(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042028
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】基板搬送位置のずれ量検知方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20230317BHJP
H01L 21/68 20060101ALI20230317BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
H01L21/68 G
H01L21/68 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149088
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高良 穣二
(72)【発明者】
【氏名】木村 友里
【テーマコード(参考)】
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
5F004AA01
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB26
5F004CA04
5F004CA06
5F004DB03
5F004DB07
5F131AA02
5F131BA19
5F131CA06
5F131CA18
5F131DA42
5F131DD53
5F131DD93
5F131EA03
5F131EB12
5F131EB13
5F131EB81
5F131FA32
5F131KB30
5F131KB53
(57)【要約】
【課題】静電チャックと基板との相対的な位置のずれ量を検知できること。
【解決手段】基板搬送位置のずれ量検知方法は、a)基板支持面を基板支持面内で同一温度に設定する工程と、b)基板の上に形成された第1のエッチング対象膜をエッチングする工程と、c)第1のエッチング対象膜の第1のエッチングレートを取得する工程と、d)基板支持面の温度を同心円状に中心部から周縁部へと徐々に高くなるように、あるいは、中心部から周縁部へと徐々に低くなるように設定する工程と、e)基板の上に形成された第1のエッチング対象膜と同種の第2のエッチング対象膜をエッチングする工程と、f)第2のエッチング対象膜の第2のエッチングレートを取得する工程と、g)取得した第1のエッチングレートと、第2のエッチングレートとの差分を算出する工程と、f)算出した差分に基づいて、基板のずれ量を算出する工程と、を有する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置における基板搬送位置のずれ量検知方法であって、
前記基板処理装置は、
基板支持面を有する載置台がチャンバの内部に設けられたプロセスモジュールと、
前記基板支持面の温度を同心円状に制御可能な制御部と、を備え、
a)前記基板支持面を前記基板支持面内で同一温度に設定する工程と、
b)基板の上に形成された第1のエッチング対象膜をエッチングする工程と、
c)前記第1のエッチング対象膜のエッチングレートである第1のエッチングレートを取得する工程と、
d)前記基板支持面の温度を同心円状に中心部から周縁部へと徐々に高くなるように、あるいは、前記中心部から前記周縁部へと徐々に低くなるように設定する工程と、
e)前記基板の上に形成された第1のエッチング対象膜と同種の第2のエッチング対象膜をエッチングする工程と、
f)前記第2のエッチング対象膜のエッチングレートである第2のエッチングレートを取得する工程と、
g)取得した前記第1のエッチングレートと、前記第2のエッチングレートとの差分を算出する工程と、
h)算出した前記差分に基づいて、前記基板のずれ量を算出する工程と、
を有する基板搬送位置のずれ量検知方法。
【請求項2】
前記第1のエッチングレート及び前記第2のエッチングレートは、前記基板の中心を通り異なる2方向のエッチングレートをそれぞれ含む、
請求項1に記載の基板搬送位置のずれ量検知方法。
【請求項3】
前記異なる2方向のエッチングレートは、互いに直交する2方向のエッチングレートである、
請求項2に記載の基板搬送位置のずれ量検知方法。
【請求項4】
前記g)は、前記基板の中心を通る同一方向の直線上の前記第1のエッチングレートと、前記第2のエッチングレートとの差分をそれぞれ算出し、
前記h)は、前記直線上のそれぞれの差分をグラフで表した場合における前記基板の中心から両側の周縁部までの各区間において、特定の対応する範囲についてそれぞれ直線近似式を求め、それぞれの前記直線近似式に基づいて、前記ずれ量を算出する、
請求項1~3のいずれか1つに記載の基板搬送位置のずれ量検知方法。
【請求項5】
前記基板支持面は、同心円状に少なくとも2つの温度制御領域を有する、
請求項1~4のいずれか1つに記載の基板搬送位置のずれ量検知方法。
【請求項6】
前記載置台は、前記基板支持面の外周側に環状のリング支持面を有し、
前記a)は、前記基板支持面の温度及び前記リング支持面の温度を同一温度に設定し、
前記d)は、前記基板支持面及び前記リング支持面の温度を同心円状に前記中心部から前記周縁部さらに前記リング支持面へと徐々に高くなるように、あるいは、前記中心部から前記周縁部さらに前記リング支持面へと徐々に低くなるように設定する、
請求項1~5のいずれか1つに記載の基板搬送位置のずれ量検知方法。
【請求項7】
前記第1のエッチングレート及び前記第2のエッチングレートは、前記基板上に形成されたシリコン含有膜又は有機膜のエッチングレートである、
請求項1~6のいずれか1つに記載の基板搬送位置のずれ量検知方法。
【請求項8】
前記シリコン含有膜は、シリコン窒化膜又はシリコン酸化膜である、
請求項7に記載の基板搬送位置のずれ量検知方法。
【請求項9】
さらに、
i)算出した前記ずれ量に基づいて、前記基板の搬送位置を調整する、
請求項1~8のいずれか1つに記載の基板搬送位置のずれ量検知方法。
【請求項10】
前記基板処理装置は、前記基板のエッチングレートを測定する測定部を備え、
前記第1のエッチングレート及び前記第2のエッチングレートは、前記測定部で測定されて取得される、
請求項1~9のいずれか1つに記載の基板搬送位置のずれ量検知方法。
【請求項11】
基板処理装置であって、
前記基板処理装置は、
基板支持面を有する載置台がチャンバの内部に設けられたプロセスモジュールと、
基板のエッチングレートを測定する測定部と、
前記基板支持面の温度を同心円状に制御可能な制御部と、を備え、
a)前記制御部は、前記基板支持面を基板支持面内で同一温度に設定するよう前記基板処理装置を制御するように構成され、
b)前記制御部は、前記基板の上に形成された第1のエッチング対象膜をエッチングするよう前記基板処理装置を制御するように構成され、
c)前記制御部は、前記第1のエッチング対象膜のエッチングレートである第1のエッチングレートを取得するよう前記基板処理装置を制御するように構成され、
d)前記制御部は、前記基板支持面の温度を同心円状に中心部から周縁部へと徐々に高くなるように、あるいは、前記中心部から前記周縁部へと徐々に低くなるように設定するよう前記基板処理装置を制御するように構成され、
e)前記制御部は、前記基板の上に形成された第1のエッチング対象膜と同種の第2のエッチング対象膜をエッチングするよう前記基板処理装置を制御するように構成され、
f)前記制御部は、前記第2のエッチング対象膜のエッチングレートである第2のエッチングレートを取得するよう前記基板処理装置を制御するように構成され、
g)前記制御部は、取得した前記第1のエッチングレートと、前記第2のエッチングレートとの差分を算出するよう前記基板処理装置を制御するように構成され、
h)前記制御部は、算出した前記差分に基づいて、前記基板のずれ量を算出するよう前記基板処理装置を制御するように構成される、
基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板搬送位置のずれ量検知方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置でエッチング処理を行う場合において、静電チャック(ESC:Electric Static Chuck)は、消耗するため定期的に交換される。交換されたESCは、設置位置に誤差を含むため、ESCと基板との相対位置のズレに繋がり、基板の特性に大きな悪影響を与えることが知られている。これに対し、サセプタと基板との相対位置の誤差を補正するために、基板の搬送位置を目視で確認しながら位置座標を制御部に記憶させる、いわゆるティーチングを行うことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、静電チャックと基板との相対的な位置のずれ量を検知できる基板搬送位置のずれ量検知方法及び基板処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による基板搬送位置のずれ量検知方法は、基板処理装置における基板搬送位置のずれ量検知方法であって、基板処理装置は、基板支持面を有する載置台がチャンバの内部に設けられたプロセスモジュールと、基板支持面の温度を同心円状に制御可能な制御部と、を備え、a)基板支持面を基板支持面内で同一温度に設定する工程と、b)基板の上に形成された第1のエッチング対象膜をエッチングする工程と、c)第1のエッチング対象膜のエッチングレートである第1のエッチングレートを取得する工程と、d)基板支持面の温度を同心円状に中心部から周縁部へと徐々に高くなるように、あるいは、中心部から周縁部へと徐々に低くなるように設定する工程と、e)基板の上に形成された第1のエッチング対象膜と同種の第2のエッチング対象膜をエッチングする工程と、f)第2のエッチング対象膜のエッチングレートである第2のエッチングレートを取得する工程と、g)取得した第1のエッチングレートと、第2のエッチングレートとの差分を算出する工程と、f)算出した差分に基づいて、基板のずれ量を算出する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、静電チャックと基板との相対位置のずれ量を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態における基板処理装置の一例を示す横断平面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態におけるプラズマ処理装置の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態における基板支持部の本体部の温度制御領域の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態における基板支持部の本体部の断面の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態における各エッチング処理の温度条件の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態におけるコンター図とX,Y方向のエッチングレートのグラフの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態におけるX,Y方向のエッチングレートの差分を示すグラフとコンター図の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本実施形態におけるX方向のエッチングレートの差分を示すグラフから直線近似式により重心のずれ量を算出する一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本実施形態におけるY方向のエッチングレートの差分を示すグラフから直線近似式により重心のずれ量を算出する一例を示す図である。
【
図10】
図10は、本実施形態におけるESC中心に対するウエハ中心のずれ量の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、本実施形態におけるずれ量検知処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、開示する基板搬送位置のずれ量検知方法及び基板処理装置の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により開示技術が限定されるものではない。
【0009】
上述のように、ESC中心と基板中心とのズレがあると、RF(Radio Frequency)特性や温度特性が不均一となり、エッチングレートやエッチング形状の面内不均一性に繋がる。この様なESCと基板の相対位置の誤差をチャンバ内に組み付け後に数値化することは困難である。そこで、正確かつ簡便に静電チャックと基板との相対位置のずれ量を検知することが期待されている。
【0010】
[基板処理装置の構成]
図1は、本開示の一実施形態における基板処理装置の一例を示す横断平面図である。
図1に示す基板処理装置1は、枚葉で基板(以下、ウエハともいう。)にプラズマ処理等の各種処理を施すことが可能な基板処理装置である。
【0011】
図1に示すように、基板処理装置1は、トランスファモジュール10と、6つのプロセスモジュール20と、ローダモジュール30と、2つのロードロックモジュール40と、を備える。
【0012】
トランスファモジュール10は、平面視において略五角形状を有する。トランスファモジュール10は、真空室を有し、内部に搬送機構11が配置されている。搬送機構11は、ガイドレール(図示せず)と、2つのアーム12と、各アーム12の先端に配置されてウエハを支持するフォーク13とを有する。各アーム12は、スカラアームタイプであり、旋回、伸縮自在に構成されている。搬送機構11は、ガイドレールに沿って移動し、プロセスモジュール20やロードロックモジュール40の間でウエハを搬送する。なお、搬送機構11は、プロセスモジュール20やロードロックモジュール40の間でウエハを搬送することが可能であればよく、
図1に示される構成に限定されるものではない。例えば、搬送機構11の各アーム12は、旋回、伸縮自在に構成されると共に、昇降自在に構成されていてもよい。
【0013】
プロセスモジュール20は、トランスファモジュール10の周りに放射状に配置されてトランスファモジュール10に接続されている。なお、プロセスモジュール20は、プラズマ処理装置の一例である。プロセスモジュール20は、処理室を有し、内部に配置された円柱状の基板支持部21(載置台)を有する。基板支持部21は、上面から突出自在な複数の細棒状の3つのリフトピン22を有する。各リフトピン22は平面視において同一円周上に配置され、基板支持部21の上面から突出することによって基板支持部21に載置されたウエハを支持して持ち上げると共に、基板支持部21内へ退出することによって支持するウエハを基板支持部21へ載置させる。プロセスモジュール20は、基板支持部21にウエハが載置された後、内部を減圧して処理ガスを導入し、さらに内部に高周波電力を印加してプラズマを生成し、プラズマによってウエハにプラズマ処理を施す。トランスファモジュール10とプロセスモジュール20とは、開閉自在なゲートバルブ23で仕切られている。
【0014】
ローダモジュール30は、トランスファモジュール10に対向して配置されている。ローダモジュール30は、直方体状であり、大気圧雰囲気に保持された大気搬送室である。ローダモジュール30の長手方向に沿った一の側面には、2つのロードロックモジュール40が接続されている。ローダモジュール30の長手方向に沿った他の側面には、3つのロードポート31が接続されている。ロードポート31には、複数のウエハを収容する容器であるFOUP(Front-Opening Unified Pod)(図示せず)が載置される。ローダモジュール30の短手方向に沿った一の側面には、アライナ32が接続されている。また、ローダモジュール30内には、搬送機構35が配置されている。さらに、ローダモジュール30の短手方向に沿った他の側面には、測定部38が接続されている。
【0015】
アライナ32は、ウエハの位置合わせを行う。アライナ32は、駆動モータ(図示せず)によって回転される回転ステージ33を有する。回転ステージ33は、例えばウエハの直径よりも小さい直径を有し、上面にウエハを載置した状態で回転可能に構成されている。回転ステージ33の近傍には、ウエハの外周縁を検知するための光学センサ34が設けられている。アライナ32では、光学センサ34により、ウエハの中心位置及びウエハの中心に対するノッチの方向が検出され、ウエハの中心位置及びノッチの方向が所定位置及び所定方向となるように、後述のフォーク37にウエハが受け渡される。これにより、ロードロックモジュール40内においてウエハの中心位置及びノッチの方向が所定位置及び所定方向となるように、ウエハの搬送位置が調整される。
【0016】
搬送機構35は、ガイドレール(図示せず)と、アーム36と、フォーク37とを有する。アーム36は、スカラアームタイプであり、ガイドレールに沿って移動自在に構成されると共に、旋回、伸縮、昇降自在に構成される。フォーク37は、アーム36の先端に配置されてウエハを支持する。ローダモジュール30では、搬送機構35が各ロードポート31に載置されたFOUP、アライナ32、測定部38及びロードロックモジュール40の間でウエハを搬送する。なお、搬送機構35は、FOUP、アライナ32、測定部38及びロードロックモジュール40の間でウエハを搬送することが可能であればよく、
図1に示される構成に限定されるものではない。
【0017】
測定部38は、プロセスモジュール20においてエッチング処理が終了したウエハについてエッチング量を測定する。測定部38は、測定したエッチング量とエッチング処理の時間とに基づいて、エッチングレートを算出する。つまり、測定部38は、エッチングレートを測定する。測定部38は、測定したエッチングレートを後述する制御装置50に出力する。なお、測定部38は、ローダモジュール30に隣接した位置に限定されず、ローダモジュール30の内部に配置されていてもよい。
【0018】
ロードロックモジュール40は、トランスファモジュール10とローダモジュール30との間に配置されている。ロードロックモジュール40は、内部を真空、大気圧に切り換え可能な内圧可変室を有し、内部に配置された円柱状のステージ41を有する。ロードロックモジュール40は、ウエハをローダモジュール30からトランスファモジュール10へ搬入する際、内部を大気圧に維持してローダモジュール30からウエハを受け取った後、内部を減圧してトランスファモジュール10へウエハを搬入する。また、ウエハをトランスファモジュール10からローダモジュール30へ搬出する際、内部を真空に維持してトランスファモジュール10からウエハを受け取った後、内部を大気圧まで昇圧してローダモジュール30へウエハを搬入する。ステージ41は、上面から突出自在な複数の細棒状の3つのリフトピン42を有する。各リフトピン42は平面視において同一円周上に配置され、ステージ41の上面から突出することによってウエハを支持して持ち上げると共に、ステージ41内へ退出することによって支持するウエハをステージ41へ載置させる。ロードロックモジュール40とトランスファモジュール10とは、開閉自在なゲートバルブ(図示せず)で仕切られている。また、ロードロックモジュール40とローダモジュール30とは、開閉自在なゲートバルブ(図示せず)で仕切られている。
【0019】
基板処理装置1は、制御装置50を有する。制御装置50は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置等を備える。CPUは、ROM又は補助記憶装置に格納されたプログラムに基づいて動作し、基板処理装置1の各構成要素の動作を制御する。
【0020】
[プロセスモジュール20の構成]
次に、プロセスモジュール20の一例としての容量結合プラズマ処理装置の構成例について説明する。なお、以下の説明では、プロセスモジュール20を容量結合プラズマ処理装置20、又は、単にプラズマ処理装置20とも表す。
図2は、本実施形態におけるプラズマ処理装置の一例を示す図である。
【0021】
容量結合プラズマ処理装置20は、プラズマ処理チャンバ60、ガス供給部70、電源80及び排気システム90を含む。また、プラズマ処理装置20は、基板支持部21及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ60内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド61を含む。基板支持部21は、プラズマ処理チャンバ60内に配置される。シャワーヘッド61は、基板支持部21の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド61は、プラズマ処理チャンバ60の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ60は、シャワーヘッド61、プラズマ処理チャンバ60の側壁60a及び基板支持部21により規定されたプラズマ処理空間60sを有する。側壁60aは接地される。シャワーヘッド61及び基板支持部21は、プラズマ処理チャンバ60筐体とは電気的に絶縁される。
【0022】
基板支持部21は、本体部211及びリングアセンブリ212を含む。本体部211は、ウエハ(基板)Wを支持するための中央領域(基板支持面)211aと、リングアセンブリ212を支持するための環状領域(リング支持面)211bとを有する。本体部211の環状領域211bは、平面視で本体部211の中央領域211aを囲んでいる。ウエハWは、本体部211の中央領域211a上に配置され、リングアセンブリ212は、本体部211の中央領域211a上のウエハWを囲むように本体部211の環状領域211b上に配置される。一実施形態において、本体部211は、基台及び静電チャックを含む。基台は、導電性部材を含む。基台の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャックは、基台の上に配置される。静電チャックの上面は、基板支持面211aを有する。リングアセンブリ212は、1又は複数の環状部材を含む。1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。また、図示は省略するが、基板支持部21は、静電チャック、リングアセンブリ212及びウエハWのうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持部21は、ウエハWの裏面と基板支持面211aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0023】
シャワーヘッド61は、ガス供給部70からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間60s内に導入するように構成される。シャワーヘッド61は、少なくとも1つのガス供給口61a、少なくとも1つのガス拡散室61b、及び複数のガス導入口61cを有する。ガス供給口61aに供給された処理ガスは、ガス拡散室61bを通過して複数のガス導入口61cからプラズマ処理空間60s内に導入される。また、シャワーヘッド61は、導電性部材を含む。シャワーヘッド61の導電性部材は上部電極として機能する。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド61に加えて、側壁60aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0024】
ガス供給部70は、少なくとも1つのガスソース71及び少なくとも1つの流量制御器72を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部70は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース71からそれぞれに対応の流量制御器72を介してシャワーヘッド61に供給するように構成される。各流量制御器72は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部70は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する少なくとも1つの流量変調デバイスを含んでもよい。
【0025】
電源80は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ60に結合されるRF電源81を含む。RF電源81は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持部21の導電性部材及び/又はシャワーヘッド61の導電性部材に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間60sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源81は、プラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を基板支持部21の導電性部材に供給することにより、ウエハWにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分をウエハWに引き込むことができる。
【0026】
一実施形態において、RF電源81は、第1のRF生成部81a及び第2のRF生成部81bを含む。第1のRF生成部81aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部21の導電性部材及び/又はシャワーヘッド61の導電性部材に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部81aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、基板支持部21の導電性部材及び/又はシャワーヘッド61の導電性部材に供給される。第2のRF生成部81bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部21の導電性部材に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部81bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、基板支持部21の導電性部材に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0027】
また、電源80は、プラズマ処理チャンバ60に結合されるDC電源82を含んでもよい。DC電源82は、第1のDC生成部82a及び第2のDC生成部82bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部82aは、基板支持部21の導電性部材に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のDC信号は、基板支持部21の導電性部材に印加される。一実施形態において、第1のDC信号が、静電チャック内の電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、第2のDC生成部82bは、シャワーヘッド61の導電性部材に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、シャワーヘッド61の導電性部材に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号がパルス化されてもよい。なお、第1及び第2のDC生成部82a,82bは、RF電源81に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部82aが第2のRF生成部81bに代えて設けられてもよい。
【0028】
排気システム90は、例えばプラズマ処理チャンバ60の底部に設けられたガス排出口60eに接続され得る。排気システム90は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間60s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0029】
[エッチング処理の温度条件]
次に、
図3から
図6を用いて、エッチング処理の温度条件とエッチングレートについて説明する。まず、
図3及び
図4を用いて、基板支持面211aにおける温度制御領域について説明する。
図3は、本実施形態における基板支持部の本体部の温度制御領域の一例を示す図である。
図3に示すように、基板支持面211aは、中心部から順に同心円状の5つのエリアに分割される。基板支持面211aの同心円状の5つのエリアは、中心部から周縁部へと順に、エリアC1,C2,M,E,VEとしている。また、リング支持面211bの1つのエリアは、エッジリングとして、例えばフォーカスリングを載置するので、エリアFRと表している。エリアC1,C2,M,E,VE,FRは、同心円状の温度制御領域を構成する。
【0030】
図4は、本実施形態における基板支持部の本体部の断面の一例を示す図である。
図4に示すように、本体部211は、基台211cと、静電チャック211dとを有する。静電チャック211dは、エリアC1,C2,M,E,VE,FRにそれぞれ対応するヒータ213a~213fを有する。ヒータ213aは、基板支持面211aの中心部のエリアC1に対応する円形状のヒータである。ヒータ213b~213eは、基板支持面211aのエリアC2,M,E,VEに対応する円環状のヒータである。ヒータ213fは、リング支持面211bのエリアFRに対応する円環状のヒータである。ヒータ213a~213fは、それぞれ個別に温度制御が可能である。つまり、制御装置50は、基板支持面211a及びリング支持面211bの温度を同心円状に制御可能である。なお、静電チャック211dは、図示しない吸着電極を含む。また、エリアC2,M,E,VE,FRは、周方向にさらに複数の温度制御領域に分割されていてもよい。この場合、ヒータ213b~213fも分割された複数の温度制御領域に対応するように分割される。また、分割された複数の温度制御領域は、周方向に同一の温度に制御されるようにしてもよい。
【0031】
図5及び
図6では、エッチングレートに対して温度感度の高い特定のレシピを用いて、ウエハW上に形成されたシリコン窒化膜(SiN blanket)をエッチングする際に、ウエハWの温度を一定にした場合(条件T1)と、同心円状に温度勾配をつけた場合(条件T1_temp)とにおけるエッチングレートを取得した。
【0032】
図5は、本実施形態における各エッチング処理の温度条件の一例を示す図である。
図5に示すように、条件T1は、基板支持面211aにおけるウエハWの搬送位置に対する移動量(x,y)を(0,0)とする。また、条件T1では、基板支持面211a及びリング支持面211bにおけるエリアC1,C2,M,E,VE,FRの温度がt1℃に制御される。
【0033】
条件T1_tempは、基板支持面211aにおけるウエハWの搬送位置に対する移動量(x,y)を、条件T1と同様に(0,0)とする。また、条件T1_tempでは、各エリアについて、エリアC1,C2がt1℃に制御され、エリアMがt2℃に制御され、エリアE,VEがt3℃に制御される。また、条件T1_tempでは、リング支持面211bにおけるエリアFRがt3℃に制御される。ここで、温度t1~t3の関係は、t1<t2<t3である。つまり、条件T1_tempでは、同心円状にt1℃からt3℃までの温度勾配が付けられている。すなわち、条件T1_tempにおける同心円状の温度勾配は、ウエハWの中心部が周縁部よりも低い温度となる温度勾配である。言い換えると、同心円状の温度勾配は、基板支持面211aの温度を同心円状に中心部から周縁部へと徐々に高くなるように設定される。なお、同心円状の温度勾配は、ウエハWの中心部が周縁部よりも高い温度となる温度勾配としてもよい。つまり、同心円状の温度勾配は、基板支持面211aの温度を同心円状に中心部から周縁部へと徐々に低くなるように設定されてもよい。また、同心円状の温度勾配は、基板支持面211a及びリング支持面211bの温度を、同心円状に中心部から周縁部さらにリング支持面211bへと徐々に高くなるように、あるいは、中心部から周縁部さらにリング支持面211bへと徐々に低くなるように設定されてもよい。
【0034】
なお、ウエハWの温度制御は、少なくとも、基板支持面211aの温度を制御すればよく、必ずしもリング支持面211bの温度制御は必要でない。同心円状の温度勾配は、基板支持面211aに少なくとも2つの温度領域により形成されればよく、本実施形態の5つの温度領域に限定されない。また、例えば、基板支持部21内にヒータを内蔵しない場合、基板支持面211aとウエハWとの間に供給される伝熱ガスであるヘリウムガスの圧力を基板支持面211a(載置面)内で均等にすることで、ウエハWの表面温度を同一温度に制御する。一方、ヘリウムガスの圧力を基板支持面211a内の中心部と周縁部とで異なる圧力にすることで、ウエハWの表面温度を同心円状に温度勾配をつけるように制御する。また、各エリアの温度は、基板支持部21の本体部211が設定可能な範囲、例えば、0℃~120℃の範囲で温度勾配がつくように任意に設定することができる。
【0035】
図6は、本実施形態におけるコンター図とX,Y方向のエッチングレートのグラフの一例を示す図である。
図6では、条件T1及び条件T1_tempについて、ウエハWのエッチング結果として、コンター図と、ウエハWの中心を通る、異なる2方向であるX,Y方向の直線上のエッチングレートとを示している。なお、条件T1及び条件T1_tempでは、エッチングレートの測定間隔の一例として、ウエハWのエッジ部分を除いて5mm間隔で測定を実施した。条件T1では、ウエハWの中心部に対して、周縁部でエッチングレートが高い結果となり、X方向のエッチングレートのグラフ101と、Y方向のエッチングレートのグラフ102とが得られる。条件T1の結果は、プラズマ処理チャンバ60に起因する偏りを含んでいる。
【0036】
一方、条件T1_tempでは、ウエハWの中心部に対して、周縁部でエッチングレートが低い結果となり、X方向のエッチングレートのグラフ103と、Y方向のエッチングレートのグラフ104とが得られる。条件T1_tempの結果は、プラズマ処理チャンバ60に起因する偏りと、基板支持面211aの温度に起因する偏りとを含んでいる。なお、エッチングレートは、ウエハWの中心を通り、異なる2方向のエッチングレートをそれぞれ含むものであれば、X,Y方向に限定されず、他の方向であってもよい。また、異なる2方向のエッチングレートは、互いに直交する2方向のエッチングレートであることが好ましい。
【0037】
[差分の算出]
次に、プラズマ処理チャンバ60に起因する偏りをキャンセルするために、ウエハWの中心を通る、異なる2方向であるX,Y方向の直線上のエッチングレートの差分を算出する。
図7は、本実施形態におけるX,Y方向のエッチングレートの差分を示すグラフとコンター図の一例を示す図である。
【0038】
図7に示す条件T1Δは、条件T1と条件T1_tempとの差分を表している。条件T1Δでは、X方向のエッチングレートのグラフ101と、グラフ103との差分を表すグラフ105と、Y方向のエッチングレートのグラフ102と、グラフ104との差分を表すグラフ106が得られる。なお、
図7のコンター図は、差分を表している。条件T1Δでは、プラズマ処理チャンバ60に起因する偏りがキャンセルされ、基板支持面211aの温度に起因する偏りのみが含まれている。つまり、基板支持面211aの同心円状の5つのエリアの中心は、基板支持面211aの中心に対応するので、条件T1Δのグラフ105,106は、ウエハWと基板支持面211aとのずれ量を表すことになる。なお、エッチングレートの測定間隔を短くすることで、求められるずれ量の精度を上げることができる。
【0039】
ここで、ウエハWの中心(0mm)から両側の周縁部(150mm,-150mm)までの各区間において、特定の対応する範囲107,108(例えば、±60~90mm)に着目する。範囲107,108では、温度勾配に対応するように、グラフ105,106が直線に近くなっている。このため、範囲107,108のグラフ105,106に対して直線近似式を求めることで、コンター図の等高線の重心を求め、基板支持面211aに対するウエハWの相対位置を求めることができる。
【0040】
[重心のずれ量の算出]
図8は、本実施形態におけるX方向のエッチングレートの差分を示すグラフから直線近似式により重心のずれ量を算出する一例を示す図である。なお、重心のずれ量は、
図7に示すコンター図におけるエッチングレートの差分の等高線の重心のずれに対応する。
図8に示すように、グラフ105のうちウエハWの中心からの距離がプラス側の範囲107について直線近似式を求めてグラフ109を生成する。一方、グラフ105のうちウエハWの中心からの距離がマイナス側の範囲108について直線近似式を求めてグラフ110を生成する。
【0041】
次に、グラフ109,110について、y座標がΔER=2[nm/min]のときのx座標(Location)の値を求めると、グラフ109に対応するLocationの範囲(60mm~90mm)では、aであったとする。また、グラフ110に対応するLocationの範囲(-90mm~-60mm)では、y座標がΔER=2[nm/min]のときのx座標(Location)の値は、bであったとする。y座標がΔER=2[nm/min]のときのx座標のそれぞれの値に基づいて、重心を(a+b)/2として求めることができる。つまり、ウエハWの中心を基準とした場合、基板支持面211aの中心がx方向に(a+b)/2ずれていることになる。
【0042】
図9は、本実施形態におけるY方向のエッチングレートの差分を示すグラフから直線近似式により重心のずれ量を算出する一例を示す図である。
図9に示すように、グラフ106のうちウエハWの中心からの距離がプラス側の範囲107について直線近似式を求めてグラフ111を生成する。一方、グラフ106のうちウエハWの中心からの距離がマイナス側の範囲108について直線近似式を求めてグラフ112を生成する。
【0043】
次に、グラフ111,112について、y座標がΔER=2[nm/min]のときのx座標(Location)の値を求めると、グラフ111に対応するLocationの範囲(60mm~90mm)では、cであったとする。また、グラフ112に対応するLocationの範囲(-90mm~-60mm)では、y座標がΔER=2[nm/min]のときのx座標(Location)の値は、dであったとする。y座標がΔER=2[nm/min]のときのx座標のそれぞれの値に基づいて、重心を(c+d)/2として求めることができる。つまり、ウエハWの中心を基準とした場合、基板支持面211aの中心がy方向に(c+d)/2ずれていることになる。なお、グラフ109~112において、x座標の値を求めるy座標は、ΔER=2[nm/min]に限定されず、線形領域であれば、ΔER=1[nm/min]やΔER=3[nm/min]といった他の値を用いてもよい。
【0044】
図10は、本実施形態におけるESC中心に対するウエハ中心のずれ量の一例を示す図である。
図10に示すように、基板支持面211aにおけるウエハWの最外周と接する部分であるシールバンド113の中心をESC中心(x,y)=(0,0)として表すと、ウエハWの中心の座標は、X,Y方向それぞれの重心に基づいて求められ、(x,y)=((a+b)/2,(c+d)/2)となる。つまり、ESC中心に対するウエハWの中心のずれ量は、(x,y)=((a+b)/2,(c+d)/2)と求めることができる。
【0045】
[基板搬送位置のずれ量検知方法]
次に、本実施形態の基板処理装置1における基板搬送位置のずれ量検知方法について説明する。
図11は、本実施形態におけるずれ量検知処理の一例を示すフローチャートである。なお、以下の説明において、基板処理装置1の各構成要素の動作は、制御装置50によって制御される。また、
図11に示すずれ量検知処理では、検知したずれ量に基づく基板搬送位置の調整まで含めて説明する。
【0046】
制御装置50は、ロードポート31のFOUPに収容されているウエハWを、ローダモジュール30、ロードロックモジュール40及びトランスファモジュール10を介して、プロセスモジュール20まで搬送し、本体部211の基板支持面211aに載置するよう制御する。なお、ウエハWには、エッチングレートの測定のために、第1のエッチング対象膜として、例えばシリコン窒化膜が形成されており、異なる2方向であるX,Y方向でのシリコン窒化膜の膜厚は事前に計測されている。
【0047】
制御装置50は、その後、開口部を閉鎖して排気システム90を制御することにより、プラズマ処理空間60sの雰囲気が所定の真空度になるように、プラズマ処理空間60sから気体を排気する。また、制御装置50は、図示しない温調モジュールを制御することにより、ウエハWの温度が所定の同一温度となるように、温度調整される。制御装置50は、プロセスガスをプラズマ処理空間60sに供給するよう制御する。なお、プロセスガスは、例えばフッ素含有ガスを用いる。制御装置50は、RF電源81からソースRF信号及びバイアスRF信号を供給して生成したプロセスガスのプラズマによって、ウエハWをエッチング処理する第1のエッチング処理を実行するよう制御する(ステップS1)。つまり、制御装置50は、基板支持部21の基板支持面211a(載置台)に載置されたウエハWの表面温度を同一温度に制御して、所定の条件でウエハWの上に形成された第1のエッチング対象膜ををエッチングするよう制御する。
【0048】
制御装置50は、第1のエッチング処理が終了すると、プロセスガス、ソースRF信号及びバイアスRF信号の供給を停止し、図示しない開口部を開放するよう制御する。制御装置50は、ウエハWをプロセスモジュール20から搬出し、トランスファモジュール10、ロードロックモジュール40及びローダモジュール30を介して、測定部38に搬送するよう制御する。
【0049】
制御装置50は、測定部38において、第1のエッチング処理後の第1のエッチング対象膜であるシリコン窒化膜の膜厚を計測するよう制御する。計測は、事前に計測した測定位置と同じ複数の位置で実施される。制御装置50は、ウエハWについて、事前に計測したシリコン窒化膜の膜厚と第1のエッチング処理後のシリコン窒化膜の膜厚から第1のエッチングレートを取得するよう制御する(ステップS2)。制御装置50は、第1のエッチングレートを測定したウエハWを、ローダモジュール30を介してロードポート31のFOUPに収容するよう制御する。
【0050】
次に、制御装置50は、ロードポート31のFOUPに収容されている他のウエハWを、ローダモジュール30、ロードロックモジュール40及びトランスファモジュール10を介して、プロセスモジュール20まで搬送し、本体部211の基板支持面211aに載置するよう制御する。他のウエハWも、エッチングレート測定のために、第1のエッチング処理時と同じ膜である第2のエッチング対象膜(シリコン窒化膜)が形成されており、異なる2方向であるX,Y方向での同じ複数の位置での膜厚は事前に計測されている。制御装置50は、その後、開口部を閉鎖して排気システム90を制御することにより、プラズマ処理空間60sの雰囲気が所定の真空度になるように、プラズマ処理空間60sから気体を排気する。
【0051】
また、制御装置50は、図示しない温調モジュールを制御することにより、ウエハWの温度が同心円状に温度勾配をつけた所定の温度となるように、温度調整される。つまり、制御装置50は、基板支持面211aの温度を同心円状に中心部から周縁部へと徐々に高くなるように設定するよう制御する。制御装置50は、プロセスガスをプラズマ処理空間60sに供給するよう制御する。なお、プロセスガスは、例えばフッ素含有ガスを用いる。制御装置50は、RF電源81からソースRF信号及びバイアスRF信号を供給して生成したプロセスガスのプラズマによって、ウエハWをエッチング処理する第2のエッチング処理を実行するよう制御する(ステップS3)。つまり、制御装置50は、基板支持部21の基板支持面211a(載置台)に載置されたウエハWの表面温度を同心円状に温度勾配をつけるように制御して、所定の条件でウエハWの上に形成された第1のエッチング対象膜と同種の第2のエッチング対象膜をエッチングするよう制御する。
【0052】
制御装置50は、第2のエッチング処理が終了すると、ステップS2と同様に、測定部38において、第2のエッチング処理後の第2のエッチング対象膜であるシリコン窒化膜の膜厚を計測するよう制御する。計測は、事前に計測した測定位置と同じ複数の位置で実施される。制御装置50は、他のウエハWについて、事前に計測したシリコン窒化膜の膜厚と第2のエッチング処理後のシリコン窒化膜の膜厚から第2のエッチングレートを取得するよう制御する(ステップS4)。制御装置50は、第2のエッチングレートを測定したウエハWを、ローダモジュール30を介してロードポート31のFOUPに収容するよう制御する。なお、第1のエッチング処理で用いたウエハWのシリコン窒化膜の厚さが十分にある場合には、当該ウエハWを用いて第2のエッチング処理を行い、エッチング量の差分から第2のエッチングレートを算出するようにしてもよい。また、制御装置50は、ステップS1,S2と、ステップS3,S4とについて、順番を入れ替えて実行してもよい。
【0053】
制御装置50は、取得した第1のエッチングレートと第2のエッチングレートとの差分を、X,Y方向それぞれについて算出するよう制御する(ステップS5)。つまり、制御装置50は、ウエハWの中心を通る同一方向の直線上の第1のエッチングレートと第2のエッチングレートとの差分を、X,Y方向それぞれについて算出するよう制御する。制御装置50は、X,Y方向それぞれの差分のグラフについて、ウエハWの中心から両側の周縁部までの各区間において、特定の対応する範囲の直線近似式を求めるよう制御する(ステップS6)。制御装置50は、直線近似式に基づいて、ウエハWのずれ量を算出するよう制御する(ステップS7)。つまり、制御装置50は、X,Y方向それぞれについて、直線近似式のグラフにおける特定のy座標に対応するx座標の値を、特定の対応する範囲のプラス側とマイナス側について算出し、各x座標の値の差分を2で除算した値を基板支持面211a(ESC)の重心のずれ量として求めるよう制御する。制御装置50は、X,Y方向それぞれの基板支持面211aの重心のずれ量を、ウエハWの重心のずれ量に変換することで、基板支持面211a中心を基準とした座標軸におけるウエハWの中心の座標(ずれ量)を算出するよう制御する。
【0054】
制御装置50は、算出したずれ量、つまり基板支持面211a中心を基準とした座標軸におけるウエハWの中心の座標に基づいて、搬送機構11がプロセスモジュール20にウエハWを搬送する場合の基板支持面211aにおけるウエハWの搬送位置を調整するよう制御する(ステップS8)。このように、基板処理装置1では、温度を均一にした場合と温度勾配をつけた場合とにおけるエッチングレートに基づいて、静電チャック(ESC)と基板(ウエハW)との相対位置のずれ量を検知できる。つまり、所定のずれ量を超えた場合には、ESCの再組付けを行うか否かを判定することができる。また、ESCとウエハWとの相対位置起因以外のエッチングレートの偏り成分(RF偏り、エッジリングずれ等)をキャンセルすることができる。さらに、基板処理装置1の運用中も含めてプラズマ処理チャンバ60を大気開放せずに基板搬送位置を調整することができる。
【0055】
なお、上記した実施形態では、ウエハW上に形成されたシリコン窒化膜のエッチングレートを用いたが、これに限定されない。エッチングレートは、温度感度が高い膜のエッチングレートであればよく、例えば、シリコン含有膜や有機膜のエッチングレートを用いてもよい。シリコン含有膜としては、上述のシリコン窒化膜の他にシリコン酸化膜が挙げられる。また、有機膜としては、レジスト等の炭素含有膜が挙げられる。
【0056】
以上、本実施形態によれば、基板処理装置1は、基板支持面211aを有する載置台(本体部211)がチャンバ(プラズマ処理チャンバ60)の内部に設けられたプロセスモジュール20と、基板(ウエハW)のエッチングレートを測定する測定部38と、基板支持面211aの温度を同心円状に制御可能な制御部(制御装置50)と、を備える。a)制御部は、基板支持面211aを基板支持面211a内で同一温度に設定するよう基板処理装置1を制御するように構成される。b)制御部は、基板の上に形成された第1のエッチング対象膜をエッチングするよう基板処理装置1を制御するように構成される。c)制御部は、第1のエッチング対象膜のエッチングレートである第1のエッチングレートを取得するよう基板処理装置1を制御するように構成される。d)制御部は、基板支持面の温度を同心円状に中心部から周縁部へと徐々に高くなるように、あるいは、前記中心部から前記周縁部へと徐々に低くなるように設定するよう基板処理装置1を制御するように構成される。e)制御部は、基板の上に形成された第1のエッチング対象膜と同種の第2のエッチング対象膜をエッチングするよう基板処理装置1を制御するように構成される。f)制御部は、第2のエッチング対象膜のエッチングレートである第2のエッチングレートを取得するよう基板処理装置1を制御するように構成される。g)制御部は、取得した第1のエッチングレートと、第2のエッチングレートとの差分を算出するよう基板処理装置1を制御するように構成される。h)制御部は、算出した差分に基づいて、基板のずれ量を算出するよう基板処理装置1を制御するように構成される。その結果、静電チャック(本体部211)と基板との相対位置のずれ量を検知できる。また、静電チャックとウエハWとの相対位置起因以外のエッチングレートの偏り成分をキャンセルすることができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、第1のエッチングレート及び第2のエッチングレートは、基板の中心を通り異なる2方向のエッチングレートをそれぞれ含む。その結果、静電チャックと基板との相対位置のずれ量を検知できる。
【0058】
また、本実施形態によれば、異なる2方向のエッチングレートは、互いに直交する2方向のエッチングレートである。その結果、静電チャックと基板との相対位置のずれ量を検知できる。
【0059】
また、本実施形態によれば、g)は、基板の中心を通る同一方向の直線上の第1のエッチングレートと、第2のエッチングレートとの差分をそれぞれ算出し、h)は、直線上のそれぞれの差分をグラフで表した場合における基板の中心から両側の周縁部までの各区間において、特定の対応する範囲についてそれぞれ直線近似式を求め、それぞれの直線近似式に基づいて、ずれ量を算出する。その結果、静電チャックと基板との相対位置のずれ量を検知できる。
【0060】
また、本実施形態によれば、基板支持面は、同心円状に少なくとも2つの温度制御領域を有する。その結果、第1のエッチングレートと第2のエッチングレートとの差分を求めることができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、載置台は、基板支持面の外周側に環状のリング支持面211bを有する。a)は、基板支持面の温度及びリング支持面の温度を同一温度に設定し、d)は、基板支持面及びリング支持面の温度を同心円状に中心部から周縁部さらにリング支持面211bへと徐々に高くなるように、あるいは、中心部から周縁部さらにリング支持面211bへと徐々に低くなるように設定する。その結果、静電チャックと基板との相対位置のずれ量を検知できる。
【0062】
また、本実施形態によれば、第1のエッチングレート及び第2のエッチングレートは、基板上に形成されたシリコン含有膜又は有機膜のエッチングレートである。その結果、静電チャックと基板との相対位置のずれ量を検知できる。
【0063】
また、本実施形態によれば、シリコン含有膜は、シリコン窒化膜又はシリコン酸化膜である。その結果、静電チャックと基板との相対位置のずれ量を検知できる。
【0064】
また、本実施形態によれば、さらに、i)制御部は、算出したずれ量に基づいて、基板の搬送位置を調整するよう基板処理装置1を制御するように構成される。その結果、正確かつ容易に基板搬送位置の調整ができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、第1のエッチングレート及び第2のエッチングレートは、測定部38で測定されて取得される。その結果、静電チャックと基板との相対位置のずれ量を検知できる。
【0066】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形体で省略、置換、変更されてもよい。
【0067】
また、上記した各実施形態では、測定部38を基板処理装置1に設けたが、これに限定されない。例えば、基板処理装置1とは独立した測定装置を用いてエッチングレート測定のためにエッチング処理前後の膜厚を計測及び取得するようにしてもよい。
【0068】
また、上記した実施形態では、プラズマ源として容量結合型プラズマを用いてウエハWに対してエッチング等の処理を行うプロセスモジュール20を例に説明したが、開示の技術はこれに限られない。プラズマを用いてウエハWに対して処理を行う装置であれば、プラズマ源は容量結合プラズマに限られず、例えば、誘導結合プラズマ、マイクロ波プラズマ、マグネトロンプラズマ等、任意のプラズマ源を用いることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 基板処理装置
10 トランスファモジュール
11 搬送機構
20 プロセスモジュール
21 基板支持部
30 ローダモジュール
38 測定部
40 ロードロックモジュール
50 制御装置
60 プラズマ処理チャンバ
70 ガス供給部
81 RF電源
90 排気システム
211a 基板支持面
211b リング支持面
211 本体部
212 リングアセンブリ
W ウエハ