(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041403
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/205 20060101AFI20230316BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20230316BHJP
C09D 11/40 20140101ALI20230316BHJP
B41J 2/145 20060101ALI20230316BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20230316BHJP
B41J 2/15 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
B41J2/205
B41M5/00 120
C09D11/40
B41J2/145
B41J2/21
B41J2/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148765
(22)【出願日】2021-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 賢
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA11
2C056EC14
2C056EC29
2C056ED07
2C056FA10
2C056FA13
2C056FB02
2C056HA22
2C056HA46
2C056HA47
2C057AF21
2C057AG14
2C057AN01
2C057AN05
2C057CA07
2H186AA04
2H186BA08
2H186DA10
2H186FA03
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB18
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB55
4J039BE01
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】本発明は、粒状感がより低減された画像を得ることができるインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【解決手段】複数種のインクを記録媒体に付与するインクジェット印刷装置であって、
前記インクを収容したインク収容容器と、前記インクを吐出するインク吐出ノズルと、を備え、前記インク収容容器は、同一色相であるが色の濃度の異なる濃インクを収容した濃インク収容容器と淡インクを収容した淡インク収容容器とを有しており、前記濃インク中の顔料濃度[質量%]と前記淡インク中の顔料濃度[質量%]とが下記関係式(1)を満たし、前記淡インクを吐出するインク吐出ノズルは、前記濃インクを吐出するインク吐出ノズルよりも副走査方向において上流側に配置されていることを特徴とするインクジェット印刷装置。
(関係式1):10/100≦[淡インク中の顔料濃度/濃インク中の顔料濃度]≦40/100
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種のインクを記録媒体に付与するインクジェット印刷装置であって、
前記インクを収容したインク収容容器と、
前記インクを吐出するインク吐出ノズルと、を備え、
前記インク収容容器は、同一色相であるが色の濃度の異なる濃インクを収容した濃インク収容容器と淡インクを収容した淡インク収容容器とを有しており、
前記濃インク中の顔料濃度[質量%]と前記淡インク中の顔料濃度[質量%]とが下記関係式(1)を満たし、
前記淡インクを吐出するインク吐出ノズルは、前記濃インクを吐出するインク吐出ノズルよりも副走査方向において上流側に配置されていることを特徴とするインクジェット印刷装置。
(関係式1)
10/100≦[淡インク中の顔料濃度/濃インク中の顔料濃度]≦40/100
【請求項2】
前記インク吐出ノズルは、インクを吐出するノズル孔を前記副走査方向に複数設けたノズル列を有するノズル群を、前記走査方向に3以上配置してなる、請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記濃インクは、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクの少なくとも一種を含み、前記淡インクは、グレーインク、淡シアンインク、淡マゼンタインク、淡イエローインクの少なくとも一種を含む、請求項1又は2に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記淡インク中の樹脂固形分濃度(質量%)が、前記濃インク中の樹脂固形分濃度(質量%)以上である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、容易にカラー画像の記録が可能であり、しかもランニングコストが低いなどの理由から、近年、急速に普及してきている。
カラー画像の形成は、イエロー(Y)インク組成物、マゼンタ(M)インク組成物、及びシアン(C)インク組成物の三色のインクを備えたインクセットや、これにブラック(K)インク組成物を加えた四色のインクを備えたインクセットによって行われている。
【0003】
近年、相互に同一色でありながら色の濃度の異なる濃淡インクを複数備えたインクセットが開発されている。このようなインクセットは、例えば、濃インク組成物としてK、C、M、Yの四色のインクを備え、淡インクとしてライトブラック(Lk)、ライトシアン(Lc)、ライトマゼンタ(Lm)、ライトイエロー(Ly)の四色のインクを備えている。
【0004】
特許文献1には、相互に同一色であるが色の濃度の異なる濃インク組成物及び淡インク組成物を含有し、濃インク組成物及び淡インク組成物が何れも顔料及びポリマー微粒子を含むインクからなり、ポリマー微粒子の質量割合と顔料の質量割合との比を調整することにより、インクの浸透性及び定着性が良好で、ザラツキのない高品質な画像を得ることを可能にしたインクセットが記載されている。
【0005】
特許文献2には、プロセスカラーである、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、及びブラックインクと、プロセスカラーとは異なる色のインクを吐出するようにした液体吐出ユニットが記載されている。
特許文献3には同一のインクを多数回重ねることなく、低解像度用の比較的大サイズのドットを形成することを可能にしたドット記録装置が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インクジェット印刷装置は画像の濃淡をドット密度で表現するため、薄い色のところはまばらなドットとなり、ざらついた画像に見えてしまう。このような画像の状態を「粒状感がある」と呼ぶ。これまで、粒状感を低減する目的で同一色相でも色材濃度の異なる複数の濃淡インクの使用が行われてきたが、まだ不十分であった。
【0007】
本発明は、粒状感がより低減された画像を得ることができるインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は以下に記載する通りのインクジェット印刷装置に係るものである。
複数種のインクを記録媒体に付与するインクジェット印刷装置であって、
前記インクを収容したインク収容容器と、
前記インクを吐出するインク吐出ノズルと、を備え、
前記インク収容容器は、同一色相であるが色の濃度の異なる濃インクを収容した濃インク収容容器と淡インクを収容した淡インク収容容器とを有しており、
前記濃インク中の顔料濃度[質量%]と前記淡インク中の顔料濃度[質量%]とが下記関係式(1)を満たし、前記淡インクを吐出するインク吐出ノズルは、前記濃インクを吐出するインク吐出ノズルよりも副走査方向において上流側に配置されていることを特徴とするインクジェット印刷装置。
(関係式1)
10/100≦[淡インク中の顔料濃度/濃インク中の顔料濃度]≦40/100
【発明の効果】
【0009】
本発明のインクジェット印刷装置を用いることにより、粒状感がより低減された画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の印刷装置の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明におけるインクを収容するメインタンクの斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明のインクジェット印刷装置の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、インクジェット印刷装置の制御構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、記録ヘッドのノズル構成の一例を示す平面図である。
【
図6】
図6は、各ノズル列の色の一例を簡略的に示す概略図である。
【
図7】
図7は、各ノズル列の色の一例を簡略的に示す概略図である。
【
図8】
図8は、各ノズル列の色の一例を簡略的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のインクジェット印刷装置は、複数種のインクを記録媒体に付与するインクジェット印刷装置であり、インクとして同一色相であるが色の濃度の異なる濃インク及び淡インクを有する。
なお、本発明における濃インクとは通常の顔料濃度を有するインクをいい、淡インクとは、通常より顔料濃度の低いインクをいう。
前記濃インクとしては、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクの少なくとも一種を含むことができ、前記淡インクとしては、グレーインク、淡シアンインク、淡マゼンタインク、淡イエローインクの少なくとも一種を含むことができる。
【0012】
本発明においては、前記濃インク中の顔料濃度[質量%]と前記淡インク中の顔料濃度[質量%]とが下記関係式1を満たすことが必要である。
(関係式1)
10/100≦[淡インク中の顔料濃度/濃インク中の顔料濃度]≦40/100
また、本発明のインクジェット印刷装置においては、前記淡インクを吐出するインク吐出ノズルは、前記濃インクを吐出するインク吐出ノズルよりも副走査方向において上流側に配置されている必要がある。
本発明においては、記録用メディアの搬送方向を副走査方向といい、記録用メディアの搬送方向と直交する方向を主走査方向という。
【0013】
本発明におけるインクは、水、水溶性樹脂、色材、水溶性有機溶剤からなり、必要に応じて界面活性剤、抑泡剤、pH調整剤などを含む。
以下では、インクの成分について説明する。
【0014】
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクトブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0015】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0016】
同一色相であるが色の濃度の異なる濃インク及び淡インクを使用する場合、前記濃インク中の顔料濃度[質量%]と前記淡インク中の顔料濃度[質量%]とが下記関係式1を満たすことで低階調から高階調まで粒状度の低い滑らかな画像を得ることができる。
(関係式1)
10/100≦[淡インク中の顔料濃度/濃インク中の顔料濃度]≦40/100
濃インクに対し淡インクが薄すぎる場合、全画像濃度範囲で濃インクを使用する割合が多くなり粒状度が悪化する。逆に淡インクが濃すぎる場合、低画像濃度域の粒状度が悪化する。淡インク中の顔料濃度と濃インク中の顔料濃度とが上記関係式1の関係を満たすことにより全画像濃度範囲における平均粒状度が最も良好となる。
【0017】
<水溶性有機溶剤>
本発明に係るインクは水を溶媒として使用するが、インクの乾燥を防止するため、分散安定性を向上するため等の目的で水溶性有機溶剤を使用する。これらの水溶性有機溶剤は複数混合して使用してもよい。
水溶性有機溶剤としては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
【0018】
前記多価アルコール類としては、例えば、グリセリン、1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ペトリオール等が挙げられる。
【0019】
多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0020】
多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
【0021】
含窒素複素環化合物類としては、例えば、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-プチロラクトン等が挙げられる。
【0022】
アミド類としては、例えばアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジエチルアセトアミドなどが挙げられる。
アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。
【0023】
これらの水溶性有機溶剤の中でも、グリセリン、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオールが特に好ましい。これらは溶解性と水分蒸発による噴射特性不良の防止に対して優れた効果を奏する。また、保存安定性及び吐出安定性に優れた水性記録用インクを作成することができる。
【0024】
本発明におけるインクは、上記水溶性有機溶剤以外に、必要に応じて、糖類やその誘導体などの他の水溶性有機溶媒を併用することもできる。糖類は主に耐乾燥性向上のために使用され、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類、四糖類も含む)、多糖類及びこれらの誘導体が挙げられる。具体的には、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キロース、トレハロース、マントトリオース等が挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α-シクロデキストリン、セルロース等自然界に広く存在する物質を含むものとする。
【0025】
糖類の誘導体としては、前記糖類の還元糖や酸化糖類が挙げられる。これらの中でも、糖アルコールが好ましく、具体的には、マルチトール、ソルビット等が挙げられる。
糖類の含有量は、インクに対して0.1質量%以上40質量%以下が好ましく、0.5質量%以上30質量%以下がより好ましい。
【0026】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、特に制限はなく、着色剤の種類や水溶性有機溶媒、浸透剤等の組み合わせによって、分散安定性を損なわない界面活性剤の中から目的に応じて適宜選択することができる。特に記録媒体に印刷する場合には、表面張力が低く、レベリング性の高いフッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が好適であり、特にフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0027】
前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。
【0028】
前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。
パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルリン酸エステルの塩等が挙げられる。
【0029】
パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。
【0030】
これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
【0031】
前記フッ素系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用しても、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、AGC株式会社製のサーフロンシリーズ(S-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145)、住友スリーエム株式会社製のフルラードシリーズ(FC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431)、DIC株式会社製のメガファックシリーズ(F-470、F-1405、F-474)、Dupont社製のZonyl TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-252、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のPF-151N等が挙げられるが、中でも特に以下の一般式(1)で表されるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0032】
【化1】
〔式中、nは2~6の整数を示し、aは15~50の整数を示す。Yは-C
bH
2b+1(bは11~19の整数を示す)または-CH
2CH(OH)CH
2-C
mF
2m+1(mは2~6の整数を示す)〕
上記化合物としては例えば以下のような構造のものが挙げられる。
【0033】
【0034】
上記に示したものの中でも特に下記の構造を有する界面活性剤が好ましい。
【化3】
【0035】
なお、上記構造のフッ素系界面活性剤はPFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)及びPFOA(パーフルオロオクタン酸)を含有しておらず、地球環境汚染の観点から見ても優れるものとなっている。
【0036】
前記シリコーン系界面活性剤としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
【0037】
シリコーン系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用しても、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン社等のものを容易に入手できる。
【0038】
また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
ポリエーテル変性シリコーン化合物としては、適宜合成したものを使用しても、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製のKF-618、KF-642、KF-643等が挙げられる。
【0039】
また、前記フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤以外にも、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。
【0040】
前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、コハク酸エステルスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩等が挙げられる。
【0041】
前記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0042】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等が挙げられる。また、その市販品として、例えば、エアープロダクツ社製のサーフィノールシリーズ(104、82、465、485、TG)等が挙げられる。
【0043】
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミノピロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、ステアリルジメチルアミンオキシド、ジヒドロエチルラウリルアミンオキシド、ポリオキシエチレンヤシ油アルキルジメチルアミンオキシド、ジメチルアルキル(ヤシ)ベタイン、ジメチルラウリルベタイン等が挙げられる。また、その市販品として、例えば、日光ケミカルズ株式会社、日本エマルジョン株式会社、株式会社日本触媒、東邦化学工業株式会社、花王株式会社、株式会社アデカ、ライオン株式会社、青木油脂工業株式会社、三洋化成工業株式会社等のものを容易に入手できる。
【0044】
前記種々の界面活性剤は、単独で用いても複数のものを混合して用いてもよい。単独では水性記録用インク中に容易に溶解しない場合でも、複数のものを混合することにより可溶化され、安定に存在することができる場合もある。
【0045】
前記界面活性剤の水性記録用インク中における含有量は、0.01質量%以上4質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がより好ましい。合計含有量が0.01質量%未満では、界面活性剤を添加した効果が無くなることがあり、4質量%を超えると、記録媒体への浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
【0046】
<抑泡剤>
フッ素系界面活性剤を使用すると、フッ素系界面活性剤の界面活性能が非常に高いため一般的に使用されているシリコーン系抑泡剤を添加したとしても、発生した気泡が消えずに残留してしまう。これにより、インクを吐出する際には吐出不良などが発生する可能性がある。従って本発明の実施の形態においては、気泡の発生を抑えるためにN-オクチル-2-ピロリドン、2,4,7,9-テトラメチルデカン-4,7-ジオール、2,5,8,11-テトラメチルドデカン-5,8-ジオールのいずれか1種を添加している。上記いずれか1種の抑泡剤と上記フッ素系界面活性剤を併用することで、気泡の発生を抑えることができ、気泡による不具合を解消することが可能となる。
【0047】
本発明における水性記録用インクの表面張力はフッ素系界面活性剤と抑泡剤の割合で決まるが、記録媒体の種類によって水性記録用インクの表面張力を下げる必要がある場合にはフッ素系界面活性剤の比率を多くする必要がある。ただし、当然のことながらフッ素系界面活性剤の比率を増やすと泡立ちの問題があることから、フッ素系界面活性剤の比率は、フッ素系界面活性剤と抑泡剤の合計量に対して40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0048】
<樹脂粒子>
樹脂粒子としては造膜性を有するものを用いる。ここで造膜性とは、樹脂粒子を水に分散させエマルションの形態とした時、この水性エマルションの水分を蒸発させていくと、樹脂皮膜が形成される性質を意味する。
【0049】
このような樹脂粒子が含まれていると、水性記録用インク中の揮発成分が蒸発した際に該樹脂粒子が皮膜を形成し、水性蛍光色インク中の色材を強固に記録媒体に固着する役割を果たす。これにより、耐擦過性、耐水性に優れた画像を実現することができる。
樹脂粒子の種類としては、特に制限はないが、ポリウレタン樹脂とポリアクリル樹脂を併用することで良好な定着性が得られる。
【0050】
また、淡インク中の樹脂固形分濃度(質量%)は、濃インク中の樹脂固形分濃度(質量%)以上であることが好ましい。
濃インク及び淡インクはそれぞれ適切な粘度に調整する必要がある。そして、濃インクと淡インクの液体成分、特に水溶性有機溶剤は類似しているものを使用することが好ましい。そうすると、顔料の少ない淡インクを濃インク並みの粘度にするためには顔料以外の固形分量を増やすことが必要であり、淡インクの樹脂固形分濃度を増加させることが好ましい。
【0051】
樹脂粒子は、室温で皮膜を形成するため、最低造膜温度が30℃以下のものが好ましく、10℃以下のものがより好ましい。ここで、最低造膜温度とは、樹脂粒子を水に分散させて得られた樹脂エマルションを、アルミニウム等の金属板の上に薄く流延し、温度を上げていった時に、透明な連続したフィルムが形成される最低の温度を意味する。このような樹脂粒子として、例えば、ミヨシ油脂株式会社製のランディPLシリーズなどが挙げられる。
樹脂粒子の体積平均粒子径は、5nm以上200nm以下が好ましく、10nm以上100nm以下がより好ましい。
【0052】
樹脂粒子としては、単粒子構造のものを使用することができる。例えば、エマルション粒子内にアルコキシシリル基を有すると、塗膜形成過程での水分蒸発によるエマルション同士の融着に伴って残存する水分と接触し、加水分解してシラノール基を形成する。また、シラノール基が残存するとアルコキシシリル基またはシラノール同士が反応して、シロキサン結合による強固な架橋構造を形成することができる。このように樹脂微粒子内に反応性の官能基を共存させると、硬化剤を添加しなくても、造膜時にそれらの官能基を反応させて網目構造を形成させることができる。
【0053】
樹脂粒子は、不飽和ビニル単量体(不飽和ビニル樹脂)を重合触媒及び乳化剤を存在させた水中において乳化重合する等の公知の方法により得ることができる。樹脂粒子のインクにおける含有量は、0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下がより好ましい。含有量が0.5質量%未満では、耐擦過性、耐水性向上機能が十分に発揮されないことがあり、20質量%を超えると、乾燥による粘度上昇や樹脂成分の固着により、吐出不良などの不具合が生じてしまう。
【0054】
<その他の成分>
本発明におけるインクには、前記の各成分の他に、必要に応じて公知の浸透剤、pH調整剤、防腐防黴剤等を添加することができる。
【0055】
浸透剤としては、炭素数8~11のポリオール化合物またはグリコールエーテル化合物が好ましく用いられる。これらは、記録媒体への浸透速度を速めると共にブリードを防止する効果を有し、25℃の水中において、0.1質量%以上4.5質量%以下の溶解度を有する部分的に水溶性の化合物である。
【0056】
前記炭素数8~11のポリオール化合物としては、例えば、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,2-オクタンジオール等が挙げられる。
【0057】
前記グリコールエーテル化合物としては、例えば、多価アルコールアルキルエーテル化合物、多価アルコールアリールエーテル化合物等が挙げられる。
【0058】
多価アルコールアルキルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0059】
多価アルコールアリールエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
これらの浸透剤は、水よりも高沸点であり、25℃で液体である成分であり、水性蛍光色インク中の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.5質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0060】
pH調整剤は、顔料を分散剤と共に水に混練分散する際に加えるよりも、混練分散液に湿潤剤、浸透剤等の添加剤と共に加える方が好ましい。これは、pH調整剤によっては添加により分散を破壊する場合もあるためである。
【0061】
pH調整剤としては、例えばアルコールアミン類、アルカリ金属水酸化物、アンモニウム水酸化物、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩等が挙げられる。
【0062】
アルコールアミン類としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
【0063】
アルカリ金属元素の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0064】
アンモニウムの水酸化物としては、例えば、水酸化アンモニウム、第四級アンモニウム水酸化物、第四級ホスホニウム水酸化物等が挙げられる。
アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0065】
防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が挙げられる。
【0066】
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等が挙げられる。
【0067】
<記録装置、記録方法>
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本発明において、記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有しても良い。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
記録装置の一例について
図1乃至
図2を参照して説明する。
図1は同装置の斜視説明図である。
図2はメインタンクの斜視説明図である。記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0068】
<液体吐出用装置>
図3は、インクジェット印刷装置1の構成を示す模式図である。液体吐出装置であるインクジェット印刷装置1は、シリアル型のインクジェット印刷装置である。
図3に示すように、インクジェット印刷装置1は、所要の画像を印字する画像形成部2と、乾燥装置3と、記録用メディア収納部4と、搬送機構5と、を備えている。記録用メディア収納部4は、記録用メディア(ロールメディア)40を収納する。なお、記録用メディア収納部4は、幅方向のサイズが異なる記録用メディア40を収納可能である。記録用メディア40は、PVC(塩化ビニル)やPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムなどの非浸透メディアや布や合成紙などの浸透メディアでもよい。
本発明においては、記録用メディア40の搬送方向Aを副走査方向といい、記録用メディア40の搬送方向Aと直交する方向を主走査方向という。
【0069】
搬送機構5は、ロール・ツー・ロール方式の搬送手段を構成する。搬送機構5は、一対のニップローラ51と、一対の従動ローラ52と、巻き取りローラ53とを記録用メディア40の搬送経路54上に備えている。ニップローラ51は、画像形成部2の手前側(搬送方向Aの上流側)に設けられている。ニップローラ51は、モータM(
図4参照)の駆動に伴って回転することで挟み込んだ記録用メディア40を画像形成部2に向けて搬送する。また、巻き取りローラ53は、モータMの駆動に伴って回転することにより印字後の記録用メディア40を巻き取る。従動ローラ52は、記録用メディア40の搬送に従動して回転する。
【0070】
搬送機構5は、搬送速度を検出するためのホイールエンコーダ55(
図4参照)を備えている。搬送機構5は、目標値とホイールエンコーダ55からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値に基づくモータMの制御により、搬送速度を制御される。
【0071】
即ち、記録用メディア収納部4に収納された記録用メディア40は、従動ローラ52を介して、ニップローラ51の回転によって画像形成部2へと搬送される。画像形成部2に到達した記録用メディア40は、画像形成部2によって所要の画像を印字される。そして、印字後の記録用メディア40は、巻き取りローラ53の回転により巻き取られることになる。
【0072】
画像形成部2は、キャリッジ21を備えている。キャリッジ21は、ガイドロッド(ガイドレール)22によって摺動可能に保持されている。キャリッジ21は、モータMの駆動に伴って記録用メディア40の搬送方向Aと直交する方向(主走査方向)にガイドロッド(ガイドレール)22上を移動する。より詳細には、キャリッジ21は、主走査方向の移動可能領域である主走査領域のうち、搬送機構5により搬送される記録用メディア40に対して画像形成部2により印字可能な記録領域内を往復移動する。
【0073】
キャリッジ21は、液滴を吐出する吐出口であるノズル孔を複数配列した記録ヘッド20を搭載している。なお、記録ヘッド20は、記録ヘッド20にインクを供給するタンクを一体的に備えている。ただし、記録ヘッド20は、タンクを一体的に備えているものに限るものではなく、タンクを別体で備えるものであってもよい。記録ヘッド20は、液体吐出ユニットとして機能するものであって、プロセスカラーの記録液であるブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色のインク滴を吐出する。ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)は、画像形成用のインクである。加えて、記録ヘッド20は、補助用インク(背景用や下地用のインク)であるホワイト(W)インク滴を吐出する。
【0074】
画像形成部2は、記録ヘッド20における印字の際に、記録ヘッド20の下方で記録用メディア40を支持するプラテン23を備えている。
【0075】
また、画像形成部2は、キャリッジ21の主走査方向に沿ってキャリッジ21の主走査位置を検知するためのエンコーダシートを備えている。また、キャリッジ21は、エンコーダ26(
図4参照)を備えている。画像形成部2は、キャリッジ21のエンコーダ26によってエンコーダシートを読み取ることにより、キャリッジ21の主走査位置を検知する。
【0076】
キャリッジ21は、キャリッジ21の移動に従って記録用メディア40の端部を光学的に検知するセンサ24を備えている。このセンサ24による検知信号は、記録用メディア40の端部の主走査方向の位置と記録用メディア40の幅との算出に用いられる。
【0077】
乾燥装置3は、プリヒータ30と、プラテンヒータ31と、乾燥ヒータ32と、温風ファン33とを備えている。プリヒータ30とプラテンヒータ31と乾燥ヒータ32は、例えばセラミックやニクロム線を用いた電熱ヒータである。
【0078】
プリヒータ30は、画像形成部2に対して記録用メディア40の搬送方向Aの上流に設けられている。プリヒータ30は、搬送機構5により搬送される記録用メディア40を予備的に加熱する。
【0079】
プラテンヒータ31は、プラテン23に配設されている。プラテンヒータ31は、記録ヘッド20のノズル孔から噴射されるインク滴を着弾させる記録用メディア40を加熱する。
【0080】
乾燥ヒータ32は、画像形成部2に対して記録用メディア40の搬送方向Aの下流に設けられている。乾燥ヒータ32は、画像形成部2により印刷した記録用メディア40を引き続き加熱し、着弾したインク滴の乾燥を促す。
【0081】
温風ファン33は、乾燥ヒータ32(画像形成部2)に対して記録用メディア40の搬送方向Aの下流に設けられている。温風ファン33は、インクが着弾した記録用メディア40の記録面に対して温風を吹き付ける。温風ファン33は、記録用メディア40の記録
面のインクに対して直接温風を当てることにより、記録用メディア40の記録面周辺の雰囲気の湿度を下げ、完全に乾燥させる。
【0082】
このような乾燥装置3を搭載することにより、インクジェット印刷装置1は、記録用メディア40として、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリルなどのインクがしみ込まない非浸透のメディアを採用することができる。
【0083】
なお、キャリッジ21が記録用メディア40の幅に往復移動しながら記録ヘッド20からインクを吐出して画像を形成するインクジェット印刷装置1では、キャリッジ動作が往路のときにのみインクを吐出して画像を形成する片方向印字と、キャリッジ動作が往路復路両方でインクを吐出して画像を形成する双方向印字がある。インクジェット印刷装置1では、印字速度の点で有利な双方向印字が主に用いられる。なお、ここでは、キャリッジ21が主走査方向に移動しながら記録ヘッド20からインクを吐出する動作は、1スキャンとする。
【0084】
次に、インクジェット印刷装置1の制御構成について説明する。ここで、
図4はインクジェット印刷装置1の制御構成を示すブロック図である。
【0085】
図4に示すように、インクジェット印刷装置1は、この装置全体の制御を司る制御部10を備えている。制御部10は、制御主体となるCPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、メモリ14と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)15とを備えている。ROM12は、CPU11が実行するコンピュータプログラムやその他の固定データを格納する。RAM13は、画像データ等を一時格納する。メモリ14は、インクジェット印刷装置1の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリである。ASIC15は、画像データに対する各種信号処理や並び替え等を行なう画像処理や、その他装置全体を制御するための入出力信号処理を実行する。
【0086】
また、
図4に示すように、制御部10は、ホストインタフェース(I/F)16と、ヘッド駆動制御部17と、モータ制御部18と、I/O 19とを備えている。
【0087】
ホストI/F 16は、ホスト側との間で画像データ(印刷データ)や制御信号の送受信をケーブル或いはネットワークを介して行う。インクジェット印刷装置1に接続されるホストとしては、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読取装置、デジタルカメラなどの撮像装置などが挙げられる。
【0088】
I/O 19は、エンコーダ26及びホイールエンコーダ55からの検出パルスを入力する。加えて、I/O 19は、センサ24の他、湿度センサ、温度センサ及びその他のセンサなどの各種センサ25を接続する。I/O 19は、センサ24や各種センサ25からの検知信号を入力する。
【0089】
ヘッド駆動制御部17は、記録ヘッド20を駆動制御するものであり、データ転送手段を含む。より詳細には、ヘッド駆動制御部17は、画像データをシリアルデータで転送する。また、ヘッド駆動制御部17は、画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、記録ヘッド20から液滴を吐出する際に使用する駆動波形を生成する。そして、ヘッド駆動制御部17は、生成した駆動波形等を記録ヘッド20の内部の駆動回路へ入力する。
【0090】
モータ制御部18は、モータMを駆動するものである。より詳細には、モータ制御部18は、CPU 11側から与えられる目標値とホイールエンコーダ55からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値に基づいて制御値を算出する。そして、モータ制御部18は、内部のモータ駆動回路を介し、算出した制御値に基づいてモータMを駆動する。
また、制御部10は、ヒータ制御部8と、温風ファン制御部9とを備えている。
【0091】
ヒータ制御部8は、プリヒータ30とプラテンヒータ31と乾燥ヒータ32とについて、各ヒータ30,31,32の温度が設定された温度となるように出力の制御を行う。
より詳細には、ヒータ制御部8は、各ヒータ30,31,32を制御する際、各ヒータ30,31,32に設けられた温度センサにより温度情報を取得する。そして、ヒータ制御部8は、各ヒータ30,31,32の温度を監視しながら、各ヒータ30,31,32の温度が設定された温度となるように制御する。なお、記録ヘッド20のタンクやインク経路上にヒータが設けられている場合には、ヒータ制御部8は、このヒータについても同様に制御する。
【0092】
温風ファン制御部9は、所定の温度及び風量の送風が行われるよう、温風ファン33の出力を制御する。
加えて、制御部10は、インクジェット印刷装置1に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル60を接続する。
制御部10は、CPU 11がROM 12(又はメモリ14)から読み出したコンピュータプログラムをRAM 13に展開して実行することにより、各部を統括的に制御する。
【0093】
なお、本実施形態のインクジェット印刷装置1で実行されるコンピュータプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0094】
また、本実施形態のインクジェット印刷装置1で実行されるコンピュータプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施形態のインクジェット印刷装置1で実行されるコンピュータプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成してもよい。
【0095】
また、本実施形態のインクジェット印刷装置1で実行されるコンピュータプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0096】
次に、インクジェット印刷装置1の制御部10が実行する画像データ転送印刷処理について簡単に説明する。制御部10のCPU 11は、ホストI/F 16に含まれる受信バッファ内の画像データ(印刷データ)を読み出して解析し、ASIC 15にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行う。次いで、制御部10のCPU 11は、ASIC 15で処理を施した画像データ(印刷データ)をヘッド駆動制御部17から記録ヘッド20に転送する。
【0097】
なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成は、例えば、ROM 12にフォントデータを格納して行ってもよいし、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップデータに展開してインクジェット印刷装置1に転送するようにしてもよい。
【0098】
次に、インクジェット印刷装置1の特徴的な機能について説明する。本実施形態のインクジェット印刷装置1は、透明な非浸透メディアである記録用メディア40へのインクジェット印刷に際して、以下の特徴を有する。
【0099】
要するに、インクジェット印刷装置1は、画像形成用のインクで形成される画像の層である画像層に対して補助用のインク(例えば、ホワイトインク)による補助的な層である補助層を、先刷り、後刷り、間刷りとして配置することができるようにするとともに、補助層の形成の高速化を図ることができるようにしたものである。
【0100】
ここで、
図5は記録ヘッド20のノズル構成を示す平面図であり、
図6は各ノズル列の色を簡略的に示す模式図である。
図5は、記録ヘッド20のノズル列を上面から透過的に示したものである。
図5に示すように、記録ヘッド20は、第1ノズル群20aと、第2ノズル群20bと、第3ノズル群20cとを備えている。
【0101】
図5に示すように、各ノズル群20a、20b、20cは、主走査方向に2列とし副走査方向に千鳥状に交互に配設されている。即ち、各ノズル群20a、20b、20cは、記録用メディア40の搬送方向Aの上流側から下流側に向かってノズル列が重複しないように、第3ノズル群20c、第2ノズル群20b、第1ノズル群20a、の順に配設されている。また、
図5に示すように、第2ノズル群20bは、第1ノズル群20a及び第3ノズル群20cとは、主走査方向に位置をずらして配設されている。
【0102】
第1ノズル群20a、第2群ノズル20b及び第3ノズル群20cは、画像形成用のCMYK(プロセスカラー)のインク滴を吐出する4列のノズル列を備えている。それぞれのノズル列は、ノズル番号No.1のノズル孔からノズル番号No.192のノズル孔の192個のノズル孔を有している。
図5に示す例では、各ノズル孔は、記録用メディア40の搬送方向Aの下流側のノズル孔から上流側のノズル孔に向かって、ノズル番号No.1からノズル番号No.192となっている。なお、これらのノズル孔間のピッチPは、150dpi(dots per inch)である。
【0103】
図5に示すように、第1ノズル群20a、第2ノズル群20b、及び第3ノズル群20cにそれぞれ、イエロー(Y)のインク滴を吐出するイエローインクノズル列NYと、シアン(C)のインク滴を吐出するシアンインクノズル列NCと、マゼンタ(M)のインク滴を吐出するマゼンタインクノズル列NMと、ブラック(K)のインク滴を吐出するブラックインクノズル列NKとを有している。
【0104】
上述したように、各ノズル群20a、20b、20cはノズル列数及びノズル数が同一であることから、各ノズル群20a、20b、20cを同一の部品で構成することができることにより、部品種類を少なくすることができるので、装置の低コスト化を図ることができる。
【0105】
本発明の一つの実施形態を
図6に示す。
本実施形態では、プロセスカラー以外のインクとして、
図6に示すように、シアンインクの淡インク(Lc)と、マゼンタインクの淡インク(Lm)とを用いている。しかしながら、プロセスカラー以外のインクとしてはこれに限るものではなく、例えばイエロー、ブラックの淡インク用いることができる。
【実施例0106】
以下に実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0107】
<インクの調製>
表1に示す原材料を常温攪拌下で添加し、均一に混合した後、平均孔径0.8μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにより加圧濾過し、粗大粒子やゴミを除去してインクを得た。
なお、実施例では、濃インクと淡インクの組み合わせとしてシアンインク、マゼンタインクを用いた。インクとしてはイエローインク、ブラックインクも作成したが、イエローインク及びブラックインクについては評価に直接影響しないため、イエローインク、ブラックインクの詳細について記載するのを省略した。
【0108】
【0109】
図5に示されたノズルヘッド群から吐出されるインクの配置を以下の3通りとした。
実施例1、2ではインク配置1を採用し、比較例1、2ではインク配置2を採用し、比較例3ではインク配置3を採用した。
【0110】
(インク配置1)
ヘッド20c ・・・ 4列左から順にY、Lc、Lm、K(濃インク+淡インク)
ヘッド20b ・・・ 4列左から順にY、C、M、K(濃インク)
ヘッド20a ・・・ 4列左から順にY、C、M、K(濃インク)
【0111】
(インク配置2)
ヘッド20c ・・・ 4列左から順にY、C、M、K(濃インク)
ヘッド20b ・・・ 4列左から順にY、C、M、K(濃インク)
ヘッド20a ・・・ 4列左から順にY、Lc、Lm、K(濃インク+淡インク)
【0112】
(インク配置3)
ヘッド20c ・・・ 4列左から順にY、C、M、K(濃インク)
ヘッド20b ・・・ 4列左から順にY、C、M、K(濃インク)
ヘッド20a ・・・ 4列左から順にY、C、M、K(濃インク)
なお、前記の「左から」は
図5、6の「左から」を意味する。
【0113】
実施例、比較例のインクの配置を表2に示した。
また、インク配置1を
図6に、インク配置2を
図7に、インク配置3を
図8に、それぞれ示した。
【0114】
【0115】
表2に示した実施例、比較例について顔料濃度及び、顔料濃度比、樹脂粒子濃度比を算出した結果を追記したものを表3に示す。
また、下記の粒状性評価についての評価結果を表3に示す。
【0116】
<粒状性評価>
次に、作製した各インクセットについて、
図3に示すインクジェット印刷装置を用いて印刷を行った。
【0117】
前記インクジェット印刷装置を用いて、ポリ塩化ビニルフィルム(CPPVWP1300、桜井株式会社製、以下、「PVCフィルム」とも称することがある)に印刷した。
図3に示すインクジェット印刷装置の液体吐出ユニットとしては、
図5に示すような、少なくとも1種類の画像形成用のプロセスカラーの液体を吐出するノズル孔を主走査方向に直交する副走査方向に複数設けたノズル列と、少なくとも1種類のプロセスカラーとは異なる色の液体を吐出するノズル孔を副走査方向に複数配列したノズル列と、を有するノズル群を複数備え、前記各ノズル群は、少なくとも1種類の前記プロセスカラーとは異なる色の液体を吐出するノズル列が副走査方向に3つ配置されるように、配設される液体吐出ユニットを用いた。
【0118】
出力画像は100%ベタチャートから0%まで階調を変化させた4Cコンポジット画像であり、この4Cコンポジット画像を目視観察し、以下の基準に基づき、画像の粒状性を評価した。なお、△以上が実使用可能レベルである。
結果を表3に示した。
[評価基準]
〇:画像から30cm以上1m未満の距離でざらつきが認識されない
△:画像から1m以上3m未満の距離でざらつきが認識されない
×:画像から3m以上の距離でざらつきが認識できる
【0119】
【0120】
上記の結果から、本発明の構成要件を満たすインクジェット印刷装置は粒状性の評価において優れた効果を奏することがわかる。