IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友化学株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-偏光板、及び偏光板の製造方法 図1
  • 特開-偏光板、及び偏光板の製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038613
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】偏光板、及び偏光板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20230310BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20230310BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20230310BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
B32B7/023
B32B27/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145425
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】藤井 幹士
(72)【発明者】
【氏名】松本 寿和
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
4F100
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB02
2H149AB26
2H149BA02
2H149BA14
2H149BB02
2H149BB09
2H149BB10
2H149BB24
2H149CA02
2H149EA12
2H149FA03Z
2H149FB06
2H149FD25
2H149FD47
2H291FA22X
2H291FA94X
2H291FB05
2H291FC01
2H291FC22
2H291FC23
2H291FC31
2H291MA20
4F100AG00
4F100AK01B
4F100AK21D
4F100AK25
4F100AK41
4F100AK42
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA31A
4F100BA31B
4F100BA42B
4F100CA13
4F100CA13B
4F100DB01A
4F100DB01B
4F100DB01C
4F100DB01D
4F100EJ30A
4F100EJ30B
4F100EJ30C
4F100EJ30D
4F100EJ36A
4F100EJ36B
4F100EJ36C
4F100EJ36D
4F100EJ85A
4F100EJ85B
4F100EJ85C
4F100EJ85D
4F100EJ86A
4F100EJ86B
4F100EJ86C
4F100EJ86D
4F100GB48
4F100JN10
4F100JN10B
(57)【要約】
【課題】偏光子層中の二色性色素による偏光板の汚染を抑制する偏光板の提供。
【解決手段】偏光板20は、偏光子層5を備え、偏光子層5は、重合性液晶化合物の重合体、及び二色性色素を含有し、偏光子層5は、偏光子層5の厚み方向に略平行である端面5Eを含む外周部5Pと、外周部5Pに囲まれた中央部5Cと、を含み、外周部5Pの一部又は全体における二色性色素の濃度が、中央部5Cにおける二色性色素の濃度よりも低い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子層を備え、
前記偏光子層は、重合性液晶化合物の重合体、及び二色性色素を含有し、
前記偏光子層は、前記偏光子層の厚み方向に略平行である端面を含む外周部と、前記外周部に囲まれた中央部と、を含み、
前記外周部の一部又は全体における前記二色性色素の濃度が、前記中央部における前記二色性色素の濃度よりも低い、
偏光板。
【請求項2】
前記偏光子層の一方の表面に直接又は間接的に積層された第一保護層を備える、
請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記第一保護層が、前記第一保護層の厚み方向に略平行である端面を有しており、
前記第一保護層の前記端面、及び前記偏光子層の前記端面が、同一の平面に含まれる、
請求項2に記載の偏光板。
【請求項4】
前記偏光子層の他方の表面に直接又は間接的に積層された第二保護層を備える、
請求項2又は3に記載の偏光板。
【請求項5】
前記第二保護層が、前記第二保護層の厚み方向に略平行である端面を有しており、
前記第二保護層の前記端面、及び前記偏光子層の前記端面が、同一の平面に含まれる、
請求項4に記載の偏光板。
【請求項6】
前記偏光子層の前記端面の一部又は全体が、ポリビニルアルコールを含む膜で覆われている、
請求項1~5のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項7】
前記外周部の厚みが、前記中央部の厚みと略等しい、
請求項1~6のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項8】
前記偏光板が、前記偏光板の厚み方向に略平行である端面を有しており、
前記偏光子層の前記端面が、前記偏光板の前記端面において露出している、
請求項1~7のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の偏光板を備える、
画像表示装置。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の偏光板を製造する方法であって、
重合性液晶化合物の重合体及び二色性色素を含有する偏光子層を含む積層体を作製する工程と、
前記二色性色素が溶解する溶剤を刃に付着させた後、前記積層体を前記刃で切断する工程、又は
前記二色性色素が溶解する溶剤を刃に吹き付けながら、前記積層体を前記刃で切断する工程と、
を備える、
偏光板の製造方法。
【請求項11】
切断された前記積層体の切断面を乾燥する工程を更に備える、
請求項10に記載の偏光板の製造方法。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に記載の偏光板を製造する方法であって、
重合性液晶化合物の重合体及び二色性色素を含有する偏光子層を含む第一積層体を作製する工程と、
前記第一積層体を切断することにより、複数の第二積層体を作製する工程と、
複数の前記第二積層体を互いに重ねることにより、第三積層体を作製する工程と、
前記二色性色素が溶解する溶剤を、刃及び前記第三積層体の端面のうち少なくとも一方に吹き付けながら、前記第三積層体の前記端面を前記刃で研磨する工程と、
を備える、
偏光板の製造方法。
【請求項13】
前記第三積層体の研磨された前記端面を乾燥する工程を更に備える、
請求項12に記載の偏光板の製造方法。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか一項に記載の偏光板を製造する方法であって、
重合性液晶化合物の重合体及び二色性色素を含有する偏光子層を含む積層体を作製する工程と、
前記二色性色素が溶解する溶剤を前記積層体の端面に吹き付けながら、前記積層体の前記端面をドライアイススノーで洗浄する工程、又は
前記二色性色素が溶解する溶剤を前記積層体の端面に付着させた後、前記積層体の前記端面をドライアイススノーで洗浄する工程と、
を備える、
偏光板の製造方法。
【請求項15】
前記積層体の洗浄された前記端面を乾燥する工程を更に備える、
請求項14に記載の偏光板の製造方法。
【請求項16】
請求項1~8のいずれか一項に記載の偏光板を製造する方法であって、
重合性液晶化合物の重合体及び二色性色素を含有する偏光子層を含み、且つ寸法及び積層構造が前記偏光板と同じである複数の積層体を作製する工程と、
前記二色性色素が溶解する溶剤を、互いに重ねられた複数の前記積層体の端面に塗布する工程と、
互いに重ねられた複数の前記積層体の端面に塗布された前記溶剤を拭き取る工程と、
前記溶剤が拭き取られた複数の前記積層体を梱包する工程と、
を備える、
偏光板の製造方法。
【請求項17】
複数の前記積層体を梱包する前に、前記溶剤が拭き取られた複数の前記積層体の端面を乾燥する工程を更に備える、
請求項16に記載の偏光板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、偏光板、及び偏光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、テレビ、コンピュータ、スマートフォン、スマートウォッチ、携帯ゲーム機又は車両の計器パネル等の画像表示装置(有機ELディスプレイ、又は液晶ディスプレイ等)に用いられる。偏光板は、保護層(保護フィルム)、偏光子層、接着剤層及び位相差層等の複数の層を積層することによって製造される。従来の延伸されたポリビニルアルコールフィルムとは異なる偏光子層として、重合性液晶化合物の重合体及び二色性色素を含有する偏光子層が知られている。(下記特許文献1~3参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-83843号公報
【特許文献2】国際公開第2020/122117号
【特許文献3】国際公開第2020/179864号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
重合性液晶化合物の重合体及び二色性色素を含有する偏光子層を用いた偏光板の製造過程では、偏光子層と一つ以上の他の層との積層により、積層体が形成される。偏光子層の端面は積層体の端面に露出する。偏光子層の端面が治具(jig)等の製造設備又は偏光板用の梱包材へ接触することにより、偏光子層中の二色性色素が偏光子層の端面から脱離して製造設備又は梱包材に付着する。製造設備又は梱包材に付着した二色性色素が積層体(仕掛品)又は偏光板(製品)を汚染する。また偏光子層を含む複数の積層体(仕掛品)が製造過程において互いに接触することに因り、複数の積層体が偏光子層に由来する二色性色素によって互いに汚染される。これらの汚染により、偏光板の品質が損なわれる。
【0005】
本発明の一側面の目的は、偏光子層中の二色性色素による偏光板の汚染を抑制する偏光板、及び偏光板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る偏光板は、偏光子層を備え、偏光子層は、重合性液晶化合物の重合体、及び二色性色素を含有し、偏光子層は、偏光子層の厚み方向に略平行である端面を含む外周部と、外周部に囲まれた中央部と、を含み、外周部の一部又は全体における二色性色素の濃度が、中央部における二色性色素の濃度よりも低い。
【0007】
本発明の一側面に係る偏光板は、偏光子層の一方の表面に直接又は間接的に積層された第一保護層を備えてよい。
【0008】
第一保護層が、第一保護層の厚み方向に略平行である端面を有してよく、第一保護層の端面、及び偏光子層の端面が、同一の平面に含まれてよい。
【0009】
本発明の一側面に係る偏光板は、偏光子層の他方の表面に直接又は間接的に積層された第二保護層を備えてよい。
【0010】
第二保護層が、第二保護層の厚み方向に略平行である端面を有してよく、第二保護層の端面、及び偏光子層の前記端面が、同一の平面に含まれてよい。
【0011】
偏光子層の端面の一部又は全体が、ポリビニルアルコールを含む膜で覆われていてよい。
【0012】
偏光子層の外周部の厚みが、偏光子層の中央部の厚みと略等しくてよい。
【0013】
本発明の一側面に係る偏光板は、偏光板の厚み方向に略平行である端面を有してよく、偏光子層の端面が、偏光板の端面において露出していてよい。
【0014】
本発明の一側面に係る画像表示装置は、上記の偏光板を備える。
【0015】
本発明の第一側面に係る偏光板の製造方法は、上記の偏光板を製造する方法である。本発明の第一側面に係る偏光板の製造方法は、重合性液晶化合物の重合体及び二色性色素を含有する偏光子層を含む積層体を作製する工程と、二色性色素が溶解する溶剤を刃に付着させた後、積層体を刃で切断する工程、又は二色性色素が溶解する溶剤を刃に吹き付けながら、積層体を刃で切断する工程と、を備える。
【0016】
本発明の第一側面に係る偏光板の製造方法は、切断された積層体の切断面を乾燥する工程を更に備えてよい。
【0017】
本発明の第二側面に係る偏光板の製造方法は、上記の偏光板を製造する方法である。本発明の第二側面に係る偏光板の製造方法は、重合性液晶化合物の重合体及び二色性色素を含有する偏光子層を含む第一積層体を作製する工程と、第一積層体を切断することにより、複数の第二積層体を作製する工程と、複数の第二積層体を互いに重ねることにより、第三積層体を作製する工程と、二色性色素が溶解する溶剤を、刃及び第三積層体の端面のうち少なくとも一方に吹き付けながら、第三積層体の端面を刃で研磨する工程と、を備える。
【0018】
本発明の第二側面に係る偏光板の製造方法は、第三積層体の研磨された端面を乾燥する工程を更に備えてよい。
【0019】
本発明の第三側面に係る偏光板の製造方法は、上記の偏光板を製造する方法である。本発明の第三側面に係る偏光板の製造方法は、重合性液晶化合物の重合体及び二色性色素を含有する偏光子層を含む積層体を作製する工程と、二色性色素が溶解する溶剤を積層体の端面に吹き付けながら、積層体の端面をドライアイススノーで洗浄する工程、又は二色性色素が溶解する溶剤を積層体の端面に付着させた後、積層体の端面をドライアイススノーで洗浄する工程と、を備える。
【0020】
本発明の第三側面に係る偏光板の製造方法は、積層体の洗浄された端面を乾燥する工程を更に備えてよい。
【0021】
本発明の第四側面に係る偏光板の製造方法は、上記の偏光板を製造する方法である。本発明の第四側面に係る偏光板の製造方法は、重合性液晶化合物の重合体及び二色性色素を含有する偏光子層を含み、且つ寸法及び積層構造が偏光板と同じである複数の積層体を作製する工程と、二色性色素が溶解する溶剤を、互いに重ねられた複数の積層体の端面に塗布する工程と、互いに重ねられた複数の積層体の端面に塗布された溶剤を拭き取る工程と、溶剤が拭き取られた複数の積層体を梱包する工程と、を備える。
【0022】
本発明の第四側面に係る偏光板の製造方法は、複数の積層体を梱包する前に、溶剤が拭き取られた複数の積層体の端面を乾燥する工程を更に備えてよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一側面によれば、偏光子層中の二色性色素による偏光板の汚染を抑制する偏光板、及び偏光板の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る偏光板の断面を示しており、当該断面は、偏光子層の厚み方向(偏光板の積層方向)に略平行である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る偏光板に含まれる偏光子層の表面を示しており、当該表面は、偏光子層の厚み方向(偏光板の積層方向)に略垂直である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態が説明される。図面において、同等の構成要素には同等の符号が付される。本発明は下記実施形態に限定されるものではない。各図に示すX,Y及びZは、互いに直交する3つの座標軸を意味する。各図中のXYZ座標軸其々が示す方向は各図に共通する。X軸方向は、偏光板の長手方向、及び偏光板に含まれる各層(偏光子層等)の長手方向と言い換えられてよい。Y軸方向は、偏光板の幅方向、及び偏光板に含まれる各層(偏光子層等)の幅方向と言い換えられてよい。Z軸方向は、偏光板の積層方向(厚み方向)、及び偏光板に含まれる各層(偏光子層等)の厚み方向と言い換えられてよい。
【0026】
(偏光板の概要)
本実施形態に係る偏光板は、少なくとも偏光子層を備える。偏光子層は、重合性液晶化合物の重合体、及び二色性色素を含有する。偏光板は、偏光子層と、偏光子層に直接又は間接的に積層された一つ以上の他の層と、を備える積層体であってよい。例えば、偏光板は、偏光子層の一方の表面に直接又は間接的に積層された第一保護層を備えてよい。偏光板は、偏光子層の他方の表面に直接又は間接的に積層された第二保護層を備えてよい。偏光子層を第一保護層及び第二保護層のうち一方又は両方によって保護することにより、偏光子層の破損が抑制される。更に、第一保護層及び第二保護層のうち一方又は両方により、偏光子層から他の層への二色性色素の拡散が抑制される。
偏光板を構成する任意の2つの層がA層及びB層と表記される場合、A層に直接積層されたB層とは、他の層を介することなくA層に積層されたB層を意味する。A層に間接的に積層されたB層とは、他の層を介してA層に積層されたB層を意味する。
【0027】
図1は、本実施形態に係る偏光板の積層構造の一例を示す。図1に示される偏光板20は、第一保護層3と、第一保護層3の表面に直接積層された配向層4と、配向層4の表面に直接積層された偏光子層5と、偏光子層5の表面に直接積層された第二保護層6と、第二保護層6の表面に直接積層された第一接着剤層7と、第一接着剤層7の表面に直接積層された位相差層8と、位相差層8の表面に直接積層された第二接着剤層9と、第二接着剤層9の表面に直接積層された光学補償層10(別の位相差層)と、光学補償層10の表面に直接積層された第三保護層11と、を備えてよい。ただし、偏光板の積層構造は、図1に示される積層構造に限定されない。偏光板20の積層方向(偏光子層5の厚み方向)に略垂直な方向における偏光板20及び各層の形状は、画像表示装置の画面の形状と略同じであってよい。例えば、偏光板20の積層方向(偏光子層5の厚み方向)に略垂直な方向における偏光板20及び各層の形状は、矩形(長方形又は正方形)であってよい。ただし、偏光板20の積層方向(偏光子層5の厚み方向)に略垂直な方向における偏光板20及び各層の形状は限定されない。一つ以上の切欠き部(ノッチ)が偏光板20の端部に形成されていてよい。一つ以上の貫通穴が偏光板20に形成されていてもよい。
【0028】
図1及び図2に示されるように、偏光子層5は、偏光子層5の厚み方向(Z軸方向)に略平行である端面5Eを含む外周部5Pと、外周部5Pに囲まれた中央部5Cと、を含む。偏光板20は、偏光板20の厚み方向(積層方向)に略平行である端面を有してよく、偏光子層5の端面5Eは、偏光板の上記端面において露出していてよい。一方、偏光子層5の中央部5Cは、外周部5Pに囲まれているので、偏光子層5の中央部5Cは、偏光板20の上記端面において露出しない。
【0029】
外周部5Pの一部又は全体における二色性色素の濃度は、中央部5Cにおける二色性色素の濃度よりも低い。その結果、偏光子層5の端面5Eが治具(jig)等の製造設備又は偏光板用の梱包材へ接触する場合であっても、偏光子層5中の二色性色素が偏光子層5の端面5Eから脱離して製造設備又は梱包材に付着することを抑制することができる。したがって、製造設備又は梱包材に付着した二色性色素が積層体(仕掛品)又は偏光板(製品)を汚染することを抑制することができる。積層体(仕掛品)に含まれる偏光子層5の端面5Eが他の積層体(仕掛品)に接触する場合であっても、外周部5Pにおける二色性色素の濃度が、中央部5Cにおける二色性色素の濃度よりも低いので、一方の積層体の偏光子層5に由来する二色性色素が、他方の積層体(仕掛品)に付着することを抑制することができる。したがって、複数の積層体が偏光子層5に由来する二色性色素によって互いを汚染することを抑制することができる。これらの理由により、本実施形態によれば、二色性色素に因る偏光板の汚染が抑制され、偏光板の品質が向上する。
【0030】
外周部5Pと中央部5Cとの間における二色性色素の濃度の大小関係は、以下の方法によって特定されてよい。
本実施形態に係る偏光板20が、無アルカリガラス板の一方の表面に貼合される。二色性色素の濃度が均一である偏光子層を含む別の偏光板が、無アルカリガラス板の他方の表面に貼合される。偏光板20及び別の偏光板がクロスニコルとなるように、偏光板20及び別の偏光板其々の向きが調整される。以上の方法によって、試料が作製される。上記の試料の表面のうち本実施形態に係る偏光板20の表面全体の画像が、光学顕微鏡によって撮影される。例えば、光学顕微鏡としては、株式会社キーエンス製の「VHX-500」が用いられてよい。
偏光板20の画像のRGB値の平均値に基づき、偏光板20の表面全体の画像が、256階調(0~255)のモノクローム(グレースケール)の画素から構成される画像へ変換される。例えば、画像の変換には、画像解析ソフト(フリーソフト)である「ImageJ」が用いられてよい。偏光板20の画像のうち階調値が大きい部分は、偏光板20の画像のうち階調値が小さい部分よりも明るい。偏光板20の画像のうち二色性色素の濃度が低い偏光子層5の外周部5Pと重なる部分の階調値は、偏光板20の画像のうち二色性色素の濃度が高い偏光子層5の中央部5Cと重なる部分の階調値よりも大きい。したがって、偏光板20の画像のうち二色性色素の濃度が低い偏光子層5の外周部5Pと重なる部分は、偏光板20の画像のうち二色性色素の濃度が高い偏光子層5の中央部5Cと重なる部分よりも明るい。
偏光板20の画像の輪郭線のうち偏光子層5の端面5Eと重なる線分に垂直な方向に沿って、階調値のプロファイルが作成される。つまり、階調値のプロファイルの横軸の原点は、偏光子層5の端面5Eの位置に相当し、横軸の値は偏光子層5の端面5Eからの距離に相当する。階調値のプロファイルは、縦軸(偏光子層5の端面5E)に連続し、且つ階調値が大きく略一定である第一領域と、第一領域に連続し、且つ階調値が徐々に減少する第二領域と、第二領域に連続し、且つ階調値が小さく略一定である第三領域を含んでよい。第二領域の中間点に対応する横軸の値は、偏光子層5の厚み方向(Z軸方向)に略垂直な方向における外周部5Pの幅Wであってよい。例えば、外周部5Pの幅Wは、5μm以上50μm以下、5μm以上30μm以下、又は5μm以上20μm以下であってよい。外周部5Pの幅Wが大きいほど、二色性色素が偏光子層5の端面5Eから脱離し難く、二色性色素に因る汚染が抑制され易い。ただし、外周部5Pの幅Wの増加に伴って、偏光能を有する中央部5Cが狭まる。
【0031】
二色性色素の濃度の単位は、例えば、質量部であってよい。例えば、偏光子層5の外周部5Pの一部又は全体における二色性色素の濃度(質量の割合)は、100質量部の重合性液晶化合物の重合体に対して、0質量部以上1質量部未満であってよい。偏光子層5の中央部5Cにおける二色性色素の濃度は、100質量部の重合性液晶化合物の重合体に対して、1質量部以上20質量部以下であってよい。上述された偏光板20の画像における階調値と偏光子層5中の二色性色素の濃度との定量的な相関関係(例えば検量線)が予め測定されてよく、外周部5Pにおける二色性色素の濃度が外周部5Pにおける階調値から特定されてよい。同様に、中央部5Cにおける二色性色素の濃度が中央部5Cにおける階調値から特定されてよい。二色性色素の濃度は、二色性色素の含有量と言い換えられてよい。
【0032】
第一保護層3は、第一保護層3の厚み方向(Z軸方向)に略平行である端面を有してよく、第一保護層3の上記端面、及び偏光子層5の端面5Eが、同一の平面(偏光板20の一つの端面)に含まれてよい。第二保護層6は、第二保護層6の厚み方向(Z軸方向)に略平行である端面を有してよく、第二保護層6の端面、及び偏光子層5の端面5Eが、同一の平面(偏光板20の一つの端面)に含まれてよい。第一保護層3の上記端面、偏光子層5の端面5E、及び第二保護層6の上記端面の全てが、同一の平面(偏光板20の一つの端面)に含まれてよい。
偏光子層5の外周部5Pにおける二色性色素の濃度の低減に伴って、偏光子層5の外周部5Pは変形(伸縮)し難い。つまり、偏光子層5の外周部5Pにおける二色性色素の濃度の低減に伴って、偏光子層5の端面5Eの位置は変動し難い。したがって、外周部5Pにおける二色性色素の濃度の変化に関わらず、第一保護層3、偏光子層5、及び第二保護層6其々の端面は、同一の平面(偏光板20の一つの端面)に含まれ易い。
仮に、加熱、又はCOガスレーザー等のレーザーを用いた切断によって、偏光解消部が偏光子層5の外周部5Pに沿って形成される場合、偏光子層5の外周部5Pは熱に因り膨張又は収縮し易い。外周部5Pの膨張又は収縮に因り、偏光子層5の端面5Eの位置は変動し易い。その結果、偏光子層5の端面5Eの位置は、第一保護層3及び第二保護層6其々の端面の位置と揃い難い。つまり、従来の偏光解消部が偏光子層5の外周部5Pに沿って形成される場合、第一保護層3、偏光子層5、及び第二保護層6其々の端面は、同一の平面(偏光板20の一つの端面)に含まれ難い。
上記の理由により、二色性色素の濃度が低減された偏光子層5の外周部5Pは、従来の偏光解消部とは異なる。
【0033】
偏光子層5の外周部5Pの厚みは、偏光子層5の中央部5Cの厚みと略等しくてよい。
偏光子層5の外周部5Pにおける二色性色素の濃度の低減に伴って、偏光子層5の外周部5Pは変形し難い。つまり、偏光子層5の外周部5Pにおける二色性色素の濃度の低減に伴って、偏光子層5の厚みは変化し難い。したがって、二色性色素の濃度が低い外周部5Pの厚みは、二色性色素の濃度が高い中央部5Cの厚みと略等しい傾向がある。
仮に、加熱、又はCOガスレーザー等のレーザーを用いた切断によって、偏光解消部が偏光子層5の外周部5Pに沿って形成される場合、偏光子層5の外周部5Pは、熱に因り膨張又は収縮し易い。つまり、外周部5Pに沿った従来の偏光解消部の形成に伴って、偏光子層5の外周部5Pの厚みは変化し易い。したがって、従来の偏光解消部が形成された外周部5Pの厚みは、偏光解消部がない中央部5Cの厚みと異なる傾向がある。
上記の理由により、二色性色素の濃度が低減された偏光子層5の外周部5Pは、従来の偏光解消部とは異なる。
【0034】
偏光子層5の端面5Eの一部又は全体は、ポリビニルアルコールを含む膜(例えば、ポリビニルアルコールからなる膜)で覆われていてよい。ポリビニルアルコールを含む膜により、偏光子層5の端面5Eからの二色性色素の脱離が抑制され易い。
【0035】
本実施形態に係る画像表示装置は、上記の偏光板20を備える。例えば、画像表示装置は、上記の偏光板20と、偏光板20が直接又は間接的に積層された有機EL表示素子(有機ELパネル)と、を備える有機ELディスプレイであってよい。画像表示装置は、上記の偏光板20と、偏光板20が直接又は間接的に積層された液晶表示素子(液晶表示パネル)と、を備える液晶ディスプレイであってもよい。
【0036】
例えば、第一保護層3の厚みは、0.1μm以上13μm以下、0.3μm以上8μm以下、又は0.5μm以上5μm以下であってよい。
例えば、配向層4の厚みは、10nm以上5000nm以下、10nm以上1000nm以下、10nm以上500nm以下、又は10nm以上300nm以下であってよい。
例えば、偏光子層5の厚みは、0.5μm以上10μm以下、0.5μm以上8μm以下、又は1μm以上5μm以下であってよい。
例えば、第二保護層6の厚みは、0.1μm以上13μm以下、0.3μm以上8μm以下、又は0.5μm以上5μm以下であってよい。
例えば、第一接着剤層7の厚みは、0.1μm以上15μm以下、0.5μm以上10μm以下、又は1μm以上5μm以下であってよい。
例えば、位相差層8の厚みは、0.1μm以上10μm以下、0.5μm以上8μm以下、又は1μm以上6μm以下であってよい。
例えば、第二接着剤層9の厚みは、0.1μm以上15μm以下、0.5μm以上10μm以下、又は1μm以上5μm以下であってよい。
例えば、光学補償層10の厚みは、0.1μm以上10μm以下、0.5μm以上8μm以下、又は1μm以上6μm以下であってよい。
例えば、第三保護層11の厚みは、5μm以上100μm以下であってよい。
各層の厚みは、略均一であってよい。
【0037】
(偏光板の製造方法)
偏光板の製造方法の一例は、重合性液晶化合物の重合体及び二色性色素を含有する偏光子層5を含む積層体を作製する工程と、二色性色素が溶解する溶剤を刃に付着させた後、積層体を刃で切断する工程、又は二色性色素が溶解する溶剤を刃に吹き付けながら、積層体を刃で切断する工程と、を備えてよい。積層体を刃で切断する工程では、積層体の幅方向において対向する積層体の一対の両端部が切除されてよい。溶剤は刃に塗布されてよい。
積層体を刃で切断する工程において、偏光子層5の外周部5Pに含まれる二色性色素の少なくとも一部が、溶剤へ染み出し、積層体の切断に伴って二色性色素が積層体から除去される。その結果、外周部5Pにおける二色性色素の濃度が、中央部5Cにおける二色性色素の濃度よりも低くなる。
例えば、二色性色素が溶解する溶剤は、水(温水)、又は水で希釈されたエタノールであってよい。例えば、積層体の切断に用いられる刃は、スリッターであってよい。
刃で切断される積層体は、上述された偏光板20と同じ積層構造を有してよい。刃で切断される積層体は、第一保護層3と、第一保護層3の表面に直接積層された配向層4と、配向層4の表面に直接積層された偏光子層5と、からなっていてもよい。
偏光板の製造方法は、切断された積層体の切断面を乾燥する工程を更に備えてよい。乾燥の手段は、温風であってよい。偏光板の製造方法は、切断された積層体の切断面に残存する溶剤を拭き取る工程を備えてもよい。これらの工程により、切断された積層体の切断面に残存する二色性色素が確実に除去され易い。
【0038】
偏光板の製造方法の他の一例は、重合性液晶化合物の重合体及び二色性色素を含有する偏光子層5を含む第一積層体を作製する工程と、第一積層体を切断することにより、複数の第二積層体を作製する工程と、複数の第二積層体を互いに重ねることにより、第三積層体を作製する工程と、二色性色素が溶解する溶剤を、刃及び第三積層体の端面のうち少なくとも一方に吹き付けながら、第三積層体の端面を刃で研磨(切削)する工程と、を備えてよい。
第三積層体の端面を刃で研磨する工程において、偏光子層5の外周部5Pに含まれる二色性色素の少なくとも一部が、溶剤へ染み出し、第三積層体の端面の研磨に伴って二色性色素が第三積層体から除去される。その結果、外周部5Pにおける二色性色素の濃度が、中央部5Cにおける二色性色素の濃度よりも低くなる。
例えば、第三積層体の端面の研磨に用いられる刃は、エンドミル、又は円盤状の回転刃であってよい。
第一積層体及び第二積層体其々は、上述された偏光板20と同じ積層構造を有してよい。積層方向に略垂直な方向における第二積層体の寸法は、同方向における偏光板20の寸法と略同じであってよい。
偏光板の製造方法は、第三積層体の研磨された端面を乾燥する工程を更に備えてよい。乾燥の手段は、温風であってよい。偏光板の製造方法は、第三積層体の研磨された端面に残存する溶剤を拭き取る工程を備えてもよい。これらの工程により、第三積層体の研磨された端面に残存する二色性色素が確実に除去され易い。
【0039】
偏光板の製造方法の他の一例は、重合性液晶化合物の重合体及び二色性色素を含有する偏光子層5を含む積層体を作製する工程と、二色性色素が溶解する溶剤を積層体の端面に吹き付けながら、積層体の端面をドライアイススノーで洗浄する工程、又は二色性色素が溶解する溶剤を積層体の端面に付着させた後、積層体の端面をドライアイススノーで洗浄する工程と、を備えてよい。溶剤は積層体の端面に塗布されてよい。
積層体の端面をドライアイススノーで洗浄する工程において、偏光子層5の外周部5Pに含まれる二色性色素の少なくとも一部が、溶剤へ染み出し、ドライアイススノーによって二色性色素が積層体から除去される。その結果、外周部5Pにおける二色性色素の濃度が、中央部5Cにおける二色性色素の濃度よりも低くなる。
例えは、ドライアイススノーで洗浄される積層体は、上記の第一積層体、第二積層体、及び第三積層体のうち少なくともいずれか一つの積層体であってよい。つまり、積層体の端面をドライアイススノーで洗浄する工程は、積層体を刃で切断する上記工程後に実施されてよい。積層体の端面をドライアイススノーで洗浄する工程は、第三積層体の端面を刃で研磨する上記工程後に実施されてもよい。積層体の切断及び積層体の端面の研磨によって生じた加工屑が、ドライアイススノーを用いた洗浄によって除去される。ドライアイススノーで洗浄された後の積層体は、偏光板の完成品として梱包されてよい。
偏光板の製造方法は、ドライアイススノーで洗浄された端面を乾燥する工程を更に備えてよい。乾燥の手段は、温風であってよい。偏光板の製造方法は、ドライアイススノーで洗浄された端面に残存する溶剤を拭き取る工程を備えてもよい。これらの工程により、積層体の端面に残存する二色性色素が確実に除去され易い。
【0040】
偏光板の製造方法の他の一例は、重合性液晶化合物の重合体及び二色性色素を含有する偏光子層5を含み、且つ寸法及び積層構造が偏光板と同じである複数の積層体を作製する工程と、二色性色素が溶解する溶剤を、互いに重ねられた複数の積層体の端面に塗布する工程と、互いに重ねられた複数の積層体の端面に塗布された溶剤を拭き取る工程と、溶剤が拭き取られた複数の積層体を梱包する工程と、を備えてよい。
積層体の端面への溶剤の塗布により、偏光子層5の外周部5Pに含まれる二色性色素の少なくとも一部が、溶剤へ染み出す。積層体の端面からの溶剤の拭き取りにより、二色性色素が溶剤と共に積層体から除去される。その結果、外周部5Pにおける二色性色素の濃度が、中央部5Cにおける二色性色素の濃度よりも低くなる。
偏光子層5を含み、且つ寸法及び積層構造が偏光板と同じである複数の積層体は、上記の第二積層体であってよい。溶剤が拭き取られた複数の積層体とは、完成された複数の偏光板と言い換えられてよい。
積層体の端面への溶剤の塗布、及び積層体の端面からの溶剤の拭き取りは、積層体を刃で切断する上記工程後に実施されてよい。積層体の端面への溶剤の塗布、及び積層体の端面からの溶剤を拭き取りは、第三積層体の端面を刃で研磨する上記工程後に実施されてもよい。
偏光板の製造方法は、複数の積層体を梱包する工程の前に、溶剤が拭き取られた複数の積層体の端面を乾燥する工程を更に備えてよい。積層体の端面を乾燥することにより、積層体の端面に残存する二色性色素が確実に除去され易い。乾燥の手段は、温風であってよい。
【0041】
複数の上記製造方法、及び複数の上記工程は、互いに組み合わされてよい。
【0042】
(第一保護層3)
第一保護層3は、偏光子層5(及び配向層4)を保護し、偏光子層5からの二色性色素の拡散を抑制する。第一保護層3は、ハードコート層(表面処理層)と言い換えられてよい。第一保護層3は、紫外線硬化性樹脂の硬化物であってよい。例えば、紫外線硬化性樹脂は、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、及びエポキシ系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。第一保護層3の機械的強度を向上させるために、無機系微粒子、有機系微粒子、又はこれらの混合物が第一保護層3に添加されてよい。第一保護層3は、転写法によって基材フィルムの表面に形成されてよい。例えば、第一保護層3の形成方法は、未硬化の紫外線硬化性樹脂を含む塗膜を、離型剤で覆われた基材フィルムの表面に形成する工程と、塗膜を基材フィルムから別の基材フィルムの表面へ転写する工程と、別の基材フィルムの表面へ転写された塗膜を紫外線の照射によって硬化する工程を含んでよい。基材フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂フィルムであってよい。
【0043】
第一保護層3は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のメタクリル系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、トリアセチルセルロース及びジアセチルセルロース等の酢酸セルロース系樹脂フィルム、シクロポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルム、並びにポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂フィルムからなる群より選ばれる一種の熱可塑性樹脂フィルムであってもよい。
【0044】
(配向層4)
配向層4は、高分子化合物を含む膜であり、偏光子層5を構成する重合性液晶化合物を所望の方向に配向させる機能を有する。例えば、配向層4は、配向性ポリマーからなる配向膜、光配向膜及びグルブ(groove)配向膜からなる群より選ばれる一種の配向膜であってよい。
【0045】
配向性ポリマーは、分子内にアミド結合を有するポリアミド、分子内にアミド結合を有するゼラチン、分子内にイミド結合を有するポリイミド、当該ポリイミドの加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の高分子化合物であってよい。
【0046】
例えば、配向層4の形成方法は、配向性ポリマー及び溶剤を含む塗膜を第一保護層3の表面に形成する工程と、溶剤を塗膜から除去する工程と、溶剤から除去された塗膜をラビング(rubbing)法によって処理する工程を含んでよい。
【0047】
配向層4の形成に用いられる溶剤は、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル溶剤;並びにクロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素置換炭化水素溶剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤であってよい。
【0048】
光配向膜は、光反応性基を有するポリマーを含む。光配向膜の形成方法は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーと上記溶剤を含む塗膜を第一保護層3の表面に形成する工程と、偏光(好ましくは、偏光紫外線)を塗膜に照射す工程と、を含んでよい。
【0049】
光反応性基は、光を照射することにより液晶配向能を発現する官能基である。例えば、光反応性基は、光の照射により分子の配向を誘起する官能基であってよい。光反応性基は、液晶配向能の起源となる光反応(異性化反応、二量化反応、光架橋反応、又は光分解反応)を起こす官能基であってもよい。例えば、光反応性基は、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)、及び炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも一つの結合構造を有する官能基であってよい。
【0050】
C=C結合を有する光反応性基は、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ-ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基及びシンナモイル基からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。C=N結合を有する光反応性基は、芳香族シッフ塩基及び芳香族ヒドラゾンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。N=N結合を有する光反応性基は、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基、及びアゾキシベンゼン型構造からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。C=O結合を有する光反応性基は、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基及びマレイミド基からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。光反応性基を有するポリマーは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基及びハロゲン化アルキル基からなる群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有していてもよい。
【0051】
グルブ(groove)配向膜は、表面に複数の凹凸パターン又は複数のグルブ(溝)が形成された膜である。偏光子層5を構成する重合性液晶化合物が、凹凸パターン又は複数のグルブに沿って所定の方向に配向される。
【0052】
グルブ配向膜の形成方法は、複数のスリットが形成された露光用マスクを用いた感光性ポリイミド膜の表面の露光と、露光に続く現像及びリンス処理によって、凹凸パターンを感光性ポリイミド膜の表面に形成する工程を含んでよい。グルブ配向膜の形成方法は、未硬化の紫外線硬化性樹脂を含む塗膜を、溝が形成された板状の原盤の表面に形成する工程と、塗膜を原盤から第一保護層3の表面へ転写する工程と、第一保護層3の表面に転写された塗膜を紫外線の照射によって硬化する工程とを含んでよい。グルブ配向膜の形成方法は、未硬化の紫外線硬化性樹脂を含む塗膜を、第一保護層3の表面に形成する工程と、複数の溝を有するロールの表面を塗膜の表面に押し当てる工程と、表面に溝が形成された塗膜を紫外線の照射によって硬化する工程とを含んでよい。
【0053】
(偏光子層5)
偏光子層5は、重合性液晶化合物の重合体、及び二色性色素を含む。偏光子層5の形成方法は、重合性液晶化合物、二色性色素及び溶媒を含む偏光子層用原料を配向層4の表面に塗布して、塗膜を形成する工程と、塗膜中の重合性液晶化合物を重合させる工程と、を含んでよい。例えば、特開2017-83843号公報に記載の「偏光膜形成用組成物」が、偏光子層用原料として用いられてよい。
【0054】
重合性液晶化合物は、重合性基を有し、且つ、液晶性を示す化合物である。重合性基は、重合反応に関与する基である。例えば、重合性基は、光重合性基であってよい。光重合性基は、光重合開始剤から発生した活性ラジカル又は酸等によって重合反応に関与する基であってよい。例えば、重合性基は、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基であってよい。重合性液晶化合物は、サーモトロピック液晶又はリオトロピック液晶であってよい。
【0055】
重合性液晶化合物は、ネマチック液晶相を形成するサーモトロピック性液晶化合物、スメクチック液晶相を形成するサーモトロピック性液晶化合物、又は高次スメクチック液晶相を形成するサーモトロピック性液晶化合物であってよい。重合性液晶化合物は、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相又はスメクチックL相を形成するサーモトロピック性液晶化合物であってよい。偏光性能に優れた偏光子層5のX線回折パターンは、ヘキサチック相及びクリスタル相等の高次構造に由来する回折X線のピークを含む。高次構造に由来する回折X線のピークは、分子配向の周期構造に由来するピークであってよい。分子配向の周期間隔が3~6Åであってよい。
【0056】
重合性液晶化合物は、下記化学式Aで表される少なくとも一種の化合物であってよい。
-V-W-X-Y-X-Y-X-W-V-U (A)
、X及びX其々は独立に、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、又は置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基を表す。ただし、X、X及びXのうち少なくとも一つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基である。シクロへキサン-1,4-ジイル基を構成する-CH-は、-O-、-S-又は-NR-で置換されていてもよい。Rは、炭素数が1~6であるアルキル基又はフェニル基を表す。
及びY其々は独立に、-CHCH-、-CHO-、-COO-、-OCOO-、単結合、-N=N-、-CR=CR-、-C≡C-又は-CR=N-を表す。R及びR其々は独立に、水素原子、又は炭素数が1~4であるアルキル基を表す。
は、水素原子、又は重合性基を表す。
は、重合性基を表す。
及びW其々は独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-又は-OCOO-を表す。
及びV其々は独立に、炭素数が1~20であり、且つ置換基を有していてもよいアルカンジイル基を表す。該アルカンジイル基を構成する-CH-は、-O-、-S-又は-NH-で置換されていてもよい。
【0057】
二色性色素は、300~700nmである範囲に吸収極大波長(λMAX)を有する色素であってよい。例えば、二色性色素は、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素及びアントラキノン色素からなる群より選ばれる少なくとも一種の色素であってよい。例えば、アゾ色素は、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素及びスチルベンアゾ色素からなる群より選ばれる少なくとも一種の色素であってよい。偏光子層5は、2種以上の二色性色素(特にアゾ色素)、又は3種以上の二色性色素(特にアゾ色素)を含んでよい。
【0058】
例えば、アゾ色素は、下記化学式Bで表される化合物であってよい。
(-N=N-A-N=N-A (B)
及びA其々は独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。
は、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、置換基を有していてもよいナフタレン-1,4-ジイル基、又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を表す。
pは1~4の整数を表す。pが2以上である場合、複数のAは互いに同一でもよく、複数のAは互いに異なっていてもよい。
【0059】
偏光子層用原料に用いられる溶剤は、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン及びメチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル溶剤;並びに、クロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素含有溶剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤であってよい。
【0060】
偏光子層用原料は、重合開始剤(光重合開始剤等)を含んでよい。例えば、重合開始剤は、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であってよい。
【0061】
偏光子層用原料は、重合性液晶化合物、二色性色素、溶剤、及び重合開始剤に加えて、増感剤、重合禁止剤、レベリング剤、及び反応性添加剤を更に含んでよい。
【0062】
国際公開第2020/122117号に記載の「光配向層」を、配向層4として用いてよく、同文献に記載の「液晶層」を、偏光子層5として用いてよい。国際公開第2020/179864号に記載の「光配向膜」を、配向層4として用いてよく、同文献に記載の「偏光層」を、偏光子層5として用いてよい。
【0063】
(第二保護層6)
例えば、第二保護層6は、ポリビニルアルコール系樹脂を含んでよい。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂は、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、及びアミノ基変性ポリビニルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種のポリビニルアルコールであってよい。第二保護層6の形成方法は、ポリビニルアルコール系樹脂及び水を含む塗膜を偏光子層5の表面に形成する工程と、塗膜の加熱により、塗膜を乾燥する工程と、を含んでよい。
【0064】
第二保護層6は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のメタクリル系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、トリアセチルセルロース及びジアセチルセルロース等の酢酸セルロース系樹脂フィルム、シクロポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルム、並びにポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂フィルムからなる群より選ばれる一種の熱可塑性樹脂フィルムであってもよい。
【0065】
第二保護層6は、エポキシ化合物、オキセタン化合物及びビニル化合物等のカチオン重合性化合物の硬化物を含んでよい。第二保護層6は、ラジカル重合性化合物の硬化物を含んでもよい。
【0066】
(第一接着剤層7及び第二接着剤層9)
第一接着剤層7及び第二接着剤層9其々は、多官能アクリレート化合物及び多官能メタクリレート化合物などの(メタ)アクリレート化合物;多官能ウレタンアクリレート化合物及び多官能ウレタンメタクリレート化合物などのウレタン(メタ)アクリレート化合物;多官能エポキシアクリレート化合物及び多官能エポキシメタクリレート化合物などのエポキシ(メタ)アクリレート化合物;カルボキシル基変性エポキシアクリレート化合物、ポカルボキシル基変性エポキシメタクリレート化合物、ポリエステルアクリレート化合物、ポリエステルメタクリレート化合物、エポキシ基を有するエポキシ化合物、オキセタニル基を有するオキセタン化合物、及びビニル化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の重合性化合物の重合体(硬化物)を含んでよい。重合性化合物の重合方法(硬化方法)は、光(紫外線等)の照射、又は加熱であってよい。
重合性化合物及び溶剤を含む未硬化の第一接着剤層7が、第二保護層6又は位相差層8の表面に形成されてよく、位相差層8が未硬化の第一接着剤層7を介して第二保護層6の表面に貼合されてよく、位相差層8の貼合直後に第一接着剤層7が硬化されてよい。
重合性化合物及び溶剤を含む未硬化の第二接着剤層9が、位相差層8又は光学補償層10の表面に形成されてよく、光学補償層10が未硬化の第二接着剤層9を介して位相差層8の表面に貼合されてよく、光学補償層10の貼合直後に第二接着剤層9が硬化されてよい。
第一接着剤層7の組成は、第二接着剤層9の組成と同じであってよい。第一接着剤層7の組成は、第二接着剤層9の組成と異なってもよい。
【0067】
(位相差層8及び光学補償層10)
光学補償層10は、位相差層8とは別の位相差層と言い換えられてよい。例えば、位相差層8及び光学補償層10其々は、λ/4板及びλ/2板等のポジティブAプレート、並びにポジティブCプレート(光配向材垂直配向フィルム)からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。位相差層8及び光学補償層10其々は、上記の重合性液晶化合物を上記配向層4とは別の配向層へ塗布することによって形成されてもよい。位相差層8及び光学補償層10其々を形成するための配向層の形成方法は、偏光子層5用の上記配向層4と同様であってよい。
【0068】
(第三保護層11)
例えば、第三保護層11は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のメタクリル系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、トリアセチルセルロース及びジアセチルセルロース等の酢酸セルロース系樹脂フィルム、シクロポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルム、並びにポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂フィルムからなる群より選ばれる一種の熱可塑性樹脂フィルムであってもよい。
【0069】
本発明は上述された実施形態に限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、本発明の種々の変更が可能であり、これ等の変更例も本発明に含まれる。
【0070】
本発明に係る偏光板は、上記の偏光板20のように、一つ以上の位相差層を備える円偏光板又は楕円偏光板であってよい。本発明に係る偏光板は位相差層を備えない直線偏光板であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
例えば、本発明の一側面に係る偏光板は、有機ELディスプレイ、又は液晶ディスプレイに用いられてよい。
【符号の説明】
【0072】
3…第一保護層、4…配向層、5…偏光子層、5E…偏光子層の端面、5P…偏光子層の外周部、5C…偏光子層の中央部、6…第二保護層、7…第一接着剤層、8…位相差層、9…第二接着剤層、10…光学補償層(別の位相差層)、11…第三保護層、20…偏光板。
図1
図2