(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041172
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】定着装置、及び、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20230316BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G15/20 510
G03G21/00 386
G03G21/00 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148381
(22)【出願日】2021-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】足利谷 淳史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 義徳
(72)【発明者】
【氏名】大西 諒史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 祥二
【テーマコード(参考)】
2H033
2H270
【Fターム(参考)】
2H033AA24
2H033AA35
2H033BA30
2H033BA32
2H033BB02
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB12
2H033BB13
2H033BB18
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB34
2H033CA07
2H033CA34
2H033CA39
2H270LA25
2H270LA70
2H270LC11
2H270LC14
2H270MA35
2H270MB27
2H270MC44
2H270MH06
2H270MH12
2H270NE07
2H270QB07
2H270ZC03
2H270ZC06
(57)【要約】
【課題】定着装置のメンテナンスを効率的におこなえるようにする。
【解決手段】定着ローラ21(定着部材)の表面温度を検知する第1温度センサ40(第1温度検知手段)と、加圧ローラ31(加圧部材)の表面温度を検知する第2温度センサ41(第2温度検知手段)と、が設けられている。そして、画像形成時に第1温度センサ40と第2温度センサ41とによってそれぞれ検知される2つの温度推移と、過去に検知されて記憶された2つの温度推移と、をそれぞれ比較して、定着装置20が正常に動作している正常状態と、定着ローラ21を加熱する制御に関わる加熱系部品に異常が生じている加熱系異常状態と、加熱系部品以外の部品に異常が生じている非加熱系異常状態と、のいずれであるかが判別される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段によって加熱されて、トナー像を加熱してシートの表面に定着する定着部材と、
前記定着部材に圧接することでシートが搬送されるニップ部を形成する加圧部材と、
前記定着部材の表面温度を検知する第1温度検知手段と、
前記加圧部材の表面温度を検知する第2温度検知手段と、
を備え、
画像形成時に前記第1温度検知手段と前記第2温度検知手段とによってそれぞれ検知される2つの温度推移と、過去に検知されて記憶された前記2つの温度推移と、をそれぞれ比較して、当該定着装置が正常に動作している正常状態と、前記定着部材を加熱する制御に関わる加熱系部品に異常が生じている加熱系異常状態と、前記加熱系部品以外の部品に異常が生じている非加熱系異常状態と、のいずれであるかが判別されることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記非加熱系異常状態は、
前記加圧部材と、前記第2温度検知手段と、前記ニップ部を形成するためのニップ部形成機構と、のうち少なくとも1つに異常が生じている第1非加熱系異常状態と、
前記第1非加熱系異常状態とは異なる原因によって異常が生じている第2非加熱系異常状態と、
のいずれであるかがさらに判別されることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記加熱系部品は、前記定着部材と、前記加熱手段と、前記第1温度検知手段と、前記加熱手段に電力を供給する電源部と、であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記加熱系異常状態又は前記非加熱系異常状態であるものと判別された場合において、
前記温度推移について現状と過去との差異が所定の基準範囲に対して所定値の範囲内で外れているあるものと判別されたときには、その後の画像形成動作を中断することなく、その異常状態を解消するためのメンテナンスを促すように報知して、
前記差異が前記所定の基準範囲に対して前記所定値の範囲外で外れているものと判別されたときには、その後の画像形成動作を中断するとともに、その異常状態を報知することを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記所定値は、任意のものに変更可能であることを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記第1温度検知手段の検知結果に基づいて前記加熱手段が制御されることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トナー像を加熱してシートの表面に定着する定着装置と、それを備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の画像形成装置と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置における定着装置において、異常が生じた状態を検知する技術が広く知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
詳しくは、定着装置は、定着ローラ(定着部材)に、加圧ローラ(加圧部材)が圧接していて、シート(用紙)が搬送されるニップ部(定着ニップ)が形成されている。定着ローラは、ヒータや電磁誘導コイルや抵抗発熱体などの加熱手段によって加熱される。そして、ニップ部に搬送されたシート上のトナー像が、定着ローラから受ける熱と、ニップ部の圧力と、によって、シート上に定着されることになる。
【0004】
一方、特許文献1には、加熱ローラ(定着部材)の表面温度を検知する接触サーミスタと非接触サーミスタとの温度検知結果に基づいて、加熱ローラに、記録媒体(シート)が、密着して巻き付く異常状態や、浮き上がるように巻き付く異常状態を検知する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の定着装置は、異常に至る原因が多数あるのに対して、異常状態が生じたときに、その異常状態の原因を区別することができなかった。そのため、定着装置のメンテナンスを効率的におこなうことができなかった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、メンテナンスを効率的におこなうことができる、定着装置、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明における定着装置は、加熱手段によって加熱されて、トナー像を加熱してシートの表面に定着する定着部材と、前記定着部材に圧接することでシートが搬送されるニップ部を形成する加圧部材と、前記定着部材の表面温度を検知する第1温度検知手段と、前記加圧部材の表面温度を検知する第2温度検知手段と、を備え、画像形成時に前記第1温度検知手段と前記第2温度検知手段とによってそれぞれ検知される2つの温度推移と、過去に検知されて記憶された前記2つの温度推移と、をそれぞれ比較して、当該定着装置が正常に動作している正常状態と、前記定着部材を加熱する制御に関わる加熱系部品に異常が生じている加熱系異常状態と、前記加熱系部品以外の部品に異常が生じている非加熱系異常状態と、のいずれであるかが判別されるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、メンテナンスを効率的におこなうことができる、定着装置、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
【
図3】(A)正常状態における第1温度センサと第2温度センサとのそれぞれの温度推移の一例を示すグラフと、(B)異常状態(加熱系異常状態)における第1温度センサと第2温度センサとのそれぞれの温度推移の一例を示すグラフと、である。
【
図4】第1、第2温度センサの温度推移と、正常状態と加熱系異常状態と非加熱系異常状態とを区別した判別結果と、の関係を示す表図である。
【
図5】具体例としての、操作表示パネルの表示画面を示す図である。
【
図6】異常状態を判別する制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
まず、
図1にて、画像形成装置1における全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としてのタンデム型カラー複写機、2は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部、3は原稿Dを原稿読込部4に搬送する原稿搬送部、4は原稿Dの画像情報を読み込む原稿読込部、を示す。
また、7は用紙等のシートPが収容される給紙部、9はシートPの搬送タイミングを調整するレジストローラ(タイミングローラ)、11Y、11M、11C、11BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像が形成される感光体ドラム、を示す。
【0012】
また、12は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面を帯電する帯電部、13は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面に形成される静電潜像を現像する現像部、14は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面に形成されたトナー像をシートPの表面に重ねて転写する1次転写ローラ、15は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面に残留した未転写トナーを回収するクリーニング部、を示す。
また、16は中間転写ベルト17を清掃する中間転写ベルトクリーニング部、17は複数色のトナー像が重ねて転写される中間転写ベルト、18は中間転写ベルト17上のカラートナー像をシートP上に転写するための2次転写ローラ、20はシートP上のトナー像(未定着画像)を定着する定着装置、を示す。
【0013】
以下、画像形成装置における、通常のカラー画像形成時の動作(印刷動作)について説明する。
まず、原稿Dは、原稿搬送部3の搬送ローラによって、原稿台から搬送されて、原稿読込部4のコンタクトガラス5上に載置される。そして、原稿読込部4で、コンタクトガラス5上に載置された原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
【0014】
詳しくは、原稿読込部4は、コンタクトガラス5上の原稿Dの画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させる。そして、原稿Dにて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、カラーセンサに結像する。原稿Dのカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
【0015】
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部2に送信される。そして、書込み部2からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光(露光光)が、それぞれ、対応する感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面に向けて発せられる。
【0016】
一方、4つの感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKは、それぞれ、
図1の反時計方向に回転している。そして、まず、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、帯電部12との対向部で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面には、帯電電位が形成される。
その後、帯電された感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、それぞれのレーザ光の照射位置に達する(露光工程である。)。詳しくは、書込み部2において、4つの光源から画像信号に対応したレーザ光が各色に対応してそれぞれ射出される。各レーザ光は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる。
【0017】
イエロー成分に対応したレーザ光は、紙面左側から1番目の感光体ドラム11Yの表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラーにより、感光体ドラム11Yの回転軸方向(主走査方向、幅方向)に走査される。こうして、帯電部12にて帯電された後の感光体ドラム11Y上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0018】
同様に、マゼンタ成分に対応したレーザ光は、紙面左から2番目の感光体ドラム11Mの表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。シアン成分のレーザ光は、紙面左から3番目の感光体ドラム11Cの表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、紙面左から4番目の感光体ドラム11BKの表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0019】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、それぞれ、現像部13との対向位置に達する。そして、各現像部13から感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面に形成された潜像が現像される(現像工程である。)。
その後、現像工程後の感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、それぞれ、中間転写ベルト17との対向部に達する。ここで、それぞれの対向部には、中間転写ベルト17の内周面に当接するように1次転写ローラ14が設置されている。そして、1次転写ローラ14の位置で、中間転写ベルト17上に、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面に形成された各色のトナー像が、順次重ねて転写される(1次転写工程である。)。
【0020】
そして、転写工程後の感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、それぞれ、クリーニング部15との対向位置に達する。そして、クリーニング部15で、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面に残存する未転写トナーが回収される(クリーニング工程である。)。
その後、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、除電部を通過して、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKにおける一連の作像プロセスが終了する。
【0021】
他方、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面の各色のトナーが重ねて転写(担持)された中間転写ベルト17は、
図1の時計方向に走行して、2次転写ローラ18との対向位置に達する。そして、2次転写ローラ18との対向位置で、シートP上に中間転写ベルト17上に担持されたカラーのトナー像が転写される(2次転写工程である。)。
その後、中間転写ベルト17の表面は、中間転写ベルトクリーニング部16の位置に達する。そして、中間転写ベルト17上に付着した未転写トナーが中間転写ベルトクリーニング部16に回収されて、中間転写ベルト17における一連の転写プロセスが終了する。
【0022】
ここで、中間転写ベルト17と2次転写ローラ18との間(2次転写ニップである。)に搬送されるシートPは、給紙部7からレジストローラ9等を経由して搬送されるものである。
詳しくは、シートPを収納する給紙部7から、給紙ローラ8により給送されたシートPが、搬送経路を通過した後に、レジストローラ9に導かれる。レジストローラ9に達したシートPは、タイミングを合わせて、2次転写ニップに向けて搬送される。
【0023】
そして、フルカラー画像が転写されたシートPは、搬送ベルトによって定着装置20に導かれる。定着装置20では、定着ローラと加圧ローラとのニップ部(定着ニップ)にて、カラー画像(トナー像)がシートPの表面に定着される(定着工程である。)。
そして、定着工程後のシートPは、排紙ローラによって、装置本体1の外部に出力画像として排出されて、一連の画像形成プロセス(印刷)が完了する。
【0024】
次に、
図2等を用いて、画像形成装置本体1に設置される定着装置20の構成・動作について詳述する。
図2に示すように、定着装置20は、定着部材としての定着ローラ21、加熱手段としてのヒータ25、加圧部材としての加圧ローラ31、定着ローラ21の幅方向中央部の温度(表面温度)を検知する第1温度検知手段としての第1温度センサ40、加圧ローラ31の幅方向中央部の温度(表面温度)を検知する第2温度検知手段としての第2温度センサ41、ニップ部を形成するためのニップ部形成機構としての加圧機構55、等で構成されている。
【0025】
ここで、定着部材としての定着ローラ21(定着回転体)は、ステンレス鋼などの金属材料からなる中空構造の芯金21a上に、被覆層21b(弾性層と離型層とが積層されたものである。)が形成された多層構造のローラ部材であって、加圧部材としての加圧ローラ31に圧接してニップ部(定着ニップ)を形成している。
定着ローラ21の被覆層21bにおける弾性層は、フッ素ゴム、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム等の弾性材料で形成されている。定着ローラ21の被覆層21bにおける離型層は、PFA(4フッ化エチレンバーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)等で形成されている。定着ローラ21の表層に離型層を設けることにより、トナー像に対する離型性(剥離性)が担保されることになる。定着ローラ21は、駆動モータ(不図示)によって
図2の時計方向に回転駆動される。
【0026】
中空構造の定着ローラ21(芯金21a)の内部には、加熱手段としてのヒータ25が固設されている。
ヒータ25は、棒状に形成されたハロゲンヒータであって、その両端部が定着装置20の側板に固定されている。そして、画像形成装置本体1のメインスイッチがオン(電源オン)された状態で、電源部51からヒータ25に電力が供給される。そして、制御部50により出力制御(PID制御)されたヒータ25からの輻射熱によって定着ローラ21が加熱されて、さらに加熱された定着ローラ21の表面からシートP上のトナー像Tに熱が加えられる。
ヒータ25の出力制御は、幅方向(
図2の紙面垂直方向である。)の中央部において定着ローラ21の表面に非接触で対向する第1温度センサ40(例えば、サーモパイルや非接触サーミスタなどである。)によるローラ表面温度の検知結果に基づいておこなわれる。すなわち、第1温度検知手段としての第1温度センサ40の検知結果に基づいて、加熱手段としてのヒータ25が制御される。詳しくは、第1温度センサ40の検知結果に基づいて定められる通電時間だけ、電源部51からヒータ25に交流電圧が印加される。このようなヒータ25の出力制御によって、定着ローラ21の温度(定着温度)を所望の温度(目標制御温度)に調整制御することができる。
【0027】
また、加圧部材としての加圧ローラ31(加圧回転体)は、主として、芯金32と、芯金32の外周面を覆う被覆層としての弾性層33と、からなるローラ部材である。
加圧ローラ31の弾性層33(被覆層)は、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、等の材料で形成されている。なお、弾性層33の表層にPFA等からなる薄肉の離型層を設けて、弾性層33と離型層とで被覆層を構成することもできる。
そして、加圧ローラ31は、ニップ部形成機構としての加圧機構55によって定着ローラ21に圧接する。こうして、加圧ローラ31と定着ローラ21との間に、所望のニップ部が形成される。なお、加圧機構55(ニップ部形成機構)としては、例えば、加圧ローラ31の両端部の軸部に接触する回動可能なレバー、レバーを上方(定着ローラ21に近づく方向である。)に付勢するスプリング(付勢部材)、などで構成することができる。
加圧ローラ31は、定着ローラ21の回転にともない、
図2の反時計方向に従動回転する。
【0028】
なお、本実施の形態における定着装置20には、定着ローラ21の表面温度を検知する第1温度センサ40(第1温度検知手段)に加えて、加圧ローラ31の表面温度を検知する第2温度センサ41(第2温度検知手段)が設置されている。第2温度センサ41としては、幅方向中央部において加圧ローラ31の表面に非接触で対向するサーモパイルや非接触サーミスタなどを用いることもできる。
そして、第1温度センサ40と第2温度センサ41との検知結果に基づいて、定着装置20の異常の有無と、その異常の内容と、を検知することになるが、これらについては後で詳しく説明する。なお、本実施の形態では、後述する異常状態を明確に区別するために、第1温度センサ40の幅方向位置と、第2温度センサ41の幅方向位置と、が幅方向中央部において一致しないように設定されている。
【0029】
上述のように構成された定着装置20は、次のように動作する。
装置本体1のメインスイッチが投入されると、電源部51からヒータ25に交流電圧が印加(給電)される。
そして、印刷指令(プリント要求)が入力されると、不図示の駆動モータ(駆動機構)によって定着ローラ21の時計方向の回転駆動が開始されて、加圧ローラ31の反時計方向の従動回転が開始される。その後、給紙部7からシートPが給送されて、2次転写ローラ18の位置で、中間転写ベルト17上のトナー像がシートP上に未定着画像として担持される。未定着画像T(トナー像)が担持されたシートPは、
図2の矢印方向に搬送されて、圧接状態にある定着ローラ21及び加圧ローラ31のニップ部に送入される。そして、定着ローラ21による加熱と、定着ローラ21及び加圧ローラ31の押圧力とによって、シートPの表面にトナー像Tが定着される。そして、定着工程後のシートPは、回転する定着ローラ21及び加圧ローラ31によって、ニップ部から矢印方向に送出される。
【0030】
以下、本実施の形態における定着装置20(画像形成装置1)において、特徴的な構成・動作について詳しく説明する。
先に
図2等を用いて説明したように、本実施の形態における定着装置20には、定着部材としての定着ローラ21の表面温度を検知する第1温度検知手段としての第1温度センサ40と、加圧部材としての加圧ローラ31の表面温度を検知する第2温度検知手段としての第2温度センサ41と、が設けられている。
【0031】
そして、本実施の形態では、画像形成時(印刷時)に第1温度センサ40(第1温度検知手段)と第2温度センサ41(第2温度検知手段)とによってそれぞれ検知される2つの温度推移と、過去に検知されて記憶された2つの温度推移(正常な温度推移である。)と、をそれぞれ比較して、定着装置20が正常に動作している「正常状態」と、定着ローラ21(定着部材)を加熱する制御(加熱制御)に関わる加熱系部品に異常が生じている「加熱系異常状態」と、加熱系部品以外の部品に異常が生じている「非加熱系異常状態」と、のいずれであるかが判別される。
【0032】
すなわち、本実施の形態では、印刷時に第1、第2温度センサ40、41で検知する定着ローラ21と加圧ローラ31とのそれぞれの温度変化(温度推移)を、過去に検知・記憶した正常時のもの(
図3(A)のグラフR1、R2参照)と比較して、正常時のものに対して概ね近似しているか大きく乖離しているかによって、定着装置20が正常状態であるのか異常状態であるのか判別する。そして、異常状態であると判別されたときに、その異常の原因が、加熱系部品によるものなのか、それ以外の部品によるものなのか、を区別する。
【0033】
ここで、本実施の形態において、上述した「加熱系部品」は、定着ローラ21(定着部材)と、ヒータ25(加熱手段)と、第1温度センサ40(第1温度検知手段)と、ヒータ25に電力を供給する電源部51と、である。
具体的に、「加熱系異常状態」は、定着ローラ21の表面に損傷や剥離が生じたり、第1温度センサ40が故障したり、電源部51が故障したり、定着ローラ21の加熱制御に関わる部品の異常があると、第1温度センサ40によって検知される温度推移が異常となるのはもちろんのこと、第2温度センサ41によって検知される温度推移も異常となり、そのような温度推移の状態が把握されて、「加熱系異常状態」であると判別する。
【0034】
なお、
図3(A)は、第1温度センサ40によって検知された温度推移を示すグラフR1も、第2温度センサ41によって検知された温度推移を示すR2も、正常である「正常状態」を示すものである。これに対して、
図3(B)は、第1温度センサ40によって検知された温度推移を示すグラフS1も、第2温度センサ41によって検知された温度推移を示すS2も、異常である「加熱系異常状態」を示すものである。
そして、第1、第2温度センサ40、41によって検知された正常状態の温度推移のデータ(
図3(A)参照)は、印刷が終了するごとに、制御部50の記憶部に記憶されることになる。
【0035】
このように、本実施の形態では、定着装置20に異常が生じたときに、その原因を事前にある程度把握することができる。そのため、定着装置20のメンテナンスを効率的におこなうことができる。
【0036】
特に、本実施の形態において、「非加熱系異常状態」は、「第1非加熱系異常状態」と「第2非加熱系異常状態」とのいずれであるかがさらに判別される。
「第1非加熱系異常状態」は、加圧ローラ31(加圧部材)と、第2温度センサ41(第2温度検知手段)と、加圧機構55(ニップ部を形成するためのニップ部形成機構である。)と、のうち少なくとも1つに異常が生じている異常状態である。すなわち、「第1非加熱系異常状態」は、ヒータ制御(定着温度制御)に関与しない非加熱系部品のうち、主として加圧ローラ側の部材の異常である。具体的に、加圧ローラ31の表面に損傷や剥離が生じたり、第2温度センサ41が故障したり、加圧機構55による加圧力が大きく増減したり、加圧路ローラ側の部品の異常があると、第1温度センサ40によって検知される温度推移は正常であるのに、第2温度センサ41によって検知される温度推移が異常となるため、そのような温度推移の状態が把握されて、「第1非加熱系異常状態」であると判別する。
これに対して、「第2非加熱系異常状態」は、「第1非加熱系異常状態」とは異なる原因によって異常が生じている異常状態である。すなわち、「第2非加熱系異常状態」は、「加熱系異常状態」とも「第1非加熱系異常状態」とも特定できない異常である。このような異常状態としては、例えば、定着ローラ21の表面温度を低下させるような原因と、加圧ローラ31の表面温度を高くするような原因と、が複合的に生じてしまう場合などであって、そのような場合には第2温度センサ41によって検知される温度推移は正常であるのに、第1温度センサ40によって検知される温度推移が異常となるため、そのような温度推移の状態が把握されて、「第2非加熱系異常状態」であると判別する。
なお、「第2非加熱系異常状態」は、その原因が一義的にはっきり特定されない場合が多いため、定着装置20の一部の部品の交換やメンテナンスをおこなうのではなくて、定着装置20自体の交換をおこなうことが好ましい。
【0037】
さらに具体的に、本実施の形態では、
図4に示すように、第1温度センサ40によって検知された温度推移が正常であって、第2温度センサ41によって検知された温度推移も正常である場合には、「正常状態」であるものと制御部50で判別される。
これに対して、第1温度センサ40によって検知された温度推移が異常であって、第2温度センサ41によって検知された温度推移も異常である場合には、「加熱系異常状態」であるものと制御部50で判別される。また、第1温度センサ40によって検知された温度推移が正常であって、第2温度センサ41によって検知された温度推移が異常である場合には、「第1非加熱系異常状態」であるものと制御部50で判別される。さらに、第1温度センサ40によって検知された温度推移が異常であって、第2温度センサ41によって検知された温度推移が正常である場合には、「第2非加熱系異常状態」であるものと制御部50で判別される。
【0038】
なお、本実施の形態において、現状の温度推移が正常な過去の温度推移に対して正常であるか異常であるかの判別は、温度推移について現状と過去との差異が所定の基準範囲内にあるか否かによってされる。
具体的に、温度推移の差異が所定の基準範囲内であるものと判別されたときには(現状の温度推移が正常時のものに対して概ね近似しているときには)、現状の温度推移が正常であるものと判別される。これに対して、温度推移の差異が所定の基準範囲外であるものと判別されたときには(現状の温度推移が正常時のものに対して大きく乖離しているときには)、現状の温度推移が異常であるものと判別される。
なお、上述した基準範囲(温度)「ΔT℃」としては、例えば、目標とする表面温度(検知温度)T℃を中心にして高温側と低温側とにそれぞれ所定温度の幅を設けた温度範囲「ΔT=T±A℃」とすることができる。そして、このように設定された基準範囲ΔT℃に対して、現状の温度推移の平均値(又は、最大値、最小値)が範囲内であるか範囲外であるかを演算部で判別するようにすることができる。また、上述した基準範囲「ΔT℃」として、温度推移における温度勾配(所定時間内における温度変化)の範囲を設定することもできる。
【0039】
ここで、本実施の形態では、制御部50(演算部)で「加熱系異常状態」又は「非加熱系異常状態」であるものと判別された場合において、上述した温度推移について現状と過去との差異が所定の基準範囲ΔT℃に対して所定値Aの範囲内(ΔT≦T±A℃)で外れているものと判別されたときには(基準範囲ΔT℃に対して大きくは外れていないときには)、その後の画像形成動作(印刷動作)を中断することなく、その異常状態を解消するためのメンテナンスを促すように報知する。具体的に、操作表示パネル100に、
図5(A)に示すような表示がされることになる。
これに対して、上述した温度推移について現状と過去との差異が所定の基準範囲ΔT℃に対して所定値Aの範囲外((ΔT>T±A℃))で外れているものと判別されたときには(基準範囲ΔT℃に対して大きくは外れているときには)、その後の画像形成動作(印刷動作)を中断するとともに、その異常状態を報知する。具体的に、操作表示パネル100に、
図5(B)に示すような表示がされることになる。
【0040】
なお、本実施の形態において、上述した「所定値A」は、任意のものに変更可能なものとしている。
具体例として、
図5(C)~(E)に示すように、サービスマンやユーザーによる操作表示パネル100の操作によって、先に例示した基準範囲ΔT℃としての温度範囲(差異温度)や温度勾配の設定値に対する所定値Aを可変することができるようにしている。
このように構成することによって、良好な定着画像が形成されることを優先するユーザーに対しては所定値Aが狭まるように調整して早期にメンテナンスが実施されるようにして、装置のダウンタイムの回避を優先するユーザーに対しては所定値Aが広まるように調整して時間の融通が利くときにメンテナンスが実施されるようにするなど、ユーザーの使い勝手が向上することになる。
なお、本実施の形態では、
図5(C)~(E)を参照して、サービスマンやユーザーによる操作表示パネル100の操作によって、上述した「異常状態」の報知(表示)や印刷継続の有無について選択できるように構成されている。
【0041】
以下、
図6を用いて、異常状態を判別する制御の一例について説明する。
まず、画像形成装置1において待機状態から印刷(画像形成動作)が開始されると、その印刷中に第1、第2温度センサ40、41によって定着ローラ21と加圧ローラ31とのそれぞれの表面温度(温度推移)のデータが取得されて、そのデータが制御部50の記憶部(ROM)に記憶される(ステップS1、S2)。そして、その記憶部に記憶されたデータ(現状の温度推移)が、記憶部(ROM)に記憶された正常時の温度推移のデータと比較されて(ステップS3)、定着装置20が異常状態であるかが判別される(ステップS4)。なお、このときの判別は、ステップS3で比較した温度推移の差異が基準範囲ΔT℃であるか否かでされる。
その結果、異常状態でないものと判別された場合には、正常状態であるものとして、印刷を終了する。なお、正常状態と判断された印刷後の温度推移のデータは、過去の正常時のデータとして記憶部に記憶される。
これに対して、ステップS4で異常状態であるものと判別された場合には、さらにその異常状態が詳しく判別される(ステップS5)。すなわち、先に
図4を用いて説明したように、第1、第2温度センサ40、41によって検知した温度推移の正常・異常の組み合わせに基づいて、加熱系異常状態であるか、第1非加熱系異常状態であるか、第2非加熱系異常状態であるか、が区別される。
そして、異常状態での印刷継続をおこなうかが判別される(ステップS6)。すなわち、先に説明したように、温度推移について現状と過去(正常なもの)との差異が所定の基準範囲ΔT℃に対して所定値Aの範囲内で外れているか否かが判別される。
その結果、印刷継続される条件である場合には、操作表示パネル100に部品交換などのメンテナンスを促す表示(
図5(A)参照)をしつつ、印刷を継続して(ステップS7)、その印刷の終了とともに本フローを終了する(ステップS8)。これに対して、ステップS6で印刷継続される条件でない場合には、その印刷を中止して、操作表示パネル100に装置に異常がある旨の表示(
図5(B)参照)をする。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態における定着装置20は、ヒータ25(加熱手段)によって加熱されてトナー像Tを加熱してシートPの表面に定着する定着ローラ21(定着部材)と、定着ローラ21に圧接することでシートPが搬送されるニップ部を形成する加圧ローラ31(加圧部材)と、定着ローラ21の表面温度を検知する第1温度センサ40(第1温度検知手段)と、加圧ローラ31の表面温度を検知する第2温度センサ41(第2温度検知手段)と、が設けられている。そして、画像形成時に第1温度センサ40と第2温度センサ41とによってそれぞれ検知される2つの温度推移と、過去に検知されて記憶された2つの温度推移と、をそれぞれ比較して、定着装置20が正常に動作している正常状態と、定着ローラ21を加熱する制御に関わる加熱系部品に異常が生じている加熱系異常状態と、加熱系部品以外の部品に異常が生じている非加熱系異常状態と、のいずれであるかが判別される。
これにより、定着装置20のメンテナンスを効率的におこなうことができる。
【0043】
なお、本実施の形態では、定着部材として定着ローラ21を用いて、加圧部材として加圧ローラ31を用いたが、定着部材や加圧部材はこれらに限定されることなく、例えば、定着部材として定着ベルトを用いることもできるし、加圧部材として加圧ベルトを用いることもできる。
また、本実施の形態では、定着部材(定着ローラ21)を加熱する加熱手段として熱ヒータ方式のものを用いたが、加熱手段はこれに限定されることなく、例えば、電磁誘導方式(IH方式)のものや、抵抗発熱体方式のものを用いることもできる。
また、本実施の形態において、加圧ローラ31を積極的に加熱する第2の加熱手段(例えば、加圧ローラ31の内部に設置された第2のヒータである。)を設けることもできる。その場合、その第2の加熱手段は、第2温度センサ41(第2温度検知手段)の検知結果に基づいて制御されることになる。また、加熱系異常状態には、加圧ローラを加熱する制御に関わる第2の加熱系部品に異常が生じる第2の加熱異常状態が加えられることになる。
また、本実施の形態では、第1温度センサ40や第2温度センサ41として非接触式の温度センサを用いたが、第1温度センサ40や第2温度センサ41として接触式の温度センサを用いることもできる。
そして、それらのような場合にも、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0044】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【0045】
なお、本願明細書等において、「幅方向」とは、シートの搬送方向に対して直交する方向であるものと定義する。
また、本願明細書等において、「シート」とは、紙(用紙)の他に、コート紙、ラベル紙、OHPシート、フィルムシート等のシート状の記録媒体のすべてを含むものと定義する。
【符号の説明】
【0046】
1 画像形成装置(画像形成装置本体)、
20 定着装置、
21 定着ローラ(定着部材)、
25 ヒータ(加熱手段)、
31 加圧ローラ(加圧部材)、
40 第1温度センサ(第1温度検知手段)、
41 第2温度センサ(第2温度検知手段)、
50 制御部、
51 電源部、
55 加圧機構(ニップ部形成機構)、
P シート(用紙)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】