(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040296
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】自動分析装置、及びその洗浄方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20230314BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
G01N35/10 F
G01N35/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007301
(22)【出願日】2023-01-20
(62)【分割の表示】P 2021519289の分割
【原出願日】2020-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2019090500
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小池 美紗都
(72)【発明者】
【氏名】圷 正志
(72)【発明者】
【氏名】深谷 昌史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 恵
(57)【要約】
【課題】複数の汚染要因が想定される分注機構や反応容器において、キャリーオーバを回避し、分析性能を維持する。
【解決手段】試料または試薬を反応容器に分注するプローブを備えた分注機構と、プローブを洗浄する洗浄機構と、分注機構と洗浄機構を制御する制御部と、を備え、制御部は、複数の分析条件に対応する、汚染に対する重みづけを示すカウント値を記憶しており、プローブに対する汚染除去動作を実施してから、分注機構が試料または試薬の分注を行うサイクルごとに、分注を行う分析条件に対応するカウント値を用いてプローブの汚染状況を示す値を演算し、演算された値に基づきプローブに対する汚染除去動作の要否判断を行う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料または試薬を反応容器に分注するプローブを備えた分注機構と、
前記プローブを洗浄する洗浄機構と、
前記分注機構と前記洗浄機構を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、複数の分析条件に対応する、汚染に対する重みづけを示すカウント値を記憶しており、前記プローブに対する汚染除去動作を実施してから、前記分注機構が試料または試薬の分注を行うサイクルごとに、前記分注を行う分析条件に対応する前記カウント値を用いて前記プローブの汚染状況を示す値を演算し、演算された前記値に基づき前記プローブに対する汚染除去動作の要否判断を行う、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置であって、
前記分析条件として、分析項目、検体種別、分注量及び分注動作を要素として含む、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動分析装置であって、
前記制御部が記憶する前記カウント値は、前記分析項目ごとに設定されている、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項2に記載の自動分析装置であって、
前記制御部が記憶する前記カウント値は、前記要素ごとに設定されており、前記分注を行う分析条件に対応する前記カウント値は、前記要素ごとに設定された前記カウント値から演算される、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載の自動分析装置であって、
前記制御部の要否判断により実施される前記プローブに対する汚染除去動作は、前記プローブに想定される最大汚染を除去することを想定した洗浄動作である、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の自動分析装置であって、
前記制御部は、前記分注の成否によって、前記分注を行う分析条件に対応する前記カウント値を用いて前記プローブの汚染状況を示す前記値を演算する演算方法を異ならせる、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の自動分析装置であって、
前記制御部は、前記プローブに対する汚染除去動作を要として判断した場合であっても、前記分注がキャリブレーション、コントロール、または同一検体内の依頼による試料の分注である場合には、当該分注を継続し、前記キャリブレーション、前記コントロール、または前記同一検体内の依頼による試料の分注が終了してから、前記プローブに対する汚染除去動作を実施するよう制御する、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項1に記載の自動分析装置であって、
前記制御部が記憶する前記カウント値は、グラフィカルユーザインターフェースから設定される、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
自動分析装置の洗浄方法であって、
自動分析装置は、試料または試薬を反応容器に分注するプローブを備えた分注機構と、前記プローブを洗浄する洗浄機構と、前記分注機構と前記洗浄機構を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、複数の分析条件に対応する、汚染に対する重みづけを示すカウント値を記憶しており、
前記制御部は、前記プローブに対する汚染除去動作を実施してから、前記分注機構が試料または試薬の分注を行うサイクルごとに、前記分注を行う分析条件に対応する前記カウント値を用いて前記プローブの汚染状況を示す値を演算し、演算された前記値に基づき前記プローブに対する汚染除去動作の要否判断を行う、
ことを特徴とする自動分析装置の洗浄方法。
【請求項10】
請求項9に記載の自動分析装置の洗浄方法であって、
前記分析条件として、分析項目、検体種別、分注量及び分注動作を要素として含む、
ことを特徴とする自動分析装置の洗浄方法。
【請求項11】
請求項10に記載の自動分析装置の洗浄方法であって、
前記制御部が記憶する前記カウント値は、前記分析項目ごとに設定されている、
ことを特徴とする自動分析装置の洗浄方法。
【請求項12】
請求項10に記載の自動分析装置の洗浄方法であって、
前記制御部が記憶する前記カウント値は、前記要素ごとに設定されており、前記分注を行う分析条件に対応する前記カウント値は、前記要素ごとに設定された前記カウント値から演算される、
ことを特徴とする自動分析装置の洗浄方法。
【請求項13】
請求項9に記載の自動分析装置の洗浄方法であって、
前記制御部の要否判断により実施される前記プローブに対する汚染除去動作は、前記プローブに想定される最大汚染を除去することを想定した洗浄動作である、
ことを特徴とする自動分析装置の洗浄方法。
【請求項14】
請求項9に記載の自動分析装置の洗浄方法であって、
前記制御部は、前記分注の成否によって、前記分注を行う分析条件に対応する前記カウント値を用いて前記プローブの汚染状況を示す前記値を演算する演算方法を異ならせる、
ことを特徴とする自動分析装置の洗浄方法。
【請求項15】
請求項9に記載の自動分析装置の洗浄方法であって、
前記制御部は、前記プローブに対する汚染除去動作を要として判断した場合であっても、前記分注がキャリブレーション、コントロール、または同一検体内の依頼による試料の分注である場合には、当該分注を継続し、前記キャリブレーション、前記コントロール、または前記同一検体内の依頼による試料の分注が終了してから、前記プローブに対する汚染除去動作を実施するよう制御する、
ことを特徴とする自動分析装置の洗浄方法。
【請求項16】
請求項9に記載の自動分析装置の洗浄方法であって、
前記制御部が記憶する前記カウント値は、グラフィカルユーザインターフェースから設定される、
ことを特徴とする自動分析装置の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置、及びその洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、血液、尿、髄液等の生体試料(以下、検体を試料と呼ぶ場合もある)を分析する装置である。自動分析装置は、試料用プローブ、試薬用プローブ(以下、試料プローブ、試薬プローブと表記する)が付いた分注機構を用いて、例えば、試料、試薬をそれぞれの保存容器から反応容器内へ分注し、試料試薬の混合液を攪拌した後、同反応液の色調変化や反応時間を検出器で測定し、その測定したデータから、試料中の目的成分の濃度または活性値または反応時間を定量し、算出した結果を出力する機能を有する。
【0003】
このような自動分析装置において、試料プローブ、試薬プローブは分注動作を繰り返し行うにあたり、試料、試薬間のキャリーオーバを避けるために、目的の試料、試薬を反応容器に吐出後、次の分注動作に備えてプローブの洗浄を行う。
【0004】
近年、自動分析装置は、限られた検査スペースに導入可能である小さなサイズでありながら、多種多様な検査項目が実施できることが望まれている。これを実現するため、単一の分注機構で複数の試料、および試薬を扱うことが求められる。
【0005】
特に、複数の汚染要因が想定される試料分注機構、例えば複数の検体種別、および複数の分析項目を単一のプローブで分注する試料分注機構においては、分注後の試料プローブの汚染状態は検体種別、および分析項目に応じて変化し、一定回数の分注を実施した後の汚染の蓄積状態も均一になるとは限らない。また、複数の汚染要因が想定される試薬分注機構、例えば、複数の試薬、または、複数の分析項目を単一のプローブで実施する試薬分注機構においても、同様である。さらに、複数の汚染要因が想定される反応容器、例えば、複数の検体種別、および、複数の分析項目を単一の容器で扱う反応容器を持つ機構についても、同様である。
【0006】
しかしながら、試料、試薬間のキャリーオーバは臨床上問題の無い範囲になるよう設計しなければならない。試料分注機構のキャリーオーバ低減については、吸引量や分注回数に重みづけを行い、追加洗浄を実施する方法が知られている。特許文献1では、試料プローブにおいて、検体のサンプリング回数または検体のサンプリング量のうち少なくとも一方に基づいて前記プローブを洗浄するときの洗浄回数または洗浄時間のうち少なくとも一方を変更する方法を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の方法を採用し、単一の試料分注機構で複数の検体種別、および複数の分析項目を実行する場合、サンプリング回数が等しい場合でも、試料プローブの汚染状態は異なる場合がある。例えば、試料に含まれる成分や、試料の粘性といった試料の特性から、血清試料を100回分注した場合よりも、全血試料を100回分注した場合の方が、試料プローブは汚染されている。また、サンプリング量は、試料プローブ内側の汚染に対する重みづけであるが、例えば、試料容器として採血管を用いるとき、容器底面から試料を吸引する場合は、試料を液面から吸引する場合と比較して、試料プローブ外側の汚染が大きくなる。そのため、サンプリング回数、および、サンプリング量による汚れの重みづけでは、単一の分注機構で複数の検体種別、試薬、および複数の分析項目を扱う場合のキャリーオーバ回避には上記の理由で不十分である。
【0009】
本発明の目的は、複数の汚染要因が想定される分注機構や反応容器において、キャリーオーバを回避し、分析性能を維持可能な自動分析装置、及びその洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明においては、試料または試薬を反応容器に分注するプローブを備えた分注機構と、プローブを洗浄する洗浄機構と、分注機構と洗浄機構を制御する制御部と、を備え、制御部は、複数の分析条件に対応する、汚染に対する重みづけを示すカウント値を記憶しており、プローブに対する汚染除去動作を実施してから、分注機構が試料または試薬の分注を行うサイクルごとに、分注を行う分析条件に対応するカウント値を用いてプローブの汚染状況を示す値を演算し、演算された値に基づきプローブに対する汚染除去動作の要否判断を行う自動分析装置を提供する。
【0011】
また、上記の目的を達成するため、本発明においては、自動分析装置の洗浄方法であって、自動分析装置は、試料または試薬を反応容器に分注するプローブを備えた分注機構と、プローブを洗浄する洗浄機構と、分注機構と洗浄機構を制御する制御部と、を備え、制御部は、複数の分析条件に対応する、汚染に対する重みづけを示すカウント値を記憶しており、制御部は、プローブに対する汚染除去動作を実施してから、分注機構が試料または試薬の分注を行うサイクルごとに、分注を行う分析条件に対応するカウント値を用いて前記プローブの汚染状況を示す値を演算し、演算された値に基づきプローブに対する汚染除去動作の要否判断を行う自動分析装置の洗浄方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の汚染要因が想定される機構を持つ分注機構において、該当する機構が受ける汚染要因や、分析時の汚染状態を反映した、効率の良い洗浄を実施することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1に係る自動分析装置の概略構成図である。
【
図2】実施例1に係る試料分注機構の概略構成図である。
【
図3A】実施例1に係る試料分注機構の動作のサイクルの一例を示す図である。
【
図3B】実施例1に係る試料分注機構の動作のサイクルの他の例を示す図である。
【
図4】実施例1に係る自動分析装置の制御部の具体構成図である。
【
図5】実施例1に係る汚染の重みづけを示したカウント値の一例を示す図である。
【
図6】実施例1に係る汚染の重みづけを示したカウント値の他の例を示す図である。
【
図7】実施例1に係るオペレーション開始時から、終了までの試料プローブの汚染の重みづけに関するフローチャートを示す図である。
【
図8】実施例1に係るオペレーション開始時から、終了までの試薬プローブの汚染の重みづけに関するフローチャートを示す図である。
【
図9】実施例1に係るオペレーション開始時から、終了までの反応容器の汚染の重みづけに関するフローチャートを示す図である。
【
図10】実施例1に係る試料プローブが最も汚染された状態の一例を示す図である。
【
図11】実施例1に係るユーザが操作部上で設定する場合のグラフィカルユーザインターフェース(GUI)の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【実施例0015】
実施例1は、自動分析装置であって、試料または試薬を反応容器に分注するプローブを備えた分注機構と、プローブを洗浄する洗浄機構と、分注機構と洗浄機構を制御する制御部と、を備え、制御部は、複数の分析条件に対応する、汚染に対する重みづけを示すカウント値に基づき、試料または試薬の分注ごとに、カウント値を累積した累積カウントを求め、累積カウントが設定した閾値を超える場合、プローブを洗浄するよう洗浄機構を制御する構成の自動分析装置、及びその洗浄方法の実施例である。
【0016】
図1は本実施例の自動分析装置の概略構成の一例を示す図である。複数種別の検体を分注する自動分析装置は、血液や尿などの多成分を含む生体試料中の目的成分の濃度または活性値または反応時間を測定するため、複数種別の試料または試薬などの液体を吸引・吐出する分注機構と、当該試料や試薬を収容する反応容器と、洗浄機構を備える。
【0017】
図1において、反応ディスク101には、反応容器102が円筒状に並んでいる。また、試薬ディスク103の中には、複数の試薬ボトル104が円状に配置可能である。反応ディスク101の近くには、試料容器105を載せたラック106を移動する試料搬送機構107が設置されている。
【0018】
反応ディスク101の周囲には、反応容器102、反応容器洗浄機構108、分光光度計109、攪拌機構110、試薬ディスク103、試料搬送機構107が配置され、反応容器洗浄機構108には図示を省略した洗浄用ポンプが接続されている。そして、反応ディスク101と試薬ディスク103の近くには、試薬を試薬ボトル104から吸引し、反応容器102内に吐出する試薬分注機構111が設置されている。試薬分注機構111は試薬分注プローブ(試薬プローブと略す)112を備えている。
【0019】
また、反応ディスク101と試料搬送機構107との間には、回転及び上下動可能な試料分注機構113が設置されており、この試料分注機構113は試料分注プローブ(試料プローブと略す)114を備えている。試料プローブ114は試料分注機構113の回転軸を中心に円弧を描きながら移動して試料容器105から試料を吸引し、反応容器102へ試料を吐出し、試料分注を行う。
【0020】
試料分注機構113には試料用の送液ポンプ206、試薬分注機構111には、図示を省略した試薬用ポンプがそれぞれ接続されている。また、試料分注機構113の動作範囲上に試料プローブ洗浄槽127、試薬分注機構111の動作範囲上に、試薬プローブ洗浄槽128がそれぞれ設置されている。
【0021】
試料容器105には血液等の検査試料が含まれ、ラック106に載せられて試料搬送機構107によって運ばれる。試料分注機構111は、試料吸引位置118に位置する試料容器105から試料を吸引する。また、各機構はインターフェイス123を介して制御部124に接続され、制御部124によって動作制御される。制御部124は、操作部125、操作入力部126から入力を受ける。また、制御部124は、反応容器105内の検査試料を分析する分析部としての機能を有する。
【0022】
本実施例では、試料容器を載せたラックを、ラックを運搬するレーンをもった試料搬送機構107によって試薬吸引位置118まで搬送したが、同様の目的の機構であれば、実施例と同じ機構、および動作でなくてもよい。例えば、試料容器を設置する試料ディスクがあれば、試料ディスク上に設置してもよい。また、例えば、試料容器を載せたラックに対し、自由にアクセスできるラック用アームを用いてラックを運搬する試料搬送機構でもよい。また、本実施例では、試料分注機構113は回転軸を中心に円弧を描きながら移動し、試料を吸引するが、同様の目的の機構であれば、実施例通りの動作でなくてもよい。例えば、試料分注機構が試料容器側に自由にアクセスできる試料分注アームを持つ構造でもよい。また、
図1では生化学自動分析装置のスタンドアローン型の装置を図示したが、モジュラー型の装置でもよい。
【0023】
図2は、実施例1における試料分注機構113の概略構成図である。同図において、試料の吸引、吐出を行う試料プローブ114はアーム213により上下移動及び回転移動が可能であり、試料プローブ114は試料の吸引・吐出を制御するピペッタ部214に接続されている。そして、ピペッタ部214から試料プローブ114に至る流路にシステム水を供給するポンプ206と、ポンプ206とピペッタ部214とをつなぐ流路と、この流路中にあり、システム水の流れを制御する少なくとも1つの電磁弁205を備える。洗浄水は図示を省略したタンクに貯えられている。なお、試薬分注機構111、試料分注機構113はピペッタ方式の装置に限定されず、ドレイン方式の装置であっても良い。
【0024】
次に、
図1に戻り、本実施例の自動分析装置の分析動作について説明する。試料分注機構113は、ラック106の試料容器105から試料プローブ114で試料を吸引し、反応容器102に吐出する。また、試薬分注機構111は、試薬ボトル104から試薬プローブ112で試薬を吸引し、反応容器102に吐出する。同一の反応容器に分注された試料と試薬は混合され、混合液は分光光度計109で測光される。反応ディスク101は回転と停止を1サイクル、例えば4.0秒で行い、測定対象となる反応容器102が分光光度計109の前を通過する度に定期的に測光が行われる。一定時間経過後に分光光度計109の測光結果に基づき制御部124は試料中の目的成分の濃度又は活性値を算出する。このようにして分析が行われる。
【0025】
次に、試料プローブ洗浄について説明する。試料分注機構113は、試料吸引位置118に到着した試料容器105から試料プローブを用いて反応容器102に試料を分注することを1サイクル、例えば8.0秒内で1回行い、これを繰り返す。分注後には異なる試料を分注する可能性があるため試料プローブ洗浄槽127に立ち寄って試料プローブ114は洗浄される。つまり、試料プローブ114は、試料吸引、試料吐出、プローブ洗浄、試料吸引を順に繰り返し、試料吸引から次の試料吸引までを1サイクルとして駆動する。また、試薬プローブ112は、試薬吸引、試薬吐出、プローブ洗浄、試薬吸引を順に繰り返し、試薬吸引から次の試薬吸引までを1サイクル、例えば4.0 秒として、試料プローブと同様に駆動する。
【0026】
本実施例では、試料プローブ洗浄は、
図3Aのように、試料分注機構113の動作の1サイクル内に含め、試料容器105から試料プローブ114を用いて反応容器102に試料を分注し、試料プローブ洗浄を実施するまでを1サイクル、例えば8.0秒としたが、
図3Bのように、試料容器から試料プローブ114を用いて反応容器102に試料を分注することを1サイクルとし、別のサイクルで試料プローブ洗浄を実施してもよい。同様に、試薬分注機構111についても、試薬プローブ洗浄を、試薬分注機構111の動作の1サイクル内に含めてもよいし、試薬分注を含むサイクルとは別のサイクルで試薬プローブ洗浄を実施してもよい。また、本実施例では、プローブ洗浄、および、反応容器洗浄の洗浄水は、水と洗剤を用いるが、水のみ、洗剤のみ、または、水と洗剤を両方用いてもよい。また、洗剤は希釈してもよい。また、汚染の除去方法は、例えば、予め装置内に汚染除去用の洗浄動作をもたせてもよいし、使用者自身が清掃してもよい。
【0027】
図4は、実施例1における制御部124の具体構成図である。制御部124は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)であり、記憶部124a、中央処理部(CPU)などの処理部124b、指示部124c等を有する。制御部124の処理部124bは、記憶部124aに記憶されている自動分析プログラムを実行する。制御部124は、サンプリング情報に従って、インターフェイスを介して、試料分注機構を備える自動分析部100を動作制御する。
【0028】
記憶部124aは、
図5、
図6に示すように、複数の分析条件に応じて予め設定した汚染に対する重みづけを示した数値(以下、カウント値)を記憶する。ここで、分析条件とは、
図5、
図6に示すように、分析項目、検体種別、分注量、あるいは分注動作を意味する。さらに、記憶部124aは、汚染量の累積を示す累積カウントと、汚染除去動作を実施する累積カウントの閾値を記憶する。本実施例では、汚染を受けていない状態、または、累積カウントが閾値を超過し、汚染除去動作である洗剤洗浄を実施した直後のプローブの累積カウントを0とした。そして、試料プローブの汚染状態と試料プローブの分注サイクル、装置の単位時間あたりの分析処理数で表される処理能力を考慮した上で、閾値を225カウントと設定した。
【0029】
現在の汚染量の累積カウントを記憶する記憶部124aは、試料プローブ洗浄作業、例えば本実施例ではオペレーション開始時の洗剤洗浄を実施した時、累積カウントのリセット動作を行い、カウントを0にして記憶する。さらに、記憶部124aは、分析条件である分析項目を記憶する。これは、予め設定されている、試料搬送機構107から試料搬送ライン117によって順次搬送される各検体の情報である。各検体の情報は、例えば検体を採取した患者名、血清や尿等の検体の検体種別、比色、ISE、HbA1c等の分析項目、サンプリング量などである。さらに、記憶部124aは、汚染量の計算に使用する、演算式を記憶する。処理部124bは、分析項目に対応する値を呼び出し、演算する。
【0030】
制御部124は、得られた汚染量の累積カウントと、閾値を比較し、累積カウントが閾値を超過しているか否かの判定を実施する。装置は、閾値を超過していない場合は、連続して分析を実施する判断をする。閾値を超過した場合は、汚染を除去する動作の判断をする。指示部124cは、処理部124bで判断した内容を、インターフェイス123を介して、自動分析部の試料分注機構に指示する。
【0031】
図5のテーブル501は、本実施例の自動分析装置において、各分析項目における分注量と試料プローブが汚染される範囲、検体種別の一例と、それらを総合して重みづけを行った、各分析項目のカウント値を“カウント”として示したものである。本実施例の自動分析装置では、装置に依頼された検体種別と分析項目によって、分注動作が決定される。検体種別は、試料プローブが試料に含まれる成分や、試料の粘性といった、試料の特性によって受ける汚染量を表す。また、分析項目は、本実施例においては、比色項目、ISE項目、HbA1c項目に区分される。さらに、分析項目については、例えば、比色項目において、AST、LDといった測定項目が含まれる。本実施例では、反応ディスク101で比色項目とHbA1c項目、ISE測定部119でISE項目を測定する。
【0032】
試料プローブの分注動作は、検体種別と分析項目によって決定され、試料の吸引量、試料容器への浸漬量が変化するため、試料プローブの内側、外側の汚染範囲を表す。本実施例では、分析項目は比色、ISE、HbA1cを挙げたが、例えば、免疫、凝固、散乱、MSといった、他の分析項目でもよい。それぞれの反応原理、または、試薬の特性によって、汚染量は変化する。
【0033】
カウントの設定理由について、各項目を比較しながら説明する。検体種別については、検体の粘度や含有する蛋白成分濃度が、プローブの汚染量に影響する。本実施例では、主に血清、血漿、尿、全血を分析するため、これらの検体を比較する。血清、血漿と相対的に比較すると、尿は、液性が水に近く、粘度が低いため、プローブ洗浄で汚染を除去しやすい。また、含有成分の大部分が金属イオンや尿素になり、蛋白成分の付着が少ない。一方で、全血は、血清・血漿には含まれない赤血球、白血球成分が含まれるため、粘度が高い。また、血球中に多く含まれる、例えば鉄、LD(乳酸脱水素酵素)といった成分濃度が高い。
【0034】
そのため、粘度は相対的に、尿、血清・血漿、全血の順で高くなる。また、汚れの原因となる検体中に含まれる蛋白成分濃度についても、尿、血清・血漿、全血の順で高くなる。このことから、試料プローブに対する汚染量も、尿、血清・血漿、全血の順で多くなる。
【0035】
試料プローブ外側の汚染範囲は、検体種別、および、分析項目から決定される、分注動作によって異なる。例えば、本実施例において、試料容器から試料を吸引する際、比色項目、ISE項目は、試料の特性から、試料の液面からサンプリングを実施する。このとき、装置は、試料容器の液面を検知してから2.25 mm下降して試料を吸引する、つまり、液面から2.25 mmの位置で試料を吸引する分注動作を実施する。これに対し、HbA1c項目は、試料の特性から、試料容器底面からサンプリングを実施する。このとき、装置は、試料の液面高さが、試料容器内底から59 mmまでのとき、試料容器の底面から4 mmの位置から試料を吸引する分注動作を実施する。つまり、試料高さが最も高い時、試料容器液面から55 mm下降して試料を吸引する分注動作になる。このことから、プローブ外側の汚染範囲は、比色項目、ISE項目よりも、HbA1c項目が広くなる。
【0036】
試料プローブ内側の汚染範囲も、検体種別、および、分析項目から決定される、分注動作によって異なる。例えば、試料容器から試料を吸引する際、比色項目は1.0-25.0 μLの分注が実施可能であることに加え、試料を正確に分注するため、ダミー量7.5 μLを追加で吸引する分注動作を持つ。そのため、最大で、25.0 μL+ダミー量7.5 μL分の試料プローブ内側の汚染が発生する。また、ISE項目は、10.0、15.0、20.0 μLの3パターンの分注が実施可能であることに加え、試料を正確に分注するため、ダミー量7.5 μLを追加で吸引する分注動作を持つ。そのため、最大で、20.0 μL+ダミー量7.5 μL分の試料プローブ内側の汚染が発生する。
【0037】
また、HbA1c項目は、1.3-2.0 μLの分注を、システム水と共に試料を吐出する、水押し出し方式と呼ばれる分注動作を持つ。そのため、最大で、2.0μL分の試料プローブ内側の汚染が発生する。このことから、プローブ内側の最大の汚染範囲は、HbA1c項目、ISE項目、比色項目の順で広くなる。
【0038】
さらに、
図5には示さなかったが、試料プローブの洗浄方式も考慮した。実施例の装置は、試料プローブの内側は、試料プローブ洗浄槽内で、試料プローブ流路内の電磁弁205を開放し、細いプローブ内を流れる強い水流で洗浄する。一方、試薬プローブの外側は、試料プローブ洗浄槽内の試料プローブ洗浄機構211で洗浄する。このとき、洗浄水は、試料プローブの横から当てているが、試料プローブ内側よりも弱い水流になる。そのため、試料プローブを洗浄する際には、内側の汚れよりも、外側の汚れの方が、洗浄で除去するのが困難である。
【0039】
これらを総合的に考慮した結果、本実施例では、汚染の重みづけであるカウント値を、比色項目は1カウント、ISE項目は3カウント、HbA1c項目は22.5カウントと設定した。重みづけを実施する際には、
図5のテーブル501で示したように、1つの項目を要素分解し、その要素全てを考慮した上で重みづけを行ってもよい。
【0040】
また、
図6のテーブル601~605に示すように、分析項目、分注動作、分注量、検体種別、アラーム各々の条件に重みづけを行い、装置に演算を実施させることで、最終的な汚染点数をつけてもよい。つまり、例えば、記憶部は、
図6のテーブル601~605で示した条件に対し、カウント値の情報を持つ。さらに、記憶部は、
図6で示した条件を掛け合わせて、1回の試料分注あたりのカウント値を算出する演算式を記憶する。
【0041】
そして、自動分析装置は、プローブの汚染の累積カウントが0カウントの状態で、比色項目、血清検体、試料分注量20 μLの依頼を受け、分析を開始したとする。前述の依頼の試料分注が成功した場合、処理部124bは予め記憶部124aで設定されている
図6の情報を呼び出し、比色1カウント、血清3カウント、試料分注量5カウントと設定する。そして、処理部124bはそれらを記憶部124aの演算式をもとに計算する。例えば、比色1カウント×血清3カウント×試料分注量5カウント=15カウント、と計算する。そして、記憶部は前述の計算値である15カウントと、累計カウントである0カウントを足し算し、新たな累計カウント15カウントを記憶する。
【0042】
汚れの重みづけのカウント値、閾値、演算式は、プローブの汚染状況を反映できればよい。そのため、予め記憶部に汚れの重みづけのカウント値、閾値、演算式を記憶させてもよいし、実際の使用状況に応じて、使用者が操作入力部126から新規に設定を行ったり、記憶部のそれぞれの値に補正を加えたりしてもよい。
【0043】
例えば、装置は環境条件、メンテナンス頻度、経年劣化といった要因により、汚染状態、および、汚染の付着のしやすさ、除去のしやすさが変化する。そのため、これらの要因を考慮したカウント値の設定や、閾値や累積カウントの補正を行ってもよい。
【0044】
図7は、本実施例の試料プローブ114における、オペレーション開始時から、終了までの試料プローブの汚染の重みづけに関するフローチャートである。自動分析装置において、オペレーションが開始されると、本実施例では分析開始準備動作として、試料プローブ洗剤洗浄を実施し、蓄積した汚染の累積カウントをリセットする(s701)。
【0045】
前記動作と並行して
図1の試料搬送機構107を経由して、試料プローブ114の試料吸引位置118へ試料が搬送され、血清である試料1が試料吸引位置118に到着する。試料が到着すると、装置は制御部124の記憶部124aから予め依頼された分析項目の記憶を呼び出し、試料分注を実施する。試料分注後、本実施例においては、例えば液面センサーによる液面検知、および試料吸引時の圧力波形、詰まり検知の情報から、試料分注が成功したか否か判定する(s703)。分注が成功した場合は、ステップs703に進む。失敗した場合は、s702に戻り、再度試料分注を実施し、s703の判定を行う。再度試料分注に失敗した場合、本実施例では、該当試料の分注を中止し、試料分注の失敗を記憶部で記憶し、カウント値の計算をせず、次の試料分注に移行する。
【0046】
試料分注に成功した場合、ステップs704に移行し、分析項目の判定を実施する。装置は記憶部から分析項目の情報を呼び出し、本実施例においては比色、ISE、HbA1cのいずれかに分類する。そして、比色項目の場合は、制御部124の処理部において、累積カウントに1カウント足す(s705a)。同様に、ISEは3カウント(s705b)、HbA1cは22.5カウント足す(s705c)。
【0047】
次に、制御部124の処理部は、累積カウントが閾値を超えたか判定する。本実施例では、閾値を225カウントに設定したため、225カウントを超過したか否かで判定する(s706)。225カウントを超過していない場合は、ステップs707に進み、次に分注する試料があるか否かの判定を実施する。次に分注する試料がある場合は、次の試料分注を実施する(s702)。次に分注する試料がない場合は、本実施例ではオペレーション終了前の試料プローブの洗剤洗浄を実施し、累積カウントのリセットを行い(s709)、オペレーションを終了する。
【0048】
また、累積カウントが225カウントを超過した場合、ステップs708で、該当試料の試料分注が、校正のためのキャリブレーション(CAL)、精度管理のための測定であるコントロール(CTL)、または同一検体内の依頼による試料分注かを判定する。
【0049】
該当試料の試料分注が、キャリブレーション、コントロール、または同一検体内の依頼による試料分注ではない場合、試料プローブの洗剤洗浄を実施し、試料プローブの洗剤洗浄を実施し、累積カウントをリセットする(s709)。次にステップs710に進み、次に分注する試料があるか否かの判定を実施する。次に分注する試料がある場合は、引き続き試料分注を実施する(s702)。次に分注する試料がない場合は、オペレーションを終了する。
【0050】
また、ステップs708において、該当試料の試料分注が、キャリブレーション、コントロール、または同一検体内の依頼による試料分注の場合、本実施例では、225カウントを超過しているが、225カウントという閾値はキャリーオーバを引き起こすと考えられる汚染状態に対し余裕を持たせて設定した閾値であるため、試料プローブの洗剤洗浄を実施すると、洗剤洗浄の前後で試料プローブの状態が変化することで、分析性能が変化するリスクを防ぐことを優先し、制御部124は、キャリブレーション、コントロール、または同一検体内の依頼による試料分注が終了するまで試料分注を継続し、その分注が終了してから、試料プローブの洗剤洗浄を実施するよう制御する。
【0051】
本実施例では、装置が試料分注に失敗したと判断した場合、該当の試料分注で試料プローブが受けたカウント値を、累積カウントに足し合わせない。しかし、試料プローブは、試料分注に失敗した場合も、試料から汚染を受けている可能性がある。例えば、試料の液面を検知し、試料吸引を開始したが、試料液中に気泡があり、装置が試料吸引をしていないと判断したときが挙げられる。
【0052】
そのため、装置が試料分注に失敗したと判断した場合でも、カウント値を累積カウントに足し合わせてもよい。その際、試料分注を失敗したと判断した理由をもとに、カウント値を累積カウントに足し合わせる方法を変えてもよい。例えば、試料プローブの液面に泡があり、泡の液膜を液面検知し試料プローブは試料吸引を開始したが、試料が吸引できず、試料分注に失敗した場合は、試料から試料プローブが受けた汚染は、分注成功時に受けた汚染と比較して少ないので、分注成功時に足し合わせる予定だったカウント値よりも少ないカウント値にしてもよい。つまり、比色項目を分析する際、分注成功時は1カウントを累積カウントに足すことを例に挙げると、分注失敗時は分注成功時のカウント値に0.5を掛け合わせてカウント値に足す、と設定し、分注失敗時は1カウント×0.5=0.5カウントを累積カウントに足し合わせてもよい。
【0053】
分注に失敗した場合のカウント値の計算方法の例を説明する。分注に失敗した場合(s703でNO)、s706に進み、試料プローブの累積カウントが225を超過したか判断する。225を超過していない場合、s707に進む。次に分注する試料がある場合は、s702に進み、再度、試料分注を実施する。次に分注する試料がない場合、s709に進み、試料プローブの洗浄を実施し、累積カウントをリセットする。
【0054】
一方で、s706で225カウントを超過した場合、s708に進む。キャリブレーション、コントロール、または、同一検体内の依頼ではない場合、s709に進み、試料プローブの洗浄を実施し、累積カウントをリセットする。キャリブレーション、コントロール、または、同一検体において、試料プローブの状態が異なることで、測定結果が変化するおそれがある。そのため、キャリブレーション、コントロール、または、同一検体内の依頼の場合、s711に進む。
【0055】
s711において、前回の分注に成功していた場合、例えば、試料表面に付着した泡により液面が正常に確認できなかったといった、プローブ以外に起因する異常の可能性もあるため、再度試料分注を実施する。これに対し、前回の分注も失敗した場合、例えば、プローブが試料によって著しく汚染されることで、プローブの詰まりが発生した可能性がある。前記の状態では分析を続行することが困難であるため、本実施例では、試料プローブ異常のアラームを表示し、ユーザに装置の異常を知らせる(s712)。
【0056】
また、本実施例では、試料分注成功後に、累積カウントを演算するが、累積カウントを演算するのは、試料分注成功後ではなくてもよい。例えば、依頼された項目が分析開始前に装置の記憶部にある場合、分析項目を依頼された時点で累積カウントを演算し、試料プローブの洗浄タイミングを予めスケジュールして分析を開始してもよい。また、試料分注後に、予定していたオペレーションに対して装置状態が変化した場合、例えば、試料分注時にアラームが発生した場合や、洗剤や試薬の不足でオペレーションが継続不可能になった場合、必要に応じて累積カウントの演算を変更するか否か判定してもよい。
【0057】
図8は、試薬プローブ112における、オペレーション開始時から、終了までの試薬プローブ112の汚染の重みづけに関するフローチャートである。基本的な判定のフローは
図7と同様である。試薬プローブ112はオペレーション開始時の洗剤洗浄を実施後、試料分注の成功を確認してから試薬分注を開始する。試薬プローブ112はステップs805において、制御部124の記憶部124aに記憶された測定項目を、試薬ごとに判定する。
【0058】
例えば、比色項目のASTの試薬を分注した場合は、ASTのカウント値である1カウントを累積カウントに足し合わせる。また、ステップs808においては、キャリブレーション(CAL)、コントロール(CTL)検体の測定時には、試薬プローブ112の洗剤洗浄を実施すると、洗剤洗浄の前後で試薬プローブ112の状態が変化することで、分析性能が変化するリスクを防ぐことを優先し、制御部124は、キャリブレーション、コントロールの試薬分注が終了するまで試薬分注を継続し、前記分注が終了してから、試薬プローブ112の洗剤洗浄を実施するよう制御する。
【0059】
図9は、反応容器102における、オペレーション開始時から、終了までの反応容器の汚染の重みづけに関するフローチャートである。本実施例の自動分析装置はオペレーションを開始すると、各機構のリセット動作の後、反応容器102の洗剤洗浄を実施し、洗浄が終了した反応容器102から順に、反応容器の水ブランク測定を実施する。反応容器102の水ブランク測定において、本装置では水ブランクを3回測定し、予め取得した反応容器水ブランク測定結果と比較し、著しく吸光度が異なる場合は、反応容器102に異常があると判定し、該当の反応容器102を使用しない「反応容器スキップ」動作を実施する。反応容器102の水ブランク測定結果と、予め取得した反応容器水ブランク測定結果を比較し、異常がないと判定した場合、制御部124の記憶部124aにある分析の依頼に基づいて、試料分注動作を実施する(s902)。
【0060】
その後、試料分注が成功したか否か判定し(s903)、失敗した場合は、前述の試料分注に失敗した際に使用した反応容器102は反応容器102の洗剤洗浄を実施し、反応容器102の水ブランク測定まで実施し、2回目の試料分注は、異常なしと判定された別の反応容器に実施する。試料分注が成功した場合は、制御部124の記憶部124aにある分析の依頼に基づいて、試薬分注を実施する(s904)。そして、試薬分注が成功したか否かの判定を実施する(s905)。試薬分注に失敗した場合は、試薬分注に失敗した際に使用した反応容器102は反応容器102の洗剤洗浄を実施し、反応容器102の水ブランク測定まで実施し、2回目の試料分注は、異常なしと判定された別の反応容器102に実施する。
【0061】
試薬分注に成功した場合は、ステップs906に進み、測定項目の判定を実施する。制御部124の記憶部124aから分析項目を呼び出し、該当する反応容器102で分析している項目に対応するカウント値を、反応容器102ごとに算出・記憶されている累積カウントに足す。例えば、反応容器1の累積カウントが3で、反応容器1でASTを分析した場合、ステップs907に従い、累積カウント3にASTのカウント値1を足し合わせて、反応容器102の累積カウントを4にする。
【0062】
上記の方法では、測定項目でカウント値を設定したが、分析項目でカウント値を設定してもよい。例えば、検体種別血清(1カウント)、測定項目AST(1カウント)、反応時間10分(1カウント)のように設定し、例えば血清×AST×反応時間=1×1×1=1や、血清+AST+反応時間=1+1+1=3としてもよい。
【0063】
次に、ステップs908に進み、反応容器交換後からの累積カウントは2250を超過したか否かを判定する。超過していない場合は、ステップs909に進み、次の分析項目があるか否かの判定をする。次の分析項目がある場合は、ステップs901に進み、反応容器の洗剤洗浄を実施し、次の分析の準備をする。次の分析項目がない場合、反応容器の洗剤洗浄を実施し、オペレーションを終了する。
【0064】
反応容器交換後からの累積カウントが2250を超過した場合、汚染蓄積による分析への影響のおそれがあることをユーザに伝える。例えば、反応容器交換のアラームを表示する(s911)。そして、ステップs912に進み、次の分析依頼があるか否か判定する。分析依頼がない場合は、反応容器を洗浄し、オペレーションを終了する。
【0065】
次の分析依頼がある場合は、2250を超過した反応容器を使用するか否かを判定する(s913)。例えば、予めユーザが設定で該当する反応容器をスキップして分析を継続する設定をしていた場合は、該当する反応容器を使用せずスキップして、累積カウントが2250を超過していない反応容器を使用して分析を継続する。また、例えば反応容器交換のメンテナンスを実施する設定をしていた場合は、オペレーションを停止し、反応容器が交換できるようにしてもよい。また、累積カウントが2250を超過した反応容器をスキップすると、使用できる反応容器が少なくなり、装置の処理能力が低下することが問題となる場合は、累積カウントが2250を超過していた場合でも、累積カウントを超過した反応容器を暫く使用し、オペレーション終了時に反応容器交換を促すアラームを出してもよい。
【0066】
補足として、装置が扱う試薬の特性によって、試薬プローブや反応セルの汚染量は変化する。例えば、試薬に含まれるたんぱく質の修飾部位の特性により、特定の素材に吸着しやすい場合がある。ゆえに、試薬プローブや反応セルに汚染量の重みづけを行い、適切な洗浄や反応セルの交換を実施することで、キャリーオーバ回避が可能となる。
【0067】
図10は、本実施例において、試料プローブ114が受ける汚染を想定したものである。本実施例では、累積カウントが225を超えた時、オペレーション中に試料プローブキャリーオーバ回避洗浄を実施する。試料プローブキャリーオーバ回避洗浄は、試料プローブ114が受ける最大の汚染を取り除く動作にした。最大の汚染とは、試料プローブが扱う検体種別や、試料プローブ114の汚染範囲を考慮して決定した。試料プローブ114は、本実施例では、
図5で示した分析項目において、
図5で示した検体種別、分注動作を実施する。
【0068】
図10のテーブル1001は、
図5から考えられる試料プローブ114が最も汚染された状態を示す。検体種別は粘度が高く、含有する蛋白成分濃度が高いもの、例えば、血清、血漿、尿、全血の中では、全血のときに最大となる。また、試料プローブ内側の汚染範囲は、分析項目が比色のとき、試料吸引量25μL、ダミー吸引量7.5 μLのときに最大になる。試料プローブ外側の汚染範囲は、分析項目がHbA1cのとき、かつ検体が試料容器の内底から59 mmの高さまで分注されているときに最大になる。そのため、前述の汚染を除去することを想定した洗浄動作で、洗剤洗浄を実施する。これにより、1つの洗浄動作でオペレーション中に発生した全ての汚染状態に対応できる。
【0069】
本実施例において、検体種別は、分析パラメータ上で予め設定されており、変更はできない。しかし、装置上で選択できない検体は、閾値に対して考えうる最も汚染された状態を想定して設定してもよい。例えば、腹水を分析したいが、検体種別選択で腹水がない場合は、検体種別「その他」と設定し、1回の分注で22.5カウントとしてもよい。
【0070】
なお、洗浄動作を工夫することも可能であるが、単一の分注機構で複数の検体や試薬を扱う自動分析装置では、洗浄を変更するよりカウント値を工夫するほうが良い。カウント値の設定は、予め装置設計者が記憶部に記憶させてもよいし、ユーザが操作部125上で設定できるようにしてもよい。
【0071】
図11に、ユーザが操作部上で設定する場合の操作部(以下、GUIと記載)の一例を示す。ユーザは、汚染量のカウント値を設定したい場合、GUI上で、カウント値を設定する画面を表示し、設定したいカウント値を入力する。カウント値を設定する画面1101は、例えば、
図11に示すように、カウント値の設定の有無を選択可能になっており、設定する、をユーザが選択した場合、つまり
図11においては「選択する」にチェックを入れた場合、カウント値を入力することができる。すなわち、制御部124は、予め設定し、記憶部124aに記憶したカウント値に代え、カウント値を設定可能なGUIから設定されるカウント値を用いることができる。
【0072】
カウント値の設定は、例えば、洗浄実施、分析項目、検体種別について設定できるものとする。洗浄実施では、洗浄を実施する累計のカウント値を設定できる。分析項目では、例えば、比色、HbA1c、ISEについて、分注1回あたりのカウント値が設定できる。検体種別では、例えば、血液、尿、髄液について、分注1回あたりのカウント値が設定できる。血液については、臨床検査においてよく用いられる検体であるため、より詳細に設定できるGUIを例として示した。
【0073】
カウント値の入力は、例えばユーザがキーボードといった数値を入力できる操作部から入力してもよい。また、予めGUI上で入力可能な数値が制御部124で記憶されており、例えばユーザがGUI上のプルダウン式のコマンドから選択して入力してもよい。
【0074】
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したのであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0075】
更に、上述した各構成、機能、制御部は、それらの一部又は全部を実現するプログラムを作成する例を中心に説明したが、それらの一部又は全部を例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良いことは言うまでもない。すなわち、制御部の全部または一部の機能は、処理部124bの動作プログラムに代え、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路などにより実現してもよい。