(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039118
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】メタン酸化カップリング触媒組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/78 20060101AFI20230313BHJP
B01J 23/30 20060101ALI20230313BHJP
B01J 23/89 20060101ALI20230313BHJP
B01J 23/34 20060101ALI20230313BHJP
B01J 23/36 20060101ALI20230313BHJP
C01G 51/00 20060101ALI20230313BHJP
C01G 47/00 20060101ALI20230313BHJP
C01G 45/00 20060101ALI20230313BHJP
C01G 41/00 20060101ALI20230313BHJP
C07C 9/06 20060101ALI20230313BHJP
C07C 11/04 20060101ALI20230313BHJP
C07C 2/84 20060101ALI20230313BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230313BHJP
【FI】
B01J23/78 Z
B01J23/30 Z
B01J23/89 Z
B01J23/34 Z
B01J23/36 Z
C01G51/00 A
C01G47/00
C01G45/00
C01G41/00 A
C07C9/06
C07C11/04
C07C2/84
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146118
(22)【出願日】2021-09-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「ハイスループット計算によるデータ集積とデータ科学による触媒設計」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(71)【出願人】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(71)【出願人】
【識別番号】304024430
【氏名又は名称】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 啓介
(72)【発明者】
【氏名】大山 順也
(72)【発明者】
【氏名】西村 俊
【テーマコード(参考)】
4G048
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AA05
4G048AB02
4G048AC08
4G048AE05
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4G048AE08
4G169AA03
4G169BA04A
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4G169BC67B
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4G169CC40
4G169DA06
4G169EC22Y
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4G169FB19
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4G169FB57
4H006AA02
4H006AC23
4H006BA02
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4H006BA05
4H006BA06
4H006BA10
4H006BA14
4H006BA16
4H006BA20
4H006BB61
4H006BC10
4H006BE30
4H039CA12
4H039CA29
(57)【要約】
【課題】比較的高い活性、C2化合物選択性及び安定性を示し、CO生成をより抑制し得る、新規なメタン酸化カップリング触媒を提供する。
【解決手段】Ti、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素、遷移金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素を含む、Ti含有複合金属酸化物であり、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群の合計から少なくとも3種選択され、遷移金属は、Co、Mn、Zr、Hf、Ag、Re及びWから成る群から選択される、Ti含有複合金属酸化物を含む触媒組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ti、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素、遷移金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素を含む、Ti含有複合金属酸化物であり、
周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群の合計から少なくとも3種選択され、
遷移金属は、Co、Mn、Zr、Hf、Ag、Re及びWから成る群から選択される、Ti含有複合金属酸化物。
【請求項2】
式1:TiAX
[式1中、Aは、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される少なくとも1種、Xは、Co、Mn、Zr、Hf、Ag、Re及びWから成る繊遷移金属の群から選択される少なくとも1種、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群の合計から少なくとも3種選択される]で示される、Ti含有複合金属酸化物。
【請求項3】
第1族のアルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選択され、第2族のアルカリ土類金属は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムから選択される、請求項1又は2に記載のTi含有複合金属酸化物を含む。
【請求項4】
担体に酸化物が担持されたTi含有複合金属酸化物であり、
担体は、TiO2、ZrO2、BaO、SrO、CaO、MgOから成る群から選択される少なくとも1種を含み、
酸化物は、Tiの酸化物を含んでよく、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含み、遷移金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のTi含有複合金属酸化物。
【請求項5】
担体は、TiO2を含み、
酸化物は、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物を含み、遷移金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物を含み、更に、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群と遷移金属から成る群の合計から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む、請求項4に記載のTi含有複合金属酸化物。
【請求項6】
担体は、TiO2を含み、
酸化物は、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物と、遷移金属から成る群から選択される2種の元素の酸化物を含む、請求項5に記載のTi含有複合金属酸化物。
【請求項7】
担体は、TiO2を含み、
酸化物は、周期表第1族のアルカリ金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物と、遷移金属から成る群から選択される2種の元素の酸化物を含む、請求項6に記載のTi含有複合金属酸化物。
【請求項8】
担体は、ZrO2、BaO、SrO、CaO、MgOから成る群から選択される少なくとも1種を含み、
酸化物は、Tiの酸化物を含み、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群の合計から少なくとも2種選択される元素の酸化物を含む、請求項4に記載のTi含有複合金属酸化物。
【請求項9】
担体は、ZrO2を含み、
酸化物は、Tiの酸化物を含み、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物を含み、更に、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む、請求項8に記載のTi含有複合金属酸化物。
【請求項10】
担体は、ZrO2を含み、
酸化物は、Tiの酸化物を含み、周期表第1族のアルカリ金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物を含み、更に、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む、請求項9に記載のTi含有複合金属酸化物。
【請求項11】
担体は、BaO、SrO、CaO、MgOから成る群から選択される少なくとも1種を含み、
酸化物は、Tiの酸化物を含み、遷移金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物を含み、更に、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群の合計から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む、請求項10に記載のTi含有複合金属酸化物。
【請求項12】
担体は、BaOを含み、
酸化物は、Tiの酸化物を含み、遷移金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物を含み、更に、周期表第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群の合計から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む、請求項11に記載のTi含有複合金属酸化物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のTi含有複合金属酸化物を含むメタン酸化カップリング触媒組成物。
【請求項14】
請求項13に記載のメタン酸化カップリング触媒組成物を使用して、メタンから炭素数2以上の炭化水素を製造する、炭化水素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン酸化カップリング触媒組成物及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、メタンガスと酸素との反応から、エタン、エチレン等の炭素数2以上のアルカン及び/又はアルケンを得る触媒組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタン(CH4)と酸素(O2)とを反応させて、直接炭素数2以上のアルカン及び/又はアルケン(例えば、エタン、エチレン等)を得る反応は、メタン酸化カップリング反応(Oxidative Coupling of Methane:OCM)とも呼ばれ、安価な天然ガス(主にメタン)から、工業的に有用なエチレンを得ることができる方法として知られている。エチレンは、工業的には、石油留分(例えばナフサ)のクラッキングで製造されることが多いので、石油を原料としない、エチレンの製造方法として期待される。
【0003】
非特許文献1は、メタン酸化カップリング触媒として、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む塩基性の固体触媒が有用であることを開示する。
【0004】
非特許文献2は、メタン酸化カップリング反応について、比較的高い活性、C2化合物選択性及び安定性を示す触媒として、マンガン、ナトリウム、タングステンの酸化物をシリカに担持させた、Mn-Na2WO4/SiO2を報告した。その触媒を使用した場合、反応温度は、750~875℃であり、C2化合物の収率は、15~25%であり、C2化合物の選択率は、60~80%であった。
【0005】
特許文献1は、Li2ABO4(Aは、Ca、Sr、Ba及びMgからなる群から選択される1種以上であり)、Bは、Si及び/又はGeである。)で表されるLi含有複合金属酸化物を含む、触媒を開示する。
【0006】
特許文献2は、三二酸化マンガン、タングステン酸塩、ペロブスカイト構造及び/又はスピネル構造を有するマンガン複合酸化物、及び担体を含み、三二酸化マンガンとタングステン酸塩がペロブスカイト構造及び/又はスピネル構造を有するマンガン複合酸化物及び担体に担持されている、メタン酸化カップリング触媒を開示する。
【0007】
特許文献3は、ABX3の一般構造を有するペロブスカイト組成物であって、Aは、アルカリ土類金属及びランタノイド金属であり、ランタノイド金属はサマリウム(Sm)であり、BはIV属金属である等の特徴を有するペロブスカイト組成物は、メタン及び/又はエタンからエチレンへの変換に特に有用であることを開示する(特許文献3特許請求の範囲、実施例1~4参照)。
【0008】
特許文献4は、a)イットリウム、ランタン及びスカンジウムからなる群から選択されるIIIB族金属、b)バリウム、カルシウム及びストロンチウムから成る群から選択されるIIA族金属、c)錫、鉛及びゲルマニウムから成る群から選択されるIVA属金属の混合酸化物からなる、メタンをより高級な炭化水素に変換するための酸化的カップリング触媒組成物を開示する。
【0009】
上述したように、非特許文献2に記載された、Mn-Na2WO4/SiO2は、比較的高い活性、C2化合物選択性及び安定性を示すメタン酸化カップリング反応触媒として、注目されている。石油を原料とすることなくC2化合物を製造することができる、メタン酸化カップリング反応触媒は今後更に注目されることが期待される。しかしながら、非特許文献2記載の触媒と同程度又はそれ以上の性能を示す別のタイプのメタン酸化カップリング反応触媒は、ほとんど知られていない。そのような別のタイプのメタン酸化カップリング反応触媒は、学術的にも工業的にも興味深い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2020-28821号公報
【特許文献2】特開2020-511303号公報
【特許文献3】特開2008-522811号公報
【特許文献4】特開平3-503504号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】U. Zavyalova, M. Holena, R. Schloegl, M. Baerns, ChemCatChem, 3, 1935-1947 (2011).
【非特許文献2】S. Arndt, T. Otremba, U. Simon, M. Yildiz, H. Schubert, R. Schomaecher, Applied Catalysis A: General, 425-426, 53-61 (2012).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、比較的高い活性、C2化合物選択性及び安定性を示す、新規なメタン酸化カップリング触媒を提供することを目的とする。そのようなメタン酸化カップリング触媒の反応温度は、より低温であることが好ましく、C2化合物の収率は、より高いことが好ましく、C2化合物の選択性は、より高いことが好ましい。更に、非特許文献2に記載された、Mn-Na2WO4/SiO2は、COを生成する傾向にあり、そのようなCO生成傾向を抑制することができると、生成物全体の毒性を低下させることができ、製造方法全体の安全性をより向上させることができ、好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、Ti、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素、遷移金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素を含む、Ti含有複合金属酸化物であって、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群の合計から少なくとも3種選択され、遷移金属は、特定の元素から成る群から選択される、Ti含有複合金属酸化物が得られることを見出した。更に、そのようなTi含有複合金属酸化物を含む触媒組成物は、メタン酸化カップリング反応に好適であることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0014】
本明細書は、下記の形態を含む。
1.Ti、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素、遷移金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素を含む、Ti含有複合金属酸化物であり、
周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群の合計から少なくとも3種選択され、
遷移金属は、Co、Mn、Zr、Hf、Ag、Re及びWから成る群から選択される、Ti含有複合金属酸化物。
2.式1:TiAX
[式1中、Aは、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される少なくとも1種、Xは、Co、Mn、Zr、Hf、Ag、Re及びWから成る繊遷移金属の群から選択される少なくとも1種、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群の合計から少なくとも3種選択される]で示される、Ti含有複合金属酸化物。
3.第1族のアルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選択され、第2族のアルカリ土類金属は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムから選択される、上記1又は2に記載のTi含有複合金属酸化物を含む。
4.担体に酸化物が担持されたTi含有複合金属酸化物であり、
担体は、TiO2、ZrO2、BaO、SrO、CaO、MgOから成る群から選択される少なくとも1種を含み、
酸化物は、Tiの酸化物を含んでよく、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含み、遷移金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む、上記1~3のいずれか1つに記載のTi含有複合金属酸化物。
5.担体は、TiO2を含み、
酸化物は、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物を含み、遷移金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物を含み、更に、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群と遷移金属から成る群の合計から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む、上記4に記載のTi含有複合金属酸化物。
6.担体は、TiO2を含み、
酸化物は、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物と、遷移金属から成る群から選択される2種の元素の酸化物を含む、請求項5に記載のTi含有複合金属酸化物。
7.担体は、TiO2を含み、
酸化物は、周期表第1族のアルカリ金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物と、遷移金属から成る群から選択される2種の元素の酸化物を含む、上記6に記載のTi含有複合金属酸化物。
8.担体は、ZrO2、BaO、SrO、CaO、MgOから成る群から選択される少なくとも1種を含み、
酸化物は、Tiの酸化物を含み、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群の合計から少なくとも2種選択される元素の酸化物を含む、上記4に記載のTi含有複合金属酸化物。
9.担体は、ZrO2を含み、
酸化物は、Tiの酸化物を含み、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物を含み、更に、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む、上記8に記載のTi含有複合金属酸化物。
10.担体は、ZrO2を含み、
酸化物は、Tiの酸化物を含み、周期表第1族のアルカリ金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物を含み、更に、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む、上記9に記載のTi含有複合金属酸化物。
11.担体は、BaO、SrO、CaO、MgOから成る群から選択される少なくとも1種を含み、
酸化物は、Tiの酸化物を含み、遷移金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物を含み、更に、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群の合計から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む、上記10に記載のTi含有複合金属酸化物。
12.担体は、BaOを含み、
酸化物は、Tiの酸化物を含み、遷移金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物を含み、更に、周期表第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群の合計から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含む、上記11に記載のTi含有複合金属酸化物。
13.上記1~12のいずれか1つに記載のTi含有複合金属酸化物を含むメタン酸化カップリング触媒組成物。
14.上記13に記載のメタン酸化カップリング触媒組成物を使用して、メタンから炭素数2以上の炭化水素を製造する、炭化水素の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態のTi含有複合金属酸化物は、Ti、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素、遷移金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素を含み、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群の合計から少なくとも3種選択され、遷移金属は、特定の元素から成る群から選択される。そのような金属酸化物を含む触媒組成物は、比較的高い活性(低温反応性)、C2化合物の収率、C2化合物の選択性等の性質を示す。更に、そのような金属酸化物を含む触媒組成物は、CO生成を抑制し、CO2を生成する傾向を示す。生成物全体の毒性をより低下させることができ、より安全な製造方法を提供し得る。
よって、本発明の実施形態のTi含有複合金属酸化物を含む触媒組成物は、メタンから炭素数2以上の炭化水素を製造するために(メタン酸化カップリング反応に)、好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、一の要旨において、新たなメタン酸化カップリング触媒を提供し、それは、
Ti、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素、遷移金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素を含む、Ti含有複合金属酸化物であり、
周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群から合計で選択される3種とTiを含み、
遷移金属は、Co、Mn、Zr、Hf、Ag、Re及びWから成る群から選択される、Ti含有複合金属酸化物である。
【0017】
本発明の実施形態のTi含有複合金属酸化物は、下記のように記載することもできる。
式1:TiAX
[式1中、Aは、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される少なくとも1種、Xは、Co、Mn、Zr、Hf、 Ag、Re及びWから成る遷移金属の群から選択される少なくとも1種、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群の合計から3種選択される]で示される、Ti含有複合金属酸化物。尚、式1では、酸素を省略している。
【0018】
本発明の実施形態のTi含有複合金属酸化物は、Ti、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素、遷移金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素を含む。更に、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群と遷移金属から成る群から合計で3種の元素が選択され、遷移金属は、Co、Mn、Zr、Hf、 Ag、Re及びWから成る群から選択される。従って、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から2種の元素が選択され、遷移金属から成る群から1種選択されてよい。また、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から1種の元素が選択され、遷移金属から成る群から2種選択されてよい。本発明の実施形態のTi含有複合金属酸化物は、Tiを含み、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群、遷移金属から成る群から3種の元素を含む(Tiを含めて4種の元素(酸素を除く)を含む)ことが好ましい。
【0019】
第1族のアルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムから成る群から選択されてよく、第2族のアルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムから成る群から選択されてよい。
第1族のアルカリ金属は、リチウム及びセシウムから成る群から選択されることが好ましく、第2族のアルカリ土類金属は、マグネシウム、ストロンチウム、カルシウム及びバリウムから成る群から選択されることが好ましい。
第1族のアルカリ金属は、リチウム及びセシウムから成る群から選択され、第2族のアルカリ土類金属は、マグネシウム、カルシウム及びバリウムから成る群から選択される場合、低温化、C2収率、C2選択率のいずれかにより優れる。
【0020】
本発明の実施形態のTi含有複合金属酸化物は、担体に酸化物が担持されたTi含有複合金属酸化物であることが好ましい。
本発明の目的とするTi含有複合金属酸化物を得られる限り特に制限されることはないが、担体は、TiO2、ZrO2、BaO、SrO、CaO、MgOから成る群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、酸化物は、Tiの酸化物を含んでよく、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含み、遷移金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含むことが好ましい。担体と担体に担持される酸化物は、Tiを含み、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群、遷移金属から成る群から3種の元素を含む(Tiを含めて4種の元素(酸素を除く)を含む)ことが好ましい。
この場合、低温化、C2収率、C2選択率のいずれかにより優れる。
【0021】
酸化物は、少なくとも3種の元素を含むことが好ましい。従って、本発明の実施形態のTi含有複合金属酸化物は、M1M2M3/担体と記載することもできる。担体は、TiO2、ZrO2、BaO、SrO、CaO、MgOから成る群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。酸化物は、単にM1M2M3と記載して、酸素以外の元素を表示して酸素は省略する。
【0022】
担体は、TiO2、ZrO2、BaO、SrO、CaO、MgOから成る群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
酸化物は、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物を含み、遷移金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物を含み、更に、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群と遷移金属から成る群の合計から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含むことが好ましい。
この場合、低温化、C2収率、C2選択率のいずれかにより優れる。
【0023】
担体は、TiO2を含むことが好ましく、
酸化物は、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物と、遷移金属から成る群から選択される2種の元素の酸化物を含むことが好ましい。
この場合、低温化、C2収率、C2選択率のいずれかにより優れる。
このTi含有複合金属酸化物は、M1M2M3/TiO2と示すことができる。ここで、例えば、M1は、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択され、M2とM3は、遷移金属から成る群から選択される。
【0024】
担体は、TiO2を含むことが好ましく、
酸化物は、周期表第1族のアルカリ金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物と、遷移金属から成る群から選択される2種の元素の酸化物を含むことがより好ましい。
この場合、低温化、C2収率、C2選択率のいずれかにより優れる。
このTi含有複合金属酸化物は、M1M2M3/TiO2と示すことができる。ここで、例えば、M1は、周期表第1族のアルカリ金属から成る群から選択され、M2とM3は、遷移金属から成る群から選択される。
【0025】
担体が、TiO2を含む場合、TiO2を含む担体に担持される酸化物の元素の組み合わせは、より具体的には、CoAgCs、MgCaHf、MgMnHf、ZrMnHf、等が好ましく、CoAgCsがより好ましい。より具体的には、CoAgCs/TiO2、MgCaHf/TiO2、MgMnHf/TiO2、ZrMnHf/TiO2等が好ましく、CoAgCs/TiO2がより好ましい。
【0026】
担体は、ZrO2、BaO、CaO、MgOから成る群から選択される少なくとも1種を含み、
酸化物は、Tiの酸化物を含み、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群の合計から少なくとも2種選択される元素の酸化物を含むことが好ましい。
この場合、低温化、C2収率、C2選択率のいずれかにより優れる。
【0027】
担体は、ZrO2を含むことがより好ましく、
酸化物は、Tiの酸化物を含み、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物を含み、更に、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含むことがより好ましい。
この場合、低温化、C2収率、C2選択率のいずれかにより優れる。
このTi含有複合金属酸化物は、M1M2M3/ZrO2と示すことができる。ここで、例えば、M1は、Tiであり、M2は、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択され、M3は、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群から選択される。
【0028】
担体は、ZrO2を含むことがより好ましく、
酸化物は、Tiの酸化物を含み、周期表第1族のアルカリ金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物を含み、更に、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含むことがより好ましい。
この場合、低温化、C2収率、C2選択率のいずれかにより優れる。
このTi含有複合金属酸化物は、M1M2M3/ZrO2と示すことができる。ここで、例えば、M1は、Tiであり、M2は、周期表第1族のアルカリ金属から選択され、M3は、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群から選択される。
【0029】
担体が、ZrO2を含む場合、ZrO2に担持される酸化物の元素の組み合わせは、より具体的には、TiCoLi、TiWMg等が好ましく、TiCoLiがより好ましい。より具体的には、TiCoLi/ZrO2、TiWMg/ZrO2等が好ましく、TiCoLi/ZrO2がより好ましい。
【0030】
担体は、BaO、SrO、CaO、MgOから成る群から選択される少なくとも1種を含み、
酸化物は、Tiの酸化物を含み、遷移金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物を含み、更に、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群の合計から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含むことが好ましい。
この場合、低温化、C2収率、C2選択率のいずれかにより優れる。
このTi含有複合金属酸化物は、M1M2M3/(BaO、SrO、CaO又はMgO)と示すことができる。ここで、例えば、M1は、Tiであり、M2は、遷移金属から成る群から選択され、M3は、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群の合計から選択される。
【0031】
担体は、BaOを含むことがより好ましく、
酸化物は、Tiの酸化物を含み、遷移金属から成る群から選択される1種の元素の酸化物を含み、更に、周期表第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群の合計から選択される少なくとも1種の元素の酸化物を含むことがより好ましい。
この場合、低温化、C2収率、C2選択率のいずれかにより優れる。
このTi含有複合金属酸化物は、M1M2M3/BaOと示すことができる。ここで、例えば、M1は、Tiであり、M2は、遷移金属から成る群から選択され、M3は、周期表第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群の合計から選択される。
【0032】
担体が、BaOを含む場合、BaOに担持される酸化物の元素の組み合わせは、TiMgCo、TiMgRe、TiMgW、TiCoAg、TiZrMn、TiZrCs等が好ましく、TiMgCo、TiMgRe、TiMgW、TiCoAg、TiZrMnがより好ましい。より具体的には、TiMgCo/BaO、TiMgRe/BaO、TiMgW/BaO、TiCoAg/BaO、TiZrMn/BaO、TiZrCs/BaO等が好ましく、TiMgCo/BaO、TiMgRe/BaO、TiMgW/BaO、TiCoAg/BaO、TiZrMn/BaOがより好ましい。
【0033】
Ti含有複合金属酸化物を基準(100質量部)として、上述のM1、M2及びM3の元素の各々の含有量は、本発明が目的とするTi含有複合金属酸化物を含む触媒組成物を得られる限り特に制限されることはないが、0.5~10質量部であることが好ましく、0.7~9質量部であることがより好ましく、1.0~8質量部であることが更に好ましく、1.2~7質量部であることが更により好ましい。
上述のM1、M2及びM3の元素の各々の含有量は、0.5~10質量部である場合、 低温化、C2収率、C2選択率のいずれかにより優れる。
【0034】
本発明の実施形態のTi含有複合金属酸化物の製造方法は、目的とするTi含有複合金属酸化物を得ることができる限り、特に制限されることはないが、例えば、湿式含浸法、固相法、ゾルゲル法、水熱合成法、共沈法等などを例示することができる。より簡便な調製法である点から湿式含浸法を用いることが好ましい。
【0035】
湿式含浸法を用いる場合、所望の担体と、M1M2M3に適した原料と、水とを加えて、加熱、乾燥し、焼成することで製造することができる。M1M2M3のいずれかがTiである場合、Tiは、他のものと別途担体と接触させ、加熱、乾燥、焼成することが必要である。Tiの誘導体は加水分解しやすく、メタノール、エタノール等の有機溶剤に溶解し使用する必要があるためである。
【0036】
本発明は、本発明の実施形態のTi含有複合金属酸化物を含む触媒組成物を提供することができる。その触媒組成物を使用して、種々の反応を行うことができるが、特に、メタンから炭素数2以上の炭化水素を製造する、メタン酸化カップリング反応用触媒組成物として好ましく使用することができる。
【0037】
本発明は、本発明の実施形態のTi含有複合金属酸化物を含む触媒組成物を使用することを含む、種々の化合物の製造方法を提供することができる。特に、本発明の実施形態のメタン酸化カップリング反応用触媒組成物を使用することを含む、メタンから炭素数2以上の炭化水素を製造する、炭化水素の製造方法を提供することができる。
【0038】
本発明の実施形態の炭化水素の製造方法では、上述の触媒組成物を用いて、メタンから炭素数2以上の炭化水素を製造することができる。具体的には、メタンと酸素を接触させて、メタンから炭素数2以上の炭化水素を製造することができる。
【0039】
反応温度は、メタンと酸素が反応して炭素数2以上の炭化水素を製造することができれば特に制限されることはないが、500℃以上であることが好ましく、550℃以上であることがより好ましく、600℃以上であることが更に好ましく、650℃以上であることが更により好ましい。500℃以上である場合、炭素数2以上の炭化水素の収率、選択率等を高めることができる。
反応温度は、900℃以下であることが好ましく、850℃以下であることがより好ましい。900℃以下である場合、C2以上の炭化水素の分解反応の進行を制御し、更にエネルギーコストを抑制することができる。
【0040】
メタンと酸素とのモル比(メタン/酸素)は、炭素数2以上の炭化水素を製造することができる限り特に制限されることはないが、1.5以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましい。メタンと酸素とのモル比(メタン/酸素)は、1.5以上である場合、炭素数2以上の炭化水素の収率、選択率を高めることができる。
メタンと酸素とのモル比(メタン/酸素)は、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、3.0以下であることが更により好ましい。10以下である場合、炭素数2以上の炭化水素の収率、選択率を高めることができる。
【0041】
メタンと酸素の混合ガス(原料ガス)は、不活性ガスを含むことができる。不活性ガスを含むことで、過度の温度上昇を抑制して、より適切に温度制御が可能となり好ましい。不活性ガスが、特に制限されることはないが、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウム等が好ましく。安価で入手がしやすい点からより好ましくは窒素ガスである。酸素ガスと不活性ガスとの体積比は、例えば、99:1~30:70であり、97:3~50:50であることが好ましく、95:5~60:40であることが更に好ましい。
【実施例0042】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
尚、実施例の記載において、特に記載がない限り、溶媒を考慮しない部分を、重量部及び重量%の基準としている。
【0043】
本実施例で使用した試薬を、下記表に示す。
【表1】
【0044】
TiO2を担体として含む実施例7のM1M2M3/担体触媒の製造方法を以下に示す。
それぞれの金属元素が3重量%の金属担持量になるように表1に記載の金属前駆体を計量し、TiO2の担体(1.0g)およびイオン交換蒸留水(6mL)と混合した。得られた混合物を50℃で6hr攪拌した後、遠心分離真空乾燥機(東京理化、CVE-3110)を用いて80℃にて真空排気することより余剰の水分を除去した。得られた粉末を110℃で一晩乾燥した後、乳鉢で粉砕し、アルミナ製るつぼ上で1000℃、3h焼成した(昇温速度:10℃/分)。焼成物を乳鉢で粉砕し、所望の触媒組成物(M1M2M3/担体触媒)、即ち、実施例7のTi含有複合金属酸化物を含む触媒組成物を得た。
【0045】
TiをM1, M2, M3のいずれかとして含む、本実施例1~6のTiM2M3/担体触媒の製造方法を以下に示す。
Ti以外の金属元素を3重量%の金属担持量になるように表2に記載の金属前駆体を計量し、所望の担体(1.0g)およびイオン交換蒸留水(6mL)と混合した。得られた混合物を50℃で6h攪拌した後、遠心分離真空乾燥機(東京理化、CVE-3110)を用いて80℃にて真空排気することより余剰の水分を除去した。得られた粉末を110℃で一晩乾燥した後、乳鉢で粉砕し、触媒組成物Aを得た。次いで、エタノール(5mL)中に触媒組成物Aを加え、次いでTi[OCH(CH3)2]4を3重量%の金属担持量になるように加え、50℃で6h攪拌した後、遠心分離真空乾燥機(東京理化、CVE-3110)を用いて80℃にて真空排気することより余剰のエタノールを除去した。得られた粉末を110℃で一晩乾燥した後、乳鉢で粉砕し、アルミナ製るつぼ上で1000℃、3h焼成した(昇温速度:10℃/分)。焼成物を乳鉢で粉砕し、所望の触媒組成物B(M1M2M3/担体触媒)、即ち、実施例1~6のTi含有複合金属酸化物を含む触媒組成物を得た。
【0046】
反応は固定床流通反応装置で行った。内径4mm石英製反応管に触媒組成物粉末を50mg充填した。触媒組成物の前処理として、8mLmin-1のO2流通下400℃に昇温し10min保持することで酸素処理した。8mLmin-1のN2を10min流通させ窒素パージした後、反応ガスCH4/O2/N2=24mLmin-1/7.5mLmin-1/2mLmin-1を流通させた。反応温度は400℃から900℃まで100℃min-1ずつ昇温させ、各温度で反応ガスをガスクロマトグラフで分析した。
【0047】
【0048】
実施例1~7の触媒組成物は、Ti、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素、遷移金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素を含む、Ti含有複合金属酸化物であり、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群の合計から少なくとも3種選択され、遷移金属は、特定の元素から成る群から選択される。
従って、実施例1~7の触媒組成物は、メタン酸化カップリング反応について、比較的高い活性、C2化合物選択性及び安定性を示す。更に、実施例1~7の触媒組成物は、後述する比較例1と比べると、CO生成を抑制し、CO2を生成する傾向を示す。この傾向は高温でより顕著になり得る。生成物全体の毒性をより低下させることができ、より安全な製造方法を提供し得る。
【0049】
比較例1は、Tiを含まないので、Ti含有複合金属酸化物に該当しない。比較例1の触媒組成物は、非特許文献2の触媒組成物に該当し、1.9重量%Mnと5.0重量%Na2WO4をSiO2担体に含侵法により担持し、アルミナ製るつぼ上で1000℃、3h焼成した後(昇温速度:10℃/分)、焼成物を乳鉢で粉砕して得た触媒組成物である。
本発明の実施形態のTi含有複合金属酸化物は、Ti、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素、遷移金属から成る群から選択される少なくとも1種の元素を含み、周期表第1族のアルカリ金属及び第2族のアルカリ土類金属から成る群及び遷移金属から成る群の合計から少なくとも3種選択され、遷移金属は、特定の元素から成る群から選択される。そのような金属酸化物を含む触媒組成物の性質は、Mn-Na2WO4/SiO2の触媒の性質と比較して活性(低温反応性)、C2化合物の収率、C2化合物の選択性等が同程度ないしはより優れる。更に、CO生成がより抑制される傾向にあり、より安全な製造方法を提供し得る。よって、本発明の実施形態のTi含有複合金属酸化物を含む触媒組成物は、メタンから炭素数2以上の炭化水素を製造するために(メタン酸化カップリング反応に)、好適に使用することができる。