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特開2023-40681基材積層体、光学積層体、基材積層体の製造方法、及び偏光板の製造方法
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  • 特開-基材積層体、光学積層体、基材積層体の製造方法、及び偏光板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040681
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】基材積層体、光学積層体、基材積層体の製造方法、及び偏光板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20230315BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20230315BHJP
   B32B 27/36 20060101ALN20230315BHJP
   B32B 27/30 20060101ALN20230315BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/023
B32B27/36
B32B27/30 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147798
(22)【出願日】2021-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】藤井 幹士
【テーマコード(参考)】
2H149
4F100
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB26
2H149BA02
2H149EA02
2H149EA28
2H149FA24W
2H149FB01
2H149FC03
2H149FD33
4F100AK21B
4F100AK41A
4F100AT00
4F100BA06
4F100EC012
4F100EH012
4F100EJ052
4F100EJ122
4F100EJ542
4F100EJ552
4F100GB48
4F100JK06
4F100JN10
(57)【要約】
【課題】偏光板の製造過程で作製される光学積層体の端部片を容易に除去することができる基材積層体の提供。
【解決手段】基材積層体Aは、基材層2と、基材層2の表面に直接積層された表面処理層3と、を備える。基材積層体Aは、基材層2の表面に略平行な方向において対向する一対の端部AEと、一対の端部AEの間に位置する中央部ACと、を含む。基材積層体Aの少なくとも一方の端部AEにおける表面処理層3に対する基材層2の剥離強度は、Ieと表される。基材積層体Aの中央部ACにおける表面処理層3に対する基材層2の剥離強度は、Icと表される。Ieは、Icよりも高い。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、前記基材層の表面に直接積層された表面処理層と、を備える基材積層体であって、
前記基材積層体は、前記基材層の前記表面に略平行な方向において対向する一対の端部と、前記一対の前記端部の間に位置する中央部と、を含み、
少なくとも一方の前記端部における前記表面処理層に対する前記基材層の剥離強度は、Ieと表され、
前記中央部における前記表面処理層に対する前記基材層の剥離強度は、Icと表され、
Ieは、Icよりも高い、
基材積層体。
【請求項2】
前記Ieは、前記Icよりも高く、且つ0.40N/25mm以上であり、
前記Icは、前記Ieよりも低く、且つ0.55N/25mm以下である、
請求項1に記載の基材積層体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の基材積層体と、偏光子層と、を備え、
前記偏光子層は、前記基材積層体に含まれる前記表面処理層の表面に直接又は間接的に積層されており、
前記偏光子層は、重合性液晶化合物の重合体、及び二色性色素を含む、
光学積層体。
【請求項4】
前記表面処理層の前記表面に略平行な方向において、前記基材積層体の少なくとも一方の前記端部は、前記偏光子層の外周で囲まれた領域の外側に位置する、
請求項3に記載の光学積層体。
【請求項5】
接着剤層と、他の樹脂層と、を備え、
前記接着剤層は、前記偏光子層の表面に直接又は間接的に積層されており、
前記他の樹脂層は、前記接着剤層の表面に直接積層されている、
請求項3又は4に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記他の樹脂層は、位相差層である、
請求項5に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記表面処理層の前記表面に略平行な方向において、前記基材積層体の少なくとも一方の前記端部は、前記接着剤層の外周で囲まれた領域の外側に位置する、
請求項5又は6に記載の光学積層体。
【請求項8】
前記表面処理層の前記表面に略平行であり、且つ前記接着剤層の外周に略垂直な方向において、前記基材積層体の少なくとも一方の前記端部の幅は、0.1mm以上55mm未満である、
請求項7に記載の光学積層体。
【請求項9】
前記表面処理層の前記表面に略平行な方向において、前記偏光子層の少なくとも一方の端部は、前記接着剤層の外周で囲まれた領域の外側に位置する、
請求項5~8のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の基材積層体を製造する方法であって、
前記表面処理層を前記基材層の表面に直接積層して積層体を得る工程と、
前記積層体を巻回してロールを得る工程と、
前記ロールの対向する一対の端面のうち少なくとも一方の前記端面を加熱する工程と、
を備える、
基材積層体の製造方法。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の基材積層体を製造する方法であって、
前記基材層の対向する一対の端部のうち少なくとも一方の前記端部においてコロナ処理を行う工程と、
前記コロナ処理後、前記表面処理層を前記基材層の表面に直接積層する工程と、
を備える、
基材積層体の製造方法。
【請求項12】
請求項3~9のいずれか一項に記載の光学積層体から、前記基材層を剥離する工程を備える、
偏光板の製造方法。
【請求項13】
表面処理層を基材層の表面に直接積層する工程と、
偏光子層を、前記表面処理層の表面に直接又は間接的に積層する工程と、
他の樹脂層を、接着剤層を介して、前記偏光子層の表面に直接又は間接的に積層する工程と、
前記他の樹脂層を、前記接着剤層を介して、前記偏光子層の前記表面に直接又は間接的に積層する前記工程後、前記基材層及び前記表面処理層其々の端部を同時に加熱する工程と、
前記基材層及び前記表面処理層其々の前記端部を同時に加熱する前記工程後、前記基材層を剥離する工程と、
を備え、
前記基材層及び前記表面処理層其々の前記端部を同時に加熱する前記工程により、前記表面処理層の前記端部に対する前記基材層の前記端部の剥離強度は高まり、
前記偏光子層は、重合性液晶化合物の重合体、及び二色性色素を含む、
偏光板の製造方法。
【請求項14】
前記他の樹脂層は、位相差層である、
請求項13に記載の偏光板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基材積層体、光学積層体、基材積層体の製造方法、及び偏光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、テレビ、コンピュータ、スマートフォン、スマートウォッチ、携帯ゲーム機又は車両の計器パネル等の画像表示装置(液晶ディスプレイ、又は有機ELディスプレイ等)に用いられる。偏光板は、保護層(保護フィルム)、偏光子層、接着剤層及び位相差層等の複数の層を積層することによって製造される。(下記特許文献1~4参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-028133号公報
【特許文献2】特開2017-83843号公報
【特許文献3】国際公開第2020/122117号
【特許文献4】国際公開第2020/179864号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
偏光板の製造方法は、例えば、表面処理層(ハードコート層等)を、基材層(PETフィルム等)に直接積層して基材積層体を得る工程と、偏光子層を、基材積層体に含まれる表面処理層に直接又は間接的に積層する工程と、他の樹脂層(位相差層等)を、接着剤層を介して偏光子層に直接又は間接的に積層する工程と、を備える。少なくともこれらの工程によって光学積層体が作製される。そして基材層を光学積層体から剥離することにより、偏光板が得られる。
【0005】
接着剤層は、接着剤層が直接積層される被接着層(例えば、偏光子層、偏光子層を覆うオーバーコート層、又は位相差層)の表面全体を覆うことが望ましい。しかし、被接着層の表面の端部は接着剤層で覆われ難い傾向がある。被接着層の表面の端部において接着剤層で覆われない部分は、「未被覆部」と表記される。接着剤層と基材層との間に積層された複数の層(例えば、表面処理層及び偏光子層)其々の端部において未被覆部と間接的に重なる部分は、未被覆部と共に「端部片」を構成する。換言すれば、端部片とは、偏光板の製造過程で作製される上記の光学積層体の端部において、接着剤層によって直接又は間接的に固定されていない部分である。端部片は、接着剤層によって固定されていないので、偏光板の製造過程において、上記の光学積層体から脱落し易い。重合性液晶化合物の重合体及び二色性色素を含む偏光子層は、ポリビニルアルコールを含む従来の偏光子層(延伸フィルム)に比べて、薄くて破損し易い。したがって、光学積層体に含まれる偏光子層が、重合性液晶化合物の重合体及び二色性色素を含む場合、端部片は光学積層体から脱落し易い。光学積層体から脱落した端部片は、偏光板の製造ラインを汚染する。その結果、端部片が異物として偏光板へ混入され易く、偏光板の品質が低下する。基材層を光学積層体から剥離する前に光学積層体の端部を切除することにより、端部片を光学積層体から除去することができる。しかし、光学積層体の端部が切除される場合、偏光板の製造に要する工数が増加し、偏光板の生産性が低下する。更に、光学積層体の端部が切除される場合、切除する必要のない正常な端部が端部片と共に切除され易く、光学積層体の端部を構成する原料が無駄になる。その結果、偏光板の生産性が低下する。
【0006】
本発明の一側面の目的は、偏光板の製造過程で作製される光学積層体の端部片を容易に除去することができる基材積層体、光学積層体、基材積層体の製造方法、及び偏光板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る基材積層体は、基材層と、基材層の表面に直接積層された表面処理層と、を備える。基材積層体は、基材層の表面に略平行な方向において対向する一対の端部と、一対の端部の間に位置する中央部と、を含む。基材積層体の少なくとも一方の端部における表面処理層に対する基材層の剥離強度は、Ieと表される。基材積層体の中央部における表面処理層に対する基材層の剥離強度は、Icと表される。Ieは、Icよりも高い。
【0008】
Ieは、Icよりも高く、且つ0.40N/25mm以上であってよい。Icは、Ieよりも低く、且つ0.55N/25mm以下であってよい。
【0009】
本発明の一側面に係る光学積層体は、上記の基材積層体と、偏光子層と、を備える。偏光子層は、基材積層体に含まれる表面処理層の表面に直接又は間接的に積層されている。偏光子層は、重合性液晶化合物の重合体、及び二色性色素を含む。
【0010】
表面処理層の表面に略平行な方向において、基材積層体の少なくとも一方の端部は、偏光子層の外周で囲まれた領域の外側に位置してよい。
【0011】
本発明の一側面に係る光学積層体は、接着剤層と、他の樹脂層と、を備えてよい。接着剤層は、偏光子層の表面に直接又は間接的に積層されていてよい。他の樹脂層は、接着剤層の表面に直接積層されていてよい。
【0012】
本発明の一側面に係る光学積層体において、他の樹脂層は、位相差層であってよい。
【0013】
表面処理層の表面に平行な方向において、基材積層体の少なくとも一方の端部が、接着剤層の外周で囲まれた領域の外側に位置してよい。
【0014】
表面処理層の表面に略平行であり、且つ接着剤層の外周に略垂直な方向において、基材積層体の少なくとも一方の端部の幅は、0.1mm以上55mm未満であってよい。
【0015】
表面処理層の表面に平行な方向において、偏光子層の少なくとも一方の端部は、接着剤層の外周で囲まれた領域の外側に位置してよい。
【0016】
本発明の一側面に係る基材積層体の製造方法は、上記の基材積層体を製造する方法であり、表面処理層を基材層の表面に直接積層して積層体を得る工程と、積層体を巻回してロールを得る工程と、ロールの対向する一対の端面のうち少なくとも一方の端面を加熱する工程と、を備える。
【0017】
本発明の他の一側面に係る基材積層体の製造方法は、上記の基材積層体を製造する方法であり、基材層の対向する一対の端部のうち少なくとも一方の端部においてコロナ処理を行う工程と、コロナ処理後、表面処理層を基材層の表面に直接積層する工程と、を備える。
【0018】
本発明の一側面に係る偏光板の製造方法は、上記の光学積層体から、基材層を剥離する工程を備える。
【0019】
本発明の他の一側面に係る偏光板の製造方法は、表面処理層を基材層の表面に直接積層する工程と、偏光子層を、表面処理層の表面に直接又は間接的に積層する工程と、他の樹脂層を、接着剤層を介して、偏光子層の表面に直接又は間接的に積層する工程と、他の樹脂層を、接着剤層を介して、偏光子層の表面に直接又は間接的に積層する工程後、基材層及び表面処理層其々の端部を同時に加熱する工程と、基材層及び表面処理層其々の端部を同時に加熱する工程後、基材層を剥離する工程と、を備える。基材層及び表面処理層其々の端部を同時に加熱する工程により、表面処理層の端部に対する基材層の端部の剥離強度は高まる。偏光子層は、重合性液晶化合物の重合体、及び二色性色素を含む。
【0020】
本発明の他の一側面に係る偏光板の製造方法において、他の樹脂層は、位相差層であってよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一側面によれば、偏光板の製造過程で作製される光学積層体の端部片を容易に除去することができる基材積層体、光学積層体、基材積層体の製造方法、及び偏光板の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る基材積層体の断面を示しており、当該断面は、基材積層体の積層方向に略平行であり、基材積層体に含まれる基材層の表面に略垂直である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る光学積層体の断面を示しており、当該断面は、光学積層体の積層方向に略平行であり、光学積層体に含まれる表面処理層の表面に略垂直である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る光学積層体に含まれる表面処理層の表面、表面処理層の表面に重なる偏光子層の外周、及び表面処理層の表面に重なる接着層の外周を示す。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る光学積層体から基材層を剥離することによって得られる偏光板の断面を示しており、当該断面は、光学積層体及び偏光板其々の積層方向に略平行であり、光学積層体及び偏光板に含まれる表面処理層の表面に略垂直である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態(第一実施形態)が説明される。図面において、同等の構成要素には同等の符号が付される。本発明は下記実施形態に限定されるものではない。各図に示すX,Y及びZは、互いに直交する3つの座標軸を意味する。各図中のXYZ座標軸其々が示す方向は各図に共通する。X軸方向は、基材積層体、光学積層体及び偏光板其々に含まれる各層の幅方向と言い換えられてよい。Y軸方向は、基材積層体、光学積層体及び偏光板其々に含まれる各層の長手方向又は搬送方向と言い換えられてよい。Z軸方向は、基材積層体、光学積層体及び偏光板其々の積層方向と言い換えられてよい。
【0024】
(基材積層体、光学積層体、偏光板、及び偏光板の製造方法)
図1に示されるように、第一実施形態に係る基材積層体Aは、少なくとも基材層2と、基材層2の表面に直接積層された表面処理層3と、を備える。基材層2及び表面処理層3其々は、後述される樹脂(高分子化合物)を含む層であってよい。表面処理層3は、第一保護層、又はハードコート層と言い換えられてよい。表面処理層3は基材層2の表面全体を覆っていてよい。表面処理層3が積層された表面の裏に位置する基材層2の表面には、基材用保護層1(基材用保護フィルム)が直接積層されていてよい。基材積層体Aは、基材層2の表面に略平行な方向(X軸方向)において対向する一対の端部AEと、一対の端部AEの間に位置する中央部ACと、を含む。中央部ACとは、基材層2の表面に略垂直な基材積層体Aの断面において、基材積層体Aの一対の端部AEの間に位置する部分と言い換えられてよい。基材積層体Aの少なくとも一方の端部AEにおける表面処理層3に対する基材層2の剥離強度は、Ieと表される。基材積層体Aの両方の端部AE其々における表面処理層3に対する基材層2の剥離強度が、Ieと表されてもよい。基材積層体Aの中央部ACにおける表面処理層3に対する基材層2の剥離強度は、Icと表される。Ieは、Icよりも高い。基材積層体Aの一方の端部AEにおける表面処理層3に対する基材層2の剥離強度は、基材積層体Aの他方の端部AEにおける表面処理層3に対する基材層2の剥離強度と等しくてよい。基材積層体Aの一方の端部AEにおける表面処理層3に対する基材層2の剥離強度は、基材積層体Aの他方の端部AEにおける表面処理層3に対する基材層2の剥離強度と異なってもよい。剥離強度の単位は、N/25mmである。例えば、剥離強度は、日本産業規格(JIS Z 0237)に準拠する180度剥離試験によって測定される。基材層2は、基材積層体Aの中央部ACに位置する表面処理層3から容易に剥離することができる。基材積層体Aの中央部ACに位置する表面処理層3は、基材層2の剥離に伴って破損し難い。
【0025】
第一実施形態に係る光学積層体は、少なくとも基材積層体Aと、偏光子層と、を備える。偏光子層は、基材積層体に含まれる表面処理層の表面に直接又は間接的に積層される。偏光子層は、重合性液晶化合物の重合体、及び二色性色素を含む。
【0026】
光学積層体は、基材積層体A及び偏光子層に加えて、接着剤層と、他の樹脂層と、を更に備えてよい。接着剤層(後述される第一接着剤層)は、偏光子層の表面に直接又は間接的に積層される。他の樹脂層は、接着剤層の表面に直接積層される。換言すれば、他の樹脂層は、接着剤層を介して偏光子層の表面に直接又は間接的に積層される。例えば、他の樹脂層は、位相差層、光学補償層又は保護層(後述される第三保護層)であってよい。
光学積層体を構成する任意の2つの層がA層及びB層と表記される場合、A層に直接積層されたB層とは、他の層を介することなくA層に積層されたB層を意味する。A層に間接的に積層されたB層とは、他の層を介してA層に積層されたB層を意味する。
【0027】
図2は、光学積層体の積層構造の一例を示す。ただし、第一実施形態に係る光学積層体の積層構造は、図2に示される構造に限定されない。図2に示される光学積層体Bは、基材積層体Aと、基材積層体Aに含まれる表面処理層3(第一保護層)の表面に直接積層された配向層4と、配向層4の表面に直接積層された偏光子層5と、偏光子層5の表面に直接積層された第二保護層6(オーバーコート層)と、第二保護層6の表面に直接積層された第一接着剤層7と、第一接着剤層7の表面に直接積層された位相差層8(他の樹脂層)と、位相差層8の表面に直接積層された第二接着剤層9と、第二接着剤層9の表面に直接積層された光学補償層10と、光学補償層10の表面に積層された第三保護層11と、を備える。光学積層体に含まれる各層の厚みは、略均一であってよい。光学積層体Bの積層方向(偏光子層5の厚み方向)に略垂直な方向における光学積層体B及び各層の形状は、画像表示装置の画面の形状と略同じであってよい。例えば、光学積層体Bの積層方向(偏光子層5の厚み方向)に略垂直な方向における光学積層体B及び各層の形状は、矩形(長方形又は正方形)であってよい。ただし、光学積層体Bの積層方向(偏光子層5の厚み方向)に略垂直な方向における光学積層体B及び各層の形状は限定されない。一つ以上の切欠き部(ノッチ)が光学積層体Bの端部に形成されていてよい。一つ以上の貫通穴が光学積層体Bに形成されていてもよい。
【0028】
図2及び図3に示されるように、表面処理層3の表面に略平行な方向(X軸方向)において、基材積層体Aの一方の端部AEの一部又は全部が、第一接着剤層7の外周7cで囲まれた領域の外側に位置してよい。つまり、表面処理層3の表面に略平行な方向において、基材積層体Aの少なくとも一方の端部AEは、第一接着剤層7の端部よりも突出していてよい。表面処理層3の表面に略平行な方向において、基材積層体Aの両方の端部AE其々の一部又は全部が、第一接着剤層7の外周7cで囲まれた領域の外側に位置してよい。
【0029】
図2及び図3に示されるように、表面処理層3の表面に略平行な方向において、基材積層体Aの少なくとも一方の端部AEは、偏光子層5の外周5cで囲まれた領域の外側に位置してよい。つまり、表面処理層3の表面に略平行な方向において、基材積層体Aの少なくとも一方の端部AEは、偏光子層5の端部よりも突出していてよい。表面処理層3の表面に略平行な方向において、基材積層体Aの両方の端部AE其々の一部又は全部が、偏光子層5の外周5cで囲まれた領域の外側に位置してよい。
【0030】
図2及び図3に示されるように、表面処理層3の表面に略平行な方向において、偏光子層5の少なくとも一方の端部の一部又は全部は、第一接着剤層7の外周7cで囲まれた領域の外側に位置してよい。つまり、表面処理層3の表面に略平行な方向において、偏光子層5の少なくとも一方の端部は、第一接着剤層7の端部よりも突出していてよい。表面処理層3の表面に略平行な方向において、偏光子層5の両方の端部其々の一部又は全部が第一接着剤層7の外周7cで囲まれた領域の外側に位置してよい。
【0031】
図2に示されるように、表面処理層3の表面に略平行な方向において、配向層4の少なくとも一方の端部は、第一接着剤層7の端部よりも突出してよい。表面処理層3の表面に略平行な方向において、配向層4の両方の端部が、第一接着剤層7の端部よりも突出してよい。
【0032】
図2に示されるように、表面処理層3の表面に略平行な方向において、第二保護層6の少なくとも一方の端部は、第一接着剤層7の端部よりも突出してよい。表面処理層3の表面に略平行な方向において、第二保護層6の両方の端部が、第一接着剤層7の端部よりも突出していてよい。
【0033】
表面処理層3の表面に平行な方向において第一接着剤層7の端部よりも突出する第二保護層6の両端部は、第一接着剤層7で覆われていない一対の未被覆部である。第一接着剤層7と基材層2との間に積層された表面処理層3(第一保護層)、配向層4、及び偏光子層5其々の両端部は、一対の未被覆部(第二保護層6の両端部)と間接的に重なる。換言すれば、表面処理層3、配向層4、偏光子層5及び第二保護層6其々の両端部は、表面処理層3の表面に平行な方向において第一接着剤層7の端部よりも突出している。したがって、表面処理層3、配向層4、及び偏光子層5其々の両端部は、一対の未被覆部と共に一対の端部片Eを構成する。一対の端部片Eは、第一接着剤層7によって固定されていないので、偏光板の製造過程において、光学積層体Bから脱落し易い。
【0034】
図4に示されるように、偏光板Cの製造方法は、上記の光学積層体Bから、基材層2(及び基材用保護層1)を剥離する工程を備える。
【0035】
第一接着剤層7と基材層2との間において互いに接する一対の層(つまり、表面処理層3及び配向層4、配向層4及び偏光子層5、並びに偏光子層5及び第二保護層6)は、これらの積層過程において互いに強固に密着している。つまり、第一接着剤層7と基材層2との間において互いに接する一対の層は、互いに剥離し難い。対照的に、基材積層体Aの中央部ACにおける表面処理層3に対する基材層2の剥離強度Icは十分に低い。つまり、基材層2の中央部は表面処理層3から容易に剥離される。
一方、基材積層体Aの両端部AE其々における表面処理層3に対する基材層2の剥離強度IeはIcよりも高い。つまり、基材層2の両端部は、基材層2の中央部に比べてより強固に表面処理層3に密着している。つまり、基材層2の両端部は表面処理層3から剥離され難い。したがって、基材層2の中央部を表面処理層3から剥離することに伴って、基材層2の両端部に密着した一対の端部片Eを、基材層2と共に光学積層体Bの端部から容易に分離することができる。
光学積層体Bからの基材層2(及び基材用保護層1)の剥離によって得られる偏光板Cの積層構造は、基材層2、基材用保護層1及び端部片Eを除いて、光学積層体Bの上記積層構造と同じであってよい。
【0036】
第一実施形態によれば、光学積層体Bからの基材層2の剥離によって、基材層2の両端部に密着した一対の端部片Eを光学積層体Bの端部から容易に除去できる。その結果、偏光板の製造過程における光学積層体Bからの端部片Eの脱落を抑制することができる。光学積層体Bからの端部片Eの脱落を抑制することにより、端部片Eによる偏光板Cの製造ラインの汚染が抑制され、偏光板Cへの端部片Eの混入が抑制される。その結果、偏光板Cの品質が向上する。
【0037】
第一実施形態によれば、端部片Eを光学積層体Bから除去するために、基材層2が隔離される前の光学積層体Bの端部を切除する従来の工程は不要である。その結果、偏光板Cの製造に要する工数が減少し、偏光板Cの生産性が向上する。第一実施形態によれば、切除する必要のない正常な端部を端部片と共に光学積層体Bから切除する必要がないので、端部片の除去後に偏光板Cとして利用可能な部分が光学積層体Bに残存し易く、偏光板用の原料の無駄が抑制される。その結果、偏光板Cの生産性が向上する。
【0038】
Ieは、Icよりも高く、且つ0.40N/25mm以上1.80N/25mm以下であってよい。Icは、Ieよりも低く、且つ0.05N/25mm以上0.55N/25mm以下であってよい。Ieが高いほど、基材層2の端部に端部片Eが密着し易く、基材層2の剥離によって端部片Eが光学積層体Bから除去され易い。Icが低いほど、基材積層体Aの中央部において、基材層2を表面処理層3から剥離し易く、基材層2の剥離に伴う表面処理層3の破損が抑制される。
【0039】
図3に示されるように、表面処理層3の表面に略平行であり、且つ第一接着剤層7の外周7cに略垂直な方向(X軸方向)において、基材積層体Aの少なくとも一方の端部AEの幅WAEは、0.1mm以上55mm未満であってよい。基材積層体Aの少なくとも両方の端部AE其々の幅WAEが、0.1mm以上55mm未満であってもよい。端部AEの幅WAEが0.1mm以上である場合、端部片Eの全体が基材層2の端部に付着し易く、端部片Eの全体を光学積層体Bから確実に除去し易い。端部AEの幅WAEが55mm未満である場合、端部片Eと共に光学積層体Bから除去される正常な端部が十分に少なく、端部片Eの除去後に偏光板Cとして利用可能な部分が残存し易い。
【0040】
例えば、基材用保護層1の厚みは、5μm以上100μm以下であってよい。
例えば、基材層2の厚みは、5μm以上100μm以下であってよい。
例えば、表面処理層3(第一保護層)の厚みは、0.1μm以上13μm以下、0.3μm以上8μm以下、又は0.5μm以上5μm以下であってよい。
例えば、配向層4の厚みは、10nm以上5000nm以下、10nm以上1000nm以下、10nm以上500nm以下、又は10nm以上300nm以下であってよい。
例えば、偏光子層5の厚みは、0.5μm以上10μm以下、0.5μm以上8μm以下、又は1μm以上5μm以下であってよい。
例えば、第二保護層6の厚みは、0.1μm以上13μm以下、0.3μm以上8μm以下、又は0.5μm以上5μm以下であってよい。
例えば、第一接着剤層7の厚みは、0.1μm以上15μm以下、0.5μm以上10μm以下、又は1μm以上5μm以下であってよい。
例えば、位相差層8(他の樹脂層)の厚みは、0.1μm以上10μm以下、0.5μm以上8μm以下、又は1μm以上6μm以下であってよい。
例えば、第二接着剤層9の厚みは、0.1μm以上15μm以下、0.5μm以上10μm以下、又は1μm以上5μm以下であってよい。
例えば、光学補償層10の厚みは、0.1μm以上10μm以下、0.5μm以上8μm以下、又は1μm以上6μm以下であってよい。
例えば、第三保護層11の厚みは、5μm以上100μm以下であってよい。
表面処理層3、配向層4、偏光子層5及び第二保護層6其々の厚みが上記の範囲である場合、各層が十分に薄く、基材層2の剥離に伴って各層が各層の端部において破断し易い。その結果、表面処理層3、配向層4、偏光子層5及び第二保護層6其々の端部から構成される端部片Eを光学積層体Bから除去し易い。
【0041】
(基材積層体Aの製造方法)
基材積層体Aの製造方法の一例は、表面処理層3を基材層2の表面に直接積層して積層体を得る工程と、積層体を巻回してロールを得る工程と、ロールの対向する一対の端面のうち少なくとも一方の端面を加熱する工程と、を備える。ロールの対向する一対の端面の両方を加熱してもよい。ロールの端面の加熱により、ロールの端面に位置する基材層2及び表面処理層3其々の端部が互いに強固に融着する。その結果、IeがIcよりも高い基材積層体Aが得られる。ロールの端面を加熱する手段は、火炎(例えばガスバーナー)又は輻射熱(例えば赤外線ヒーター)であってよい。
【0042】
基材積層体Aの製造方法の他の一例は、基材層2の対向する一対の端部のうち少なくとも一方の端部においてコロナ処理を行う工程と、コロナ処理後、表面処理層3を基材層2の表面に直接積層する工程と、を備える。コロナ処理は、基材層2の対向する一対の端部の両方において行われてもよい。コロナ処理により、基材層2の端部の表面が改質される。端部の表面が改質された基材層2に表面処理層3を積層することにより、表面処理層3が基材層2の端部に強固に密着する。その結果、IeがIcよりも高い基材積層体Aが得られる。
【0043】
(基材用保護層1、基材層2及び第三保護層11)
例えば、基材用保護層1、基材層2及び第三保護層11其々は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンテレフタレート等の樹脂を含むポリエステル系樹脂フィルム;シクロポリオレフィン系樹脂フィルム;トリアセチルセルロース及びジアセチルセルロース等の樹脂を含む酢酸セルロース系樹脂フィルム;ポリカーボネート系樹脂フィルム;アクリル系樹脂フィルム;メタクリル系樹脂フィルム;並びにポリプロピレン系樹脂フィルムからなる群より選ばれる一種の熱可塑性樹脂フィルムであってよい。基材用保護層1の一対の表面のうち基材層2を向く表面には、粘着剤層が形成されていてよい。
【0044】
(表面処理層3)
表面処理層3(第一保護層)は、光学積層体B及び偏光板C其々において偏光子層5(及び配向層4)を保護し、偏光子層5からの二色性色素の拡散を抑制する。例えば、表面処理層3は、紫外線硬化性樹脂の硬化物であってよい。例えば、紫外線硬化性樹脂は、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、及びエポキシ系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。表面処理層3の機械的強度を向上させるために、無機系微粒子、有機系微粒子、又はこれらの混合物が表面処理層3に添加されてよい。表面処理層3は、転写法によって基材層2の表面に積層されてよい。例えば、表面処理層3の形成方法は、未硬化の紫外線硬化性樹脂を含む塗膜を、離型剤で覆われた基材フィルムの表面に形成する工程と、塗膜を基材フィルムから基材層2の表面へ転写する工程と、基材層2の表面へ転写された塗膜を紫外線の照射によって硬化する工程を含んでよい。
【0045】
表面処理層3が、紫外線の照射により硬化されたアクリル系樹脂からなり、基材層2がポリエチレンテレフタレート(PET)からなる場合、IeがIcよりも高い基材積層体Aが形成され易く、Ie及びIc其々が上述された数値範囲内に制御され易い。
【0046】
(配向層4)
配向層4は、高分子化合物を含む膜であり、偏光子層5を構成する重合性液晶化合物を所望の方向に配向させる機能を有する。例えば、配向層4は、配向性ポリマーからなる配向膜、光配向膜及びグルブ(groove)配向膜からなる群より選ばれる一種の配向膜であってよい。
【0047】
配向性ポリマーは、分子内にアミド結合を有するポリアミド、分子内にアミド結合を有するゼラチン、分子内にイミド結合を有するポリイミド、当該ポリイミドの加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の高分子化合物であってよい。
【0048】
例えば、配向層4の形成方法は、配向性ポリマー及び溶剤を含む塗膜を表面処理層3の表面に形成する工程と、溶剤を塗膜から除去する工程と、溶剤から除去された塗膜をラビング(rubbing)法によって処理する工程を含んでよい。
【0049】
配向層4の形成に用いられる溶剤は、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル溶剤;並びにクロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素置換炭化水素溶剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤であってよい。
【0050】
光配向膜は、光反応性基を有するポリマーを含む。光配向膜の形成方法は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーと上記溶剤を含む塗膜を表面処理層3の表面に形成する工程と、偏光(好ましくは、偏光紫外線)を塗膜に照射す工程と、を含んでよい。
【0051】
光反応性基は、光を照射することにより液晶配向能を発現する官能基である。例えば、光反応性基は、光の照射により分子の配向を誘起する官能基であってよい。光反応性基は、液晶配向能の起源となる光反応(異性化反応、二量化反応、光架橋反応、又は光分解反応)を起こす官能基であってもよい。例えば、光反応性基は、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)、及び炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも一つの結合構造を有する官能基であってよい。
【0052】
C=C結合を有する光反応性基は、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ-ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基及びシンナモイル基からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。C=N結合を有する光反応性基は、芳香族シッフ塩基及び芳香族ヒドラゾンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。N=N結合を有する光反応性基は、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基、及びアゾキシベンゼン型構造からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。C=O結合を有する光反応性基は、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基及びマレイミド基からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。光反応性基を有するポリマーは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基及びハロゲン化アルキル基からなる群より選ばれる少なくとも一種の置換基を有していてもよい。
【0053】
グルブ(groove)配向膜は、表面に複数の凹凸パターン又は複数のグルブ(溝)が形成された膜である。偏光子層5を構成する重合性液晶化合物が、凹凸パターン又は複数のグルブに沿って所定の方向に配向される。
【0054】
グルブ配向膜の形成方法は、複数のスリットが形成された露光用マスクを用いた感光性ポリイミド膜の表面の露光と、露光に続く現像及びリンス処理によって、凹凸パターンを感光性ポリイミド膜の表面に形成する工程を含んでよい。グルブ配向膜の形成方法は、未硬化の紫外線硬化性樹脂を含む塗膜を、溝が形成された板状の原盤の表面に形成する工程と、塗膜を原盤から表面処理層3の表面へ転写する工程と、表面処理層3の表面に転写された塗膜を紫外線の照射によって硬化する工程とを含んでよい。グルブ配向膜の形成方法は、未硬化の紫外線硬化性樹脂を含む塗膜を、表面処理層3の表面に形成する工程と、複数の溝を有するロールの表面を塗膜の表面に押し当てる工程と、表面に溝が形成された塗膜を紫外線の照射によって硬化する工程とを含んでよい。
【0055】
(偏光子層5)
偏光子層5は、重合性液晶化合物の重合体、及び二色性色素を含む。偏光子層5の形成方法は、重合性液晶化合物、二色性色素及び溶媒を含む偏光子層用原料を配向層4の表面に塗布して、塗膜を形成する工程と、塗膜中の重合性液晶化合物を重合させる工程と、を含んでよい。例えば、特開2017-83843号公報に記載の「偏光膜形成用組成物」が、偏光子層用原料として用いられてよい。
【0056】
重合性液晶化合物は、重合性基を有し、且つ、液晶性を示す化合物である。重合性基は、重合反応に関与する基である。例えば、重合性基は、光重合性基であってよい。光重合性基は、光重合開始剤から発生した活性ラジカル又は酸等によって重合反応に関与する基であってよい。例えば、重合性基は、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基であってよい。重合性液晶化合物は、サーモトロピック液晶又はリオトロピック液晶であってよい。
【0057】
重合性液晶化合物は、ネマチック液晶相を形成するサーモトロピック性液晶化合物、スメクチック液晶相を形成するサーモトロピック性液晶化合物、又は高次スメクチック液晶相を形成するサーモトロピック性液晶化合物であってよい。重合性液晶化合物は、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相又はスメクチックL相を形成するサーモトロピック性液晶化合物であってよい。偏光性能に優れた偏光子層5のX線回折パターンは、ヘキサチック相及びクリスタル相等の高次構造に由来する回折X線のピークを含む。高次構造に由来する回折X線のピークは、分子配向の周期構造に由来するピークであってよい。分子配向の周期間隔が3~6Åであってよい。
【0058】
重合性液晶化合物は、下記化学式Aで表される少なくとも一種の化合物であってよい。
-V-W-X-Y-X-Y-X-W-V-U (A)
、X及びX其々は独立に、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、又は置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基を表す。ただし、X、X及びXのうち少なくとも一つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基である。シクロへキサン-1,4-ジイル基を構成する-CH-は、-O-、-S-又は-NR-で置換されていてもよい。Rは、炭素数が1~6であるアルキル基又はフェニル基を表す。
及びY其々は独立に、-CHCH-、-CHO-、-COO-、-OCOO-、単結合、-N=N-、-CR=CR-、-C≡C-又は-CR=N-を表す。R及びR其々は独立に、水素原子、又は炭素数が1~4であるアルキル基を表す。
は、水素原子、又は重合性基を表す。
は、重合性基を表す。
及びW其々は独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-又は-OCOO-を表す。
及びV其々は独立に、炭素数が1~20であり、且つ置換基を有していてもよいアルカンジイル基を表す。該アルカンジイル基を構成する-CH-は、-O-、-S-又は-NH-で置換されていてもよい。
【0059】
二色性色素は、300~700nmである範囲に吸収極大波長(λMAX)を有する色素であってよい。例えば、二色性色素は、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素及びアントラキノン色素からなる群より選ばれる少なくとも一種の色素であってよい。例えば、アゾ色素は、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素及びスチルベンアゾ色素からなる群より選ばれる少なくとも一種の色素であってよい。偏光子層5は、2種以上の二色性色素(特にアゾ色素)、又は3種以上の二色性色素(特にアゾ色素)を含んでよい。
【0060】
例えば、アゾ色素は、下記化学式Bで表される化合物であってよい。
(-N=N-A-N=N-A (B)
及びA其々は独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。
は、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、置換基を有していてもよいナフタレン-1,4-ジイル基、又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を表す。
pは1~4の整数を表す。pが2以上である場合、複数のAは互いに同一でもよく、複数のAは互いに異なっていてもよい。
【0061】
偏光子層用原料に用いられる溶剤は、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン及びメチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル溶剤;並びに、クロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素含有溶剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤であってよい。
【0062】
偏光子層用原料は、重合開始剤(光重合開始剤等)を含んでよい。例えば、重合開始剤は、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であってよい。
【0063】
偏光子層用原料は、重合性液晶化合物、二色性色素、溶剤、及び重合開始剤に加えて、増感剤、重合禁止剤、レベリング剤、及び反応性添加剤を更に含んでよい。
【0064】
国際公開第2020/122117号に記載の「光配向層」を、配向層4として用いてよく、同文献に記載の「液晶層」を、偏光子層5として用いてよい。国際公開第2020/179864号に記載の「光配向膜」を、配向層4として用いてよく、同文献に記載の「偏光層」を、偏光子層5として用いてよい。
【0065】
(第二保護層6)
例えば、第二保護層6は、ポリビニルアルコール系樹脂を含んでよい。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂は、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、及びアミノ基変性ポリビニルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種のポリビニルアルコールであってよい。第二保護層6の形成方法は、ポリビニルアルコール系樹脂及び水を含む塗膜を偏光子層5の表面に形成する工程と、塗膜の加熱により、塗膜を乾燥する工程と、を含んでよい。
【0066】
第二保護層6は、エポキシ化合物、オキセタン化合物及びビニル化合物等のカチオン重合性化合物の硬化物を含んでよい。第二保護層6は、ラジカル重合性化合物の硬化物を含んでもよい。
【0067】
(第一接着剤層7及び第二接着剤層9)
第一接着剤層7及び第二接着剤層9其々は、多官能アクリレート化合物及び多官能メタクリレート化合物などの(メタ)アクリレート化合物;多官能ウレタンアクリレート化合物及び多官能ウレタンメタクリレート化合物などのウレタン(メタ)アクリレート化合物;多官能エポキシアクリレート化合物及び多官能エポキシメタクリレート化合物などのエポキシ(メタ)アクリレート化合物;カルボキシル基変性エポキシアクリレート化合物、ポカルボキシル基変性エポキシメタクリレート化合物、ポリエステルアクリレート化合物、ポリエステルメタクリレート化合物、エポキシ基を有するエポキシ化合物、オキセタニル基を有するオキセタン化合物、及びビニル化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の重合性化合物の重合体(硬化物)を含んでよい。重合性化合物の重合方法(硬化方法)は、光(紫外線等)の照射、又は加熱であってよい。
重合性化合物及び溶剤を含む未硬化の第一接着剤層7が、第二保護層6又は位相差層8の表面に形成されてよく、位相差層8が未硬化の第一接着剤層7を介して第二保護層6の表面に貼合されてよく、位相差層8の貼合直後に第一接着剤層7が硬化されてよい。
重合性化合物及び溶剤を含む未硬化の第二接着剤層9が、位相差層8又は光学補償層10の表面に形成されてよく、光学補償層10が未硬化の第二接着剤層9を介して位相差層8の表面に貼合されてよく、光学補償層10の貼合直後に第二接着剤層9が硬化されてよい。
第一接着剤層7の組成は、第二接着剤層9の組成と同じであってよい。第一接着剤層7の組成は、第二接着剤層9の組成と異なってもよい。
【0068】
(位相差層8及び光学補償層10)
光学補償層10は、位相差層8とは別の位相差層と言い換えられてよい。例えば、位相差層8及び光学補償層10其々は、λ/4板及びλ/2板等のポジティブAプレート、並びにポジティブCプレート(光配向材垂直配向フィルム)からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。位相差層8及び光学補償層10其々は、上記の重合性液晶化合物を上記配向層4とは別の配向層へ塗布することによって形成されてよい。位相差層8及び光学補償層10其々を形成するための配向層の形成方法は、偏光子層5用の上記配向層4と同様であってよい。
【0069】
本発明は必ずしも上述された実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、本発明の種々の変更が可能であり、これ等の変更例も本発明に含まれる。
【0070】
例えば、本発明の第二実施形態に係る偏光板Cの製造方法は、表面処理層3を基材層2の表面に直接積層する第一工程と、偏光子層5を、表面処理層3の表面に直接又は間接的に積層する第二工程と、他の樹脂層を、第一接着剤層7を介して、偏光子層5の表面に直接又は間接的に積層する第三工程と、第三工程後、基材層2及び表面処理層3其々の端部を同時に加熱する第四工程と、第四工程後、基材層2を剥離する第五工程と、を備える。
第二実施形態において、偏光子層5は、重合性液晶化合物の重合体、及び二色性色素を含む。第二実施形態において、他の樹脂層は、位相差層8、光学補償層10又は第三保護層11であってよい。
基材層2及び表面処理層3其々の端部を同時に加熱する第四工程により、基材層2及び表面処理層3其々の端部が互いに融着する。その結果、表面処理層3の端部に対する基材層2の端部の剥離強度が高まる。一方、基材層2及び表面処理層3其々の端部以外の部分においては、表面処理層3に対する基材層2の剥離強度は変化しない。したがって、第四工程により、上述された第一実施形態と同様に、IeがIcよりも高い基材積層体Aが得られる。換言すれば、第二実施形態では、第五工程以前に実施される諸工程により、第一実施形態と同様に、光学積層体Bから得られる。したがって、第一実施形態と同様に、第二実施形態においても、基材層2を剥離する第五工程により、基材層2の端部に密着した端部片Eを光学積層体Bの端部から容易に除去することができる。
【0071】
本発明に係る偏光板は、一つ以上の位相差層を備える円偏光板又は楕円偏光板であってよい。本発明に係る偏光板は位相差層を備えない直線偏光板であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
例えば、本発明の一側面に係る基材積層体及び光学積層体は、偏光板の製造に用いられてよい。
【符号の説明】
【0073】
1…基材用保護層、2…基材層、3…表面処理層(第一保護層)、4…配向層、5…偏光子層、6…第二保護層、7…第一接着剤層、8…位相差層(他の樹脂層)、9…第二接着剤層、10…光学補償層(別の位相差層)、11…第三保護層、A…基材積層体、B…光学積層体、C…偏光板。
図1
図2
図3
図4