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特開2023-38800熱電発電モジュールおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038800
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】熱電発電モジュールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10N 10/17 20230101AFI20230310BHJP
   H10N 10/01 20230101ALI20230310BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
H01L35/32 A
H01L35/34
H02N11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145704
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】521395089
【氏名又は名称】株式会社テクニカルシステム社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】岸 直希
(72)【発明者】
【氏名】成田 勝彦
(57)【要約】
【課題】断熱性と発電効率とを両立可能な熱電発電モジュールを提供する。
【解決手段】熱電発電モジュール(1)は、0.2Wm-1-1以下の熱伝導率を有する断熱部材(10)の第一主面(11)および第二主面(12)間に配置されて両主面間の温度差に応じた起電力を生じる熱電材料部(21)を含むとともに、所望の向きの電流を生じるように構成されている熱電発電素子(20)を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一主面および第二主面を有し、0.2Wm-1-1以下の熱伝導率を有する断熱部材と、
前記断熱部材における前記第一主面および前記第二主面の間に配置されて前記第一主面側と前記第二主面側との温度差に応じた起電力を生じる熱電材料部を含むとともに、所望の向きの電流を生じるように構成されている熱電発電素子と、
を有する、熱電発電モジュール。
【請求項2】
前記第一主面と前記第二主面との間の熱伝導率は、50Wm-1-1以下である、請求項1に記載の熱電発電モジュール。
【請求項3】
前記断熱部材における前記第一主面から前記第二主面までの距離は、350mm以下である、請求項1または2に記載の熱電発電モジュール。
【請求項4】
前記断熱部材の形状は、前記断熱部材を平面視したときに見える面を前記第一主面とし前記断熱部材の厚み方向における前記第一主面の反対側にある面を前記第二主面とする平板状、または、内周面および外周面の一方を前記第一主面とし他方を前記第二主面とする円筒状である、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱電発電モジュール。
【請求項5】
前記熱電材料部は、前記第一主面および前記第二主面間において前記断熱部材を貫通している、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱電発電モジュール。
【請求項6】
前記熱電材料部は、温度勾配に応じた起電力を発生する熱電材料を含有し、
前記熱電材料のゼーベック係数は、10μVK-1以上または-10μVK-1以下である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の熱電発電モジュール。
【請求項7】
前記熱電材料の導電率は0.5Scm-1以上である、請求項6に記載の熱電発電モジュール。
【請求項8】
前記熱電材料は、導電性高分子もしくは炭素材料である、請求項6または7に記載の熱電発電モジュール。
【請求項9】
前記熱電材料部に電気的に接続されている導電部をさらに有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱電発電モジュール。
【請求項10】
前記導電部は、導電性材料を含有し、
前記導電性材料の熱伝導率は、50Wm-1-1以下である、
請求項9に記載の熱電発電モジュール。
【請求項11】
前記導電性材料のゼーベック係数は、
前記熱電材料のゼーベック係数の符号が正であれば10μVK-1以下であり、
前記熱電材料のゼーベック係数の符号が負であれば-10μVK-1以上である、
請求項9または10に記載の熱電発電モジュール。
【請求項12】
前記導電性材料は、金属、導電性高分子および炭素材料からなる群から選ばれる一以上の材料である、請求項9~11のいずれか一項に記載の熱電発電モジュール。
【請求項13】
前記熱電発電素子は、前記熱電材料部と前記導電部とが交互に連結する直列回路を含み、
前記熱電材料部は、独立して、温度差に応じた電気を発生するp型の熱電材料およびn型の熱電材料からなる群から選ばれる熱電材料を含み、
前記熱電材料部および前記導電部は、前記断熱部材の面方向において交互に、前記第一主面および前記第二主面の間に配置されている、
請求項9~12のいずれか一項に記載の熱電発電モジュール。
【請求項14】
前記熱電発電素子は、柔軟な繊維状である、請求項1~13のいずれか一項に記載の熱電発電モジュール。
【請求項15】
前記熱電発電素子は、絶縁性の繊維を含み、
前記熱電材料部は、温度勾配に応じて起電力を発生する発電材料が前記繊維に担持されて形成されている、
請求項14に記載の熱電発電モジュール。
【請求項16】
前記熱電発電素子は、前記熱電材料部に電気的に接続されている導電部をさらに含み、
前記導電部は、導電性材料が前記繊維に担持されて形成されている、
請求項14または15に記載の熱電発電モジュール。
【請求項17】
熱電発電モジュールを製造する方法であって、
絶縁性の繊維に第一の熱電材料を断続的に塗布または含侵させて第一の導電部を形成する工程と、
前記繊維に第二の熱電材料または導電性材料を断続的に塗布または含侵させて、第一の熱電材料部を連結する第二の導電部を形成する工程と、
0.2Wm-1-1以下の熱伝導率を有する断熱部材を前記繊維で縫って、第一の導電部と第二の導電部とが交互に断熱部材の第一主面および第二主面間を横断するように第一の導電部および第二の導電部を断熱部材に配置する工程と、
を含み、
前記第一の導電部および前記第二の導電部は、前記繊維の長さ方向の一方向に電流を生じるように構成されている、熱電発電モジュールの製造方法。
【請求項18】
前記熱電発電モジュールにおける前記第一主面と前記第二主面との間の熱伝導率は、50Wm-1-1以下である、請求項17に記載の熱電発電モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電発電モジュールおよび熱電発電モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電発電技術は熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換する技術である。熱起電力の大きさは熱電変換材料の両面の温度差の大きさに依存する。このような熱電発電を実施するための技術として、熱源に設置される断熱部材と、当該断熱部材の厚さ方向に貫通するように断熱部材に配置され、かつ導通可能な熱電発電部とを有する熱電発電モジュールが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-110157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の熱電発電モジュールでは、断熱部材を貫通する熱電発電部が熱の放出路ともなり得る。このため、断熱効果が不十分となることがあり、あるいは発電効率が不十分となることがある。このように、従来の従来の熱電発電モジュールには、断熱性と発電効率との両立、との観点から検討の余地が残されている。
【0005】
本発明は、断熱性と発電効率とを両立可能な熱電発電モジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る熱電発電モジュールは、第一主面および第二主面を有し、0.2Wm-1-1以下の熱伝導率を有する断熱部材と、前記断熱部材における前記第一主面および前記第二主面の間に配置されて前記第一主面側と前記第二主面側との温度差に応じた起電力を生じる熱電材料部を含むとともに、所望の向きの電流を生じるように構成されている熱電発電素子と、を有する。
【0007】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る熱電発電モジュールの製造方法は、絶縁性の繊維に第一の熱電材料を断続的に塗布または含侵させて第一の導電部を形成する工程と、前記繊維に第二の熱電材料または導電性材料を断続的に塗布または含侵させて、第一の熱電材料部を連結する第二の導電部を形成する工程と、0.2Wm-1-1以下の熱伝導率を有する断熱部材を前記繊維で縫って、第一の導電部と第二の導電部とが交互に断熱部材の第一主面および第二主面間を横断するように第一の導電部および第二の導電部を断熱部材に配置する工程と、を含み、前記第一の導電部および前記第二の導電部は、前記繊維の長さ方向の一方向に電流を生じるように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、断熱性と発電効率とを両立可能な熱電発電モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る熱電発電モジュールの構成を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の実施例1の熱電発電モジュールにおける熱源(60℃)-外気間での電流-電圧特性を示す図である。
図3】本発明の実施例1の熱電発電モジュールにおける熱源(60℃)-外気間での電力-電圧特性を示す図である。
図4】本発明の実施例2の熱電発電モジュールにおける熱源(100℃)-外気間での電流-電圧特性を示す図である。
図5】本発明の実施例2の熱電発電モジュールにおける熱源(100℃)-外気間での電力-電圧特性を示す図である。
図6】導電部の熱伝導率による熱電材料部の両端の温度差の計算結果を示す図である。
図7】導電部の熱伝導率による熱電発電モジュールの起電力の計算結果を示す図である。
図8】本発明の実施例1、2の熱電発電モジュールを第二主面側から加熱したときの第一主面側の温度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔熱電発電モジュール〕
本発明の実施形態の熱電発電モジュールは、断熱部材および熱電発電素子を有する。
【0011】
[断熱部材]
断熱部材は、断熱性を有する部材であり、第一主面および第二主面を有する。第一主面および第二主面の一方は、熱源に対して配置され、あるいは熱源に接触する。第一主面および第二主面の他方は、当該熱源の周辺環境に面する。
【0012】
断熱部材の形状は、本発明の実施形態の熱電発電モジュールが設置される熱源の形状、当該熱源の温度、熱電発電モジュールに要求される断熱効果などの諸条件に応じて、適宜に決められてよい。断熱部材の形状の例には、平板状および円筒状が含まれる。断熱部材の形状が平板状であれば、第一主面は断熱部材を平面視したときに見える面であり、第二主面は断熱部材の厚み方向における第一主面の反対側にある面である。断熱部材の形状が円筒状であれば、第一主面は内周面および外周面の一方であり、第二主面は当内周面および外周面の他方である。断熱部材の形状は、熱源への設置の自由度および容易さを十分に高める観点から好ましい。
【0013】
断熱部材は、熱源に対する断熱の用途で適用される通常の断熱部材から適宜に決めることが可能である。断熱部材は、熱源への設置の自由度の観点から、変形可能な柔軟性を有することが好ましい。断熱部材の材料の例には、グラスウール、ロックウール、セルロースファイバー、ウレタンフォームおよびフェノールフォームが含まれる。
【0014】
断熱部材の熱伝導率は、高すぎると断熱性が不十分となることがあり、また発電効率が不十分となることがある。断熱部材の熱伝導率は、断熱性を十分に高める観点から、0.2Wm-1-1以下である。断熱部材の熱伝導率は、0.15Wm-1-1以下であることがより好ましい。また、断熱部材の熱伝導率は、断熱性と発電効率との両方を十分に高める観点から、0.15Wm-1-1以下であることが好ましく、0.1Wm-1-1以下であることがより好ましい。
【0015】
断熱部材の熱伝導率は、公知の測定方法、例えば保護熱板(Guarded Hot Plate(GHP))法によって測定することが可能である。また、断熱部材の熱伝導率は、断熱部材の種類によって適宜に調整可能である。
【0016】
断熱部材の大きさは、熱源の大きさ、熱源周囲の空間の体積および形状などの諸要因に応じて適宜に決めてよい。断熱部材における第一主面から第二主面までの距離は、熱源への設置の自由度と断熱性との観点から、350mm以下であることが好ましく、100mm以下であることがより好ましい。また、断熱部材における第一主面から第二主面までの距離は、熱源への設置の自由度を高める観点から十分に小さいことが好ましく、例えば50mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましい。さらに、断熱部材における第一主面から第二主面までの距離は、断熱部材の十分な断熱性を発現させる観点から、3mm以上であることが好ましい。なお、「断熱部材における第一主面から第二主面までの距離」とは、断熱部材の第一主面と第二主面との間の距離を表す典型的な数値であってよく、例えば厚さである。
【0017】
[熱電発電素子]
<熱電材料部>
熱電発電素子は、熱電材料部を含む。熱電材料部は、温度差に応じた起電力を生じる材料で構成された部分である。本発明の実施形態では、熱電材料部は、上述の断熱部材の第一主面および第二主面の間に配置される。よって、熱電材料部は、前記第一主面側と前記第二主面側との温度差に応じた起電力を生じる。
【0018】
熱電材料部は、最大の温度差を生じさせて発電効率を高める観点から、第一主面および第二主面間において断熱部材を貫通していることが好ましい。「熱電材料部が断熱部材を貫通している」とは、断熱部材内に位置する単独の熱電材料部の一部が断熱部材の第一主面上に露出し、他の一部が第二主面上に露出する状態を言う。
【0019】
なお、熱電材料部は、発電に十分な温度差を獲得するように断熱部材内に配置されていればよく、例えば、断熱部材内における第一主面の近傍と第二主面の近傍とを断熱部材の厚さ方向に往復するように配置されていてもよい。熱電材料部は、熱電材料のみで構成されていてもよいし、本発明の実施形態の効果が得られる範囲において他の構造を含んでいてもよい。
【0020】
<熱電材料>
熱電材料部は、温度勾配に応じた起電力を発生する熱電材料を含有する。熱電発電モジュールの発電効率を高める観点から、熱電材料のゼーベック係数は、絶対値で10μVK-1以上であること、すなわち10μVK-1以上または-10μVK-1以下であること、が好ましく、絶対値で15μVK-1以上であること、すなわち15μVK-1以上または-15μVK-1以下であることがより好ましい。
【0021】
熱電材料のゼーベック係数は、発電効率の観点からは高いほどよいが、その上限値は、一般的な理論値あるいは材料に応じた値であってもよい。たとえば、熱電材料のゼーベック係数の上限値は、一般的な理論値であれば絶対値で1mVK-1以下(1mVK-1以上または-1mVK-1以下)であってもよいし、特定の有機系熱電材料であれば絶対値で100mVK-1以下(100mVK-1以上または-100mVK-1以下)であり得る。近年、高いゼーベック係数を示す材料が発見されており、本発明の実施形態の効果が得られる範囲において、より高いゼーベック係数を示す未知の材料の適用もあり得る。
【0022】
また、熱電材料のゼーベック係数の上限値は、熱電発電モジュールの所期の用途に応じて適宜に決めることが可能であり、例えば、センサの電源であれば絶対値で10μVK-1以下、すなわち10μVK-1以下または-10μVK-1以上であってもよい。
【0023】
熱電材料のゼーベック係数は、カタログ値であってもよいし、文献値であってもよいし、実測値であってもよいし、計算値であってもよい。熱電材料のゼーベック係数は、公知の技術によって測定することが可能であり、例えば試料に温度差をかけ起電力を電圧計にて測定する方法によって測定することが可能である。また、熱電材料のゼーベック係数は、熱電材料の種類によって調整することができる。
【0024】
熱電材料の導電率は、熱電発電モジュールの発電効率を高める観点から、0.5Scm-1以上であることが好ましく、5Scm-1以上であることがより好ましい。熱電材料の導電率は、熱電発電素子の構成に応じて適宜に決めることが可能である。熱電材料の導電率が高すぎると、熱電材料部における熱伝導率が高くなる傾向にあり、また、生じた電力を十分に取り出すことが困難になることがある。このような観点から、熱電材料の導電率は、例えば1×10Scm-1以下であってよく、あるいは3000Scm-1以下であってよい。
【0025】
熱電材料の導電率は、熱電材料のゼーベック係数と導電率とを同時に測定可能な公知の測定装置を用いて求めることができる。また、熱電材料の導電率は、熱電材料の種類により調整することができる。
【0026】
熱電材料は、好ましくは上記の特性を有する公知の熱電材料から適宜に選ぶことが可能であり、無機成分であってもよいし有機成分であってもよい。また、熱電材料は、p型であってもn型であってもよく、熱電材料のゼーベック係数は正であっても負であってもよい。熱電材料は一種でも、それ以上でもよい。
【0027】
熱電材料の例には、有導電性高分子および炭素材料が含まれる。有導電性高分子および炭素材料は、柔軟な構成に適用するのに好適であり、熱電材料部からの熱電材料の脱落を抑制する観点から好ましい。
【0028】
導電性高分子材料の例には、ポリチオフェン系高分子、ポリアニリン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリフェニレン系高分子、ポリフェニレンビニレン系高分子、ポリアセチレン系高分子、ポリアセン系高分子およびポリチエニレンビニレン系高分子が含まれる。ポリチオフェン系高分子の例には、ポリスチレンスルホン酸(PSS)をドープしたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)が含まれる。なお、このポリチオフェン系高分子の具体例を「PEDOT:PSS」とも言う。
【0029】
また、炭素材料の例には、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラフェンナノプレートレット、グラファイト、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、カーボンブラック、ケッチェンブラック、フラーレンおよびフラーレン誘導体が含まれる。
【0030】
[熱電発電素子の電気的な構成]
熱電発電素子は、所望の向きの電流を生じるように構成されている。熱電発電素子のこのような電気的な構成は、熱電材料の種類および熱電材料部の電気的な接続形態に応じて適宜に規定し得る。
【0031】
<導電部>
熱電発電素子は、熱電材料部以外に、熱電材料部に電気的に接続されている導電部をさらに有することが、熱電発電素子の電気的構成の多様性を高める観点から好ましい。導電部は、導電性材料によって構成することが可能である。
【0032】
導電性材料の熱伝導率は、熱電発電モジュールにおいて導電部からの放熱を十分に抑制する観点から、50Wm-1-1以下であることが好ましく、30Wm-1-1以下であることがより好ましい。一般に、導電性を有する材料は、熱伝導率を有する傾向にある。このような観点から、導電性材料の熱伝導率は、小さければ小さいほどよいがゼロでなくてもよく、例えば0.03Wm-1-1以上であってもよい。
【0033】
導電性材料の熱伝導率は、公知の測定技術、例えば定常法あるいはレーザフラッシュ法によって測定することが可能である。また、導電性材料の熱伝導率は、導電性材料の種類によって調整することができる。
【0034】
導電性材料のゼーベック係数は、熱電材料のゼーベック係数に応じて適宜に決めることが可能である。導電性材料のゼーベック係数は、電流のより良好な流れを実現して発電効率を高める観点から、熱電材料のゼーベック係数の符号が正であれば10μVK-1以下であることが好ましく、熱電材料のゼーベック係数の符号が負であれば-10μVK-1以上であることが好ましい。
【0035】
熱電材料のゼーベック係数の符号が正の場合では、導電性材料のゼーベック係数は、10μVK-1以下であれば小さくてもよく、例えば-10μVK-1以下であってもよい。また、熱電材料のゼーベック係数の符号が負の場合であれば、導電性材料のゼーベック係数は大きくてもよく、例えば10μVK-1以上であってもよい。これは、導電部と熱電材料部とで生じる起電力の向きのためである。
【0036】
熱電発電素子において熱電材料部と導電部とが隣接するように構成されている場合では、熱電材料のゼーベック係数と導電性材料のゼーベック係数の各符号同士が同じであると、各部における起電力の向きが逆になる。このため、熱電材料部で発生させた起電力が、導電部で発生させた起電力によって相殺されることになる。熱電材料のゼーベック係数が正である場合、導電性材料のゼーベック係数が熱電材料のゼーベック係数よりも十分小さければ、上記の相殺の影響が小さくなり、あるいは起電力の向きが同方向になる。よって良好な発電特性が発現される。同様に、熱電材料のゼーベック係数が負である場合、導電性材料のゼーベック係数が熱電材料のゼーベック係数よりも十分大きければ、良好な発電特性が発現される。
【0037】
導電性材料のゼーベック係数の、上記の一方の境界値に対する他方の境界値(例えば上限値に対する下限値)は、本発明の実施形態の効果が得られる範囲、および導電性材料によって実現可能な範囲において適宜に決めてよい。たとえば、導電性材料のゼーベック係数の上限値であれば100μVK-1以下であってよく、下限値であれば-100μVK-1以上であってよい。
【0038】
また、上記の起電力の相殺を軽減する観点から、熱電材料のゼーベック係数S1に対する導電性材料のゼーベック係数S2の比S2/S1は、これらの係数の符号に応じて適宜に決められる。たとえば、S1およびS2が同じ符号である場合では、S2/S1は、上記の観点から0.0001~1であることが好ましい。S1およびS2が異なる符号である場合では、S2/S1は、上記の観点から-10~-0.0001であることが好ましい。
【0039】
導電性材料のゼーベック係数は、前述した熱電材料と同様の方法によって測定することが可能である。また、導電性材料のゼーベック係数は、導電性材料の種類により調整することができる。
【0040】
導電性材料は、十分な導電性を有する材料であればよく、一種でもそれ以上でもよい。導電性材料の例には、金属、導電性高分子および炭素材料が含まれる。このような導電性材料は、柔軟な構成に適用するのに好適であり、熱電材料部からの熱電材料の脱落を抑制する観点から好ましい。
【0041】
当該金属の例には、銀、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、およびこれらのいずれかの金属を含む合金、が含まれる。金属を含む導電性材料は、ワイヤなどの金属製の部材であってもよいし、金属粒子と分散媒あるいはバインダー樹脂とを含有する金属ペーストであってもよい。導電性高分子および炭素材料の例には、熱電材料で例示した成分が含まれる。
【0042】
なお、ゼーベック係数および導電率は、一般に、材料が同じでも、結晶の品質、結晶の純度、または導電性の制御のためのキャリアドーピング、によって変化する。したがって、熱電材料と導電性材料とが同じ材料で構成されていても、熱電材料と導電性材料とは区別可能である。たとえば、同じ材料であっても、ゼーベック係数の絶対値がより小さく、導電率がより大きい方を導電性材料とし、ゼーベック係数の絶対値がより大きく、導電率がより小さい方を熱電材料とすることができる。
【0043】
<電気的な接続形態>
p型の熱電材料は、高温側から低温側に向かう電流を発生させ、n型の熱電材料は、低温側から高温側に向かう電流を発生させる。また、上記の導電部は、熱電材料を電気的に接続可能である。本発明の実施形態の熱電発電モジュールは、これらの組み合わせによって、所望の向きの電流を生じる様々な電気的な構成を採り得る。
【0044】
熱電材料部を直列に接続してなる熱電発電素子の場合では、例えば、p型の熱電材料部とn型の熱電材料部とを交互に直列に接続することにより、所望の一方向に電流を生じる熱電発電素子が構成される。
【0045】
p型の熱電材料部およびn型の熱電材料部は、導電部を介して交互に直列に接続されていてもよい。このような接続形態は、断熱部材の厚さ方向において熱電材料部の位置を所望の位置に調整する観点から好適である。
【0046】
あるいは、熱電発電素子は、p型の熱電材料部およびn型の熱電材料部のいずれか一方を含む熱電材料部と導電部とが交互に連結する直列回路を含み、熱電材料部および導電部は、断熱部材の第一主面または第二主面の面方向において交互に、第一主面および第二主面の間に配置されていてもよい。このような接続形態によれば、p型の熱電材料部および導電部を繰り返し単位とする熱電発電素子、n型の熱電材料部および導電部を繰り返し単位とする熱電発電素子、あるいは、p型の熱電材料部、導電部、n型の熱電材料部および導電部、を繰り返し単位とする熱電発電素子、が構成される。このような熱電発電素子は、十分に高い電圧での発電を簡素な構成で実現する観点から好ましい。また、当該熱電発電素子は、単一の熱電材料で熱電発電素子を構成する場合では、当該熱電材料の発電効率を十分に発現するのに好適である。
【0047】
あるいは、熱電発電素子は、断熱部材をその厚さ方向に沿って配置されるp型の熱電材料部およびn型の熱電材料部のいずれか一方と、当該熱電材料部の一端同士を電気的に接続する第一の導電部と、当該熱電材料部の他端同士を電気的に接続する第二の導電部と、によって構成されてもよい。このような接続形態によれば、断熱部材を横断するp型の熱電材料部またはn型の熱電材料部の並列回路が形成される。このような熱電発電素子は、十分に多い電流での発電を簡素な構成で実現する観点から好ましい。この場合、導電部は、熱電材料部の端部を結ぶ線状に形成されてもよいし、断熱部材の第一主面または第二主面の全体を覆う膜状に形成されてもよい。
【0048】
<熱電発電素子の好ましい形態>
熱電発電素子の形態は、変形可能な柔軟性を有することが、様々なタイプの熱源に対する熱電発電モジュールの汎用性を高める観点から好ましい。さらに、熱電発電素子が柔軟な繊維状であることは、熱電発電モジュールの変形による熱電発電素子の破損を抑制する観点から好ましい。
【0049】
このような熱電発電素子は、絶縁性の繊維を含み得る。当該繊維は、熱電材料部および導電部の各々の担体となり得る。当該繊維は、天然繊維であってもよいし、合成繊維であってもよい。絶縁性と柔軟性との観点から、当該繊維の好ましい一例として、綿糸が挙げられる。
【0050】
上記の形態において、熱電材料部は、温度勾配に応じて起電力を発生する熱電材料が繊維に担持されて形成される。また、当該形態の熱電発電素子が導電部をさらに含む場合では、導電部は、導電性材料が繊維に担持されて形成される。熱電材料部が繊維に担持されること、あるいは導電部が繊維に担持されることは、熱電発電モジュールの変形による熱電発電素子の破損を抑制する観点から好ましい。熱電材料部および導電部を繊維に担持させる方法は、公知の技術によって実現可能であり、例えば、熱電材料部の塗料の塗布または浸漬と乾燥であってもよいし、熱電材料の繊維への物理的な吸着であってもよいし、熱電材料の繊維への化学的な吸着であってもよい。
【0051】
[熱的特性]
本発明の実施形態において、熱電発電モジュールの断熱部材における第一主面と第二主面との間の熱伝導率(以下、単に「熱電発電モジュールの熱伝導率」とも言う)は、十分な断熱効果と十分な発電効率との両立の観点から、50Wm-1-1以下であることが好ましい。上記の観点から、当該熱伝導率は、低いほど好ましく、例えば40Wm-1-1以下であることがより好ましく、30Wm-1-1以下であることがさらに好ましい。
【0052】
熱電発電モジュールの熱伝導率は、導電性材料と同様に、定常法あるいはレーザフラッシュ法などの公知の技術によって測定することが可能である。また、熱電発電モジュールの熱伝導率は、コンピュータシミュレーションによる計算値であってもよい。
【0053】
熱電発電モジュールの熱伝導率は、熱源側の部分と、その反対側において最も熱源による熱的影響を受ける部分との間で特定される。たとえば、熱電材料部が断熱部材を横断するように配置されている場合では、熱電発電モジュールの熱伝導率は、熱電発電素子のうちの第一主面側に露出している部分と第二主面側に露出している部分との間の熱伝導率である。熱電発電素子が断熱部材の第一主面または第二主面に露出しない場合には、熱電発電モジュールの熱伝導率は、断熱部材の第一主面のうちの熱電発電素子に最も近い部分と第二主面のうちの熱電発電素子に最も近い部分との間の熱伝導率である。
【0054】
熱電発電モジュールの熱伝導率は、熱電発電素子の構成によって適宜に調整することが可能である。熱電発電モジュールの熱伝導率は、通常、断熱部材のそれよりも大きくなる。これは、断熱部材を横断する方向に配置されている熱電材料部または導電部が熱の通り道になるためである。よって、熱電発電モジュールの熱伝導率は、熱電材料または導電性材料に熱伝導率のより低い材料を用いることによって低くなる傾向にある。また、熱電発電モジュールの熱伝導性は、第一主面または第二主面における単位面積当たりの熱電材料部または導電部の配置数を減らす(面方向における間隔を大きくする)ことによって低くなる傾向にある。
【0055】
なお、「第一主面または第二主面における単位面積当たりの熱電材料部または導電部の配置数」は、熱電発電モジュールの熱伝導性以外にも、熱電発電モジュールを製造する際の加工性の観点から決めることが可能である。一般に、単面積当たりの当該配置数が多いと加工の難易度が高くなり、単面積当たりの当該配置数が少ないと加工の難易度が低くなる傾向にある。このような加工性の観点と、上記の熱伝導性の制御の観点から、第一主面または第二主面における単位面積当たりの熱電材料部または導電部の配置数は、0.003個/cm以上であってよく、50個/cm以下であってよい。また、上記の観点から、第一主面または第二主面側における熱電材料部または導電部の部分の長さ(例えば主面上に露出している部分の長さ)は、例えば0.07~20cmから適宜に決めてもよい。
【0056】
本発明の実施形態において、熱電発電モジュールの断熱性と発電効率とのバランスは、熱電発電モジュールの用途に応じて適宜に決められるべきである。たとえば、熱電発電モジュールの断熱材としての用途がスチームで加熱される部位の保温であり、熱電発電モジュールの発電装置としての用途がセンサの電源である場合は、これらの用途に応じた断熱性および発電効率が実現されるように、材料および構成を適宜に決めればよい。
【0057】
[熱電発電モジュールの製造方法]
本発明の実施形態の熱電発電モジュールは、熱電発電素子の性状及び形態に応じて適宜に製造することが可能である。本発明の実施形態の熱電発電モジュールは、断熱部材の厚さ方向に断熱部材を横断する熱電材料部を断熱部材に形成する工程を含み、熱電発電部に電気的に接続される導電部を形成する工程を必要に応じてさらに含む方法によって製造することが可能である。
【0058】
当該熱電発電モジュールの製造方法において、熱電材料部を形成する工程は、導電部を形成する工程よりも前に行われてもよいし、導電部を形成する工程の後に行われてもよいし、導電部を形成する工程と同時に行われてもよい。熱電材料部を形成する工程は、例えば、棒状の熱電材料部を断熱部材に刺しこむ工程であってもよいし、断熱部材に埋め込む工程であってもよい。また、熱電材料部を形成する工程は、繊維に断続的に熱電材料部を形成し、これを断熱部材に縫い込む工程であってもよい。
【0059】
また、導電部を形成する工程は、熱電材料部同士を結線する工程であってもよいし、断熱部材の主面に導電性の塗料を塗布して当該主面に露出する熱電材料部の端部同士を連結する塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させて導電部を形成する工程であってもよい。また、導電部を形成する工程は、熱電材料部が断続的に形成されて断熱部材に縫い込まれた繊維の、熱電材料部間の部分に導電性材料の塗料を浸漬させ、乾燥させて導電部を形成する工程であってもよい。
【0060】
あるいは、当該熱電発電モジュールの製造方法は、熱電発電素子を作製する工程と、熱電発電素子を断熱部材内に配置する工程とを含んでもよい。たとえば、当該熱電発電モジュールの製造方法は、絶縁性の繊維に第一の熱電材料を断続的に塗布または含侵させて第一の導電部を形成する工程と、繊維に第二の熱電材料または導電性材料を断続的に塗布または含侵させて、第一の熱電材料部を連結する第二の導電部を形成する工程と、繊維で断熱部材を縫って、第一の導電部と第二の導電部とが交互に断熱部材の第一主面および第二主面間を横断するように第一の導電部および第二の導電部を断熱部材に配置する工程と、を含んでもよい。
【0061】
第一の導電部を形成する工程は、熱電材料の塗料を繊維に塗布し、あるいは当該塗料に繊維の一部を浸漬し、当該塗料を乾燥させることによって実施することが可能である。第一の導電部は、前述した熱電材料部に相当する。
【0062】
第二の導電部を形成する工程も、第一の導電部を形成する工程と同様に実施することが可能である。第二の導電部を形成する工程において、熱電材料の塗料を用いれば、第二の導電部は、前述した熱電材料部に相当する。第二の導電部を形成する工程において、導電性材料の塗料を用いれば、第二の導電部は、前述した導電部に相当する。
【0063】
第一の導電部および第二の導電部は、熱電材料の種類、形成すべき熱電材料部のピッチ、形成すべき導電部の位置とピッチ、などの諸条件に応じて対応する塗料を繊維に塗布あるいは浸漬させることによって形成することができる。
【0064】
上記の第一の導電部を形成する工程および第二の導電部を形成する工程によれば、熱電材料または導電性材料が繊維に担持されている熱電発電素子を作製することができる。この熱電発電素子は、繊維と同様に扱うことが可能であり、断熱部材に適切に縫い通すことで、熱電発電部および導電部が断熱部材において適切に配置された一連の熱電発電素子となり得る。
【0065】
このように第一の導電部および第二の導電部が繊維の長さ方向の一方向に電流を生じるように構成されていると、このような熱電発電素子の繊維で断熱部材を縫うことで、断熱部材の厚さ方向で熱電発電する熱電発電モジュールが得られる。繊維は、絶縁性を有することから、熱電発電素子の伝熱性および導電性に実質的に影響を及ぼさない。よって、断熱性と発電効率とを両立可能な熱電発電モジュールを作製することができ、加えて、熱電発電モジュールの変形による熱電発電素子の破損を抑制する観点から好ましい。
【0066】
なお、熱電発電モジュールにおける第一主面と第二主面との間の熱伝導率は、50Wm-1-1以下であることが、熱電発電モジュールの断熱性を十分に高める観点から好ましい。当該熱伝導率は、前述した導電材料および導電性材料の種類、断熱部材を横断する熱電材料部または導電部の間隔(ピッチ)の調整に加えて、熱電材料部および導電部の空隙率を高めることによって小さくなる傾向にある。
【0067】
本発明の実施形態における熱電発電モジュールの製造方法は、本実施形態の効果が得られる範囲において、前述した以外の他の工程をさらに含んでもよい。
【0068】
[具体的な形態の説明]
以下、本発明の一実施形態に係る熱電発電モジュールを、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る熱電発電モジュールの構成を模式的に示す断面図である。
【0069】
図1に示されるように、熱電発電モジュール1は、断熱部材10と熱電発電素子20とを有する。断熱部材10は、例えば厚さD2のガラスウール製のシート状の部材であり、第一主面11とその反対側にある第二主面12とを含む。断熱部材10は、断熱性に加えて可撓性を有しており、変形可能である。
【0070】
熱電発電素子20は、線状の素子である。熱電発電素子20は、熱電材料部21、導電部22および重複部23を有する。熱電発電素子20は、綿糸などの絶縁性の繊維を含み、熱電材料部21、導電部22および重複部23は、熱電材料と導電性材料とが当該繊維に担持されることによって形成されている。重複部23は、熱電材料部21と導電部22との重なり部分であるため、重複部23を含まない場合に比べて、熱電材料部21と導電部22との導通がより確実になる。
【0071】
たとえば、熱電材料部21は、PEDOT:PSSなどのp型の熱電材料の塗料に繊維を浸漬し、乾燥させることによって形成される。導電部22は、金属ペーストなどの金属スラリーに繊維を浸漬し、あるいは当該繊維に金属スラリーを塗布し、乾燥させることによって形成される。重複部23は、熱電材料部21の端部に重なるように導電部22を作製することによって形成される。
【0072】
熱電発電素子20は、繊維に担持された熱電材料部21、導電部22および重複部23を有することから、柔軟性を有している。熱電発電素子20は、断熱部材10の第一主面11と第二主面12との間を往復するように断熱部材10に縫い付けることによって、断熱部材10に配置される。
【0073】
より詳しくは、熱電材料部21は、断熱部材10をその厚さ方向に横断する位置に配置されている。導電部22は、平面方向おいて熱電材料部21に隣り合う位置であって、断熱部材10をその厚さ方向に横断する位置に配置されている。断熱部材10の第一主面11または第二主面12上には、導電部22および重複部23を含む長さD1の複数の部分24が断続的に配置されており、平面方向において隣り合う熱電材料部21と導電部22とは、部分24によって互いに接続されている。
【0074】
熱電発電モジュール1は、熱源の断熱材として使用され、第一主面11側と第二主面12側との温度差に応じて起電力を発生させる。たとえば、第二主面12で温熱源を囲むように熱電発電モジュール1を温熱源に設置すると、第二主面12側が高温側、第一主面11側が低温側となる。そして、p型の熱電材料部21であればその温度差に応じて点aと点b間で起電力が生じ、点aから点bに向けて電流が流れる。よって、図面の紙面に対して左に向けて電流が流れる。一方で、熱電発電モジュール1の断熱部材10によって、温熱源の熱の外方への放出は遮断される。こうして、温熱源は熱電発電モジュール1によって保温される。
【0075】
〔その他の実施形態〕
本発明の実施形態において、熱電発電モジュールが適用される熱源は、温熱源であってもよいし、冷熱源であってもよい。
【0076】
本発明の実施形態において、熱電発電モジュールにおける第一主面と第二主面の一方が必ずしも開放されていなくてもよい。たとえば、本発明の実施形態において、熱電発電モジュールの第一主面が一方の熱源に接し、第二主面が他方の熱源に接していてもよい。
【0077】
本発明の実施形態において、複数種の熱電材料部を形成する場合では、熱電材料部の起電力の絶対値を実質的に同じとなるように調整してもよい。たとえば、熱電発電素子においてp型の熱電材料部とn型の熱電材料部とを交互に直列に接続する場合では、より高い起電力を有する一方の熱電材料部の起電力を、他方の熱電材料部の起電力と同等になるように弱めてもよい。このような調整により、熱電材料部で生じた電流が一様に流れ、熱電発電の安定性をより高めることが可能である。
【0078】
本発明の実施形態において、断熱部材、熱電材料部および導電部がいずれも実質的に変形しない十分な硬さを有していてもよい。たとえば、断熱部材は、半筒状の有機または無機の多孔質体であり、熱電材料部は、断熱部材の厚さ方向に沿って断熱部材を貫通する棒状の部材であり、導電部は、断熱部材および熱電材料部の端部に配置される導電膜であってもよい。このような形態は、特定の形状(例えば円筒状)の熱源への設置を容易にする観点から有利であり、また、変形による断線を抑制する観点から有利である。
【0079】
本発明の実施形態において、糸状の熱電発電素子と断熱部材とを有する形態の熱電発電モジュールは、糸状の熱電発電素子を断熱部材に縫い付ける方法以外の方法で製造してもよい。このような形態の熱電発電モジュールは、例えば、所望の形状に維持されている糸状の熱電発電素子に対して、当該熱電発電素子の形状に応じて断熱材料を供給して断熱部材を形成する方法によっても製造することが可能である。
【0080】
[まとめ]
以上の説明から明らかなように、本発明の実施形態に係る熱電発電モジュール(1)は、第一主面(11)および第二主面(12)を有する断熱部材(10)と、断熱部材における第一主面および第二主面の間に配置されて第一主面側と第二主面側との温度差に応じた起電力を生じる熱電材料部(21)を含むとともに、所望の向きの電流を生じるように構成されている熱電発電素子(20)と、を有する。そして、断熱部材の熱伝導率は0.2Wm-1-1以下である。当該熱電発電モジュールでは、第一主面と第二主面との間の断熱性が維持され、かつ熱電発電素子による発電が可能になる。よって、断熱性と発電効率とを両立させることができる。
【0081】
本発明の実施形態において、第一主面と第二主面との間の熱伝導率は、50Wm-1-1以下であってもよい。この構成は、熱電発電モジュールの断熱性を十分に高める観点からより一層効果的である。
【0082】
本発明の実施形態において、断熱部材における第一主面から第二主面までの距離は350mm以下であってもよい。この構成は、熱電発電モジュールの熱源への設置の自由度を十分に高める観点からより一層効果的である。
【0083】
本発明の実施形態において、断熱部材の形状は、断熱部材を平面視したときに見える面対向する位置に広がる一対の面を第一主面とし断熱部材の厚み方向における第一主面の反対側にある面を第二主面とする平板状、または、内周面および外周面の一方を第一主面とし他方を第二主面とする円筒状であってもよい。この構成は、熱電発電モジュールの熱源への設置の自由度および容易さを十分に高める観点からより一層効果的である。
【0084】
本発明の実施形態において、熱電材料部は、第一主面および第二主面間において断熱部材を貫通していてもよい。この構成は、熱電発電モジュールの発電効率を高める観点からより一層効果的である。
【0085】
本発明の実施形態において、熱電材料部が温度勾配に応じた起電力を発生する熱電材料を含有し、当該熱電材料のゼーベック係数の絶対値が10μVK-1以上であってもよい。この構成は、熱電発電モジュールの発電効率を高める観点からより一層効果的である。
【0086】
本発明の実施形態において、熱電材料の導電率は0.5Scm-1以上であってもよい。この構成は、熱電発電モジュールの発電効率を高める観点からより一層効果的である。
【0087】
本発明の実施形態において、熱電材料が導電性高分子もしくは炭素材料であってもよい。この構成は、熱電材料部からの熱電材料の脱落を抑制する観点からより一層効果的である。
【0088】
本発明の実施形態において、熱電発電モジュールは熱電材料部に電気的に接続されている導電部をさらに有していてもよい。この構成は、熱電発電素子の電気的構成の多様性を高める観点からより一層効果的である。
【0089】
本発明の実施形態において、導電部が導電性材料を含有し、導電性材料の熱伝導率が50Wm-1-1以下であってもよい。この構成は、熱電発電モジュールにおける導電部からの放熱を十分に抑制する観点からより一層効果的である。
【0090】
本発明の実施形態において、導電性材料のゼーベック係数は、熱電材料のゼーベック係数の符号が正であれば10μVK-1以下であり、熱電材料のゼーベック係数の符号が負であれば-10μVK-1以上であってもよい。この構成は、熱電発電素子における電流のより良好な流れを実現して熱電発電モジュールの発電効率を高める観点からより一層効果的である。
【0091】
本発明の実施形態において、導電性材料は、金属、導電性高分子および炭素材料からなる群から選ばれる一以上の材料であってもよい。この構成は、柔軟な構成の熱電発電モジュールに適用するのに好適であり、熱電材料部からの熱電材料の脱落を抑制する観点からより一層効果的である。
【0092】
本発明の実施形態において、熱電発電素子が熱電材料部と導電部とが交互に連結する直列回路を含み、熱電材料部が独立して、温度差に応じた電気を発生するp型の熱電材料およびn型の熱電材料からなる群から選ばれる熱電材料を含み、熱電材料部および導電部が断熱部材の面方向において交互に、第一主面および第二主面の間に配置されていてもよい。この構成は、十分に高い電圧での発電を簡素な構成で実現する観点からより一層効果的である。
【0093】
本発明の実施形態において、熱電発電素子が柔軟な繊維状であってもよい。この構成は、熱電発電モジュールの変形による熱電発電素子の破損を抑制する観点からより一層効果的である。
【0094】
本発明の実施形態において、熱電発電素子が絶縁性の繊維を含み、温度勾配に応じて起電力を発生する発電材料が繊維に担持されて熱電材料部が形成されていてもよい。この構成は、熱電発電モジュールの変形による熱電発電素子の破損を抑制する観点からより一層効果的である。
【0095】
本発明の実施形態において、熱電発電素子が熱電材料部に電気的に接続されている導電部をさらに含み、導電性材料が繊維に担持されて導電部が形成されていてもよい。この構成は、熱電発電モジュールの変形による熱電発電素子の破損を抑制する観点からより一層効果的である。
【0096】
本発明の実施形態における熱電発電モジュールを製造する方法は、絶縁性の繊維に第一の熱電材料を断続的に塗布または含侵させて第一の導電部を形成する工程と、繊維に第二の熱電材料または導電性材料を断続的に塗布または含侵させて、第一の熱電材料部を連結する第二の導電部を形成する工程と、0.2Wm-1-1以下の熱伝導率を有する断熱部材を繊維で縫って、第一の導電部と第二の導電部とが交互に断熱部材の第一主面および第二主面間を横断するように第一の導電部および第二の導電部を断熱部材に配置する工程と、含み、第一の導電部および第二の導電部は、繊維の長さ方向の一方向に電流を生じるように構成される。この製造方法によれば、繊維で断熱部材を縫うことで、厚さ方向で熱電発電するモジュールが製造される。よって、断熱性と発電効率とが両立する熱電発電モジュールを製造することができる。加えて、熱電発電モジュールの変形による熱電発電素子の破損を抑制する観点から効果的である。
【0097】
本発明の実施形態において、熱電発電モジュールにおける第一主面と第二主面との間の熱伝導率は、50Wm-1-1以下であってよい。この構成は、断熱性と発電効率とを両立させる観点からより一層効果的である。
【0098】
なお、本発明の実施形態は、熱源に対して断熱材として本実施形態の熱電発電モジュールを配置することで、十分な断熱が実現されるとともに、断熱部材を隔てた熱源とその外部との温度差に応じた電気エネルギーが発生する。これにより、エネルギー効率の改善率の増加が期待され、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。
【0099】
本発明は、上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0100】
〔実施例1〕
[繊維状熱電発電素子の作製]
柔軟であり、かつ絶縁性を有する直径1.4mmの綿糸を用意した。
【0101】
次いで、5cmの間隔を置いてPEDOT:PSSの水分散液「Orgacon ICP-1050」(「Orgacon」はアグファ・ゲバルト社の登録商標)を綿糸に含浸し、次いで170℃で10分間加熱して綿糸から水を蒸発させた。こうして、綿糸に担持されているp型の熱電材料部を形成した。熱電材料部のゼーベック係数および導電率を測定したところ、熱電材料部のゼーベック係数は10μVK-1以上であり、熱電材料部の導電率は0.5Scm-1以上であった。
【0102】
次いで、綿糸に長さ7cmの銀線(直径0.5mm、99.99%、ニラコ製、熱伝導率428Wm-1-1)を固定して隣り合う熱電材料部を電気的に接続して導電部を形成した。なお、ここで言う銀線の熱伝導率は、純粋な銀の物性値である。銀線の一方の端の1cmは、隣り合う熱電発電部の一方に重なっており、銀線の他方の端の1cmは、隣り合う熱電発電部の他方に重なっている。導電部のゼーベック係数を熱電材料部と同様に測定した結果、導電部のゼーベック係数は、後述の測定方法において室温にて測定したところ、1.3μVK-1であった。
【0103】
こうして、熱電材料部、導電部、両者の重なり部分、のそれぞれの長さが3cm、5cm、1cmとなるようにPEDOT:PSSおよび銀線が綿糸に担持されてなる繊維状の熱電発電素子1を作製した。熱電発電素子1は、熱電材料部と導電部とが交互に連結する熱電材料部の直列回路を構成している。
【0104】
なお、本実施例における熱電材料部または導電部のゼーベック係数、および熱電材料部の導電率の測定方法を以下に示す。
【0105】
<熱電材料部または導電部のゼーベック係数の測定方法>
熱電発電素子における該当部位(熱電材料部または導電部)の一端部を加熱することにより、当該部位の両端に温度差をかけ、当該部位に発生する電圧を測定することにより当該部位のゼーベック係数を求めた。
【0106】
<熱電材料部の導電率の測定方法>
ガラス基板上に熱電材料部の膜を形成し、この膜から熱電材料部の材料の導電率を測定し、熱電材料部の導電率とした。四探針測定から求めた当該膜のシート抵抗を測定し、また当該膜の膜厚を測定し、これらの測定結果より上記の熱電材料部の導電率を求めた。
【0107】
[熱電発電モジュールの作製]
厚さ3cmのグラスウールからなる平板状の断熱部材(熱伝導率0.2Wm-1-1以下)を用意した。
【0108】
次いで、熱電材料部および導電部が断熱部材をその厚さ方向に沿って交互に横断するように熱電発電素子1を断熱部材に縫い付けて、熱電発電モジュール1を作製した。
【0109】
熱電発電モジュール1において、断熱部材の第一主面および第二主面のそれぞれには、前述した重なり部分とそれに連なる導電部の端の1cmの部分が露出し、その他の部分、すなわち長さ3cmの熱電材料部と、各導電部の中央の長さ3cmの部分とが、交互に断熱部材をその厚さ方向に沿って横断している。このように、熱電発電モジュール1において、熱電材料部および導電部は、断熱部材の面方向において交互に、断熱部材の第一主面および第二主面の間に配置されている。熱電発電モジュール1における第一主面と第二主面との間の熱伝導率は、第一主面と第二主面の間に存在し貫通する材料の熱伝導率のうち、最大の値となる。そのため、第一主面と第二主面との間の熱伝導率は、導電材料の熱伝導率の値となる。よって、第一主面と第二主面との間の熱伝導率は、前述した銀の物性値に基づき、428Wm-1-1である。
【0110】
〔実施例2〕
銀線に代えて銀ペーストで導電部を形成する以外は実施例1と同様にして熱電発電素子2を作製した。すなわち、銀ペースト(「ドータイトD-500」(藤倉化成株式会社製、「ドータイト」は同社の登録商標)、乾燥時の熱伝導率は30Wm-1-1)を綿糸における前述の銀糸の位置に塗布し、100℃30分間の加熱乾燥を施して銀ペーストを乾燥させて導電部を形成した。なお、ここで言う銀ペーストの熱伝導率は文献値(カタログ値)である。当該導電部のゼーベック係数は、前述の測定方法において、室温にて測定したところ、3.7μVK-1であった。
【0111】
熱電発電素子1に代えて熱電発電素子2を用いる以外は実施例1と同様にして熱電発電モジュール2を作製した。熱電発電モジュール2における第一主面と第二主面との間の熱伝導率は、上記の銀ペーストの文献値に基づき、30Wm-1-1である。
【0112】
〔評価〕
[1]熱電発電モジュールの発電特性
熱電発電モジュール1、2をホットプレート上に設置してその裏面(第二主面)を加熱したときの発電特性を測定した。
【0113】
ホットプレートの設定温度を60℃または100℃とした。外気温は25℃であった。第一主面側にある熱電発電素子の両端の導電部に直流電圧、電流源を結線し、熱電発電素子の電流-電圧特性および電力-電圧特性を測定した。
【0114】
熱電発電モジュール1、2における熱源(60℃)-外気(25℃)間での電流-電圧特性を図2に示す。熱電発電モジュール1、2における熱源(60℃)-外気(25℃)間での電力-電圧特性を図3に示す。熱電発電モジュール1、2における熱源(100℃)-外気(25℃)間での電流-電圧特性を図4に示す。熱電発電モジュール1、2における熱源(100℃)-外気(25℃)間での電力-電圧特性を図5に示す。
【0115】
図2および図4より、熱電発電モジュール1および熱電発電モジュール2は、いずれも、電圧が高いほど電流が多いことが確認される。
【0116】
また、図2および図4より、熱電発電モジュール1に比べて熱電発電モジュール2の方が、電流値ゼロにおける電圧が大きく、大きな熱起電力が得られていることがわかる。これは、熱電発電モジュール2の電極材料部の熱伝導率が熱電発電モジュール1のそれに比べて低く、そのため熱電発電モジュール2の第一、第二主面間でより大きな温度差が得られているため、と考えられる。
【0117】
さらに、図2図4における傾きから、電圧値ゼロにおける電流値の絶対値は、熱電発電モジュール1に比べて熱電発電モジュール2の方が大きい。これは、熱電発電モジュール1に比べて熱電発電モジュール2の方が、熱電材料部と導電部との接触抵抗がより小さく、熱電発電モジュールの直列抵抗もより小さい値となっているため、と考えられる。
【0118】
また、図3図5より、熱電発電モジュール1および熱電発電モジュール2は、いずれも、電力値のピークを有することが確認される。ホットプレートの設定温度が60℃および100℃のいずれにおいても、電力値は、熱電発電モジュール1に比べて熱電発電モジュール2の方が大きい。これは、熱電発電モジュール2の導電部の熱伝導率が、熱電発電モジュール1のそれに比べて小さいため、と考えられる。
【0119】
[2]熱電発電モジュールの熱起電力における導電部の熱伝導率への依存性
図1に示されるような構造の熱電変換モジュールを裏面から加熱した場合の、熱電材料部の両端に生じる温度差(図1の点a、点bの温度の差)を有限要素法による計算で求めた。計算の条件としては、加熱面(第二主面)の温度60℃、外気温10℃、熱電変換モジュールから外気への熱伝達率23Wm-2-1、とした。また、熱電材料部の熱伝導率および密度を、PEDOT:PSSの値を用いてそれぞれ0.17Wm-1-1、1.01gcm-3、とした。さらに、導電部の密度を銀の値を用いて10.49gcm-3とし、導電部の熱伝導率を2~428Wm-1-1とした。熱電変換モジュールの熱伝導率による熱電材料部の両端の温度差の計算結果を図6に示す。
【0120】
図6に示されるように、図1に示されるような構造の熱電変換モジュールの熱電材料部における温度差は、導電部の熱伝導率が高いほど小さくなり、導電部の熱伝導率が低いほど大きくなることが分かる。
【0121】
さらに、図1に示されるような構造の熱電変換モジュールについて、熱電材料部のゼーベック係数を15μVK-1とし、有限要素法により求めた温度差(図6)の値を用いて、温度差とゼーベック係数との積から導電部の熱伝導率による熱電発電モジュールの起電力を算出した。当該起電力の計算結果を図7に示す。
【0122】
熱起電力が温度差に比例することから、熱起電力も当該温度差と同様に、導電部の熱伝導率が低いほど大きくなることが分かる。
【0123】
[3]熱電発電モジュールの断熱性の評価
熱電発電モジュール1、2のそれぞれの裏面をホットプレートで加熱し、熱電発電モジュール1、2のそれぞれの表面の温度をサーモメーターにより測定した。表面の温度の測定箇所は、熱電発電素子1、2における当該表面に露出している部分である。比較として、熱電発電モジュール1、2における断熱部材の表面の温度も測定した。熱電発電モジュール1、2を第二主面側から加熱したときの第一主面側の温度を図8に示す。
【0124】
図8より、熱電発電モジュール1および熱電発電モジュール2の第一主面側の温度は、いずれも、第二主面側の温度よりも十分に低いことが確認される。また、図8より、ホットプレートの温度を上昇させたときの第一主面側の熱電発電素子の部分の温度は、熱電発電モジュール1の方が熱電発電モジュール2に比べてより大きく上昇することがわかる。熱電発電モジュール2における第一主面側の熱電発電素子の部分の温度は、断熱部材の第一主面の温度とほぼ同等であった。したがって、熱電発電モジュール2は、熱電発電モジュール1に比べて高い断熱性を有することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明により、発電のみならず断熱性の高い熱電発電モジュールを提供することができる。設置個所として、例えば冷温水管のように温度の維持が求められる箇所での利用が期待できる。
【符号の説明】
【0126】
1 熱電発電モジュール
10 断熱部材
11 第一主面
12 第二主面
20 熱電発電素子
21 熱電材料部
22 導電部
23 重複部
24 部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8