(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041815
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】ポート付バッグおよびキャップ付バッグ
(51)【国際特許分類】
A61J 1/10 20060101AFI20230316BHJP
【FI】
A61J1/10 335A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013301
(22)【出願日】2023-01-31
(62)【分割の表示】P 2019558245の分割
【原出願日】2018-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2017235604
(32)【優先日】2017-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】美尾 篤
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 豊明
(72)【発明者】
【氏名】野村 純平
(72)【発明者】
【氏名】鳥屋部 果穂
(57)【要約】
【課題】例えば無菌環境下においても、複雑な封止装置や方法を用いることなく封止でき、より簡便に無菌状態を実現できるバッグを提供する。
【解決手段】このポート付バッグ(1)は、シートにより袋状に形成されたバッグ本体(3)と、バッグ本体(3)に取り付けられた筒状のポート部材(2)とを有し、ポート部材(2)に中栓(50)とキャップ(4)が装着可能とされている。ポート部材(2)は、キャップ(4)が装着された場合にキャップ(4)に覆われる被着部(25)と、ポート部材(2)の外側へ向けて突出する環状のリップ(26)とを有する。リップ(26)は、バッグ本体(3)の側を向く環状の係合面(26A)を有し、係合面(26A)は、被着部(25)の軸線方向に沿った断面において、被着部(25)の外周面に対して90°~135°をなし、前記ポート部材は、曲げ弾性率が140MPa以上の材質からなる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートにより袋状に形成され内部に収容部を有するバッグ本体と、このバッグ本体に取り付けられ前記収容部に一端が連通し他端の開口部がバッグ外に露出した筒状のポート部材とを有し、前記ポート部材に中栓とこの中栓を押さえるキャップが装着可能とされたポート付バッグであって、
前記ポート部材は、前記ポート部材にキャップが装着された場合に前記キャップに覆われる被着部と、前記開口部の周縁に形成され前記ポート部材の外側へ向けて突出する環状のリップとを有し、
前記リップは、前記バッグ本体の側を向く環状の係合面を有し、
前記係合面は、前記被着部の軸線方向に沿った断面において、前記被着部の外周面に対して90°~135°をなし、
前記ポート部材は、曲げ弾性率が140MPa以上の材質からなることを特徴とするポート付バッグ。
【請求項2】
請求項1に記載のポート付バッグと、前記ポート部材に装着可能な中栓とこの中栓を押さえるキャップとを有し、
前記キャップは、天板部と、前記天板部の周囲から起立して前記被着部を覆うことができる筒状のスカート部と、前記スカート部の内面下端部に設けられた複数の係合片とを有し、
前記係合片は前記天板部側に向けて突出して前記スカート部の内周面に対し弾性的に接近可能な先端部を有し、
前記ポート部材に前記キャップを装着した場合には、前記係合片の前記先端部は、前記リップの前記係合面に当接して係合可能とされていることを特徴とするキャップ付バッグ。
【請求項3】
前記キャップの前記天板部には開口部が形成されるとともに、前記天板部には前記開口部を塞ぐシールが離脱可能に固定され、前記シールを離脱させることにより前記開口部が露出可能とされた請求項2に記載されたキャップ付バッグ。
【請求項4】
請求項2または3に記載されたキャップ付バッグであって、前記バッグ本体の前記収容部には血漿分画製剤、酵素、血液凝固線溶系因子、ホルモン、ワクチン、インターフェロン類、エリスロポエチン類、サイトカイン類、抗体、融合タンパク質から選択される少なくとも1種を含む内容物が無菌充填され、前記キャップが前記ポート部材に装着されて前記内容物が密封されていることを特徴とするキャップ付バッグ。
【請求項5】
請求項2または3に記載されたキャップ付バッグであって、前記バッグ本体の前記収容部にはアルブミン製剤およびグロブリン製剤の少なくとも一方を含む内容物が無菌充填され、前記キャップが前記ポート部材に装着されて前記内容物が密封されていることを特徴とするキャップ付バッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッグ本体に内容物の入出口であるポートが設けられたポート付バッグ、並びに、前記ポートの開口部を防ぐ中栓と、前記ポートに係合して前記中栓を押さえるキャップがさらに設けられたキャップ付バッグに関し、特にバイオ医薬品等を無菌充填する用途に適する。
【背景技術】
【0002】
注射剤などの薬液を収容するための容器として、合成樹脂製の輸液バッグが広く使用されている。輸液バッグは、薬液等の液体を収容するバッグ本体(パウチ部)と、バッグ本体内に液体を充填/排出するためのポートとを有し、前記ポートは、円筒状の合成樹脂製ポート部材をバッグ本体の一部を貫通した状態で接合して形成されている。
【0003】
ポート付バッグへ液体を充填する際には、液体供給源のノズルをポートへ挿入し、機械または作業者により、ノズルを介して薬液をバッグ本体内部に注入する。充填が完了したら、ポートの開口部をゴムの中栓で塞いだ後、この中栓を覆うキャップをポートに取り付け、さらにポートとキャップの境界を熔閉するのが一般的である。
【0004】
キャップを熔閉する場合には、従来、ポートの開口端とキャップの天板部を電気ヒーターからの輻射熱により加熱した後、両者を圧着して冷却する方法、あるいは、ポートにキャップを被せた後に、キャップの天板部にホーンを押し当てて超音波発振させることにより、キャップに形成された「リブ」を溶融させ、ポートと一体化させる方法が一般的である。このような熔閉は、輸液バッグの加熱滅菌、輸送、および保管などの際に、キャップが外れることを防ぐとともに、バッグの密封性を確保し、医薬品の汚染や細菌類の侵入を防止するために必須である。
【0005】
キャップを熔閉した後、輸液バッグに充填された薬液を無菌化するために、輸液バッグを加圧蒸気または熱水により加熱して滅菌する。これは最終滅菌法による無菌医薬品の製造と定義される標準的な手法である。
【0006】
ところで、近年、新たな医薬品として「バイオ医薬品」が普及しつつある。バイオ医薬品は、例えばタンパク質や、哺乳類細胞、ウィルス、バクテリアなどの生物によって産生される物質に由来するものが多い。この種のバイオ医薬品は、従来の化学合成により製造される「低分子医薬品」と異なり、複雑な分子構造を有し、製造工程における加熱など様々な影響を受けて構造が変化し、安全性や有効性が低下する。
【0007】
このため、バイオ医薬品の無菌化には、加熱による最終滅菌法が採用できないケースが多く、その場合には、原薬の製造から製剤化、充填、密封までの一連の工程を、無菌管理された環境下で完結させる「無菌操作法」が用いられる。無菌操作法により製造される代表的な医薬品としては、例えば、血液を遠心分離して製造されて輸血に用いられる成分製剤や、血漿成分のうち治療に有用なタンパク質を精製した血漿分画製剤がある。
【0008】
無菌操作法による医薬品の容器への充填は、クリーンブース、アクセス制限バリアシステム(RABS:Restricted Access Barrier System)もしくはアイソレーター等の、作業者から隔離された無菌操作区域で行なわなければならない。近年では、環境および職員の直接介入から物理的に完全に隔離することが可能な、アイソレーター内での充填作業が主流となってきている。
【0009】
アイソレーターを使用する場合には、アイソレーター内部を除染した後に、HEPAフィルターまたはULPAフィルターにより濾過した空気を供給し、外部環境からの汚染を防ぐ必要がある。前記除染は、高濃度の過酸化水素や過酢酸、ホルムアルデヒド等の成分からなる消毒剤や洗浄剤をアイソレーター内へ噴霧することで行われる。これら化学物質は強い酸化性を有していたり、皮膚への腐食性や刺激性を有するため、アイソレーター内に設置された機器類の腐食や、除染作業後の残留などに注意することが必要である。
【0010】
前記のような操作は、無菌操作法により製造された医薬品の品質を保証する重要な工程であり、その実施手順や管理は例えば、非特許文献1および非特許文献2などのガイドラインにより定められている。
【0011】
ところで、無菌区域内では、前述したようなポート付バッグの熔閉操作が困難である。熔閉作業に用いられる機器類の構造や材質が除染操作の障害となるためである。また、熔閉作業に用いられる機器類に、除染で用いられる消毒剤、洗浄剤が残留するおそれもある。したがって、熔閉に代わる密封方法が求められている。
【0012】
一方、無菌操作法が適用でき、熔閉が不要な医薬品容器としては、バイアルが広く使用されている。バイアルとしては、ガラス製バイアルと合成樹脂製バイアルの2種類が用いられている。ガラス製バイアルは、合成樹脂製バイアルに比べてガスバリア性が非常に高く、高いガスバリア性が要求される薬剤容器として使用されている。
【0013】
バイアルに薬剤を充填した場合には、ゴム栓などでバイアルの開口部が封止される。ポート付バッグと同様に、バイアル開口部へのゴム栓の嵌合のみでは封止方法としては不十分であるため、ゴム栓を覆うアルミニウム製のキャップを装着し、このキャップの下端を巻き締め機により巻き締めて、ポートのリップに嵌合させるのが一般的である(特許文献1)。
【0014】
アルミニウムキャップは変形加工が容易であり、脱離防止に優れる。しかし、アルミニウムキャップは、製造時および使用時などにおいて、キャップ同士の衝突や巻き締め機の動作によりアルミニウムの微粒子が発生および飛散しやすく、また、バイアルの使用後にキャップの分別廃棄が困難であると云う問題点を有する。このため、近年は医療現場において、アルミニウムキャップの使用が敬遠される傾向にある。
【0015】
特に、無菌操作法での作業環境においては、外部からの汚染を防止するために隔離された空間内で作業する必要から、管理区域内のクリーン度が低下することに注意を払わなければならない。非特許文献1においても、「アルミニウムキャップの巻き締め機は大量の発塵をする設備であるので、適切な排気システムを備えた区分された場所に設置しなければならない」と規定されており、設備の複雑化や作業性低下などの問題を抱えている。
【0016】
また、ガラス製のバイアル容器は自立するために保管や準備の際に取り扱い性に優れるが、可撓性には乏しい。そのため、そのまま点滴に使用すると、点滴が進行して容器内の輸液の量が減少するに従って容器内部の圧力が下がり、点滴速度が低下してしまう。このように、点滴の進行に伴って点滴速度が低下すると、点滴に要する時間が長くなる。さらに、点滴の終了時間が予測しづらくなるため、複数回の点滴を行う場合には、点滴状況を随時確認することが必要となり、点滴治療が煩雑になる。
【0017】
そこで、バイアル容器からの直接投与する場合には、点滴速度を一定にする目的で、容器内に外部から空気を導入するための通気針を容器に挿入する。
しかし、通気針を使用しても点滴速度を一定に保つことは難しいうえ、通気針の使用は輸液を汚染するおそれがある。
【0018】
ガラス製のバイアル容器の代わりに、例えば特許文献2において、可撓性フィルムを用いた輸液バッグの利用も検討されている。この種の輸液バッグは可撓性に優れ、輸液の減少に伴って袋がしぼんでいくため、通気針を使用しなくても点滴速度が低下しにくく、投与速度を一定に保つための輸液ポンプが不要となる利点を有する。
【0019】
特許文献3では、輸液バッグにアルブミン製剤を充填する方法が開示されている。この方法では、繰り出されたロールフィルムが滅菌セクションを通過して滅菌され、乾燥セクション、シールおよびポート部材のアッセンブリセクション、充填セクション、さらには端部シールと切断セクションを通過して、輸液バッグが完成する。しかし、この方法では複雑なFFS(Form-Fill-Seal)装置の大半を無菌化する必要があり、前述の消毒剤や洗浄剤の完全な除去が困難であり、管理面で好ましくないという問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2007-282891号公報
【特許文献2】特開2010-279624号公報
【特許文献3】特開2008-273631号公報
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】The Pharmaceutical Inspection Convention andPharmaceutical Inspection Co-operation Scheme(医薬品査察協定及び医薬品査察協同スキーム)GMP Annex1
【非特許文献2】平成23年4月20日 厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課事務連絡
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
以上説明したように、従来の輸液バッグは、加熱滅菌が不可能な医薬品の容器として有力であるが、製造面での制約が多く、無菌操作法により製造されるバッグ製剤の普及は限定的であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、例えば無菌環境下においても、複雑な封止装置や方法を用いることなく封止でき、より簡便に無菌状態を実現できるポート付バッグおよびキャップ付バッグを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明のポート付バッグは、シートにより袋状に形成され内部に収容部を有するバッグ本体と、このバッグ本体に取り付けられ前記収容部に一端が連通し他端の開口部がバッグ外に露出した筒状のポート部材とを有し、前記ポート部材に中栓とこの中栓を押さえるキャップが装着可能とされたポート付バッグであって、前記ポート部材は、前記ポート部材にキャップが装着された場合に前記キャップに覆われる被着部と、前記開口部の周縁に形成され前記ポート部材の外側へ向けて突出する環状のリップとを有し、前記リップは、前記バッグ本体の側を向く環状の係合面を有し、前記係合面は、前記被着部の軸線方向に沿った断面において、前記被着部の外周面に対して傾斜角90°~135°をなす。傾斜角はより好ましくは90°~120°であり、さらに好ましくは90°~105°である。
【0024】
前記ポート部材は、曲げ弾性率が140MPa以上の材質で形成されている。前記ポート付バッグが無菌化処理されていてもよい。
【0025】
前記バッグ本体は矩形状をなし、長径方向の長さが80~400mm、短径方向の幅が60~350mm、内容物の充填量が20~1000mLであってもよい。
前記シートのバッグ内面側の表面には、薬効成分を保護するために親水性基または親油性基が付与されていてもよい。
前記シートの引張弾性率は1500MPa以下であってもよく、50~550MPaであってもよい。
【0026】
前記シートの厚みは100~400μmであってもよく、150~300μmであってもよく、180~270μmであってもよい。
前記シートの引張弾性率M(MPa)とシートの厚みT(μm)との積(M×T)は20,000以上かつ300,000以下であってもよく、30,000以上かつ250,000以下であってもよく、35,000以上かつ200,000であってもよい。引張弾性率Mは、ISO527-1に規定される測定方法により測定可能である。
【0027】
前記ポート付バッグは、高温滅菌、紫外線滅菌、または、ガンマ線等の放射線滅菌処理により、無菌性保証水準(SAL)が10-6以下にされていてもよい。
前記ポート部材の寸法は、凸部を除く外径が10~20mmであってもよく、肉厚が0.5~5mmであってもよく、長さが30~50mmであってもよい。
前記ポート部材の表面からのフランジ部の高さは、キャップを装着した時におけるキャップの外周面の高さの30~150%程度にされていてもよい。
【0028】
前記リップの被着部からの突出高さは0.5~5mmとされていてもよく、1~3mmとされていてもよい。前記リップの先端幅は、1~10mmであってもよく、3~6mmであってもよい。
前記ポート部材は200MPa以上であってもよく、400~2000MPaであってもよい。前記ポート部材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、または環状ポリオレフィンで形成されていてもよい。
前記ポート部材にキャップを被せて押し下げて、係合片が弾性変形してリップを乗り越えるまでのキャップの最大押し下げ力は10~200Nであってもよい。前記係合片の自由状態における先端部の先端からキャップの中心軸線までの距離は、被着部の外周面からポート部材の中心軸線までの距離の95~105%であってもよい。
【0029】
本発明のキャップ付バッグは、前記ポート付バッグと、前記ポート部材に装着可能な中栓とこの中栓を押さえるキャップとを有し、前記キャップは、天板部と、前記天板部の周囲から起立して前記被着部を覆うことができる筒状のスカート部と、前記スカート部の内面下端部に設けられた複数の係合片とを有し、前記係合片は前記天板部側に向けて突出して前記スカート部の内周面に対し弾性的に接近可能な先端部を有し、前記ポート部材に前記キャップを装着した場合には、前記係合片の前記先端部は、前記リップの前記係合面に当接して係合可能とされている。
【0030】
前記キャップの前記天板部には開口部が形成されるとともに、前記天板部には前記開口部を塞ぐシールが離脱可能に固定され、前記シールを離脱させることにより前記開口部が露出可能とされていてもよい。
【0031】
本発明の他の態様のキャップ付バッグは、前記バッグ本体の前記収容部にアルブミン製剤またはグロブリン製剤等の血漿分画製剤、酵素、血液凝固線溶系因子、ホルモン、ワクチン、インターフェロン類、エリスロポエチン類、サイトカイン類、抗体、融合タンパク質から選択される少なくとも1種を含む内容物が無菌充填され、前記キャップが前記ポート部材に装着されて前記内容物が密封されている。
【発明の効果】
【0032】
本発明のポート付バッグおよびキャップ付バッグによれば、前記中栓とこの中栓を押さえるキャップを前記ポートの口に被せて押圧することにより、前記スカート部の内面下端部に設けられた複数の係合片が弾性変形して前記リップを乗り越え、前記係合片の先端部が前記リップの前記係合面に当接して係合する。したがって、キャップの装着に特殊な装置が必要なく、キャップ装着が容易であるから、例えば無菌操作区域における無菌化作業を阻害することなく用いることができるうえ、装着後は係合片の弾力性によってキャップがリップに確実に固定されるから、無菌状態の維持の点でも信頼性が高い。また、使用時には通気針を用いずとも内容物の排出速度を一定化できる効果も有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の第1実施形態のキャップ付バッグの正面図である。
【
図2】第1実施形態のポート付バッグの正面図である。
【
図3】第1実施形態に用いられるポート部材の正面図である。
【
図4】前記ポート部材のリップの断面拡大図である。
【
図7】第1実施形態のポート部材にキャップを装着した状態を示す一部破断した正面図である。
【
図8】第1実施形態のリップに係合片が係合した状態を示す断面拡大図である。
【
図9】本発明の他の実施形態のリップに係合片が係合した状態を示す断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るキャップ付バッグを示す平面図であり、このキャップ付バッグは、ポート付バッグ1と、中栓50(
図7参照)と、キャップ4とを有する。
図2は、キャップ4と中栓50を外したポート付バッグ1のみを示す平面図である。以下の説明では解りやすいようにポートを上に向けた状態で説明を行うが、本発明のポート付バッグおよびキャップ付バッグは、この向きに固定されることなく、如何なる姿勢で使用されてもよい。
【0035】
ポート付バッグ1は、内部に収容物を収容できる収容部12を有する矩形状のバッグ本体3と、バッグ本体3の一端の中央部に形成された開口部14に挿通して固定された円筒状のポート部材2とを有する。バッグ本体3は、2枚の樹脂製かつ矩形状のシートの外周部を接着またはヒートシールして互いに接合させ、開口部14を除く周縁全周に亘ってシール部10を形成し、その内側に収容部12を形成したものである。バッグ本体3の開口部14と反対の端部には、シール部10内に円形の穴16が形成されている。穴16の両側には非シール部18が形成されるとともに、開口部14の両側にも非シール部20がそれぞれ形成され、非シール部18,20により、各部のシール幅をほぼ一定にしている。
【0036】
バッグ本体3は図示した形状に限らず、袋状であればいかなる形状であってもよい。例えば、1枚のシートを2つ折りにし、中央の折り線をバッグ本体3の底として他の部分を接合してもよいし、シートを筒状に丸めて両端と貼り合わせ面を接合したものでもよい。シートにより立体的な箱状に形成されていてもよい。箱状や筒状に形成されていても、バッグ本体3は可撓性を維持できる。
【0037】
バッグ本体3の寸法は本発明では限定されないが、長径方向の長さが80~400mm、短径方向の幅が60~350mm、内容物の充填量が20~1000mL程度であると、医薬品用などの輸液バッグとして好適である。
【0038】
シートの材質は本発明では限定されないが、シーラントを少なくとも片面に備える積層体、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)、環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン樹脂層を、前記シーラントを内側に向けて最内層とし、二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムなどの延伸フィルムを基材とし、必要に応じて両者の間に、エチレン―ビニルアルコール共重合体、金属や無機化合物の蒸着層、アルミ箔等の金属箔などの中間層を設けたラミネートフィルムを用いることができる。各シートは、互いに溶着または接着等によって接合できる限り、材質や厚さなどが互いに同じでも異なっていてもよい。一般的に使用される水蒸気や酸素ガスに対するバリア性が高いフィルムも、前記シートとして使用することができる。また、前記シートは、内溶液の有効成分の透過もしくは吸着又は自身を構成する樹脂に含まれる低分子量成分の溶出による内容液の変質を防止する変質防止能を備えていても良い。例えば、シートのバッグ内面側の表面に、収容する製剤の薬効成分に応じて、前記薬効成分を保護し得る親水性基または親油性基を付与することも可能である。
【0039】
バッグ本体3は、例えば、内容物の減少とともにバッグ本体3が適宜しぼんで点滴時の供給速度を一定に保つ観点から、製造上および使用上の問題が生じない範囲で柔軟性に富むことが好ましい。このため、バッグ本体3を構成するシートの引張弾性率M(MPa)は、限定はされないが1500MPa以下、より好ましくは50~550MPaであることが好ましい。シートの厚みT(μm)は、限定はされないが、100~400μmが好ましく、より好ましくは150~300μmであり、さらに好ましくは180~270μmである。引張弾性率Mが小さすぎる、またはシートの厚みTが小さすぎる場合は製造時にシートが延びやすく製造困難になる。引張弾性率Mが大きすぎる、またはシートの厚みTが大きすぎる場合はバッグ本体3が柔軟でなくなり点滴速度の一定化が難しくなる。引張弾性率M(MPa)とシートの厚みT(μm)との積(M×T)は20,000以上かつ300,000以下であることが好ましく、より好ましくは30,000以上かつ250,000以下であり、さらに好ましくは35,000以上かつ200,000である。シートの引張弾性率Mは、ISO527-1に規定される測定方法により測定可能である。
【0040】
ポート付バッグ1を医薬品用の輸液バッグとして使用する場合、ポート付バッグ1の内面、すなわちバッグ本体3とポート部材2の少なくとも内面は、無菌化処理されていることが好ましい。無菌化処理としては、高温滅菌、紫外線滅菌、ガンマ線等の放射線滅菌処理などの方法により、無菌性保証水準(SAL)を10-6以下にすることが好ましい。同様に、キャップ4および中栓50も無菌化処理される。無菌化処理は少なくともバッグ内面に行われるべきであるが、実際には、キャップ4や中栓50も含めてバッグ全体が外袋に封入された状態で前記手段により無菌化処理される。使用時には、例えば、無菌チャンバー内で前記外袋が開封され、ポート付バッグ1内に内容物が注入され、中栓50およびキャップ4を装着して使用に供する。
【0041】
ポート部材2は、
図3に示すように円筒形状をなし、基端部はバッグ本体3の開口部14に挿通された状態で、接着またはヒートシールにより両側のシートと隙間無く接合されている。ポート部材2の寸法は、本発明では限定されないが、一例を挙げれば、凸部を除く外径が10~20mm、肉厚が0.5~5mm、長さが30~50mm程度であると、医薬品用の輸液バッグとして好適である。
【0042】
ポート部材2の先端開口部の周縁には、ポート部材2の外側へ向けて突出する環状のリップ26が、ポート部材2と同軸に形成されている。ポート部材2の外周面には、リップ26から一定距離を隔てて、一定幅で円環状のフランジ部24が形成され、ポート部材2にキャップ4を装着した場合に、キャップ4の開口端とフランジ部24が僅かな間隙を空けて向かい合う。ポート部材2表面からのフランジ部24の高さは、キャップ4を装着した時におけるキャップ4の外周面の高さの30~150%程度にされている。フランジ部24は、キャップ4の下端が突き上げられて、不用意にキャップ4が外れてしまうことを防ぐ。ただし、フランジ部24をポート部材2に形成しないことも可能である。
【0043】
リップ26とフランジ部24との間は、ポート部材2にキャップ4を装着した場合に、キャップ4で覆われる一定幅の被着部25とされている。この実施形態ではポート部材2が直線状であるが、必要に応じては、ポート部材2の本体に対して被着部25を屈折させた構成も可能である。
【0044】
リップ26は、バッグ本体3の側を向く環状の係合面26Aを有する。係合面26Aは全周に亘って一定の幅を有し、被着部25の軸線方向に沿った断面において、
図4に示すように被着部25の外周面に対する傾斜角θが90°~135°とされている。傾斜角θはより好ましくは90°~120°であり、さらに好ましくは90°~105°である。90°以下の場合は係合面26Aがオーバーハングした状態となる。オーバーハング形状であっても金型構造の工夫によって製造可能である。傾斜角度θが大きい場合、キャップ4の上面に設けられたシール30(
図1、
図5および
図6参照)を取り外す際に、キャップ4がポート部材2から外れやすくなる。傾斜角度θが小さすぎる場合、キャップ4の係止性能は高いものの、ポート部材2をインジェクション成形するための金型構造に制限が生じ、生産性が低下する。キャップ4の外れ防止とポート部材2の生産性とを両立させるためには、傾斜角θは前記範囲が好ましい。係合面26Aは前記断面において丸みを帯びていたり、傾斜角度が部分的に変化してもよいが、係合片32と当接する領域の傾斜角度は前記範囲を満たすことが望ましい。
【0045】
図9に示すように、係合面26Aの係合片32と当接する領域に、係合面26Aの全周に亘って延びる一定深さの溝52を形成し、この溝52内に係合片32の先端部32Aが入るようにしてもよい。この場合、係合面26Aが単なる平面であるよりも、係合片32を係止する力が増す。係合面26Aの傾斜角度θは、先端部32Aが当たる箇所の傾斜角度と定義し、複数箇所で当接する場合はそれらの平均値と定義する。
図9に示す例では、係合面26Aの被着部25に近い部分に浅い断面円弧状の溝52が形成されているが、この箇所および形状に限定はされず、係合面26Aの中央部に、断面矩形状などの溝52を形成してもよい。
【0046】
図3に示すリップ26の被着部25からの突出高さHは、本発明では限定されないが、好ましくは0.5~5mmとされ、より好ましくは1~3mmである。また、リップ26の先端幅Wは、本発明では限定されないが、好ましくは1~10mmとされ、より好ましくは3~6mmである。リップ26の外周面にリップ全長に亘る溝を形成してもよく、その場合には溝によって成形時のヒケによる形状精度の低下を抑制できるメリットがある一方、溝を形成する分、リップ26の強度は下がる。
リップ26には例えば周方向に間隔を空けて1または複数の切れ込み(図示略)が形成されていてもよく、この場合でも「環状」の条件を満たすものとする。前記切れ込みのリップ周方向の幅は係合片32の先端部32Aのキャップ周方向の幅よりも小さいことが必要である。リップ26は完全な円環でなくてもよく、係合面26Aに必要な幅を確保できれば、例えば、外周面が多数の平面で形成された多角形状であってもよく、このような場合でも「環状」の条件を満たすものとする。すなわち「環状」とは円環形に限定されず、円環形の場合と同等の封止機能を果たすことができれば、若干の形状変更を許容するものとする。
【0047】
ポート部材2は、好ましくは、曲げ弾性率が140MPa以上の材質から形成されている。この条件を満たす材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンなどの合成樹脂が例示でき、バッグ本体3の材質に合わせて適宜選択できる。柔軟性が高く力を加えることにより変形しやすい材質を使用した場合、係合面26Aの傾斜角θが適切でも、キャップ4のシール30を取り外す際に、キャップ4が外れるおそれがある。したがって、曲げ弾性率が140MPa以上であることが好ましい。より好ましくは200MPa以上、さらに好ましくは400~2000MPaである。曲げ弾性率は、ISO178に規定される測定方法により測定可能である。
図7は、シール30がキャップ4から外された状態を示している。
【0048】
キャップ4は、
図5および
図6(下面図)に示すように、キャップ本体28と、キャップ本体28の上に固定されたシール30とを有し、シール30の周縁を指で持ち上げることにより、シール30がキャップ本体28から外れるようになっている。
【0049】
キャップ本体28は、円盤状の天板部34と、天板部34の周囲から垂直に延びる円筒状のスカート部33と、スカート部33の内面下端部に設けられた複数(この実施形態では4つ)の係合片32とを有する。スカート部33の外周面には、係合片32同士の間と対応する位置に窪み46が形成されて、手の滑りを防ぐようになっている。係合片32は矩形板状をなし、スカート部33の下端内周面と一体に形成された基部32Bと、基部32Bから天板部34側に向けてキャップ内側の上方へ突出する先端部32Aを有し、先端部32Aは、スカート部33の内周面に対し弾性的に接近可能とされている。
【0050】
係合片32の自由状態における先端部32Aの先端からキャップ4の中心軸線までの距離は、リップ26の外周面からポート部材2の中心軸線までの距離よりも小さくされている。同時に、係合片32を弾性変形させスカート部33の内周面に最も接近させた状態における先端部32Aの先端からキャップ4の中心軸線までの距離は、リップ26の外周面からポート部材2の中心軸線までの距離以上にされている。これにより、ポート部材2にキャップ4を被せて押し下げた時に、係合片32の先端部32Aは、弾性変形してリップ26を乗り越えた後、再び開いてリップ26の係合面26Aに当接して係合する。ポート部材2にキャップ4を被せて押し下げて、係合片32が弾性変形してリップ26を乗り越えるまでのキャップ4の最大押し下げ力は10~200N程度であると、使いやすい。より好ましくは20~100Nである。ただ、キャップ4の装着を機械的に行う場合、キャップ4の最大押し下げ力は、ポート部材2とキャップ4が塑性変形しない範囲であれば使用可能である。
【0051】
係合片32の自由状態における先端部32Aの先端からキャップ4の中心軸線までの距離は、被着部25の外周面からポート部材2の中心軸線までの距離よりも若干大きいか、ほぼ等しいか、やや小さくされている。この範囲であれば、好ましくは、係合片32の自由状態における先端部32Aの先端からキャップ4の中心軸線までの距離は、被着部25の外周面からポート部材2の中心軸線までの距離の95~105%程度であるとよい。
【0052】
係合片32の個数は限定されないが、キャップ固定の安定性の観点から、3~6個が好ましく、4個が最も好ましい。係合片32の先端部32Aは、水平方向の全長に亘って係合面26Aに当接するようにリップ26の湾曲形状に合わせて湾曲していることが望ましい。天板部34には、各係合片32と対応した位置に、それぞれ矩形状の開口部44が形成され、オーバーハングしている係合片32をインジェクション成形する際のコアの抜け道になっている。
【0053】
ポートの開口部を塞ぐ中栓50は、弾力性に富むゴムまたはエラストマーなどから形成されており、ポート部材2の上端とほぼ同じ外径を有する円盤状部分50Aと、円盤状部分50Aの下面中央から突出する凸部50Bを有する。凸部50Bの根本の外径はポート部材2の開口径より僅かに大きく、中栓50をポート部材2に嵌めると、凸部50Bがポート部材2内部に入り、円盤状部分50Aがポート部材2のリップ26の上面に当たる。キャップ4を中栓50の上から装着することにより、中栓50はキャップ4により圧縮され、円盤状部分50Aがポート部材2の状端面に圧接されるとともに、凸部50Bが膨らんでポート部材2の内周面に圧接される。これによりポート部材2は気密的に封止され、無菌状態を保つ。
【0054】
中栓50は、予めキャップ4と一体的に機械的に結合、接着もしくは溶着により接合、または一体成形されていてもよい。
中栓50は、ゴムまたはエラストマーからなる本体と、この本体の少なくとも内容物に触れる面にフッ素樹脂を被覆してなる被覆層とを有していてもよい。被覆層の形成方法は限定されず、ラミネートされていてもよいし、スプレー法により成膜されていてもよい。
【0055】
キャップ4の天板部34の中央には、円形の開口部48が形成され、天板部34には開口部48を塞ぐシール30が接続部42を介して天板部34に接合されている。シール30の外径はキャップ4の外径よりも僅かに大きく、シール30の周縁を強く引き上げると、接続部42が切れてシール30がキャップ本体28から離脱する。これにより、開口部48が開口され、注射針などを中栓50に刺すことにより、バッグ本体3の内容物を排出できる。
【0056】
バッグ本体3の収容部12には、液体、粉体、気体、これらの混合体などポート部材2を通過するものであれば、いかなる物も収容することができるが、本実施形態は特に、加熱滅菌ができないバイオ医薬品に適する。この種の医薬品としては、アルブミン製剤またはグロブリン製剤等の血漿分画製剤、酵素、血液凝固線溶系因子、ホルモン、ワクチン、インターフェロン類、エリスロポエチン類、サイトカイン類、抗体、融合タンパク質から選択される少なくとも1種が挙げられる。無菌環境内において前記バイオ医薬品を含む内容物を収容部12に無菌充填し、中栓50をポート部材2の開口部に嵌め、キャップ4をポート部材2に装着して押し下げ、リップ26に係合片32を係合することにより、前記内容物を無菌状態のまま密封し、保存することが可能である。したがって、従来の熔閉が必要なポート付バッグや、アルミニウムキャップの巻き締めが必要なバイアル容器と異なり、封止に特別な装置を必要として無菌化作業を阻害したり、クリーン度を低下させる粉塵を発生することなく、簡便に使用することが可能である。
【0057】
医薬品を保存したキャップ付バッグから医薬品を取り出すには、キャップ4を外すのではなく、シール30を引き上げて接続部42を切り、キャップ本体28からシール30を外す。開口部48を通して中栓50に注射針などを突き通し、バッグ本体3の穴16をフックに通してキャップ付バッグを吊すことにより、重力を利用して注射針およびチューブを通じて医薬品を流出させることができ、内容物が減るにつれバッグ本体3はしぼんでいく。したがって、バイアル容器のように通気針を使用する必要がないから、通気針を通じて外気が入り、内容物を汚染するリスクもない。
【0058】
以上説明したように、本実施形態のポート付バッグおよびキャップ付バッグによれば、従来の熔閉用の装置が必要なポート付バッグや、アルミニウムキャップの巻き締め装置が必要なバイアル容器と異なり、封止に特別な装置を必要として無菌化作業を阻害したり、無菌状態を損ねる粉塵を発生することなく、内容物の封入作業が容易でコストも下げることができる。また、可撓性を有していて内容物の排出とともにしぼんでいくから、バイアル容器のように通気針を使用する必要がなく、通気針を通じて内容物を汚染するリスクもない。よって、医薬品製造のコストを下げ、医療の現場でも使用しやすいメリットを有する。
【実施例0059】
以下、本発明の実施例を挙げて効果の一例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されることはない。
【0060】
本発明の実施例1~4および比較例1のポート付バッグを以下の方法で作成した。シート材として、メタロセン触媒により重合されたLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)を厚み250μmに製膜したものを準備し、このシート材を2枚、ヒートシールで接合してバッグ本体を作成した。前記シート材の引張弾性率は、ISO527-1の方法で測定したところ、360MPaであった。前記シート材の密度は、ISO1872-1に記載された方法で測定したところ、924kg/m2であった。
【0061】
ポート部材は、曲げ弾性率が1140MPa、密度が964kg/m2のHDPE(高密度ポリエチレン)を用い、インジェクション成形により作成した。ポート部材の全高は38.3mm、リップの外径はφ19.7mm、ポート部材の内径がφ12.7mm、リップ部のポート内周面からの径方向の厚みが3.8mm、被着部の外径は16.6mm、被着部とリップの係合面の傾斜角度θは90°、105°、120°、135°、150°と、15°刻みとした。
【0062】
前記バッグ本体と前記ポート部材を組み合わせてヒートシールし、バッグ本体の収容部の内径が140mm×105mm、バッグ本体とポート部材を合わせた全長が196mm、バッグ本体の全幅が116mmであるポート付バッグを作成した。
【0063】
中栓としては、株式会社大協精工製のブチルゴム栓「品番:S10-F451」を用いた。キャップとしては、株式会社大協精工製のポリプロピレン製「Plascap」(商標)、品番「20GD-2」を使用した。
【0064】
一方、比較例2~6として、曲げ弾性率が130MPa、密度が915kg/m2のLLDPEにより成形されたポート部品を用い、他は実施例1~4および比較例1とそれぞれ同じ条件においてポート付バッグを作成した。実施例1~4および比較例1~6の材質およびポート形状の一覧を表1に示す。
【0065】
実施例1~4および比較例1~6に対し、以下の方法により評価試験を実施した。
(1)キャップ固定性試験
各ポート付バッグに、食紅を溶解して着色した水100mLを充填し、前記ゴム栓および前記キャップにより封止した。各実施例および各比較例毎に検体を100袋ずつ準備した。これら検体のキャップ天面に設けられたシールを手作業により分離する操作を行った際、キャップの係合片がリップから外れたものを目視観察し、検体数を数えた。
【0066】
(2)耐圧試験による密封性評価試験
上記試験(1)によりキャップの外れが生じなかったポート付バッグについて、そのバッグ本体を水平面に配置したうえ、膨らんだ収容部上に水平な押圧子を当接させ、90kgfの荷重を5分間連続して加えた後、内容液である着色水がゴム中栓の周囲でバッグ外部に漏出していないかを目視観察し、漏れが認められたバッグ検体数を数えた。
【0067】
上記試験(1)および(2)の結果を表1に示す。剛性の高いHDPE製ポートでは、比較例1のように傾斜角度が135°よりも大きくなると、係合片がリップから外れやすくなることが判明した。係合片の外れが生じなかったポート付バッグについて耐圧試験を行ったところ、すべての検体で液漏れは認められなかった。
【0068】
【0069】
一方で剛性の低いLLDPEにより成形したポートを溶着した比較例2~6のバッグでは、傾斜角度が小さい場合でもキャップの脱離が発生する結果となった。これはポート成形材料が柔軟であるために、蓋の取り外し操作の際に加わった力がリップを変形させてしまい、係止が不十分となったためである。また、耐圧試験を行うと、一部で液漏れの発生が認められた。キャップの脱離には至らなかったものの、リップの変形によりゴム栓の圧縮が不十分となり、パウチ内部の加圧により液止め性能が不十分になったと推定された。ただし、剛性不十分な点は、リップの寸法を変更することにより問題解決できる可能性はあると思われる。
本発明に係るポート付バッグおよびキャップ付バッグは、キャップの装着に特殊な装置が必要なく、キャップ装着が容易であるから、例えば無菌環境下においても、無菌化作業を阻害することなく用いることができるうえ、装着後は係合片の弾力性によってキャップがリップに確実に固定されるから、無菌状態の維持の点でも信頼性が高い。したがって、産業上の利用可能性を有する。
1…ポート付バッグ、2…ポート部材、3…バッグ本体、4…キャップ、10…シール部、12…収容部、14…開口部、16…穴、18…非シール部、20…非シール部、22…把持部、24…フランジ、25…被着部、26…リップ、26A…係合面、26B…先端面、28…キャップ本体、30…シール、32…係合片、32A…先端部、32B…基部、33…スカート部、34…天板部、36…周壁部、38…スカート部、40…天板部、42…接続部、44…開口部、46…窪み、48…開口部、50…中栓、50A…円盤状部分、50B…凸部、52…凹部。