IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

特開2023-41122インク、インク収容容器、記録装置、及び記録方法
<>
  • 特開-インク、インク収容容器、記録装置、及び記録方法 図1
  • 特開-インク、インク収容容器、記録装置、及び記録方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041122
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】インク、インク収容容器、記録装置、及び記録方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/38 20140101AFI20230316BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230316BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
C09D11/38
B41M5/00 120
B41M5/00 132
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148303
(22)【出願日】2021-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】田村 里彩
(72)【発明者】
【氏名】山本 誓
(72)【発明者】
【氏名】梅村 和彦
(72)【発明者】
【氏名】廣川 悠哉
(72)【発明者】
【氏名】萩原 弘規
(72)【発明者】
【氏名】齋賀 拓也
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056FC01
2C056HA42
2C056HA44
2H186AB02
2H186AB05
2H186AB06
2H186AB12
2H186AB31
2H186AB54
2H186AB57
2H186AB58
2H186BA08
2H186DA15
2H186FA14
2H186FB10
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB18
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB58
4J039AE04
4J039AE06
4J039BC07
4J039BC12
4J039BC13
4J039BC19
4J039BC54
4J039BC57
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE16
4J039BE19
4J039BE28
4J039CA07
4J039EA19
4J039EA36
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】 結晶性を有するポリエステルウレタン樹脂を含有するインクを用いた場合、乾燥性に優れたインクを得られる一方で、インクの吐出安定性が低下する課題がある。
【解決手段】 樹脂、色材、及び水を含有するインクであって、前記樹脂は、結晶性を有するポリエステルウレタン樹脂であり、前記樹脂の融解ピーク温度(Tm)は、30℃以上100℃以下であり、前記インクは、更に、所定の一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とするインク。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂、色材、及び水を含有するインクであって、
前記樹脂は、結晶性を有するポリエステルウレタン樹脂であり、
前記樹脂の融解ピーク温度(Tm)は、30℃以上100℃以下であり、
前記インクは、更に、下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とするインク。
【化1】
(前記一般式(1)中、x+yは0以上10以下の整数を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)中、x+yは0以上3以下の整数を表す請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記インク中において、前記結晶性を有するポリエステルウレタン樹脂及び前記一般式(1)で表される化合物の質量比は、5:1~20:1である請求項1又は2に記載のインク。
【請求項4】
前記インクは、更に、ジアルキルスルホコハク酸又はジアルキルスルホコハク酸の塩を含有する請求項1から3のいずれか一項に記載のインク。
【請求項5】
前記インクは、更に、シロキサン化合物を含有する請求項1から4のいずれか一項に記載のインク。
【請求項6】
前記シロキサン化合物の含有量は、前記インクの質量に対して0.01質量%以上1.0質量%以下である請求項5に記載のインク。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のインクが収容されたインク収容容器。
【請求項8】
請求項7に記載のインク収容容器と、収容された前記インクを付与するインク付与手段と、を有する記録装置。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一項に記載のインクを付与するインク付与工程を含む記録方法。
【請求項10】
前記インク付与工程より前に、少なくとも前記インクが付与される領域に対して、多価金属塩を含有する前処理液を付与する前処理液付与工程を含む請求項9に記載の記録方法。
【請求項11】
前記前処理液付与工程および前記インク付与工程の間において、付与された前記前処理液を乾燥させる前処理液乾燥工程を含む請求項10に記載の記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク、インク収容容器、記録装置、及び記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、低騒音、低ランニングコスト、カラー印刷が容易であるなどの利点を有しており、デジタル信号の出力機器として一般家庭に広く普及している。また、近年では、家庭用のみならず商業用途や産業用途においても、版を必要とせず少量多品種なデザインを印刷可能なデジタル印刷としてインクジェット技術が利用されてきている。商業用途では、パンフレット、カタログ、ポスター、マニュアルなどの印刷に用いられ、産業用途では、ラベル、パッケージ、テキスタイル、段ボールなどの印刷に用いられる。特に産業印刷の分野では、少量多品種なデザインが好まれ、商品の販売促進に活用されている。
【0003】
このような少量多品種の例としては、食品や日用品の包装印刷用途が挙げられるが、このような用途では、印刷物を至近距離で見たり触ったりする機会が多いことから、高い画像品質や耐擦過性が求められる。
また、印刷された記録媒体は、印刷後すぐに重ねて保管されることが想定されるため、インクの乾燥性やインク乾燥直後の耐擦過性も求められる。
【0004】
特許文献1には、インクにより形成される画像の記録媒体に対する定着性を高めるために、結晶性ポリエステルウレタン樹脂を含有するインクを用いることが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、結晶性を有するポリエステルウレタン樹脂を含有するインクを用いた場合、乾燥性に優れたインクを得られる一方で、インクの吐出安定性が低下する課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、樹脂、色材、及び水を含有するインクであって、前記樹脂は、結晶性を有するポリエステルウレタン樹脂であり、前記樹脂の融解ピーク温度(Tm)は、30℃以上100℃以下であり、前記インクは、更に、所定の一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とするインクに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、結晶性を有するポリエステルウレタン樹脂を含有するインクを用いた場合において、乾燥性及び吐出安定性に優れたインクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、記録装置の一例を示す斜視説明図である。
図2図2は、メインタンクの一例を示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
【0010】
<<インク>>
本実施形態のインクは、樹脂、色材、及び水を含み、必要に応じて、有機溶剤、及び界面活性剤等の成分を含んでもよい。
また、本実施形態のインクは、一般式(1)で表される化合物を含む。
また、本実施形態のインクは、ジアルキルスルホコハク酸又はジアルキルスルホコハク酸の塩、及びシロキサン化合物等を含んでもよい。
【0011】
<樹脂>
本実施形態のインクは、樹脂として、結晶性を有するポリエステルウレタン樹脂を含み、必要に応じて他の種類の樹脂を更に含んでもよい。
他の種類の樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性を有するポリエステルウレタン樹脂以外のウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
以降、結晶性を有するポリエステルウレタン樹脂について詳細を説明する。
【0012】
-結晶性を有するポリエステルウレタン樹脂-
「結晶性を有するポリエステルウレタン樹脂(以降の説明では単に「ポリエステルウレタン樹脂」とも称する)」とは、結晶性のポリエステル構造を含む構造単位を有する樹脂であり、必要に応じて他の構造単位を含んでもよい。なお、「構造単位」とは、樹脂を重合する際に用いた材料に由来するポリマー中の部分構造を示す。また、「結晶性を有する」ポリエステルウレタン樹脂とは、後述する測定条件で示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した際に吸熱ピークを有するポリエステルウレタン樹脂を表し、吸熱ピークにおける融解熱量が5J/g以上であるポリエステルウレタン樹脂を表すことが好ましい。
ポリエステルウレタン樹脂は、インクが記録媒体に付与された後で加熱乾燥されることによって一旦融解または溶解して低粘度化し、その後、再結晶化することによってインクにより形成される画像に強靭な被膜を形成する。これにより、乾燥性に優れ且つ耐擦過性に優れる画像を作成することができる。また、ポリエステルウレタン樹脂は、結晶性を有するポリエステル部分がウレタン結合で連結された構造であるため、インクに含まれる有機溶剤に対する耐性が向上し、例えば、樹脂が樹脂粒子の形態でインクに含有されている場合における安定性が向上する。これにより、高温下などであっても保存安定性に優れたインクを作成することができる。
【0013】
ポリエステルウレタン樹脂は、下記の測定条件で示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した際に吸熱ピークを有し、具体的には、第二昇温過程にて30℃以上100℃以下の範囲で融解ピーク温度(Tm)(以降の説明では単に「融点」とも称する)を有することが好ましく、35℃以上90℃以下の範囲で融解ピーク温度(Tm)を有することがより好ましく、42℃以上77℃以下の範囲で融解ピーク温度(Tm)を有することが更に好ましい。融点が30℃以上であることで、力学強度に優れた画像を形成することができる。また、融点が100℃以下であることで、加熱乾燥に起因する、樹脂同士の接着および樹脂と記録媒体との接着を強固にすることができ、画像の記録媒体に対する定着性を向上させることができる。
(測定条件)
4gの「ポリエステルウレタン樹脂の水分散液」または「ポリエステルウレタン樹脂を含有するインクから単離されたポリエステルウレタン樹脂の水分散液」を均一に広がるように容器に入れる。次に、それを70℃で1時間乾燥させ、次いで130℃で1時間乾燥させ、更に130℃で減圧乾燥させて測定サンプルの固形物を得る。その後、測定サンプルの熱特性を、一例として、示差走査熱量計(DSC)(TAインスツルメンツ社製Q2000)を用いて、下記の条件下で測定する。得られた測定結果から吸発熱量と温度とのグラフを作成し、第二昇温過程にて得られる融解(吸熱)ピークの頂点における温度を融点とする。
・サンプル容器:アルミニウム製サンプルパン(蓋有り)
・サンプル量:5mg
・リファレンスアルミニウム製サンプルパン(空の容器)
・雰囲気:窒素(流量50mL/min)
・開始温度:-80℃
・昇温速度:10℃/min
・終了温度:130℃
・保持時間:1min
・降温速度:10℃/min
・終了温度:-80℃
・保持時間:5min
・昇温速度:10℃/min
・終了温度:130℃
【0014】
なお、インク中における結晶性を有するポリエステルウレタン樹脂の融解ピーク温度(Tm)の測定は一例として以下のようにして行うことができる。即ち、インクを超遠心分離機(ベックマン・コールター株式会社製、Optima Max-XP)にかけ、上澄み液と、沈殿物に分離する。次に、沈殿物を回収してテトラヒドロフラン100mL中にて、25℃で洗浄し、ろ過により固体とろ液に分離する。遠心分離による上澄み液とろ液を合わせて、減圧乾燥機(株式会社カワタ製、製品名:デコ)を用いて、40℃、10mPaにて乾固させて乾固物を得る。得られた乾固物と水を用いてスラリーを作製し、卓上分散器(株式会社常光製、装置名:ナノジェットパル JN5)にて十分に分散し、ろ過する。得られたろ物に水を加え、上記卓上分散器を用いて十分に分散した後、ロータリーエバポレーターにて固形分濃度が30質量%になるように濃縮することにより、樹脂の水分散液(樹脂エマルション)を得る。4gの樹脂の水分散液を用いて、上記同様の条件で融解ピーク温度(Tm)の測定を行う。
【0015】
ポリエステルウレタン樹脂の上記吸熱ピークにおける融解熱量は、5J/g以上100J/g以下であることが好ましく、10J/g以上80J/g以下であることがより好ましく、20J/g以上50J/g以下であることが更に好ましい。融解熱量が5J/g以上であると、結晶性部位の結晶化度が高まるので加熱乾燥過程における粘度低下も十分となり、画像の定着性悪化が抑制される。また、100J/g以下であると、樹脂中の結晶性部位の占める割合が高くなりすぎず、画像強度の低下および保存安定性の低下が抑制される。
なお、ポリエステルウレタン樹脂の結晶化ピーク温度は、-30℃以上80℃以下であることが好ましい。
また、ポリエステルウレタン樹脂の結晶化ピークにおける結晶化熱量は、5J/g以上100J/g以下であることが好ましい。
【0016】
ポリエステルウレタン樹脂の酸価は、10mgKOH/g以上40mgKOH/g以下であることが好ましい。この範囲とすることにより、インクにより形成される画像が優れた力学強度を有し、かつ定着性および耐ブロッキング性に優れた画像を形成することができる。また、酸価が10mgKOH/g以上であると、樹脂の分散安定性が良好となることで均一な被膜が形成され、力学強度に優れた画像が形成できる。また、酸価が40mgKOH/g以下であると、力学強度に優れた被膜が形成できることに加え、樹脂の親水性が適正であることにより、耐水性が向上し、樹脂粒子としてインクに含有される場合の安定性が良好となる。
ポリエステルウレタン樹脂の酸価の測定方法としては、例えば、ポリエステルウレタン樹脂をテトラヒドロフラン(THF)溶液に入れ、0.1Mの水酸化カリウムメタノール溶液を用いて滴定することで、測定することができる。
ポリエステルウレタン樹脂の酸価は、樹脂を作製する際における樹脂構成材料中のカルボキシル基濃度から算出してもよいし、ポリエステルウレタン樹脂をテトラヒドロフラン(THF)溶液に入れ、0.1Mの水酸化カリウムメタノール溶液を用いて滴定することでも、測定することができる。
また、ポリエステルウレタン樹脂中のカルボキシル基が中和されている場合は、例えば、過剰の塩酸水溶液を加えて酸性溶液にした後に、クロロホルムで樹脂を抽出し、次いで加熱もしくは減圧乾燥後に得られた樹脂をTHFに溶解し、0.1Mの水酸化カリウムメタノール溶液を用いて滴定することでも、測定することができる。
【0017】
ポリエステルウレタン樹脂は、樹脂エマルションであることが好ましい。樹脂エマルションとは、樹脂粒子が水やインク中に分散している状態を指し、樹脂粒子が固体、液体かは問わない。
ポリエステルウレタン樹脂を含む樹脂粒子を水中やインク中に分散させる方法としては、分散剤を用いる強制乳化法や、アニオン性基を有する樹脂を使用する自己乳化法などが挙げられる。強制乳化法の場合、インクにより形成される画像に分散剤が残り、画像の強度を下げるおそれがあることから、自己乳化法を用いることが好ましい。
アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基などが挙げられる。これらの中でも、一部又は全部、特に好ましくは全部が塩基性化合物等により中和されたカルボキシレート基やスルホネート基を使用することが好ましい。
アニオン性基の中和に使用可能な中和剤としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミンや、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン等の塩基性化合物、Na、K、Li、Ca等を含む金属塩基化合物などが挙げられる。
【0018】
ポリエステルウレタン樹脂を樹脂粒子として用いる場合、樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が更に好ましく、10nm以上50nm以下が特に好ましい。体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0019】
ポリエステルウレタン樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0020】
-結晶性を有するポリエステルウレタン樹脂の製造方法-
ポリエステルウレタン樹脂の製造方法の一例としては、次の方法が挙げられる。
まず、無溶剤下または有機溶剤存在下で、結晶性ポリエステルポリオール(A)、短鎖多価アルコール(B)、アニオン性基を有する多価アルコール(C)、及びポリイソシアネート(D)を反応させて、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを製造する。
次に、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー中のアニオン性基を必要に応じて中和剤により中和し、その後、水を加えて分散させ、最後に、必要に応じて系内の有機溶剤を除去することによってポリエステルウレタン樹脂を得ることができる。また、有機溶剤を除去する前に、必要に応じて、2価以上のポリアミン(以降の説明では「多価アミン」とも称する)を添加することにより、末端のイソシアネート基と多価アミンで形成されるウレア結合により、ポリエステルウレタン樹脂を伸長または架橋させることもできる。
【0021】
反応時に使用可能な有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン等のアミド類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
反応で用いる各材料の構成比率としては、[Cのモル数/(Aのモル数+Bのモル数+Cのモル数)]は、0.15以上0.5以下が好ましく、0.2以上0.5以下がより好ましく、0.25以上0.4以下が更に好ましい。
構成比率が0.5以下であることにより、過度な親水性によって、脆性の著しいインク膜となり、画像の耐水性が低下することを抑制することができる。また、樹脂粒子の過度な微細化によるインクの増粘を抑制することができる。一方、構成比率が0.15以上であることにより、樹脂粒子の分散安定性が向上する。
【0023】
また、反応で用いる各材料の構成比率としては、[Dの当量数/(Aの当量数+Bの当量数+Cの当量数)]は、1.05以上1.6以下が好ましく、1.05以上1.5以下がより好ましく、1.1以上1.35以下が更に好ましい。
構成比率を上記範囲とすることにより、力学強度に優れた膜を得ることができ、耐ブロッキング性と耐擦性に優れた画像を形成することができる。
【0024】
--結晶性ポリエステルポリオール(A)--
結晶性ポリエステルポリオールとしては、水酸基価(OHV)が20mgKOH/g以上200mgKOH/g以下が好ましく、50mgKOH/g以上150mgKOH/g以下がより好ましく、70mgKOH/g以上120mgKOH/g以下が更に好ましい。
水酸基価が上記範囲であることにより、樹脂の分散安定性が良好となり、また適当な結晶性を発現することで、定着性に優れた画像を形成可能なポリエステルウレタン樹脂を得ることができる。
【0025】
結晶性ポリエステルポリオールの種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高い結晶性を有する点から、脂肪族ポリエステルポリオールであることが好ましい。
【0026】
結晶性ポリエステルポリオールの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、GPC測定において、重量平均分子量(Mw)は、2,000~20,000が好ましく、3,000~15,000がより好ましく、3,000~10,000が更に好ましく、3,000~5,000が特に好ましい。
重量平均分子量が、上記範囲内であると、樹脂の分散安定性が良好となり、また適当な結晶性を発現することで、定着性に優れた画像を形成可能な結晶性ポリエステルウレタン樹脂エマルションを得ることができる。
なお、結晶性ポリエステルポリオールの数平均分子量(Mn)は、1,000~4,000が好ましく、2,000~3,000がより好ましい。
【0027】
結晶性ポリエステルポリオールの融点(Tm)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃以上100℃以下であることが好ましい。融点は、示差走査熱量計(DSC)測定におけるDSCチャートの吸熱ピーク値により測定することができる。結晶性ポリエステルの結晶性、分子構造等については、NMR測定、示差走査熱量計(DSC)測定、X線回折測定、GC/MS測定、LC/MS測定、赤外線吸収(IR)スペクトル測定などにより確認することができる。
【0028】
次に、結晶性ポリエステルポリオールの製造方法の一例について説明する。結晶性ポリエステルポリオールは、例えば、無溶剤下又は有機溶剤存在下で、多価アルコールと多価カルボン酸の重縮合により製造されることが好ましい。すなわち、ポリエステルウレタン樹脂の結晶性部位は、結晶性ポリエステルポリオールの製造に用いられる多価アルコールと多価カルボン酸に由来する。
【0029】
---多価アルコール---
多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、3価以上のアルコールが挙げられる。
ジオールとしては、例えば、脂肪族ジオールが好ましく、飽和脂肪族ジオールがより好ましい。
飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、直鎖飽和脂肪族ジオール、分岐飽和脂肪族ジオールが挙げられる。これらの中でも、直鎖飽和脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が2以上12以下の直鎖飽和脂肪族ジオールがより好ましい。飽和脂肪族ジオールが直鎖型であると、結晶性ポリエステルの結晶性が低下せず、融点が低下しにくい。飽和脂肪族ジオールの炭素数が12以下であると、材料の入手が容易となるので、炭素数は12以下であることがより好ましい。
飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
---多価カルボン酸---
多価カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価のカルボン酸、3価以上のカルボン酸が挙げられるが、脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。
2価のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の芳香族ジカルボン酸、又はこれらの無水物、或いはこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、又はこれらの無水物、あるいはこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、多価カルボン酸としては、飽和脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸の他に、スルホン酸基を持つジカルボン酸、2重結合を持つジカルボン酸などを含有していてもよい。
【0031】
--短鎖多価アルコール(B)--
短鎖多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の炭素数2以上15以下の多価アルコール類などが挙げられる。
【0032】
--アニオン性基を有する多価アルコール(C)--
アニオン性基を有する多価アルコールとしては、特に限定はないが、2つ以上のヒドロキシル基を有し、アニオン性基としてカルボン酸、スルホン酸などの官能基を有する材料を使用することができる。例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、トリメチロールプロパン酸、トリメチロールブタン酸などカルボン酸基類や、1,4-ブタンジオール-2-スルホン酸等のスルホン酸基類が挙げられる。
【0033】
--ポリイソシアネート(D)--
ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4‘4’‘-とリフェニルメタントリイソシアネート、m-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、p-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-ジクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネーネート等の脂環式ポリイソシアネート化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物が好ましく、脂環式ポリイソシアネート化合物がより好ましく、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが特に好ましい。
【0034】
--2価以上のポリアミン--
2価以上のポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン類;ヒドラジン、N,N’-ジメチルヒドラジン、1,6-ヘキサメチレンビスヒドラジン等のヒドラジン類;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類などが挙げられる。
【0035】
<一般式(1)で表される化合物>
本実施形態のインクは、下記一般式(1)で表される化合物を含む。
【化1】
(上記一般式(1)中、x+yは0以上10以下の整数を表す。)
【0036】
一般式(1)で表される化合物は、インクに含まれる水と親和性が高く、インクの表面張力を低下させる効果が高いため、インクを記録媒体に対して濡れ広がりやすくさせることができ、これにより、インクが付与されて形成される被膜が均一で滑らかとなり、結果として、インクにより形成される画像の耐擦過性が向上し、当該画像において生じ得る濃度ムラが低減する。
【0037】
また、一般式(1)で表される化合物は、インクに対する消泡機能を有し、例えば、インクが用いられる記録装置のインクジェットヘッド内部やインク供給経路における気泡の発生を抑制することができる。これにより、上記のような、結晶性を有するポリエステルウレタン樹脂を含むことで乾燥性が高いインクを用いた場合であっても、インクを吐出するノズル近傍における気泡の発生が抑制されることで、気泡の存在により生じるインクの乾燥に伴うインクの固化が抑制され、結果として、インクの吐出安定性を向上させることができる。なお、ノズル近傍でインクの固化物が生じた場合、ノズルにおけるインクのメニスカス制御に悪影響を与え、更なる気泡の発生やインクの固化物の形成に繋がる。このような不具合がノズルで発生すると、不具合が発生したノズルの周辺のノズルにも連鎖的に悪影響を与え、吐出安定性の不安定化が加速し、画像品質の低下に繋がるため、インクに対する消泡機能を有する一般式(1)で表される化合物を添加することが好ましい。
【0038】
なお、一般式(1)中、x+yは0以上3以下の整数を表すことが好ましい。x+yが0以上3以下であることで、印刷後のインク被膜内に残存する一般式(1)で表される化合物が短時間で揮発するため記録媒体上に残りにくく、印刷直後に画像面に対する擦過が生じた場合であっても、画像の転写や剥離を起こしにくくなり、耐擦過性が向上する。
【0039】
一般式(1)で表される化合物としては、特に制限されず、合成されたものでも市販されているものでも使用することができる。一例として、市販されている一般式(1)で表される化合物としては、サーフィノール104E、サーフィノール104PG-50、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485、サーフィノールPSA-336(日信化学工業株式会社)などが挙げられる。
なお、一般式(1)中、x+yが0以上3以下の整数を表す市販品としては、例えば、サーフィノール104E、サーフィノール104PG-50、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノールPSA-336などが挙げられる。
【0040】
一般式(1)で表される化合物の含有量は、インクの質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上2.0質量%以下であることが更に好ましい。
【0041】
インク中において、結晶性を有するポリエステルウレタン樹脂及び一般式(1)で表される化合物の質量比は、5:1~20:1であることが好ましい。5:1~20:1であることで、記録媒体に対してインクがより濡れ広がりやすくなり、インクにより形成される画像の耐擦過性がより向上し、当該画像において生じ得る濃度ムラがより低減する。また、インクを吐出するノズル近傍における気泡の発生がより抑制され、インクの吐出安定性がより向上する。なお、上記質量比の境界値である5:1及び20:1は、5:1~20:1の範囲内であるとする。
【0042】
<ジアルキルスルホコハク酸又はジアルキルスルホコハク酸の塩>
本実施形態のインクは、ジアルキルスルホコハク酸又はジアルキルスルホコハク酸の塩を含むことが好ましい。
【0043】
ジアルキルスルホコハク酸又はジアルキルスルホコハク酸の塩は、インクを記録媒体に対して濡れ広がりやすくさせることができ、これにより、インクが付与されて形成される被膜が均一で滑らかとなり、結果として、インクの乾燥性が向上し、インクにより形成される画像の耐擦過性が向上する。また、付与されたインクが記録媒体に対して濡れ広がりやすくなるため、ノズルにおいて少量の吐出不良等が生じたとしても、スジ状の不良画像の発生を抑制することができる。
【0044】
ジアルキルスルホコハク酸又はジアルキルスルホコハク酸の塩としては、特に制限されず、合成されたものでも市販されているものでも使用することができる。一例として、市販されているジアルキルスルホコハク酸又はジアルキルスルホコハク酸の塩としては、スルホこはく酸ビス(2-エチルヘキシル)ナトリウム(東京化成工業株式会社製)、サンモリンOT(三洋化成工業株式会社製)、カラボンDA-72(三洋化成工業株式会社製)、ペレックスOT-P(花王株式会社製)などが挙げられる。
【0045】
一般式(1)で表される化合物の含有量は、インクの質量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下であることが更に好ましい。
【0046】
<シロキサン化合物>
本実施形態のインクは、シロキサン化合物を含むことが好ましい。シロキサン化合物としては、ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン繰り返し構造を有する化合物の側鎖に親水性基や親水性ポリマー鎖を有する化合物、もしくは末端に親水性基や親水性ポリマー鎖を有する化合物などが挙げられる。なお、シロキサン化合物とは、その構造中にポリシロキサン構造を有していればよい。
【0047】
シロキサン化合物は、インクに対する消泡機能を有し、例えば、インクが用いられる記録装置のインクジェットヘッド内部やインク供給経路における気泡の発生を抑制することができる。これにより、上記のような、結晶性を有するポリエステルウレタン樹脂を含むことで乾燥性が高いインクを用いた場合であっても、インクを吐出するノズル近傍における気泡の発生が抑制されることで、気泡の存在により生じるインクの乾燥に伴うインクの固化が抑制され、結果として、インクの吐出安定性を向上させることができる。また、インクの吐出安定性が向上することで、ノズル詰まり等に起因するスジ状の不良画像の発生を抑制することができ、当該スジを起点とした耐擦過性の低下を抑制することができる。
【0048】
シロキサン化合物としては、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シロキサン化合物が良好な性質を示すので好ましい。
【0049】
シロキサン化合物としては、特に制限されず、合成されたものでも市販されているものでも使用することができる。一例として、市販されているシロキサン化合物としては、BYK-019、BYK-024、BYK-025、BYK-028(ビックケミー株式会社)、DKQ1-1247、DOWSIL1313、DOWSIL8590(ダウ・東レ株式会社)、TEGOFoamex3062 、Airase5355 (エボニック・ジャパン株式会社)等が挙げられる。
【0050】
シロキサン化合物の含有量は、インクの質量に対して0.01質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。上記範囲であることで、インクを吐出するノズル近傍における気泡の発生がより抑制され、インクの吐出安定性がより向上し、耐擦過性の低下をより抑制することができる。
【0051】
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、顔料として、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0052】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、インク全量に対して、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0053】
顔料を分散してインクを得る方法としては、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
分散剤として、竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0054】
<有機溶剤>
有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
多価アルコール類の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等が挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
多価アルコールアリールエーテル類としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
アミド類としては、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等が挙げられる。
アミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
含硫黄化合物類としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。
その他の有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0055】
有機溶剤として、炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0056】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
【0057】
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、インク全量に対して、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0058】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、インク全量に対して、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0059】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。 フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0060】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。 これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【化2】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
【化3】
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCmF2m+1でmは1~6の整数、又はCHCH(OH)CH-CmF2m+1でmは4~6の整数、又はCpH2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0061】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、インク全量に対して、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0062】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0063】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0064】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0065】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0066】
<<前処理液>>
前処理液は、記録媒体等に対して付与され、前処理液が付与された領域に対して後から付与されるインクと接触することで、インク中において凝集又は増粘を生じさせる液体組成物である。
前処理液は、多価金属塩、水、有機溶剤、界面活性剤などのその他の成分を含むことが好ましい。なお、水、有機溶剤、界面活性剤などのその他の成分については、上記のインクと同様の成分を用いることができるため、それらの説明を省略する。
【0067】
<多価金属塩>
多価金属塩は、インク中の色材との電荷的な作用によって会合し、色材の凝集体を形成して、色材を液相から分離させ、記録媒体への定着を促進させる。これにより、インクにより形成される画像において濃度ムラの発生が抑制される。
【0068】
多価金属塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チタン化合物、クロム化合物、銅化合物、コバルト化合物、ストロンチウム化合物、バリウム化合物、鉄化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、亜鉛化合物、ニッケル化合物等の塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、顔料等の色材を効果的に凝集させることができる点から、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、ニッケル化合物の塩が好ましく、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩がより好ましい。
なお、多価金属塩はイオン性のものが好ましい。特に、上記多価金属塩がマグネシウム塩、カルシウム塩であることが好ましい。
【0069】
マグネシウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、珪酸マグネシムなどが挙げられる。
カルシウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、珪酸カルシウムなどが挙げられる。
バリウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫酸バリウムなどが挙げられる。
亜鉛化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫化亜鉛、炭酸亜鉛などが挙げられる。
アルミニウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、珪酸アルミニウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
【0070】
多価金属塩の含有量は、前処理液の質量に対して1.0質量%以上30.0質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以上15.0質量%以下であることがより好ましい。多価金属塩の含有量が上記範囲であることで、インクにより形成される画像における濃度ムラの発生がより抑制され、前処理液の保存安定性も向上する。
【0071】
<<記録媒体>>
記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることができるが、非浸透性基材であってもよい。
非浸透性基材とは、水透過性、水吸収性、又は水吸着性が低い表面を有する基材を指し、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない基材も含まれる。より定量的には、ブリストー(Bristow)法において、接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である基材を指す。
非浸透性基材としては、例えば、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートフィルムなどのプラスチックフィルムを、好適に使用することができる。
【0072】
<<インク収容容器>>
インク収容容器は、インクを収容するインク収容部を備え、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を有してもよい。
インク収容容器は、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク収容部を有するもの、大容量のインクタンクなどが好適である。
【0073】
<<前処理液収容容器>>
前処理液収容容器は、前処理液を収容する前処理液収容部を備え、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を有してもよい。
前処理液収容容器は、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成された前処理液収容部を有するもの、大容量の前処理液タンクなどが好適である。
【0074】
<<記録装置、記録方法>>
本実施形態のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインクや前処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや前処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
記録装置、記録方法は、前処理液付与工程およびインク付与工程の間に実行される前処理液乾燥工程に用いる前処理液乾燥手段を有してもよい。前処理液乾燥工程を行うことで、前処理液の成分が記録媒体上に固定された状態でインクを付与できるため、記録媒体上においてインクと前処理液の反応が効率よく進行し、濃度ムラの低減された画像を得ることができる。前処理液乾燥工程、前処理液乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。前処理液乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
記録装置の一例について図1乃至図2を参照して説明する。図1は同装置の斜視説明図である。図2はメインタンクの斜視説明図である。記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0075】
なお、インクの使用方法としては、インクジェット記録方法に制限されず、広く使用することが可能である。インクジェット記録方法以外にも、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
【実施例0076】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0077】
まず、以下記載する合成例、作製例、調製例における各種物性の測定方法を示す。
【0078】
<ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)、結晶化温度(Tc)>
4gの樹脂の分散液(樹脂エマルション)を均一に広がるように容器に入れ、それを70℃で1時間乾燥させ、次いで130℃で1時間乾燥させ、更に130℃で減圧乾燥させて測定サンプルの固形物を得た。
測定サンプルについて、各々熱特性を示差走査熱量計(DSC)(TAインスツルメンツ社製Q2000)を用いて、以下の条件にて測定した。具体的には以下のようにして、測定した。
(測定条件)
サンプル容器:アルミニウム製サンプルパン(蓋有り)
サンプル量:5mg
リファレンスアルミニウム製サンプルパン(空の容器)
雰囲気:窒素(流量50mL/min)
開始温度:-80℃
昇温速度:10℃/min
終了温度:130℃
保持時間:1min
降温速度:10℃/min
終了温度:-80℃
保持時間:5min
昇温速度:10℃/min
終了温度:130℃
以上の測定条件にて、測定を行い、「吸発熱量」と「温度」とのグラフを作成した。
第一昇温過程にて観測される特徴的な変曲を、ガラス転移温度(Tg)とした。なお、Tgは、DSC曲線からミッドポイント法によって得た値を使用した。
融点は、第二昇温過程にて得られる融解(吸熱)ピークの頂点における温度とした。また、融解熱量に関しては、昇温過程における吸熱を融解領域とすることで算出した。
結晶化ピーク温度は、降温過程にて得られる結晶化(発熱)ピークにおける頂点の温度とした。結晶化熱量に関しては、降温過程における発熱を結晶化領域とすることで算出した。
【0079】
<体積平均粒径>
体積平均粒径は、ゼータ電位・粒径測定システム(ELSZ-1000、大塚電子株式会社製)を用いて、動的光散乱法により測定した。
まず、0.2gの樹脂の分散液(樹脂エマルション)を取り、次に、イオン交換水を加えて100倍に希釈し、得られた溶液の一部を石英セルに入れ、サンプルホルダーにセットした。そして、温度:25℃、ダストカット(回数:5、Upper:5、Lower:100)、積算回数:70の条件で測定し、インク中の固形分の体積平均粒径を得た。
【0080】
<ブラック顔料分散体の調製例>
以下の処方混合物をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製、KDL型、メディア:直径0.3mmジルコニアボール使用)で7時間循環分散してブラック顔料分散体(顔料濃度:15質量%)を得た。
・カーボンブラック顔料(商品名:Monarch800、キャボット社製):15.0質量部
・アクリル系高分子分散剤(商品名:Disperbyk-2010、BYKジャパン製):5.0質量部
・イオン交換水:80.0質量部
【0081】
<結晶性ポリエステルポリオール1の合成例>
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ジオールとして1,4-ブタンジオール、並びにジカルボン酸としてセバシン酸を、ジオールとジカルボン酸とのモル比がOH/COOH=1.40となるように仕込んだ。そして、反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、モノマーに対して300ppmのチタンテトライソプロポキシドを添加し、窒素ガス気流下にて4時間程度で200℃まで昇温し、ついで、2時間かけて230℃に昇温し、流出水がなくなるまで反応を行った。その後、10mmHg~30mmHgの減圧下、1時間反応させることで「結晶性ポリエステルポリオール1」を得た。
【0082】
<結晶性ポリエステルポリオール2の合成例>
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ジオールとして1,4-ブタンジオール、並びにジカルボン酸としてドデカン二酸を、ジオールとジカルボン酸とのモル比がOH/COOH=1.40となるように仕込んだ。そして、反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、モノマーに対して300ppmのチタンテトライソプロポキシドを添加し、窒素ガス気流下にて4時間程度で200℃まで昇温し、ついで、2時間かけて230℃に昇温し、流出水がなくなるまで反応を行った。その後、10mmHg~30mmHgの減圧下、1時間反応させることで「結晶性ポリエステルポリオール2」を得た。
【0083】
<非晶性ポリエステルポリオール3の合成例>
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した2Lの四つ口フラスコに、ジオールとしてプロピレングリコール、並びに、ジカルボン酸としてテレフタル酸及びコハク酸を、モル比(テレフタル酸/コハク酸)=80/20、OH/COOH=1.4となるように仕込んだ。そして、反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、300ppm(モノマーに対して)のチタンテトライソプロポキシド添加し、窒素ガス気流下にて4時間程度で200℃まで昇温し、ついで、2時間かけて230℃に昇温し、流出物がなくなるまで反応を行った。その後、10mmHg~30mmHgの減圧下、1時間反応させて「非晶性ポリエステルポリオール3」を得た。
【0084】
<結晶性ポリエステルポリオール4の合成例>
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ジオールとして1,4-ブタンジオール、並びにジカルボン酸としてセバシン酸を、ジオールとジカルボン酸とのモル比がOH/COOH=1.10となるように仕込んだ。そして、反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、モノマーに対して300ppmのチタンテトライソプロポキシドを添加し、窒素ガス気流下にて4時間程度で200℃まで昇温し、ついで、2時間かけて230℃に昇温し、流出水がなくなるまで反応を行った。その後、10mmHg~30mmHgの減圧下、4時間反応させた。次いで180℃に降温し、酸価調整剤として無水トリメリット酸を酸価が17になるよう添加し、1時間反応させることで「結晶性ポリエステルポリオール4」を得た。
【0085】
<結晶性ポリエステルポリオール5の合成例>
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ジオールとしてエチレングリコール、並びにジカルボン酸としてドデカン二酸を、ジオールとジカルボン酸とのモル比がOH/COOH=1.40となるように仕込んだ。そして、反応容器内を十分に窒素ガスで置換した後、モノマーに対して300ppmのチタンテトライソプロポキシドを添加し、窒素ガス気流下にて4時間程度で200℃まで昇温し、ついで、2時間かけて230℃に昇温し、流出水がなくなるまで反応を行った。その後、10mmHg~30mmHgの減圧下、1時間反応させることで「結晶性ポリエステルポリオール5」を得た。
【0086】
<結晶性ポリエステルウレタン樹脂分散液Aの作製例>
攪拌機、温度計、及び還流管を備えた1Lのセパラブルフラスコに、結晶性ポリエステルポリオール1を50g、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸2.8g、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート19.3g、トリエチルアミン2.1g、及び有機溶剤としてメチルエチルケトン39gを、窒素を導入しながら仕込み、触媒(ジ(2-エチルヘキサン酸)すず(II)を1滴加え、その後60℃に昇温して2時間還流した。その後温度を40℃まで下げ、該温度に保った。系中に存在するNCO%を確認した後、500rpmの速度で攪拌しながら水138gをゆっくり加えて微粒子化し、30分間加熱攪拌した後、ジエチレントリアミン0.33gを加え、1時間加熱攪拌した。最後にメチルエチルケトンを除去することで、固形量35%で体積平均粒径(D50)が34nmの「結晶性ポリエステルウレタン樹脂分散液A」を得た。得られた樹脂分散液を乾燥した後に得られた樹脂は、融点(融解熱量)42℃(20J/g)、結晶化温度(結晶化熱量)-16℃(11J/g)、酸化(AV)16mgKOH/gであった。
【0087】
<結晶性ポリエステルウレタン樹脂分散液Bの作製例>
攪拌機、温度計、及び還流管を備えた1Lのセパラブルフラスコに、結晶性ポリエステルポリオール2を50g、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸2.9g、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート23.5g、トリエチルアミン2.2g、及び有機溶剤としてメチルエチルケトン41gを、窒素を導入しながら仕込み、触媒(ジ(2-エチルヘキサン酸)すず(II)を1滴加え、その後60℃に昇温して2時間還流した。その後温度を40℃まで下げ、該温度に保った。系中に存在するNCO%を確認した後、500rpmの速度で攪拌しながら水146gをゆっくり加えて微粒子化し、30分間加熱攪拌した後、ジエチレントリアミン0.63gを加え、1時間加熱攪拌した。最後にメチルエチルケトンを除去することで、固形量35%で体積平均粒径(D50)が34nmの「結晶性ポリエステルウレタン樹脂分散液B」を得た。得られた樹脂分散液を乾燥した後に得られた樹脂は、融点(融解熱量)45℃(24J/g)、結晶化温度(結晶化熱量)-5℃(15J/g)、酸化(AV)16mgKOH/gであった。
【0088】
<非晶性ポリエステルウレタン樹脂分散液Cの作製例>
攪拌機、温度計、及び還流管を備えた1Lのセパラブルフラスコに、非晶性ポリエステルポリオール3を140g、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸10.2g、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート64.0g、トリエチルアミン6.5g、及び有機溶剤としてメチルエチルケトン115gを、窒素を導入しながら仕込み、触媒(ジ(2-エチルヘキサン酸)すず(II)を1滴加え、その後60℃に昇温して2時間還流した。その後温度を40℃まで下げ、該温度に保った。系中に存在するNCO%を確認した後、500rpmの速度で攪拌しながら水410gをゆっくり加えて微粒子化し、30分間加熱攪拌した後、ジエチレントリアミン4.25gを加え、1時間加熱攪拌した。最後にメチルエチルケトンを除去することで、固形量35%で体積平均粒径(D50)が170nmの「非晶性ポリエステルウレタン樹脂分散液C」を得た。得られた樹脂分散液を乾燥した後に得られた樹脂は、ガラス転移温度78℃、酸化(AV)20mgKOH/gであった。
【0089】
<結晶性ポリエステル樹脂分散液Dの作製例>
窒素導入管、攪拌器及び熱電対を装備した300mLの四つ口フラスコに、結晶性ポリエステルポリオール4を50g、メチルエチルケトン50gを混合し、窒素気流下40℃で溶解させた後、トリエチルアミン1.53gを添加した。1時間攪拌した後、イオン交換水166.7gを7.5g/minにて滴下し、30分間攪拌後にメチルエチルケトンを減圧除去することで、固形量30%で体積平均粒径(D50)が116nmの「結晶性ポリエステル樹脂分散液D」を得た。得られた樹脂分散液を乾燥した後に得られた樹脂は、融点(融解熱量)60℃(94J/g)、結晶化温度(結晶化熱量)40℃(92J/g)、酸化(AV)17mgKOH/gであった。
【0090】
<結晶性ポリエステルウレタン樹脂分散液Eの作製例>
攪拌機、温度計、及び還流管を備えた1Lのセパラブルフラスコに、結晶性ポリエステルポリオール5を50g、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸2.4g、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート18.5g、トリエチルアミン1.9g、及び有機溶剤としてメチルエチルケトン40gを、窒素を導入しながら仕込み、触媒(ジ(2-エチルヘキサン酸)すず(II)を1滴加え、その後60℃に昇温して2時間還流した。その後温度を40℃まで下げ、該温度に保った。系中に存在するNCO%を確認した後、500rpmの速度で攪拌しながら水136gをゆっくり加えて微粒子化し、30分間加熱攪拌した後、イソホロンジアミン2.4gを加え、1時間加熱攪拌した。最後にメチルエチルケトンを除去することで、固形量30%で体積平均粒径(D50)が76nmの「結晶性ポリエステルウレタン樹脂分散液E」を得た。得られた樹脂分散液を乾燥した後に得られた樹脂は、融点(融解熱量)77℃(24J/g)、結晶化温度(結晶化熱量)52℃(13J/g)、酸化(AV)17mgKOH/gであった。
【0091】
<インク1の調製例>
以下の処方で混合撹拌した後、平均孔径0.8μmポリプロピレンフィルターにて濾過することによりインク1を作製した。
・ブラック顔料分散体:20.0質量部
・一般式(1)で表される化合物(サーフィノール420、日信化学工業株式会社製):0.5質量部
・スルホこはく酸ビス(2-エチルヘキシル)ナトリウム:0.5質量部
・シロキサン化合物(BYK-019):0.1質量部
・結晶性ポリエステルウレタン樹脂分散液A:10.0質量部(固形分量)
・1,2-プロパンジオール:15.0質量部
・1,3-ブタンジオール:10.0質量部
・プロキセルLV(アビシア社製、防腐剤):0.1質量部
・イオン交換水:残量(合計:100質量部)
【0092】
<インク2~22の調製例>
インク1の調製例において、インクの処方を下記表1~3に示すものに変更した以外はインク1の調製例と同様にしてインク2~22を作製した。なお、表1~3における各成分の含有量の単位は「質量部」であり、各インクの全量は100質量部である。また、表1~3における樹脂の含有量は固形分量を示す。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
<前処理液1の調製例>
以下の処方で混合撹拌した後、5μmのフィルター(ザルトリウス社製ミニザルト)で濾過することにより前処理液1を作製した。
・1,2-プロパンジオール:15.0質量部
・エチレングリコールモノブチルエーテル:13.0質量部
・エマルゲンLS-106(花王社製界面活性剤):0.5質量部
・酢酸カルシウム:6.0部
・プロキセルLV(アビシア製、防腐剤):0.1質量部
・イオン交換水:残量(合計:100質量部)
【0097】
<前処理液2~3の調製例>
前処理液1の調製例において、前処理液の処方を下記表4に示すものに変更した以外は前処理液1の調製例と同様にして前処理液2~3を作製した。なお、表4における各成分の含有量の単位は「質量部」であり、各前処理液の全量は100質量部である。
【0098】
【表4】
【0099】
<ベタ画像の形成>
予めバーコーターで付着量10g/mとなるように前処理液を塗工したコート白ボール JET STAR(坪量270g/m、日本製紙株式会社製)を用意した。次に、23℃±0.5℃、50±5%RHに調整した環境条件下、インクを充填された画像形成装置(IPSiO GXe-5500、株式会社リコー製)を用い、インクジェット方式でベタ画像を印刷した。なお、前処理液付与工程とインク付与工程との間に前処理液乾燥工程を有する場合には、前処理液付与工程とインク付与工程との間に、70℃で2分間の乾燥工程を挟んだ。
【0100】
<乾燥性の評価>
上記のように形成したベタ画像を、23℃±0.5℃の環境下において所定の時間放置して乾燥させた。乾燥後のベタ画像部に濾紙を押し当て、濾紙へのインクの転写の具合から、次の基準でインクの乾燥性を評価した。評価結果を表5に示す。なお、Cまでが許容範囲である。
〔評価基準〕
A:15分間の乾燥で濾紙への転写がなくなる
B:30分間の乾燥で濾紙への転写がなくなる
C:60分間の乾燥で濾紙への転写がなくなる
D:60分間の乾燥でも濾紙への転写がなくならない
【0101】
<耐擦過性の評価>
上記のように形成したベタ画像を、印刷直後から80℃で30秒間乾燥させる。その後サンプルを室温に戻し、10秒後にベタ画像部に対し、乾いた木綿(カナキン3号)を100gの加重をかけて30往復擦過する。下記評価基準により耐擦過性を目視で判定した。評価結果を表5に示す。なお、Cまでが許容範囲である。
〔評価基準〕
A:30回擦った段階でほとんど傷が観察されない
B:30回擦った段階で多少の傷が残るが、実使用上問題ない
C:15回擦った段階で多少の傷が残るが、実使用上問題ない
D:15回以下の擦過にて画像濃度が低下し、実使用上の問題が生じる
【0102】
<濃度ムラの評価>
上記のように形成したベタ画像を、80℃で2分間乾燥させる。これを目視で観察し、下記評価基準により画像濃度ムラの評価を行った。評価結果を表5に示す。なお、Cまでが許容範囲である。
〔評価基準〕
A:濃度ムラが観察されない
B:わずかに濃度ムラが観察されるが、実使用上は問題ない
C:濃度ムラが観察されるが、実使用上は問題ない程度である
D:明らかな濃度ムラが観察され、実使用上の問題が生じる
【0103】
<吐出安定性の評価>
23℃±0.5℃、50±5%RHに調整した環境条件下、画像形成装置(IPSiO GXe-5500、株式会社リコー製)を用いたインクジェット方式で、プリンタのメンテナンスコマンドよりヘッドクリーニングを実行したのち、テストチャートを印刷した。テストチャートによってノズルの全チャンネルが吐出状態にあることを確認した後、3分間連続してベタ画像を印刷し、その後ヘッドのキャップを外して1分放置した後に再度テストチャートを印刷し、下記評価基準により吐出安定性を判断した。評価結果を表5に示す。なお、Cまでが許容範囲である。
〔評価基準〕
A:不吐出チャンネル数が5個以下
B:不吐出チャンネル数が6個以上10個以下
C:不吐出チャンネル数が11個以上20個以下
D:不吐出チャンネル数が21個以上
【0104】
【表5】
【符号の説明】
【0105】
400 画像形成装置
401 画像形成装置の外装
401c 装置本体のカバー
404 カートリッジホルダ
410 メインタンク
410k、410c、410m、410y ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク
411 インク収容部
413 インク排出口
414 収容容器ケース
420 機構部
434 吐出ヘッド
436 供給チューブ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0106】
【特許文献1】特開2020-143189号公報
図1
図2