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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041343
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/00 20060101AFI20230316BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20230316BHJP
   B22F 9/24 20060101ALI20230316BHJP
   G01N 21/41 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
B22F9/00 B
B22F1/00 K
B22F1/00 L
B22F9/24 F
B22F9/24 E
B22F9/24 B
G01N21/41 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148661
(22)【出願日】2021-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 拓哉
【テーマコード(参考)】
2G059
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059DD01
2G059EE02
4K017AA03
4K017AA08
4K017BA02
4K017BA05
4K017CA08
4K017CA09
4K017EJ01
4K017EJ02
4K017FB07
4K018BA01
4K018BA02
4K018BB01
4K018BB05
4K018BD04
4K018BD10
(57)【要約】
【課題】中空金属粒子を含む組成物であって、該組成物中の中空金属粒子の経時安定性が改善された組成物を提供する。
【解決手段】中空金属粒子と、硫黄原子含有化合物とを含む組成物であって、硫黄原子含有化合物は、硫黄原子含有基と、親水性基と、硫黄原子含有基と親水性基とを連結する連結基とを含み、連結基が炭素数4以上の炭化水素基を含む組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空金属粒子と、硫黄原子含有化合物とを含む組成物であって、
前記硫黄原子含有化合物は、
硫黄原子含有基と、
親水性基と、
前記硫黄原子含有基と前記親水性基とを連結する連結基と、
を含み、
前記連結基は、炭素数4以上の炭化水素基を含む、組成物。
【請求項2】
中空金属粒子と、硫黄原子含有化合物とを含む組成物であって、
前記硫黄原子含有化合物は、
硫黄原子含有基と、
親水性基と、
前記硫黄原子含有基と前記親水性基とを連結する連結基と、
を含み、
前記硫黄原子含有基は、25℃におけるpKaが9.0以上であるチオール基を含む、組成物。
【請求項3】
中空金属粒子と、硫黄原子含有化合物とを含む組成物であって、
前記硫黄原子含有化合物は、
硫黄原子含有基と、
親水性基と、
前記硫黄原子含有基と前記親水性基とを連結する連結基と、
を含み、
前記硫黄原子含有化合物が前記硫黄原子含有基を2以上含むか、又は、前記硫黄原子含有基が硫黄原子を2以上含む、組成物。
【請求項4】
前記中空金属粒子は、シェルの厚みが1nm以上50nm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記中空金属粒子は、直径が20nm以上150nm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
水性媒体をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空金属粒子と硫黄原子含有化合物とを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2015-160972号公報(特許文献1)には、局在表面プラズモン共鳴を利用した表面増強ラマン散乱測定に用いるのに有用な中空銀粒子の製造方法が記載されている。この製造方法は、溶媒に、銀イオン源及びチオシアン酸イオン源を添加して溶液を調製することにより、上記溶液中で、チオシアン酸銀を調製する工程1、及び、上記チオシアン酸銀を含む溶液に還元剤を添加することにより、中空銀粒子を形成する工程2を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-160972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、得られる中空銀粒子の安定化のために、工程2において上記溶液にさらに保護剤を添加できることが記載されており、保護剤の例としてL-システイン、グルタチオンが挙げられている(段落[0032]、[0033])。しかし、中空金属粒子の安定化にはなお改善の余地があった。
【0005】
本発明の目的は、中空金属粒子を含む組成物であって、該組成物中の中空金属粒子の経時安定性が改善された組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示される組成物を提供する。
〔1〕 中空金属粒子と、硫黄原子含有化合物とを含む組成物であって、
前記硫黄原子含有化合物は、
硫黄原子含有基と、
親水性基と、
前記硫黄原子含有基と前記親水性基とを連結する連結基と、
を含み、
前記連結基は、炭素数4以上の炭化水素基を含む、組成物。
〔2〕 中空金属粒子と、硫黄原子含有化合物とを含む組成物であって、
前記硫黄原子含有化合物は、
硫黄原子含有基と、
親水性基と、
前記硫黄原子含有基と前記親水性基とを連結する連結基と、
を含み、
前記硫黄原子含有基は、25℃におけるpKaが9.0以上であるチオール基を含む、組成物。
〔3〕 中空金属粒子と、硫黄原子含有化合物とを含む組成物であって、
前記硫黄原子含有化合物は、
硫黄原子含有基と、
親水性基と、
前記硫黄原子含有基と前記親水性基とを連結する連結基と、
を含み、
前記硫黄原子含有化合物が前記硫黄原子含有基を2以上含むか、又は、前記硫黄原子含有基が硫黄原子を2以上含む、組成物。
〔4〕 前記中空金属粒子は、シェルの厚みが1nm以上50nm以下である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の組成物。
〔5〕 前記中空金属粒子は、直径が20nm以上150nm以下である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の組成物。
〔6〕 水性媒体をさらに含む、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0007】
中空金属粒子を含む組成物であって、該組成物中の中空金属粒子の経時安定性が改善された組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】比較例1で得られた、調製直後の組成物中に含まれる中空銀粒子の走査型透過電子顕微鏡像である。
図2】比較例1で得られた、組成物調製から2週間後の組成物中に含まれる中空銀粒子の走査型透過電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<組成物>
本発明に係る組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)は、中空金属粒子と硫黄原子含有化合物とを含む。以下、組成物に含まれる又は含まれ得る成分について詳細に説明する。
【0010】
(1)中空金属粒子
組成物に含まれる中空金属粒子は、金属を含むシェルと、シェルに囲まれた中空コアとを有する粒子である。中空金属粒子の外形状は特に限定されず、例えば、球状、楕円状、棒状等の形状である。シェルは金属からなることが好ましい。金属としては、例えば、銀、金、銅等が挙げられ、好ましくは銀、銅であり、より好ましくは銀である。
【0011】
中空金属粒子は、可視光領域の波長での局在表面プラズモン共鳴を示すように構成することができる。したがって、中空金属粒子は、例えば、局在表面プラズモン共鳴を利用した高い散乱効率を示す散乱粒子として好適である。中空金属粒子の形状、直径、シェルの厚み、及び/又は金属の種類の調整によって、所望の波長で局在表面プラズモン共鳴を示すように設計することができる。
【0012】
中空金属粒子のシェルの厚みは、好ましくは1nm以上50nm以下であり、より好ましくは2nm以上35nm以下であり、さらに好ましくは3nm以上20nm以下であり、特に好ましくは5nm以上15nm以下である。中空金属粒子のシェルの厚みを上記範囲とすることにより、中空金属粒子が、可視光領域の波長での局在表面プラズモン共鳴をより示し易くなる。
中空金属粒子の直径は、好ましくは200nm以下であり、より好ましくは20nm以上150nm以下であり、さらに好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0013】
中空金属粒子の直径及びシェルの厚みは、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した画像から、縮尺により粒子径及び厚みを求める方法により測定することができる。粒子径は、STEM像内から無作為に抽出した100個の中空金属粒子の長径の平均値とする。
中空金属粒子の外形状や、該粒子が中空粒子であるか否かも、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した画像から確認することができる。
【0014】
STEMの好ましい測定条件は次のとおりである。
加速電圧:20kV~30kV
電流値 :50pA~100pA
倍率 :50万倍~100万倍
【0015】
組成物における中空金属粒子の含有量は、例えば0.000001~99.9質量%であり、好ましくは0.000005~99質量%であり、より好ましくは0.00001~95質量%であり、さらに好ましくは0.000015~90質量%である。組成物が後述する液媒体を含む場合、上記含有量は、例えば0.00001~20質量%であってよく、好ましくは0.00001~10質量%である。液媒体を含む組成物は、濃縮によって中空金属粒子の含有量が調整されてもよい。あるいは、組成物は、液媒体の添加により希釈されてもよい。組成物における中空金属粒子の含有量や液媒体の含有量に関わらず、中空金属粒子が変形(シェルの崩壊等)又は変質するメカニズムは同じである。したがって、硫黄原子含有化合物を含む本発明に係る組成物によれば、組成物における中空金属粒子の含有量や液媒体の含有量の広い範囲にわたって、中空金属粒子の経時安定性効果を得ることが可能である。
【0016】
(2)硫黄原子含有化合物
組成物に含まれる硫黄原子含有化合物は、硫黄原子含有基、親水性基、及び、硫黄原子含有基と親水性基とを連結する連結基を含む化合物であって、下記(a)~(c)の1以上を満たす化合物である。
(a)連結基が、炭素数4以上の炭化水素基を含む。
(b)硫黄原子含有基が、25℃におけるpKaが9.0以上であるチオール基を含む。
(c)硫黄原子含有化合物が硫黄原子含有基を2以上含むか、又は、硫黄原子含有基が硫黄原子を2以上含む。
組成物は、硫黄原子含有化合物を1種又は2種以上含むことができる。
【0017】
組成物が上記硫黄原子含有化合物を含むことにより、該組成物中の中空金属粒子の変形(シェルの崩壊等)又は変質が抑制され、中空金属粒子の経時安定性を高めることができる。より具体的には、組成物が上記硫黄原子含有化合物を含むことにより、中空金属粒子が有する中空形状を長期間維持することができる。これにより、該中空形状に基づく特性を長期間維持することが可能となる。
【0018】
硫黄原子含有化合物を含む本発明に係る組成物は、とりわけ、酸化による中空金属粒子の変形又は変質を抑制するうえで有利である。従って、本発明に係る組成物は、それに含まれる中空金属粒子が中空銀粒子又は中空銅粒子である場合に、とりわけ高い中空金属粒子の経時安定性効果を発揮することができる。また、該組成物は、中空金属粒子の酸化を生じさせやすい水を溶媒として含む場合であっても、高い中空金属粒子の経時安定性効果を発揮することができる。
【0019】
中空金属粒子の変形(シェルの崩壊等)又は変質の程度は、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した画像から確認することができる。また、紫外可視分光光度計を用いて測定される消光スペクトルのピーク強度から定量的に評価することもできる。ピーク強度の低下が大きいほど、変形又は変質の程度が大きいといえる。また、中空金属粒子の変形又は変質が生じると、中空金属粒子のサイズ、形状等が不均一となるため、消光スペクトルのピークがブロード化しやすくなる。
【0020】
中空金属粒子の経時安定性を高める観点から、組成物に含まれる硫黄原子含有化合物は、その少なくとも一部が中空金属粒子の表面に配位していることが好ましい。組成物に含まれる硫黄原子含有化合物のすべてが中空金属粒子の表面に配位していることも好ましい。組成物に含まれる硫黄原子含有化合物の一部が中空金属粒子の表面に配位し、他の硫黄原子含有化合物が配位していなくてもよい。硫黄原子含有化合物が配位している場合、通常、硫黄原子含有化合物は、その硫黄原子含有基を介して中空金属粒子の表面に配位している。
【0021】
硫黄原子含有化合物は、中空金属粒子と硫黄原子含有化合物とを含む組成物の調製が容易になることから、水溶性であることが好ましい。
【0022】
以下、上記(a)を満たす硫黄原子含有化合物を化合物(a)、上記(b)を満たす硫黄原子含有化合物を化合物(b)、上記(c)を満たす硫黄原子含有化合物を化合物(c)ともいう。硫黄原子含有化合物は、上記(a)~(c)の2以上を満たしていてもよく、すべてを満たしていてもよい。化合物(a)と化合物(b)、化合物(b)と化合物(c)、化合物(c)と化合物(a)は同一の化合物であり得る。
【0023】
(2-1)化合物(a)
化合物(a)が有する硫黄原子含有基は、硫黄原子を含む1価の基であり、例えば、チオール基、テトラヒドロチオフェン基、1,2-ジチオラン基、1,3-ジチオラン基、1,3-ジチアン基1,4-ジチアン基等の脂肪族複素環基、チオフェン基、チアゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾイソチアゾール基等の芳香族系複素環基が挙げられる。
化合物(a)は、硫黄原子含有基を2以上有していてもよい。この場合、2以上の硫黄原子含有基は、同じであっても異なっていてもよい。
【0024】
化合物(a)が有する親水性基は、硫黄原子含有基には属しない基であり、例えば、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、4級アンモニウム基、4級ホスホニウム基、水酸基、アミド基等が挙げられる。硫黄原子含有化合物に親水性基を導入することにより、組成物中の中空金属粒子の分散性を高めることができる。
【0025】
中でも、化合物(a)が中空金属粒子に配位するとき、親水性基の電荷反発により、組成物中の中空金属粒子の分散性をより高め得ることから、親水性基は、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、4級アンモニウム基、4級ホスホニウム基であることが好ましく、カルボキシ基、アミノ基であることがより好ましい。
化合物(a)は、親水性基を2以上有していてもよい。この場合、2以上の親水性基は、同じであっても異なっていてもよい。化合物(a)は、好ましくは、親水性基を1つ有する。
【0026】
連結基は、硫黄原子含有基と親水性基とを連結する2価以上の基である。化合物(a)が有する連結基は、炭素数4以上の炭化水素基を含む。該炭化水素基としては、例えば、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。該炭化水素基は、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選択される2以上の基の組み合わせであってもよい。該炭化水素基は、ハロゲン原子等の置換基を有することができる。
【0027】
鎖状炭化水素基としては、例えば、直鎖状若しくは分岐状のアルカンジイル基又は直鎖状若しくは分岐状のアルカントリイル基等が挙げられ、その炭素数は通常1~50であり、好ましくは2~20であり、より好ましくは4~10である。連結基が鎖状炭化水素基からなる場合、該鎖状炭化水素基の炭素数は4以上である。
【0028】
脂環式炭化水素基としては、例えば、単環式若しくは多環式のシクロアルカンジイル基又は単環式若しくは多環式のシクロアルカントリイル基等が挙げられ、その炭素数は、通常3~50であり、好ましくは3~20であり、より好ましくは3~10である。連結基が脂環式炭化水素基からなる場合、該脂環式炭化水素基の炭素数は4以上である。
【0029】
芳香族炭化水素基としては、例えば、単環式若しくは多環式のアレーンジイル基又は単環式若しくは多環式のアレーントリイル基が挙げられ、その炭素数は、通常6~20である。
【0030】
化合物(a)が有する連結基は、好ましくは、炭素数4以上の鎖状炭化水素基を含み、より好ましくは、炭素数4以上の直鎖状炭化水素基を含む。これにより、連結基部分による分子間の疎水性相互作用が大きくなるため、中空金属粒子の表面に硫黄原子含有化合物の分子をより多く、より密に配位させることができる。このことは、中空金属粒子の経時安定性を高めるうえで有利である。
【0031】
化合物(a)が有する連結基は、好ましくは、炭素数4以上の炭化水素基からなり、より好ましくは、炭素数4以上の鎖状炭化水素基からなり、さらに好ましくは、炭素数4以上の直鎖状炭化水素基からなる。すなわち、化合物(a)が有する硫黄原子含有基は連結基に直接結合していることが好ましく、親水性基は連結基に直接結合していることが好ましい。
【0032】
化合物(a)の分子量は、中空金属粒子への配位能及び中空金属粒子の経時安定性を高める観点から、好ましくは100~3000であり、より好ましくは100~2000であり、さらに好ましくは100~1000であり、なおさらに好ましくは200~800であり、500以下であってもよい。
【0033】
化合物(a)としては、例えば、α-リポ酸、ジヒドロリポ酸、メルカプトヘキサン酸、メルカプトオクタン酸、4-メルカプト安息香酸等が挙げられる。また、化合物(a)の他の例として、上記例示の化合物において、カルボキシ基が、アミノ基、スルホ基、4級アンモニウム基、4級ホスホニウム基、水酸基又はアミド基に置き換わった化合物が挙げられる。
【0034】
(2-2)化合物(b)
化合物(b)は1又は2以上の硫黄原子含有基を含み、該硫黄原子含有基の少なくとも1つは、25℃におけるpKaが9.0以上であるチオール基である。該チオール基を有する化合物(b)を組成物に含有させることにより、中空金属粒子の経時安定性を高めることができる。特に、チオール基のpKaを上記範囲内とすることによって、酸化による中空金属粒子の変形又は変質を効果的に抑制することができる。
【0035】
中空金属粒子の経時安定性を高める観点から、上記pKaは、好ましくは9.5以上であり、より好ましくは10.0以上であり、さらに好ましくは10.2以上である。該pKaは通常14.0以下であり、13.0以下であってもよく、12.0以下であってもよく、11.0以下であってもよい。
【0036】
化合物(b)は、チオール基以外の硫黄原子含有基を含み得る。チオール基以外の硫黄原子含有基の例については、化合物(a)についての記載が引用される。化合物(b)が有する親水性基についても、化合物(a)についての記載が引用される。化合物(b)は、親水性基を2以上有していてもよい。この場合、2以上の親水性基は、同じであっても異なっていてもよい。化合物(b)は、好ましくは、親水性基を1つ有する。
【0037】
化合物(b)が有する連結基は、任意の構造を有していてよいが、好ましくは2価以上の炭化水素基である。該炭化水素基としては、例えば、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。該炭化水素基は、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選択される2以上の基の組み合わせであってもよい。該炭化水素基は、ハロゲン原子等の置換基を有することができる。
【0038】
鎖状炭化水素基としては、例えば、直鎖状若しくは分岐状のアルカンジイル基又は直鎖状若しくは分岐状のアルカントリイル基等が挙げられ、その炭素数は通常1~50であり、好ましくは2~20であり、より好ましくは2~10であり、4以上であってもよい。
【0039】
脂環式炭化水素基としては、例えば、単環式若しくは多環式のシクロアルカンジイル基又は単環式若しくは多環式のシクロアルカントリイル基等が挙げられ、その炭素数は、通常3~50であり、好ましくは3~20であり、より好ましくは3~10である。
【0040】
芳香族炭化水素基としては、例えば、単環式若しくは多環式のアレーンジイル基又は単環式若しくは多環式のアレーントリイル基が挙げられ、その炭素数は、通常6~20である。
【0041】
化合物(b)が有する連結基は、好ましくは、炭化水素基からなり、より好ましくは、炭素数3以上の鎖状炭化水素基からなり、さらに好ましくは、炭素数3以上の直鎖状炭化水素基からなる。すなわち、化合物(b)が有する硫黄原子含有基は連結基に直接結合していることが好ましく、親水性基は連結基に直接結合していることが好ましい。また、鎖状、好ましくは直鎖状炭化水素基とすることにより、連結基部分による分子間の疎水性相互作用が大きくなるため、中空金属粒子の表面に硫黄原子含有化合物の分子をより多く、より密に配位させることができる。このことは、中空金属粒子の経時安定性を高めるうえで有利である。
【0042】
化合物(b)の分子量は、中空金属粒子への配位能及び中空金属粒子の経時安定性を高める観点から、好ましくは100~3000であり、より好ましくは100~2000であり、さらに好ましくは100~1000であり、なおさらに好ましくは200~800であり、500以下であってもよい。
【0043】
化合物(b)としては、例えば、ジヒドロリポ酸、3-メルカプトプロピオン酸、メルカプトブタン酸、メルカプトヘキサン酸、メルカプトオクタン酸等が挙げられる。また、化合物(b)の他の例として、上記例示の化合物において、カルボキシ基が、アミノ基、スルホ基、4級アンモニウム基、4級ホスホニウム基、水酸基又はアミド基に置き換わった化合物が挙げられる。
【0044】
(2-3)化合物(c)
化合物(c)は、2以上の硫黄原子含有基を有するか、又は、硫黄原子を2以上含む硫黄原子含有基を有する。このような化合物(c)を組成物に含有させることにより、中空金属粒子の経時安定性を高めることができる。これは、硫黄原子含有化合物が中空金属粒子に配位するときの配位点が多くなり、さらには該配位点間の距離が短くなりやすいため、中空金属粒子を構成する金属がイオン化して溶出することが効果的に抑制されるためと考えられる。
【0045】
化合物(c)が2以上の硫黄原子含有基を有する場合において、該2以上の硫黄原子含有基は、同じであっても異なっていてもよい。硫黄原子含有基の例については、化合物(a)についての記載が引用される。1つの実施形態において、化合物(c)は2つのチオール基を有する。
【0046】
化合物(c)が硫黄原子を2以上含む硫黄原子含有基を有する場合において、該硫黄原子含有基としては、例えば、1,2-ジチオラン基、1,3-ジチオラン基、1,3-ジチアン基、1,4-ジチアン基等が挙げられる。中でも、中空金属粒子への配位能の観点から、ジスルフィド結合を有する1,2-ジチオラン基等が好ましい。
【0047】
化合物(c)が有する親水性基については、化合物(a)についての記載が引用される。化合物(c)は、親水性基を2以上有していてもよい。この場合、2以上の親水性基は、同じであっても異なっていてもよい。化合物(c)は、好ましくは、親水性基を1つ有する。
化合物(c)が有する連結基については、化合物(b)についての記載が引用される。
【0048】
化合物(c)の分子量は、中空金属粒子への配位能及び中空金属粒子の経時安定性を高める観点から、好ましくは100~3000であり、より好ましくは100~2000であり、さらに好ましくは100~1000であり、なおさらに好ましくは200~800であり、500以下であってもよい。
【0049】
化合物(c)としては、例えば、α-リポ酸、ジヒドロリポ酸、1,2-ジチオラン-4-カルボン酸、1,2-ジチオラン-3-アセチル酸、1,2-ジチオラン-3-プロパン酸、1,2-ジチオラン-3-ブタン酸、1,2-ジチオラン-4-ペンタン酸、1,2-ジチオラン-3-ヘキサン酸、4-(1,3-ジチオラン-2-イル)安息香酸等が挙げられる。また、化合物(c)の他の例として、上記例示の化合物において、カルボキシ基が、アミノ基、スルホ基、4級アンモニウム基、4級ホスホニウム基、水酸基又はアミド基に置き換わった化合物が挙げられる。
【0050】
(2-4)硫黄原子含有化合物の含有量
組成物における硫黄原子含有化合物の含有量は、中空金属粒子100質量部に対して、例えば0.01~1000質量部であり、中空金属粒子の分散安定性及び組成物の保存安定性の向上に有利であることから、好ましくは0.05~500質量部であり、より好ましくは0.1~100質量部であり、さらに好ましくは0.5~50質量部である。組成物における硫黄原子含有化合物の含有量が上記範囲内であると、中空金属粒子の表面を十分な量の硫黄原子含有化合物で被覆でき、また中空金属粒子に配位していない余剰の硫黄原子含有化合物による中空金属粒子の分散状態の不安定化を防止できる。
組成物には、中空金属粒子に配位し得る量を超える量の硫黄原子含有化合物が含まれていてもよいし、中空金属粒子に配位し得る量又はこれより少ない量の硫黄原子含有化合物が含まれていてもよい。後述する分離工程によって得られる分離物(単離物)の量から中空金属粒子の量を差し引いた量を、中空金属粒子に配位している硫黄原子含有化合物の量とみなすことができる。
【0051】
(3)組成物が含有し得るその他の成分
組成物は、中空金属粒子及び硫黄原子含有化合物以外のその他の成分を含むことができる。その他の成分としては、液媒体(中空金属粒子の分散媒)、水素化ホウ素ナトリウム、クエン酸、アスコルビン酸等の還元剤等が挙げられる。また、組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、中空金属粒子に配位し得る化合物(配位子)として、硫黄原子含有化合物以外の化合物を含んでいてもよい。
【0052】
該液媒体としては水性媒体が好ましく、より好ましくは水を含み、さらに好ましくは水である。組成物が液媒体を含む場合、液媒体の含有量は、中空金属粒子100質量部に対して、例えば1~1×10質量部であり、好ましくは10~1×10質量部であり、より好ましくは100~1×10質量部であり、さらに好ましくは1000~1×10質量部である。
【0053】
(4)組成物の用途
本発明に係る組成物は、中空金属粒子の経時安定性(とりわけ中空形状の維持という観点での形状安定性、及びそれに基づく特性の安定性)が高い。さらに、該組成物の消光スペクトルは、製造時の状態を維持しやすく、ピークのブロード化が生じにくいため、該組成物は、局在表面プラズモン共鳴の波長選択性が求められる用途、例えば、特許文献1に記載された、局在表面プラズモン共鳴を利用した表面増強ラマン散乱測定に用いるのに好適であるほか、光拡散フィルムに含有される光拡散剤として好適に用いることができる。また、本発明に係る組成物は、抗菌剤、抗ウイルス剤としても使用し得る。
【0054】
上記光拡散フィルムは、例えば、基材フィルムと、該基材フィルム上に積層された光拡散層とを有するものであり、該光拡散層は、バインダ樹脂とこれに分散された光拡散剤とを含む。光拡散フィルムは、例えば、画像表示装置に搭載して使用することができる。画像表示装置としては、液晶表示装置、有機EL表示装置、無機EL表示装置等が挙げられる。
【0055】
<組成物の製造方法>
特に制限されないが、本発明に係る組成物は、特許文献1に記載された方法と同様の方法で製造することができる。本発明に係る組成物の製造方法の一例は、下記工程を含む方法である。
【0056】
(A)液媒体中で、金属カチオンとチオシアン酸アニオンとの塩を形成する工程、
(B)還元剤を添加することによって中空金属粒子を形成する工程、
(C)硫黄原子含有化合物を添加する工程。
【0057】
工程(A)における液媒体としては水性媒体が好ましく、より好ましくは水を含み、さらに好ましくは水である。液媒体中で金属カチオンを有する化合物と、チオシアン酸アニオンを有する化合物とを混合することにより金属カチオンとチオシアン酸アニオンとの塩を形成することができる。工程(A)によって得られる上記塩を含む液は、該塩が液媒体に溶解した溶液であることが好ましい。工程(A)の温度は、例えば0~50℃である。
【0058】
中空金属粒子のシェルを構成する金属が銀である場合、金属カチオンを有する化合物としては、例えば、硝酸銀、トリフルオロ酢酸銀、硫酸銀、酢酸銀等が挙げられ、水溶性であることから、好ましくは、硝酸銀、トリフルオロ酢酸銀である。金属カチオンを有する化合物として2種以上の化合物を用いてもよい。中空金属粒子のシェルを構成する金属が金である場合、金属カチオンを有する化合物としては、例えば、塩化金酸等が挙げられる。中空金属粒子のシェルを構成する金属が銅である場合、金属カチオンを有する化合物としては、例えば、シアン化銅、ピロリン酸銅硫酸銅、酢酸銅、塩化銅等が挙げられる。
【0059】
チオシアン酸アニオンを有する化合物としては、例えば、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム、チオシアン酸グアニジン、チオシアン酸テトラメチルアンモニウム、チオシアン酸テトラブチルアンモニウム、チオシアン酸メチルイミダゾリウム等が挙げられ、水溶性の観点から、好ましくはチオシアン酸ナトリウムである。チオシアン酸アニオンを有する化合物として2種以上の化合物を用いてもよい。
【0060】
上記溶液における金属カチオンの濃度は、凝集を抑制しつつ中空金属粒子を効率良く製造する観点から、好ましくは0.0025~50mmol/Lであり、より好ましくは0.01~5mmol/Lである。上記溶液におけるチオシアン酸アニオンの濃度は、凝集を抑制しつつ中空金属粒子を効率良く製造する観点から、好ましくは0.00375~75mmol/Lであり、より好ましくは0.00375~7.5mmol/Lである。
【0061】
工程(B)において還元剤を添加することにより中空金属粒子が形成される。還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ヒドラジン、没食子酸等が挙げられ、水溶性及び還元力の観点から、好ましくは水素化ホウ素ナトリウムである。還元剤として2種以上の化合物を用いてもよい。
【0062】
上記溶液における還元剤の濃度は、中空金属粒子を効率良く製造する観点から、好ましくは0.025~500mmol/Lであり、より好ましくは0.1~50mmol/Lである。工程(B)の温度は、例えば0~50℃である。
【0063】
工程(A)終了時から工程(B)開始時までの時間や、工程(A)及び工程(B)の温度等を調整することにより、得られる中空金属粒子の直径及びシェルの厚みを制御することが可能である。
【0064】
工程(C)において硫黄原子含有化合物を添加することによって本発明に係る組成物を得ることができる。工程(C)は工程(B)の前に実施してもよいし、工程(B)の後に実施してもよいが、好ましくは工程(B)の後に実施する。この工程で使用する硫黄原子含有化合物は、上記所定の硫黄原子含有化合物、又は、上記所定の硫黄原子含有化合物のうちそれ自体はチオール基を有しないが、工程(B)での還元反応によりチオール基を生じる化合物である。
【0065】
添加される硫黄原子含有化合物の上記溶液における濃度は、組成物中の中空金属粒子の安定化及び液媒体中での中空金属粒子の分散性の観点から、好ましくは0.00025~5mmol/Lであり、より好ましくは0.001~0.5mmol/Lである。工程(C)の温度は、例えば0~50℃である。
【0066】
工程(C)を経て得られる、中空金属粒子と硫黄原子含有化合物と液媒体とを含む組成物(中空金属粒子の分散液)における中空金属粒子の濃度は、例えば0.000001~10質量%であり、好ましくは0.00001~8質量%である。
【0067】
中空金属粒子と硫黄原子含有化合物と液媒体とを含む本発明に係る組成物の製造方法は、上述の方法に限定されない。該組成物は、例えば、あらかじめ準備又は調製した中空金属粒子(液媒体中に分散されていてもよい。)と、硫黄原子含有化合物と、必要に応じて液媒体とを混合することによって得てもよい。この場合、中空金属粒子としては、従来公知の方法で調製されたものであってもよく、市販品であってもよい。あらかじめ準備又は調製した中空金属粒子がその表面に配位する配位子を備えている場合、該組成物を得るにあたって、この配位子の一部又は全部を除去してもよい。液媒体中に中空金属粒子が分散されている分散液を遠心分離することによって、配位子の一部又は全部を除去することができる。例えば、遠心分離によって得られる分離物を、硫黄原子含有化合物を含む液媒体に再分散させることによって組成物を得ることができる。
【0068】
中空金属粒子と硫黄原子含有化合物と液媒体とを含む組成物(中空金属粒子の分散液)から、遠心分離等を行う分離工程によって中空金属粒子を分離、精製してもよい。分離工程によって、中空金属粒子の形成に用いた試薬の未反応分や余剰の硫黄原子含有化合物を除去することができる。
【0069】
分離工程によって得られる分離物(単離物)は、中空金属粒子と、それに配位している硫黄原子含有化合物とを含むものであり、該分離物も本発明の組成物に属する。さらに、この分離物を液媒体に再分散させてもよく、これにより得られる該分離物と液媒体とを含む組成物も本発明の組成物に属する。該液媒体としては水性媒体が好ましく、より好ましくは水を含み、さらに好ましくは水である。水性媒体を含む該組成物における中空金属粒子の濃度は、例えば0.000001~20質量%であり、好ましくは0.00001~10質量%である。
【0070】
また、中空金属粒子と硫黄原子含有化合物と液媒体とを含む組成物(中空金属粒子の分散液)は、液媒体の一部又は全部が除去されることにより濃縮又は乾燥されてもよい。濃縮又は乾燥方法としては、加熱による濃縮又は乾燥、減圧による濃縮又は乾燥、凍結乾燥等が挙げられ、これらの組み合わせであってもよい。
【実施例0071】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0072】
<実施例1>
1×10-4mol/Lの硝酸銀水溶液5mLに1.5×10-4mol/Lのチオシアン酸ナトリウム水溶液5mLを添加し、23℃で5分間攪拌した後、5分経過後に、攪拌を継続しながら、同温度で還元剤としての1×10-3mol/Lの水素化ホウ素ナトリウム水溶液5mLを添加して、中空銀粒子を形成した。該添加後すぐに、攪拌を継続しながら、同温度で、硫黄原子含有化合物として、1×10-3mol/Lのα-リポ酸水溶液を50μL添加し、混合した。
【0073】
次いで、系中から余分な試薬を除去するため、汎用遠心機(アズワン株式会社製の「ビオラモ Flex spin 444315-200」)を用いて遠心分離(7000rpm×10min)を行い、中空銀粒子を精製した。分離した中空銀粒子を超純水2mLに再分散し、中空銀粒子と硫黄原子含有化合物と超純水とを含む組成物を得た。組成物中の中空銀粒子の濃度は0.001質量%であった。
得られた組成物は、添加したα-リポ酸及び/又はその還元物であるジヒドロリポ酸を含む。ジヒドロリポ酸が有するチオール基の25℃におけるpKaは10.3である(文献値)。
【0074】
得られた中空銀粒子について、上述の測定方法に従い、走査型透過電子顕微鏡(日本FEI社製の「HeliosG4UX」)を用いて直径及びシェルの厚みを測定したところ、直径は69nmであり、シェルの厚みは7nmであった。測定条件は次のとおりとした。
加速電圧:24kV
電流値 :100pA
倍率 :100万倍
【0075】
<比較例1>
硫黄原子含有化合物として、1×10-3mol/LのL-システイン水溶液を50μL添加したこと以外は実施例1と同様にして、中空銀粒子と硫黄原子含有化合物と超純水とを含む組成物を得た。L-システインが有するチオール基の25℃におけるpKaは8.3である(文献値)。
【0076】
<比較例2>
硫黄原子含有化合物として、1×10-3mol/Lのグルタチオン水溶液を50μL添加したこと以外は実施例1と同様にして、中空銀粒子と硫黄原子含有化合物と超純水とを含む組成物を得た。グルタチオンが有するチオール基の25℃におけるpKaは8.93である(文献値)。
【0077】
(組成物の安定性評価)
調製直後の組成物について、紫外可視分光光度計(島津製作所社製の「UV3700」)を用いて消光スペクトルを測定した。測定には光路長1cmの石英セルを用いた。リファレンス側試料には超純水を用いた。このスペクトルから、組成物調製直後のピーク強度及びピーク波長を得た。ピーク強度とは、消光スペクトル強度の最大値を意味する。ピーク波長とは、ピーク強度における波長を意味する。以下、組成物調製直後のピーク強度及びピーク波長をそれぞれI及びWという。各例で調製した組成物のI及びWを表1に示す。
【0078】
次に、蛍光灯下、室温23℃の条件で組成物を5mLバイアル瓶中で保存し(保存安定性試験)、組成物調製から1週間後及び2週間後に組成物を石英セルに採取し、消光スペクトルを測定した。なお、保存安定性試験においては、消光スペクトルの測定に供した組成物調製直後及び1週間後の組成物サンプルはバイアル瓶に戻した。以下、組成物調製から1週間後のピーク強度をIといい、組成物調製から2週間後のピーク強度をIという。
【0079】
以上の測定結果から、ピーク強度の保持率であるI/I(%)及びI/I(%)をそれぞれ求めた。結果を表1に示す。ピーク強度の保持率が高いほど、組成物中の中空銀粒子の保存安定性が高い。
【0080】
図1は、比較例1で得られた、調製直後の組成物中に含まれる中空銀粒子の走査型透過電子顕微鏡像であり、図2は、比較例1で得られた、組成物調製から2週間後の組成物中に含まれる中空銀粒子の走査型透過電子顕微鏡像である。測定条件は上記と同じである。調製直後においては中空銀粒子の形状が維持されている一方、2週間後では中空銀粒子のシェルが崩壊していることがわかる。
【0081】
【表1】
図1
図2