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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000420
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20221222BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101226
(22)【出願日】2021-06-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年8月5日 ACM SIGCOMM Education Workshopの発表資料集にて発表 〔刊行物等〕 令和2年8月5日 ACM SIGCOMM Education Workshopにて発表 〔刊行物等〕 令和2年9月9日に東京大学農学生命科学研究科・農学部WEBページ(https://www.a.u-tokyo.ac.jp/sanmitsu/)にて「3密センサー提案手法の説明」を発表 〔刊行物等〕 令和2年9月10日に電子情報通信学会研究会 (https://www.ieice.org/ken/program/index.php?tgs_regid=0da3ca877ec7d230db8f5cb3ced142ad60ff41f3910a5b846602bbc32a17f6a5)にて発表 〔刊行物等〕 令和2年9月3日に電子情報通信学会技術研究報告,vol.120,no.162,NS2020-42,pp.7-8,2020年9月にて発表 〔刊行物等〕 令和2年9月11日に東京大学未来ビジョン研究センター第4回「コロナと未来」Webinarシリーズ(https://ifi.u-tokyo.ac.jp/event/7784/)にて発表 〔刊行物等〕 令和2年9月11日に国立大学法人東京大学基金活動報告会2020動画での講演「情報通信技術の革新が創る未来社会」の生配信にて発表 〔刊行物等〕 令和2年9月24日に国立大学法人東京大学基金活動報告会2020動画での講演「情報通信技術の革新が創る未来社会」のアーカイブ配信にて発表 〔刊行物等〕 令和2年9月17日に自治振興セミナー岩手会場の講演にて発表 〔刊行物等〕 令和3年3月26日に自治振興セミナー講演録にて発表 〔刊行物等〕 令和2年11月13日に国立大学法人東京大学FSIデータプラットフォームイニシアティブ キャンパスデータWG活動資料にて発表 〔刊行物等〕 令和3年1月20日にCFS国際卓越大学院の学内講義にて発表 〔刊行物等〕 令和3年3月10日に電子情報通信学会2021年総合大会にて発表 〔刊行物等〕 令和3年3月9日に電子情報通信学会2021年総合大会講演論文集、通信講演論文集2にて発表 〔刊行物等〕 令和3年3月26日に東京大学未来ビジョン研究センターシンポジウム招待講演にて発表
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ANDROID
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(74)【代理人】
【識別番号】100102716
【弁理士】
【氏名又は名称】在原 元司
(72)【発明者】
【氏名】中尾 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】杜 平
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】集まっている人数の推定を可能とする情報処理装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】情報処理装置1は、予め定められた少なくとも一つの所定のサービス識別子のいずれかを含む第1種の無線広報信号と、当該第1種の無線広報信号とは異なる第2種の無線広報信号とを発信する第1の端末装置と、当該第2種の無線広報信号を発信する第2の端末装置とのそれぞれが発信する第1種の無線広報信号と第2種の無線広報信号とを受信する受信部と、当該受信部が、所定の時間内に受信した、第1種の無線広報信号の発信元の端末装置の数nを少なくとも用いて、予め定めた統計情報を演算する演算部と、演算部により演算された統計情報を出力する出力部と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた少なくとも一つの所定のサービス識別子のいずれかを含む第1種の無線広報信号と、当該第1種の無線広報信号とは異なる第2種の無線広報信号とを発信する第1の端末装置と、前記第2種の無線広報信号を発信する第2の端末装置とのそれぞれが発信する第1種の無線広報信号と第2種の無線広報信号とを受信する受信部と、
前記受信部が、所定の時間内に受信した、前記第1種の無線広報信号の発信元の端末装置の数nを少なくとも用いて、予め定めた統計情報を演算する演算部と、
前記演算部により演算された統計情報を出力する出力部と、を含む、情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記演算部は、所定の時間内に受信した、前記第2種の無線広報信号の発信元の端末装置の数Nと、予め定めた統計情報を演算する所定の時間内に受信した、前記第1種の無線広報信号の発信元の端末装置の数nとを用いて、前記第1種の無線広報信号を発信する第1の端末装置の存在割合を、前記統計情報として演算する情報処理装置。
【請求項3】
予め定められた複数の所定のサービス識別子のうち、第1の所定のサービス識別子を含む第1種の無線広報信号と、当該第1種の無線広報信号とは異なる第2種の無線広報信号とを発信する第1の端末装置と、
予め定められた複数の所定のサービス識別子のうち、第2の所定のサービス識別子を含む第1種の無線広報信号と、当該第1種の無線広報信号及び第2種の無線広報信号とは異なる第3種の無線広報信号を発信する第3の端末装置と、
前記第2種の無線広報信号を発信する第2の端末装置と、のそれぞれが発信する第1種、第2種、第3種の無線広報信号を受信する受信部と、
前記受信部が、所定の時間内に受信した、前記第1の所定のサービス識別子を含む第1種の無線広報信号の発信元の端末装置の数nを、前記第2種の無線広報信号の発信元の端末装置の数Nで除して、推定値r=n/Nを求め、前記受信部が、所定の時間内に受信した、前記第2の所定のサービス識別子を含む第1種の無線広報信号の発信元の端末装置の数mを、当該推定値rで除して前記第2の所定のサービス識別子を含む第1種の無線広報信号の発信し得る端末装置の推定数M=m/rを求め、当該求められた推定結果であるN,Mを用いて、予め定めた統計情報を演算する演算部と、
前記演算部により演算された統計情報を出力する出力部と、を含む、情報処理装置。
【請求項4】
コンピュータを、
予め定められた少なくとも一つの所定のサービス識別子のいずれかを含む第1種の無線広報信号と、当該第1種の無線広報信号とは異なる第2種の無線広報信号とを発信する第1の端末装置と、前記第2種の無線広報信号を発信する第2の端末装置とのそれぞれが発信する第1種の無線広報信号と第2種の無線広報信号とを受信する手段と、
所定の時間内に受信した、前記第1種の無線広報信号の発信元の端末装置の数nを少なくとも用いて、予め定めた統計情報を演算する手段と、
前記演算された統計情報を出力する手段と、
として機能させるプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナウィルスの感染拡大とともに、人の密集、密接、密閉(空間での集合)を避けることが求められている。こうした状況下において、スマートフォン等の相互通信の機能を用いて、人と人との接触状況を監視するアプリケーション(Cocoa(商標)など、以下、接触監視アプリケーションと呼ぶ)が開発されている。このようなアプリケーションは、例えばブルートゥース(登録商標)のブロードキャスト機能(非特許文献1)を利用して、相手方の情報を得ている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Bluetooth Core Specification Rev v5.2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、Cocoa等の接触監視アプリケーションでは、当該接触監視アプリケーションがインストールされていない端末が把握できないため、集まっている人数がどの程度であるかを判断することは必ずしもできない。また、接触監視アプリケーションのインストール率は、場所が異なると(一般の場所と大学構内などといったように異なると)、異なることが考えられるが、そのインストール率がどの程度となっているかを把握することもできないのが現状である。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、集まっている人数の推定を可能とする情報処理装置及びプログラムを提供することを、その目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来例の問題点を解決するための本発明の一態様は、情報処理装置であって、予め定められた少なくとも一つの所定のサービス識別子のいずれかを含む第1種の無線広報信号と、当該第1種の無線広報信号とは異なる第2種の無線広報信号とを発信する第1の端末装置と、前記第2種の無線広報信号を発信する第2の端末装置とのそれぞれが発信する第1種の無線広報信号と第2種の無線広報信号とを受信する受信部と、前記受信部が、所定の時間内に受信した、前記第1種の無線広報信号の発信元の端末装置の数nを少なくとも用いて、予め定めた統計情報を演算する演算部と、前記演算部により演算された統計情報を出力する出力部と、を含むものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、第1種の無線広報信号の発信元の端末装置の数nを用いた統計演算を行うことで、集まっている人数の推定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る情報処理装置の構成例を表すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係る情報処理装置の例を表す機能ブロック図である。
図3】本発明の実施の形態に係る情報処理装置が実行する処理の例を表すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係る情報処理装置1は、図1に例示するように、制御部11と、記憶部12と、無線通信部13と、出力部14とを含んで構成されている。本実施の形態の一例では、この情報処理装置1は、ネットワークを介してサーバ装置3に対して接続される。
【0010】
またこの情報処理装置1は、その近傍(後に述べる無線信号の受信可能範囲)に所在する端末所持者が所持するスマートフォン等の端末装置2の発信する無線信号を受信する。
【0011】
本実施の形態の例では、情報処理装置1の近傍に所在する端末所持者の所持する端末装置2のうちには、人と人との接触状況を監視するCocoa等の接触監視アプリケーションをインストールした状態にあるものと、接触監視アプリケーションをインストールしていない状態にあるものが混在しているものとする。
【0012】
人と人との接触状況を監視する接触監視アプリケーションがインストールされている端末装置2は、この接触監視アプリケーションに係るサービス識別子を含む第1種の無線広報信号と、接触監視アプリケーションとは関わりない第2種の無線広報信号(該第1種の無線広報信号とは異なる第2種の無線広報信号)とを発信する。この、接触監視アプリケーションがインストールされている端末装置2が、本発明の第1の端末装置に相当する。
【0013】
一方、接触監視アプリケーションがインストールされていない端末装置2は、上記第1種の無線広報信号は発信せず、第2種の無線広報信号を発信する。この、接触監視アプリケーションがインストールされていない端末装置2が、本発明の第2の端末装置に相当する。
【0014】
本実施の形態の一例では、第1種、第2種の無線広報信号は、ブルートゥース(登録商標)のブロードキャスト信号でよい。もっとも、本実施の形態はこれに限られず、広報(宛先を特定しない)信号であれば、IEEE802.11に定められる各種の無線LAN規格におけるブロードキャスト信号であってもよい。
【0015】
制御部11は、CPUなどのプログラム制御デバイスであり、記憶部12に格納されているプログラムに従って動作する。本実施の形態では、この制御部11は、後に説明する無線通信部13が所定の時間内に受信した第1種の無線広報信号の発信元である端末装置2の数nを少なくとも用いて、予め定めた統計情報を演算して出力する。この制御部11の詳しい説明は後に述べる。
【0016】
記憶部12は、フラッシュメモリやRAM等のメモリ素子、ディスクデバイス等を含む。本実施の形態ではこの記憶部12は、制御部11によって実行されるプログラムを保持する。またこの記憶部12は、制御部11のワークメモリとしても動作する。
【0017】
無線通信部13は、上記端末装置2から、サービス識別子を含む第1種の無線広報信号や、当該第1種の無線広報信号とは異なる第2種の無線広報信号を受信する。具体的にこの無線通信部13は、第1の端末装置に相当する端末装置2からは、第1種の無線広報信号と、第2種の無線広報信号とを受信する。またこの無線通信部13は、第2の端末装置に相当する端末装置2からは、第1種の無線広報信号を受信することなく、第2種の無線広報信号を受信する。
【0018】
出力部14は、例えばネットワークインタフェース等であり、制御部11から入力される指示に従い、制御部11にて演算された統計情報を、外部のサーバ装置等に出力する。
【0019】
端末装置2は、その所有者によって所持され、所有者とともに移動するスマートフォン等であり、一般に、種々のアプリケーションプログラムがインストール可能なものである。
【0020】
ここでは複数の端末装置2の一部には、その所有者によって、接触監視アプリケーションがインストールされた状態にある。またその他の端末装置2は、接触監視アプリケーションはインストールされていないものとする。
【0021】
接触監視アプリケーションがインストールされた端末装置2では、接触監視アプリケーションによる処理が行われる。この処理には、接触監視アプリケーションを識別するサービス識別子(UUID)を含む第1種の無線広報信号を定期的に送出する処理が含まれる。このサービス識別子は例えば、国際的に共通な、グーグル・アップル・エクスポージャー通知システム(GAEN)で利用される識別子を用いればよい。
【0022】
また本実施の形態の例では、この接触監視アプリケーションは、インストールされた端末装置2に固有な端末識別子を、所定の発行タイミングごと(例えば24時間ごと)に発行し、最後に発行した端末識別子を、第1種の無線広報信号に含めて、予め定められた第1の発信タイミングごと(例えば15分ごとなど、発行タイミングよりも短いタイミングごと)に繰り返し送出しているものとする。なお、発行される端末識別子は、端末識別子を発行するごとに毎回異なるものとなっている。この仕様は、現在日本国内で広く利用されている接触監視アプリケーションであるCocoaにおいて採用されている。
【0023】
すなわち、第1種の無線広報信号は、人と人との接触状況を監視する接触監視アプリケーションに固有なサービス識別子(UUID)と、端末装置2に固有な端末識別子とを含む。
【0024】
また各端末装置2は、接触監視アプリケーションがインストールされているか否かに関わらず、所定の第2の発信タイミングごと(例えば数秒ごと)に、第2種の無線広報信号を発信する。この第2種の無線広報信号は、接触監視アプリケーションに固有なサービス識別子とは異なるサービス識別子(UUID)を含み、また、端末装置2に固有な端末識別子(例えばMACなど)を含む。この第2種の無線広報信号に含まれる端末識別子は、同じ端末装置2から発信されるものであっても、第1種の無線広報信号に含まれる端末識別子(上述の通り、接触監視アプリケーションが発行するもの)とは一般的に異なるものである。
【0025】
さらに端末装置2は、端末装置2としての機能(電話やメール送受信機としての機能など)を実現するための処理を行っているが、これらの処理は広く知られているものであるので、その詳しい説明は省略する。
【0026】
サーバ装置3は、ここでは情報処理装置1が送出する情報を受け入れて保持し、当該保持している情報を、管理者等に対して表示出力する等の処理を行うものである。このサーバ装置3は一般的なサーバコンピュータを用いて実現できる。
【0027】
次に、本実施の形態の情報処理装置1の制御部11の動作例について説明する。本実施の形態の一例では、この制御部11は、記憶部12に格納されたプログラムを実行することにより、図2に例示する機能的構成を実現する。すなわち本実施の形態の一例では、制御部11は、受信処理部21と、演算部22と、出力部23とを含む機能的構成を実現する。
【0028】
受信処理部21は、無線通信部13が受信した第1種の無線広報信号や、第2種の無線広報信号の入力を受け入れる。
【0029】
受信処理部21は、受信した無線広報信号に、上記接触監視アプリケーションに固有なサービス識別子が含まれていれば、当該無線広報信号が第1種の無線広報信号であると識別して、当該識別結果とともに、第1種の無線広報信号であると識別した無線広報信号に含まれる端末識別子を、演算部22に出力する。なお、接触監視アプリケーションに固有なサービス識別子が複数種類ある場合は、受信した無線広報信号に含まれるサービス識別子が、当該複数種類の接触監視アプリケーションに固有なサービス識別子のいずれかに一致したときに、当該無線広報信号が第1種の無線広報信号であると識別することとする。
【0030】
またこの受信処理部21は、受信した無線広報信号に、上記接触監視アプリケーションに固有なサービス識別子が含まれていなければ(複数種類ある場合は、そのいずれも含まれていなければ)、当該無線広報信号が第2種の無線広報信号であると識別して、当該識別結果とともに、第2種の無線広報信号であると識別した無線広報信号に含まれる端末識別子を、演算部22に出力する。
【0031】
演算部22は、第1種の無線広報信号であるとの識別結果とともに受け入れた端末識別子を、記憶部12の第1リストに蓄積して記録する。なお、演算部22は、第1リストに既に同じ端末識別子が記録されている場合は、先の記録を上書きしてもよいし、新たに同じ端末識別子を記録しないよう制御してもよい。
【0032】
これにより演算部22は、受信した第1種の無線広報信号に含まれていた、互いに異なる端末識別子を蓄積している状態となる。なお、演算部22は、所定の更新タイミングごと(例えば所定の時間ごと、あるいは一度の演算処理を行うごと)に、第1リストの内容を消去して空としてもよい。
【0033】
演算部22は、また、第2種の無線広報信号であるとの識別結果とともに受け入れた端末識別子を、記憶部12の第2リストに蓄積して記録する。なお、演算部22は、第2リストに既に同じ端末識別子が記録されている場合は、先の記録を上書きしてもよいし、新たに同じ端末識別子を記録しないよう制御してもよい。
【0034】
これにより演算部22は、受信した第2種の無線広報信号に含まれていた、互いに異なる端末識別子を蓄積している状態となる。なお、演算部22は、所定の更新タイミングごと(例えば所定の時間ごと、あるいは一度の演算処理を行うごと)に、第2リストの内容を消去して空としてもよい。なお、第1リストを消去する更新タイミングと第2リストを消去する更新タイミングとは、同じであっても、互いに異なっていてもよい。
【0035】
この演算部22の処理により、第1リストに記録された端末識別子の数が、所定の時間内に受信した第1種の無線広報信号の発信元である端末装置2の数nに相当するものとなり、第2リストに記録された端末識別子の数が所定の時間内に受信した第2種の無線広報信号の発信元である端末装置2の数Nに相当するものとなる。
【0036】
演算部22は、上記所定の時間内に受信した第1種の無線広報信号の発信元である端末装置2の数nに基づく統計情報を演算する。一例としてこの演算部22は、ネットワークを介して、上記接触監視アプリケーションの平均的なインストール率Rを取得する。そして統計情報n/Rを、情報処理装置1の近傍に所在する端末所持者の所持する端末装置2の数Nとして求める。
【0037】
または、この演算部22は、上記所定の時間内に受信した第1種の無線広報信号の発信元である端末装置2の数nを、第2リストに記録された端末識別子の数が所定の時間内に受信した第2種の無線広報信号の発信元である端末装置2の数N(上記n台を含む)で除して、この情報処理装置1の近傍に所在する端末所持者の所持する端末装置2のうち、上記接触監視アプリケーションがインストールされている割合の推定値(推定インストール率)rを統計情報として求める。
【0038】
出力部23は、演算部22が求めた統計情報としての、情報処理装置1の近傍に所在する端末所持者の所持する端末装置2の数の値Nを出力する。また、推定インストール率rを求めたときには、この推定インストール率rの値を併せて出力する。本実施の形態の一例では、この情報処理装置1は、ネットワークを介して接続されたサーバ装置3に対して、自身を識別する情報とともに、ここで求めた端末装置2の数を表す値等を送出することとしてもよい。
【0039】
[動作]
本発明の実施の形態の情報処理装置1は、以上の構成を基本的に備えており、次の例のように動作する。なお、以下の例では、複数の情報処理装置1が、各所(例えば大学などにおける各教室)に配されるものとし、各情報処理装置1には、それぞれ固有な装置識別子が予め設定されているものとする。
【0040】
また、以下では、サーバ装置3が、情報処理装置1に固有な装置識別子と、当該装置識別子で識別される情報処理装置1の設置場所を表す情報とを関連付けたデータベースを備えているものとする。
【0041】
さらに端末装置2の所持者は、それぞれの端末装置2を所持して、複数の情報処理装置1が設置されている施設内で活動を行っているものとする。情報処理装置1は、それ自身に無線広報信号が到達する範囲にある端末装置2から無線広報信号を受信する。
【0042】
端末装置2のうち、接触監視アプリケーションがインストールされている端末装置2は、例えば15分に一度、第1種の無線広報信号を発信する。またこの端末装置2は、数秒に一度、第2種の無線広報信号を発信している。一方、端末装置2のうち、接触監視アプリケーションがインストールされていない端末装置2は、第1種の無線広報信号を発信することなく、数秒に一度、第2種の無線広報信号を発信している。
【0043】
情報処理装置1は、例えば第1の発信タイミングである15分ごとに(当該第1の発信タイミングを更新タイミングとして)、記憶部12に格納された第1リストをクリアして空とし(S11:初期化)、次の図3に例示する処理を実行する。
【0044】
すなわち情報処理装置1は、無線広報信号を受信すると(S12:Yes)、当該受信した無線広報信号に含まれるサービス識別子が、接触監視アプリケーションに固有なサービス識別子であるか否かを判断して、受信した無線広報信号が第1種の無線広報信号であるか否かを判断する(S13)。ここで、受信した無線広報信号に含まれるサービス識別子が、接触監視アプリケーションに固有なサービス識別子であれば、受信した無線広報信号が第1種の無線広報信号であると判断して、当該受信した無線広報信号に含まれる端末識別子を、第1リストに記録する(S14)。このとき、第1リストに、既に同じ端末識別子が蓄積されている場合は、当該端末識別子に上書きして第1リストを更新する。また第1リストに記録しようとする端末識別子と同じ端末識別子が記録されていなければ、記録しようとする端末識別子を第1リストに追加して第1リストを更新する。
【0045】
情報処理装置1は、また、処理開始から更新タイミングに相当する時間(15分)が経過したか否かを調べ(S15)、経過していなければ(S15:No)、処理S12に戻って処理を続ける。
【0046】
一方、ステップS13において、ステップS12で受信した無線広報信号に含まれるサービス識別子が、接触監視アプリケーションに固有なサービス識別子でなければ、当該受信した無線広報信号は第2種の無線広報信号であると判断して、当該受信した無線広報信号に含まれる端末識別子を、第2リストに記録し(S16)、ステップS15に移行する。このとき、第2リストに、既に同じ端末識別子が蓄積されている場合は、当該端末識別子に上書きして第2リストを更新する。また第2リストに記録しようとする端末識別子と同じ端末識別子が記録されていなければ、記録しようとする端末識別子を第2リストに追加して第2リストを更新する。
【0047】
情報処理装置1は、ステップS15において、処理開始から更新タイミングに相当する時間(15分)が経過したと判断すると、演算処理を開始する(S17)。この演算処理では、情報処理装置1は、まず、第1リストに記録されている、重複を排除した端末識別子の数n(接触監視アプリケーションが発行した、互いに異なる端末識別子の数n)をカウントする。
【0048】
また、情報処理装置1は、第2リストに記録されている、重複を排除した端末識別子の数N(端末装置2に固有な、互いに異なる端末識別子の数N)をカウントする。そして、上記第1リスト上の端末識別子の数nを、第2リスト上の端末識別子の数Nで除して、接触監視アプリケーションの推定インストール率rを求める。
【0049】
そして情報処理装置1は、この演算処理の結果求められた端末装置2の台数を表す数N(所有者の人数の推定値)と、推定インストール率rとを、自己に設定された装置識別子とともに、サーバ装置3へ送出する(S18)。またこのタイミングで第1,第2のリストをクリアして空とし、処理を終了する。
【0050】
各教室等に配置された情報処理装置1は、それぞれの教室において、上記の処理を行い、各教室における端末装置2の台数の推定値Nと、各教室における端末装置2への接触監視アプリケーションの推定インストール率rとを演算して、サーバ装置3へ送出している。
【0051】
サーバ装置3では、各情報処理装置1から受信した情報を参照し、当該情報に含まれる装置識別子に対応する情報処理装置1の設置位置を表す情報を取得する。そして当該設置位置の情報と、対応する情報処理装置1から受信した情報に含まれる端末装置2の台数の推定値Nと、接触監視アプリケーションの推定インストール率rとを関連付けて表示する。
【0052】
この表示は例えば、設置位置を表す地図情報上の位置に、対応する位置に設置された情報処理装置1から受信した情報に含まれる端末装置2の台数の推定値Nと、接触監視アプリケーションの推定インストール率rとを表示することによって行われてもよい。
【0053】
[変形例]
また端末装置2の機種によって固有の情報を定期的に発信しているときには、当該定期的に発信される信号を、上記第2種の無線広報信号として利用してもよい。一例として、近年広く利用されているスマートフォン用OSであるiOS搭載機種と、Android搭載機種とのうち、iOS搭載機種が、固有の情報(Android搭載機種が発信しない情報、以下iOS専用信号と呼ぶ)を定期的に発信している場合、この情報を発信する信号を、上記第2種の無線広報信号として利用する。もっともこの例では、Android搭載機種をカウントできないこととなる。
【0054】
そこで、日本で広く利用されている接触監視アプリケーションCocoaのように、iOS用の接触監視アプリケーションのサービス識別子Uios(第1の所定のサービス識別子)と、Android用の接触監視アプリケーションのサービス識別子Uandroid(第2の所定のサービス識別子)とが異なっている場合には、情報処理装置1は、次のように処理を行ってもよい。
【0055】
この例では、情報処理装置1は、iOS用の接触監視アプリケーションのサービス識別子Uiosを含む第1種の無線広報信号を発信する端末装置(本発明の例でいう第1の端末装置)の数(サービス識別子Uiosを含む無線広報信号であって、互いに異なる端末識別子を含む無線広報信号の、所定時間内での受信回数)niosと、Android用の接触監視アプリケーションのサービス識別子Uandroidを含む第1種の無線広報信号を発信する端末装置(本発明の例でいう第3の端末装置)の数(サービス識別子Uandroidを含む無線広報信号であって、互いに異なる端末識別子を含む無線広報信号の、所定時間内での受信回数)nandroidとをそれぞれ求める。
【0056】
一方、UiosとUandroidとが同一値である場合(第1の所定のサービス識別子と第2の所定のサービス識別子とが同じである場合)は、サービス識別子がUios(Uandroidと同値)を含む第1種の無線広報信号であって、当該第1種の無線広報信号に含まれるフラグ情報が所定の値(例えばiOS専用信号の場合にフラグ情報が所定値となっているが、アンドロイド(登録商標)OSではこの値が異なるものとする)となっており、かつ、互いに異なる端末識別子を含む無線広報信号の、所定時間内での受信回数niosと、サービス識別子がUios(Uandroidと同値)を含む第1種の無線広報信号であって、当該第1種の無線広報信号に含まれるフラグ情報が所定の値となっておらず、かつ、互いに異なる端末識別子を含む無線広報信号の、所定時間内での受信回数nandroidとをそれぞれ求めればよい。
【0057】
また、情報処理装置1は、iOS専用信号に対応するサービス識別子を含む第2種の無線広報信号を発信する端末装置(本発明の例でいう第2の端末装置)の数(iOS専用信号に対応するサービス識別子を含む無線広報信号であって、互いに異なる端末識別子を含む無線広報信号の、所定時間内での受信回数)Niosを求める。この例では、Androidで動作する端末装置2が発信する第2種の無線広報信号は利用しない。
【0058】
情報処理装置1は、これら求めた値から、niosをNiosで除して、iOSの端末装置2の利用者における、接触監視アプリケーションの推定インストール率riosをさらに求める。
【0059】
そして、iOSの端末装置2の所持者と、Androidの端末装置2の所持者とで、推定インストール率は大きく相違しないものと想定して、情報処理装置1は、nandroidをriosで除して、Androidの端末装置2の推定台数Nandroidを:
Nandroid=nandroid/rios
として求める。
【0060】
情報処理装置1は、Niosと、Nandroidとを加算して、N=Nios+Nandroidを求め、情報処理装置1の近傍に所在する端末装置2の所持者の数として出力する。またこのとき、推定インストール率として、riosを併せて出力してもよい。
【0061】
このように、本実施の形態では、特定の種類の端末装置2において比較的正確に推定インストール率を求めることができる場合には、当該特定の種類の端末装置2における推定インストール率が、全体の推定インストール率に等しいと仮定して、他の種類の端末装置2における接触監視アプリケーションでの通信の数(接触監視アプリケーションをインストールしている当該他の種類の端末装置2の台数)と、当該仮定された全体の推定インストール率とから、当該他の種類の端末装置2の全体の台数の推定値を得てもよい。
【0062】
これらを総計すれば、情報処理装置1の近傍に所在する端末装置2の所持者の数を推定できる。なお、ここでは固有の情報を定期的に発信する機種がiOS搭載機種であるものとし、そうでない機種がAndroid搭載機種であるものとしたが、この例に限られず、固有の情報を定期的に発信する機種とそうでない機種とがある場合は、上記の例の方法により、それぞれの機種の台数を推定することが可能となる。
【0063】
[実施形態の効果]
本実施の形態によると、情報処理装置1の近傍に集まっている人数の推定値を得ることができる。また、接触監視アプリケーションのインストール率を演算して提供することも可能となる。
【0064】
[セキュリティ上の利点]
さらに本実施の形態の情報処理装置1では、端末装置2の端末識別子以外の情報は収集せず、また収集しても集計に用いるだけであるため、集計の結果を参照して端末装置2の所持者個人を特定することもできない。このように本実施の形態の情報処理装置1は、個人情報の保護の観点からも利点がある。さらに、情報処理装置1は、統計情報を演算した後は、端末装置2の端末識別子を削除しておくことが好適である。これによりさらに個人情報の保護を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0065】
1 情報処理装置、2 端末装置、3 サーバ装置、11 制御部、12 記憶部、13 無線通信部、14 出力部、21 受信処理部、22 演算部、23 出力部。
図1
図2
図3