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特開2023-3869光導波路素子、光変調器、光変調モジュール、及び光送信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003869
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】光導波路素子、光変調器、光変調モジュール、及び光送信装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/035 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
G02F1/035
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105201
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
(72)【発明者】
【氏名】菅又 徹
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102BA03
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA00
2K102DA05
2K102DB04
2K102DB05
2K102DB08
2K102DC04
2K102DC08
2K102EA03
2K102EA22
2K102EB16
2K102EB30
(57)【要約】
【課題】凸状光導波路と信号電極との複数の交差部を有する光導波路素子において、交差部における擾乱変調の発生を効果的に抑制して、良好な動作特性を実現する。
【解決手段】基板上に延在する凸部により構成された光導波路と、基板上に形成された、光導波路を伝搬する光波を制御する信号電極と、を有する光導波路素子であって、光導波路は、湾曲部を有する2本の並行導波路を備えたマッハツェンダ型光導波路を含み、信号電極は、湾曲部において2本の並行導波路とそれぞれ交差する、差動信号を伝送する2本の信号線路からなり、2本の信号線路のそれぞれは、2本の並行導波路における交差長さが互いに同じとなるように構成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に延在する凸部により構成された光導波路と、
前記基板上に形成された、前記光導波路を伝搬する光波を制御する信号電極と、
を有する光導波路素子であって、
前記光導波路は、湾曲部を有する2本の並行導波路を備えたマッハツェンダ型光導波路を含み、
前記信号電極は、
前記湾曲部において前記2本の並行導波路とそれぞれ交差する、差動信号を伝送する2本の信号線路からなり、
前記2本の信号線路のそれぞれは、前記2本の並行導波路における交差長さが互いに同じとなるように構成されている、
光導波路素子。
【請求項2】
前記2本の信号線路において、前記並行導波路と交差する部分の間隔は、前記並行導波路と交差しない部分の間隔より狭い、
請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項3】
前記2本の信号線路は、前記並行導波路と交差する部分より前記差動信号の伝搬方向に沿って上流の部分の間隔に対し、前記並行導波路と交差する部分の間隔が狭い、
請求項2に記載の光導波路素子。
【請求項4】
前記2本の信号線路は、前記並行導波路と交差する部分の間隔に対し、前記並行導波路と交差する部分より前記差動信号の伝搬方向に沿って下流の部分の間隔が広い、
請求項3に記載の光導波路素子。
【請求項5】
前記2本の信号線路のそれぞれは、前記2本の並行導波路との交差角度が互いに同じとなるように形成されている、
請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項6】
前記2本の信号線路は、前記2本の並行導波路に挟まれた前記基板上の領域において互いに交差する、
請求項5に記載の光導波路素子。
【請求項7】
前記2本の信号線路は、前記並行導波路と交差する部分が、前記基板の平面視において互いに重なっている、
請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項8】
前記2本の信号線路が前記並行導波路と交差する部分には、前記並行導波路と前記2本の信号線路との間に樹脂から成る絶縁層を有する、
請求項2ないし請求項7のいずれか一項に記載の光導波路素子。
【請求項9】
光の変調を行う光変調素子である請求項1ないし7のいずれか一項に記載の光導波路素子と、
前記光導波路素子を収容する筐体と、
前記光導波路素子に光を入力する光ファイバと、
前記光導波路素子が出力する光を前記筐体の外部へ導く光ファイバと、
を備える光変調器。
【請求項10】
光の変調を行う光変調素子である請求項1ないし7のいずれか一項に記載の光導波路素子と、前記光導波路素子を駆動する駆動回路と、を備える光変調モジュール。
【請求項11】
請求項9に記載の光変調器または請求項10に記載の光変調モジュールと、
前記光導波路素子に変調動作を行わせるための電気信号を生成する電子回路と、
を備える光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路素子、光変調器、光変調モジュール、及び光送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速/大容量光ファイバ通信システムにおいては、基板上に形成された光導波路と、光導波路を伝搬する光波を制御する制御電極と、で構成される光導波路素子としての光変調素子を組み込んだ光変調器が多く用いられている。中でも、電気光学効果を有するLiNbO(以下、LNともいう)を基板に用いた光変調素子は、光の損失が少なく且つ広帯域な光変調特性を実現し得ることから、高速/大容量光ファイバ通信システムに広く用いられている。
【0003】
特に、光ファイバ通信システムにおける変調方式は、近年の伝送容量の増大化の流れを受け、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)やDP-QPSK(Dual Polarization - Quadrature Phase Shift Keying)等、多値変調や、多値変調に偏波多重を取り入れた伝送フォーマットが主流となっており、基幹光伝送ネットワークにおいて用いられるほか、メトロネットワークにも導入されつつある。
【0004】
また、近年では、光変調器自身を小型化しつつ更なる低電圧駆動および高速変調を実現するため、基板中における信号電界と導波光との相互作用をより強めるべく、薄膜化(又は薄板化)したLN基板(例えば、厚さ20μm以下)の表面に帯状の凸部を形成して構成されるリブ型光導波路またはリッジ型光導波路(以下、総称して凸状光導波路という)を用いた光変調器も実用化されつつある(例えば、特許文献1、2)。
【0005】
また、光変調素子そのものの小型化に加えて、電子回路と光変調素子とを一つの筐体に収容し、光変調モジュールとして集積化する等の取り組みも進められている。例えば、光変調素子と当該光変調素子を駆動する高周波ドライバアンプとを一つの筐体内に集積して収容し、光入出力部を当該筐体の一の面に並列配置することで、小型・集積化を図った光変調モジュールが提案されている。このような光変調モジュールに用いられる光変調素子では、当該光変調素子を構成する基板の一の辺に光導波路の光入力端と光出力端とが配されるように、光導波路は、基板上において光の伝搬方向が折り返されるように形成される(例えば、特許文献3)。以下、このような光伝搬方向の折返し部分を含む光導波路で構成される光変調素子を折返し型光変調素子という。
【0006】
ところで、QPSK変調を行う光変調器(QPSK光変調器)やDP-QPSK変調を行う光変調器(DP-QPSK光変調器)は、所謂ネスト型と呼ばれる入れ子構造になった複数のマッハツェンダ型光導波路を備え、そのそれぞれが、高周波信号が印加される信号電極を少なくとも一つ備える。基板上に形成されるこれらの信号電極は、基板外部の電気回路との接続のため、LN基板の外周近傍まで延在するように形成される。このため、基板上には、複数の光導波路と複数の信号電極とが複雑に交差し、光導波路の上を信号電極が横断する複数の交差部が形成される。
【0007】
このような交差部では、光導波路の上を交差する信号電極から当該信号電極の下部にある光導波路の部分に電界が印加されることとなり、当該光導波路を伝搬する光の位相を僅かながら変化させて当該位相を変調することとなる。このような交差部における光の位相変化ないし位相変調は、信号電極によって光導波路内に発生する正常な変調のための光位相変化に対する雑音として働き、光変調動作を擾乱し得る。以下、このような交差部において発生する雑音としての位相変調を、擾乱変調と称する。
【0008】
光変調器における光変調動作に対する擾乱変調の雑音効果の程度は、交差部において信号電極から光導波路に加わる電界が強いほど大きく、また、交差部の数に比例した加算効果によっても(例えば、信号電極に沿った交差部の長さ(交差長)の総和に応じて)大きくなる。
【0009】
例えば、従来の、LN基板の平らな表面にTi等の金属を拡散して形成された光導波路(いわゆる、平面光導波路)と、そのLN基板の基板平面に形成される信号電極と、が交差する構成においては、信号電極は光導波路の上面(基板面)にのみ形成されるのに対し、上述のような凸状光導波路と信号電極とが交差する構成では、信号電極は凸状光導波路の凸部の上面及び2つの側面にも形成され得る。このため、交差部において信号電極から光導波路に加わる電界は、平面導波路の場合に比べて凸状光導波路の場合に強くなり、更に強閉じ込め化された光波との相互作用も強くなり、したがって、擾乱変調による雑音は、平面光導波路の場合に比べて凸状光導波路においてより大きく発生し得る。
【0010】
また、上述したような折返し型光変調素子では、光の折返し部を含まない光導波路で構成される非折返し型の光変調素子に比べて、電極と光導波路との交差部はより多く存在することとなり(例えば、特許文献3の図1参照)、擾乱変調による雑音もより大きなものとなり得る。例えば、上述したDP-QPSK変調素子の場合、非折返し型の光変調素子では、一つの電極における交差部の数は2ないし4個程度であって交差長の総和は数十ミクロン(例えば20μmから40μmの範囲)であるのに対し、折返し型光変調素子では、一つの電極における交差部の数は十数か所に及ぶ場合があり、交差長の総和は数百ミクロンから数ミリとなり得る。
【0011】
したがって、特に凸状光導波路を用いて構成される折返し型光変調素子においては、交差部で発生する擾乱変調による雑音は、正常な光変調動作に対し無視し得ないほど大きなものとなり得る。また、特に、2本の並行導波路で構成されるマッハツェンダ型光導波路においては、上記擾乱変調は、これらの並行導波路を伝搬するそれぞれの光信号に雑音を発生させるだけでなく、これら2つの信号光間の位相差にも雑音を生じさせる。この位相差雑音は、これらの光波がマッハツェンダ型光導波路内において合波される際に、光干渉作用によってより大きな雑音を生じさせることとなり、光変調動作に多大な影響を与え得る。
【0012】
また、上記のような交差部は、LN基板に限らずInP等の半導体を基板に用いた光導波路素子や、Siを基板に用いるシリコン・フォトニクス導波路デバイスなどの、種々の光導波路素子でも同様に形成され得る。また、そのような光導波路素子は、マッハツェンダ型光導波路を用いる光変調器だけでなく、方向性結合器やY分岐を構成する光導波路を用いた光変調器、あるいは光スイッチ等の種々の光導波路素子であり得る。
【0013】
そして、光導波路素子の更なる小型化、多チャンネル化、及び又は高集積化に伴って光導波路パターン及び電極パターンが複雑化すれば、基板上における交差部の数は増々増加し、擾乱変調による雑音は、無視し得ない要因となって光導波路素子の性能を制限することとなり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007-264548号公報
【特許文献2】国際公開第2018/1031916号明細書
【特許文献3】特開2019-152732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記背景より、凸状光導波路と電気信号を伝搬する信号電極との複数の交差部を有する光導波路素子において、交差部における擾乱変調の発生を効果的に抑制して、良好な動作特性を実現することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一の態様は、基板上に延在する凸部により構成された光導波路と、前記基板上に形成された、前記光導波路を伝搬する光波を制御する信号電極と、を有する光導波路素子であって、前記光導波路は、湾曲部を有する2本の並行導波路を備えたマッハツェンダ型光導波路を含み、前記信号電極は、前記湾曲部において前記2本の並行導波路とそれぞれ交差する、差動信号を伝送する2本の信号線路からなり、前記2本の信号線路のそれぞれは、前記2本の並行導波路における交差長さが互いに同じとなるように構成されている、光導波路素子である。
本発明の他の態様によると、前記2本の信号線路において、前記並行導波路と交差する部分の間隔は、前記並行導波路と交差しない部分の間隔より狭い。
本発明の他の態様によると、前記2本の信号線路は、前記並行導波路と交差する部分より前記差動信号の伝搬方向に沿って上流の部分の間隔に対し、前記並行導波路と交差する部分の間隔が狭い。
本発明の他の態様によると、前記2本の信号線路は、前記並行導波路と交差する部分の間隔に対し、前記並行導波路と交差する部分より前記差動信号の伝搬方向に沿って下流の部分の間隔が広い。
本発明の他の態様によると、前記2本の信号線路のそれぞれは、前記2本の並行導波路との交差角度が互いに同じとなるように形成されている。
本発明の他の態様によると、前記2本の信号線路は、前記2本の並行導波路に挟まれた前記基板上の領域において互いに交差する。
本発明の他の態様によると、前記2本の信号線路は、前記並行導波路と交差する部分が、前記基板の平面視において互いに重なっている。
本発明の他の態様によると、前記2本の信号線路が前記並行導波路と交差する部分には、前記並行導波路と前記2本の信号線路との間に樹脂から成る絶縁層を有する。
本発明の他の態様は、光の変調を行う光変調素子である上記いずれかに記載の光導波路素子と、前記光導波路素子を収容する筐体と、前記光導波路素子に光を入力する光ファイバと、前記光導波路素子が出力する光を前記筐体の外部へ導く光ファイバと、を備える光変調器である。
本発明の他の態様は、光の変調を行う光変調素子である前記光導波路素子と、前記光導波路素子を駆動する駆動回路と、を備える光変調モジュールである。
本発明の更に他の態様は、前記光変調器または前記光変調モジュールと、前記光導波路素子に変調動作を行わせるための電気信号を生成する電子回路と、を備える光送信装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、凸状光導波路と電気信号を伝搬する電極との複数の交差部を有する光導波路素子において、交差部における擾乱変調の発生を効果的に抑制して、良好な動作特性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態に係る光変調器の構成を示す図である。
図2図1に示す光変調器に用いられる光変調素子の構成を示す図である。
図3図2に示す光変調素子の光変調部Aの部分詳細図である。
図4図2に示す光変調素子の光折り返し部Bの部分詳細図である。
図5図3に示す光変調部AのV-V断面矢視図である。
図6図4に示す光折り返し部Bにおける交差領域の部分詳細図である。
図7】第1の変形例に係る交差領域の構成を示す図である。
図8】第2の変形例に係る交差領域の構成を示す図である。
図9図8に示す交差領域のIX-IX断面矢視図である。
図10図8に示す交差領域のX-X断面矢視図である。
図11】第3の変形例に係る交差領域の構成を示す図である。
図12】第4の変形例に係る交差領域の構成を示す図である。
図13】第5の変形例に係る交差領域の構成を示す図である。
図14図13に示す交差領域のXIV-XIV断面矢視図である。
図15】本発明の第2の実施形態に係る光変調モジュールの構成を示す図である。
図16】本発明の第3の実施形態に係る光送信装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
[1.第1実施形態]
まず、第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る、光導波路素子である光変調素子を用いた光変調器100の構成を示す図である。光変調器100は、筐体102と、当該筐体102内に収容された光変調素子104と、中継基板106と、を有する。光変調素子104は、例えば、DP-QPSK変調器構成である。筐体102は、最終的にはその開口部に板体であるカバー(不図示)が固定されて、その内部が気密封止される。
【0020】
光変調器100は、また、光変調素子104の変調に用いる高周波電気信号を入力するための信号ピン108と、光変調素子104の動作点の調整等に用いる電気信号を入力するための信号ピン110と、を有する。
【0021】
さらに、光変調器100は、筐体102内に光を入力するための入力光ファイバ114と、光変調素子104により変調された光を筐体102の外部へ導く出力光ファイバ120と、を筐体102の同一面に有する。
【0022】
ここで、入力光ファイバ114及び出力光ファイバ120は、固定部材であるサポート122及び124を介して筐体102にそれぞれ固定されている。入力光ファイバ114から入力された光は、サポート122内に配されたレンズ130によりコリメートされた後、レンズ134を介して光変調素子104へ入力される。ただし、これは一例であって、光変調素子104への光の入力は、従来技術に従い、例えば、入力光ファイバ114を、サポート122を介して筐体102内に導入し、当該導入した入力光ファイバ114の端面を光変調素子104の基板220(後述)の端面に接続することで行うものとすることもできる。
【0023】
光変調器100は、また、光変調素子104から出力される2つの変調された光を偏波合成する光学ユニット116を有する。光学ユニット116から出力される偏波合成後の光は、サポート124内に配されたレンズ118により集光されて出力光ファイバ120へ結合される。
【0024】
中継基板106は、当該中継基板106に形成された導体パターン(不図示)により、信号ピン108から入力される高周波電気信号および信号ピン110から入力される動作点調整用等の電気信号を、光変調素子104へ中継する。中継基板106上の上記導体パターンは、例えばワイヤボンディング等により、光変調素子104の電極の一端を構成するパッド(後述)にそれぞれ接続される。また、光変調器100は、所定のインピーダンスを有する終端器112を筐体102内に備える。
【0025】
図2は、図1に示す光変調器100の筐体102内に収容される光変調素子104の、構成の一例を示す図である。また、図3および図4は、それぞれ、図2に示す光変調素子104の光変調部A及び光折り返し部B(後述)の部分詳細図である。
【0026】
光変調素子104は、基板220上に形成された光導波路230(図示太線点線の全体)で構成され、例えば200GのDP-QPSK変調を行う。基板220は、例えば、20μm以下(例えば2μm)の厚さに加工され薄膜化された、電気光学効果を有するZカットのLN基板である。また、光導波路230は、薄膜化された基板220の表面に形成された、帯状に延在する凸部で構成された凸状光導波路(例えば、リブ型光導波路又はリッジ型光導波路)である。ここで、LN基板は、応力が加わると光弾性効果により屈折率が局所的に変化し得るため、基板全体の機械強度を補強すべく、一般的にはSi(シリコン)基板やガラス基板、LN等の支持板に接着される。本実施形態では、後述するように、基板220は、支持板500に接着されている。
【0027】
基板220は、例えば矩形であり、図示上下方向に延在して対向する図示左右の2つの辺280a、280b、および図示左右方向に延在して対向する図示上下の辺280c、280dを有する。
【0028】
光導波路230は、基板220の図示左方の辺280aの図示上側において入力光ファイバ114からの入力光(図示右方を向く矢印)を受ける入力導波路232と、入力された光を同じ光量を有する2つの光に分岐する分岐導波路234と、を含む。また、光導波路230は、分岐導波路234により分岐されたそれぞれの光を変調する2つの変調部である、いわゆるネスト型マッハツェンダ型光導波路240a、240bを含む。
【0029】
ネスト型マッハツェンダ型光導波路240a、240bは、それぞれ、一対の並行導波路を成す2つの導波路部分に設けられたそれぞれ2つのマッハツェンダ型光導波路244a、244b、および244c、244dを含む。図3に示すように、マッハツェンダ型光導波路244a及び244bは、それぞれ、並行導波路246a1と246a2、及び並行導波路246b1と246b2、を有する。また、マッハツェンダ型光導波路244c及び244dは、それぞれ、並行導波路246c1と246c2、及び並行導波路246d1と246d2、を有する。
【0030】
以下、ネスト型マッハツェンダ型光導波路240aおよび240bを総称してネスト型マッハツェンダ型光導波路240ともいい、マッハツェンダ型光導波路244a、244b、244c、および244dを総称してマッハツェンダ型光導波路244ともいうものとする。また、並行導波路246a1と246a2とを総称して並行導波路246aともいい、並行導波路246b1と246b2とを総称して並行導波路246bともいうものとする。また、並行導波路246c1と246c2とを総称して並行導波路246cともいい、並行導波路246d1と246d2とを総称して並行導波路246dともいうものとする。さらに、並行導波路246a、246b、246c、および246dを総称して、並行導波路246ともいうものとする。
【0031】
図2に示すように、ネスト型マッハツェンダ型光導波路240は、光変調部Aと光折り返し部Bとを含む(それぞれ、図示二点鎖線の矩形で示された部分)。光折り返し部Bは、2つのネスト型マッハツェンダ型光導波路240における光の伝搬方向を変える部分である。具体的には、ネスト型マッハツェンダ型光導波路240を構成するマッハツェンダ型光導波路244のそれぞれは、湾曲部を有する2本の並行導波路246を有し、光折り返し部Bは、2つのネスト型マッハツェンダ型光導波路240を構成する合計8本の並行導波路246の湾曲部により構成されている。
【0032】
本実施形態では、ネスト型マッハツェンダ型光導波路240は、分岐導波路234により2つに分岐された入力光のそれぞれについて、光折り返し部Bにおいて光の伝搬方向を180度折り返したのち、光変調部AにおいてQPSK変調し、変調後の光(出力)をそれぞれの出力導波路248a、248bから図示左方へ出力する。これら2つの出力光は、その後、基板220外に配された光学ユニット116により偏波合成されて一つの光ビームにまとめられる。
【0033】
基板220上には、ネスト型マッハツェンダ型光導波路240a、240bを構成する合計4つのマッハツェンダ型光導波路244a、244b、244c、244dのそれぞれに変調動作を行わせるための、4つの信号電極250a、250b、250c、250dが設けられている。以下、信号電極250a、250b、250c、250dを総称して信号電極250ともいうものとする。
【0034】
信号電極250のぞれぞれは、2つの信号線路を含む。すなわち、信号電極250aは、信号線路252a1と252a2とを含み、信号電極250bは、信号線路252b1と252b2とを含む。また、信号電極250cは、信号線路252c1と252c2とを含み、信号電極250dは、信号線路252d1と252d2とを含む。以下、信号線路252a1と252a2とを総称して信号線路252aともいい、信号線路252b1と252b2とを総称して信号線路252bともいうものとする。また、信号線路252c1と252c2とを総称して信号線路252cともいい、信号線路252d1と252d2とを総称して信号線路252dともいうものとする。さらに、信号線路252a、252b、252c、および252dを総称して、信号線路252ともいうものとする。
【0035】
信号電極250のそれぞれには、対応するマッハツェンダ型光導波路244に変調動作を行わせるための高周波電気信号が入力される。この高周波電気信号は、互いに180°の位相差を有する2つの電気信号、すなわち差動信号で構成される。信号電極250のそれぞれを構成する2つの信号線路252は、その信号電極250に入力された、上記差動信号を構成する2つの電気信号のそれぞれを伝送する。
【0036】
図3に示すように、光変調部Aにおいて、信号電極250aを構成する信号線路252a1と252a2とは、それぞれ、マッハツェンダ型光導波路244aの並行導波路246a1および246a2の上部に形成された作用部300aおよび300b(図示斜線ハッチング部分)を有し、互いに180°の位相差を有する差動信号を伝搬して、マッハツェンダ型光導波路244aに変調動作を行わせる。また、信号電極250bを構成する信号線路252b1と252b2とは、それぞれ、マッハツェンダ型光導波路244bの並行導波路246b1および246b2の上部に形成された作用部300cおよび300dを有し、互いに180°の位相差を有する差動信号を伝搬して、マッハツェンダ型光導波路244bに変調動作を行わせる。
【0037】
同様に、信号電極250cを構成する信号線路252c1と252c2とは、それぞれ、マッハツェンダ型光導波路244cの並行導波路246c1および246c2の上部に形成された作用部300eおよび300fを有し、互いに180°の位相差を有する差動信号を伝搬して、マッハツェンダ型光導波路244cに変調動作を行わせる。また、信号電極250dを構成する信号線路252d1と252d2とは、それぞれ、マッハツェンダ型光導波路244dの並行導波路246d1および246d2の上部に形成された作用部300gおよび300hを有し、互いに180°の位相差を有する差動信号を伝搬して、マッハツェンダ型光導波路244dに変調動作を行わせる。
【0038】
以下、作用部300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g、および300hを総称して、作用部300ともいうものとする。
【0039】
図4に示すように、光折り返し部Bにおいて、信号電極250を構成する2本の信号線路252のそれぞれは、4つのマッハツェンダ型光導波路244を構成するそれぞれ2本の並行導波路246の湾曲部において、それらの並行導波路246と交差する。ここで、基板220の面上において、差動信号を伝搬する2本の信号線路252と、一のマッハツェンダ型光導波路244を構成する2本の並行導波路246と、が交差する部分を、交差領域ともいうものとする。
【0040】
すなわち、図4において、差動信号を伝搬する2本の信号線路252a(すなわち、信号線路252a1と252a2)は、交差領域400a1において、マッハツェンダ型光導波路244aを構成する2本の並行導波路246a(すなわち、並行導波路246a1および246a2)と交差する。また、信号線路252aは、交差領域400a2、400a3、400a4において、それぞれ、マッハツェンダ型光導波路244b、244c、244dのそれぞれを構成するそれぞれ2本の並行導波路246b、246c、246dと交差する。
【0041】
同様に、2本の信号線路252bは、交差領域400b1、400b2、400b3、400b4において、マッハツェンダ型光導波路244a、244b、244c、244dのそれぞれを構成するそれぞれ2本の並行導波路246a、246b、246c、246dと交差する。2本の信号線路252cは、交差領域400c1、400c2、400c3、400c4において、マッハツェンダ型光導波路244a、244b、244c、244dのそれぞれを構成するそれぞれ2本の並行導波路246a、246b、246c、246dと交差する。また、2本の信号線路252dは、交差領域400d1、400d2、400d3、400d4において、マッハツェンダ型光導波路244a、244b、244c、244dのそれぞれを構成するそれぞれ2本の並行導波路246a、246b、246c、246dと交差する。
【0042】
以下、交差領域400a1、400a2、400a3、400a4を総称して交差領域400aともいい、交差領域400b1、400b2、400b3、400b4を総称して交差領域400bともいうものとする。また、交差領域400c1、400c2、400c3、400c4を総称して交差領域400cともいい、交差領域400d1、400d2、400d3、400d4を総称して交差領域400dともいうものとする。さらに、交差領域400a、400b、400c、400dを総称して交差領域400ともいうものとする。
【0043】
図2を参照し、信号線路252a1、252a2、252b1、252b2、252c1、252c2、252d1、252d2は、それぞれ、基板220の図示右方へ延在し、光折り返し部Bにおいて8本の並行導波路246の上を交差したのち、辺280bまで延在してパッド254a、254b、254c、254d、254e、254f、254g、254hに接続されている。
【0044】
以下、パッド254a、254b、254c、254d、254e、254f、254g、254hを総称してパッド254ともいうものとする。パッド254のそれぞれは、ワイヤボンディング等により、図1に示す光変調器100の中継基板106と接続される。
【0045】
信号線路252a1、252a2、252b1、252b2、252c1、252c2、252d1、252d2の図示左方は、図示下方へ折れ曲がって基板220の辺280dまで延在し、パッド258a、258b、258c、258d、258e、258f、258g、258hに接続されている。以下、パッド258a、258b、258c、258d、258e、258f、258g、258hを総称してパッド258ともいうものとする。パッド258のそれぞれは、ワイヤボンディング等により、終端器112を構成する8つの終端抵抗(不図示)のそれぞれと接続される。
【0046】
図2において、信号線路252のそれぞれは、従来技術に従い、基板220の面上においてこれらの信号線路252をそれぞれ挟むように形成されたグラウンド電極(不図示)と共に、例えば、所定のインピーダンスを有するコプレーナ伝送線路を構成している。
【0047】
これにより、信号ピン108から中継基板106を介してパッド254のそれぞれに入力される高周波電気信号は、進行波となって信号線路252のそれぞれを伝搬し、作用部300のそれぞれにおいて、対応するマッハツェンダ型光導波路244を伝搬する光波をそれぞれ変調する。
【0048】
図5は、図3に示す光変調部AのV-V断面矢視図であり、信号電極250cを構成する信号線路252c1および252c2(具体的には、作用部300eおよび300f)の断面構造を示す図である。なお、他の信号線路252のそれぞれも、光変調部Aにおいては、図5に示す信号線路252c1および252c2と同様に構成される。
【0049】
図5において、基板220は、補強のためガラス等の支持板500に接着固定されている。基板220上には、凸状光導波路であるマッハツェンダ型光導波路244cの並行導波路246c1および246c2を構成する凸部504c1、504c2が形成されている。ここで、図5に示す破線円形は、並行導波路246c1および246c2を伝搬する光波のフィールド径を模式的に示している。
【0050】
凸部504c1および504c2の上には、それぞれ、中間層502が形成され、その上に信号線路252c1および252c2(具体的には、作用部300eおよび300f)がそれぞれ形成されている。中間層502は、例えばSiO(二酸化ケイ素)である。ただし、これは一例であって、中間層502は、後述する感光性永久膜などの樹脂であってもよい。
【0051】
また、基板220上には、信号線路252c1と252c2とをそれぞれ基板220の面上において挟む位置に、3つのグラウンド電極272が形成されている。グラウンド電極272のそれぞれと信号線路252c1および252c2との間隔は、従来技術に従い、これらが構成するコプレーナ伝送線路に求められるインピーダンス、および凸部504c1、504c2の幅などの、種々の設計条件から定められる。以下、凸部504c1、504c2を含め、光導波路230を構成する基板220上の凸部を総称して凸部504ともいうものとする。
【0052】
信号線路252が凸部504に形成する電界と、マッハツェンダ型光導波路244を伝搬する導波光と、の相互作用をより強めて高速変調動作をより低電圧で行い得るように、基板220は、20μm以下の厚さ、好適には10μm以下の厚さに形成される。本実施形態では、例えば、基板220の厚さは1.2μm、光導波路230を構成する凸部504の高さは0.8μmである。
【0053】
なお、図5においては光導波路230を構成する凸部504にのみ中間層502が設けられるものとしたが、中間層502は、基板220の全面に亘って形成されていてもよい。また、これに加えて、中間層502は、凸部504の側面(図示左右の側面)に形成されていてもよい。例えば、中間層502を感光性永久膜などの樹脂で構成する場合には、凸部504の側面にも中間層502を容易に形成することができる。
【0054】
図2を参照し、光変調素子104には、また、いわゆるDCドリフトによるバイアス点の変動を補償して動作点を調整するためのバイアス電極270a、270b、270cが設けられている。バイアス電極270aは、ネスト型マッハツェンダ型光導波路240a、240bのバイアス点変動の補償に用いられる。また、バイアス電極270bおよび270cは、それぞれ、マッハツェンダ型光導波路244a、244b、および244c、244dのバイアス点変動の補償に用いられる。
【0055】
これらのバイアス電極270a、270b、270cは、それぞれ、基板220の図示上側の辺280cまで延在し、中継基板106を介して信号ピン110のいずれかと接続される。対応する信号ピン110は、筐体102の外部に設けられるバイアス制御回路と接続される。これにより、当該バイアス制御回路によりバイアス電極270a、270b、270cが駆動されて、対応する各マッハツェンダ型光導波路に対しバイアス点変動を補償するように動作点が調整される。以下、バイアス電極270a、270b、270cを総称してバイアス電極270ともいうものとする。
【0056】
バイアス電極270は、直流ないし低周波の電気信号が印加される電極であり、例えば、基板220の厚さが20μmの場合、0.3μm以上、5μm以下の範囲の厚さで形成される。これに対し、信号電極250を構成する信号線路252は、印加される高周波電気信号の導体損失を低減するべく、例えば20μm以上、40μm以下の範囲で形成される。尚、信号線路252の厚さは、インピーダンスやマイクロ波実効屈折率を所望の値に設定するため基板220の厚さに応じて決定され、基板220の厚さが厚い場合にはより厚く、基板220の厚さが薄い場合にはより薄く決定され得る。
【0057】
上述したように、光変調素子104では、信号電極250を構成する信号線路252のそれぞれは、光折り返し部Bを構成する8つの並行導波路246のそれぞれの湾曲部において、これらの並行導波路246の上を交差する。このため、8つの並行導波路246と信号線路252との交差に起因した上述の擾乱変調が発生すれば、光変調素子104としての変調動作が劣化し得る。(マッハツェンダの2本の並行導波路で発生した擾乱変調は変調動作に大きく影響する)
【0058】
このような擾乱変調を低減するため、本実施形態における光変調素子104では、特に、交差領域400のそれぞれにおいて、差動信号を伝搬する2本の信号線路252のそれぞれは、対応するマッハツェンダ型光導波路244の2本の並行導波路246のそれぞれとの2つの交差部において、並行導波路246における交差長さが、互いに略同じ角度及び又は略同じ長さとなるように構成されている。ここで、上記交差長さは、その並行導波路246に沿って測った長さとして定義され得る。
【0059】
これにより、並行導波路246における2つの交差部、すなわち、互いに逆位相の差動信号を伝搬する2本の信号線路252との2つの交差部では、互いに逆位相の擾乱変調が同じ強度で生ずるので、これらの擾乱変調は互いに相殺されることとなる。その結果、上記並行導波路246のそれぞれにおいて、擾乱変調がその総和として効果的に低減され得る。
【0060】
ここで、並行導波路246の2つの交差部における交差長さについての“同じ長さ”および“略同じ長さ”とは、それらの交差部により上記擾乱変調が所定の程度(例えば、1/10)まで相殺され得る程度の、誤差を含んだ同じ長さであることを意味する。また、並行導波路246の2つの交差部における交差角度についての“同じ角度”および“略同じ角度”とは、それらの交差部における交差長さが、上記の意味において“同じ長さ”又は“略同じ長さ”となる程度に誤差を含んだ同じ角度であることを意味する。
【0061】
具体的には、本実施形態では、信号電極250を構成する2本の信号線路252は、同一の並行導波路246と交差する部分における間隔が、当該並行導波路246と交差しない部分の間隔より狭くなるように形成されている。これにより、一の並行導波路246における2本の信号線路252との2つの交差部の間隔が近接することとなるので、当該2つの交差部における、並行導波路246と信号線路252との交差角度は、互いに略同じ角度となる。その結果、上記2本の信号線路が同じ幅で構成されていれば、これら2つの交差部における交差長さは略同じ長さとなる。
【0062】
本実施形態では、より具体的には、上記2本の信号線路252は、上記同一の並行導波路246と交差する部分の間隔が、差動信号の伝搬方向に沿って当該交差する部分より上流の部分の間隔に対して狭い。これにより、例えば、2本の信号線路は、同一の並行導波路246と交差する部分の間隔を、パッド254の間隔(例えば、パッド254aと254bとの間隔)より狭くして、上記交差する部分の間隔を近接させることができる。
【0063】
図6は、図4に示す光折り返し部Bにおける交差領域400a4の部分詳細図である。なお、交差領域400a4以外の他の交差領域400も、図6に示す交差領域400a4と同様に構成されている。
【0064】
図6において、2つの信号線路252aは、互いに同じ幅Weで形成され、図示右上から左下へ向かって差動信号を伝搬する。また、並行導波路246dは、図示右下から左上に向かって光波を伝搬する。そして、2つの信号線路252aは、上記差動信号の伝搬方向に沿って上流の部分の間隔d1に対し、並行導波路246dと交差する下流の部分の間隔d2が狭く形成されている(すなわち、d2<d1)。ここで、間隔d1は、例えば、パッド254aと254bとの間隔に等しい。
【0065】
図6において、2つの信号線路252a1及び252a2は、並行導波路246d1と交差して、交差部600a及び600b(図示ハッチング部分)を構成する。また、2つの信号線路252a1及び252a2は、並行導波路246d2と交差して、交差部602a及び602b(図示ハッチング部分)を構成する。図6には、参考として、2つの信号線路252aが、図示一点鎖線に沿って一定の間隔d1で形成されて並行導波路246d1と交差した場合の仮想の交差部604a及び604bも図示されている。
【0066】
ここで、交差部600a、600b、602a、および602bにおける、信号線路252aに対する並行導波路246dの交差角を、それぞれ、θ1、θ2、θ3、およびθ4とする。また、交差部600a、600b、602a、および602bにおける、並行導波路246dに沿った交差長さを、それぞれ、d3、d4、d5、およびd6とする。同様に、仮想の交差部604aおよび604bにおける交差角をそれぞれθ5およびθ6とし、交差長さをそれぞれd7およびd8とする。ここで、信号線路252aに対する並行導波路246dの交差角とは、例えば、対応する交差部における、信号線路252aを伝搬する差動信号の伝搬方向と並行導波路246dを伝搬する光の伝搬方向とがなす角度である。
【0067】
なお、当業者において明らかなように、幾何学における一般的考察から、並行導波路246d1においては、交差角はθ6、θ2、θ1、θ5の順に増加する。また、交差長さd3、d4、d5、d6、d7、およびd8と、交差角θ1、θ2、θ3、θ4、θ5、およびθ6とは、次式の関係を有する。
d3=|We/sinθ1|
d4=|We/sinθ2|
d5=|We/sinθ3|
d6=|We/sinθ4|
d7=|We/sinθ5|
d8=|We/sinθ6|
【0068】
上述のように、2本の信号線路252aは、差動信号の伝搬方向に沿って上流の部分の間隔d1に対し、並行導波路246dと交差する下流の部分の間隔d2が狭く形成されている。すなわち、2本の信号線路252aにおいて、並行導波路246d1及び246d2と交差する部分における間隔d2は、これらの並行導波路246dと交差しない部分の間隔d1より狭い。
【0069】
これにより、2つの信号線路252aと並行導波路246d1との2つの交差部600aと600bとの間隔は、2つの信号線路252aが一定間隔d1で形成された場合の交差部604aと604bとの間の間隔よりも狭くなり、2つの交差部600aと600bとは近接して形成されることとなる。
【0070】
したがって、交差部600aおよび600bにおける、信号線路252aと並行導波路246dとの交差角θ1及びθ2は、互いに略同じとなり(すなわち、θ1≒θ2)。その結果、交差部600aおよび600bにおける交差長さd3(=|We/sinθ1|)とd4(=|We/sinθ2|)とは、互いに略同じ長さとなる(すなわち、d3≒d4)。
【0071】
同様に、2つの信号線路252aと並行導波路246d2との2つの交差部602aと602bにおいても、交差角θ5及びθ6は、互いに略同じとなり(すなわち、θ5≒θ6)、その結果、交差長さd7(=|We/sinθ5|)とd8(=|We/sinθ6|)とは、互いに略同じ長さとなる(すなわち、d7≒d8)。
【0072】
したがって、図6に示す構成においては、互いに逆位相の差動信号を伝搬する2本の信号線路252aと、並行導波路246d1と、の2つの交差部600aおよび600bは、互いに同じ交差長さを有するので(すなわち、d3≒d4)、これらの2つの交差部600aおよび600bに生ずる擾乱変調は互いに相殺され、並行導波路246d1の全体として発生する擾乱変調が効果的に低減され得る。同様の理由により、2本の信号線路252aと並行導波路246d2との2つの交差部602aおよび602bに生ずる擾乱変調は互いに相殺され、並行導波路246d2の全体として発生する擾乱変調が低減され得る。
【0073】
その結果、これら2つの並行導波路246dを伝搬するそれぞれの光信号の雑音が低減すると共に、これら2つの信号光間の位相差雑音をも低減して、並行導波路246dにより構成されるマッハツェンダ型光導波路244dの光変調動作における雑音の発生を効果的に低減することができる。
【0074】
なお、光変調素子104に用いられるようなマッハツェンダ型光導波路の一般的な並行導波路間の間隔および並行導波路に設けられる湾曲部の曲率を考慮すると、交差部600aと600bの間、および交差部602aと602bとの間における交差角および交差長さを略同一なものとする条件として、並行導波路246dと交差する部分における信号線路252aの間隔d2(<d1)は、当該交差する部分における2本の並行導波路246d間の間隔w(図6参照)に対し、d2≦wであることが好ましい。
【0075】
なお、図2では、信号線路252a1と252a2および信号線路252b1と252b2は、それぞれ、互いの間隔を一定に保った状態で、8本の並行導波路246と交差し、光変調部Aまで延在している。一方、信号線路252c1と252c2、および信号線路252d1と252d2は、それぞれ、互いの間隔を一定に保った状態で8本の並行導波路246と交差したのち、互いの間隔が広げられて光変調部Aまで延在している。信号線路252cおよび252dの構成は、差動信号を伝搬する信号線路の間でのクロストークを低減する観点から有利である。
【0076】
ただし、上記の構成は一例であって、例えばクロストークが大きな影響を持たない場合には、信号線路252c、252dの一方又は双方も、信号線路252a及び252bと同様に、差動信号を伝搬する信号線路の互いの間隔を一定に保ったまま光変調部Aまで延在するように形成されるものとすることができる。あるいは、クロストークの影響が無視し得ない場合には、信号線路252a、252bの一方又は双方も、信号線路252c及び252dと同様に、差動信号を伝搬する信号線路の互いの間隔が広げられて光変調部Aまで延在するように形成されるものとすることができる。
【0077】
次に、光変調素子104の交差領域400における構成の変形例について説明する。
[1.1 第1変形例]
図7は、図6に示す交差領域400a4の第1の変形例に係る、交差領域400a4-1の構成を示す図である。図7に示す交差領域400a4-1の構成は、光変調素子104において、図6に示す交差領域400a4に代えて用いることができる。また、当業者において明らかなように、図4における交差領域400a4以外の交差領域400にも、交差領域400a4-1と同様の構成を用いることができる。なお、図7において、図6と同じ構成要素については、図6における符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した図6についての説明を援用する。
【0078】
交差領域400a4-1では、信号線路252a1および252a2に代えて、信号線路252a1-1及び252a2-1が用いられている。信号線路252a1-1および252a2-1は、信号線路252a1および252a2と同様の構成を有するが、並行導波路246dとの交差の態様が信号線路252a1および252a2と異なる。以下、信号線路252a1-1および252a2-1を総称して信号線路252a-1ともいうものとする。
【0079】
すなわち、図6に示す信号線路252aは、並行導波路246dと交差する部分において、信号線路252a1と252a2とが互いに近接して平行に形成されているのに対し、図7に示す信号線路252a-1は、2つの信号線路252a1-1と252a2-1とが同じ交差角θ10で並行導波路246dと交差するように、一方の信号線路252a1-2が、他方の信号線路a2-1に対して傾いて形成されている。これにより、交差部610aおよび610bは、同じ交差長さd10(=|We/sinθ10|)を有する。
【0080】
同様に、並行導波路246d2と信号線路252a1-1および252a2-1との2つの交差部612a、612bは、これら2つの信号線路252a-1と同じ交差角θ12で交差する。これにより、交差部612aおよび612bは、同じ交差長さd12(=|We/sinθ12|)を有する。
【0081】
したがって、交差領域400a4-1の構成においても、図6に示す交差領域400a4の構成と同様に、並行導波路246d1においては、2つの交差部610aおよび610bに発生する擾乱変調が互いに相殺される。同様に、並行導波路246d2においては、2つの交差部612aおよび612bに発生する擾乱変調が互いに相殺される。その結果、マッハツェンダ型光導波路244dにおける、上記擾乱変調に起因する雑音の発生が効果的に低減される。
【0082】
[1.2 第2変形例]
図8は、図6に示す交差領域400a4の第2の変形例に係る、交差領域400a4-2の構成を示す図である。図8に示す交差領域400a4-2の構成は、光変調素子104において、図6に示す交差領域400a4に代えて用いることができる。また、当業者において明らかなように、図4における交差領域400a4以外の交差領域400にも、交差領域400a4-2と同様の構成を用いることができる。なお、図8において、図6と同じ構成要素については、図6における符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した図6についての説明を援用する。
【0083】
交差領域400a4-2では、信号線路252a1および252a2に代えて、信号線路252a1-2及び252a2-2が用いられている。信号線路252a1-2および252a2-2は、信号線路252a1および252a2と同様の構成を有するが、並行導波路246dとの交差の態様が信号線路252a1および252a2と異なる。以下、信号線路252a1-2および252a2-2を総称して信号線路252a-2ともいうものとする。
【0084】
すなわち、図6に示す信号線路252aは、2本の並行導波路246dと交差する部分において、信号線路252a1と252a2とが互いに近接して平行に形成されているのに対し、図8に示す信号線路252a-2は、2つの信号線路252a1-2と252a2-2とが、上記2本の並行導波路246dに挟まれた基板220上の領域において互いに交差している。これにより、2本の信号線路252a-2と並行導波路246d1との2つの交差部614aと614bとの交差長さが互いに同じ長さに形成されるとともに、当該2本の信号線路252a-2と並行導波路246d2との2つの交差部616aと616bとの交差長さが互いに同じ長さに形成される。
【0085】
ここで、交差部614aと614bとの間、および交差部616aと616bとの間において交差長さを同じにする観点からは、信号線路252a1-2と信号線路252a2-2とは、2本の並行導波路246dと直交する線分CL(図示二点鎖線)に関して対称に形成されていることが望ましい。
【0086】
なお、2本の信号線路252a-2が並行導波路246dと交差する部分においては、これらの信号線路252a-2が互いに接触しないように、電気絶縁性のある樹脂層800が形成される。樹脂層800を構成する樹脂は、例えば、フォトレジストであって、カップリング剤(架橋剤)を含み、熱により架橋反応が進行して硬化する、いわゆる感光性永久膜であるものとすることができる。
【0087】
図9は、図8に示す交差領域400a4-2におけるIX-IX断面矢視図であり、図10は、図8に示す交差領域400a4-2におけるX-X断面矢視図である。図9及び図10に示すように、本実施形態では、樹脂層800は、並行導波路246dと信号線路252a2-2との間、及び信号線路252a2-2と252a1-2との間に形成されている。
【0088】
[1.3 第3変形例]
図11は、図6に示す交差領域400a4の第3の変形例に係る、交差領域400a4-3の構成を示す図である。図11に示す交差領域400a4-3の構成は、光変調素子104において、図6に示す交差領域400a4の構成に代えて用いることができる。また、当業者において明らかなように、図4における交差領域400a4以外の交差領域400にも、交差領域400a4-3と同様の構成を用いることができる。なお、図11において、図6と同じ構成要素については、図6における符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した図6についての説明を援用する。
【0089】
交差領域400a4-3では、信号線路252a1および252a2に代えて、信号線路252a1-3及び252a2-3が用いられている。信号線路252a1-3および252a2-3は、信号線路252a1および252a2と同様の構成を有するが、さらに、並行導波路246dのそれぞれと交差する部分の間隔d2に対し、差動信号の伝搬方向に沿ってこれらの交差する部分より下流の部分の間隔d3が広く形成されている。ここで、間隔d3は、例えば、d2<d3≦d1の範囲で選択され得る。以下、信号線路252a1-3および252a2-3を総称して信号線路252a-3ともいうものとする。
【0090】
図6に示す交差領域400a4の構成は、湾曲した2本の並行導波路246dの交差部600a等で発生する擾乱変調を最もシンプルに抑制する手段となり、特にこのような交差部が2本の信号線路252aのそれぞれにおいて複数ある場合に有効である。しかしながら、一方で、2本の信号線路252aを近接させると、これらの信号線路252aを伝搬する高周波信号である差動信号の間でクロストークが発生する、と言う新たな問題が発生する場合が有り得る。
【0091】
これに対し、図11に示す交差領域400a4-3の構成では、2本の信号線路252a-3は、並行導波路246dと交差する部分の間隔d2に対し、差動信号の伝搬方向に沿って当該交差する部分より上流及び下流における間隔d1およびd3が広く構成されているので、2本の信号線路252aが間隔d2で近接して設けられている部分の長さを低減して、上記クロストークの発生量を低減することができる。
【0092】
図11において、2本の信号線路252aが間隔d2で近接して設けられる区間の長さL1(又は、2本の信号線路252aにおいて間隔d2で近接して設けられている区間が複数あるときは、これら複数の区間の長さL1の総和)は、クロストーク低減の観点では、当該2本の信号線路252aを伝搬する差動高周波信号の中心周波数における波長(中心電気信号の波長)より短いことが好ましい。上記波長は、例えば、中心周波数が50GHzのときは6mm、100GHzのときは3mm、200GHzのときは1.5mm、400GHzのときは750μm程度となる。
【0093】
[1.4 第4変形例]
図12は、図6に示す交差領域400a4の第4の変形例に係る、交差領域400a4-4の構成を示す図である。図12に示す交差領域400a4-4の構成は、光変調素子104において、図6に示す交差領域400a4の構成に代えて用いることができる。また、当業者において明らかなように、図4における交差領域400a4以外の交差領域400にも、交差領域400a4-4と同様の構成を用いることができる。なお、図12において、図6および図11と同じ構成要素については、図6および図11における符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した図6及び図11についての説明を援用する。
【0094】
交差領域400a4-4は、交差領域400a4-3と同様の構成を有するが、並行導波路246d1及び246d2と、信号線路252a1-3および252a2-3との間に、樹脂層802が形成されている。樹脂層802を構成する樹脂は、例えば、上述した感光性永久膜であるものとすることができる。
【0095】
交差領域400a4-4の構成においては、樹脂層802により、2本の信号線路252a1-3および252a2-3から並行導波路246d1および246d2に印加される電界が弱められるので、図11に示す交差領域400a3-4に示す構成に比べて、並行導波路246d1および246d2に発生する擾乱変調を更に低減することができる。
【0096】
[1.5 第5変形例]
図13は、図6に示す交差領域400a4の第5の変形例に係る、交差領域400a4-5の構成を示す図である。図13に示す交差領域400a4-5の構成は、光変調素子104において、図6に示す交差領域400a4の構成に代えて用いることができる。また、当業者において明らかなように、図4における交差領域400a4以外の交差領域400にも、交差領域400a4-5と同様の構成を用いることができる。なお、図13において、図6および図11と同じ構成要素については、図6および図12における符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した図6及び図12についての説明を援用する。
【0097】
交差領域400a4-5は、交差領域400a4と同様の構成を有するが、信号線路252a1および252a2に代えて、信号線路252a1-5及び252a2-5が用いられている。以下、信号線路252a1-5及び252a2-5を総称して信号線路252a-5ともいうものとする。
【0098】
信号線路252a1-5及び252a2-5は、図12に示す交差領域400a-4における信号線路252a1-3および252a2-3と同様の構成を有するが、並行導波路246dと交差する部分が、基板220の平面視において互いに重なった重層部810(図示ハッチング部分)を有する点が異なる。
【0099】
これにより、重層部810においては、信号線路252a1-5と並行導波路246d1との交差部と、信号線路252a1-5と並行導波路246d1との交差部とは、一つの交差部618aとなって同じ交差長さを有し、信号線路252a2-5と並行導波路246d2との交差部と、信号線路252a2-5と並行導波路246d2との交差部とは、一つの交差部618bとなって同じ交差長さを有する。
【0100】
また、交差領域400a4-5では、重層部810において信号線路252a1-5と252a2-5とが接しないように、図13に示す樹脂層802と同様の樹脂層804が設けられている。図14は、図13に示す交差領域400a4-5におけるXIV-XIV断面矢視図である。本実施形態では、並行導波路246d1および246d2と、信号線路252a2-5と、信号線路252a1-5との間が接しないように、樹脂層804が設けられている。樹脂層804は、樹脂層802と同様に、例えば、感光性永久膜であり得る。
【0101】
これにより、重層部810においては、差動信号を伝送する2つの信号線路252a1-5および252a2-5からの電界は、2つの並行導波路246dの位置において互いに相殺される。
【0102】
すなわち、交差領域400a4-5の構成においては、2本の信号線路252a-5の間での電界の相殺効果も加わるため、図6に示すような2本の信号線路252aを近接して配置する交差領域400a4の構成や、図8に示すような2本の信号線路252a-2を交差させる構成に比べ、交差部618aおよび618bにおいて生ずる擾乱変調が更に抑制され得る。
【0103】
交差領域400a4-5の構成は、特に、擾乱変調の抑制効果を大きくしたい場合や、並行導波路246dと交差する部分における2本の信号線路252a-5の形成領域を狭くしたい場合等に好適である。
【0104】
[2.第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態に係る光変調器100が備える光変調素子104を用いた光変調モジュール1000である。図15は、本実施形態に係る光変調モジュール1000の構成を示す図である。図15において、図1に示す第1の実施形態に係る光変調器100と同一の構成要素については、図1に示す符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した図1についての説明を援用する。
【0105】
光変調モジュール1000は、図1に示す光変調器100と同様の構成を有するが、中継基板106に代えて、回路基板1006を備える点が、光変調器100と異なる。回路基板1006は、駆動回路1008を備える。駆動回路1008は、信号ピン108を介して外部から供給される例えば変調信号に基づいて、光変調素子104を駆動する高周波電気信号である差動信号を生成し、当該生成した差動信号を光変調素子104へ出力する。
【0106】
上記の構成を有する光変調モジュール1000は、上述した第1の実施形態に係る光変調器100と同様に、光変調素子104を備えるので、光変調器100と同様に、交差部600a等において発生する擾乱変調を低減して良好な変調動作を実現することができる。
【0107】
なお、本実施形態では、光変調モジュール1000は、一例として光変調素子104を備えるものとしたが、図7ないし図14に示す変形例に係る交差領域を有する光変調素子を備えるものとしてもよい。
【0108】
[3.第3実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態に係る光変調器100を搭載した光送信装置1100である。図16は、本実施形態に係る光送信装置1100の構成を示す図である。この光送信装置1100は、光変調器100と、光変調器100に光を入射する光源1104と、変調器駆動部1106と、変調信号生成部1108と、を有する。なお、光変調器100及び変調器駆動部1106に代えて、第2の実施形態に係る光変調モジュール1000を用いることもできる。
【0109】
変調信号生成部1108は、光変調器100に変調動作を行わせるための電気信号を生成する電子回路であり、外部から与えられる送信データに基づき、光変調器100に当該変調データに従った光変調動作を行わせるための高周波信号である変調信号を生成して、変調器駆動部1106へ出力する。
【0110】
変調器駆動部1106は、変調信号生成部1108から入力される変調信号を増幅して、光変調器100が備える光変調素子104の4つの信号電極250を駆動するための4組の高周波電気信号である差動信号を出力する。尚、上述したように、光変調器100および変調器駆動部1106に代えて、例えば変調器駆動部1106に相当する回路を含む駆動回路1008を筐体102の内部に備えた、光変調モジュール1000を用いることもできる。
【0111】
当該4組の差動信号は、光変調器100の信号ピン108に入力されて、光変調素子104の4組の信号線路252(すなわち、信号線路252a、252b、252c、および252d)を伝搬し、光変調素子104を駆動する。これにより、光源1104から出力された光は、光変調器100により、例えばDP-QPSK変調され、変調光となって光送信装置1100から出力される。
【0112】
特に、光送信装置1100では、上述した第1の実施形態に係る光変調器100又は光変調モジュール1000を用いているので、光変調器100又は光変調モジュール1000と同様に、良好な変調特性を実現して良好な光伝送を行うことができる。
【0113】
なお、本発明は上記実施形態の構成およびその代替構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0114】
例えば、上述した実施形態においては、樹脂層800および802として感光性永久膜を用いるものとしたが、樹脂層800および802を構成する素材は、これには限られない。樹脂層800および802は、絶縁抵抗等の電気的特性や熱膨張係数等の機械的特性についての要求条件を満たす限りにおいて、任意の材料を用いることができる。そのような材料には、感光性永久膜以外の熱硬化性又は熱可塑性の樹脂が含まれ得る。
【0115】
また、光導波路230に接して信号線路252が形成される場合には、信号線路252を構成する金属により光導波路230を伝搬する光波に損失(いわゆる、光吸収損失)が生じ得る。したがって、信号線路252が光導波路230(並行導波路246を含む)と交差する部分には、信号線路252と光導波路230との間に、樹脂層800、802、及び又は804と同様の樹脂層を設けてもよい。例えば、図6に示す交差領域400a4、図7に示す交差領域400a4-1、および図11に示す交差領域400a4-3、並びにこれらの交差領域と同様に構成される他の交差領域400においても、対応する信号線路と並行導波路との間に、図8に示す交差領域400a4-2における樹脂層800、図12に示す交差領域400a4-4における樹脂層802、及び又は図13に示す交差領域400a-5における樹脂層804と同様の樹脂層を設けるものとすることができる。
【0116】
また、上述した第1の実施形態およびその変形例では、図4に示す16個の交差領域400が同じ構成を有するものとしたが、これらの交差領域400は、複数の構成が混在していてもよい。すなわち、これら16個の交差領域400は、図6図7図8図11図12図13に示す交差領域400a4、400a4-1、400a4-2、400a-3、400a4-4、および400a4-5に示す構成のうちの複数の構成が混在して構成されていてもよい。
【0117】
また、上述した実施形態では、光導波路素子の一例として、LN(LiNbO3)である基板220により形成された光変調素子104を示したが、これには限られない、光導波路素子は、任意の材料(LNのほか、InP、Siなど)の基板で構成される、任意の機能(光変調のほか、光スイッチ、光方向性結合器など)を有する素子であるものとすることができる。そのような素子は、例えば、いわゆるシリコン・フォトニクス導波路デバイスであり得る。
【0118】
上記実施形態は、以下の構成をサポートする。
【0119】
(構成1)基板上に延在する凸部により構成された光導波路と、前記基板上に形成された、前記光導波路を伝搬する光波を制御する信号電極と、を有する光導波路素子であって、前記光導波路は、湾曲部を有する2本の並行導波路を備えたマッハツェンダ型光導波路を含み、前記信号電極は、前記湾曲部において前記2本の並行導波路とそれぞれ交差する、差動信号を伝送する2本の信号線路からなり、前記2本の信号線路のそれぞれは、前記2本の並行導波路における交差長さが互いに同じとなるように構成されている、光導波路素子。
構成1の光導波路素子によれば、凸状光導波路と電気信号を伝搬する信号線路との複数の交差部を有する光導波路素子において、交差部における擾乱変調の発生を効果的に抑制して、良好な動作特性を実現することができる。
(構成2)前記2本の信号線路において、前記並行導波路と交差する部分の間隔は、前記並行導波路と交差しない部分の間隔より狭い、構成1に記載の光導波路素子。
構成2の光導波路素子によれば、2本の並行導波路の湾曲部において、上記2本の並行導波路のそれぞれにおける2本の信号線路との2つの交差部の交差長さを、互いに同じとなるように容易に構成することができる。
(構成3)前記2本の信号線路は、前記並行導波路と交差する部分より前記差動信号の伝搬方向に沿って上流の部分の間隔に対し、前記並行導波路と交差する部分の間隔が狭い、構成2に記載の光導波路素子。
構成3の光導波路素子によれば、並行導波路と交差する2つの信号線路を容易に近接させて、当該並行導波路における2つの交差部の交差長さを互いに同じに構成することができる。
(構成4)前記2本の信号線路は、前記並行導波路と交差する部分の間隔に対し、前記並行導波路と交差する部分より前記差動信号の伝搬方向に沿って下流の部分の間隔が広い、構成3に記載の光導波路素子。
構成4の光導波路素子によれば、並行導波路との交差部分において近接して形成される2本の信号線路間のクロストークを低減することができる。
(構成5)前記2本の信号線路のそれぞれは、前記2本の並行導波路との交差角度が互いに同じとなるように形成されている、構成1に記載の光導波路素子。
構成5の光導波路素子によれば、2本の並行導波路の湾曲部において、上記2本の並行導波路のそれぞれにおける2本の信号線路との2つの交差部の交差長さを、互いに同じとなるように容易に構成することができる。
(構成6)前記2本の信号線路は、前記2本の並行導波路に挟まれた前記基板上の領域において互いに交差する、構成5に記載の光導波路素子。
構成6の光導波路素子によれば、2本の並行導波路の湾曲部において、上記2本の並行導波路のそれぞれにおける2本の信号線路との2つの交差部の交差長さを、互いに同じとなるように容易に構成することができる。
(構成7)前記2本の信号線路は、前記並行導波路と交差する部分が、前記基板の平面視において互いに重なっている、構成1に記載の光導波路素子。
構成7の光導波路素子によれば、2本の並行導波路の湾曲部において、上記2本の並行導波路のそれぞれにおける2本の信号線路との2つの交差部の交差長さを、互いに同じとなるように容易に構成すると共に、擾乱変調をより効果的に低減することができる。
(構成8)前記2本の信号線路が前記並行導波路と交差する部分には、前記並行導波路と前記2本の信号線路との間に樹脂から成る絶縁層を有する、構成2ないし構成7のいずれかに記載の光導波路素子。
構成8の光導波路素子によれば、並行導波路と交差する信号線路の金属により当該並行導波路に発生する光吸収損失を低減することができる。
(構成9)光の変調を行う光変調素子である構成1ないし構成7のいずれかの光導波路素子と、前記光導波路素子を収容する筐体と、前記光導波路素子に光を入力する光ファイバと、前記光導波路素子が出力する光を前記筐体の外部へ導く光ファイバと、を備える光変調器。
構成9の光変調器によれば、擾乱変調の発生を低減して良好な光変調特性を実現することができる。
(構成10)光の変調を行う光変調素子である構成1ないし構成7のいずれかの光導波路素子と、前記光導波路素子を駆動する駆動回路と、を備える光変調モジュール。
構成10の光変調モジュールによれば、擾乱変調の発生を低減して良好な光変調特性を実現することができる。
(構成11)構成9に記載の光変調器または構成10に記載の光変調モジュールと、前記光導波路素子に変調動作を行わせるための電気信号を生成する電子回路と、を備える光送信装置。
構成11の光送信装置によれば、良好な光伝送特性を実現することができる。
【符号の説明】
【0120】
100、…光変調器、102…筐体、104…光変調素子、106…中継基板、108、110…信号ピン、112…終端器、114…入力光ファイバ、116…光学ユニット、118、130、134…レンズ、120…出力光ファイバ、122、124…サポート、220…基板、230…光導波路、232…入力導波路、234…分岐導波路、240、240a、240b…ネスト型マッハツェンダ型光導波路、244、244a、244b、244c、244d…マッハツェンダ型光導波路、246、246a、246a1、246a2、246b、246b1、246b2、246c、246c1、246c2、246d、246d1、246d2…並行導波路、248a、248b…出力導波路、250a、250b、250c、250d…信号電極、252、252a、252a1、252a2、252a-1、252a1-1、252a2-1、252a-2、252a1-2、252a2-2、252a-3、252a1-3、252a2-3、252a-4、252a1-4、252a2-4、252a-5、252a1-5、252a2-5、252a1-5、252a2-5、252b、252b1、252b2、252c、252c1、252c2、252d、252d1、252d2…信号線路、254a、254b、254c、254d、254e、254f、254g、254h、258a、258b、258c、258d、258e、258f、258g、258h…パッド、270a、270b、270c…バイアス電極、272…グラウンド電極、280a、280b、280c、280d…辺、300、300a、300b、300c、300d…作用部、400、400a、400a1、400a2、400a3、400a4、400a4-1、400a4-2、400a4-3、400a4-4、400a4-5、400b、400b1、400b2、400b3、400b4、400c、400c1、400c2、400c3、400c4、400d、400d1、400d2、400d3、400d4…交差領域、500…支持板、502…中間層、504、504c1、504c2…凸部、600a、600b、602a、602b、604a、604b、610a、610b、612a、612b、614a、614b、616a、616b、618a、618b…交差部、800、802、804…樹脂層、810…重層部、1000…光変調モジュール、1006…回路基板、1008…駆動回路、1100…光送信装置、1104…光源、1106…変調器駆動部、1108…変調信号生成部。
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