(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039081
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】成膜方法、半導体装置の製造方法、および成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 16/42 20060101AFI20230313BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20230313BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
C23C16/42
H01L21/28 301S
H01L21/285 C
H01L21/28 301R
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146056
(22)【出願日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】成嶋 健索
【テーマコード(参考)】
4K030
4M104
【Fターム(参考)】
4K030AA02
4K030AA06
4K030AA13
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA48
4K030CA04
4K030DA02
4K030EA01
4K030FA10
4K030JA10
4K030LA15
4M104AA01
4M104AA03
4M104BB04
4M104BB13
4M104BB16
4M104BB18
4M104BB25
4M104CC01
4M104DD43
4M104DD44
4M104DD45
4M104FF13
(57)【要約】
【課題】低抵抗のチタンシリサイド膜を低温で成膜することができる成膜方法、半導体装置の製造方法、および成膜装置を提供する。
【解決手段】基板のコンタクト形成領域にチタンシリサイド膜を成膜する成膜方法は、コンタクト形成領域を有する基板を準備する工程と、TiプリカーサとしてのTiI
4ガスと、還元ガスとしてのSi含有ガスとをシーケンシャルに基板に供給して、ALDにより基板のコンタクト形成領域にチタンシリサイド膜を成膜する工程とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のコンタクト形成領域にチタンシリサイド膜を成膜する成膜方法であって、
コンタクト形成領域を有する基板を準備する工程と、
TiプリカーサとしてのTiI4ガスと、還元ガスとしてのSi含有ガスとをシーケンシャルに前記基板に供給して、ALDにより前記基板の前記コンタクト形成領域にチタンシリサイド膜を成膜する工程と、
を含む、成膜方法。
【請求項2】
前記コンタクト形成領域は、不純物が拡散されたシリコン含有領域である、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記基板は、基体上にコンタクトホールを有する絶縁膜が形成され、前記コンタクトホールの底部に、前記コンタクト形成領域が露出している、請求項2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記コンタクト形成領域は、SiまたはSiGeがエピタキシャル成長した領域である、請求項3に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記基板の前記コンタクト形成領域以外の部分にチタンシリサイド膜が成膜されることを阻害する成膜阻害剤を形成する工程をさらに有する、請求項3または請求項4に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記成膜阻害剤は、アルキルハライドまたはアルケンである、請求項5に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記成膜阻害剤を形成する工程は、前記チタンシリサイドを成膜する工程に先立って、または、前記チタンシリサイドを成膜する工程の際に行われる、請求項5または請求項6に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記Si含有ガスは、Si2H6、SiH4、Si2I6、SiI4、SiHI3、SiH2I2、SiH3I、Si2Cl6、SiCl4、SiHCl3、SiH2Cl2、SiH3Cl、Si2Br6、SiBr4、SiHBr3、SiH2Br2、SiH3Br、Si2F6、SiF4、SiHF3、SiH2F2、SiH3Fから選択されたものである、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記チタンシリサイド膜を成膜する工程は、前記還元剤として、前記Si含有ガスの他に、H2ガス、重水素含有ガス、NH3ガスの少なくとも1種を供給する、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記チタンシリサイド膜を成膜する工程は、基板温度を450℃以下にして行われる、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項11】
基体上にコンタクトホールを有する絶縁膜が形成され、前記コンタクトホールの底部に、不純物が拡散されたシリコン含有領域であるコンタクト形成領域が露出している基板を準備する工程と、
TiプリカーサとしてのTiI4ガスと、還元ガスとしてのSi含有ガスとをシーケンシャルに前記基板に供給して、ALDにより前記基板の前記コンタクト形成領域にシリコンコンタクトであるチタンシリサイド膜を成膜する工程と、
前記コンタクトホールに配線材料を埋め込んで、前記チタンシリサイド膜上に配線を形成する工程と、
を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記コンタクト形成領域は、SiまたはSiGeがエピタキシャル成長した領域である、請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記基板の前記コンタクト形成領域以外の部分にチタンシリサイド膜が成膜されることを阻害する成膜阻害剤を形成する工程をさらに有する、請求項11または請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記成膜阻害剤は、アルキルハライドまたはアルケンである、請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記成膜阻害剤を形成する工程は、前記チタンシリサイドを成膜する工程に先立って、または、前記チタンシリサイドを成膜する工程の際に行われる、請求項13または請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記配線材料は、Co、W、Mo、Ruのいずれかである、請求項11から請求項15のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記Si含有ガスは、Si2H6、SiH4、Si2I6、SiI4、SiHI3、SiH2I2、SiH3I、Si2Cl6、SiCl4、SiHCl3、SiH2Cl2、SiH3Cl、Si2Br6、SiBr4、SiHBr3、SiH2Br2、SiH3Br、Si2F6、SiF4、SiHF3、SiH2F2、SiH3Fから選択されたものである、請求項11から請求項16のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記チタンシリサイド膜を成膜する工程は、前記還元剤として、前記Si含有ガスの他にH2ガス、重水素含有ガス、NH3ガスの少なくとも1種を供給する、請求項11から請求項17のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記チタンシリサイド膜を成膜する工程は、基板温度を450℃以下にして行われる、請求項11から請求項18のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
基板のコンタクト形成領域にチタンシリサイド膜を成膜する成膜装置であって、
基板が収容される処理容器と、
前記処理容器内で基板を載置する載置台と、
前記載置台上の基板を加熱する加熱部と、
前記処理容器に、TiプリカーサとしてのTiI4ガスおよび還元ガスとしてのSi含有ガスを含むガスを供給するガス供給部と、
制御部と
を有し、
前記制御部は、
前記処理容器内に前記コンタクト形成領域を有する基板が設けられた状態で、前記処理容器内に、前記TiI4ガスと、前記Si含有ガスとをシーケンシャルに供給して、ALDにより前記基板の前記コンタクト形成領域にチタンシリサイド膜が成膜されるように、前記加熱部および前記ガス供給部を制御する、成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法、半導体装置の製造方法、および成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置におけるSiコンタクトにはチタンシリサイドが用いられている。非特許文献1には、Si基板上にTiおよびTiNをシーケンシャルに堆積した後、アニールによりTiと基板のSiとを反応させてチタンシリサイド(TiSi2)を形成する方法が記載されている。特許文献1には、シリコン基板にTiCl4とSiH4とを用いて原子層堆積法(ALD)によりTiSi2層を形成することが記載されている。また、非特許文献2には、TiI4とSiH4を用いて化学蒸着法(CVD)によりTiSi2膜を成膜することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】K.Yanagiharaand S.Hayashi, "Boron Redistribution during Silicidation Process ofTitanium-Silicon System",Journalof Surface Analysis Vol. 5 No. 1 (1999)
【非特許文献2】HwaSung Rhee, "Formationof TiSi2 Thin Films from Chemical Vapor Deposition Using TiI4" Journal of the Korean Physical Society, Vol 33, November 1998, pp. S121 - S124
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、低抵抗のチタンシリサイド膜を低温で成膜することができる成膜方法、半導体装置の製造方法、および成膜装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る成膜方法は、基板のコンタクト形成領域にチタンシリサイド膜を成膜する成膜方法であって、コンタクト形成領域を有する基板を準備する工程と、TiプリカーサとしてのTiI4ガスと、還元ガスとしてのSi含有ガスとをシーケンシャルに前記基板に供給して、ALDにより前記基板の前記コンタクト形成領域にチタンシリサイド膜を成膜する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、低抵抗のチタンシリサイド膜を低温で成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】成膜方法の第1の実施形態を示すフローチャートである。
【
図3】
図2の基板のコンタクトホール底部のコンタクト形成領域にTiSi
x膜を成膜した状態を示す断面図である。
【
図4】
図3のTiSi
x膜を成膜した基板に対し、コンタクトホールに配線材料を埋め込んで配線を形成した状態を示す断面図である。
【
図5】TiプリカーサとしてTiI
4、TiBr
4、およびTiCl
4を用い、Si化合物としてSiH
4ガスを用いた場合における、反応の温度(℃)と自由エネルギーΔG(kcal)との関係をシミュレーションした結果を示す図である。
【
図6】成膜方法の第2の実施形態を示すフローチャートである。
【
図7】
図2の基板に成膜阻害剤を形成した状態を示す断面図である。
【
図8】
図2の基板に成膜阻害剤を形成し、TiSi
x膜を成膜した後に、コンタクトホールに配線材料を埋め込んだ状態を示す図である。
【
図9】成膜阻害剤を形成する工程を、TiSi
x膜を成膜する工程に先立って行う場合を模式的に示す図である。
【
図10】TiSi
x膜を成膜する工程のALDサイクルの途中にシーケンシャルに成膜阻害剤を供給する例を模式的に示す図である。
【
図11】TiSi
x膜を成膜する工程のTiI
4ガスおよびSi含有ガス(SiH
4ガス)の一方を供給する際または両方を供給する際に同時に成膜阻害剤を供給する例を模式的に示す図である。
【
図12】成膜方法に用いる成膜装置の一例を示す断面図である。
【
図13】
図12の成膜装置におけるTiI4ガス供給源を示す図である。
【
図14】
図12の成膜装置によりTiSix膜を成膜する際のガス供給シーケンスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態について説明する。
【0010】
<経緯および概要>
最初に、本開示の成膜方法の経緯および概要について説明する。
なお、チタンシリサイドにはTiSi2とTiSiが存在するため、以下の説明において、チタンシリサイドをこれらの両方を含むTiSixと表記する。
【0011】
Siコンタクトに用いられるTiSix膜を形成する際には、サーマルバジェットによるデバイスの不良リスクを低減する観点から処理温度の低温化が求められており、特に耐熱性の低いロジック半導体では450℃以下が求められている。また、半導体装置の微細化にともない、特に、ロジック半導体においては、Siコンタクトに用いられるTiSix膜に低抵抗化が求められている。
【0012】
Siコンタクトはソース電極やドレイン電極のような不純物拡散領域に形成されるが、上記非特許文献1のようにアニールによりTiを基板のSiと反応(還元反応)させてTiSix膜を形成する場合は、TiとSiとの反応(還元反応)にともないSiに添加された不純物も同時に吸い上げてしまう。コンタクト抵抗は、材料の抵抗およびショットキー障壁に比例し、メタル(Ti)-Si界面の不純物濃度に反比例するから、不純物拡散領域から不純物の吸い上げが生じて不純物濃度が低下することによりコンタクト抵抗が増加してしまう。また、非特許文献1においてTiSixを形成する反応に必要な処理温度が650℃以上と高温であり、ロジック半導体への適用は困難である。
【0013】
また、特許文献1では、シリコン基板にTiCl4とSiH4とを用いてALDによりTiSix層をエピタキシャル成長させているが、高い成膜温度が必要となる。さらに、非特許文献2では、TiI4とSiH4を用いてCVDによりTiSi2膜を形成することが記載されているが、その際の基板温度は650℃と高い温度である。
【0014】
そこで、近時要求されている、Siコンタクトを構成するTiSix膜の処理温度の低温化および低抵抗化を実現すべく検討がなされた。その結果、基板におけるコンタクト形成領域に、TiI4ガスとSi含有ガスとを用いたALDにより直接TiSix膜を成膜することが有効であることが見出された。
【0015】
<成膜方法>
次に、成膜方法の実施形態について説明する。
[成膜方法の第1の実施形態]
図1は、成膜方法の第1の実施形態を示すフローチャートである。
図1に示すように、成膜方法の第1の実施形態は、コンタクト形成領域を有する基板を準備する工程(ステップST1)と、基板のコンタクト形成領域に、TiプリカーサとしてのTiI
4ガスと還元ガスとしてのSi含有ガスとを用いたALDによりTiSi
x膜を成膜する工程(ステップST2)とを含む。
【0016】
ステップST1における基板は、
図2に示すように構成される。基板101は、例えば、半導体ウエハ(シリコンウエハ)であり、本例では3Dデバイスが形成されている。具体的には、基板101は、基体(図示せず)上に絶縁膜102を有し、絶縁膜102にはコンタクトホール103が形成されている。コンタクトホール103の底部には、コンタクト形成領域104が露出している。コンタクト形成領域104は、例えばソース電極やドレイン電極のようなB等の不純物が拡散されたシリコン含有領域であり、例えば、エピタキシャル成長により形成されたSiまたはSiGeからなる。この場合、コンタクト形成領域104は、縦方向にエピタキシャル成長したものであっても、横方向にシート状にエピタキシャル成長したものであってもよい。絶縁膜102としては、SiN膜を挙げることができる。SiO
2膜であってもよい。なお、
図2では3Dデバイスを例示したが、一般的な2Dデバイスでもよく、その場合は、コンタクト形成領域104はSi基体であってよい。
【0017】
ステップST2では、処理容器内の基板101に対し、TiプリカーサであるTiI
4ガスと還元ガス(シリサイド化ガス)であるSi含有ガスとをシーケンシャルに(典型的には交互に)供給する。これにより、
図3に示すように、コンタクト形成領域104の表面にSiコンタクトとしてのTiSi
x膜105を成膜する。
【0018】
TiSi
x膜105を成膜した後は、
図4に示すように、コンタクトホール103にCo、W、Mo、Ru等の低抵抗配線材料を埋め込んで、TiSi
x膜105上に配線106を形成する。これにより所望の半導体装置が得られる。
【0019】
ステップST2の成膜処理に先立って、コンタクト形成領域104の表面に形成された自然酸化膜を除去する工程を行ってもよい。自然酸化膜の除去は、Arスパッタ等を用いたプリクリーン処理により行うことができる。
【0020】
また、ステップST2の後にH2プラズマ等によりプラズマトリートメントを行ってもよい。
【0021】
次に、ステップST2の成膜処理について詳細に説明する。
ステップST2のTiSi
x膜105の成膜においては、Tiプリカーサとして用いるTiI
4は反応性が高いため、Si化合物ガスとの反応を低温で生じさせることができ、低温でTiSi
x膜を形成することができる。
図5は、TiプリカーサとしてTiI
4、TiBr
4、およびTiCl
4を用い、Si化合物としてSiH
4ガスを用いた場合における、反応の温度(℃)と自由エネルギーΔG(kcal)との関係をシミュレーションした結果を示すものである。シミュレーションには、以下の(1)~(3)式の反応を用いた。
図5においては、ΔGがマイナスになった場合に反応が進行することを意味する。
TiI
4(g)+2SiH
4(g)=TiSi
2+2I
2(g)+4H
2(g) ・・・(1)
TiBr
4(g)+2SiH
4(g)=TiSi
2+2Br
2(g)+4H
2(g) ・・・(2)
TiCl
4(g)+2SiH
4(g)=TiSi
2+2Cl
2(g)+4H
2(g) ・・・(3)
【0022】
図5のシミュレーション結果に示すように、TiプリカーサとしてTiBr
4およびTiCl
4を用いた場合、成膜反応が生じるためには1000℃以上の高い温度が必要である。これに対し、TiプリカーサとしてTiI
4を用いた場合は、350℃程度でΔGがマイナスになっており、450℃以下の低温で成膜可能であることがわかる。
【0023】
このように、TiI4ガスとSi含有ガスとを用いてALDによりTiSix膜を成膜する際には、450℃以下の低温成膜が可能であるため、ロジック半導体の場合にもサーマルバジェットによるデバイス不良のリスクを低減することができる。また、下地のSiとの反応によりシリサイドを形成するのではなく、コンタクト形成有領域104上にALDにより直接TiSix膜を成膜するため、コンタクト形成領域104からのB等の不純物の吸い上げを抑制することができ、Siコンタクトの低抵抗化を図ることができる。
【0024】
また、ALDは膜厚の制御性が高いため、ALDによりTiSix膜を成膜することにより、TiSix膜の薄膜化が可能になる。TiSix膜の膜厚は、0.5~10nmの範囲とすることができる。
【0025】
還元ガスとして用いられるSi含有ガスとしては、例えば、以下のようなシラン系ガス、ヨウ物系ガス、塩化物系ガス、臭化物系ガス、フッ化物系ガスを挙げることができる。
シラン系ガス:
Si2H6、SiH4
ヨウ化物系ガス:
Si2I6、SiI4、SiHI3、SiH2I2、SiH3I
塩化物系ガス:
Si2Cl6、SiCl4、SiHCl3、SiH2Cl2、SiH3Cl
臭化物系ガス:
Si2Br6、SiBr4、SiHBr3、SiH2Br2、SiH3Br
フッ化物系ガス:
Si2F6、SiF4、SiHF3、SiH2F2、SiH3F
【0026】
これらの中では、反応性の面からはSiH4ガスが好適である。また、ヨウ化物系ガスは、TiI4と同種のガスであるから、不純物を少なくすることができるという利点がある。
【0027】
Si含有ガスの他、他の還元ガスを用いてもよい。他の還元ガスとしてはH2ガス、重水素含有ガス、NH3ガスを用いることができる。重水素含有ガスは、2個の重水素原子が結合した重水素分子のガスである重水素ガス、または1個の軽水素原子と1個の重水素原子が結合した分子のガスを意味する。Si含有ガスに加えて他の還元ガスとしてH2ガス、重水素含有ガス、NH3ガスの少なくとも1種を用いることにより還元反応をより進行しやすくすることが可能となる。他の還元ガスの供給タイミングは特に限定されず、例えば、Si含有ガスを供給するたびに供給してもよいし、Si含有ガスを供給するタイミングの一部、例えば数回に1回供給してもよい。もちろんSiH4ガスと別個のタイミングで供給してもよい。
【0028】
ステップST2では、TiI4ガスを供給した後、およびSi含有ガスを供給した後に、パージガスにより処理容器内の残留ガスを排出する。パージガスとしては、不活性ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、N2ガスやArガスを好適に用いることができる。パージガスは、成膜処理を行っている期間、常時供給するようにしてもよい。
【0029】
ステップST2の際の処理容器内の圧力は13~6650Pa(0.1~50Torr)の範囲であってよい。
【0030】
[成膜方法の第2の実施形態]
図6は、成膜方法の第2の実施形態を示すフローチャートである。
図6に示すように、成膜方法の第2の実施形態は、コンタクト形成領域を有する基板を準備する工程(ステップST11)と、基板のコンタクト形成領域以外の部分にTiSi
x膜が成膜されることを阻害する成膜阻害剤を形成する工程(ステップST12)と、基板のコンタクト形成領域に、TiプリカーサとしてのTiI
4ガスと還元ガスとしてのSi含有ガスとを用いたALDによりTiSi
x膜を成膜する工程(ステップST13)とを含む。
【0031】
ステップST11においては、ステップST1と同様、基板101として
図2に示すものを用いることができる。また、ステップST13においては、基本的にステップST2と同様の条件でALDによりTiSi
x膜105を成膜する。
【0032】
ステップST12の成膜阻害剤を形成する工程は、
図7に示すように、コンタクト形成領域104以外の領域、すなわち、絶縁膜102におけるコンタクトホール103の内面にTiSi
x膜が成膜されることを阻害する成膜阻害剤107を吸着させる。ALDによりTiSi
x膜105を形成する際には、絶縁膜102におけるコンタクトホール103の内面にもTiSi
x膜が成膜されることがある。TiSi
xは配線材料と比較して抵抗が高いため、コンタクトホール103の内面にTiSi
x膜が存在したままで配線材料を埋め込むと配線抵抗が上昇してしまう。このため、コンタクト形成領域104以外の領域であるコンタクトホール103の内面に成膜阻害剤107を吸着させてその部分へのTiSi
x膜の成膜を抑制する。成膜抑阻害剤107は吸着させるだけなので極薄く形成でき、
図8のように、TiSi
x膜105を成膜した後、配線106を形成しても配線抵抗の上昇はほとんど生じない。
【0033】
成膜阻害剤107としては、絶縁膜102に吸着しやすい有機物質が好ましく、アルキルハライドやアルケンを好適に用いることができる。アルキルハライドやアルケンは、特にSiNのような窒素含有物に吸着しやすい。アルキルハライドは、一般式R-X(Rはアルキル基、Xはハロゲン原子)で表されるものであり、アルケンは炭素の二重結合を持つ炭化水素(エチレン、プロピレン、イソブチレン等)である。
【0034】
ステップST12の成膜阻害剤を形成する工程は、
図9に示すように、ステップST13のTiSi
x膜を成膜する工程に先立って行ってもよいし、
図10および
図11に示すように、ステップST13のTiSi
x膜を成膜する工程の際に行ってもよい。
図10の例はTiSi
x膜を成膜する際のALDサイクルの途中にシーケンシャルに成膜阻害剤を供給する例であり、
図11の例はTiI
4ガスおよびSi含有ガス(例えばSiH
4ガス)の一方を供給する際または両方を供給する際に同時に成膜阻害剤を供給する例である。
【0035】
<成膜装置>
次に、以上のような成膜方法の実施形態を実施可能な成膜装置の一例について説明する。
図12は、成膜装置の一例を示す断面図である。ここでは、Si含有ガスとしてSiH
4ガスを用い、パージガス等に用いる不活性ガスとしてN
2ガスを用いた例を示す。
【0036】
成膜装置100は、処理容器であるチャンバー1と、サセプタ(載置台)2と、シャワーヘッド3と、排気部4と、ガス供給機構5と、制御部6とを有している。
【0037】
処理容器であるチャンバー1は、略円筒状の金属からなる。チャンバー1の側壁部には真空搬送室(図示せず)に対して搬送機構(図示せず)により基板Wを搬入出するための搬入出口26が形成され、搬入出口26はゲートバルブGで開閉可能となっている。
【0038】
チャンバー1の本体の上には、断面が矩形状をなす円環状の排気ダクト28が設けられている。排気ダクト28には、内周面に沿ってスリット28aが形成されている。また、排気ダクト28の外壁には排気口28bが形成されている。排気ダクト28の上面にはチャンバー1の上部開口を塞ぐように天壁29が設けられている。天壁29と排気ダクト28の間はシールリング30で気密にシールされている。
【0039】
載置台であるサセプタ2は、チャンバー1内で基板Wを載置するためのものである。基板Wとしては、上述したような
図2の構造を有する半導体ウエハ(シリコンウエハ)が例示される。サセプタ2は、ウエハWに対応した大きさの円板状をなし、水平に設けられている。サセプタ2は、支持部材33に支持されている。サセプタ2の内部には、基板Wを加熱するためのヒーター31が埋め込まれている。ヒーター31はヒーター電源(図示せず)から給電されて発熱するようになっている。そして、ヒーター31の出力を制御することにより、基板Wを所望の温度に制御するようになっている。サセプタ2には、ウエハ載置面の外周領域、および側面を覆うようにセラミックス製のカバー部材32が設けられている。
【0040】
サセプタ2を支持する支持部材33は、サセプタ2の底面中央からチャンバー1の底壁に形成された孔部を貫通してチャンバー1の下方に延び、その下端が昇降機構34に接続されており、昇降機構34によりサセプタ2が支持部材33を介して、
図2に示す処理位置と、その下方の二点鎖線で示すウエハの搬送が可能な搬送位置との間で昇降可能となっている。また、支持部材33のチャンバー1の下方位置には、鍔部35が取り付けられており、チャンバー1の底面と鍔部35の間には、チャンバー1内の雰囲気を外気と区画し、サセプタ2の昇降動作にともなって伸縮するベローズ36が設けられている。
【0041】
チャンバー1の底面近傍には、昇降板37aから上方に突出するように3本(2本のみ図示)のウエハ支持ピン37が設けられている。ウエハ支持ピン37は、チャンバー1の下方に設けられた昇降機構38により昇降板37aを介して昇降可能になっており、搬送位置にあるサセプタ2に設けられた貫通孔22に挿通されてサセプタ2の上面に対して突没可能となっている。これにより、ウエハ搬送機構(図示せず)とサセプタ2との間で基板Wの受け渡しが行われる。
【0042】
チャンバー1の壁部の内部には、ヒーター(図示せず)が埋設されており、チャンバー1の内壁部の温度を100~350℃程度に制御し、チャンバー1の内壁へのTiSix膜の付着を抑制するように構成されている。
【0043】
シャワーヘッド3は、チャンバー1内に処理ガスをシャワー状に供給するためのもので、チャンバー1の上部にサセプタ2に対向するように設けられており、サセプタ2とほぼ同じ直径を有している。シャワーヘッド3は、チャンバー1の天壁29に固定された本体部39と、本体部39の下に接続されたシャワープレート40とを有している。本体部39とシャワープレート40との間にはガス拡散空間41が形成されている。
【0044】
ガス拡散空間41内には、複数個のガス分散部材42が設けられている。ガス分散部材42の周囲には複数のガス吐出孔が形成されている。ガス分散部材42は、本体部39に設けられた複数のガス供給路43のそれぞれの一端に接続されている。ガス供給路43の他端は、本体部39の上面中央部に形成された拡散部44に接続されている。また、本体部39の中央部には、その上面から拡散部44へ貫通する2つのガス導入孔45a、45bが設けられている。
【0045】
シャワープレート40の周縁部には下方に突出する環状突起部40bが形成され、シャワープレート40の環状突起部40bの内側の平坦面にはガス吐出孔40aが形成されている。サセプタ2が処理位置に存在した状態では、シャワープレート40とサセプタ2との間に処理空間Sが形成され、環状突起部40bとサセプタ2のカバー部材32の上面が近接して環状隙間48が形成される。
【0046】
排気部4は、排気ダクト28の排気口28bに接続された排気配管46と、排気配管46に接続された、真空ポンプや圧力制御バルブ等を有する排気機構47とを備えている。処理に際しては、チャンバー1内のガスはスリット28aを介して排気ダクト28に至り、排気ダクト28から排気部4の排気機構47により排気配管46を通って排気される。
【0047】
処理ガス供給機構5は、TiプリカーサであるTiI4ガスを供給するTiI4ガス供給源51と、還元ガス(シリサイド化ガス)としてのSiH4ガスを供給するSiH4ガス供給源52とを有する。処理ガス供給機構5は、さらに、パージガスであるN2ガスを供給する第1N2ガス供給源53および第2N2ガス供給源54と、H2ガス、重水素含有ガス、NH3ガスのような他の還元ガス(以下、便宜上、Rガスとも表記する)を供給するRガス供給源55と、成膜阻害剤(inhibitor)を供給する成膜阻害剤供給源56とを有する。
【0048】
TiI4ガス供給源51からはTiI4ガス供給ライン61が延び、SiH4ガス供給源52からはSiH4ガス供給ライン62が延びている。TiI4ガス供給ライン61およびSiH4ガス供給ライン62の他端は、上述したガス導入孔45a、45bにそれぞれ接続されている。
【0049】
第1N2ガス供給源53には、TiI4ガス供給ライン61側にN2ガスを供給する第1N2ガス供給ライン63が接続されている。また、第2N2ガス供給源54には、SiH4ガス供給ライン62側にN2ガスを供給する第2N2ガス供給ライン66が接続されている。
【0050】
第1N2ガス供給ライン63は、ALD成膜中に常時N2ガスを供給する第1連続N2ガス供給ライン64と、パージ工程のときのみN2ガスを供給する第1フラッシュパージライン65とに分岐している。また、第2N2ガス供給ライン66は、ALD成膜中に常時N2ガスを供給する第2連続N2ガス供給ライン67と、パージ工程のときのみN2ガスを供給する第2フラッシュパージライン68とに分岐している。第1連続N2ガス供給ライン64の他端はTiI4ガス供給ライン61に接続され、第1フラッシュパージライン65の他端は第1連続N2ガス供給ライン64に接続されている。第2連続N2ガス供給ライン67の他端はSiH4ガス供給ライン62に接続され、第2フラッシュパージライン68の他端は第2連続N2ガス供給ライン67に接続されている。なお、第1フラッシュパージライン65および第2フラッシュパージライン68は流量が多いため、第1連続N2ガス供給ライン64および第2連続N2ガス供給ライン67には、それぞれ逆流を防止するためのオリフィス83および84が設けられている。
【0051】
Rガス供給源55からはRガス供給ライン69が延び、成膜阻害剤供給源56からは成膜阻害剤供給ライン70が延びている。H2ガス供給ライン69の他端は第2連続N2ガス供給ライン67に接続されており、成膜阻害剤供給ライン70の他端はH2ガス供給ライン69に接続されている。
【0052】
TiI4ガス供給ライン61には、下側から順にバルブV1、バッファタンク81、流量計71が介装されている。また、SiH4ガス供給ライン62には、下流側から順にバルブV2、バッファタンク82、流量制御器72が介装されている。バッファタンク81,82は各ガスを一旦貯留するためのものであり、これらにガスを貯留してその中の圧力を昇圧した後に貯留したガスを供給することにより、大流量のガスをチャンバー1内に供給することができる。大流量のN2ガスを供給する第1および第2フラッシュパージライン65、68にバッファタンクを設けてもよい。
【0053】
第1連続N2ガス供給ライン64、第1フラッシュパージライン65、第2連続N2ガス供給ライン67、および第2フラッシュパージライン68には、それぞれ、下流側にバルブV3、V4、V5、V6と、上流側に流量制御器73、74、75,76が介装されている。Rガス供給ライン69および成膜阻害剤供給ライン56には、それぞれ、流量制御器77、78が介装されている。また、H2ガス供給ライン69における成膜阻害剤供給ライン70の合流点の下流側にバルブV7が介装されている。
【0054】
バルブV1~V7は、ALDの際にガスを切り替えるためのALDバルブとして機能し、高速で開閉可能な高速バルブで構成される。
【0055】
なお、図示していないが、ガス供給機構5は、チャンバー1内のクリーニングを行うためのクリーニングガスとしてClF3ガスを供給するClF3ガス供給ラインも有している。また、チャンバー1の底部からN2ガスを供給する底部N2ガス供給ラインも有している。
【0056】
TiI
4は常温では固体であるため、
図13に示すように、TiI
4ガス供給源51は、固体状のTiI
4を昇華させる機能を有している。具体的には、TiI
4ガス供給源51は、常温で固体であるTiI
4を収容する固体原料タンク90を有している。固体原料タンク90の周囲にはヒーター90aが設けられており、タンク90内のTiI
4を適宜の温度に加熱して、TiI
4を昇華させるようになっている。
【0057】
固体原料タンク90には、上方からキャリアガスであるN2ガスを供給するためのキャリアガス配管91が挿入されている。キャリアガス配管91にはキャリアN2ガス供給源92が接続されている。キャリアガス配管91には、流量制御器91aが介装されている。また、固体原料タンク90内には上述したTiI4ガス供給ライン61が上方から挿入されている。TiI4ガス供給ライン61にはTiI4ガスの凝縮防止のためのヒーター(図示せず)が設けられている。そして、固体原料タンク90内で昇華したTiI4ガスがキャリアN2ガスにより搬送されて、TiI4ガス供給ライン61に供給される。TiI4ガス供給ライン61の流量計71よりも上流側の部分にオフセットN2ガス供給ライン93が接続されており、オフセットN2ガス供給ライン93にはN2ガス供給源94が接続されている。オフセットN2ガス供給ライン93には、流量制御器93aとバルブ93bが設けられている。キャリアガス配管91の流量制御器91aとオフセットN2ガス供給ライン93の流量制御器93aにより、TiI4ガス流量が調整される。
【0058】
キャリアガス配管91とTiI4ガス供給ライン61との間は、バイパス配管97により接続されており、このバイパス配管97にはバルブ97aが介装されている。キャリアガス配管91におけるバイパス配管97接続部の上流側および下流側には、それぞれバルブ95aおよびバルブ95bが介装されている。また、TiI4ガス供給ライン61におけるバイパス配管97接続部の上流側および下流側には、それぞれバルブ96aおよびバルブ96bが介装されている。そして、バルブ95bおよび96aを閉じてバルブ95a,96b,97aを開くことにより、キャリアN2ガス供給源93からのN2ガスを、キャリアガス配管91、バイパス配管97を経て、TiI4ガス供給ライン61をパージすることが可能となっている。なお、オフセットN2ガス供給ライン93からのN2ガスによってもTiI4ガス供給ライン61をパージすることが可能である。
【0059】
なお、チャンバー1内のパージの際に、第1フラッシュパージライン65および第2フラッシュパージライン68から、フラッシュパージN2ガスを供給してパージを強化することができるが、第1および第2フラッシュパージライン65、68は必須ではない。また、バッファタンク81、82も必須ではない。
【0060】
制御部6はコンピュータで構成されており、CPUを備えた主制御部と、入力装置(キーボード、マウス等)、出力装置(プリンタ等)、表示装置(ディスプレイ等)、記憶装置(記憶媒体)を有している。主制御部は、例えば、バルブV1~V7の開閉、流量制御器72~78によるガスの流量の調整、圧力制御バルブによるチャンバー1内の圧力の調整、ヒーター31による基板Wの温度の調整などの各構成部の動作を制御する。これらの動作の制御は、記憶装置に内蔵された記憶媒体(ハードディスク、光デスク、半導体メモリ等)に記憶された制御プログラムである処理レシピにより実行される。
【0061】
以上のように構成された成膜装置100においては、サセプタ2に載置される基板Wの温度が450℃以下、例えば350℃になるように制御部6によりヒーター31による加熱を制御しておく。
【0062】
その状態で、まず、ゲートバルブGを開放して真空搬送室から搬送装置(いずれも図示せず)により基板Wをチャンバー1内に搬入し、サセプタ2上に載置する。基板Wは、チャンバー1への搬送に先立って、必要に応じて別個のチャンバーでプリクリーン処理等により自然酸化膜が除去されていてもよい。
【0063】
基板Wを載置し、搬送装置を退避させた後、ゲートバルブGを閉じ、サセプタ2を処理位置まで上昇させる。次いで、排気部4によりチャンバー1内を排気するとともに、バルブV3、V5を開いて第1連続N2ガス供給ライン64および第2連続N2ガス供給ライン67を介して、チャンバー1の処理空間S内にN2ガスを連続的に供給する。それにより、チャンバー1内を13~6650Pa(0.1~50Torr)の減圧状態に保持するとともに、サセプタ2上の基板Wの温度を450℃以下の所望の温度、例えば350℃に安定させる。
【0064】
そして、N2ガスを連続的に供給した状態を維持したまま、TiI4ガス供給ライン61、SiH4ガス供給ライン62のバルブV1、V2を操作し、TiI4ガスとSiH4ガスとを交互に間欠的に操作して基板Wのコンタクト形成領域にALDによりTiSix膜を形成する。
【0065】
図14は、
図12の成膜装置によりTiSix膜を成膜する際のガス供給シーケンスの一例を示す図である。
処理の間、バルブV3およびV5を開けたままとし、第1連続N
2ガス供給ライン64および第2連続N
2ガス供給ライン67を経てN
2ガスを供給し続ける。そして、最初にバルブV1を開け、TiI
4ガス供給ライン61を経てTiI
4ガスをチャンバー1内の処理空間Sに供給する(操作S1)。これにより、基板Wの表面にTiI
4ガスが吸着する。このとき、TiI
4ガスは、バッファタンク81に一旦貯留され、昇圧された後にチャンバー1内に供給される。
【0066】
次いで、バルブV1を閉じてTiI4ガスを停止し、チャンバー1の処理空間S内をパージする(操作S2)。このときのパージは、バルブV4、V6を開けて、連続供給されるN2ガスに加え、第1フラッシュパージライン65および第2フラッシュパージライン68からもN2ガス(フラッシュパージN2ガス)を供給する。これにより、大流量のN2ガスにより、処理空間Sの余剰のTiI4ガス等を速やかに排出する。
【0067】
次いで、バルブV4、V6を閉じて、フラッシュパージN2ガスを停止するとともに、バルブV2を開け、SiH4ガス供給ライン62を経てSiH4ガスをチャンバー1内の処理空間Sに供給する(操作S3)。これにより、吸着しているTiI4ガスとSiH4ガスとが反応する。このとき、SiH4ガスは、バッファタンク82に一旦貯留され、昇圧された後にチャンバー1内に供給される。
【0068】
次いで、バルブV2を閉じてSiH4ガスを停止し、チャンバー1の処理空間S内をパージする(操作S4)。このときのパージは、バルブV4、V6を開けて、連続供給されるN2ガスに加え、第1フラッシュパージライン65および第2フラッシュパージライン68からもN2ガス(フラッシュパージN2ガス)を供給する。これにより、大流量のN2ガスにより、処理空間Sの余剰のSiH4ガス等を速やかに排出する。
【0069】
以上の操作S1~S4を短時間で1サイクル行うことにより、薄いTiSix単位膜を形成し、これらのステップのサイクルを予め定められた回数繰り返すことにより、所望の膜厚のTiSix膜を成膜する。このときのTiSix膜の膜厚は、上記サイクルの繰り返し数により制御することができる。
【0070】
SiH4ガスの他に、Rガス供給源55からH2ガス、重水素含有ガス、NH3ガスのような他の還元ガス(Rガス)を用いることにより、還元反応をより進行しやすくすることができる。他の還元ガスの供給タイミングは特に限定されず、例えば、Si含有ガスを供給するたびに同時に供給してもよいし、Si含有ガスを供給するタイミングの一部、例えば数回に1回供給してもよい。また、TiI4ガスを供給するタイミングで他の還元ガスを供給してもよいし、SiH4ガスやTiI4ガスとは異なるタイミングで供給してもよい。
【0071】
成膜阻害剤供給源56からの成膜阻害剤は、必要に応じて供給することができる。成膜阻害剤を供給することにより、上述したように、TiSix膜を成膜したくない領域に成膜阻害剤を吸着させてTiSix膜の成膜を抑制することができる。成膜阻害剤の供給のタイミングとしては、基板Wをサセプタ2に載置した後、ALDによるTiSix膜の形成に先立って行うことができる。また、ALDによりTiSix膜を形成する際に成膜阻害剤を供給してもよい。例えば、成膜阻害剤を操作S2の後や操作S4の後にシーケンシャルに供給してもよいし、操作S1または操作S3のTiI4ガスまたはSiH4ガスを供給する際に供給してもよい。TiI4ガスを供給する際、およびSiH4ガスを供給する際の両方に成膜阻害剤を供給してもよい。
【0072】
1枚の基板Wの処理が終了後、チャンバー1内をN2ガスでパージし、サセプタ2を搬送位置まで下降させる。次いで、ゲートバルブGを開け、真空搬送室から搬送装置を挿入し、サセプタ2上の基板Wをチャンバー1から搬出する。
【0073】
TiSix膜が形成された基板Wは、別のチャンバーに搬送してH2プラズマ等によりプラズマトリートメントを行ってもよい。
【0074】
成膜装置100において、ある枚数の基板Wの成膜処理が終了後、ClF3ガス供給ラインからクリーニングガスとしてClF3ガスを供給してチャンバー1内のクリーニングを行ってもよい。クリーニングは、チャンバー1内に基板Wが存在していない状態でチャンバー1内にClF3ガスを供給することにより行う。チャンバー1の内壁は、100~350℃程度に加熱されており、TiSix膜の付着は抑制されているが、その付着を完全になくすことはできない。このため、ClF3ガスによりチャンバー1の内壁に付着したTiSix膜を除去する。
【0075】
以上のような成膜装置100におけるALDによるTiSix膜の成膜においては、基板Wに反応性が良好なTiI4ガスを1分子層程度に制御性良く吸着させた後、SiH4ガスと反応させて極めて薄いTiSix単位膜を形成し、この操作を複数回繰り返す。このため、450℃以下という低温でTiSix膜を成膜することが可能となる。また、制御性が高いことにより、0.5~10nmという薄いTiSix膜を成膜することができる。さらに、コンタクト形成領域にALDにより直接TiSix膜を形成するため、コンタクト形成領域からの不純物の吸い上げを抑制してSiコンタクトの低抵抗化を図ることができる。
【0076】
また、操作S2、S4のパージの際に、連続供給されるN2ガスに加え、第1フラッシュパージライン65および第2フラッシュパージライン68からもN2ガス(フラッシュパージN2ガス)を供給するので、ガス置換性が高い。このため、短期間でパージが可能であるとともに、膜厚の制御性を高くすることができる。また、TiI4ガス供給ライン61およびSiH4ガス供給ライン62にバッファタンク81、82を設けて、TiI4ガスおよびSiH4ガスをこれらに一旦貯留してから吐出するようにした。これにより、短時間でTiI4ガスSiH4ガスを供給しやすくなり、1サイクルが短い場合でも確実に必要な量を供給できる。
【0077】
<他の適用>
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0078】
例えば、上記実施形態では、ロジック半導体のコンタクト形成領域にTiSix膜を成膜する場合を主に説明したが、DRAMや3DNANDのようなメモリ半導体のコンタクト形成領域に適用してもよい。
【0079】
また、
図12に示した成膜装置は例示に過ぎず、
図12とは異なる構造の枚様式の成膜装置であってもよく、また、複数の基板に対して一度に成膜するバッチ式の成膜装置であってもよい。さらに、ガス供給領域と基板との相対移動によりALDを実現する成膜装置であってもよい。このような成膜装置としては、例えば、回転可能なステージに複数の基板を載置し、ステージを回転させながら、基板に各ガスの供給領域を通過させてALD成膜を実現させるセミバッチ式のものを挙げることができる。また、回転しないステージに複数の基板を載置してALD成膜するセミバッチ式の成膜装置であってもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、基板として半導体ウエハを例にとって説明したが、半導体ウエハに限定されず、Siコンタクトを形成するコンタクト形成領域を有するものであればよい。例えば、FPD(フラットパネルディスプレイ)に用いるガラス基板や、セラミック基板等の他の基板であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1;チャンバー
2;サセプタ
3;シャワーヘッド
4;排気部
5;ガス供給機構
6;制御部
51;TiI4ガス供給源
52;SiH4ガス供給源
53,54;N2ガス供給源
55;他の還元ガス(Rガス)供給源
56;成膜阻害剤供給源
100;成膜装置
101;基板
102;絶縁膜
103;コンタクトホール
104;コンタクト形成領域
105;TiSix膜
106;配線
107;成膜阻害剤
S;処理空間
W;基板