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特開2023-39039セラミック組成物及びセラミック組成物の製造方法
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  • 特開-セラミック組成物及びセラミック組成物の製造方法 図1
  • 特開-セラミック組成物及びセラミック組成物の製造方法 図2
  • 特開-セラミック組成物及びセラミック組成物の製造方法 図3
  • 特開-セラミック組成物及びセラミック組成物の製造方法 図4
  • 特開-セラミック組成物及びセラミック組成物の製造方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039039
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】セラミック組成物及びセラミック組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/117 20060101AFI20230313BHJP
【FI】
C04B35/117
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145985
(22)【出願日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 道夫
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄一郎
(57)【要約】
【課題】発光機能を有する安価な材料を提供すること。
【解決手段】セラミック組成物は、コランダム相とCeAl1118相との二相からなり、前記CeAl1118相を0.5モルパーセント以上5モルパーセント以下含む。このセラミック組成物の製造方法は、酸化セリウム粉末と酸化アルミニウム粉末とを混合し、混合して得られた材料を成形して成形体を取得し、取得した成形体を還元雰囲気において1400度以上1700度以下の温度で焼成する工程を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コランダム相とCeAl1118相との二相からなり、前記CeAl1118相を0.5モルパーセント以上5モルパーセント以下含む
ことを特徴とするセラミック組成物。
【請求項2】
少なくとも波長が250nm以上402nm以下の電磁波によって励起され、発光スペクトルのピークとなる波長が300nm以上550nm以下の範囲に含まれるとともに、
波長が314nm以上の電磁波によって励起されると、励起波長の増大に伴って最短発光波長が増大する
ことを特徴とする請求項1記載のセラミック組成物。
【請求項3】
前記コランダム相は、連続相を形成し、
前記CeAl1118相は、前記連続相中に分散する
ことを特徴とする請求項1又は2記載のセラミック組成物。
【請求項4】
酸化セリウム粉末と酸化アルミニウム粉末とを混合し、
混合して得られた材料を成形して成形体を取得し、
取得した成形体を還元雰囲気において1400度以上1700度以下の温度で焼成する
工程を有することを特徴とするセラミック組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック組成物及びセラミック組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば半導体実装用の部品には、90~99.9重量パーセント以上のアルミナセラミックが利用されることがある。アルミナセラミックは、機械強度、熱伝導性及び電気絶縁性などの点において優れており、製造工程も安定して安価であるため、各種の産業分野で広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-002488号公報
【特許文献2】特表2016-519829号公報
【特許文献3】特開2012-060179号公報
【特許文献4】特表2008-533270号公報
【特許文献5】特表2008-521238号公報
【特許文献6】特表2003-500805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えばアルミナセラミックのようなセラミック組成物に、発光機能が求められる場合、蛍光材料を塗布するなどの工程が必要となり、セラミック組成物の製造コストが増大するという問題がある。また、蛍光特性を有する化合物をセラミックに添加することも考えられているが、様々な材料を組み合わせた化合物が添加されるため、この場合もセラミック組成物の製造コストが増大する。さらに、添加される化合物の量が多くなると、セラミックの機械強度や熱伝導性などの機能部品又は構造部品としての利点が損なわれるという問題もある。
【0005】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、発光機能を有する安価な材料を提供することができるセラミック組成物及びセラミック組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願が開示するセラミック組成物は、1つの態様において、コランダム相とCeAl1118相との二相からなり、前記CeAl1118相を0.5モルパーセント以上5モルパーセント以下含む。
【発明の効果】
【0007】
本願が開示するセラミック組成物及びセラミック組成物の製造方法の1つの態様によれば、発光機能を有する安価な材料を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施の形態に係るセラミック組成物の製造方法を示すフロー図である。
図2図2は、一実施の形態に係るセラミック組成物の組成を示す図である。
図3図3は、一実施の形態に係るセラミック組成物の構造を示す図である。
図4図4は、セラミック組成物の発光の具体例を示す図である。
図5図5は、励起波長と発光波長の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願が開示するセラミック組成物及びセラミック組成物の製造方法の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
図1は、一実施の形態に係るセラミック組成物の製造方法を示すフロー図である。このセラミック組成物は、酸化アルミニウム及びセリウムを材料として形成され、例えば250~402nmの波長領域の電磁波照射に対して、例えば300~550nmの波長領域の電磁波であるフォトルミネセンス光を発する。
【0011】
まず、純度99.99重量パーセントで平均粒径が1μm未満の酸化アルミニウム粉末に、純度99.9重量パーセントの酸化セリウム(CeO2)粉末が1モルパーセント加えられる。加えられる酸化セリウム粉末の量は、0.5モルパーセント以上5モルパーセント以下であれば良い。そして、これらの粉末に有機バインダー成分及び可塑剤成分が添加されて、アルコール系液媒中で湿式混合される(ステップS101)。
【0012】
湿式混合により得られたスラリー状の材料は、例えばドクターブレード法によってテープ形状などの所定の形状に成形される(ステップS102)。なお、成形体の形状は、テープ形状に限らず、任意の形状であって良い。
【0013】
成形体は、例えば水素を含む窒素ガス雰囲気において、1400度以上、好ましくは1500度以上1700度以下の温度で還元焼成されて焼結体が得られる(ステップS103)。この焼結体は、CeAl1118を含有するセラミック組成物であり、発光機能を有する。
【0014】
図2は、上記のように形成されたセラミック組成物を粉末化したサンプルのX線回折パターンを示す図である。
【0015】
図2に示すように、サンプルから得られる測定データは、大部分がコランダム相からなり、添加された酸化セリウムに起因するCeAl1118相を含む。すなわち、セラミック組成物は、コランダム相及びCeAl1118相の二相からなることがわかる。なお、測定データからはタングステンカーバイドも検出されているが、これは、サンプルを得るために用いられる粉砕媒体材料に起因する異物(コンタミネーション)である。
【0016】
酸化アルミニウムに加えられる酸化セリウムの量が5モルパーセント以下であるため、コランダム相が主な構成相である連続相を形成し、CeAl1118相は、分散して存在する。具体的に、セラミック組成物の研磨面における反射電子像を図3に示す。
【0017】
図3に示すように、本実施の形態に係るセラミック組成物は、図中灰色で示す連続相を形成するコランダム相110と、図中白色で示す結晶状のCeAl1118相120a、120bとを有する。CeAl1118相の結晶120a、120bは、コランダム相110内に分散して存在する。図3において、結晶120aは面状であるのに対し、結晶120bは線状であるが、これはCeAl1118の結晶が平板状の形状を有するため、結晶120aが正面から観測されたのに対し、結晶120bが側方から観測されたものと考えられる。なお、セラミック組成物が焼成により製造されるため、コランダム相110内には図中黒色で示す気泡130が含まれている。
【0018】
このように、セラミック組成物は、連続相を形成するコランダム相と、分散するCeAl1118相との二相から構成されるため、アルミナセラミックと同等の機械強度、熱伝導性及び電気絶縁性を有し、様々な機能部品又は構造部品として利用することが可能な材料である。また、このセラミック組成物の製造方法は、酸化セリウムが混合される点以外は、通常のアルミナセラミックの製造にも適用されるものであり、製造コストが増大することはない。つまり、本実施の形態に係るセラミック組成物を安価に製造することができる。
【0019】
図4は、本実施の形態に係るセラミック組成物の発光の具体例を示す図である。すなわち、図4は、通常のアルミナセラミック210とセリウムが添加されたセラミック組成物220とに波長が254nmの紫外線を照射する場合の様子を示す。
【0020】
図4に示すように、紫外線照射下では、通常のアルミナセラミック210は発光しないのに対し、本実施の形態に係るセラミック組成物220は強く発光する。上述したように、本実施の形態に係るセラミック組成物220は、0.5モルパーセント以上の酸化セリウムを含むため、十分な励起発光強度を得ることができる。セラミック組成物220に照射される紫外線の励起波長が254nmの場合には、発光色は例えば青白色である。この発光色は、励起波長の変化に伴って変化する。
【0021】
図5は、励起波長と発光波長の関係の具体例を示す図である。図5は、本実施の形態に係るセラミック組成物に照射される電磁波の励起波長が306~402nmである場合の発光スペクトルを示している。ただし、本実施の形態に係るセラミック組成物は、少なくとも励起波長が250nm以上であれば、発光波長300~550nmの範囲で発光する。
【0022】
図5に示すように、励起波長が306~322nmの範囲では、励起波長が大きくなるに従ってピークの発光波長がおよそ440nmから少しずつ短波長側にシフトするとともに、ピークの強度が低下する。また、励起波長が314nm以下の場合には、発光波長350nm程度の発光が見られる。すなわち、励起波長が314nm以下の場合には、最短発光波長が350nm程度であり、この発光波長を有する発光は、励起波長が322nm以上になるとなくなる。
【0023】
一方、励起波長が330nm以上の範囲では、励起波長が大きくなるに従ってピークの発光波長がおよそ440nmから少しずつ長波長側にシフトして480nm程度までになるとともに、ピークの強度がやや低下する。励起波長が322nm以上の場合には、発光波長350nm程度の発光がなくなるため、最短発光波長は、ピークの発光波長と等しくなる。したがって、励起波長が314nm以上の範囲では、励起波長の増大に伴って最短発光波長が350nmから増大する。
【0024】
本実施の形態に係るセラミック組成物に含まれるCeAl1118は、歪んだマグネトプランバイト型構造であるが非化学量論組成を有しているため、部分置換や欠陥が存在すると考えられる。このような部分置換や欠陥がコランダム相に囲まれて存在するCeAl1118に影響した結果、励起波長の変化によって発光波長も変化すると考えられる。
【0025】
このように、励起波長が変化すると発光波長及び発光の強度が変化するため、波長が異なる電磁波を照射することにより、セラミック組成物の発光色を変化させることができる。換言すれば、セラミック組成物の発光色により、セラミック組成物に照射される電磁波の波長を識別することが可能となる。
【0026】
以上のように、本実施の形態によれば、簡易な工程によって、連続相を形成するコランダム相と、連続相中に分散するCeAl1118相との二相からなるセラミック組成物が得られる。このため、アルミナセラミックと同等の機械強度、熱伝導性及び電気絶縁性を有しつつ発光機能を有する材料を得ることができる。すなわち、発光機能を有する安価な材料を提供することができる。
【符号の説明】
【0027】
110 コランダム相
120a、120b CeAl1118
130 気泡
図1
図2
図3
図4
図5