(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038677
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】潜熱蓄熱粒子、熱交換材料、および潜熱蓄熱粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 5/06 20060101AFI20230310BHJP
C01B 33/06 20060101ALI20230310BHJP
C01F 7/42 20220101ALI20230310BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20230310BHJP
B22F 1/14 20220101ALI20230310BHJP
B22F 1/142 20220101ALI20230310BHJP
F28D 20/02 20060101ALI20230310BHJP
C22C 21/02 20060101ALN20230310BHJP
【FI】
C09K5/06 Z
C01B33/06
C01F7/42
B22F1/00 N
B22F1/14 600
B22F1/142
B22F1/14 700
F28D20/02 D
C22C21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145532
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100136777
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 純子
(72)【発明者】
【氏名】能村 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】石田 良介
(72)【発明者】
【氏名】川口 貴大
(72)【発明者】
【氏名】坂井 浩紀
【テーマコード(参考)】
4G072
4G076
4K018
【Fターム(参考)】
4G072AA20
4G072BB05
4G072DD02
4G072DD03
4G072GG02
4G072GG03
4G072JJ26
4G072MM36
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4G072UU30
4G076AA02
4G076AB16
4G076BA38
4G076BD02
4G076CA02
4G076CA10
4G076CA33
4G076DA30
4G076FA02
4K018BA08
4K018BA20
4K018BB04
4K018BC01
4K018BC08
4K018BC19
4K018BC28
4K018BC32
4K018KA23
4K018KA70
(57)【要約】
【課題】PCMの漏出が抑制されて構造の安定した潜熱蓄熱粒子であって、固液相温度ヒステリシスを制御できる、潜熱蓄熱粒子と、該潜熱蓄熱粒子で形成された熱交換材料と、上記潜熱蓄熱粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】コア粒子と、該コア粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆部とを有し、前記コア粒子の成分は、AlまたはAlを含む合金であって、前記コア粒子は、含まれるAlまたはAlを含む合金とは異なる、第1族~第15族のうちの1以上の元素をドーパントとして含み、前記被覆部はAlを含む酸化被膜である、潜熱蓄熱粒子。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア粒子と、該コア粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆部とを有し、
前記コア粒子の成分は、AlまたはAlを含む合金であって、前記コア粒子は、含まれるAlまたはAlを含む合金とは異なる、第1族~第15族のうちの1以上の元素をドーパントとして含み、
前記被覆部はAlを含む酸化被膜である、潜熱蓄熱粒子。
【請求項2】
前記ドーパントは、Ti、Zr、V、B、Ni、Si、Mn、Cr、Zn、P、Fe、Co、Pb、Cu、NaおよびSrよりなる群から選択される1種以上の元素である、請求項1に記載の潜熱蓄熱粒子。
【請求項3】
前記ドーパントは、880℃以上、1230℃以下での酸化物の標準生成自由エネルギーがAl2O3の標準生成自由エネルギーよりも高い元素である、請求項1または2に記載の潜熱蓄熱粒子。
【請求項4】
前記コア粒子の平均粒子径は、10μm以上、200μm以下である請求項1~3のいずれかに記載の潜熱蓄熱粒子。
【請求項5】
前記被覆部の成分は、α-Al2O3である、請求項1~4のいずれかに記載の潜熱蓄熱粒子。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の潜熱蓄熱粒子で形成された熱交換材料。
【請求項7】
成分が、AlまたはAlを含む合金であるコア原料粒子と、
成分が、含まれるAlまたはAlを含む合金とは異なる、第1族~第15族のうちの1以上の元素の酸化物である子粒子とを準備すること、
前記コア原料粒子と前記子粒子を、高速気流中衝撃法で衝突させて、コア原料粒子の表面に子粒子を固着させるハイブリダイゼーションを行って、ハイブリダイゼーション処理粒子を得ること、
前記ハイブリダイゼーション処理粒子の化成被膜処理を行って、化成被膜処理粒子を得ること、および
前記化成被膜処理粒子に対し、880℃以上、1230℃以下で熱処理を行うこと
を含む、潜熱蓄熱粒子の製造方法。
【請求項8】
前記ハイブリダイゼーション処理粒子の化成被膜処理をベーマイト法で行う、請求項7に記載の潜熱蓄熱粒子の製造方法。
【請求項9】
コア原料粒子と子粒子の合計に対する子粒子の割合が、0.5質量%以上、10質量%以下となるように、子粒子を配合する、請求項7または8に記載の潜熱蓄熱粒子の製造方法。
【請求項10】
前記コア原料粒子の平均粒子径は10μm以上、200μm以下であり、
前記子粒子の平均粒子径は、0.1m以上、2μm以下であり、
(子粒子の平均粒子径/コア原料粒子の平均粒子径)の比率は、0.001以上、0.2以下である、請求項7~9のいずれかに記載の潜熱蓄熱粒子の製造方法。
【請求項11】
前記ハイブリダイゼーションは、40m/s以上、100m/s以下の周速度で行う、請求項7~10のいずれかに記載の潜熱蓄熱粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜熱蓄熱粒子、熱交換材料、および潜熱蓄熱粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱を貯蔵する方法として、温度変化を利用する顕熱蓄熱と、物質の相変化を利用する潜熱蓄熱が知られている。このうち、顕熱蓄熱技術は、高温での蓄熱が可能である反面、物質の温度変化による顕熱のみを利用するため、蓄熱密度が低いという問題があった。それに対して、潜熱蓄熱技術は、相変化物質(PCM:Phase Change Material)の固液相変化潜熱を利用するため、顕熱蓄熱技術と比べて高密度に蓄熱可能である。また、相変化温度一定で反応熱由来の排熱を回収・輸送・供給が可能な点で、太陽熱利用や排熱利用の分野で注目されている。PCMは蓄熱時に溶融して液体状となるため、液体状PCM漏出防止用としてPCMのカプセル化が必要である。PCMのカプセル化法として様々な方法がこれまでに提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、一層、二層または三層の金属被膜を潜熱蓄熱材の表面に被覆した潜熱蓄熱カプセル、潜熱蓄熱材に電解めっき法によって金属被膜を被覆した潜熱蓄熱カプセルが提案されている。また特許文献2には、シェルで被覆されたコアを有する蓄熱マイクロカプセルにおいて、該コアが、塩水和物及び糖アルコールから選択された少なくとも1種の水溶性潜熱蓄熱材と、水溶性単官能単量体及び水溶性多官能単量体の水溶性単量体混合物より得られた重合体とを含み、該シェルが、疎水性樹脂から形成されていることを特徴とする蓄熱マイクロカプセルとその製造方法が提案されている。該技術は、融点が比較的低めであるPCMのマイクロカプセル化技術である。
【0004】
特許文献3は、蓄熱性を有する物質からなる内部蓄熱体と、前記内部蓄熱体を内包し、相対密度が75%以上のセラミックスからなる外殻と、を備えた蓄熱体が提案されている。上記内部蓄熱体として、Al、Mg、Sn、Zn、及びCuからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する金属からなるか、K、Li、Na、Ca、及びMgからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、炭酸化合物、水酸化物、塩化物、又はこれらの複合物からなるものとし、外殻(カプセル)の材質を、アルミナ、窒化ケイ素、及び炭化ケイ素からなる群より選ばれる少なくとも一種、又は前記群より選ばれる少なくとも一種を含む複合物からなるものとすることが提案されている。特許文献3の技術は、融点が高温域のPCMをカプセル化した技術である。
【0005】
特許文献1の潜熱蓄熱カプセルは、金属製被膜の耐熱性が低いため、高温状態では金属製被膜を維持することが難しく、高温状態での使用が難しいと考えられる。また、特許文献2に記載された蓄熱マイクロカプセルは、高温且つ腐食等の生じ易い過酷な環境下で使用することが難しいと思われる。さらに特許文献3に記載された蓄熱体は、セラミックスからなる外殻を有しており、耐熱性、耐腐食性に優れていると思われるが、成型、加工が困難であると思われる。
【0006】
上記課題に鑑みて、本発明者らは、特許文献4において、金属若しくは合金の潜熱蓄熱材料から成るコア粒子の表面が、該コア粒子の組成元素の酸化被膜で被覆された、潜熱蓄熱体マイクロカプセル、潜熱蓄熱体の製造方法、熱交換材料、および触媒機能性潜熱蓄熱体を提案している。また特許文献5で、コア部と被覆層とを備える潜熱蓄熱体であって、BET比表面積が10m2/g以上である、該潜熱蓄熱体、潜熱蓄熱体の製造方法、及び、熱交換材料を提案している。これらの技術によれば、コア粒子とこれを収容するシェルに相当する酸化被膜を別々に作製した上でシェルの内部にコア粒子を収容するという工程が不要となる。また、固相から液相に相変態した際のコア粒子の膨張が生じないため、溶解した潜熱蓄熱材料の成分は酸化被膜で覆われた空間内部に留まり、酸化被膜が損傷を受けることがない。また、上記酸化被膜は化学的に安定なものとすることができる。さらに特許文献5によれば、コア部の材料を捕捉しやすく、コア部の漏出の発生を減少させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-23172号公報
【特許文献2】特開2012-140600号公報
【特許文献3】特開2012-111825号公報
【特許文献4】特開2019-173017号公報
【特許文献5】特開2019-203128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献4と特許文献5に示された潜熱蓄熱体の製造方法では、マイクロオーダーの潜熱蓄熱体が得られているものの、蓄熱サイクルにおける降温時に過冷却が生じやすく、PCM本来の凝固点とのズレにより正確に蓄熱温度を制御することが難しかった。本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、PCMの漏出が抑制され、熱処理後も構造の安定した潜熱蓄熱粒子であって、固液相温度ヒステリシスを制御でき、例えば上記過冷却を抑制して蓄熱温度を正確に制御することのできる、潜熱蓄熱粒子と、該潜熱蓄熱粒子で形成された熱交換材料と、上記潜熱蓄熱粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様1は、
コア粒子と、該コア粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆部とを有し、
前記コア粒子の成分は、AlまたはAlを含む合金であって、前記コア粒子は、含まれるAlまたはAlを含む合金とは異なる、第1族~第15族のうちの1以上の元素をドーパントとして含み、
前記被覆部はAlを含む酸化被膜である、潜熱蓄熱粒子である。
【0010】
本発明の態様2は、
前記ドーパントは、Ti、Zr、V、B、Ni、Si、Mn、Cr、Zn、P、Fe、Co、Pb、Cu、NaおよびSrよりなる群から選択される1種以上の元素である、態様1に記載の潜熱蓄熱粒子である。
【0011】
本発明の態様3は、
前記ドーパントは、880℃以上、1230℃以下での酸化物の標準生成自由エネルギーがAl2O3の標準生成自由エネルギーよりも高い元素である、態様1または2に記載の潜熱蓄熱粒子である。
【0012】
本発明の態様4は、
前記コア粒子の平均粒子径は、10μm以上、200μm以下である態様1~3のいずれかに記載の潜熱蓄熱粒子である。
【0013】
本発明の態様5は、
前記被覆部の成分は、α-Al2O3である、態様1~4のいずれかに記載の潜熱蓄熱粒子である。
【0014】
本発明の態様6は、
態様1~5のいずれかに記載の潜熱蓄熱粒子で形成された熱交換材料である。
【0015】
本発明の態様7は、
成分が、AlまたはAlを含む合金であるコア原料粒子と、
成分が、含まれるAlまたはAlを含む合金とは異なる、第1族~第15族のうちの1以上の元素の酸化物である子粒子とを準備すること、
前記コア原料粒子と前記子粒子を、高速気流中衝撃法で衝突させて、コア原料粒子の表面に子粒子を固着させるハイブリダイゼーションを行って、ハイブリダイゼーション処理粒子を得ること、
前記ハイブリダイゼーション処理粒子の化成被膜処理を行って、化成被膜処理粒子を得ること、および
前記化成被膜処理粒子に対し、880℃以上、1230℃以下で熱処理を行うこと
を含む、潜熱蓄熱粒子の製造方法である。
【0016】
本発明の態様8は、
前記ハイブリダイゼーション処理粒子の化成被膜処理をベーマイト法で行う、態様7に記載の潜熱蓄熱粒子の製造方法である。
【0017】
本発明の態様9は、
コア原料粒子と子粒子の合計に対する子粒子の割合が、0.5質量%以上、10質量%以下となるように、子粒子を配合する、態様7または8に記載の潜熱蓄熱粒子の製造方法である。
【0018】
本発明の態様10は、
前記コア原料粒子の平均粒子径は10μm以上、200μm以下であり、
前記子粒子の平均粒子径は、0.1m以上、2μm以下であり、
(子粒子の平均粒子径/コア原料粒子の平均粒子径)の比率は、0.001以上、0.2以下である、態様7~9のいずれかに記載の潜熱蓄熱粒子の製造方法である。
【0019】
本発明の態様11は、
前記ハイブリダイゼーションは、40m/s以上、100m/s以下の周速度で行う、態様7~10のいずれかに記載の潜熱蓄熱粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、PCMの漏出が抑制され、熱処理後も構造の安定した潜熱蓄熱粒子であって、固液相温度ヒステリシスを制御できる、潜熱蓄熱粒子と、該潜熱蓄熱粒子で形成された熱交換材料と、上記潜熱蓄熱粒子の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、潜熱蓄熱粒子の製造過程を説明した模式図である。
【
図2】
図2は、高速気流中衝撃装置の模式断面図である。
【
図3】
図3は、実施例におけるハイブリダイゼーション処理粒子のSEM顕微鏡写真である。
【
図4】
図4は、実施例におけるハイブリダイゼーション処理粒子、化成被膜処理粒子、および試料(潜熱蓄熱粒子)のSEM顕微鏡写真である。
【
図5】
図5は、実施例における、別の、ハイブリダイゼーション処理粒子、化成被膜処理粒子、および試料(潜熱蓄熱粒子)のSEM顕微鏡写真である。
【
図6】
図6は、実施例におけるハイブリダイゼーション処理粒子、化成被膜処理粒子、および試料(潜熱蓄熱粒子)のXRD測定結果である。
【
図7】
図7は、実施例における示差走査熱量測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明者らは鋭意検討した結果、潜熱蓄熱粒子を、コア粒子と、該コア粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆部とを有し、前記コア粒子の成分が、AlまたはAlを含む合金であって、前記コア粒子が、含まれるAlまたはAlを含む合金とは異なる、第1族~第15族のうちの1以上の元素をドーパントとして含み、前記被覆部が、Alを含む酸化被膜であることで、PCMの漏出が抑制され、熱処理後も構造の安定した潜熱蓄熱粒子であって、固液相温度ヒステリシスを制御できることを見出した。また、上記潜熱蓄熱粒子を得るには、上記ドーパントの酸化物を子粒子として用意し、コア原料粒子と前記子粒子とを高速気流中衝撃法で衝突させてハイブリダイゼーションを行った後、所定の化成被膜処理と熱処理を行えばよいことを見出した。以下、本実施形態に係る潜熱蓄熱粒子、潜熱蓄熱粒子で形成された熱交換材料、および潜熱蓄熱粒子の製造方法について説明する。
【0023】
[潜熱蓄熱粒子]
〔コア粒子〕
コア粒子は、その成分が、AlまたはAlを含む合金である。Alを含む合金は、好ましくはAlを主成分として含む合金である。前記「主成分」とは、コア粒子全体に占める割合が50質量%以上であることをいう。これらの金属と合金は、固液相変化潜熱を利用できる相変化物質(PCM)であり、融解熱が例えば200J/g以上であり、高い潜熱量を確保することができる。
【0024】
コア粒子の成分は、後述するドーパントよりも酸化されやすい元素(例えば金属元素)を主成分として含むことが挙げられる。コア粒子の好ましい成分として、Al、またはAlとSiの合金で構成されていることが挙げられる。コア粒子の成分がAlとSiの合金の場合、Si含有量は特に限定されず、0質量%超、100質量%未満であればよい。例えばSi量は、10質量%以上、90質量%以下の範囲とすることができる。該範囲内のうち、Si含有量は、10質量%以上、25質量%以下としてもよい。
【0025】
コア粒子の平均粒子径は10μm以上、200μm以下であることが好ましい。本実施形態によれば、サイズがマイクロオーダーであってコア粒子(PCM)が上記成分を有する潜熱蓄熱粒子を実現できる。上記平均粒子径は、例えば、更に100μm以下であってもよく、より更に50μm以下であってもよい。なお、本明細書で述べる「平均粒子径」とは、レーザー回折式粒度分布計(例:HORIBA LA-920)で測定したときの値である。より具体的には、レーザー回折式粒度分布計により、粒子群の体積分布を測定し、累積50体積%径の値(D50)を、平均粒子径とみなす。
【0026】
〔ドーパント〕
本実施形態に係る潜熱蓄熱粒子は、コア粒子に、含まれるAlまたはAlを含む合金とは異なる、第1族~第15族のうちの1以上の元素をドーパントとして含む。このドーパントが、コア粒子に含まれ、例えば、PCMの凝固時の異質な核生成サイトとなることで、コア粒子を構成するPCMを改質でき、温度特性を変えることができる。その結果、例えば、従来の潜熱蓄熱粒子で生じていた、蓄熱サイクルにおける降温時の過冷却を抑制でき、固液相温度ヒステリシスの精密な制御が可能となる。前記ドーパントは、上記の通り、コア内に取り込まれ、例えば、PCMの凝固時の異質な核生成サイトになればよく、コア原料粒子の成分と、合金、化合物を形成する元素に限定されない。「含まれるAlまたはAlを含む合金とは異なる」とは、例えばコア粒子の成分がAl-Si合金の場合、AlとSi以外の第1族~第15族のうちの1以上の元素をいう。
【0027】
前記ドーパントとして、Ti、Zr、V、B、Ni、Si、Mn、Cr、Zn、P、Fe、Co、Pb、Cu、NaおよびSrよりなる群から選択される1種以上の元素が好ましい。潜熱蓄熱粒子の過冷却をより抑制できる観点から、より好ましくは、Ti、Zr、V、B、およびNiよりなる群から選択される1種以上の元素であり、特にはTiが好ましい。
【0028】
前記ドーパントは、880℃以上、1230℃以下での酸化物の標準生成自由エネルギーがAl2O3の標準生成自由エネルギーよりも高い元素であることが好ましい。該元素であれば、熱処理時に、ドーパントの原料である酸化物の子粒子が、コア原料粒子中のAlによって容易に還元されて、コア粒子内にドーパントが取り込まれやすくなるため好ましい。なお、Al2O3の標準生成自由エネルギーΔG0は、下記Alの酸化反応において、下記式(1)の通り表され、式(1)中のTは温度(℃)を示す。
4/3Al(l)+O2(g)=2/3Al2O3(s)
ΔG0=-1126890+218.81T(J)・・・(1)
【0029】
潜熱蓄熱粒子に含まれるドーパントの含有量は、例えば、0質量%超、5質量%以下の範囲内であって、添加した子粒子の割合以下でありうる。
【0030】
潜熱蓄熱粒子に含まれるドーパントは、潜熱蓄熱粒子の断面のEDS分析(エネルギー分散型X線分光分析)を行うことで確認できる。コア粒子内部のドーパントは、コア粒子の成分との化合物として存在しうる。この様に化合物を形成してドーパントとコア粒子の成分が接することで、ヒステリシス温度をより制御しやすいと考える。ドーパントが被覆部の内部や外側に位置する場合は、ドーパントを含むことによる効果がなくヒステリシス温度制御ができないと考えられる。
【0031】
〔被覆部〕
前記被覆部はAlを含む酸化被膜である。前記Alを含む酸化被膜として、例えば、α-Al2O3、または、α-Al2O3およびθ-Al2O3でありうる。
【0032】
本実施形態に係る潜熱蓄熱粒子の被覆部は、厚みが200nm~3μmの範囲でありうる。被覆部は、例えば厚みが1~2μmの被覆層でありうる。
【0033】
本実施形態に係る潜熱蓄熱粒子の被覆部は、コア粒子の表面の少なくとも一部を被覆していればよい。コア粒子の表面に占める被覆部の被覆率は、50面積%以上であることが好ましい。前記被覆率は、より好ましくは70面積%以上、更に好ましくは80面積%以上、より更に好ましくは90面積%以上であり、最も好ましくは100面積%である。
【0034】
(潜熱蓄熱粒子で形成された熱交換材料)
本実施形態に係る潜熱蓄熱粒子で形成された熱交換材料が含まれる。熱交換材料として、本実施形態に係る潜熱蓄熱粒子が熱交換材料の少なくとも一部を構成すればよく、例えば熱性母材中に分散して含有させる態様、多孔質材料中に分散して担持させる態様が挙げられる。熱交換材料の例としては、蓄熱レンガ、蓄熱用セラミックスボール、多孔質セラミックスフィルタ等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0035】
[潜熱蓄熱粒子の製造方法]
本実施形態に係る潜熱蓄熱粒子の製造方法は、
(i)成分がAlまたはAlを含む合金であるコア原料粒子と、成分が、含まれるAlまたはAlを含む合金とは異なる、第1族~第15族のうちの1以上の元素の酸化物である子粒子とを準備すること、
(ii)前記コア原料粒子と前記子粒子を、高速気流中衝撃法で衝突させて、コア原料粒子の表面に子粒子を固着させるハイブリダイゼーションを行って、ハイブリダイゼーション処理粒子を得ること、
(iii)前記ハイブリダイゼーション処理粒子の化成被膜処理を行って、化成被膜処理粒子を得ること、および
(iv)前記化成被膜処理粒子に対し、880℃以上、1230℃以下で熱処理を行うこと
を含む。
【0036】
前記製造方法により、ドーパントがコア粒子に導入される過程について、模式図を用いて説明するが、本実施形態に係る製造方法はこれに限定されない。また、本実施形態に係る潜熱蓄熱粒子は、その製造方法が模式図に示された方法に限定されず、他の方法によっても製造することができる。
【0037】
図1は、ドーパント21としてTiがコア粒子22(主成分がAl)に導入された潜熱蓄熱粒子10Aの製造過程を説明した模式図である。なお
図1では、容易に理解できるように、子粒子などの各構成が実際のサイズ・量と異なっている点に留意されたい。潜熱蓄熱粒子の製造では、まず、原料粒子として、コア原料粒子とドーパント挿入のための子粒子を準備し、
図1(a)に示す通り、高速気流中衝撃法により、コア原料粒子8に子粒子(TiO
2粒子)9Aを衝突させて、
図1(b)の通り、コア原料粒子8の表面に子粒子(TiO
2粒子)9Aを固着させた、ハイブリダイゼーション処理粒子25を得る。次いで、前記ハイブリダイゼーション処理粒子25の化成被膜処理を行って、
図1(c)の通り、コア原料粒子8の表面に化成処理被膜24の形成された化成被膜処理粒子26を得る。次いで、前記化成被膜処理粒子26に対し、熱処理を行う。
図1(d)は熱処理初期の段階での粒子を示した図であり、破線部分は、粒子の一部の表面近傍の拡大断面模式図である。この
図1(d)の拡大断面模式図に示す通り、熱処理において、コア原料粒子8の表面に存在する子粒子(TiO
2粒子)9Aの成分TiO
2が、コア原料粒子8を構成する成分Alにより還元されることによって得られたTiが、コア原料粒子に取り込まれると考えられる。そしてその結果、
図1(e)に示される通り、コア粒子22内にドーパント21としてTiが存在し、コア粒子の成分Alの酸化被膜23であるα-Al
2O
3膜で被覆された潜熱蓄熱粒子10Aが得られると考えられる。以下では、各工程について詳述する。
【0038】
(i)原料粒子の準備
原料粒子として、コア原料粒子と、ドーパント挿入のための子粒子を準備する。コア原料粒子は、所望の潜熱蓄熱粒子のコア粒子に対応させて、例えば平均粒子径が10μm以上、200μm以下の粒子を用意することが挙げられる。上記平均粒子径は、例えば、更に100μm以下であってもよく、より更に50μm以下であってもよい。また子粒子の平均粒子径は、0.1μm以上、2μm以下であって、(子粒子の平均粒子径/コア原料粒子の平均粒子径)の比率は、0.001以上、0.2以下であることが好ましい。前記子粒子の平均粒子径は、更に1.0μm以下、より更には0.4μm以下であってもよい。コア原料粒子の成分は、潜熱蓄熱粒子のコア粒子の成分と同じであり、前記潜熱蓄熱粒子のコア粒子の成分について述べた通りである。
【0039】
子粒子の成分は、含まれるAlまたはAlを含む合金とは異なる、第1族~第15族のうちの1以上の元素の酸化物である。前記酸化物を構成する好ましい元素は、前記潜熱蓄熱粒子のドーパントで述べた通りであり、子粒子の成分は、Ti、Zr、V、B、Ni、Si、Mn、Cr、Zn、P、Fe、Co、Pb、Cu、NaおよびSrよりなる群から選択される1種以上の元素の酸化物であることが好ましい。より好ましくは、Ti、Zr、V、B、およびNiよりなる群から選択される1種以上の元素の酸化物であり、特にはTiO2などのTi酸化物が好ましい。
【0040】
装置に投入するコア原料粒子と子粒子の配合比率として、(コア原料粒子+子粒子)に対する子粒子の割合が、0.5質量%以上、10質量%以下の範囲とすることが挙げられる。前記割合は、好ましくは1.0質量%以上である。また前記割合は、後述する化成被膜処理を促進させる観点から、好ましくは8質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。前記割合は、例えば1.0質量%以上、5質量%以下の範囲であることが好ましい。
【0041】
(ii)高速気流中衝撃法によるコア原料粒子と子粒子のハイブリダイゼーション
本実施形態では、コア原料粒子と被覆部を形成するための子粒子とを用い、高速気流中衝撃法で、コア原料粒子の表面に子粒子を機械的に打ち付け、乾式の機械的方法で、コア原料粒子の表面に子粒子が固着した、ハイブリダイゼーション処理粒子を得る。前記「固着」には、子粒子の形状変化等により物理的に接着することの他、コア原料粒子と子粒子との化学反応により接着することも含まれる。子粒子の固着の程度は限定されず、コア粒子の表面の少なくとも一部が被覆されていればよい。
【0042】
以下、本実施形態に係る製造方法で使用する高速気流中衝撃法について、
図2の高速気流中衝撃装置を用いたときの実施形態を説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されない。
【0043】
図2は、高速気流中衝撃法によるハイブリダイゼーションを実施するための、高速気流中衝撃装置100の模式断面図である。高速気流中衝撃装置100は、原料粒子投入口1、高速回転するローター2、ブレード3、ステーター4、循環回路5、排出弁6、排出口7を備えている。
【0044】
高速気流中衝撃法では、まず、粉体であるコア原料粒子8と、微粉体である子粒子9が、試料投入口1から衝撃室へ供給され、ローター2の回転により衝撃室中のコア原料粒子8と子粒子9が、高速で衝撃室内を回転しながら飛散し、その間に、コア原料粒子8の表面に子粒子9が衝突する。一部の原料粒子は、この衝突室と接続された循環回路5の一方の接続口から管内に入り循環した後、他方の接続口から再び衝突室内に導入される。この循環回路5により、コア原料粒子8と子粒子9の衝突処理を繰り返し行うことができる。このようにして回転による衝突を一定時間続けることで、コア原料粒子8の表面に、子粒子9が固着し、更には子粒子9が変形等することによって形成された、潜熱蓄熱粒子10が得られる。コア原料粒子8と子粒子9の衝突中は排出弁6により排出口7への導入路が閉じられているが、一定時間後、得られた潜熱蓄熱粒子10は、排出弁6を移動させることにより開通した排出口7への導入路を通って、排出口7から装置外に排出される。図示していないが、衝突室内が高温とならないように、冷却水の通路を設け、冷却水を流して冷却しながら衝突処理を行ってもよい。
【0045】
上記装置におけるローター2の周速度は、例えば40m/s以上、100m/s以下の範囲とすることが挙げられる。処理時間は、処理量にもよるが、例えば1~20分の範囲とすることができる。処理温度は例えば室温から70℃までの範囲とすることができ、更には室温から50℃までの範囲とすることができる。衝突室の圧力、雰囲気は特に限定されない。衝突室の雰囲気は、例えばAr雰囲気などの不活性ガス雰囲気とすることができる。
【0046】
(iii)化成被膜処理
ハイブリダイゼーション処理粒子の化成被膜処理を行う。これにより、表面に、コア原料粒子の組成元素を含む化成処理被膜を有する、化成被膜処理粒子を得る。化成被膜処理は、AlまたはAl合金の表面を酸化させて緻密なAl酸化物またはAl水酸化物の被膜を作る方法であればよく、その方法は限定されない。化成被膜処理法として、例えば、ベーマイト法、リン酸クロメート処理法、クロム酸クロメート処理法、リン酸亜鉛処理法などが挙げられる。好ましくはベーマイト法である。
【0047】
ベーマイト法は、「JIS H 0201:1998 アルミニウム表面処理用語」に規定される処理であり、高温の蒸留水中又は弱アルカリ水溶液中でアルミニウムの表面に被膜を形成する方法である。ベーマイト処理の溶液のpH値が高くなるにつれて得られるAl酸化被膜は良質となる傾向が確認され、特に、6.0以上で9.0未満の範囲に設定することが好ましく、7.0~8.5がより好ましく、最も好ましくは8である。ベーマイト処理の条件として、80℃~100℃の温度、0.25~3時間の条件で、コア粒子を処理することができる。好ましくは攪拌しながら処理することである。
【0048】
(iv)熱処理(か焼)
化成被膜処理粒子の熱処理を行う。これにより、化成被膜処理粒子の化成処理被膜を酸化し、被覆部として酸化被膜を形成できる。熱処理の温度は、例えばコア原料粒子を構成する金属(合金を含む)の融点よりも高い温度で実行することが挙げられ、例えば700℃以上、1300℃以下で加熱することが挙げられる。熱処理により形成されるアルミニウム酸化膜は、概ね800℃以下の比較的低温ではγ-Al2O3の結晶形をとり、化学的に安定とされるα-Al2O3膜は概ね880℃以上の比較的高温で得られる。例えば化学的に安定なα-Al2O3膜を得るには、熱処理の温度を880℃以上、1230℃以下とすることが好ましい。熱処理の温度は、900℃以上、1230℃以下の温度で行うことがより好ましい。
【0049】
熱処理の雰囲気は、特に限定されない。例えば、大気雰囲気、または熱処理炉へ酸素ガスを供給して酸素雰囲気とすることなどが挙げられる。ヒータにより炉内の温度を高め、試料の温度が所定の温度に達した時点から、例えば1時間~5時間の熱処理(酸化処理)を施して、熱処理後の潜熱蓄熱粒子を得ることができる。熱処理の方法は、上記化成被膜処理粒子を、例えば、坩堝内に充填し、この坩堝を挿入棒の先端に設けられた熱電対の上部に載置し、ヒータを備えた熱処理炉内にセットして行うことがあげられる。
【実施例0050】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前述および後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0051】
本実施例では、平均粒子径が20~37μmであって成分がSiを25質量%含むAl合金(Al-25mass%Si)のコア原料粒子と、平均粒子径が0.5μmであって成分がTiO2の子粒子を用意し、これらの配合の割合を、コア原料粒子と子粒子の合計に対する子粒子の割合が表1に示す通り、1質量%、3質量%、または5質量%となるようにした。そして、株式会社 奈良機械製作所社製の高速気流中衝撃装置を用い、表1に示す周速度と処理時間の条件で、高速気流中衝撃法により、前記コア原料粒子に前記子粒子を衝突させる処理を行い、ハイブリダイゼーション処理粒子を得た。
【0052】
次いで、ハイブリダイゼーション処理粒子を、蒸留水を入れたビーカ内に充填し、ホットプレートで蒸留水を100℃に加熱し、攪拌棒で攪拌しながら3時間、ハイブリダイゼーション処理粒子の表面のベーマイト処理を行って化成被膜処理粒子を得た。
【0053】
その後、化成被膜処理粒子を坩堝内に充填し、この坩堝を挿入棒の先端に設けられた熱電対の上部に載置し、ヒータを備えた熱処理炉内にセットした。この熱処理炉において、大気雰囲気中、または酸素ガスが熱処理炉のガス導入口から供給され、排ガスがガス排出口から外部へと導かれることで形成される酸素雰囲気中で、化成被膜処理粒子の温度を徐々に上げ、試料が1000℃に達した時点から3時間の熱処理(酸化処理)を施し、化成被膜処理粒子の表面にα-Al2O3膜の形成された試料を得た。
【0054】
【0055】
(SEM観察)
実施例1~3における、ハイブリダイゼーション処理粒子の外観をSEM(JEOL,JSM-7001FA)で観察し、かつEDS分析を行って、子粒子の配合比の違いがハイブリダイゼーションでの子粒子の固着の程度に及ぼす影響を確認した。その結果を
図3に示す。
図3の下段がEDS分析結果であって、Tiの存在がグレーで示される。
図3から、子粒子の固着量(グレー部分の占める割合)は子粒子の配合比に応じて異なるものの、いずれの配合比においても、コア原料粒子の表面にほぼ均一に子粒子が固着していることがわかった。
【0056】
次に、実施例1と実施例2の試料(潜熱蓄熱粒子)の製造において得られた、ハイブリダイゼーション処理粒子、化成被膜処理粒子、および試料(潜熱蓄熱粒子、熱処理:大気)のSEM観察を行った。その結果を、実施例1(子粒子の配合比が1質量%)については
図4、実施例2(子粒子の配合比が3質量%)については
図5に示す。
図4および
図5から、化成被膜処理粒子はいずれもベーマイトシェルに特有の花弁状組織を有することを確認した。またいずれの試料も、Al-25mass%Siの融点以上で熱処理した後も、PCMの漏出はなく球形を維持でき、マイクロカプセル化を達成できたことを確認した。
【0057】
(XRD測定)
実施例1(子粒子の配合比を1質量%)で製造した、ハイブリダイゼーション処理粒子、ハイブリダイゼーション処理粒子に化成被膜処理して得られた化成被膜処理粒子、および化成被膜処理粒子に熱処理を施して得られた試料(潜熱蓄熱粒子、熱処理:大気)のXRD測定を、以下の条件下で行った。その結果を
図6に示す。
図6から、ハイブリダイゼーション処理粒子と化成被膜処理粒子の主要なピークはAl、Siであり、試料(潜熱蓄熱粒子)の主要なピークはAl、Siおよびα-Al
2O
3であり、ごく少量を添加したTiO
2、または該TiO
2由来のTiまでは検出されなかった。
(測定条件)
・X線回折装置:X線回折装置 XRD Rigaku MiniFlex600 X線源:Cu線
・検出器:高速1次元検出器D/teX Ultra2
・管電圧:40kV
・管電流:15mA
・スキャンスピード:1.0°/min
・ステップ:0.01°
【0058】
(示差走査熱量測定(DSC))
実施例1~3において大気雰囲気と酸素雰囲気のそれぞれ熱処理した試料を用い、示差走査熱量測定装置(Mettler Toledo社製、型番:823e)を使用し、アルミナパンを用いて、Ar雰囲気下、800℃から400℃へ降温速度5K/minの条件で、降温時(放熱側)の示差走査熱量測定を行い、DSC曲線を得た。その結果を
図7と表2に示す。
図7および表2から、TiO
2を添加して製造した試料の発熱ピークはいずれも、TiO
2を添加せずに製造した試料よりも高温側にシフトした。このことから、得られた潜熱蓄熱粒子では、従来の潜熱蓄熱粒子の放熱時に生じていた過冷却が抑制されたといえる。
【0059】
【0060】
以上の結果から、ごく少量のTiO2を用い、本実施形態に係る方法によってTiをコア粒子に組み込むことができ、更に、コア粒子に組み込まれた、XRD測定では確認の難しい、ごく少量のTiがドーパントとして作用し、潜熱蓄熱粒子の性質を改質することができた。これにより、例えば潜熱蓄熱粒子の凝固点を高めて、過冷却を抑制できるなど、固液相温度のヒステリシスを精密に制御可能となった。