(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038790
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230310BHJP
【FI】
H01L21/304 651Z
H01L21/304 648K
H01L21/304 648G
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145691
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】下村 伸一郎
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA09
5F157AB02
5F157AB13
5F157AB33
5F157AB75
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5F157AC15
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5F157CF34
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5F157CF44
5F157CF60
5F157CF72
5F157CF92
5F157CF99
5F157DA21
5F157DB32
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】処理後の基板の表面に存在する不純物を減少させる。
【解決手段】基板処理装置は、基板を処理容器に搬出入するための開口を有する処理容器と、処理容器の開口を塞ぐ可動の蓋体と、蓋体を、開口を閉塞する閉位置と、開口を開放する開位置との間で移動させる蓋体移動機構と、処理容器内で表面を上向きにして水平に保持する基板保持部と、超臨界状態の処理流体、および超臨界状態の処理流体と同じ物質からなるガス状態の流体を、処理容器に供給し得るように構成され、少なくとも1つの供給ラインおよび流れ制御機器を含む流体供給機構と、基板保持部に基板が保持されかつ蓋体が閉位置にある第1状態のときに処理容器に超臨界状態の処理流体が供給されるように、かつ、蓋体が開位置にある第2状態のときに処理容器にガス状態の流体が供給されるように、流体供給機構を制御する制御部と備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界乾燥技術を用いて表面に液体が付着した基板を乾燥させる基板処理装置であって、
前記基板を処理容器に搬出入するための開口を有する処理容器と、
前記処理容器の開口を塞ぐ可動の蓋体と、
前記蓋体を、前記開口を閉塞する閉位置と、前記開口を開放する開位置との間で移動させる蓋体移動機構と、
前記処理容器内で前記表面を上向きにして前記基板を水平に保持する基板保持部と、
超臨界状態の処理流体、および前記超臨界状態の処理流体と同じ物質からなるガス状態の流体を、前記処理容器に供給し得るように構成された処理流体供給機構であって、少なくとも1つの供給ラインおよび流れ制御機器を含む前記流体供給機構と、
前記基板保持部により前記処理容器内で前記基板が保持されかつ前記蓋体が前記閉位置にある第1状態のときに前記処理容器に前記超臨界状態の処理流体が供給されるように、かつ、前記基板保持部により前記処理容器内で前記基板が保持されておらずかつ前記蓋体が前記開位置にある第2状態のときに前記処理容器に前記ガス状態の流体が供給されるように、前記流体供給機構を制御する制御部と、
を備えた基板処理装置。
【請求項2】
前記流体供給機構に、前記処理流体を超臨界状態で送り出す能力を有する第1流体供給部と、前記ガス状態の流体を送り出す第2流体供給部が接続されており、
前記制御部は、前記第1状態のときに前記第1流体供給部から前記処理流体が前記処理容器に供給され、前記第2状態のときに前記第2流体供給部から前記ガス状態の流体が前記処理容器に供給されるように、前記流体供給機構を制御する、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記流体供給機構に含まれる前記少なくとも1つの供給ラインには、第2流体供給部に接続されたガスラインと、前記第1状態のときに前記第1流体供給部から送り出された前記処理流体を前記処理容器に供給する第1供給ラインを含み、
前記ガスラインは、前記第1供給ラインに接続されており、前記制御部は、前記第2状態のときに前記第2流体供給部から前記ガスラインおよび前記第1供給ラインを通って前記処理容器に前記ガス状態の流体が供給されるように、前記流体供給機構を制御する、請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記流体供給機構に、前記処理流体を超臨界状態で送り出す能力を有する第1流体供給部が接続されており、
前記制御部は、前記第1状態のときに前記第1流体供給部から前記処理流体が前記処理容器に供給され、前記第2状態のときに前記第1流体供給部から送り出された前記処理流体が減圧されるかまたは温度低下することによりガス状態の流体となって前記処理容器に供給されるように前記流体供給機構を制御する、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2状態のときに前記ガス状態の流体が前記処理容器に供給された後、前記基板が前記処理容器に搬入されかつ前記蓋体が閉じられて前記第1状態となった後に、前記処理流体が前記処理容器に供給されるように前記流体供給機構を制御する、請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記処理容器は、前記開口から離れた位置から前記開口に向けて前記処理流体を吐出する第1吐出部を有しており、
前記第1吐出部は、前記少なくとも1つの供給ラインに接続され、
前記制御部は、前記第2状態のときに前記ガス状態の流体が前記第1吐出部を介して前記処理容器に供給されるように前記流体供給機構を制御する、請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記開口の近傍に設けられ、前記処理容器に供給された後に前記開口から流出した前記ガス状態の流体または流出しようとする前記ガス状態の流体を吸引して回収する流体回収部をさらに備えた、請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記処理容器は、前記基板が前記開口を介して水平方向に搬出入されるように構成され、前記流体回収部は、前記基板の前記処理容器への搬出入時の移動軌跡の下方に設けられ、前記開口から流出した前記ガス状態の流体は、下向きに前記流体回収部に流入する、請求項7記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記開口への外気の流入を抑制するガスカーテンを形成するために、前記処理流体を前記開口の近傍に吐出するカーテンガス吐出部をさらに備えた、請求項1から8のうちのいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記処理容器内の前記処理流体の濃度を測定する濃度センサをさらに備え、
前記制御部は、前記第2状態のときに前記ガス状態の流体が前記処理容器に供給されているときに前記濃度センサの値が予め定められた閾値以上となったときに、前記流体供給機構を制御して、前記ガス状態の流体の前記処理容器への供給を停止させる、請求項1から9のうちのいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記処理容器内の前記処理流体の濃度を測定する濃度センサをさらに備え、
前記制御部は、前記第2状態のときに前記ガス状態の流体が前記処理容器に供給されているときに前記濃度センサの値が予め定められた閾値以上となったときに、前記蓋体移動機構を制御して前記蓋体を前記閉位置に移動させて前記第1状態に移行させる、請求項1から10のうちのいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記蓋体と前記基板保持部とは一体的に結合されており、前記蓋体を閉位置に移動させることにより前記基板保持部により保持された前記基板が前記処理容器内に搬入されるようになっている、請求項1から11のうちのいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記基板保持部により保持された前記基板が前記処理容器内に搬入される方向は水平方向である、請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記処理容器は、その上端部に前記開口を有し、
前記基板保持部により保持された前記基板が前記処理容器内に搬入される方向は上下方向である、請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記開口の周囲に設けられ、前記蓋体が前記開位置にあるときに、前記処理容器に供給された後に前記開口から流出した前記ガス状態の流体を回収する流体回収部をさらに備えた、請求項14に記載の基板処理装置。
【請求項16】
基板を処理容器に搬出入するための開口を有する処理容器と、
前記処理容器の開口を塞ぐ可動の蓋体と、
前記処理容器内で前記表面を上向きにして前記基板を水平に保持する基板保持部と、を備えた基板処理装置により実施される基板処理方法であって、
前記表面に液体が付着した前記基板を、前記基板保持部により前記処理容器内で処理した状態で超臨界状態の処理流体を前記処理容器内に流通させ、これにより超臨界状態の前記処理流体で前記液体を置換するステップを含む超臨界乾燥処理工程と、
前記超臨界乾燥処理工程の前に、前記基板を前記処理容器内に搬入するために前記蓋体が前記開口を開放しているときに、前記処理容器内にパージガスを供給して前記処理容器内をパージガス雰囲気にするパージ工程と、を備え、
前記パージガスと前記処理流体とは、同じ物質からなり相のみが異なる、基板処理方法。
【請求項17】
前記処理容器内にパージガスの供給を停止した後に、前記基板を前記処理容器内に搬入して前記蓋体を閉じ、その後に前記超臨界乾燥処理工程を実行する、請求項16記載の基板処理方法。
【請求項18】
濃度センサにより前記処理容器内のパージガス濃度が予め定められた閾値以上となったことが検出されたときに、前記処理容器内にパージガスの供給を停止して前記基板を前記処理容器内に搬入する、請求項17記載の基板処理方法。
【請求項19】
前記パージ工程は、前記処理容器内に供給された後に前記開口から流出した前記パージガスまたは流出しようとする前記パージガスを吸引して回収することを含む、請求項16記載の基板処理方法。
【請求項20】
前記パージ工程において、前記超臨界状態の処理流体を前記処理容器に供給するための供給ラインに、パージガス供給源から前記パージガスを供給し、前記供給ラインを介して前記パージガスを前記処理容器に供給する、請求項16記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの基板の表面に集積回路の積層構造を形成する半導体装置の製造においては、薬液洗浄あるいはウエットエッチング等の液処理が行われる。近年ますます微細化が進みつつあるパターンの倒壊をより確実に防止するため、近年では、液処理の最終工程である乾燥工程において超臨界状態の処理流体を用いた乾燥方法が用いられつつある(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、処理後の基板の表面に存在する不純物を減少させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態によれば、超臨界乾燥技術を用いて表面に液体が付着した基板を乾燥させる基板処理装置であって、前記基板を処理容器に搬出入するための開口を有する処理容器と、前記処理容器の開口を塞ぐ可動の蓋体と、前記蓋体を、前記開口を閉塞する閉位置と、前記開口を開放する開位置との間で移動させる蓋体移動機構と、前記処理容器内で前記表面を上向きにして前記基板を水平に保持する基板保持部と、超臨界状態の処理流体、および前記超臨界状態の処理流体と同じ物質からなるガス状態の流体を、前記処理容器に供給し得るように構成された処理流体供給機構であって、少なくとも1つの供給ラインおよび流れ制御機器を含む前記流体供給機構と、前記基板保持部により前記処理容器内で前記基板が保持されかつ前記蓋体が前記閉位置にある第1状態のときに前記処理容器に前記超臨界状態の処理流体が供給されるように、かつ、前記基板保持部により前記処理容器内で前記基板が保持されておらずかつ前記蓋体が前記開位置にある第2状態のときに前記処理容器に前記ガス状態の流体が供給されるように、前記流体供給機構を制御する制御部と、を備えた基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
上記実施形態によれば、処理後の基板の表面に存在する不純物を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】基板処理装置の一実施形態に係る超臨界乾燥ユニットの概略縦断面図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿った超臨界乾燥ユニットの概略横断面図である。
【
図3】超臨界乾燥ユニットでパージ工程を実施している状態を示す超臨界乾燥ユニットの概略横断面図である。
【
図4】処理容器に流体を供給/排出するための配管系等図である。
【
図5A】超臨界乾燥処理の一工程を示す作用図である。
【
図5B】超臨界乾燥処理の一工程を示す作用図である。
【
図5C】超臨界乾燥処理の一工程を示す作用図である。
【
図5D】超臨界乾燥処理の一工程を示す作用図である。
【
図5E】超臨界乾燥処理の一工程を示す作用図である。
【
図6】超臨界乾燥ユニットが収容されたハウジング内の一構成例を示す概略側面図である。
【
図7】超臨界乾燥ユニットの他の構成を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
基板処理装置の一実施形態としての超臨界乾燥装置の構成を、
図1~
図4を参照して説明する。超臨界乾燥装置は、表面に液体(例えばIPA(イソプロピルアルコール))の液膜が付着した基板Wを、超臨界状態の処理流体(例えば二酸化炭素)を用いて乾燥させる超臨界乾燥処理を行うために用いることができる。基板Wは例えば半導体ウエハであるが、半導体装置製造の技術分野で用いられる他の種類の基板(ガラス基板、セラミック基板)等であってもよい。超臨界乾燥技術は、パターン倒壊を生じさせ得る表面張力がパターンに作用しないことから、微細かつ高アスペクト比のパターンが形成された基板の乾燥に有利に用いることができる。
【0009】
以下においては、方向および位置の説明を容易にするため、XYZ直交座標系を設定し、必要に応じて当該座標系を参照して説明を行うこととする。なお、X方向を前後方向(X正方向が前方)、Y方向を左右方向(Y正方向が左方)、Z方向を上下方向(Y正方向が上方)とも呼ぶこともあることに留意されたい。
【0010】
超臨界乾燥装置は、処理ユニット10を備えている。処理ユニット10の内部で、超臨界乾燥処理が行われる。処理ユニット10は、処理容器11と、処理容器11内で基板Wを保持する基板保持トレイ12(以下、単に「トレイ12」と呼ぶ)とを有している。
【0011】
トレイ12は、処理容器11の側壁に設けられた開口11Cを塞ぐ蓋部13と、蓋部(蓋体)13に一体的に連結された水平方向に延びる基板保持部14とを有する。基板保持部14はプレート15と、プレート15の上面に設けられた複数の支持ピン16とを有している。基板Wは、その表面(デバイスないしパターンが形成された面)を上向きにした状態で、支持ピン16上に水平姿勢で載置される。基板Wが支持ピン16上に載置されると、プレート15の上面と基板Wの下面(裏面)との間に隙間17が形成される。
【0012】
プレート15は、全体として例えば長方形または正方形である。プレート15の面積は基板Wより大きく、基板保持部14の所定位置に基板Wが載置されたときにプレート15を真下から見ると、基板Wはプレート15に完全に覆われる。
【0013】
プレート15には、当該プレート15を上下に貫通する複数の貫通穴18が形成されている。複数の貫通穴18は、プレート15の下方の空間に供給された処理流体をプレート15の上方の空間に流入される役割を果たす。複数の貫通穴18のいくつかは、基板保持部14と処理ユニット10の外部の基板搬送機構(図示せず)との間で基板Wの受け渡しを行うリフトピン(
図6の下部に参照符号300により示されている)を通過させる役割も果たすが、本明細書ではこの点についての詳細な説明は省略する。
【0014】
トレイ12は、トレイ移動機構12M(
図1のみに概略的に示した)により、閉位置(
図1および
図2に示す位置)と、開位置との間で水平方向(X方向)に移動することができる。トレイ移動機構12Mは、詳細な図示はしないが、例えば、X方向に延びるガイドレールと、蓋部13に結合されるとともにガイドレールに沿って移動するとともに移動体とから構成することができる。
【0015】
トレイ12の閉位置では、基板保持部14が処理容器11の内部空間内に位置し、かつ蓋部13が処理容器11の側壁の開口を閉鎖する。トレイ12の開位置では、基板保持部14が処理容器11の外に出ており(
図6を参照)、基板保持部14と図示しない基板搬送アームとの間で、前述したリフトピンを介して基板Wの受け渡しを行うことが可能である。また、トレイ12が開位置にあるとき、蓋部13は処理容器11の側壁の開口11Cを開放する。従って、トレイ移動機構12Mは蓋体開閉機構であるとも言える。
【0016】
トレイ12が閉位置にあるとき、プレート15により、処理容器11の内部空間が、処理中に基板Wが存在するプレート15の上方の上方空間11Aと、プレート15の下方の下方空間11Bとに分割される。但し、上方空間11Aと下方空間11Bとが完全に分離されているわけではない。
【0017】
すなわち、図示された実施形態では、前述した貫通穴18により、また、プレート15と蓋部13との接続部の近傍に設けられた長穴19(これも貫通穴である)により、上方空間11Aと下方空間11Bとが連通している。プレート15の周縁部と処理容器11の内壁面との間の隙間によっても、上方空間11Aと下方空間11Bとが連通している。上述した隙間、貫通穴18および長穴19などが上方空間11Aと下方空間11Bとが連通させる連通路であるとも言える。
【0018】
可動のトレイ12に代えて、処理容器11内に移動不能に固定された基板載置台(基板保持部)設けてもよい。この場合、処理容器11に設けられた図示しない蓋を開けた状態で、図示しない基板搬送アームが容器本体内に侵入して、基板載置台と基板搬送アームとの間で基板Wの受け渡しが行われる。
【0019】
処理容器11には、第1吐出部21および第2吐出部22が設けられている。第1吐出部21および第2吐出部22は、超臨界流体(超臨界状態にある処理流体)の供給源30から供給された処理流体(本例では二酸化炭素(以下、簡便のため「CO2」とも記す))を処理容器11の内部空間に吐出する。
【0020】
なお、実施形態の説明に記載された構成要素の名称(例えば「吐出部」)の前に付けられた序数(「第1」、「第2」・・・)と、特許請求の範囲に記載された対応する構成要素の名称の前に付けられた序数は必ずしも一致していないことに留意されたい。
【0021】
第1吐出部21は、閉位置にあるトレイ12のプレート15の下方に設けられている。第1吐出部21は、プレート15の下面に向けて(上向きに)、下方空間11B内にCO2(処理流体)を吐出する。第1吐出部21は、処理容器11の底壁に形成された貫通孔により構成することができる。第1吐出部21は処理容器11の底壁に取り付けられたノズル体であってもよい。
【0022】
第2吐出部22は、閉位置にあるトレイ12の基板保持部14上に載置された基板Wの前方(X正方向に進んだ位置)に位置するように設けられている。第2吐出部22は、上方空間11A内にCO2を供給する。図示された実施形態では、第2吐出部22は、蓋部13と反対側の処理容器11の側壁に設けられている。
【0023】
第2吐出部22は、棒状のノズル体により構成されている。詳細には、第2吐出部22は、基板Wの幅方向(Y方向)に延びる管22aに、複数の吐出口22bを穿つことにより形成されている。複数の吐出口22bは、例えばY方向に等間隔で並んでいる。各吐出口22bは、開口13の方に向けて(概ねX負方向に)、上方空間12A内にCO2を供給する。
【0024】
処理容器11には、さらに、処理容器11の内部空間から処理流体を排出する流体排出部24が設けられている。流体排出部24は、第2吐出部22と概ね同じ構成を有するヘッダーとして構成されている。詳細には、流体排出部24は、水平方向に延びる管24aに、複数の排出口24bを穿つことにより形成されている。複数の排出口24bは、例えばY方向に等間隔で並んでいる。各排出口24bは、上方を向いており、かつ、プレート15の長穴19の方を向いている。
【0025】
図示された実施形態では、流体排出部24は、開口11Cの近傍において、処理容器11の底壁に穿たれた凹所の中に設けられている。CO2は、
図1において矢印Fで示すように、上方空間11A内の基板Wの上方の領域を通過して流れた後に、プレート15の周縁部に設けられた連通路(あるいはプレート15に形成された貫通孔19)を通って下方空間11Bに流入した後、流体排出部24から排出される。
【0026】
第2吐出部22および流体排出部24の配置は、図示されたものに限定されるものではなく、第2吐出部22から処理容器11内に供給されたCO2が基板Wの表面の略全体の上方の領域を略水平方向に通過した後に流体排出部24から排出されるならば、任意の位置に配置することができる。具体的には例えば、第2吐出部22および流体排出部24を、基板Wを挟んで、基板Wの左右方向(Y方向)両側に配置してもよい。あるいは、処理容器11の天井壁に、
図1に図示された流体排出部24の代わりに、これと同様の構成を有する(但し排出口は下向きである)流体排出部を設けてもよい。
【0027】
処理ユニット10には、トレイ12を閉位置に固定するためのロック機構25が設けられている。ロック機構25は、処理容器11に形成されたガイド孔25Aと、ガイド孔25Aに沿って昇降機構25B(例えばエアシリンダまたはボールねじ等)により上下方向(Z方向)に移動する閂状のロック部材25Cとを有している。
図3には、下降位置(アンロック位置)にあるロック部材25Cが示されている。トレイ12を閉位置に移動させた後にロック部材25Cを
図1に示す上昇位置(ロック位置)に移動させると、処理容器11の内圧が高まってもトレイ12が開方向(X負方向)に移動することはない。
【0028】
処理容器11の開口11Cの近傍の位置(例えば
図2の領域29Aまたは29Bに、後述するパージ工程において、ガス状態で処理容器11に供給された後に開口11Cから流出したCO2ガスまたは流出しようとするCO2ガスを吸引して回収するガス回収部28が設けられている。ガス回収部28を設ける主たる理由は、CO2濃度に関する安全法規に適合させるためである。
【0029】
ガス回収部28は、開口11Cの近傍の適当な処理ユニット10の構成要素(例えば、ロック部材25C、処理容器11の壁体、ガイド孔25Aの内部等)に設けることができる。ガス回収部28は、流体排出部24と概ね同じ構成を有するヘッダーとして構成することができる。
【0030】
図1および
図3には、
図2の領域29Aに設けられたガス回収部28が記載されている。ここに記載されたガス回収部28は、
図2に示す領域29Aに形成された凹所内に設けられた流体排出部24と同様の構成の管(これはY方向に並んだ複数の上向きに開口する吸引口を有する)からなる。
【0031】
ガス回収部28を、例えば
図2に示す領域29Bに設ける場合には、ロック部材25Cではなく、ロック部材25Cと上下方向に対向する処理容器11の壁体に設けてもよい。ロック部材25Cの上面に設けることも可能であるが、可動部材であるロック部材25Cにガス回収部28を設けるとガス回収部28に接続する管路が複雑化する。
【0032】
ガス回収部28は、
図1および
図3に示した位置と反対側(上側)の処理容器11の壁体(例えば
図3において参照符号28’で指し示された位置)に設けてもよい。
【0033】
ガス回収部28と上下方向に対向する位置に、シールドガスを下向きに吐出するガス吐出部26を設けてもよい。ガス吐出部26もガス回収部28と概ね同じ構成を有するヘッダーとして構成することができる。ガス吐出部26から吐出されたシールドガスにより、開口11Cの前方にガスカーテンを形成することができる。ガスカーテンを形成することにより、トレイ12が開位置にあるときに、開口11Cから処理容器11内に大気(空気)が侵入することを抑制することができる。ガスカーテンを形成するシールドガスは、処理流体およびパージガスと同じガスであるCO2ガスである。ガス回収部28を上側に、ガス吐出部26を下側に設けることも可能である。
【0034】
次に、超臨界乾燥装置において、処理容器11に対してCO2の供給および排出を行う供給/排出系について
図4を参照して説明する。なお、
図4では、図面の簡略化のため、処理ユニット10が大幅に簡略化されて表記されていること、
図1~
図3に示した処理ユニット10に対して左右が反転していること、並びに、実際とは異なる位置に流体排出部24が表記されていること等に注意されたい。
【0035】
図4に示した配管系統図において、丸で囲んだTで示す部材は温度センサ、丸で囲んだPで示す部材は圧力センサである。符号OLFが付けられた部材はオリフィス(固定絞り)であり、その下流側の配管内を流れるCO2の圧力を所望の値まで低下させる。四角で囲んだSVで示す部材は安全弁(リリーフ弁)であり、不測の過大圧力により配管あるいは処理容器11等の超臨界乾燥装置の構成要素が破損することを防止する。符号FLが付けられた部材はフィルタであり、CO2中に含まれるパーティクル等の汚染物質を除去する。符号CVが付けられた部材はチェック弁(逆止弁)である。丸で囲んだFMで示す部材はフローメーター(流量計)である。四角で囲んだHで示す部材はCO2を温調するためのヒータである。上記の各種部材のある個体を他の個体から区別する必要がある場合には、アルファベットの末尾に数字を付けることとする(例えば「フィルタFL2」)。参照符号VN(Nは自然数)が付けられた部材は開閉弁であり、
図1には13個の開閉弁V1~V13が描かれている。
【0036】
超臨界乾燥装置は、超臨界処理流体(超臨界CO2)の供給源(30)としての超臨界流体供給装置(第1流体供給部)30を有する。超臨界流体供給装置30は、例えば炭酸ガスボンベ、加圧ポンプ、ヒータ等を備えた周知の構成を有している。超臨界流体供給装置30は、後述する超臨界状態保証圧力(具体的には約16MPa)を超える圧力でCO2を送り出す能力を有している。
【0037】
超臨界流体供給装置30には主供給ライン32が接続されている。超臨界流体供給装置30から超臨界状態でCO2が主供給ライン32に送り出されるが、その後の圧力変化あるいは温度変化により、ガス状態にもなり得る。本明細書において、「ライン」と呼ばれる部材は、パイプ(配管部材)により構成することができる。
【0038】
主供給ライン32は分岐点(第1分岐点)33において、第1供給ライン34と第2供給ライン36とに分岐している。第1供給ライン34は、処理容器11の第1吐出部21に接続されている。第2供給ライン36は、処理容器11の第2吐出部22に接続されている。
【0039】
処理容器11の流体排出部24に、排出ライン38が接続されている。排出ライン38には、開度調節可能な弁(調節弁)40が設けられている。弁40の開度を調節することにより、弁40の一次側圧力を調節することができ、従って、処理容器11内の圧力を調節することができる。弁40の開度を調節することにより、処理容器11からの処理流体の排出速度も調節することができる。
【0040】
図4では記載は省略しているが、第2供給ライン36は、第2吐出部22に対する接続部の近傍(フィルタFL2より下流側)で二股に分岐しており、この2つの分岐の端部が
図2に示された第2吐出部22の管22aの互いに反対側の端部23A,23Bにそれぞれ接続されている。これにより、管22aの長手方向に関する圧力分布が均一化され、各吐出口22bから概ね均一に処理流体が噴射されることになる。同様に、排出ライン38も、流体排出部24に対する接続部の近傍(リリーフ弁SVより上流側)で二股に分岐しており、この2つの分岐の端部が流体排出部24の管24aの互いに反対側の端部にそれぞれ接続されている。これにより、各排出口24bから概ね均一に管24a内に処理流体が流入することになる。なお、温度センサTおよび圧力センサPS12は、2つの分岐部の一方のみに設けられていればよい。
【0041】
図1に概略的に示された制御部100が、処理容器11内の圧力の測定値(PV)と設定値(SV)とのの偏差に基づいて、処理容器11内の圧力が設定値に維持されるように、弁40の開度(具体的には弁体の位置)をフィードバック制御する。処理容器11内の圧力の測定値としては、例えば、
図1に示されたように、排出ライン38の開閉弁V3と処理容器11との間に設けられた参照符号PSが付けられた圧力センサの検出値を用いることができる。つまり、処理容器11内の圧力は、処理容器11内に設けた圧力センサにより直接的に測定してもよく、処理容器11の外(排出ライン38)に設けた圧力センサ(PS12)により間接的に測定してもよい。弁40は、制御部100からの指令値に基づいて(フィードバック制御ではなく)固定開度に設定することができる。
【0042】
制御部100は、たとえばコンピュータであり、演算部101と記憶部102とを備える。記憶部102には、超臨界乾燥装置(または超臨界乾燥装置を含む基板処理システム)において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。演算部101は、記憶部102に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって超臨界乾燥装置の動作を制御する。プログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御部100の記憶部102にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0043】
第1供給ライン34上に設定された分岐点42において、第1供給ライン34からバイパスライン44が分岐している。バイパスライン44は、排出ライン38に設定された接続点(合流点)46において、排出ライン38に接続されている。接続点46は、調節弁40の上流側にある。
【0044】
調節弁40の上流側において排出ライン38に設定された分岐点48において、排出ライン38から分岐排出ライン50が分岐し、再び排出ライン38に合流している。排出ライン38に設定された分岐点52において、排出ライン38から2つの分岐排出ライン54,56が分岐している。分岐排出ライン54,56の下流端は再び排出ライン38に合流する。排出ライン38の下流端は、例えば、流体回収装置(図示せず)に接続されている。流体回収装置で回収されたCO2に含まれる有用成分(例えばIPA(イソプロピルアルコール))は、適宜分離されて再利用される。分岐排出ライン50の下流端を排出ライン38に合流させずに、大気に開放してもよい。
【0045】
分岐点(第1分岐点)33のすぐ上流側において主供給ライン32に設定された分岐点(第2分岐点)64から、処理流体を排出するための排出ライン66が分岐している。
【0046】
分岐点42と処理容器11との間において第1供給ライン34に設定された合流点60にパージガス供給ライン62が接続されている。パージガス供給ライン62には、パージガス供給源(第2流体供給部)64が接続されている。パージガス供給源64から、パージガス供給ライン62、合流点60、第1供給ライン34および第1吐出部21を介して、パージガスを処理容器11に供給することができる。パージガス供給源64から供給されるガスは、超臨界乾燥で用いる処理流体と同じ物質であり、相(phase)のみが異なる。具体的にはここでは、超臨界乾燥処理で用いる処理流体が超臨界状態(超臨界相)のCO2であり、パージガス供給源64から供給されるパージガスはガス状態(気相)のCO2である。
【0047】
パージガス供給源64およびこれに接続されたパージガス供給ライン62(これに介設されたチェック弁CV、開閉弁V11)を、第2供給ライン36に設定された合流点74に接続してもよい(
図4中の(B)を参照)。この場合は、第2吐出部22からパージガスが処理容器11に流入することになる。
【0048】
ガス回収部28には開閉弁V12が介設されたガス回収ライン70が接続され、このガス回収ラインは、例えば開閉弁V5の下流側で排出ライン38に接続することができる。
図4では、図面の見やすさのため、ガス回収ライン70を(A)のところで分断して表示している。
【0049】
カーテンガス吐出部26には、カーテンガス供給源71(第3の流体供給部)から、開閉弁V13が介設されたカーテンガス供給ライン72を介して、ガス状態(気相)のCO2(CO2ガス)を供給することができる。パージガス供給源64から、カーテンガス吐出部26にガス状態(気相)のCO2(CO2ガス)を供給してもよい。この場合には、例えば、パージガス供給ライン62から、開閉弁が介設されたカーテンガス供給ライン(図示せず)を分岐させて、これをカーテンガス吐出部26に接続すればよい。
【0050】
次に、上述した超臨界乾燥装置を用いた超臨界乾燥方法(基板処理方法)の一例について簡単に説明する。以下に説明する手順は、記憶部102に記憶された処理レシピ及び制御プログラムに基づいて、制御部100の制御の下で、自動的に実行される。
【0051】
[パージ工程および基板搬入工程]
処理容器11への半導体ウエハ等の基板Wの搬入に先立ち、トレイ12が開位置に移動する。つまり、トレイ12の蓋部(蓋体)13が処理容器11の開口11Cを開放する。次いで、公知の方法により、開位置にあるトレイ12の基板支持部14の上に、基板Wが載置される。例えば、上昇位置にあるリフトピン(
図6に示した下降位置にあるリフトピン300を参照)が図示しない基板搬送アームから基板Wを受け取った後に下降することにより、基板支持部14の上に基板Wを載置することができる。
【0052】
なお、トレイ12に載置される基板Wは、例えば、図示しない枚葉式洗浄装置において(1)ウエットエッチング、薬液洗浄等の薬液処理、(2)薬液をリンス液により洗い流すリンス処理、(3)リンス液をIPAに置換してIPAのパドル(液膜)を形成するIPA置換処理が順次施されたものである。基板Wの表面にIPAのパドルが形成された状態で、基板Wがトレイ12に載置される。
【0053】
トレイ12が開位置に移動してから、基板Wを保持したトレイ12が再び閉位置に戻るまでの間に、処理容器11の内部空間をCO2ガスでパージするパージ工程が実施される。パージ工程については詳述する。
【0054】
パージ工程の実施後、基板Wを保持したトレイ12が再び閉位置に戻され、蓋部13により処理容器11が密閉されたら超臨界処理が開始される。以下に超臨界処理の各工程について、
図5A~
図5Eを参照して簡単に説明する。
図5A~
図5Eにおいて、灰色に塗りつぶされた開閉弁は閉状態となっており、塗りつぶされていない開閉弁は開状態となっていることを意味している。図面の簡略化のため、
図5A~
図5Eでは、パージ工程に関連するガスラインおよび流れ調整機器(開閉弁等)の記載は省略している。
【0055】
[昇圧工程]
まず最初に、昇圧工程が実施される。昇圧工程は、初期の減速昇圧段階と、その後の通常昇圧段階とに分類される。
【0056】
<減速昇圧段階>
まず、各開閉弁を
図5Aに示した状態とする、調節弁40の開度は適当な固定開度、例えば、2.5%に固定する。超臨界流体供給装置30から主供給ライン32に超臨界状態で送り出されたCO2の一部(例えば35%程度)は、オリフィスOLFが設けられた圧抜きライン66から排出され、残部が第1供給ライン34に流入する。第1供給ライン34に流入したCO2の一部(例えば35%程度)は、第1吐出部21を介して処理容器11内に流入する。また、第1供給ライン34を流れてきたCO2の残部は、処理容器11には向かわずにバイパスライン44を通って排出ライン38,50に流入し、閉状態にある開閉弁V5~V8によりせき止められる。
【0057】
減速昇圧段階の開始直後において、超臨界流体供給装置30から超臨界状態で送り出されたCO2の圧力は徐々に低下してゆくが、常圧状態にある比較的体積の大きな処理容器11内に流入するときに特に大きく低下する。すなわち、処理容器11へのCO2の導入初期においては、処理容器11内におけるCO2の圧力は臨界圧力(例えば約8MPa)より低くなるため、CO2はガス状態となる。第1供給ライン34内の圧力と常圧状態にある処理容器11内の圧力との差は非常に大きいため、ガス状態のCO2が高流速で処理容器11内に流入し、これが基板Wの表面のIPAパドルを乱し、パターン倒壊をもたらすおそれがある。
【0058】
上記の減速昇圧段階では、主供給ライン32を流れるCO2の一部を圧抜きライン66に逃がし、さらに、第1供給ライン34を流れるCO2の一部をバイパスライン44に逃がしているため、処理容器11内へのCO2の流入速度が低下する。第1供給ライン34にオリフィス(OLF)も処理容器11内に流入するCO2の流速の低下に貢献している。また、第1吐出部21から処理容器11に流入したCO2は、トレイ12のプレート15に衝突した後、プレート15を迂回して基板Wが存在する上方空間11Aに入るようになっているため、基板Wの近傍を流れるCO2ガスの流速が低くなる。上記の対策により、パターン倒壊の可能性が大幅に低減される。
【0059】
処理容器11内の圧力がある程度上昇すると、処理容器11内に流入するCO2の流速が低くなり、CO2が高流速で基板Wの周囲を流れることに起因したパターン倒壊は生じ難くなる。そうなったら、通常昇圧段階に移行する。
<通常昇圧段階>
【0060】
すなわち、まず、各開閉弁を
図5Bに示した状態として、主供給ライン32からの圧抜きライン66を介したCO2の排出を停止する。これにより、減速昇圧段階よりも高い昇圧速度で処理容器11内の圧力が上昇してゆく。このとき、下流端が開閉弁V5~V8によりせき止められているライン44,38,50,54,56内の圧力も上昇してゆく。そうしておくことにより、流通工程に移行した直後に処理容器11内の圧力が急激に落ち込むことはない。
【0061】
処理容器11内の圧力がCO2の臨界圧力(約8MPa)を越えると、処理容器11内に存在するCO2(IPAと混合されていないCO2)は、超臨界状態となる。処理容器11内のCO2が超臨界状態となると、基板W上のIPAが超臨界状態のCO2に溶け込み始める。通常昇圧段階は、処理容器11内の圧力が、基板W上の混合流体(CO2+IPA)中のIPA濃度および当該混合流体の温度に関わらず、当該混合流体が超臨界状態に維持されることが保証される圧力(超臨界状態保証圧力)となるまで継続される。超臨界状態保証圧力は概ね16MPa程度である。
【0062】
<流通工程>
圧力センサPS12により処理容器11内の圧力が超臨界状態保証圧力(16MPa)に到達したことが検出されたら、各開閉弁を
図5Cに示した状態として、調節弁40の動作モードをフィードバック制御モードに切り替える。このとき、制御部100(またはその下位コントローラ)は、処理容器11内の圧力が設定値(設定値SV=16MPa)に維持されるように、圧力センサPS12により検出された処理容器11内の圧力(測定値PV)と設定値SVとの偏差に基づいて調節弁40の開度(操作量MV)を調節するフィードバック制御を実行する。
【0063】
流通工程では、第2吐出部22から処理容器11内に供給された超臨界CO2が基板の上方領域を流れ、その後流体排出部24から排出される。このとき、処理容器11内には、基板Wの表面と略平行に流動する超臨界CO2の層流が形成される。超臨界CO2の層流に晒された基板Wの表面上の混合流体(IPA+CO2)中のIPAは超臨界CO2に置換されてゆく。最終的には、基板Wの表面上にあったIPAのほぼ全てが超臨界CO2に置換される。
【0064】
流体排出部24から排出されたIPAおよび超臨界CO2からなる混合流体は、排出ライン38(および分岐排出ライン54,56)を流れた後に回収される。混合流体中に含まれるIPAは分離して再利用することができる。
【0065】
<排出工程>
IPAから超臨界CO2への置換が完了したら、各開閉弁を
図5Dに示した状態として、処理容器11へのCO2の供給を停止し、また、処理容器11の設定圧力を常圧まで下げる。これにより調節弁40の開度が大幅に大きくなり、処理容器11内の圧力が常圧まで低下してゆく。これに伴い、基板Wのパターン内にあった超臨界CO2が気体となりパターン内から離脱し、気体状態のCO2は処理容器11から排出されてゆく。最後に、各開閉弁を
図5Eに示した状態として、開閉弁V1と開閉弁V4との間に残留していたCO2を抜く。以上により基板Wの乾燥が終了する。
【0066】
<基板搬出工程>
乾燥した基板Wを載置しているトレイ12が開位置に移動し、基板Wは、公知の方法により、処理ユニット10から(処理ユニット10が設置されたハウジングの中から)取り出される。このとき、例えば、前述したリフトピンが開位置にあるトレイ12上の基板Wを持ち上げ、次いで、図示しない基板搬送アームがリフトピンから基板Wを受け取ってもよい。なお、基板搬送アームが次の基板Wをリフトピン上に置いて、当該次の基板Wに対する基板搬入工程を続けて行ってもよい。この場合も、トレイ12が開位置にある間に、パージ工程が実施される。
【0067】
[パージ工程]
次に、パージ工程について詳細に説明する。パージ工程は、処理容器11への基板Wの搬入のためにトレイ12が開位置にある間に実行される。処理容器11の開口11Cが開放されると、処理容器11の周囲の雰囲気(通常は大気雰囲気)が、例えば相互拡散により、処理容器11内に侵入する。大気中には、処理流体である二酸化炭素(CO2)と異なる酸素(O2)、窒素(N2)、水蒸気(H2O)、アンモニア等のガス(説明の便宜上、二酸化炭素ガス以外のガスを「不純物ガス」と呼ぶ)が含まれている。不純物ガスが処理容器11内に存在する状態から超臨界乾燥処理を開始すると、超臨界乾燥処理後の基板の表面に不純物ガス由来の異物が残留するおそれがある。また、特に水、アンモニアは臨界温度および臨界圧力が二酸化炭素より高いため、パターン倒壊等の欠陥が発生するおそれもある。この潜在的問題を解決するため、パージ工程では、処理容器11内の不純物ガスの濃度を下げるため、処理容器11が開放された状態で処理容器11内にCO2ガスをパージガスとして供給する。
【0068】
<パージ工程の第1実施形態>
第1実施形態では、パージガス供給源64から、パージガス供給ライン62、合流点60、第1供給ライン34および第1吐出部21を介して、CO2ガス(パージガ
ス)を、
図4の太線のルートで処理容器11に供給する。すなわち、開閉弁V1,V2,V3,V4を閉状態とし、開閉弁V11を開状態とする。他の開閉弁(処理容器に対する流体の流出入に直接関与しない開閉弁)の状態は任意であり、例えば、次工程である昇圧工程への移行がスムーズに行えるような状態とすることができる。
【0069】
第1吐出部21から処理容器11内に流入したCO2ガスが、例えば
図3の矢印F2で概略的に示されるように処理容器11に広がり、矢印F3で概略的に示されるように処理容器11の開口11Cから流出する。これにより、処理容器11内のCO2ガスの濃度が上昇するとともに、不純物ガスの濃度が低下する。
【0070】
このとき、開閉弁V5,V6,V7,V8を閉状態とし、開閉弁V12を開状態としてもよい。排気ライン38は図示しない流体回収装置に接続されて負圧となっているため、ガス回収部28に吸引力が作用する。このため、矢印F3で概略的に示された処理容器11の開口11Cから流出するCO2ガスがガス回収部28に吸引され、ガス回収ライン70および排気ライン38を通って流体回収装置に流入する。ガス回収部28により強力な吸引力を作用させるため、ガス回収ライン70、またはその下流側の流路に、吸引ポンプまたはエゼクタ等の負圧発生機器を設けてもよい。
【0071】
またこのとき、開閉弁V13を開状態として、カーテンガス吐出部26からCO2ガス(シールドガス)を吐出してよい。カーテンガス吐出部26から吐出されたCO2ガスは、
図3中の矢印F4で示すようにガス回収部28に向けて流れ、カーテンガス吐出部26とガス回収部28との間にガスカーテンを形成する。これによりガスカーテンの外側にある空気が、ガスカーテンの内側に侵入することが抑制される。このためパージ効率が向上する。
【0072】
<パージ工程の第2実施形態>
第2実施形態では、パージガス供給源から、合流点74、第2供給ライン36および第2吐出部22を介して、CO2ガス(パージガス)を処理容器11に供給する(
図4の(B)を参照)。この場合も、開閉弁V1,V2,V3,V4は閉状態でよく、他の開閉弁(処理容器に対する流体の流出入に直接関与しない開閉弁)の状態は任意である。
【0073】
この場合、第2吐出部22からCO2ガスが処理容器11内に流入し、例えば
図3の矢印F1で概略的に示されるように処理容器11の開口11Cに向けて流れ、開口11Cから流出する。第2実施形態によれば、開口11Cから最も遠い位置(開口11CからX方向距離が大きい位置)から開口11Cの方に向けてCO2ガスを吐出しているので、パージ効率を高めることができる。
【0074】
第2実施形態においても、ガス回収部28およびカーテンガス吐出部26を第1実施形態と同様に動作させてもよい。
【0075】
<パージ工程の第3実施形態>
第3実施形態では、カーテンガス吐出部26をパージガスの吐出部としても利用するともに、第1吐出部21をガス回収部として利用する。開閉弁V1,V2,V3,V6,V7,V8を閉じて開閉弁V4,V5を開くことにより、第1吐出部21を第1供給ライン34の一部およびバイパスライン44を介して排気ライン38に接続し、第1吐出部21に負圧を作用させることができる。これにより
図3において矢印F6で示すように、CO2ガスを第1吐出部21を介して処理容器11から排出することができ、これに伴いカーテンガス吐出部26が吐出したCO2ガスを処理容器11内に引き込むことができる。これによっても処理容器11のCO2ガスパージを行うこともできる。
【0076】
<パージ工程の第4実施形態>
第3実施形態では、超臨界流体供給装置30から供給された処理流体(CO2)をガス化してパージガスとして利用する。開閉弁V2,V3,V4を閉じて開閉弁V9,V1を開くことにより、昇圧工程の初期と同様にガス状態のCO2を第1吐出部21から処理容器11内にパージガスとして吐出することができる。超臨界流体供給装置30から供給された処理流体(CO2)をガス化してパージガスとして利用する点以外は、第1実施形態と同じでよい。
【0077】
超臨界流体供給装置30から供給された処理流体をガス化したパージガスを第2吐出部22から処理容器11内に吐出することも可能である。但しこの場合、上流側にオリフィスOLFが設けられていないフィルタFL2が圧力差によりダメージを受ける可能性があるため、フィルタFL2の上流側に適当な減圧手段(例えば開度調整可能な弁を設けることが好ましい。
【0078】
流体排出部24が処理容器11の開口11Cの近傍にある場合には、パージ工程の第1~4実施形態において、流体排出部24をガス回収部として利用することができる。この場合、パージ工程中に開閉弁V3,V5を開きかつ調節弁40の開度も適当に大きな開度に固定することにより流体排出部24に吸引力が作用するようになる。またこの場合、カーテンガス吐出部26から吐出されたCO2ガスが処理容器11内に引き込まれ、かつ、第1吐出部21(または第2吐出部22)から吐出されたCO2ガスも流体排出部24に向けて流れるので、処理容器11のガスパージは問題無く行うことができる。
【0079】
[パージ工程終了のタイミング]
一実施形態においては、処理容器11内のCO2濃度が予め定められた閾値(例えば 80%)を上回ったことが検出されたら、制御部100は、パージ工程を終了させ、基板Wが載置されたトレイ12を閉位置に移動させ、基板Wを処理容器11内に収容するとともに処理容器11の開口11Cを閉鎖する。その後、制御部100は、昇圧工程を実行させる。
【0080】
CO2濃度は、例えば、処理容器11、あるいは排出ライン38の処理容器11と開閉弁V3の間に設けたCO2濃度計(濃度センサ)により検出することができる。
図4には、処理容器11内に設けたCO2濃度計が丸で囲んだSで示されている。
【0081】
上記に代えて、予め定められた時間だけCO2ガスを処理容器11に供給したことをもってCO2濃度が予め定められ閾値を上回ったものと見なしてもよい。「予め定められた時間」は、実際の超臨界処理装置を用いて行った実験により決定することができる。
【0082】
処理容器11内へのCO2ガス(パージガス)の供給は、基板Wを保持したトレイ14を閉位置に移動させる直前まで継続することが好ましい。なお、基板W上のIPAパドルに悪影響を与えない程度の流速で処理容器11にCO2ガスの供給を継続させながら、基板Wを保持したトレイ14を閉位置に移動させることも可能である。
【0083】
[処理ユニットの第1変形実施形態]
図6に示すように、処理容器11の開口11Cの周囲をCO2ガス雰囲気にする手段を設けてもよい。
図6に示した構成例では、処理ユニット10を包囲するハウジング100内(例えばハウジング100の天井部に)にガス吐出部102が設置されている。ガス吐出部102は、開位置にあるトレイ12の上方に位置しており、トレイ12に向けてCO2ガスを下向きに吐出することができる。ガス吐出部102からのCO2ガスのダウンフローは、トレイ12の周囲および処理容器11の開口11Cの周囲をCO2ガス雰囲気にする。このため、この場合にはカーテンガス吐出部26を設けなくてもよい。この構成は、処理容器11内へのCO2ガス(パージガス)の供給を停止してから基板Wが載置されたトレイ12を閉位置に移動させるまでの間に処理容器11内に流入する不純物ガスが減少する点において有利である。
【0084】
開位置にあるトレイ12の下方にはガス回収部104が設けられ、ハウジング100内のガスを回収するようになっている。このため、ハウジング100の外部に高濃度のCO2ガスが漏出することを防止することができる。ガス回収部104を設けた場合には、ガス回収部28を省略してもよい。ガス回収部(28,104)は、有害ガスに関する安全法規への適合を主たる目的として設けるものであり、CO2ガスをどのような手段で回収するかは任意である。
【0085】
ガス吐出部102からは清浄空気も吐出することが可能である。メンテナンス時等にハウジング100内を人体に無害の雰囲気にする必要があるときには、ガス吐出部102から清浄空気を吐出しながらガス回収部104でガスを回収することによりハウジング100内をエアパージすることができる。
【0086】
図6の構成を採用した場合、処理容器11の開口11Cの周囲をCO2ガス雰囲気にできるため、第1~第4実施形態に係るパージ工程、特に第3実施形態に係るパージ工程を、効率良く実施することができる。第3実施形態に係るパージ工程の場合、第1吐出部21から処理容器11内の雰囲気を吸引することにより開口11Cの周囲にあるCO2ガスを処理容器11内に引き込むことにより、処理容器11内のCO2ガスパージを行うことができる。
【0087】
なお、
図6において符号300で指し示された部材は、トレイ12上の基板Wを持ち上げることができるリフトピンである。リフトピン300はトレイ12の貫通穴18を通って昇降することができる。リフトピンによりトレイ12の上方に持ち上げられた基板Wは、ハウジング100内に侵入してきた図示しない基板搬送アームが受け取ることができる。基板Wの搬入時には、上昇位置にあるリフトピン300の上に図示しない基板搬送アームが基板Wを載置し、その後、リフトピン300をトレイ12の下方まで下降させることにより、トレイ12の上に基板Wを載置することができる。
[処理ユニットの第2変形実施形態]
【0088】
図7に処理ユニットの第2変形実施形態を示す。
図7では、
図1~
図4に示した実施形態において同様の役割を果たす構成要素を指し示す参照符号に200を加えた参照番号が付けられている。
【0089】
図7に示す処理ユニット200は、上端部に開口211Cを有する円筒状の処理容器211と、処理容器211の開口211Cを塞ぐ可動の蓋体213を有している。蓋体213には、基板Wを保持する基板保持部214が設けられている。
図7には閉位置にある蓋体213が実線で、開位置にある蓋体213が鎖線で示されている。蓋体213が開位置にあるときに、基板保持部214と図示しない基板搬送アームとの間で基板Wの受け渡しを行うことができる。基板保持部214により基板Wを保持した蓋体213を閉位置に位置させた状態で、超臨界乾燥処理が行われる。
【0090】
処理容器211の底部には第1吐出部221と、流体排出部224が設けられている。蓋体213には第2吐出部222が設けられている。第1吐出部221の上方には、第1吐出部221から吐出された処理流体が直接基板Wに向かわないようにする邪魔板215が設けられている。超臨界乾燥処理時には、第1吐出部221が前述した処理ユニット10の第1吐出部21、第2吐出部222が前述した処理ユニット10の第1吐出部22、そして流体排出部224前述した処理ユニット10の流体排出部24と、それぞれ同じ役割を果たす。
【0091】
図7に示す処理ユニット200においても前述した処理ユニット10と同様のCO2パージを行うことができる。この目的のために、第1吐出部221に処理流体(著臨界CO2)を供給する供給ライン234に、ガスライン262を接続することができる。蓋体213を開位置に位置させた状態で、CO2ガスの供給源264からガスライン262および供給ライン234を介して第1吐出部221から処理容器211内にCO2ガスを供給する。これにより処理容器211内をガスパージすることができる。このとき、処理容器211の開口211Cと蓋体213との隙間の周囲にガス回収部228を設けて、隙間から漏出するCO2ガスを回収する。
【0092】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0093】
基板は半導体ウエハに限定されるものではなく、ガラス基板、セラミック基板等の半導体装置の製造において用いられる他の種類の基板であってもよい。
【符号の説明】
【0094】
W 基板
11 処理容器
12M 蓋体移動機構
13 蓋体
14 基板保持部
34,36,62など 供給ライン
V1~V13、FM、OLFなど 流れ制御機器
100 制御部