(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040985
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】接続継手及び接続継手を用いた建築構造物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/19 20060101AFI20230315BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20230315BHJP
F16B 7/18 20060101ALI20230315BHJP
F16B 7/20 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
E04B1/19 G
E04B1/58 505H
F16B7/18 Z
F16B7/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007348
(22)【出願日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2021147572
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(72)【発明者】
【氏名】今井 公太郎
(72)【発明者】
【氏名】久保田 愛
(72)【発明者】
【氏名】大井 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】伊東 優
(72)【発明者】
【氏名】国枝 歓
(72)【発明者】
【氏名】山口 大翔
(72)【発明者】
【氏名】菅野 成一
(72)【発明者】
【氏名】福島 佳浩
【テーマコード(参考)】
2E125
3J039
【Fターム(参考)】
2E125AA36
2E125AB16
2E125AB17
2E125AC16
2E125AG03
2E125AG12
2E125BB18
2E125BB19
2E125BB22
2E125BC02
2E125BC06
2E125BD01
2E125BE08
2E125BF01
2E125CA05
2E125CA14
3J039AA07
3J039AB03
3J039CA02
3J039GA02
3J039GA06
3J039GA07
(57)【要約】
【課題】頂部の形状に関わらず頂部に設けられる接続継手の共有化を図ることが可能となり、部材コストと組み立てにかかる作業効率を低減できる。
【解決手段】多角形枠と複数の正三角形枠とから構成される多角錐枠体の頂部P、及び隣り合う多角錐枠体の頂部P同士を接続する接続頂部を構成する頂部Pのうち少なくとも一方の頂部Pに設けられ、正角錐体の外郭を構成する線状の直線フレーム11のうち隣り合う直線フレーム11の端部同士を接続する接続継手2であって、一方の直線フレーム11の端部を一方の直線フレーム11に対して材軸回りに回転可能に支持する第1固定部と、他方の枠材の端部を他方の直線フレーム11に対して材軸回りに回転可能に支持する第2固定部と、第1固定部および第2固定部を連結する連結片と、を備え、第1固定部の第1中心軸と第2固定部の第2中心軸とのなす角度が60度である構成の接続継手を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多角形枠と複数の正三角形枠とから構成される多角錐枠体の頂部、及び隣り合う前記多角錐枠体の頂部同士を接続する接続頂部を構成する頂部のうち少なくとも一方の頂部に設けられ、前記多角錐枠体の外郭を構成する線状の枠材のうち隣り合う前記枠材の端部同士を接続する接続継手であって、
一方の枠材の端部を当該一方の枠材に対して材軸回りに回転可能に支持する第1固定部と、
他方の枠材の端部を当該他方の枠材に対して材軸回りに回転可能に支持する第2固定部と、
前記第1固定部および前記第2固定部を連結する連結片と、を備え、
前記第1固定部の第1中心軸と前記第2固定部の第2中心軸とのなす角度が60度であることを特徴とする接続継手。
【請求項2】
前記連結片は、
前記第1固定部に連結され前記第1中心軸に対して直交する方向に延びる第1連結部と、
前記第2固定部に連結され前記第2中心軸に対して直交する方向に延びる第2連結部と、を有し、
前記第1連結部と前記第2連結部とがそれぞれの延在方向を同一面内で連結され、
前記連結片は、前記第1固定部と前記第2固定部との間で屈折する折曲部を有し、前記頂部に設けられた状態で前記折曲部の内角部が前記第1中心軸と前記第2中心軸との交点を向いていることを特徴とする請求項1に記載の接続継手。
【請求項3】
前記第1連結部および前記第2連結部の延在方向の長さは、いずれか一方が他方よりも長くなるように設定されていることを特徴とする請求項2に記載の接続継手。
【請求項4】
前記第1固定部及び前記第2固定部には、それぞれ前記枠材との回転を規制する回転規制部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の接続継手。
【請求項5】
前記回転規制部材は、前記第1固定部及び前記第2固定部のそれぞれと前記枠材とを貫通する軸部材であることを特徴とする請求項4に記載の接続継手。
【請求項6】
前記連結片は、前記第1固定部側と前記第2固定部側とに着脱可能に分割されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の接続継手。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の接続継手を前記多角錐枠体の前記頂部に用いて前記枠材の端部同士が接続されていることを特徴とする接続継手を用いた建築構造物。
【請求項8】
隣接する前記多角錐枠体は、それぞれの頂部に設けられる枠材のうち隣り合う枠材同士が前記接続継手によって接続することで組み合わせられていることを特徴とする請求項7に記載の接続継手を用いた建築構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続継手及び接続継手を用いた建築構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、仮設住宅等の簡易な建築構造物として、例えば特許文献1に示されるような組み立てにかかる作業を簡単にかつ短時間で行えるプレハブ式の建物が知られている。このようなプレハブ式の構造物では、所定の大きさに設定されたプレハブ材を組み合わせることにより一定の形状や大きさ(間取り)に決められて構築されるのが一般的である。
【0003】
また、近年では、長尺の直線フレームを例えば多角錐枠体などの形状に組み合わせ、これら直線フレームによって囲まれた開口部分にシート状の面材を張設したり、板状部材で覆う構成の建築構造物が提案されている。このような直線フレームを組み合わせる構造では、上述したような多角錐枠体の頂部において接続継手を使用して直線フレームの端部同士を接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような直線フレームを適宜組み合わせて適宜な枠形状に構成する建築構造物では、組み合わせる多角錐枠体として異なる種類のものが用いられる場合、枠体の頂部で接続される直線フレームの本数や、枠体によって囲まれる隣接する側面同士の角度が一定ではない。
とくに、建築構造物の形状を自在にアレンジして空間の広さ等に自由度をもたせるほど、頂部における枠材同士の接続形態が増加する。使用する接続継手は、頂部の前記接続形態に合わせた個別の形状に製作する必要があり、このような頂部の接続形態が増えると部材コストが増大するうえ、組み立てにかかる作業効率が低下することから仮設などの簡易な建築構造物への適用は不向きであり、その点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、頂部の形状に関わらず頂部に設けられる接続継手の共有化を図ることが可能となり、部材コストと組み立てにかかる作業効率を低減できる接続継手及び接続継手を用いた建築構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る接続継手は、多角形枠と複数の正三角形枠とから構成される多角錐枠体の頂部、及び隣り合う前記多角錐枠体の頂部同士を接続する接続頂部を構成する頂部のうち少なくとも一方の頂部に設けられ、前記多角錐枠体の外郭を構成する線状の枠材のうち隣り合う前記枠材の端部同士を接続する接続継手であって、一方の枠材の端部を当該一方の枠材に対して材軸回りに回転可能に支持する第1固定部と、他方の枠材の端部を当該他方の枠材に対して材軸回りに回転可能に支持する第2固定部と、前記第1固定部および前記第2固定部を連結する連結片と、を備え、前記第1固定部の第1中心軸と前記第2固定部の第2中心軸とのなす角度が60度であることを特徴としている。
【0008】
また、本発明に係る接続継手を用いた建築構造物では、上述した接続継手を前記多角錐枠体の前記頂部に用いて前記枠材の端部同士が接続されていることを特徴としている。
【0009】
本発明では、多角錐枠体の頂部を構成する隣り合う枠材同士を接続継手を使用することにより接続することができ、さらに隣り合う多角錐枠体の頂部同士を接続継手を使用することにより接続することができる。このとき、隣り合う枠材同士の角度を60度に保持した状態で接続することができる。すなわち、第1固定部を頂部を構成する複数の枠材のうち隣り合う一方の枠材に対して、この一方の枠材の材軸と第1固定部の第1中心軸とを一致させて固定し、第2固定部を他方の枠材に対して、この他方の枠材の材軸と第2固定部の第2中心軸とを一致させて固定することで、双方の枠材同士のなす角度を60度に設定することができる。
【0010】
本発明によれば、第1固定部および第2固定部がそれぞれ枠材の材軸回りに回転可能に支持されるので、枠材によって囲まれる側面同士のなす角度に合わせて接続継手を回転させることで、枠材同士のなす角度を60度に保ったまま接続することができる。そのため、本発明では、多角錐枠体が異なる角錐体(三角錐枠体、四角錐枠体、あるいは五角錐枠体など)であっても頂部に設けられる接続継手を共有化することができる。したがって、部材のコストを抑えることができ、さらに組み立てにかかる作業時間や作業効率を低減できる。このように、本発明では、構築される建築構造物の形状の自由度を高めることができ、利用者の好みに合わせた建築構造物を構築できる。
【0011】
また、本発明では、多角錐枠体が正三角形枠を使用した枠体であることから、全体形状を変形することが可能な四角錐枠体や五角錐枠体を組み合わせる場合であっても、本発明の接続継手を使用することで形状変形させた多角錐枠体を安定した姿勢で固定することができる。
【0012】
また、本発明に係る接続継手では、前記連結片は、前記第1固定部に連結され前記第1中心軸に対して直交する方向に延びる第1連結部と、前記第2固定部に連結され前記第2中心軸に対して直交する方向に延びる第2連結部と、を有し、前記第1連結部と前記第2連結部とがそれぞれの延在方向を同一面内で連結され、前記連結片は、前記第1固定部と前記第2固定部との間で屈折する折曲部を有し、前記頂部に設けられた状態で前記折曲部の内角部が前記第1中心軸と前記第2中心軸との交点を向いていることを特徴としてもよい。
【0013】
この場合には、第1固定部、第2固定部、および連結片の延びる方向が同一の面内となるので、枠材に対して第1固定部および第2固定部を回転させたときに、連結片が前記同一の面の面外に張り出すことがなく、当該接続継手と他の枠材が干渉することを防止できる。
また、本発明では、第1固定部が第1連結部で支持され、第2固定部が第2連結部で支持され、さらに第1連結部と第2連結部とが頂点側を向く内角部が120度となる折曲部を形成した状態で一体的に設けられているので、接続継手を各固定部で枠材に対して回転させた場合であっても隣り合う枠材同士のなす角度を60度で一定の姿勢に保持した状態で固定することができる。
【0014】
また、本発明に係る接続継手は、前記第1連結部および前記第2連結部の延在方向の長さは、いずれか一方が他方よりも長くなるように設定されていることを特徴としている。
【0015】
本発明では、第1固定部における一方の枠材の長さ方向の固定位置と、第2固定部における他方の枠材の長さ方向の固定位置とをそれぞれ異なる長さ方向の位置に固定することができる。そのため、本発明では、1箇所の頂部に設けられる複数の接続継手を、隣接する接続継手同士が干渉することなく、枠材の軸方向で同じ位置に固定することができる。
【0016】
また、本発明に係る接続継手は、前記第1固定部及び前記第2固定部には、それぞれ前記枠材との回転を規制する回転規制部材が設けられていることが好ましい。
【0017】
この場合には、第1固定部及び第2固定部をそれぞれ枠材に対して回転させた所定の回転位置で回転規制部材によって固定することができる。これにより、接続継手と隣り合う一対の枠材との位置がずれることなく固定され、所望の多角錐枠体で形状保持することができる。
【0018】
また、本発明に係る接続継手は、前記回転規制部材は、前記第1固定部及び前記第2固定部のそれぞれと前記枠材とを貫通する軸部材であることが好ましい。
【0019】
この場合には、第1固定部及び第2固定部をそれぞれ枠材に対して回転させた所定の回転位置で、それら第1固定部及び第2固定部と枠材とを軸部材で貫通させることで回転を規制して固定することができる。このように、軸部材を貫通させるといった簡単な構造により回転規制構造を実現できる。
【0020】
また、本発明に係る接続継手は、前記連結片は、前記第1固定部側と前記第2固定部側とに着脱可能に分割されていることが好ましい。
【0021】
この場合には、頂部に設けられる複数の接続継手のうち最後に取り付ける接続継手が分割されているので、分割部分の片部同士を接続することで頂部の全ての枠材を接続継手によって連結することができる。
【0022】
また、本発明に係る接続継手を用いた建築構造物は、隣接する前記多角錐枠体は、それぞれの頂部に設けられる枠材のうち隣り合う枠材同士が前記接続継手によって接続することで組み合わせられていることを特徴としてもよい。
【0023】
この場合には、接続継手を使用して隣接する多角錐枠体の頂部同士の枠材を接続することで、それら多角錐枠体同士を接続することができ、これにより複数の多角錐枠体を組みわせた建築構造物を構築することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の接続継手及び接続継手を用いた建築構造物によれば、頂部の形状に関わらず頂部に設けられる接続継手の共有化を図ることが可能となり、部材コストと組み立てにかかる作業効率を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態による接続継手を用いた建築構造物の一例を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態による接続継手を用いた建築構造物の他の例を示す斜視図である。
【
図3】多角錐枠体のうち正三角錐枠体の構成を示す斜視図である。
【
図4】多角錐枠体のうち四角錐枠体の構成を示す斜視図であって、変形前と変形後の状態を示す図である。
【
図5】多角錐枠体のうち五角錐枠体の構成を示す斜視図であって、変形前と変形後の状態を示す図である。
【
図6】五角錐枠体の頂部における接続継手の接続状態を頂部側から見た図である。
【
図7】
図6に示す頂部を平面上に簡略的に展開した図である。
【
図13】三角錐枠体の頂部を下方から見た図である。
【
図14】四角錐枠体の頂部を下方から見た図である。
【
図15】五角錐枠体の頂部を下方から見た図である。
【
図16】三角錐枠体の底面部の頂部の斜視図である。
【
図17】多角錐枠体同士が接続される接続頂部の一例を示す斜視図である。
【
図18】多角錐枠体同士が接続される接続頂部の一例を示す斜視図である。
【
図19】第1変形例による正三角錐枠体の構成を示す斜視図である。
【
図20】第2変形例による四角錐枠体の構成を示す斜視図であって、変形前と変形後の状態を示す図である。
【
図21】第3変形例による五角錐枠体の構成を示す斜視図であって、変形前と変形後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態による接続継手及び接続継手を用いた建築構造物について、図面に基づいて説明する。
【0027】
図1及び
図2に示すように、本実施形態による建築構造物1(1A,1B)は、少なくとも2つの隣接する多角錐枠体10同士を接続継手2を使用してそれぞれの頂部Pで連結して組み合わせることにより構築されている。すなわち、建築構造物1は、多角錐枠体10の組み合わせ数、形状、接続位置などを適宜変更することにより構造物全体の外形を自由にアレンジすることが可能である。
【0028】
建築構造物1としては、例えば、仮設住宅、イベント等の展示ブース、テント等、短期間で簡易に設置し撤去できる仮設の建築構造物に適用されるが、長期的に設置される本設の住宅等であっても勿論かまわない。
【0029】
[建築構造物の全体構成]
図1及び
図2に示すように、建築構造物1(1A、1B)で採用される多角錐枠体10は、三角錐枠体13と、四角錐枠体14、及び五角錐枠体15を組み合わせた一例を示している。
図1に示す符号1Aの建築構造物と
図2に示す符号1Bの建築構造物とは、複数の多角錐枠体10による組み合わせ形態が異なっている。これら建築構造物1A,1Bは、複数の頂部Pのうちの一部が地表面、床面などの接地面Fに接地されている。接地面Fに設置される接地部分の頂部Pは、図面において符号T(接地頂部)で示している。
接地頂部Tは、接地面Fに対してアンカーボルト等の適宜な固定手段により固定されていてもよいし、接地面Fに固定することなく単に載置された状態であってもよい。例えば、建築構造物1の下端に重りを設けた場合や、ドーム等の大空間室内に設置される場合などでは、固定せずに載置のみとする形態を採用できる。
【0030】
多角錐枠体10(本実施形態では、三角錐枠体13、四角錐枠体14、及び五角錐枠体15)は、各枠体の辺部を構成する外郭部分に直線フレーム11(枠材)が配置されている。直線フレーム11は、例えばアルミニウム、スチール等の金属材料や樹脂等で形成される円形断面あるいは矩形断面のパイプ材等の棒状部材から形成されている。なお、直線フレーム11が矩形断面の場合には、直線フレーム11における接続継手2が取り付けられ部分のみが円形断面とし、接続継手2が直線フレーム11に対して回転できるようにする。
【0031】
図3に示すように、三角錐枠体13は、正三角形をなす4つの正三角形枠から形成されている。正三角形枠における隣接する辺部は、共通の部材として1本の直線フレーム11によって構成されている。三角錐枠体13は、枠体形状が不変形である。すなわち、三角錐枠体13は、各辺部(直線フレーム11)の辺長はすべて同じ長さで一致しているため、変形可能な四角錐枠体14や五角錐枠体15とは異なり変形することができない枠体である。
【0032】
図4に示すように、四角錐枠体14は、4つの正三角形枠と、底面部を構成する正四角形枠と、から構成されている。すなわち、四角錐枠体14の各辺部の辺長はすべて同じ長さで一致している。そして、隣接する正三角形枠同士の辺部、および正三角形枠と正四角形枠との辺部は、1本の直線フレーム11によって共有している。正三角形枠は、三角錐枠体13の正三角形枠と同一形状である。
【0033】
正四角形枠は、
図4に示すように変形前姿勢U0(二点鎖線)では正四角形であるが、辺の長さを変えずに4つの角部の角度を変えて変形可能であり、例えば
図4の実線の変形後姿勢U1に変形することができる。
図4は、正四角形枠を図中の矢印E1方向に変形させたときの変形後姿勢U1を示している。これにより、正四角形枠の変形に対応して四角錐枠体14の全体形状も変形可能となっている。
【0034】
図5に示すように、五角錐枠体15は、5つの正三角形枠と、底面部を構成する正五角形枠と、から構成されている。すなわち、五角錐枠体15の各辺部の辺長はすべて同じ長さで一致している。そして、隣接する正三角形枠同士の辺部、および正三角形枠と正五角形枠との辺部は、1本の直線フレーム11によって共有している。正三角形枠は、三角錐枠体13の正三角形枠と同一形状である。
【0035】
正五角形枠は、
図5に示すように変形前姿勢U0(二点鎖線)では正五角形であるが、辺の長さを変えずに5つの角部の角度を変えて変形可能であり、例えば
図5の実線の変形後姿勢U1に変形することができる。
図5は、正五角形枠を図中の矢印E2方向に変形させたときの変形後姿勢U1を示している。これにより、正五角形枠の変形に対応して五角錐枠体15の全体形状も変形可能となっている。
【0036】
多角錐枠体10としては、部分的に直線フレーム11が省略されていてもよい。例えば、
図1に示す建築構造物1Aでは、紙面左側の四角錐枠体14の底面を構成する対向する2本の直線フレーム11が省略されている。本実施形態では、一部の直線フレーム11が省略された構成も多角錐枠体10であると定義する。
【0037】
連結される多角錐枠体10は、上述したように頂部Pで接続される点は必須の構成であるが、本実施形態では隣接する多角錐枠体10の辺部(直線フレーム11)同士も接続されている。このときの隣接する多角錐枠体10同士が接する辺部は、共通の部材として1本の直線フレーム11により構成されている。
図1における建築構造物1Aでは、五角錐枠体15の底面に位置する直線フレーム11と、この五角錐枠体15に隣接する四角錐枠体14の底面に位置する直線フレーム11とが1本の共通の部材(直線フレーム11)である。
【0038】
建築構造物1A、1Bは、各多角錐枠体10で直線フレーム11によって囲まれた開口部には不図示の面材を設けることができる。面材としては、布材や樹脂製のパネル等を採用することができる。このような面材は、多角錐枠体10に形成される複数の開口部のうち任意の箇所に設けられるようにしてもよい。
【0039】
次に、建築構造物1A、1Bの構成について、さらに具体的に説明する。
図1に示す建築構造物1Aは、上面視で中央に五角錐枠体15が配置され、この五角錐枠体15の底部の5辺のうち4辺のそれぞれに三角錐枠体13又は四角錐枠体14の底部の1辺が接続されている。このときの五角錐枠体15は、変形前姿勢U0である(
図5の二点鎖線参照)。
図1に示す建築構造物1Aでは、1つの三角錐枠体13と3つの四角錐枠体14が接続されている。1つの四角錐枠体14の底部の1辺には、他の三角錐枠体13が接続されている。また、建築構造物1Aでは、すべての多角錐枠体10(三角錐枠体13、四角錐枠体14、及び五角錐枠体15)の底部が接地面Fに接地している。
【0040】
図2に示す建築構造物1Bは、上述した
図1に示す建築構造物1Aと同じ組み合わせであるが、上面視で中央に五角錐枠体15が配置され、この五角錐枠体15の底部の5辺のうち4辺のそれぞれに三角錐枠体13又は四角錐枠体14の底部の1辺が接続されている。このときの五角錐枠体15は、変形後姿勢U1である(
図5の実線参照)。
図2に示す建築構造物1Bでは、1つの三角錐枠体13と3つの四角錐枠体14が接続されている。1つの四角錐枠体14の底部の1辺には、他の三角錐枠体13が接続されている。また、建築構造物1Bでは、三角錐枠体13、および四角錐枠体14の底面部に位置する一部の接地頂部Tのみが接地面Fに接地している。
【0041】
[接続継手の構成]
図3乃至
図5に示すように、接続継手2は、単体の多角錐枠体10の辺部を構成する直線フレーム11(枠材)同士を頂部Pで接続するためのものである。また、接続継手2は、隣り合う複数の多角錐枠体10の組み合わせ姿勢に合わせて多角錐枠体10の頂部P同士を接続頂部P0(
図1及び
図2参照)で接続することも可能に構成されている。接続継手2は、樹脂製、金属製等の部材により形成されている。
【0042】
接続継手2は、分割されていない一体の継手(符号2A)と、分割可能な分割継手2Bと、の二種類を採用している。すなわち、各頂部Pに設けられる複数の接続継手2のうち1つは周方向に二分割可能な分割継手2Bが使用される。なお、以下の説明では、分割継手2Bではない符号2Aの接続継手を接続継手2として説明する。
【0043】
ここで、多角錐枠体10の頂部Pとして、三角錐枠体13のみを構成する頂部を符号P3とし、四角錐枠体14のみを構成する頂部を符号P4とし、五角錐枠体15のみを構成する頂部を符号P5とする。また、多角錐枠体10同士が接続される頂部を符号P0とする。
【0044】
1つの頂部Pには、複数の接続継手2が使用される。つまり、所定の頂部Pを形成する直線状の複数の直線フレーム11のうち隣り合う2本の直線フレーム11、11同士を接続するために1つの接続継手2が用いられる。
例えば、
図3に示す三角錐枠体13の頂部P3には3つの接続継手2が設けられ、
図4に示す四角錐枠体14の頂部P4には4つの接続継手2が設けられ、
図5に示す五角錐枠体15の頂部P5には5つの接続継手2が設けられる。
【0045】
ここで、三角錐枠体13、四角錐枠体14及び五角錐枠体15は、それぞれ紙面上側の1つの頂部が非接地頂部Hを示し、下側の頂部が接地頂部Tを示している。非接地頂部Hは、当該非接地頂部Hを頂点Pa側から見たときに、複数の接続継手2が同じ向きで取り付けられている。
【0046】
なお、
図6及び
図7に示すように、接続継手2の短手をなす第1固定部21から長手をなす第2固定部22に向かう方向を回転方向としたときに、反時計回りに接続継手2が配置された状態を正回転R1とし、時計回りに接続継手2が配置された状態を正回転R1とする。本実施形態では、非接地頂部Hにおいて正回転R1となるように接続継手2が設けられ、接地頂部Tにおいて逆回転R2となるように規則性をもった接続継手2が設けられている。
図3に示す三角錐枠体13(10)は、1つの非接地頂部Hの接続継手2が正回転R1で設置され、3つの接地頂部Tの頂部において接続継手2が逆回転R2になっている。
図4に示す四角錐枠体14(10)は、1つの非接地頂部Hの接続継手2が正回転R1で設置され、4つの接地頂部Tの頂部において接続継手2が逆回転R2になっている。
図5に示す五角錐枠体15(10)は、1つの非接地頂部Hの接続継手2が正回転R1で設置され、5つの接地頂部Tの頂部において接続継手2が逆回転R2になっている。
【0047】
ここで、接続継手2の回転方向について具体的に説明する。
後述するように、接続継手2の固定ボルト25は、第1固定部21及び第2固定部22のそれぞれと直線フレーム11とを貫通する軸部材である。そして、第1固定部21及び第2固定部22と直線フレーム11とを固定ボルト25で貫通させることで接続継手2と直線フレーム11との回転を規制して固定する場合には、固定ボルト25の貫通位置(直線フレーム11に対する接続継手2の角度)を直線フレーム11の両端で一致させることにより、製造効率や施工性を向上できる。そのため、上述したように、接地頂部Tと非接地頂部Hにおける接続継手2の回転方向を逆向きにすることで、直線フレーム11の貫通位置(角度)を一致させつつ、全ての接続継手2において直線フレーム11との固定部が第1固定部21及び第2固定部22のいずれか一方に一致させることができる。
【0048】
一方、例えば後述する
図19、
図20、及び
図22に示すように、接続継手2の回転方向を全ての頂部で同じ向き(
図19では全頂部で逆回転R2、
図20では全頂部で正回転R1、
図21では全頂部で逆回転R2)とした場合には、全ての直線フレーム11において接続継手2に対する固定ボルト25の貫通位置(角度)を一致させない形態にすればよい。
このように、接続継手2の回転方向を接地頂部Tと非接地頂部Hで逆向きにすることにより、直線フレーム11の製造効率が向上し、施工上の利点もある。
【0049】
接続継手2は、多角錐枠体10の各頂部Pに設けられ、多角錐枠体10を構成する断面円形かつ線状の直線フレーム11のうち頂部Pを構成する隣り合う直線フレーム11の端部11a同士を接続する。
【0050】
ここで、
図7は、
図6に示す五角錐枠体15と隣接する他の多角錐枠体とが接続する非接地頂部Hにおける頂部を平面上に簡略的に展開した図である。すなわち、
図7は、
図6における頂部Pを平面上に展開することが不可能であるので、簡略的に示した図である。
図6及び
図7に示す頂部Pは、非接地頂部Hであるので、使用される接続継手2は正回転R1により接続されている。
【0051】
図6乃至
図10に示すように、接続継手2(2A、2B)は、隣り合う直線フレーム11のうち一方を支持する第1固定部21と、他方を支持する第2固定部22と、第1固定部21および第2固定部22を連結する連結片23と、を備えている。接続継手2は、一定の厚さを有する帯状の平板であり、板面の一方に120度(θ2)の内角部2aを形成するように折り曲げられた形状をなしている。接続継手2は、内角部2aが頂部Pで接続される複数の直線フレーム11の材軸が交差する交点(頂点Pa)側を向くようにして直線フレーム11に固定されている。
【0052】
第1固定部21は、隣り合う一方の直線フレーム11の頂部P側の端部11aをこの直線フレーム11の材軸回りに回転可能に支持する。第1固定部21には、第1固定部21の板面に直交する方向に中心軸(以下、第1中心軸C1という)を有する断面円形の第1貫通穴21Aが形成されている。第1固定部21は、第1貫通穴21Aを直線フレーム11の外側に嵌合させることにより、第1中心軸C1と直線フレーム11の材軸とが一致し、直線フレーム11回りに回転可能に支持される。本実施形態では、第1貫通穴21Aには、保持筒(図示省略)が同軸に嵌め込まれている。つまり、直線フレーム11は、保持筒を介して第1貫通穴21Aに挿通された状態で支持される。
【0053】
第2固定部22は、隣り合う他方の直線フレーム11の頂部P側の端部11aをこの直線フレーム11の材軸回りに回転可能に支持する。第2固定部22には、第2固定部22の板面に直交する方向に中心軸(以下、第2中心軸C2という)を有する断面円形の第2貫通穴22Aが形成されている。第2固定部22は、第2貫通穴22Aを直線フレーム11の外側に嵌合させることにより、第2中心軸C2と直線フレーム11の中心軸C11とが一致し、直線フレーム11回りに回転可能に支持される。本実施形態では、第2貫通穴22Aには、第1貫通穴21Aと同様に不図示の保持筒が同軸に嵌め込まれている。つまり、直線フレーム11は、保持筒24を介して第2貫通穴22Aに挿通された状態で支持される。
【0054】
第1貫通穴21Aと第2貫通穴22Aとは、同じ内径であり、直線フレーム11の外径と一致している。保持筒が設けられる場合には、第1貫通穴21Aと第2貫通穴22Aとの内径は、それぞれに設けられる保持筒の外径と同一である。
【0055】
第1固定部21及び第2固定部22には、直線フレーム11との回転を規制する
図10に示す固定ボルト25(回転規制部材、軸部材)が設けられている。固定ボルト25は、第1固定部21及び第2固定部22と直線フレーム11との両方を、それぞれ第1中心軸C1、第2中心軸C2に直交する方向に貫通するように設けられる。
【0056】
第1固定部21の側面には、固定ボルト25が挿通される一対のボルト孔21a、21aが設けられている。一対のボルト孔21a、21aは、第1貫通穴21Aの径方向に対向している。第2固定部22の側面には、固定ボルト25が噛み合う一対のボルト孔22a、22aが設けられている。一対のボルト孔22a、22aは、第2貫通穴22Aの径方向に対向している。直線フレーム11の端部11aには固定ボルト25を挿通させるためのボルト孔11bが設けられている。固定ボルト25は、上記のボルト孔21a、22a及びボルト孔22aを挿通し、ナット27で締め付けられて固定されている。
【0057】
連結片23は、第1固定部21および第2固定部22を一体的に連結している。連結片23は、第1固定部21と第2固定部22との間の位置で折り曲げられた折曲部23aを有する。折曲部23aは、第1貫通穴21Aの第1中心軸C1と第2貫通穴22Aの第2中心軸C2を含む平面に対して直交する方向を回転軸として一方向に折り曲げられている。折曲部23aの内角部2aの角度θ2が120度であり、前記平面に対して直交する方向からみて第1中心軸C1と第2中心軸C2とのなす角度θ1が60度に設定されている。
【0058】
折曲部23aは、第1固定部21と第2固定部22とのいずれか一方側に寄った位置に設けられている。本実施形態では、折曲部23aが第1固定部21側に寄った位置になっている。すなわち、第2連結部23Bは、第1連結部23Aよりも延在方向の長さが長くなるように設定されている。このように一方に寄った位置に折曲部23aが設けられることにより、第1固定部21における一方の直線フレーム11の長さ方向の固定位置と、第2固定部22における他方の直線フレーム11の長さ方向の固定位置とをそれぞれ異なる長さ方向の位置に固定される。
【0059】
つまり、頂部Pにおいて隣り合う接続継手2同士は、一方の接続継手2の第1固定部21と他方の接続継手2の第2固定部22とが同じ直線フレーム11に固定される。そして、同じ直線フレーム11を固定する第1固定部21と第2固定部22とは直線フレーム11の軸方向にずれた位置で重なるように設けられている。
【0060】
図11に示すように、分割継手2Bは、連結片23が第1固定部21側の第1連結部23Aと、第2固定部22側の第2連結部23Bとに分割可能に設けられている。第1連結部23Aと第2連結部23Bとは、連結片23の厚さ方向に重ね合わせた状態で4本の連結ボルト26によって固定される。
【0061】
このように構成される分割継手2Bは、多角錐枠体10の頂部Pにおいて、
図11及び
図12に示すように、複数の接続継手2によって全周を閉じる場合(すべての直線フレーム11が接続継手2で接続されている場合で、以下、「閉止状態」という)に少なくとも1箇所の接続継手2に採用される。閉止状態とする場合には、最後に組み付ける接続継手2が一体もの(符号2A)であると組み付けることができないため、分割継手2Bを使用することで組み付けることができる。すなわち、
図1に示すように、最後に接続継手2を組み付ける部分の一方の直線フレーム11に第1連結部23Aを有する第1固定部21を組み付けておき、他方の直線フレーム11に第2連結部23Bを有する第2固定部22を組み付ける。そして第2連結部23Bを組み付けたときに、第1連結部23Aに対して第2連結部23Bを重ね合わせた状態で連結ボルト26で固定し、第1連結部23Aと第2連結部23Bとを一体に固定する。
【0062】
なお、複数の接続継手2による接続状態で上記「閉止状態」に対して、分割継手2Bを採用せずに一部が開放された状態を「開放状態」という。開放状態は、例えば、
図4に示すように単体の三角錐枠体13の頂部P3であってもよいし、
図1及び
図2に示すように複数の多角錐枠体10同士が接続される接続頂部P0であってもよい。
【0063】
ここで、
図13は、多角錐枠体10のうち三角錐枠体13の第3頂部P3における接続継手2による接続状態を示している。すなわち第3頂部P3は、3つの接続継手2によって3本の直線フレーム11が互いに接続されている。
図14は、多角錐枠体10のうち四角錐枠体14の第4頂部P4における接続継手2による接続状態を示している。すなわち第4頂部P4は、4つの接続継手2によって4本の直線フレーム11が互いに接続されている。
図15は、多角錐枠体10のうち五角錐枠体15の第5頂部P5における接続継手2による接続状態を示している。すなわち第5頂部P5は、5つの接続継手2によって5本の直線フレーム11が互いに接続されている。
【0064】
図16は、三角錐枠体13のうち接地頂部T(頂部P)の構成を示している。接地頂部Tは、2つの接続継手2によって3本の直線フレーム11を接続している。この場合、接地頂部Tにおいて隣り合う直線フレーム11、11同士で接続継手2によって接続されていない部分が生じるが、三角錐枠体13として組み付けられている状態では各直線フレーム11の位置が固定されるため、隣り合う直線フレーム11同士がなす角度θ1は60度で保持される。なお、三角錐枠体13のみではなく、四角錐枠体14や五角錐枠体15における接地頂部Tにおいても同様に接続されない部分が形成されている。
【0065】
図17及び
図18は、それぞれ隣接する多角錐枠体10の頂部同士が接続される接続頂部P0の構成を示している。
図17に示す接続頂部P0は、5本の直線フレーム11を4つの接続継手2で接続した構成となっている。この場合、隣り合う直線フレーム11、11同士で接続継手2によって接続されていない部分が生じるが、多角錐枠体10として組み付けられている状態では各直線フレーム11の位置が固定されるため、隣り合う直線フレーム11同士がなす角度θ1は60度で保持される。
図18に示す接続頂部P0は、6本の直線フレーム11を5つの接続継手2で接続した構成となっている。この場合、隣り合う直線フレーム11、11同士で接続継手2によって接続されていない部分が生じるが、多角錐枠体10として組み付けられている状態では各直線フレーム11の位置が固定されるため、隣り合う直線フレーム11同士がなす角度θ1は60度で保持される。
【0066】
次に、上述した接続継手2及び接続継手2を用いた建築構造物の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態では、
図1乃至
図5に示すように、多角錐枠体10の頂部Pを構成する隣り合う直線フレーム11同士を接続継手2を使用して連結することにより接続することができ、さらに隣り合う多角錐枠体10の頂部P同士を接続継手2を使用することにより接続することができる。このとき、隣り合う直線フレーム11同士の角度を60度に保持した状態で接続することができる。すなわち、
図6乃至
図10に示すように、第1固定部21を頂部Pを構成する複数の直線フレーム11のうち隣り合う一方の直線フレーム11に対して、この一方の直線フレーム11の材軸と第1固定部21の第1中心軸C1と一致させて固定し、第2固定部22を他方の直線フレーム11に対して、この他方の直線フレーム11の材軸と第2固定部22の第2中心軸C2とを一致させて固定することで、双方の直線フレーム11、11同士のなす角度θ1を60度に設定することができる。
【0067】
また、本実施形態では、第1固定部21および第2固定部22がそれぞれ直線フレーム11の材軸回りに回転可能に支持されるので、直線フレーム11によって囲まれる側面同士のなす角度に合わせて接続継手2を回転させることで、直線フレーム11同士のなす角度を60度に保ったまま接続することができる。
【0068】
そのため、本実施形態では、多角錐枠体10が異なる角錐体(三角錐枠体13、四角錐枠体14、あるいは五角錐枠体15など)であっても頂部Pに設けられる接続継手2を共有化することができる。したがって、部材のコストを抑えることができ、さらに組み立てにかかる作業時間や作業効率を低減できる。このように、本実施形態では、構築される建築構造物1の形状の自由度を高めることができ、利用者の好みに合わせた建築構造物1を構築できる。
【0069】
また、本実施形態では、多角錐枠体10が正三角形枠を使用した枠体であることから、全体形状を変形することが可能な四角錐枠体14や五角錐枠体15を組み合わせる場合であっても、本実施形態の接続継手2を使用することで形状変形させた多角錐枠体10を安定した姿勢で固定することができる。
【0070】
また、本実施形態では、第1固定部21、第2固定部22、および連結片23の延びる方向が同一の面内となるので、直線フレーム11に対して第1固定部21および第2固定部22を回転させたときに、連結片23が同一の面の面外に張り出すことがなく、この接続継手2と他の直線フレーム11が干渉することを防止できる。
【0071】
また、本実施形態では、第1固定部21が第1連結部で支持され、第2固定部22が第2連結部23Bで支持され、さらに第1連結部23Aと第2連結部23Bとが頂点側を向く内角部2aが120度となる折曲部23aを形成した状態で一体的に設けられているので、接続継手2を各固定部21、22で直線フレーム11に対して回転させた場合であっても隣り合う直線フレーム11、11同士のなす角度θ1を60度で一定の姿勢に保持した状態で固定することができる。
【0072】
また、本実施形態では、第1固定部21における一方の直線フレーム11の長さ方向の固定位置と、第2固定部22における他方の直線フレーム11の長さ方向の固定位置とをそれぞれ異なる長さ方向の位置に固定することができる。そのため、本実施形態では、1箇所の頂部Pに設けられる複数の接続継手2を、隣接する接続継手2、2同士が干渉することなく、直線フレーム11の軸方向で同じ位置に固定することができる。
1箇所の頂部Pに設けられる隣接する接続継手2、2同士が直線フレーム11の軸方向にずれた位置に固定されずに同じ位置に固定することができる。
【0073】
また、本実施形態では、第1固定部21及び第2固定部22をそれぞれ直線フレーム11に対して回転させた所定の回転位置で固定ボルト25によって固定することができる。これにより、接続継手2と隣り合う一対の直線フレーム11との位置がずれることなく固定され、所望の多角錐枠体10で形状保持することができる。
【0074】
また、本実施形態では、第1固定部21及び第2固定部22をそれぞれ直線フレーム11に対して回転させた所定の回転位置で、それら第1固定部21及び第2固定部22と枠材とを固定ボルト25で貫通させることで回転を規制して固定することができる。このように、直線フレーム11を貫通させるといった簡単な構造により回転規制構造を実現できる。
【0075】
さらに本実施形態では、頂部Pに設けられる複数の接続継手2のうち最後に取り付ける接続継手2が分割された分割継手2Bであるので、分割部分の片部(第1連結部23A、第2連結部23B)同士を接続することで頂部Pの全ての直線フレーム11を接続継手2によって連結することができる。
【0076】
上述のように本実施形態による接続継手2及び接続継手2を用いた建築構造物では、頂部Pの形状に関わらず頂部Pに設けられる接続継手2の共有化を図ることが可能となり、部材コストと組み立てにかかる作業効率を低減できる。
【0077】
以上、本発明による接続継手及び接続継手を用いた建築構造物の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0078】
例えば、本実施形態では、連結片23の構成として第1連結部23Aと、第2連結部23Bとを有し、第1連結部23Aと第2連結部23Bとがそれぞれの延在方向を同一面内で連結されているが、このような構成であることに限定されることはなく、連結片として他の構成を採用することも可能である。例えば第1固定部21と第2固定部22とを直線状の部材で連結する構成であってもかまわない。要は、第1固定部21の第1中心軸C1と第2固定部22の第2中心軸C2とのなす角度θ1が60度になっていればよいのである。そのため、連結片23が第1固定部21と第2固定部22との間で屈折する折曲部23aを有する構成に限定されることもない。
【0079】
また、本実施形態では、連結片23に折曲部23aを有する場合において、第1連結部23Aおよび第2連結部23Bの延在方向の長さとして、いずれか一方が他方よりも長くなるように設定されているが、このような長さ配分であることに限定されることはなく、第1連結部23Aと第2連結部23Bとが同じ長さであってもよい。
【0080】
さらに、本実施形態では、直線フレーム11と接続継手2の第1固定部21及び第2固定部22との回転を規制する回転規制部材として、固定ボルト25のような軸部材を採用しているが、固定ボルト25であることに制限されることはない。このような回転規制部材として、ピン部材であってもよいし、他の部材を採用することも可能である。
なお、本実施形態のような固定ボルトを回転規制部材とする場合には、回転の規制のみならず、直線フレーム11の軸方向への移動を拘束することができる。このように、接続継手2には、直線フレーム11の軸方向への移動を規制する規制部材が設けられても良い。
【0081】
また、多角錐枠体10(三角錐枠体13、四角錐枠体14、五角錐枠体15)の正三角形枠の大きさ、直線フレーム11の長さ寸法は、任意に設定することができる。要は、同じ建築構造物1で使用される単体の多角錐枠体10においては、正三角形枠の大きさ、直線フレーム11の長さ寸法は同一のものが使用されればよいのである。
【0082】
さらに、本実施形態では、一例として
図1の建築構造物1Aと
図2の建築構造物1Bを示したが、これらに限定されることはなく、多角錐枠体10を使用した建築構造物であればその多角錐枠体10の組み合わせや大きさ、数量、姿勢等の構成は任意に設定することができる。
【0083】
また、本実施形態では、多角錐枠体10同士の接続構造として、接続頂部P0の他に、多角錐枠体10同士の辺部(直線フレーム11)も接続、すなわち共有されているが、これに限定されることはなく、多角錐枠体10同士が辺部を共有することなく接続頂部P0のみで接続されるような組み合わせ構造であっても本発明の接続継手2を採用することができる。
【0084】
また、本実施形態では、建築構造物1に設けられる多角錐枠体10を構成するすべての辺部に直線フレーム11を配置した構成としているが、建築構造物1の構造上の条件や設置条件によっては部分的に直線フレーム11を省略することも可能である。具体的には、接地面に設置される直線フレーム11の両端(頂部)が基礎等に固定され、かつ直線フレーム11を省略した後に双方の基礎の頂点が動かず一定の間隔を維持できる状態である場合に直線フレーム11を省略することができる。例えば、直線フレーム11の両端が地面(接地面)や基礎に固定される頂部の場合で、その直線フレーム11が構造上必要がないと判断された場合には省略することが可能である。他の部位の直線フレーム11であっても構造上問題がない場合には省略してもよい。
このように、接地面に接する部分の直線フレーム11を省略することで、床と直線フレーム11とが干渉することをなくすことができる。なお、接地面の地面が柔らかく双方の基礎同士がそれぞれ独立して固定されていない場合には、その基礎(頂部)間の直線フレーム11は省略しない方がよい。
【0085】
さらに、多角錐枠体からなる建築構造物を地組で組み立て、クレーン等の揚重機械で引っ張り上げて建て方を行う際には、直線フレーム11は省略しない方がよい。この場合、直線フレーム11を省略する手順は、建て方の後、基礎に固定してから、省略する直線フレーム11を取り外すことになる。
【0086】
さらにまた、上述した実施形態では、建築構造物の多角錐枠体のうち底面枠に位置する頂部Pには2つの接続継手2が設けられた構成としているが、3つの接続継手2を使用して接続することも勿論可能である。また、頂部Pにおける接続継手2を省略できる部位は底面枠であることに限定されることはない。
【0087】
また、本実施形態では、
図3~
図5に示すように、三角錐枠体13、四角錐枠体14及び五角錐枠体15は、それぞれの非接地頂部Hに設けられる接続継手2が正回転R1で設けられ、それぞれの接地頂部Tに設けられる接続継手2が逆回転R2で設けられるという規則性をもった構成としているが、これに限定されることはない。
【0088】
例えば、
図19に示す第1変形例による三角錐枠体13A(10)は、1つの非接地頂部Hの接続継手2が逆回転R2で設置されている。すなわち、第1変形例では、1つの非接地頂部Hと3つの接地頂部Tとからなる全ての頂部において接続継手2が逆回転R2になっている。
【0089】
図20に示す第2変形例による四角錐枠体14A(10)は、4つの接地頂部Tの接続継手2が正回転R1で設置されている。すなわち、第2変形例では、1つの非接地頂部Hと4つの接地頂部Tとからなる全ての頂部において接続継手2が正回転R1になっている。
【0090】
図21に示す第3変形例による五角錐枠体15A(10)は、1つの非接地頂部Hの接続継手2が逆回転R2で設置されている。すなわち、第3変形例では、1つの非接地頂部Hと5つの接地頂部Tとからなる全ての頂部において接続継手2が逆回転R2になっている。
【0091】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0092】
1、1A、1B 建築構造物
2、2A 接続継手
2B 分割継手
10 多角錐枠体
11 直線フレーム
11a 端部
13 三角錐枠体
14 四角錐枠体
15 五角錐枠体
21 第1固定部
22 第2固定部
23 連結片
23A 第1連結部
23B 第2連結部
23a 折曲部
25 固定ボルト(回転規制部材、軸部材)
C1 第1中心軸
C2 第2中心軸
F 接地面
H 非接地頂部
P 頂部
Pa 頂点
P3 第3頂部
P4 第4頂部
P5 第5頂部
T 接地頂部