(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038839
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法及びデータ解析システム
(51)【国際特許分類】
H01S 5/12 20210101AFI20230310BHJP
【FI】
H01S5/12
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145761
(22)【出願日】2021-09-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】591230295
【氏名又は名称】NTTエレクトロニクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小杉 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】佐原 明夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英二
(72)【発明者】
【氏名】布谷 伸浩
(72)【発明者】
【氏名】西 英隆
(72)【発明者】
【氏名】相原 卓磨
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AB13
5F173AB50
5F173AG05
5F173AQ02
5F173AR03
5F173AR92
5F173ZM01
5F173ZP11
5F173ZP13
5F173ZR10
(57)【要約】
【課題】DFBレーザの発振波長および光出力電力のウエハ内の均一性を向上させ、チップ毎の特性のばらつきを抑える。
【解決手段】本発明の半導体装置の製造方法は、レーザ活性層を含む半導体層が形成された基板を用意し、前記半導体層、前記半導体層上に製膜した誘電体膜、又はその両方について膜厚または屈折率を含む電気光学構造のウエハ内分布を測定手段により推定し、前記推定結果と補正手段を用いて分布帰還型レーザの回折格子の設計変数を補正し、パラメータ補正を反映した回折格子を形成し、チップ毎に分断することを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ活性層を含む半導体層が形成された基板を用意し、
前記半導体層、前記半導体層上に製膜した誘電体膜、又はその両方について膜厚または屈折率を含む電気光学構造のウエハ内分布を測定手段により推定し、
前記推定結果と補正手段を用いて分布帰還型レーザの回折格子の設計変数を補正し、パラメータ補正を反映した回折格子を形成し、チップ毎に分断することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
シリコンウエハ上に酸化膜が形成された基板を前記支持基板として用い、かつ前記測定手段として分光エリプソメトリーを用い、かつ回折格子の設計変数の補正手段として実験結果に基づいて作成された前記半導体層の電気光学構造と前記回折格子の設計変数との相関図を用いることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
回折格子の設計変数として少なくとも分布帰還型レーザの回折格子の間隔および回折格子の幅を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法において、前記膜厚または前記屈折率を含む前記電気光学構造のウエハ内分布の測定と発振波長測定とに加えて、画像による外形検査および光Sパラメータ測定と電流―電圧特性測定のいずれか一つ以上の測定または検査によるデバイスの電気光学特性の面内分布データを組み合わせて用いることで、前記回折格子の設計変数の補正結果について良否を確認し、前記良否の確認を複数の前記デバイスに対し行うことで各測定結果の相関データを蓄積することを特徴とするデータ解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法に関し、特に、分布帰還型半導体レーザの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
急激な情報量増大が起こっているIOT(Internet Of Things)社会において、ファイバあたりの通信容量の大きな波長多重通信(WDM)が広く用いられている。このような波長分割多重(WDM)システムにおいて、活性層周辺に周期的回折格子構造を設けた分布帰還型半導体レーザ(Distributed Feedback:DFBレーザ)はその高い単一波長選択性を特徴とし、おもに信号光源として用いられる。この中で従来短距離通信に用いられてきた面発光レーザは、構造上多モード発振しやすくWDMには向かなことから、より微細かつ波長多重回路や受光素子との集積化が可能な単一モード薄膜型DFBレーザが求められており研究開発が進められている。
【0003】
薄膜型DFBレーザ製造においては異種材料間の薄膜形成工程が重要な技術であり、形成される各種の薄膜構造について高い再現性が求められる。クラッド層としては屈折率の低い熱酸化SiO2やスピンコートで成膜されたベンゾシクロブテン(BCB)膜を用いることで光と注入キャリアの相互作用を高め、より小型化と低消費電力化が行われている。一方、コア領域となる化合物半導体薄膜層は、有機金属気相成長法等で化合物半導体基板表面に一旦積層し、その後ウエハ接合技術等を用いてクラッド層と接続される。ウエハ接合技術と従来の薄膜成長技術を順応に組み合わせることで薄膜材料の選択自由度を改善している。異種材料間の接合においては膜厚や接合条件によっては応力による結晶欠陥が容易に発生するため薄膜積層構造の良好な再現性が求められる。また、屈折率差の大きな材料で半導体薄膜を挟み込む構造のため、従来の半導体のみで作られたレーザ等に比べて、わずかな層厚変化が等価屈折率へ及ぼす影響が大きくなる。
【0004】
DFBレーザの発振波長は活性層温度に依存性を持つため、活性層周辺の熱抵抗は発振波長の制御に影響を持つ。ここでクラッド層に用いられるSiO2やBCB膜は半導体(InP: 50 W/(m・K)、Si:150 W/(m・K))に比べて低い熱伝導率を持ち、SiO2で1.38 W/(m・K)、BCBで0.2 W/(m・K)である。つまり、コア領域から逃れる熱は上下のクラッド層経由ではなく、まず活性層と同じ面内にある半導体層を経由することになる。このことから活性層温度の熱設計にもおいても薄膜構造の膜厚、膜質に高い再現性が求められることが分かる。
【0005】
DFBレーザ回折格子の設計において用いられる設計変数としてはクラッド層の材質、クラッド層の膜厚、回折格子の全体の長さ、回折格子の間隔、回折格子の幅、回折格子の凹部深さ、回折格子の反復回数などが上げられる。従来技術においては例えば、回折格子を作る成膜時に膜質を改善できる結晶成長方法(特許文献1, 半導体素子の製造方法)、2種類の異なる周期構造を有する回折格子を用いる改良方法(特許文献2, 半導体レーザ素子、及び光半導体装置)、クラッド層のバンドギャップを最適化し結合係数κを安定化する方法(特許文献3, 分布帰還型半導体レーザの製造方法)、主回折格子と並行に副回折格子を設けてモード安定性を改良する方法 (特許文献4;半導体レーザ装置) などがある。これらの従来の回折格子の製造工程においては、設計変数の実デバイスへの反映精度を高め、それらの結果としてDFBレーザの発振波長や出力を安定化する試みが主である。
【0006】
一方で、レーザを用いた光インターコネクション技術において、より高集積化可能で低消費電力なレーザが求められてきた。特にボード間あるいはチップ間光インターコネクション技術においてはSiフォトニクス技術との融合やSi-LSIチップI/O数に比類するレーザアレイの集積度が必要となる(非特許文献3)。前述の状況からDFBレーザの集積度向上には、特性均一性、特に製造時のウエハ面内均一性を高める必要があり、これまでにないDFBレーザの発振波長の合わせ込み精度が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願平9-265941号公報
【特許文献2】特開2014-150145号公報
【特許文献3】特開2008-227185号公報
【特許文献4】特開2015-179783号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】T. Okamoto, N. Nunoya, Y. Onodera, S. Tamura and S.Arai, "Continuous wave operation of optically pumped membrane DFB laser", Ellectron. Lett., Nov. 2001,vol. 37, no. 24, pp. 1455-1456.
【非特許文献2】T. Fujii, K. Takeda, N-P. Diamantopoulos, E. Kanno, K. Hasebe, H. Nishi, R. Nakao,T. Kakitsuka, and S. Matsuo:"Heterogeneously Integrated Membrane Lasers on Si Substrate for Low Operating Energy Optical Links," IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics, 2016, Vol. 24. No. 1, 1500408.
【非特許文献3】光回路実装技術ロードマップ2016年度版 - 光インターコネクションの第二普及世代に向けた課題と予測 -,第31回エレクトロニクス実装学会春季講演大会, JIEP光回路実装技術委員会, 2017.2, p.340-343
【非特許文献4】STIMULATED EMISSION IN A PERIODIC STRUCTURE, H. Kogelnik and C. V. Shank, Appl. Phys. Letters,1971, 18, 152
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、DFBレーザの発振波長および光出力電力のウエハ内の均一性を高め、チップ毎の特性のばらつきを抑えることを可能とする分布帰還型半導体レーザの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半導体装置の製造方法は、レーザ活性層を含む半導体層が形成された基板を用意し、前記半導体層、前記半導体層上に製膜した誘電体膜、又はその両方について膜厚または屈折率を含む電気光学構造のウエハ内分布を測定手段により推定し、前記推定結果と補正手段を用いて分布帰還型レーザの回折格子の設計変数を補正し、パラメータ補正を反映した回折格子を形成し、チップ毎に分断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のDFBレーザの製造方法により、DFBレーザの発振波長および光出力電力のウエハ内の均一性を向上させ、チップ毎の特性のばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる分布帰還型レーザの製造工程を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態にかかる分布帰還型レーザの回折格子の設計変数補正用の相関図を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態にかかる分布帰還型レーザの製造工程フローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面と共に本発明に係るDFBレーザの製造方法の実施の形態について説明する。
【0014】
図1(a)~(e)は、本発明の一実施形態によるSi基板上のDFBレーザの製造工程の一例を示す図である。また、
図3は、上記製造工程を示すフローチャートである。
【0015】
図1(a)は、製造工程において、支持基板を用意する工程を示している。本実施例では、支持基板として、シリコン(Si)基板1上にシリコン(Si)酸化膜2を形成したものを用いる。シリコン酸化膜2は、熱酸化やウエット酸化により形成されたもの、気相成長法で形成されたもの、SOI技術により形成されたものなどいずれも使用できる。ここで、シリコン酸化膜2の厚さは0.01 μm以上が好ましく、0.5 μm以上がより好ましい。シリコン酸化膜2以外の支持基板としてSiC、サファイア、GaP、GaAs、InP、GaN、ベンゾシクロブテン、ポリメチルメタクリレートなども使用できる。
図1(b)は、ウエハボンディング技術を用いて支持基板上にレーザ活性層を含む半導体層(以下、LD層3)を形成する工程を示す(
図3のS1)。LD層3の形成工程では、先ず、下地となるInP基板を準備し、その上に有機金属気相成長を用いてLD層3に含まれるInP層および量子井戸構造や分離閉じ込めヘテロ構造(SCH)層などを順次成長させる。次にInP基板のLD層3と支持基板表面のシリコン酸化膜をウエハボンディング技術によって接合させ、不要なInP基板はドライエッチング、ウエットエッチング、ウエハ研磨技術、またはそれらの技術の組み合わせを用いて除去する。この時、LD層3の仕上がり膜厚の安定性を高めるため、LD層3とInP基板の間に薄いエッチストップ層をあらかじめ設けていることが好ましい。
【0016】
次の
図1(c)は、形成されたLD層3の電気光学構造を測定する工程を示す(
図3のS2)。具体的には、オンウエハマッピング4を用い、LD層3上の複数のショット5それぞれのLD層3を構成する各層の厚みと界面層の存在を測定する。ここで、「ショット」とは、製造工程の都合で生じる領域であり主にステッパを用いるマスク露光に由来するものである。本実施形態の1つのショットには、少なくとも1つ以上のウエハチップ(最終製品)が対応する。ショットは、以下で示すエリプソメーターの空間分解能(スポットサイズ数mm程度)や、測定時間などを考慮して実現可能な範囲で定めたものであり、最終的には、この領域は、後工程で、チップ毎に分割されて完成品(最終製品)となる。
【0017】
以上のウエハマッピング4を行うことでウエハ面内におけるLD層3のショットごとの膜厚をインラインで測定できる。同様に、ウエハマッピング4をインラインで行うことにより、LD層3のショットごとの各層屈折率と平均屈折率を測定することも可能である。すなわち、本工程S1において、分光エリプソメーターを用いたLD層3の評価から、DFBレーザの発振波長等の合せ込みに必要なショット5ごとの情報を得ることができる。なお、他の測定方法として、分光エリプソメトリーに加えて例えばフォトルミネッセンス測定を補助的に用いることで、LD層3内の量子井戸構造に起因する発光解析を行い量子井戸構造の、ウエハ面内のショット5ごとの分布について情報を得ることができる。また、X線回折法をLD層3の評価へ加えると、LD層3と下地基板の結晶性の解析が行えることから、これらの補助的な測定もLD層3の電気光学構造を推定するために有効である。上述の測定の後、LD層3のメサ領域形成(レーザー発振を行う領域)、導波路層とコンタクト層の再成長を行う。
【0018】
以上のようにウエハのショットごとに電気光学構造の測定を行うことにより、電気光学構造のウエハ内分布を推定することが可能となる。
【0019】
次の
図1(d)は、回折格子の形成工程を示す(
図3のS3、S4、S5の工程を含む)。先ず、電子ビーム露光によって形成された露光領域6を現像し、この領域が現像されたレジスト膜8をエッチングマスクとして回折格子10の凹部のエッチングを行う。電子ビーム露光で形成された露光領域6は、電子ビーム露光の描画パターンに相当する。
【0020】
次に、
図1(c)に示す工程で形成されたコンタクト層へ不純物ドーピングと活性化を行う。不純物ドーピングによりコンタクト層とLD層3とが接合され、LD層3へバイアス電流を印可することが可能になる。さらに、コンタクト層上にメタルを含む電極9を形成する。本実施形態では、さらに信頼性改善にためパッシベーション層(不図示)の形成をする(
図3のS5)。
【0021】
図1(d)に示す上記工程において、回折格子10のパターンは電子ビーム露光によって形成される。この時、上述した推定工程(
図3のS2)で、ショット5ごとに取得した分光エリプソメトリーの結果から判明したLD層3の膜厚、各層の屈折率を用いて回折格子10の設計変数の補正値をショット5ごとに求める(
図3のS3)。
【0022】
薄膜化したDFBレーザの発振波長(λ)、活性層の等価屈折率(neff)、回折格子の格子間隔(Λ)の間には、以下の関係式(1)が成り立つ。
【0023】
【0024】
ここで、mは、回折格子のブラッグ反射の次数を与える整数である(非特許文献4)。式(1)から理解されるように、分光エリプソメトリーの結果から得られた等価屈折率neffが、目標値とする等価屈折率より低い場合には格子間隔Λを大きくすることで発振波長λを一定に保つことができる。すなわち、本発明の実施形態は、ショットごとに得られる等価屈折率neffの値に応じて格子間隔Λの値を定めて発振波長を一定にする、回折格子の設計パラメータの補正を行う。
【0025】
これにより、ショット間の発振波長を等しくすることができ、レーザの発振波長および光出力電力のウエハ内の均一性を高めることができる。なお、上述のように、ショット間で発振波長をほぼ等しくできることから、最終的に得られるチップ間でも発振波長を均一にすることができる。また、上述の例では、ショットごとに、ウエハ内分布を推定し、また、回折格子の設計変数(補正値)を求めるものとしたが、最終的に得られるチップの領域を予め得て、このチップ領域ごとに、ウエハ内分布を推定し、また、回折格子の補正値を求めるようにしてもよいことはもちろんである。
【0026】
上述した本実施形態によれば、回折格子10のパターンの変更を電子ビーム露光用データの補正のみで完了することができる。このため、回折格子10の設計変数を調整するために追加工程が発生せず、デバイス特性のウエハ面内分布を均一化できる。
【0027】
本実施形態では、上述した回折格子10の設計変数の補正精度をさらに高めるために、実験結果に基づいて作成されたLD層3の電気光学構造と回折格子10の設計変数との相関図を用いる。
【0028】
分布帰還型レーザの発振波長は上記の活性層の等価屈折率だけではなく、動作状態におけるLD層3の温度に対して依存性を持つ。そのため同じ動作バイアス電流又は電圧を与えた場合においても、LD層3で発生するジュール熱に依存して発振波長は変動する。さらに、ジュール熱による発振波長の変動はLD層3の膜厚に依存する。その要因は、LD層3の熱抵抗がLD層3の膜厚に依存するためであり、同じ熱量が発生している場合においてもLD層膜厚が違えば発振波長も異なることになる。また、回折格子10の間隔および回折格子の幅に関して、異なるショット間で、それらの長さは異なる場合がある。ここで、回折格子の間隔とは、ショット5内の隣接する回折格子の間隔、回折格子の幅とは、ショット内の回折格子の幅である。これらの温度依存性やショット間のばらつきによる精度低下を抑制するために、まずLD層3の膜厚および回折格子の周期が異なる分布帰還型レーザを作成し、発振波長と回折格子10の設計変数の相関関係をあらかじめ調べ、これに基づいて補正を行うことにより、より精度の高い補正が可能となる。
【0029】
図2は、上述の補正のために作成された相関図の一例を示す図である。この相関関係を調べたときの環境温度は25℃、LD駆動電流は10mAである。
図2は、分断処理後の、LD層3の膜厚の異なる4つのウエハからデバイス形成後に取得したデータa~dに対応する。横軸は、規格化回折格子間隔であり、縦軸は、規格化発振波長λである。規格化とは目標膜厚に対する変化率である。最も上のデータaが目標膜厚の0.8倍のLD層3の膜厚に対応し、最も下側のデータdが目標膜厚と一致した場合のデータに対応し、データb、cはそれらの間の所定の膜厚に対応している。通常、膜厚が決まれば(実効)屈折率もほぼ一意に決まるため、膜厚または屈折率のいずれかの値に注目すればよい。極端な例として、LD層3のエピタキシャル成長が完全に進んでいないような場合には、膜厚と屈折率の関係も事前に取得したデータと相違するので、この場合ウエハの良否判定を行う必要がある。
【0030】
以上の
図2から活性層の膜厚ごとの、発振波長と回折格子10の間隔との相関関係が分かり、LD層3の膜厚またはLD層3の屈折率の推定結果を用いて回折格子10の周期を補正(回折格子の周期の調整7)することができる。これにより、ショットごとに、発振波長λを精度よく目標値に合せ込むことが可能になる(
図3のS4)。
【0031】
なお、
図2に示す相関関係の取得は、まず解析格子の設計変数を事前に幅を持たせて付与し、本発明による製造工程を行った後に発振波長を測定する。その測定結果と分光エリプソメトリーによる膜厚と誘電率、回折格子10の設計変数データを比較することでそれらの相関関係を得ることができる。また相関関係の作成は高精度で行う必要があるため、膜厚測定により直接的な断面TEM測定等を組み合わせることで精度の向上が図れる。また、非特許文献2の先行技術に記載のように、本発明による回折格子10の設計変数修正は、DFBレーザで用いる分布ブラッグ反射鏡の回折格子にも適応可能であることは容易に推察される。
【0032】
以上説明した工程を終了すると、次に、チップ毎へ分断工程を行う(
図3の(S6)チップ毎へ分断)。この工程は、例えば、ダイシングソーを用いて、ウエハのチップごとの分断することによって行うことができる。
【0033】
本実施の形態では、回折格子のパターンは電子ビーム露光により形成されたが、機械的に金属膜にダイヤモンドカッターなどで溝を刻線する方法やフォトリソグラフィの技術を用いて形成されてもよい。
【0034】
本実施形態のDFBレーザの製造方法により、チップ間の特性のばらつきを抑えることができる。本実施形態のDFBレーザの製造方法は、量産に適している。
【0035】
なお、本実施形態は、
図3に示す(S1)~(S6)の工程により、支持基板に接合されたLD層に回折格子を形成する方法について述べたが、LD層上に更にSiO
2やSiONなどの誘電体層を製膜し、その誘電体層に回折格子を形成することも可能である。この場合は、LD層に加えて、誘電体層の情報も分光エリプソメトリーによって取得することで第一の実施形態と同様にデバイス特性の均一化が可能になる。
【0036】
さらに、これまでに述べた方法を広範囲に適用すると、分光エリプソメトリーの他にも、膜厚または屈折率を含む前記電気光学構造のウエハ内分布の測定と発振波長測定とに加えて、高精細画像によるデバイスの外形検査および光Sパラメータ測定と電流―電圧特性測定のいずれか一つ以上の測定または検査によるデバイス電気光学特性の面内分布データを合わせて取得し、回折格子の設計変数の補正結果について良否を確認し、良否の確認を複数のデバイスに対し行うことで各測定結果の相関データをデータ解析システム(不図示)に蓄積する。良否の確認は、多くのデバイスに対し行うことが好ましい。それらの相関データをサーバー等のデータ解析システムに蓄積し、一元管理および比較解析することで、外形上の特徴、発振波長、高周波応答などを含めたデバイス特性の予測がより容易となる。その結果として量産製造時における歩留まり改善および良否判定の迅速化、高精度化が可能となり、より高集積度の分布帰還型レーザアレイの製造なども可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、光通信技術に関する技術分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 Si(シリコン)基板
2 シリコン酸化膜
3 LD層
4 マッピング
5 ショット
6 露光領域
7 回折格子の周期の調整
8 レジスト膜
9 電極
10 回折格子
【手続補正書】
【提出日】2022-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ活性層を含む半導体層が形成された基板を用意し、
前記半導体層、前記半導体層上に製膜した誘電体膜、又はその両方について膜厚または屈折率を含む電気光学構造のウエハ内分布を測定手段により推定し、
前記推定結果と補正手段を用いて分布帰還型レーザの回折格子の設計変数を補正し、パラメータ補正を反映した回折格子を形成し、チップ毎に分断することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
シリコンウエハ上に酸化膜が形成された基板を支持基板として用い、かつ前記測定手段として分光エリプソメトリーを用い、かつ回折格子の設計変数の前記補正手段として実験結果に基づいて作成された前記半導体層の電気光学構造と前記回折格子の設計変数との相関図を用いることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
回折格子の設計変数として少なくとも分布帰還型レーザの回折格子の間隔および回折格子の幅を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法において、前記膜厚または前記屈折率を含む前記電気光学構造のウエハ内分布の測定と発振波長測定とに加えて、画像による外形検査および光Sパラメータ測定と電流―電圧特性測定のいずれか一つ以上の測定または検査によるデバイスの電気光学特性の面内分布データを組み合わせて用いることで、前記回折格子の設計変数の補正結果について良否を確認し、前記良否の確認を複数の前記デバイスに対し行うことで各測定結果の相関データを蓄積することを特徴とするデータ解析システム。