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特開2023-39647二液型付加硬化性シリコーン組成物の塗布方法、およびそのための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039647
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】二液型付加硬化性シリコーン組成物の塗布方法、およびそのための装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20230314BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20230314BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20230314BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20230314BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20230314BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
B05D7/24 302Y
B05D7/24 301U
B05D3/12 Z
B05D3/00 E
B05D1/26 Z
B05D7/24 301V
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146877
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】島 涼登
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 豊彦
【テーマコード(参考)】
4D075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC06
4D075AC07
4D075AC09
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC94
4D075BB16X
4D075BB18X
4D075BB93X
4D075DA06
4D075DC21
4D075EA24
4D075EA27
4D075EB11
4D075EB43
4D075EB51
4D075EC08
4D075EC37
4F041AA05
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA12
4F041BA32
4F041BA34
4F041BA43
4F042AA06
4F042AB00
4F042BA12
4F042BA15
4F042BA19
4F042CB26
4F042CB27
(57)【要約】
【課題】 二液型付加硬化性シリコーン組成物の室温硬化性を損なうことなく、作業性良く、少量塗布する方法、およびそのための装置を提供する。
【解決手段】 二液型付加硬化性シリコーン組成物の各液を導入するための導入口を有し、該液を混合するための複数のエレメントを有する静止型攪拌器、該攪拌器を冷却するための冷却器、混合された付加硬化性シリコーン組成物を少量ずつ吐出するためのノズルからなる、二液型付加硬化性シリコーン組成物の塗布装置、および二液型付加硬化性シリコーン組成物の各液を静止型攪拌器内に導入し、該液を冷却しながら混合して付加硬化性シリコーン組成物を調製し、次いで、該組成物をノズルよりより少量ずつ吐出することを特徴とする、二液型付加硬化性シリコーン組成物の塗布方法。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二液型付加硬化性シリコーン組成物の各液を導入するための導入口を有し、該液を混合するための複数のエレメントを有する静止型攪拌器、該攪拌器を冷却するための冷却器、混合された付加硬化性シリコーン組成物を少量ずつ吐出するためのノズルからなる、二液型付加硬化性シリコーン組成物の塗布装置。
【請求項2】
静止型攪拌器の内容積が1~5mlであることを特徴とする、請求項1記載の塗布装置。
【請求項3】
静止型攪拌器内のエレメント数が7~40であることを特徴とする、請求項1記載の塗布装置。
【請求項4】
静止型攪拌器と冷却器が分離可能であることを特徴とする、請求項1記載の塗布装置。
【請求項5】
二液型付加硬化性シリコーン組成物の各液を静止型攪拌器内に導入し、該液を冷却しながら混合して付加硬化性シリコーン組成物を調製し、次いで、該組成物をノズルよりより少量ずつ吐出することを特徴とする、二液型付加硬化性シリコーン組成物の塗布方法。
【請求項6】
硬化性シリコーン組成物を断続的に吐出することを特徴とする、請求項5記載の塗布方法。
【請求項7】
吐出量が0.5~5μl/1ショットであることを特徴とする、請求項5記載の塗布方法。
【請求項8】
二液型付加硬化性シリコーン組成物のJIS K 6870:2008で規定される25℃でのポットライフが10~60分であり、冷却温度が20℃以下であることを特徴とする、請求項5記載の塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二液型付加硬化性シリコーン組成物の塗布方法、およびそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子部品等の小型化・高精密化により、硬化性シリコーン組成物を電気・電子部品や基板上に数μl程度の少量で断続的に塗布することが求められている。一般に、硬化性シリコーン組成物としては、硬化反応が早く、硬化時に副生成物が発生しないことから、二液型付加硬化性シリコーン組成物が用いられ、この二液を混合するために静止型攪拌器が用いられている。
【0003】
二液型付加硬化性シリコーン組成物は、二液が接触した直後から付加反応が進行するため、少量塗布の場合、静止型混合器内で増粘し、塗布開始からの塗布量の減少率が1時間後には30%を超えてしまい、甚だし場合には、静止型混合器内あるいは吐出部で目詰まりするという課題がある。
【0004】
このような課題を解決するため、二液型付加硬化性シリコーン組成物の室温硬化性を低下させることや、特許文献1~3には、二液型付加硬化性シリコーン組成物の各液を異なる二つのノズルから別々に塗布した基材を貼り合わせることで、塗布作業性と硬化性を両立することが提案されている。
【0005】
一方、特許文献4~7には、-60℃~+5℃に冷却した静止型攪拌器で二液型付加硬化性シリコーン組成物を混合して、+25℃~+100℃の金型中、あるいは+25℃以上の水中に吐出して硬化物を形成する方法が提案されている。さらに、特許文献8には、静止型攪拌内の液体を冷却するため、静止型混合器に冷却装置を設けることが提案されている。
【0006】
しかし、特許文献4~8には、二液型付加硬化性シリコーン組成物を少量塗布することについては無関心である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-091576号公報
【特許文献2】特開2015-091948号公報
【特許文献3】特開2015-214703号公報
【特許文献4】特開昭62-207611号公報
【特許文献5】特開昭62-264920号公報
【特許文献6】特開昭63-046230号公報
【特許文献7】特開平05-005063号公報
【特許文献8】特開2011-036788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、二液型付加硬化性シリコーン組成物の室温硬化性を損なうことなく、作業性良く、少量塗布する方法、およびそのための装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本装置は、二液型付加硬化性シリコーン組成物の各液を導入するための導入口を有し、該液を混合するための複数のエレメントを有する静止型攪拌器、該攪拌器を冷却するための冷却器、混合された付加硬化性シリコーン組成物を少量ずつ吐出するためのノズルからなることを特徴とする。
【0010】
本装置において、静止型攪拌器の内容積は1~5mlであることが好ましく、また、静止型攪拌器内のエレメント数は7~40であることが好ましい。さらに、本装置において、静止型攪拌器と冷却器が分離可能であることが好ましい。
【0011】
また、本方法は、二液型付加硬化性シリコーン組成物の各液を静止型攪拌器内に導入し、該液を冷却しながら混合して付加硬化性シリコーン組成物を調製し、次いで、該組成物をノズルよりより少量ずつ吐出することを特徴とする。
【0012】
本方法において、硬化性シリコーン組成物を断続的に吐出することが好ましく、吐出量は0.5~5μl/1ショットであることが好ましい。
【0013】
さらに、本方法において、二液型付加硬化性シリコーン組成物のJIS K 6870:2008で規定される25℃でのポットライフが10~60分であり、冷却温度が20℃以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の塗布方法およびそのための装置は、二液型付加硬化性シリコーン組成物の室温硬化性を損なうことなく、作業性良く、少量塗布できるという特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一部破断面を有する本装置の透視図である。
図2図2は、一部破断面を有する、他の本装置の透視図である。
図3図3は、本装置が静止型攪拌器および冷却器に分離可能であることを示す斜視図である。
図4図4は、二液型付加硬化性シリコーン組成物供給用シリンジを装着した状態を示す、一部破断面を有する本装置の透視図である
図5図5は、本装置を用いた塗布作業を示す斜視図である。
図6図6は、本装置を用いた、他の塗布作業を示す斜視図である。
図7図7は、本装置を用いた、他の塗布作業を示す斜視図である。
図8図8は、本装置を用いた、他の塗布作業を示す斜視図である。
図9図9は、実施例1で用いた硬化性シリコーン組成物の温度とポットライフの関係を示す片対数グラフである。
図10図10は、実施例2で用いた硬化性シリコーン組成物の温度とポットライフの関係を示す片対数グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<用語の定義>
本明細書で使用する用語「粘度」は、JIS K 7117-1:1999「プラスチック―液状,乳濁状又は分散状の樹脂―ブルックフィールド形回転粘度計による見掛け粘度の測定方法」に規定に準拠したB型回転粘度計により測定した25℃における値(単位:mPa・sあるいはPa・s)を意味する。
【0017】
本明細書で使用する用語「ポットライフ」は、JIS K 6870:2008「接着剤-多成分接着剤のポットライフ(可使時間)の求め方」に規定される方法により、所定の温度で二成分を混合した直後の粘度から、その粘度が2倍になるまでの時間を意味する。
【0018】
<二液型付加硬化性シリコーン組成物の塗布方法、およびそのための装置>
本発明の塗布方法およびそのための装置を、図面に基づき、詳細に説明する。
図1は、本装置の一例を示す、一部破断面を有する透視図である。本装置は、静止型攪拌器1、該攪拌器1を覆うように設けられた冷却器2、前記攪拌器1に接続されたノズル3からなる。
【0019】
静止型攪拌器1には、二液型付加硬化性シリコーン組成物の各液を導入するための導入口11,11’が設けられており、これらの導入口には、二液をそれぞれ貯蔵する容器(図示せず)、あるいは該容器から二液を移送するためのパイプやチューブ等(図示せず)が接続されている。なお、この容器とし、シリンジやカートリッジを用いることができる。二液は、一定量で導入口11,11’に移液される。なお、二液を予め冷却した状態で移液してもよい。静止型攪拌器1の内容積は限定されないが、断続的に少量塗布する必要があることから、1~5mlであることが好ましい。また、静止型攪拌器1内には、二液を混合するための複数のエレメント12が設けられている。エレメント12は、ステンレス、チタン等の金属;ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン等のプラスチックにより形成されており、また、その形状は限定されないが、二液を分割・混合するため、四角状の板を180゜ねじり曲げたものが使用される。静止型攪拌器1の円筒内に四角状の板を右方向に180゜ねじり曲げた右エレメントと左方向に180゜ねじり曲げた左エレメントを交互に複数配置した構造とすることで、剪断を極力抑制しつつ効果的に偏流を抑制することができる。
【0020】
二液は、静止型攪拌器1の端部から導入され、他の端部に流動する過程で、エレメント12により分割・混合され、やがて均一な組成物となる。二液の粘度に著しい差がある場合には、一方の液がエレメント12を容易に通り抜け、均一な組成物が得られない場合がある。そのため、二液の粘度を予め合わせておくことが好ましい。また、二液の粘度が低い場合にも、それぞれがエレメント12を容易に通り抜け、均一な組成物が得られない場合がある。このような場合には、エレメントの形状を適切なものとするか、あるいは、エレメントの数を増やすことが好ましい。なお、エレメントの数が多くなればなるほど、得られる組成物の均一性が向上するが、静止型攪拌器1内で組成物が滞留する時間が長くなり、該組成物の増粘やゲル化を生じる懸念がある。このため、塗布速度に合わせて最少の数とすることが好ましく、具体的には、エレメント数は7~40の範囲内、あるいは7~30の範囲内であることが好ましい。また、静止型攪拌器1の内部清掃作業の容易さから、エレメント12は静止型攪拌器1内から分離可能であることが好ましい。
【0021】
静止型攪拌器1には冷却器2が設けられている。冷却器2には、冷媒を導入・排出するための導入・排出口11,11’が設けられている。冷却器2により、二液を冷却し、混合して得られる組成物の増粘やゲル化を抑制することができる。冷却器2による冷却温度は限定されないが、一般には、20℃以下、15℃以下、あるいは5℃以下であることが好ましく、一方、冷却による硬化性シリコーン組成物の増粘や塗布後の該組成物やその周辺の結露を生じにくいことから、-5℃以上、0℃以上、あるいは5℃以上であることが好ましい。なお、この冷却温度は、静止型攪拌器の内容積と吐出量から求められる、硬化性シリコーン組成物が静止型攪拌器中に導入されてから吐出されるまでの時間(滞留時間)と、前記組成物のポットライフにより、簡易的に推定することができる。例えば、硬化性シリコーン組成物の25℃における粘度が100Pa・s以下と比較的低い場合には、前記滞留時間に比べ、その少なくとも0.5倍、少なくとも0.6倍、少なくとも0.8倍、あるいは少なくとも1倍のポットライフとなるような温度に前記組成物を冷却すればよい。また、硬化性シリコーン組成物の25℃における粘度が100Pa・sを超える場合には、前記滞留時間に比べ、その少なくとも1.5倍、あるいは少なくとも2倍のポットライフとなるような温度に前記組成物を冷却すればよい。前記組成物を所定の温度以下に冷却すれば、前記組成物の増粘による塗布量の変化や静止型混合器内あるいは吐出部での目詰まりを抑制することができる。冷却器2に用いる冷媒は限定されず、例えば、水、アルコールの水溶液、ジエチレングリコールの水溶液、オイル等の液体;空気、窒素等のガスが挙げられ、冷却温度に応じて適宜選択することが好ましい。図1では、冷媒は冷却器2内を自由に流れるが、静止型攪拌器1の局所的な冷却を避けるため、冷媒の流れをコントロールすることが好ましい。例えば、図2では、冷媒は、その導入部と排出部に接続した導管22内を流動する。このため、静止型攪拌器1を均一に冷却することができる。また、図3に示されるように、本装置において、静止型攪拌器1と冷却器2は分離可能であってもよい。
【0022】
図4は、本装置に、二液型付加硬化性シリコーン組成物供給用シリンジ4を装着した、一部破断面を有する透視図である。図4に示されるように、本装置にシリンジやカートリッジ等の容器を装着することにより、装置自体を最小化できる。また、図4では、シリンジ4に接続したエア供給機構(図示せず)等により、静止型攪拌器1内に一定量の二液を供給することができる。
【0023】
静止型攪拌器1内で混合された付加硬化性シリコーン組成物は、ノズル3より少量ずつ吐出される。その吐出量は限定されないが、断続的な少量塗布を達成するためには、0.5~5μl/ショットであることが好ましい。また、図1~4では、付加硬化性シリコーン組成物をノズル3から吐出しているが、このノズル3の代わりにジェットディスノズルを取り付けることにより、付加硬化性シリコーン組成物をさらに微小塗布することも可能である。
【0024】
本発明を適用する二液型付加硬化性シリコーン組成物は限定されないが、JIS K 7117-1:1999「プラスチック-液状、乳濁状又は分散状の樹脂-ブルックフィールド形回転粘度計による見掛け粘度の測定方法」で規定される25℃における粘度が、100~1,000,000mPasの範囲内、あるいは500~500,000mPasの範囲内であることが好ましい。また、そのJIS K 6870:2008「接着剤-多成分接着剤のポットライフ(可使時間)の求め方」で規定される25℃におけるポットライフ(二成分を混合した直後の粘度に対して、その粘度が2倍になるまでの時間)が10~60分である速硬化性のものでも適用することができる。この場合、静止型攪拌器1の冷却温度は20℃以下、15℃以下、あるいは5℃以下であることが好ましく、一方、冷却による硬化性シリコーン組成物の増粘や塗布後の該組成物やその周辺の結露を生じにくいことから、-5℃以上、0℃以上、あるいは5℃以上であることが好ましい。なお、この二液型付加硬化性シリコーン組成物の冷却温度におけるポットライフは、少なくとも異なる3点における温度と、その時のポットライフの実測値により作成した片対数グラフから推測値として求めることができる。このようなポットライフを有する二液型付加硬化性シリコーン組成物を、吐出量5μl/ショットで断続的に塗布した場合、塗布開始からの塗布量の減少率を1時間後であっても30%未満とすることができる。このような二液型付加硬化性シリコーン組成物としては、例えば、ダウ・東レ株式会社製のDOWSILTM EA-4700 CV ADHESIVE A&B、ダウ・東レ株式会社製のDOWSILTM TC-4525 CV GAPFILLER A&Bが挙げられる。
【0025】
図5~8は、本装置を用いた塗布作業を示している。図5では、本装置が固定され、基板5に付加硬化性シリコーン組成物6がドット状に少量塗布され、また、断続的に少量塗布するため、XYステージ機構7により、基板5自体がX軸・Y軸方向に移動可能となっている。このXYステージ機構とは、水平面上において、X軸方向に沿って互いに平行なガイド軸上でスライド移動可能に設けられたスライド部材と、水平面上でX軸方向と直交するY軸方向に沿って互いに平行なガイド軸上でスライド移動可能に設けられたスライド部材とを有するXYステージにより、該ステージ上の基板5を任意の位置に移動させる機構である。このXYステージ機構により、本装置を移動させることなく、基板5上に付加硬化性シリコーン組成物を断続的に少量塗布できる。
【0026】
また、図6では、基板5は固定され、本装置がXYスライド機構によりX軸・Y軸方向に移動可能となっている。このXYスライド機構とは、水平面上において、X軸方向に沿って互いに平行なガイド軸上でスライド移動可能に設けられたスライド部材と、水平面上でX軸方向と直交するY軸方向のスライド部材にスライド移動可能に設けられた本装置の架台により、本装置を任意の位置に移動させる機構である。このXYスライド機構により、大きな基板を移動させることなく、基板5上に付加硬化性シリコーン組成物を断続的に少量塗布できる。
【0027】
さらに、図7では、XYスライド機構およびXYステージ機構の併用により、本装置も基板もそれぞれ移動可能となり、より高速で付加硬化性シリコーン組成物を断続的に少量塗布することができる。また、図8では、付加硬化性シリコーン組成物をビード状に断続的に少量塗布している。このように基板5上に塗布された付加硬化性シリコーン組成物6は室温あるいは必要応じて加熱することより硬化することができる。
【実施例0028】
本発明の塗布方法およびそのための装置を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
[実施例1]
下記のA液・B液からなる二液型付加硬化性シリコーン組成物を調製し、これを所定温度に冷却した本塗布装置を用いて、初期の吐出圧に設定した状態で塗布した際の塗布性を評価した。なお、粘度は、JIS K 7117-1:1999の規定に従い、25℃において、せん断速度10(1/s)の回転粘度計で測定した値である。
【0030】
(A液の調製)
粘度360mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン 50質量部、粘度2,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン 50質量部、および白金の1,3-ジビニル-テトラメチルジシロキサン錯体(組成物中に白金金属が質量単位で25ppmとなる量)を均一に混合して、粘度1080mPa・sのA液を調製した。
【0031】
(B液の調製)
粘度360mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン 50質量部、粘度2,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン 50質量部、粘度5mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体 10質量部、粘度10mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン 1質量部、および2-フェニル-3-ブチン-2-オール(組成物中に質量単位で100ppmとなる量)を均一に混合して、粘度850mPa・sのB液を調製した。
【0032】
上記のA液とB液を体積比1:1で混合直後に得られる硬化性シリコーン組成物の25℃における粘度、およびJIS K 6870:2008で規定の所定の温度におけるポットライフを表1に記載した。また、25℃以外の温度と、その温度におけるポットライフを実測値から作成した片対数グラフ(図9)により推測し、表1に併記した。
【0033】
【表1】
【0034】
上記のA液とB液をMIXPAC社製のデュアルシリンジ(CD050-01-PP)に充填し、A液とB液の体積比が1:1となるよう静止型攪拌器(MIXPAC社製のスタテックミキサー MA0517-0413;エレメント数30;内容積2.0ml)に導入し、この静止型攪拌器を冷却器で所定の温度で冷却しながら混合し、ノズルから、2秒毎に1.0μl/ショットで基板に塗布した。初期の塗布量と30分経過後の塗布量を比較し、塗布量の減少率を求めた。なお、この塗布量の減少率が10%以下である場合を塗布性が「良」、10%を超え、30%以下である場合を塗布性が「やや良」、30%を超える場合を塗布性が「不良」と評価した。その結果を表2に示した。
【0035】
【表2】
【0036】
また、上記のA液とB液をMIXPAC社製のデュアルシリンジ(CD050-01-PP)に充填し、液とB液の体積比が1:1となるよう静止型攪拌器(MIXPAC社製のスタテックミキサー MA0517-0413(エレメント数30;内容積2.0ml)に導入し、この静止型攪拌器を冷却器で所定の温度で冷却しながら混合し、ノズルから、2秒毎に1.0μl/ショットで基板に塗布した。その後、60分間、塗布作業を停止し、再度、塗布作業を開始した。初期の塗布量と60分経過後の塗布量を比較し、塗布量の減少率を求めた。なお、この塗布量の減少率が10%以下である場合を塗布性が「良」、10%を超え、30%以下である場合を塗布性が「やや良」、30%を超える場合を塗布性が「不良」と評価した。その結果を表3に示した。
【0037】
【表3】
【0038】
[実施例2]
二液型付加硬化性シリコーン組成物として、ダウ・東レ株式会社製のDOWSILTM EA-4700 CV ADHESIVE A&Bを用いた。この特性は表4に示す通りである。また、25℃以外の温度と、その温度におけるポットライフを実測値から作成した片対数グラフ(図10)により推測し、表4に併記した。
【0039】
【表4】
【0040】
DOWSILTM EA-4700 CV ADHESIVE A&BをMIXPAC社製のデュアルシリンジ(CD050-01-PP)に充填し、A液とB液の体積比が1:1となるよう静止型攪拌器(MIXPAC社製のスタテックミキサー MA0517-0413;エレメント数30;内容積2.0ml)に導入し、この静止型攪拌器を冷却器で所定の温度で冷却しながら混合し、ノズルから、2秒毎に1.2μl/ショットで基板に塗布した。初期の塗布量と30分経過後の塗布量を比較し、塗布量の減少率を求めた。なお、この塗布量の減少率が10%以下である場合を塗布性が「良」、10%を超え、30%以下である場合を塗布性が「やや良」、30%を超える場合を塗布性が「不良」と評価した。その結果を表5に示した。
【0041】
【表5】
【0042】
[実施例3]
二液型付加硬化性シリコーン組成物として、ダウ・東レ株式会社製のDOWSILTM TC-4525 CV GAPFILLER A&Bを用いた。この特性は表6に示す通りである。
【0043】
【表6】
【0044】
DOWSILTM TC-4525 CV GAPFILLER A&BをMIXPAC社製のデュアルシリンジ(CD050-01-PP)に充填し、A液とB液の体積比が1:1となるよう静止型攪拌器(MIXPAC社製のスタテックミキサー MA6.3-12-S;エレメント数12;内容積1.9ml)に導入し、この静止型攪拌器を冷却器で所定の温度で冷却しながら混合し、ノズルから、2秒毎に1.5μl/ショットで基板に塗布した。初期の塗布量と30分経過後の塗布量を比較し、塗布量の減少率を求めた。なお、この塗布量の減少率が10%以下である場合を塗布性が「良」、10%を超え、30%以下である場合を塗布性が「やや良」、30%を超える場合を塗布性が「不良」と評価した。その結果を表7に示した。
【0045】
【表7】
【0046】
上記の塗布性の評価から、静止型攪拌器を冷却器で20℃以下、15℃以下、あるいは5℃以下に冷却することにより、作業性良く、少量塗布できることがわかる。また、塗布作業を中断した場合でも、静止型攪拌器を冷却し続けることで、塗布作業を再開した後も良好に少量塗布できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の塗布方法およびその装置は、二液型付加硬化性シリコーン組成物の室温硬化性を損なうことなく、作業性良く、少量塗布できるので、例えば、電気・電子部品またはその基板上に付加型硬化性シリコーン組成物を断続的に少量塗布するための方法および装置として好適である。
【符号の説明】
【0048】
1 静止型攪拌器
2 冷却器
3 ノズル
4 二液型付加硬化性シリコーン組成物の供給用シリンジ
5 基板
6,6’ 付加硬化性シリコーン組成物
7 XYステージ機構
8 XYスライド機構
11,11’ 二液型付加硬化性シリコーン組成物の各液の導入口
12 エレメント
21,21’ 冷媒導入・排出口
22 冷媒用導管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10