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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039766
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
H01L21/304 645
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147044
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】片桐 勇志
(72)【発明者】
【氏名】安武 孝洋
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AB02
5F157AB33
5F157AB90
5F157BG05
5F157BG76
5F157BG83
5F157CE62
5F157DB51
(57)【要約】
【課題】基板に対するパーティクルの付着を抑えるのに有利な技術を提供する。
【解決手段】基板処理装置は、処理室と、処理室に接続する排気室とを有し、減圧された雰囲気の処理室に基板を収容する処理チャンバーと、処理室の雰囲気よりも高い圧力を有するガスを、処理室における基板に吹き付けるガス供給部と、処理室の雰囲気が、基板の近傍から排気室に向かって徐々に温度が低下する温度分布を持つように、処理室及び排気室のうちの少なくともいずれか一方の雰囲気の温度を調整する温調部と、を備える。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室と、前記処理室に接続する排気室とを有し、減圧された雰囲気の前記処理室に基板を収容する処理チャンバーと、
前記処理室の雰囲気よりも高い圧力を有するガスを、前記処理室における前記基板に吹き付けるガス供給部と、
前記処理室の雰囲気が、前記基板の近傍から前記排気室に向かって徐々に温度が低下する温度分布を持つように、前記処理室及び前記排気室のうちの少なくともいずれか一方の雰囲気の温度を調整する温調部と、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
前記温調部は、熱泳動により、前記処理室におけるパーティクルの前記排気室への移動を促す請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記処理室の雰囲気の温度は、前記基板の温度以下である請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記ガス供給部は、ガスのクラスターを前記基板に吹き付ける請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記処理室において前記基板を回転可能に保持する保持部を備える請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記処理チャンバーは、前記処理室及び前記排気室を区画する区画壁部を有し、
前記温調部は、前記区画壁部を介して、前記雰囲気の温度を調整する請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記温調部は、前記区画壁部を介して前記雰囲気を冷却する冷却部を有する請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記温調部は、前記区画壁部を介して前記雰囲気を加熱する加熱部を有する請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記温調部は、前記区画壁部の内部に設けられる内部温調器を有する請求項6~8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記内部温調器は、前記区画壁部の内部において延びる冷媒流路を有し、前記排気室から相対的に近い位置で前記冷媒流路に冷媒流体が流入し、前記排気室から相対的に遠い位置で前記冷媒流路から前記冷媒流体が流出する請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記内部温調器は、前記区画壁部の内部において、前記排気室から相対的に近い位置に設けられる第1冷媒流路と、前記排気室から相対的に遠い位置において前記第1冷媒流路とは独立して設けられる第2冷媒流路と、を有し、
前記第1冷媒流路に流入する冷媒流体の温度は、前記第2冷媒流路に流入する冷媒流体の温度よりも低い請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記温調部は、前記区画壁部の外部に設けられる外部温調器を有する請求項6~8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記排気室は、前記処理室の下方に位置し、
前記区画壁部は、前記排気室を区画する排気壁部と、前記処理室の側方で前記処理室を区画する処理側壁部と、前記処理室の上方で前記処理室を区画する処理天井壁部と、を有し、
前記温調部は、前記排気壁部の温度を前記処理側壁部の温度よりも低くし、且つ、前記処理側壁部の温度を前記処理天井壁部の温度よりも低くする請求項6~12のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記温調部は、前記基板を介して、前記処理室の雰囲気の温度を調整する請求項1~13のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項15】
排気室に接続する処理室の減圧された雰囲気が、前記処理室における基板の近傍から前記排気室に向かって徐々に温度が低下する温度分布を持つように、前記処理室及び前記排気室のうちの少なくともいずれか一方の雰囲気の温度を調整する工程と、
前記処理室の雰囲気よりも高い圧力を有するガスを、前記処理室における前記基板に吹き付ける工程と、を含む基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に気体を吹き付けて基板上の異物を除去する技術が知られている。例えば特許文献1が開示する基板洗浄方法によれば、複数のガス分子から成るクラスターがイオン化することなくウエハに衝突することで、基板に付着した異物を取り除くことができる。特許文献1の装置において、基板から除去されて飛散した異物は、熱泳動力によって低温に設定された冷却部に引き寄せられて捕捉される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-171584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウエハ(基板)のドライ洗浄処理において、ウエハの外周部に気体が吹き付けられることで、ウエハに多くのパーティクルが付着することがある。これはシミュレーションからも明らかなように、ウエハの外周部(特に縁部近傍の箇所)に吹き付けられた気体の一部がウエハの周囲の空間に向かって流れることで当該空間に渦流が生じ、当該渦流に乗ってパーティクルがウエハ表面に舞い戻ることが一因である。
【0005】
そのような洗浄処理が減圧された処理室において行われる場合、処理室への吸排気を行うことができないため、ウエハに対するパーティクルの付着を抑えるように処理室の気流を積極的にコントロールすることは難しい。また処理室においてウエハが水平方向に移動する場合、ウエハの周囲に大きな体積の余剰空間が形成され、当該余剰空間においてパーティクルをウエハに導く渦流等の気流が生じやすい。
【0006】
本開示は、基板に対するパーティクルの付着を抑えるのに有利な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、処理室と、前記処理室に接続する排気室とを有し、減圧された雰囲気の前記処理室に基板を収容する処理チャンバーと、前記処理室の雰囲気よりも高い圧力を有するガスを、前記処理室内の前記基板に吹き付けるガス供給部と、前記処理室の雰囲気が、前記基板から前記排気室に向かって徐々に温度が低下する温度分布を持つように、前記処理室及び前記排気室の少なくともいずれか一方の雰囲気の温度を調整する温調部と、を備える基板処理装置に関する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、基板に対するパーティクルの付着を抑えるのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、基板処理装置の一例の全体構成を示す平面図である。
図2図2は、基板洗浄装置の一例の構成を示す図である。
図3図3は、ガスノズル部の一例を示す図である。
図4A図4Aは、第1実施形態に係る基板洗浄装置の一例の構成を示す図である。
図4B図4Bは、図4Aに示す処理チャンバーの処理底壁部の内部に設けられる冷媒流路の一例を示す平面図である。
図4C図4Cは、図4Aに示す処理チャンバーの処理天井壁部の内部に設けられる冷媒流路の一例を示す平面図である。
図5図5は、第2実施形態に係る基板洗浄装置の一例の構成を示す図である。
図6図6は、第3実施形態に係る基板洗浄装置の一例の構成を示す図である。
図7図7は、第4実施形態に係る基板洗浄装置の一例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、基板処理システム10の一例の全体構成を示す平面図である。図1において、X方向、Y方向及びZ方向は相互に垂直を成し、X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は高さ方向(鉛直方向)である。
【0011】
図1に示す基板処理システム10は、複数(3つ)の搬出入ポート12、大気搬送チャンバー13、複数(2つ)のロードロックチャンバ17、真空搬送チャンバー18、複数(6つ)の基板処理装置20、及び制御部22を備える。
【0012】
各搬出入ポート12には、複数の基板Wを収容するキャリア(例えばFOUP:Front-Opening Unified Pod)11が配置される。各搬出入ポート12はキャリア11の蓋と一緒に開閉されるゲートドア(図示省略)を有し、当該ゲートドアを介して搬出入ポート12に配置されるキャリア11と大気搬送チャンバー13との間で基板Wの搬出入が行われる。
【0013】
大気圧(常圧)の雰囲気を有する大気搬送チャンバー13には、各ロードロックチャンバ17と、基板Wの検査を行う検査ユニット15と、基板Wの向きや偏心の調整を行うアライメントユニット16とが接続される。
【0014】
検査ユニット15は、例えば基板Wに付着する異物(パーティクルを含む)の状態を検出し、検出結果を制御部22に送信してもよい。一例として、検査ユニット15は、基板W上のパーティクルのサイズ(粒径)及び位置を検出することが可能である。
【0015】
大気搬送チャンバー13内には、基板Wを解放可能に支持することができる第1搬送装置14が設けられる。第1搬送装置14は、各搬出入ポート12に配置されるキャリア11、検査ユニット15、アライメントユニット16及び各ロードロックチャンバ17に対し、基板Wの受け渡しを行う。第1搬送装置14の具体的な構成は限定されない。例えば、第1搬送装置14は多関節アームを具備し、水平方向(XY方向)及び高さ方向(Z方向)に移動可能に設けられ、鉛直軸を中心に回転可能に設けられる。
【0016】
各ロードロックチャンバ17はゲートバルブ(図示省略)を介して大気搬送チャンバー13に気密に接続され、当該ゲートバルブを介して各ロードロックチャンバ17と大気搬送チャンバー13との間で基板Wの搬出入が行われる。同様に、各ロードロックチャンバ17はゲートバルブ(図示省略)を介して真空搬送チャンバー18に気密に接続され、当該ゲートバルブを介して各ロードロックチャンバ17と真空搬送チャンバー18との間で基板Wの搬出入が行われる。各ロードロックチャンバ17には、各ロードロックチャンバ17内の雰囲気圧力を大気圧と真空圧との間で切り換えることができる真空ポンプ及びリーク弁(図示省略)が設けられる。
【0017】
真空圧の雰囲気を有する真空搬送チャンバー18には、複数の基板処理装置20が気密に接続される。これらの基板処理装置20のうちの少なくとも1つは後述の基板洗浄装置30として構成される。
【0018】
他の基板処理装置20の具体的な構成及び処理内容は限定されない。例えば、回路パターン形成用の溝及びビアホールが形成されたウエハWに対し、回路配線を含む成膜を形成するCVD(Chemical Vapor Deposition)処理やスパッタリング処理を行う真空処理モジュールとして、他の基板処理装置20が構成されてもよい。
【0019】
真空搬送チャンバー18内には、基板Wを解放可能に支持することができる第2搬送装置19が設けられる。第2搬送装置19は、各ロードロックチャンバ17及び各基板処理装置20(基板洗浄装置30を含む)に対し、基板Wの受け渡しを行う。第2搬送装置19の具体的な構成は限定されない。例えば、第2搬送装置19は多関節アームを具備し、水平方向及び高さ方向に移動可能に設けられ、鉛直軸を中心に回転可能に設けられる。
【0020】
制御部22は、基板処理システム10に含まれる各種装置を適宜制御する。基板処理システム10は、制御部22の制御下で、基板Wの搬送や基板Wに対する各種処理を行う。
【0021】
図2は、基板洗浄装置30の一例の構成を示す図である。図2には、処理チャンバー31の内側の状態が示されている。
【0022】
図2に示す基板洗浄装置30は、処理チャンバー31、保持部40、ガス供給部36、及び排気装置44を備える。
【0023】
処理チャンバー31は、処理室32及び排気室33を気密に区画する区画壁部35を有する。区画壁部35は、処理室32の上方で処理室32を区画する処理天井壁部35aと、処理室32の側方で処理室32を区画する処理側壁部35bと、処理室32の下方で処理室32を区画する処理底壁部35cとを有する。本例の区画壁部35は、処理室32の下方に位置する排気室33を区画する排気壁部35dを更に有する。
【0024】
処理室32は、減圧された雰囲気(すなわち大気圧よりも低い圧力(真空圧)の雰囲気)を有する。
【0025】
排気室33は、処理室32に接続され、処理室32から流入する気体を排気装置44に向けて案内する。
【0026】
排気装置44は、処理チャンバー31(処理室32及び排気室33)内の気体を、処理チャンバー31外に排出する装置である。本例の排気装置44は、排気室33からの気体の流入を調整する圧力調整部(例えばバタフライバルブ)45と、排気路46を介して圧力調整部45に接続される真空ポンプ47とを有する。
【0027】
処理室32には保持部40が設置されており、基板Wは保持部40により支持された状態で処理室32に収容される。保持部40は、処理室32において基板Wを回転可能に保持する。
【0028】
図2に示す保持部40は、基板Wが載せられる載置台41と、載置台41を支持する台駆動部42と、を有する。載置台41は、メカニカルチャック、真空チャック、或いは他の方式によって、基板Wを固定的に支持する。台駆動部42は、制御部22の制御下で、水平方向(特にX方向及びY方向)及び高さ方向(Z方向)に載置台41を移動させるとともに、鉛直軸を中心に載置台41を回転させる。
【0029】
載置台41上の基板Wは、載置台41とともに移動し、載置台41とともに回転する。
【0030】
基板Wは、処理チャンバー31(図2に示す例では処理側壁部35b)が有する搬出入口34を介して、処理チャンバー31内に搬入されるとともに、処理チャンバー31外に搬出される。
【0031】
搬出入口34は、制御部22の制御下で駆動されるゲートバルブ49によって開閉される。処理チャンバー31に対する基板Wの搬出入が行われる間、搬出入口34はゲートバルブ49によって開かれる。一方、処理チャンバー31に対する基板Wの搬出入が行われない間、搬出入口34はゲートバルブ49によって気密に閉じられる。したがって、後述のようにガス供給部36から噴出されるガスを使って載置台41上の基板Wの洗浄処理が行われる間、搬出入口34はゲートバルブ49により閉じられ、処理室32は密閉される。
【0032】
ガス供給部36は、処理室32の雰囲気よりも高い圧力を有するガスを、処理室32に配置される基板Wに吹き付ける。
【0033】
図2に示すガス供給部36は、制御部22の制御下で駆動するガス供給調整部37と、ガス供給調整部37からガス供給配管38を介して送られてくるガスを処理チャンバー31内(特に処理室32)に向けて噴射するガスノズル部39とを有する。
【0034】
ガス供給調整部37は、ガスノズル部39に向けて送り出すガスの量、圧力、温度及びその他の状態を調整することができる。例えば、処理室32の雰囲気を0.1~100Paの真空雰囲気に設定しつつ、ガスノズル部39からのガスを、0.3~5.0MPaの圧力で且つ-100℃程度の温度で、基板Wに吹き付けることが可能である。
【0035】
ガスノズル部39から吐出されるガスの組成は限定されず、例えば水素及び二酸化炭素の混合ガスがガスノズル部39から吐出されてもよい。
【0036】
図3は、ガスノズル部39の一例を示す図である。図3には、ガスノズル部39の内側の状態(特に概念的なガスの状態)が示されている。
【0037】
本例のガス供給部36(特にガスノズル部39)は、ガスのクラスター(すなわちガスクラスター100)を、載置台41上の基板Wに吹き付ける。ガスクラスター100は、複数のガス分子(ガス原子)101の集合体であり、複数のガス分子(ガス原子)101がファンデルワールス力で結合することで形成される。
【0038】
図3に示すガスノズル部39の区画壁部は、ガス供給配管38からのガス分子101が流入する圧力室55と、オリフィス部56を介して圧力室55に接続される拡散部57とを区画する。拡散部57は、オリフィス部56から下方に向かうにつれて(すなわち載置台41上の基板Wに近づくにつれて)徐々に拡大する径を有する。オリフィス部56の径は、圧力室55の径よりも小さく且つ拡散部57の径以下であり、例えば0.1mmから1mm程度の径をオリフィス部56は有する。
【0039】
ガス供給配管38からガスノズル部39に供給されるガス分子101は、圧力室55、オリフィス部56、拡散部57及び処理室32を通過する間に、断熱膨張、冷却凝集及びクラスター化の過程を経て、ガスクラスター100になる。
【0040】
このようにしてガスノズル部39から吐出されるガスクラスター100は、処理室32の雰囲気圧力よりも高い圧力で基板Wに向かって進行し、基板Wに衝突することで基板W上の異物(パーティクル)を基板Wから除去する洗浄ガスとして働く。
【0041】
ガスクラスター100は基板Wに衝突した際の衝撃により基板Wの表面に沿って動く力が働き、その結果、基板W上の異物を基板Wの表面から剥離して側方又は斜め上方に吹き飛ばす。なおガスクラスター100が基板W上の異物に直接衝突しない場合であっても、基板Wに衝突して基板Wの表面に沿って移動するガスクラスター100により、基板W上の異物が基板Wの表面から剥離されて吹き飛ばされる。
【0042】
なお基板Wに対するガスクラスター100の照射角度θは限定されず、例えば90度±15度の範囲であってもよい。基板Wに対するガスクラスター100の照射角度θは、例えばガスノズル部39の長さ方向(すなわちガスノズル部39から吐出されるガス(ガスクラスター100)の主たる進行方向)に延びる中心軸Lに基づいて定めることが可能である。
【0043】
上述のガスノズル部39は、本例では処理チャンバー31(図2に示す例では処理天井壁部35a)に対して固定的に取り付けられる。
【0044】
保持部40が、制御部22の制御下で、基板Wを回転させつつ水平方向に移動させることで、基板W及びガスノズル部39が相対的に水平方向へ移動し、基板洗浄装置30から吐出されるガスが、基板Wの処理面(上面)の全体に吹き付けられる。
【0045】
[熱泳動]
基板洗浄装置30は、更に温調部を備える。温調部は、任意の構成を有し、図2には図示されていない。なお、温調部の典型例は後述される(図4A図7参照)。
【0046】
温調部は、処理室32の雰囲気が、基板Wの近傍から排気室33に向かって徐々に温度が低下する温度分布(温度勾配)を持つように、処理室32及び排気室33のうちの少なくともいずれか一方の雰囲気の温度を調整する。すなわち温調部は、熱泳動により、処理室32内のパーティクルの排気室33への移動が促されるように、処理室32及び排気室33のうちの少なくともいずれか一方の雰囲気の温度を調整する。
【0047】
一般に、温度勾配のある場に微小な粒子が存在する場合、当該粒子は、低温側に向かう力を受けて高温側から低温側へ移動する。このような粒子の挙動は熱泳動(thermophoresis)と呼ばれる。
【0048】
熱泳動において、粒子が高温側の気体から受ける運動量が低温側の気体から受ける運動量よりも大きくなり、その結果、粒子には高温側から低温側に向かう力(すなわち熱泳動力)が働く。なお、熱泳動により移動する粒子の終端速度は熱泳動速度と呼ばれる。
【0049】
したがって、温度勾配のない均一的な温度を有する雰囲気中をパーティクルが移動する場合、パーティクルは熱泳動することなく直進する。一方、温度勾配が大きい雰囲気中をパーティクルが移動する場合、パーティクルは、熱泳動によって低温側に向かう力を受けつつ、進行する。
【0050】
熱泳動の影響は、粒子のサイズが小さいほど大きくなる傾向がある。また、連続気体としてみなされなくなる雰囲気(具体的には減圧されて希薄な気体状態に置かれている雰囲気)中を粒子が進行する場合にも、熱泳動の影響が大きくなる傾向がある。したがって処理室32の雰囲気を減圧し且つ当該雰囲気に温度勾配を持たせることで、当該雰囲気中のパーティクルに作用する熱泳動の影響が大きくなり、当該パーティクルの移動をコントロールすることが可能である。
【0051】
そのため温調部が、基板Wの近傍から排気室33に向かって徐々に温度が低下する温度分布を持つように処理室32及び/又は排気室33の雰囲気の温度を調整することで、熱泳動によって処理室32におけるパーティクルを排気室33に誘導できる。特に、排気室33の雰囲気温度を処理室32の雰囲気温度よりも低く設定することによって、熱泳動の影響下で、処理室32におけるパーティクルは排気室33に向かって移動する傾向が強くなる。
【0052】
一例として、処理室32の雰囲気を0Pa~100Paの範囲に保ちつつ、処理室32における基板Wの近傍の雰囲気温度を10~20℃に設定し、排気室33の雰囲気温度を-50℃程度に設定してもよい。この場合、基板Wの近傍から排気室33に向かって徐々に温度が低下する温度分布を処理室32が持つことで、熱泳動により、処理室32に浮遊するパーティクルを排気室33に向けて効果的に誘導できる。
【0053】
上述の基板洗浄装置30による基板洗浄方法(基板処理方法)は、例えば以下のように行われる。
【0054】
まず、処理室32において基板Wの近傍から排気室33に向かって徐々に温度が低下する温度分布を、処理室32の減圧された雰囲気が持つように、処理室32及び排気室33のうちの少なくともいずれか一方の雰囲気の温度が調整される(雰囲気温度調整工程)。
【0055】
そして、当該温度分布が維持されつつ、処理室32の雰囲気よりも高い圧力を有するガス(ガスクラスター100)が、ガスノズル部39から処理室32に配置された基板Wに吹き付けられる(ガス吹付工程)。
【0056】
一例として、保持部40により基板Wが処理室32におけるホーム位置から処理位置に移動され、保持部40により基板Wが処理位置において回転される。そして処理位置において、保持部40により基板Wを水平移動させつつガスノズル部39からガス(ガスクラスター100)が噴出され、回転する基板Wの表面(上面)の全体にガスが吹き付けられることで、基板Wの洗浄が行われる。
【0057】
ガスノズル部39からのガスは、基板Wの表面をスキャンするように基板Wに吹き付けられる。一例として、ガスノズル部39からのガスの基板Wに対する吹き付け位置が、基板Wの表面のセンターからエッジに移動し、その後、基板Wの表面のエッジからセンターに戻ることで、基板Wの表面の全体から異物を効果的に除去できる。
【0058】
上述の基板洗浄方法によれば、熱泳動により、処理室32内のパーティクルが排気室33に向けて誘導される状態下で、基板Wから異物を除去するための高圧ガスが基板Wに吹き付けられる。そのため、基板Wから除去されたパーティクルが基板Wに再び付着するのを抑えることができる。
【0059】
特に、排気室33にパーティクルを誘導することで、処理室32から排気室33に送られる気体(ガスノズル部39から噴出されるガスを含む)とともに当該パーティクルを処理チャンバー31の外部に排出することができる。その結果、処理チャンバー31内におけるパーティクルの残留を低減して、処理チャンバー31内を清浄な状態に保つことができる。
【0060】
次に、基板洗浄装置30の典型的な実施形態について説明する。
【0061】
以下に説明する各実施形態の基板洗浄装置30は、図1に示す基板処理システム10の一部として設けられるが、図1に示す基板処理システム10以外の装置及び上述の基板洗浄方法以外の方法に対しても、応用が可能である。
【0062】
[第1実施形態]
図4Aは、第1実施形態に係る基板洗浄装置30の一例の構成を示す図である。図4Aには、処理チャンバー31の内側の状態が示されている。図4Bは、図4Aに示す処理チャンバー31の処理底壁部35cの内部に設けられる冷媒流路60の一例を示す平面図である。図4Cは、図4Aに示す処理チャンバー31の処理天井壁部35aの内部に設けられる冷媒流路60の一例を示す平面図である。
【0063】
本実施形態の基板洗浄装置30は、区画壁部35の内部において延びる冷媒流路60を備える。
【0064】
排気室33から相対的に近い位置で冷媒流路60に冷媒流体が流入し、排気室33から相対的に遠い位置で冷媒流路60から冷媒流体が流出する。任意の流体(気体及び/又は液体)を冷媒流体として用いることが可能であり、例えば液体窒素や純水(DIW:DE-IONIZED WATER)を冷媒流体として使用可能である。
【0065】
図4A図4Cに示す基板洗浄装置30では、連続的につながっている1つの冷媒流路60が、処理天井壁部35a、処理側壁部35b、処理底壁部35c及び排気壁部35dの内部に延在する。
【0066】
冷媒供給回収部63から冷媒供給配管61を介して冷媒流体が供給される冷媒流路60の入口部は、排気壁部35dに設けられる。一方、冷媒排出配管62を介して冷媒供給回収部63に向けて冷媒流体が排出される冷媒流路60の出口部は、処理天井壁部35aに設けられる。
【0067】
冷媒供給回収部63から冷媒供給配管61を介して冷媒流路60に供給される冷媒流体は、排気壁部35d、処理底壁部35c、処理側壁部35b及び処理天井壁部35aを順次経た後、冷媒排出配管62を介して冷媒供給回収部63に回収される。
【0068】
図4Bにおいて、符号「V1」は、処理底壁部35cに設けられる冷媒流路60のうち、排気壁部35dに設けられる冷媒流路60が接続される箇所を示し、符号「V2」は、処理側壁部35bに設けられる冷媒流路60に接続される箇所を示す。図4Cにおいて、符号「V3」は、処理天井壁部35aに設けられる冷媒流路60のうち、処理側壁部35bに設けられる冷媒流路60が接続される箇所を示し、符号「V4」は冷媒排出配管62が接続される箇所を示す。
【0069】
なお、冷媒流路60に対する冷媒流体の供給位置及び冷媒流路60からの冷媒流体の排出位置は限定されない。
【0070】
例えば、載置台41上の基板Wよりも排気室33に近い位置で冷媒流路60に対して冷媒流体を供給することで、処理室32の雰囲気を、基板Wの近傍から排気室33に向かって徐々に温度が低下する温度分布を持つように冷却することが可能である。また、排気室33よりも載置台41上の基板Wの近くで冷媒流路60から冷媒流体を排出することで、処理室32の雰囲気を、基板Wの近傍から排気室33に向かって徐々に温度が低下する温度分布を持つように冷却することが可能である。
【0071】
冷媒流路60内の冷媒流体は、区画壁部35を冷却しつつ流れて、徐々に温度が上がるため、冷媒流路60から排出される冷媒流体の温度は、冷媒流路60に供給される冷媒流体の温度よりも高くなる。そのため、区画壁部35のうち上流側に位置する箇所ほど温度が相対的に低くなるように冷却され、下流側に位置する箇所ほど温度が相対的に高くなるように冷却される。ここで言う「上流側」及び「下流側」は、冷媒流路60における冷媒流体の流れを基準とする。
【0072】
したがって冷媒流路60内の冷媒流体は、排気壁部35dの温度を処理側壁部35bの温度よりも低くし、且つ、処理側壁部35bの温度を処理天井壁部35aの温度よりも低くする。また冷媒流路60内の冷媒流体は、処理底壁部35cの温度を、排気壁部35dの温度よりも高く且つ処理側壁部35bの温度よりも低くする。
【0073】
その結果、処理室32の雰囲気は、基板Wの近傍から排気室33に向かって徐々に温度が低下する温度分布を持つように冷却され、また排気室33の雰囲気は、処理室32の雰囲気温度よりも低い温度を持つように冷却される。
【0074】
冷媒供給回収部63は、制御部22(図1参照)の制御下で、冷媒供給回収部63を介して回収した冷媒流体を所望温度に冷却した後、冷媒供給配管61を介して冷媒流路60に供給する。冷媒供給回収部63から冷媒流路60に供給される冷媒流体の温度は限定されないが、処理室32及び排気室33の雰囲気が冷却されて所望の温度分布(温度勾配)を持つことを可能にする温度を持つ冷媒流体が冷媒流路60に供給される。
【0075】
例えば、冷媒流路60から冷媒排出配管62に流入する冷媒流体が、処理チャンバー31の周囲の温度(例えば常温(5℃~35℃))よりも低い温度を有するように、冷媒流路60に供給される冷媒流体の温度が決められてもよい。また、処理室32の雰囲気の温度が、載置台41上の基板Wの温度以下となるように、冷媒流路60に供給される冷媒流体の温度が決められてもよい。
【0076】
なお冷媒供給回収部63が冷媒流路60に冷媒流体の供給を開始するタイミングは限定されない。冷媒流路60に対する冷媒流体の供給は、例えば、処理対象の基板Wが処理室32に搬入されるタイミングに応じて(例えば基板Wが処理室32に搬入される前に)開始されてもよいし、当該タイミングによらず常時行われてもよい。
【0077】
図4A図4Cに示す基板洗浄装置30の他の構成は、上述の図2に示す基板洗浄装置30と同様である。
【0078】
上述のように本実施形態の温調部は、区画壁部35の内部に設けられる内部温調器として働く冷媒流路60と冷媒流路60を流れる冷媒流体とを含み、区画壁部35を介して処理室32及び排気室33の雰囲気を冷却して当該雰囲気の温度を調整する。これにより処理室32の雰囲気は、基板Wの近傍から排気室33に向かって徐々に温度が低下する温度分布を持つように冷却され、処理室32内で浮遊するパーティクルを、熱泳動により、排気室33に誘導することができる。
【0079】
[第2実施形態]
本実施形態において、上述の第1実施形態と同一又は対応の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0080】
図5は、第2実施形態に係る基板洗浄装置30の一例の構成を示す図である。
【0081】
本実施形態の温調部は、上述の第1実施形態と同様に処理チャンバー31の区画壁部35の内部に設けられる内部温調器として冷媒流路を有するが、お互いに独立して設けられる複数の冷媒流路60a、60b、60cを有する。
【0082】
すなわち本実施形態の内部温調器は、排気室33から相対的に近い位置に設けられる第1冷媒流路60aと、排気室33から相対的に遠い位置において第1冷媒流路60aとは独立して設けられる第2冷媒流路60bとを有する。そして第1冷媒流路60aに流入する冷媒流体の温度は、第2冷媒流路60bに流入する冷媒流体の温度よりも低い。
【0083】
図5に示す内部温調器は、排気壁部35d及び処理底壁部35cに設けられる第1冷媒流路60aと、処理側壁部35bに設けられる第2冷媒流路60bとに加え、処理天井壁部35aに設けられる第3冷媒流路60cを有する。
【0084】
第1冷媒供給回収部63aから第1冷媒供給配管61aを介して第1冷媒流路60aに供給される冷媒流体は、排気壁部35d及び処理底壁部35cを順次経た後、第1冷媒排出配管62aを介して第1冷媒供給回収部63aに回収される。第2冷媒供給回収部63bから第2冷媒供給配管61bを介して第2冷媒流路60bに供給される冷媒流体は、処理側壁部35bを経た後、第2冷媒排出配管62bを介して第2冷媒供給回収部63bに回収される。第3冷媒供給回収部63cから第3冷媒供給配管61cを介して第3冷媒流路60cに供給される冷媒流体は、処理天井壁部35aを経た後、第3冷媒排出配管62cを介して第3冷媒供給回収部63cに回収される。
【0085】
第1冷媒流路60aに供給される冷媒流体の温度Ta(in)は、第2冷媒流路60bに供給される冷媒流体の温度Tb(in)よりも低い。また第2冷媒流路60bに供給される冷媒流体の温度Tb(in)は、第3冷媒流路60cに供給される冷媒流体の温度Tc(in)よりも低い。
【0086】
より具体的には、第1冷媒流路60aを流れる冷媒流体の温度Taは第2冷媒流路60bを流れる冷媒流体の温度Tbよりも低い。また第2冷媒流路60bを流れる冷媒流体の温度Tbは、第3冷媒流路60cを流れる冷媒流体の温度Tcよりも低い。
【0087】
その結果、第1冷媒流路60aから排出される冷媒流体の温度Ta(out)は、第2冷媒流路60bに流入する冷媒流体の温度Tb(in)よりも低い。また第2冷媒流路60bから排出される冷媒流体の温度Tb(out)は、第3冷媒流路60cに流入する冷媒流体の温度Tc(in)よりも低い。
【0088】
このように第1冷媒供給回収部63a~第3冷媒供給回収部63cは、制御部22(図1参照)の制御下で、以下の関係が満たされるように、第1冷媒流路60a~第3冷媒流路60cに供給する冷媒流体の温度を調整する。
【0089】
Ta(in)<Tb(in)<Tc(in)
Ta<Tb<Tc
Ta(out)<Tb(in)
Tb(out)<Tc(in)
【0090】
図5に示す基板洗浄装置30の他の構成は、上述の図4Aに示す基板洗浄装置30と同様である。
【0091】
上述のように本実施形態では、処理チャンバー31の区画壁部35が複数のエリアに区分され、それぞれのエリアの温度が、互いに異なる温度を持つ冷媒流体によって、互いに独立して調整される。これにより区画壁部35の温度をエリア単位でコントロールでき、図5に示す例では「排気壁部35dの温度<処理底壁部35cの温度<処理側壁部35bの温度<処理天井壁部35aの温度」が満たされるように区画壁部35の温度が調整される。
【0092】
その結果、処理室32の雰囲気が、基板Wの近傍から排気室33に向かって徐々に温度が低下する温度分布(温度勾配)を持つように冷却され、処理室32内で浮遊するパーティクルを、熱泳動により、排気室33に誘導することができる。
【0093】
[第3実施形態]
本実施形態において、上述の第1実施形態及び第2実施形態と同一又は対応の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0094】
図6は、第3実施形態に係る基板洗浄装置30の一例の構成を示す図である。
【0095】
本実施形態の温調部は、処理チャンバー31の区画壁部35の外部に設けられる外部温調器65を有し、特に、区画壁部35を介して処理チャンバー31内の雰囲気を冷却する冷却部65aが外部温調器65として設けられる。
【0096】
図6に示す基板洗浄装置30では、処理天井壁部35aの外面、処理側壁部35bの外面、処理底壁部35cの外面、及び排気壁部35dの外面に冷却部65aが取り付けられる。冷却部65aの内部には、冷媒流体が流される冷媒流路60が設けられる。
【0097】
冷却部65aに設けられる冷媒流路60は、任意の構成を有し、全体として1つの流路として構成されてもよいし(図4A参照)、互いに独立した複数の流路を有してもよい(図5参照)。また冷媒流路60には、冷媒流路60の構成に応じた任意の形態で、温度調整された冷媒流体が供給される。
【0098】
なお図6に示す例では、区画壁部35の内部には冷媒流路60が設けられていない。
【0099】
図6に示す基板洗浄装置30の他の構成は、上述の図4Aに示す基板洗浄装置30と同様である。
【0100】
本実施形態では、処理チャンバー31の区画壁部35が外部温調器65により外側から冷却される。図6に示す例では「排気壁部35dの温度<処理底壁部35cの温度<処理側壁部35bの温度<処理天井壁部35aの温度」が満たされるように、区画壁部35の温度が外部温調器65により調整される。
【0101】
その結果、処理室32の雰囲気が、基板Wの近傍から排気室33に向かって徐々に温度が低下する温度分布(温度勾配)を持つように冷却され、処理室32内で浮遊するパーティクルを、熱泳動により、排気室33に誘導することができる。
【0102】
[第4実施形態]
本実施形態において、上述の第1~第3実施形態と同一又は対応の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0103】
図7は、第4実施形態に係る基板洗浄装置30の一例の構成を示す図である。
【0104】
本実施形態の温調部も、上述の第3実施形態と同様に、処理チャンバー31の区画壁部35の外部に設けられる外部温調器65を有する。ただし本実施形態では、区画壁部35を介して処理チャンバー31内の雰囲気を加熱する加熱部65bが外部温調器65として設けられる。
【0105】
図7に示す基板洗浄装置30では、処理側壁部35bの外面、処理底壁部35cの外面、及び排気壁部35dの外面に上述の冷却部65aが取り付けられるが、処理天井壁部35aの外面には加熱部65bが取り付けられる。
【0106】
図7に示す基板洗浄装置30の他の構成は、上述の図6に示す基板洗浄装置30と同様である。
【0107】
本実施形態では、冷却部65a及び加熱部65bの組み合わせからなる外部温調器65によって、処理チャンバー31の区画壁部35の温度が調整される。図7に示す例では「排気壁部35dの温度<処理底壁部35cの温度<処理側壁部35bの温度<処理天井壁部35aの温度」が満たされるように、区画壁部35の温度が外部温調器65により調整される。
【0108】
その結果、処理室32の雰囲気が、基板Wの近傍から排気室33に向かって徐々に温度が低下する温度分布(温度勾配)を持つように冷却される。
【0109】
特に本実施形態では、排気室33から離れた位置であって処理室32内の基板Wに近い位置に配置される処理天井壁部35aが、加熱部65bにより加熱されることで、区画壁部35の温度調整が行われる。そのため、処理室32の雰囲気が強い温度勾配を持つように、処理室32の雰囲気の温度を調整することができる。したがって、処理室32において浮遊するパーティクルに対し、より大きな熱泳動力を作用させることができ、より効果的にパーティクルを処理室32から排気室33に誘導できる。
【0110】
[変形例]
温調部は、処理チャンバー31内(処理室32及び/又は排気室33)の雰囲気の温度を調整可能な任意の構成を有しうる。上述の各実施形態の温調部は、制御部22の制御下で、処理チャンバー31の区画壁部35の温度を調整することで処理チャンバー31内の雰囲気温度を調整するが、他の方法で処理チャンバー31内の雰囲気温度を調整してもよい。
【0111】
温調部は、例えば、制御部22の制御下で、基板Wを介して処理室32の雰囲気の温度を調整してもよい。すなわち温調部が、載置台41上の基板Wを加熱及び/又は冷却することで、当該基板Wにより処理室32の雰囲気を加熱及び/又は冷却してもよい。
【0112】
そのような温調部の構成は限定されず、温調部による基板Wの温度を調整する方法も限定されない。一例として、保持部40に設けられる温調部67(図2参照)により、載置台41上の基板Wを加熱及び/又は冷却することで、当該基板Wにより処理室32の雰囲気を加熱及び/又は冷却することが可能である。
【0113】
また上述の実施形態及び変形例の温調部を組み合わせて用いることで、処理チャンバー31内(処理室32及び/又は排気室33)の雰囲気の温度が調整されてもよい。例えば、処理チャンバー31の区画壁部35の内部に設けられる内部温調器(図4A図5参照)と、区画壁部35の外部に設けられる外部温調器(図6及び図7参照)との両方によって、処理チャンバー31内の雰囲気温度を調整してもよい。また内部温調器及び/又は外部温調器に対し、基板Wの温度を調整する装置(図2に示す温調部67参照)を組み合わせて用いることで、処理チャンバー31内の雰囲気温度を調整してもよい。
【0114】
また上述の基板洗浄装置30の装置構成は、基板Wの洗浄以外の処理を行う基板処理装置に対しても応用可能である。
【0115】
本明細書で開示されている実施形態及び変形例はすべての点で例示に過ぎず限定的には解釈されないことに留意されるべきである。上述の実施形態及び変形例は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態での省略、置換及び変更が可能である。例えば上述の実施形態及び変形例が部分的に又は全体的に組み合わされてもよく、また上述以外の実施形態が上述の実施形態又は変形例と部分的に又は全体的に組み合わされてもよい。
【0116】
また上述の技術的思想を具現化する技術的カテゴリーは限定されない。例えば上述の装置が他の装置に応用されてもよい。また上述の方法に含まれる1又は複数の手順(ステップ)をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムによって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。またそのようなコンピュータプログラムが記録されたコンピュータが読み取り可能な非一時的(non-transitory)な記録媒体によって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。
【符号の説明】
【0117】
30 基板洗浄装置
31 処理チャンバー
32 処理室
33 排気室
36 ガス供給部
60 冷媒流路
65 外部温調器
65a 冷却部
65b 加熱部
W 基板
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7