(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003936
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】ケガキ治具及びケガキ線の刻印方法
(51)【国際特許分類】
B25H 7/04 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
B25H7/04 J
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105328
(22)【出願日】2021-06-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 勝則
(72)【発明者】
【氏名】野村 祐司
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智章
(72)【発明者】
【氏名】平岡 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】山口 則和
(72)【発明者】
【氏名】藤井 慶
(57)【要約】
【課題】管状体の外周面に容易且つ正確にケガキ線を刻印することができるとともに、耐久性及び使い勝手に優れたケガキ治具を提供する。
【解決手段】配管Pの外周面P1と接触する丸刃3を有し、丸刃3は、外周端が刃部31とされた平面視円板状であり、丸刃3の刃部31が配管Pの外周面P1と接触することにより、外周面P1を周回するようにケガキ線Kを刻印する。
【選択図】
図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状体の外周面と接触するケガキ手段を有し、前記管状体の外周面にケガキ線を刻印するケガキ治具であって、
前記ケガキ手段は、外周端が刃部とされた平面視円板状の丸刃からなり、該丸刃の刃部が前記管状体の外周面と接触することにより、前記外周面を周回するように前記ケガキ線を刻印することを特徴とするケガキ治具。
【請求項2】
前記丸刃が一対で設けられ、且つ、該一対の丸刃が各々平行な軸線で配置されていることを特徴とする請求項1に記載のケガキ治具。
【請求項3】
前記丸刃と平行な軸線で配置されるとともに、回転自在とされたローラを備え、
前記ローラは、前記管状体の内周面と接触しながら前記管状体と同期回転することにより、前記一対の丸刃と前記ローラとの3点支持で前記管状体を保持することを特徴とする請求項2に記載のケガキ治具。
【請求項4】
前記丸刃と平行な軸線で配置されるとともに、回転自在とされた一対のローラを備え、
前記一対のローラは、一方の前記ローラが、前記管状体の外周面と接触しながら前記管状体と同期回転し、他方のローラが、前記管状体の内周面と接触しながら前記管状体と同期回転することにより、前記一対のローラと前記丸刃との3点支持で前記管状体を保持することを特徴とする請求項1に記載のケガキ治具。
【請求項5】
前記丸刃が回転自在とされており、前記丸刃が前記管状体の外周面と接触しながら前記管状体と同期回転することにより、前記管状体の外周面に前記ケガキ線を刻印することを特徴とする請求項1~請求項4の何れか一項に記載のケガキ治具。
【請求項6】
さらに、前記丸刃の前記軸線方向における位置を変更することにより、前記管状体の外周面に刻印される前記ケガキ線の、前記管状体の一端からの距離を調整するスペーサを備えることを特徴とする請求項1~請求項5の何れか一項に記載のケガキ治具。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか一項に記載のケガキ治具を用い、管状体の外周面にケガキ線を刻印することを特徴とするケガキ線の刻印方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケガキ治具、及び、それを用いたケガキ線の刻印方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体製造プラント等のような超高純度ガスを使用するプラントにおいては、一般に、電解研摩を施したステンレス配管を用いてガス供給配管が構成されている。このようなステンレス配管同士を突き合わせて接合する方法としては、例えば、自動TIG(Tungsten Inert Gas)溶接等の方法が採用されている。
【0003】
一方、自動TIG溶接等の方法においては、しばしば、溶接部の狙いずれが発生することがあることから、このような狙いずれの発生の有無を溶接施工後に確認することが求められる。このため、従来から、例えば、溶接されるべき被溶接配管の外周面における、配管の端部から数mm~数十mm程度の位置に、予め、配管用のケガキ用治具を用いてケガキ線を刻印し、このケガキ線を基準線として、狙いずれ発生の有無や、溶接部における凹み等の欠陥の有無を目視確認する検査が行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
特許文献1によれば、突き合わせ溶接されるべき被溶接配管の直径の大きさに幅広く対応しながら、被溶接配管の外周面にケガキ線を刻印することが可能な配管用のケガキ用治具を提供できるとされている。
また、特許文献1には、被溶接配管の端部からケガキ線の位置までの距離を、複数の距離で変更しながら設定し、被溶接配管の外周面における所望の位置でケガキ線を刻印できることが記載されている。
また、特許文献1には、被溶接配管に対するケガキ手段としてケガキ針を用いることが記載されている。
上記により、特許文献1によれば、被溶接配管の外周面に、容易且つ正確にケガキ線を刻印することができ、さらに、簡便な構造とされた配管用のケガキ用治具を提供できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のケガキ用治具は、ケガキ手段としてケガキ針を用いていることから、被溶接配管の外周面との間で点接触となるため、ケガキ針の先端が摩耗しやすく耐久性に欠けるという問題があった。
また、特許文献1に記載のケガキ用治具は、ケガキ針を用いて被溶接配管の外周面を引っ掻くものであるため、ケガキ針と被溶接配管の外周面との間の滑りが良好とはならないことから、使い勝手が劣っているという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、管状体の外周面に容易且つ正確にケガキ線を刻印することができるとともに、耐久性及び使い勝手に優れたケガキ治具、及び、それを用いたケガキ線の刻印方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記問題を解決するために鋭意検討を重ねた。この結果、管状体の外周面にケガキ線を刻印するケガキ手段の構成を最適化することで、管状体の外周面に容易且つ正確にケガキ線を刻印することができるとともに、耐久性や使い勝手も向上することを見いだし、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、請求項1に係る発明は、管状体の外周面と接触するケガキ手段を有し、前記管状体の外周面にケガキ線を刻印するケガキ治具であって、前記ケガキ手段は、外周端が刃部とされた平面視円板状の丸刃からなり、該丸刃の刃部が前記管状体の外周面と接触することにより、前記外周面を周回するように前記ケガキ線を刻印することを特徴とするケガキ治具である。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のケガキ治具であって、前記丸刃が一対で設けられ、且つ、該一対の丸刃が各々平行な軸線で配置されていることを特徴とするケガキ治具である。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のケガキ治具であって、前記丸刃と平行な軸線で配置されるとともに、回転自在とされたローラを備え、前記ローラは、前記管状体の内周面と接触しながら前記管状体と同期回転することにより、前記一対の丸刃と前記ローラとの3点支持で前記管状体を保持することを特徴とするケガキ治具である。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載のケガキ治具であって、前記丸刃と平行な軸線で配置されるとともに、回転自在とされた一対のローラを備え、前記一対のローラは、一方の前記ローラが、前記管状体の外周面と接触しながら前記管状体と同期回転し、他方のローラが、前記管状体の内周面と接触しながら前記管状体と同期回転することにより、前記一対のローラと前記丸刃との3点支持で前記管状体を保持することを特徴とするケガキ治具である。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1~請求項4の何れかに記載のケガキ治具であって、前記丸刃が回転自在とされており、前記丸刃が前記管状体の外周面と接触しながら前記管状体と同期回転することにより、前記管状体の外周面に前記ケガキ線を刻印することを特徴とするケガキ治具である。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項1~請求項5の何れかに記載のケガキ治具であって、さらに、前記丸刃の前記軸線方向における位置を変更することにより、前記管状体の外周面に刻印される前記ケガキ線の、前記管状体の一端からの距離を調整するスペーサを備えることを特徴とするケガキ治具である。
【0015】
請求項7に係る発明は、請求項1~請求項6の何れかに記載のケガキ治具を用い、管状体の外周面にケガキ線を刻印することを特徴とするケガキ線の刻印方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るケガキ治具によれば、上記のように、ケガキ手段が、外周端が刃部とされた平面視円板状の丸刃からなり、この丸刃の刃部が管状体の外周面と接触することにより、外周面を周回するようにケガキ線を刻印する構成を採用している。
本発明によれば、ケガキ手段として平面視円板状の丸刃を用いることで、この丸刃の刃部と管状体の外周面との間が線接触となり、管状体の外周面に対する押圧力が均一且つ緩やかに分散される。これにより、先の尖ったケガキ針等を用いた場合に比べて、ケガキ線の溝が浅く形成されるのに伴い、丸刃が摩耗するのを抑制できる。
また、平面視円板状の丸刃を用いることで、管状体の外周面に対する丸刃の姿勢や追従性が安定する。これにより、管状体の外周面に刻印されるケガキ線の位置もぶれることなく安定するとともに、ケガキ治具の使い勝手も向上する。
従って、管状体の外周面に容易且つ正確にケガキ線を刻印することができるとともに、耐久性及び使い勝手に優れたケガキ治具を提供することが可能となる。
【0017】
また、本発明に係るケガキ線の刻印方法によれば、上述した本発明に係るケガキ治具を用いてケガキ線を刻印する方法なので、上記同様、管状体の外周面に容易且つ正確にケガキ線を刻印することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】本発明の第1実施形態であるケガキ治具について模式的に説明する図であり、管状体がセットされる表面側からケガキ治具をみた概略斜視図である。
【
図1B】本発明の第1実施形態であるケガキ治具について模式的に説明する図であり、
図1Aに示したケガキ治具を背面側からみた概略斜視図である。
【
図2A】本発明の第1実施形態であるケガキ治具について模式的に説明する図であり、
図1A及び
図1Bに示したケガキ治具に備えられる丸刃を拡大して示す側面図である。
【
図2B】本発明の第1実施形態であるケガキ治具について模式的に説明する図であり、
図1A及び
図1Bに示したケガキ治具に備えられる丸刃を拡大して示す斜視図である。
【
図3A】本発明の第1実施形態であるケガキ治具及びケガキ線の刻印方法について模式的に説明する図であり、ケガキ治具に管状体をセットして管状体の外周面にケガキ線を刻印する手順を示す平面図である。
【
図3B】本発明の第1実施形態であるケガキ治具及びケガキ線の刻印方法について模式的に説明する図であり、ケガキ治具に管状体をセットして管状体の外周面にケガキ線を刻印する手順を示す側面図である。
【
図4A】本発明の第2実施形態であるケガキ治具について模式的に説明する図であり、管状体がセットされる表面側からケガキ治具をみた概略斜視図である。
【
図4B】本発明の第2実施形態であるケガキ治具について模式的に説明する図であり、
図4Aに示したケガキ治具を背面側からみた概略斜視図である。
【
図5】本発明の第2実施形態であるケガキ治具について模式的に説明する図であり、補強板を備えた変形例を示す概略斜視図である。
【
図6】本発明の第2実施形態であるケガキ治具について模式的に説明する図であり、補強板を備えた変形例を示す概略斜視図である。
【
図7】本発明の第3実施形態であるケガキ治具について模式的に説明する図であり、管状体がセットされる表面側からケガキ治具をみた概略斜視図である。
【
図8】本発明の第4実施形態であるケガキ治具について模式的に説明する図であり、管状体がセットされる表面側からケガキ治具をみた概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を適用した実施形態であるケガキ治具、及び、それを用いたケガキ線の刻印方法について、
図1A及び
図1B~
図8を適宜参照しながら説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするため、便宜上、特徴となる部分を拡大あるいは簡略化して示している場合がある。また、以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0020】
本実施形態のケガキ治具及びケガキ線の刻印方法は、例えば、自動TIG溶接等の方法によって端部が突き合わせ溶接された配管(管状体)について、溶接部の狙いずれの発生の有無を溶接施工後に確認するためのケガキ線を刻印する用途に用いられる。この場合、例えば、溶接されるべき配管の外周面における、配管の端部から数mm~数十mm程度の位置(一例として15mm程度)に、予め、配管用のケガキ用治具を用いてケガキ線を刻印する。そして、溶接施工後、ケガキ線を基準線として、狙いずれ発生の有無や、溶接部における凹み等の欠陥の有無を目視確認する検査を行う。
【0021】
<第1実施形態>
以下に、本発明の第1実施形態であるケガキ治具及びそれを用いたケガキ線の刻印方法について、
図1A及び
図1B~
図3A及び
図3Bを参照しながら詳細に説明する。
図1Aは、本実施形態のケガキ治具1を、配管(管状体)Pがセットされる表面2a側からみた概略斜視図であり、
図1Bは、
図1Aに示したケガキ治具1を背面2b側からみた概略斜視図である。また、
図2Aは、
図1A及び
図1Bに示したケガキ治具1に備えられる丸刃3を拡大して示す側面図であり、
図2Bは、
図2Aに示した丸刃3の斜視図である。
また、
図3Aは、本実施形態のケガキ治具1の表面2a側に配管Pをセットして配管Pの外周面P1にケガキ線Kを刻印する手順を示す平面図であり、
図3Bは、その側面図である。
【0022】
[ケガキ治具の構成]
図1A及び
図1Bに示すように、本実施形態のケガキ治具1は、配管(管状体)Pの外周面P1と接触するケガキ手段である丸刃3を有し、
図3A及び
図3B中に示した配管Pの外周面P1にケガキ線Kを刻印するものである。
そして、
図2A及び
図2Bに示すように、丸刃3は、外周端が刃部31とされた平面視円板状であり、この丸刃3の刃部31が配管Pの外周面P1と接触することにより、外周面P1を周回するようにケガキ線Kを刻印する構成とされている(
図3A及び
図3Bも参照)。
【0023】
また、
図1A及び
図1Bに示す例のケガキ治具1は、丸刃3が一対で設けられており、且つ、一対の丸刃3a,3bが各々平行な軸線Jで配置されている。
また、図示例のケガキ治具1は、丸刃3と平行な軸線Jで配置されたローラ4を備える。このローラ4は、配管Pの内周面P2と接触しながら配管Pと同期回転することにより、一対の丸刃3a,3bとローラ4との3点支持で配管Pを保持するように構成される。
そして、上記の各構成要素は、ケガキ治具1の筐体として機能するベース2に組み付けられている。
【0024】
ベース2は、上述したように、本実施形態のケガキ治具1の筐体として機能するものであり、例えば、所定の厚みを有する金属製ブロックに対して、孔開け加工や角部処理、表面処理等を施した部材からなる。図示例のベース2は、表面2a側又は背面2b側から見た平面視で、4箇所の角部がR状に加工された概略矩形状とされている。
【0025】
また、ベース2には、詳細を後述する一対の丸刃3a,3bを取り付けるためのボルト孔21が一対で形成されている。図示例においては、2箇所のボルト孔21,21が、ベース2の上面2c近傍の位置で、上面2cと平行に並べられ、且つ、平面視で左右対称となる位置で配置されている。
また、ベース2には、詳細を後述するローラ4を可動に取り付けるためのスリット孔22が形成されている。図示例においては、スリット孔22は、ベース2の下面2d側に寄った位置で縦長状に形成されているとともに、平面視で概略中央に配置されている。
【0026】
ベース2の材料としては、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼やアルミニウム等、この分野で従来から用いられている金属材料を何ら制限無く採用することができる。
また、ベース2の平面視形状としては、特に限定されず、ケガキ治具1の使用者が把持しやすい形状、例えば、図示例のような角部がR状とされた矩形状の他、丸形形状等を採用することも可能である。
また、ベース2の平面視寸法、及び、厚み寸法としても、特に限定されず、筐体としての強度確保等も考慮しながら、上記同様、ケガキ治具1の使用者が把持しやすい寸法とされていればよい。
【0027】
丸刃3は、上述したように、配管Pの外周面P1にケガキ線Kを刻印するものであり、
図2Bに示すように、平面視円板状に構成され、外周端が、配管Pの外周面P1と接する刃部31とされている。また、
図2A及び
図2Bに示す例の丸刃3は、軸線Jを中心とする基部32に、軸線Jと同軸に配置される貫通部13が設けられている。また、図示例の丸刃3は、刃部31を含む外周側の位置が、軸線J近傍の基部32に比べて薄く形成されている。
【0028】
また、
図1A及び
図1Bに示すように、本実施形態のケガキ治具1においては、丸刃3が一対で設けられており、ベース2に対し、一対のボルト孔21,21に対応する位置で取り付けられている。
具体的には、図示例においては、一対の丸刃3a,3bは、それぞれ、丸刃3の刃部31を露出させるための円弧状の切り欠き部35aが形成された、鞘状のカバー35内に収容されている。そして、カバー35内にそれぞれ収容された丸刃3は、ベース2の表面2aとの間にスペーサ36を介した状態で、ボルト37によってベース2に取り付けられている。このとき、2本のボルト37のねじ切り部分は、ベース2に一対で設けられたボルト孔21,21に螺入される。
【0029】
丸刃3の材質としては、特に限定されず、一般的な工具用鋼を何ら制限無く採用でき、具体的には、例えば、ハイス鋼、又は、超硬材等を採用できる。
ハイス鋼(High-Speed Steel)は、超速度鋼とも呼ばれ、一般的な工具用鋼における高温下での耐軟化性の低さを補い、より高速での金属材料の切削が可能になるものなので、丸刃3の材料に採用した場合には、より容易且つ正確なケガキ線の刻印が可能となる。
また、超硬材は、所謂超硬合金であり、炭化タングステンやコバルト、ニッケルなどを焼結して製造されることから、セラミックスに近い性質も有するため、上記のハイス鋼のような鉄鋼系素材とは性質が大きく異なるが、上記同様、丸刃3の材料に採用することで、より容易且つ正確なケガキ線の刻印が可能となる。
【0030】
丸刃3の外径としても、特に限定されないが、配管Pの外周面P1に対する線接触を確保する観点から、例えば、5~50mm程度が好ましく、10~30mmがより好ましい。
【0031】
カバー35としても、特に限定されず、例えば、樹脂性や金属製のもの等、その加工性等を勘案しながら適宜採用することができる。
なお、一対で設けられたカバー35における円弧状の切り欠き部35aは、ケガキ治具1に配管Pをセットしたときに、丸刃3における配管Pの外周面P1と接触する位置と対応するように配置されていることが、配管Pとカバー35とが干渉することを避ける観点から好ましい。
一方、本実施形態のケガキ治具1においては、カバー35を省略した構成を採用することも可能であり、
図3A及び
図3Bに示す例では、カバー35を省略している。
【0032】
スペーサ36としても、特に限定されず、例えば、樹脂や金属からなる筒状部材を何ら制限無く採用できる。
本実施形態のケガキ治具1は、上記のスペーサ36を備え、それぞれ長さの異なるスペーサ36に適宜変更することにより、一対の丸刃3a,3bの軸線J方向における位置、即ち、一対の丸刃3a,3bのベース2の表面2aからの距離を変更することが可能になる。これにより、配管Pの外周面P1に刻印されるケガキ線Kの、配管Pの一端P3からの距離を調整することが可能になる。
【0033】
スペーサ36の外径としても、特に限定されないが、ケガキ作業時にスペーサ36が配管Pの外周面P1に干渉するのを防止するため、丸刃3の外径よりも若干小さな外径とすることが好ましい。
【0034】
本発明においては、後述する第3実施形態で説明するように、丸刃3を1つだけ備えた構成とすることも可能である。一方、丸刃3が1つだけの構成の場合、配管Pの外周面P1に刻印さえるケガキ線Kが見た目に薄くなり過ぎ、視認性が若干低下するケースも考えられることから、丸刃3は一対で備えられていることがより好ましい。
【0035】
ローラ4は、上述したように、丸刃3と平行な軸線Jで配置され、回転自在に構成される。また、
図1A及び
図2Aに示す例のローラ4は、配管Pの内周面P2と接触しながら配管Pと同期回転することにより、一対の丸刃3a,3bとローラ4との3点支持で配管Pを保持する。また、図示例においては、一対の丸刃3a,3bとローラ4とが平面視で二等辺三角形の配置形態となるように構成されている。
また、図示例のローラ4は、軸線J方向において複数のローラ4A,4B,4Cが接続されてなる概略円筒形に構成されており、図示略の貫通孔が軸線上に設けられている。
【0036】
ローラ4としては、例えば、従来公知のベアリング等を用いることができるが、これには限定されず、円筒状(ドーナツ状)の部材であれば、如何なるものであっても採用することが可能である。
また、ローラ4の材質としても特に限定されず、例えば、外周部が金属からなるものを用いることができるが、外周が樹脂のものを用いることが、配管Pの内周面P2に傷がつくのを防止できる観点から好ましい。
【0037】
また、ローラ4は、ベース2に設けられたスリット孔22に対し、ローラ4の軸線上に設けられた貫通孔に挿入されるボルト41と、ベース2の背面2bに配置されるナット42との螺合によって固定される。このとき、ローラ4は、スリット孔22の長さ方向におけるボルト41の挿入位置を適宜変更することにより、一対の丸刃3a,3bに対して離間あるいは近接する方向でスライド移動することが可能な構成とされている。これにより、ボルト41は、ベース2に設けられたスリット孔22の長さ方向の範囲において、所望の位置で固定することが可能に構成されている。
【0038】
本実施形態のケガキ治具1によれば、
図3A及び
図3Bに示すように、配管Pの内周面P2にローラ4が接触し、配管Pの外周面P1に一対の丸刃3a,3bが接触することで、配管Pを3点支持で保持しながら、ケガキ治具1を回転させるか、あるいは配管Pを回転させることにより、配管Pの外周面P1に対して、一対の丸刃3a,3bでケガキ線Kを刻印することができる。
【0039】
また、本実施形態においては、上記のように、ローラ4を1箇所にのみ設けた構成について説明しているが、これには限定されず、ローラ4の設置数は適宜決定することが可能である。
【0040】
本実施形態のケガキ治具1によれば、平面視円板状の丸刃3を用いることで、この丸刃3の刃部31と配管Pの外周面P1との間が線接触となり、配管Pの外周面P1に対する押圧力が均一且つ緩やかに分散される作用が得られる。これにより、先の尖ったケガキ針等を用いた場合に比べて滑りがよく安定した摺動状態となることで、ケガキ線Kの溝が浅く形成されるので、丸刃3が摩耗するのを抑制できる効果が得られる。
また、平面視円板状の丸刃3を用いることで、配管Pの外周面P1に対する丸刃3の姿勢や追従性が安定するので、配管Pの外周面P1に刻印されるケガキ線Kの位置もぶれることなく安定するとともに、ケガキ治具1の使い勝手も向上する。
また、丸刃3を用いた場合、外周端である刃部31のどの位置においてもケガキ線Kを刻印することが可能なため、長期的に使用できるというメリットもある。
【0041】
なお、本実施形態のケガキ治具1においては、一対の丸刃3a,3bを無回転で固定した構成とすることにより、一対の丸刃3a,3bが回転することなく外周面P1に接触することで、この外周面P1にケガキ線Kを浅い溝として刻印することができる。
【0042】
一方、本実施形態においては、一対の丸刃3a,3bが回転自在とされ、これら丸刃3a,3bが、それぞれ配管Pの外周面P1と接触しながら配管Pと同期回転することにより、配管Pの外周面側にケガキ線Kを刻印する方法を採用しても可能である。
上記のように、一対の丸刃3a,3bが回転自在であることにより、配管Pの外周面P1に刻印されるケガキ線Kを、一対の丸刃3a,3bが無回転である場合に比べて深い溝として形成されるので、ケガキ線Kを深く形成したい場合に有効である。
一方、丸刃3の耐久性や寿命等を考慮し、配管Pの外周面P1に刻印されるケガキ線Kをできるだけ浅く形成したい場合には、上記のように一対の丸刃3a,3bを無回転で固定すればよい。
【0043】
また、本実施形態においては、例えば、一対の丸刃3a,3bのうち、一方の丸刃3aが回転自在とされ、配管Pの外周面P1と接触しながら配管Pと同期回転することにより、配管Pの外周面P1にケガキ線Kを刻印する一方、他方の丸刃3bが回転することなく配管Pの外周面P1に接触することにより、配管Pの外周面P1にケガキ線Kを刻印する構成としてもよい。
このような構成とした場合には、一対の丸刃3a,3bのうち、回転自在とされた一方の丸刃3aが、配管Pの外周面P1に対して比較的深めの溝からなるケガキ線Kを刻印するように作用する一方、無回転で固定された他方の丸刃3bが、配管Pの外周面P1に対して比較的浅めの溝からなるケガキ線Kを刻印するように作用する。これにより、配管Pの外周面P1に刻印されるケガキ線Kを、最適な深さの溝となるように調整しながら形成することが可能になる。
【0044】
さらに、本実施形態のケガキ治具1によれば、配管Pの内周面P2にローラ4が接触し、配管Pの外周面P1に一対の丸刃3a,3bが接触することで、配管Pを3点支持で保持する構成を採用することにより、配管Pの外周面P1にケガキ線Kを刻印する際の姿勢並びに動作が安定する作用が得られる。さらに、配管Pの外周面P1と内周面P2との間をクランプする構造であるため、外径及び内径の少なくとも何れかが異なる配管を用いる場合であっても、容易に調整して対応することが可能である。
【0045】
また、本実施形態のケガキ治具1においては、丸刃3として専用部品を製造して用いてもよいが、市販のパイプカッター刃を用いることも可能である。この場合には、例えば、丸刃3a,3bとローラ4とによる配管Pへの押圧力を調整する等の方法により、配管Pの外周面P1に刻印されるケガキ線Kが深くなり過ぎないように最適化しながら、ケガキ線Kを刻印することが好ましい。
【0046】
[ケガキ線の刻印方法]
本実施形態のケガキ線の刻印方法について、主に
図3A及び
図3Bを参照しながら説明する(
図1A及び
図1B、並びに、
図2A及び
図2Bも適宜参照)。
本実施形態のケガキ線の刻印方法は、上述した本実施形態のケガキ治具1を用いて配管Pの外周面P1にケガキ線Kを刻印する方法である。
なお、
図3A及び
図3Bに示す例においては、説明の都合上、
図1A及び
図1B中に示した、丸刃3(3a,3b)を覆うカバー35を外した状態としている。
【0047】
まず、スペーサ36のサイズを確認・調整して一対の丸刃3a,3bの位置を決定することにより、配管Pの外周面P1上におけるケガキ線Kを形成すべき位置を決定した後、ベース2の表面2a側に、ケガキ線Kの刻印対象となる配管Pをセットする。
このとき、配管Pを構成する円筒壁の一部を、一対の丸刃3a,3bとローラ4との間に配置するとともに、配管Pの一端P3がベース2の表面2aに当接するようにセットする。
【0048】
次いで、ローラ4の位置をスリット孔22に沿って移動させることにより、配管Pを構成する円筒壁の一部を、一対の丸刃3a,3bとローラ4とによって挟み込む。このとき、配管Pの外周面P1には一対の丸刃3a,3bが接触した状態となり、配管Pの内周面P2にはローラ4が当接した状態となる。そして、ボルト41とナット42との間を締め付けることにより、ローラ4の位置を固定する。
【0049】
次いで、一対の丸刃3a,3b及びローラ4による3点支持で配管Pを保持しながら、ケガキ治具1を回転させるか、あるいは配管Pを回転させることにより、配管Pの外周面P1に対して、一対の丸刃3a,3bでケガキ線Kを刻印する。この際、例えば、配管Pあるいはケガキ治具1を複数回で回転させることにより、配管Pの外周面P1に確実にケガキ線Kを刻印することがより好ましい。
【0050】
次いで、ボルト41とナット42との間を緩めることにより、一対の丸刃3a,3b及びローラ4を配管Pから離間させ、配管Pをケガキ治具1から取り外す。
以上のような手順により、配管Pの外周面P1における所望の位置にケガキ線Kを刻印することができる。
【0051】
<第2実施形態>
以下に、本発明の第2実施形態であるケガキ治具の構成について、主に
図4A及び
図4Bを参照して詳細に説明する。
なお、以下に示す本実施形態のケガキ治具1Aの説明においては、
図1A及び
図1B~
図3A及び
図3Bに示した第1実施形態のケガキ治具1と同じ構成については、同じ符号を付与し、同じ図面を参照する場合があるとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0052】
図4Aは、本実施形態のケガキ治具1Aを、配管Pがセットされる表面2a側から見た概略斜視図であり、
図4Bは、
図4Aに示したケガキ治具1Aを背面2b側からみた概略斜視図である。
また、
図5及び
図6は、ぞれぞれ、本実施形態のケガキ治具1Aの変形例を示す概略斜視図である。
【0053】
図4A及び
図4Bに示すように、本実施形態のケガキ治具1Aは、配管Pの外周面P1と接触する、外周端が刃部31とされた平面視円板状である一対の丸刃3a,3bを有し、さらに、丸刃3と平行な軸線Jで配置されたローラ4を備え、これら一対の丸刃3a,3bとローラ4との3点支持で配管Pを保持する点で、
図1A及び
図1B~
図3A及び
図3Bに示した第1実施形態のケガキ治具1と同様である。
一方、本実施形態のケガキ治具1Aは、ローラ4の位置決めが、ベース2Aの溝部24に挿入されたスライド部43を、位置調整ボルト44のねじ切り部分の螺入によってスライド移動させることで行う点で、第1実施形態のケガキ治具1とは異なる。
さらに、本実施形態のケガキ治具1Aは、上記のスライド部43及び位置調整ボルト44を備えていることに伴い、ベース2Aの背面2bから突出するボルト支持部23が設けられているとともに、背面2bに、スリット孔22と連通して設けられるスライド溝24が配置されている点でも、第1実施形態のケガキ治具1とは異なる。
【0054】
ボルト支持部23は、ベース2Aの背面2bにおける上面2c側に配置されるとともに、背面2bから突出するように設けられ、ボルト支持部23の上面側がベース2Aの上面2cと同一面とされた板状に形成されている。
また、ボルト支持部23には、その厚み方向で貫通した位置調整ボルト孔23aが設けられており、この位置調整ボルト孔23aは、位置調整ボルト44のねじ切り部分を螺入することが可能なねじ孔とされている。
【0055】
スライド溝24は、ベース2Aの背面2bに、スリット孔22と連通するように設けられる縦長状の溝である。図示例のように、スライド溝24の内部には、後述のスライド部43が、スライド溝24の縦長方向でスライド移動可能に配置される。
【0056】
本実施形態のケガキ治具1Aにおいては、
図4A及び
図4B中では詳細な図示を省略しているが、ベース2Aのスリット孔22を貫くように挿入されるボルト41により、ローラ4がスライド部43に対して回転自在に固定されている。
スライド部43には、ローラ4とは反対側に位置する端部近傍に、上述した位置調整ボルト44のねじ切り部分が螺入されるボルト孔43aが設けられている。
【0057】
本実施形態のケガキ治具1Aは、上記構成を備えることにより、位置調整ボルト44を適宜回転させることで、スライド部43の位置を、縦長状のスライド溝24に沿った方向における任意の位置に移動させ、その位置で固定した状態とすることができる。これにより、スライド部43にボルト41によって固定されたローラ4の位置も、一対の丸刃3a,3bと離間あるいは近接する方向で、任意の位置に設定することが可能になる。
【0058】
なお、本実施形態のように、特に、ベース2Aにおいてスライド溝24のようなザグリ構造を取り入れている場合には、ベース2Aの強度面を考慮し、
図5に示す例のように、2箇所の側面2eに、より高い強度を有した金属材料からなる補強板51を配置してもよい。
【0059】
また、本実施形態において、例えば、ベース2Aを、アルミニウム等のような軽量且つ軟質の材料から構成した場合には、
図6に示すように、表面2aにおける、配管Pの一端P3(
図3A及び
図3Bを参照)が当接する位置に、硬質の金属材料からなる補強板52を配置してもよい。
図6に示す例においては、表面2aにおける2箇所で並列に、縦長状の補強板52が配置されている。
【0060】
さらに、
図5及び
図6に示した補強板51,52は、上述した第1実施形態のケガキ治具1等にも適用することが可能である。
【0061】
<第3実施形態>
以下に、本発明の第3実施形態であるケガキ治具の構成について、主に
図7を参照して詳細に説明する。
なお、以下に示す本実施形態のケガキ治具1Bの説明においても、
図1A及び
図1B~
図3A及び
図3Bに示した第1実施形態のケガキ治具1や、
図4A及び
図4Bに示した第2実施形態のケガキ治具1Aと同じ構成については、同じ符号を付与し、同じ図面を参照する場合があるとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0062】
図7は、本実施形態のケガキ治具1Bを、配管Pがセットされる表面2a側から見た概略斜視図である。
【0063】
図7に示すように、本実施形態のケガキ治具1Bは、配管Pの外周面P1と接触する、外周端が刃部31とされた平面視円板状である丸刃3を有し、さらに、丸刃3と平行な軸線Jで配置されたローラ4を備え、これら丸刃3とローラ4とで配管Pを保持する点で、
図1A及び
図1B~
図3A及び
図3Bに示した第1実施形態のケガキ治具1、並びに、
図4A及び
図4Bに示した第2実施形態のケガキ治具1Aと同様である。
一方、本実施形態のケガキ治具1Bは、丸刃3がベース2Bの1箇所にのみ取り付けられ、一つの丸刃3とローラ4との2点支持で配管Pを保持する点で、第1実施形態のケガキ治具1及び第2実施形態のケガキ治具1Aとは異なる。
【0064】
本実施形態のケガキ治具1Bは、上記構成を有することにより、第1実施形態のケガキ治具1と同様、スペーサ36を、それぞれ長さの異なるものに変更することにより、丸刃3のベース2Bの表面2aからの距離を変更できるので、配管Pの外周面P1に刻印されるケガキ線Kの、配管Pの一端P3からの距離を調整することが可能となる。
また、ベース2Bに形成されたスリット孔22に沿ってローラ4をスライド移動させ、ローラ4を配管Pの内周面P2に接触させるとともに、丸刃3を配管Pの外周面P1に接触させることで、これら丸刃3とローラ4とで配管Pを保持できる。
【0065】
さらに、本実施形態のケガキ治具1Bにおいても、ケガキ手段として、平面視円板状で外周端が刃部31とされた丸刃3を用いることで、第1実施形態のケガキ治具1及び第2実施形態のケガキ治具1Aと同様の効果が得られる。
即ち、丸刃3の刃部31と配管Pの外周面P1との間が線接触となり、配管Pの外周面P1に対する押圧力が均一且つ緩やかに分散される作用が得られる。これにより、先の尖ったケガキ針等を用いた場合に比べて、ケガキ線の溝が浅く形成されるのに伴い、丸刃3が摩耗するのを抑制できる効果が得られる。
また、平面視円板状の丸刃3を用いることで、配管Pの外周面P1に対する丸刃3の姿勢や追従性が安定する作用が得られる。これにより、配管Pの外周面P1に刻印されるケガキ線Kの位置もぶれることなく安定するとともに、ケガキ治具1Bの使い勝手も向上する。
【0066】
ここで、本発明に係るケガキ治具においては、第1,2実施形態で説明したような、配管Pを3点支持で保持する構成を採用することが、配管Pの外周面P1にケガキ線Kを刻印する際の姿勢並びに動作が安定する作用が顕著に得られる観点からより好ましい。
一方、本実施形態のような、丸刃3を1箇所にのみ備えた構成を採用した場合でも、上述したような、丸刃3が摩耗するのを抑制できる効果や、配管Pの外周面P1に刻印されるケガキ線Kの位置が安定するとともに、ケガキ治具の使い勝手が向上する効果が得られる。
従って、例えば、使用者が把持しやすくなること等を目的として、ケガキ治具をより小型化する場合には、本実施形態のような、配管Pを2点支持で保持する構成を採用することができる。
【0067】
<第4実施形態>
以下に、本発明の第4実施形態であるケガキ治具の構成について、主に
図8を参照して詳細に説明する。
なお、以下に示す本実施形態のケガキ治具1Cの説明においても、
図1A及び
図1B~
図3A及び
図3Bに示した第1実施形態のケガキ治具1や、
図4A及び
図4Bに示した第2実施形態のケガキ治具1A等と同じ構成については、同じ符号を付与し、同じ図面を参照する場合があるとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0068】
図8は、本実施形態のケガキ治具1Cを、配管Pがセットされる表面2a側から見た概略斜視図である。
なお、
図8に示す例においては、説明の都合上、
図1A及び
図1B中に示したような、丸刃3(3a,3b)を覆うカバー35を外した状態としている。
【0069】
図8に示すように、本実施形態のケガキ治具1Cは、配管Pの外周面P1と接触する、外周端が刃部31とされた平面視円板状である丸刃3を有し、さらに、丸刃3と平行な軸線Jで配置されたローラ4を備え、これら丸刃3とローラ4とで配管Pを保持する点で、
図4A及び
図4Bに示した第2実施形態のケガキ治具1Aとほぼ同様である。
一方、本実施形態のケガキ治具1Cは、ローラ4として、回転自在とされた一対のローラ4a,4bを備え、一方のローラ4aが、配管Pの外周面P1と接触しながら配管Pと同期回転し、他方のローラ4bが、配管Pの内周面P2と接触しながら配管Pと同期回転することにより、一対のローラ4a,4bと丸刃3との3点支持で配管Pを保持する点で、
図4A及び
図4Bに示した第2実施形態のケガキ治具1Aとは異なる。即ち、本実施形態のケガキ治具1Cは、第2実施形態のケガキ治具1Aに対し、一対の丸刃3a,3bのうちの丸刃3bをローラ4aに置き換えた点で、
図4A及び
図4Bに示した第2実施形態のケガキ治具1Aとは異なる。
【0070】
本実施形態のケガキ治具1Cは、一方のローラ4aが、配管Pの外周面P1と接触しながら配管Pと同期回転すうように、ベース3C上に固定される。
一方、他方のローラ4bは、第2実施形態のケガキ治具1Aと同様、スライド部43にボルト41で固定されており、位置調整ボルト44を適宜回転させて、スライド部43をスライド溝24に沿った位置に移動させることで、任意の位置に移動・固定可能な構成とされている。
【0071】
本実施形態のケガキ治具1Cによれば、平面視円板状の丸刃3を1箇所に備えることで、第3実施形態のケガキ治具1Bと同様、丸刃3が摩耗するのを抑制できる効果や、配管Pの外周面P1に刻印されるケガキ線Kの位置が安定するとともに、ケガキ治具の使い勝手が向上する効果が得られる。
【0072】
さらに、本実施形態においては、ベース2Bに形成されたスリット孔22に沿ってローラ4bをスライド移動させ、他方のローラ4bを配管Pの内周面P2に接触させるとともに、一方のローラ4a及び丸刃3を配管Pの外周面P1に接触させることで、丸刃3と一対のローラ4a,4bとによる3点支持で配管Pを保持する構成を採用している。これにより、第1実施形態のケガキ治具1や第2実施形態のケガキ治具1Aの場合と同様、配管Pの外周面P1にケガキ線Kを刻印する際の姿勢並びに動作が、2点支持とされた場合に比べてより安定する効果が得られる。
【0073】
なお、本実施形態のケガキ治具1Cにおいても、第2実施形態のケガキ治具1Aと同様、ベース2Bをアルミニウム等のような軽量且つ軟質の材料から構成した場合には、
図8中に示したように、表面2aにおける、配管Pの一端P3(
図3A及び
図3Bを参照)が当接する位置に、硬質の金属材料からなる補強板53を配置することがより好ましい。
図8に示す例においては、表面2aにおける2箇所で並列に、縦長状の補強板53が配置されている。
【0074】
<その他の形態>
以上、実施形態により、本発明に係るケガキ治具、及び、それを用いたケガキ線の刻印方法の一例を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記の実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0075】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態のケガキ治具1(1A,1B,1C)によれば、ケガキ手段として平面視円板状の丸刃3を用いることで、この丸刃3の刃部31と配管Pの外周面P1との間が線接触となり、配管Pの外周面P1に対する押圧力が均一且つ緩やかに分散される。これにより、先の尖ったケガキ針等を用いた場合に比べて、ケガキ線Kの溝が浅く形成されるのに伴い、丸刃3が摩耗するのを抑制できる。
また、平面視円板状の丸刃3を用いることで、配管Pの外周面P1に対する丸刃3の姿勢や追従性が安定する。これにより、配管Pの外周面P1に刻印されるケガキ線Kの位置もぶれることなく安定するとともに、ケガキ治具1(1A,1B,1C)の使い勝手も向上する。
従って、配管Pの外周面P1に容易且つ正確にケガキ線Kを刻印することができるとともに、耐久性及び使い勝手に優れたケガキ治具1(1A,1B,1C)を提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のケガキ治具によれば、上記のように、配管(管状体)の外周面に容易且つ正確にケガキ線を刻印することができるとともに、耐久性及び使い勝手に優れたものである。従って、本発明のケガキ治具は、例えば、自動TIG溶接等の方法によって端部が突き合わせ溶接された配管について、溶接部の狙いずれの発生の有無を溶接施工後に確認するためのケガキ線を刻印する用途において極めて有用である。
【符号の説明】
【0077】
1,1A,1B,1C…ケガキ治具
2,2A,2B…ベース
2a…表面
2b…背面
2c…上面
2d…下面
2e…側面
21…ボルト孔
22…スリット孔
23…ボルト支持部
23a…位置調整ボルト孔
24…スライド溝
3…丸刃(ケガキ手段)
3a,3b…一対の丸刃(丸刃;ケガキ手段)
31…刃部
32…基部
33…貫通部
35…カバー
35a…切り欠き部
36…スペーサ
37…ボルト
4…ローラ
4A,4B,4C…複数のローラ(ローラ)
4a,4b…一対のローラ(ローラ)
41…ボルト
42…ナット
43…スライド部
43a…ボルト孔
44…位置調整ボルト
51,52,53…補強板
P…配管(管状体)
P1…外周面
P2…内周面
P3…一端
K…ケガキ線
【手続補正書】
【提出日】2022-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状体の外周面と接触するケガキ手段を有し、前記管状体の外周面にケガキ線を刻印するケガキ治具であって、
前記ケガキ手段は、外周端が刃部とされた平面視円板状の丸刃と、前記丸刃と平行な軸線で配置されるとともに、回転自在とされたローラと、を備え、
前記丸刃が一対で設けられ、且つ、一対の前記丸刃が各々平行な軸線で配置され、
前記ローラは、前記管状体の内周面と接触しながら前記管状体と同期回転することにより、一対の前記丸刃と前記ローラとの3点支持で前記管状体を保持し、
前記丸刃の刃部が前記管状体の外周面と接触することにより、前記外周面を周回するように前記ケガキ線を刻印する、ケガキ治具。
【請求項2】
管状体の外周面と接触するケガキ手段を有し、前記管状体の外周面にケガキ線を刻印するケガキ治具であって、
前記ケガキ手段は、外周端が刃部とされた平面視円板状の丸刃と、前記丸刃と平行な軸線で配置されるとともに、回転自在とされた一対のローラと、を備え、
一対の前記ローラは、一方の前記ローラが、前記管状体の外周面と接触しながら前記管状体と同期回転し、他方のローラが、前記管状体の内周面と接触しながら前記管状体と同期回転することにより、一対の前記ローラと前記丸刃との3点支持で前記管状体を保持し、
前記丸刃の刃部が前記管状体の外周面と接触することにより、前記外周面を周回するように前記ケガキ線を刻印する、ケガキ治具。
【請求項3】
前記丸刃が回転自在とされており、前記丸刃が前記管状体の外周面と接触しながら前記管状体と同期回転することにより、前記管状体の外周面に前記ケガキ線を刻印する、請求項1又は2に記載のケガキ治具。
【請求項4】
さらに、前記丸刃の前記軸線方向における位置を変更することにより、前記管状体の外周面に刻印される前記ケガキ線の、前記管状体の一端からの距離を調整するスペーサを備える、請求項1~3の何れか一項に記載のケガキ治具。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載のケガキ治具を用い、管状体の外周面にケガキ線を刻印する、ケガキ線の刻印方法。