプ圧送された汚泥が、脱水されることなく仮焼炉14の内部に供給されてもよい。
【0060】
予熱仮焼工程では、プレヒータ10によってセメント原料の予熱及び仮焼が行われる。予熱仮焼工程では、汚泥が内部に供給された仮焼炉14において、セメント原料の仮焼(加熱)が行われる。焼成工程では、ロータリキルン30によってセメント原料の焼成が行われ、その結果、セメントクリンカが生成される。焼成工程では、ロータリキルン30において、予熱及び仮焼された後のセメント原料が焼成(加熱)される。冷却工程では、ロータリキルン30で生成されたセメントクリンカが、クリンカクーラ38によって冷却される。上記製造方法で製造されたセメントクリンカが、粉砕等を含む仕上げ工程を経ることで、セメントが製造される。
【0061】
(制御方法)
続いて、制御装置90による制御方法の一例を説明する。制御装置90は、少なくとも、スクリュー駆動部58に出力される電流の値が所定の設定範囲に含まれるように、注液部60からの液体の供給量を調節することを実行する。図7(a)及び図7(b)は、上記送出工程及び注液工程において、制御装置90が所定の周期ごとに実行する一連の処理を示すフローチャートである。この一連の処理では、スクリュー54の回転数制御と、スクリューフィーダ50の内部空間S内への液体の供給量制御(注水制御)とが並行して実行される。
【0062】
スクリュー54の回転数制御では、制御装置90が、ステップS11,S12を実行する。ステップS11では、例えば、制御装置90が、スクリュー54の現在の回転数を示す情報をスクリュー駆動部58から取得する。ステップS12では、例えば、制御装置90が、ステップS11で取得した現在の回転数と、目標回転数との偏差が、所定値よりも大きいか否かを判断する。目標回転数は、例えば、スクリューフィーダ50から単位時間あたりに送り出したい汚泥の量に基づいて、作業員等によって設定される。偏差と比較される所定値は、例えば、スクリューフィーダ50から送り出される汚泥の量の許容できる変動幅に基づいて、作業員等によって予め定められる。
【0063】
ステップS12において、回転数の偏差が所定値よりも大きいと判断された場合(ステップS12:YES)、制御装置90が実行する処理は、ステップS13に進む。ステップS13では、例えば、制御装置90が、上記回転数の偏差が縮小するように、スクリュー駆動部58に供給する電流値を調節する。ステップS12において、回転数の偏差が所定値以下であると判断された場合(ステップS12:NO)、制御装置90は、ステップS13を実行せずに、その周期での処理を終了する。以上により、一つの周期で実行される回転数制御が終了する。
【0064】
注水制御では、制御装置90が、ステップS21,S22を実行する。ステップS21では、例えば、制御装置90が、スクリュー駆動部58に含まれるモータに供給されている現在の電流値を示す情報を取得する。ステップS22では、例えば、制御装置90が、スクリュー駆動部58に含まれるモータへ出力されている電流の値(ステップS21で取得した電流値)が、所定の設定範囲から外れているか否かを判断する。設定範囲(その上限)は、例えば、モータに設定されている定格電流に基づいて、作業員等によって予め定められている。一例では、設定範囲の上限が、モータの定格電流の60%~90%程度に設定される。
【0065】
ステップS22において、モータへの現在の電流値が上記設定範囲から外れている場合(ステップS22:YES)、制御装置90が実行する処理は、ステップS23に進む。ステップS23では、例えば、制御装置90が、モータへの電流値が上記設定範囲に含まれるように、注液バルブ68及び注液バルブ78の少なくとも一方の開度を調節する。一例では、制御装置90は、ステップS22で得られた電流値が上記設定範囲の上限を上回る場合には、注液バルブ68及び注液バルブ78の少なくとも一方の開度を大きくする。バルブの開度が大きくなることで、注液部60から接続部分CPに供給される液体の量が多くなり、内部空間S内の汚泥の含水率が上昇する。
【0066】
制御装置90は、ステップS22で得られた電流値が上記設定範囲の下限を下回る場合には、注液バルブ68及び注液バルブ78の少なくとも一方の開度を小さくする。バルブの開度が小さくなることで、注液部60から接続部分CPに供給される液体の量が少なくなり、内部空間S内の汚泥の含水率が低下する。一方、ステップS22において、モータへの現在の電流値が上記設定範囲に含まれている場合(ステップS22:NO)、制御装置90は、ステップS23を実行せずに、当該周期での注水制御を終了する。以降、制御装置90は、所定周期で上記回転数制御及び注水制御それぞれを繰り返し実行する。
【0067】
回転数制御と注水制御とは個別に行われるので、各周期の実行タイミングが互いに異なっていてもよい。この一連の処理が繰り返される間、ホッパ44内における汚泥の含水率の変動に起因して、スクリュー54が送り出す汚泥の含水率が低下すると、スクリュー駆動部58のモータの負荷(電流値)が大きくなる。ホッパ44内における汚泥の含水率の変動に起因して、スクリュー54が送り出す汚泥の含水率が上昇すると、モータの負荷が小さくなる。汚泥の含水率の過度な低下により、モータの負荷が所定の設定範囲を越えると、注液部60からの液体の供給量が増加する。これにより、モータが過負荷状態となることを回避できる。
【0068】
(変形例)
上述した一連の処理は一例であり、適宜変更可能である。上記一連の処理において、制御装置90は、一のステップと次のステップとを並列に実行してもよく、上述した例とは異なる順序で各ステップを実行してもよい。制御装置90は、いずれかのステップを省略してもよく、いずれかのステップにおいて上述の例とは異なる処理を実行してもよい。
【0069】
接続部分CPへの液体の供給方法は、上述の例に限られない。接続部分CPの上流側の第1領域R1のみに液体が供給されてもよい。図8(a)には、変形例に係る汚泥供給装置40Aが模式的に示されている。汚泥供給装置40Aは、注液部60に代えて、注液部60Aを有する。注液部60Aは、工水供給部71を有さずに、廃水供給部61を有する。注液部60Aは、第2領域R2にいずれの液体も供給せずに、第1領域R1に廃水供給管64を介して工業廃水を供給する。このように、本開示において、第1領域R1への液体の供給量が第2領域R2への液体の供給量よりも多くなるように接続部分CPに液体を供給することには、第2領域R2への液体の供給量がゼロであり、第1領域R1に液体を供給することを含む。
【0070】
図8(b)には、変形例に係る汚泥供給装置40Bが模式的に示されている。汚泥供給装置40Bは、注液部60に代えて、注液部60Bを有する。注液部60Bでは、工水供給部71の個別供給管76a、廃水供給部61の廃水供給管64、及び工水供給部71の個別供給管76b~76hが、上流から、この順で並んで配置される。このように、最上流に位置する供給管からの供給量が一番多くなくてもよい。この場合でも、廃水供給管64から第1領域R1へ液体が供給されるので、第1領域R1への液体の供給量が、第2領域R2への液体の供給量よりも多くなる関係が満たされる。
【0071】
注液部60が、同じ量の液体を供給する複数の供給管を有してもよい。この場合に、第1領域R1へ液体を供給する供給管の数が、第2領域R2へ液体を供給する供給管の数よりも多くなるように、複数の供給管が配置されていてもよい。注液部60は、廃水供給部61を有さずに、工水供給部71を有してもよい。この場合、工水供給部71が、第1領域R1への液体の供給量が第2領域R2への液体の供給量に比べて多くなるように、接続部分CPに対して工業用水を供給してもよい。いずれかの注液部の例において、2以上の供給管が、前後方向において、少なくとも一部が互いに重なる位置に配置されていてもよい。
【0072】
上述の例でのスクリュー駆動部58の制御とは異なり、制御装置90は、スクリューフィーダ50のシュート56から送り出される供給量が目標供給量となるように、スクリュー駆動部58を制御してもよい。モータへの負荷に応じて注液部60から供給される液体の量を調節する制御が実行されなくてもよい。この場合、注液部60は、スクリューフィーダ50が稼働している間において、モータの負荷に関係なく、略一定の量で内部空間Sに液体を供給してもよい。
【0073】
[実施形態の効果]
スクリューフィーダ50によって送り出す汚泥の含水率が低くなると、スクリュー54を駆動するスクリュー駆動部58のモータの負荷が大きくなり、汚泥の含水率が極端に低くなると、モータが過負荷状態となり、汚泥を送り出すことができない輸送トラブルが発生し得る。一方、スクリュー駆動部58のモータが過負荷状態となることを避けるために、多くの液体を供給すると、多くの水分を含んだ汚泥が仮焼炉14内に供給されることになり、仮焼炉14での燃焼効率が低下してしまうおそれがある。上記の汚泥供給装置40では、ホッパ44の排出口44bから内部空間Sへ汚泥が導入される際に、ホッパ44内の汚泥を送り出す方向の下流部分に比べて、ホッパ44内の上流部分においてより多くの汚泥が内部空間Sに導入されていく。これに対応するように、注液部60は、上流に位置する第1領域R1への液体の供給量が、下流に位置する第2領域R2への液体の供給量よりも多くなるように、接続部分CPに液体を供給する。そのため、汚泥に対して効率的に液体を供給することができ、必要最低限の水分量の供給でスクリュー駆動部58のモータが過負荷状態となるのを回避することができる。従って、上記の汚泥供給装置40は、仮焼炉14に供給される汚泥の輸送トラブルの抑制と仮焼炉14における燃焼効率との両立に有用である。
【0074】
注液部60は、汚泥を送り出す方向に沿って並んで配置され、少なくとも接続部分CPにそれぞれ液体を供給する複数の供給管(廃水供給管64、個別供給管76a~76g)を含んでもよい。複数の供給管のうちの液体の供給量が最も多い廃水供給管64が、最上流に配置されていてもよい。ホッパ44の排出口44bに接続された内部空間Sでは、汚泥を送り出す方向において、より上流に位置する部分において、汚泥の送り出しに伴う空隙が形成され得る。そのため、上流に位置する部分に対して、多くの新しい汚泥がホッパ44内から導入される。上記構成では、最上流に配置された廃水供給管64から、最も多くの液体が供給されるので、汚泥に対して更に効率的に液体を供給することができる。例えば、接続部分CPの最下流に供給量が一番多い供給管を配置することも考えられるが、この配置に比べて、上記構成の配置では、接続部分CPの上流部分に導入された汚泥がシュート56に達するまでに水分が混ざる機会が多くなる。従って、液体の供給量の増加を抑制しつつ、モータが過負荷状態となり輸送トラブルを抑制するのに有用である。
【0075】
ホッパ44に収容されている汚泥は、下水汚泥、屎尿汚泥、及び余剰汚泥から成る群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。この場合、汚泥の臭気の外部への漏れを防ぐために、汚泥を輸送する管内の流路を密閉する必要がある。汚泥の含水率が低いと、管内で汚泥が輸送できないトラブルが発生し得るが、注液部60によって汚泥に対して液体が供給される。従って、下水汚泥、屎尿汚泥、及び余剰汚泥のいずれか一つを含む汚泥を密閉した状態で輸送する場合に、輸送トラブルを抑制するのに有用である。
【0076】
ホッパ44に収容されている汚泥の含水率は、80%以下であってもよい。汚泥の含水率が80%以下であると、注液部60から液体を供給しないと、スクリュー54を回転させるモータが過負荷状態となる可能性が高くなる。汚泥供給装置40では、上流側の第1領域R1からより多くの液体が供給される。そのため、液体の供給量の増加を抑制しつつ、モータが過負荷状態となる可能性を低下させることができる。従って、含水率が低い汚泥を輸送する場合に、輸送トラブルを抑制するのに有用である。
【0077】
注液部60が供給する液体は、工業廃水を含んでもよい。この場合、工業廃水も汚泥と共に仮焼炉14内に導入される。従って、汚泥の輸送トラブルの抑制のために利用しつつ、工業廃水を処理することができる。
【0078】
汚泥供給装置40は、スクリュー54を回転させるスクリュー駆動部58と、スクリュー駆動部58と注液部60とを制御する制御装置90とを更に備える。制御装置90は、スクリュー駆動部58に出力される電流の値が所定の設定範囲に含まれるように、注液部60からの液体の供給量を調節することを実行してもよい。この場合、スクリュー駆動部58のモータに出力される電流の値が増大しても、液体の供給量が多くなるように調節され、スクリュー駆動部58のモータへの負荷を低下させることができる。従って、モータが過負荷状態となり、汚泥の輸送が停止してしまうトラブルの発生頻度を低下させるのに有用である。
【0079】
汚泥供給装置40は、スクリューフィーダ50から送り出された汚泥を、仮焼炉14に接続された輸送管84を通して、仮焼炉14に向けて圧送するポンプ圧送部82を備えてもよい。ポンプ圧送部82によって圧送される汚泥は、脱水されることなく仮焼炉14の内部に供給されてもよい。汚泥供給装置40では、汚泥に対して供給される液体の量の増加が抑えられており、脱水しなくても、汚泥に対する液体の供給に起因した仮焼炉14での燃焼効率の低下幅を小さくすることができる。従って、汚泥供給装置40の簡素化に有用である。
【符号の説明】
【0080】
1…セメントクリンカの製造装置、14…仮焼炉、30…ロータリキルン、40…汚泥供給装置、44…ホッパ、44b…排出口、50…スクリューフィーダ、54…スクリュー、58…スクリュー駆動部、S…内部空間、CP…接続部分、R1…第1領域、R2…第2領域、60…注液部、64…廃水供給管、76a~76h…個別供給管、82…ポンプ圧送部、84…輸送管、90…制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8