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特開2023-39058先塗液、インクセット、印刷方法およびインクジェット印刷装置
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  • 特開-先塗液、インクセット、印刷方法およびインクジェット印刷装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039058
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】先塗液、インクセット、印刷方法およびインクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20230313BHJP
   C09D 11/54 20140101ALI20230313BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20230313BHJP
【FI】
B41M5/00 132
B41M5/00 100
C09D11/54
C09D11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146013
(22)【出願日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】梅村 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 誓
(72)【発明者】
【氏名】廣川 悠哉
(72)【発明者】
【氏名】萩原 弘規
(72)【発明者】
【氏名】齋賀 拓也
(72)【発明者】
【氏名】田村 里彩
【テーマコード(参考)】
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2H186AB02
2H186AB05
2H186AB06
2H186AB12
2H186AB39
2H186AB44
2H186AB47
2H186AB54
2H186AB55
2H186AB57
2H186BA08
2H186DA12
2H186DA15
2H186FB10
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB58
4J039BE01
4J039BE02
4J039EA43
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】インクの吸収性の高い記録媒体に対して良好な画像を得ることができ、ビーディングを抑制し、ベタ画像の隠蔽性を向上し得る、先塗液を提供する。
【解決手段】水、2価の金属塩および有機溶剤を含む先塗液であって、前記有機溶剤は、1,2-アルカンジオールおよび2-エチル-1,3-ヘキサンジオールから選ばれる少なくとも1つの有機溶剤を含み、前記先塗液はさらに、ポリオキシエチレンエーテル化合物を含む先塗液。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、2価の金属塩および有機溶剤を含む先塗液であって、
前記有機溶剤は、1,2-アルカンジオールおよび2-エチル-1,3-ヘキサンジオールから選ばれる少なくとも1つの有機溶剤を含み、
前記先塗液はさらに、ポリオキシエチレンエーテル化合物を含む先塗液。
【請求項2】
前記2価の金属塩が酢酸マグネシウムであり、その含有量が前記先塗液に対して15質量%以上である請求項1に記載の先塗液。
【請求項3】
前記1,2-アルカンジオールが、1,2-ヘキサンジオールである請求項1または2に記載の先塗液。
【請求項4】
前記先塗液はさらに、アクリル樹脂粒子および/またはウレタン樹脂粒子を含む請求項1~3のいずれかに記載の先塗液。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の先塗液と、色材を含有するインクとを有するインクセット。
【請求項6】
記録媒体上に、先塗液を付与する先塗液付与工程と、インクを付与するインク付与工程とをこの順で有し、前記先塗液として請求項1~4のいずれかに記載の先塗液を用いる印刷方法。
【請求項7】
さらに乾燥工程を有する請求項6に記載の印刷方法。
【請求項8】
前記乾燥工程は、前記インク付与工程の後に設ける工程であり、さらに、前記インク付与工程は、インクジェット方式によるインク付与工程である請求項7に記載の印刷方法。
【請求項9】
前記記録媒体が段ボール原紙である請求項6~8のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項10】
記録媒体に対して請求項1~4のいずれかに記載の先塗液を付与する手段と、
前記先塗液が付与された領域に対してインクを付与する手段と、を有するインクジェット印刷装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先塗液、インクセット、印刷方法およびインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、低騒音、低ランニングコスト、カラー印刷が容易であるなどの利点を有しており、デジタル信号の出力機器として一般家庭に広く普及している。また、近年では、家庭用のみならず商業用途や産業用途にもインクジェット技術が利用されてきている。
【0003】
商業用途や産業用途では、従来から使用されている普通紙に加え、厚紙、段ボールなどの梱包記録媒体など、様々な種類の記録媒体が用いられることがあり、これら記録媒体を用いた場合であっても、インクジェット記録方法により、高い画像品質の印刷物を作製できることが求められている。特に小荷物輸送の増加に伴い段ボールに印刷するいわゆるコルゲート印刷の需要が増加している。
【0004】
これら記録媒体を用いて印刷物を作製する場合に求められる特性としては、例えば、インクの沈み込み防止、カラーブリード、ビーディング、印刷むら等の抑制、隠蔽性、耐擦過性の向上などが挙げられる。
【0005】
下記特許文献1には、インクジェットインクと前処理液を含むインクジェット記録液セットであって、前記インクジェットインクは、ポリオキシエチレンエーテル化合物、界面活性剤、顔料、水、を含有し、前記前処理液は、少なくとも顔料凝集剤、水不溶性樹脂微粒子を含有するインクジェット記録液セットが開示されている。
下記特許文献2には、インクジェットインキと、前記インクジェットインキとともに用いられる処理液とを含むインキセットであって、前記インクジェットインキが、顔料、水溶性有機溶剤、界面活性剤、及び、水を含み、前記処理液が、凝集剤、有機溶剤、及び、水を含み、前記凝集剤が、硝酸カルシウムを、前記処理液全量に対し21.5~41.7質量%含有し、前記処理液中の、1気圧下における沸点が240℃以上である有機溶剤の含有量が、8質量%以下であり、前記処理液のpHが3.5~10.5であり、かつ、25℃における粘度が5.5~18.5mPa・sである、インキセットが開示されている。
下記特許文献3には、着色剤とこれを分散または溶解する溶媒からなる記録液中の着色剤を不溶化する化合物を含有する無色もしくは淡色の画像記録促進液を被記録材に対して付与した後、記録液を液滴として吐出して被記録材に付着させることより画像を形成する画像記録方法において、画像記録促進液が特定の界面活性剤を含有する画像記録方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1~3は、コルゲート印刷に関して具体的な言及をしておらず、とくにコルゲート印刷に求められる印刷むら、ビーディングの解決手段について何ら開示または示唆がない。また、特許文献3の画像記録方法では、色境界にじみやフェザリングの防止効果が不充分であり、更なる改善が求められていた。なお一般的に、記録媒体上にインクを保持する能力を高めるためには、先塗液中の凝集剤の添加量を増やすことが必要であるが、先塗液中に凝集剤を十分に溶解することができず、先塗液が白濁してしまうという問題点もある。
【0007】
したがって本発明の目的は、インクの吸収性の高い記録媒体に対して良好な画像を得ることができ、ビーディングを抑制し、ベタ画像の隠蔽性を向上し得る、先塗液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、下記構成1)により解決される。
1)水、2価の金属塩および有機溶剤を含む先塗液であって、
前記有機溶剤は、1,2-アルカンジオールおよび2-エチル-1,3-ヘキサンジオールから選ばれる少なくとも1つの有機溶剤を含み、
前記先塗液はさらに、ポリオキシエチレンエーテル化合物を含む先塗液。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インクの吸収性の高い記録媒体に対して良好な画像を得ることができ、ビーディングを抑制し、ベタ画像の隠蔽性を向上し得る、先塗液を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、印刷装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
本発明の先塗液は、水、2価の金属塩および有機溶剤を含み、前記有機溶剤は、1,2-アルカンジオールおよび2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(EHD)から選ばれる少なくとも1つの有機溶剤を含み、前記先塗液はさらに、ポリオキシエチレンエーテル化合物を含むものである。
【0012】
<<先塗液>>
本発明の先塗液は、色材を含有するインクが付与される前に、記録媒体に付与される液体である。すなわち、インクは、先塗液が付与された領域と接触するように後から付与される。なお、先塗液は、導電性のローラやプラズマによりコロナ処理を事前に施された記録媒体に対して付与されてもよい。
【0013】
先塗液は、ポリオキシエチレンエーテル化合物を含む。
ポリオキシエチレンエーテル化合物は界面活性剤として効果が高い。特に1,2-アルカンジオールとの組み合わせにより、紙、コート紙、段ボール用ライナー紙に対して優れた濡れ性を示す。濡れ性は浸透性ではなく、表面のいわゆる横方向の濡れ性の効果が高い。先塗液が記録媒体表面に均一に塗布されることにより、凝集剤の均一塗布および樹脂粒子を用いる場合はその均一塗布に効果がある。
【0014】
ポリオキシエチレンエーテル化合物の含有量は、充分な濡れ性が得られるという点から、先塗液の全量に対して0.1~2.0質量%が好ましく、0.5~1.5質量%がさらに好ましい。
【0015】
ポリオキシエチレンエーテル化合物は、一般式RO(CO)Hで表すことができる。該一般式中、Rはアルキル基であり、好ましい炭素数は10~18である。またnは繰り返し数であり、例えば2~10である。
中でも本発明ではポリオキシエチレンエーテル化合物として、ポリエチレングリコールトリメチルノニルエーテル(Cas.No 60828-78-6、(別名:ポリ(オキシエチレン)=3,5-ジメチル-1-(2-メチルプロピル)ヘキシル=エーテル))を挙げることができる。該化合物を使用することにより、本発明の効果がとくに高まる。
ポリエチレングリコールトリメチルノニルエーテルの市販品としては、ダウ・ケミカル日本株式会社製トライトンHW-1000、シグマ-アルドリッチ社製Tergitol TMN6、TMN10、TMN-3等が挙げられる。
【0016】
<2価の金属塩>
本発明の先塗液は、2価の金属塩を含む。2価の金属塩は、先塗液が付与された領域に接触したインクにおいて、インク中に含まれる色材を凝集させる機能を有する成分である。凝集剤の作用としては、例えば、インク中の色材との電荷的な作用によって会合し、色材の凝集体を形成させて色材を液相から分離させ、色材の記録媒体に対する定着を促進させることが挙げられる。これにより、インクにより形成される画像における濃度ムラ及び滲みが抑制される。
【0017】
なお、金属塩はイオン性のものが好ましい。塩としては、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩等が挙げられ、特に、2価の金属塩がカルシウム塩及びマグネシウム塩から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0018】
マグネシウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、珪酸マグネシムなどが挙げられる。
カルシウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、珪酸カルシウムなどが挙げられる。
バリウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫酸バリウムなどが挙げられる。
亜鉛化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫化亜鉛、炭酸亜鉛などが挙げられる。
アルミニウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、珪酸アルミニウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
2価の金属塩としては、特に酢酸マグネシウムが好ましい。酢酸マグネシウムは、溶解性が高く先塗液に多く含有することができる。
【0019】
また、2価の金属塩の含有量は、先塗液の全量に対して1.0質量%以上30.0質量%以下であることが好ましく、20.0質量%以上30.0質量%以下であることで、インクにより形成される画像における濃度ムラ及び滲みがより抑制される。とくに酢酸マグネシウムを使用する場合、その含有量は先塗液の全量に対して15質量%以上が好ましく、20質量%以上25質量%以下がさらに好ましい。
【0020】
本発明の先塗液は、必要に応じてさらに他の金属塩を併用してもよい、例えば、チタン化合物、クロム化合物、銅化合物、コバルト化合物、ストロンチウム化合物、鉄化合物、ニッケル化合物等の塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
本発明の先塗液は、その他の凝集剤を併用してもよい。凝集剤とは、先塗液が付与された領域に接触したインクにおいて、インク中に含まれる色材を凝集させる機能を有する成分である。
【0022】
その他の凝集剤としては、例えば、2価以外の金属塩、カチオンポリマー等が挙げられる。
【0023】
<樹脂>
本発明の先塗液は、樹脂を含むことができる。先塗液が樹脂を含むことで、樹脂が記録媒体上に均一に広がって樹脂皮膜を形成し、結果として、インクにより形成される画像における耐擦過性が向上する。
【0024】
樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン樹脂、ブタジエン樹脂、及び塩化ビニル系樹脂等を挙げることができ、これらの中でも、ウレタン樹脂及びアクリル樹脂が好ましく、ウレタン樹脂がより好ましい。ウレタン樹脂及びアクリル樹脂を添加した先塗液を、コルゲート印刷に適用した場合、さらに良好な画像を得ることができ、ビーディングを抑制し、ベタ画像の隠蔽性を顕著に高めるという効果がある。また、ウレタン樹脂は、引張強度に優れるため、記録媒体として、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン等の樹脂フィルムからなる軟包装基材を用いる場合であっても、これら基材の伸縮に対して余裕度が高い画像を形成することができる。また、ウレタン樹脂の中でも、ポリカーボネート系ウレタン樹脂が好ましい。ポリカーボネート系ウレタン樹脂は、好適な粘弾性を得やすく、耐擦過性により優れるためである。
【0025】
樹脂の形態としては、樹脂粒子を用いることが好ましい。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、他の材料と混合して先塗液を得ることが可能である。樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
ウレタン樹脂粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、タケラックW-4000、タケラックW-6010、タケラックW-6110(いずれも三井化学株式会社製のポリカーボネート系ウレタン樹脂粒子)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
アクリル樹脂粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、サイマック(東亜合成株式会社製)、ボンコート(DIC株式会社製)、アクアブリッド(株式会社ダイセル製)などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0029】
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐擦過性及び保存安定性の点から、先塗液の全量に対して、1.0質量%以上30.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以上20.0質量%以下がより好ましい。
【0030】
<水>
本発明の先塗液は、水を含む。先塗液における水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、先塗液の乾燥性の点から、先塗液の全量に対して10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0031】
<有機溶剤>
本発明の先塗液は有機溶剤を含有し、有機溶剤として、1,2-アルカンジオールおよび2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(EHD)から選ばれる少なくとも1つの有機溶剤を含有する。ポリオキシエチレンエーテル化合物と1,2-アルカンジオールおよび2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(EHD)から選ばれる少なくとも1つの有機溶剤とを含有することで、2価の金属塩の溶解性が向上し、先塗液を付与した後に付与されるインクにより形成される画像において、ビーディングやベタ画像の隠蔽性を向上させることができる。
1,2-アルカンジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール等が挙げられ、本発明の効果向上の観点から、1,2-ヘキサンジオールが好ましい。
本発明の先塗液は、その他の有機溶剤をさらに含んでもよい。その他の有機溶剤を適宜含有させることで先塗液の乾燥性が向上する。
【0032】
有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
【0033】
その他の有機溶剤の具体例としては、例えば、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
【0034】
有機溶剤の先塗液中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、先塗液の全量に対して、10質量%以上60質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0035】
<界面活性剤>
本発明の先塗液は、さらに異なる界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
【0036】
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0037】
先塗液中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0038】
<その他添加剤>
先塗液は、必要に応じて、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えてもよい。
【0039】
<<インク>>
インクは、色材を含有し、必要に応じて、有機溶剤、水、樹脂、界面活性剤、その他添加剤を含有してもよい。なお、インクに含まれてもよい有機溶剤、水、樹脂、界面活性剤、その他添加剤は、先塗液に含まれるものと同様のものを用いることができるため、説明を省略する。
【0040】
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、混晶を使用してもよい。
【0041】
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性のよいものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
更に、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
【0042】
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3,4,35が挙げられる。
【0043】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0044】
顔料を分散してインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0045】
<<インクセット>>
先塗液は、上記インクと組み合わせたインクセットとして用いてもよい。
【0046】
<記録媒体>
本発明のインクセットを用いて印刷する際、使用する記録媒体としては既知のものを任意に用いることができ、例えば、紙基材または合成紙基材が好ましく選択される。なお本発明において「紙基材」とは、パルプを含む材料を抄紙してなる記録媒体を意味する。前記抄紙にあたっては、単層抄きとしてもよいし、多層抄きとしてもよい。また、その表面に塗工層を有してもよい。具体的には、上質紙、再生紙、微塗工紙、コート紙、アート紙、キャスト紙、ライナー紙、マニラボール紙、コートボール紙などが挙げられる。また「合成紙基材」とは、合成樹脂を主原料とした記録媒体であって、紙基材と同様の印刷加工特性を有する記録媒体である。
【0047】
とくに、ブリストー法(J.TAPPI紙パルプ試験方法No.51-87)により測定された1秒間における水転移量が1.0ml/m2以上である吸水性の高い記録媒体、例えば段ボール原紙にも適している。
【0048】
また本発明の先塗液は、必要に応じて樹脂フィルムや軟包装基材にも適用できる。
樹脂フィルムとしては、例えば、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリカーボネートなどの各種樹脂のフィルムを好適に用いることができるが、ポリエチレンテレフタレート及びポリプロピレンのフィルムであることが好ましく、ポリプロピレンのフィルムであることがより好ましい。
【0049】
ポリプロピレンフィルムとしては、例えば、東洋紡製のP-2002、P-2161、P-4166、SUNTOX製のPA-20、PA-30、PA-20W、フタムラ化学製のFOA、FOS、FORなどが挙げられる。
ポリエチレンテレフタレートフィルムとしては、例えば、東洋紡製のE-5100、E-5102、東レ製のP60、P375、帝人デュポンフィルム製のG2、G2P2、K、SLなどが挙げられる。
【0050】
軟包装基材とは、ロール等で巻き取り可能な可とう性を有する基材であることが好ましい。軟包装基材は、有機高分子樹脂からなり、溶融押出し後、長手方向及び/又は幅方向に延伸され、さらに熱固定、冷却を施された二軸延伸フィルム、又は溶融押出し後、延伸無しで熱固定、冷却を施された無延伸フィルム等である。
【0051】
<<印刷方法>>
本発明の記録方法は、記録媒体上に、本発明の先塗液を付与する先塗液付与工程と、インクを付与するインク付与工程とをこの順で有する。インクは、記録媒体上で先塗液が付与された領域に付与される。
【0052】
<先塗液を付与する工程>
先塗液を記録媒体に対して付与する方法としては、例えば、液体吐出方式、塗布方式などが挙げられる。
【0053】
液体吐出方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、圧電素子アクチュエータを用いる方式、熱エネルギーを作用させる方式、静電気力を利用したアクチュエータを用いる方式、連続噴射型の荷電制御タイプのヘッドを用いる方式などが挙げられる。
【0054】
塗布方式としては、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、ワイヤーバー塗布法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。これらの中でも、ワイヤーバー塗布法、ローラ塗布法が特に好ましい。
【0055】
先塗液を付与した後、必要に応じて、加熱して先塗液を乾燥させる乾燥工程が行われてもよいが、乾燥工程を行わなくてもよい。
なお、乾燥工程は、ロールヒーター、ドラムヒーター、温風などの公知の加熱手段により加熱して記録媒体に付与された先塗液を乾燥させる工程である。
【0056】
<インクを付与する工程>
インクは、記録媒体の先塗液が付与された領域に対して付与されることが好ましい。
インクを記録媒体に対して付与する方法としては、インクジェット法、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられるが、インクジェット法が好ましい。
インクを付与した後、必要に応じて、加熱して乾燥させる加熱工程が行われてもよいが、加熱工程を行わなくてもよい。
なお、加熱工程は、ロールヒーター、ドラムヒーター、温風などの公知の加熱手段により加熱して工程である。
【0057】
<<印刷装置>>
本発明の印刷装置は、記録媒体に対して本発明の先塗液を付与する手段と、前記先塗液が付与された領域に対してインクを付与する手段と、を有する。
【0058】
図1を用いて、印刷装置の一実施形態について説明する。図1は、印刷装置の一例を示す模式図である。
図1に示す印刷装置101は、インク付与手段の一例であって、インクを吐出するヘッドを集積した複数のヘッドユニット110K、110C、110M、110Yと、それぞれのヘッドユニットに対応し、ヘッドのメンテナンスを行う複数のメンテナンスユニット111K、111C、111M、111Yと、インク収容手段の一例であって、インクを収容し且つ供給する複数のインクカートリッジ107K、107C、107M、107Yと、インクカートリッジから供給されるインクの一部を貯蔵し、ヘッドに適切な圧力でインクを供給する複数のサブインクタンク108K、108C、108M、108Yと、を有する。
また、印刷装置101は、記録媒体114を吸引ファン120によって吸着し搬送する搬送ベルト113と、搬送ベルト113を支える搬送ローラ119、121と、搬送ベルト113が適切な張力を保つようにコントロールするテンションローラ115と、搬送ベルト113が適切な平面性を保つためのプラテン124、及びプラテンローラー118と、記録媒体114を吸着するための静電帯電を与える帯電ローラ116と、記録媒体114を押さえる排紙コロ117と、排紙した記録媒体114をストックしておく排紙トレイ104を有する排紙機構と、記録媒体114をストックする給紙トレイ103と、給紙トレイより一枚ずつ記録媒体114を送り出す分離パッド112、122と、送られてきた記録媒体114を帯電ベルトに確実に吸着させるカウンターローラ123と、手差しにて給紙した場合に用いられる手差しトレイ105と、を有する。
また、記録装置101は、メンテナンス後に排出される廃液を回収する廃液タンク109と、装置を操作し装置状態を表示することができる操作パネル106と、有する。
【0059】
ヘッドユニット110K、110C、110M、110Yのノズル列は、記録媒体114の搬送方向に直行するように配列されており、記録領域以上の長さのノズル列を形成している。
記録媒体114は、給紙トレイから分離コロにより一枚に分離され、加圧コロにて搬送ベルトに密着されることで搬送ベルト上に固定され、ヘッドユニット下を通過する際に液滴を吐出されることで、液滴により形成されるドットの集合体である画像を形成され、分離爪にて搬送ベルトから分離され、排紙ローラと排紙コロに支えられて排紙トレイに排出される。
【0060】
更に、図1に示す記録装置101は、先塗液で記録媒体表面を処理する機構として塗布機構を有しており、ローラ塗布機構を採用している。先塗液は、先塗液収容容器の一例である先塗液収容タンク135に収容され、汲み上げローラ137でローラ表面に汲み上げられ、膜圧制御ローラ138に転写される。続いて、先塗液付与手段の一例である塗布ローラ136に転写された先塗液は、塗布用カウンターローラ139との間に通す記録媒体114に転写され、塗布される。
【0061】
塗布ローラ136に転写される先塗液の塗布量は、塗布ローラ136とのニップ厚を制御することにより行う。先塗液を塗布したくない時は、塗布ローラ136に先塗液が残らないように、可動ブレード134を塗布ローラ136に押し付け、塗布ローラ表面の先塗液を掻き取ることができる。これにより、先塗液が塗布ローラ136に残留することで発生する乾燥による増粘や、塗布用カウンターローラ139との固着、塗布ムラなどの機能障害を未然に防ぐことができる。
【0062】
また、図1のように、給紙部を上下で1つずつ設け、先塗液を塗布する場合には下の給紙部を、先塗液を塗布しない場合には上の給紙部を使用するといった方式にしてもよい。
【0063】
上記ローラ塗布以外に、先塗液を吐出方式でスプレー塗布することも可能である。例えば、110Kと同様のヘッドに先塗液を充填し、インクと同様に記録媒体114へ吐出させることができ、吐出量や吐出位置の制御を高精度でかつ容易に行うことができる。また、ローラ塗布方式とスプレー塗布方式を併用してもよい。
何れの方式を用いても先塗液を任意の位置に任意の量だけ塗布することができる。
【0064】
また、熱風送風ファン150により、先塗液及びインクが付着した記録媒体を加熱することによって、乾燥促進により定着性を向上させることができる。なお、本実施形態では、加熱処理を印刷後の記録媒体に対して熱風ファンにて行っているが、画像形成前または画像形成後のいずれの記録媒体に対して行ってもよいし、その方式も熱風ファンだけではなく、加熱ローラなどの手段によって行ってもよい。
【実施例0065】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明はこれら例に何ら限定されるものではない。
【0066】
<ブラック顔料分散体の調製例>
Cabot Corporation社製のカーボンブラック(Black Pearls 1000)100gと竹本油脂(株)製のナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物(パイオニンA-45-PN)15gとイオン交換水280gの混合物をプレミックスした後、ダイノーミル(シンマルエンタープライゼス社製)で直径0.3mmジルコニアビーズを用いて、回転速度10m/秒、液温10℃の条件で30分間分散し顔料分散体を得た。次いで、得られた顔料分散体とジルコニアビーズを分離し、0.8μmメンブレンフィルター(セルロースアセテートタイプ)で濾過した。その後、固形分濃度が20%になるように水分量を調整し、固形分濃度20%の分散剤分散型のブラック顔料分散体を得た。
【0067】
<ブラックインクの調製例>
各材料を以下の割合で混合し、分散機で十分に撹拌した後、0.8μmメンブレンフィルター(セルロースアセテートタイプ)で濾過し、ブラックインクを得た。
・1,2-ブタンジオール:30.0質量%
・サーフィノール440(日信化学工業株式会社製):0.5質量%
・ブラック顔料分散体:20.0質量%
・タケラックW-6110(ウレタン樹脂粒子、三井化学株式会社製):20.0質量%
・純水:29.5質量%
【0068】
<先塗液の調製例>
(実施例1~9、比較例1~3)
下記表1の通り、各材料を所定の割合で混合し、実施例1~9、比較例1~3の先塗液を得た。なお、表1における割合を示す各数字の単位は「質量%」である。
【0069】
【表1】
【0070】
なお、表1中における各材料は以下のものを表す。
・シリコーン系界面活性剤
BYK―333:(ビックケミー株式会社製)
・ウレタンエマルジョン
タケラックW-6110:ポリカーボネート系ウレタン樹脂粒子、三井化学株式会社製、樹脂粒子の体積平均粒径=90nm)
・アクリルエマルジョン
ボンコート400:アクリル樹脂粒子、DIC株式会社製、樹脂粒子の体積平均粒径=60nm)
・ポリオキシエチレンエーテル化合物
ポリ(オキシエチレン)=3,5-ジメチル-1-(2-メチルプロピル)ヘキシル=エーテル、ダウ・ケミカル日本株式会社製 トライトンHW-1000(ポリエチレングリコールトリメチルノニルエーテル)
【0071】
評価に用いた記録媒体は王子製紙株式会社製Kライナー(段ボール原紙)、白ライナー(段ボール原紙)、OK-TOPコート紙である。
【0072】
得られた先塗液及びブラックインクを用いて、以下のようにして、先塗液及びブラックインクにより形成される画像における「濃度ムラ」、「滲み」、「ビーディング」、「隠蔽性」及び「耐擦過性」を評価した。
結果を表2に示す。
【0073】
[濃度ムラ]
作製した先塗液及びブラックインクを図1に示す印刷装置に充填し、記録媒体に対し先塗液を塗布し、先塗液を乾燥させた後、先塗液が塗布された領域に対してブラックインクを吐出して3cm四方のベタ画像を印刷し、70℃のエアオーブンで十分乾燥させた。
次に、ベタ画像を目視で観察し、下記評価基準に基づいて濃度ムラを評価した。
(評価基準)
A:濃度ムラは観察されない
B:やや濃度ムラが観察されるが、実使用上は問題ない
C:濃度ムラが観察されるが、実使用上は問題ない
D:明らかに濃度ムラが観察され、実使用上の問題が生じる
E:激しい濃度ムラが観察され、実使用上の問題が生じる
【0074】
[滲み]
作製した先塗液及びブラックインクを図1に示す印刷装置に充填し、記録媒体に対し、先塗液を塗布し、先塗液を乾燥させた後、先塗液が塗布された領域に対してブラックインクを吐出して8ポイントから24ポイントまでの文字を印刷し、70℃のエアオーブンで十分乾燥させた。
次に、文字の周囲を目視で観察し、下記評価基準に基づいて滲みを評価した。
(評価基準)
A:滲みは観察されない
B:やや滲みが観察されるが、実使用上は問題ない
C:滲みが観察されるが、実使用上は問題ない
D:明らかに滲みが観察され、実使用上の問題が生じる
E:激しい滲みが観察され、実使用上の問題が生じる
【0075】
[ビーディング]
作製した先塗液及びブラックインクを図1に示す印刷装置に充填し、記録媒体に対し、先塗液を塗布し、先塗液を乾燥させた後、先塗液が塗布された領域に対してブラックインクを吐出して8ポイントから24ポイントまでの文字を印刷し、70℃のエアオーブンで十分乾燥させた。
次に、文字の周囲を目視で観察し、下記評価基準に基づいて滲みを評価した。
(評価基準)
A:ビーディングは観察されない
B:ややビーディングが観察されるが、実使用上は問題ない
C:ビーディングが観察されるが、実使用上は問題ない
D:明らかにビーディングが観察され、実使用上の問題が生じる
E:激しいビーディングが観察され、実使用上の問題が生じる
【0076】
[隠蔽性]
記録媒体に(株)リコー製インクジェットプリンターSG-7200にてCMYおよび無色のパッチ画像を印刷、乾燥したのち、作製した先塗液及びブラックインクを図1に示す印刷装置に充填し、先塗液を塗布し、先塗液を乾燥させた後、先塗液が塗布された領域に対してブラックインクを吐出してパッチ画像の上にベタ画像を印刷し、70℃のエアオーブンで十分乾燥させた。
次に、パッチ画像を目視で観察し、下記評価基準に基づいて滲みを評価した。
(評価基準)
A:パッチ画像は観察されない
B:よく見るとパッチ画像が観察される。
C:ややパッチ画像が観察されるが、実使用上は問題ない
D:パッチ画像が観察されるが、実使用上は問題ない
E:明らかにパッチ画像が観察され、実使用上の問題が生じる
【0077】
[耐擦過性]
作製した先塗液及びブラックインクを図1に示す印刷装置に充填し、記録媒体に対し、先塗液を塗布し、先塗液を乾燥させた後、先塗液が塗布された領域に対してブラックインクを吐出して3cm四方のベタ画像を印刷し、70℃のエアオーブンで十分乾燥させた。
次に、乾いた綿布(カナキン3号)を用い、400gの加重をかけてベタ画像を擦過した。擦過後のベタ画像を目視で観察し、下記評価基準に基づいて耐擦過性を評価した。
(評価基準)
A:50回以上擦っても傷が観察されない
B:50回擦るとやや傷が観察されるが、画像明度には影響せず実使用上は問題ない
C:50回擦ると傷が観察されるが、画像明度には影響せず実使用上は問題ない
D:20回以上50回未満擦ると傷が観察され、画像明度が低下して実使用上の問題が生じる
E:20回未満擦ると傷が観察され、画像明度が低下して実使用上の問題が生じる
【0078】
【表2】
【0079】
表1および2から、各実施例では、「濃度ムラ」、「滲み」、「ビーディング」、「隠蔽性」及び「耐擦過性」の結果が、優れているか、実使用上問題のないものであった。
【符号の説明】
【0080】
101 印刷装置
103 給紙トレイ
105 手差しトレイ
106 操作パネル
107K、107C、107M、107Y インクカートリッジ
108K、108C、108M、108Y サブインクタンク
109 廃液タンク
110K、110C、110M、110Y ヘッドユニット
111K、111C、111M、111Y メンテナンスユニット
112、122 分離パッド
113 搬送ベルト
114 記録媒体
116 帯電ローラ
117 排紙コロ
118 プラテンローラ
119、121 搬送ローラ
123 カウンターローラ
135 先塗液収容タンク
136 塗布ローラ
137 汲み上げローラ
138 膜圧制御ローラ
139 塗布用カウンターローラ
150 熱風送風ファン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0081】
【特許文献1】特開2020-189897号公報
【特許文献2】特許第6592869号公報
【特許文献3】特開平10-250216号公報
図1