(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038168
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】薬液の検査方法、薬液の製造方法、薬液の管理方法、半導体デバイスの製造方法、レジスト組成物の検査方法、レジスト組成物の製造方法、レジスト組成物の管理方法、及び半導体製造装置の汚染状態確認方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20230309BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230309BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20230309BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20230309BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20230309BHJP
【FI】
H01L21/30 565
H01L21/304 647A
H01L21/66 J
G01N21/956 A
G01N27/62 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】31
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133289
(22)【出願日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2021144874
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】大津 暁彦
(72)【発明者】
【氏名】吉留 正洋
(72)【発明者】
【氏名】河田 幸寿
(72)【発明者】
【氏名】西塔 亮
【テーマコード(参考)】
2G041
2G051
4M106
5F146
5F157
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA14
2G041EA01
2G041FA16
2G041GA07
2G041GA16
2G041JA16
2G051AA51
2G051AB02
2G051BA10
2G051BB05
2G051BB09
2G051CA02
2G051CB01
2G051CB05
2G051CC09
2G051DA08
4M106AA01
4M106BA05
4M106CA42
4M106CB01
4M106DB02
4M106DB08
5F146JA27
5F157AA91
5F157BC13
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5F157BF32
5F157BF33
5F157BF34
5F157CB32
5F157CE28
5F157CF40
5F157CF42
5F157CF44
5F157DB03
(57)【要約】
【課題】薬液中の微小異物の分析が可能な薬液の検査方法、薬液の製造方法、薬液の管理方法、半導体デバイスの製造方法、レジスト組成物中の微小異物の分析が可能なレジスト組成物の検査方法、レジスト組成物の製造方法、レジスト組成物の管理方法、及び半導体製造装置中の微小異物の管理が可能な半導体製造装置の汚染状態確認方法を提供する。
【解決手段】薬液の検査方法は、薬液を用意する工程1Xと、薬液を半導体基板上に塗布する工程2Xと、半導体基板の表面上の欠陥の有無を測定し、半導体基板の表面上の欠陥の半導体基板上の位置情報を得て、位置情報に基づいて、半導体基板の表面上の欠陥に対してレーザー光を照射して、照射により得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析する工程3Xとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を用意する工程1Xと、
前記薬液を半導体基板上に塗布する工程2Xと、
前記半導体基板の表面上の欠陥の有無を測定し、前記半導体基板の表面上の前記欠陥の前記半導体基板上の位置情報を得て、前記位置情報に基づいて、前記半導体基板の表面上の前記欠陥に対してレーザー光を照射して、照射により得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析する工程3Xとを含む、薬液の検査方法。
【請求項2】
前記工程3Xで得られた前記欠陥中の質量分析データから、前記欠陥中の金属元素の有無を判定する工程4Xを有する、請求項1に記載の薬液の検査方法。
【請求項3】
前記工程4Xの後に、前記金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Xを有する、請求項2に記載の薬液の検査方法。
【請求項4】
前記工程3Xで得られた前記欠陥中の質量分析データに基づいて、前記欠陥中に金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Xを有する、請求項1に記載の薬液の検査方法。
【請求項5】
前記薬液は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Ti及びZnから成る群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、前記金属元素の合計含有量が前記薬液の全質量に対して10質量ppb以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の薬液の検査方法。
【請求項6】
前記キャリアガスは、水分量が0.00001体積ppm以上0.1体積ppm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の薬液の検査方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の薬液の検査方法を含む、薬液の製造方法。
【請求項8】
薬液を用意する工程1Xと、
前記薬液を半導体基板上に塗布する工程2Xと、
前記半導体基板の表面上の欠陥の有無を測定し、前記半導体基板の表面上の前記欠陥の前記半導体基板上の位置情報を得て、前記位置情報に基づいて、前記半導体基板の表面上の前記欠陥に対してレーザー光を照射して、照射により得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析する工程3Xと、
前記工程3Xで得られた前記欠陥中の質量分析データから、前記欠陥中の金属元素の有無を判定する工程4Xと、前記金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Xとを有するか、又は
前記工程3Xで得られた前記欠陥中の質量分析データに基づいて、前記欠陥中に金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Xを有し、
前記工程5Xで得られる欠陥の数が許容範囲内であるかどうかを判定する工程6Xとを含む、薬液の管理方法。
【請求項9】
前記薬液は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Ti及びZnから成る群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、前記金属元素の合計含有量が前記薬液の全質量に対して10質量ppb以下である、請求項8に記載の薬液の管理方法。
【請求項10】
前記キャリアガスは、水分量が0.00001体積ppm以上0.1体積ppm以下である、請求項8に記載の薬液の管理方法。
【請求項11】
薬液を用意する工程1Xと、
前記薬液を半導体基板上に塗布する工程2Xと、
前記半導体基板の表面上の欠陥の有無を測定し、前記半導体基板の表面上の前記欠陥の前記半導体基板上の位置情報を得て、前記位置情報に基づいて、前記半導体基板の表面上の前記欠陥に対してレーザー光を照射して、照射により得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析する工程3Xと、
前記工程3Xで得られた前記欠陥中の質量分析データから、前記欠陥中の金属元素の有無を判定する工程4Xと、前記金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Xとを有するか、又は
前記工程3Xで得られた前記欠陥中の質量分析データに基づいて、前記欠陥中に金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Xを有し、
前記工程5Xで得られる欠陥の数が許容範囲内であるかどうかを判定する工程6Xと、
前記工程6Xで許容範囲内と判定された薬液を用いて、半導体デバイスの製造を行う工程7Xとを含む、半導体デバイスの製造方法。
【請求項12】
前記薬液が、プリウエット液、現像液、リンス液、又は洗浄液である、請求項11に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項13】
前記薬液は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Ti及びZnから成る群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、前記金属元素の合計含有量が前記薬液の全質量に対して10質量ppb以下である、請求項11に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項14】
前記キャリアガスは、水分量が0.00001体積ppm以上0.1体積ppm以下である、請求項11~13のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項15】
レジスト組成物を用意する工程1Yと、
前記レジスト組成物を半導体基板上に塗布する工程2Yと、
前記レジスト組成物の塗膜中の欠陥の有無を測定し、前記レジスト組成物の塗膜中の前記欠陥の前記半導体基板上の位置情報を得て、前記位置情報に基づいて、前記半導体基板の表面上の前記欠陥に対してレーザー光を照射して、照射により得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析する工程3Yとを含む、レジスト組成物の検査方法。
【請求項16】
前記工程3Yで得られた前記欠陥中の質量分析データから、前記欠陥中の金属元素の有無を判定する工程4Yを有する、請求項15に記載のレジスト組成物の検査方法。
【請求項17】
前記工程4Yの後に、前記金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Yとを有する、請求項16に記載のレジスト組成物の検査方法。
【請求項18】
前記工程3Yで得られた前記欠陥中の質量分析データに基づいて、前記欠陥中に金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Yを有する、請求項15に記載のレジスト組成物の検査方法。
【請求項19】
前記レジスト組成物は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Ti及びZnから成る群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、前記金属元素の合計含有量が前記レジスト組成物の全質量に対して10質量ppb以下である、請求項15~18のいずれか1項に記載のレジスト組成物の検査方法。
【請求項20】
前記キャリアガスは、水分量が0.00001体積ppm以上0.1体積ppm以下である、請求項15~18のいずれか1項に記載のレジスト組成物の検査方法。
【請求項21】
請求項15~18のいずれか1項に記載のレジスト組成物の検査方法を含む、レジスト組成物の製造方法。
【請求項22】
レジスト組成物を用意する工程1Yと、
前記レジスト組成物を半導体基板上に塗布する工程2Yと、
前記レジスト組成物の塗膜中の欠陥の有無を測定し前記レジスト組成物の塗膜中の前記欠陥の前記半導体基板上の位置情報を得て、前記位置情報に基づいて、前記半導体基板の表面上の前記欠陥に対してレーザー光を照射して、照射により得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析する工程3Yと、
前記工程3Yで得られた前記欠陥中の質量分析データから、前記欠陥中の金属元素の有無を判定する工程4Yと、前記金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Yとを有するか、又は
前記工程3Yで得られた前記欠陥中の質量分析データに基づいて、前記欠陥中に金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Yを有し、
前記工程5Yで得られる欠陥の数が許容範囲内であるかどうかを判定する工程6Yとを含む、レジスト組成物の管理方法。
【請求項23】
前記レジスト組成物は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Ti及びZnから成る群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、前記金属元素の合計含有量が前記レジスト組成物の全質量に対して10質量ppb以下である、請求項22に記載のレジスト組成物の管理方法。
【請求項24】
前記キャリアガスは、水分量が0.00001体積ppm以上0.1体積ppm以下である、請求項22に記載のレジスト組成物の管理方法。
【請求項25】
レジスト組成物を用意する工程1Yと、
前記レジスト組成物を半導体基板上に塗布する工程2Yと、
前記レジスト組成物の塗膜中の欠陥の有無を測定し、前記レジスト組成物の塗膜中の前記欠陥の前記半導体基板上の位置情報を得て、前記位置情報に基づいて、前記半導体基板の表面上の前記欠陥に対してレーザー光を照射して、照射により得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析する工程3Yと、
前記工程3Yで得られた前記欠陥中の質量分析データから、前記欠陥中の金属元素の有無を判定する工程4Yと、前記金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Yとを有するか、又は
前記工程3Yで得られた前記欠陥中の質量分析データに基づいて、前記欠陥中に金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Yを有し、
前記工程5Yで得られる欠陥の数が許容範囲内であるかどうかを判定する工程6Yと、
前記工程6Yで許容範囲内と判定されたレジスト組成物を用いて、半導体デバイスの製造を行う工程7Yとを含む、半導体デバイスの製造方法。
【請求項26】
前記レジスト組成物は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Ti及びZnから成る群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、前記金属元素の合計含有量が前記レジスト組成物の全質量に対して10質量ppb以下である、請求項25に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項27】
前記キャリアガスは、水分量が0.00001体積ppm以上0.1体積ppm以下である、請求項25に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項28】
薬液を用意する工程1Zと、
前記薬液を用いて半導体製造装置を洗浄する工程2Zと、
前記工程2Zの洗浄後の前記薬液を半導体基板上に塗布する工程3Zと、
前記半導体基板の表面上の欠陥の有無を測定し、前記半導体基板の表面上の前記欠陥の前記半導体基板上の位置情報を得て、前記位置情報に基づいて、前記半導体基板の表面上の前記欠陥に対してレーザー光を照射して、照射により得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析する工程4Zと、
前記工程4Zで得られた前記欠陥中の質量分析データから、前記欠陥中の金属元素の有無を判定する工程5Zとを有する、半導体製造装置の汚染状態確認方法。
【請求項29】
前記金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程6Zを含む、請求項28に記載の半導体製造装置の汚染状態確認方法。
【請求項30】
薬液を用意する工程1Zと、
前記薬液を用いて半導体製造装置を洗浄する工程2Zと、
前記工程2Zの洗浄後の前記薬液を半導体基板上に塗布する工程3Zと、
前記半導体基板の表面上の欠陥の有無を測定し、前記半導体基板の表面上の前記欠陥の前記半導体基板上の位置情報を得て、前記位置情報に基づいて、前記半導体基板の表面上の前記欠陥に対してレーザー光を照射して、照射により得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析する工程4Zと、
前記工程4Zで得られた前記欠陥中の質量分析データに基づいて、前記欠陥中に金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程6Zとを有する、半導体製造装置の汚染状態確認方法。
【請求項31】
前記キャリアガスは、水分量が0.00001体積ppm以上0.1体積ppm以下である、請求項28~30のいずれか1項に記載の半導体製造装置の汚染状態確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法(LA-ICP-MS)を利用した、薬液の検査方法、薬液の製造方法、薬液の管理方法、半導体デバイスの製造方法、レジスト組成物の検査方法、レジスト組成物の製造方法、レジスト組成物の管理方法、及び半導体製造装置の汚染状態確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、シリコン基板等の半導体基板を用いて、各種の半導体デバイスが製造されている。半導体基板の表面に異物等の欠陥があると、半導体デバイスの製造に際して、トランジスタのゲートの形成が不十分になったり、配線が断線したりする等して、製造される半導体デバイスが不良品になることがある。このように半導体基板の表面に異物等の欠陥があると、半導体デバイスの歩留りに影響を及ぼす。
【0003】
半導体基板の欠陥については、例えば、特許文献1に記載されたシリコンウエハのシリコン結晶内部の残留金属不純物を評価する手法を用いて評価できる。特許文献1のシリコンウエハのシリコン結晶内部の残留金属不純物を評価する手法は、熱処理を行い、シリコン結晶内部の金属不純物をシリコンウエハ表面に集め、その後、気相分解法誘導結合プラズマ質量分析(VPD-ICP-MS)を行い、シリコンウエハ表面に集まった金属不純物濃度を測定する。シリコンウエハの表面欠陥の数は、KLA株式会社製SurfScanSP5を用いて測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-195020号公報
【特許文献2】特開2020-027920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1の気相分解法誘導結合プラズマ質量分析は、シリコンウエハを溶解してしまい、半導体基板の欠陥を非破壊で評価できない。半導体基板の欠陥を非破壊で評価するものとして、特許文献2のウェーハの金属汚染の評価方法がある。
【0006】
特許文献2のウェーハの金属汚染の評価方法には、異物検査装置として、ウェーハ表面をレーザー光により走査し、異物からの光散乱強度を測定することで、異物を検出する光散乱方式のパーティクルカウンタ(例えば、KLA株式会社製SurfScanSP5等)、ウェーハ表面からの反射光の差を検出することで異物を検出するコンフォーカル光学系のレーザー顕微鏡(例えば、レーザーテック社製MAGICS等)を用いることが記載されている。第1工程で取得した座標をもとに輝点のSEM(Scanning Electron Microscope)観察を行い、電子線照射により発生した特性X線に基づいて、EDX(Energy dispersive X-ray spectroscopy)分析を行うことが記載されている。
【0007】
ここで、上述のように、半導体基板の表面に異物等の欠陥がある場合、特に、半導体デバイスの微細化、及び半導体デバイスの高集積化が進むに連れて、半導体基板の表面上の欠陥が、半導体デバイスの不良品を発生させ、歩留りを悪くする影響が大きくなる。このため、半導体基板の表面上の欠陥を測定することが重要であり、半導体基板の欠陥のうち、微小異物の測定がより重要になる。しかしながら、特許文献2に記載されたウェーハの金属汚染の評価方法を、半導体基板の表面上の20nm程度の微小異物の分析に用いた場合、EDXでは元素分析ができない可能性が高い。
上述の半導体基板と同様に、薬液、及びレジスト組成物においても、品質管理及び製造等の観点から異物等の欠陥がないことが望まれていることから、異物の測定が望まれており、特に微小異物の測定及びその元素分析が望まれている。
また、半導体製造装置においても、汚染状況は、製造する製品の性能又は品質等に影響を及ぼすことから微小異物を管理することが望まれている。半導体製造装置の微小異物を管理するために、特に、微細化及び高集積化が進んだ半導体デバイスの不良品を発生させる、微小異物の測定及びその元素分析が望まれている。
【0008】
本発明の目的は、薬液中の微小異物の分析が可能な、薬液の検査方法、薬液の製造方法、薬液中に含まれる微小異物が微量である場合でも、薬液の品質管理が可能な、薬液の管理方法、半導体デバイスの製造方法、レジスト組成物中の微小異物の分析が可能な、レジスト組成物の検査方法、レジスト組成物の製造方法、レジスト組成物中に含まれる微小異物が微量である場合でも、レジスト組成物の品質管理が可能な、レジスト組成物の管理方法、及び半導体デバイスの製造方法、半導体製造装置中の微小異物の管理が可能な、半導体製造装置の汚染状態確認方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、発明[1]は、薬液を用意する工程1Xと、薬液を半導体基板上に塗布する工程2Xと、半導体基板の表面上の欠陥の有無を測定し、半導体基板の表面上の欠陥の半導体基板上の位置情報を得て、位置情報に基づいて、半導体基板の表面上の欠陥に対してレーザー光を照射して、照射により得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析する工程3Xとを含む、薬液の検査方法。
発明[2]は、工程3Xで得られた欠陥中の質量分析データから、欠陥中の金属元素の有無を判定する工程4Xを有する、発明[1]に記載の薬液の検査方法。
発明[3]は、工程4Xの後に、金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Xを有する、発明[2]に記載の薬液の検査方法。
発明[4]は、工程3Xで得られた欠陥中の質量分析データに基づいて、欠陥中に金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Xを有する、発明[1]に記載の薬液の検査方法。
【0010】
発明[5]は、薬液は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Ti及びZnから成る群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、金属元素の合計含有量が薬液の全質量に対して10質量ppb以下である、発明[1]~[4]のいずれか1つに記載の薬液の検査方法。
発明[6]は、キャリアガスは、水分量が0.00001体積ppm以上0.1体積ppm以下である、発明[1]~[5]のいずれか1つに記載の薬液の検査方法。
【0011】
発明[7]は、発明[1]~[6]のいずれか1つに記載の薬液の検査方法を含む、薬液の製造方法。
発明[8]は、薬液を用意する工程1Xと、薬液を半導体基板上に塗布する工程2Xと、半導体基板の表面上の欠陥の有無を測定し、半導体基板の表面上の欠陥の半導体基板上の位置情報を得て、位置情報に基づいて、半導体基板の表面上の欠陥に対してレーザー光を照射して、照射により得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析する工程3Xと、工程3Xで得られた欠陥中の質量分析データから、欠陥中の金属元素の有無を判定する工程4Xと、金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Xとを有するか、又は工程3Xで得られた欠陥中の質量分析データに基づいて、欠陥中に金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Xを有し、工程5Xで得られる欠陥の数が許容範囲内であるかどうかを判定する工程6Xとを含む、薬液の管理方法。
【0012】
発明[9]は、薬液は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Ti及びZnから成る群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、金属元素の合計含有量が薬液の全質量に対して10質量ppb以下である、発明[8]に記載の薬液の管理方法。
発明[10]は、キャリアガスは、水分量が0.00001体積ppm以上0.1体積ppm以下である、発明[8]又は[9]に記載の薬液の管理方法。
【0013】
発明[11]は、薬液を用意する工程1Xと、薬液を半導体基板上に塗布する工程2Xと、半導体基板の表面上の欠陥の有無を測定し、半導体基板の表面上の欠陥の半導体基板上の位置情報を得て、位置情報に基づいて、半導体基板の表面上の欠陥に対してレーザー光を照射して、照射により得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析する工程3Xと、工程3Xで得られた欠陥中の質量分析データから、欠陥中の金属元素の有無を判定する工程4Xと、金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Xとを有するか、又は工程3Xで得られた欠陥中の質量分析データに基づいて、欠陥中に金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Xを有し、工程5Xで得られる欠陥の数が許容範囲内であるかどうかを判定する工程6Xと、工程6Xで許容範囲内と判定された薬液を用いて、半導体デバイスの製造を行う工程7Xとを含む、半導体デバイスの製造方法。
【0014】
発明[12]は、薬液が、プリウエット液、現像液、リンス液、又は洗浄液である、発明[11]に記載の半導体デバイスの製造方法。
発明[13]は、薬液は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Ti及びZnから成る群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、金属元素の合計含有量が薬液の全質量に対して10質量ppb以下である、発明[11]又は[12]に記載の半導体デバイスの製造方法。
発明[14]は、キャリアガスは、水分量が0.00001体積ppm以上0.1体積ppm以下である、発明[11]~[13]のいずれか1つに記載の半導体デバイスの製造方法。
【0015】
発明[15]は、レジスト組成物を用意する工程1Yと、レジスト組成物を半導体基板上に塗布する工程2Yと、レジスト組成物の塗膜中の欠陥の有無を測定し、レジスト組成物の塗膜中の欠陥の半導体基板上の位置情報を得て、位置情報に基づいて、半導体基板の表面上の欠陥に対してレーザー光を照射して、照射により得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析する工程3Yとを含む、レジスト組成物の検査方法。
発明[16]は、工程3Yで得られた欠陥中の質量分析データから、欠陥中の金属元素の有無を判定する工程4Yを有する、発明[15]に記載のレジスト組成物の検査方法。
発明[17]は、工程4Yの後に、金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Yを有する、発明[16]に記載のレジスト組成物の検査方法。
発明[18]は、工程3Yで得られた欠陥中の質量分析データに基づいて、欠陥中に金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Yを有する、発明[15]に記載のレジスト組成物の検査方法。
【0016】
発明[19]は、レジスト組成物は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Ti及びZnから成る群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、金属元素の合計含有量がレジスト組成物の全質量に対して10質量ppb以下である、発明[15]~[18]のいずれか1つに記載のレジスト組成物の検査方法。
発明[20]は、キャリアガスは、水分量が0.00001体積ppm以上0.1体積ppm以下である、発明[15]~[19]のいずれか1つに記載のレジスト組成物の検査方法。
【0017】
発明[21]は、発明[15]~[20]のいずれか1つに記載のレジスト組成物の検査方法を含む、レジスト組成物の製造方法。
発明[22]は、レジスト組成物を用意する工程1Yと、レジスト組成物を半導体基板上に塗布する工程2Yと、レジスト組成物の塗膜中の欠陥の有無を測定し、レジスト組成物の塗膜中の欠陥の半導体基板上の位置情報を得て、位置情報に基づいて、半導体基板の表面上の欠陥に対してレーザー光を照射して、照射により得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析する工程3Yと、工程3Yで得られた欠陥中の質量分析データから、欠陥中の金属元素の有無を判定する工程4Yと、金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Yとを有するか、又は工程3Yで得られた欠陥中の質量分析データに基づいて、欠陥中に金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Yを有し、工程5Yで得られる欠陥の数が許容範囲内であるかどうかを判定する工程6Yとを含む、レジスト組成物の管理方法。
【0018】
発明[23]は、レジスト組成物は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Ti及びZnから成る群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、金属元素の合計含有量がレジスト組成物の全質量に対して10質量ppb以下である、発明[22]に記載のレジスト組成物の管理方法。
発明[24]は、キャリアガスは、水分量が0.00001体積ppm以上0.1体積ppm以下である、発明[22]又は[23]に記載のレジスト組成物の管理方法。
【0019】
発明[25]は、レジスト組成物を用意する工程1Yと、レジスト組成物を半導体基板上に塗布する工程2Yと、レジスト組成物の塗膜中の欠陥の有無を測定し、レジスト組成物の塗膜中の欠陥の半導体基板上の位置情報を得て、位置情報に基づいて、半導体基板の表面上の欠陥に対してレーザー光を照射して、照射により得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析する工程3Yと、工程3Yで得られた欠陥中の質量分析データから、欠陥中の金属元素の有無を判定する工程4Yと、金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Yとを有するか、又は工程3Yで得られた欠陥中の質量分析データに基づいて、欠陥中に金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Yを有し、工程5Yで得られる欠陥の数が許容範囲内であるかどうかを判定する工程6Yと、工程6Yで許容範囲内と判定されたレジスト組成物を用いて、半導体デバイスの製造を行う工程7Yとを含む、半導体デバイスの製造方法。
【0020】
発明[26]は、レジスト組成物は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Ti及びZnから成る群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、金属元素の合計含有量がレジスト組成物の全質量に対して10質量ppb以下である、発明[25]に記載の半導体デバイスの製造方法。
発明[27]は、キャリアガスは、水分量が0.00001体積ppm以上0.1体積ppm以下である、発明[25]又は[26]に記載の半導体デバイスの製造方法。
【0021】
発明[28]は、薬液を用意する工程1Zと、薬液を用いて半導体製造装置を洗浄する工程2Zと、工程2Zの洗浄後の薬液を半導体基板上に塗布する工程3Zと、半導体基板の表面上の欠陥の有無を測定し、半導体基板の表面上の欠陥の半導体基板上の位置情報を得て、位置情報に基づいて、半導体基板の表面上の欠陥に対してレーザー光を照射して、照射により得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析する工程4Zと、工程4Zで得られた欠陥中の質量分析データから、欠陥中の金属元素の有無を判定する工程5Zとを有する、半導体製造装置の汚染状態確認方法。
発明[29]は、金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程6Zを含む、発明[28]に記載の半導体製造装置の汚染状態確認方法。
【0022】
発明[30]は、薬液を用意する工程1Zと、薬液を用いて半導体製造装置を洗浄する工程2Zと、工程2Zの洗浄後の薬液を半導体基板上に塗布する工程3Zと、半導体基板の表面上の欠陥の有無を測定し、半導体基板の表面上の欠陥の半導体基板上の位置情報を得て、位置情報に基づいて、半導体基板の表面上の欠陥に対してレーザー光を照射して、照射により得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析する工程4Zと、工程4Zで得られた欠陥中の質量分析データに基づいて、欠陥中に金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程6Zとを有する、半導体製造装置の汚染状態確認方法を提供するものである。
発明[31]は、キャリアガスは、水分量が0.00001体積ppm以上0.1体積ppm以下である、発明[28]~[30]のいずれか1つに記載の半導体製造装置の汚染状態確認方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、薬液中の微小異物の分析が可能な、薬液の検査方法、薬液の製造方法、薬液中に含まれる微小異物が微量である場合でも、薬液の品質管理が可能な、薬液の管理方法、半導体デバイスの製造方法、レジスト組成物中の微小異物の分析が可能な、レジスト組成物の検査方法、レジスト組成物の製造方法、レジスト組成物中に含まれる微小異物が微量である場合でも、レジスト組成物の品質管理が可能な、レジスト組成物の管理方法、及び半導体デバイスの製造方法、半導体製造装置中の微小異物の管理が可能な、半導体製造装置の汚染状態確認方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態の薬液の検査方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の実施形態の薬液の管理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施形態の半導体デバイスの製造方法の第1の例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施形態のレジスト組成物の検査方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態のレジスト組成物の管理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態の半導体デバイスの製造方法の第2の例を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施形態の半導体製造装置の汚染状態確認方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施形態の分析装置の第1の例を示す模式図である。
【
図9】本発明の実施形態の分析装置の第1の例の分析ユニットの一例を示す模式図である。
【
図10】本発明の実施形態の分析方法の第1の例を説明する模式図である。
【
図11】本発明の実施形態の分析方法の第1の例を説明する模式的断面図である。
【
図12】本発明の実施形態の分析装置の第2の例を示す模式図である。
【
図13】本発明の実施形態の分析装置の第3の例を示す模式図である。
【
図14】本発明の実施形態の分析装置の分析部の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の薬液の検査方法、薬液の製造方法、薬液の管理方法、半導体デバイスの製造方法、レジスト組成物の検査方法、レジスト組成物の製造方法、レジスト組成物の管理方法、及び半導体製造装置の汚染状態確認方法を詳細に説明する。
なお、以下に説明する図は、本発明を説明するための例示的なものであり、以下に示す図に本発明が限定されるものではない。
【0026】
なお、以下において数値範囲を示す「~」とは両側に記載された数値を含む。例えば、εが数値εa~数値εbとは、εの範囲は数値εaと数値εbを含む範囲であり、数学記号で示せばεa≦ε≦εbである。
「具体的な数値で表された角度」、「平行」、「垂直」及び「直交」等の角度は、特に記載がなければ、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
また、「同一」とは、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。また、「全面」等は、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
「用意」というときには、特定の材料を合成ないし調合等して備えることのほか、購入等により所定の物を調達することを含む意味である。
また、「ppm」は「parts-per-million(10-6)」を意味し、「ppb」は「parts-per-billion(10-9)」を意味し、「ppt」は「parts-per-trillion(10-12)」を意味し、「ppq」は「parts-per-quadrillion(10-15)」を意味する。
薬液及びレジスト組成物については、後に説明する。また、後述のように誘導結合プラズマ質量分析を実施するが、誘導結合プラズマ質量分析を実施するための具体的な装置構成は後述する。
後述の半導体製造装置は、特に限定されるものではないが、半導体製造装置としては、例えば、コーターデベロッパー、スピンコーター、半導体ウエハの洗浄装置及び現像装置等が挙げられる。
【0027】
半導体デバイスの製造工程において使用される現像液、リンス液、プリウェット液、及び、剥離液等の各種の薬液は、高純度であることが求められている。このため、各種の薬液について検査、及び管理が重要になってきており、薬液中の微小異物を分析できることが望まれている。以下、薬液の検査方法及び薬液の管理方法について説明する。
【0028】
[薬液の検査方法]
図1は本発明の実施形態の薬液の検査方法の一例を示すフローチャートである。
薬液の検査方法は、まず、検査対象である薬液を用意する(工程1X、ステップS10)。
次に、薬液を半導体基板(図示せず)上に塗布する(工程2X、ステップS12)。
薬液の半導体基板への塗布は、特に限定されるものではないが、例えば、コーターデベロッパーが用いられる。
また、半導体基板は、特に限定されるものではないが、例えば、シリコン基板が用いられる。また、半導体基板のサイズは、特に限定されるものではないが、半導体基板に薬液を塗布する塗布装置の仕様、及び誘導結合プラズマ質量分析を実施する装置の仕様等、測定する薬液の量に応じて適宜決定されるものである。
【0029】
次に、半導体基板の表面上の欠陥の有無を測定し、半導体基板の表面上の欠陥の半導体基板上の位置情報を得る(ステップS14)。位置情報に基づいて、半導体基板の表面上の欠陥に対してレーザー光を照射して、照射により得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析をする(工程3X、ステップS16)。ステップS16(工程3X)の誘導結合プラズマ質量分析により、微小な欠陥の元素が特定される。また、微小な欠陥のサイズも特定される。誘導結合プラズマ質量分析により、薬液における欠陥中の質量分析データが得られる。薬液の質量分析データは、誘導結合プラズマ質量分析により特定される欠陥の元素の情報と、欠陥のサイズの情報とを含む。このようにして薬液を検査でき、薬液の検査方法では、薬液中の微小異物の分析が可能である。
【0030】
薬液の半導体基板への塗布後に、上述の誘導結合プラズマ質量分析をする一連の工程(工程3X、ステップS14及びS16)は、後に詳細に説明する。
なお、薬液の検査方法では、薬液を半導体基板に塗布する前に、使用する半導体基板の表面上の欠陥の有無を測定する工程を有することが好ましい。この場合、欠陥の位置情報とサイズを測定する。これにより、測定された欠陥を、半導体基板由来のものと、薬液の由来のものとに区別できる。
【0031】
誘導結合プラズマ質量分析(工程3X、ステップS14及びS16)により、微小な欠陥の元素を特定でき、これにより、微小異物を測定でき、薬液を検査できる。
誘導結合プラズマ質量分析のために、薬液を半導体基板に塗布して、薬液中の微小異物を分析できる。誘導結合プラズマ質量分析では、薬液は半導体基板上にある状態でもよく、薬液を半導体基板に塗布した後に薬液中に含まれる溶媒を揮発又は蒸発させて薬液中に含まれる溶媒が半導体基板上にない状態で、誘導結合プラズマ質量分析を実施してもよい。
【0032】
薬液の検査方法は、さらに工程3Xで得られた欠陥中の質量分析データから、欠陥中の金属元素の有無を判定する工程4X(ステップS18)を有してもよい。金属元素の有無により薬液を検査することができる。
さらに、工程4X(ステップS18)の後に、金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5X(ステップS20)を有してもよい。金属元素が含まれる欠陥の数を用いて、薬液を検査することができる。
薬液の検査方法では、誘導結合プラズマ質量分析(工程3X、ステップS16)により、欠陥の元素が特定されている。ステップS18では、特定された欠陥の元素の情報が含まれる質量分析データから、金属元素を選び出すことを試みる。質量分析データから、金属元素が選び出されなければ、金属元素がないと判定する。一方、質量分析データから、金属元素が選び出された場合、金属元素があると判定する。
ステップS20では、ステップS18で金属元素があると判定された場合、金属元素が含まれる欠陥の数を測定する。例えば、金属元素が含まれる欠陥の数をカウントすることにより、金属元素が含まれる欠陥の数が測定される。
【0033】
また、金属元素の有無を判定する工程4X(ステップS18)を実施することなく、工程3X(ステップS16)で得られた欠陥中の質量分析データに基づいて、欠陥中に金属元素が含まれる欠陥の数を測定(工程5X、ステップS20)してもよい。この場合、ステップS20では、特定された欠陥の元素の情報が含まれる質量分析データから、金属元素を選び出し、選び出された金属元素の数をカウントすることにより、金属元素が含まれる欠陥の数を測定する。これによっても、金属元素が含まれる欠陥の数を用いて、薬液を検査することができる。
【0034】
[薬液の製造方法]
上述の薬液の検査方法を、薬液の製造方法に利用することができる。薬液の製造方法に、誘導結合プラズマ質量分析の結果を利用する。
また、例えば、薬液の製造方法では、予め薬液の欠陥の数の閾値又は許容範囲を設定しておく。製造した薬液に対して、上述の薬液の検査方法により、薬液の欠陥の数を測定する。測定された薬液の欠陥の数と、閾値又は許容範囲とを比較して、欠陥の数が閾値以下又は許容範囲内であるものを合格とし、製品とする。一方、欠陥の数が閾値を超えるか又は許容範囲外のものを不合格とし、製品としない。薬液の欠陥の数の許容範囲は、例えば、0.07個/cm2以下である。薬液の欠陥の数の許容範囲としては、0.0001~10個/cm2が好ましく、0.0002~1個/cm2がより好ましく、0.0005~0.5個/cm2がさらに好ましい。
【0035】
[薬液の管理方法]
図2は本発明の実施形態の薬液の管理方法の一例を示すフローチャートである。なお、薬液の管理方法において、上述の薬液の検査方法と同一工程については、その詳細な説明は省略する。
図2に示す薬液の管理方法は、薬液の検査方法に比して、管理対象である薬液を用意する(工程1X、ステップS10)点、上述の工程5X(ステップS20)で得られる欠陥の数が許容範囲内であるかどうかを判定する工程6X(ステップS22)を有する点以外は、薬液の検査方法と同様の工程を有する。
薬液を用意する(工程1X、ステップS10)工程は、検査対象であるか、管理対象であるかの違いはあるが、実施的に薬液としては同じである。このため、欠陥の数が許容範囲内であるかどうかを判定する工程6X(ステップS22)について説明する。
【0036】
薬液の管理方法では、予め薬液の欠陥の数の閾値又は許容範囲を設定しておく。薬液の欠陥の数の閾値は、例えば、対象となる薬液の前回の製造ロットの薬液の欠陥の数に基づいて設定されるが、これに限定されるものではなく、目標値でも設定値でもよく、複数の製造ロットの平均値でもよい。薬液の欠陥の数の許容範囲は、例えば、0.07個/cm2以下である。薬液の欠陥の数の許容範囲としては、0.0001~10個/cm2が好ましく、0.0002~1個/cm2がより好ましく、0.0005~0.5個/cm2がさらに好ましい。
ステップS22(工程6X)は、上述のステップS20で得られた金属元素が含まれる欠陥の数と、薬液の欠陥の数の閾値又は許容範囲とを比較する。例えば、測定された薬液の欠陥の数が、閾値以下又は許容範囲内であれば、薬液を合格品とする(ステップS23)。一方、薬液の欠陥の数の閾値を超えるか又は許容範囲外であれば、薬液を不合格品とする(ステップS24)。このように薬液中の欠陥の数により、薬液の品質を管理することができる。薬液の管理方法では、薬液中に含まれる微小異物が微量である場合でも、薬液の品質管理が可能である。
【0037】
[半導体デバイスの製造方法の第1の例]
図3は本発明の実施形態の半導体デバイスの製造方法の第1の例を示すフローチャートである。なお、半導体デバイスの製造方法の第1の例において、薬液の検査方法と同一工程については、その詳細な説明は省略する。
図3に示す半導体デバイスの製造方法の第1の例は、薬液の検査方法に比して、半導体デバイスの製造に用いる薬液を用意する(工程1X、ステップS10)点、上述の工程5X(ステップS20)で得られる欠陥の数が許容範囲内であるかどうかを判定する工程6X(ステップS26)と、工程6Xで許容範囲内と判定された薬液を用いて、半導体デバイスの製造を行う工程7X(ステップS27)とを含む点以外は、薬液の検査方法と同様の工程を有する。
薬液を用意する(工程1X、ステップS10)工程は、検査対象であるか、半導体デバイスの製造に用いるかの違いはあるが、実施的に薬液としては同じである。このため、欠陥の数が許容範囲内であるかどうかを判定する工程6X(ステップS22)について説明する。
【0038】
半導体デバイスの製造方法では、予め薬液の欠陥の数の閾値又は許容範囲を設定しておく。薬液の欠陥の数の閾値又は許容範囲は、例えば、対象となる薬液の前回の製造ロットの薬液の欠陥の数に基づいて設定されるが、これに限定されるものではなく、目標値でも設定値でもよく、複数の製造ロットの平均値でもよい。薬液の欠陥の数の許容範囲は、例えば、0.07個/cm2以下である。薬液の欠陥の数の許容範囲としては、0.0001~10個/cm2が好ましく、0.0002~1個/cm2がより好ましく、0.0005~0.5個/cm2がさらに好ましい。
ステップS26は、上述のステップS20で得られた金属元素が含まれる欠陥の数と、薬液の欠陥の数の閾値又は許容範囲とを比較する。例えば、測定された薬液の欠陥の数が、閾値以下又は許容範囲内であれば、半導体デバイスの製造方法に利用する(ステップS27)。
なお、ステップS26(工程6X)において、測定された薬液の欠陥の数が閾値を超えると判定された薬液、すなわち、測定された薬液の欠陥の数が許容範囲外と判定された薬液は、半導体デバイスの製造に用いない(ステップS28)。このように半導体デバイスの製造方法では、選別された薬液が半導体デバイスの製造工程に利用されて、半導体デバイスが製造される。半導体デバイスの製造工程は、薬液の種類に応じたものであり、例えば、薬液が現像液であれば、リソグラフィ工程に利用される。
半導体デバイスの製造方法において、薬液は、半導体デバイスの製造に係るものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、プリウエット液、現像液、リンス液、又は洗浄液である。
【0039】
半導体デバイスの製造工程において使用されるレジスト組成物は、異物等の欠陥がないことが求められている。このため、レジスト組成物について検査、及び管理が重要になってきており、レジスト組成物中の微小異物を分析できることが望まれている。以下、レジスト組成物の検査方法及びレジスト組成物の管理方法について説明する。
【0040】
[レジスト組成物の検査方法]
図4は本発明の実施形態のレジスト組成物の検査方法の一例を示すフローチャートである。レジスト組成物の検査方法は、上述の薬液の検査方法に比して、検査対象がレジスト組成物である点が異なり、それ以外の工程は、基本的に薬液の検査方法と同様の工程を有する。
レジスト組成物の検査方法は、検査対象であるレジスト組成物を用意する(工程1Y、ステップS30)。
次に、レジスト組成物を半導体基板(図示せず)上に塗布する(工程2Y、ステップS32)。レジスト組成物の半導体基板(図示せず)上に塗布した後に、膜が形成されて、半導体基板上にレジスト組成物の塗膜が形成される。
レジスト組成物の半導体基板への塗布は、特に限定されるものではないが、例えば、コーターデベロッパーが用いられる。
また、半導体基板は、特に限定されるものではなく、上述の薬液の検査方法に用いた半導体基板を利用できる。また、半導体基板のサイズについても、上述の薬液の検査方法と同様に、特に限定されるものではないが、半導体基板にレジスト組成物を塗布する塗布装置の仕様、及び誘導結合プラズマ質量分析を実施する装置の仕様等、測定するレジスト組成物の量に応じて適宜決定されるものである。
【0041】
次に、レジスト組成物の塗膜中の欠陥の有無を測定し、レジスト組成物の塗膜中の欠陥の半導体基板上の位置情報を得る(ステップS34)。位置情報に基づいて、半導体基板の表面上におけるレジスト組成物の塗膜中の欠陥に対してレーザー光を照射して、照射により得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析をする(工程3Y、ステップS36)。ステップS36の誘導結合プラズマ質量分析により、微小な欠陥の元素が特定される。また、微小な欠陥のサイズも特定される。誘導結合プラズマ質量分析により、レジスト組成物における欠陥中の質量分析データが得られる。レジスト組成物の質量分析データは、誘導結合プラズマ質量分析により特定される欠陥の元素の情報と、欠陥のサイズの情報を含む。このようにしてレジスト組成物を検査できる。レジスト組成物の検査方法では、レジスト組成物中の微小異物の分析が可能である。
【0042】
レジスト組成物の半導体基板への塗布後に、上述の誘導結合プラズマ質量分析をする一連の工程(工程3Y、ステップS34及びS36)は、後に詳細に説明する。
なお、レジスト組成物の検査方法では、レジスト組成物を半導体基板に塗布する前に、使用する半導体基板の表面上の欠陥の有無を測定する工程を有することが好ましい。この場合、欠陥の位置情報とサイズを測定する。これにより、測定された欠陥を、半導体基板由来のものと、レジスト組成物の由来のものとに区別できる。
【0043】
誘導結合プラズマ質量分析(工程3Y、ステップS34及びS36)により、微小な欠陥の元素を特定でき、これにより、微小異物を測定でき、レジスト組成物を検査できる。
誘導結合プラズマ質量分析のために、レジスト組成物を半導体基板に塗布して、レジスト組成物中の微小異物を分析できる。例えば、レジスト組成物が半導体基板上に塗膜の状態で誘導結合プラズマ質量分析が実施される。レジスト組成物の塗膜中の欠陥が測定される。なお、レジスト組成物の塗膜中の欠陥とは、レジスト組成物に意図せずに含まれる微量異物に由来するものであり、レジスト組成物の塗膜中の欠陥は、レジスト組成物の欠陥と同じ意味である。
【0044】
レジスト組成物の検査方法は、さらに工程3Yで得られた欠陥中の質量分析データから、欠陥中の金属元素の有無を判定する工程4Y(ステップS38)を有してもよい。金属元素の有無によりレジスト組成物を検査することができる。
さらに、工程4Y(ステップS38)の後に、金属元素が含まれる欠陥の数を測定する工程5Y(ステップS40)とを有してもよい。金属元素が含まれる欠陥の数を用いて、レジスト組成物を検査することができる。
レジスト組成物の検査方法では、誘導結合プラズマ質量分析(工程3Y、ステップS36)により、欠陥の元素が特定されている。ステップS38では、特定された欠陥の元素の情報が含まれる質量分析データから、金属元素を選び出すことを試みる。質量分析データから、金属元素が選び出されなければ、金属元素がないと判定する。一方、質量分析データから、金属元素が選び出された場合、金属元素があると判定する。
ステップS40では、ステップS38で金属元素があると判定された場合、金属元素が含まれる欠陥の数を測定する。例えば、金属元素が含まれる欠陥の数をカウントすることにより、金属元素が含まれる欠陥の数が測定される。
【0045】
金属元素の有無を判定する工程4Y(ステップS38)を実施することなく、工程3Y(ステップS36)で得られた欠陥中の質量分析データに基づいて、欠陥中に金属元素が含まれる欠陥の数を測定(工程5Y、ステップS40)してもよい。この場合、ステップS40では、特定された欠陥の元素の情報が含まれる質量分析データから、金属元素を選び出し、選び出された金属元素の数をカウントすることにより、金属元素が含まれる欠陥の数を測定する。これによっても、金属元素が含まれる欠陥の数を用いて、レジスト組成物を検査することができる。
【0046】
[レジスト組成物の製造方法]
上述のレジスト組成物の検査方法を、レジスト組成物の製造方法に利用することができる。レジスト組成物の製造方法に、誘導結合プラズマ質量分析の結果を利用する。
また、例えば、レジスト組成物の製造方法では、予めレジスト組成物の欠陥の数の閾値又は許容範囲を設定しておく。製造したレジスト組成物に対して、上述のレジスト組成物の検査方法により、レジスト組成物の欠陥の数を測定する。測定されたレジスト組成物の欠陥の数と、閾値又は許容範囲とを比較して、欠陥の数が閾値以下又は許容範囲内であるものを合格とし、レジスト組成物とする。一方、欠陥の数が閾値を超えるか又は許容範囲外のものを不合格とし、レジスト組成物としない。レジスト組成物の欠陥の数の許容範囲は、例えば、0.07個/cm2以下である。レジスト組成物の欠陥の数の許容範囲としては、0.0001~10個/cm2が好ましく、0.0005~5個/cm2がより好ましく、0.001~1個/cm2がさらに好ましい。
【0047】
[レジスト組成物の管理方法]
図5は本発明の実施形態のレジスト組成物の管理方法の一例を示すフローチャートである。レジスト組成物の管理方法は、上述の薬液の管理方法に比して、検査対象がレジスト組成物である点が異なり、薬液の管理方法と同様の工程を有する。
図5に示すレジスト組成物の管理方法は、レジスト組成物の検査方法に比して、管理対象であるレジスト組成物を用意する(工程1Y、ステップS30)点、上述の工程5Y(ステップS40)で得られる欠陥の数が許容範囲内であるかどうかを判定する工程6Y(ステップS42)を有する点以外は、レジスト組成物の検査方法と同様の工程を有する。
レジスト組成物を用意する(工程1Y、ステップS30)工程は、検査対象であるか、管理対象であるかの違いはあるが、実施的にレジスト組成物としては同じである。このため、欠陥の数が許容範囲内であるかどうかを判定する工程6Y(ステップS42)について説明する。
【0048】
レジスト組成物の管理方法では、予めレジスト組成物の欠陥の数の閾値又は許容範囲を設定しておく。レジスト組成物の欠陥の数の閾値は、例えば、対象となるレジスト組成物の前回の製造ロットのレジスト組成物の欠陥の数に基づいて設定されるが、これに限定されるものではなく、目標値でも設定値でもよく、複数の製造ロットの平均値でもよい。レジスト組成物の欠陥の数の許容範囲は、例えば、0.07個/cm2以下である。レジスト組成物の欠陥の数の許容範囲としては、0.0001~10個/cm2が好ましく、0.0005~5個/cm2がより好ましく、0.001~1個/cm2がさらに好ましい。
ステップS42(工程6Y)は、上述のステップS40で得られた金属元素が含まれる欠陥の数と、レジスト組成物の欠陥の数の閾値又は許容範囲とを比較する。例えば、測定されたレジスト組成物の欠陥の数が、閾値以下又は許容範囲内であれば、レジスト組成物を合格品とする(ステップS43)。一方、レジスト組成物の欠陥の数が閾値を超えるか又は許容範囲外であれば、レジスト組成物を不合格品とする(ステップS44)。このように、レジスト組成物中の欠陥の数により、レジスト組成物の品質を管理することができる。
【0049】
[半導体デバイスの製造方法の第2の例]
図6は本発明の実施形態の半導体デバイスの製造方法の第2の例を示すフローチャートである。なお、半導体デバイスの製造方法の第2の例において、レジスト組成物の検査方法と同一工程については、その詳細な説明は省略する。半導体デバイスの製造方法の第2の例は、半導体デバイスの製造方法の第1の例に比して、薬液に代えてレジスト組成物を用いた製造方法である。
図6に示す半導体デバイスの製造方法の第2の例は、レジスト組成物の検査方法に比して、半導体デバイスの製造に用いるレジスト組成物を用意する(工程1Y、ステップS30)点、上述の工程5Y(ステップS40)で得られる欠陥の数が許容範囲内であるかどうかを判定する工程6Y(ステップS42)と、工程6Yで許容範囲内と判定されたレジスト組成物を用いて、半導体デバイスの製造を行う工程7Y(ステップS46)とを含む点以外は、レジスト組成物の検査方法と同様の工程を有する。
レジスト組成物を用意する(工程1Y、ステップS30)工程は、検査対象であるか、半導体デバイスの製造に用いるかの違いはあるが、実施的にレジスト組成物としては同じである。このため、欠陥の数が許容範囲内であるかどうかを判定する工程6Y(ステップS42)について説明する。
【0050】
半導体デバイスの製造方法では、予めレジスト組成物の欠陥の数の閾値又は許容範囲を設定しておく。レジスト組成物の欠陥の数の閾値又は許容範囲は、例えば、対象となるレジスト組成物の前回の製造ロットのレジスト組成物の欠陥の数に基づいて設定されるが、これに限定されるものではなく、目標値でも設定値でもよく、複数の製造ロットの平均値でもよい。レジスト組成物の欠陥の数の許容範囲は、例えば、0.07個/cm2以下である。レジスト組成物の欠陥の数の許容範囲としては、0.0001~10個/cm2が好ましく、0.0005~5個/cm2がより好ましく、0.001~1個/cm2がさらに好ましい。
ステップS42は、上述のステップS40で得られた金属元素が含まれる欠陥の数と、レジスト組成物の欠陥の数の閾値又は許容範囲とを比較する。例えば、測定されたレジスト組成物の欠陥の数が、閾値以下又は許容範囲内であれば、半導体デバイスの製造方法に利用する(ステップS46)。
なお、工程6Y(ステップS42)において、測定されたレジスト組成物の欠陥の数が閾値を超えると判定、すなわち、測定されたレジスト組成物の欠陥の数が許容範囲外と判定されたレジスト組成物は、半導体デバイスの製造に用いない(ステップS48)。このように半導体デバイスの製造方法では、選別されたレジスト組成物が半導体デバイスのリソグラフィ工程に利用されて、半導体デバイスが製造される。
【0051】
[半導体製造装置の汚染状態確認方法]
半導体製造装置においても、汚染状況は、製造する製品の性能又は品質等に影響を及ぼすことから微小異物を管理することが望まれている。半導体製造装置において微小異物を管理するために、特に、微細化及び高集積化が進んだ半導体デバイスの不良品を発生させる、微小異物の測定及びその元素分析が望まれている。以下、半導体製造装置の汚染状態確認方法について説明する。
図7は本発明の実施形態の半導体製造装置の汚染状態確認方法の一例を示すフローチャートである。
図7に示す半導体製造装置の汚染状態確認方法は、まず、薬液を用意する(工程1Z、ステップS50)。薬液は、半導体製造装置の洗浄に用いられるものであり、特に限定されるものではないが、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、イソプロパノール(IPA)、酢酸ブチル(nBA)、シクロヘキサノン(CHN)、乳酸エチル(EL)、メチルエチルケトン(MEK)、ガンマブチロラクトン(GBL)、2-ヘプタノンあるいはそれらを任意の比率で混合したものが挙げられる。
【0052】
次に、薬液を用いて半導体製造装置を洗浄する(工程2Z、ステップS52)。洗浄後の薬液を回収する。
半導体製造装置の洗浄方法は、特に限定されるものではないが、例えば、薬液を半導体装置の配管内に通したり、チャンバー等の容器内に薬液を噴射する方法が挙げられる。
工程2Z(ステップS52)の洗浄後の薬液を半導体基板上に塗布する(工程3Z、ステップS54)。
洗浄後の薬液の半導体基板への塗布は、特に限定されるものではないが、例えば、コーターデベロッパーが用いられる。
また、半導体基板は、特に限定されるものではないが、例えば、シリコン基板が用いられる。また、半導体基板のサイズは、特に限定されるものではないが、半導体基板に洗浄後の薬液を塗布する塗布装置の仕様、及び誘導結合プラズマ質量分析を実施する装置の仕様等、測定する洗浄後の薬液の量に応じて適宜決定されるものである。
【0053】
次に、半導体基板の表面上の欠陥の有無を測定し、半導体基板の表面上の欠陥の半導体基板上の位置情報を得る(ステップS56)。位置情報に基づいて、半導体基板の表面上の欠陥に対してレーザー光を照射して、照射により得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析する(工程4Z、ステップS58)。ステップS58の誘導結合プラズマ質量分析により、微小な欠陥の元素が特定される。また、微小な欠陥のサイズも特定される。これにより、半導体製造装置の汚染状態を確認できる。
【0054】
洗浄後の薬液の半導体基板への塗布後に、上述の誘導結合プラズマ質量分析をする一連の工程(工程4Z、ステップS56及びS58)は、後に詳細に説明する。
なお、半導体製造装置の汚染状態確認方法では、洗浄後の薬液を半導体基板に塗布する前に、使用する半導体基板の表面上の欠陥の有無を測定する工程を有することが好ましい。この場合、欠陥の位置情報とサイズを測定する。これにより、測定された欠陥を、半導体基板由来のものと、洗浄後の薬液の由来のものとに区別できる。
【0055】
次に、工程4Z(ステップS58)で得られた欠陥中の質量分析データから、欠陥中の金属元素の有無を判定する工程5Z(ステップS60)を有する。
誘導結合プラズマ質量分析(工程4Z、ステップS58)により、欠陥の元素が特定されている。ステップS58では、特定された欠陥の元素の情報が含まれる質量分析データから、金属元素を選び出すことを試みる。質量分析データから、金属元素が選び出されなければ、金属元素がないと判定する。一方、質量分析データから、金属元素が選び出された場合、金属元素があると判定する。
ステップS60(工程5Z)において、金属元素がないと判定された場合、半導体製造装置は汚染が低く、半導体製造装置を利用できる(ステップS66)。
一方、金属元素があると判定された場合、半導体製造装置は汚染状況が悪く、半導体製造装置は不使用であると判定される(ステップS68)。これにより金属元素が含まれる欠陥の数を用いて、半導体製造装置の汚染状況を判定することができる。このように、半導体製造装置の汚染状態確認方法では、洗浄後の薬液中に含まれる微小異物が微量である場合でも、半導体製造装置中の微小異物の管理が可能である。
なお、金属元素があると判定された場合、金属元素が含まれる欠陥の数を測定することもできる(工程6Z、ステップS62)。例えば、金属元素が含まれる欠陥の数をカウントすることにより、金属元素が含まれる欠陥の数が測定される。
【0056】
金属元素の有無を判定する工程5Z(ステップS60)を実施することなく、工程4Z(ステップS58)で得られた欠陥中の質量分析データに基づいて、欠陥中に金属元素が含まれる欠陥の数を測定(工程6Z、ステップS62)してもよい。この場合、ステップS62では、特定された欠陥の元素の情報が含まれる質量分析データから、金属元素を選び出し、選び出された金属元素の数をカウントすることにより、金属元素が含まれる欠陥の数を測定する。これによっても、金属元素が含まれる欠陥の数を用いて、半導体製造装置の汚染状況を判定することができる。
【0057】
半導体製造装置の汚染状態確認方法では、例えば、予め洗浄後の薬液の欠陥の数の閾値又は許容範囲を設定しておく。洗浄後の薬液の欠陥の数の閾値又は許容範囲は、要求される半導体製造装置の清浄度に応じて適宜決定されるものであり、薬液の欠陥の数の目標値等が用いられる。薬液の欠陥の数の許容範囲は、例えば、0.07個/cm2以下である。薬液の欠陥の数の許容範囲としては、0.0001~10個/cm2が好ましく、0.0002~1個/cm2がより好ましく、0.0005~0.5個/cm2がさらに好ましい。
ステップS64は、上述のステップS62で得られた金属元素が含まれる欠陥の数と、洗浄後の薬液の欠陥の数の閾値又は許容範囲とを比較する。例えば、測定された洗浄後の薬液の欠陥の数が、閾値以下又は許容範囲内であれば、半導体製造装置は汚染が低く、半導体製造装置を利用する(ステップS66)。
なお、ステップS64において、薬液の欠陥の数が閾値を超えると判定された場合、すなわち、薬液の欠陥の数が許容範囲外と判定された場合、半導体製造装置は汚染状況が悪く、半導体製造装置を使用しない(ステップS68)。
【0058】
上述のように半導体製造装置を使用しない判定された場合、再度、半導体製造装置の洗浄を実施して、洗浄後の薬液が、半導体製造装置を利用する(ステップS66)と判定されるまで、半導体製造装置を、繰り返し洗浄してもよい。
なお、半導体製造装置の汚染状態確認方法では、半導体製造装置を洗浄する前の薬液について欠陥の有無を測定する工程を有することが好ましい。この場合、欠陥の位置情報とサイズを測定する。これにより、洗浄後の薬液の欠陥を、洗浄前のものと区別できる。
【0059】
以上の説明において、比較、及び判定は、例えば、コンピューターに各種の数値が入力されて、閾値等と比較され、閾値等に基づいて判定される。このように比較、及び判定は、例えば、コンピューターにより実行される。
また、特定された欠陥の元素の情報が含まれる質量分析データから、金属元素を選び出すことは、コンピューターにおいて、記憶された質量分析データの元素の情報に対して、予め記憶されていた金属元素に一致するものを特定し、特定されたものを金属元素として、質量分析データから選び出すことである。
【0060】
以下、分析装置の具体例について説明する。
[分析装置の第1の例]
図8は本発明の実施形態の分析装置の第1の例を示す模式図であり、
図9は本発明の実施形態の分析装置の第1の例の分析ユニットの一例を示す模式図である。
図8に示す分析装置10は、後に詳細に説明する表面欠陥測定部20と、分析部30とを有する。分析装置10は、半導体基板50を測定対象として、半導体基板の表面上の欠陥の有無の測定と、半導体基板の表面上の欠陥の分析を実施する。
なお、上述の薬液又はレジスト組成物の検査等の際に、半導体基板50上に、上述の薬液又はレジスト組成物を塗布する。薬液は半導体基板に塗布した後に薬液中に含まれる溶媒を揮発又は蒸発させて薬液中に含まれる溶媒が半導体基板上にない状態でもよい。レジスト組成物は塗布後、膜を形成して、半導体基板上に塗膜の状態である。
【0061】
分析装置10は、第1搬送室12a、測定室12b、第2搬送室12c、及び分析室12dを有し、第1搬送室12a、測定室12b、第2搬送室12c、及び分析室12dの順で連続して配置されている。第1搬送室12a、測定室12b、第2搬送室12c、及び分析室12dは、それぞれ壁12hで区画されているが、測定対象である半導体基板50を移動可能なように扉(図示せず)等が設けられており、半導体基板50を通過させるときに扉を開くようにしてもよい。
【0062】
分析装置10では、第1搬送室12aに、分析装置10の外部から半導体基板50が搬送されて、第1搬送室12aから測定室12bに搬送されて、測定室12b内で半導体基板50の表面欠陥が測定される。次に、表面欠陥が測定された半導体基板50が測定室12bから第2搬送室12cに搬送され、さらに分析室12dに搬送されて、分析部30により、表面欠陥測定部20での半導体基板50の表面50a上の欠陥の有無の測定結果に基づき、半導体基板50の表面欠陥が分析される。
分析装置10では、半導体基板50を外気に晒されないようにするために、第1搬送室12a、測定室12b、第2搬送室12c、及び分析室12dの内部を特定の雰囲気にすることができる。例えば、真空ポンプを設けて、第1搬送室12a、測定室12b、第2搬送室12c、及び分析室12dの内部の気体を排気して減圧雰囲気としてもよい。また、第1搬送室12a、測定室12b、第2搬送室12c、及び分析室12dの内部に窒素ガス等の不活性ガスを供給して、内部を不活性ガス雰囲気としてもよい。
【0063】
第1搬送室12aは、上述のように、分析装置10の外部から搬送された半導体基板50を測定室12bに搬送する。第1搬送室12aは、側面に導入部12gが設けられている。収納容器13が導入部12gに設置される。導入部12gには、収納容器13との気密を保つために、シール部材(図示せず)が設けられている。
収納容器13は、例えば、内部に、複数の半導体基板50が、棚状に配置されて収納されている。半導体基板50は、例えば、円板状の基板である。
収納容器13は、例えば、FOUP(Front Opening Unified Pod)である。収納容器13を用いることにより、半導体基板50を外気に晒すことなく密閉した状態で、分析装置10に搬送することができる。これにより、半導体基板50の汚染を抑制できる。
【0064】
第1搬送室12aには、内部に搬送装置14が設けられている。搬送装置14は、収納容器13内の半導体基板50を、第1搬送室12aから隣接する測定室12bに搬送する。
搬送装置14は、収納容器13内から半導体基板50を取り出し、かつ測定室12bのステージ22に搬送することができれば、特に限定されるものではない。
図8に示す搬送装置14は、半導体基板50の外側を挟持する搬送アーム15と、搬送アーム15を駆動する駆動部(図示せず)とを有する。搬送アーム15は、取付部14aに取付けられており、回転軸C
1周りに回転自在である。なお、搬送アーム15は、半導体基板50を保持して、搬送することができれば、その構成は、半導体基板50の外側を挟持するものに、特に限定されるものではなく、半導体ウエハのプロセス間の搬送に用いられるものを適宜利用可能である。
搬送装置14は、取付部14aが高さ方向Vに移動することができ、搬送アーム15は、回転軸C
1に平行な方向である高さ方向Vに移動可能である。取付部14aが高さ方向Vに移動することにより、搬送アーム15の高さ方向Vの位置を変えることができる。
【0065】
(表面欠陥測定部)
測定室12b内で、上述のように半導体基板50の表面欠陥が測定される。測定室12bの内部に表面欠陥測定部20が設けられている。
表面欠陥測定部20は、半導体基板50の表面50a上の欠陥の有無を測定し、半導体基板50の表面50a上の欠陥について半導体基板50の表面50a上の位置情報を得るものである。
表面欠陥測定部20は、半導体基板50を載置するステージ22と、半導体基板50の表面50a上に入射光Lsを入射させる入射部23と、入射光Lsを半導体基板50の表面50aに集光する集光レンズ24とを有する。
半導体基板50が載置されるステージ22は、回転軸C2周りに回転自在であり、半導体基板50の高さ方向Vにおける位置を変えることができ、かつ高さ方向Vと直交する方向Hの位置を変えることができる。
ステージ22により、半導体基板50の表面50aにおける入射光Lsの照射位置を変えることができる。これにより、半導体基板50の表面50aの特定領域、又は表面全域に入射光Lsを順次照射して、半導体基板50の表面50aの異物等の欠陥の検出ができる。
ここで、半導体基板50の表面50aの異物とは、上述の薬液又はレジスト組成物に由来するものである。
【0066】
入射部23が照射する入射光Lsの波長は、特に限定されるものではない。入射光Lsは、例えば、紫外光であるが、可視光又はその他の光であってもよい。ここで、紫外光とは400nm未満の波長域の光のことであり、可視光とは、400~800nmの波長域の光のことである。
入射光Lsの入射角度は、半導体基板50の表面50aと水平な全方向を0°とし、半導体基板50の表面50aと垂直な方向を90°とする。このとき、入射光Lsの入射角度を最小0°から最大90°で規定すると、入射光Lsの入射角度は0°以上90°以下であり、0°超90°未満であることが好ましい。
【0067】
表面欠陥測定部20は、入射光Lsが、半導体基板50の表面50aで反射又は散乱することにより放射された放射光を受光する受光部を有する。
図8に示す表面欠陥測定部20では、例えば、2つの受光部25、26を有する。受光部25、26のいずれかに放射光が受光された場合、半導体基板50の表面50a上の欠陥が有るとされ、放射光が生じない場合、半導体基板50の表面50a上の欠陥は無いとされる。このように、半導体基板50の表面50a上の欠陥の有無が測定される。
受光部25は、半導体基板50の周囲に配置されている。受光部26は、半導体基板50の表面50aの上方に配置されている。半導体基板50の表面50aと、受光部26との間に、集光レンズ27が設けられている。集光レンズ27により、入射光Lsにより生じた放射光が受光部26に集光される。集光レンズ27により、放射光を効率よく受光部26に集光させることができる。なお、受光部の数は、2つに特に限定されるものではない。表面欠陥測定部20では、受光部25と受光部26とのうち、いずれか1つの構成でもよく、3つ以上の受光部を有する構成でもよい。
受光部25は、放射光を低角度側で受光するものである。低角度側での受光とは、上述の入射角度において、0°以上80°以下の範囲で受光することである。
受光部26は、放射光を高角度側で受光するものである。高角度側での受光とは、上述の入射角度において、80°超90°以下の範囲で受光することである。
受光部25及び受光部26は、例えば、光電子倍増管等の光センサーで構成される。
また、受光部25及び受光部26は、いずれも非偏光、又は偏光を受光できるものである。
【0068】
表面欠陥測定部20は、演算部28及び記憶部29を有する。
演算部28は、受光部25、26が受光した放射光の情報に基づき、検出された欠陥の位置情報、及び欠陥のサイズを算出する。欠陥の位置情報とは、半導体基板50の表面50aにおける欠陥の位置座標の情報のことである。位置座標は、例えば、複数の半導体基板50に共通した基準位置を予め設定しておき、基準位置の原点として設定されるものである。
【0069】
入射部23が照射した入射光Lsが半導体基板50の表面50aの欠陥により反射又は散乱することによって放射された放射光を受光部25、26で受光する。受光部25、26では、放射光が輝点として検出される。演算部28において、受光部25、26で、欠陥による放射光の情報を含む輝点のサイズから、標準粒子のサイズに基づき、輝点をもたらした欠陥のサイズ、すなわち、検出サイズを算出する。標準粒子のサイズに基づく検出サイズの算出は、市販の表面検査装置に備えられている演算装置により、又は公知の演算方法により行われる。演算部28は、入射光Lsの照射位置の位置情報を制御部42から取得し、例えば、受光部25、26で、欠陥による放射光の情報に基づいて、半導体基板50の表面50aにおける欠陥の位置情報、及び欠陥のサイズの情報を得る。得られた半導体基板50の表面50aにおける欠陥の位置情報、及び欠陥のサイズの情報は記憶部29に記憶される。
記憶部29は、半導体基板50の表面50aの異物等の欠陥の位置情報、及びサイズの情報を記憶することができれば、特に限定されるものではなく、例えば、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ハードディスク、又はSSD(Solid State Drive)の各種の記憶媒体を用いることができる。
【0070】
ここで、表面欠陥測定部20では、制御部42により、ステージ22、及び入射部23が制御される。また、演算部28も制御部42により制御される。
制御部42は、入射部23が照射した入射光Lsの半導体基板50の表面50aにおける位置情報を取得している。制御部42は、半導体基板50の表面50aにおいて入射光Lsを照射していない領域に、入射光Lsを照射するためにステージ22を駆動して、半導体基板50の表面50aの照射位置を変える。
表面欠陥測定部20では、半導体基板50の表面50aの全領域に、入射光Lsを照射して、例えば、2つの受光部25、26が受光した放射光の情報に基づき、各照射位置での、半導体基板50の表面50aにおける欠陥の位置情報、及び欠陥のサイズの情報を得る。これにより、半導体基板50の表面50a全面での欠陥の位置情報、及び欠陥のサイズの情報を得ることができる。すなわち、半導体基板50の表面50aでの2次元的な欠陥の位置情報と、欠陥のサイズの情報とが得られる。
表面欠陥測定部20による測定時、測定室12bの雰囲気は、特に限定されるものではなく、上述のように減圧雰囲気でも、窒素ガス雰囲気でもよい。
なお、表面欠陥測定部20としては、例えば、表面検査装置(SurfScanSP5;KLA株式会社製)を用いることができる。
【0071】
第2搬送室12cには、内部に搬送装置16が設けられている。搬送装置16は、測定室12b内で、表面欠陥測定部20により表面欠陥が測定された半導体基板50を、測定室12bから分析室12dに搬送するものである。
搬送装置16は、上述の搬送装置14と同じ構成のものを用いることができる。搬送装置16は、半導体基板50の外側を挟持する搬送アーム15と、搬送アーム15を駆動する駆動部(図示せず)とを有する。搬送アーム15は、取付部16aに取付けられており、回転軸C1周りに回転自在である。
搬送装置16は、取付部16aが高さ方向Vに移動することができ、回転軸C1に平行な方向である高さ方向Vに移動可能である。搬送アーム15は、搬送アーム15が取り付けられた取付部16aが高さ方向Vに移動することにより、高さ方向Vの位置を変えることができる。
【0072】
(分析部)
分析室12dは、内部に分析部30が設けられている。分析部30は、LA-ICP-MS(Laser Ablation-Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer)を用いて分析を行う。
ICP-MS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer)は、誘導結合によって生成される約10000℃のアルゴンガスのプラズマを利用して液体試料中の元素をイオン化し、質量分析を行うものである。LA-ICP-MSは、レーザーアブレーション部(LA部)においてレーザー光を、半導体基板50の表面50aの欠陥51に照射し、照射により得られる分析試料をキャリアガスによりICP-MS部(誘導結合プラズマ質量分析部)に導入して分析試料に含まれる元素の定量分析を行うものである。
【0073】
分析部30は、半導体基板50が載置されるステージ32と、ステージ32に載置された半導体基板50を収納する容器部33とを有する。
容器部33に配管39を介して分析ユニット36が接続されている。半導体基板50は、全体が容器部33に収納された状態で分析される。半導体基板50が載置されるステージ32は、回転軸C3周りに回転自在であり、半導体基板50の高さ方向Vにおける位置を変えることができ、かつ高さ方向Vと直交する方向Hの位置を変えることができる。
ステージ32は、制御部42により制御される。制御部42は、半導体基板50の表面50aの欠陥51にレーザー光Laを照射するために、ステージ32を駆動して、半導体基板50の表面50a上での照射位置を変える。
ここで、半導体基板50の表面50aの欠陥51は、半導体基板50の表面50aに何も塗布又は形成されていなければ、半導体基板50そのものの欠陥51であり、半導体基板50由来の欠陥51である。しかしながら、上述のように薬液又はレジスト組成物の検査等の際に、半導体基板50上に薬液又はレジスト組成物を塗布した場合、欠陥51は、薬液由来又はレジスト組成物由来である。
【0074】
分析部30は、表面欠陥測定部20で測定された半導体基板50の表面50a上の欠陥51にレーザー光Laを照射する光源部34を有する。光源部34と、半導体基板50の表面50aとの間に、レーザー光Laを半導体基板50の表面50a上の欠陥51に集光する集光レンズ35が設けられている。
光源部34及び集光レンズ35は、容器部33の外部に設けられている。容器部33には、レーザー光Laが内部に透過するように、レーザー光Laが透過可能な窓部(図示せず)が設けられている。
光源部34は、フェムト秒レーザー、ナノ秒レーザー、ピコ秒レーザー、又はアト秒レーザー等が用いられる。フェムト秒レーザーとしては、例えば、Ti:Sapphireレーザーを用いることができる。
【0075】
分析部30は、キャリアガスを容器部33内に供給するキャリアガス供給部38を有する。
キャリアガス供給部38は、キャリアガスが貯留されるボンベ等の気体供給源(図示せず)と、気体供給源に接続されたレギュレータ(圧力調整器)と、キャリアガスの供給量を制御する調整弁(図示せず)とを有する。例えば、レギュレータと調整弁とはチューブで接続され、調整弁と容器部33とはパイプで接続されている。キャリアガスは、例えば、ヘリウムガス、又はアルゴンガスが用いられる。
また、分析部30は、クリーニングガスを容器部33内に供給するクリーニングガス供給部40を有する。クリーニングガス供給部40は、クリーニングガスが貯留されるボンベ等の気体供給源(図示せず)と、気体供給源に接続されたレギュレータ(圧力調整器)と、クリーニングガスの供給量を制御する調整弁(図示せず)とを有する。例えば、レギュレータと調整弁とはチューブで接続され、調整弁と容器部33とはパイプで接続されている。クリーニングガスは、例えば、ヘリウムガス、又はアルゴンガスが用いられる。
【0076】
また、容器部33にクリーニングガスを容器部33内から外部に流出させる流出部41が設けられている。流出部41は、例えば、パイプと、バルブとで構成される。バルブを開くことにより、クリーニングガスを容器部33内から外部に流出させることができる。
容器部33には、フラッシング処理を行うためにヒータ(図示せず)を設けてもよい。クリーニングガスを容器部33内に供給した状態でヒータにより容器部33内を加熱することにより、容器部33内の、例えば、アブレーションされた付着物等の異物、又は吸着ガス等を除去する。これにより、容器部33内の清浄度を高くでき、半導体基板50の汚染を抑制できる。なお、ヒータには、例えば、赤外線ランプ、又はキセノンフラッシュランプが用いられる。
また、フラッシング処理には、クリーニングガス以外に、キャリアガスを用いることもできる。
【0077】
<分析ユニット>
分析ユニット36は、上述のICP-MSを利用したものであり、半導体基板50の表面50a上の欠陥51にレーザー光Laを照射して、照射により得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析する。なお、ICPは、誘導結合プラズマの略であり、分析ユニット36では、高周波電磁誘導により維持された高温のプラズマによって測定対象物をイオン化させ、そのイオンを質量分析装置で検出することにより、原子種、及び検出された原子種の濃度を計測する。
分析ユニット36は、例えば、
図9に示すように、配管39からキャリアガスと共に導入された分析試料を、イオン化するプラズマを発生させるプラズマトーチ44と、このプラズマトーチ44の先端部近傍に位置するイオン導入部を有する質量分析部46とを有する。
【0078】
プラズマトーチ44は、例えば、3重管構造となっており、配管39からキャリアガスが導入される。また、プラズマトーチ44には、プラズマ形成用のプラズマガスが導入される。プラズマガスには、例えば、アルゴンガスが用いられる。
プラズマトーチ44には、高周波電源(図示せず)に接続された高周波コイル(図示せず)が設けられており、この高周波コイルに、例えば、27.12MHz、又は40.68MHz、1~2KW程度の高周波電流を印加することにより、プラズマトーチ44の内部にプラズマが形成される。
【0079】
質量分析部46においては、プラズマトーチ44で生じたイオンを、イオン導入部を介して、イオンレンズ部46a及び質量分析計部46b内に導入する。イオンレンズ部46a及び質量分析計部46b内は、真空ポンプ(図示せず)によって、プラズマトーチ44側のイオンレンズ部46aが低真空となるように、質量分析計部46bが高真空となるように減圧されている。
【0080】
イオンレンズ部46aは、イオンレンズ47が複数、例えば、3つ設けられている。イオンレンズ47は、質量分析計部46bに、イオンを分離するものである。
質量分析部46のイオンレンズ部46a内において、上述のプラズマの光とイオンをイオンレンズ47で分離してイオンのみを通過させる。
【0081】
質量分析計部46bは、イオンの質量電荷比毎にイオンを分離して検出器49で検出するものである。質量分析計部46bは、イオンレンズ部46aを通過したイオンを検出器49に反射させるリフレクトロン48と、イオンを検出する検出器49とを有する。リフレクトロン48は、イオンミラーとも呼ばれるものであり、静電場を用いて荷電粒子の飛行する向きを反転させる装置である。リフレクトロン48を用いることによって、同一の質量電荷比で異なる運動エネルギーをもった荷電粒子を時間軸上で収束させ、略同じ時間で検出器49に到達させることが可能となる。リフレクトロン48により、誤差が補償され、質量分解能を改善することができる。リフレクトロン48は、飛行時間質量分析計(TOF-MS)に用いられる公知のものを用いることができる。
【0082】
検出器49は、イオンを検出し、元素を特定できれば、特に限定されるものではなく、飛行時間質量分析計(TOF-MS)に用いられる公知のものを用いることができる。
分析ユニット36により、例えば、検出元素イオンの信号(図示せず)を、時間ごとにチャートとして表示させることができる(図示せず)。検出元素の濃度は、信号強度と対応する。
【0083】
図8に示すように分析装置10は、制御部42を有し、制御部42により、表面欠陥測定部20の記憶部29に記憶された、上述の検出された半導体基板50の表面50aの異物等の欠陥の位置情報、及びサイズの情報に基づいて、分析部30のステージ32を駆動、又はレーザー光Laの照射位置を変えて、半導体基板50の表面50a上の欠陥51にレーザー光Laを照射する。これにより、半導体基板50の表面50a上の欠陥51が分析される。
また、分析装置10は、半導体基板50全体を容器部33内に収納した状態で、分析部30による誘導結合プラズマ質量分析をできる構成とすることにより、半導体基板50の表面50aの汚染を抑制できる。
【0084】
分析装置10では、キャリアガスとクリーニングガスとを別系統で供給したが、これに限定されるものではなく、キャリアガスとクリーニングガスとは供給タイミングが異なるため、1つの配置を共用して容器部33に供給してもよい。例えば、クリーニングガス供給部40を設けることなく、キャリアガス供給部38だけを設ける構成としてもよい。
また、キャリアガスは、水分量が0.00001体積ppm以上0.1体積ppm以下であることが好ましい。
【0085】
キャリアガスの水分量が0.00001体積ppm以上0.1体積ppm以下であれば、容器部33内で分析中の半導体基板50の表面50aの汚染を少なくすることができる。例えば、キャリアガスの水分量が多い場合、キャリアガスの配管表面、又は容器部33の内表面に付着した微量な水分に不純物が溶出し、それらが半導体基板50上に再付着することで欠陥の数が増大してしまうことがあるが、キャリアガスの水分量が上述の範囲であれば、これらが抑制される。
また、水分量が少ない場合、キャリアガスが半導体基板50近傍を通過する際に、半導体基板50の表面50aに帯電を招きやすくなる。その結果、容器部33内に浮遊する帯電したパーティクルを、半導体基板50の表面50aに招いたり、搬送系での搬送時に付近を浮遊するパーティクルを半導体基板50の表面50aに誘引しやすくなる。また、レーザーアブレーションした結果生じる生成物の再付着が起こりやすくなるが、キャリアガスの水分量が上述の範囲であれば、これらが抑制される。
キャリアガスに含まれる水分量は、大気圧イオン化質量分析計(API-MS:Atmospheric Pressure Ionization Mass Spectrometer)(例えば、株式会社日本エイピーアイ製)を用いて測定できる。
水分量の調製方法は、特に制限されないが、原料ガスに含まれる水(水蒸気)を除去して調製するガス精製工程を行うことで実現される。特に精製の回数又はフィルターを調整することにより、キャリアガスに含まれる水分量を調整することができる。
なお、キャリアガスの流量としては、1.69×10-3~1.69Pa・m3/sec(1~1000sccm(standard cubic centimeter per minute))であることが望ましい。
【0086】
[分析方法の第1の例]
分析方法は、半導体基板の表面上の欠陥の有無を測定し、半導体基板の表面上の欠陥の半導体基板上の位置情報を得る工程と、欠陥の半導体基板上の位置情報に基づいて、半導体基板の表面上の欠陥に対してレーザー光を照射して、照射により得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析する工程とを有する。分析方法について、具体的に説明する。
図10は本発明の実施形態の分析方法の第1の例を説明する模式図であり、
図11は本発明の実施形態の分析方法の第1の例を説明する模式的断面図である。
なお、
図10及び
図11において、
図8に示す分析装置10と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0087】
分析方法では、例えば、複数の半導体基板50が収納された収納容器13を、
図8に示す分析装置10の第1搬送室12aの側面の導入部12gに接続する。収納容器13の蓋をあけて、収納容器13から半導体基板50を取り出させる状態にする。
次に、第1搬送室12aの搬送装置14を用いて、収納容器13内から半導体基板50を取り出し、測定室12bのステージ22に半導体基板50を搬送する。上述の収納容器13内から半導体基板50を測定室12bのステージ22に搬送する工程により、半導体基板50が分析装置10の外部から搬送されても、半導体基板50の汚染が抑制される。半導体基板50の汚染が抑制された状態で、表面欠陥測定部20により、半導体基板50の表面欠陥を測定することができる。
【0088】
次に、測定室12b内において、表面欠陥測定部20により、半導体基板50の表面欠陥を測定する。これにより、半導体基板50の表面50aの異物等の欠陥の位置情報、及びサイズが検出される。例えば、
図10に示すように半導体基板50の表面50a上に欠陥51を示すことができる。半導体基板50の表面50a上に欠陥51を示すことをマッピングという。半導体基板50の表面50a上の欠陥51の位置情報、及びサイズの情報は、記憶部29に記憶される。半導体基板50の表面50a上の欠陥51の位置情報、及びサイズの情報を、マッピング情報という。
【0089】
次に、
図8に示す第2搬送室12cの搬送装置16により、表面欠陥が測定された半導体基板50を、測定室12bから分析室12dに搬送する。
次に、分析室12d内にて、分析部30により、半導体基板50の表面50a上の欠陥51の位置情報、及びサイズの情報、すなわち、マッピング情報に基づいて、分析を行う。分析は、
図11に示すように、半導体基板50全体を容器部33内に収納した状態、かつ容器部33内にキャリアガス供給部38からキャリアガスを供給した状態で実施する。分析の際には、マッピング情報に基づいて、欠陥51の位置を特定し、例えば、ステージ32を用いて欠陥51をレーザー光Laの照射位置に半導体基板50を移動させる。
次に、
図11に示すように、半導体基板50の表面50a上の欠陥51に、レーザー光Laを照射する。欠陥51へのレーザー光Laの照射により得られる分析試料51aをキャリアガスにより分析ユニット36に移動される。キャリアガスにより移動された、欠陥51に由来する分析試料51aは分析ユニット36において、誘導結合プラズマ質量分析がされて、欠陥51の元素が特定される。これにより、欠陥51の質量分析データが得られる。
【0090】
分析方法では、分析する工程の前に、クリーニングガスを用いて容器部33内を洗浄する工程を有することが好ましい。洗浄する工程は、具体的には、容器部33内に半導体基板50を搬送する前に、容器部33内にクリーニングガスを供給し、ヒータを用いて容器部33内を加熱して、フラッシング処理を実施する工程である。洗浄する工程により、容器部33内の、例えば、アブレーションされた付着物等の異物、又は吸着ガス等が除去される。
【0091】
また、分析装置10では、分析装置10とは異なる別の装置、例えば、表面欠陥測定装置70(
図8参照)により、半導体基板50の表面50a上の欠陥51を測定して得られた、半導体基板50の表面50a上の欠陥51の位置情報を用いることができる。半導体基板50の表面50a上の欠陥51の位置情報は、例えば、
図10に示すようなマッピング情報である。この場合、表面欠陥測定装置70が取得したマッピング情報を記憶部29に供給する。さらには、表面欠陥測定装置70において、表面50aの欠陥51が測定された半導体基板50が、例えば、収納容器13に収納されて分析装置10に搬送される。半導体基板50を、第1搬送室12a、測定室12b、及び第2搬送室12cを経て分析室12dに搬送する。
次に、制御部42が記憶部29からマッピング情報を読み出し、マッピング情報に基づいて、半導体基板50の表面50aにおける欠陥51の位置を特定する。次に、ステージ32を用いて欠陥51をレーザー光Laの照射位置に半導体基板50を移動させる。次に、半導体基板50の表面50a上の欠陥51に、レーザー光Laを照射する。欠陥51へのレーザー光Laの照射により得られる分析試料51aをキャリアガスにより分析ユニット36に移動される。キャリアガスにより移動された、欠陥51に由来する分析試料51aは分析ユニット36において、誘導結合プラズマ質量分析がされて、欠陥51の元素が特定される。これにより、欠陥51の質量分析データが得られる。
【0092】
上述のように、表面欠陥測定装置70(
図8参照)により測定された
図10に示すようなマッピング情報を用いて、欠陥51を分析する場合、表面欠陥測定部20及び半導体基板50の表面欠陥の測定が不要になる。なお、分析装置10では
図8に示す表面欠陥測定装置70を設けない構成でもよいことはもちろんである。
なお、記憶部29に供給される半導体基板50の表面50a上の欠陥51の位置情報は、表面欠陥測定装置70(
図8参照)により測定されたものに特に限定されるものではない。表面欠陥測定装置70は、例えば、位置情報を記憶する記憶部(図示せず)を有してもよい。また、表面欠陥測定装置70は、表面欠陥測定部20と同様の構成を有するものでもよい。このため、表面欠陥測定装置70は、例えば、半導体基板50の表面50a上に入射光Lsを入射させる入射部23と、半導体基板50の表面50a上の欠陥51により入射光Lsが反射又は散乱することによって放射された放射光を受光する受光部26とを有する。
【0093】
[分析装置の第2の例]
図12は本発明の実施形態の分析装置の第2の例を示す模式図である。なお、
図12において、
図8に示す分析装置10と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図12に示す分析装置10aは、
図8に示す分析装置10に比して、第2搬送室12c及び搬送装置16がない点と、表面欠陥測定部20と分析部30とが1つの処理室12e内に設けられている点とが異なり、それ以外の構成は、
図8に示す分析装置10と同様の構成である。
【0094】
分析装置10aでは、容器部33内に半導体基板50全体が収納された状態で、表面欠陥測定と、分析とが実施される。
分析部30において、光源部34は、レーザー光Laの光軸が半導体基板50の表面50aに対して傾けて配置されている。
分析装置10aでは、表面欠陥測定部20と分析部30とを1つの処理室12e内に設けることにより、
図8に示す分析装置10に比して、装置を小型化することができる。
また、半導体基板50全体を容器部33内に収納した状態で、表面欠陥測定部20による表面欠陥の測定と、分析部30による誘導結合プラズマ質量分析をできる構成とすることにより、半導体基板50の搬送が減り、半導体基板50の表面50aの汚染をさらに抑制できる。これにより、半導体基板50の表面50aの欠陥の測定精度をより高くでき、更に分析装置10aの処理室12e内の汚染も抑制できる。
【0095】
[分析方法の第2の例]
分析方法の第2の例は、上述の分析方法の第1の例と基本的に同じである。分析方法の第2の例は、上述の分析方法の第1の例に比して、半導体基板50全体を容器部33内に収納した状態で、表面欠陥測定部20による表面欠陥の測定を実施する点と、表面欠陥の測定後に、搬送装置16による、表面欠陥が測定された半導体基板50を、測定室12bから分析室12dに搬送しない点とが異なり、それ以外の工程は、分析方法の第1の例と同じである。
分析方法の第2の例では、半導体基板50全体を容器部33内に収納した状態で、表面欠陥測定部20による表面欠陥の測定と、分析部30による誘導結合プラズマ質量分析を実施することにより、半導体基板50の表面50aの汚染をさらに抑制でき、分析装置10aの処理室12e内の汚染を抑制できる。
また、上述のように、半導体基板50全体を容器部33内に収納した状態で、表面欠陥測定部20による表面欠陥の測定と、分析部30による誘導結合プラズマ質量分析を実施することにより、工程間での半導体基板50の搬送が不要となり、分析方法の第1の例に比して、分析時間を短縮できる。さらには、上述のように半導体基板50の表面50aの汚染をさらに抑制できる。
【0096】
また、分析装置10aでも、分析装置10と同様に、分析装置10aとは異なる別の装置、例えば、表面欠陥測定装置70(
図12参照)により、半導体基板50の表面50a上の欠陥51を測定して得られた、
図10に示すようなマッピング情報を用いることができる。この場合、表面欠陥測定装置70が取得したマッピング情報を記憶部29に供給する。さらには、表面欠陥測定装置70において、表面50aの欠陥51が測定された半導体基板50が、例えば、収納容器13に収納されて分析装置10aに搬送される。
分析装置10aでは、マッピング情報に基づいて、上述のように処理室12e内で分析部30により、欠陥51に由来する分析試料51aが分析ユニット36dにて誘導結合プラズマ質量分析がされて欠陥51の元素が特定される。これにより、欠陥51の質量分析データが得られる。
この場合でも、表面欠陥測定装置70(
図12参照)により測定されたマッピング情報を用いた場合、表面欠陥測定部20及び半導体基板50の表面欠陥の測定が不要になる。なお、分析装置10aでも、分析装置10と同様に
図12に示す表面欠陥測定装置70を設けない構成でもよいことはもちろんである。また、記憶部29に供給される半導体基板50の表面50a上の欠陥51の位置情報は、表面欠陥測定装置70(
図12参照)により測定されたものに特に限定されるものではない。
【0097】
[分析装置の第3の例]
上述のように、分析装置以外の装置、例えば、表面欠陥測定装置70で測定されたマッピング情報を用いる場合、分析装置において、表面欠陥測定部は必ずしも必要ではなく、分析装置としては表面欠陥測定部がない構成でもよい。この場合、分析装置は、分析部30だけを有する構成となる。
図13は本発明の実施形態の分析装置の第3の例を示す模式図である。なお、
図13において、
図8に示す分析装置10及び
図12に示す分析装置10aと同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図13に示す分析装置10bは、
図8に示す分析装置10に比して、第1搬送室12a、搬送装置14、測定室12b、表面欠陥測定部20、第2搬送室12c及び搬送装置16がない構成である。また、分析装置10bは、分析部30(
図8参照)を質量分析装置72として、上述の表面欠陥測定装置70と、質量分析装置72とを有する。質量分析装置72は、上述の分析部30(
図8参照)と同じ構成であるため、質量分析装置72の詳細な説明は省略する。
【0098】
分析装置10bにおいて、表面欠陥測定装置70と質量分析装置72とは別々の装置であり、一体ではない。この場合、表面欠陥測定装置70が取得したマッピング情報を記憶部29に供給する。さらには、表面欠陥測定装置70において、表面50aの欠陥51が測定された半導体基板50が、例えば、収納容器13に収納されて質量分析装置72に搬送される。半導体基板50を、第1搬送室12aを経て分析室12dに搬送する。
次に、質量分析装置72では、制御部42が記憶部29からマッピング情報を読み出し、マッピング情報に基づいて、分析室12d内で上述のように欠陥51に由来する分析試料51aが分析ユニット36dにて誘導結合プラズマ質量分析がされて、欠陥51の元素が特定される。これにより、欠陥51の質量分析データが得られる。また、記憶部29に供給される半導体基板50の表面50a上の欠陥51の位置情報は、表面欠陥測定装置70(
図13参照)により測定されたもの以外の位置情報を用いることもできる。
【0099】
上述の分析装置10、分析装置10a及び分析装置10bは、いずれも分析部30は上述の構成に限定されるものではない。ここで、
図14は本発明の実施形態の分析装置の分析部の変形例を示す模式図である。なお、
図14において、
図8に示す分析装置10と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
分析部30において、半導体基板50の表面50aを観察する撮像部60と、撮像部60で得られた画像を表示する表示部62とを設けてもよい。
撮像部60により、半導体基板50の表面50aにおけるレーザー光Laの照射位置、すなわち、欠陥51の位置を観察できる。撮像部60としては、CCD(Charge Coupled Device)センサー及びCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサーが挙げられる。表示部62としては、液晶モニター及び有機EL(Electro Luminescence)モニターが挙げられる。
光源部34と撮像部60とは、例えば、光軸(図示せず)を直交させて配置されている。撮像部60は、半導体基板50の表面50aに対向して配置されている。
光源部34の光軸と撮像部60の光軸とが交わるところに、ハーフミラー64が配置されている。光源部34が出射されたレーザー光Laはハーフミラー64で反射され、集光レンズ35を通り、半導体基板50の表面50aに照射される。
【0100】
〔半導体基板〕
半導体基板は、特に限定されるものではなく、シリコン(Si)基板、サファイア基板、SiC基板、GaP基板、GaAs基板、InP基板、又はGaN基板等の各種の半導体基板を用いることができる。半導体基板としては、シリコンの半導体基板が多く利用されている。
【0101】
なお、半導体デバイスとしては、以下のものが例示される。
〔半導体デバイス〕
半導体デバイスは、特に限定されるものではなく、例えば、ロジックLSI(Large Scale Integration)(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASSP(Application Specific Standard Product)等)、マイクロプロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等)、メモリ(例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、HMC(Hybrid Memory Cube)、MRAM(Magnetic RAM:磁気メモリ)とPCM(Phase-Change Memory:相変化メモリ)、ReRAM(Resistive RAM:抵抗変化型メモリ)、FeRAM(Ferroelectric RAM:強誘電体メモリ)、フラッシュメモリ(NAND(Not AND)フラッシュ)等)、LED(Light Emitting Diode)(例えば、携帯端末のマイクロフラッシュ、車載用、プロジェクタ光源、LCDバックライト、一般照明等)、パワー・デバイス、アナログIC(Integrated Circuit)(例えば、DC(Direct Current)-DC(Direct Current)コンバータ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)(例えば、加速度センサー、圧力センサー、振動子、ジャイロセンサ等)、ワイヤレス(例えば、GPS(Global Positioning System)、FM(Frequency Modulation)、NFC(Nearfield communication)、RFEM(RF Expansion Module)、MMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)、WLAN(Wireless Local Area Network)等)、ディスクリート素子、BSI(Back Side Illumination)、CIS(Contact Image Sensor)、カメラモジュール、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、Passiveデバイス、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ、RF(Radio Frequency)フィルタ、RFIPD(Radio Frequency Integrated Passive Devices)、BB(Broadband)等が挙げられる。
【0102】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の薬液の検査方法、薬液の製造方法、薬液の管理方法、半導体デバイスの製造方法、レジスト組成物の検査方法、レジスト組成物の製造方法、レジスト組成物の管理方法、及び半導体製造装置の汚染状態確認方法について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良又は変更をしてもよいのはもちろんである。
【0103】
[薬液]
薬液は、有機溶媒を主成分として含む。
本明細書において、有機溶媒とは、上述の薬液の全質量に対して、1成分あたり10000質量ppmを超えた含有量で含有される液状の有機化合物を意図する。つまり、本明細書においては、上述の薬液の全質量に対して10000質量ppmを超えて含有される液状の有機化合物は、有機溶媒に該当する。
また、本明細書において液状とは、25℃、大気圧下において、液体であることを意味する。
【0104】
薬液中において有機溶媒が主成分であるとは、薬液中における有機溶媒の含有量が、薬液の全質量に対して、98.0質量%以上であることを意味し、99.0質量%超が好ましく、99.90質量%以上がより好ましく、99.95質量%超が更に好ましい。上限は、100質量%未満である。
有機溶媒は1種を単独で用いても、2種以上を使用してもよい。2種以上の有機溶媒を使用する場合には、合計含有量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0105】
有機溶媒の種類としては特に制限されず、公知の有機溶媒を使用できる。有機溶媒は、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル、ジアルキルスルホキシド、環状スルホン、ジアルキルエーテル、一価アルコール、グリコール、酢酸アルキルエステル、及び、N-アルキルピロリドン等が挙げられる。
【0106】
有機溶媒は、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン(CHN)、乳酸エチル(EL)、炭酸プロピレン(PC)、イソプロパノール(IPA)、4-メチル-2-ペンタノール(MIBC)、酢酸ブチル(nBA)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、メトキシプロピオン酸メチル、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジイソアミルエーテル、酢酸イソアミル、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、炭酸エチレン、スルフォラン、シクロヘプタノン、及び、2-ヘプタノンからなる群から選択される1種以上が好ましい。
有機溶媒を2種以上使用する例としては、PGMEAとPGMEの併用、及び、PGMEAとPCの併用が挙げられる。
なお、薬液中における有機溶媒の種類及び含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて測定できる。
【0107】
薬液は、有機溶媒以外に不純物を含む場合がある。
不純物としては、金属不純物が挙げられる。
金属不純物とは、金属イオン、及び、固体(金属単体、粒子状の金属含有化合物等)として薬液中に含まれる金属不純物を意図する。
金属不純物に含まれる金属元素の種類は特に制限されず、例えば、Na(ナトリウム)、K(カリウム)、Ca(カルシウム)、Fe(鉄)、Cu(銅)、Mg(マグネシウム)、Mn(マンガン)、Li(リチウム)、Al(アルミニウム)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、及び、Zn(ジルコニウム)が挙げられる。
金属不純物は、薬液に含まれる各成分(原料)に不可避的に含まれている成分でもよいし、薬液の製造、貯蔵、及び/又は、移送時に不可避的に含まれる成分でもよいし、意図的に添加してもよい。
【0108】
薬液は、水を含んでいてもよい。水の種類は特に制限されず、例えば、蒸留水、イオン交換水、及び、純水を用いることができる。
水は、薬液中に添加されてもよいし、薬液の製造工程において不可避的に薬液中に混合されるものであってもよい。薬液の製造工程において不可避的に混合される場合としては例えば、水が、薬液の製造に用いる原料(例えば、有機溶媒)に含まれる場合、及び、薬液の製造工程で混合する(例えば、コンタミネーション)等が挙げられる。
【0109】
薬液中における水の含有量は特に制限されないが、一般に、薬液の全質量に対して、2.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%未満が更に好ましい。
薬液中における水の含有量が1.0質量%以下であると、半導体チップの製造歩留まりがより優れる。
なお、下限は特に制限されないが、0.01質量%程度の場合が多い。製造上、水の含有量を上述の数値以下にするのが難しい。
【0110】
上述の薬液を準備する方法は特に制限されず、例えば、有機溶媒を購入等により調達する、及び、原料を反応させて有機溶媒を得る等の方法が挙げられる。なお、薬液としては、すでに説明した不純物の含有量が少ないもの(例えば、有機溶媒の含有量が99質量%以上のもの)を準備することが好ましい。そのような有機溶媒の市販品としては、例えば、「高純度グレード品」と呼ばれるものが挙げられる。
なお、必要に応じて、薬液に対しては、精製処理を施してもよい。
精製方法としては、例えば、蒸留、及び、ろ過が挙げられる。
【0111】
薬液は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Ti及びZnから成る群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、金属元素の合計含有量が薬液の全質量に対して10質量ppb以下であることが好ましい。
10質量ppbを超えると、表面検査装置(SurfScanSP5;KLA株式会社製)、及びICP-MS等による質量ppbといった指標では、相関がとれず決定係数が小さくなる。
薬液中のNa、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Ti及びZnの含有量は、NexION350(商品名、PerkinElmer社製)を用いて、ICP-MS(inductively coupled plasma mass spectrometry)法を用いて測定できる。ICP-MS法による具体的な測定条件は、次の通りである。なお、濃度既知の標準液に対するピーク強度にて検出量を測定して、金属成分の質量に換算し、測定に使用した処理液中の金属成分の含有量(総メタル含有量)を算出する。
金属成分の含有量は、通常のICP-MS法により測定した。具体的には、金属成分の分析に使用するソフトウェアとして、ICP-MS用のソフトウェアを用いる。
【0112】
上述の0.01質量ppqの測定について説明する。
まず、1mLの薬液を、直径約300mm(12インチ)のシリコンウエハ上に液滴として塗布する。その後、無回転で乾燥させる。表面検査装置(SurfScanSP7;KLA株式会社製)で当該シリコンウエハの欠陥位置を測定後、FIB-SEM(サーモフィッシャー社製 HELIOS G4-EXL)にて、表面検査装置(SurfScanSP7)で取得した座標ファイルを基に欠陥部位近傍の断面を切り出す。
FIB(Focused Ion Beam)-SEM(Scanning Electron Microscope)又はTEM(Transmission Electron Microscope)にて、断面エッチングを行いながらEDXにより3次元の形状情報と元素情報を取得する。これらを全ての欠陥について行う。
例えば、1mL(密度1g/cm3)の薬液でFe13.5nm(表面検査装置(SurfScanSP7)の限界)の球体状パーティクルが1つ発見された場合について考えると、原理的には質量比換算でおおよそ0.01質量ppqが測定できることになる。
【0113】
[薬液の用途]
有機溶媒を主成分とする薬液は、例えば、半導体デバイスの製造方法、及び半導体製造装置の洗浄方法に用いられる。具体的には、薬液は、例えば、現像液、リンス液、プリウェット液に用いられる。これ以外に、薬液は、エッジリンス液、バックリンス液、レジスト剥離液及び希釈用シンナーに用いられる。
プリウェット液は、レジスト膜を形成する前に、半導体基板上に供給するものであり、レジスト液を半導体基板上に広げやすくし、より少量のレジスト液の供給で均一なレジスト膜を形成するために使用されるものである。
上述のエッジリンス液とは、リンス液において、半導体基板の周縁部に供給して、半導体基板の周縁部のレジスト膜の除去に利用されるリンス液のことをいう。
例えば、現像液には、酢酸ブチル(nBA)が用いられる。酢酸ブチル(nBA)は、現像液以外に、配管の洗浄、又は半導体ウエハの洗浄液等の用途に用いることもできる。
また、リンス液には、4-メチル-2-ペンタノール(MIBC)が用いられる。洗浄液には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、イソプロパノール(IPA)が用いられる。プリウェット液には、シクロヘキサノン(CHN)が用いられる。
【0114】
[レジスト組成物]
レジスト組成物の種類は特に制限されず、公知のレジスト組成物を用いることができる。
例えば、レジスト組成物として、酸の作用により極性基を生じる基(以下、単に「酸分解性基」ともいう。)を有する樹脂(以下、単に「酸分解性樹脂」ともいう。)、光酸発生剤、及び、溶媒を含むレジスト組成物(以下、「第1レジスト組成物」ともいう。)を用いることができる。
酸分解性基は、酸の作用により脱離する脱離基で極性基が保護された構造を有することが好ましい。つまり、酸分解性樹脂は、酸分解性基を有する繰り返し単位を有する。この繰り返し単位を有する樹脂は、酸の作用により極性が増大してアルカリ現像液に対する溶解度が増大し、有機溶剤に対する溶解度が減少する。
極性基としては、アルカリ可溶性基が好ましく、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基、並びに、アルコール性水酸基等が挙げられる。
【0115】
酸分解性樹脂は、酸分解性基を有する繰り返し単位以外の他の繰り返し単位(例えば、酸基を有する繰り返し単位、ラクトン基、スルトン基、又は、カーボネート基を有する繰り返し単位、フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位など)を含んでいてもよい。
酸分解性樹脂としては、公知の酸分解性樹脂を使用できる。
【0116】
光酸発生剤は、公知のものであれば特に制限されないが、活性光線又は放射線、好ましくは電子線又は極紫外線の照射により、有機酸、例えば、スルホン酸、ビス(アルキルスルホニル)イミド、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチドの少なくともいずれかを発生する化合物が好ましい。
【0117】
溶媒としては、水及び有機溶媒が挙げられる。有機溶媒の種類は特に制限されず、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、及び、炭化水素系溶媒が挙げられる。
【0118】
上記第1レジスト組成物は、酸分解性樹脂、光酸発生剤、及び、溶媒以外の他の材料を含んでいてもよい。
例えば、第1レジスト組成物は、酸拡散制御剤を含んでいてもよい。酸拡散制御剤としては、塩基性化合物、及び、プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下、消失、又は、プロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する化合物が挙げられる。
また、第1レジスト組成物は、疎水性樹脂、界面活性剤、溶解阻止化合物、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、及び、現像液に対する溶解性を促進させる化合物からなる群から選択される化合物を含んでいてもよい。
【0119】
レジスト組成物としては、架橋性基を有する架橋剤と、架橋性基と反応する反応性基を有する化合物と、溶媒とを含むレジスト組成物(以下、「第2レジスト組成物」ともいう。)であってもよい。
架橋性基と反応性基との組み合わせは特に制限されず、公知の組み合わせが採用される。
なお、架橋性基又は反応性基は保護基で保護されていてもよく、例えば、第2レジスト組成物に光酸発生剤がさらに含まれ、光酸発生剤より発生する酸によって上記保護基が脱離する態様であってもよい。また、光酸発生剤により発生する酸により架橋剤と樹脂が縮合反応を起こすことにより架橋構造が形成される態様であってもよい。
また、上記第2レジスト組成物においては、架橋性基を有する架橋剤と、架橋性基と反応する反応性基を有する化合物との2種が含まれる態様について述べたが、1つの化合物が架橋性基と反応性基とを含む態様であってもよい。
【0120】
レジスト組成物としては、主鎖切断型の重合体、及び、溶媒を含むレジスト組成物であってもよい。
重合体が「主鎖切断型である」とは、重合体に対して電離放射線、紫外線などの光を照射した場合に、重合体の主鎖が切断される性質を有することを意味する。
主鎖切断型の重合体としては、アクリル系主鎖切断型レジストが挙げられ、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、α-クロロメタクリレートとα-メチルスチレンとの共重合体であるZEP(日本ゼオン社製)、及び、ポリ2,2,2-トリフルオロエチルαクロロアクリレート(EBR-9、東レ社製)が挙げられる。
【0121】
レジスト組成物としては、いわゆるメタルレジスト組成物であってもよい。
上記メタルレジスト組成物としては、金属炭素結合及び/又は金属カルボキシラート結合により有機配位子を有する金属オキソ-ヒドロキソネットワークを含むコーティングを形成し得る感光性組成物が挙げられる。
上記メタルレジスト組成物としては、特開2019-113855号公報に記載の組成物が挙げられ、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0122】
レジスト組成物は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Ti及びZnから成る群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、金属元素の合計含有量がレジスト組成物の全質量に対して10質量ppb以下であることが好ましい。
【実施例0123】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0124】
<例A>
[薬液の製造]
まず、後述する例にて用いる薬液(PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート))を準備した。具体的には、まず、純度99質量%以上の高純度グレードの有機溶媒試薬を購入した。その後、購入した試薬に対して、以下のフィルタを適宜組み合わせたろ過処理を施して薬液を調製した。
・IEX-PTFE(15nm):Entegris社製の15nm IEX PTFE
・PTEE(12nm):Entegris社製の12nm PTFE
・UPE(3nm):Entegris社製の3nm PEフィルタ
なお、薬液中の不純物量を調整するために、適宜、有機溶媒試薬の購入元を変更したり、純度グレードを変更したり、上述のろ過処理の前に蒸留処理を実施したりした。Feが主なシリコン基板上のナノパーティクルとなるように条件を調整した。
トレースメタルは予めアジレントテクノロジー株式会社製のICP-MS装置アジレント8900を用いて測定した。
以下、実施例1~13及び比較例1~4について説明する。なお、実施例1~13及び比較例1~4の結果は下記表1に示す。
【0125】
(実施例1~13)
実施例1~13では、薬液を、直径300mmのシリコン基板上に、粒子が表中の値となるように調整した。塗布現像装置を用いて、調整した薬液を、直径300mmのシリコン基板上に塗布した。
薬液が塗布されたシリコン基板を、シリコン基板全体を収納できる収納容器に収納して、表面欠陥測定部に搬送した。
表面欠陥測定部には表面検査装置(SurfScanSP7;KLA株式会社製)を用いた。表面検査装置において、光学式欠陥検査により、レーザー光をシリコン基板の表面に入射し、散乱光を測定することにより、シリコン基板上の欠陥の位置、及びサイズを測定し、欠陥の位置情報、及び欠陥のサイズの情報を得て、記憶部に記憶した。
ここで、薬液塗布に使用したシリコン基板については予め表面検査装置(SurfScanSP7)で欠陥位置情報とサイズを測定しておき、薬液塗布後の異物数から、薬液塗布前の異物数の差分を、薬液由来の異物として算出した。
次に、表面欠陥測定されたシリコン基板を、分析部に搬送した。分析部に、レーザーアブレーションICP質量分析(LA-ICP-MS)装置を用いた。なお、シリコン基板を搬送するにあたり、シリコン基板を、シリコン基板全体が格納できるセル内にローディングし、セル内にキャリアガスを流入させた。
【0126】
得られた欠陥の位置情報、及び欠陥のサイズの情報(klarfファイル)に基づいて、レーザーアブレーションICP質量分析装置を用いて、レーザーアブレーションによる欠陥の元素分析を行い、レーザーアブレーションした所定の位置でFeが検出できることを確認した。
レーザーアブレーションは、シリコン基板を容器部内に収納した状態、かつキャリアガスを供給した状態で行った。レーザーアブレーションにより得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析した。レーザーアブレーションには、フェムト秒レーザーを用いた。
キャリアガスには、アルゴンガスを用いた。キャリアガスの流量は、1.69×10-2Pa・m3/sec(10sccm)とした。キャリアガス中の水分量を下記表1に示す。
半導体基板を収納する収納容器に、FOUP(Front Opening Unified Pod)を用いた。
なお、アブレーション前に、クリーニングガスを1.69×10-1Pa・m3/sec(100sccm(standard cubic centimeter per minute))にてセル内に1分流すことにより事前クリーニングを行った。
【0127】
(比較例1~4)
比較例1~4は、表面検査装置(SurfScanSP7;KLA株式会社製)を用い、レーザーをシリコン基板の表面に入射し、散乱光を測定することでシリコン基板上の欠陥の位置、及びサイズを測定し、欠陥の位置情報、及び欠陥のサイズの情報を得て、記憶部に記憶した。
次に、比較例1~4は、得られた欠陥の位置情報、及び欠陥のサイズの情報に基づいて、欠陥レビュー装置(SEMVision G6(Applied Materials社製))を用いて、薬液を塗布した後のシリコン基板上の欠陥の定性元素分析を試みた。比較例1~4の薬液を塗布した後のシリコン基板上の欠陥の定性元素分析は、SEM-EDS(Scanning Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)を利用したものである。SEM-EDSは、真空下で行うため、キャリアガスを使用しない。このため、比較例1~4については、下記表1の「キャリアガスの水分量」の欄に「―」と記した。
【0128】
なお、実施例1~13及び比較例1~4において、薬液塗布後に、表面検査装置(SurfScanSP7)を用いて欠陥位置情報とサイズを測定した。その結果を、「薬液塗布後の20nm以下基板上NP(SP7)」の欄に示す。
実施例1~13及び比較例1~4において、薬液の欠陥の測定後に、表面検査装置(SurfScanSP7)を用いて欠陥位置情報とサイズを測定した。その結果を、「分析後の20nm以下基板上NP(SP7)」の欄に示す。
また、下記表1の「20nm以下のNPにおけるFeの検出数」は、実施例1~13及び比較例1~4の薬液の欠陥の測定の結果を示す。なお、下記表1では、ナノパーティクルを「NP」と表記した。
【0129】
【0130】
実施例1~13では20nm以下の微小なナノパーティクル欠陥においてもFe元素が検出できていることから、製造した薬液の微小な金属異物について検査できることが示された。これに対して、比較例1~4では20nm以下のFe元素がほとんど検出できなかった。
なお、実施例1~13は、欠陥の測定において表面検査装置(SurfScanSP7)と同程度の結果が得られた。
また、実施例1~13では、LA-ICP-MSを使用した。このため、欠陥の測定によりシリコン基板上のナノパーティクルはアブレーションされて消滅するため、欠陥の測定後にナノパーティクルは減少した。
比較例1~4では、SEM-EDX又はSEM-EDSを使用した。このため、欠陥の測定後にナノパーティクルは減少しなかった。
さらに、キャリアガスの水分量を0.00001体積ppm以上0.1体積ppm以下の範囲とすることにより、測定中のシリコン基板表面の汚染によるナノパーティクルの付着が抑制され、汚染が抑制されることが確認された。以上により本発明の有効性が確認された。
【0131】
<例B>
[薬液の製造]
薬液の種類が異なる以外は、例Aの薬液と同様のものを用いた。液種としては、ウエハ洗浄液(PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート))、プリウエット液(CHN(シクロヘキサノン))、現像液(nBA(酢酸ブチル))、リンス液(MIBC(4-メチル-2-ペンタノール))を用意した。
なお、トレースメタルはいずれの金属元素も10質量ppb以下であることを確認した。
以下、実施例15~18について説明する。なお、実施例15~18の結果は下記表2に示す。
【0132】
(実施例15~18)
実施例15~18では、上述の実施例1~13と同様に、表面検査装置(SurfScanSP5;KLA株式会社製)を用い光学式欠陥検査を実施した後、誘導結合プラズマ質量分析した。キャリアガスの水分量を0.1体積ppmとした。
【0133】
(薬液管理)
薬液塗布時のシリコン基板上の金属異物の個数に関する管理許容値を20nm未満の金属異物が150[個/基板]以下と設定した。
管理許容値を満たすものを下記表2の許容判定の欄に「A」と記し、管理許容値を満たさないものを下記表2の許容判定の欄に「B」と記した。なお、下記表2では、ナノパーティクルを「NP」と表記した。
上記管理許容値は上記薬液の製造におけるLA-ICPMSを用いた20nm未満の金属異物の個数が過去の製造実績の平均+σを計算することにより算出した。
このような管理方法を用いることにより、シリコン基板上に塗布する目的で用いられるウエハ洗浄液、プリウエット液、現像液、及びリンス液等の各種の薬液において20nm以下のパターンを形成するための先端プロセスにおいてクリティカルなパーティクルとなる20nm未満の金属異物、すなわち、ナノパーティクルを管理することができることが分かった。
なお、各種金属元素のいずれかが10質量ppbより多く含まれている薬液に対しても管理方法は有効であるが、20nm未満の超微小異物が支配的な異物となるのは10質量ppb以下の純度範囲であるため、そのような薬液は、従来技術では管理できないことから、上述の管理方法がより有効な管理方法であった。
【0134】
(デバイス製造)
上記、管理許容値以下であることを確認できた薬液を使用して、以下に示すリソグラフィ工程を行った。リソグラフィ工程後に欠陥数を測定した。明らかに、許容範囲内であることを確認できた薬液を用いた場合、リソグラフィ工程後の欠陥数が少ないことが確認された。
リソグラフィ工程後の欠陥数は、東京エレクトロン株式会社製エッチング装置TactrasVigusを用いて酸素プラズマによりリソグラフィ後のレジストをアッシングし、その後、表面検査装置(SurfScanSP5;KLA株式会社製)を用いて光学式欠陥検査を行うことで欠陥数を測定した。その結果を、下記表2の「リソグラフィ後NP数(≦20nm)」の欄に示す。また、下記表2において、≦20nmは、ナノパーティクルのサイズが20nm以下であることを示す。
【0135】
(リソグラフィ工程)
まず、直径約300mm(12インチ)のシリコン基板に対して、シクロヘキサノン(CHN)を用いてプリウェットを行った。次に、レジスト樹脂組成物をプリウェット済みシリコン基板上に回転塗布した。その後、ホットプレート上で温度150℃にて90秒間加熱乾燥を行い、90nmの厚みのレジスト膜を形成した。
このレジスト膜に対し、縮小投影露光及び現像後に形成されるパターンのライン幅が45nm、スペース幅が45nmとなるような、ラインアンドスペースパターンを有するマスクを介して、ArFエキシマレーザースキャナー(ASML製、XT:1700i、波長193nm)を用いて、NA=1.20、Dipole(oσ/iσ)=0.981/0.859、Y偏光の露光条件でパターン露光した。照射後に温度120℃にて60秒間ベークした。その後、現像、及びリンスし、温度110℃にて60秒ベークして、ライン幅が45nm、スペース幅が45nmのレジストパターンを形成できた。
レジスト樹脂組成物には、以下に示すものを用いた。
【0136】
(レジスト樹脂組成物)
レジスト樹脂組成物について説明する。レジスト樹脂組成物は、以下の各成分を混合して得た。
【0137】
酸分解性樹脂(下記式で表される樹脂(重量平均分子量(Mw)7500):各繰り返し単位に記載される数値はモル%を意味する。):100質量部
【0138】
【0139】
下記に示す光酸発生剤:8質量部
【0140】
【0141】
下記に示すクエンチャー:5質量部(質量比は、左から順に、0.1:0.3:0.3:0.2とした。)。なお、下記のクエンチャーのうち、ポリマータイプのものは、重量平均分子量(Mw)が5000である。また、各繰り返し単位に記載される数値はモル比を意味する。
【0142】
【0143】
下記に示す疎水性樹脂:4質量部(質量比は、(1):(2)=0.5:0.5とした。)。
なお、下記の疎水性樹脂のうち、式(1)の疎水性樹脂は、重量平均分子量(Mw)は7000であり、式(2)の疎水性樹脂の重量平均分子量(Mw)は8000である。なお、各疎水性樹脂において、各繰り返し単位に記載される数値はモル比を意味する。
【0144】
【0145】
溶剤:
PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート):3質量部
シクロヘキサノン:600質量部
γ-BL(γ-ブチロラクトン):100質量部
【0146】
【0147】
<例C>
[レジスト組成物の製造]
レジスト組成物に、上述の例Bに示すレジスト組成物を用いた。レジスト組成物にろ過処理を施して精製した。
その後、ガロン瓶に充填し、塗布現像装置LITHIUS PRO(登録商標)-Z(東京エレクトロン株式会社製)に接続した。さらに、直径約300mm(12インチ)のシリコン基板に対して、シクロヘキサノン(CHN)を用いてプリウェットを行った。次に、レジスト樹脂組成物をプリウェット済みシリコン基板上に回転塗布した。その後、ホットプレート上で温度150℃にて90秒間加熱乾燥を行い、45nmの厚みのレジスト膜を形成した。Feが主なシリコン基板上のナノパーティクルとなるように濾過条件を調整した。トレースメタルは予めアジレントテクノロジー社製のICP-MS装置アジレント8900において測定した。
【0148】
以下、実施例20~32及び比較例20~23について説明する。なお、実施例20~32及び比較例20~23の結果は下記表3に示す。
実施例20~32では、レジスト組成物を、直径300mmのシリコン基板上に、粒子が表中の値となるように調整した。塗布現像装置を用いて、調整したレジスト組成物を、直径300mmのシリコン基板上に塗布した。
レジスト組成物が塗布されたシリコン基板を、シリコン基板全体を収納できる収納容器に収納して、表面欠陥測定部に搬送した。
表面欠陥測定部には表面検査装置(SurfScanSP7;KLA株式会社製)を用いた。表面検査装置において、光学式欠陥検査により、レーザー光をシリコン基板の表面に入射し、散乱光を測定することにより、シリコン基板上の欠陥の位置、及びサイズを測定し、欠陥の位置情報、及び欠陥のサイズの情報を得て、記憶部に記憶した。
ここで、レジスト組成物塗布に使用したシリコン基板については予め表面検査装置(SurfScanSP7)で欠陥位置情報とサイズを測定しておき、レジスト組成物塗布後の異物数から、レジスト組成物塗布前の異物数の差分を、レジスト組成物由来の異物として算出した。
次に、表面欠陥測定されたシリコン基板を、分析部に搬送した。分析部に、レーザーアブレーションICP質量分析(LA-ICP-MS)装置を用いた。なお、シリコン基板を搬送するにあたり、シリコン基板を、シリコン基板全体が格納できるセル内にローディングし、セル内にキャリアガスを流入させた。
【0149】
得られた欠陥の位置情報、及び欠陥のサイズの情報(klarfファイル)に基づいて、レーザーアブレーションICP質量分析装置を用いて、レーザーアブレーションによる欠陥の元素分析を行い、レーザーアブレーションした所定の位置でFeが検出できることを確認した。
レーザーアブレーションは、シリコン基板を容器部内に収納した状態、かつキャリアガスを供給した状態で行った。レーザーアブレーションにより得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析した。レーザーアブレーションには、フェムト秒レーザーを用いた。
キャリアガスには、アルゴンガスを用いた。キャリアガスの流量は、1.69×10-2Pa・m3/sec(10sccm)とした。キャリアガス中の水分量を下記表3に示す。
半導体基板を収納する収納容器に、FOUP(Front Opening Unified Pod)を用いた。
なお、アブレーション前に、クリーニングガスを1.69×10-1Pa・m3/sec(100sccm(standard cubic centimeter per minute))にてセル内に1分流すことにより事前クリーニングを行った。
【0150】
(比較例20~23)
比較例20~23は、表面検査装置(SurfScanSP7;KLA株式会社製)を用い、レーザーをシリコン基板の表面に入射し、散乱光を測定することでシリコン基板上の欠陥の位置、及びサイズを測定し、欠陥の位置情報、及び欠陥のサイズの情報を得て、記憶部に記憶した。
次に、比較例20~23は、得られた欠陥の位置情報、及び欠陥のサイズの情報に基づいて、欠陥レビュー装置(SEMVision G6(Applied Materials社製))を用いて、レジスト組成物を塗布した後のシリコン基板上の欠陥の定性元素分析を試みた。比較例20~23のレジスト組成物を塗布した後のシリコン基板上の欠陥の定性元素分析は、SEM-EDS(Scanning Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)を利用したものである。SEM-EDSは、電子線により真空下で行うため、キャリアガスを使用しない。このため、比較例20~23については、下記表3の「キャリアガスの水分量」の欄に「―」と記した。なお、下記表3では、ナノパーティクルを「NP」と表記した。
【0151】
なお、実施例20~32及び比較例20~23において、レジスト組成物塗布後に、表面検査装置(SurfScanSP7)を用いて欠陥位置情報とサイズを測定した。その結果を、「レジスト組成物塗布後の20nm以下基板上NP(SP7)」の欄に示す。
実施例20~32及び比較例20~23において、レジスト組成物の欠陥の測定後に、表面検査装置(SurfScanSP7)を用いて欠陥位置情報とサイズを測定した。その結果を、「分析後の20nm以下基板上NP(SP7)」の欄に示す。
また、下記表3の「20nm以下のNPにおけるFeの検出数」は、実施例20~32及び比較例20~23のレジスト組成物の欠陥の測定の結果を示す。なお、下記表3では、ナノパーティクルを「NP」と表記した。
【0152】
【0153】
実施例20~32では20nm以下の微小なナノパーティクル欠陥においてもFe元素が検出できていることから、製造した薬液の微小な金属異物について検査できることが示された。これに対して、比較例20~23では20nm以下のFe元素がほとんど検出できなかった。
なお、実施例20~32は、欠陥の測定において表面検査装置(SurfScanSP7)と同程度の結果が得られた。
また、実施例20~32では、LA-ICPMSを使用した。このため、欠陥の測定によりシリコン基板上のナノパーティクルはアブレーションされて消滅するため、欠陥の測定後にナノパーティクルは減少した。
比較例20~23では、SEM-EDX又はSEM-EDSを使用した。このため、欠陥の測定後にナノパーティクルは減少しなかった。
さらに、キャリアガスの水分量を0.00001体積ppm以上0.1体積ppm以下の範囲とすることにより、測定中のシリコン基板表面の汚染によるナノパーティクルの付着が抑制され、汚染が抑制されることが確認された。以上により本発明の有効性が確認された。
【0154】
<例D>
[レジスト組成物の製造]
レジスト組成物に、上述の例Bに示すレジスト組成物を用いた。
なお、トレースメタルはいずれの金属元素も10質量ppb以下であることを確認した。
以下、実施例33について説明する。なお、実施例33の結果は下記表4に示す。
【0155】
(実施例33)
実施例33では、上述の実施例20~32と同様に、表面検査装置(SurfScanSP5;KLA株式会社製)を用い光学式欠陥検査を実施した後、誘導結合プラズマ質量分析した。キャリアガスの水分量を0.1体積ppmとした。
【0156】
(レジスト組成物管理)
レジスト組成物塗布時のシリコン基板上の金属異物の個数に関する管理許容値を20nm未満の金属異物が500[個/基板]以下と設定した。
管理許容値を満たすものを下記表4の許容判定の欄に「A」と記し、管理許容値を満たさないものを下記表4の許容判定の欄に「B」と記した。なお、下記表4では、ナノパーティクルを「NP」と表記した。
上記管理許容値は上記レジスト組成物の製造におけるLA-ICPMSを用いた20nm未満の金属異物の個数が過去の製造実績の平均+σを計算することにより算出した。
このような管理方法を用いることにより、レジスト組成物において20nm以下のパターンを形成するための先端プロセスにおいてクリティカルなパーティクルとなる20nm未満の金属異物を管理することができることが分かった。
なお、各種金属元素のいずれかが10質量ppbより多く含まれているレジスト組成物に対しても管理方法は有効であるが、20nm未満の超微小異物が支配的な異物となるのは10質量ppb以下の純度範囲であるため、そのようなレジスト組成物は、従来技術では管理できないことから、上述の管理方法がより有効な管理方法であった。
【0157】
(デバイス製造)
上記、管理許容値以下であることを確認できたレジスト組成物を使用して、上述の例Bと同様のリソグラフィ工程を行った。リソグラフィ工程後に欠陥数を測定した。明らかに、許容範囲内であることを確認できたレジスト組成物を用いた場合、リソグラフィ工程後の欠陥数が少ないことが確認された。
リソグラフィ工程後の欠陥数は、東京エレクトロン株式会社製エッチング装置TactrasVigusを用いて酸素プラズマによりリソグラフィ後のレジストをアッシングし、その後、表面検査装置(SurfScanSP5;KLA株式会社製)を用いて光学式欠陥検査を行うことで欠陥数を測定した。その結果を、下記表4の「リソグラフィ後NP数」の欄に示す。また、下記表4において、≦20nmは、ナノパーティクルのサイズが20nm以下であることを示す。
【0158】
【0159】
<例E>
[薬液の製造]
まず、後述する例にて用いる洗浄薬液(PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート))を準備した。具体的には、まず、純度99質量%以上の高純度グレードの有機溶媒試薬を購入した。その後、購入した試薬に対して、以下のフィルタを適宜組み合わせたろ過処理を施して洗浄薬液を調製した。
・IEX-PTFE(15nm):Entegris社製の15nm IEX PTFE
・PTEE(12nm):Entegris社製の12nm PTFE
・UPE(3nm):Entegris社製の3nm PEフィルタ
なお、後述する洗浄薬液中の不純物量を調整するために、適宜、有機溶媒試薬の購入元を変更したり、純度グレードを変更したり、上述のろ過処理の前に蒸留処理を実施したりした。20nm以下のメタルが主なシリコン基板上のナノパーティクルとなるように条件を調整した。
【0160】
(洗浄薬液の性能確認)
上述の洗浄薬液をガロン瓶に充填し、十分に洗浄を行ってある塗布現像装置LITHIUS PRO(登録商標)-Z(東京エレクトロン株式会社製)に接続した。接続後に、直径約300mm(12インチ)のシリコン基板上に洗浄薬液を塗布し、シリコン基板を回収した。
回収したシリコン基板を以下のようにして測定したところ、シリコン基板上で20nm以下の金属元素のナノパーティクルが50個検出された。
回収したシリコン基板を、シリコン基板全体を収納できる収納容器に収納して、表面欠陥測定部に搬送した。
表面欠陥測定部には表面検査装置(SurfScanSP5;KLA株式会社製)を用いた。表面検査装置において、光学式欠陥検査により、レーザー光をシリコン基板の表面に入射し、散乱光を測定することにより、シリコン基板上の欠陥の位置、及びサイズを測定し、欠陥の位置情報、及び欠陥のサイズの情報を得て、記憶部に記憶した。
次に、表面欠陥測定されたシリコン基板を、分析部に搬送した。分析部に、レーザーアブレーションICP質量分析(LA-ICP-MS)装置を用いた。なお、シリコン基板を搬送するにあたり、シリコン基板を、シリコン基板全体が格納できるセル内にローディングし、セル内にキャリアガスを流入させた。
得られた欠陥の位置情報、及び欠陥のサイズの情報(klarfファイル)に基づいて、レーザーアブレーションICP質量分析装置を用いて、レーザーアブレーションによる欠陥の元素分析を行った。
レーザーアブレーションは、シリコン基板を容器部内に収納した状態、かつキャリアガスを供給した状態で行った。レーザーアブレーションにより得られる分析試料をキャリアガスで回収して誘導結合プラズマ質量分析した。レーザーアブレーションには、フェムト秒レーザーを用いた。
キャリアガスには、アルゴンガスを用いた。キャリアガスの流量は、1.69×10-2Pa・m3/sec(10sccm)とした。
なお、アブレーション前に、クリーニングガスを1.69×10-1Pa・m3/sec(100sccm(standard cubic centimeter per minute))にてセル内に1分流すことにより事前クリーニングを行った。
【0161】
(半導体製造装置の汚染度の確認方法)
洗浄薬液をガロン瓶に充填し、未洗浄の塗布現像装置LITHIUS PRO(登録商標)-Z(東京エレクトロン株式会社製)に接続した。接続後に、直径約300mm(12インチ)のシリコン基板上に洗浄薬液を塗布した。
この際、送液量1L(1000mL)流す毎に、シリコン基板上に10mL塗布して、シリコン基板を回収し、上述のように測定して、金属元素のナノパーティクルの検出を試みた。なお、ガロン瓶中の洗浄薬液がなくなった際には、新しい洗浄薬液が充填されたガロン瓶と繋ぎ変えた。各送液量での金属元素のナノパーティクルの検出数を下記表5に示す。
【0162】
【0163】
表5に示すように、塗布現像装置への送液量を増やすほど、洗浄に使われた洗浄薬液中の金属元素のナノパーティクルの検出数が減少していた。すなわち、塗布現像装置の汚染状態が良化していることを確認できた。