(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041170
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】定着装置、及び、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20230316BHJP
【FI】
G03G15/20 505
G03G15/20 510
G03G15/20 555
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148378
(22)【出願日】2021-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】足利谷 淳史
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA03
2H033BA27
2H033BB01
2H033BB02
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB12
2H033BB15
2H033BB28
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB38
(57)【要約】
【課題】定着部材や加圧部材を幅方向に移動させてニップ部の幅方向の長さを可変しても、定着部材においてニップ部を形成しない幅方向の部分が過昇温してしまう不具合を生じにくくする。
【解決手段】中央部ヒータ25と端部ヒータ26とを幅方向に移動させることなく、定着ローラ21を幅方向一端側又は幅方向他端側に移動させるとともに、加圧ローラ31を幅方向他端側又は幅方向一端側に移動させる移動機構55が設けられている。そして、移動機構55は、最大サイズのシートP1が搬送される最大サイズ搬送時には、少なくとも最大幅方向範囲Mにニップ部が形成されるように、定着ローラ21と加圧ローラ31とを移動させて、幅方向中央部Nと略同等のサイズのシートP2が搬送される小サイズ搬送時には、幅方向中央部Nと略同じ幅方向範囲にのみニップ部が形成されるように、定着ローラ21と加圧ローラ31とを移動させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を加熱してシートの表面に定着する定着部材と、
前記定着部材に圧接することでシートが搬送されるニップ部を形成する加圧部材と、
搬送可能な最大サイズのシートの最大幅方向範囲に対して幅方向中央部のみを加熱範囲として前記定着部材を加熱可能な中央部ヒータと、
前記最大幅方向範囲に対して前記幅方向中央部を除く幅方向両端部の全部又は一部を加熱範囲として前記定着部材を加熱可能な端部ヒータと、
前記中央部ヒータと前記端部ヒータとを幅方向に移動させることなく、前記定着部材を幅方向一端側又は幅方向他端側に移動させるとともに、前記加圧部材を幅方向他端側又は幅方向一端側に移動させる移動機構と、
を備え、
前記移動機構は、
前記最大サイズのシートが搬送される最大サイズ搬送時には、少なくとも前記最大幅方向範囲に前記ニップ部が形成されるように、前記定着部材と前記加圧部材とを移動させて、
前記幅方向中央部と略同等のサイズのシートが搬送される小サイズ搬送時には、前記幅方向中央部と略同じ幅方向範囲にのみ前記ニップ部が形成されるように、前記定着部材と前記加圧部材とを移動させることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記小サイズ搬送時は、搬送可能な最小サイズのシートが搬送されるときであることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記幅方向中央部における所定位置に固定して設置されて、前記最大サイズ搬送時においても前記小サイズ搬送時においても前記定着部材の表面温度を検知可能な中央部温度センサと、
前記幅方向両端部における所定の位置に固定して設置されて、前記最大サイズ搬送時においても前記小サイズ搬送時においても前記定着部材の表面温度を検知可能な端部温度センサと、
を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記中央部ヒータは、前記最大サイズ搬送時においても前記小サイズ搬送時においても前記中央部温度センサの検知温度が狙いの定着温度になるようにオン・オフ制御され、
前記端部ヒータは、前記最大サイズ搬送時には前記端部温度センサの検知温度が前記定着温度になるようにオン・オフ制御されて、前記小サイズ搬送時には前記端部温度センサの検知温度が前記定着温度よりも低い所定温度になるようにオン・オフ制御されることを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記中央部ヒータは、前記最大サイズ搬送時においても前記小サイズ搬送時においても前記中央部温度センサの検知温度が狙いの定着温度になるようにオン・オフ制御され、
前記端部ヒータは、前記最大サイズ搬送時には前記端部温度センサの検知温度が前記定着温度になるようにオン・オフ制御されて、前記小サイズ搬送時には出力がオフされることを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項6】
前記最大サイズ搬送時から前記小サイズ搬送時に移行するときに、前記定着部材を幅方向一端側に移動させるとともに前記加圧部材を幅方向他端側に移動させる第1の形態と、前記定着部材を幅方向他端側に移動させるとともに前記加圧部材を幅方向一端側に移動させる第2の形態と、をどちらも実行可能であることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
前記小サイズ搬送時に、前記定着部材において前記ニップ部を形成しない幅方向の部分と、前記加圧部材において前記ニップ部を形成しない幅方向の部分と、が画像形成装置本体の内部において気流を生じさせるダクトに挿入されることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載の定着装置。
【請求項8】
前記ダクトは、当該定着装置で生じる熱を前記画像形成装置本体の外部に排熱するためのものであることを特徴とする請求項7に記載の定着装置。
【請求項9】
前記端部ヒータは、前記最大サイズのシートよりも小さく、前記幅方向中央部と略同等のサイズのシートよりも大きな、1つ又は複数の幅方向サイズのシートの幅方向サイズに合わせて前記定着部材の加熱範囲が可変されるように前記幅方向両端部が複数に分割された複数の端部ヒータであって、
前記移動機構は、搬送されるシートの幅方向サイズに合わせて前記ニップ部が形成されるように、前記定着部材と前記加圧部材とを移動させることを特徴とする請求項1~請求項8のいずれかに記載の定着装置。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トナー像を加熱してシートの表面に定着する定着装置と、それを備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の画像形成装置と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置における定着装置において、定着部材(定着ローラ)や加圧部材(加圧ローラ)を所定のタイミングで幅方向に移動させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
詳しくは、定着装置は、定着部材(定着ローラ)に、加圧部材(加圧ローラ)が圧接していて、シート(用紙)が搬送されるニップ部(定着ニップ)が形成されている。定着部材は、定着部材の表面温度を検知する温度センサの検知結果に基づいて制御されるヒータによって加熱される。そして、ニップ部に搬送されたシート上のトナー像が、定着部材から受ける熱と、ニップ部の圧力と、によって、シート上に定着されることになる。
【0004】
一方、特許文献1には、シートにシワが生じる不具合を抑止することを目的として、シートのサイズに応じて、加熱回転体(定着部材)と加圧回転体(加圧部材)との圧接部(ニップ部)の幅を変える技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の定着装置は、定着部材や加圧部材を幅方向に移動させてニップ部の幅方向の長さを可変したときに、定着部材を幅方向にわたって加熱するヒータによって、定着部材においてニップ部を形成する幅方向の部分とともに、ニップ部を形成しない幅方向の部分も加熱されてしまっていた。そのため、定着部材においてニップ部を形成しない幅方向の部分(非通紙領域)が過昇温してしまう不具合が生じてしまっていた。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、定着部材や加圧部材を幅方向に移動させてニップ部の幅方向の長さを可変しても、定着部材においてニップ部を形成しない幅方向の部分が過昇温してしまう不具合が生じにくい、定着装置、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明における定着装置は、トナー像を加熱してシートの表面に定着する定着部材と、前記定着部材に圧接することでシートが搬送されるニップ部を形成する加圧部材と、搬送可能な最大サイズのシートの最大幅方向範囲に対して幅方向中央部のみを加熱範囲として前記定着部材を加熱可能な中央部ヒータと、前記最大幅方向範囲に対して前記幅方向中央部を除く幅方向両端部の全部又は一部を加熱範囲として前記定着部材を加熱可能な端部ヒータと、前記中央部ヒータと前記端部ヒータとを幅方向に移動させることなく、前記定着部材を幅方向一端側又は幅方向他端側に移動させるとともに、前記加圧部材を幅方向他端側又は幅方向一端側に移動させる移動機構と、を備え、前記移動機構は、前記最大サイズのシートが搬送される最大サイズ搬送時には、少なくとも前記最大幅方向範囲に前記ニップ部が形成されるように、前記定着部材と前記加圧部材とを移動させて、前記幅方向中央部と略同等のサイズのシートが搬送される小サイズ搬送時には、前記幅方向中央部と略同じ幅方向範囲にのみ前記ニップ部が形成されるように、前記定着部材と前記加圧部材とを移動させるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、定着部材や加圧部材を幅方向に移動させてニップ部の幅方向の長さを可変しても、定着部材においてニップ部を形成しない幅方向の部分が過昇温してしまう不具合が生じにくい、定着装置、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
【
図3】定着ローラに対する中央部ヒータと端部ヒータとの幅方向の位置関係を示す概略図である。
【
図4】(A)大サイズ搬送時の定着装置とシートとの幅方向の位置関係を示す概略図と、(B)小サイズ搬送時の定着装置とシートとの幅方向の位置関係を示す概略図と、である。
【
図5】変形例1における、小サイズ搬送時の定着装置を示す概略図である。
【
図6】変形例2における、小サイズ搬送時の定着装置を示す概略図である。
【
図7】変形例3における、(A)大サイズ搬送時の定着装置を示す概略図と、(B)中サイズ搬送時の定着装置を示す概略図と、(C)小サイズ搬送時の定着装置を示す概略図と、である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
まず、
図1にて、画像形成装置1における全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としてのタンデム型カラー複写機、2は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部、3は原稿Dを原稿読込部4に搬送する原稿搬送部、4は原稿Dの画像情報を読み込む原稿読込部、を示す。
また、7は用紙等のシートPが収容される給紙部、9はシートPの搬送タイミングを調整するレジストローラ(タイミングローラ)、11Y、11M、11C、11BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像が形成される感光体ドラム、を示す。
【0012】
また、12は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面を帯電する帯電部、13は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面に形成される静電潜像を現像する現像部、14は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面に形成されたトナー像をシートPの表面に重ねて転写する1次転写ローラ、15は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面に残留した未転写トナーを回収するクリーニング部、を示す。
また、16は中間転写ベルト17を清掃する中間転写ベルトクリーニング部、17は複数色のトナー像が重ねて転写される中間転写ベルト、18は中間転写ベルト17上のカラートナー像をシートP上に転写するための2次転写ローラ、20はシートP上のトナー像(未定着画像)を定着する定着装置、を示す。
【0013】
以下、画像形成装置における、通常のカラー画像形成時の動作(印刷動作)について説明する。
まず、原稿Dは、原稿搬送部3の搬送ローラによって、原稿台から搬送されて、原稿読込部4のコンタクトガラス5上に載置される。そして、原稿読込部4で、コンタクトガラス5上に載置された原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
【0014】
詳しくは、原稿読込部4は、コンタクトガラス5上の原稿Dの画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させる。そして、原稿Dにて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、カラーセンサに結像する。原稿Dのカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
【0015】
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部2に送信される。そして、書込み部2からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光(露光光)が、それぞれ、対応する感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面に向けて発せられる。
【0016】
一方、4つの感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKは、それぞれ、
図1の反時計方向に回転している。そして、まず、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、帯電部12との対向部で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面には、帯電電位が形成される。
その後、帯電された感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、それぞれのレーザ光の照射位置に達する(露光工程である。)。詳しくは、書込み部2において、4つの光源から画像信号に対応したレーザ光が各色に対応してそれぞれ射出される。各レーザ光は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる。
【0017】
イエロー成分に対応したレーザ光は、紙面左側から1番目の感光体ドラム11Yの表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラーにより、感光体ドラム11Yの回転軸方向(主走査方向、幅方向)に走査される。こうして、帯電部12にて帯電された後の感光体ドラム11Y上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0018】
同様に、マゼンタ成分に対応したレーザ光は、紙面左から2番目の感光体ドラム11Mの表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。シアン成分のレーザ光は、紙面左から3番目の感光体ドラム11Cの表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、紙面左から4番目の感光体ドラム11BKの表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0019】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、それぞれ、現像部13との対向位置に達する。そして、各現像部13から感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面に形成された潜像が現像される(現像工程である。)。
その後、現像工程後の感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、それぞれ、中間転写ベルト17との対向部に達する。ここで、それぞれの対向部には、中間転写ベルト17の内周面に当接するように1次転写ローラ14が設置されている。そして、1次転写ローラ14の位置で、中間転写ベルト17上に、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面に形成された各色のトナー像が、順次重ねて転写される(1次転写工程である。)。
【0020】
そして、転写工程後の感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、それぞれ、クリーニング部15との対向位置に達する。そして、クリーニング部15で、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面に残存する未転写トナーが回収される(クリーニング工程である。)。
その後、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、除電部を通過して、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKにおける一連の作像プロセスが終了する。
【0021】
他方、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面の各色のトナーが重ねて転写(担持)された中間転写ベルト17は、
図1の時計方向に走行して、2次転写ローラ18との対向位置に達する。そして、2次転写ローラ18との対向位置で、シートP上に中間転写ベルト17上に担持されたカラーのトナー像が転写される(2次転写工程である。)。
その後、中間転写ベルト17の表面は、中間転写ベルトクリーニング部16の位置に達する。そして、中間転写ベルト17上に付着した未転写トナーが中間転写ベルトクリーニング部16に回収されて、中間転写ベルト17における一連の転写プロセスが終了する。
【0022】
ここで、中間転写ベルト17と2次転写ローラ18との間(2次転写ニップである。)に搬送されるシートPは、給紙部7からレジストローラ9等を経由して搬送されるものである。
詳しくは、シートPを収納する給紙部7から、給紙ローラ8により給送されたシートPが、搬送経路を通過した後に、レジストローラ9に導かれる。レジストローラ9に達したシートPは、タイミングを合わせて、2次転写ニップに向けて搬送される。
【0023】
そして、フルカラー画像が転写されたシートPは、搬送ベルトによって定着装置20に導かれる。定着装置20では、定着ローラと加圧ローラとのニップ部(定着ニップ)にて、カラー画像(トナー像)がシートPの表面に定着される(定着工程である。)。
そして、定着工程後のシートPは、排紙ローラによって、装置本体1の外部に出力画像として排出されて、一連の画像形成プロセス(印刷動作)が完了する。
【0024】
次に、
図2、
図3等を用いて、画像形成装置本体1に設置される定着装置20の構成・動作について詳述する。
図2、
図3に示すように、定着装置20は、定着部材としての定着ローラ21、加熱手段としてのヒータ25、26、加圧部材としての加圧ローラ31、定着ローラ21の温度(表面温度)を検知する2つの温度センサ40、41、定着ローラ21と加圧ローラ31とを幅方向に移動するための移動機構55、等で構成されている。
【0025】
ここで、定着部材としての定着ローラ21(定着回転体)は、ステンレス鋼などの金属材料からなる中空構造の芯金21a上に、被覆層21b(弾性層と離型層とが積層されたものである。)が形成された多層構造のローラ部材であって、加圧部材としての加圧ローラ31に圧接してニップ部(定着ニップ)を形成している。
定着ローラ21の被覆層21bにおける弾性層は、フッ素ゴム、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム等の弾性材料で形成されている。定着ローラ21の被覆層21bにおける離型層は、PFA(4フッ化エチレンバーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)等で形成されている。定着ローラ21の表層に離型層を設けることにより、トナーT(トナー像)に対する離型性(剥離性)が担保されることになる。定着ローラ21は、駆動モータ(不図示)によって
図2の時計方向に回転駆動される。
【0026】
中空構造の定着ローラ21(芯金21a)の内部には、加熱手段としての2つのヒータ(中央部ヒータ25と端部ヒータ26とである。)が固設されている。
2つのヒータ25、26は、それぞれ、棒状に形成されたハロゲンヒータであって、その両端部が定着装置20の側板に固定されている。そして、画像形成装置本体1のメインスイッチがオン(電源オン)された状態で、電源91、92からヒータ25、26に電力が供給される。そして、制御部90により出力制御されたヒータ25、26からの輻射熱によって定着ローラ21が加熱されて、さらに加熱された定着ローラ21の表面からシートP上のトナー像Tに熱が加えられる。
ヒータ25、26の出力制御は、定着ローラ21表面に非接触で対向する2つの温度センサ40、41によるローラ表面温度の検知結果に基づいておこなわれる。そして、このようなヒータ25、26の出力制御によって、定着ローラ21の温度(定着温度)を所望の温度(目標制御温度)に調整制御することができる。
なお、2つの温度センサ(中央部温度センサ40と端部温度センサ41とである。)については、後でさらに詳しく説明する。
【0027】
また、加圧部材としての加圧ローラ31(加圧回転体)は、主として、芯金32と、芯金32の外周面を覆う被覆層としての弾性層33と、からなるローラ部材である。
加圧ローラ31の弾性層33(被覆層)は、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、等の材料で形成されている。なお、弾性層33の表層にPFA等からなる薄肉の離型層を設けて、弾性層33と離型層とで被覆層を構成することもできる。
そして、加圧ローラ31は、不図示の加圧機構によって定着ローラ21に圧接する。こうして、加圧ローラ31と定着ローラ21との間に、所望のニップ部が形成される。
加圧ローラ31は、定着ローラ21の回転にともない、
図2の反時計方向に従動回転する。
なお、本実施の形態では、移動機構55によって定着ローラ21と加圧ローラ31とが幅方向に移動可能に構成されているが、これについては後で詳しく説明する。
【0028】
上述のように構成された定着装置20は、次のように動作する。
装置本体1のメインスイッチが投入されると、電源91、92からヒータ25、26に交流電圧が印加(給電)される。
そして、印刷指令(プリント要求)が入力されると、不図示の駆動モータ(駆動機構)によって定着ローラ21の時計方向の回転駆動が開始されて、加圧ローラ31の反時計方向の従動回転が開始される。その後、給紙部7からシートPが給送されて、2次転写ローラ18の位置で、中間転写ベルト17上のトナー像がシートP上に未定着画像として担持される。未定着画像T(トナー像)が担持されたシートPは、
図2の矢印方向に搬送されて、圧接状態にある定着ローラ21及び加圧ローラ31のニップ部に送入される。そして、定着ローラ21による加熱と、定着ローラ21及び加圧ローラ31の押圧力とによって、シートPの表面にトナー像Tが定着される。そして、定着工程後のシートPは、回転する定着ローラ21及び加圧ローラ31によって、ニップ部から矢印方向に送出される。
【0029】
以下、本実施の形態における定着装置20(画像形成装置1)において、特徴的な構成・動作について詳しく説明する。
図2、
図3等を参照して、本実施の形態における定着装置20には、定着ローラ21(定着部材)を加熱する加熱手段として、2つのヒータ(中央部ヒータ25と端部ヒータ26とである。)が設けられている。2つのヒータ25、26は、後述するように定着ローラ21や加圧ローラ31が幅方向に移動しても、その幅方向の位置は変化しない(幅方向の絶対的な位置が固定されている。)。
【0030】
さらに詳しくは、
図3を参照して、中央部ヒータ25は、搬送可能な最大サイズ(最大の幅方向サイズである。)のシートPの最大幅方向範囲Mに対して幅方向中央部(
図3の範囲Nである。)のみを加熱範囲として定着ローラ21を加熱可能なハロゲンヒータである。中央部ヒータ25は、幅方向長さが定着ローラ21の幅方向長さとほぼ同等に形成されているものの、ヒータとして機能する部分(ヒータ主部)は中央部にのみ形成されている。また、中央部ヒータ25のワット数は850W(ワット)に設定されている。そして、中央部ヒータ25は、制御部90による第1電源91(
図2参照)の制御によって、第1電源91から供給される電圧印加のタイミングが調整(オン・オフ制御)される。
端部ヒータ26は、最大幅方向範囲Mに対して幅方向中央部Nを除く幅方向両端部の全部(
図3の範囲Mよりも僅かに広い範囲から範囲Nを除いた範囲である。)を加熱範囲として定着ローラ21を加熱可能なハロゲンヒータである。端部ヒータ26は、幅方向長さが定着ローラ21の幅方向長さとほぼ同等に形成されているものの、ヒータとして機能する部分(ヒータ主部)は両端部にのみ形成されている。また、端部ヒータ26のワット数は800W(ワット)に設定されている。そして、端部ヒータ26は、制御部90による第2電源92(
図2参照)の制御によって、第2電源92から供給される電圧印加のタイミングが調整(オン・オフ制御)される。
【0031】
なお、本実施の形態において、上述した定着ローラ21の「幅方向中央部」の範囲Nは、幅方向の中央位置X(
図3参照)を含む範囲であって、通紙可能な最小サイズのシートPの通紙領域、すなわち、通紙可能なすべてのサイズのシートPに対して通紙領域となりうる部分としている。
また、上述した定着ローラ21の「幅方向両端部」の範囲(M-N)における、範囲Mは、通紙可能な最大サイズのシートPの通紙領域を含み、それよりも僅かに広い範囲に設定されている。
そして、本実施の形態において、これらの範囲M、Nや中央位置Xは、後述するように定着ローラ21や加圧ローラ31が幅方向に移動しても変化しないものである(
図4(A)、(B)参照)。
【0032】
ここで、
図4等を参照して、本実施の形態における定着装置20には、中央部ヒータ25と端部ヒータ26とを幅方向に移動させることなく、定着ローラ21(定着部材)を幅方向一端側又は幅方向他端側に移動させるとともに、加圧ローラ31(加圧部材)を幅方向他端側又は幅方向一端側に移動させる移動機構55が設けられている。
すなわち、移動機構55は、定着ローラ21と加圧ローラ31とを、互いに幅方向の同じ側ではなくて、互いに異なる側に移動させるものである。具体的に、
図4(B)に示すように、定着ローラ21が幅方向一端側(
図4(B)の左側)に移動するときには、加圧ローラ31が幅方向他端側(
図4(B)の右側)に移動することになる。これに対して、定着ローラ21が幅方向他端側(
図4の右側)に移動するときには、加圧ローラ31が幅方向一端側(
図4の左側)に移動することになる。
【0033】
図示は省略するが、このような移動機構55としては、例えば、定着ローラ21と加圧ローラ31とをそれぞれ回転可能に保持する第1、第2保持部材や、第1、第2保持部材においてそれぞれ幅方向に延在するように形成された第1、第2ラックギアや、第1、第2ラックギアにそれぞれ噛合する第1、第2ピニオンギアや、第1、第2ピニオンギアを正逆双方向に回転可能な第1、第2モータや、第1、第2保持部材を幅方向に移動可能に保持する第1、第2ガイドレール、などで構成することができる。
【0034】
そして、本実施の形態において、移動機構55は、
図4(A)に示すように、最大サイズMのシートP1(例えば、A3縦サイズである。)が搬送される最大サイズ搬送時には、少なくとも最大幅方向範囲Mにニップ部(定着ニップであって、破線で示す領域である。)が形成されるように、定着ローラ21と加圧ローラ31とを移動させる(
図4(A)の状態である)。なお、本実施の形態では、
図4(A)に示す定着ローラ21と加圧ローラ31との幅方向の位置を、基準位置(ホームポジション)として設定している。
これに対して、移動機構55は、
図4(B)に示すように、幅方向中央部Nと略同等のサイズのシートP2(例えば、A4縦サイズである。)が搬送される小サイズ搬送時には、幅方向中央部と略同じ幅方向範囲(小サイズ幅方向範囲N)にのみニップ部(定着ニップであって、破線で示す領域である。)が形成されるように、定着ローラ21と加圧ローラ31とを移動させる(
図4(B)の状態である)。すなわち、
図4(A)に示す基準位置から、定着ローラ21が白矢印方向(図の左方向)に移動されて、加圧ローラ31が白矢印方向(図の右方向)に移動される。そして、小サイズ搬送時から最大サイズ搬送時に移行するときには、移動機構55によって、定着ローラ21と加圧ローラ31とがそれぞれ
図4(B)の白矢印方向の逆方向に移動されることになる。
なお、本実施の形態において、上述した「小サイズ搬送時」は、搬送可能な最小サイズのシートP2が搬送されるときとしている。
【0035】
このように、本実施の形態における定着装置20は、中央部ヒータ25と端部ヒータ26とが設けられているため最大サイズ搬送時には2つのヒータ25、26を用いて最大幅方向範囲M(通紙領域全域)を加熱して、小サイズ搬送時には中央部ヒータ25のみを用いて小サイズ幅方向範囲N(通紙領域全域)を加熱して非通紙領域の積極的な加熱をおこなわないようにすることができる。
そのため、小サイズ搬送時において、非通紙領域(定着ローラ21においてニップ部を形成しない幅方向の部分である。)が過昇温してしまう不具合が生じにくくなる。
【0036】
さらに補足して説明する。
従来の定着装置(例えば、特許文献1等参照)のように、定着ローラを加熱するヒータが幅方向全域に延在するように形成されたもの1本であると、定着ローラや加圧ローラを幅方向に移動させてニップ部の幅方向の長さを可変したときに(小サイズ搬送時に)、その1本のヒータによって、定着ローラにおいてニップ部を形成する幅方向の部分(通紙領域)とともに、ニップ部を形成しない幅方向の部分(非通紙領域)も加熱されてしまうことになる。そのため、定着ローラにおいてニップ部を形成しない幅方向の部分(非通紙領域)が過昇温してしまう不具合が生じてしまっていた。これは、通紙領域における温度センサの検知温度に基づいてヒータが出力制御されるのに対して、非通紙領域では、通紙領域とは異なり、定着ローラからシートへの熱の受け渡しが生じないためである。そして、そのような過昇温が生じてしまうと、定着ローラの両端部に熱的ダメージなどが生じてしまうことになる。
これに対して、本実施の形態では、中央部ヒータ25と端部ヒータ26とが設けられているため、そのような不具合の発生を軽減することができる。
【0037】
なお、シートP1、P2の幅方向サイズに関する情報は、ユーザーによって操作パネル100(
図1、
図2参照)に入力されるシート情報に基づいて制御部90で把握することができる。また、給紙部7などにサイズ検知センサを設けて、そのサイズ検知センサによってシートPの幅方向サイズを直接的に検知して、その検知結果に基づいてシートPの幅方向サイズに関する情報を取得することもできる。
【0038】
ここで、
図4等を参照して、本実施の形態における定着装置20には、2つの温度センサ(中央部温度センサ40と端部温度センサ41とである。)が設けられている。
中央部温度センサ40は、最大サイズ搬送時においても小サイズ搬送時においても定着ローラ21の表面温度を検知可能な温度センサである。この中央部温度センサ40は、幅方向中央部Nにおける所定位置(本実施の形態では、中央位置Xである。)に固定して設置されている。
端部温度センサ41は、最大サイズ搬送時においても小サイズ搬送時においても定着ローラ21の表面温度を検知可能な温度センサであって、幅方向両端部における所定の位置に固定して設置されている。具体的に、本実施の形態において、定着ローラ21は、最大サイズ搬送時から小サイズ搬送時に移行するときに
図4の左側(幅方向一端側)に移動するため、その移動する側(幅方向一端側)に端部温度センサ41が固設されている。
なお、本実施の形態では、定着ローラ21の移動による摺接を避けるために、温度センサ40、41として非接触式の温度センサ(非接触サーミスタやサーモパイルなどである。)を用いているが、そのような摺動による不具合が生じにくい場合には温度センサ40、41として接触式の温度センサを用いることもできる。
【0039】
そして、本実施の形態において、中央部ヒータ25は、最大サイズ搬送時においても小サイズ搬送時においても中央部温度センサ40の検知温度が狙いの定着温度(例えば、160度程度である。)になるようにオン・オフ制御される。一方、端部ヒータ26は、最大サイズ搬送時には端部温度センサ41の検知温度が上述した定着温度(例えば、160度程度である。)になるようにオン・オフ制御される。これにより、最大サイズ搬送時においても小サイズ搬送時においても、シートP1、P2上に良好な定着画像が形成されることになる。
これに対して、端部ヒータ26は、小サイズ搬送時には端部温度センサ41の検知温度が上述した定着温度よりも低い所定温度になるようにオン・オフ制御される。ここで、上述した定着温度よりも低い所定温度は、省エネルギーモード(待機時において、消費電力を完全に遮断するのではなくて、印刷時よりも低い消費電力に設定して、次の印刷動作をすばやくおこなうための制御モードである。)における温度に近い温度であって、例えば100度程度である。これにより、定着ローラ21の両端部の過昇温を抑えつつ、再び最大サイズ搬送時に移行したときに、定着ローラ21の両端部の温度を狙いの定着温度にまで立ち上げる時間が短縮化される。
【0040】
なお、本実施の形態では、小サイズ搬送時に、端部温度センサ41の検知温度が定着温度よりも低い所定温度になるように、端部ヒータ26をオン・オフ制御した。
これに対して、小サイズ搬送時に、端部ヒータ26の出力がオフされるように制御することもできる。その場合には、消費電力を低くすることができる。
【0041】
<変形例1>
図5に示すように、変形例1における定着装置20は、小サイズ搬送時に、定着ローラ21(定着部材)においてニップ部を形成しない幅方向の部分と、加圧ローラ31(加圧部材)においてニップ部を形成しない幅方向の部分と、が画像形成装置本体1の内部において気流を生じさせるダクト70に挿入される。
詳しくは、
図1、
図5を参照して、画像形成装置本体1には、定着装置20で生じる熱を画像形成装置本体1の外部に排熱するためのダクト70が設置されている。ダクト70は、その一端側の開口が排気ファン75(画像形成装置本体1の内外に連通する開口に設置されていて、
図1参照)に接続されていて、その他端側が定着装置20に向けて開口している。このような構成により、定着装置20で生じた熱が、ダクト70を介して排気ファン75によって吸気されて、画像形成装置本体1の外部に排気される。これにより、画像形成装置本体1の内部の雰囲気温度が上昇する不具合が軽減される。
そして、変形例1では、
図5に示すように、小サイズ搬送時に、定着ローラ21と加圧ローラ31とが幅方向に移動して、定着ローラ21と加圧ローラ31との非通紙領域がダクト70内に挿入されることになる。
これにより、定着ローラ21と加圧ローラ31との非通紙領域が、ダクト70内を流動する排熱(ある程度高温の空気である。)によって適度に温められることになる。
このような構成は、小サイズ搬送時に端部ヒータ26の出力がオフされるように制御することきに、特に有用になる。すなわち、小サイズ搬送時に端部ヒータ26の出力がオフしても、小サイズ搬送時における定着ローラ21の両端部の過昇温を抑えつつ、小サイズ搬送時から最大サイズ搬送時に移行したときに、定着ローラ21の両端部の温度を狙いの定着温度にまで立ち上げる時間が短縮化されることになる。
【0042】
<変形例2>
変形例2における定着装置20は、最大サイズ搬送時から小サイズ搬送時に移行するときに、
図6(A)に示すように、定着ローラ21を幅方向一端側に移動させるとともに加圧ローラ31を幅方向他端側に移動させる第1の形態と、
図6(B)に示すように、定着ローラ21を幅方向他端側に移動させるとともに加圧ローラ31を幅方向一端側に移動させる第2の形態と、をどちらも実行可能としている。
すなわち、最大サイズ搬送時には、定着ローラ21と加圧ローラ31とが
図4(A)に示す幅方向の位置に位置する。そして、小サイズ搬送時には、定着ローラ21と加圧ローラ31とが、
図6(A)に示す幅方向に位置に移動するか(第1の形態)、
図6(B)に示す幅方向に位置に移動するか(第2の形態)、することになる。小サイズ搬送時において、第1の形態を実行するか、第2の形態を実行するか、は交互に選択されるように制御することもできるし、所定条件に基づいて選択されるように制御することもできる。
このように構成することで、小サイズ搬送時において、定着ローラ21の非通紙領域になる端部が一端側と他端側とで入れ替わるとともに、加圧ローラ31の非通紙領域になる端部が一端側と他端側とで入れ替わることになる。そのため、最大サイズ搬送時から小サイズ搬送時への移行が繰り返されることによって、定着ローラ21や加圧ローラ31の一方の端部が他方の端部に比べて局所的に摩耗劣化する不具合などが軽減されることになる。
なお、変形例2では、
図6(A)に示すように定着ローラ21が幅方向一端側(左側)に移動したときに、定着ローラ21の表面温度を検知する第1の端部温度センサ41Aに加えて、
図6(B)に示すように定着ローラ21が幅方向他端側(右側)に移動したときに、定着ローラ21の表面温度を検知する第2の端部温度センサ41Bを設けることが好ましい。
そして、端部ヒータ26は、最大サイズ搬送時には端部温度センサ41A、41Bの検知温度が上述した定着温度(例えば、160度程度である。)になるようにオン・オフ制御される。また、端部ヒータ26は、小サイズ搬送時には、
図6(A)に示す第1の形態時に第1の端部温度センサ41Aの検知温度に基づいて定着温度より低い温度になるようにオン・オフ制御されて、
図6(B)に示す第1の形態時に第2の端部温度センサ41Bの検知温度に基づいて定着温度より低い温度になるようにオン・オフ制御されることになる。
これにより、定着ローラ21や加圧ローラ31を幅方向に移動させてニップ部の幅方向の長さを可変しても、定着ローラ21においてニップ部を形成しない幅方向の部分が過昇温してしまう不具合が生じにくくなる。
【0043】
<変形例3>
図7に示すように、変形例3における定着装置20において、端部ヒータは、最大サイズMのシートP1よりも小さく、幅方向中央部Nと略同等のサイズのシートP2よりも大きな、1つ又は複数の幅方向サイズ(
図7の例では1つの幅方向サイズであって、中サイズである。)のシートの幅方向サイズに合わせて定着ローラ21の加熱範囲が可変されるように、幅方向両端部が複数に分割された複数の端部ヒータ26A、26Bである。
詳しくは、第1の端部ヒータ26Aは、そのヒータ主部が、中サイズのシートの幅方向サイズ(中サイズ幅方向範囲W)から小サイズ幅方向範囲Nを除した範囲(W-N)に配置されている。そして、第2の端部ヒータ26Bは、そのヒータ主部が、最大幅方向範囲Mから中サイズ幅方向範囲Wを除した範囲(M-W)に配置されている。すなわち、これらの2つの端部ヒータ26A、26Bは、それぞれ、最大幅方向範囲Mに対して幅方向中央部Nを除く幅方向両端部の一部(分割された部分のみ)を加熱範囲として定着ローラ21を加熱可能に構成されている。
そして、変形例3において、移動機構55は、搬送されるシートPの幅方向サイズに合わせてニップ部が形成されるように、定着ローラ21と加圧ローラ31とを移動させることになる。
具体的に、
図7(A)に示すように、最大サイズのシートP(例えば、A3縦サイズのシートである。)が通紙されるときには、最大幅方向範囲Mにニップ部が形成されるように、定着ローラ21と加圧ローラ31とが移動される。これに対して、
図7(B)に示すように、中サイズのシートP(例えば、A4縦サイズのシートである。)が通紙されるときには、中サイズ幅方向範囲Wにニップ部が形成されるように、定着ローラ21と加圧ローラ31とが移動される。さらに、
図7(C)に示すように、小サイズのシートP(例えば、A5縦サイズのシートである。)が通紙されるときには、小サイズ幅方向範囲Nにニップ部が形成されるように、定着ローラ21と加圧ローラ31とが移動される。
なお、変形例3では、端部温度センサとして、
図7に示すように、分割された幅方向両端部に対応して、中サイズ幅方向範囲Wの端部の温度を検知可能な第1の端部温度センサ41Aが設けられ、最大幅方向範囲Mの端部の温度を検知可能な第2の端部温度センサ41Bが設けられている。
そして、
図7(A)に示す最大サイズ搬送時には、中央部温度センサ40の検知温度に基づいて狙いの定着温度になるように中央部ヒータ25がオン・オフ制御され、第1の端部温度センサ41Aの検知温度に基づいて狙いの定着温度になるように第1の端部ヒータ26Aがオン・オフ制御され、第2の端部温度センサ41Bの検知温度に基づいて狙いの定着温度になるように第2の端部ヒータ26Bがオン・オフ制御される。
また、
図7(B)に示す中サイズ搬送時には、中央部温度センサ40の検知温度に基づいて狙いの定着温度になるように中央部ヒータ25がオン・オフ制御され、第1の端部温度センサ41Aの検知温度に基づいて狙いの定着温度になるように第1の端部ヒータ26Aがオン・オフ制御される。また、第2の端部温度センサ41Bの検知温度に基づいて、定着温度よりも低い温度になるように第2の端部ヒータ26Bがオン・オフ制御される。
また、
図7(C)に示す小サイズ搬送時には、中央部温度センサ40の検知温度に基づいて狙いの定着温度になるように中央部ヒータ25がオン・オフ制御される。また、第1の端部温度センサ41Aの検知温度に基づいて定着温度よりも低い温度になるように第1の端部ヒータ26Aがオン・オフ制御され、第2の端部温度センサ41Bの検知温度に基づいて定着温度よりも低い温度になるように第2の端部ヒータ26Bがオン・オフ制御される。
これにより、定着ローラ21や加圧ローラ31を幅方向に移動させてニップ部の幅方向の長さを可変しても、定着ローラ21においてニップ部を形成しない幅方向の部分が過昇温してしまう不具合が生じにくくなる。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態における定着装置20は、トナー像を加熱してシートPの表面に定着する定着ローラ21(定着部材)と、定着ローラ21に圧接することでシートPが搬送されるニップ部を形成する加圧ローラ31(加圧部材)と、搬送可能な最大サイズのシートP1の最大幅方向範囲Mに対して幅方向中央部のみを加熱範囲として定着ローラ21を加熱可能な中央部ヒータ25と、最大幅方向範囲Mに対して幅方向中央部Nを除く幅方向両端部の全部(又は、一部)を加熱範囲として定着ローラ21を加熱可能な端部ヒータ26と、が設けられている。また、中央部ヒータ25と端部ヒータ26とを幅方向に移動させることなく、定着ローラ21を幅方向一端側又は幅方向他端側に移動させるとともに、加圧ローラ31を幅方向他端側又は幅方向一端側に移動させる移動機構55が設けられている。そして、移動機構55は、最大サイズのシートP1が搬送される最大サイズ搬送時には、少なくとも最大幅方向範囲Mにニップ部が形成されるように、定着ローラ21と加圧ローラ31とを移動させて、幅方向中央部Nと略同等のサイズのシートP2が搬送される小サイズ搬送時には、幅方向中央部Nと略同じ幅方向範囲にのみニップ部が形成されるように、定着ローラ21と加圧ローラ31とを移動させる。
これにより、定着ローラ21や加圧ローラ31を幅方向に移動させてニップ部の幅方向の長さを可変しても、定着ローラ21においてニップ部を形成しない幅方向の部分が過昇温してしまう不具合が生じにくくなる。
【0045】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【0046】
なお、本願明細書等において、「幅方向」とは、シートの搬送方向に対して直交する方向であるものと定義する。
また、本願明細書等において、「シート」とは、紙(用紙)の他に、コート紙、ラベル紙、OHPシート、フィルムシート等のシート状の記録媒体のすべてを含むものと定義する。
【符号の説明】
【0047】
1 画像形成装置(画像形成装置本体)、
20 定着装置、
21 定着ローラ(定着部材)、
25 中央部ヒータ(加熱手段)、
26、26A、26B 端部ヒータ(加熱手段)、
31 加圧ローラ(加圧部材)、
40 中央部温度センサ(第1温度検知手段)、
41、41A、41B 端部温度センサ(第2温度検知手段)、
55 移動機構、
70 ダクト、
M 最大幅方向範囲、
N 小サイズ幅方向範囲、 W 中サイズ幅方向範囲、
P、P1、P2 シート(用紙)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0048】