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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039685
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】画像形成装置及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230314BHJP
   B41J 2/15 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B41J2/01 213
B41J2/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146923
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴之
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EC08
2C056EC37
2C056EC71
2C056EE18
2C056FA10
2C056HA22
2C056HA46
2C056HA47
2C057AF21
2C057AG11
2C057AN01
(57)【要約】
【課題】合一現象の発生を抑制可能とする。
【解決手段】画像形成装置の一例としてのインクジェット記録装置1は、画像形成用のインクを吐出するノズル孔27を主走査方向に直交する副走査方向に複数配列したノズル列をそれぞれ有するノズル群N(1)~ノズル群N(n)を備え、ノズル群N(1)が副走査方向で最も上流側に配置され、以下副走査方向の下流側に順番に配置される記録ヘッド20と、記録ヘッド20の各ノズル群を主走査方向に移動させて画像を形成するスキャンをn回行って記録用メディア40の所定領域に完成画像を形成する制御部10とを備え、制御部10は、完成画像に対する各ノズル群による画像の形成の度合いを示す画像完成率に関し、ノズル群N(1)のうちノズル群N(2)と接する部分P1の画像完成率が、他のノズル群N(2)~N(n)の完成率以下となるよう設定する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類の画像形成用のプロセスカラーの液体を吐出するノズル孔を主走査方向に直交する副走査方向に複数配列した第1ノズル列から第Nノズル列(Nは整数)をそれぞれ有する第1ノズル群~第Nノズル群を備え、前記第1ノズル群が前記副走査方向で最も上流側に配置され、以下前記第Nノズル群まで前記副走査方向の下流側に前記主走査方向から視たときに重複しないように順番に配置される液体吐出ユニットと、
前記第1乃至第Nノズル群を前記主走査方向に移動させて画像を形成するに際して、第1スキャンにおいては、前記第1ノズル群から前記液体を吐出させ、前記第1スキャン後の第2スキャンにおいては、前記第1ノズル群に隣接する第2ノズル群から前記液体を吐出させ、前記第2スキャン後の第Nスキャンにおいては、第N-1ノズル群に隣接する第Nノズル群から前記液体を吐出させ、前記第Nスキャンの後に記録用メディアの所定の画像領域に完成画像を形成する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記完成画像に対する前記第1~第Nノズル群による画像の形成の度合いを示す画像完成率に関し、
前記第1ノズル群のうち前記第2ノズル群と接する部分の前記画像完成率が、前記第2~第Nノズル群の前記画像完成率以下となるよう設定する、
画像形成装置。
【請求項2】
少なくとも1種類の画像形成用のプロセスカラーの液体を吐出するノズル孔を主走査方向に直交する副走査方向に複数配列した第1ノズル列から第Nノズル列(Nは整数)をそれぞれ有する第1ノズル群~第Nノズル群を備え、前記第1ノズル群が前記副走査方向で最も上流側に配置され、以下前記第Nノズル群まで前記副走査方向の下流側に前記主走査方向から視たときに重複しないように順番に配置される液体吐出ユニットと、
前記第1乃至第Nノズル群を前記主走査方向に移動させて画像を形成するに際して、第1スキャンにおいては、前記第1ノズル群から前記液体を吐出させ、前記第1スキャン後の第2スキャンにおいては、前記第1ノズル群に隣接する第2ノズル群から前記液体を吐出させ、前記第2スキャン後の第Nスキャンにおいては、第N-1ノズル群に隣接する第Nノズル群から前記液体を吐出させ、前記第Nスキャンの後に記録用メディアの所定の画像領域に完成画像を形成する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記完成画像に対する前記第1~第Nノズル群による画像の形成の度合いを示す画像完成率に関し、
前記第1ノズル群のうち前記記録用メディアの領域に接する部分の前記画像完成率が、前記第2~第Nノズル群の前記画像完成率以下となるよう設定する、
画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1ノズル群のうち前記記録用メディアの領域に接する部分の前記画像完成率が、前記第2~第Nノズル群の前記画像完成率以下となるよう設定する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1ノズル群の前記画像完成率の最大値の位置から、前記第2ノズル群に接する前記部分に向けて、前記画像完成率が減少するよう設定する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第1ノズル群の前記画像完成率の最大値の位置から、前記記録用メディアの領域に接する前記部分に向けて、前記画像完成率が減少するよう設定する、
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第1ノズル群のうち前記記録用メディアの領域に接する前記部分の前記画像完成率が、前記第2~第Nノズル群の前記画像完成率以下となるよう設定し、
前記第1ノズル群の画像完成率の最大値の前記位置から、前記記録用メディアの領域に接する前記部分に向けて、画像完成率が減少するよう設定する、
請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項7】
少なくとも1種類の画像形成用のプロセスカラーの液体を吐出するノズル孔を主走査方向に直交する副走査方向に複数配列した第1ノズル列から第Nノズル列(Nは整数)をそれぞれ有する第1ノズル群~第Nノズル群を備え、前記第1ノズル群が前記副走査方向で最も上流側に配置され、以下前記第Nノズル群まで前記副走査方向の下流側に前記主走査方向から視たときに重複しないように順番に配置される液体吐出ユニットと、
前記第1乃至第Nノズル群を前記主走査方向に移動させて画像を形成するに際して、第1スキャンにおいては、前記第1ノズル群から前記液体を吐出させ、前記第1スキャン後の第2スキャンにおいては、前記第1ノズル群に隣接する第2ノズル群から前記液体を吐出させ、前記第2スキャン後の第Nスキャンにおいては、第N-1ノズル群に隣接する第Nノズル群から前記液体を吐出させ、前記第Nスキャンの後に記録用メディアの所定の画像領域に完成画像を形成する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記完成画像に対する前記第1~第Nノズル群による画像の形成の度合いを示す画像完成率に関し、
前記第1ノズル群の少なくとも一部の前記画像完成率が前記第2~第Nノズル群の前記完成率以下となるよう設定し、
任意のp番目の前記画像完成率の最小値が、p+1番目のノズル群の前記画像完成率の最小値以下となるよう設定する、
画像形成装置。
【請求項8】
少なくとも1種類の画像形成用のプロセスカラーの液体を吐出するノズル孔を主走査方向に直交する副走査方向に複数配列した第1ノズル列から第Nノズル列(Nは整数)をそれぞれ有する第1ノズル群~第Nノズル群を備え、前記第1ノズル群が前記副走査方向で最も上流側に配置され、以下前記第Nノズル群まで前記副走査方向の下流側に前記主走査方向から視たときに重複しないように順番に配置される液体吐出ユニットと、
前記第1乃至第Nノズル群を前記主走査方向に移動させて画像を形成するに際して、第1スキャンにおいては、前記第1ノズル群から前記液体を吐出させ、前記第1スキャン後の第2スキャンにおいては、前記第1ノズル群に隣接する第2ノズル群から前記液体を吐出させ、前記第2スキャン後の第Nスキャンにおいては、第N-1ノズル群に隣接する第Nノズル群から前記液体を吐出させ、前記第Nスキャンの後に記録用メディアの所定の画像領域に完成画像を形成する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記完成画像に対する前記第1~第Nノズル群による画像の形成の度合いを示す画像完成率に関し、
前記第1ノズル群のノズル列方向に離れている2つ以上の部分の前記画像完成率が前記第2~第Nノズル群の前記画像完成率以下となるよう設定する、
画像形成装置。
【請求項9】
前記第1~第Nノズル群に割り当てられる前記画像完成率は、出力ドットデータに対してマスクをかけて各ノズル列へ分配することによって実現される、
請求項1~8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
少なくとも1種類の画像形成用のプロセスカラーの液体を吐出するノズル孔を主走査方向に直交する副走査方向に複数配列した第1ノズル列から第Nノズル列(Nは整数)をそれぞれ有する第1ノズル群~第Nノズル群を備え、前記第1ノズル群が前記副走査方向で最も上流側に配置され、以下前記第Nノズル群まで前記副走査方向の下流側に前記主走査方向から視たときに重複しないように順番に配置される液体吐出ユニットを用いて、制御部が前記第1乃至第Nノズル群を前記主走査方向に移動させて画像を形成する画像形成方法であって、
前記制御部が、前記第1ノズル群から前記液体を吐出させる第1スキャンステップと、
前記制御部が、前記第1スキャンステップ後に、前記第1ノズル群に隣接する第2ノズル群から前記液体を吐出させる第2スキャンステップと、
前記制御部が、前記第2スキャンステップ後に、N番目のスキャンである第Nスキャンにおいて、第N-1ノズル群に隣接する第Nノズル群から前記液体を吐出させ、前記第Nスキャンの後に記録用メディアの所定の画像領域に完成画像を形成する第Nスキャンステップと、
を含み、
前記完成画像に対する前記第1~第Nノズル群による画像の形成の度合いを示す画像完成率に関し、
前記第1ノズル群のうち前記第2ノズル群と接する部分の前記画像完成率が、前記第2~第Nノズル群の前記画像完成率以下となるよう設定される、
画像形成方法。
【請求項11】
少なくとも1種類の画像形成用のプロセスカラーの液体を吐出するノズル孔を主走査方向に直交する副走査方向に複数配列した第1ノズル列から第Nノズル列(Nは整数)をそれぞれ有する第1ノズル群~第Nノズル群を備え、前記第1ノズル群が前記副走査方向で最も上流側に配置され、以下前記第Nノズル群まで前記副走査方向の下流側に前記主走査方向から視たときに重複しないように順番に配置される液体吐出ユニットを用いて、制御部が前記第1乃至第Nノズル群を前記主走査方向に移動させて画像を形成する画像形成方法であって、
前記制御部が、前記第1ノズル群から前記液体を吐出させる第1スキャンステップと、
前記制御部が、前記第1スキャンステップ後に、前記第1ノズル群に隣接する第2ノズル群から前記液体を吐出させる第2スキャンステップと、
前記制御部が、前記第2スキャンステップ後に、N番目のスキャンである第Nスキャンにおいて、第N-1ノズル群に隣接する第Nノズル群から前記液体を吐出させ、前記第Nスキャンの後に記録用メディアの所定の画像領域に完成画像を形成する第Nスキャンステップと、
を含み、
前記完成画像に対する前記第1~第Nノズル群による画像の形成の度合いを示す画像完成率に関し、
前記第1ノズル群のうち前記記録用メディアの領域に接する部分の前記画像完成率が、前記第2~第Nノズル群の前記画像完成率以下となるよう設定される、
画像形成方法。
【請求項12】
少なくとも1種類の画像形成用のプロセスカラーの液体を吐出するノズル孔を主走査方向に直交する副走査方向に複数配列した第1ノズル列から第Nノズル列(Nは整数)をそれぞれ有する第1ノズル群~第Nノズル群を備え、前記第1ノズル群が前記副走査方向で最も上流側に配置され、以下前記第Nノズル群まで前記副走査方向の下流側に前記主走査方向から視たときに重複しないように順番に配置される液体吐出ユニットを用いて、制御部が前記第1乃至第Nノズル群を前記主走査方向に移動させて画像を形成する画像形成方法であって、
前記制御部が、前記第1ノズル群から前記液体を吐出させる第1スキャンステップと、
前記制御部が、前記第1スキャンステップ後に、前記第1ノズル群に隣接する第2ノズル群から前記液体を吐出させる第2スキャンステップと、
前記制御部が、前記第2スキャンステップ後に、N番目のスキャンである第Nスキャンにおいて、第N-1ノズル群に隣接する第Nノズル群から前記液体を吐出させ、前記第Nスキャンの後に記録用メディアの所定の画像領域に完成画像を形成する第Nスキャンステップと、
を含み、
前記完成画像に対する前記第1~第Nノズル群による画像の形成の度合いを示す画像完成率に関し、
前記第1ノズル群の少なくとも一部の前記画像完成率が前記第2~第Nノズル群の前記完成率以下となるよう設定され、
任意のp番目の前記画像完成率の最小値が、p+1番目のノズル群の前記画像完成率の最小値以下となるよう設定される、
画像形成方法。
【請求項13】
少なくとも1種類の画像形成用のプロセスカラーの液体を吐出するノズル孔を主走査方向に直交する副走査方向に複数配列した第1ノズル列から第Nノズル列(Nは整数)をそれぞれ有する第1ノズル群~第Nノズル群を備え、前記第1ノズル群が前記副走査方向で最も上流側に配置され、以下前記第Nノズル群まで前記副走査方向の下流側に前記主走査方向から視たときに重複しないように順番に配置される液体吐出ユニットを用いて、制御部が前記第1乃至第Nノズル群を前記主走査方向に移動させて画像を形成する画像形成方法であって、
前記制御部が、前記第1ノズル群から前記液体を吐出させる第1スキャンステップと、
前記制御部が、前記第1スキャンステップ後に、前記第1ノズル群に隣接する第2ノズル群から前記液体を吐出させる第2スキャンステップと、
前記制御部が、前記第2スキャンステップ後に、N番目のスキャンである第Nスキャンにおいて、第N-1ノズル群に隣接する第Nノズル群から前記液体を吐出させ、前記第Nスキャンの後に記録用メディアの所定の画像領域に完成画像を形成する第Nスキャンステップと、
を含み、
前記完成画像に対する前記第1~第Nノズル群による画像の形成の度合いを示す画像完成率に関し、
前記第1ノズル群のノズル列方向に離れている2つ以上の部分の前記画像完成率が前記第2~第Nノズル群の前記画像完成率以下となるよう設定される、
画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非浸透メディアに画像を形成するシリアルヘッドインクジェットにおいて走査する際のノズル吐出率を制御する技術が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、ノズル端部の吐出を間引くことで印刷時のベタ品質を向上する構成が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ヘッドの往路と復路で色の着弾順が異なることによる色差(双方向色差)をノズル吐出量制御で抑制する構成が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、画像形成時にメディアに着弾したインク同士が、後から打った滴が先に打った滴に引き込まれる、または、同時に滴を打つとお互いに引き付け合うことにより、互いに合一してしまう現象が起きる場合がある。合一現象が起きると、着弾したインクがメディア上で適切に広がらず、付着量を増やしても面が埋まらない、色境界部が崩れるなどの影響がある。しかし、特許文献1、2などに記載の従来手法では、合一現象を考慮していない。従って、従来手法では合一の影響を抑制できない。
【0006】
本発明は、合一現象の発生を抑制可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一観点に係る画像形成装置は、少なくとも1種類の画像形成用のプロセスカラーの液体を吐出するノズル孔を主走査方向に直交する副走査方向に複数配列した第1ノズル列から第Nノズル列(Nは整数)をそれぞれ有する第1ノズル群~第Nノズル群を備え、前記第1ノズル群が前記副走査方向で最も上流側に配置され、以下前記第Nノズル群まで前記副走査方向の下流側に前記主走査方向から視たときに重複しないように順番に配置される液体吐出ユニットと、前記第1乃至第Nノズル群を前記主走査方向に移動させて画像を形成するに際して、第1スキャンにおいては、前記第1ノズル群から前記液体を吐出させ、前記第1スキャン後の第2スキャンにおいては、前記第1ノズル群に隣接する第2ノズル群から前記液体を吐出させ、前記第2スキャン後の第Nスキャンにおいては、第N-1ノズル群に隣接する第Nノズル群から前記液体を吐出させ、前記第Nスキャンの後に記録用メディアの所定の画像領域に完成画像を形成する制御部と、を備え、前記制御部は、前記完成画像に対する前記第1~第Nノズル群による画像の形成の度合いを示す画像完成率に関し、前記第1ノズル群のうち前記第2ノズル群と接する部分の前記画像完成率が、前記第2~第Nノズル群の前記画像完成率以下となるよう設定する。
【発明の効果】
【0008】
合一現象の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態にかかるインクジェット記録装置の構成を示す模式図
図2】インクジェット記録装置の制御構成を示すブロック図
図3】記録ヘッドのノズル構成の一例を模式的に示す平面図
図4】記録ヘッドのノズル構成の他の例を模式的に示す平面図
図5】前弾が次弾を引き込む合一現象を説明する模式図
図6】同時に打たれた2つの着弾滴が互いに引き合う合一現象を説明する模式図
図7】合一現象抑制制御における各ノズル群の画像完成率の分配グラフの第一の例を示す図
図8図7に例示するノズル群の画像完成率とスキャン動作との関係を示す図
図9】各ノズル群の画像完成率の分配グラフの第二の例を示す図
図10】各ノズル群の画像完成率の分配グラフの第三の例を示す図
図11】各ノズル群の画像完成率の分配グラフの第四の例を示す図
図12】画像完成率の分配とマスクとの関係を示す図
図13図12に示すマスクによるドット配置制御の一例を示す図
図14】画像完成率の形状パターンを示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0011】
<インクジェット記録装置の構成>
本実施形態に係る画像形成装置の一例として、インクジェット記録装置1を例示して説明する。
【0012】
図1は、実施形態にかかるインクジェット記録装置1の構成を示す模式図である。液体吐出装置であるインクジェット記録装置1は、シリアル型のインクジェット記録装置である。図1に示すように、インクジェット記録装置1は、所要の画像を印字する画像形成部2と、乾燥装置3と、ロールメディア収納部4と、搬送機構5と、を備えている。ロールメディア収納部4は、被印刷物であるロールメディア(記録用メディア)40を収納する。なお、ロールメディア収納部4は、幅方向のサイズが異なる記録用メディア40を収納可能である。記録用メディア40は、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムなどの透明な非浸透メディアである。
【0013】
搬送機構5は、ロール・ツー・ロール方式の搬送手段を構成する。搬送機構5は、一対のニップローラ51と、一対の従動ローラ52と、巻き取りローラ53とを記録用メディア40の搬送経路54上に備えている。ニップローラ51は、画像形成部2の手前側(搬送方向Aの上流側)に設けられている。ニップローラ51は、モータM(図2参照)の駆動に伴って回転することで挟み込んだ記録用メディア40を画像形成部2に向けて搬送する。また、巻き取りローラ53は、モータMの駆動に伴って回転することにより印字後の記録用メディア40を巻き取る。従動ローラ52は、記録用メディア40の搬送に従動して回転する。
【0014】
搬送機構5は、搬送速度を検出するためのホイールエンコーダ55(図2参照)を備えている。搬送機構5は、目標値とホイールエンコーダ55からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値に基づくモータMの制御により、搬送速度を制御される。
【0015】
すなわち、ロールメディア収納部4に収納された記録用メディア40は、従動ローラ52を介して、ニップローラ51の回転によって画像形成部2へと搬送される。画像形成部2に到達した記録用メディア40は、画像形成部2によって所要の画像を印字される。そして、印字後の記録用メディア40は、巻き取りローラ53の回転により巻き取られることになる。
【0016】
画像形成部2は、キャリッジ21を備えている。キャリッジ21は、ガイドロッド(ガイドレール)22によって摺動可能に保持されている。キャリッジ21は、モータMの駆動に伴って記録用メディア40の搬送方向Aと直交する方向(主走査方向)にガイドロッド(ガイドレール)22上を移動する。より詳細には、キャリッジ21は、主走査方向の移動可能領域である主走査領域のうち、搬送機構5により搬送される記録用メディア40に対して画像形成部2により印字可能な記録領域内を往復移動する。
【0017】
キャリッジ21は、液滴を吐出する吐出口であるノズル孔を複数配列した記録ヘッド20を搭載している。なお、記録ヘッド20は、記録ヘッド20にインクを供給するタンクを一体的に備えている。ただし、記録ヘッド20は、タンクを一体的に備えているものに限るものではなく、タンクを別体で備えるものであっても良い。記録ヘッド20は、液体吐出ユニットとして機能するものであって、プロセスカラーの記録液であるブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色のインク滴を吐出する。ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)は、画像形成用のインクである。加えて、記録ヘッド20は、補助用インク(背景用や下地用のインク)であるホワイト(W)のインク滴を吐出する。また、記録ヘッド20は、色再現性を向上のために用いるこれらのプロセスカラーの記録液とは色相の異なる特色の記録液であるオレンジ(O)、グリーン(G)の各色のインクを吐出する。
【0018】
ここで、被印刷物である記録用メディア40の全面に補助用インク(例えば、ホワイトのインク(白インク))を付与する場合と、記録用メディア40の画像を形成する場所にのみ補助用インクを付与する場合との何れかの場合のように、画像を形成する場所と重なる場所に補助用インクを付与する状態を「下地を形成する」という。また、画像形成する場所と重ならない場所に、補助用インクを付与する状態を「背景を形成する」という。したがって、「下地及び背景を形成する」は、記録用メディア40の全面に補助用インクを付与する態様を表す。また、「下地又は背景を形成する」は、記録用メディア40に対して画像を形成する場所と補助インクを付与する場所とが完全に一致しない態様、例えば、画像と重なる部分の一部に補助インク層があり、記録用メディア40の全面ではなく画像が形成されない場所の一部に補助インク層がある態様を表す。
【0019】
画像形成部2は、記録ヘッド20における印字の際に、記録ヘッド20の下方で記録用メディア40を支持するプラテン23を備えている。
【0020】
また、画像形成部2は、キャリッジ21の主走査方向に沿ってキャリッジ21の主走査位置を検知するためのエンコーダシートを備えている。また、キャリッジ21は、エンコーダ26(図2参照)を備えている。画像形成部2は、キャリッジ21のエンコーダ26によってエンコーダシートを読み取ることにより、キャリッジ21の主走査位置を検知する。
【0021】
キャリッジ21は、キャリッジ21の移動に従って記録用メディア40の端部を光学的に検知するセンサ24を備えている。このセンサ24による検知信号は、記録用メディア40の端部の主走査方向の位置と記録用メディア40の幅との算出に用いられる。
【0022】
乾燥装置3は、プリヒータ30と、プラテンヒータ31と、乾燥ヒータ32と、温風ファン33とを備えている。プリヒータ30とプラテンヒータ31と乾燥ヒータ32は、例えばセラミックやニクロム線を用いた電熱ヒータである。
【0023】
プリヒータ30は、画像形成部2に対して記録用メディア40の搬送方向Aの上流に設けられている。プリヒータ30は、搬送機構5により搬送される記録用メディア40を予備的に加熱する。
【0024】
プラテンヒータ31は、プラテン23に配設されている。プラテンヒータ31は、記録ヘッド20のノズル孔から噴射されるインク滴を着弾させる記録用メディア40を加熱する。
【0025】
乾燥ヒータ32は、画像形成部2に対して記録用メディア40の搬送方向Aの下流に設けられている。乾燥ヒータ32は、画像形成部2により印刷した記録用メディア40を引き続き加熱し、着弾したインク滴の乾燥を促す。
【0026】
温風ファン33は、乾燥ヒータ32(画像形成部2)に対して記録用メディア40の搬送方向Aの下流に設けられている。温風ファン33は、インクが着弾した記録用メディア40の記録面に対して温風を吹き付ける。温風ファン33は、記録用メディア40の記録面のインクに対して直接温風を当てることにより、記録用メディア40の記録面周辺の雰囲気の湿度を下げ、完全に乾燥させる。
【0027】
このような乾燥装置3を搭載することにより、インクジェット記録装置1は、記録用メディア40として、塩化ビニル、PET、アクリルなどのインクがしみこまない非浸透のメディアを採用することができる。インクジェット記録装置1は、非浸透のメディアを採用する場合、画像形成部2に用いるインクとして、非浸透メディアにも定着が良好な溶剤系のインクあるいは樹脂成分の多い水性レジンインクを採用することができる。
【0028】
なお、キャリッジ21が記録用メディア40の幅に往復移動しながら記録ヘッド20からインクを吐出して画像を形成するインクジェット記録装置1では、キャリッジ動作が往路のときにのみインクを吐出して画像を形成する片方向印字と、キャリッジ動作が往路復路両方でインクを吐出して画像を形成する双方向印字がある。インクジェット記録装置1では、印字速度の点で有利な双方向印字が主に用いられる。なお、ここでは、キャリッジ21が主走査方向に移動しながら記録ヘッド20からインクを吐出する動作は、1スキャンとする。
【0029】
<インクジェット記録装置の制御構成>
次に、インクジェット記録装置1の制御構成について説明する。ここで、図2はインクジェット記録装置1の制御構成を示すブロック図である。
【0030】
図2に示すように、インクジェット記録装置1は、この装置全体の制御を司る制御部10を備えている。制御部10は、制御主体となるCPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、メモリ14と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)15とを備えている。ROM12は、CPU11が実行するコンピュータプログラムやその他の固定データを格納する。RAM13は、画像データ等を一時格納する。メモリ14は、インクジェット記録装置1の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリである。ASIC15は、画像データに対する各種信号処理や並び替え等を行なう画像処理や、その他装置全体を制御するための入出力信号処理を実行する。
【0031】
また、図2に示すように、制御部10は、ホストインタフェース(I/F)16と、ヘッド駆動制御部17と、モータ制御部18と、I/O19とを備えている。
【0032】
ホストI/F16は、ホスト側との間で画像データ(印刷データ)や制御信号の送受信をケーブル或いはネットワークを介して行う。インクジェット記録装置1に接続されるホストとしては、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読取装置、デジタルカメラなどの撮像装置などが挙げられる。
【0033】
I/O19は、エンコーダ26およびホイールエンコーダ55からの検出パルスを入力する。加えて、I/O19は、センサ24の他、湿度センサ、温度センサ及びその他のセンサなどの各種センサ25を接続する。I/O19は、センサ24や各種センサ25からの検知信号を入力する。
【0034】
ヘッド駆動制御部17は、記録ヘッド20を駆動制御するものであり、データ転送手段を含む。より詳細には、ヘッド駆動制御部17は、画像データをシリアルデータで転送する。また、ヘッド駆動制御部17は、画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、記録ヘッド20から液滴を吐出する際に使用する駆動波形を生成する。そして、ヘッド駆動制御部17は、生成した駆動波形等を記録ヘッド20の内部の駆動回路へ入力する。
【0035】
モータ制御部18は、モータMを駆動するものである。より詳細には、モータ制御部18は、CPU11側から与えられる目標値とホイールエンコーダ55からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値に基づいて制御値を算出する。そして、モータ制御部18は、内部のモータ駆動回路を介し、算出した制御値に基づいてモータMを駆動する。
【0036】
また、制御部10は、ヒータ制御部8と、温風ファン制御部9とを備えている。
【0037】
ヒータ制御部8は、プリヒータ30とプラテンヒータ31と乾燥ヒータ32とについて、各ヒータ30,31,32の温度が設定された温度となるように出力の制御を行う。より詳細には、ヒータ制御部8は、各ヒータ30,31,32を制御する際、各ヒータ30,31,32に設けられた温度センサにより温度情報を取得する。そして、ヒータ制御部8は、各ヒータ30,31,32の温度を監視しながら、各ヒータ30,31,32の温度が設定された温度となるように制御する。なお、記録ヘッド20のタンクやインク経路上にヒータが設けられている場合には、ヒータ制御部8は、このヒータについても同様に制御する。
【0038】
温風ファン制御部9は、所定の温度および風量の送風が行われるよう、温風ファン33の出力を制御する。
【0039】
加えて、制御部10は、インクジェット記録装置1に必要な情報の入力及び表示を行なうための操作パネル60を接続する。
【0040】
制御部10は、CPU11がROM12(またはメモリ14)から読み出したコンピュータプログラムをRAM13に展開して実行することにより、各部を統括的に制御する。より詳細には、CPU11は、操作パネル60から設定された印字モードに基づき、当該印字モード毎に設定された制御内容をROM12(またはメモリ14)から読み出す。そして、CPU11は、ROM12(またはメモリ14)から読み出した制御内容に基づいて各部を制御することで、画像形成に係る制御を実行する。
【0041】
なお、本実施形態のインクジェット記録装置1で実行されるコンピュータプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで
読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0042】
また、本実施形態のインクジェット記録装置1で実行されるコンピュータプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態のインクジェット記録装置1で実行されるコンピュータプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0043】
また、本実施形態のインクジェット記録装置1で実行されるコンピュータプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0044】
次に、インクジェット記録装置1の制御部10が実行する画像データ転送印刷処理について簡単に説明する。制御部10のCPU11は、ホストI/F16に含まれる受信バッファ内の画像データ(印刷データ)を読み出して解析し、ASIC15にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行なう。次いで、制御部10のCPU11は、ASIC15で処理を施した画像データ(印刷データ)をヘッド駆動制御部17から記録ヘッド20に転送する。
【0045】
特に本実施形態では、ASIC15の画像処理において、記録用メディア40に吐出したインク滴同士の合一現象を抑制するために、記録ヘッド20から吐出するインクの量を調整する合一現象抑制制御を実施する。合一現象抑制制御の詳細については図5図14を参照して後述する。
【0046】
なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成は、例えばROM12にフォントデータを格納して行っても良いし、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップデータに展開してインクジェット記録装置1に転送するようにしても良い。
【0047】
<記録ヘッドの構成>
図3は、記録ヘッド20のノズル構成の一例を模式的に示す平面図である。
【0048】
図3に示すように、記録ヘッド20は、第1ノズル群20aと、第2ノズル群20bと、第3ノズル群20cとを備えている。
【0049】
図3に示すように、各ノズル群20a、20b、20cは、主走査方向に2列とし副走査方向に千鳥状に交互に配設されている。すなわち、各ノズル群20a、20b、20cは、記録用メディア40の搬送方向Aの下流側から上流側に向かってノズル列が重複しないように、第3ノズル群20c、第2ノズル群20b、第1ノズル群20a、の順に配設されている。また、図3に示すように、第2ノズル群20bは、第1ノズル群20aおよび第3ノズル群20cとは、主走査方向に位置をずらして配設されている。
【0050】
第1ノズル群20aおよび第3ノズル群20cは、補助用インク(背景用のインク、下地用インク)のインク滴を吐出する1列のノズル列と、画像形成用のCMY(プロセスカラー)のインク滴を吐出する3列のノズル列とを備えている。それぞれのノズル列は、例えば192個のノズル孔27を有している。図3に示す例では、各ノズル孔27は、搬送方向Aに沿って配列されている。なお、これらのノズル孔27間のピッチPは、例えば150dpi(dots per inch)である。
【0051】
図3に示すように、第1ノズル群20aおよび第3ノズル群20cは、補助用インク(背景用のインク、下地用インク)の一例としてホワイト(W)のインク滴を吐出するホワイトインクノズル列NWと、シアン(C)のインク滴を吐出するシアンインクノズル列NCと、マゼンタ(M)のインク滴を吐出するマゼンタインクノズル列NMと、イエロー(Y)のインク滴を吐出するイエローインクノズル列NYとを有している。
【0052】
第2ノズル群20bも、第1ノズル群20aと同様に、各列が192個のノズル孔27を有する4列のノズル列を有している。第2ノズル群20bも、第1ノズル群20aと同様に、ノズル孔27間のピッチPは、150dpiである。
【0053】
第2ノズル群20bは、補助記録用のノズル列を備えている。具体的には、第2ノズル群20bは、補助用インク(背景用のインク、下地用インク)のインク滴を吐出する1列のノズル列と、画像形成用の特色のインク滴を吐出する2列のノズル列と、画像形成用のK(プロセスカラー)のインク滴を吐出する1列のノズル列とを備えている。
【0054】
図3に示すように、第2ノズル群20bは、補助用インク(背景用のインク、下地用インク)の一例としてホワイト(W)のインク滴を吐出するノズル列NWを有している。また、第2ノズル群20bは、画像形成用の特色のインクの一例としてオレンジ(O)のインク滴を吐出するノズル列NOと、グリーン(G)のインク滴を吐出するノズル列NGを有している。さらに、第2ノズル群20bは、ブラック(K)のインク滴を吐出するノズル列NKを有している。
【0055】
上述したように、各ノズル群20a、20b、20cはノズル列数およびノズル数が同一であることから、各ノズル群20a、20b、20cを同一の部品で構成することができることにより、部品種類を少なくすることができるので、装置の低コスト化を図ることができる。
【0056】
ここで、図3に例示する3つのノズル群20a、20b、20cを有する記録ヘッド20を用いた画像形成動作の一例を説明する。この場合、記録用メディア40の搬送方向Aに沿った所定幅の画像領域(図8に示す「画像領域a」、「画像領域b」など)に、各ノズル群20a、20b、20cのそれぞれによってインク滴を吐出するスキャン動作を行って、画像を形成する。すなわち、各画像領域に、記録ヘッド20が有するノズル群の数と同じ回数(この例では3回)のスキャン動作を行う。
【0057】
ここでは、白インク層を下地及び背景として形成した後、カラー画像(6色)である着色層を形成するモードについて説明する。
【0058】
インクジェット記録装置1の制御部10は、1スキャン毎に、搬送方向Aに各ノズル群20a、20b、20cのノズル列分だけ記録用メディア40を搬送する。これにより、下記に示す第1~第3スキャンを所定の画像領域にて順次行うことができる。
【0059】
第1スキャン時には、インクジェット記録装置1の制御部10は、第1ノズル群20aのノズル列NWを用い、下地及び背景としての白ベタ形成を開始する。
【0060】
第2スキャン時には、インクジェット記録装置1の制御部10は、第2ノズル群20bのノズル列NO,NG,NKを用いた画像を白ベタの上に形成する。
【0061】
第3スキャン時には、インクジェット記録装置1の制御部10は、第3ノズル群20cのノズル列NC,NM,NYを用いた画像を形成する。
【0062】
このようなモードによれば、下地となるホワイト(W)、KGO、YMCの順に着弾する。ホワイト(W)のインクの乾燥が進むにつれて着色剤(C,M,Y,O,G,K)が表面に残り、発色が強くなる。つまり、この場合、CMY、OGKの順に発色しやすくなる。
【0063】
図4は、記録ヘッド20のノズル構成の他の例を模式的に示す平面図である。図4に示す例では、記録ヘッド20は、イエロー(Y),シアン(C),マゼンタ(M),ブラック(K),グリーン(G),オレンジ(O),ホワイト(W),ホワイト(W)の8列のノズル列を有する同一のノズル群20a、20b、20cを、主走査方向に2列とし副走査方向に千鳥状に交互に配設する。
【0064】
このように図4の例によっても、補助用インク(ホワイト(W))のインク滴を吐出するノズル列NWを記録用メディア40の搬送方向Aの上流側から下流側における全てのノズル群20a、20b、20cに配設する。これにより、インクジェット記録装置1は、補助用インクのみの画像形成の高速化を図ることができるとともに、画像形成用のインクで形成される画像の層である画像層に対して補助用インク(ホワイト(W))による補助的な層である補助層を、先刷り・後刷り・間刷りとして配置することができる。
【0065】
なお、本実施形態にかかるインクジェット記録装置1で用いられるインクとしては、特段の制限はない。特に、インクジェット記録装置1においては、水、有機溶剤、色材、樹脂粒子及びシロキサン化合物を含有するインクを用いると、乾燥性を高めることができ、好適に滲みを抑制することができる。
【0066】
以降の説明では、メディア搬送方向Aの最も上流側に配置されるノズル群20aを「ノズル群N(1)」や「第1ノズル群」とも表記し、ノズル群20aの下流側に配置されるノズル群20bを「ノズル群N(2)」や「第2ノズル群」とも表記し、ノズル群20bの下流側に配置され、メディア搬送方向Aの最も下流側に配置されるノズル群20cを「ノズル群N(3)」や「第3ノズル群」とも表記する。ノズル群N(1)、N(2)、N(3)は、主走査方向から視たときに重複しないようにメディア搬送方向(副走査方向)に沿って順番に配置される。
【0067】
なお、本実施形態において、ノズル群どうしが副走査方向に『重複しないように順番に配置される』とは、画像の形成をおこなうノズルすなわちインクを実際に吐出するノズルに関して互いに重複しないように配置されることを意味する。例えば、第1ノズル群20aの端部と第2ノズル群20bの端部とに互いに副走査方向の位置が同一となるようなノズルを設け、そのうち一方のノズルからインクを吐出する構成とし、ノズル詰まり等で不吐出のノズルが発生した場合に予備のノズルとして他方のノズルを用いることができるようにしてもよい。そのような態様も『重複しないように順番に配置される』の定義に含まれるものとする。
【0068】
なお、本実施形態では、記録ヘッド20は、画像形成用のインクとして、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)オレンジ(O)、グリーン(G)のインク滴を吐出し、また、補助用インクとしてホワイト(W)のインク滴を吐出する構成を例示したが、記録ヘッド20が吐出するインク滴の色の種類はこれに限られない。例えば、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の4色のみを吐出可能な構成でもよい。
【0069】
また、本実施形態では、記録ヘッド20は、3個のノズル群20a、20b、20cを有する構成を例示したが、ノズル群の数は3個以外でもよい。要は、記録ヘッド20に設けられ、副走査方向に沿って配列される複数のノズルが、3つのノズル群N(1)、N(2)、N(3)に区分できればよい。例えば、図3図4に例示する3つのノズル群のうちの1つのノズル群のみを備え、この単一のノズル群について、副走査方向に3つのノズル群N(1)、N(2)、N(3)に区分できる構成でもよい。
【0070】
また、副走査方向に沿って区分されるノズル群の数は3つに限られず、4つ以上としてもよい。すなわち、記録ヘッド20の複数のノズル群を一般化すると、ノズル群N(1)、ノズル群N(2)、・・・ノズル群N(n)(nは整数)(第Nノズル群)と表すことができる。
【0071】
また、図3に示した記録ヘッド20では、互いに物理的に離間して配置された3つのサブヘッドがそれぞれ第1ノズル群20a、第2ノズル群20bおよび第3ノズル群20cを備える構成としたが、ノズル群の分割方法はこれに限らない。たとえば3つのサブヘッド内の全ノズルを4分割し第1ないし第4ノズル群としてもよい。また、3つのサブヘッドに分割された記録ヘッドではなく単一の長尺ヘッドからなる記録ヘッドを用いるとともに長尺ヘッドに含まれるノズルを副走査方向において複数のノズル群にわけてもよい。
【0072】
<合一現象の原理>
ここで図5図6を参照して合一現象が発生する原理を説明する。
【0073】
着弾したインク同士と記録用メディア40とのぬれ広がり方により合一が起きる場合がある。「合一」とは、インクジェット方式特有の、表面張力によってインク同士が互いに合わさって一体化する現象をいう。
【0074】
合一が起きると先に着弾したドットがインクを引き込むことにより、付着量を増やしても面が埋まらない、色境界部が崩れるなどの影響がある。
【0075】
合一には(i)後から打った滴が先に打った滴に引き込まれる、(ii)同時に滴を打つとお互いに引き付け合う、との特徴がある。
【0076】
図5は、前弾Dfが次弾Dbを引き込む合一現象を説明する模式図である。図5に示す合一現象は、上記の特徴(i)に対応し、記録用メディア40上に先に前弾Dfを着弾した後に、次段Dbを着弾する場合を示す。
【0077】
図5(A)は、次弾Dbが着弾直後の状態を示す。前弾Dfは記録用メディア40に着弾した後に着弾位置から広がっている。一方、次弾Dbは着弾直後のため、前弾Dfと比較して着弾位置から最外郭までの寸法が短い。
【0078】
図5(C)は、次弾Dbの理想的は挙動を示す。理想的には、次弾Dbのインクも、前弾Dfと同様に記録用メディア40上に均等に広がり、着弾直後の最外郭よりも着弾位置から外側に広がる。
【0079】
図5(B)は、合一現象の例を示す。この場合、前弾Dfのインク上に次弾Dbが広がる。このため、次弾Dbは、図5(C)の理想的は挙動と比較して、着弾直後の最外郭よりも外側に広がらない。
【0080】
図6は、同時に打たれた2つの着弾滴D1、D2が互いに引き合う合一現象を説明する模式図である。図6に示す合一現象は、上記の特徴(ii)に対応し、記録用メディア40上の隣接する位置に2つの着点滴D1、D2を同時に着弾する場合を示す。
【0081】
図6(A)は、2つの着弾滴D1、D2が着弾直後の状態を示す。着弾滴D1、D2は共に着弾直後のため、図5(A)に示した次段Dbと同様の状態である。
【0082】
図6(C)は、着弾滴D1、D2の理想的は挙動を示す。理想的には、着弾滴D1、D2が共に記録用メディア40上に均等に広がり、着弾直後の最外郭よりも着弾位置から外側に広がる。
【0083】
図6(B)は、合一現象の例を示す。この場合、着弾滴D1、D2のインクが互いの上に広がる。このため、着弾滴D1、D2は共に、図6(C)の理想的は挙動と比較して、着弾直後の最外郭よりも外側に広がらない。
【0084】
<合一現象抑制制御>
特に本実施形態では、このような合一現象を抑制するためのノズル吐出量の制御(合一現象抑制制御)を実施する。この制御は、例えば、制御部10のASIC15が実施することができる。以下、合一現象抑制制御について説明する。
【0085】
先に説明した通り、合一の特徴は以下2点である。
・先に打った滴に後から打った滴が引き込まれる
・同時に滴を打つとお互いに引き付け合う
【0086】
これらの影響を小さくするため、以下の方法が考えられる。
(a)ドット同士を離して配置する(ドット密度を低くする、スキャン間にドットを打たない)
(b)画像完成の初期段階で(a)の状態にする(先に着弾したドットの影響を少なくする)
【0087】
上記の(a)、(b)を実現するために、本実施形態では、記録ヘッド20の複数のノズル群N(1)、N(2)、N(3)の画像完成率の分配を調整する。図7は、本実施形態の合一現象抑制制御における各ノズル群N(1)、N(2)、N(3)の画像完成率の分配グラフの第一の例G1を示す図である。図7の横軸はノズル位置を示し、縦軸は各ノズル位置における画像完成率を示す。
【0088】
ここで「画像完成率」とは、記録用メディア40上の各画像領域において、記録ヘッド20の所定回数のスキャン動作によって最終的に形成される画像に塗布されるインクの量を100%としたときの、各ノズル群N(1)、N(2)、N(3)による画像の形成の度合いを意味する。「画像完成率が低い」とは、記録用メディア40上に吐出されたインクのドット密度が低いことを意味し、「画像完成率が高い」とは、記録用メディア40上に吐出されたインクのドット密度が高いことを意味する。
【0089】
図7の横軸の「ノズル位置」は、図3などに示したメディア搬送方向Aに対応し、横軸の位置が右方向に進むほど搬送方向上流側、左側に進むほど下流側となる。
【0090】
ここで、図7などに例示する画像完成率とノズル位置の割り当ての関係は、例えば図2に示すROM12内にデータとしてあらかじめ記憶されており、ホストI/F16に含まれる受信バッファ内の画像データ(印刷データ)を、ASIC15による画像処理において各スキャン時の各ノズル位置における画像完成率のデータに置き換え、ヘッド駆動制御部17から記録ヘッド20に転送する。データ処理の主体はCPU11である。「画像完成率」とは、インクの吐出割合をいい、たとえば画像完成率50%としたい場合には、1列に並ぶノズルのうち1つおきにインクを吐出させるように制御を行って実現できる。
【0091】
図8は、図7に例示するノズル群N(1)、N(2)、N(3)の画像完成率とスキャン動作との関係を示す図である。図8にはメディア搬送方向Aを左方向として示し、図中上側から下側に沿って1回目、2回目、3回目、4回目のスキャンの際の記録用メディア40に対するノズル群N(1)、N(2)、N(3)の相対位置を示している。図8では、図7の画像完成率分配グラフG1を、ノズル群N(1)、N(2)、N(3)として図示している。
【0092】
上述のように、各ノズル群N(1)、N(2)、N(3)は、1スキャン毎に搬送方向Aに各ノズル群のノズル列分だけ記録用メディア40との相対位置が移動する。また、図7図8にグラフG1として例示するように、ノズル群N(1)、N(2)、N(3)の画像完成率の分配は、搬送方向Aの各位置において割り当てられる各ノズル群N(1)、N(2)、N(3)の画像完成率の総和がすべて100%となるように、制御部10のASIC15により設定される。ASIC15で設定された各スキャンの画像データに基づき記録ヘッド20のノズル群N(1)、N(2)、N(3)が記録用メディア40上に画像形成を実施する。
【0093】
これにより、例えば図中の記録用メディア40上の搬送方向Aに沿った所定幅の画像領域aでは、1回目のスキャンのときには、ノズル群N(1)に割り当てられた画像完成率に基づきノズル群N(1)によりインクが記録用メディア40に吐出され、2回目のスキャンのときには、ノズル群N(2)に割り当てられた画像完成率に基づきノズル群N(2)によりインクが記録用メディア40に吐出され、3回目のスキャンのときには、ノズル群N(3)に割り当てられた画像完成率に基づきノズル群N(3)によりインクが記録用メディア40に吐出される。この結果、1~3回目のスキャンで画像領域aの搬送方向Aに沿った各位置で各ノズル群N(1)、N(2)、N(3)の画像完成率の総和がすべて100%となって画像が完成する。
【0094】
同様に、画像領域aと搬送方向Aの上流側に隣接する画像領域bでは、2回目のスキャンのときには、ノズル群N(1)に割り当てられた画像完成率に基づきノズル群N(1)によりインクが記録用メディア40に吐出され、3回目のスキャンのときには、ノズル群N(2)に割り当てられた画像完成率に基づきノズル群N(2)によりインクが記録用メディア40に吐出され、4回目のスキャンのときには、ノズル群N(3)に割り当てられた画像完成率に基づきノズル群N(3)によりインクが記録用メディア40に吐出される。この結果、2~4回目のスキャンで画像領域bの搬送方向Aに沿った各位置で各ノズル群N(1)、N(2)、N(3)の画像完成率の総和がすべて100%となって画像が完成する。
【0095】
その後、このスキャン動作を繰り返すことによって、記録用メディア40上に搬送方向Aに沿って順次画像を完成する。
【0096】
つまり、画像領域aでは、1回目のスキャンが「ノズル群N(1)により画像を形成する第1スキャン」に相当し、2回目のスキャンが「ノズル群N(2)により画像を形成する第2スキャン」に相当し、3回目のスキャンが「ノズル群N(3)により画像を形成する第3スキャン」に相当する。また、画像領域bでは、2回目のスキャンが「ノズル群N(1)により画像を形成する第1スキャン」に相当し、3回目のスキャンが「ノズル群N(2)により画像を形成する第2スキャン」に相当し、4回目のスキャンが「ノズル群N(3)により画像を形成する第3スキャン」に相当する。
【0097】
なお、各画像領域a、bにおけるスキャンの回数は、記録ヘッド20が有するノズル群の数に応じて3回以外に変更してもよい。ここで、記録ヘッド20がN個のノズル群N(1)~N(n)を有する構成の場合を考える。この場合、制御部10の機能は以下のように一般化した表現にできる。すなわち、制御部10は、ノズル群N(1)~ノズル群N(n)を主走査方向に移動させて画像を形成するに際して、最初の第1スキャンにおいては、ノズル群N(1)から液体を吐出させ、第1スキャン後の第2スキャンにおいては、ノズル群N(1)に隣接するノズル群N(2)から液体を吐出させ、第2スキャン後の第Nスキャンにおいては、ノズル群N(n-1)に隣接するノズル群N(n)から液体を吐出させ、第Nスキャンの後に記録用メディア40の所定の画像領域a、bに完成画像を形成する。
【0098】
以下、図7に示す画像完成率の分配グラフの複数の特徴[1]~[5]を個別に説明する。図7に示すように、特に記録用メディア40の各画像領域に最初にインクを塗布するノズル群N(1)の画像完成率に特徴がある。
【0099】
[1]ノズル群N(1)の画像完成率 ≦ 他のノズル群N(2)、N(3)の画像完成率
図7の例では、ノズル群N(1)の画像完成率の最大値P3が20%であり、ノズル群N(2)の画像完成率の最小値P6が30%であり、ノズル群N(3)の画像完成率が一律で50%であり、この特徴[1]を満たすように設定されている。この特徴[1]により、ノズル群N(1)で作るドット領域の合一の影響を抑えることができる。また、ノズル群N(1)のドットの密度を下げて、次スキャンのドットとの合一の影響も抑えることができる。
【0100】
[2]ノズル群N(1)のうちノズル群N(2)に接する部分P1の画像完成率 ≦ 他のノズル群N(2)、N(3)の画像完成率
ここで、「ノズル群N(1)のうちノズル群N(2)に接する部分P1」とは、ノズル群N(1)のうち搬送方向の最も下流側(図中の最も左側)にあって、ノズル群N(2)の上流側端部(図中の最も右側)のノズルと対面位置にあるノズル、とも表現できる。図7の例では、ノズル群N(1)のうちノズル群N(2)に接する部分P1の画像完成率が0%であり、ノズル群N(2)の画像完成率が30~50%であり、ノズル群N(3)の画像完成率が一律で50%であり、この特徴[2]を満たすように設定されている。この特徴[2]により、ノズル群N(1)とノズル群N(2)で作るドットが同時に着弾するときに互いに引き合って合一することを防ぐことができ、ノズル群N(1)のドットを狙いの位置から動かないようにすることができる。
【0101】
[3]ノズル群N(1)のうち記録用メディア40の領域に接する部分P2の画像完成率 ≦ 他のノズル群N(2)、N(3)の画像完成率
ここで、「ノズル群N(1)のうち記録用メディア40の領域に接する部分P2」とは、ノズル群N(1)のうち、搬送方向の最も上流側(図中の最も右側)にあって、記録用メディア40の表面に直接ドットを落とすノズル、とも表現できる。図7の例では、ノズル群N(1)のうち記録用メディア40の領域に接する部分P2の画像完成率が0%であり、ノズル群N(2)の画像完成率が30~50%であり、ノズル群N(3)の画像完成率が一律で50%であり、この特徴[3]を満たすように設定されている。この特徴[3]により、ノズル群N(1)のドットが自身で合一する(ノズル群N(1)から同時に記録用メディア40に着弾したドット同士が互いに引き合う)ことを防ぐことができ、ノズル群N(1)のドットを狙いの位置にとどめることができる。
【0102】
[4]ノズル群N(1)の画像完成率の最大値の位置P3から、ノズル群N(2)に接する部分P1に向けて、画像完成率が減少する。
図7の例では、ノズル群N(1)の画像完成率が20%の最大値の位置P3から、ノズル群N(2)に接する部分P1の方向、すなわち、図中左方向に沿って、画像完成率が0%まで単調減少する区間P4が設けられ、この特徴[4]を満たすように設定されている。この特徴[4]により、ノズル群N(1)内でドット密度が急激に変化して、合一度合いが急激に変化することを防止でき、これにより例えばノズル群N(2)に接する部分P1など画像完成率が最も低くなる位置においてインクだまりになることを防止できる。
【0103】
[5]ノズル群N(1)の画像完成率の最大値の位置P3から、記録用メディア40の領域に接する部分P2に向けて、画像完成率が減少する。
図7の例では、ノズル群N(1)の画像完成率が20%の最大値の位置P3から、記録用メディア40の領域に接する部分P2の方向、すなわち、図中右方向に沿って、画像完成率が0%まで単調減少する区間P5が設けられ、この特徴[5]を満たすように設定されている。この特徴[5]により、ノズル群N(1)内でドット密度が急激に変化して、合一度合いが急激に変化することを防止でき、これにより例えば記録用メディア40の領域に接する部分P2など画像完成率が最も低くなる位置においてインクだまりになることを防止できる。
【0104】
なお、図7に示す特徴[1]~[5]は必ずしもすべての特徴を満たすように設定しなくてもよく、いずれか一部を満たす構成でもよい。例えば、特徴[2]のみを満たす構成、特徴[3]のみを満たす構成、特徴[2]、[3]を満たす構成、特徴[2]、[4]を満たす構成、特徴[3]、[5]を満たす構成、特徴[2]、[3]、[4]、[5]を満たす構成としてもよい。
【0105】
図9は、各ノズル群N(1)、N(2)、N(3)の画像完成率の分配グラフの第二の例G2を示す図である。図9の例では、各ノズル群の画像完成率がそれぞれ一定値で設定されている。ノズル群N(1)の画像完成率は一律で10%であり、ノズル群N(2)の画像完成率は一律で40%であり、ノズル群N(3)の画像完成率が一律で50%であり、上記特徴[1]を満たすように設定されている。
【0106】
さらに図9の分配グラフG2では、下記の特徴[6]も満たす。
【0107】
[6]ノズル群N(p)の画像完成率の最小値 ≦ ノズル群N(p+1)の画像完成率の最小値
ここでpは1以上の整数である。図9の例では、ノズル群N(1)の画像完成率の最小値10%がノズル群N(2)の画像完成率の最小値40%より小さく、かつ、ノズル群N(2)の画像完成率の最小値40%がノズル群N(3)の画像完成率の最小値50%より小さく、上記特徴[6]を満たすように設定されている。この特徴[6]により、スキャン番号が小さいほど、すなわち所定の画像領域に対してより先にスキャンを行うノズル群ほど、画像完成率を小さくしてドットの密度を下げることができ、次スキャンのドットとの合一の影響を抑えることができる。
【0108】
なお、図7に示した分配グラフG1も、ノズル群N(1)の画像完成率の最小値は位置P1の0%であり、ノズル群N(2)の最小値が位置P6の30%であるので、ノズル群N(1)の画像完成率の最小値0%がノズル群N(2)の画像完成率の最小値30%より小さく、かつ、ノズル群N(2)の画像完成率の最小値30%がノズル群N(3)の画像完成率の最小値50%より小さく、上記特徴[6]を満たすように設定されている。
【0109】
また、図9に示す分配グラフG2は、上記特徴[2]、[3]も満たす。
【0110】
図10は、各ノズル群N(1)、N(2)、N(3)の画像完成率の分配グラフの第三の例G3を示す図である。図10の例では、ノズル群N(1)の画像完成率の最小値が、ノズル群N(2)に接する部分P7、すなわちノズル群N(1)のうち最も図中左側の部分P7の0%であり、ノズル群N(2)の画像完成率の最小値が位置P8の20%であり、ノズル群N(3)の画像完成率が一律で50%である。したがって、ノズル群N(1)の画像完成率の最小値0%がノズル群N(2)の画像完成率の最小値20%より小さく、かつ、ノズル群N(2)の画像完成率の最小値20%がノズル群N(3)の画像完成率の最小値50%より小さく、上記特徴[6]を満たすように設定されている。
【0111】
また、図10の分配グラフG3は、上記特徴[2)、[3]、[4]、[5]も満たす。
【0112】
また、図7の分配グラフG1、図9の分配グラフG2、図10の分配グラフG3は、共に下記の特徴[7]も満たす。
[7]ノズル群N(1)の少なくとも一部の画像完成率 ≦ 他のノズル群N(2)、N(3)の画像完成率
【0113】
図11は、各ノズル群N(1)、N(2)、N(3)の画像完成率の分配グラフの第四の例G4を示す図である。図11の分配グラフG4では、ノズル群N(1)において所定間隔をとって4つの凹状部分P9が形成されている。凹状部分P9では画像完成率が0%であり、その他の部分では10%である。ノズル群N(2)では、ノズル群N(1)の凹状部分P9と対応する位置に凸状部分P10が形成されている。凸状部分P10では画像完成率が50%であり、その他の部分では40%である。ノズル群N(3)の画像完成率は一律で50%である。
【0114】
図11の分配グラフG4では、下記の特徴[8]を満たす。
【0115】
[8]ノズル群N(1)のノズル列方向に離れている2つ以上の部分の画像完成率 ≦ 他のノズル群N(2)、N(3)の画像完成率
図11の例では、ノズル群N(1)のノズル列方向に離れている4つの凹状部分P9の画像完成率が0%であり、これはノズル群N(2)の画像完成率の最小値(凸状部分P10の間の部分)の40%より小さく、また、ノズル群N(3)の画像完成率50%より小さく、上記特徴[8]を満たすように設定されている。この特徴[8]により、ノズル群N(1)の領域で複数の画像完成率最小の部分(凹状部分P9)を作り、これらの複数の凹状部分P9の間に、合一が起きない程度の間隔を設ける。つまり、ノズル群N(1)において合一が起きないように画像完成率に山谷を設けることによって、合一現象をより確実に抑制できる。
【0116】
また、図11の分配グラフG4は、上記特徴[1]、[2]、[3]も満たす。
【0117】
本実施形態では、図7図9図10図11などに例示した各ノズル群N(1)、N(2)、N(3)に割り当てる画像完成率の分配グラフG1、G2、G3、G4に基づき各ノズル群N(1)、N(2)、N(3)のインク吐出量を制御することにより、図5図6を参照して説明した二種類の合一の発生を併せて抑制することが可能となり、合一現象の発生をより適切に抑制できる。合一現象を抑制できると、形成される画像の解像力が高まり、色再現域も拡大する。また、記録用メディア40への顔料の浸透も抑えられることで、脱墨性も向上する。
【0118】
なお、図7図9図10図11などに例示した各ノズル群N(1)、N(2)、N(3)に割り当てる画像完成率の分配グラフG1、G2、G3、G4では、ノズル群N(3)の画像完成率が搬送方向Aに沿って一律で50%であり、ノズル群N(1)とノズル群N(2)の画像完成率の和が搬送方向Aに沿って一律で50%となるように画像完成率の分配が設定されているが、上記の特徴[1]~[8]の少なくとも一部を満たせば他の分配でもよい。要は、ドットの合一を防ぐためには、ノズル群N(1)→N(2)→N(3)の順に作像して画像を完成させる際に、徐々にインクの付着量を増やし、かつ、ノズル群N(1)の付着量を極力下げることができればよい。
【0119】
例えば、ノズル群N(3)の画像完成率が50%より大きく、ノズル群N(1)とノズル群N(2)の画像完成率の和が50%より小さい分配(例えばN(1)が10%、N(2)が20%、N(3)が70%)としてもよい。この場合、図7図9図10図11などの例に対して、先に打たれるドットが相対的に少ないので、合一の影響を少なくできる。一方、最後に打たれるノズル群N(3)の比率が高いので、ノズル群N(3)の品質が完成画像の最終品質に影響する割合が大きくなる。
【0120】
また、ノズル群N(3)の画像完成率が50%より小さく、ノズル群N(1)とN(2)の画像完成率の和が50%より大きい分配(例えばN(1)が25%、N(2)が35%、N(3)が40%)としてもよい。この場合、図7図9図10図11などの例に対して、先に打たれるドットが相対的にやや多いので、合一の影響抑止効果が小さくなるが、ノズル群N(1)、N(2)、N(3)の比率が相対的に近いので、完成画像の最終品質が安定する。
【0121】
これらの特性を考慮すると、例えば、印刷対象とインクの相性(合一度合い)が良い場合はN(1)25%, N(2)35%, N(3)40%とし、合一度合いが悪い場合はN(1)10%, N(2)20%, N(3)70%にする方法が考えられる。
【0122】
なお、ノズル群N(1)の画像完成率が、合一を抑制するのに充分に小さく設定されているのであれば、ノズル群N(2)よりノズル群N(3)の画像完成率が小さく設定される構成でもよい。例えば、ノズル群N(1)、N(2)、N(3)の画像完成率がそれぞれ一律に10%、50%、40%としてもよい。
【0123】
次に、図12図13を参照して、上記の画像完成率の分配を実現する手法を説明する。本実施形態では、制御部10のASIC15が、出力ドットデータに対してマスクかけて各ノズル列へ分配することによって所望の画像完成率の分配を実現できる。
【0124】
各スキャンで配置するドットのバラツキが原因で発生する干渉模様(モアレ)を抑えるため、マスクを使ってドット配置を制御する。このマスクはランダムであること、さらには視認されにくいものであることが望ましい。以下に例を示す。
【0125】
図12は、画像完成率の分配とマスクとの関係を示す図である。図13は、図12に示すマスクによるドット配置制御の一例を示す図である。
【0126】
図12(G)に示すように、スキャン方向(主走査方向)に3点、ノズル位置(搬送方向A)に3点の3×3格子のドット配置の場合を考える。出力ドットデータは、スキャン方向を上下方向、ノズル位置方向を左右方向とすると、3×3格子のうち上段左、上段右、中段右、下段中央の4点に印字されるパターンである。
【0127】
図12(A)に示すように、1スキャン目のノズル群N(1)による画像完成率の分配グラフG5は、搬送方向の上流側、下流側に所定間隔をとって2つの凹状部分P11が形成される。凹状部分P11では画像完成率が0%であり、その間の部分では30%である。画像完成率は、スキャン方向に対するドットの発生割合を表している。
【0128】
図12(B)に示すように、分配グラフG5を実現する1スキャン目のマスクM1は、3×3格子のうち中段中央のみドット配置オンとし、他はドット配置オフとするよう形成される。
【0129】
図12(C)に示すように、2スキャン目のノズル群N(2)による画像完成率の分配グラフG6は、ノズル群N(1)の凹状部分P11と対応する位置に凸状部分P12が形成されている。凸状部分P12では画像完成率が30%であり、その間の部分では0%である。
【0130】
図12(D)に示すように、分配グラフG6を実現する2スキャン目のマスクM2は、3×3格子のうち上段右側と下段左側をドット配置オンとし、他はドット配置オフとするよう形成される。
【0131】
図12(E)に示すように、3スキャン目のノズル群N(3)による画像完成率の分配グラフG7は、搬送方向に沿って一律70%で形成される。
【0132】
図12(F)に示すように、分配グラフG7を実現する3スキャン目のマスクM3は、3×3格子のうち上段左、上段中央、中段左、中段右、下段中央、下段右をドット配置オンとし、他はドット配置オフとするよう形成される。
【0133】
マスクM1、M2、M3は、以下の3つの条件(1)~(3)を満たすように形成される。
(1)マスクM1、M2、M3を組み合わせると全てのマス目がドット配置オンになる(ドット配置を100%再現するため)
(2)各マスクM1、M2、M3のドット配置オン/オフの配置がランダムであること(干渉模様(モアレ)を防ぐため)
(3)さらには、各マスクM1、M2、M3の周波数特性が視認しずらいもの(例えば、ブルーノイズ特性)であることが好ましい
【0134】
各スキャンのドット位置がバラつくことでドットパターンが干渉し、完成ドット配置に意図しない模様(モアレ)が発生する場合がある。これを低減するためにスキャンマスクM1、M2、M3のランダムさが重要である。マスクM1、M2、M3のドット配置オン/オフの配置がランダムであるほど、干渉模様が発生しにくい。
【0135】
また、干渉模様が発生したとしても視認しづらい特性であることも重要である。このことから、スキャンマスクは、例えばブルーノイズ特性のように、視認しやすい低周波成分が少なく、視認しづらい高周波成分が多い特性を持つものがよい。
【0136】
図13に示すように、図12(G)のドット配置パターンに各マスクM1、M2、M3をかけることによって、第1~第3スキャンにドット配置が割り振られ、全スキャンのドット配置を組み合わせると元のドット配置と同じになる。上記のような条件を満たすように各スキャンに用いるマスクM1、M2、M3を形成することによって、各スキャンで出力されたドットパターン同士の干渉を抑制して、完成ドット配置に意図しない模様(モアレ)が発生することを抑制できる。
【0137】
図14は、画像完成率の形状パターンを示す図である。図14(A)に示す分配グラフG8のように、上記実施形態では直線で構成される形状パターンを例示してきたが、これに限定されない。
【0138】
例えば図14(B)に示す分配グラフG9のように、曲線で構成される形状パターンとしてもよい。曲線形状とすることによって、ドット発生数が滑らかに変化するので、合一度合いも滑らかになり、画質低下を抑えられる。
【0139】
また、図14(C)に示す分配グラフG10のように、各ノズル群N(1)、N(2)、N(3)のノズル数が少ない場合は、正方形を組み合わせて構成される形状パターンとすることもできる。
【0140】
本発明の画像形成装置としては、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものであれば、その印刷対象のメディアや材質は問わない。
【0141】
印字対象のメディアは、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。メディアの材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0142】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0143】
1 インクジェット記録装置(画像形成装置)
10 制御部
20 記録ヘッド(液体吐出ユニット)
40 記録用メディア
N(1)~N(n) ノズル群(第1~第Nノズル群)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0144】
【特許文献1】特許第4164224号公報
【特許文献2】特開2001-063014号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14