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特開2023-41361成形品、成形品の製造方法および熱可塑性樹脂の流動性向上方法
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  • 特開-成形品、成形品の製造方法および熱可塑性樹脂の流動性向上方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041361
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】成形品、成形品の製造方法および熱可塑性樹脂の流動性向上方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20230316BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230316BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20230316BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20230316BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
C08L67/00
C08K3/013
C08L77/00
C08L81/02
C08K9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148700
(22)【出願日】2021-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 尚信
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮太
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BE022
4J002BG012
4J002CF012
4J002CF051
4J002CF061
4J002CF071
4J002CF081
4J002CH022
4J002CH052
4J002CL011
4J002CL031
4J002CL051
4J002CN011
4J002DA016
4J002DA026
4J002DE146
4J002DE186
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ026
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002DL006
4J002EC057
4J002EF067
4J002EF117
4J002EL137
4J002EN047
4J002EN087
4J002EU187
4J002EU197
4J002FA046
4J002FB266
4J002FD016
4J002FD202
4J002FD207
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、機械的物性を維持しながらも、汎用性のある高流動化性を発揮する熱可塑性樹脂からなる成形品を提供することにある。
【解決手段】本発明の目的は、少なくとも、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリーレンサルファイド系樹脂から選択される1種以上である熱可塑性樹脂A、無機フィラーB、該熱可塑性樹脂A以外の熱可塑性樹脂Cおよび高流動化剤Dを含む樹脂組成物からなる成形品であって、前記無機フィラーBが前記熱可塑性樹脂Cにより被覆されている成形品、によって達成された。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリーレンサルファイド系樹脂から選択される1種以上である熱可塑性樹脂A、無機フィラーB、該熱可塑性樹脂A以外の前記無機フィラーBとの親和性を有する熱可塑性樹脂Cおよび高流動化剤Dを含む樹脂組成物からなる成形品であって、前記無機フィラーBが前記熱可塑性樹脂Cにより被覆されている成形品。
【請求項2】
前記高流動化剤Dが、3つ以上の官能基を有する化合物H、環状オリゴマーJ、水酸基価が200以上600以下のグリセリン脂肪酸エステルKおよびハイパーブランチポリマーWから選択される少なくとも1種である請求項1記載の成形品。
【請求項3】
前記成形品が2mm以下の薄肉部を有する請求項1または2記載の成形品。
【請求項4】
少なくとも、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリーレンサルファイド系樹脂から選択される1種以上である熱可塑性樹脂A、無機フィラーBおよび該熱可塑性樹脂A以外の熱可塑性樹脂Cおよび高流動化剤Dを含む樹脂組成物の流動性を向上した成形品の製造方法であって、該無機フィラーBと該熱可塑性樹脂Cをあらかじめ溶融混練することで、該無機フィラーBを該熱可塑性樹脂Cで被覆してから、該熱可塑性樹脂Aおよび該高流動化剤Dと溶融混練する、流動性を向上した成形品の製造方法。
【請求項5】
少なくとも、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリーレンサルファイド系樹脂から選択される1種以上である熱可塑性樹脂A、無機フィラーBおよび該熱可塑性樹脂Cおよび高流動化剤Dを含む樹脂組成物の流動性向上方法であって、前記無機フィラーBと熱可塑性樹脂Cをあらかじめ溶融混練することで、前記無機フィラーBを前記熱可塑性樹脂Cで被覆してから、前記熱可塑性樹脂Aおよび前記高流動化剤Dと溶融混練する、流動性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融粘度を減少させて高流動化し、加工性を向上させ成形した成形品、成形品の製造方法および熱可塑性樹の流動性向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂からなる成形品は、優れた機械的特性、電気的特性、耐熱性、耐候性、耐水性、耐薬品性及び耐溶剤性に優れる等の理由により、自動車部品、電気・電子部品、産業用機械部品等の種々の用途に広く利用されている。
【0003】
特に電子機器は小型化・軽量化に伴い、薄肉流動性の要求も高まっている。肉厚の薄い、板状あるいは箱形の成形品、例えばマイクロスイッチケース、小型コイルボビン、薄肉コネクター、次世代通信機器等の筐体等においては、流動性の低下による成形不良(成形品金型への充填不足)、同じく樹脂の流れの不均一に基づく、そり発生の増大等の問題があり、薄肉流動性が改良された材料が望まれていた。
【0004】
現在の技術の傾向は、流動断面積が狭い厚みが2mm以下となるような複雑で精細なデザインの部品の製造にあり、その製造においては、従来の熱可塑性樹脂組成物における流動性は十分ではなく金型に対する転写性も十分ではなかった。
【0005】
例えば、特許文献1には、水酸基を複数有する特定の化合物を、ポリエステル系樹脂に含有させた樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2009-506191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながらこの技術ではポリエステル系樹脂では一定の効果は見られるものの、汎用性が十分でなく、さらなる改善が求められている。
【0008】
本発明の目的は、機械的物性を維持しながらも、汎用性のある高流動化性を発揮する熱可塑性樹脂からなる成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、下記によって達成された。
1. 少なくとも、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリーレンサルファイド系樹脂から選択される1種以上である熱可塑性樹脂A、無機フィラーB、該熱可塑性樹脂A以外の前記無機フィラーBとの親和性を有する熱可塑性樹脂Cおよび高流動化剤Dを含む樹脂組成物からなる成形品であって、前記無機フィラーBが前記熱可塑性樹脂Cにより被覆されている成形品。
2. 前記高流動化剤Dが、3つ以上の官能基を有する化合物H、環状オリゴマーJ、水酸基価が200以上600以下のグリセリン脂肪酸エステルKおよびハイパーブランチポリマーWから選択される少なくとも1種である前記1記載の成形品。
3. 前記成形品が2mm以下の薄肉部を有する前記1または2記載の成形品。
4. 少なくとも、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリーレンサルファイド系樹脂から選択される1種以上である熱可塑性樹脂A、無機フィラーBおよび該熱可塑性樹脂A以外の熱可塑性樹脂Cおよび高流動化剤Dを含む樹脂組成物の流動性を向上した成形品の製造方法であって、該無機フィラーBと該熱可塑性樹脂Cをあらかじめ溶融混練することで、該無機フィラーBを該熱可塑性樹脂Cで被覆してから、該熱可塑性樹脂Aおよび該高流動化剤Dと溶融混練する、流動性を向上した成形品の製造方法。
5. 少なくとも、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリーレンサルファイド系樹脂から選択される1種以上である熱可塑性樹脂A、無機フィラーBおよび該熱可塑性樹脂A以外の熱可塑性樹脂Cおよび高流動化剤Dを含む樹脂組成物の流動性向上方法であって、前記無機フィラーBと熱可塑性樹脂Cをあらかじめ溶融混練することで、前記無機フィラーBを前記熱可塑性樹脂Cで被覆してから、前記熱可塑性樹脂Aおよび前記高流動化剤Dと溶融混練する、流動性向上方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、これまで以上に耐溶出性に優れた成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例2の成形品断面の電子顕微鏡(×20000倍)写真である。
図2】本発明の実施態様の一つである表面被覆しない無機フィラーを含む成形品断面の電子顕微鏡(×20000倍)写真である。
図3】比較例2の成形品断面の電子顕微鏡(×20000倍)写真である。
図4】本実施態様の一つである押出機の概観である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の成形品は、少なくとも、熱可塑性樹脂A、無機フィラーB、該熱可塑性樹脂A以外の熱可塑性樹脂Cおよび高流動化剤Dを含む樹脂組成物からなる成形品であって、該無機フィラーBが熱可塑性樹脂Cにより被覆されていることを特徴とする。
【0013】
<熱可塑性樹脂A>
本発明の熱可塑性樹脂Aは、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリーレンサルファイド系樹脂から選択される1種以上である。
【0014】
具体的には、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(PTT)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリアミド樹脂(PA)等が挙げられる。本発明の熱可塑性樹脂Aは、慣用の方法により製造できる。
【0015】
<ポリエステル系樹脂>
ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸化合物及び/又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分と、ジオール化合物及び/又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするジオール成分との反応により得られるポリエステル樹脂であり、ジカルボン酸成分かジオール成分の少なくとも1種に芳香族化合物を含むものである。
【0016】
ジカルボン酸成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドテカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸等のC4-40程度のジカルボン酸、好ましくはC4-14程度のジカルボン酸)、脂環式ジカルボン酸(例えば、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸等のC4-40程度のジカルボン酸、好ましくはC8-12程度のジカルボン酸)、芳香族ジカルボン酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、メチルイソフタル酸、メチルテレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェノキシエーテルジカルボン酸、4,4’-ジオキシ安息香酸、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルケトンジカルボン酸等のC8-16程度のジカルボン酸)、又はこれらの誘導体(例えば、低級アルキルエステル、アリールエステル、酸無水物等のエステル形成可能な誘導体)等が挙げられる。
【0017】
これらのジカルボン酸成分は、単独又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいジカルボン酸成分には、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸(特にテレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸)が含まれる。ジカルボン酸成分中には、例えば、50モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上の芳香族ジカルボン酸が含まれているのが好ましい。さらに、必要に応じて、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸又はそのエステル形成誘導体(アルコールエステル等)等を併用してもよい。このような多官能性化合物を併用すると、分岐状のポリエステル樹脂を得ることもできる。
【0018】
ジオール成分としては、例えば、脂肪族アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール等のC2-12程度の脂肪族ジオール、好ましくはC2-10程度の脂肪族ジオール)、ポリオキシアルキレングリコール(C2-4程度のアルキレン基であり、複数のオキシアルキレン単位を有するグリコール、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等)、脂環族ジオール(例えば、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等)等が挙げられる。また、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、キシリレングリコール等の芳香族ジオールを併用してもよい。これらのジオール成分は、単独又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいジオール成分には、C2-10アルキレングリコール(エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等の直鎖状アルキレングリコール)等が含まれる。ジオール成分中には、例えば、50モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上のC2-10アルキレングリコールが含まれているのが好ましい。さらに、必要に応じて、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等のポリオール又はそのエステル形成性誘導体を併用してもよい。このような多官能性化合物を併用すると、分岐状のポリエステル樹脂を得ることもできる。
【0019】
ポリエステル系樹脂としては、上述のジカルボン酸成分とジオール成分を2種以上組み合せたコポリエステルや、さらに他の共重合可能なモノマー(以下、共重合性モノマーという場合がある)として、オキシカルボン酸成分、ラクトン成分等を組み合わせたコポリエステルも使用できる。
【0020】
オキシカルボン酸(又はオキシカルボン酸成分又はオキシカルボン酸類)には、例えば、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ヒドロキシフェニル酢酸、グリコール酸、オキシカプロン酸等のオキシカルボン酸又はこれらの誘導体等が含まれる。ラクトンには、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(例えば、ε-カプロラクトン等)等のC3-12ラクトン等が含まれる。
【0021】
なお、コポリエステルにおいて、共重合性モノマーの割合は、例えば、0.01モル%以上30モル%以下程度の範囲から選択でき、通常、1モル%以上30モル%以下程度、好ましくは3モル%以上25モル%以下程度、更に好ましくは5モル%以上20モル%以下程度である。
【0022】
また、ホモポリエステルとコポリエステルとを組み合わせて使用する場合、ホモポリエステルとコポリエステルとの割合は、共重合性モノマーの割合が、全単量体に対して0.1モル%以上30モル%以下(好ましくは1モル%以上25モル%以下程度、更に好ましくは5モル%以上25モル%以下程度)となる範囲であり、通常、ホモポリエステル/コポリエステル=99/1~1/99(質量比)、好ましくは95/5~5/95(質量比)、更に好ましくは90/10~10/90(質量比)程度の範囲から選択できる。
【0023】
好ましいポリエステル系樹脂には、アルキレンテレフタレート、アルキレンナフタレート等のアルキレンアリレート単位を主成分(例えば、50~100モル%、好ましくは75~100モル%程度)とするホモポリエステル又はコポリエステル[例えば、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリC2-4アルキレンテレフタレート)、1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリアルキレンナフタレート(例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリC2-4アルキレンナフタレート)等のホモポリエステル;アルキレンテレフタレート及び/又はアルキレンナフタレート単位を主成分(例えば、50モル%以上)として含有するコポリエステル]が含まれ、これらを1種単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0024】
特に好ましいポリエステル系樹脂は、エチレンテレフタレート、トリメチレンテレフタレート、テトラメチレンテレフタレート、テトラメチレン-2,6-ナフタレート等のC2-4アルキレンアリレート単位を80モル%以上(特に90モル%以上)含むホモポリエステル樹脂又はコポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリテトラメチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート樹脂等)である。
【0025】
これらの内、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましく、特にポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
【0026】
本発明のポリエステル系樹脂の固有粘度IVは、1.2dL/g以下であり、さらに0.6dL/g以上であることが好ましく、0.7~1.0dL/gであることが好ましく、0.7~0.9であることが更に好ましい。固有粘度が0.6よりも低いと加水分解による強度や靭性の低下が大きく、また1.2dL/gを超えると混練時に、熱可塑性樹脂Cで被覆した無機フィラーBの熱可塑性樹脂Cを剥がしてしまい、効果を損なう場合がある。異なる固有粘度を有するポリエステル系樹脂をブレンドして、固有粘度を調整することもできる。
【0027】
例えば、固有粘度1.0dL/gのポリエステル系樹脂と固有粘度0.7dL/gのポリエステル系樹脂とをブレンドすることにより、固有粘度0.9dL/gのポリエステル系樹脂を調製することができる。なお、ポリエステル系樹脂の固有粘度(IV)は、o-クロロフェノール中で温度35℃の条件で測定することができる。
【0028】
ポリエステル系樹脂のカルボン酸末端濃度は、0.5~30meq/kgであることが好ましく、さらに0.5~25meq/kgであることが好ましく、0.5~12meq/kgであることが更に好ましい。カルボン酸末端濃度をこの範囲とするためには、ポリエステル系樹脂の末端基が少ない高分子量のポリマーを使用しても良いし、固有粘度IV=0.1~0.8dL/g程度の溶融重合品を固相重合により高分子化して使用しても良い。
【0029】
固相重合を用いる場合、処理温度が高いと末端カルボキシル基が増加するため低温で長時間処理することが望ましく、通常減圧下もしくは不活性ガス雰囲気で例えば120~220℃、好ましくは140~200℃、更に好ましくは150~190℃程度で調整できる。
【0030】
なお、カルボン酸末端濃度は、重合により得られたポリエステル系樹脂ペレットの粉砕試料を、ベンジルアルコール中215℃で10分間溶解後、0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液にて滴定することにより求めた。
【0031】
<ポリアミド系樹脂>
ポリアミド系樹脂には、ジアミンとジカルボン酸とから誘導されるポリアミド;アミノカルボン酸、必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸を併用して得られるポリアミド;ラクタム、必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸との併用により誘導されたポリアミドが含まれる。ポリアミドには、少なくとも2種の異なったポリアミド形成成分により形成されるコポリアミドも含まれる。
【0032】
ジアミンとしては、例えば、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン;フェニレンジアミン、メタキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン;ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタンなどの脂環族ジアミンが挙げられる。これらのジアミンは1種又は2種以上使用できる。
【0033】
ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸やテレフタル酸、ナフタレンカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸やシクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、オクタデカン二酸などのC4-20脂肪族ジカルボン酸;二量体化脂肪酸(ダイマー酸)などが挙げられる。
【0034】
アミノカルボン酸としては、例えば、アミノヘプタン酸、アミノノナン酸、アミノウンデカン酸などのC4-20アミノカルボン酸が例示される。アミノカルボン酸も一種又は二種以上使用できるラクタムとしては、例えば、ブチロラクタム、ビバロラクタム、カプロラクタム、カプリルラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、ドデカラクタムなどのC4-20ラクタムが挙げられる。これらのラクタムも1種又は2種以上組み合せて使用できる。
【0035】
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン46、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12などの脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸および/又はイソフタル酸)と脂肪族ジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン)とから得られるポリアミド、脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸)と芳香族ジアミン(例えば、メタキシリレンジアミン)とから得られるポリアミド、芳香族および脂肪族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸とアジピン酸)と脂肪族ジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン)とから得られるポリアミドなどが挙げられる。
【0036】
これらのポリアミド系樹脂は単独で又は混合して使用できる。好ましいポリアミドには、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ジアミン成分およびジカルボン酸成分のうち、少なくとも一方の成分が芳香族化合物であるポリアミドなどが含まれる。
【0037】
<ポリアリーレンサルファイド系樹脂>
ポリアリーレンサルファイド系樹脂は、主として、繰返し単位として-(Ar-S)-(但しArはアリーレン基)で構成された高分子化合物であり、本実施形態では一般的に知られている分子構造のポリアリーレンサルファイド樹脂を使用することができる。
【0038】
上記アリーレン基としては、例えば、p-フェニレン基、m-フェニレン基、o-フェニレン基、置換フェニレン基、p,p’-ジフェニレンスルフォン基、p,p’-ビフェニレン基、p,p’-ジフェニレンエーテル基、p,p’-ジフェニレンカルボニル基、ナフタレン基などが挙げられる。PAS樹脂は、上記繰返し単位のみからなるホモポリマーでもよいし、下記の異種繰返し単位を含んだコポリマーが加工性等の点から好ましい場合もある。
【0039】
ホモポリマーとしては、アリーレン基としてp-フェニレン基を用いた、p-フェニレンサルファイド基を繰返し単位とするポリフェニレンサルファイド樹脂(PAS樹脂ともいう)が好ましく用いられる。また、コポリマーとしては、前記のアリーレン基からなるアリーレンサルファイド基の中で、相異なる2種以上の組み合わせが使用できるが、中でもp-フェニレンサルファイド基とm-フェニレンサルファイド基を含む組み合わせが特に好ましく用いられる。この中で、p-フェニレンサルファイド基を70モル%以上、好ましくは80モル%以上含むものが、耐熱性、成形性、機械的特性等の物性上の点から適当である。
【0040】
また、これらのPAS樹脂の中で、2官能性ハロゲン芳香族化合物を主体とするモノマーから縮重合によって得られる実質的に直鎖状構造の高分子量ポリマーが、特に好ましく使用できる。尚、本実施形態に用いるポリアリーレンサルファイド系樹脂は、異なる2種類以上の分子量のポリフェニレンサルファイド樹脂を混合して用いてもよい。
【0041】
なお、直鎖状構造のポリフェニレンサルファイド樹脂以外にも、縮重合させるときに、3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物等のモノマーを少量用いて、部分的に分岐構造または架橋構造を形成させたポリマーや、低分子量の直鎖状構造ポリマーを酸素等の存在下、高温で加熱して酸化架橋または熱架橋により溶融粘度を上昇させ、成形加工性を改良したポリマーも挙げられる。
【0042】
<無機フィラーB>
本発明の成形品に含有させる無機フィラーBとしては、繊維状充填剤、板状充填剤、又は粉粒状充填剤を挙げることができる。
【0043】
繊維状充填剤としては、例えば、ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ-アルミナ繊維、アルミニウムシリケート繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、炭化ケイ素繊維、ウィスカー(炭化ケイ素、アルミナ、窒化珪素等のウィスカー)等の無機質繊維を挙げることができる。
【0044】
板状充填剤としては、例えば、タルク、マイカ、ガラスフレーク、グラファイト等を挙げることができる。粉粒状充填剤としては、例えば、ガラスビーズ、ガラス粉、ミルドファイバー(例えば、ミルドガラスファイバー等)、ウォラストナイト(珪灰石)等を挙げることができる。
【0045】
繊維状充填剤の平均径は、例えば、1μm~30μm(好ましくは5μm~20μm、さらに好ましくは10~15μm)程度、平均長は、例えば、100μm~5mm(好ましくは300μm~4mm、さらに好ましくは500μm~3.5mm)程度であってもよい。
【0046】
また、板状又は粉粒状充填剤の平均一次粒子径は、例えば、0.1μm~500μm、好ましくは1μm~100μm程度とすることができる。これらの無機充填剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0047】
なお、繊維状充填剤の平均径及び平均長、並びに板状又は粉粒状充填剤の平均一次粒子径は、樹脂組成物中に配合される前の繊維状充填材、板状又は粉粒状充填剤について、CCDカメラで撮影した画像を解析し、加重平均により算出した値である。これらは例えば、株式会社セイシン企業製、動的画像解析法/粒子(状態)分析計PITA-3等を用いて算出することができる。なお、板状又は粉状充填材のアスペクト比は、特に限定されず、例えば、1以上10以下とすることができる。
【0048】
<熱可塑性樹脂C>
本発明の熱可塑性樹脂Cは、該熱可塑性樹脂A以外であって無機フィラーBを被覆することができれば特に制限はない。例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1-)ブテン樹脂、及びポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリイソブチレン、エラストマー等が挙げられる。
【0049】
エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、シリコーン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ウレタン系エラストマー等が挙げられる。
【0050】
オレフィン系エラストマーは、エチレン及び/又はプロピレンを成分として含む共重合体であり、具体的にはエチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられ、これらに限定されるものではないが、特に無機フィラーとの反応性基を有する、エポキシ基含有オレフィン系共重合体であることが最も好ましい。
【0051】
更に、オレフィン系エラストマーの中でも、エチレン-不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体又はα-オレフィンとα,β-不飽和酸のグリシジルエステルから成るオレフィン系共重合体に、下記一般式(1)で示される繰返し単位で構成された重合体又は共重合体の一種又は二種以上が分岐又は架橋構造的に化学結合したグラフト共重合体も利用することができる。
【0052】
【化1】
(但し、Rは水素又は低級アルキル基、Xは-COOCH、-COOC、-COOC、-COOCHCH(C)C、-C、-CNから選ばれた一種又は二種以上の基を示す)
【0053】
α-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン等のC2~4のオレフィンを使用することができ、エチレン、プロピレンであることが好ましい。α,β-不飽和酸グリシジルエステルとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートを使用することが好ましい。その他、C1~12の(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル等の第3成分を共重合させてもよい。
【0054】
オレフィン及びグリシジルエステルは、共重合体中それぞれ30~90モル%。70~10モル%の範囲で調整することができ、第3成分は0~30モル%の範囲を含有させることができる。
【0055】
本発明では特に、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体(以下EGMAともいう)であることが好ましい。エチレンに対するグリシジルメタクリレートの割合は特に制限されるものではないが、共重合体の変性部位を各単量体質量に換算し、共重合体100質量部に対する割合として1~30質量部、好ましくは3~20質量部、更に好ましくは8~15質量部の範囲が好ましい。
【0056】
スチレン系エラストマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル単量体の単独又は共重合体で構成されたハードセグメントと、α-オレフィン(エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどのα-C2-12オレフィンなど)、ジエン系単量体(ブタジエン、イソプレンなど)などから選択された少なくとも一種の単量体の単独又は共重合体で構成されたソフトセグメントとのブロック又はグラフト共重合体(又はその水素添加物)などが例示できる。
【0057】
また、前記スチレン系エラストマーは、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸などの酸又は酸無水物で変性された酸変性エラストマー、グリシジル基やエポキシ基を有する共重合性モノマー(グリシジル(メタ)アクリレートなど)を用いたり、エラストマーの不飽和結合をエポキシ化して得られたエポキシ変性エラストマーなどの反応性官能基を有するエラストマーであってもよい。
【0058】
代表的なスチレン系エラストマーとしては、スチレン-ジエン-スチレンブロック共重合体[スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)など]、水素添加ブロック共重合体[スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(又は水添(スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体))(SEBS)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(又は水添(スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体))(SEPS)、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、ランダムスチレン-ブタジエン共重合体の水素添加重合体など]、これらの共重合体に官能基(エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基など)が導入された変性共重合体[ジエンの不飽和結合がエポキシ化されたエポキシ化スチレン-ジエン共重合体(エポキシ化スチレン-ジエン-スチレンブロック共重合体又はその水素添加重合体など)など]が例示できる。
【0059】
シリコーン系エラストマーとしては、オルガノポリシロキサンを主成分として含むエラストマーであり、ポリジメチルシロキサン系、ポリメチルフェニルシロキサン系、およびポリジフェニルシロキサン系に分けられる。オルガノポリシロキサンの一部がビニル基、アルコキシ基等で変性されていてもよい。シリコーンエラストマーの具体例としては、シリコーンゴム(ポリ(ジメチルシロキサン)およびポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルビニルシロキサン))が挙げられる。
【0060】
商業的に入手可能なシリコーンエラストマーとしては、KEシリーズ(信越化学社製)、SEシリーズ、CYシリーズおよびSHシリーズ(以上、東レダウコーニングシリコーン社製)がある。
【0061】
ポリエステル系エラストマーとしては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートといった芳香族ポリエステルをハードセグメントとし、ポリエチレングリコールやポリテトラメチレングリコールといったポリエーテル、またはポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリカプロラクトンといった脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするブロック共重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0062】
ポリアミド系エラストマーとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などをハードセグメントとし、ポリエーテルまたは脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするブロック共重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0063】
ウレタン系エラストマーとしては、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートとエチレングリコール、テトラメチレングリコール等のグリコールとを反応させることによって得られるポリウレタンをハードセグメントとし、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルもしくはポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするブロック共重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0064】
本発明の無機フィラーBは、その表面が熱可塑性樹脂Cによって被覆されていることを特徴とする。被覆されているか否かは、成形品の断面をSEMで観察する、もしくは以下の方法(以下、被覆Bともいう)によって知ることができる。
【0065】
熱可塑性樹脂Cによって被覆されている無機フィラーBは、熱可塑性樹脂Cと無機フィラーBを溶融混錬する被覆処理工程によって製造することができる。この熱可塑性樹脂Cを表面に被覆処理した無機フィラーBを、熱可塑性樹脂Aに溶融混練する。熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Cの両方を溶解できる溶剤にて、被覆に関与していない熱可塑性樹脂Aと過剰の熱可塑性樹脂Cを取り除く。その後、被覆処理した無機フィラーBをFT-IRで測定する。
【0066】
被覆処理していない無機フィラーと比較し、FT-IRの熱可塑性樹脂C由来の吸収が観測された場合、無機フィラーBが熱可塑性樹脂Cによって被覆されているということが分かる。
【0067】
成形品用の樹脂組成物は、無機フィラーの表面に熱可塑性樹脂Cを被覆させる製造工程を経たのち、熱可塑性樹脂Aを添加し、さらに溶融混錬することによって製造することができる。
【0068】
例えば、まず押出機にて無機フィラーBと熱可塑性樹脂Cを溶融混練し、ペレット化してマスターバッチ化した後、ポリエステル熱可塑性樹脂Aと前記マスターバッチを再び溶融混練してペレット化したものを、射出成形機により作成しても良いし、前記マスターバッチと熱可塑性樹脂Aを任意の比率でブレンド後、直接射出成形機に投入し作成しても良い。
【0069】
また、マスターバッチ化しない方法、例えば無機フィラーBと熱可塑性樹脂Cを押出機に投入し溶融混練した後、熱可塑性樹脂Aを投入して溶融混練し、ペレット化後、射出成型を行っても良い。この場合、いわゆるタンデム型押出機を用いて混練しても良い。タンデム型押出機は各バレルでの使用スクリュー数、混練パターン、混練温度などを細かく設定することが可能である。このような方法を用いて、熱可塑性樹脂Cにより被覆されている無機フィラーBが、熱可塑性樹脂A中に分散された状態の成形品を得ることができる。
【0070】
熱可塑性樹脂Cは、被覆させた熱可塑性樹脂Cに追加して熱可塑性樹脂Aとの溶融混錬時に添加してもよい。
【0071】
本発明において、無機フィラーBは、熱可塑性樹脂A100質量部に対して20~200質量部含むことが好ましく、30~160質量部含むことがより好ましい。
【0072】
本発明においては、熱可塑性樹脂Cで表面を被覆された無機フィラーB以外に、表面を被覆しない無機フィラーBNを配合することもできる。配合量は、所望の機械的物性により適宜選択されるが、熱可塑性樹脂A100質量部に対して0~200質量部含ませることが好ましい。
【0073】
本発明について熱可塑性樹脂Cは無機フィラーBと親和性を有することが好ましい。ここで親和性とは、樹脂組成物の成形時等の溶融混練時に熱可塑性樹脂Cが無機フィラーBの表面から剥離しない程度を言う。
【0074】
例えば熱可塑性樹脂Cが無機フィラーBと反応性を有する官能基を含むものであったり、無機フィラーBを表面処理剤で処理し、無機フィラーBの疎水性を減少させたり、熱可塑性樹脂Cの官能基との反応や水素結合を促進させるものであってもよい。また、熱可塑性樹脂Aよりも高粘度の熱可塑性樹脂Cを選択し、熱可塑性樹脂Aとの溶融混練時に、熱可塑性樹脂Cのせん断組成変形を減じるものであっても良い。
【0075】
<高流動化剤D>
本発明の高流動化剤Dは、熱可塑性樹脂組成物の高流動化する材料であれば制限はないが、3つ以上の官能基を有する化合物H、環状オリゴマーJ、水酸基価が200以上600以下のグリセリン脂肪酸エステルKおよびハイパーブランチポリマーWから選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0076】
≪3つ以上の官能基を有する化合物H≫
本発明で用いる3つ以上の官能基を有する化合物H(以下、化合物Hともいう)は、本発明の熱可塑性樹脂の流動性を向上させるために必要な成分である。化合物Hとしては、分子中に3つ以上の官能基を有する多官能性化合物であれば限定はされず、低分子化合物であってもよいし、高分子量の重合体であってもよい。
【0077】
このような化合物Hの官能基とは水酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、イソシアネート基、エステル基、アミド基から選択された少なくとも1種類以上であることが好ましく、化合物Hはこれらの中から同一あるいは異なる3つ以上の官能基を有していることが好ましい。
【0078】
また、化合物Hとしては、3官能性化合物、4官能性化合物および5官能性化合物などの3つ以上の官能基を有する化合物であれば、いずれでもよいが、流動性および機械物性が優れるという点で、3官能性化合物または4官能性化合物であることがより好ましい。
【0079】
3つ以上の官能基を有する化合物Hの好ましい例として、官能基が水酸基の場合は、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、1,2,6-へキサントリオール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、トリエタノールアミン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、スクロース、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン、1,2,4-トリヒドロキシベンゼンなどの炭素数3~24の多価アルコールやポリビニルアルコールなどのポリマーが挙げられる。
【0080】
なかでも、流動性、機械物性の点から分岐構造を有するグリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが好ましい。
【0081】
3つ以上の官能基を有する化合物Hの好ましい例として、官能基がカルボキシル基の場合は、プロパン-1,2,3-トリカルボン酸、2-メチルプロパン-1,2,3-トリスカルボン酸、ブタン-1,2,4-トリカルボン酸、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸、ベンゼンペンタカルボン酸、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸、シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸、ナフタレン-1,2,4-トリカルボン酸、ナフタレン-2,5,7-トリカルボン酸、ピリジン-2,4,6-トリカルボン酸、ナフタレン-1,2,7,8-テトラカルボン酸、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸などの多価カルボン酸やアクリル酸、メタクリル酸などのポリマーが挙げられ、それらの酸無水物も使用できる。
【0082】
なかでも、流動性の点から分岐構造を有するプロパン-1,2,3-トリカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸およびその酸無水物が好ましい。
【0083】
3つ以上の官能基を有する化合物Hの官能基がアミノ基の場合は、3つ以上の置換基のうち少なくとも1つは1級または2級アミンであることが好ましく、いずれも1級または2級アミンであることがさらに好ましく、いずれも1級アミンであることが特に好ましい。
【0084】
3つ以上の官能基を有する化合物Hの好ましい例として、官能基がアミノ基の場合は、1,2,3-トリアミノプロパン、1,2,3-トリアミノ-2-メチルプロパン、1,2,4-トリアミノブタン、1,2,3,4-テトラミノブタン、1,3,5-トリアミノシクロヘキサン、1,2,4-トリアミノシクロヘキサン、1,2,3-トリアミノシクロヘキサン、1,2,4,5-テトラミノシクロヘキサン、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,2,4-トリアミノベンゼン、1,2,3-トリアミノベンゼン、1,2,4,5-テトラミノベンゼン、1,2,4-トリアミノナフタレン、2,5,7-トリアミノナフタレン、2,4,6-トリアミノピリジン、1,2,7,8-テトラミノナフタレン、1,4,5,8-テトラミノナフタレン等が挙げられる。
なかでも、流動性の点から分岐構造を有する1,2,3-トリアミノプロパン、1,3,5-トリアミノシクロヘキサン、1,3,5-トリアミノベンゼンが好ましい。
【0085】
3つ以上の官能基を有する化合物Hの好ましい例として、官能基がグリシジル基の場合は、トリグリシジルトリアゾリジン-3,5-ジオン、トリグリシジルイソシアヌレートなどの単量体や、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)-g-ポリメチルメタクリレート、グリシジル基含有アクリルポリマー、グリシジル基含有アクリル/スチレンポリマーなどのポリマーが挙げられる。
【0086】
3つ以上の官能基を有する化合物Hの好ましい例として、官能基がイソシアネート基の場合は、ノナントリイソシアネート(例えば4-イソシアナトメチル-1,8-オクタンジイソシアネート(TIN))、デカントリイソシアネート、ウンデカントリイソシアネート、ドデカントリイソシアネートなどが挙げられる。
【0087】
3つ以上の官能基を有する化合物Hの好ましい例として、官能基がエステル基の場合は、上記3つ以上水酸基を有する化合物の脂肪族酸エステルまたは芳香族酸エステルや、上記3つ以上カルボキシル基を有する化合物のエステル誘導体などが挙げられる。
【0088】
3つ以上の官能基を有する化合物Hの好ましい例として、官能基がアミド基の場合は、上記3つ以上カルボキシル基を有する化合物のアミド誘導体などが挙げられる。
【0089】
また、流動性、機械物性の点から、3つ以上の官能基を有する化合物Hがアルキレンオキシド単位を一つ以上含むことが好ましい。アルキレンオキシド単位の好ましい例として炭素数1~4である脂肪族アルキレンオキシド単位が有効であり、具体例としてはメチレンオキシド単位、エチレンオキシド単位、トリメチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位、テトラメチレンオキシド単位、1,2-ブチレンオキシド単位、2,3-ブチレンオキシド単位若しくはイソブチレンオキシド単位である。
【0090】
本発明においては、流動性、機械物性、リサイクル性または生産性に優れるという点で、アルキレンオキシド単位としてエチレンオキシド単位又はプロピレンオキシド単位が含まれる化合物を使用するのが好ましく、耐加水分解性、耐ブリードアウト性に優れるという点で、プロピレンオキシド単位が含まれる化合物を使用することが特に好ましい。
【0091】
本発明で用いる3つ以上の官能基を有する化合物Hに含まれるアルキレンオキシド単位数については、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位が0.1~20であることが好ましく、0.5~10であることがより好ましく、1~5であることがさらに好ましい。
【0092】
アルキレンオキシド単位を一つ以上含む3つ以上の官能基を有する化合物Hの好ましい例として、官能基が水酸基の場合は、(ポリ)オキシメチレングリセリン、(ポリ)オキシエチレングリセリン、(ポリ)オキシトリメチレングリセリン、(ポリ)オキシプロピレングリセリン、(ポリ)オキシエチレン-(ポリ)オキシプロピレングリセリン、(ポリ)オキシテトラメチレングリセリン、(ポリ)オキシメチレンジグリセリン、(ポリ)オキシエチレンジグリセリン、(ポリ)オキシトリメチレンジグリセリン、(ポリ)オキシプロピレンジグリセリン、(ポリ)オキシメチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシトリメチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレン-(ポリ)オキシプロピレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシテトラメチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシメチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシトリメチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシメチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシトリメチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレン-(ポリ)オキシプロピレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシテトラメチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシメチレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシトリメチレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシメチレングルコース、(ポリ)オキシエチレングルコース、(ポリ)オキシトリメチレングルコース、(ポリ)オキシプロピレングルコース、(ポリ)オキシエチレン-(ポリ)オキシプロピレングルコース、(ポリ)オキシテトラメチレングルコース等を挙げることができる。
【0093】
官能基がカルボン酸の場合は、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むプロパン-1,2,3-トリカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むプロパン-1,2,3-トリカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むプロパン-1,2,3-トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むプロパン-1,2,3-トリカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むプロパン-1,2,3-トリカルボン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む2-メチルプロパン-1,2,3-トリスカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む2-メチルプロパン-1,2,3-トリスカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む2-メチルプロパン-1,2,3-トリスカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む2-メチルプロパン-1,2,3-トリスカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む2-メチルプロパン-1,2,3-トリスカルボン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むブタン-1,2,4-トリカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むブタン-1,2,4-トリカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むブタン-1,2,4-トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むブタン-1,2,4-トリカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むブタン-1,2,4-トリカルボン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸等を挙げることができる。
【0094】
官能基がアミノ基の場合は(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,3-トリアミノプロパン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,3-トリアミノプロパン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,3-トリアミノプロパン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,3-トリアミノプロパン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,3-トリアミノプロパン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,3-トリアミノ-2-メチルプロパン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,3-トリアミノ-2-メチルプロパン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,3-トリアミノ-2-メチルプロパン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,3-トリアミノ-2-メチルプロパン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,3-トリアミノ-2-メチルプロパン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,4-トリアミノブタン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,4-トリアミノブタン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,4-トリアミノブタン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,4-トリアミノブタン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,4-トリアミノブタン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,3,4-テトラミノブタン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,3,4-テトラミノブタン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,3,4-テトラミノブタン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,3,4-テトラミノブタン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,3,4-テトラミノブタン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,3,5-トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,3,5-トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,3,5-トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,3,5-トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,3,5-トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,4-トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,4-トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,4-トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,4-トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,4-トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,4,5-テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,4,5-テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,4,5-テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,4,5-テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,4,5-テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,3,5-トリアミノベンゼン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,3,5-トリアミノベンゼン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,3,5-トリアミノベンゼン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,3,5-トリアミノベンゼン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,3,5-トリアミノベンゼン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,4-トリアミノベンゼン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,4-トリアミノベンゼン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,4-トリアミノベンゼン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,4-トリアミノベンゼン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,4-トリアミノベンゼン等を挙げることができ、トリメチロールプロパントリス[ポリ(プロピレングリコール)アミン]エーテルなども好適である。
【0095】
官能基がエステル基の場合は、上記アルキレンオキシド単位を含む3つ以上水酸基を有する化合物の脂肪族酸エステルまたは芳香族酸エステルや、上記アルキレンオキシド単位を含む3つ以上カルボキシル基を有する化合物のエステル誘導体などが挙げられる。
【0096】
官能基がアミド基の場合は、上記アルキレンオキシド単位を含む3つ以上カルボキシル基を有する化合物のアミド誘導体などが挙げられる。
【0097】
流動性の点からアルキレンオキシド単位を一つ以上含む3つ以上の官能基を有する化合物Hの特に好ましい例として、官能基が水酸基の場合は、(ポリ)オキシメチレングリセリン、(ポリ)オキシプロピレングリセリン、(ポリ)オキシエチレンジグリセリン、(ポリ)オキシエチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレンジペンタエリスリトールが挙げられ、官能基がカルボン酸の場合は、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むプロパン-1,2,3-トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むプロパン-1,2,3-トリカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むシクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸が挙げられ、官能基がアミノ基の場合は(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,3-トリアミノプロパン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,3-トリアミノプロパン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,3,5-トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,3,5-トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,3,5-トリアミノベンゼン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,3,5-トリアミノベンゼン、トリメチロールプロパントリス[ポリ(プロピレングリコール)アミン]エーテルが挙げられる。
【0098】
本発明で用いる、3つ以上の官能基を有する化合物Hの粘度は25℃において15000m・Pa以下であることが好ましく、流動性、機械物性の点から5000m・Pa以下であることがさらに好ましく、2000m・Pa以下であることが特に好ましい。
【0099】
本発明で用いる3つ以上の官能基を有する化合物Hの分子量または重量平均分子量(Mw)は、流動性の点で、50~10000の範囲であることが好ましく、150~8000の範囲であることがより好ましく、200~3000の範囲であることがさらに好ましい。
【0100】
本発明において、3つ以上の官能基を有する化合物HのMwは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の値である。
【0101】
本発明で用いる3つ以上の官能基を有する化合物Hの含水分は1%以下であることが好ましい。より好ましくは含水分0.5%以下であり、さらに好ましくは0.1%以下である。化合物Hの含水分の下限は特にない。含水分が1%よりも高いと機械物性の低下を引き起こすため好ましくない。
【0102】
本発明で用いる3つ以上の官能基を有する化合物Hは、金属成分を含有するものであってもよく、例えば、アルキレンオキシド単位を導入するために用いるアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む触媒などを含有するものであってもよい。
【0103】
本発明における、3つ以上の官能基を有する化合物Hの配合量は、流動性、機械特性、耐加水分解性および耐ブリードアウト性の点で、熱可塑性樹脂A100質量部に対して化合物H0.01~5質量部の範囲であることが好ましく、流動性と機械物性の点から、0.01~3質量部の範囲で配合することがより好ましく、0.01~1質量部の範囲で配合することがさらに好ましく、0.1~1質量部の範囲で配合することが特に好ましい。
【0104】
本発明においては、3つ以上の官能基を有する化合物Hが少なくとも1つ以上の水酸基、あるいはカルボキシル基を有していることが流動性の点から好ましく、化合物Hが3つ以上の水酸基、カルボキシル基、あるいはアミノ基を有していることがより好ましく、化合物Hが3つ以上水酸基を有していることがさらに好ましい。
【0105】
≪環状オリゴマーJ≫
本発明の環状オリゴマーJとしては、環状ポリエステルオリゴマーを挙げることができる。
【0106】
環状ポリエステルオリゴマー(以下、環状ポリエステル、環状エステル系オリゴマーともいう)は、ポリエステル骨格を有する環状ポリマーであればよい。ポリエステル骨格(又はポリエステル骨格を構成するポリエステル)としては、芳香族ポリエステル、脂環族ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのいずれであってもよい。ポリエステル骨格は、通常、芳香族ポリエステルであってもよい。
【0107】
代表的な環状ポリエステルオリゴマーには、下記式で表される構造単位を有する化合物(特に環状芳香族ポリエステルオリゴマー)が含まれる。
【0108】
【化2】
【0109】
(式中、Rはアルキレン基又は二価の脂環式基、(A)は二価の芳香族基又は脂環式基、nは1以上の整数を示す)
【0110】
上記式において、アルキレン基Rとしては、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基などの炭素数2~12アルキレン基(特に直鎖状炭素数2~12アルキレン基)、好ましくは炭素数2~8アルキレン基、さらに好ましくは炭素数2~4アルキレン基などが挙げられる。
【0111】
また、上記式において、二価の脂環式基Rとしては、シクロアルキレン基R(例えば、1,4-シクロヘキシレン基などの炭素数5~10シクロアルキレン基)、シクロアルカンジアルキレン基(例えば、1,4-シクロヘキサンジメチレン基などの炭素数5~10シクロアルカン-ジ炭素数1~4アルキレン基など)などが挙げられる。
【0112】
また、nは、1以上であればよく、例えば、1~10、好ましくは1~5、さらに好ましくは1~3、特に1であってもよい。なお、nが2以上であるとき、複数のRは同一又は異なるアルキレン基又はシクロアルキレン基で構成してもよい。
【0113】
また、上記式において、芳香族基(A)としては、フェニレン基(例えば、m-フェニレン基、p-フェニレン基など)、ナフチレン基(例えば、2,6-ナフチレン基など)などの炭素数6~12アリーレン基、好ましくは炭素数6~10アリーレン基、さらに好ましくは炭素数6~8アリーレン基などが挙げられる。また、脂環式基(A)としては、例えば、シクロアルキレン基(例えば、1,4-シクロヘキシレン基などの炭素数5~10シクロアルキレン基)などが挙げられる。
【0114】
好ましい環状ポリエステルオリゴマーには、環状ポリアルキレンアリレート、例えば、環状ポリエチレンテレフタレートオリゴマー、環状ポリプロピレンテレフタレートオリゴマー、環状ポリブチレンテレフタレート(ポリテトラメチレンテレフタレート)オリゴマーなどの環状ポリ炭素数2-6アルキレンテレフタレート;環状ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなど、が含まれ、特に、環状ポリアルキレンテレフタレートオリゴマー、特に、環状ポリブチレンテレフタレートなどの環状ポリ炭素数2~4アルキレンテレフタレートが好ましい。
【0115】
環状ポリエステルオリゴマーの平均重合度は、例えば、2~30、好ましくは3~25、さらに好ましくは5~20(例えば、6~18)程度であってもよく、通常8~15程度であってもよい。
【0116】
特に、環状ポリエステルオリゴマーは、主要部分(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーにおいてピークを示す領域)が重合度12までの重合度を有するオリゴマーであり、各種の重合度を有する環状オリゴマーの混合物であってもよい。
【0117】
環状ポリエステルオリゴマーの融点は、例えば、100~250℃、好ましくは110~220℃、さらに好ましくは120~210℃(例えば、130~200℃)程度であってもよい。
【0118】
なお、環状オリゴマーJは、公知の方法、例えば、対応するジオールおよびジカルボン酸ハライド(塩化テレフタロイルなど)を立体障害のないアミン存在下で縮合させる方法;特開平8-225633号公報に記載の方法(ビス-ヒドロキシアルキル末端ジエステル又はオリゴマーを高沸点溶媒及びエステル化に接触させる方法);特開平8-19962号公報(特許第3426064号)に記載の方法;特表2004-507599号公報に記載の方法;特開2002-317041号公報に記載の方法などを利用して製造したものを使用してもよく、市販品を使用することもできる。
【0119】
例えば、環状ポリエステルオリゴマー(環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマー)は、サイクリクス・コーポレイション(Cyclics Corporation)社製、商品名:CBTなどとして入手可能である。
【0120】
環状オリゴマーJの配合量は、熱可塑性樹脂A100質量部に対して、0.01~20質量部、好ましくは0.05~15質量部、さらに好ましくは0.1~12質量部であり、通常0.01~10質量部程度である。
【0121】
≪水酸基価が200以上600以下のグリセリン脂肪酸エステルK≫
本発明の水酸基価が200以上600以下のグリセリン脂肪酸エステルK(以下、グリセリン脂肪酸エステルKともいう)は、グリセリン及び/又はその脱水縮合物と炭素数12以上の脂肪酸とからなるエステルである。
【0122】
エステルを構成する炭素数12以上の脂肪酸としては、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸等が挙げられ、好ましくは炭素数12~32の脂肪酸、特に好ましくは炭素数12~22の脂肪酸が使用され、ラウリン酸、ステアリン酸又はベヘニン酸が特に好ましい。
【0123】
本発明で用いられるグリセリン脂肪酸エステルKは、それ自体公知の方法で製造することができる。本発明で用いられるグリセリン脂肪酸エステルKは、後記の方法により測定した水酸基価が200以上になるようにエステル化を調整したものであり、好ましくは250以上の水酸基価を有するものである。水酸基価が200未満では流動性の改良効果が少なく好ましくない。
【0124】
好ましいエステルを例示すると、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、ジグリセリンモノステアレート、トリグリセリンモノステアレート、テトラグリセリンステアリン酸部分エステル、デカグリセリンラウリン酸部分エステル等が挙げられる。
【0125】
グリセリン脂肪酸エステルKの配合量は、熱可塑性樹脂A100質量部に対して0.05~10質量部、好ましくは0.5~5質量部である。
【0126】
水酸基価については、日本油化学会2.3.6.2-1996 ヒドロキシル価(ピリジン-無水酢酸法)により測定した。
【0127】
≪ハイパーブランチポリマーW≫
ハイパーブランチポリマーWとしては、ハイパーブランチポリエステルが挙げられる。本発明でいうハイパーブランチポリマーとは、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を有する架橋していない高分子であり、デンドリマーに類似した中心分子から出発するが、しかし分岐の鎖長は異なった長さで構成されていてよい。
【0128】
これらは他方では、線状の構造を有し、官能性側基を有していてもよく、あるいはまた両極端の組み合わせとして線状の分子部分と分枝鎖状の分子部分とを有していてもよい。デンドリマーおよびハイパーブランチポリマーの定義については、P.J.Flory、J.Am.Chem.Soc.1952、74、2718およびH.Frey等、Chem.Eur.J.2000、6、No.14、2499も参照することができる。
【0129】
ハイパーブランチポリマーWは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により、PMMA標準、展開剤ジメチルアセトアミドにより測定して、好ましくは300~30000、特に400~25000、および特には500~20000g/モルの数平均分子量Mnを有する。
【0130】
水酸価として、DIN53240により0~600、好ましく1~500、特に20~500mg KOH/gポリマーのOH価を有する。酸価として、好ましくは0~600、好ましくは1~500、および特に2~500mg KOH/gポリマーのCOOH価を有する。
【0131】
Tgは、有利には-50℃~140℃、および特に-50~100℃(DSCを用いて、DIN53765による)である。
【0132】
特に、0より大、好ましくは0.1より大、および特に0.5より大のOH価もしくはCOOH価を有するハイパーブランチポリマーWが有利である。
【0133】
本発明によるハイパーブランチポリマーWはWO2006/018127に記載されている方法により得ることができる。
【0134】
ハイパーブランチポリマーWの配合量は、熱可塑性樹脂A100質量部に対して、0.01~20質量部、好ましくは0.05~15質量部、さらに好ましくは0.1~12質量部程度であり、通常0.01~10質量部である。
【0135】
<他の成分>
本発明においては、本発明の効果を害さない範囲で、上記各成分の他、一般に熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂に添加される公知の添加剤、即ち、バリ抑制剤、離型剤、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、染料や顔料等の着色剤、結晶化促進剤、結晶核剤、各種酸化防止剤、熱安定剤、耐候性安定剤、腐食防止剤等を配合してもよい。
【0136】
<成形品>
本発明の成形品は、以上説明した成形品用の樹脂組成物を成形してなる。本発明の成形品を作製する方法としては特に限定はなく、公知の方法を採用することができる。例えば、上記のような樹脂組成物を押出機に投入して溶融混練してペレット化し、このペレットを所定の金型を装備した射出成形機に投入し、射出成形することで製造することができる。
【0137】
特に2mm以下の薄肉部を有する成形品を成形する場合、金型への転写性の観点から有用である。薄肉部の0.1mm以上であることが好ましい。
【実施例0138】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお評価は、特に断りのない限り23℃50%RH雰囲気下で行った。
【0139】
<材料>
以下の材料を使用し、評価用試料を作製した。使用量(質量部)は、表1および表2に示す。
A1 ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT、固有粘度0.69dL/g、カルボン
酸末端濃度23meq/k):ポリプラスチックス社製
B1 マイカ:山口雲母工業所製ミカレット21PU
C1 エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体:住友化学社製ボンドファースト7L
1MC11 B1:C1=10:10(質量部)でブレンド後、溶融混練しマスターバッチ化したもの
BN1 ガラス繊維:日本電気硝子社製T187(直径13μm、長径3.0mm)
D グリセリンモノ12ヒドロキシステアレート(水酸基価420、理研ビタミン(株)製「リケマールHC-100」)
P 酸化防止剤:BASFジャパン社製 イルガノックス1010
Q 滑剤:三洋化成工業社製 サンワックス161-P
【0140】
<樹脂組成物の製造>
マスターバッチは、BとCを表1に記載の量をシリンダー温度190℃で溶融混練後、ペレタイズして作製した。
実施例1は、熱可塑性樹脂A1とペレタイズしたマスターバッチおよびその他の成分である酸化防止剤P、滑剤Q、高流動化剤Dとをホッパーから投入し、ガラス繊維BN1をサイドフィードから投入し、シリンダー温度260℃で混練後、射出成形し、ISO3167のISO多目的試験片 Type-1Aを作製した。
上記被覆確認法によって、無機フィラーB1が熱可塑性樹脂C1により被覆されていることを確認した。
【0141】
比較例1は、熱可塑性樹脂A1とペレタイズしたマスターバッチおよびその他の成分である酸化防止剤P、滑剤Qとをホッパーから投入し、ガラス繊維BN1をサイドフィードから投入し、シリンダー温度260℃で混練後、射出成形し、ISO3167のISO多目的試験片 Type-1Aを作製した。
上記被覆確認法によって、無機フィラーB1が熱可塑性樹脂C1により被覆されていることを確認した。
【0142】
比較例2は、熱可塑性樹脂A1、熱可塑性樹脂C1、無機フィラーB1およびその他の成分である酸化防止剤P、滑剤Qとをホッパーから投入し、ガラス繊維BN1をサイドフィードから投入し、シリンダー温度260℃で混練後、射出成形し、ISO3167のISO多目的試験片 Type-1Aを作製した。
【0143】
比較例3は、熱可塑性樹脂A1、無機フィラーB1およびその他の成分である酸化防止剤P、滑剤Qとをホッパーから投入、熱可塑性樹脂C1とガラス繊維BN1をサイドフィードから投入しシリンダー温度260℃で混練後、射出成形し、ISO3167のISO多目的試験片 Type-1Aを作製した。
【0144】
<評価>
<溶融粘度>
(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1B型を使用し、260℃で、内径1mm、長さ20mmのオリフィスを用いて、剪断速度1000/秒で、ISO11443に準拠して、樹脂組成物の溶融粘度を測定した。
<機械的物性>
ISO3167に準拠したISO多目的試験片 Type-1Aを用いて、ISO527-1,2に準拠し引張強さおよび引張破壊ひずみの値をオリエンテック社製万能試験機テンシロンRTC-1325Aを用いて測定した。結果を表1に示す。
<評価結果>
【0145】
【表1】
【0146】
【表2】
【0147】
表1、2に示すように、本発明は、機械的特性を維持しながら溶融粘度を減少させることができた成形品であることが判る。本発明では、流動性の向上した成形品の製造方法および熱可塑性樹の流動性向上方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0148】
A 熱可塑性樹脂
B 無機フィラー
BN 表面被覆しない無機フィラー(ガラス繊維)
C 被覆した熱可塑性樹脂

X COフィード
Y サイドフィード
1 ホッパー
2 モーター
3 スクリュー
4 シリンダー
5 ストランドバス
6 カッター
Pelet ペレット

図1
図2
図3
図4