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特開2023-39835原料供給装置、基板処理システムおよび残量推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039835
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】原料供給装置、基板処理システムおよび残量推定方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 4/00 20060101AFI20230314BHJP
   C23C 16/448 20060101ALI20230314BHJP
   C23C 16/52 20060101ALI20230314BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B01J4/00 102
C23C16/448
C23C16/52
H01L21/31 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147147
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 宏之
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 智博
【テーマコード(参考)】
4G068
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4G068AA01
4G068AB02
4G068AB03
4G068AC05
4G068AD39
4G068AE10
4G068AF01
4G068AF14
4K030AA03
4K030AA11
4K030BA02
4K030CA12
4K030CA17
4K030EA01
4K030HA15
4K030JA09
4K030KA39
4K030KA41
4K030KA46
5F045AC03
5F045AC07
5F045AC15
5F045AC16
5F045AC17
5F045DP02
5F045EE02
5F045EE14
5F045EE17
5F045GB05
5F045GB06
5F045GB15
5F045GB16
5F045GB17
(57)【要約】
【課題】原料容器内の原料の残量を精度よく推定することができる技術を提供する。
【解決手段】原料供給装置は、固体または液体の原料を収容した原料容器と、原料容器に接続され、キャリアガスを流通可能な上流経路と、原料容器に接続され、原料から生じた原料ガスを含むガスを流通可能な下流経路と、原料容器を介さずに上流経路と下流経路との間を接続し、上流経路から下流経路にキャリアガスを流通させるバイパス経路と、下流経路の流路を開閉する下流側バルブと、上流経路および下流経路の少なくとも一方に設けられ、当該上流経路内または当該下流経路内の圧力を検出する圧力計と、圧力計から圧力検出値を取得し、原料容器から下流経路への原料ガスの流通開始時に、下流側バルブを開放した際に低下する圧力検出値に基づき、原料容器内の原料の残量を推定するように構成された残量推定部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体または液体の原料を収容した原料容器と、
前記原料容器に接続され、キャリアガスを流通可能な上流経路と、
前記原料容器に接続され、前記原料から生じた原料ガスを含むガスを流通可能な下流経路と、
前記原料容器を介さずに前記上流経路と前記下流経路との間を接続し、前記上流経路から前記下流経路に前記キャリアガスを流通させるバイパス経路と、
前記下流経路の流路を開閉する下流側バルブと、
前記上流経路および前記下流経路のうち少なくとも一方に設けられ、当該上流経路内または当該下流経路内の圧力を検出する圧力計と、
前記圧力計から圧力検出値を取得し、前記原料容器から前記下流経路への前記原料ガスの流通開始時に、前記下流側バルブを開放した際に低下する前記圧力検出値に基づき、前記原料容器内の前記原料の残量を推定するように構成された残量推定部と、を有する、
原料供給装置。
【請求項2】
前記残量推定部は、前記圧力検出値の低下量を演算し、前記低下量が大きくなる程、前記原料容器内の前記原料の残量が少ないと推定する、
請求項1に記載の原料供給装置。
【請求項3】
前記圧力検出値の低下量と前記原料容器内の前記原料の残量とを対応付けたマップ情報が記憶部に記憶され、
前記残量推定部は、演算した前記圧力検出値の低下量に基づき前記記憶部を参照し、前記マップ情報から前記原料容器内の前記原料の残量を抽出する、
請求項2に記載の原料供給装置。
【請求項4】
前記バイパス経路の流路を開閉するバイパス側バルブを有し、
前記残量推定部は、前記原料容器から前記下流経路への前記原料ガスの流通開始時に、前記バイパス側バルブを開放するとともに前記下流側バルブを開放した際の前記圧力検出値に基づき、前記原料容器内の前記原料の残量を推定する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の原料供給装置。
【請求項5】
前記上流経路の流路を開閉する上流側バルブを有し、
前記残量推定部は、前記原料容器から前記下流経路への前記原料ガスの流通開始時に、前記バイパス側バルブを開放するとともに前記下流側バルブを開放し、かつ前記上流側バルブを開放した際の前記圧力検出値に基づき、前記原料容器内の前記原料の残量を推定する、
請求項4に記載の原料供給装置。
【請求項6】
前記圧力計は、前記上流経路および前記下流経路の各々に設けられ、
前記残量推定部は、前記上流経路の前記圧力計の前記圧力検出値と、前記下流経路の前記圧力計の前記圧力検出値との両方を用いて、前記原料容器内の前記原料の残量を推定する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の原料供給装置。
【請求項7】
前記原料容器を加熱する複数の加熱部を有し、
前記残量推定部は、前記複数の加熱部の一部を選択的に加熱することに基づき、前記原料容器内に複数収容された前記原料の残量のばらつきを推定する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の原料供給装置。
【請求項8】
基板を処理する処理容器に原料ガスを供給する基板処理システムであって、
前記処理容器に接続される供給経路と、
固体または液体の原料を収容した原料容器と、
前記原料容器に接続され、キャリアガスを流通可能な上流経路と、
前記原料容器と前記供給経路との間を接続し、前記原料から生じた原料ガスを含むガスを流通可能な下流経路と、
前記原料容器を介さずに前記上流経路と前記下流経路との間を接続し、前記上流経路から前記下流経路に前記キャリアガスを流通させるバイパス経路と、
前記下流経路の流路を開閉する下流側バルブと、
前記上流経路および前記下流経路のうち少なくとも一方に設けられ、当該上流経路内または当該下流経路内の圧力を検出する圧力計と、
前記圧力計から圧力検出値を取得し、前記原料容器から前記下流経路への前記原料ガスの流通開始時に、前記下流側バルブを開放した際に低下する前記圧力検出値に基づき、前記原料容器内の前記原料の残量を推定するように構成された残量推定部と、を有する、
基板処理システム。
【請求項9】
原料容器に収容された固体または液体の原料の残量を推定する残量推定方法であって
前記原料容器に接続される上流経路にキャリアガスを流通させる工程と、
前記原料容器を介さずに、前記上流経路と、前記原料容器に接続される下流経路との間を接続するバイパス経路を介して、前記上流経路から前記下流経路に前記キャリアガスを流通させる工程と、
前記下流経路に設けられた下流側バルブを開放して、前記原料から生じた原料ガスを含むガスを前記下流経路に流通させる工程と、
前記上流経路および前記下流経路のうち少なくとも一方に設けられた圧力計により、当該上流経路内または当該下流経路内の圧力を検出する工程と、
前記圧力計から圧力検出値を取得し、前記原料容器から前記下流経路への前記原料ガスの流通開始時に、前記下流側バルブが開放した際に低下する前記圧力検出値に基づき、前記原料容器内の前記原料の残量を推定する工程と、を有する、
残量推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原料供給装置、基板処理システムおよび残量推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、原料を収容した原料容器にキャリアガスを流通させて、キャリアガスと原料ガスとを含むガスを原料容器から処理容器に供給する原料供給装置が開示されている。
【0003】
この種の原料容器は、コストや耐久性などの理由によって、原料の残量を検出するための残量センサを設置することが難しい。そのため、従来の原料供給装置は、原料容器が接続されている基板処理装置の処理期間または原料容器の原料ガスを供給する供給回数(プロセス回数)などに基づいて、原料容器内の原料の残量を推定し、原料容器の交換タイミングを報知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007‐162139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、原料容器内の原料の残量を精度よく推定することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、固体または液体の原料を収容した原料容器と、前記原料容器に接続され、キャリアガスを流通可能な上流経路と、前記原料容器に接続され、前記原料から生じた原料ガスを含むガスを流通可能な下流経路と、前記原料容器を介さずに前記上流経路と前記下流経路との間を接続し、前記上流経路から前記下流経路に前記キャリアガスを流通させるバイパス経路と、前記下流経路の流路を開閉する下流側バルブと、前記上流経路および前記下流経路のうち少なくとも一方に設けられ、当該上流経路内または当該下流経路内の圧力を検出する圧力計と、前記圧力計から圧力検出値を取得し、前記原料容器から前記下流経路への前記原料ガスの流通開始時に、前記下流側バルブを開放した際に低下する前記圧力検出値に基づき、前記原料容器内の前記原料の残量を推定するように構成された残量推定部と、を有する、原料供給装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、原料容器内の原料の残量を精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る基板処理システムの構成を例示する概略説明図である。
図2】原料容器およびその周辺の構成を示す概略説明図である。
図3】供給制御部の機能部を示すブロック図である。
図4】原料ガスの供給開始時の動作手順を示す概略説明図である。
図5図5(a)は、第1原料容器の原料ガスの供給開始時における第1上流側圧力計の圧力検出値の変化を示すグラフである。図5(b)は、原料ガスの供給回数に対する第1上流側圧力計の圧力差の変化を近似曲線で示すグラフである。
図6図6(a)は、第1原料容器の原料ガスの供給開始時における第1下流側圧力計の圧力検出値の変化を示すグラフである。図6(b)は、原料ガスの供給回数に対する第1下流側圧力計の圧力差の変化を近似曲線で示すグラフである。
図7】第1原料容器の残量推定方法の処理フローを示すフローチャートである。
図8図8(a)は、変形例に係る原料供給装置の原料容器および加熱部を示す概略説明図である。図8(b)は、加熱部の動作パターンを例示するタイミングチャートである。
図9】変形例に係る残量推定方法の処理フローの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
図1は、一実施形態に係る基板処理システム1の構成を例示する概略説明図である。図1に示すように、基板処理システム1は、基板の一例である半導体ウエハ(以下、単にウエハWという)を処理する基板処理装置10と、処理時に使用するガスを基板処理装置10に供給する原料供給装置20と、を備える。
【0011】
基板処理装置10は、成膜装置などの半導体製造装置である。基板処理装置10は、処理容器11およびメイン制御部15を備える。基板処理装置10は、例えば、成膜装置である場合に、処理容器11内に収容したウエハWに対して成膜処理を施す。
【0012】
処理容器11は、アルミニウム合金などにより形成され、円筒状を呈している。処理容器11の側壁には、当該処理容器11に対してウエハWを搬入出する開口が形成され、開口には、当該開口を開放および密閉するゲートバルブが設けられている(共に不図示)。また、処理容器11の内部には、ウエハWを載置する載置台12が設けられている。載置台12は、ウエハWを固定するチャック装置、およびウエハWの温度を調整する温度調整部を有する(共に不図示)。
【0013】
処理容器11には、当該処理容器11内のガスを排気する排気経路13が接続されている。排気経路13には、圧力調整弁、真空ポンプなどが設けられている(共に不図示)。さらに、処理容器11には、ガスを供給する供給経路14の一端が接続されている。供給経路14の他端は、原料供給装置20に接続されている。すなわち、基板処理装置10の処理容器11と原料供給装置20とは、供給経路14を介して連通している。
【0014】
原料供給装置20は、複数(図1中では2つ)の原料容器21を有する。以下、複数の原料容器21のうち、一方を第1原料容器21Aといい、他方を第2原料容器21Bという。また、原料供給装置20は、各原料容器21を加熱する加熱部30、各原料容器21にキャリアガスを供給するキャリアガス供給機構40および原料供給装置20の各構成を制御する供給制御部90を有する。供給経路14、各原料容器21およびキャリアガス供給機構40は、複数のガス経路50によって相互に接続されている。さらに、原料供給装置20は、原料容器21の周辺のガス経路50に複数の開閉バルブ60を備える。
【0015】
図2は、原料容器21(第1原料容器21A)およびその周辺の構成を示す概略説明図である。図1および図2に示すように、原料容器21は、複数の原料Mを予め収容しており、加熱部30の加熱により原料Mを気化(昇華)可能なタンクを適用することができる。原料容器21内の原料Mは、特に限定されないが、例えば、塩化アルミニウム(AlCl)や塩化銅(AlCu)などの塩化化合物があげられる。あるいは、原料Mは、Si、Hf、Ta、Zr、Al、Ti、Zn、In、Ga、Pなどの有機金属(Metal Organics)、または他の固体原料、あるいは液体原料でもよい。本実施形態では、固体の原料Mとして塩化アルミニウムを用いた場合について説明する。なお、本実施形態における「気化」とは、固体原料が気体に昇華する概念と、液体原料が気体に蒸発する概念とを含む表現である。
【0016】
第1原料容器21Aの原料Mおよび第2原料容器21Bの原料Mは、同じ種類の原料Mであってもよく、異なる種類の原料Mであってもよい。なお、図1では原料容器21が2つの例を示したが、原料供給装置20は、原料容器21を1つ備えた構成でもよく、3つ以上備えた構成でもよい。以下では、第1原料容器21Aおよびその周辺の構成について詳述し、第2原料容器21Bおよびその周辺の構成については、第1原料容器21Aと同様に形成されるため、適宜省略する。
【0017】
図2に示すように、第1原料容器21Aは、鉛直方向に沿って延在する円筒状または角筒状に形成されている。第1原料容器21Aの内部には、鉛直方向に沿って複数のトレイ22が略等間隔に設けられている。各トレイ22には、1つまたは複数の原料Mが載置されている。
【0018】
第1原料容器21Aは、熱伝導性が高い材料(アルミナなど)により形成されている。第1原料容器21Aを加熱する加熱部30(第1加熱部30A)は、この第1原料容器21Aの外方または容器の周壁に設けられる。第1加熱部30Aは、供給制御部90の制御に基づき第1原料容器21A内の原料Mを加熱する。この第1加熱部30Aとしては、例えば、シーズヒータ、ハンドヒータなどの電熱式ヒータを適用することができる。
【0019】
キャリアガス供給機構40は、第1原料容器21Aに接続されるガス経路50(第1ガス経路50A)および第2原料容器21Bに接続されるガス経路50(第2ガス経路50B)に対して、キャリアガスを選択的に供給する。キャリアガスとしては、アルゴンガス(Arガス)、ヘリウムガス(Heガス)、窒素ガス(Nガス)などの不活性ガスがあげられる。例えば、キャリアガス供給機構40は、キャリアガスの供給源と、供給源から送出されるキャリアガスの圧力を低下させるレギュレータと、各ガス経路50の流路を開放または遮断するバルブと、を有する(共に不図示)。
【0020】
第1ガス経路50Aは、キャリアガス供給機構40と第1原料容器21Aとの間を接続する第1上流経路51A、第1原料容器21Aと供給経路14との間を接続する第1下流経路52A、および第1原料容器21Aを迂回する第1バイパス経路53Aを含む。すなわち、原料供給装置20は、第1上流経路51Aによりキャリアガスを第1原料容器21Aに流入させる1次側を形成しており、第1下流経路52Aによりキャリアガスとともに気化した原料ガスを流出させる2次側を形成している。第1バイパス経路53Aは、第1上流経路51Aと第1下流経路52Aとの間をつないでいる。
【0021】
第1原料容器21Aの周辺の開閉バルブ60は、第1上流経路51Aに設けられる第1上流側バルブ61Aと、第1下流経路52Aに設けられる第1下流側バルブ62Aと、第1バイパス経路53Aに設けられる第1バイパス側バルブ63Aと、を含む。第1上流側バルブ61Aは、第1上流経路51Aにおいて第1バイパス経路53Aの接続箇所よりも下流側(第1原料容器21A側)に設けられる。第1下流側バルブ62Aは、第1下流経路52Aにおいて第1バイパス経路53Aの接続箇所よりも上流側(第1原料容器21A側)に設けられる。
【0022】
各開閉バルブ60は、供給制御部90に接続され、供給制御部90の制御に基づき、それぞれの経路の流路を開放(全開)および閉塞(全閉)する。各開閉バルブ60は、開放状態で流路を通してガスを流通させ、閉塞状態で流路内のガスの流通を遮断する。
【0023】
また、第1上流経路51Aは、第1上流側バルブ61Aの他に、マスフローコントローラ54および圧力計70(第1上流側圧力計70A)を有する。なお、第1上流経路51Aは、この他にも安全弁、定圧弁、フィルタ、ヒータなどを備えてもよい。
【0024】
マスフローコントローラ54は、第1上流経路51Aにおいて第1バイパス経路53Aの接続箇所よりも上流側(キャリアガス供給機構40側)に設けられるとともに、供給制御部90に接続されている。マスフローコントローラ54は、供給制御部90の制御に基づき、キャリアガス供給機構40から第1原料容器21Aに供給されるキャリアガスの流量を調整する。
【0025】
第1上流側圧力計70Aは、マスフローコントローラ54と第1上流側バルブ61A(および第1バイパス経路53Aの接続箇所)の間に設けられる。第1上流側圧力計70Aは、第1上流経路51Aを構成する配管の流路の内圧(キャリアガスの圧力)を検出して、圧力検出値の情報を供給制御部90に送信する。第1上流側圧力計70Aは、全圧(静圧、動圧)を検出可能な種々の検出器を適用することができる。なお、第1上流側圧力計70Aは、マスフローコントローラ54よりも上流側の第1上流経路51Aに設けられてもよい。
【0026】
第1下流経路52Aは、第1下流側バルブ62Aの他に、圧力計70(第1下流側圧力計71A)を有する。第1下流側圧力計71Aは、第1下流側バルブ62A(および第1バイパス経路53Aの接続箇所)よりも下流側に設けられる。第1下流側圧力計71Aは、第1下流経路52Aを構成する配管の流路の内圧(キャリアガス、原料ガスの圧力)を検出して、圧力検出値の情報を供給制御部90に送信する。
【0027】
図1に戻り、原料供給装置20のガス経路50は、第1上流経路51Aから分岐する第1分岐路55をさらに有する。第1分岐路55の他端は、第1下流側バルブ62Aと第1下流側圧力計71Aとの間の第1下流経路52Aに接続される。第1分岐路55の途中位置には、マスフローコントローラ56が設けられる。マスフローコントローラ56は、第1分岐路55を介して、第1上流経路51Aから第1下流経路52Aに流すキャリアガスの流量を調整する。
【0028】
そして、原料供給装置20は、第2原料容器21Bの周辺の構成についても、第1原料容器21Aの周辺の構成と同様としている。つまり、加熱部30は、第2原料容器21Bを加熱する第2加熱部30Bを有する。
【0029】
第2ガス経路50Bは、キャリアガス供給機構40と第2原料容器21Bとの間を接続する第2上流経路51B、第2原料容器21Bと供給経路14との間を接続する第2下流経路52B、および第2原料容器21Bを迂回する第2バイパス経路53Bを含む。また、第2原料容器21Bの周辺の開閉バルブ60は、第2上流経路51Bに設けられる第2上流側バルブ61Bと、第2下流経路52Bに設けられる第2下流側バルブ62Bと、第2バイパス経路53Bに設けられる第2バイパス側バルブ63Bと、を含む。
【0030】
第2上流経路51Bは、第2上流側バルブ61Bの他に、マスフローコントローラ57、および第2上流側圧力計70Bを有する。第2下流経路52Bは、第1下流側バルブ62Aの他に、第2下流側圧力計71Bを有する。さらに、原料供給装置20は、第2上流経路51Bから分岐して、第2下流側バルブ62Bと第2下流側圧力計71Bとの間の第2下流経路52Bに接続される第2分岐路58を有する。第2分岐路58の途中位置には、マスフローコントローラ59が設けられている。
【0031】
以上の基板処理装置10と原料供給装置20とを有する基板処理システム1は、基板処理装置10のメイン制御部15により、システム全体の動作を制御する。原料供給装置20の供給制御部90は、適宜の通信手段16を介してメイン制御部15に接続され、メイン制御部15の指令に基づき動作して、原料供給装置20の動作を制御する。通信手段16は、有線通信または無線通信のうちいずれを採ってもよく、また制御部同士を直接接続する構成でもよく、ローカルエリアネットワーク(LAN)などのネットワークを利用した構成でもよい。なお、基板処理システム1は、メイン制御部15が供給制御部90の機能を有し、供給制御部90を備えない構成でもよい。
【0032】
メイン制御部15は、基板処理システム1全体を制御するコントローラ本体17と、コントローラ本体17に接続されるユーザインタフェース18と、を有する。コントローラ本体17及び供給制御部90は、コンピュータや制御用回路基板などにより構成される。
【0033】
例えば、コントローラ本体17は、プロセッサ、メモリ、入出力インタフェースおよび電子回路を有する(共に不図示)。コントローラ本体17は、メモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することで、基板処理システム1の各構成との間で各種信号を送受信し、基板処理を実施する。
【0034】
ユーザインタフェース18は、例えば、ユーザがコマンドの入力操作等を行うキーボード、基板処理システム1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイを適用することができる。あるいは、ユーザインタフェース18は、タッチパネル、マウス、マイク、スピーカなどの機器を適用してもよい。
【0035】
また、供給制御部90は、1以上のプロセッサ91、メモリ92、図示しない入出力インタフェースおよび電子回路を有する。プロセッサ91は、CPU、ASIC、FPGA、複数のディスクリート半導体からなる回路などのうち1つまたは複数を組み合わせたものである。メモリ92は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ(例えば、コンパクトディスク、DVD、ハードディスク、フラッシュメモリ等)を含み、原料供給装置20を動作させるプログラム、プロセス条件などのレシピを記憶している。
【0036】
図3は、供給制御部90の機能部を示すブロック図である。供給制御部90は、メモリ92に記憶されたプログラムやレシピをプロセッサ91が実行することで、図3に示すように、供給動作制御部95、圧力取得部96、残量推定部97を形成する。
【0037】
供給動作制御部95は、コントローラ本体17の供給指令を受信することに基づき動作して、原料供給装置20の各構成との間で各種信号を送受信し、基板処理装置10に対してガスを供給する。圧力取得部96は、圧力計70(第1上流側圧力計70A、第2上流側圧力計70B、第1下流側圧力計71A、第2下流側圧力計71B)による圧力検出を行い、その圧力検出値を取得し、メモリ92に記憶する。
【0038】
そして、残量推定部97は、原料容器21内の原料Mの残量を推定する残量推定方法を行う。すなわち、供給制御部90のプロセッサ91は、原料容器21内の原料Mの残量を推定する機能を有する。なお、基板処理システム1は、メイン制御部15に残量推定部97を備えてもよい。
【0039】
第1原料容器21A内の原料Mの残量を推定する際に、残量推定部97は、圧力取得部96で取得した第1上流側圧力計70Aの圧力検出値または第1下流側圧力計71Aの圧力検出値を利用する。第1上流側圧力計70Aおよび第1下流側圧力計71Aは、ガス経路50の圧力を監視するために通常設けられる検出器を利用できるので、原料Mの残量を推定するための構成を別に設ける必要がなくなる。残量推定部97は、原料ガスの供給開始時に、第1下流側バルブ62Aが開放した際に低下する圧力検出値に基づいて第1原料容器21Aの原料Mの残量を推定する。具体的な原料Mの残量推定方法については後に詳述する。なお、残量推定部97は、第2原料容器21B内の原料Mの残量も、第1原料容器21Aの残量推定方法と同様の方法によって推定可能なことは勿論である。
【0040】
本実施形態に係る基板処理システム1および原料供給装置20は、基本的には以上のように構成され、以下、その動作について説明する。
【0041】
基板処理装置10のメイン制御部15は、ウエハWを処理する際に適宜のタイミングで(例えば、載置台12へのウエハWの載置が終了し、処理容器11内を減圧した後に)、処理容器11への原料ガスの供給指令を供給制御部90に送信する。この供給指令を受信した供給制御部90は、供給動作制御部95により原料供給装置20の各構成を制御して原料ガスの供給を開始する。
【0042】
図2および図3に示すように、供給動作制御部95は、原料ガスの供給開始時(または原料供給装置20の起動後)に、第1加熱部30Aおよび第2加熱部30Bを動作して、第1原料容器21Aおよび第2原料容器21Bを加熱する。これにより、第1原料容器21A内の原料Mが気化可能な温度に昇温するとともに、第2原料容器21B内の原料Mが気化可能な温度に昇温する。
【0043】
図4は、原料ガスの供給開始時の動作手順を示す概略説明図である。図4(a)は供給開始前の状態を示し、図4(b)は供給開始後の第1状態を示し、図4(c)は第1状態後の第2状態を示し、図4(d)は第2状態後の第3状態を示し、図4(e)は、第3状態後に原料ガスを継続的に供給する第4状態を示す。図4に示すように、供給動作制御部95は、第1原料容器21Aから原料ガスを供給する際に、3つの開閉バルブ60を開閉するタイミングを調整する。
【0044】
具体的には、図4(a)に示す原料ガスの供給開始前において、原料供給装置20は、第1上流側バルブ61A、第2上流側バルブ61B、第1バイパス側バルブ63Aを閉塞している。また、供給動作制御部95は、キャリアガス供給機構40から第1ガス経路50Aへのキャリアガスの供給を停止している。原料ガスの供給開始の指令を受けると、供給動作制御部95は、キャリアガス供給機構40から第1ガス経路50Aに対するキャリアガスの供給を開始する。キャリアガス供給機構40から供給されたキャリアガスは、第1上流経路51Aから第1分岐路55を流通する。このキャリアガスは、第1分岐路55のマスフローコントローラ56により流量が調整され、第1分岐路55から第1下流経路52Aに流入した後、供給経路14を介して処理容器11に供給される。
【0045】
そしてキャリアガスが第1分岐路55を流通した状態で、供給動作制御部95は、図4(b)に示すように、先に第1バイパス側バルブ63Aのみを開放する。これにより、キャリアガス供給機構40から供給されたキャリアガスは、各マスフローコントローラ54、56の制御下に、第1上流経路51Aと第1分岐路55とに分配される。第1上流経路51Aに流入したキャリアガスは、第1上流経路51Aから第1バイパス経路53Aを通過して第1下流経路52Aに流入する。さらに、キャリアガスは、第1下流経路52Aおいて第1分岐路55のキャリアガスと合流して供給経路14に向かい、供給経路14を介して処理容器11に供給される。供給動作制御部95は、この第1バイパス側バルブ63Aのみを開放した第1状態を、所定期間(例えば、1秒間)にわたって実施する。
【0046】
その後、図4(c)に示すように、供給動作制御部95は、キャリアガス供給機構40から第1ガス経路50Aへのキャリアガスの供給および第1バイパス側バルブ63Aの開放を継続しつつ、第1下流側バルブ62Aを開放する。これにより、第1原料容器21Aにおいて原料Mから気化した原料ガスが第1下流経路52Aに流出し、第1下流経路52Aを流通するキャリアガスに混入する。この混合ガスは、供給経路14を介して処理容器11に供給される。また、第1原料容器21Aの内圧は、気化した原料ガスの流出に伴って減少する。供給動作制御部95は、この第1下流側バルブ62Aおよび第1バイパス側バルブ63Aを開放した第2状態を、所定期間(例えば、1秒間)にわたって実施する。
【0047】
また図4(d)に示すように、供給動作制御部95は、キャリアガス供給機構40から第1ガス経路50Aへのキャリアガスの供給、第1下流側バルブ62Aおよび第1バイパス側バルブ63Aの開放を継続しつつ、第1上流側バルブ61Aを開放する。これにより、第1上流経路51Aから第1原料容器21Aにキャリアガスの一部が向かうとともに、第1上流経路51Aから第1バイパス経路53Aを介して第1下流経路52Aにキャリアガスの他部が向かう。つまり、第1原料容器21Aの圧力に応じてキャリアガスが分圧される。
【0048】
第1原料容器21Aに流入したキャリアガスは、原料ガスと混合した混合ガスとなって第1下流経路52Aに流出し、さらに第1下流経路52Aにおいてキャリアガスに混入する。そして混合ガスは、供給経路14を介して処理容器11に供給される。供給動作制御部95は、この第1上流側バルブ61A、第1下流側バルブ62Aおよび第1バイパス側バルブ63Aを開放した第3状態を、所定期間(例えば、1秒間)にわたって実施する。
【0049】
また図4(e)に示すように、供給動作制御部95は、キャリアガス供給機構40から第1ガス経路50Aへのキャリアガスの供給、第1上流側バルブ61Aおよび第1下流側バルブ62Aの開放を継続しつつ、第1バイパス側バルブ63Aを閉塞する。これにより、第1上流経路51Aのキャリアガスが第1原料容器21Aに全て流入して、第1原料容器21A内の原料ガスと混合する。この混合ガスは、第1原料容器21Aから第1下流経路52Aに流出し、第1下流経路52Aおよび供給経路14を介して処理容器11に供給される。供給動作制御部95は、この第1上流側バルブ61Aおよび第1下流側バルブ62Aを開放した第4状態を、ウエハWを処理する処理期間にわたって実施する。
【0050】
以上の各開閉バルブ60の制御によって、原料供給装置20は、原料ガスの供給開始時に、第1原料容器21A内または第1ガス経路50A内の急激な圧力上昇や圧力低下を抑えることができる。その結果、原料供給装置20は、キャリアガスおよび原料ガスを処理容器11に安定して供給することが可能となる。
【0051】
次に、第1上流側圧力計70Aの圧力検出値または第1下流側圧力計71Aの圧力検出値を用いた原料容器21内の原料Mの残量推定方法について説明する。図5(a)は、第1原料容器21Aの原料ガスの供給開始時における第1上流側圧力計70Aの圧力検出値の変化を示すグラフであり、横軸は時間、縦軸は第1上流側圧力計70Aの圧力検出値である。
【0052】
図5(a)のグラフに示される複数の圧力検出値の曲線は、原料供給装置20を動作して第1原料容器21Aから処理容器11に原料ガスを供給する供給回数がそれぞれ異なっている。すなわち、太い曲線から細い曲線になるにつれて、供給回数が増加している。詳細には、最も太い曲線は、供給回数が364回であり、最も細い曲線は、供給回数が424回である。他の曲線は、364回と424回との間の適宜の供給回数を抽出したものである。
【0053】
また図5(a)のグラフにおいて、開始時点t0は、図4(a)に示す供給開始前から図4(b)に示す第1状態に切り替わったタイミング(第1状態の開始タイミング)である。時点t1は、開始時点t0から1秒後であり、第1状態から図4(c)に示す第2状態に切り替わったタイミング(第2状態の開始タイミング)である。時点t2は、開始時点t0から2秒後であり、第2状態から図4(d)に示す第3状態に切り替わったタイミング(第3状態の開始タイミング)である。時点t3は、開始時点t0から3秒後であり、第3状態から図4(e)に示す第4状態に切り替わったタイミング(第4状態の開始タイミング)である。
【0054】
図5(a)に示すように、第1上流側圧力計70Aの圧力検出値は、供給開始後の開始時点t0から時点t3にわたって低下し、時点t3前後に最低値となった後に、上昇に転じている。さらに時点t3以降において、第1上流側圧力計70Aの圧力検出値は、一旦上昇して下降した後(オーバシュート後)に徐々に上昇していく。
【0055】
また、第1上流側圧力計70Aの圧力検出値は、第1原料容器21Aから原料ガスを供給する供給回数が増加する毎に少しずつ上昇している。これは、各マスフローコントローラ54、56により、原料ガスの供給回数が増える度に、第1分岐路55に流通するキャリアガスの流量と相対的に、第1上流経路51Aに流通するキャリアガスの流量を増やしているためである。これにより、第1原料容器21A内の原料の残量が低下しても、第1原料容器21Aから流出する原料ガスの供給量が確保される。
【0056】
そして、第1上流側圧力計70Aの圧力検出値は、開始時点t0から時点t3までの間で低下しているが、グラフでは、この圧力検出値の低下量(絶対値)は原料ガスの供給回数が多くなるにつれて、大きくなっていることが分かる。つまり、供給回数が少ない濃色の曲線の低下量が小さいのに対して、供給回数が多い淡色の曲線の圧力検出値の低下が大きくなっている(図5(a)中の矢印参照)。原料ガスの供給回数が少ない場合とは、原料Mの残量が多い状態であるといえ、原料ガスの供給回数が多い場合とは、原料Mの残量が少ない状態であるといえる。したがって、残量推定部97は、第1原料容器21Aからの原料ガスの供給開始時に、第1上流側圧力計70Aの圧力検出値の低下傾向を監視することで、第1原料容器21A内の原料Mの残量を推定することができる。
【0057】
例えば、残量推定部97は、開始時点t0の第1上流側圧力計70Aの圧力検出値と、時点t2の第1上流側圧力計70Aの圧力検出値を抽出し、その差分である圧力差を算出する。開始時点t0の圧力検出値と時点t2の圧力検出値の圧力差は、供給開始後から2秒経過するまで(図4(e)の開閉バルブ60の開放状態となるまでの3秒前から1秒前)における圧力検出値の負の低下値を示している。この負の低下値の絶対値が上記の低下量に相当する。そして、圧力差である負の低下値が大きい(低下量が小さい)場合は、第1原料容器21Aの原料Mの残量が多いことなり、圧力差である負の低下値が小さい(低下量が大きい)場合は、第1原料容器21Aの原料Mの残量が少ないことになる。よって、残量推定部97は、算出した圧力差が大きい場合に、第1原料容器21Aの原料Mの残量が多いことを推定でき、算出した圧力差が小さい場合に、第1原料容器21Aの原料Mの残量が少ないことを推定できる。
【0058】
図5(b)は、原料ガスの供給回数に対する第1上流側圧力計70Aの圧力差の変化を近似曲線で示すグラフであり、横軸は原料ガスの供給回数、縦軸は圧力差である。図5(b)に示すように、第1上流側圧力計70Aの圧力差の近似曲線は、原料ガスの供給回数が少ない場合に緩やかに低下し、原料ガスの供給回数が多い場合に大きく低下している。これは、第1原料容器21A内の原料Mの残量の低下に伴って原料M自体の表面積が小さくなることで、原料Mから気化する原料ガスが減り、原料容器21内の内圧の低下をもたらすためと考えられる。
【0059】
したがって残量推定方法では、実験やシミュレーションなどの実施により、図5(b)に示すような近似曲線を得て、この近似曲線に基づきマップ情報IA(図3参照)または関数を作成して残量推定部97の記憶部97a(メモリ92)に記憶しておく。例えば、マップ情報IAは、圧力検出値の圧力差と、第1原料容器21A内の原料Mの残量との関係を、原料Mの重量や体積などにより対応付けしたものである。第1原料容器21Aの原料Mの気化量(昇華量)は、原料Mの残量だけではなく、気化時間や第1加熱部30Aの温度の影響を受けるため、マップ情報は、気化時間や温度の条件が統制されたデータを基に作成する。あるいは、残量推定部97は、原料容器21の複数の温度帯や気化時間毎に複数のマップ情報IAを備えてもよい。このように用意したマップ情報IAは、装置や原料M、原料容器21の部品構成などが変わらない限り、使い回すことができる。
【0060】
ただし、原料Mの残量を推定する際に、供給制御部90は、原料Mを気化させる気化条件(第1原料容器21Aの圧力、温度)が同一となるように制御する。例えば、気化条件を同一にする方法として、供給動作制御部95は、推定前に、第1原料容器21Aの周辺の第1上流側バルブ61Aや第1下流側バルブ62Aを開放することで、第1原料容器21A内の原料Mの気化状態をリセットする方法を採るとよい。なお、供給制御部90は、基板処理システム1が設置される工場の環境などの要因により、気化条件が同一とならない場合は残量推定方法を非実施とする判断を行うとよい。
【0061】
残量推定部97は、原料ガスの供給開始時における第1上流側圧力計70Aの圧力検出値の圧力差を算出すると、保有しているマップ情報IAを参照して、第1原料容器21A内の原料Mの残量を得る。なお、図5(a)のグラフに示すように、第1上流側圧力計70Aの圧力検出値は、供給回数の変化以外にも誤差が生じる。このため、残量推定部97は、現在の供給回数から所定回数前までの圧力検出値の平均値(移動平均)を用いて、第1原料容器21A内の原料Mの残量を求めてもよい。
【0062】
図6(a)は、第1原料容器21Aの原料ガスの供給開始時における第1下流側圧力計71Aの圧力検出値の変化を示すグラフであり、横軸は時間、縦軸は第1下流側圧力計71Aの圧力検出値である。なお、図6(a)のグラフに示される複数の圧力検出値の曲線も、図5(a)のグラフと同様に、第1原料容器21Aから処理容器11に原料ガスを供給する供給回数がそれぞれ異なっている。すなわち、太い曲線から細い曲線になるにつれて、供給回数が増加している。また、図6(a)のグラフにおいて、開始時点t0から時点t3は、供給開始前から第4状態までの各開閉バルブ60の動作を行っている過程である。
【0063】
図6(a)に示すように、第1下流側圧力計71Aの圧力検出値は、供給開始後の開始時点t0から時点t3にわたって低下し、時点t3または時点t3から数秒後に最低値となった後に、急激に上昇に転じている。さらに開始時点t0から約8秒程度経過すると、第1下流側圧力計71Aの圧力検出値は、緩やかに上昇していく。なお、第1下流側圧力計71Aの圧力検出値は、開始時点t0から8秒経過すると、原料ガスの供給回数に関わらず略同じ値で推移している。第1下流側圧力計71Aは、第1下流経路52Aにおいて第1分岐路55の合流箇所よりも下流側に位置しており、第1上流経路51Aと第1分岐路55とに分配されたキャリアガスが合流して、圧力の安定化が図られるためである。
【0064】
そして、開始時点t0から時点t3までの間において、第1下流側圧力計71Aの圧力検出値の低下量(絶対値)は、やはり原料ガスの供給回数が多くなるにつれて、大きくなっていることが分かる。つまり、供給回数が少ない太い曲線の低下量が小さいのに対して、供給回数が多い細い曲線の圧力検出値の低下量が大きくなっている(図6(a)の矢印参照)。したがって、残量推定部97は、第1原料容器21Aからの原料ガスの供給開始時に、第1下流側圧力計71Aの圧力検出値の低下傾向を監視することでも、第1原料容器21A内の原料Mの残量を推定することができる。
【0065】
例えば第1上流側圧力計70Aの圧力検出値の場合と同様に、残量推定部97は、開始時点t0の第1下流側圧力計71Aの圧力検出値と、時点t2の第1下流側圧力計71Aの圧力検出値を抽出し、その差分である圧力差(負の低下値)を算出する。この圧力差が大きい場合は、第1原料容器21Aの原料Mの残量が多いことなり、この圧力差が小さい場合は、第1原料容器21Aの原料Mの残量が少ないことになる。よって、残量推定部97は、算出した圧力差が大きい場合に、第1原料容器21Aの原料Mの残量が多いことを推定でき、算出した圧力差が小さい場合に、第1原料容器21Aの原料Mの残量が少ないことを推定できる。
【0066】
図6(b)は、原料ガスの供給回数に対する第1下流側圧力計71Aの圧力差の変化を近似曲線で示すグラフであり、横軸は原料ガスの供給回数、縦軸は圧力差である。図6(b)に示すように、第1下流側圧力計71Aの圧力差の近似曲線は、やはり原料ガスの供給回数が少ない場合に緩やかに低下し、原料ガスの供給回数が多い場合に大きく低下している。したがって、残量推定部97は、実験やシミュレーションなどの実施により、図6(b)に示すような近似曲線を得て、この近似曲線に基づきマップ情報IB(図3参照)または関数を予め保有しておく。そして、残量推定部97は、原料ガスの供給開始時における第1下流側圧力計71Aの圧力検出値の圧力差を算出すると、保有しているマップ情報IBを参照して、第1原料容器21A内の原料Mの残量を得ることができる。
【0067】
なお、第1下流側圧力計71Aの圧力検出値も、供給回数の変化以外に誤差が生じる。このため、残量推定部97は、現在の供給回数から所定回数前までの圧力検出値の平均値(移動平均)を用いて、第1原料容器21A内の原料Mの残量を求めてもよい。
【0068】
残量推定部97は、第1上流側圧力計70Aの圧力検出値の圧力差および第1下流側圧力計71Aの圧力検出値の圧力差のうちいずれか一方のみを用いて第1原料容器21A内の原料Mの残量を推定できるが、好ましくは、両方を用いるとよい。例えば、残量推定部97は、第1上流側圧力計70Aの圧力検出値の圧力差と、第1下流側圧力計71Aの圧力検出値の圧力差との平均値を算出し、平均値に対応したマップ情報(不図示)を参照することで、第1原料容器21A内の原料Mの残量を推定できる。あるいは、残量推定部97は、第1上流側圧力計70Aの圧力検出値の圧力差および第1下流側圧力計71Aの圧力検出値の圧力差のうち一方を用いて第1原料容器21A内の原料Mの残量を求めた後、他方を用いて求めた残量を補正してもよい。
【0069】
図7は、第1原料容器の残量推定方法の処理フローを示すフローチャートである。以下図7を参照して、基板処理システム1の上記の処理をまとめた第1原料容器21Aの残量推定方法の処理フローについて説明する。
【0070】
原料供給装置20の供給制御部90は、残量推定方法の実施において、供給動作制御部95により第1原料容器21Aから原料ガスの供給開始の処理を行う。供給開始の処理において、供給動作制御部95は、第1加熱部30Aを動作させて第1原料容器21Aを所定の温度に加熱する(ステップS1)。
【0071】
第1原料容器21Aを所定の温度に加熱した状態で、供給動作制御部95は、キャリアガス供給機構40から第1原料容器21Aに接続される第1上流経路51Aにキャリアガスを供給(流通)させる(ステップS2)。この際、供給動作制御部95は、マスフローコントローラ54、56により第1原料容器21Aに向かうキャリアガスの流量を調整する。
【0072】
また、キャリアガスの流通に伴って、圧力取得部96は、第1上流側圧力計70Aにより第1上流経路51Aの圧力を検出するとともに、第1下流側圧力計71Aにより第1下流経路52Aの圧力を検出する(ステップS3)。そして圧力取得部96は、原料ガスの供給開始の処理において、第1上流側圧力計70Aおよび第1下流側圧力計71Aから継続的に圧力検出値を取得して、メモリ92に蓄積していく。
【0073】
供給動作制御部95は、第1バイパス側バルブ63Aを開放することで、第1原料容器21Aを介さずに、第1バイパス経路53Aにキャリアガスを流通させる(ステップS4:図4(b)も参照)。これにより、図5(a)や図6(a)に示すように、開始時点t0以降において第1上流側圧力計70Aの圧力検出値および第1下流側圧力計71Aの圧力検出値が低下していく。
【0074】
さらに、供給動作制御部95は、第1下流側バルブ62Aを開放して、第1原料容器21Aの原料Mから生じた原料ガスを含むガスを第1下流経路52Aに流通させる(ステップS5:図4(c)も参照)。第1原料容器21Aから原料ガスが流出することで、図5(a)や図6(a)に示す時点t1以降においても、第1上流側圧力計70Aの圧力検出値および第1下流側圧力計71Aの圧力検出値が低下していく。
【0075】
そして、残量推定部97は、第1下流側バルブ62Aが開放した際に低下する圧力検出値に基づき、第1原料容器21A内の原料Mの残量を推定する(ステップS6)。この際、残量推定部97は、供給動作制御部95から各開閉バルブ60の開閉タイミングの情報を取得するとともに、メモリ92に蓄積された第1上流側圧力計70Aの圧力検出値から2つの圧力検出値を抽出する。例えば、残量推定部97は、開始時点t0の第1上流側圧力計70Aの圧力検出値と、時点t2の第1上流側圧力計70Aの圧力検出値とを抽出し、原料ガスの供給開始時における第1上流側圧力計70Aの圧力検出値の圧力差を算出する。また、残量推定部97は、算出した圧力差とマップ情報IAとに基づき、第1原料容器21Aの残量を求める。あるいは、残量推定部97は、開始時点t0の第1下流側圧力計71Aの圧力検出値と、時点t2の第1下流側圧力計71Aの圧力検出値とを抽出し、原料ガスの供給開始時における第1下流側圧力計71Aの圧力検出値の圧力差を算出する。また、残量推定部97は、算出した圧力差とマップ情報IBとに基づき、第1原料容器21Aの残量を求める。残量推定部97は、第1上流側圧力計70Aの圧力検出値に基づく残量と、第1下流側圧力計71Aの圧力検出値に基づく残量とを求めた場合に、これらを適宜演算することにより第1原料容器21A内の原料Mの残量を得る。
【0076】
その後、残量推定部97は、演算した第1原料容器21A内の原料Mの残量を、ユーザインタフェース18を介してユーザに報知する(ステップS7)。これにより、基板処理システム1のユーザは、第1原料容器21A内の原料Mの残量を認識することができ、第1原料容器21Aの交換タイミングを計ることが可能となる。なお、残量推定部97は、演算した第1原料容器21A内の原料Mの残量に基づき、第1原料容器21Aの交換タイミングを報知する構成でもよい。
【0077】
そして、残量推定部97は、第2原料容器21B内の原料Mの残量についても、第1原料容器21A内の原料Mの残量推定方法と同じ方法を採ることができる。すなわち、残量推定部97は、第2上流側圧力計70Bの圧力検出値または第2下流側圧力計71Bの圧力検出値に基づき、第2原料容器21B内の原料Mの残量を推定できる。
【0078】
以上のように、原料供給装置20および基板処理システム1は、原料容器21の周辺の圧力計70を使って原料容器21内の原料Mの残量を推定する。これにより、従来の使用時間やプロセス回数を使った間接的な推定ではない、原料Mの残量と高い精度で相関している指標によって、内部が見えない原料容器21内の原料Mの残量を直接的に監視することが可能となる。
【0079】
なお、本実施形態に係る原料供給装置20、基板処理システム1および残量推定方法は、上記の実施形態に限定されず、種々の変形例をとり得る。例えば、上記の実施形態に係る残量推定方法では、原料Mの残量を推定する指標として、開始時点t0から時点t2の圧力差を算出した。しかしながら、残量推定方法は、開始時点t0から時点t3の圧力差を用いてもよく、また時点t1から時点t2の圧力差、あるいは時点t1から時点t3の圧力差を用いてもよい。
【0080】
図8(a)は、変形例に係る原料供給装置20の原料容器21および加熱部30を示す概略説明図であり、図8(b)は、加熱部30の動作パターンを例示するタイミングチャートである。図8(a)に示すように、原料供給装置20は、原料容器21(第1原料容器21A、第2原料容器21B)内において鉛直方向に配置された複数のトレイ22に応じて、加熱部30を複数に分割した構成としてもよい。例えば、加熱部30は、上部ヒータ32、中央部ヒータ33および下部ヒータ34を備える。各ヒータ(上部ヒータ32、中央部ヒータ33および下部ヒータ34)は、鉛直方向の同じ高さ領域に配置されたトレイ22の原料Mを効果的に加熱することができる。
【0081】
そして原料供給装置20の供給制御部90(供給動作制御部95)は、上部ヒータ32、中央部ヒータ33および下部ヒータ34の各々を個別に制御する。一例として、図8(b)に示すように、供給動作制御部95は、上部ヒータ32を所定の設定温度で動作させ、その後に中央部ヒータ33を所定の設定温度で動作させ、さらにその後に下部ヒータ34を所定の設定温度で動作させる。なお、上部ヒータ32、中央部ヒータ33および下部ヒータ34は、いずれか2つまたは3つ全部が同時に動作(加熱)してよいことは勿論である。
【0082】
また、供給制御部90の残量推定部97は、上部ヒータ32、中央部ヒータ33および下部ヒータ34を個別に動作させた状態で、原料容器21からの原料ガスの供給開始時に圧力検出値の低下を見ることで、各トレイ22の原料Mの残量のばらつきを推定できる。すなわち、原料容器21は、個体差や配管のレイアウトなどにより鉛直方向のトレイ22毎に原料Mの消費量がばらつくことがある。このばらつきにより、例えばあるトレイ22の原料Mの残量がゼロに近くになると、他のトレイ22の原料Mが多く残っていても、原料Mの気化速度が下がってしまい、原料ガスの供給におけるプロセスの均一性が保てなくなってしまう。
【0083】
例えば、残量推定部97は、上部ヒータ32のみを加熱した際の圧力検出値の低下、中央部ヒータ33のみを加熱した際の圧力検出値の低下、下部ヒータ34のみを加熱した際の圧力検出値の低下に基づき、鉛直方向のトレイ22毎の原料Mの残量を推定する。推定するトレイ22毎の原料Mの残量は、相互のトレイ22間の相対値でもよく、絶対値でもよい。あるいは、残量推定部97は、上部ヒータ32と中央部ヒータ33の加熱時、上部ヒータ32と下部ヒータ34の加熱時、中央部ヒータ33と下部ヒータ34の加熱時における、圧力検出値の低下に基づき各トレイ22の原料Mの残量を推定してもよい。
【0084】
そして、供給制御部90は、残量推定部97で推定した原料Mの残量のばらつきに応じて、その後の基板処理中の加熱部30の加熱量にフィードバックする。これにより、加熱部30は、上部ヒータ32、中央部ヒータ33および下部ヒータ34の各加熱量を個別に調整する。結果的に、原料供給装置20は、原料Mの残量のばらつきを減らし、原料容器21内の全てのトレイ22において、原料Mの残量がゼロ付近になるまで原料ガスの供給性能を維持できるようになる。
【0085】
図9は、変形例に係る残量推定方法の処理フローの一例を示すフローチャートである。図9に示すように、原料Mのばらつきを推定する残量推定方法において、供給動作制御部95は、まず上部ヒータ32のみにより第1原料容器21Aを加熱する(ステップS11)。そして残量推定部97は、この際の第1上流側圧力計70Aの圧力検出値、または第1下流側圧力計71Aの圧力検出値に基づき、第1原料容器21A内の原料Mの残量を推定する(ステップS12)。第1原料容器21A内の原料Mの残量を推定では、図7の処理フローと同様の処理を行えばよい。ステップS12において算出した第1原料容器21Aの原料Mの残量は、主に上側のトレイ22の原料Mから生じた原料ガスの流出量を反映する。ただし、他のトレイ22の原料Mからも原料ガスが流出している。
【0086】
そのため、次に基板処理装置10に原料ガスを供給する回において、供給動作制御部95は、中央部ヒータ33のみにより第1原料容器21Aを加熱する(ステップS13)。そして残量推定部97は、この際の第1上流側圧力計70Aの圧力検出値、または第1下流側圧力計71Aの圧力検出値に基づき、第1原料容器21A内の原料Mの残量を推定する(ステップS14)。ステップS14において算出した第1原料容器21Aの原料Mの残量は、主に中央側のトレイ22の原料Mから生じた原料ガスの流出量を反映する。ただし他のトレイ22の原料Mからも原料ガスが流出している。
【0087】
さらに、基板処理装置10に原料ガスを供給する回において、供給動作制御部95は、下部ヒータ34のみにより第1原料容器21Aを加熱する(ステップS15)。そして残量推定部97は、この際の第1上流側圧力計70Aの圧力検出値、または第1下流側圧力計71Aの圧力検出値に基づき、第1原料容器21A内の原料Mの残量を推定する(ステップS16)。ステップS16において算出した第1原料容器21Aの原料Mの残量は、主に下側のトレイ22の原料Mから生じた原料ガスの流出量を反映する。ただし他のトレイ22の原料Mからも原料ガスが流出している。
【0088】
そして、残量推定部97は、上部ヒータ32の加熱時の残量、中央部ヒータ33の加熱時の残量、および下部ヒータ34の加熱時の残量を用いて、第1原料容器21A内の原料Mの残量のばらつきを演算する(ステップS17)。例えば、残量推定部97は、上部ヒータ32の加熱時の残量をX、中央部ヒータ33の加熱時の残量をY、下部ヒータ34の加熱時の残量をZとし、また予め保有している各ヒータの加熱温度、原料Mに対する影響度などパラメータを用いる。そして、残量推定部97は、適宜の演算式(一例として、連立方程式)により原料Mの残量ばらつきを推定する。
【0089】
そして、供給制御部90は、原料Mの残量のばらつきの推定結果に基づき、第1原料容器21Aから処理容器11への原料ガスの供給時に、上部ヒータ32、中央部ヒータ33、下部ヒータ34の動作制御を行う(ステップS18)。例えば、供給動作制御部95は、推定結果を用いて各ヒータの加熱タイミング、加熱期間、温度などを個別に調整する。これにより、原料供給装置20は、第1原料容器21Aの原料Mの残量を略均一化させることができる。なお、原料供給装置20は、第2原料容器21Bについても同様の処理を行い得ることは勿論である。
【0090】
以上の実施形態で説明した本開示の技術的思想及び効果について以下に記載する。
【0091】
本開示の第1の態様に係る原料供給装置20は、固体または液体の原料Mを収容した原料容器21と、原料容器21に接続され、キャリアガスを流通可能な上流経路(第1上流経路51A)と、原料容器21に接続され、原料Mから生じた原料ガスを含むガスを流通可能な下流経路(第1下流経路52A)と、原料容器21を介さずに上流経路と下流経路との間を接続し、上流経路から下流経路にキャリアガスを流通させるバイパス経路(第1バイパス経路53A)と、下流経路の流路を開閉する下流側バルブ(第1下流側バルブ62A)と、上流経路および下流経路のうち少なくとも一方に設けられ、当該上流経路内または当該下流経路内の圧力を検出する圧力計70と、圧力計70から圧力検出値を取得し、原料容器21から下流経路への原料ガスの流通開始時に、下流側バルブを開放した際に低下する圧力検出値に基づき、原料容器21内の原料Mの残量を推定するように構成された残量推定部97と、を有する。
【0092】
上記の原料供給装置20は、原料ガスの流通開始時に圧力計70の圧力検出値を用いることで、原料容器21内の原料Mの状態をより直接的に捉えることが可能となり、原料容器21内の原料Mの残量を精度よく推定できる。これにより、原料供給装置20は、原料容器21内の原料Mを限界近くまで使用して、原料容器21の交換回数や廃棄原料を削減して、ランニングコストを低減できる。さらに、原料容器21の周辺において一般的に適用される圧力計70を利用することが可能であり、原料供給装置20は、原料容器21に残量センサや濃度センサを設置せずに済み、コストを抑制できる。また、原料供給装置20は、バイパス経路(第1バイパス経路53A)を介して下流経路(第1下流経路52A)にキャリアガスを流通させることで、上流経路(第1上流経路51A)や下流経路の圧力を安定化させることができる。この状態で、下流側バルブ(第1下流側バルブ62A)の開放時の圧力検出値を監視することで、圧力低下を精度よく捉えることが可能となる。
【0093】
また、残量推定部97は、圧力検出値の低下量を演算し、低下量が大きくなる程、原料容器21内の原料Mの残量が少ないと推定する。これにより、原料供給装置20は、圧力検出値の低下量が大きくなった場合に原料Mの残量が少ないことを認識することが可能となる。
【0094】
また、圧力検出値の低下量と原料容器21内の原料Mの残量とを対応付けたマップ情報IA、IBが記憶部97aに記憶され、残量推定部97は、演算した圧力検出値の低下量に基づき記憶部97aを参照し、マップ情報IA、IBから原料容器21内の原料Mの残量を抽出する。これにより、残量推定部は、圧力検出値の低下量に応じて原料容器21内の原料Mの残量が簡単に得られる。
【0095】
また、バイパス経路(第1バイパス経路53A)の流路を開閉するバイパス側バルブ(第1バイパス側バルブ63A)を有し、残量推定部97は、原料容器21から下流経路(第1下流経路52A)への原料ガスの流通開始時に、バイパス側バルブを開放するとともに下流側バルブ(第1下流側バルブ62A)を開放した際の圧力検出値に基づき、原料容器21内の原料Mの残量を推定する。原料供給装置20は、バイパス側バルブを開放してバイパス経路にキャリアガスを流通させることにより、キャリアガスが原料容器21に流入することによる原料容器21の急激な圧力上昇を抑制できる。そして、残量推定部は、バイパス側バルブおよび下流側バルブの両方を開放した際の圧力検出値の低下に基づき、原料容器21内の原料Mの残量を安定して推定することが可能となる。
【0096】
また、上流経路(第1上流経路51A)の流路を開閉する上流側バルブ(第1上流側バルブ61A)を有し、残量推定部97は、原料容器21から下流経路(第1下流経路52A)への原料ガスの流通開始時に、バイパス側バルブ(第1バイパス側バルブ63A)を開放するとともに下流側バルブ(第1下流側バルブ62A)を開放し、かつ上流側バルブを開放した際の圧力検出値に基づき、原料容器21内の原料Mの残量を推定する。これにより、原料供給装置20は、上流経路から原料容器21にキャリアガスをスムーズに流すことができ、またこの際の圧力検出値の低下を用いても原料容器21内の原料Mの残量を適切に推定できる。
【0097】
また、圧力計70は、上流経路(第1上流経路51A)および下流経路(第1下流経路52A)の各々に設けられ、残量推定部97は、上流経路の圧力計70の圧力検出値と、下流経路の圧力計70の圧力検出値との両方を用いて、原料容器21内の原料Mの残量を推定する。これにより、原料供給装置20は、原料容器21内の原料Mの残量をより一層精度よく推定できる。
【0098】
また、原料容器21を加熱する複数の加熱部30(上部ヒータ32、中央部ヒータ33、下部ヒータ34)を有し、残量推定部97は、複数の加熱部30の一部を選択的に加熱することに基づき、原料容器21内に複数収容された原料Mの残量のばらつきを推定する。これにより、原料供給装置20は、複数の加熱部30に対応する領域毎の原料Mの残量を推定することが可能となり、各原料Mの残量のばらつきに応じて複数の加熱部30を制御することで、各原料Mの残量のばらつきを低減することができる。
【0099】
また、本開示の第2の態様は、基板を処理する処理容器11に原料ガスを供給する基板処理システム1であって、処理容器11に接続される供給経路14と、固体または液体の原料Mを収容した原料容器21と、原料容器21に接続され、キャリアガスを流通可能な上流経路(第1上流経路51A)と、原料容器21と供給経路14との間を接続し、原料Mから生じた原料ガスを含むガスを流通可能な下流経路(第1下流経路52A)と、原料容器21を介さずに上流経路と下流経路との間を接続し、上流経路から下流経路にキャリアガスを流通させるバイパス経路(第1バイパス経路53A)と、下流経路の流路を開閉する下流側バルブ(第1下流側バルブ62A)と、上流経路および下流経路のうち少なくとも一方に設けられ、当該上流経路内または当該下流経路内の圧力を検出する圧力計70と、圧力計70から圧力検出値を取得し、原料容器21から下流経路への原料ガスの流通開始時に、下流側バルブを開放した際に低下する圧力検出値に基づき、原料容器21内の原料Mの残量を推定するように構成された残量推定部97と、を有する。
【0100】
また、本開示の第3の態様は、原料容器21に収容された固体または液体の原料Mの残量を推定する残量推定方法であって、原料容器21に接続される上流経路(第1上流経路51A)にキャリアガスを流通させる工程と、原料容器21を介さずに、上流経路と、原料容器21に接続される下流経路(第1下流経路52A)との間を接続するバイパス経路(第1バイパス経路53A)を介して、上流経路から下流経路にキャリアガスを流通させる工程と、下流経路に設けられた下流側バルブ(第1下流側バルブ62A)を開放して、原料Mから生じた原料ガスを含むガスを下流経路に流通させる工程と、上流経路および下流経路のうち少なくとも一方に設けられた圧力計70により、当該上流経路内または当該下流経路内の圧力を検出する工程と、圧力計70から圧力検出値を取得し、原料容器21から下流経路への原料ガスの流通開始時に、下流側バルブが開放した際に低下する圧力検出値に基づき、原料容器21内の原料Mの残量を推定する工程と、を有する。
【0101】
上記の第2および第3の態様でも、原料容器21内の原料Mの残量を精度よく推定できる。
【0102】
今回開示された実施形態に係る原料供給装置20、基板処理システム1および残量推定方法は、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0103】
本開示の基板処理システム1は、Atomic Layer Deposition(ALD)装置、Capacitively Coupled Plasma(CCP)、Inductively Coupled Plasma(ICP)、Radial Line Slot Antenna(RLSA)、Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR)、Helicon Wave Plasma(HWP)のいずれのタイプの装置でも適用可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 基板処理システム
20 原料供給装置
21 原料容器
51A 第1上流経路
52A 第1下流経路
53A 第1バイパス経路
62A 第1下流側バルブ
70 圧力計
90 供給制御部
M 原料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9