(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042119
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】シート搬送装置、自動原稿搬送装置、画像読取装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 7/02 20060101AFI20230317BHJP
B65H 1/04 20060101ALI20230317BHJP
B65H 3/06 20060101ALI20230317BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20230317BHJP
H04N 1/04 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
B65H7/02
B65H1/04 322
B65H3/06 340E
G03G15/00 480
G03G15/00 107
H04N1/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149240
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】水野 陽太朗
(72)【発明者】
【氏名】松本 恭昌
(72)【発明者】
【氏名】飯田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 千沙
(72)【発明者】
【氏名】澤田 健
(72)【発明者】
【氏名】中井 祐輔
【テーマコード(参考)】
2H072
2H076
3F048
3F343
5C072
【Fターム(参考)】
2H072AA08
2H072AA14
2H072AB18
2H072AB21
2H072AB27
2H072BA03
2H072BA17
2H072BA19
2H072CA01
2H072HB07
2H072JA02
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2H076BA15
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2H076BB10
3F048AA01
3F048AA08
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3F343MC28
5C072AA01
5C072BA01
5C072BA20
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5C072RA16
5C072UA02
5C072XA01
(57)【要約】
【課題】装置の大型化や装置のコストアップを抑えることができるシート搬送装置、自動原稿搬送装置、画像読取装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】金属検知手段は、磁力発生手段たる電磁石801と、電磁石801により引き寄せられたシートなどの原稿MSに付されたステイプル針やクリップなどの金属片mが接触する接触部材802とを備えている。また、接触部材802と金属片mとが接触したときの音を集音可能な集音手段たる集音マイク803を有し、この集音マイク803が集音した音に基づいて、金属片mの有無を検知する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを載置するシート載置部と、
前記シート載置部に載置されたシートを搬送するシート搬送手段と、
前記シートに付いている金属を検知する金属検知手段とを備えたシート搬送装置において、
前記金属検知手段は、
磁力発生手段と、
前記磁力発生手段により引き寄せられた前記シートに付された金属が接触する接触部材と、
前記接触部材と前記金属とが接触したときの音を集音可能な集音手段とを備え、
前記集音手段が集音した音に基づいて、前記金属を検知することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート搬送装置において、
前記シート搬送手段は、前記シート載置部に載置されたシートを給送する給送部材と、前記給送部材により給送された複数枚のシートを一枚に分離する分離部とを有し、
前記接触部材を、前記分離部よりもシート搬送方向上流に配置したことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項3】
請求項1に記載のシート搬送装置において、
前記接触部材を、前記シート載置部に載置されたシートに対向するように配置したことを特徴するシート搬送装置。
【請求項4】
請求項3に記載のシート搬送装置において、
前記シート搬送手段は、前記シート載置部に載置されたシートを給送する給送部材を有し、
前記接触部材と前記磁力発生手段とを、前記給送部材を保持する保持部材に設けたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項5】
請求項3に記載のシート搬送装置において、
前記シート載置部に載置されたシートの幅方向位置を規制するシート規制部材を備え、
前記接触部材と前記磁力発生手段を、前記シート規制部材に設けたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項6】
請求項3乃至5いずれか一項に記載のシート搬送装置において、
前記金属検知手段は、シート搬送開始前に金属検知を実施することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか一項に記載のシート搬送装置において、
前記磁力発生手段が、電磁石であることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項8】
請求項1乃至6いずれか一項に記載のシート搬送装置において、
前記磁力発生手段は、永久磁石であることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載のシート搬送装置において、
前記金属検知手段は、前記シートに対して磁力が作用する状態と、磁力が作用しない状態とを繰り返し発生させて金属検知を行うことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項10】
原稿を搬送する原稿搬送部を備え、
前記原稿搬送部によって原稿を画像読取部へ搬送する自動原稿搬送装置において、
前記原稿搬送部として、請求項1乃至9いずれか一項に記載のシート搬送装置を用いたことを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項11】
自動原稿搬送装置と、
自動原稿搬送装置によって搬送される原稿上の画像を読み取る画像読取手段とを備えた画像読取装置において、
前記自動原稿搬送装置として、請求項10に記載の自動原稿搬送装置を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項12】
画像読取装置と、
前記画像読取装置で読み取った画像情報に基づいて画像を形成する画像形成手段と、を備える画像形成装置において、
前記画像読取装置として、請求項11に記載の画像読取装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
シートを搬送するシート搬送部を備え、
前記シート搬送部によって搬送されるシートに画像を形成する画像形成装置において、
前記シート搬送部として、請求項1乃至9いずれか一項に記載のシート搬送装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送装置、自動原稿搬送装置、画像読取装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シートを載置するシート載置部と、シート載置部に載置されたシートを搬送するシート搬送手段と、シートに付いている金属を検知する金属検知手段とを備えたシート搬送装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、上記シート搬送装置として、先端に磁石部材が固定され、揺動可能に支持されたアクチュエータと、アクチュエータの揺動を検出するセンサとを有する金属検知手段を備えたものが記載されている。シートにクリップやステイプル針などの金属が付いているときは、シートの金属と磁石部材との間の磁力によりアクチュエータが揺動し、その揺動をセンサが検知することで、シートに金属が付いていることを検知している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の金属検知手段の構成は、装置の大型化やコストアップを招くという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、シートを載置するシート載置部と、前記シート載置部に載置されたシートを搬送するシート搬送手段と、前記シートに付いている金属を検知する金属検知手段とを備えたシート搬送装置において、前記金属検知手段は、磁力発生手段と、前記磁力発生手段により引き寄せられた前記シートに付された金属が接触する接触部材と、前記接触部材と前記金属とが接触したときの音を集音可能な集音手段とを備え、前記集音手段が集音した音に基づいて、前記金属を検知することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、装置の大型化や装置のコストアップを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】同複写機における画像形成部の内部構成の一部を拡大して示す部分拡大構成図。
【
図3】同画像形成部における4つのプロセスユニットからなるタンデム部の一部を示す部分拡大図。
【
図4】同複写機のスキャナ及びADFを示す斜視図。
【
図5】同ADFの要部構成をスキャナの上部とともに示す拡大構成図。
【
図6】同ADF及び同スキャナの電気回路の一部を示すブロック図。
【
図7】同ADFの集音マイク、電磁石および接触部材の配置に関する説明図。
【
図8】原稿に付けられた金属片の検知について説明する図。
【
図9】同ADFコントローラによって実施される金属片判別処理を示すフローチャート。
【
図11】同変形例1における原稿に付けられた金属片の検知について説明する図。
【
図13】変形例2における原稿に付けられた金属片の検知について説明する図。
【
図15】電磁石の鉄心を接触部材として用いた例について説明する図。
【
図16】永久磁石を用いて、原稿に作用する磁力をON/OFF制御する構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を、電子写真方式の複写機(以下、単に複写機という)に適用した実施形態について説明する。
まず、実施形態に係る複写機の基本的な構成について説明する。
図1は、実施形態に係る複写機を示す概略構成図である。この複写機は、画像形成部1と、白紙供給装置40と、原稿読取装置50とを備えている。原稿読取装置50は、画像形成部1の上に固定されたスキャナ150と、これに支持される原稿搬送装置たるADF51とを有している。
【0009】
白紙供給装置40は、ペーパーバンク41内に多段に配設された2つのシート載置部たる給紙カセット42を有している。また、白紙供給装置40は、給紙カセットからシートたる転写紙を送り出す給送部材たる送出ローラ43、送り出された転写紙を分離して給紙路44に供給する分離部材たる分離ローラ45等も有している。また、画像形成部1の給紙路37に転写紙を搬送する複数の搬送ローラ47等も有している。白紙供給装置40は、給紙カセット内の転写紙を画像形成部1内の給紙路37内に給紙する。
【0010】
図2は、画像形成部の内部構成の一部を拡大して示す部分拡大構成図である。画像形成手段としての画像形成部1は、光書込装置2、K,Y,M,C色のトナー像を形成する4つのプロセスユニット3K,Y,M,C、転写ユニット24を備えている。また、画像形成部1は、紙搬送ユニット28、レジストローラ対33、定着装置34、スイッチバック装置36、給紙路37等を備えている。光書込装置2は、装置内に配設されたレーザーダイオードやLED等の光源を駆動して、ドラム状の4つの感光体4K,Y,M,Cに向けてレーザー光Lを照射する。この照射により、感光体4K,Y,M,Cの表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。なお、符号の後に付されたK,Y,M,Cという添字は、ブラック,イエロー,マゼンタ,シアン用の仕様であることを示している。
【0011】
プロセスユニット3K,Y,M,Cは、それぞれ、感光体とその周囲に配設される各種装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、画像形成部1本体に対して着脱可能になっている。ブラック用のプロセスユニット3Kを例にすると、これは、感光体4Kの他、これの表面に形成された静電潜像をブラックトナー像に現像するための現像装置6Kを有している。また、後述するK用の1次転写ニップを通過した後の感光体4K表面に付着している転写残トナーをクリーニングするドラムクリーニング装置15なども有している。本複写機は、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cを、後述する中間転写ベルト25に対してその無端移動方向に沿って並べるように対向配設した、いわゆるタンデム型の構成になっている。
【0012】
図3は、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cからなるタンデム部の一部を示す部分拡大図である。なお、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cは、それぞれ使用するトナーの色が異なる他はほぼ同様の構成になっているので、同図においては各符号に付すK,Y,M,Cという添字を省略している。同図に示すように、プロセスユニット3は、感光体4の周りに、帯電装置5、現像装置6、ドラムクリーニング装置15、除電ランプ22等を有している。
【0013】
感光体4は、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。
【0014】
現像装置6は、磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を用いて潜像を現像するようになっている。現像装置6は、内部に収容している二成分現像剤を攪拌しながら搬送して現像スリーブ12に供給する攪拌部7と、現像スリーブ12に担持された二成分現像剤中のトナーを感光体4に転移させるための現像部11とを有している。
【0015】
攪拌部7は、現像部11よりも低い位置に設けられており、互いに平行配設された2本の搬送スクリュウ8、これらスクリュウ間に設けられた仕切り板、現像ケース9の底面に設けられたトナー濃度センサー10などを有している。
【0016】
現像部11は、現像ケース9の開口を通して感光体4に対向する現像スリーブ12、これの内部に回転不能に設けられたマグネットローラ13、現像スリーブ12に先端を接近させるドクタブレード14などを有している。現像スリーブ12は、非磁性の回転可能な筒状になっている。マグネットローラ13は、ドクタブレード14との対向位置からスリーブの回転方向に向けて順次並ぶ複数の磁極を有している。これら磁極は、それぞれスリーブ上の二成分現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。これにより、攪拌部7から送られてくる二成分現像剤を現像スリーブ12表面に引き寄せて担持させるとともに、スリーブ表面上で磁力線に沿った磁気ブラシが形成される。
【0017】
磁気ブラシは、現像スリーブ12の回転に伴ってドクタブレード14との対向位置を通過する際に適正な層厚に規制されてから、感光体4に対向する現像領域に搬送される。そして、現像スリーブ12に印加される現像バイアスと、感光体4の静電潜像との電位差によって磁気ブラシのトナーが静電潜像上に転移し、現像に寄与する。更に、現像スリーブ12の回転に伴って再び現像部11内に磁気ブラシが戻り、マグネットローラ13の磁極間に形成される反発磁界の影響によってスリーブ表面から離脱した後、攪拌部7内に戻される。攪拌部7内には、トナー濃度センサー10による検知結果に基づいて、二成分現像剤に適量のトナーが補給される。なお、現像装置6として、二成分現像剤を用いるものの代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤を用いるものを採用してもよい。
【0018】
ドラムクリーニング装置15は、ポリウレタンゴム製のクリーニングブレード16を感光体4に押し当てる方式であるが、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、ドラムクリーニング装置15は、外周面を感光体4に接触させる接触導電性のファーブラシ17を、図中矢印方向に回転自在に設けている。このファーブラシ17は、固形潤滑剤から潤滑剤を掻き取って微粉末にしながら感光体4表面に塗布する役割も兼ねている。
【0019】
ファーブラシ17にバイアスを印加する金属製の電界ローラ18が、図中矢印方向に回転自在に設けられており、これにスクレーパ19の先端を押し当てている。ファーブラシ17に付着したトナーは、ファーブラシ17に対してカウンタ方向に接触して回転しながらバイアスが印加される電界ローラ18に転位する。そして、トナーは、スクレーパ19によって電界ローラ18から掻き取られた後、回収スクリュウ20上に落下する。回収スクリュウ20は、回収トナーをドラムクリーニング装置15における図紙面と直交する方向の端部に向けて搬送して、外部のリサイクル搬送装置21に受け渡す。リサイクル搬送装置21は、受け渡されたトナーを現像装置6に送ってリサイクルする。
【0020】
除電ランプ22は、光照射によって感光体4を除電する。除電された感光体4の表面は、帯電装置23によって一様に帯電せしめられた後、光書込装置2による光書込処理がなされる。なお、帯電装置23としては、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体4に当接させながら回転させるものを用いている。感光体4に対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を用いてもよい。
【0021】
先に示した
図2において、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cの感光体4K,Y,M,Cには、これまで説明してきたプロセスによってK,Y,M,Cトナー像が形成される。
【0022】
4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cの下方には、転写ユニット24が配設されている。この転写ユニット24は、複数のローラによって張架した中間転写ベルト25を、感光体4K,Y,M,Cに当接させながら図中時計回り方向に無端移動させる。これにより、感光体4K,Y,M,Cと中間転写ベルト25とが当接するK,Y,M,C用の1次転写ニップが形成されている。K,Y,M,C用の1次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された1次転写ローラ26K,Y,M,Cが、中間転写ベルト25を感光体4K,Y,M,Cに向けて押圧している。これら1次転写ローラ26K,Y,M,Cには、それぞれ電源によって1次転写バイアスが印加されている。これにより、K,Y,M,C用の1次転写ニップには、感光体4K,Y,M,C上のトナー像を中間転写ベルト25に向けて静電移動させる1次転写電界が形成されている。図中時計回り方向の無端移動に伴ってK,Y,M,C用の1次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト25のおもて面には、各1次転写ニップでトナー像が順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト25のおもて面には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0023】
転写ユニット24の図中下方には、駆動ローラ30と2次転写ローラ31との間に、無端状の紙搬送ベルト29を掛け渡して無端移動させる紙搬送ユニット28が設けられている。自らの2次転写ローラ31と、転写ユニット24の下部張架ローラ27との間に、中間転写ベルト25及び紙搬送ベルト29が挟み込まれている。これにより、中間転写ベルト25のおもて面と、紙搬送ベルト29のおもて面とが当接する2次転写ニップが形成されている。2次転写ローラ31には電源によって2次転写バイアスが印加されている。一方、転写ユニット24の下部張架ローラ27は接地されている。これにより、2次転写ニップに2次転写電界が形成されている。
【0024】
この2次転写ニップの図中右側方には、レジストローラ対33が配設されており、ローラ間に挟み込んだ転写紙を中間転写ベルト25上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで2次転写ニップに送り出す。2次転写ニップ内では、中間転写ベルト25上の4色トナー像が2次転写電界やニップ圧の影響によって転写紙に一括2次転写され、転写紙の白色と相まってフルカラー画像となる。2次転写ニップを通過した転写紙は、中間転写ベルト25から離間して、紙搬送ベルト29のおもて面に保持されながら、その無端移動に伴って定着装置34へと搬送される。
【0025】
2次転写ニップを通過した中間転写ベルト25の表面には、2次転写ニップで転写紙に転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト25に当接するベルトクリーニング装置によって掻き取り除去される。
【0026】
定着装置34に搬送された転写紙は、定着装置34内における加圧や加熱によってフルカラー画像が定着させしめられた後、定着装置34から排紙ローラ対35に送られた後、機外へと排出される。
【0027】
先に示した
図1において、紙搬送ユニット28および定着装置34の下には、スイッチバック装置36が配設されている。これにより、片面に対する画像定着処理を終えた転写紙が、切換爪で転写紙の進路を転写紙反転装置側に切り換えられ、そこで反転されて再び2次転写ニップに進入する。そして、もう片面にも画像の2次転写処理と定着処理とが施された後、排紙トレイ上に排紙される。
【0028】
画像形成部1の上に固定されたスキャナ150は、第1面読取手段としての第1面固定読取部151や、第1面読取手段としての移動読取部152を有している。
【0029】
第1面読取手段としての移動読取部152は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された第2コンタクトガラスの直下に配設されており、光源や、反射ミラーなどからなる光学系を図中左右方向に移動させることができる。移動読取部152は、光学系を図中左側から右側に移動させていく過程で、光源から発した光を第2コンタクトガラス上に載置された原稿で反射させた後、複数の反射ミラーを経由させ、スキャナ本体に固定された画像読取センサー153で受光する。
【0030】
第1面読取手段としての第1面固定読取部151は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された第1コンタクトガラスの直下に配設されている。そして、後述するADF51によって搬送される原稿MSが第1コンタクトガラス上を通過する際に、光源から発した光を原稿面で順次反射させながら、複数の反射ミラーを経由させて画像読取センサーで受光する。これにより、光源や反射ミラー等からなる光学系を移動させることなく、原稿MSの第1面を走査する。
【0031】
また、スキャナ150は、原稿MSの第2面を読み取る密着型イメージセンサーも有している。この密着型イメージセンサーについては後述する。
【0032】
スキャナ150の上に配設されたADF51は、本体カバー52に、読取前の原稿MSを載置するための原稿載置台53、原稿MSを搬送するための搬送ユニット、読取後の原稿MSをスタックするための原稿スタック台55などを保持している。
図4に示すように、ADF51は、スキャナ150に固定された蝶番159によって上下方向に揺動可能に支持されている。ADF51は、その揺動によって開閉扉のような動きをとり、開かれた状態でスキャナ150の上面の第1コンタクトガラス154や第2コンタクトガラス155を露出させる。原稿束の片隅を綴じた本などの片綴じ原稿の場合には、原稿を1枚ずつ分離することができないため、ADF51による搬送を行うことができない。そこで、片綴じ原稿の場合には、ADF51を
図4に示すように開いた後、読み取らせたいページが見開かれた片綴じ原稿を下向きにして第2コンタクトガラス155上に載せた後、ADF51を閉じる。そして、スキャナ150の
図1に示した移動読取部152によってそのページの画像が読み取られる。
【0033】
一方、互いに独立した複数の原稿MSを単に積み重ねた原稿束の場合には、その原稿MSをADF51によって1枚ずつ自動搬送しながら、スキャナ150内の第1面固定読取部151やADF51内の密着型イメージセンサーに順次読み取らせていくことができる。この場合、原稿束を原稿載置台53上にセットした後、ユーザーは、コピースタートボタンを押す。すると、ADF51が、原稿載置台53上に載置された原稿束の原稿MSを上から順に送り、それを反転させながら原稿スタック台55に向けて搬送する。この搬送の過程で、原稿MSは、反転し、直後にスキャナ150の第1面固定読取部151の真上を通る。このとき、原稿MSの第1面の画像がスキャナ150の第1面固定読取部151によって読み取られる。
【0034】
図5は、ADF51の要部構成をスキャナ150の上部とともに示す拡大構成図である。また、
図6は、ADF51及びスキャナ150の電気回路の一部を示すブロック図である。ADF51は、原稿セット部A、分離搬送部B、レジスト部C、ターン部D、第1読取搬送部E、第2読取搬送部F、排紙部G、スタック部H等を備えている。
【0035】
図6に示すように、ADF51は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等からなるコントローラ904を有しており、これによって各種の機器やセンサーを制御することができる。このコントローラ904には、レジストセンサー65、原稿セットセンサー63、排紙センサー61、突き当てセンサー72、原稿幅センサー73、読取入口センサー67、長さセンサー57,58などが接続されている。また、給紙モータ191、搬送モータ192、ピックアップモータ193、排紙クラッチ194なども接続されている。また、集音手段としての集音マイク803、磁力発生手段たる電磁石801なども接続されている。
【0036】
電磁石801は、原稿に付いているステイプル針やクリップなどの金属片を後述する接触部材802(
図7参照)に引き寄せて、接触部材802に接触させるものである。集音マイク803は、原稿に付いているステイプル針やクリップなどの金属片が接触部材802に当たったときの音を取り込むものである。
【0037】
スキャナ150は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)等からなる読取制御部903を有している。これにより、スキャナ150内部の各種機器やセンサーを制御することができる。また、読取制御部903は、I/FによってADF51のコントローラ904と接続されており、読取制御部903は、コントローラ904を介して、ADF51内の各種機器やセンサーを間接的に制御することもできる。
【0038】
図5において、原稿セット部Aは、シートたる原稿MSの束がセットされる原稿載置台53等を有している。また、分離搬送部Bは、セットされた原稿MSの束から原稿MSを一枚ずつ分離して給送するものである。また、レジスト部Cは、給送された原稿MSに一時的に突き当たって原稿MSを整合した後に送り出すものである。また、ターン部Dは、C字状に湾曲する湾曲搬送部を有しており、この湾曲搬送部内で原稿MSを折り返しながらその上下を反転させるものである。また、第1読取搬送部Eは、第1コンタクトガラス154の上で原稿MSを搬送しながら、第1コンタクトガラス154の下方でスキャナの内部に配設されている第1面固定読取部151に原稿MSの第1面を読み取らせるものである。また、第2読取搬送部Fは、密着型イメージセンサー95の下で原稿MSを搬送しながら、原稿MSの第2面を密着型イメージセンサー95に読み取らせるものである。また、排紙部Gは、両面の画像が読み取られた原稿MSをスタック部Hに向けて排出するものである。また、スタック部Hは、原稿スタック台55の上に原稿MSをスタックするものである。
【0039】
原稿MSは、原稿MSの束の厚みに応じて図中矢印a、b方向に揺動可能な可動原稿テーブル54の上に原稿先端部が載せられるとともに、原稿後端側が原稿載置台53の上に載せられた状態でセットされる。このとき、原稿載置台53上において、その幅方向(図紙面に直交する方向)の一端がセット基準部56a(
図7参照)に突き当てられ、他端がサイドフェンス56b(
図7参照)に突き当てられることで、幅方向における位置が調整される。このようにしてセットされる原稿MSは、可動原稿テーブル54の上方で揺動可能に配設されたレバー部材62を押し上げる。すると、それに伴って原稿セットセンサー63が原稿MSのセットを検知して、検知信号をコントローラ904に送信する。そして、この検知信号は、コントローラ904からI/Fを介して読取制御部903に送られる。
【0040】
原稿載置台53には、原稿MSの搬送方向の長さを検知する反射型フォトセンサー又はアクチュエーター・タイプのセンサーからなる第1長さセンサー57、第2長さセンサー58が保持されている。これら長さセンサーにより、原稿MSの搬送方向の長さが検知される。
【0041】
可動原稿テーブル54の上に載置された原稿MSの束の上方には、カム機構によって上下方向(図中矢印c,d方向)に移動可能に支持される給送部材たるピックアップローラ80が配設されている。このカム機構は、ピックアップモータ193によって駆動することで、ピックアップローラ80を上下移動させることが可能である。可動原稿テーブル54が図中矢印a方向に揺動して、ピックアップローラ80が原稿MSの束における一番上の原稿MSに当接する。更に可動原稿テーブル54が上昇すると、それに伴ってピックアップローラ80が上昇し、やがてテーブル上昇センサー59によって可動原稿テーブル54の上限までの上昇が検知される。これにより、可動原稿テーブル54の上昇が停止する。
【0042】
複写機の本体に設けられたテンキーやディスプレイ等からなる本体操作部902に対しては、操作者によって両面読取モードか、あるいは片面読取モードかを示す読取モード設定のためのキー操作や、コピースタートキーの押下操作などが行われる。即ち、本体操作部902は、両面読取モードであるのか、あるいは片面読取モードであるのかの情報を取得するモード情報取得手段として機能している。コピースタートキーが押下されると、本体制御部901からI/Fを介してADF51のコントローラ904に原稿給紙信号が送信される。すると、ピックアップローラ80が給紙モータ191の正転によって回転駆動して、可動原稿テーブル54上の原稿MSを可動原稿テーブル54上から送り出す。
【0043】
両面読取モードか、片面読取モードかの設定に際しては、可動原稿テーブル54上に載置された全ての原稿MSについて一括して両面、片面の設定を行うことが可能である。また、1枚目及び10枚目の原稿MSについては両面読取モードに設定する一方で、その他の原稿MSについては片面読取モードに設定するなどといった具合に、個々の原稿MSについてそれぞれ個別に読取モードを設定することも可能である。
【0044】
ピックアップローラ80によって送り出された原稿MSは、分離搬送部Bに進入して、給紙ベルト84と分離ローラ85とのの当接位置である分離部に送り込まれる。この給紙ベルト84は、駆動ローラ82と従動ローラ83とによって張架されており、給紙モータ191の正転に伴う駆動ローラ82の回転によって図中時計回り方向に無端移動せしめられる。この給紙ベルト84の下部張架面には、給紙モータ191の正転によって図中時計回りに回転駆動される分離ローラ85が当接して分離部を形成している。分離部においては、給紙ベルト84の表面が給紙方向に移動する。これに対し、分離ローラ85は、給紙ベルト84に所定の圧力で当接しており、給紙ベルト84に直接当接している際、あるいは当接部に原稿MSが1枚だけ挟み込まれている際には、ベルト又は原稿MSに連れ回る。但し、当接部に複数枚の原稿MSが挟み込まれた際には、連れ回り力がトルクリミッターのトルクよりも低くなることから、連れ回り方向とは逆の図中時計回りに回転駆動する。これにより、最上位よりも下の原稿MSには、分離ローラ85によって給紙とは反対方向の移動力が付与されて、数枚の原稿から最上位の原稿MSだけが分離される。
【0045】
給紙ベルト84や分離ローラ85の働きによって1枚に分離された原稿MSは、レジスト部Cに進入する。そして、突き当てセンサー72の直下を通過する際にその先端が検知される。このとき、ピックアップモータ193が回転し、ピックアップローラ80は原稿上面から退避する。原稿MSは、給紙ベルト84の無端移動力のみによって搬送される。そして、突き当てセンサー72によって原稿MSの先端が検知されたタイミングから所定時間だけ給紙ベルト84の無端移動が継続する。その後、原稿MSの先端がプルアウト従動ローラ86とこれに当接しながら回転駆動するプルアウト駆動ローラ87との当接部に突き当たる。原稿MSの先端が両ローラの当接部に突き当たった状態で、原稿MSの後端側が給紙方向に向けて送られることで、原稿MSは所定量だけ撓んだ状態になりながら、先端が当接部に位置決めされる。これにより、原稿MSのスキュー(傾き)が補正されて、原稿MSは給紙方向に沿った姿勢になる。
【0046】
プルアウト駆動ローラ87は、原稿MSのスキューを補正する役割の他に、スキューが補正された原稿MSを原稿搬送方向下流側の中間ローラ対66まで搬送する役割を担っている。ピックアップローラ80と給紙ベルト84を張架する駆動ローラ82とプルアウト駆動ローラ87と中間ローラ対の駆動ローラは、ワンウェイクラッチを介して給紙モータ191に接続されている。プルアウト駆動ローラ87と中間ローラ対の駆動ローラに接続されてワンウェイクラッチは、給紙モータ191の逆転時に駆動力を伝達し、駆動ローラ82に接続されたワンウェイクラッチは、給紙モータ191の正転時に駆動力を伝達する。そのため、給紙モータ191が逆転すると、プルアウト駆動ローラ87と、中間ローラ対66の駆動ローラとが回転を開始するとともに、給紙ベルト84の無端移動が停止する。また、このとき、ピックアップローラ80の回転も停止される。
【0047】
プルアウト駆動ローラ87から送り出された原稿MSは、原稿幅センサー73の直下を通過する。原稿幅センサー73は、反射型フォトセンサー等からなる紙検知部を複数有しており、これら紙検知部は原稿幅方向(図紙面に直交する方向)に並んでいる。どの紙検知部が原稿MSを検知するのかに基づいて、原稿MSの幅方向のサイズが検知される。また、原稿MSの搬送方向の長さは、原稿MSの先端が突き当てセンサー72によって検知されてから、原稿MSの後端が突き当てセンサー72によって検知されなくなるまでのタイミングに基づいて検知される。
【0048】
原稿幅センサー73によって幅方向のサイズが検知された原稿MSの先端は、ターン部Dに進入して、中間ローラ対66のローラ間の当接部に挟み込まれる。この中間ローラ対66による原稿MSの搬送速度は、後述する第1読取搬送部Eでの原稿MSの搬送速度よりも高速に設定されている。これにより、原稿MSを第1読取搬送部Eに送り込むまでの時間の短縮化が図られている。
【0049】
ターン部D内を搬送される原稿MSの先端は、原稿先端が読取入口センサー67との対向位置を通過する。これによって原稿MSの先端が読取入口センサー67によって検知されると、その先端が搬送方向下流側の読取入口ローラ対(89と90との対)の位置まで搬送されるまでの間に、中間ローラ対66による原稿搬送速度が減速される。また、搬送モータ192の回転駆動の開始に伴って、読取入口ローラ対(89,90)における一方のローラ、読取出口ローラ対92における一方のローラ、第2読取出口ローラ対93における一方のローラがそれぞれ回転駆動を開始する。
【0050】
ターン部D内においては、原稿MSが中間ローラ対66と読取入口ローラ対(89、90)との間の湾曲搬送路で搬送される間に上下面が逆転されるとともに、搬送方向が折り返される。そして、読取入口ローラ対(89、90)のローラ間のニップを通過した原稿MSの先端は、レジストセンサー65の直下を通過する。このとき原稿MSの先端がレジストセンサー65によって検知されると、所定の搬送距離をかけながら原稿搬送速度が減速されていき、第1読取搬送部Eの手前で原稿MSの搬送が一時停止される。また、読取制御部903にI/Fを介して一時停止信号が送信される。
【0051】
一時停止信号を受けた読取制御部903が読取開始信号を送信すると、コントローラ904の制御により、原稿MSの先端が第1読取搬送部E内に到達するまで、搬送モータ192の回転が再開されて所定の搬送速度まで原稿MSの搬送速度が増速される。そして、原稿MSの先端が第1面固定読取部151による読取位置に到達するタイミングで、コントローラ904から読取制御部903に対して原稿MSの第1面の副走査方向有効画像領域を示すゲート信号が送信される。この送信は、原稿MSの後端が第1面固定読取部151による読取位置を抜け出るまで続けられ、原稿MSの第1面が第1面固定読取部151によって読み取られる。なお、原稿MSの先端が第1面固定読取部151による読取位置に到達するタイミングは、搬送モータ192のパルスカウントに基づいて算出される。
【0052】
第1読取搬送部Eを通過した原稿MSは、後述の読取出口ローラ対92を経由した後、その先端が排紙センサー61によって検知される。片面読取モードが設定されている場合には、後述する密着型イメージセンサー95による原稿MSの第2面の読取が不要である。そこで、排紙センサー61によって原稿MSの先端が検知されると、排紙クラッチ194によって搬送モータ192の駆動力が排紙ローラ対94に繋がれ、排紙ローラ対94における図中下側の排紙ローラが図中時計回り方向に回転駆動される。また、排紙センサー61によって原稿MSの先端が検知されてからの搬送モータ192のパルスカウントに基づいて、原稿MSの後端が排紙ローラ対94のニップを抜け出るタイミングが演算される。そして、この演算結果に基づいて、排紙クラッチ194は、搬送モータ192の駆動力を切って排紙ローラ対94を停止する。
【0053】
一方、両面読取モードが設定されている場合には、排紙センサー61によって原稿MSの先端が検知された後、密着型イメージセンサー95に到達するまでのタイミングが搬送モータ192のパルスカウントに基づいて演算される。そして、そのタイミングでコントローラ904から読取制御部903に対して原稿MSの第2面における副走査方向の有効画像領域を示すゲート信号が送信される。この送信は、原稿MSの後端が密着型イメージセンサー95による読取位置を抜け出るまで続けられ、原稿MSの第2面が密着型イメージセンサー95によって読み取られる。
【0054】
第2面読取手段としての密着型イメージセンサー95(CIS)は、原稿MSに付着している糊状の異物が読取面に付着することによる読取縦すじを防止する目的で、読取面にコーティング処理が施されている。密着型イメージセンサー95との対向位置には、原稿MSを非読取面側(第1面側)から支持する原稿支持手段としての第2読取ローラ96が配設されている。この第2読取ローラ96は、密着型イメージセンサー95による読取位置での原稿MSの浮きを防止するとともに、密着型イメージセンサー95におけるシェーディングデータを取得するための基準白部として機能する役割を担っている。本複写機は、密着型イメージセンサー95との対向位置で原稿を支持する原稿支持手段として、第2読取ローラ96を用いたが、ガイド板状のものを用いてもよい。
【0055】
次に、本実施形態の特徴部について、説明する。
図7は、集音マイク803、電磁石801および接触部材802の配置に関する説明図である。(a)は、概略平面図であり、(b)は、概略側面図である。
【0056】
ユーザーの不注意で金属片であるステイプル針やクリップが付いた状態の原稿MSを原稿載置台53にセットする場合がある。原稿の後端側にステイプル針などの金属片mが付いている場合は、原稿MSを原稿載置台53にセットした際に、金属片mが露出しているため、原稿の搬送を開始する前に、金属片mの存在に気づきやすい。しかし、
図7(a)に示すように、原稿MSを原稿載置台53にセットした際に、原稿の先端側は給紙カバー98に覆い隠される。その結果、原稿MSの先端に金属片mが付いている場合、金属片mに気づかずに、原稿MSの搬送を開始してしまうおそれが高い。
【0057】
ステイプル針やクリップなどの金属片が付いた状態の原稿MSを搬送すると、金属片によって搬送ローラ等の部材が傷つくおそれがある。また、ステイプル針やクリップなどの金属片により綴じられた複数枚の原稿MSの束の先端が分離部BNに進入すると、原稿の束のうち最上位の原稿は、給紙ベルト84により引き続き搬送される。しかし、2枚以降の原稿は、分離ローラ85により戻される搬送力が付与される。その結果、金属片により綴じられた箇所に大きな応力が加わり、原稿に破れや折れやしわなどが発生し、原稿にダメージを与えるおそれがある。
そのため、本実施形態では、原稿に付いている金属片mを検知する金属検知手段を設け、金属検知手段が金属片mを検知したときは、原稿の搬送を停止するようにした。
【0058】
原稿に付いているステイプル針やクリップなどの金属片mを検知する金属検知手段は、接触部材802と、磁力発生手段たる電磁石801と、集音手段たる集音マイク803とを有している。接触部材802は、ピックアップローラ80と分離部BNとの間に配置されている。電磁石801は、接触部材802の真上に配置している。
【0059】
本実施形態では、ピックアップローラ80を可動原稿テーブル54に載置された原稿に対して接離可能に保持するホルダ80aが幅方向の略中央に配置されている。接触部材802および電磁石801は、ホルダ80aを挟んで幅方向両側に配置されている。
【0060】
接触部材802は、原稿MSの金属片mが接触部材802に当たったときに動作音とは異なる異音を発し、かつ、電磁石801の磁力が搬送経路の原稿に及ぶような材質であればよい。特に、金属片mが衝突したときの衝突音が大きく音響効果の高いガラス材などが好適である。
【0061】
集音マイク803は、給紙カバー98に取り付けられており、ピックアップローラ80に対して原稿搬送の上流側に配置されている。なお、集音マイク803は、原稿MSの金属片が接触部材802に衝突したときの衝突音を集音できる位置であればよく、装置のデッドスペースなどに配置すればよい。このように、本実施形態では、集音マイク803を装置のデッドスペースに配置可能であるため、集音マイク803の配置のために装置を拡張するような事態を回避できる。その結果、装置の大型化を抑えることができる。
【0062】
なお、
図7(a)の符号56は、原稿MSをセットする際のセット基準部であり、符号55は、サイドフェンスである。原稿載置台53にセットされた原稿MSは、幅方向一端がセット基準部56aに突き当たり、他端がサイドフェンス56bに突き当たることで、幅方向の位置が規制される。すなわち、本実施形態では、サイドフェンス56bとセット基準部56aとが、規制部材として機能している。
【0063】
図8は、原稿MSに付けられた金属片mの検知について、説明する図である。
ピックアップローラ80により原稿載置台53の原稿MSを給紙する際に、コントローラ904は、電磁石801に通電し、原稿搬送路の接触部材802が対向する領域に磁力を発生させる。原稿MSに付いている金属片mが接触部材802が対向する領域に進入すると、金属片mが電磁石801の磁力により接触部材802へ引き寄せられる。この金属片mを接触部材802へ引き寄せる磁力により、原稿MSの金属片mの周囲が浮上し、金属片mが接触部材802に衝突する(
図8(b)参照)。この金属片mが接触部材802に衝突することで、異音(衝突音)が発生する。その結果、集音マイク803が集音する動作音に異音(衝突音)が混じり、特徴的な動作音となる。これにより、正常搬送時の動作音と区別がつき、集音マイク803が集音した動作音から、原稿に金属片mが付着していることを検知することができる。
【0064】
また、本実施形態では、接触部材802を分離部BNよりも原稿搬送方向上流側に配置し、原稿MSの先端が分離部BNに到達する前に、金属片mの有無を判定して原稿MSの搬送を停止できるようにしている。よって、金属片mにより綴じられた複数の原稿の先端が分離部BNに進入するのを抑制することができ、原稿MSの破れや折れやしわなどの発生を抑制でき、原稿MSのダメージを抑制できる。
【0065】
また、電磁石801への通電をON/OFF制御し、磁力のON/OFF制御を繰り返し行い、金属片mが、接触部材802に複数回当てるのが好ましい。このように、金属片mを接触部材802に複数回当てることで、より特徴的な動作音を集音することができる。これにより、後述するように、機械学習において、より少ない学習データで正常搬送と、金属片mが接触部材802に接触した異常搬送とを判別することが可能となる。
【0066】
また、金属片mが接触部材802に衝突してから、動作音から異常搬送と判定して給紙動作が停止するまでには所定の時間を要するため、金属片mが接触部材802に衝突した後も、所定の時間は搬送が継続される。その結果、電磁石801への通電を常にON状態とした場合は、金属片mが磁力により接触部材802に接触した状態で原稿MSの金属片mが付いている付近が搬送されなくなってしまう。その結果、原稿にしわや折れ等が発生するおそれがある。一方、磁力のON/OFF制御を繰り返し行う場合は、磁力がOFFのときは、原稿が搬送されるため、動作音を解析し異常搬送と判定して給紙動作が停止するまでの間に、原稿搬送路内で原稿が撓むなどして、原稿にしわや折れなどが発生するのを抑制できる。
なお、金属片mが接触部材802との対向領域を通過する間に複数回の磁力のON/OFF制御が困難な場合は、磁力を常に発生させるようにする。
【0067】
また、本実施形態では、幅方向の略中央に配置されたホルダ80aに干渉しないように、接触部材802や電磁石801が複数に分割されている。しかし、本実施形態では、装置の部材の配置により、接触部材802や電磁石801が複数に分割されたとしても、一つの集音マイク803で原稿のセット基準部56a側端部と、サイドフェンス56b側端部について、金属片mの有無を検知することができる。これにより、部品点数の増加を抑制でき、装置のコストアップを抑制できる。
【0068】
図9は、コントローラ904によって実施される金属片判別処理を示すフローチャートである。
上述したように本体制御部901からコントローラ904に原稿給紙信号が送信されると、給紙/分離動作を開始し(S1)、同時に集音マイク803により、給紙/分離動作音を集音する(S2)。また、電磁石801に通電し、原稿搬送路の接触部材802が対向する領域に磁力を発生させる。
【0069】
コントローラ904は、集音された動作音データを、順次、所定長のフレームに切り出し、音の特徴量であるメル周波数ケプストラム係数を算出する(S3)。磁力のON/OFF制御を繰り返し行い、金属片mを接触部材802に複数回当てるようにする場合は、動作音データの切り出しは、金属片mが接触部材802に対向する対向領域に進入してから、この対向領域を抜けるまでの時間以上とするのが好ましい。これにより、切り出した動作音データに複数回の金属片mが接触部材802に衝突した衝突音を収録することがきる。
【0070】
メル周波数ケプストラム係数は、音声のスペクトル包絡(声道成分に由来した周波数特性)に対して、ヒトの周波数知覚特性を考慮したメル周波数で重み付けをした特徴量であり、音声認識の特徴量としてよく用いられるものである。
【0071】
上記「メル周波数」は、人間には、可聴域の下限に近い音は高めに、上限に近い音は低めに聞こえるという音高知覚があり、その人間音声知覚の特徴を考慮して変換された周波数のことである。「ケプストラム」は、音声信号(波形データ)をフーリエ変換して周波数スペクトルに変換した後、その対数を取ったものを逆フーリエ変換して時間空間に戻したものである。「ケプストラム」は、「スペクトルの対数のフーリエ逆変換」(スペクトルのスペクトル)とも呼ばれ、スペクトルの微細な構造(細かい微妙な変化)とスペクトルのゆるやかな変化(スペクトル包絡)とに分離したものである。
【0072】
メル周波数ケプストラム係数は、一般的には次のようにして求められる。すなわち、音データから求めた振幅スペクトラムをメル周波数に変換した後、三角形のバンドパスフィルタをオーバラップさせながら並べ、フィルタバンクとしたメルフィルタバンクを用いて、20次元に圧縮し、メル周波数スペクトラムを求める。求めたメル周波数スペクトラムを離散コサイン変換し、高次成分のスペクトルの微細な構造(細かい微妙な変化)と低次成分のスペクトル包絡とに分離するメル周波数ケプストラムを求める。このメル周波数ケプストラムの低次成分のスペクトル包絡を取り出すことで、メル周波数ケプストラム係数を得る。
【0073】
メル周波数ケプストラム係数は、一般的に12次元(12個のデータ)からなるスペクトル包絡を取り出して特徴量としたものであり、少ないデータ量で音声データの特徴を表現できる。これにより、コントローラ904の計算負荷を減らすことができる。なお、メル周波数ケプストラムから取り出す次元は、12次元に限らず、適宜、決めればよい。
【0074】
メル周波数ケプストラム係数は、声道成分に由来した周波数特性である音声のスペクトル包絡を取り出したものである。しかし、給紙/分離動作時の正常搬送時の動作音のスペクトル包絡、原稿の金属片mが接触部材802に衝突した時の動作音のスペクトル包絡が互いに異なっている。よって、メル周波数ケプストラム係数により、原稿の金属片mが接触部材802に衝突が発生しているか否かを判別することが可能である。
【0075】
なお、本実施形態では、原稿の金属片mの接触部材802への衝突判定に用いる動作音の特徴を定量的に表現した特徴量としてメル周波数ケプストラム係数を用いているが、これに限られるものではない。例えば、金属片mの接触部材802への衝突判定に用いる動作音の特徴量として線形予測係数等、公知の音の特徴量を用いてもよい。
【0076】
算出されたメル周波数ケプストラム係数は、教師あり学習を用いるパターン認識モデルの一つであるサポートベクターマシンによる分類器に与えられ、動作状態が判別される(S4)。
【0077】
サポートベクターマシンは、複数次元データを複数のクラスに線形分離し分類する。サポートベクターマシンは、集音マイク803で集音した給紙/分離動作の動作音の特徴量であるメル周波数ケプストラム係数を、金属片を検知していない正常搬送と、金属片を検知した異常搬送のいずれかに分類する。つまり、原稿の金属片mが接触部材802に衝突したときの衝突音が集音された動作音から算出されたメル周波数ケプストラム係数は、異常搬送に分類する。一方、衝突音が集音されていない動作音から算出されたメル周波数ケプストラム係数は正常搬送に分類する。
【0078】
サポートベクターマシンは、少ない教師データで高い汎化性能を持て、高精度に、正常搬送、異常搬送の判別を行うことができる。なお、本実施形態では、分類器にサポートベクターマシンを用いているが、ディープラーニング手法による分類器を用いても良い。
【0079】
サポートベクターマシンによる分類器が、与えられたメル周波数ケプストラム係数を正常搬送に分類し正常搬送(金属片m無し)と判別した場合は、上述した原稿搬送処理を実行する。すなわち、給紙/分離動作を終了後(S5)、給紙モータ191を逆転させ、プルアウト駆動ローラ87によりスキュー補正した原稿を送り出すプルアウト動作(S6)後、第1読取搬送部Eの手前で原稿MSの搬送を一時停止するレジスト処理(S7)を行う。その後、読取制御部903からの読取開始信号の受信を待ち(S8)、受信後は、原稿の搬送を再開し、原稿を第1読取搬送部E、第2読取搬送部Fおよび排紙部Gへ順次搬送する読取搬送処理を開始する(S9)
【0080】
一方、原稿に金属片mが付いており、金属片mが接触部材802に当たって異音が発生したときの動作音から算出したメル周波数ケプストラム係数が与えられたときは、分類器は、与えられたメル周波数ケプストラム係数を異常搬送に分類する。分類器が、メル周波数ケプストラム係数を異常搬送(金属片有り)に分類した場合は、給紙モータ191の駆動を停止するとともに、ピックアップモータ193によりピックアップローラ80を上昇させて、給紙/分離動作を停止する(S10)。また、アラーム音とともに本体操作部902の表示部に、「原稿の搬送異常を検知しました。原稿を確認してください」等のメッセージを表示し、ユーザーへ搬送状態を通知する(S11)。
【0081】
原稿の後端側がステイプル針などの金属片mで綴じられている場合は、金属片mが、接触部材802との対向領域に進入する前に、原稿の先端が分離部BNに進入してしまう。そして、原稿の後端が接触部材802との対向領域に進入するまで、搬送が継続されるおそれがある。このように、原稿の先端が分離部BNに進入した後も、搬送が継続されると、金属片mで綴じられた箇所に大きな応力が加わり、破れや折れ、しわなど発生し、原稿にダメージを与えるおそれがある。
【0082】
後端側がステイプル針などの金属片mで綴じられている複数の原稿が分離部BNに進入すると、給紙ベルト84に接触している最上位の原稿は搬送され続けるが、2枚目以降の原稿は、分離ローラ85により止められる。そのため、後端側がステイプル針などの金属片mで綴じられている複数の原稿のうち分離ローラ85により止められている2番目以降の原稿が最上位原稿の搬送抵抗となり、最上位原稿とピックアップローラ80との間にスリップが発生する。
【0083】
そこで、集音マイク803が集音した動作音からピックアップローラ80と原稿との間にスリップが発生しているか否かを判定し、スリップが発生していると判定したときは、原稿の搬送を停止するようにしてもよい。これにより、原稿の後端側で綴じられたステイプル針などの金属片mが、接触部材802との対向領域に進入する前に、原稿の搬送を停止することができ、金属片mで綴じられている原稿後端に破れや折れなどが発生するのを抑制できる。
【0084】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
[変形例1]
図10は、変形例1の構成を示す概略図である。
図10に示すように変形例1は、接触部材802および電磁石801を、ピックアップローラ80から分離部BNまでの原稿搬送路の下側に配置したものである。接触部材802は、原稿ガイド88のガイド面よりも下方に配置されており、電磁石801は、接触部材802の下方に配置されている。
【0085】
図10に示すように、原稿搬送路の下側は、シート幅方向の中央部付近に部材が配置されていないため、接触部材802や電磁石801を複数に分割することなく、原稿幅方向に長い一つの接触部材802および電磁石801を配置することができる。これにより、部品点数を削減でき、組み付け工数の削減等を図ることができる。また、この変形例1では、原稿幅方向中央に付いた金属片mについても検知することができる。
【0086】
図11は、変形例1における原稿に付けられた金属片mの検知について説明する図である。
原稿MSに金属片mが無い場合は、原稿は、ピックアップローラ80により給送された原稿は、原稿ガイド88にガイドされて、分離部BNへ移動する。一方、原稿MSに金属片mが有る場合は、原稿MSの金属片mが、接触部材802との対向領域に進入すると、電磁石801の磁力により接触部材802に引き寄せられる。そして、原稿の金属片mの周囲が下側に曲がって金属片mが接触部材802に衝突し(
図10(b)参照)、異音(衝突音)が発生する。よって、この変形例1でも、集音マイク803が集音する動作音に異音(衝突音)が混じり特徴的な動作音となり、動作音から原稿に金属片mが付着していることが検知される。
【0087】
[変形例2]
図12は、変形例2の構成を示す概略図である。
変形例2は、ピックアップローラ80を支持して昇降させるホルダ80aに接触部材802および電磁石801を設け、接触部材802を原稿載置台53に載置された原稿の先端に対向配置したものである。この変形例2に示す構成では、ピックアップローラ80による給送開始前に、原稿に金属片mが付いているか否かの検知を行うことができる。
【0088】
ステイプル針などの金属片mで綴じれた複数枚の原稿のうち、最上位の原稿はピックアップローラ80から搬送力を付与されるが、それ以外の原稿については、搬送力は付与されない。そのため、綴じられた金属片mの箇所で応力が働き、金属片m付近で折れやしわなどが発生し、原稿にダメージを与えるおそれがある。変形例2では、給送開始前に、原稿に金属片mが付いているか否かの検知を行うことができるため、原稿にダメージを与えるのを防止できる。
【0089】
図13は、変形例2における原稿に付けられた金属片mの検知について説明する図である。
図13(a)に示すように、原稿が原稿載置台53にセットされ、原稿MSの読取が指示されると、可動原稿テーブル54が上昇する。そして、テーブル上昇センサー59がONとなり、原稿載置台53の原稿束の上面の位置を給紙位置に位置させたら、可動原稿テーブル54の上昇を停止する。可動原稿テーブル54の上昇が停止したら、電磁石801に通電する。原稿MSの先端の金属片mが付いている場合は、
図13(b)に示すように、金属片mが磁力により引き寄せられ、原稿MSの先端が浮上し、金属片mが接触部材802に衝突し、異音(衝突音)が発生する。これにより、集音マイク803が集音する動作音に異音(衝突音)が混じり、集音マイク803が集音した動作音から、原稿に金属片mが付着していることを検知することができる。
【0090】
変形例2では、電磁石801への通電をON/OFF制御し、磁力のON/OFF制御を繰り返し行い、金属片mを接触部材802に複数回当てるようにし、特徴点な動作音を得られるようにする。
【0091】
原稿MSに金属片mが付着していることを検知したら、可動原稿テーブル54を下降させて、アラーム音とともに本本体操作部902の表示部に、「異常を検知しました。原稿を確認してください」等のメッセージを表示し、ユーザーへ通知する。一方、集音マイク803が集音した動作音が正常の場合は、ピックアップローラ80などを駆動し、原稿の搬送を開始する。
【0092】
なお、ピックアップローラ80の駆動開始後も、電磁石801に通電して磁力を発生させるようにし、原稿搬送中も引き続き金属片mの検知を行うことが好ましい。これにより、原稿MSの先端よりも搬送方向上流側の金属片mについても、検知を行うことができる。そして、突き当てセンサー72(
図5参照)が原稿を検知して、ピックアップローラ80を上昇させる際に、電磁石801への通電をOFFにして磁力をOFFにする。2枚目以降については、ピックアップローラ80を下降させてピックアップローラ80が原稿載置台53の最上位の原稿MSに当接したら、電磁石801を通電させて金属片mの検知を行う。
【0093】
[変形例3]
図14は、変形例3の構成を示す概略図である。
変形例3は、サイドフェンス56bの原稿搬送方向下流側端部と、セット基準部56aの原稿搬送方向下流側端部とに接触部材802と電磁石801とを配置したものである。
【0094】
この変形例3についても、変形例2と同様、原稿搬送前に金属片mの有無を検知することができ、原稿MSにダメージを与えるのを防止できる。また、この変形例3は、変形例2に比べて接触部材802、電磁石801の幅方向長さが短くても、原稿MSの幅方向両端の金属片mの検知を行うことができる。
【0095】
また、サイドフェンス56bとセット基準部56aとに設けた接触部材802と電磁石801とを集音マイク803が集音可能範囲で、搬送方向に長くしてもよい。かかる構成とすることで、搬送方向に広い範囲で、原稿の幅方向両端付近に付いている金属片mを検知することができる。
【0096】
図15は、電磁石801の鉄心801bを接触部材として用いた例について、説明する図である。
図15(a)は、
図7に示した構成において、電磁石801の鉄心801bを接触部材として用いた一例を示す図であり、
図15(b)は、変形例1の構成において、電磁石801の鉄心801bを接触部材として用いた一例を示す図である。また、
図15(c)は、変形例2の構成において、電磁石801の鉄心801bを接触部材として用いた一例を示す図であり、
図15(d)は、変形例3の構成において、電磁石801の鉄心801bを接触部材として用いた一例を示す図である。
【0097】
図15(a)~
図15(d)に示すように、電磁石801は、鉄心801bと鉄心801bに巻き付くコイル801aとからなる。そして、鉄心801bの一部を、実施例および変形例に示す接触部材と同様に配置し、鉄心801bの一部を磁力により引き寄せられた原稿に付いている金属片mが当たる接触部802′として利用する。鉄心801bは、金属部材であるため、原稿MSに付いている金属片mが当たると、特徴的な大きな衝突音を発生する。よって、電磁石801の鉄心801bを接触部材として用いた場合も、集音マイク803が集音した動作音から、正常搬送と、金属片mが鉄心801bに衝突した異常搬送とを良好に区分けすることができ、精度よく原稿MSの金属片mの検知を行うことができる。
【0098】
また、本実施形態では、磁力発生手段として電磁石を用いているが、永久磁石を用いてもよい。永久磁石を用いることで簡単な構成で磁力を発生でき、電磁石を用いる場合に比べて、装置のコストダウンを図ることができる。一方、電磁石を用いることで、磁力のON/OFF制御を行うことができ、上述したように、金属片mを接触部材802に複数回衝突させることができ、より特徴的な動作音を集音することができ、精度よく金属片mの検知を行うことができる。
【0099】
なお、永久磁石を用いた構成であっても、
図16に示すような構成とすることで、原稿に作用する磁力をON/OFFさせることが可能となる。すなわち、永久磁石804と、接触部材802との間の遮蔽位置と、退避位置との間を往復移動する磁力遮蔽部材805を設ける構成である。
磁力遮蔽部材805が、図中破線の遮蔽位置にあるときは、永久磁石804の磁力が磁力遮蔽部材805により遮蔽され、磁力が、原稿搬送路の接触部材802との対向領域に及ばず、原稿に作用する磁力をOFFにできる。一方、磁力遮蔽部材805が図中実線の退避位置にあるときは、永久磁石804の磁力が原稿搬送路の接触部材802との対向領域に及び、原稿に作用する磁力をONにすることができる。よって、この磁力遮蔽部材805を遮蔽位置と退避位置との間を往復移動させることで、磁力のON/OFF制御を行うことができる。
【0100】
また、上述では、シート給送装置としてADF51に本発明を適用した例について説明したが、シート給送装置としての白紙供給装置40に本発明を適用することもできる。
おもて面に画像が印刷されたシートたる転写紙を裏紙として再利用する際に、ステイプル針やクリップなどの金属片を取り忘れて白紙供給装置40の給紙カセット42にセットするおそれがある。その結果、上述と同様、転写紙に付いている金属片によって搬送ローラ等の部材が傷つくおそれがある。よって、白紙供給装置40においても、上述同様、接触部材802と電磁石801を送出ローラ43から分離ローラ45までの間やサイドフェンスなどに配置する。そして、集音マイク803で磁力により引き寄せられた転写紙に付けられた金属片が接触部材に衝突したときの音を集音して金属の有無を判定する。金属が付いている判定した場合は、異常があるとして、給送を停止する。これにより、転写紙に付いている金属片によって搬送ローラ等の部材が傷つくのを抑制することができる。
【0101】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
原稿MSなどのシートを載置する原稿載置台53などのシート載置部と、シート載置部に載置されたシートを搬送するシート搬送手段と、シートに付いている金属を検知する金属検知手段とを備えたシート搬送装置において、金属検知手段は、電磁石801などの磁力発生手段と、磁力発生手段により引き寄せられたシートに付された金属片mなどの金属が接触する接触部材802と、接触部材802と金属とが接触したときの音を集音可能な集音マイク803などの集音手段とを備え、集音手段が集音した音に基づいて、金属を検知する。
特許文献1に記載の金属検知手段では、アクチュエータが揺動するためスペースを装置内に設ける必要があり、装置の大型化を招くおそれがある。また、シート幅方向中央に配置された搬送ローラなどの装置の部材の配置等により、磁石部材を複数に分割した場合、磁石部材に対応してアクチュエータおよびセンサを設ける必要があり、部品点数が多くなり、装置のコストアップにつながるおそれがある。
これに対し、態様1では、揺動するような部材なしで、金属の有無を検知することができ、装置内に部材が揺動するスペースを確保する必要がなく、装置の大型化を回避できる。また、集音手段は、接触部材に金属が接触したときの音を集音できる箇所であればよく、配置の自由度が高く装置のデッドスペースに配置することも可能である。よって、集音手段の配置のために装置を拡張するような事態を回避でき、装置の大型化を抑えることができる。
また、態様1では、集音手段で広範囲に金属が接触部材の接触したときの音を集音することができる。よって、装置の部材配置等により磁力発生手段や接触部材を複数に分割した場合でも、一つの集音手段で各接触部材の金属が接触したときの音を集音することが可能となる。これにより、磁力発生手段等を複数に分割した場合において、特許文献1の金属検知手段よりも部品点数の削減を図ることができ、装置のコストアップを抑制することができる。
【0102】
(態様2)
態様1において、シート搬送手段は、原稿載置台53などのシート載置部に載置されたシートを給送するピックアップローラ80などの給送部材と、給送部材により給送された複数枚のシートを一枚に分離する分離部BNとを有し、接触部材802を、分離部BNよりもシート搬送方向上流に配置した。
これによれば、実施形態で説明したように、原稿MSなどのシートの先端が分離部BNに進入する前に、金属がシートに付いているか否かを判定することができる。これにより、シートに金属が付いていることが検知されたときは、シートの先端が分離部BNに進入する前に、シートの搬送を停止することができる。これにより、金属により複数枚綴じられたシート束の先端が、分離部BNに進入するのを抑制でき、シートに破れや折れなどのダメージが生じるのを抑制することができる。
【0103】
(態様3)
態様1において、接触部材802を、原稿載置台53などのシート載置部に載置されたシートに対向するように配置した。
これによれば、変形例2や変形例3で説明したように原稿MSなどのシート搬送開始前にシートに金属が付いているか否かの検出を行うことができる。これにより、搬送によって金属で綴じられたシートに折れやしわなどのダメージが発生するのを防止できる。
【0104】
(態様4)
態様3において、シート搬送手段は、原稿載置台53などのシート載置部に載置されたシートを給送するピックアップローラ80などの給送部材を有し、接触部材802と、電磁石801などの磁力発生手段とを、給送部材を保持するホルダ80aなどの保持部材に設けた。
これによれば、変形例2で説明したように、接触部材802を原稿載置台53などのシート載置部に載置されたシートに対向させることができ、かつ、シート載置部に載置されたシートに付いている金属に対して接触部材に引き寄せる磁力を作用させることができる。これにより、シート搬送開始前にシートに金属が付いているか否かの検出を行うことができる。
【0105】
(態様5)
態様3において、原稿載置台53などのシート載置部に載置されたシートの幅方向位置を規制するサイドフェンス56bやセット基準部56aなどのシート規制部材を備え、接触部材802と電磁石801などの磁力発生手段を、シート規制部材に設けた。
これによれば、変形例3で説明したように、接触部材802を原稿載置台53などのシート載置部に載置されたシートに対向させることができ、かつ、シート載置部に載置されたシートに付いている金属に対して接触部材に引き寄せる磁力を作用させることができる。これにより、シート搬送開始前にシートに金属が付いているか否かの検出を行うことができる。
【0106】
(態様6)
態様3乃至5いずれかにおいて、金属検知手段は、シート搬送開始前に金属検知を実施する。
これによれば、変形例2、変形例3で説明したように、搬送によって金属で綴じられたシートに折れやしわなどのダメージが発生するのを防止できる。
【0107】
(態様7)
態様1乃至6いずれかにおいて、磁力発生手段が、電磁石である。
これによれば、実施形態で説明したように、通電のON/OFF制御で磁力のON/OFF制御を行うことができ、永久磁石の場合に比べて、省スペースな構成で磁力のON/OFF制御ができる。また、コイル801aに流す電流で作用させる磁力の調整を行うことができる。
【0108】
(態様8)
態様1乃至6いずかにおいて、磁力発生手段は、永久磁石である。
これによれば、実施形態で説明したように、磁力発生手段として電磁石を用いた場合に比べて、安価に構成することができる。また、磁力遮蔽部材を用いることで、電磁石と同様にシートに作用する磁力のON/OFF制御も可能である。
【0109】
(態様9)
態様7または8において、金属検知手段は、シートに対して磁力が作用する状態と、磁力が作用しない状態とを繰り返し発生させて金属検知を行う。
これによれば、実施形態で説明したように、金属片mなどの金属を接触部材802に複数回衝突させることができ、より特徴的な動作音を集音マイクなどの集音手段で集音することができる。これにより、機械学習において、より少ない学習データで正常時の動作音と、金属片mが接触部材802に接触したときの動作音とを判別することが可能となる。
【0110】
(態様10)
原稿を搬送する原稿搬送部を備え、原稿搬送部によって原稿を画像読取部へ搬送するADF51などの自動原稿搬送装置において、原稿搬送部として、態様1乃至9いずれかのシート搬送装置を用いた。
これによれば、実施形態で説明したように、原稿搬送部が原稿の金属により傷つけられるのを抑制し、かつ、装置の大型化や装置のコストアップを抑えることができる。
【0111】
(態様11)
ADF51などの自動原稿搬送装置と、自動原稿搬送装置によって搬送される原稿上の画像を読み取るスキャナ150などの画像読取手段とを備えた原稿読取装置50などの画像読取装置において、自動原稿搬送装置として、態様10の自動原稿搬送装置を備える。
これによれば、装置の大型化や装置のコストアップを抑えることができる。
【0112】
(態様12)
原稿読取装置50などの画像読取装置と、画像読取装置で読み取った画像情報に基づいて画像を形成する画像形成手段と、を備える画像形成装置において、画像読取装置として、態様11に記載の画像読取装置を備える。
これによれば、装置の大型化や装置のコストアップを抑えることができる。
【0113】
(態様13)
転写紙などのシートを搬送するシート搬送部を備え、シート搬送部によって搬送されるシートに画像を形成する画像形成装置において、シート搬送部として、態様1乃至9いずれかのシート搬送装置を備える。
これによれば、シートの金属によりシートを搬送する搬送部材が傷つけられるのを抑制し、かつ、装置の大型化や装置のコストアップを抑えることができる。
【符号の説明】
【0114】
1 :画像形成部
40 :白紙供給装置
41 :ペーパーバンク
42 :給紙カセット
43 :送出ローラ
45 :分離ローラ
50 :原稿読取装置
51 :ADF
53 :原稿載置台
54 :可動原稿テーブル
55 :原稿スタック台
56a :セット基準部
56b :サイドフェンス
80 :ピックアップローラ
80a :ホルダ
82 :駆動ローラ
83 :従動ローラ
84 :給紙ベルト
85 :分離ローラ
88 :原稿ガイド
98 :給紙カバー
150 :スキャナ
801 :電磁石
801a :コイル
801b :鉄心
802 :接触部材
802′ :接触部
803 :集音マイク
804 :永久磁石
805 :磁力遮蔽部材
901 :本体制御部
902 :本体操作部
904 :コントローラ
A :原稿セット部
B :分離搬送部
BN :分離部
C :レジスト部
D :ターン部
E :第1読取搬送部
F :第2読取搬送部
G :排紙部
H :スタック部
MS :原稿
m :金属片
【先行技術文献】
【特許文献】
【0115】