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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039404
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230313BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
H05H1/46 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106117
(22)【出願日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2021193070
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021145970
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】輿水 地塩
(72)【発明者】
【氏名】石橋 淳治
(72)【発明者】
【氏名】有吉 文彬
(72)【発明者】
【氏名】箱崎 翔
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 史記
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084BB07
2G084BB23
2G084CC12
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD24
2G084DD38
2G084DD55
2G084FF15
2G084FF38
5F004AA16
5F004BA04
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB26
5F004BC02
5F004BC08
5F004CA03
5F004CA06
(57)【要約】
【課題】シャワーヘッドの複数のガス孔の中におけるガスの解離を抑制する技術を提供する。
【解決手段】開示されるプラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持部、上部電極、及び少なくとも一つの電源を備える。チャンバは、その内部に処理空間を提供している。基板支持部は、チャンバ内に設けられている。上部電極は、処理空間の上方から処理空間にガスを導入するシャワーヘッドを構成している。上部電極は、第1の電極及び第2の電極を含む。第1の電極は、処理空間に向けて開口した複数の第1のガス孔を提供する。第2の電極は、第1の電極上に直接的に又は間接的に設けられており、複数の第1のガス孔にそれぞれ連通する複数の第2のガス孔を提供する。少なくとも一つの電源は、第2の電極の電位を第1の電極の電位に対して正側の電位に設定するように構成されている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その内部に処理空間を提供するチャンバと、
前記チャンバ内に設けられた基板支持部と、
前記処理空間の上方から前記処理空間にガスを導入するシャワーヘッドを構成する上部電極であり、
前記処理空間に向けて開口した複数の第1のガス孔を提供する第1の電極と、
前記第1の電極上に直接的に又は間接的に設けられており、前記複数の第1のガス孔にそれぞれ連通する複数の第2のガス孔を提供する第2の電極と、
を含む該上部電極と、
前記第2の電極の電位を前記第1の電極の電位に対して正側の電位に設定するように構成された少なくとも一つの電源と、
を備えるプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記第2の電極の電位は、前記第1の電極の電位よりも、+5V以上高い、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記少なくとも一つの電源は、前記第1の電極の電位を負の電位、0V、又はフローティングに設定するように構成されている、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記少なくとも一つの電源として単一の電源を備え、
前記単一の電源に接続された抵抗分割回路を更に備え、
前記抵抗分割回路において異なる電位を有する二つのノードが前記第1の電極及び前記第2の電極にそれぞれ電気的に接続されている、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記少なくとも一つの電源として、前記第1の電極に電気的に接続された第1の電源と、該第1の電源とは別の第2の電源であり前記第2の電極に電気的に接続された該第2の電源と、を備える、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた誘電体層を更に備える、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記第2の電極は、前記複数の第2のガス孔の各々の前記第1の電極の側の端部を画成する表面領域に導電層を有し、
前記少なくとも一つの電源は、前記導電層に電圧を印加するように構成されている、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記第1の電極は、互いから分離された複数の部分を含み、
前記少なくとも一つの電源は、前記複数の部分に電圧を印加するように構成されている、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記第1の電極の前記複数の部分は、径方向において互いから分離されている、請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記第2の電極は、温調機構を有する、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記温調機構は、前記第2の電極の中に形成された流路であり、その中で熱媒体が流される該流路を含む、請求項10に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記複数の第2のガス孔の各々の前記第1の電極の側の端部はテーパー状をなしており、
前記複数の第2のガス孔の各々の前記端部の開口の直径は、前記複数の第1のガス孔の各々の直径よりも大きい、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記第1の電極は、シリコン、炭化ケイ素、又は石英から形成されており、
前記第2の電極は、金属又は炭化ケイ素から形成されている、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
波形周期を有する電気バイアスエネルギーを周期的に前記基板支持部に供給するように構成され、
前記波形周期は、前記基板の電位が該波形周期内の該基板の平均電位よりも低い負位相期間と該波形周期内の該負位相期間以外の期間である正位相期間とを含み、
前記少なくとも一つの電源は、前記正位相期間における前記第1の電極の電位を前記負位相期間における前記第1の電極の負の電位よりも正側に高い電位に設定するように構成されている、
請求項1~13の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
波形周期を有する電気バイアスエネルギーを周期的に前記基板支持部に供給するように構成され、
前記波形周期は、前記基板の電位が該波形周期内の該基板の平均電位よりも低い負位相期間と該波形周期内の該負位相期間以外の期間である正位相期間とを含み、
前記少なくとも一つの電源は、前記負位相期間における前記第1の電極の負の電位の絶対値を前記正位相期間における前記第1の電極の電位の絶対値よりも大きい値に設定するように構成されている、
請求項1~13の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項16】
前記電気バイアスエネルギーは、バイアス高周波電力であるか前記波形周期の時間間隔で周期的に発生される電圧のパルスである、請求項14に記載のプラズマ処理装置。
【請求項17】
前記電気バイアスエネルギーは、バイアス高周波電力であるか前記波形周期の時間間隔で周期的に発生される電圧のパルスである、請求項15に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、プラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板に対するプラズマ処理では、プラズマ処理装置が用いられる。一種のプラズマ処理装置は、シャワーヘッドを備えている。シャワーヘッドは、チャンバ内に設けられた基板支持部の上方に設けられている。シャワーヘッドは、複数のガス孔を提供している。下記の特許文献1は、複数のガス孔の中での異常放電を抑制するために、複数のガス孔に連通するガス溝が、シャワーヘッドの下面に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-117711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、シャワーヘッドの複数のガス孔の中におけるガスの解離を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持部、上部電極、及び少なくとも一つの電源を備える。チャンバは、その内部に処理空間を提供している。基板支持部は、チャンバ内に設けられている。上部電極は、処理空間の上方から処理空間にガスを導入するシャワーヘッドを構成している。上部電極は、第1の電極及び第2の電極を含む。第1の電極は、処理空間に向けて開口した複数の第1のガス孔を提供する。第2の電極は、第1の電極上に直接的に又は間接的に設けられており、複数の第1のガス孔にそれぞれ連通する複数の第2のガス孔を提供する。少なくとも一つの電源は、第2の電極の電位を第1の電極の電位に対して正側の電位に設定するように構成されている。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、シャワーヘッドの複数のガス孔の中におけるガスの解離を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図2】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置の上部電極の部分拡大断面図である。
図3図3の(a)は一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置における二次電子の挙動を示す図であり、図3の(b)は第1の電極の電位と第2の電極の電位が互いに同じ場合の二次電子の挙動を示す図である。
図4】別の例示的実施形態においてプラズマ処理装置に採用される少なくとも一つの電源を示す図である。
図5】更に別の例示的実施形態においてプラズマ処理装置に採用される少なくとも一つの電源を示す図である。
図6図6の(a)及び図6の(b)の各々は、更に別の例示的実施形態においてプラズマ処理装置に採用される上部電極の部分拡大断面図である。
図7】更に別の例示的実施形態においてプラズマ処理装置に採用される上部電極の部分拡大断面図である。
図8】更に別の例示的実施形態においてプラズマ処理装置に採用される上部電極の断面図である。
図9】更に別の例示的実施形態においてプラズマ処理装置に採用される上部電極の断面図である。
図10】更に別の例示的実施形態においてプラズマ処理装置に採用される上部電極の断面図である。
図11】一例のタイミングチャートである。
図12】一例のタイミングチャートである。
図13】一例のタイミングチャートである。
図14】一例のタイミングチャートである。
図15図15の(a)及び図15の(b)は、電源の制御に関連する一例の構成を示す図である。
図16図16の(a)及び図16の(b)は、電源の制御に関連する一例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0009】
図1は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。一実施形態においては、図1に示すようにプラズマ処理システムが提供される。プラズマ処理システムは、プラズマ処理装置1を含む。プラズマ処理装置1は、制御部2を更に含んでいてもよい。
【0010】
制御部2は、種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0011】
プラズマ処理装置1は、容量結合型のプラズマ処理装置である。プラズマ処理装置1は、チャンバ10、基板支持部12、及び上部電極14を備えている。チャンバ10は、その内部において処理空間10sを提供している。チャンバ10は、略円筒形状を有している。チャンバ10の側壁は、電気的に接地されている。
【0012】
プラズマ処理装置1は、排気システム40を更に含み得る。排気システム40は、例えばチャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでいてもよい。処理空間10s内の圧力は、圧力調整弁によって調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0013】
基板支持部12は、チャンバ10内に設けられている。基板支持部12は、その上に載置される基板Wを支持するように構成されている。基板支持部12は、その上に載置されるエッジリングERを更に支持するように構成されていてもよい。基板Wは、基板支持部12上でエッジリングERによって囲まれた領域の中に配置される。
【0014】
一実施形態において、基板支持部12は、基台16及び静電チャック18を含んでいてもよい。基台16は、導電性部材を含む。基台16の導電性部材は、下部電極として機能する。静電チャック18は、基台16の上に配置される。基板Wは、静電チャック18上に載置される。静電チャック18は、基板Wを静電引力によって保持するように構成されている。
【0015】
なお、基板支持部12は、静電チャック18、エッジリングER、及び基板Wのうち少なくとも一つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでいてもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。流路には、ブラインやガスのような熱媒体が流れる。また、基板支持部12は、基板Wの裏面と静電チャック18との間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を更に含んでいてもよい。
【0016】
プラズマ処理装置1は、高周波電源31及びバイアス電源32を更に含み得る。高周波電源31は、チャンバ10内でガスからプラズマを生成するためにソース高周波電力RFを供給するように構成されている。ソース高周波電力RFは、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。高周波電源31は、整合器31mを介して高周波電極に接続されている。整合器31mは、高周波電源31の負荷のインピーダンスを高周波電源31の出力インピーダンスに整合させるための整合回路を含んでいる。高周波電極は、基板支持部12の電極、例えば、基台16の導電性部材であってもよい。高周波電極は、基板支持部12の他の電極であってもよい。或いは、高周波電極は、上部電極14であってもよい。
【0017】
バイアス電源32は、基板支持部12のバイアス電極(例えば、基台16の導電性部材)に電気的に接続されている。バイアス電源32は、基板支持部12上に載置された基板Wにプラズマからイオンを引き込むために電気バイアスエネルギーBEを基板支持部12のバイアス電極に供給するように構成されている。なお、バイアス電源32は、基台16の導電性部材とは別の基板支持部12の電極に電気的に接続されていてもよい。
【0018】
電気バイアスエネルギーBEは、波形周期CY(図11図14を参照)を有しており、周期的に供給される。波形周期CYは、バイアス周波数の逆数である時間長を有する。バイアス周波数は、100kHz~13.56MHzの範囲内の範囲内の周波数であり得る。
【0019】
電気バイアスエネルギーBEは、バイアス高周波電力(図14の基板の電位を参照)であるか、電圧のパルス(図11図13のバイアス電極の電位を参照)を含んでいてもよい。バイアス高周波電力は、バイアス周波数を有する。バイアス高周波電力の波形は、バイアス周波数を有する正弦波である。電気バイアスエネルギーBEがバイアス高周波電力である場合には、バイアス電源32は、整合器32mを介して基板支持部12のバイアス電極に接続される。整合器32mは、バイアス電源32の負荷のインピーダンスをバイアス電源32の出力インピーダンスに整合させるための整合回路を含む。
【0020】
電圧のパルスは、バイアス周波数の逆数である時間間隔で周期的に発生される。電圧のパルスは、負の極性を有していてもよい。電圧のパルスは、直流電圧から生成される電圧のパルスであってもよい。電圧のパルスは、矩形パルス波、三角パルス波、インパルス波のような任意の波形を有していてもよい。
【0021】
以下、図1と共に図2を参照する。図2は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置の上部電極の部分拡大断面図である。上部電極14は、処理空間10sの上方から処理空間10sにガスを導入するシャワーヘッドを構成している。上部電極14は、チャンバ10の側壁の上端開口を閉じており、処理空間10sを画成している。上部電極14は、チャンバ10の側壁から電気的に絶縁されている。
【0022】
上部電極14は、第1の電極21及び第2の電極22を含む。第1の電極21は、略円盤形状を有している。第1の電極21は、例えばシリコン、炭化ケイ素、又は石英から形成される。第1の電極21の下面は、処理空間10sに接する。第1の電極21は、複数の第1のガス孔21hを提供している。複数の第1のガス孔21hは、第1の電極21をその板厚方向に貫通しており、処理空間10sに向けて開口している。
【0023】
第2の電極22は、第1の電極21上に直接的に設けられている。なお、第2の電極22は、第1の電極21上に間接的に設けられていてもよい。第2の電極22は、略円盤形状を有している。第2の電極22は、アルミニウムのような金属又は炭化ケイ素から形成されている。第2の電極22の表面は、膜22aから構成されていてもよい。膜22aは、耐腐食性を有する膜であり、例えば陽極酸化処理によって生成されたアルマイト膜である。第2の電極22は、複数の第2のガス孔22hを提供している。複数の第2のガス孔22hは、鉛直方向に延びており、複数の第1のガス孔21hにそれぞれ連通している。
【0024】
第2の電極22は、ガス拡散室22d及びガス導入ポート22pを更に提供していてもよい。ガス拡散室22dは、第2の電極22の中に設けられている。複数の第2のガス孔22hは、ガス拡散室22dから下方に延びている。ガス導入ポート22pは、ガス拡散室22dに接続されている。ガス導入ポート22pには、ガス供給部24が接続されている。
【0025】
ガス供給部24は、一つ以上のガスソース24s及び一つ以上の流量制御器24cを含み得る。ガス供給部24は、一つ以上のガスを、それぞれに対応のガスソース24sからそれぞれに対応の流量制御器24cを介してガス導入ポート22pに供給するように構成される。ガス導入ポート22pに供給された一つ以上のガスは、ガス拡散室22d、複数の第2のガス孔22h、及び複数の第1のガス孔21hを介して、チャンバ10内に導入される。
【0026】
一実施形態において、複数の第2のガス孔22hの各々の第1の電極21の側の端部22tはテーパー状をなしていてもよい。即ち、複数の第2のガス孔22hの各々の第1の電極21の側の端部22tは、対応の第1のガス孔21hからの鉛直方向における距離の減少に応じて増加する直径を有していてもよい。一実施形態においては、端部22tの開口(下端開口)の直径は、対応の第1のガス孔21hの直径よりも大きい。この実施形態によれば、第1の電極21と第2の電極22の熱膨張率の差に起因して、各第2のガス孔22hと対応の第1のガス孔21hとの間に位置ずれが生じても、各第2のガス孔22hと対応の第1のガス孔21hが互いに連通する状態が保たれる。
【0027】
一実施形態において、第2の電極22は、温調機構を有していてもよい。温調機構は、第2の電極22の中に形成された流路22fを含んでいてもよい。流路22fには、熱媒体(例えば冷媒)の供給装置が接続される。供給装置は、チャンバ10の外部に設けられている。供給装置から流路22fに供給された熱媒体は、流路22fの中を流れて、供給装置に戻される。なお、第2の電極22の温調機構は、流路22fに加えて、ヒータを含んでいてもよい。
【0028】
プラズマ処理装置1は、少なくとも一つの電源を更に備える。少なくとも一つの電源は、第2の電極22の電位を第1の電極21の電位に対して正側の電位に設定するように構成されている。即ち、少なくとも一つの電源は、第2の電極22の電位を第1の電極21の電位よりも正側に高い電位に設定する。第1の電極21の電位は、負の電位、0V(グランド電位)、又はフローティングであってもよい。例えば、第1の電極21の電位は、正の電位であってもよく、第2の電極22の電位は、第1の電極21の電位よりも正側に高くてもよい。或いは、第1の電極21の電位は、0Vであってもよく、第2の電極22の電位は、正の電位であってもよい。或いは、第1の電極21の電位は、負の電位であってもよく、第2の電極22の電位は、0Vであってもよい。或いは、第1の電極21の電位は、負の電位であってもよく、第2の電極22の電位は、第1の電極21の電位よりも正側に高い負の電位であってもよい。
【0029】
図1及び図2に示す実施形態において、プラズマ処理装置1は、少なくとも一つの電源として単一の直流電源51を備えており、更に抵抗分割回路52を更に備えている。直流電源51は、可変直流電源であり得る。直流電源51の正極は、グランドに接続されている。直流電源51の負極は、抵抗分割回路52の一端に接続されている。抵抗分割回路52において異なる電位を有する二つのノード52c及び52dは、第1の電極21及び第2の電極22にそれぞれ電気的に接続されている。
【0030】
一実施形態において、抵抗分割回路52は、抵抗52a及び抵抗52bを含む。抵抗52aの一端は、直流電源51の負極に接続されている。ノード52cは、抵抗52aの一端と直流電源51の負極とを互いに接続する電気的パス上に設けられており、第1の電極21に電気的に接続されている。ノード52cは、フィルタ53f及びスイッチ53sを介して第1の電極21に接続されていてもよい。フィルタ53fは、高周波電力を遮断するか減衰させるローパスフィルタである。
【0031】
抵抗52bの一端は、抵抗52aの他端に電気的に接続されており、抵抗52bの他端は、グランドに接続されている。ノード52dは、抵抗52bの一端と抵抗52aの他端とを互いに接続する電気的パス上に設けられており、第2の電極22に電気的に接続されている。ノード52dは、フィルタ54f及びスイッチ54sを介して第2の電極22に接続されていてもよい。フィルタ54fは、高周波電力を遮断するか減衰させるローパスフィルタである。
【0032】
図1に示すように、抵抗52aは、固定抵抗であってもよい。或いは、図2に示すように、抵抗52aは、可変抵抗であってもよい。抵抗52aが可変抵抗である場合には、第1の電極21と第2の電極22との間の電位差を調整することが可能となる。また、抵抗52bは、固定抵抗であってもよく、可変抵抗であってもよい。
【0033】
かかる抵抗分割回路52を備えるプラズマ処理装置1では、第1の電極21の電位は、負の電位となる。第2の電極22の電位は、負の電位であり、且つ、第1の電極21の電位に対して正側の電位となる。
【0034】
以下、図3の(a)及び図3の(b)を参照する。図3の(a)は一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置における二次電子の挙動を示す図であり、図3の(b)は第1の電極の電位と第2の電極の電位が互いに同じ場合の二次電子の挙動を示す図である。図3の(a)及び図3の(b)において、「+」を囲む円は正イオンを示しており、「-」を囲む円は二次電子を示している。プラズマ処理装置1では、シャワーヘッドは、複数のガス孔を提供している。複数のガス孔の各々は、複数の第1のガス孔21hのうち一つとこれに連通する第2のガス孔22hを含む。第1の電極21の電位と第2の電極22の電位が互いに同一である場合には、プラズマから正イオンが複数のガス孔に進入して第2の電極22に衝突することにより二次電子が発生して、当該二次電子により放電が発生し得る。一方、プラズマ処理装置1では、第2の電極22の電位は第1の電極21の電位に対して正側の電位に設定される。したがって、プラズマ処理装置1では、処理空間10s内のプラズマから正イオンが複数のガス孔に進入して第2の電極22に衝突することにより二次電子が第2の電極22から放出されても、二次電子は即座に第2の電極22に引き付けられる。故に、複数のガス孔の中のガスに二次電子が衝突して、複数のガス孔の中でガスが解離することが抑制される。
【0035】
一実施形態においては、第2の電極22の電位と第1の電極21の電位との間の差は、5V以上であってもよい。かかる電位の差によれば、複数のガス孔の中でのガスの解離がより効果的に抑制される。
【0036】
以下、図4及び図5を参照する。図4は、別の例示的実施形態においてプラズマ処理装置に採用される少なくとも一つの電源を示す図である。図5は、更に別の例示的実施形態においてプラズマ処理装置に採用される少なくとも一つの電源を示す図である。図4及び図5に示すように、プラズマ処理装置1は、少なくとも一つの電源として、第1の電源及び第2の電源、即ち直流電源511及び直流電源512を含んでいてもよい。直流電源511及び直流電源512の各々は、可変直流電源であってもよい。
【0037】
図4に示す実施形態では、直流電源511の正極は、グランドに接続されている。直流電源511の負極は、フィルタ53f及びスイッチ53sを介して第1の電極21に接続されている。直流電源512の正極は、グランドに接続されている。直流電源512の負極は、フィルタ54f及びスイッチ54sを介して第2の電極22に接続されている。図4に示す実施形態においても、第1の電極21の電位は、負の電位となる。また、第2の電極22の電位も、負の電位である。第2の電極22の電位は、第1の電極21の電位に対して正側の電位に設定される。
【0038】
図5に示す実施形態では、直流電源511の正極は、グランドに接続されている。直流電源511の負極は、フィルタ53f及びスイッチ53sを介して第1の電極21に接続されている。直流電源512の負極は、直流電源511の負極に接続されている。直流電源512の正極は、フィルタ54f及びスイッチ54sを介して第2の電極22に接続されている。図5に示す実施形態においても、第1の電極21の電位は、負の電位となる。また、第2の電極22の電位は、負の電位であり得る。第2の電極22の電位は、第1の電極21の電位に対して正側の電位に設定される。
【0039】
図5に示す実施形態においては、直流電源511及び直流電源512を用いる点で図4に示す実施形態と共通する。しかしながら、図4に示す実施形態では、直流電源511及び直流電源512の各々として高電圧の電源を用いなければならない場合がある。一方、図5に示す実施形態では、直流電源512として比較的低電圧の電源を用いても、第1の電極21と第2の電極22との間の電位差を適切に設定することができる。
【0040】
以下、図6の(a)及び図6の(b)を参照する。図6の(a)及び図6の(b)の各々は、更に別の例示的実施形態においてプラズマ処理装置に採用される上部電極の部分拡大断面図である。図6の(a)及び図6の(b)に示すように、上部電極14は、誘電体層23を更に含んでいてもよい。誘電体層23は、シリコン、炭化シリコン、又は酸化アルミニウムから形成される。
【0041】
図6の(a)に示すように、誘電体層23は、第1の電極21と第2の電極22との間に設けられている。誘電体層23は、第1の電極21の上面又は第2の電極22の下面に溶射によって形成されてもよい。或いは、誘電体層23は、誘電体から形成された板であってもよく、第1の電極21の上面と第2の電極22の下面との間に挟持されてもよい。
【0042】
図6の(b)に示すように、誘電体層23は、第1の電極21の下面に形成されていてもよい。誘電体層23は、第1の電極21の下面に溶射によって形成されてもよい。或いは、誘電体層23は、誘電体から形成された板であってもよく、第1の電極21の下面に対して固定されていてもよい。なお、誘電体層23は、第2の電極22の上面に形成されていてもよい。
【0043】
以下、図7を参照する。図7は、更に別の例示的実施形態においてプラズマ処理装置に採用される上部電極の部分拡大断面図である。図7に示すように、上部電極14は、導電層22gを更に有していてもよい。導電層22gは、複数の第2のガス孔22hの各々の端部22tを画成する表面領域に形成されている。導電層22gは、導電性を有する材料から形成される。導電層22gは、例えば、シリコン、炭化ケイ素、アルミニウム、又はチタンから形成される。
【0044】
少なくとも一つの電源は、上述した第2の電極22の電位を設定するために、導電層22gに電圧を印加してもよい。図7に示す例では、ノード52dは、フィルタ54f及びスイッチ54sを介して導電層22gに接続されている。なお、図4に示すように直流電源511及び直流電源512が用いられる場合には、直流電源512の負極が、フィルタ54f及びスイッチ54sを介して導電層22gに接続される。また、図5に示すように直流電源511及び直流電源512が用いられる場合には、直流電源512の正極が、フィルタ54f及びスイッチ54sを介して導電層22gに接続される。
【0045】
図7に示す実施形態においても、抵抗52aは固定抵抗であってもよく、可変抵抗であってもよい。また、図7に示す実施形態においても、抵抗52bは、固定抵抗であってもよく、可変抵抗であってもよい。
【0046】
以下、図8図10を参照する。図8図10の各々は、更に別の例示的実施形態においてプラズマ処理装置に採用される上部電極の断面図である。プラズマ処理装置1において採用される上部電極14において、第1の電極21又は第1の電極21と第2の電極22の双方は、径方向及び/又は周方向において複数の部分に分離されていてもよい。
【0047】
図8に示す実施形態では、第1の電極21は、部分21c及び部分21eを含む。部分21cと部分21eは、互いから分離されている。部分21cは、径方向において第1の電極21の中央の領域を構成する。部分21cは、平面視では円形の領域である。部分21eは、部分21cの径方向外側の領域であり、第1の電極21の周縁領域を構成している。部分21eは、平面視では環状の領域である。部分21cと部分21eとの間には空間が設けられていてもよく、部分21cと部分21eとの間に絶縁体材料が設けられていてもよい。
【0048】
図8に示す実施形態において、部分21c及び部分21eの各々には、フィルタ53f及びスイッチ53sを介して直流電源511が電気的に接続される。第2の電極22には、フィルタ54f及びスイッチ54sを介して直流電源512が電気的に接続される。
【0049】
図9に示す実施形態では、図8に示す実施形態と同様に、第1の電極21は、部分21c及び部分21eを含む。図9に示す実施形態では、第2の電極22は、部分22c及び部分22eを含む。部分22cと部分22eは、互いから分離されている。部分22cは、径方向において第2の電極22の中央の領域を構成する。部分22cは、平面視では円形の領域である。部分22cは、部分21c上に設けられる。部分22eは、部分22cの径方向外側の領域であり、第2の電極22の周縁領域を構成している。部分22eは、平面視では環状の領域である。部分22eは、部分21e上に設けられる。部分22cと部分22eとの間には空間が設けられていてもよく、部分22cと部分22eとの間に絶縁体材料が設けられていてもよい。
【0050】
図9に示す実施形態において、部分21c及び部分21eの各々には、フィルタ53f及びスイッチ53sを介して直流電源511が電気的に接続される。部分22c及び部分22eの各々には、フィルタ54f及びスイッチ54sを介して直流電源512が電気的に接続される。
【0051】
図10に示す実施形態では、第1の電極21は、部分21c及び部分21eに加えて、部分21mを含んでいる。部分21c、部分21m、及び部分21eは、互いから分離されている。部分21mは、部分21cと部分21eとの間の領域である。部分21mは、平面視では環状の領域である。部分21cと部分21mとの間には空間が設けられていてもよく、部分21cと部分21mとの間に絶縁体材料が設けられていてもよい。部分21mと部分21eとの間には空間が設けられていてもよく、部分21mと部分21eとの間に絶縁体材料が設けられていてもよい。
【0052】
図10に示す実施形態において、部分21c、部分21m、及び部分21eの各々には、フィルタ53f及びスイッチ53sを介して直流電源511が電気的に接続される。第2の電極22には、フィルタ54f及びスイッチ54sを介して直流電源512が電気的に接続される。
【0053】
以下、図11図14を参照する。図11図14は、一例のタイミングチャートである。図11図14の各々は、基板支持部12のバイアス電極の電位、チャンバ10内で生成されるプラズマの電位、並びに、上部電極の第1の電極及び第2の電極の各々の電位のタイミングチャートを示している。
【0054】
図11図14に示すように、波形周期CYは、期間P1及び期間P2を含んでいる。期間P1は、波形周期CY内の負位相期間である。期間P1における基板Wの電位又はバイアス電極の電位は、波形周期CY内の基板Wの平均電位又はバイアス電極の平均電位よりも低い。期間P1において、基板Wの電位又はバイアス電極の電位は、負の電位であり得る。期間P2は、波形周期CY内の期間P1以外の期間であり、波形周期CY内の正位相期間である。期間P2において、基板Wの電位又はバイアス電極の電位は、0V以上であり得る。
【0055】
図11図14に示すように、プラズマ処理装置1の少なくとも一つの電源、即ち直流電源51又は直流電源511及び512は、第1の電極21の電位を、電位V21Aのように一定に設定してもよい。また、プラズマ処理装置1の少なくとも一つの電源は、第2の電極22の電位を、電位V22Aのように一定に設定してもよい。
【0056】
或いは、図11図14に示すように、プラズマ処理装置1の少なくとも一つの電源、即ち直流電源51又は直流電源511及び512は、第1の電極21の電位を、電位V21B又はV21Cのように電気バイアスエネルギーBEに同期して変化させてもよい。また、プラズマ処理装置1の少なくとも一つの電源は、第2の電極22の電位を、電位V22B又はV22Cのように電気バイアスエネルギーBEに同期して変化させてもよい。
【0057】
具体的には、プラズマ処理装置1の少なくとも一つの電源は、電位V21B又はV21Cのように、期間P2における第1の電極21の電位を、期間P1における第1の電極21の負の電位よりも正側に高い電位に設定してもよい。また、プラズマ処理装置1の少なくとも一つの電源は、電位V22B又はV22Cのように、期間P2における第2の電極22の電位を、期間P1における第2の電極22の負の電位よりも正側に高い電位に設定してもよい。この場合には、期間P2において、プラズマと上部電極14との間の電位差を低下させることが可能である。その結果、プラズマから上部電極14に向かうイオンの速度を低減させて、二次電子の発生を抑制することが可能となる。
【0058】
また、プラズマ処理装置1の少なくとも一つの電源は、電位V21B又はV21Cのように、期間P1における第1の電極21の負の電位の絶対値を、期間P2における第1の電極21の電位の絶対値よりも大きい値に設定してもよい。また、プラズマ処理装置1の少なくとも一つの電源は、電位V22B又はV22Cのように、期間P1における第2の電極22の負の電位の絶対値を、期間P2における第2の電極22の電位の絶対値よりも大きい値に設定してもよい。この場合には、期間P1においてイオンが基板Wに衝突することにより基板Wから二次電子が放出されても、上部電極14に向かう二次電子の速度が低減される。
【0059】
なお、図11図14に示すように、波形周期CYにおける第1の電極21及び第2の電極22の各々の電位は、二つの期間の電位(期間P1の電位と期間P2の電位)、即ち二値をとってもよい。別の例では、波形周期CY内の期間の数は、二つ以外の他の数であってもよい。また、波形周期CYにおける第1の電極21及び第2の電極22の電位は、スムーズに変化してもよい。
【0060】
図15の(a)及び図15の(b)は、電源の制御に関連する一例の構成を示す図である。図15の(a)に示すように、プラズマ処理装置1は、第1の電極21の電位及び第2の電極22の電位を電気バイアスエネルギーBEに同期して変化させるために、電源コントローラ60を更に備えていてもよい。電源コントローラ60は、バイアス電源32及び直流電源51に同期信号を与える。電源コントローラ60は、直流電源51に位相信号を更に与える。バイアス電源32は、与えられた同期信号に同期して電気バイアスエネルギーBEを発生する。直流電源51は、与えられた同期信号に同期し、且つ、位相信号に応じて、第1の電極21の電位及び第2の電極22の電位を変化させる。なお、直流電源51の波形周期CY内での出力電圧の波形は、予め設定されていてもよく、或いは、レシピデータに基づいて設定されてもよい。或いは、図15の(b)に示すように、バイアス電源32が、同期信号及び位相信号を発生して、直流電源51に与えてもよい。
【0061】
図16の(a)及び図16の(b)は、電源の制御に関連する一例の構成を示す図である。図16の(a)に示すように、プラズマ処理装置1は、第1の電極21の電位及び第2の電極22の電位を電気バイアスエネルギーBEに同期して変化させるために、電源コントローラ61を更に備えていてもよい。電源コントローラ61は、バイアス電源32、直流電源511、及び直流電源512に同期信号を与える。電源コントローラ61は、直流電源511及び直流電源512に位相信号を更に与える。バイアス電源32は、与えられた同期信号に同期して電気バイアスエネルギーBEを発生する。直流電源511及び直流電源512の各々は、与えられた同期信号に同期し、且つ、位相信号に応じて、第1の電極21の電位及び第2の電極22の電位を変化させる。なお、直流電源511及び直流電源512の各々の波形周期CY内での出力電圧の波形は、予め設定されていてもよく、或いは、レシピデータに基づいて設定されてもよい。或いは、図16の(b)に示すように、バイアス電源32が、同期信号及び位相信号を発生して、直流電源511及び直流電源512に与えてもよい。
【0062】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0063】
例えば、複数の第2のガス孔22hのうち少なくとも一つ又は複数の第2のガス孔22hの各々は、複数の第1のガス孔21hのうち二つ以上の第1のガス孔21hに連通していてもよい。また、複数の第1のガス孔21hの各々は、屈曲していてもよい。
【0064】
ここで、本開示に含まれる種々の例示的実施形態を、以下の[E1]~[E16]に記載する。
【0065】
[E1]
その内部に処理空間を提供するチャンバと、
前記チャンバ内に設けられた基板支持部と、
前記処理空間の上方から前記処理空間にガスを導入するシャワーヘッドを構成する上部電極であり、
前記処理空間に向けて開口した複数の第1のガス孔を提供する第1の電極と、
前記第1の電極上に直接的に又は間接的に設けられており、前記複数の第1のガス孔にそれぞれ連通する複数の第2のガス孔を提供する第2の電極と、
を含む該上部電極と、
前記第2の電極の電位を前記第1の電極の電位に対して正側の電位に設定するように構成された少なくとも一つの電源と、
を備えるプラズマ処理装置。
【0066】
[E1]の実施形態において、シャワーヘッドは、複数のガス孔を提供している。複数のガス孔の各々は、複数の第1のガス孔のうち一つとこれに連通する第2のガス孔を含む。[E1]の実施形態では、処理空間内のプラズマから正イオンが複数のガス孔に進入して第2の電極に衝突することにより二次電子が第2の電極から放出されても、二次電子は即座に第2の電極に引き付けられる。したがって、複数のガス孔の中のガスに二次電子が衝突して、複数のガス孔の中でガスが解離することが抑制される。
【0067】
[E2]
前記第2の電極の電位は、前記第1の電極の電位よりも、+5V以上高い、[E1]に記載のプラズマ処理装置。
【0068】
[E3]
前記少なくとも一つの電源は、前記第1の電極の電位を負の電位、0V、又はフローティングに設定するように構成されている、[E1]又は[E2]に記載のプラズマ処理装置。
【0069】
[E4]
前記少なくとも一つの電源として単一の電源を備え、
前記単一の電源に接続された抵抗分割回路を更に備え、
前記抵抗分割回路において異なる電位を有する二つのノードが前記第1の電極及び前記第2の電極にそれぞれ電気的に接続されている、[E1]~[E3]の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【0070】
[E5]
前記少なくとも一つの電源として、前記第1の電極に電気的に接続された第1の電源と、該第1の電源とは別の第2の電源であり前記第2の電極に電気的に接続された該第2の電源と、を備える、[E1]~[E3]の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【0071】
[E6]
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた誘電体層を更に備える、[E1]~[E5]の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【0072】
[E7]
前記第2の電極は、前記複数の第2のガス孔の各々の前記第1の電極の側の端部を画成する表面領域に導電層を有し、
前記少なくとも一つの電源は、前記導電層に電圧を印加するように構成されている、
[E1]~[E6]の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【0073】
[E8]
前記第1の電極は、互いから分離された複数の部分を含み、
前記少なくとも一つの電源は、前記複数の部分に電圧を印加するように構成されている、
[E1]~[E6]の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【0074】
[E9]
前記第1の電極の前記複数の部分は、径方向において互いから分離されている、[E8]に記載のプラズマ処理装置。
【0075】
[E10]
前記第2の電極は、温調機構を有する、[E1]~[E9]の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【0076】
[E11]
前記温調機構は、前記第2の電極の中に形成された流路であり、その中で熱媒体が流される該流路を含む、[E10]に記載のプラズマ処理装置。
【0077】
[E12]
前記複数の第2のガス孔の各々の前記第1の電極の側の端部はテーパー状をなしており、
前記複数の第2のガス孔の各々の前記端部の開口の直径は、前記複数の第1のガス孔の各々の直径よりも大きい、
[E1]~[E11]の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【0078】
[E13]
前記第1の電極は、シリコン、炭化ケイ素、又は石英から形成されており、
前記第2の電極は、金属又は炭化ケイ素から形成されている、
[E1]~[E12]の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【0079】
[E14]
波形周期を有する電気バイアスエネルギーを周期的に前記基板支持部に供給するように構成され、
前記波形周期は、前記基板の電位が該波形周期内の該基板の平均電位よりも低い負位相期間と該波形周期内の該負位相期間以外の期間である正位相期間とを含み、
前記少なくとも一つの電源は、前記正位相期間における前記第1の電極の電位を前記負位相期間における前記第1の電極の負の電位よりも正側に高い電位に設定するように構成されている、
[E1]~[E13]の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【0080】
[E15]
波形周期を有する電気バイアスエネルギーを周期的に前記基板支持部に供給するように構成され、
前記波形周期は、前記基板の電位が該波形周期内の該基板の平均電位よりも低い負位相期間と該波形周期内の該負位相期間以外の期間である正位相期間とを含み、
前記少なくとも一つの電源は、前記負位相期間における前記第1の電極の負の電位の絶対値を前記正位相期間における前記第1の電極の電位の絶対値よりも大きい値に設定するように構成されている、
[E1]~[E13]の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【0081】
[E16]
前記電気バイアスエネルギーは、バイアス高周波電力であるか前記波形周期の時間間隔で周期的に発生される電圧のパルスである、[E14]又は[E15]に記載のプラズマ処理装置。
【0082】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0083】
1…プラズマ処理装置、10…チャンバ、12…基板支持部、14…上部電極、21…第1の電極、21h…第1のガス孔、22…第2の電極、22h…第2のガス孔、51…直流電源。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16