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特開2023-40531光増感色素、光増感色素の製造方法、色素増感型有機太陽電池用色素、可視光応答型光触媒、及び、光線力学的療法用色素
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  • 特開-光増感色素、光増感色素の製造方法、色素増感型有機太陽電池用色素、可視光応答型光触媒、及び、光線力学的療法用色素 図1
  • 特開-光増感色素、光増感色素の製造方法、色素増感型有機太陽電池用色素、可視光応答型光触媒、及び、光線力学的療法用色素 図2
  • 特開-光増感色素、光増感色素の製造方法、色素増感型有機太陽電池用色素、可視光応答型光触媒、及び、光線力学的療法用色素 図3
  • 特開-光増感色素、光増感色素の製造方法、色素増感型有機太陽電池用色素、可視光応答型光触媒、及び、光線力学的療法用色素 図4
  • 特開-光増感色素、光増感色素の製造方法、色素増感型有機太陽電池用色素、可視光応答型光触媒、及び、光線力学的療法用色素 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040531
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】光増感色素、光増感色素の製造方法、色素増感型有機太陽電池用色素、可視光応答型光触媒、及び、光線力学的療法用色素
(51)【国際特許分類】
   C09B 17/02 20060101AFI20230315BHJP
   C07D 241/46 20060101ALI20230315BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20230315BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20230315BHJP
   A61K 41/00 20200101ALI20230315BHJP
【FI】
C09B17/02
C07D241/46 CSP
B01J35/02 J
B01J31/02 102M
A61K41/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147571
(22)【出願日】2021-09-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 掲載日:令和3年5月28日 掲載アドレス: https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2021/qm/d1qm00649e 発行日:令和3年7月21日 刊行物:MATERIALS CHEMISTRY FRONTIERS,Volume 5,Number 14,pp.5298-5304,The Royal Society of Chemistry and the Chinese Chemical Society 2021
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100138955
【弁理士】
【氏名又は名称】末次 渉
(72)【発明者】
【氏名】大山 陽介
【テーマコード(参考)】
4C084
4G169
【Fターム(参考)】
4C084AA11
4C084NA14
4C084ZB262
4G169AA06
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BA48A
4G169BE07A
4G169BE07B
4G169BE10A
4G169BE10B
4G169BE13A
4G169BE13B
4G169BE37A
4G169BE37B
4G169BE38A
4G169BE38B
4G169CC33
4G169HA02
4G169HB10
4G169HD20
4G169HE09
4G169HF03
(57)【要約】
【課題】一重項酸素発生量子収率が良好な光増感色素、光増感色素の製造方法、色素増感型有機太陽電池用色素、可視光応答型光触媒、及び、光線力学的療法用色素を提供する。
【解決手段】光増感色素は、式1a又は式1bで表される。(式1a及び式1b中、R及びRは、それぞれ独立して、水素、アルキル基、フェニル基、アリール基、縮合環基、又は、複素環基を表し、式1b中、Rは、式11で表される基、式12で表される基、フェニル基、又は、アルキル基を表す。)(式12中、Xはハロゲンを表す。)

【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1a又は式1bで表される、
【化1】

(式1a及び式1b中、R及びRは、それぞれ独立して、水素、アルキル基、フェニル基、アリール基、縮合環基、又は、複素環基を表し、式1b中、Rは、式11で表される基、式12で表される基、フェニル基、又は、アルキル基を表す。)
【化2】

(式12中、Xはハロゲンを表す。)
ことを特徴とする光増感色素。
【請求項2】
炭素数2~6のアルコールを含有する溶媒を用い、式21で表される化合物とN-メチル-o-フェニレンジアミンとを反応させ、式1aで表される光増感色素を合成する、
【化3】

(式1a中、R及びRは、それぞれ独立して水素、アルキル基、フェニル基、アリール基、縮合環基、又は、複素環基を表す。)
ことを特徴とする光増感色素の製造方法。
【請求項3】
式1aで表される化合物と式31で表される化合物とを反応させて、式1bで表される光増感色素を合成する、
【化4】

(式1a及び式1b中、R及びRは、それぞれ独立して水素、アルキル基、フェニル基、アリール基、縮合環基、又は、複素環基を表し、式31及び式1b中、Rは、式11で表される基、式12で表される基、フェニル基、又は、アルキル基を表す。)
【化5】

(式12中、Xはハロゲンを表す。)
ことを特徴とする光増感色素の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の光増感色素を備える、
ことを特徴とする色素増感型有機太陽電池用色素。
【請求項5】
請求項1に記載の光増感色素を備える、
ことを特徴とする可視光応答型光触媒。
【請求項6】
請求項1に記載の光増感色素を備える、
ことを特徴とする光線力学的療法用色素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光増感色素、光増感色素の製造方法、色素増感型有機太陽電池用色素、可視光応答型光触媒、及び、光線力学的療法用色素に関する。
【背景技術】
【0002】
色素増感型有機太陽電池や光触媒、光線力学的療法など、光増感色素の利用が広まっている。光増感色素は、光を吸収して得たエネルギーを他の物質に渡すことで、反応や発光のプロセスを助ける役割を果たす。
【0003】
光増感色素として、これまで種々の化合物が開発されており、なかでも太陽光の凡そ50%を占める可視光のエネルギーを吸収可能な化合物が望まれている。また、光線力学的療法では、光増感色素を体内に注入して悪性細胞に付着させ、光増感色素への可視光の照射によって一重項酸素を発生させ、一重項酸素が悪性細胞を破壊することで疾患を治療している。このため、可視光に応答し、一重項酸素の発生効率が良好な光増感色素が望まれており、種々の可視光応答型の光増感色素が開発されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6886578号公報
【特許文献2】特表2020-526595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の光増感色素では、一重項酸素発生量子収率が0.5~0.6程度、また、特許文献2の光増感色素では0.04~0.78程度であり、一重項酸素発生量子収率には改善の余地がある。
【0006】
本発明は上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的は、一重項酸素発生量子収率が良好な光増感色素、光増感色素の製造方法、色素増感型有機太陽電池用色素、可視光応答型光触媒、及び、光線力学的療法用色素を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点に係る光増感色素は、
式1a又は式1bで表される、
【化1】

(式1a及び式1b中、R及びRは、それぞれ独立して、水素、アルキル基、フェニル基、アリール基、縮合環基、又は、複素環基を表し、式1b中、Rは、式11で表される基、式12で表される基、フェニル基、又は、アルキル基を表す。)
【化2】

(式12中、Xはハロゲンを表す。)
ことを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の観点に係る光増感色素の製造方法は、
炭素数2~6のアルコールを含有する溶媒を用い、式21で表される化合物とN-メチル-o-フェニレンジアミンとを反応させ、式1aで表される光増感色素を合成する、
【化3】

(式1a中、R及びRは、それぞれ独立して水素、アルキル基、フェニル基、アリール基、縮合環基、又は、複素環基を表す。)
ことを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の観点に係る光増感色素の製造方法は、
式1aで表される化合物と式31で表される化合物とを反応させて、式1bで表される光増感色素を合成する、
【化4】

(式1a及び式1b中、R及びRは、それぞれ独立して水素、アルキル基、フェニル基、アリール基、縮合環基、又は、複素環基を表し、式31及び式1b中、Rは、式11で表される基、式12で表される基、フェニル基、又は、アルキル基を表す。)
【化5】

(式12中、Xはハロゲンを表す。)
ことを特徴とする。
【0010】
本発明の第4の観点に係る色素増感型有機太陽電池用色素は、
本発明の第1の観点に係る光増感色素を備える、
ことを特徴とする。
【0011】
本発明の第5の観点に係る可視光応答型光触媒は、
本発明の第1の観点に係る光増感色素を備える、
ことを特徴とする。
【0012】
本発明の第6の観点に係る光線力学的療法用色素は、
本発明の第1の観点に係る光増感色素を備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一重項酸素発生量子収率が良好な光増感色素、光増感色素の製造方法、色素増感型有機太陽電池用色素、可視光応答型光触媒、及び、光線力学的療法用色素を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】化合物1の単結晶X線構造解析の結果を示す図である。
図2】化合物2の単結晶X線構造解析の結果を示す図である。
図3】化合物3の単結晶X線構造解析の結果を示す図である。
図4】化合物1~3の光吸収スペクトルを示す図である。
図5】化合物1~3の蛍光発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(光増感色素)
本実施の形態に係る光増感色素は、フェナジノン系骨格であり、式1aまたは式1bで表される。式1a及び式1b中、R及びRは、それぞれ独立して、水素、アルキル基、フェニル基、アリール基、縮合環基、又は、複素環基を表す。また、式1b中、R3は、式11で表される基、式12で表される基、フェニル基、又は、アルキル基を表す。なお、式12中、Xは、塩素、臭素等のハロゲンを表す。
【0016】
【化6】
【0017】
【化7】
【0018】
光増感色素は、光(可視光)照射を受けて励起一重項(状態)へ遷移し、項間交差を起こして三重項(状態)へと遷移する。その後、周囲に存在する三重項酸素にエネルギーを譲渡することにより、一重項酸素を発生させる。
【0019】
光増感色素は、470nm~520nm付近に光吸収極大を有する。可視光の波長領域が凡そ380nm~780nmであるから、光増感色素は可視光領域の光に応答し、反応する。また、光増感色素は、550nm~600nm付近に蛍光極大を有する。
【0020】
光増感色素は、高い一重項酸素発生量子収率を発揮する。なお、後述の実施例に示すように、式1aにおいて、R及びRが水素で表される光増感色素では、一重項酸素発生量子収率が1である。
【0021】
光増感色素は、色素増感型有機太陽電池用色素として利用可能である。色素増感型有機太陽電池として、例えば、透明基板と、透明基板上に設けられている透明導電膜を有する負極と、負極に対向して配置されている正極と、負極に設けられている酸化物半導体層と、負極及び正極の間に設けられる電解質とを備え、酸化物半導体層に光増感色素が吸着している構造が挙げられる。
【0022】
このような色素増感型有機太陽電池に光照射をすると、負極の酸化物半導体に化学吸着している光増感色素が光励起し、続いて、光増感色素から酸化物半導体への電子注入が起こり、光増感色素が酸化される。そして、酸化されて電子を失った光増感色素は、電解質中のヨウ素等の還元剤から電子を奪って還元され、還元剤は正極から電子を受け取り元に戻る。
【0023】
一般的な酸化物半導体ではバンドギャップエネルギーが大きく、太陽光に凡そ3%程度しか含まれない紫外光しか利用することができない。しかし、色素増感色素は、可視光により励起するため、色素増感色素を用いた色素増感型有機太陽電池では、太陽光の凡そ50%を占める可視光を利用できるので、太陽光エネルギーをより効率的に利用した発電を実現できる。
【0024】
また、光増感色素は、可視光応答型光触媒として利用可能である。所謂光触媒としての利用であれば、その用途に制限はなく、例えば、水の光分解のための可視光応答型光触媒として利用可能である。
【0025】
光増感色素を用いた水の光分解では、光増感色素を吸着させた粒子状の酸化物半導体の粉末を水中に分散させる。なお、酸化物半導体の表面には、表面における水素発生や酸素発生反応を促進するために、金属や金属酸化物のナノ粒子(助触媒)が修飾されていてもよい。
【0026】
光照射によって、光増感色素が励起し、酸化物半導体への電子注入が起こる。これにより、酸化物半導体では、価電子帯の電子が伝導帯へ励起され、伝導帯に電子が生成するとともに、価電子帯に正孔が生成する。そして、電子が水素イオンを還元して水素を発生させるとともに、正孔が水を酸化し酸素を発生させる。
【0027】
上述のように、一般的な酸化物半導体ではバンドギャップエネルギーが大きく、太陽光に凡そ3%程度しか含まれない紫外光しか利用することができない。しかし、色素増感色素は、可視光により励起するため、色素増感色素を利用した水の光分解では、太陽光の凡そ50%を占める可視光を利用できるので、太陽光エネルギーをより効率的に利用し、水素を製造することができる。
【0028】
光増感色素は、上述した色素増感型有機太陽電池用色素、及び、可視光応答型触媒として、酸化物半導体表面に吸着させて利用される場合、光増感色素が電極への凝集を抑える観点から、式1b中のRが長鎖アルキル基である光増感色素であることが好ましい。式1b中のRが長鎖アルキル基である場合、式1bで表される光増感色素が相互作用によって離間して電極に吸着、配置されるので、上記の不都合を避けることができる。また、長鎖アルキル基は、炭素数1~12であることが好ましく、直鎖状でも分岐鎖状であってもよい。
【0029】
また、光増感色素は、光線力学的療法の光増感剤としての利用も期待される。光線力学的療法では、生体内に光増感色素を注入し、標的となる生体組織に吸着させる。そして、標的の生体組織に特定の波長の光を照射する。光増感色素は光励起一重項状態を形成し、項間交差により励起三重項状態へと移り、規程三重項酸素とのエネルギー移動を伴う項間交差により一重項酸素を発生させる。活性な一重項酸素によって癌や感染症などの病巣を破壊することで治療する。
【0030】
光線力学的療法では、410nmや630nmなど、可視光領域の波長の光を照射している。光増感色素は、可視光領域の波長を吸収し、励起することから、光線力学的療法への応用も期待できる。
【0031】
(光増感色素の製造方法)
式1aの光増感色素は、下記スキーム1に従って合成することができる。
【0032】
【化8】
【0033】
式21で表される化合物とN-メチル-o-フェニレンジアミンとを溶媒に溶解させて反応させる。溶媒として、炭素数2~6のアルコールを含有する溶媒を用いることが好ましい。反応方法は特に制限されないが、加熱環流で行うことが好ましい。加熱環流の場合、反応温度は溶媒の沸点より高い温度で行えばよく、溶媒の沸騰、凝縮が繰り返される状態にて、式21で表される化合物とN-メチル-o-フェニレンジアミンとの反応が進行する。反応後は、冷却して反応生成物(固体)を分取し、乾燥することにより、式1aで表される光増感色素が得られる。
【0034】
また、式1bの光増感色素は、下記スキーム2に従って合成することができる。
【0035】
【化9】
【0036】
式1aで表される化合物を溶媒に溶解する。溶媒として、N,N-ジメチルホルムアミド等を用いることができる。次いで、酸化剤を添加する。酸化剤として、水素化ナトリウム等を用いることができる。そして、式31で表される化合物を添加して反応させる。なお、式31中のXは塩素、臭素等のハロゲンを表し、Rは、上記と同様である。反応後、反応生成物を分取し、乾燥させることで、式1bで表される化合物を合成することができる。
【実施例0037】
(化合物1の合成)
下記の反応式に示すように、化合物1を合成した。
【0038】
【化10】
【0039】
大気条件下、2,5-Dihydroxy-1,4-benzoquinone(145mg(1.04mmol))とN-methyl-o-phenylenediamine(127mg(1.04mmol))をエタノール(40mL)に溶かし、80℃で約3時間加熱還流した。シリカTLCでN-methyl-o-phenylenediamineのスポットが消失していたのを確認し、加熱撹拌を止めて、氷水で冷やし、吸引ろ過で沈殿した固体を分取した。その後、固体を真空乾燥させ、黒色固体の化合物1(146mg(0.645mmol,収率62%))を得た。
【0040】
化合物1の測定結果を以下に示す。
m.p. over 300℃;
IR (ATR): v = 3179, 1587, 1572, 1545, 1501 cm-1;
1H NMR (400 MHz, Acetone-d6): δ = 7.94-8.03 (m, 2H, aromatic), 7.75 (dd, J = 7.1 Hz, 1.5 Hz, 1H, aromatic), 7.54 (dd, J = 7.0 Hz, 1.0 Hz, 1H, aromatic), 6.91 (s, 1H, aromatic), 6.38 (s, 1H, aromatic), 4.07 (s, 3H, CH3) ppm;
13C NMR (125 MHz, Acetone-d6): δ = 176.9, 156.58, 149.15, 137.09, 131.56, 130.95, 125.14, 115.69, 105.82, 96.66, 34.92;
HRMS (APCI): m/z found 227.08127 [M+H]+, calculated for C13H11N2O2 [M+H]+: 227.08150;.
【0041】
(化合物2の合成)
下記の反応式に示すように、化合物2を合成した。
【0042】
【化11】
【0043】
化合物1(46.8mg(0.207mmol))をDMF(N,N-dimethylformamide)(30mL)に溶かし、0℃で20分間撹拌した。その後、水素化ナトリウム(83.5mg(60% suspension in paraffin oil,2.09mmol))を入れ、0℃で25分間撹拌した。その後、クロロメチルメチルエーテル(150μL(1.98mmol))を加えて0℃で10分間撹拌した後、室温で24時間撹拌した。その後、水を加えて反応を止め、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ液を濃縮して茶色固体の化合物2(35.5mg(0.131mmol,収率63%))を得た。
【0044】
化合物2の測定結果を以下に示す。
m.p. : 195 - 198 °C;
IR (ATR): v = 2967, 2918, 2828, 1630, 1591 cm-1;
1H NMR (500 MHz, Acetone-d6): δ = 7.92 (dd, J = 8.1 Hz, 1.5 Hz, 1H, aromatic), 7.86 (d, J = 8.7 Hz, 1H, aromatic), 7.70 (dd, J = 7.0 Hz, 1.5 Hz, 1H, aromatic), 7.46 (dd, J = 7.0 Hz, 1.2 Hz, 1H, aromatic), 7.03 (s, 1H, aromatic), 6.17 (s, 1H, aromatic), 5.39 (s, 2H, CH2), 3.91 (s, 3H, CH3), 3.50 (s, 3H, CH3) ppm;
13C NMR (125 MHz, Acetone-d6): δ = 177.56, 156.98, 149.54, 136.77, 131.91, 131.14, 124.61, 115.36, 110.68, 99.93, 95.55, 56.90, 34.35;
HRMS (APCI): m/z found 271.10785 [M+H]+, calculated for C15H15N2O3 [M+H]+: 271.10772.
【0045】
(化合物3の合成)
下記の反応式に示すように、化合物3を合成した。
【0046】
【化12】
【0047】
化合物1(46.0mg(0.203mmol))をDMF((N,N-dimethylformamide)(30mL))に溶かし、0℃で20分間撹拌した。その後、水素化ナトリウム(39.5mg(60% suspension in paraffin oil,0.988mmol))を入れ、0℃で90分間撹拌した。その後、4-クロロベンゾイルクロリド(128μL(1.00mmol))を加えて0℃で10分間撹拌した後、室温で14時間撹拌した。その後、水を加えて反応を止め、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ液を濃縮して得た粗生成物をトルエンに溶かしてゲル浸透クロマトグラフィーにより精製し、赤色固体の化合物3(46.6mg(0.128mmol,収率63%))を得た。
【0048】
化合物3の測定結果を以下に示す。
m.p. : 233-236℃;
IR (ATR): v = 3067, 3044, 2924, 2853, 1923 cm-1;
1H NMR (400 MHz, Acetone-d6): δ = 8.15-8.24 (m, 2H, aromatic), 8.02 (dd, J = 8.1 Hz, 1.6 Hz, 1H, aromatic), 7.96 (dd, J = 8.8 Hz, 0.88 Hz, 1H, aromatic), 7.83 (dd, J = 7.0 Hz, 1.5 Hz, 1H, aromatic), 7.63-7.70 (m, 2H, aromatic), 7.59 (s, 1H, aromatic), 7.54 (dd, J = 6.9 Hz, 1.1 Hz, 1H, aromatic), 6.29 (s, 1H, aromatic), 4.00 (s, 3H, CH3) ppm
13C NMR (100MHz, Acetone-d6): δ =175.70, 163.86, 153.47, 148.20, 140.64, 139.00, 136.84, 133.66, 132.94, 132.84, 132.36, 131.93, 130.09, 129.09, 125.14, 123.08, 115.78. 100.00, 34.79;
HRMS (APCI): m/z found 365.06912 [M+H]+, calculated for C20H14N2O3Cl [M+H]+: 365.06875.
【0049】
また、合成した化合物1~3について、単結晶X線構造解析を行った。その結果を図1図3に示す。図1~3から、いずれもフェナジノン系骨格の化合物1~3が合成されていることを確認した。
【0050】
合成した化合物1~3について、溶媒(テトラヒドロフラン)に溶解し、光吸収スペクトル、蛍光スペクトルを測定した。化合物1~3の光吸収スペクトルを図4に、また、蛍光スペクトルを図5に示す。図4から、化合物1~3は、500nm付近(470nm~520nm)に光吸収極大波長を有している。また、図5から、化合物1~3は、600nm付近(560~600nm)に蛍光極大波長を有している。化合物1~3は、可視光領域で光を吸収し、蛍光を発することがわかる。
【0051】
続いて、化合物1~3について、DPBF(1,3-Diphenylisobenzofuran)を用いたスカベンジャー法により、一重項酸素発生量子収率(φΔ)を測定した。光吸収極大波長、蛍光極大波長、一重項酸素発生量子収率を表1にまとめた。
【0052】
【表1】
【0053】
いずれの化合物も可視光による光増感特性を有し、一重項酸素発生能力を有することがわかる。特に化合物1では、一重項酸素発生量子収率が1であり、非常に有用であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
光増感色素は、色素増感型有機太陽電池や可視光応答型光触媒、光線力学的療法への利用が期待される。
図1
図2
図3
図4
図5