(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003866
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及びメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20230110BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20230110BHJP
B41J 2/19 20060101ALI20230110BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
B41J2/165 203
B41J2/18
B41J2/19
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105198
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】徳山 浩二
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA15
2C056EB12
2C056EB13
2C056EB15
2C056EB34
2C056EB35
2C056EB37
2C056EB46
2C056EB58
2C056EC04
2C056EC08
2C056EC16
2C056EC18
2C056EC32
2C056FA04
2C056FA13
2C056KB04
2C056KB10
2C056KB15
2C056KB16
(57)【要約】
【課題】ノズル内の液体を圧力室側へ引き込むメンテナンス動作を行う場合に、液体中の気泡の量が過多状態になるのを抑制する。
【解決手段】液体を吐出するノズルに連通する圧力室に圧力変動を生じさせる液体吐出ヘッド100と、前記圧力室から排出通路282,292を通じて排出された液体が供給通路281,291を通じて該圧力室へ戻るように液体を循環させる液体循環機構200と、を備えた液体吐出ユニットであって、前記排出通路には、前記圧力室に通じる循環用通路部292とは異なる別の通路部402に分岐する分岐部が設けられ、前記排出通路内の液体を前記分岐部から前記別の通路部へ吸い込むことにより、前記ノズル内の液体を前記圧力室側へ引き込む液流を発生させる液流発生手段400と、前記分岐部を通過する液体の流路を前記循環用通路部又は前記別の通路部に切り替える流路切替手段401とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルと、前記ノズルに連通する圧力室と、前記圧力室に圧力変動を生じさせる圧力発生手段とを備えた液体吐出ヘッドと、
前記圧力室から排出通路を通じて排出された液体が供給通路を通じて該圧力室へ戻るように液体を循環させる液体循環機構と、を備えた液体吐出ユニットであって、
前記排出通路には、前記圧力室に通じる循環用通路部とは異なる別の通路部に分岐する分岐部が設けられ、
前記排出通路内の液体を前記分岐部から前記別の通路部へ吸い込むことにより、前記ノズル内の液体を前記圧力室側へ引き込む液流を発生させる液流発生手段と、
前記分岐部を通過する液体の流路を前記循環用通路部又は前記別の通路部に切り替える流路切替手段とを備えることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出ユニットにおいて、
前記液流発生手段は、前記別の通路部へ吸い込んだ液体を貯留する液体貯留部と、前記排出通路内の液体を前記分岐部から前記別の通路部へ吸い込むための負圧を前記液体貯留部内に発生させる負圧発生手段とを有することを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出ユニットにおいて、
前記負圧発生手段は、前記液体貯留部内における気体を吸い込んで前記負圧を前記液体貯留部内に発生させることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体吐出ユニットにおいて、
前記液体循環機構は、前記排出通路内の液体流速又は圧力を検出する検出手段と、前記排出通路内の液体を前記分岐部から前記循環用通路部へ流すときに、前記ノズル内の液体が前記圧力室側へ引き込まれない範囲で、前記検出手段の検出結果に応じた液流を前記排出通路内に発生させる第二の液流発生手段とを有することを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体吐出ユニットを備えることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液体を吐出する装置において、
画像情報に基づいて前記液体吐出ヘッドのノズルから記録材上に液体を吐出する画像形成動作を実行していない非画像形成動作中に、前記分岐部を通過する液体の流路を前記流路切替手段により前記別の通路部へ切り替えて、前記液流発生手段により前記ノズル内の液体を前記圧力室側へ引き込む液流を発生させた後、前記分岐部を通過する液体の流路を前記流路切替手段により前記循環用通路部へ切り替える制御を実行する制御手段を有することを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項7】
請求項6に記載の液体を吐出する装置において、
前記制御手段は、前記画像形成動作を連続して実行する場合、該画像形成動作間における非画像形成動作中に、前記制御を実行することを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項8】
液体を吐出するノズルと、前記ノズルに連通する圧力室と、前記圧力室に圧力変動を生じさせる圧力発生手段とを備えた液体吐出ヘッドと、前記圧力室から排出通路を通じて排出された液体が供給通路を通じて該圧力室へ戻るように液体を循環させる液体循環機構と、を備えた液体吐出ユニットのメンテナンス方法であって、
前記排出通路の分岐部を通過する液体の流路を切り替える流路切替手段により、前記圧力室に通じる循環用通路部から該循環用通路部とは異なる別の通路部に切り替えた後、前記排出通路内の液体を前記分岐部から前記別の通路部へ吸い込むことにより、前記ノズル内の液体を前記圧力室側へ引き込むことを特徴とするメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及びメンテナンス方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を吐出するノズルに連通する圧力室に圧力発生手段によって圧力変動を生じさせる液体吐出ヘッドと、圧力室から排出通路を通じて排出された液体が供給通路を通じて圧力室へ戻す液体循環機構とを有する液体吐出ユニットが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1は、圧力室から循環路(排出通路)を通じて排出されたインク(液体)を注入経路(供給通路)を通じて圧力室へ戻す循環機構(液体循環機構)を備えたインクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)が開示されている。このインクジェットヘッドは、圧力室に連通する循環路を負圧にして圧力室内のインクを循環路へ排出させる圧力制御手段を備えている。このインクジェットヘッドでは、ノズル内のインク(液体)の粒子沈降や粘度上昇(増粘)による吐出不良を回避する目的で、ノズル内のインクを圧力室側へ引き込んでメニスカスを一旦破壊するメンテナンス動作を行う。このメンテナンス動作時には、インクの循環に用いている液体循環機構の圧力制御手段を利用し、インク循環時よりも大きな負圧を循環路内に発生させることで、ノズル内のインクを圧力室側へ引き込む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、ノズル内の液体を圧力室側へ引き込むメンテナンス動作を行う場合、外部の空気がノズルから吸い込まれて液体中に気泡として取り込まれるため、循環される液体中に含まれる気泡が経時的に増えていき、不具合を引き起こすという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、液体を吐出するノズルと、前記ノズルに連通する圧力室と、前記圧力室に圧力変動を生じさせる圧力発生手段とを備えた液体吐出ヘッドと、前記圧力室から排出通路を通じて排出された液体が供給通路を通じて該圧力室へ戻るように液体を循環させる液体循環機構と、を備えた液体吐出ユニットであって、前記排出通路には、前記圧力室に通じる循環用通路部とは異なる別の通路部に分岐する分岐部が設けられ、前記排出通路内の液体を前記分岐部から前記別の通路部へ吸い込むことにより、前記ノズル内の液体を前記圧力室側へ引き込む液流を発生させる液流発生手段と、前記分岐部を通過する液体の流路を前記循環用通路部又は前記別の通路部に切り替える流路切替手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ノズル内の液体を圧力室側へ引き込むメンテナンス動作を行う場合に、循環される液体中の気泡の量が過多状態になるのを抑制でき、不具合の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の画像形成システムの一例を示す概略構成図。
【
図2】同画像形成システムにおけるヘッドユニットの構成を説明するために、ヘッドユニットに対向する連続シートのシート面法線方向からヘッドユニットを見たときの説明図。
【
図3】同画像形成システムにおける液体吐出ヘッドを示す外観斜視説明図。
【
図4】同液体吐出ヘッドのノズル列方向と直交する断面説明図。
【
図5】同画像形成システムにおける液体循環機構の構成及び動作を説明するための説明図。
【
図6】同画像形成システムにおける1つのヘッドアレイに設けられる複数の液体吐出ヘッドと連続シート上の非画像領域部との位置関係を示す説明図。
【
図7】同画像形成システムにおける4つのヘッドアレイを備えたヘッドユニットと連続シート上の非画像領域部との位置関係を示す説明図。
【
図8】実施形態におけるメニスカス回復動作の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を、液体を吐出する装置であるインクジェットプリンタからなる画像形成装置を含む画像形成システムに適用した一実施形態について説明する。
【0009】
図1は、本実施形態の画像形成システム1000の一例を示す概略構成図である。
本実施形態の画像形成システム1000は、記録材としての連続体である連続シート10を搬送する巻き出し装置1と、巻き出し装置1により搬送される連続シート10に対して液体を吐出して画像を形成する画像形成装置5と、画像が形成された連続シート10を排出する巻き取り装置9と、を備えている。画像形成装置5は、巻き出し装置1により搬送された連続シート10をヘッドユニット50に搬送する搬送部3、画像が形成された連続シート10を乾燥する乾燥部7などを備えている。
【0010】
連続シート10は、巻き出し装置1のシートロール11から送り出され、巻き出し装置1、搬送部3、乾燥部7、巻き取り装置9の各ローラによって搬送されて、巻き取り装置9の印刷ロール91にて巻き取られる。連続シート10は、画像形成装置5において、ヘッドユニット50に対向して搬送され、ヘッドユニット50から吐出される液体によって画像が形成される。
【0011】
ヘッドユニット50には、例えば、シート搬送方向上流側から順に4色分のフルライン型ヘッドアレイ51K,51C,51M,51Yと、各ヘッドアレイ51K,51C,51M,51Yにそれぞれ対応する液体循環機構200K,200C,200M,200Yとが配置されている。各ヘッドアレイ51K,51C,51M,51Yは、1又は2以上の液体吐出ヘッドを備えており、それぞれ、搬送される連続シート10に対してブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の液体を吐出する。
【0012】
図2は、ヘッドユニット50の構成を説明するために、ヘッドユニット50に対向する連続シート10のシート面法線方向からヘッドユニット50を見たときの説明図である。
本実施形態の各ヘッドアレイ51K,51C,51M,51Yは、
図2に示すように、液体吐出ヘッド100をベース部材52上に千鳥状に並べて配置したものである。詳しくは、各ヘッドアレイ51K,51C,51M,51Yに配置される複数の液体吐出ヘッド100は、ノズル列方向がシート幅方向(シート搬送方向に対して直交する方向)に一致するように配置される。そして、隣り合う液体吐出ヘッド100同士のシート搬送方向位置を互い違いにずらして、隣り合う液体吐出ヘッド100のノズル列のシート幅方向位置が互いに部分的に重複するように、配置される。
【0013】
図3は、本実施形態における液体吐出ヘッド100を示す外観斜視説明図である。
図4は、本実施形態における液体吐出ヘッド100のノズル列方向と直交する断面説明図である。
本実施形態の液体吐出ヘッド100は、ノズル板101と、流路板102と、振動板部材103とを積層接合した構造部を備えている。また、液体吐出ヘッド100は、振動板部材103の振動領域(振動板)130を変位させる圧力発生手段としての圧電アクチュエータ111と、液体吐出ヘッド100のフレーム部材を兼ねている共通液室部材120と、カバー129とを備えている。なお、流路板102と振動板部材103とで構成される部分を流路部材140という。
【0014】
ノズル板101には、液体を吐出する複数のノズル104が形成されている。
【0015】
流路板102には、ノズル104にノズル連通路105を介して連通している圧力室としての個別液室106、個別液室106に通じる供給側流体抵抗部107、供給側流体抵抗部107に通じる液導入部108となる貫通穴や溝部が形成されている。ノズル連通路105は、ノズル104と個別液室106とにそれぞれ連なって通じる流路である。また、液導入部108は、振動板部材103の開口109を介して供給側共通液室110に通じている。
【0016】
振動板部材103は、流路板102の個別液室106の壁面を形成する変形可能な振動領域130を有する。振動板部材103は、例えば2層構造(限定されない)であり、流路板102側から、薄肉部を形成する第1層と、厚肉部を形成する第2層とで構成され、第1層で個別液室106に対応する部分に変形可能な振動領域130を形成している。
【0017】
振動板部材103の個別液室106とは反対側には、振動板部材103の振動領域130を変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ111が配置されている。圧電アクチュエータ111は、例えば、ベース部材113上に接合した圧電部材をハーフカットダイシングによって溝加工して所要数の柱状の圧電素子112を所定の間隔で櫛歯状に形成したものである。圧電素子112は、振動板部材103の振動領域130に形成した島状の厚肉部である凸部130aに接合される。また、圧電素子112には、フレキシブル配線部材115が接続されている。
【0018】
共通液室部材120には、供給側共通液室110と排出側共通液室150とが形成されている。供給側共通液室110は、供給ポート171に通じ、排出側共通液室150は排出ポート181に通じている。共通液室部材120は、例えば、第1共通液室部材121及び第2共通液室部材122によって構成され、第1共通液室部材121が流路部材140の振動板部材103側に接合され、第1共通液室部材121に第2共通液室部材122が積層して接合されている。
【0019】
第1共通液室部材121は、液導入部108に通じる供給側共通液室110の一部である下流側共通液室110Aと、排出流路151に通じる排出側共通液室150とを形成している。また、第2共通液室部材122は、供給側共通液室110の残部である上流側共通液室110Bを形成している。また、流路板102には、各個別液室106にノズル連通路105を介して通じる流路板102の面方向に沿って延びる排出流路151が形成されている。排出流路151は排出側共通液室150に通じている。
【0020】
本実施形態の液体吐出ヘッド100においては、例えば、圧電素子112に印加する電圧を基準電位(中間電位)から下げることによって圧電素子112が収縮し、振動板部材103の振動領域130が引かれて個別液室106の容積が膨張する。これにより、個別液室106内に液体が流入する。一方、圧電素子112に印加する電圧を上げて圧電素子112を積層方向に伸長させ、振動板部材103の振動領域130をノズル104に向かう方向へ変形させることで、個別液室106の容積が収縮する。これにより、個別液室106内の液体が加圧され、ノズル104から液体が吐出される。
【0021】
ノズル104から吐出されない個別液室106内の液体は、排出流路151から排出側共通液室150へと排出され、排出側共通液室150から外部の循環経路を通じて供給側共通液室110に再度供給される。なお、ヘッドの駆動方法については、上記の例(引き-押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行うこともできる。
【0022】
図5は、本実施形態における液体循環機構200の構成及び動作を説明するための説明図である。
なお、液体循環機構200は、各ヘッドアレイ51K,51C,51M,51Yのそれぞれに設けられているが、その構成及び動作について実質的に同じである。
【0023】
液体循環機構200は、液体吐出ヘッド100から吐出される液体を貯留する手段として、メインタンク201と、供給側サブタンク211と、排出側サブタンク221と、中間サブタンク231とを備えている。各サブタンク211,221,231は、内部に気体と液体との界面(気液界面)210が生じるように構成されている。中間サブタンク231は、大気開放されており、供給側サブタンク211と排出側サブタンク221との間に配置されている。
【0024】
また、液体循環機構200は、液体を循環させるための液流を発生させる送液手段として、中間サブタンク231から供給側サブタンク211に送液する供給ポンプ202と、排出側サブタンク221から中間サブタンク231に送液する排出ポンプ203と、メインタンク201から中間サブタンク231に送液する補給ポンプ204とを備えている。また、液体循環機構200は、液体循環機構200が接続されるヘッドアレイ51に設けられている複数の液体吐出ヘッド100に通じる供給側マニホールド241及び排出側マニホールド251を備えている。
【0025】
また、液体循環機構200は、供給側サブタンク211と供給側マニホールド241との間に、液体中の溶存気体(気泡など)を除去する脱気手段としての脱気装置270を備えている。
【0026】
中間サブタンク231は、補給ポンプ204による送液動作によって、メインタンク201から補給用通路フィルタ205及び補給用通路を介して液体の補給を受ける。補給ポンプ204は、中間サブタンク231内の液面位置(液面高さ)を検知する液面検知手段232の検知結果に基づき、中間サブタンク231内の液面が所定の高さに維持されるように送液動作を行う。
【0027】
中間サブタンク231と供給側サブタンク211との間は供給通路281を通じて接続され、供給通路281に供給ポンプ202が設けられている。中間サブタンク231と排出側サブタンク221の間は排出通路282を通じて接続され、排出通路282に第二の液流発生手段としての排出ポンプ203が設けられている。
【0028】
供給側サブタンク211は、脱気装置270、供給通路フィルタ271を含む供給通路291を通じて供給側マニホールド241に接続されている。供給側マニホールド241は、液体吐出ヘッド100の供給ポート171側にヘッド供給通路242を介して接続されている。また、供給側マニホールド241には、供給側マニホールド241内の圧力を検出する検出手段としての供給圧力センサ274が備わっている。本実施形態の供給通路は、主に、供給通路281,291、供給側マニホールド241、ヘッド供給通路242によって構成される。
【0029】
排出側サブタンク221は、排出通路292を通じて排出側マニホールド251に接続されている。排出側マニホールド251は、液体吐出ヘッド100の排出ポート181側にヘッド排出通路252を介して接続されている。排出側マニホールド251には、排出側マニホールド251内の圧力を検出する検出手段としての排出圧力センサ276が備わっている。なお、排出圧力センサ276に代えて、排出側マニホールド251内の液体流速を検出するような検出手段が設けられてもよい。本実施形態の排出通路は、主に、排出通路282,292、排出側マニホールド251、ヘッド排出通路252によって構成される。
【0030】
本実施形態においては、中間サブタンク231から、供給通路281、供給側サブタンク211、供給通路291、脱気装置270、供給側マニホールド241、ヘッド供給通路242、液体吐出ヘッド100、ヘッド排出通路252、排出側マニホールド251、排出通路292、排出側サブタンク221、排出通路282を経て、中間サブタンク231に戻るという循環経路で、液体が循環する。
【0031】
本実施形態において、ヘッドユニット50を制御する制御部500は、供給圧力センサ274及び排出圧力センサ276の検出結果に基づき、供給ポンプ202及び排出ポンプ203をフィードバックする独立制御により送液動作を制御する。これにより、供給通路及び排出通路を流れる液体の流速をコントロールして、所定のメニスカス圧力が得られるように、液体を循環させる。
【0032】
次に、本実施形態における排出通路減圧機構400について説明する。
本実施形態においては、
図5に示すように、排出通路292の途中に、排出側サブタンク221に通じる循環用通路部(排出通路292)とは異なる別の通路部としての吸込通路402に分岐する分岐部が設けられている。この分岐部には、当該分岐部を通過する液体の流路を排出通路292又は吸込通路402に切り替える流路切替手段401が設けられている。本実施形態の排出通路減圧機構400は、吸込通路402を介して排出通路292の分岐部に接続されている。なお、排出通路減圧機構400は、各色の液体循環機構200K,200C,200M,200Yごとに個別に設けてもよいし、液体循環機構200K,200C,200M,200Yの一部又は全部に共通するように設けてもよい。
【0033】
排出通路減圧機構400は、排出通路292内の液体を分岐部から吸込通路402へ吸い込むことにより、液体吐出ヘッド100のノズル104内の液体を個別液室106側へ引き込む液流を発生させる液流発生手段として機能する。本実施形態の排出通路減圧機構400は、液体貯留部としての排出タンク410、気圧調整手段411、負圧発生手段としてのエアポンプ412と、気圧センサ414と、を備えている。
【0034】
流路切替手段401は、制御部500からの流路切替信号を受けることで、その流路切替信号に対応する流路への切替動作を行う。
【0035】
排出タンク410は、排出通路292から分岐部を介して吸込通路402へ吸い込んだ液体を貯留する液体貯留部である。排出タンク410は、内部に気体と液体との界面(気液界面)210が生じるように構成され、排出タンク410内の気体は、気体排出通路403からエアポンプ412によって外部に排出される。エアポンプ412は、気圧調整手段411を介して排出タンク410に接続され、排出タンク410内を減圧しつづけるように動作する。気圧調整手段411は、排出タンク410内の圧力を検出する気圧センサ414の出力値が制御部500から指示される設定値となるように、エアポンプ412による減圧を調整する。
【0036】
次に、本実施形態におけるメンテナンス動作としてのメニスカス回復動作について説明する。
本実施形態のメニスカス回復動作は、液体吐出ヘッド100のノズル104内の液体を個別液室106側へ引き込むことで、メニスカスを一旦破壊する動作である。このような動作により、粒子沈降したり粘度上昇(増粘)したりしたノズル内の液体を個別液室106内の正常な液体と入れ替えることができ、正常な吐出動作が可能な状態にメニスカスを回復させることができる。
【0037】
ノズル104内の液体を個別液室106側へ引き込むとき、ノズル104から外部の空気が吸い込まれて液体中に気泡として取り込まれる。この気泡は、粒子沈降したり粘度上昇(増粘)したりしたノズル内の液体と個別液室106内の他の液体との混合性を向上させる効果があるので、一定程度は液体中に混入していてもよい。しかしながら、液体中の気泡の量が多くなり過ぎると、様々な不具合を引き起こす。例えば、液体中の気泡の量が多くなり過ぎると、排出通路内の圧力を検出する排出圧力センサ276の検出結果が不安定(検出値があばれる等)になり、供給ポンプ202及び排出ポンプ203の適切な制御が困難となって、液体循環の適切な制御ができなくなる。
【0038】
従来の構成は、このメニスカス回復動作時に、液体循環に用いている排出ポンプ203を利用し、液体循環時よりも大きな負圧を排出通路内に発生させてノズル104内の液体を個別液室106側へ引き込んでいた。この構成では、ノズル104から吸い込まれた外部の空気による気泡が、メニスカス回復動作のたびに、液体中に取り込まれ、蓄積されていく。その結果、循環される液体中に含まれる気泡の量が経時的に増えていき、気泡が過多状態になって上述したような不具合を引き起こす。
【0039】
なお、本実施形態のように、循環経路中の各サブタンク211,221,231の内部に気液界面210が生じるような構成(脱気構成)を採用したり、循環経路中に脱気装置270を設けたりして、循環される液体中の気泡の量を減らすことは可能である。しかしながら、これにより減らすことのできる気泡の量が、メニスカス回復動作時に取り込まれる気泡の量を上回らない限り、循環される液体中に含まれる気泡の量は経時的に増えていく。
【0040】
本実施形態によれば、排出通路中に設けられる分岐部に排出通路減圧機構400を接続し、メニスカス回復動作時には、流路切替手段401によって吸込通路402に切り替え、排出通路内の液体が分岐部から吸込通路402へと吸い込まれる。これにより、ノズル104内の液体を個別液室106側へ引き込む液流が発生し、メニスカス回復動作を行うことができる。本実施形態では、メニスカス回復動作時に、排出通路内の液体を、循環経路を構成する排出通路とは異なる吸込通路402へと吸い込むため、当該吸込通路402に吸い込んだ液体中に含まれる気泡については、循環される液体中から除去される。すなわち、本実施形態によれば、メニスカス回復動作を行うたびに、循環される液体中から気泡を除去することができる。よって、メニスカス回復動作のたびにノズル104から吸い込まれる空気によって循環液体中に気泡が取り込まれても、循環される液体中の気泡の量が過多状態になるのを抑制でき、上述した不具合の発生を抑制することができる。
【0041】
具体的なメニスカス回復動作について説明すると、まず、メニスカス回復動作前の状態では、循環経路に沿って液体を循環させる動作が行われている。この循環動作においては、流路切替手段401が排出通路292の流路(排出側マニホールド251から排出側サブタンク221への流路)に設定される。そして、制御部500は、供給圧力センサ274及び排出圧力センサ276の検出結果に基づき、供給ポンプ202及び排出ポンプ203をフィードバック制御して、所定のメニスカス圧力が得られるように、液体を循環させる。
【0042】
このとき、制御部500は、気圧調整手段411に対し、排出通路における安定循環時の排出圧力センサ276の検出値よりも大きな負圧となる設定値を指示している。そのため、排出通路減圧機構400における排出タンク410の圧力は、エアポンプ412、気圧調整手段411、気圧センサ414により、排出通路における安定循環時の排出圧力センサ276の検出値よりも大きな負圧に調整されている。
【0043】
制御部500は、メニスカス回復動作の開始タイミングに、流路切替手段401を制御して、予め設定された所定の動作時間だけ、排出通路292(排出側サブタンク221への流路)から吸込通路402(排出通路減圧機構400へ流路)へと切り替える。この流路の切り替えにより、排出通路292は、このときの圧力(安定循環時の圧力)よりも大きな負圧となっている排出通路減圧機構400に接続されることで、ノズル104内の液体を個別液室106側へ引き込む液流が発生する。これにより、メニスカスが破壊されて、粒子沈降したり粘度上昇(増粘)したりしたノズル内の液体と個別液室106内の正常な液体とが入れ替わる。
【0044】
その後、予め設定された所定の動作時間が経過することで、制御部500の制御により、流路切替手段401は、分岐部の流路を、吸込通路402(排出通路減圧機構400へ流路)から排出通路292(排出側サブタンク221への流路)へと切り替える。これにより、制御部500は、供給圧力センサ274及び排出圧力センサ276の検出結果に基づき、供給ポンプ202及び排出ポンプ203をフィードバック制御することで、排出通路の圧力が所定のメニスカス圧力が得られる安定循環時の圧力に戻る。その結果、正常な吐出動作が可能なメニスカスが形成されるとともに、液体の循環が再開される。
【0045】
図6は、1つのヘッドアレイ51に設けられる複数の液体吐出ヘッド100と連続シート10上の非画像領域部10bとの位置関係を示す説明図である。
図7は、4つのヘッドアレイ51K,51C,51M,51Yを備えたヘッドユニット50と連続シート10上の非画像領域部10bとの位置関係を示す説明図である。
【0046】
本実施形態のメニスカス回復動作は、ノズル104のメニスカスを一旦破壊する動作であるため、画像情報に基づいて液体吐出ヘッド100のノズル104から連続シート10上に液体を吐出する画像形成動作を実行している画像形成動作中には実行できない。したがって、本実施形態のメニスカス回復動作は、画像形成動作を実行していない非画像形成動作中に実行される。非画像形成動作の期間としては、例えば、印刷ジョブを開始する前の期間、印刷ジョブを終了した後の期間、何らかの要因によって画像形成動作を一時停止している期間などが挙げられる。
【0047】
本実施形態においては、画像情報に基づく画像を連続シート10上に連続して形成していく連続画像形成動作中の非画像形成動作時に実行することが可能である。この場合、メニスカス回復動作は、対象のヘッドアレイ51の対向領域(液体吐出領域)に、連続シート10上の画像領域部10a(液体吐出によって画像が形成される領域)の間の非画像領域部10bが存在する期間に行う。このときのメニスカス回復動作を行う頻度は、対象のヘッドアレイ51の対向領域(液体吐出領域)に連続シート10上の非画像領域部10bが存在するたびに、毎回行ってもよいし、所定の回数間隔をあけて行ってもよい。
【0048】
メニスカス回復動作の実行時間(分岐部の流路が吸込通路402側に切り替わる期間の長さ(所定の動作時間))は、連続シート10上の非画像領域部10bが対象のヘッドアレイ51の対向領域を通過する時間によって制限される。具体的には、例えば、
図6に示すように、同一の排出通路減圧機構400に接続されているすべての液体吐出ヘッド100のノズル面範囲(シート搬送方向範囲)100aのシート搬送方向下流側(先端側)を非画像領域部10bのシート搬送方向下流側(先端側)が通過する時点から、当該ノズル面範囲100aのシート搬送方向上流側(後端側)を非画像領域部10bのシート搬送方向上流側(後端側)が通過する時点までの時間よりも短く設定される。この動作時間に対応する連続シート10上のシート搬送方向長さは、
図6中符号10cで示すようになる。
【0049】
図8は、本実施形態におけるメニスカス回復動作の流れの一例を示すフローチャートである。
本画像形成システム1000の電源が投入されると(S1)、制御部500は、まず、流路切替手段401を制御して分岐部の流路を排出通路292(排出側マニホールド251から排出側サブタンク221への流路)に切り替えるなどの初期化処理を行う(S2)。その後、制御部500は、メニスカス回復動作の設定情報の読み込み/入力を行う(S3)。
【0050】
この設定情報としては、例えば、メニスカス回復動作の動作タイミング(非画像形成動作期間)や、メニスカス回復動作の動作頻度(何ページに1回実施するか、何ジョブに1回実施するか、待機時におけるメニスカス回復動作の時間間隔など)が挙げられる。また、作像設定(ジョブのページ長(画像領域部10aのシート搬送方向長さ)、画像領域部10aの間の非画像領域部10bのシート搬送方向長さなど)なども挙げられる。
【0051】
続いて、制御部500は、供給圧力センサ274及び排出圧力センサ276の検出結果に基づいて供給ポンプ202及び排出ポンプ203のフィードバック制御を開始して、液体吐出ヘッド100への液体循環供給を開始する(S4)。一方で、制御部500は、排出通路減圧機構400を制御し、エアポンプ412を稼働させて排出タンク410の圧力を減圧させる(S5)。気圧センサ414が検出した排出タンク410の圧力が、メニスカス回復動作の設定圧力(排出通路における安定循環時の排出圧力センサ276の検出値よりも大きな負圧となる設定値)に到達したら(S6のYes)、印刷可能待機状態に移行する(S7)。
【0052】
この待機時において、印刷開始の指示がなされないまま(画像形成動作が開始されないまま)、予め決められたメニスカス回復動作の時間間隔分の時間が経過すると、メニスカス回復動作を実行する(S8)。
【0053】
また、ユーザーによって印刷開始ボタンを押下されるなど、印刷開始の指示がなされると(S9)、制御部500は、乾燥部7などを含む画像形成システム1000が印刷可能状態となったことを確認した後、連続シート10の搬送を開始する(S10)。そして、制御部500は、連続シート10が目標速度で一定速搬送状態になったことを、搬送部3のローラ3aに設けられるエンコーダ3bの出力値等により確認したら(S11)、画像形成動作を開始できる画像形成可能状態であると判断する。
【0054】
画像形成可能状態であると判断した後、制御部500は、ジョブの画像データ(画像情報)に基づく液体吐出動作(画像形成動作)を開始する前に、印刷前メニスカス回復動作を行う(S12)。この印刷前メニスカス回復動作では、全色(K、C、M、Y)のヘッドアレイ51K,51C,51M,51Yについて、全液体吐出ヘッド100の全ノズル104に対し、メニスカス回復動作が行われる。
【0055】
印刷前メニスカス回復動作が終了した後、制御部500は、画像形成動作を開始し(S13)、シート搬送方向上流側から順に、各ヘッドアレイ51K,51C,51M,51Yの液体吐出ヘッド100から画像データに応じた液体吐出を行う。これにより、連続シート10の画像領域部10aに、画像データに従った画像が順次形成されていく。
【0056】
本実施形態において、制御部500は、例えばブラックのヘッドアレイ51Kでの液体吐出開始タイミングを起点としたエンコーダ3bの出力信号をカウントする。制御部500は、印刷前に設定したジョブのページ長と非画像領域部10bのシート搬送方向長さとから、非画像領域部10bのうちの動作時間対応部分10cが各ヘッドアレイの対向領域を通過する通過開始時と通過終了時のエンコーダカウント値を算出する。そして、算出したエンコーダカウント値、印刷前に設定したメニスカス回復動作タイミング、頻度などの設定情報に従い、各色(K、C、M、Y)の全ノズルに対するメニスカス回復動作がヘッドアレイ51K,51C,51M,51Yごとに独立して行われる。
【0057】
本明細書において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30[mPa・s]以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0058】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、液体循環機構200及び排出通路減圧機構400のほか、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0059】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0060】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0061】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0062】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0063】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0064】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0065】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0066】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0067】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0068】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0069】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0070】
前記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0071】
前記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0072】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0073】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0074】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0075】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、液体を吐出するノズル104と、前記ノズルに連通する圧力室(例えば個別液室106)と、前記圧力室に圧力変動を生じさせる圧力発生手段(例えば圧電アクチュエータ111)とを備えた液体吐出ヘッド100と、前記圧力室から排出通路(例えば排出通路282,292等)を通じて排出された液体が供給通路(例えば供給通路281,291等)を通じて該圧力室へ戻るように液体を循環させる液体循環機構200と、を備えた液体吐出ユニット(例えばヘッドアレイ51もしくはヘッドユニット50)であって、前記排出通路には、前記圧力室に通じる循環用通路部(例えば排出通路292)とは異なる別の通路部(例えば吸込通路402)に分岐する分岐部が設けられ、前記排出通路内の液体を前記分岐部から前記別の通路部へ吸い込むことにより、前記ノズル内の液体を前記圧力室側へ引き込む液流を発生させる液流発生手段(例えば排出通路減圧機構400)と、前記分岐部を通過する液体の流路を前記循環用通路部又は前記別の通路部に切り替える流路切替手段401とを備えることを特徴とするものである。
ノズル内の液体を圧力室側へ引き込むメンテナンス動作を行う場合、ノズルから外部の空気が吸い込まれて液体中に気泡として取り込まれる。この気泡は、粒子沈降したり粘度上昇(増粘)したりしたノズル内の液体と圧力室内の他の液体との混合性を向上させる効果があるので、一定程度は液体中に混入していてもよい。しかしながら、液体中の気泡の量が多くなり過ぎると、様々な不具合を引き起こす。例えば、排出通路内における液体流速又は圧力の検出結果に基づいて液体循環を制御するような場合、液体中の気泡の量が多くなり過ぎると、当該検出結果が不安定になって液体循環の適切な制御が困難になる。
従来の構成では、このメンテナンス動作時に、液体循環に用いている液体循環機構を利用し、液体循環時よりも大きな負圧を排出通路内に発生させることで、ノズル内の液体が圧力室側へ引き込まれる。この構成では、ノズルから吸い込まれた外部の空気による気泡が、メンテナンス動作のたびに、液体中に取り込まれ、蓄積されていく。その結果、循環される液体中に含まれる気泡の量は経時的に増えていき、気泡が過多状態になって様々な不具合を引き起こす。
本態様においては、排出通路中に、圧力室に通じる循環用通路部と液流発生手段が接続された別の通路部との分岐部が設けられ、この分岐部に流路切替手段が設けられている。これにより、分岐部を流路切替手段によって循環用通路部側に切り替えると、液体循環機構により液体を循環させることができる。一方、分岐部を流路切替手段によって別の通路部側に切り替えると、液流発生手段により、排出通路内の液体を分岐部から当該別の通路部へと吸い込み、ノズル内の液体を圧力室側へ引き込む液流を発生させ、メンテナンス動作を行うことができる。
本態様では、メンテナンス動作時に、排出通路内の液体を循環用通路部とは異なる別の通路部へと吸い込むため、当該別の通路部に吸い込んだ液体中に含まれる気泡については、循環される液体中から除去される。すなわち、本態様によれば、メンテナンス動作を行うたびに、循環される液体中から気泡を除去することができる。よって、メンテナンス動作のたびにノズルから吸い込まれる空気によって循環液体中に気泡が取り込まれても、循環される液体中の気泡の量が過多状態になるのを抑制でき、様々な不具合の発生を抑制することができる。
【0076】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記液流発生手段は、前記別の通路部へ吸い込んだ液体を貯留する液体貯留部(例えば排出タンク410)と、前記排出通路内の液体を前記分岐部から前記別の通路部へ吸い込むための負圧を前記液体貯留部内に発生させる負圧発生手段(例えばエアポンプ412)とを有することを特徴とするものである。
これによれば、別の通路部へ吸い込んだ液体を液体貯留部に貯留しておくことができる。液体貯留部に貯留された液体は、廃棄してもよいが、液体中の気泡を十分に除去した後、循環経路に戻すように構成してもよい。
【0077】
[第3態様]
第3態様は、第2態様において、前記負圧発生手段は、前記液体貯留部内における気体を吸い込んで前記負圧を前記液体貯留部内に発生させることを特徴とするものである。
これによれば、液体貯留部に貯留された液体から抜けた気体(気泡)を負圧発生手段により液体貯留部から排出することができる。
【0078】
[第4態様]
第4態様は、第1乃至第3態様のいずれかにおいて、前記液体循環機構は、前記排出通路内の液体流速又は圧力を検出する検出手段(例えば排出圧力センサ276)と、前記排出通路内の液体を前記分岐部から前記循環用通路部へ流すときに、前記ノズル内の液体が前記圧力室側へ引き込まれない範囲で、前記検出手段の検出結果に応じた液流を前記排出通路内に発生させる第二の液流発生手段(例えば排出ポンプ203)とを有することを特徴とするものである。
このような液体循環機構においては、液体中の気泡の量が多くなり過ぎると、排出通路内の圧力を検出する検出手段の検出結果が不安定(検出値があばれる等)になって、第二の液流発生手段を適切に制御することが困難となり、液体循環の適切な制御が困難になる。したがって、このような液体循環機構を備える液体吐出ユニットに対しては、循環される液体中の気泡の量が過多状態になるのを抑制できる効果が特に有益である。
【0079】
[第5態様]
第5態様は、液体を吐出する装置(例えば画像形成装置5あるいは画像形成システム1000)であって、第1乃至第4態様のいずれか液体吐出ユニットを備えることを特徴とする液体を吐出するものである。
本態様によれば、ノズル内の液体を圧力室側へ引き込むメンテナンス動作を行う場合に、循環される液体中の気泡の量が過多状態になるのを抑制でき、不具合の発生を抑制できる液体を吐出する装置を提供できる。
【0080】
[第6態様]
第6態様は、第5態様において、画像情報に基づいて前記液体吐出ヘッドのノズルから記録材(例えば連続シート10)上に液体を吐出する画像形成動作を実行していない非画像形成動作中に、前記分岐部を通過する液体の流路を前記流路切替手段により前記別の通路部へ切り替えて、前記液流発生手段により前記ノズル内の液体を前記圧力室側へ引き込む液流を発生させた後、前記分岐部を通過する液体の流路を前記流路切替手段により前記循環用通路部へ切り替える制御を実行する制御手段(例えば制御部500)を有することを特徴とするものである。
これによれば、画像形成動作に影響を与えることなく、ノズル内の液体を圧力室側へ引き込むメンテナンス動作を行うことができる。
【0081】
[第7態様]
第7態様は、第6態様において、前記制御手段は、前記画像形成動作を連続して実行する場合、該画像形成動作間における非画像形成動作中に、前記制御を実行することを特徴とするものである。
これによれば、連続画像形成動作の実行中においても、ノズル内の液体を圧力室側へ引き込むメンテナンス動作を行うことができる。
【0082】
[第8態様]
第8態様は、液体を吐出するノズルと、前記ノズルに連通する圧力室と、前記圧力室に圧力変動を生じさせる圧力発生手段とを備えた液体吐出ヘッドと、前記圧力室から排出通路を通じて排出された液体が供給通路を通じて該圧力室へ戻るように液体を循環させる液体循環機構と、を備えた液体吐出ユニットのメンテナンス方法であって、前記排出通路の分岐部を通過する液体の流路を切り替える流路切替手段により、前記圧力室に通じる循環用通路部から該循環用通路部とは異なる別の通路部に切り替えた後、前記排出通路内の液体を前記分岐部から前記別の通路部へ吸い込むことにより、前記ノズル内の液体を前記圧力室側へ引き込むことを特徴とするものである。
本態様によれば、ノズル内の液体を圧力室側へ引き込むメンテナンス動作を行う場合に、循環される液体中の気泡の量が過多状態になるのを抑制でき、不具合の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 :巻き出し装置
3 :搬送部
3a :ローラ
3b :エンコーダ
5 :画像形成装置
7 :乾燥部
9 :巻き取り装置
10 :連続シート
10a :画像領域部
10b :非画像領域部
10c :動作時間対応部分
11 :シートロール
50 :ヘッドユニット
51 :ヘッドアレイ
52 :ベース部材
91 :印刷ロール
100 :液体吐出ヘッド
101 :ノズル板
102 :流路板
103 :振動板部材
104 :ノズル
105 :ノズル連通路
106 :個別液室
107 :供給側流体抵抗部
108 :液導入部
109 :開口
110 :供給側共通液室
111 :圧電アクチュエータ
112 :圧電素子
113 :ベース部材
115 :フレキシブル配線部材
120 :共通液室部材
121 :第1共通液室部材
122 :第2共通液室部材
129 :カバー
130 :振動領域
140 :流路部材
150 :排出側共通液室
151 :排出流路
171 :供給ポート
181 :排出ポート
200 :液体循環機構
201 :メインタンク
202 :供給ポンプ
203 :排出ポンプ
204 :補給ポンプ
205 :補給用通路フィルタ
210 :気液界面
211 :供給側サブタンク
221 :排出側サブタンク
231 :中間サブタンク
232 :液面検知手段
241 :供給側マニホールド
242 :ヘッド供給通路
251 :排出側マニホールド
252 :ヘッド排出通路
270 :脱気装置
271 :供給通路フィルタ
274 :供給圧力センサ
276 :排出圧力センサ
281,291:供給通路
282,292:排出通路
400 :排出通路減圧機構
401 :流路切替手段
402 :吸込通路
403 :気体排出通路
410 :排出タンク
411 :気圧調整手段
412 :エアポンプ
414 :気圧センサ
500 :制御部
1000 :画像形成システム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】