(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037678
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】電子線応用装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/227 20180101AFI20230309BHJP
H01J 37/21 20060101ALI20230309BHJP
H01J 37/22 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
G01N23/227
H01J37/21 Z
H01J37/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144394
(22)【出願日】2021-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】圓山 百代
(72)【発明者】
【氏名】池上 明
(72)【発明者】
【氏名】森本 剛史
(72)【発明者】
【氏名】木澤 駿
【テーマコード(参考)】
2G001
5C101
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001AA07
2G001BA08
2G001CA03
2G001JA01
5C101AA02
5C101EE46
5C101EE51
5C101FF17
5C101GG03
(57)【要約】
【課題】投影型電子線応用装置の電子光学系の調整を高速かつ高精度に実施可能とする。
【解決手段】電子線応用装置は、試料4に励起光5を照射する光学系1と、励起光が照射された試料から放出される光電子による光電子像をカメラ3に投影する電子光学系2と、制御部20とを有し、光学系は励起光を発生させる光源11とパターン形成部12とを備え、パターン形成部がONのときには励起光は試料の表面に光学パターンを形成し、パターン形成部がOFFのときには、励起光は、試料の表面に光学パターンを形成することなく、試料に照射され、制御部は、パターン形成部をONとして得られた光電子像において光学パターンによって形成された明暗パターンの特徴量に基づき電子光学系の調整を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に励起光を照射する光学系と、
前記励起光が照射された前記試料から放出される光電子による光電子像をカメラに投影する電子光学系と、
制御部とを有し、
前記光学系は前記励起光を発生させる光源とパターン形成部とを備え、前記パターン形成部がONのときには前記励起光は前記試料の表面に光学パターンを形成し、前記パターン形成部がOFFのときには、前記励起光は、前記試料の表面に前記光学パターンを形成することなく、前記試料に照射され、
前記制御部は、前記パターン形成部をONとして得られた光電子像において前記光学パターンによって形成された明暗パターンの特徴量に基づき前記電子光学系の調整を行う電子線応用装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御部は、前記明暗パターンの鮮鋭度が所定の閾値を満たすように前記電子光学系のフォーカスを調整する電子線応用装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記制御部は、前記光学パターンの寸法をあらかじめ記憶しており、前記明暗パターンとあらかじめ記憶している前記光学パターンの寸法とに基づき、前記光電子像の倍率を算出する電子線応用装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記制御部は、前記光電子像の倍率が所定の閾値を満たすように前記電子光学系の倍率を調整する電子線応用装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記光学パターンは干渉縞であり、前記干渉縞は、前記光源からの励起光を前記パターン形成部が光路差をもつ複数の励起光に分岐させ、前記複数の励起光が互いに干渉することにより発生する電子線応用装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記パターン形成部は、光学平面をもつ光学素子を含み、前記パターン形成部がONのときに前記光学素子は前記励起光の光路に挿入され、前記パターン形成部がOFFのときに前記光学素子は前記励起光の光路の外に配置される電子線応用装置。
【請求項7】
請求項5において、
前記パターン形成部は、入射した光を複数の光路に分岐させ、再度合流させて出射する光学アセンブリを含み、前記パターン形成部がONのときに前記光学アセンブリは前記励起光を前記複数の光路に分岐させ、再度合流させて出射し、前記パターン形成部がOFFのときに前記光学アセンブリは前記励起光を前記複数の光路に分岐させることなく、そのまま出射する電子線応用装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記光学パターンは干渉縞であり、前記干渉縞は、前記励起光が前記試料で反射した反射光をミラーにより前記試料に向けて反射させることにより、前記励起光と前記ミラーからの反射光とが互いに干渉することにより発生する電子線応用装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記パターン形成部がONのときに前記ミラーは前記試料からの反射光を前記試料に向けて反射するよう配置され、前記パターン形成部がOFFのときに前記ミラーは前記試料からの反射光の光路の外に配置される電子線応用装置。
【請求項10】
請求項1において、
前記パターン形成部は、マスクパターンが形成された光学マスクと前記マスクパターンを前記試料に投影する投影光学系とを備え、前記光学パターンは、前記試料の表面に投影された前記マスクパターンである電子線応用装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記パターン形成部がONのときに前記光学マスクは前記励起光を透過もしくは反射するよう配置され、前記パターン形成部がOFFのときに前記光学マスクは前記励起光の光路の外に配置される、または前記励起光の光路を前記光学マスクに対して迂回させる電子線応用装置。
【請求項12】
試料を載置するステージと、前記試料に励起光を照射する光学系と、前記励起光が照射された前記試料から放出される光電子による光電子像をカメラに投影する電子光学系と、制御部とを備える電子線応用装置を用いる検査方法であって、
前記試料には複数の検査点が設定され、
前記複数の検査点のいずれかが観察視野に含まれるように前記ステージを移動させ、
前記光学系が備えるパターン形成部をONとして、前記励起光が前記試料の表面に光学パターンを形成した状態での光電子像である調整用画像を取得し、前記調整用画像において前記光学パターンによって形成された明暗パターンの特徴量に基づき前記電子光学系の調整を行い、
前記光学系が備えるパターン形成部をOFFとして、前記励起光が前記試料の表面に前記光学パターンを形成しない状態での光電子像である検査用画像を取得する検査方法。
【請求項13】
請求項12において、
前記調整用画像の前記明暗パターンの鮮鋭度が所定の閾値を満たすように前記電子光学系のフォーカスを調整する検査方法。
【請求項14】
請求項13において、
前記制御部は、前記光学パターンの寸法をあらかじめ記憶しており、前記調整用画像の前記明暗パターンとあらかじめ記憶している前記光学パターンの寸法とに基づき、前記調整用画像の倍率を算出する検査方法。
【請求項15】
請求項14において、
前記調整用画像の倍率が一定となるように、前記調整用画像の倍率に基づき前記電子光学系の倍率調整を行う、または前記調整用画像の倍率に基づき前記検査用画像の拡大もしくは縮小を行う画像処理を行う検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線応用装置及びそれを用いた検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電子顕微鏡(Photoelectron Emission Microscope:PEEM)は、紫外光やX線(励起光)を試料の表面に照射することによって発生する光電子を用いて像を形成する装置であり、試料の表面構造に起因するコントラストを有する光電子像を得ることができる。
【0003】
特許文献1には、カソード・レンズ顕微鏡(PEEMはその一例である)の構造の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PEEMの電子光学系では、光電子像を結像レンズ系によりカメラに投影する。観察試料の高さが異なると、光電子像のフォーカスをあわせるために対物レンズの強度(焦点距離)を変更する必要がある。これにより、結像レンズ系の物面に形成される光電子像の大きさが変化し、この結果、カメラ(結像レンズ系の像面)に投影される光電子像の大きさが変化してしまう。
【0006】
フォーカス調整に伴う光電子像の大きさの変化をなくすためには、例えば、フォーカス調整を標準試料、または、観察試料上の大きさが既知であるパターンの光電子像を取得することで、得られた光電子像の倍率を把握し、所定の倍率になるよう光電子像の倍率を調整すればよい。しかしながら、この方法では倍率の調整のために観察視野の移動が必要となり、時間がかかる。また、光電子像の倍率を精度よく算出するためには、高いコントラストをもつ光電子像を得る必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施の態様である電子線応用装置は、試料に励起光を照射する光学系と、励起光が照射された試料から放出される光電子による光電子像をカメラに投影する電子光学系と、制御部とを有し、光学系は励起光を発生させる光源とパターン形成部とを備え、パターン形成部がONのときには励起光は試料の表面に光学パターンを形成し、パターン形成部がOFFのときには、励起光は、試料の表面に光学パターンを形成することなく、試料に照射され、制御部は、パターン形成部をONとして得られた光電子像において光学パターンによって形成された明暗パターンの特徴量に基づき電子光学系の調整を行う。
【発明の効果】
【0008】
投影型電子線応用装置の電子光学系の調整を高速かつ高精度に実施可能とする。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】パターン形成部をON,OFFしたときの光電子像を説明するための図である。
【
図6】電子線応用装置による観察フローチャートである。
【
図7】PEEM式検査装置による検査フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に本実施例の電子線応用装置の構成例を示す。
図1は、レーザ光やX線などの励起光を試料の表面に照射して発生する光電子による像(光電子像)を得るPEEMを例示している。装置本体10は、その主要な構成として、試料4を載置するステージ7、励起光5を試料4に照射する光学系1、光電子像を撮影するカメラ3、光電子像をカメラ3に投影する電子光学系2を有している。光学系1は、励起光5を発生させる光源11とパターン形成部12とを備えている。パターン形成部12は、光源11からの励起光5をパターン光として試料4に照射し、試料4の表面に光学パターンを形成する。詳細については後述するが、パターン形成部12をONすることでパターン光が、パターン形成部12をOFFすることで試料表面に光学パターンを形成しない光(以下では均一光とよぶ)が光学系1から試料4に照射される。その他、光学系1は励起光5を試料4に照射するために、レンズやミラーなどの光学素子を備える場合もある。励起光5を試料4に照射することにより発生した光電子6による光電子像は電子光学系2によりカメラ3に投影される。
図1では電子光学系2は電子レンズに代表させて表示しているが、1段以上の電子レンズ、その他の電子光学素子を備えている。カメラ3は光電子そのものを検知して撮影するものであってもよいし、シンチレータを備え、シンチレータによって電子を一旦光に変換し、変換された光を検知して撮影するものであってもよい。
【0011】
装置本体10は制御部20と接続されている。制御部20は、GUI(Graphical User Interface)装置22から入力されるユーザからの指示を受けて装置本体10の制御を行うとともに、カメラ3で撮影された光電子像の画像処理を行う。制御部20は記憶部21を備え、記憶部21には、装置本体10の制御パラメータや、光電子像が記憶される。
【0012】
以下に、パターン形成部12が試料4上に照射するパターン光について説明する。パターン光により形成される光学パターンの第1の例は、光源11からの励起光をパターン形成部12により複数の励起光に分岐させ、それらが互いに干渉することによって発生する干渉縞である。
図2Aは、パターン形成部12が1次元の光路差を形成したときに得られる干渉縞の模式図であり、励起光5の強度が試料表面上でストライプパターンをなすように変化している。
図2Bは、パターン形成部12が2次元の光路差を形成したときに得られる干渉縞の模式図であり、励起光5の強度が試料表面上で同心円パターンをなすように変化している。
【0013】
図3A~
図3Cに、試料表面に干渉縞を形成するパターン形成部12の構成例を示す。
図3Aは、パターン形成部12に光学平面をもつ光学素子30を用いる例である。パターン形成部12をONする場合には、光学素子30を励起光の光路に挿入する。励起光が光学素子30の入射面31と出射面32との間で多重反射することにより、光路差をもつ光に分岐され、干渉縞が生じる。パターン形成部12をOFFする場合には、光学素子30を励起光の光路の外へ移動させる。なお、図では入射面31と出射面32との反射に角度をつけて表示しているが、これは多重反射している様子を分かりやすく示すためのものである。光学素子30の光学平面が光路に対して垂直に配置される場合には、出射面32からの反射光は出射面32と垂直な方向に反射されるため、
図3Aに示されているような光学素子30を透過した光と光学素子30内で反射した光との間に位置ずれは発生しない。
【0014】
図3Bは、光路分岐によって光路差を発生させる光学アセンブリ40を用いる例である。光学アセンブリ40は入射した光を複数の光路に分岐させ、再度合流させて出射させる。
図3Bの例では、光学アセンブリ40は、可動するハーフミラー41a,41bと固定されたミラー42a,42bとを有する。パターン形成部12をONする場合には、ハーフミラー41a,41bを励起光の光路に挿入する。ハーフミラー41a,41bが励起光の光路に挿入されることにより、ハーフミラー41aにより、ハーフミラー41aを透過する光と反射する光に分岐される。透過光43はハーフミラー41bを透過し、光学アセンブリ40から出射される。一方、反射光44は、ミラー42a、ミラー42b、ハーフミラー41bで反射され、透過光43と合流して光学アセンブリ40から出射される。光路差をもつ励起光が干渉することにより、干渉縞が生じる。パターン形成部12をOFFする場合には、ハーフミラー41a,41bを励起光の光路の外へ移動させる。
【0015】
図3Cは可動ミラー50を用いる例である。パターン形成部12をONする場合には、可動ミラー50を、励起光5が試料4で反射した反射光51の光路と垂直となるように配置し、可動ミラー50の反射光52と励起光5とを干渉させて干渉縞を生じさせる。パターン形成部12をOFFする場合には、可動ミラー50を反射光51の光路の外へ移動させる。
【0016】
パターン光により形成される光学パターンの第2の例では、光源11からの励起光をパターン(マスクパターンという)が形成された光学マスクに透過または反射させ、マスクパターンを試料4に投影する。光学マスクとしては透過型マスクまたは反射型マスクが使用でき、光学マスクのマスクパターンが試料4上で結像するよう、パターン形成部12はレンズまたはミラーを含む投影光学系を備える。
図4Aは透過型マスク60と投影レンズ61により、透過型マスク60に形成されているマスクパターンを試料4に投影させるパターン形成部12の構成例を示している。
【0017】
図4Bに
図4Aに示した透過型マスク60に形成されるマスクパターン例を示す。励起光を透過させる透過部63と励起光を遮蔽する遮蔽部64により市松模様が形成されている。反射型マスクであっても反射部と透過部とを同様に設けることで、試料4上に同じパマスクパターンを投影することが可能である。マスクパターンの形状については限定されないが、後述するように光学パターンによって形成される明暗パターンの特徴量を用いて電子光学系を調整するため、ラインエッジを多く含む2値パターンとすることが望ましい。
【0018】
パターン形成部12をONする場合には、光源11からの励起光の光路上に光学マスクを挿入する。パターン形成部12をOFFする場合には、光学マスクを励起光の光路の外へ移動させてもよいし、光源11から光学マスクを通ることなく試料4に励起光を照射する迂回路をあらかじめ設けておき、励起光の光路を迂回路に切り替えるようにしてもよい。
【0019】
図5を用いてパターン形成部12をON,OFFしたときの光電子像について説明する。光電子像70はパターン形成部をOFFとしたとき(観察時)の光電子像である。光学系1は、パターン形成部12がOFFとされている場合には、光源11からの励起光が均一に試料4に照射されるように調整されている。試料4に材料または構造が異なる領域が存在すると、励起光5が照射されたことにより発生する光電子の放出確率が当該領域と他の領域とで異なる。光電子の放出確率の違いが光電子像のコントラストとなって、光電子像が得られる。
【0020】
光電子像70における領域72は、試料4の表面における材料や構造が異なる領域を反映している。照射する励起光の強度が高い程、明るい光電子像が得られるため、励起光5として均一光を照射するときの励起光強度をA、試料表面における光電子放出確率をP(x,y)、光電子像70の輝度をI1(x,y)とするとき、
I1(x,y)=A・P(x,y)
と表現できる。
【0021】
一方、パターン形成部12がONとされ、励起光5としてパターン光を照射するとき、励起光強度が照射位置によって異なることになるため、励起光強度をA(x,y)、光電子像71の輝度をI2(x,y)とするとき、
I2(x,y)=A(x,y)・P(x,y)
と表現できる。
【0022】
パターン光の励起光強度A(x,y)のとりうる値は、理想的には最大値がA(均一光を照射するときの励起光強度)、最小値を0(励起光が照射されない状態)とできるため、光学パターンによって形成される明暗パターンのコントラストは、試料の材料や構造による光電子放出確率P(x,y)によって生じるコントラストよりも大きなコントラストを得ることができる。したがって、試料4の試料表面の材料や構造にかかわらず、光電子像71において光学パターンによって形成される明暗パターン73は観察が容易であり、解析も精度よく行える。本実施例ではこのことを利用して、第1に、明暗パターン73の鮮鋭度に基づき電子光学系2のフォーカス調整を行う。光学パターンによって形成される明暗パターンは高コントラストであるため、フォーカス調整を容易に、また精度よく行える。第2に、試料上の光学パターンの寸法と光電子像71における明暗パターン73とに基づき、光電子像の倍率を算出する。光学パターンによって形成される明暗パターンは高コントラストであるため、光電子像の倍率算出も容易に、また精度よく行える。パターン光によって形成される試料上の光学パターンの寸法はあらかじめ求めておき、記憶部21に記憶しておく。
【0023】
図6に電子線応用装置による観察のフローチャートを示す。本フローは制御部20により制御される。まず、観察準備を行う(S01)。観察準備完了した段階で、観察視野に観察したい試料表面の位置がとらえられていればよい。次に、制御部20はパターン形成部12をONとし(S02)、調整用画像を取得する(S03)。調整用画像は例えば、光電子像71(
図5参照)のような光電子像である。調整用画像の明暗パターンから光電子像の鮮鋭度と倍率とを算出し、あらかじめ定めてある閾値と比較する(S04)。
【0024】
明暗パターンが例えば光電子像71の明暗パターン73のようなラインパターンである場合には、鮮鋭度の指標としてラインパターンのエッジにおける輝度変化を用いることができる。例えば、エッジ部分における輝度変化が急峻であれば鮮鋭度が高く、緩やかであれば鮮鋭度が低いと判断できる。また、調整用画像に含まれるラインパターンの本数をカウントすることにより、ラインパターンに対応する光学パターンの寸法が既知であるので、調整用画像に写っている領域の実寸を算出できる。実寸と調整用画像の大きさから倍率を算出することができる。
【0025】
調整用画像の鮮鋭度と倍率とが所望の閾値を満たさない場合には、電子光学系2のレンズ値を変更し、倍率調整やフォーカス調整を行う(S05)。調整用画像の鮮鋭度と倍率とが所望の閾値を満たしている場合には、パターン形成部をOFFとし(S06)、観察用画像を取得する(S07)。観察用画像は例えば、光電子像70(
図5参照)のような光電子像である。電子光学系の調整を明暗パターンで行うことにより、試料表面の光電子像を所望の倍率で、鮮明な光電子像として取得することができる。
【0026】
PEEMは一般的には試料の分析を目的とする観察に用いられるが、現在、光を用いる光学式検査装置、電子線を用いるSEM(Scanning Electron Microscope)式検査装置が広く用いられている、半導体ウエハの表面に形成されたパターン形状の検査装置として、PEEMが利用できると考えられる。光学パターンによって形成される明暗パターンを用いて電子光学系の調整を高速かつ高精度で実施する本実施例は、PEEM式検査装置に対して極めて有効である。
【0027】
図7にPEEM式検査装置による検査のフローチャートを示す。本フローも制御部20により制御される。
図6のフローチャートと同じ処理については同じ符号を付して、重複する説明は省略する。半導体ウエハには複数の検査点が設定されており、ある検査点に対する検査用画像が取得(S07a)された後、次の検査点にステージ移動する(S11)。制御部20はパターン形成部12をONとし(S02)、調整用画像を取得する(S03)。調整用画像の明暗パターンから光電子像の鮮鋭度と倍率とを算出し、あらかじめ定めてある閾値と比較する(S04)。
【0028】
調整用画像の鮮鋭度と倍率とが所望の閾値を満たさない場合には、電子光学系2のレンズ値を変更し、倍率調整やフォーカス調整を行う(S05)。調整用画像の鮮鋭度と倍率とが所望の閾値を満たしている場合には、パターン形成部をOFFとし(S06)、検査用画像を取得する(S07b)。その後、次の検査点にステージ移動する。
【0029】
上述したように、フォーカス調整を行うことにより、当該検査点での検査用画像の倍率が変化する。レンズ値変更ステップ(S05)において、検査用画像が一定の倍率になるようにレンズ値を調整してもよい。あるいは、倍率が所定の範囲内であれば、各検査点での検査用画像の倍率をあわせるためのレンズ値の調整を行わなくてもよい。これにより検査用画像取得のスループットを向上させることができる。倍率調整のためのレンズ値変更を行わない代わりに、倍率に基づき、画像処理によって得られた検査用画像を拡大または縮小処理してもよいし、検査用画像に対する画像処理をおこなうことなく、検査における良否判定を検査用画像の倍率を考慮して行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1:光学系、2:電子光学系、3:カメラ、4:試料、5:励起光、6:光電子、7:ステージ、10:装置本体、11:光源、12:パターン形成部、20:制御部、21:記憶部、22:GUI装置、30:光学素子、31:入射面、32:出射面、40:光学アセンブリ、41a,41b:ハーフミラー、42a,42b:ミラー、43:透過光、44:反射光、50:可動ミラー、51,52:反射光、60:透過型マスク、61:投影レンズ、63:透過部、64:遮蔽部、70,71:光電子像、72:領域、73:明暗パターン。